説明

ボイラの暖気方法及び装置

【課題】昇圧ファンのファンケーシング及び燃料配管を暖気した後のファーネスブラックガスをボイラのガスバーナに導いて燃焼することにより、ファーネスブラックガスのエネルギーの有効利用を図る。
【解決手段】昇圧ファン5、燃料配管4及び流量調節弁7を介してガスバーナ3にファーネスブラックガス2を供給して燃焼するようにしているボイラの暖気方法であって、流量調節弁7を開にして燃料配管4にファーネスブラックガス2を供給することにより燃料配管4及び昇圧ファン5のファンケーシングの暖気を行うと共に、流量調節弁7によりガスバーナ3から噴射されるファーネスブラックガス2はボイラ1で燃焼し、昇圧ファン5のファンケーシングが起動許可温度に到達した後昇圧ファン5を起動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボイラの暖気方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ファーネスブラックガスを燃焼して蒸気を生成する産業用或いは発電用のボイラが実施されている。
【0003】
図2は、上記ファーネスブラックガスを燃焼するボイラの一例を示すもので、1はボイラ(火炉)であり、ボイラ1にはファーネスブラックガス2を燃焼させる複数のガスバーナ3が備えられている。一方、ファーネスブラックガス2を供給する燃料配管4には調整ダンパ5aを備えた昇圧ファン5が設けてあり、更に、昇圧ファン5により昇圧されたファーネスブラックガス2は、遮断弁6を介し前記各ガスバーナ3に対応して設けた流量調節弁7に供給されるようになっている。又、前記流量調節弁7に接続された燃料配管4の下流端は、大気放散弁8を介してフレアスタック9或いは図示しない大気放散口に接続されている。
【0004】
油やガスを高温ガス中で不完全燃焼させてカーボンブラックを製造する際に発生するFBG(ファーネスブラックガス)が知られている。このようなファーネスブラックガス2の特性を示すと、ガス温度は160℃〜190℃、比重(15℃/4℃)は1.02前後である。更に、一酸化炭素含有量は10Vol%前後、水素含有量は8Vol%前後であり、発熱量は約560Kcal/m3Nを有している。
【0005】
図2のボイラが停止して冷却された状態から、昇圧ファン5を起動して160℃〜190℃の高温のファーネスブラックガス2を供給するためには、昇圧ファン5のファンケーシング及び燃料配管4を暖気する必要がある。
【0006】
このため、従来は、燃料配管4の遮断弁6と大気放散弁8を開け、ファーネスブラックガス2(生ガス)をファーネスブラックガス2自身のもつ圧力で供給することにより、昇圧ファン5のファンケーシング及び燃料配管4の暖気を行い、暖気を行った後のファーネスブラックガス2はフレアスタック9に導いて燃焼させるか、或いは大気放散口から放散させるようにしている。上記暖気は、昇圧ファン5の起動許可温度である例えば40℃以上が保持されるまで行うようにしている。
【0007】
ボイラの暖気について開示したものには特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−044405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、図2に示すようにファーネスブラックガス2を燃焼するようにしたボイラ1の暖気方法においては、昇圧ファン5のファンケーシング及び燃料配管4の暖気を行った後のファーネスブラックガス2を、フレアスタック9に導いて燃焼させたり、或いは大気放散口から放散させるようにしているため、フレアスタック9で燃焼させた場合にはファーネスブラックガス2のエネルギーを無駄に廃棄することになると共に、CO2の温室効果ガスの排出が増加するという問題があり、又、ファーネスブラックガス2を大気放散口から放散させた場合には、比重が空気よりも大きいために、高所で排出しても地上に降下して異臭を発生するという問題を有していた。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑みてなしたもので、昇圧ファンのファンケーシング及び燃料配管を暖気した後のファーネスブラックガスをボイラのガスバーナに導いて燃焼することにより、ファーネスブラックガスのエネルギーの有効利用を図るようにしたボイラの暖気方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、昇圧ファン、燃料配管及び流量調節弁を介してガスバーナにファーネスブラックガスを供給して燃焼するようにしているボイラの暖気方法であって、流量調節弁を開にして前記燃料配管にファーネスブラックガスを供給することにより燃料配管及び昇圧ファンのファンケーシングの暖気を行うと共に、前記流量調節弁によってガスバーナから噴射されるファーネスブラックガスはボイラで燃焼し、前記昇圧ファンのファンケーシングが起動許可温度に到達した後前記昇圧ファンを起動させることを特徴とするボイラの暖気方法、に係るものである。
【0012】
上記ボイラの暖気方法において、前記ガスバーナにオイルバーナが並設してあり、ボイラの暖気時にガスバーナから噴射されるファーネスブラックガスをオイルバーナのオイルで燃焼させることは好ましい。
【0013】
本発明は、昇圧ファン、燃料配管及び流量調節弁を介してガスバーナにファーネスブラックガスを供給して燃焼するようにしているボイラの暖気装置であって、昇圧ファンのファンケーシングの温度を検出する温度計と、該温度計の検出温度が入力されると共に暖気操作指令が入力された制御器を有しており、制御器は、暖気操作指令の入力により、前記流量調節弁を開にしてファーネスブラックガスをガスバーナに供給することにより燃料配管及び昇圧ファンのファンケーシングの暖気を行うと共に、前記ガスバーナから噴射されるファーネスブラックガスの燃焼を行い、前記温度計による検出温度が昇圧ファンのファンケーシングの起動許可温度に到達した後前記昇圧ファンを起動させるようにしていることを特徴とするボイラの暖気装置、に係るものである。
【0014】
上記ボイラの暖気装置において、前記ボイラの暖気時にファーネスブラックガスを噴射して燃焼させるガスバーナに、ファーネスブラックガスの燃焼を助けるオイルバーナを並設したことは好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のボイラの暖気方法及び装置によれば、流量調節弁を開にして燃料配管にファーネスブラックガスを供給することにより燃料配管及び昇圧ファンのファンケーシングの暖気を行うと共に、流量調節弁によってガスバーナから噴射されるファーネスブラックガスはボイラで燃焼し、前記昇圧ファンのファンケーシングが起動許可温度に到達した後に前記昇圧ファンを起動させるようにしたので、暖気を行ったファーネスブラックガスをボイラで燃焼させることにより、ファーネスブラックガスのエネルギーをボイラでの蒸気発生・発電エネルギーに変換して有効利用できるため、CO2の排出も低減できる効果を有すると共に、ボイラには排ガス浄化装置が備えられているので暖気ガス燃焼の際に発生するNOx等の排出も低減できる効果がある。又、暖気時のファーネスブラックガスを大気放散口から放散させる従来において発生していた異臭の問題も防止することができる。
【0016】
暖気を行ったファーネスブラックガスをボイラで燃焼させるようにしているので、従来のフレアスタック等の設備を省略することができる。
【0017】
ガスバーナにオイルバーナを並設したことにより、ボイラの暖気時にガスバーナから噴射される低カロリーのファーネスブラックガスをオイルバーナのオイルによって燃焼させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を実施するボイラの暖気装置の形態の一例を示す概略ブロック図である。
【図2】従来のファーネスブラックガスを燃焼するボイラの一例を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0020】
図1は発明の一実施例であって、図中、図2と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0021】
図1に示すように、燃料配管4に備えた昇圧ファン5、遮断弁6及び流量調節弁7を介してガスバーナ3にファーネスブラックガス2を供給して燃焼するようにしているボイラ1において、昇圧ファン5のファンケーシングの温度を検出する温度計10を設け、該温度計10の検出温度を入力するようにした制御器11を設ける。
【0022】
前記制御器11には、昇圧ファン5のファンケーシングの起動許可温度である設定温度12が入力されていると共に、暖気操作指令13が入力されるようになっている。
【0023】
前記制御器11は、暖気操作指令13が入力されると、開度指令14により前記流量調節弁7を開状態に調節すると共に、開閉指令15により遮断弁6を開け、ファーネスブラックガス2(生ガス)を燃料配管4に供給するようにしている。これにより、燃料配管4に供給されたファーネスブラックガス2は、自身のもつ圧力によって昇圧ファン5及び燃料配管4に流動されて暖気を行い、暖気を行った後のファーネスブラックガス2はガスバーナ3で燃焼されるようになっている。更に、制御器11は、前記温度計10による検出温度が昇圧ファン5のファンケーシングの起動許可温度である設定温度12に到達すると、暖気操作を終了し、前記昇圧ファン5に起動信号16を送って昇圧ファン5を起動し、更に、開度指令14によって前記流量調節弁7を所定開度に調節して、ボイラ1の定常運転を行うようになっている。
【0024】
又、前記ボイラ1のガスバーナ3にはオイルバーナ17が並設されており、オイルバーナ17にはオイルポンプ18からのオイル19(重油)が流量調節弁20によって供給されるようになっている。図1ではガスバーナ3にオイルバーナ17が並設された場合について例示したが、オイルバーナ17をガスバーナ3に一体に組み込んだ構造を有していてもよい。そして、前記制御器11は、前記ファーネスブラックガス2による暖気時に、オイルポンプ18に作動指令21を出力する共に流量調節弁20に開度指令22を出力して、オイルバーナ17からオイル19を噴射させて、前記ガスバーナ3から噴射されるファーネスブラックガス2をオイルバーナ17からのオイル19によって燃焼させるようにしている。
【0025】
尚、前記暖気時に流量調節弁7を開にしてファーネスブラックガス2の燃焼を行うガスバーナ3は1つ以上の任意の数とすることができ、又、ガスバーナ3に並設するオイルバーナ17も、ファーネスブラックガス2を燃焼させる前記ガスバーナ3に合わせて設置することができる。
【0026】
次に、上記実施例の作動を説明する。
【0027】
図1の昇圧ファン5のファンケーシング及び燃料配管4をファーネスブラックガス2で暖気する操作は、先ず、ファーネスブラックガス2が燃料配管4に供給されるようにし、制御器11に暖気操作指令13が出力されることによって行われる。暖気操作指令13が入力された制御器11は、開度指令14により前記流量調節弁7を開状態に調節すると共に、開閉指令15により遮断弁6を開け、これにより、ファーネスブラックガス2は自身のもつ圧力によって昇圧ファン5及び燃料配管4を流動する間に昇圧ファン5のファンケーシングを暖気すると共に燃料配管4を暖気し、暖気を行った後のファーネスブラックガス2は開にしている流量調節弁7からガスバーナ3に供給されて燃焼する。
【0028】
このとき、制御器11は、オイルポンプ18に作動指令21を出力する共に流量調節弁20に開度指令22を出力して、オイルバーナ17からオイル19を噴射させるので、前記ガスバーナ3から噴射される低カロリーのファーネスブラックガス2はオイルバーナ17から噴射されるオイル19によって燃焼されるようになる。
【0029】
前記制御器11には、前記温度計10による検出温度と設定温度12が入力されているので、検出温度が昇圧ファン5のファンケーシングの起動許可温度である設定温度12に到達すると、制御器11は暖気操作を終了し、前記昇圧ファン5に起動信号16を送って昇圧ファン5を起動し、更に、開度指令14により前記流量調節弁7を所定開度に調節することにより、ボイラ1の定常運転を行う。
【0030】
上記したように、流量調節弁7を開にして燃料配管4にファーネスブラックガス2を供給することにより燃料配管4及び昇圧ファン5のファンケーシングの暖気を行うと共に、流量調節弁7によってガスバーナ3から噴射されるファーネスブラックガス2はボイラ1で燃焼し、前記昇圧ファン5のファンケーシングが起動許可温度に到達した後に、前記昇圧ファン5を起動させるようにしているので、暖気を行う際のファーネスブラックガス2をボイラ1で燃焼させることでエネルギーを有効利用することができると共に、ボイラ1には排ガス浄化装置が備えられているのでCO2の排出も低減できる効果がある。又、暖気時のファーネスブラックガス2を大気放散口から放散させるようにしている従来のような異臭の問題も防止することができる。
【0031】
暖気を行ったファーネスブラックガス2をボイラ1で燃焼させるようにしているので、従来のフレアスタック等の設備を省略することができる。
【0032】
ガスバーナ3にオイルバーナ17を並設したことにより、ボイラ1の暖気時にガスバーナ3から噴射されるファーネスブラックガス2をオイルバーナ17のオイル19によって燃焼させることができる。
【0033】
尚、本発明のボイラの暖気方法及び装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1 ボイラ
2 ファーネスブラックガス
3 ガスバーナ
4 燃料配管
5 昇圧ファン
7 流量調節弁
10 温度計
11 制御器
12 設定温度
13 暖気操作指令
17 オイルバーナ
19 オイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇圧ファン、燃料配管及び流量調節弁を介してガスバーナにファーネスブラックガスを供給して燃焼するようにしているボイラの暖気方法であって、流量調節弁を開にして前記燃料配管にファーネスブラックガスを供給することにより燃料配管及び昇圧ファンのファンケーシングの暖気を行うと共に、前記流量調節弁によってガスバーナから噴射されるファーネスブラックガスはボイラで燃焼し、前記昇圧ファンのファンケーシングが起動許可温度に到達した後前記昇圧ファンを起動させることを特徴とするボイラの暖気方法。
【請求項2】
前記ガスバーナにオイルバーナが並設してあり、ボイラの暖気時にガスバーナから噴射されるファーネスブラックガスをオイルバーナのオイルで燃焼させることを特徴とする請求項1に記載のボイラの暖気方法。
【請求項3】
昇圧ファン、燃料配管及び流量調節弁を介してガスバーナにファーネスブラックガスを供給して燃焼するようにしているボイラの暖気装置であって、昇圧ファンのファンケーシングの温度を検出する温度計と、該温度計の検出温度が入力されると共に暖気操作指令が入力された制御器を有しており、制御器は、暖気操作指令の入力により、前記流量調節弁を開にしてファーネスブラックガスをガスバーナに供給することにより燃料配管及び昇圧ファンのファンケーシングの暖気を行うと共に、前記ガスバーナから噴射されるファーネスブラックガスの燃焼を行い、前記温度計による検出温度が昇圧ファンのファンケーシングの起動許可温度に到達した後前記昇圧ファンを起動させるようにしていることを特徴とするボイラの暖気装置。
【請求項4】
前記ボイラの暖気時にファーネスブラックガスを噴射して燃焼させるガスバーナに、ファーネスブラックガスの燃焼を助けるオイルバーナを並設したことを特徴とする請求項3に記載のボイラの暖気装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−94844(P2011−94844A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247625(P2009−247625)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】