説明

ボランを用いた有機物質の加速還元

エステル、アミド、ニトリル、酸、ケトン、イミン、又はこれらの混合物からなる群から選択される有機基材の加速還元法において、前記基材を、ボラン供給源としてのアミンボラン錯体、スルフィドボラン錯体、又はエーテルボラン錯体と、化合物構造中にルイス酸部位とルイス塩基部位の両方を含有する促進剤有機化合物の存在下で反応させ、当該化合物のルイス酸部位は、基材のカルボニル基、又はニトリル基、又はイミノ基と配位結合することができ、そして前記ルイス塩基部位は、ボランと配位結合することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒量で添加剤を有するアミンボランのようなボランを用いた、エステルやアミドのような有機基材の還元を加速させる新規の方法に関する。
【0002】
背景技術
有機基材、例えばエステル、酸又はケトンを、還元してアルコールにすること、及びアミド、ニトリル又はイミドを還元してアミンにすることは、抗生物質、HIV阻害剤、及び高眼圧薬といった薬剤の開発にとって鍵となる変換である。これらの変換は、他の敏感な還元可能な官能基の存在下では、選択的に完了させることが難しい。これらの有機基材の還元、特にエステル及びアミドの還元のための新規方法の導入が、非常に望まれている。
【0003】
アミンボラン錯体は、非常に安定的なボラン供給源である。アミンのボラン錯体は、大規模で容易に使用されるが、エーテル若しくはスルフィドのボラン錯体よりも一般的に反応性が低い。アミンボランの中には、水溶液に対してさえ長期間安定的なものもある。官能基に対する反応性が低いため、有機合成へのアミンボランの適用は制限されてきた。より反応性の高い他のボラン錯体、例えばボランテトラヒドロフラン(BTHF)、又はジメチルスルフィドボラン(DMSB)とは対照的に、アミンボランを用いた還元では通常、酸性条件又は高められた温度が必要となる。ピリジンボランとトリメチルアミンボランはしばしば、アミド還元を達成するのに充分な反応性ではない。ジアルキルアニリンのボラン誘導体、及び立体障害アミンは、その他のアミンボランよりも非常に反応性が高いが、アミド還元を起こして完了させるには、高められた温度で長い加熱が必要である(Brown,H.C;Kanth,J.V.B.;Zaidlewicz,M.J.Org.Chem.1998年,63(15),5154−5163.Salunkhe,A.M.;Burkhardt,E.R.Tetrahedron Letters 1997年,38(9),1519;Brown,H.C;Kanth,J.V.B.;Dalvi,P.V.;Zaidlewicz,M.J.Org.Chem.1999年,64(17),6263−6274参照)。Kanth,J.V.B.Aldrichimica Acta 2002年,35,57.Burkhardt and Salunkheは、N,N−ジエチルアニリンボラン(DEANB)が様々な官能基、例えばアルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、及び第三級アミドを、高められた温度で効果的に還元することを報告している。エステル及び障害ケトンには、反応を起こして完了させるために、THF中の還流で長い反応時間が必要となる。これらの例は、DEANBの反応性が、BTHFとDMSBよりも低いことを示した。Bonnat,M.;Hercouet,A.;Le Corre,M.Synthetic Communications 1991年,21(15−16),1579−82参照。しかしながら、BTHFは熱によるエーテル開裂、およびDMSBはその悪臭が原因で、これらのボラン試薬をエステル及びアミド還元のために大容量で使用することは、制限される。
【0004】
ボラン錯体によるエステル官能価の還元には厳しい条件が必要となり、一般的には還元を完了まで効果的に推し進める還流条件が必要である。この目的のためにBTHF又はDMSBを用いる幾つかの例は、Sessler,J.L.ら、Inorg.Chem.1993年,32,3175、及びBrown,H.C;Choi,Y.M.;Narasimhan,S.J.Org.Chem.1982年,47(16),3153−63参照。DMSBを使用する場合、ジメチルスルフィドは通常、還流溶液から蒸留して、還元を起こして完了させる。例えば、DMSBを用いたL−マレイン酸ジメチルエステルの1つのエステルの選択的な還元は、3(S)−4−ジヒドロキシ酪酸メチルエステルを成功裏にもたらす。アミンボランは一般的に、エステル官能価を減少させない。しかしながら、BTHFは熱によるエーテル開裂、及びDMSBはその悪臭が原因で、これらのボラン試薬を大容量で使用することは、制限される。明らかに、エステル還元のために新規な方法を開発しなければならない。
【0005】
SalunkheとBurkhardt(上記参照)は、DEANBが、オキサザボロリジン触媒の存在下でプロキラルなケトンの非常に効果的な還元試薬であることを示した。MeCBSについては、この還元が周辺温度で2時間未満で完了した一方、触媒がなければ、ケトンの還元は27時間で56%完了した。オキサザボロリジン触媒を用いたBTHFによるケトンの還元の促進は、Jockel,H.;Schmidt,R.;Jope,H.;Schmalz,H−G..J.Chem.Soc.Perkin Trans.2,2000年,69.Schmidt,R.;Jockel,H.;Schmalz,H−G;Jope,H.J.Chem.Soc.Perkin Trans.2,1997年,2725により研究されてきた。アミド及びエステルの還元は新たなキラル中心を生まないため、利用可能なキラルなオキサザボロリジン触媒をこの種類の還元で試すことは、直感的に明らかではない。
【0006】
本発明の要約
本発明の目的は、触媒量で添加剤を有するアミンボランのようなボランを用いた、エステルやアミドのような有機基材の還元を加速させる新規の方法を提供することである。
【0007】
この目的は、エステル、アミド、ニトリル、酸、ケトン、イミン、又はこれらの混合物からなる群から選択される有機基材を、ボラン供給源としてのアミンボラン錯体、スルフィドボラン錯体、又はエーテルボラン錯体と、化合物構造中にルイス酸部位とルイス塩基部位の両方(当該化合物のルイス酸部位は、基材のカルボニル基、又はニトリル基、又はイミノ基と配位結合することができ、そして前記ルイス塩基部位は、ボランと配位結合することができる)を含有する促進剤有機化合物の存在下で反応させる加速還元法によって達成される。
【0008】
好ましくは、エステル、酸、及びケトンは還元されてアルコールになり、そしてアミド、ニトリル及びイミンは還元されてアミンになる。
【0009】
好ましくは、アミンボラン、スルフィドボラン、及びエーテルボランは、式
【化1】

[式中、R5〜R12は独立してC1-6アルキル、フェニルであるか、又はそのうちR5とR6、R9とR10、R11とR12の2つが独立してC4-6アルキレン基をともに形成することができ、そしてR5〜R12はハロゲンにより置換されていてよく、そしてR7とR8はまた、水素であってよい]
に当てはまるアミン、スルフィド及びエーテルから誘導される。
【0010】
本願の明細書と請求項では、「アルキル」と「アルキレン」は、線状の、又は分枝状のアルキル若しくはアルキレンであってよい。
【0011】
好ましくはアミンボランは、第三級アミンボラン、特にN,N−ジエチルアニリン(DEANB)であり、スルフィドボランは、ジメチルスルフィドボラン(DMSB)であり、そしてエーテルボランは、ボランテトラヒドロフラン(BTHF)若しくはボラン2−メチルテトラヒドロフランである。
【0012】
好ましくは有機基材は、4〜30個の炭素原子を含む。
【0013】
好ましくは有機基材は、エステル官能基、アミド官能基、ニトリル官能基、酸官能基、ケト官能基、又はイミノ官能基の他に、1つ又は1つより多くの、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルカリール基、ヘテロシクロアルキル基、及びヘテロアリール基を含む。当該基材は、ボランにより還元されない他の官能基、例えばアルコキシ基、ハロ基、ニトロ基、スルホナミド基を含むことができ、これらの基は、触媒された還元よりもゆっくりボランと反応する、三回若しくは四回置換されたアルケンであってもよい。
【0014】
好ましくは前記エステル、アミド、ニトリル、ケトン、及びイミンが、式
1−C(=O)−OR2、R1−C(=O)−NR34、R1−CN、
1−C(=O)OH、R1−C(=O)−R2、R12C=NH、R12C=NR3
[式中、R1〜R4は独立して、上記の他の官能基によって置換されていてもよい、C1-12アルキル、C6-12アリール、C7-12アラルキル、C7-12アルカリールである]
に当てはまる。
【0015】
好ましくは、促進剤有機化合物は、式N−Bの構造要素を含むか、或いはオキサザボロリジン化合物であるか、又は式N−B−O[式中、N−とO−は1つの炭素鎖により結合されている]の構造要素を含む環状化合物である。
【0016】
この促進剤有機化合物は好ましくは、第二級アミノアルコールから、例えばボラン若しくはボレートとの反応を経由して誘導される。アミノアルコール残分は、ポリマー鎖に結合していてよい。
【0017】
好ましくは促進剤有機化合物は、以下の式
【化2】

[式中、環は5つ、6つ、又は7つの要素を含むことができる]
のうちの1つの構造要素(これらは中心構造のみが示されているが、アルキル鎖又はアルキレン鎖のような残基ではない)を含むスピロボレート化合物である。
【0018】
好ましくは促進剤有機化合物は、以下の一般式
【化3】

[式中、
各位置にあるR13、R14、R15、R16は独立して、水素、C1-12アルキル、C6-12アリール、C7-12アルカリールであり、ここでR13とR14、又はR13とR15が、環状残基をともに形成することができ(ただし、最大4つの残基R16が水素と異なる)、
nは1、2,又は3である]
のうち1つを有する。
【0019】
好ましくは前記オキサザボロリジン化合物が、
【化4】

から成る群から選択される。
【0020】
好ましくは、前記スピロボレート化合物が、
【化5】

の群から選択される。
【0021】
促進剤化合物の量は好ましくは、アミンボラン、スルフィドボラン、又はエーテルボランに対して0.01〜100mol%である。
【0022】
この目的はさらに、エステル、アミド、ニトリル、酸、ケトン、イミン、又はこれらの混合物からなる群から選択される有機基材を加速還元するための組成物により達成され、当該組成物は、少なくとも1つのアミンボラン錯体、スルフィドボラン錯体、又はエーテルボラン錯体をボラン供給源として含み、かつ化合物構造中にルイス酸部位とルイス塩基部位の両方(当該化合物のルイス酸部位は、基材のカルボニル基、又はニトリル基、又はイミノ基と配位結合することができ、そして前記ルイス塩基部位は、ボランと配位結合することができる)を含有する、少なくとも1つの促進剤有機化合物を含む。
【0023】
この目的はさらに、式で先に定義した促進剤有機化合物により達成される。
【0024】
ボラン供給源を用いた反応による、エステル、アミド、ニトリル、酸、ケトン、イミン、好ましくはエステルとアミド、特にエステルと第三級アミドからなる群から選択される有機基材の還元は、ルイス酸部位とルイス塩基部位の両方を同じ分子中に含有する促進剤有機化合物により加速させることができることを、発明者は発見した。ルイス酸部位は、前記基材のカルボニル基、又はニトリル基、又はイミノ基と配位結合することができ、そしてルイス塩基部位はボランと配位結合することができる。あるルイス酸、及びルイス塩基がこれらの要求を満たすかどうか、当業者は直ちに認識するであろう。
【0025】
特定の理論に縛られたくはないのだが、添加剤は、a)ルイス酸を基材のカルボニル基に配位させて、炭素のカルボカチオン(求電子)特性を高めること、或いはb)添加剤に対してボラン配位を動的平衡させてボランを有する基材の相互作用を容易にする、という2つの拡散的なメカニズム(divergent mechanism)によって、反応速度を高めると考えられる。より詳しく言うと、オキサザボロリジン添加剤は、a)基材のカルボニル基をルイス酸ボロンに配位させて、炭素のカルボカチオン(求電子)特性を高めること、或いはb)添加剤のルイス塩基窒素中心に対してボラン配位を動的平衡させてボランを有する基材との隣接相互作用を容易にする、という2つの収斂的なメカニズム(convergent mechanism)を結びつけることによって、反応速度を高めると考えられる。ルイス酸部位とルイス塩基部位とを両方有する他の加速試薬もまた、活性化されたカルボニルとボランを近い隣接位に置いて、これによって還元の活性化エネルギーを下げるというメカニズムによって、カルボニル還元を支持すると予測される。
【0026】
この方法は、溶媒の不存在下で行うことができる。
【0027】
従って、式
【化6】

のエステル、及び式
【化7】

のアミドを、好ましくは式
【化8】

のアミン、スルフィド、又はエーテルで錯化されたボランを用いて、加速促進試薬を触媒量で添加することにより、効果的に還元することができる。これらの加速促進試薬は、ルイス酸部位とルイス塩基部位とを両方含む構造、例えばより好ましくは
【化9】

[式中、R13-16については上記意味を有し、その結果、基材のカルボニル(アミン又はエステル)は活性化されたカルボニルに対して隣接して(ルイス酸部位を)配位結合させることができ、そしてボランは活性化されたカルボニルに対して隣接して(ルイス塩基部位を)配位結合させることができる]
であってよい。
【0028】
加速試薬は、有機基材、例えばエステル又はアミドと、(アミン)ボランの添加前に混合することができるか、又は基材への添加前に(アミン)ボランと組み合わせることができる。
【0029】
さらに、(アミン)ボラン及び加速試薬は、有機基材、例えばエステルやアミドの還元のために組み合わせて大規模な使用を容易にするために組成物に合することができる(組成混合物)。促進剤の量は好ましくは、0.01〜20mol%、より好ましくは0.05〜10mol%である。
【0030】
本発明の他の実施態様は、上記ボラン錯体、少なくとも1つの加速試薬(定義したような)、及び選択的に少なくとも1つの溶媒を含む溶液である。
【0031】
加速添加剤を有する、(アミン)ボラン(例えばN,N−ジエチルアニリン、2,6−ルチジン、2−クロロピリジン)の新規組成物、及び本発明のエステル及びアミドの好ましい還元方法は好ましくは、エステルからアルコールへの、及びアミドからアミン(ニトリルからアミン)への変換のために使用することができる。
【0032】
発明の詳細な説明
本発明の好ましい態様においてこの新規方法は、(アミン)ボラン、加速試薬(触媒)、及び有機基材、例えばエステル又はアミド基材を反応槽内で接触させる工程を含む。この反応はまた、連続的な方法で容易に行うことができる。
【0033】
本発明の好ましい態様では、反応槽内で所望の温度で(アミン)ボランと加速試薬(触媒)とを合し、そしてそれから有機基材、例えばエステル又はアミド基材に添加する。本発明の組成物は一般的に、上記式の(アミン)ボランの新規組成とともに、(アミン)ボラン1molに対して0.0005〜0.5mol、好ましくは(アミン)ボラン1molに対して0.0005〜0.2mol、より好ましくは(アミン)ボラン1molに対して0.001〜0.1molの濃度で加速試薬を含む。
【0034】
本発明の方法の好ましい他の態様は、反応に(アミン)ボランを添加する前に、有機基材、例えばエステル又はアミドに加速試薬を添加することを含む。
【0035】
本発明の方法の他の好ましい態様は、有機基材、例えばエステル又はアミドに対して、加速試薬を含有する(アミン)ボランを溶媒中で添加することを含む。もちろん、ボランに対して推奨アミンよりも錯形成能が低い1つ又は1つより多い他の溶媒が、存在していてよい。本発明の反応溶液に適した溶媒は、当該溶媒中で(アミン)ボラン錯体が高い溶解性を有するものである。その例はエーテル、例えばジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、又は2−メチルテトラヒドロフラン、スルフィド、例えばジメチルスルフィド、又は1,6−チオキサン(これらのスルフィドはまた、ボラン錯化剤としても作用する)、及び炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、又はキシレンである。(アミン)ボラン加速試薬組成物の溶液に好ましい溶媒は、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフィド、1,6−チオキサン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、又はシクロヘキサンであり、最も好ましくはテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、及びトルエンである。
【0036】
本発明の方法は一般的に、0〜+150℃の温度で、好ましくは10〜110℃の温度で、及びより好ましくは20〜85℃の温度で行うことができる。
【0037】
圧力は通常、周辺圧力、好ましくは0.1〜10barの範囲、とりわけ0.5〜2.5barの範囲である。
【0038】
ここで記載される発明を、ここで特に記載したものとは別の変形及び修正に供することができることは、当業者により評価されるであろう。本発明は、このようなあらゆる変形と修正を含むと理解されるべきである。本発明はまた、本明細書で言及又は指摘されたあらゆる工程、特徴、化合物、及び組成物を、個別的又は集合的に、及び前記工程又は特徴のあらゆる2つ又は3つの組み合わせをすべて含む。
【0039】
以下の実施例は本発明を説明するものであり、本発明を限定するものではない。記載される実施例は、先に述べた発明の一般性に取って代わるものではない。
【0040】
実施例
以下、手順の実施例、製造及び試験の実施例、並びに還元実施例を示す。
【0041】
手順の実施例
分析用のASI/Mettler React−IRを備えた、ステンレス鋼製の1リットル圧力反応器内で、いくつかの反応を行った。使用前に反応器をきれいにし、窒素でパージした。React−IRは、推奨される作業手順に従って、スペクトルを得る前に調整及び較正した。
【0042】
他の反応は窒素下で、炉で乾燥した通常のガラス器具内で行った。試料を回収、急冷し、そして以下で詳細に説明するように、FT−IR又はGCによって分析した。
【0043】
手順の実施例1:50℃でのエステル及びアミドの還元
無水THF200mL、及びエステル又はアミド0.1molを反応器に装入し、20psiの窒素圧下、25psiに調整した背圧調整弁(BPR)を用いて50℃に加熱した。50℃の反応温度を維持しながら、DEANB(molは基材次第)を1時間にわたり30psiで炉に供給した。反応の完了は、カルボニルストレッチ(carbonyl stretch)の消失により測定した(波数は基材次第)。すべてのデータを集めて分析した後、MeOH50mLを用いて7〜10℃に反応を急冷した。
【0044】
手順の実施例2:85℃でのエステルとアミドの還元
85℃での還元を圧力容器内で、30psiの窒素圧、35psiのBPR、及び40psiの供給圧力で行った。濃度と添加時間は、手順の実施例1と同じであった。
【0045】
手順の実施例3:ガラス器具内、50℃で基材還元
ガラス器具内で小規模のスクリーニング反応を行った。N2バブラーに通じる冷却器、隔膜、及び熱電対を備え付けた100mLの三つ口丸底フラスコ(清潔でオーブン乾燥されたもの)に、エチルブチレート又はエチルベンゾエート0.05mol、THF10mLを装入し、15分間撹拌した。フラスコを50℃に加熱後、DEANB0.05molの混合物(添加剤を入れた物と入れない物)を、フラスコにゆっくりと加えた。還元時間を測定するため、試料1mLをメタノール0.5mLで加水分解し、そしてFT−IR分光分析を使用して、カルボニルストレッチの消失をモニターした(基材次第で1734〜1654cm-1)。
【0046】
手順の実施例4:ガラス器具内、20℃で基材還元
ガラス器具内で小規模のスクリーニング反応を行った。N2バブラーに通じる冷却器、隔膜、及び熱電対を備え付けた100mLの三つ口丸底フラスコ(清潔でオーブン乾燥されたもの)に、エチルブチレート又はエチルベンゾエート0.05mol、THF10mLを装入し、20℃の周辺温度で15分間撹拌した。DEANB0.05molの混合物(添加剤を入れた物と入れない物)を、フラスコにゆっくりと加えた。還元時間を測定するため、試料1mLをメタノール0.5mLで加水分解し、そしてFT−IR分光分析を使用して、カルボニルストレッチの消失をモニターした(基材次第で1734〜1654cm-1)。
【0047】
基材対DEANBの当量比

【0048】
促進剤の製造(P)及び試験(T)
実施例P1
CATV及び2−(メチルアミノ)エタノール経由で2−(メチルアミノ)エタノールカテコールスピロボレート(スピロCAT)
CAS名称:エタンアミン,2−(1,3,2−ベンゾジオキサボロル−2−イロキシ)−N−メチル−
【化10】

【0049】
清潔で乾いた200mLの三つ口丸底フラスコを窒素でパージし、そしてカテコールボラン(CATB)0.084mol(10g)、及びトルエン100mLを装入した。フラスコを氷水浴で冷却し、そして2−(メチルアミノ)エタノール0.084mol(6.3g)を、1時間30分にわたって供給した。透き通った溶液は濁り、そして最終的には粘稠度の高い白いスラリーになる(マグネチックスターラーで撹拌するのが難しいほど)。1.8℃から7.0℃への反応温度の上昇、及びH20.043mol(1.05L)が、添加の間に発生した。生成するスラリーを室温で一晩撹拌してから真空濾過し、そして一晩乾燥させて白色粉末15.0gを得た(収率92.7%)。重水素化された試験溶媒(DMSO、DMS、クロロホルム、THF、ベンゼン)が原因で、この生成物から代表的な11B−NMR、及び1H−NMRスペクトルを得ることは難しかった。
11B−NMR(300MHz,d−テトラクロロエタン)7.9ppm
1H−NMR(300MHz,d−テトラクロロエタン) ppm:2.39(s,H3),2.85(t,H2),3.59(t,H2),6.56(H2),6.65(H2)。
【0050】
実施例T1
スピロCATによるエステル還元
室温でTHF中、DEANB 0.05mol及びスピロCAT 10mol%による、エチルブチレート0.05molの標準的な還元を、4.5時間で完了させた。反応はFT−IRでモニターし、エチルブチレートカルボニルストレッチは1734cm-1にあった。
【0051】
実施例P2
カテコール、IPB、及び2−(メチルアミノ)エタノールを経由して、2−(メチルアミノ)エタノールカテコールスピロボレート(スピロCAT)
【化11】

【0052】
清潔で乾いた500mLの三つ口丸底フラスコに、窒素バブラーに行く弁を備えるコールドフィンガー式冷却器を取り付けた。マグネチックスターラー、隔膜、1/4インチのステンレス鋼製熱電対を加え、そしてフラスコを油浴中に置いた。このフラスコに順次、イソプロピルボレート0.102mol(19.76g)、トルエン200mL、及びカテコール0.100mol(11.01g)を装入した。この混合物を50℃に加熱して均質な溶液を得てから、2−(メチルアミノ)エタノールの0.100mol溶液(7.51g)、及びトルエン100mLをゆっくりと1時間にわたって加え、粘稠な白いスラリーを得た。この白いスラリーを50℃で1時間撹拌し、そして室温に冷却した。真空濾過し、トルエン50mLで洗浄し、そして4時間乾燥させて、スピロCATの白色粉末を10.78g(収率55.9%)を得た。濾液と洗浄液を、真空下50℃でかつ25mmHgで濃縮して、黄褐色のフレーク状固体7.45gを得た(黄褐色は未反応のアミノアルコールに起因、1H−NMRによる)。
【0053】
濾過前のスラリーの11B−NMRでは、未反応のIPBが約42%存在する。R−DPPエチレングリコールスピロボレートとは異なり、こうして作られたスピロCATは、反応を完了させるために、加熱、並びにイソプロパノール(IPA)及びトルエンを共沸蒸留する必要がある。蒸留前に反応体を濾過して、IPBをある程度除去し、蒸留後不足したままのアミノアルコールの過剰量を作り出す。
【0054】
実施例T2
シクロヘキサン中のスピロCAT
トルエンは、これらのスピロボレート反応から除去するのが難しい溶媒であった。シクロヘキサンは沸点が81℃であるのに対して、トルエンは110℃である。両方の溶媒は、IPAと共沸を形成する。
【0055】
清潔で乾いた1Lの三つ口丸底フラスコに、窒素バブラーへと通気されているコールドフィンガー式冷却器、マグネチックスターラー、隔壁、及び1/4インチのステンレス鋼製熱電対を取り付けた。油浴に入れたフラスコに順次、カテコール0.200mol(22.02g)、イソプロピルボレート0.204mol(IPB、39.52g)、及びトルエン400mLを装入した。この混合物を50℃に加熱して均質な溶液を得てから、2−(メチルアミノ)エタノールの0.200mol溶液(15.02g)、及びトルエン200mLをゆっくりと1時間にわたって加え、粘稠な白いスラリーを得た。この白いスラリーを50℃で1時間撹拌し、そして室温に冷却した。
【0056】
この混合物を真空下、560mmHgで50〜60℃に濃縮し、溶媒200gを取り除いた。11B−NMRは、IPBがまだ混合物中に存在していることを示した。留出物の1H−NMRは、除去されるべきIPAの理論量の55%に過ぎないという結果を示した。シクロヘキサン250mLを再度添加し、そしてこの混合物を同一の温度及び真空で一定の時間(乾くまで)蒸留した。この白い粉末をシクロヘキサンで洗浄し、そして一晩にわたって乾燥させ、収率93.4%で35.98gを得た。シクロヘキサン洗浄液は、IPBを含んでいた。シクロヘキサンは除去が比較的容易である一方、シクロヘキサンはIPAと過剰なIPB、並びにトルエンを除去しなかった。
【0057】
実施例P3
スピロEA
CAS名称:エタンアミン,2−(1,3,2−ベンゾジオキサボロル−2−イロキシ)−
【化12】

【0058】
清潔で乾いた500mLの三つ口丸底フラスコに、窒素バブラーに行く弁を備えるコールドフィンガー式冷却器を取り付けた。マグネチックスターラー、隔膜、1/4インチのステンレス鋼製熱電対を加え、そしてフラスコを水浴中に置いた。フラスコに順次、イソプロピルボレート0.102mol(19.76g)、トルエン200mL、及びカテコール0.100mol(11.01g)を装入した。この混合物を30分間、30℃に加熱して均質な溶液を得てから、エタノールアミンの0.100mol溶液(6.11g)、及びトルエン100mLをゆっくりと1時間にわたって添加し、粘稠な白いスラリーを得た。添加の間、3℃の発熱があった。このスラリーを室温で1時間撹拌し、それから真空濾過し、一晩乾燥させて白色粉末16.86gを得た(収率94%)。
【0059】
実施例P4
2−(メチルアミノ)エタノール 4−t−ブチルカテコールスピロボレート(t−ブチルスピロCAT)
【化13】

【0060】
清潔で乾いた500mLの三つ口丸底フラスコに、窒素バブラーに行く弁を備えるコールドフィンガー式冷却器を取り付けた。マグネチックスターラー、隔膜、1/4インチのステンレス鋼製熱電対を加え、そしてフラスコを水浴中に置いた。フラスコに順次、イソプロピルボレート0.102mol(19.76g)、トルエン200mL、及び4−t−ブチルカテコール0.100mol(16.62g)を装入した。この混合物を30分間、室温で撹拌して均質な溶液を得てから、2−(メチルアミノ)エタノールの0.100mol溶液(7.51g)、及びトルエン100mLをゆっくりと1時間にわたって添加し、粘稠な白いスラリーを得た。添加の間、10℃の発熱があった。オフホワイトの僅かに黄褐色の沈殿物「スピロボレート」が、添加の間に形成された。このスラリーを室温で1時間撹拌し、そしてロータリーエバポレータで50℃、かつ25mmHgで濃縮した。この後、この粘り気のある固体を、トルエン中に再溶解させ、真空濾過して白色粉末16.46gを得た(収率89.51%)。
11B−NMR:8.0ppm。
【0061】
実施例P5
N,N−ジメチルエタノールアミン及びカテコールボランから得られるスピロDIME
CAS名称:エタンアミン、2−(1,3,2−ベンゾジオキサボロル−2−イロキシ)−N,N−ジメチル−
【化14】

【0062】
清潔で乾いた500mLの三つ口丸底フラスコに、窒素バブラーに行く弁を備えるコールドフィンガー式冷却器を取り付けた。マグネチックスターラー、隔膜、1/4インチのステンレス鋼製熱電対を加え、そしてフラスコを水浴中に置いた。フラスコに順次、イソプロピルボレート0.102mol(19.76g)、トルエン200mL、及びカテコール0.100mol(11.01g)を装入した。この混合物を30分間、30℃に保ち均質な溶液を得てから、N,N−ジメチルエタノールアミンの0.100mol溶液(8.91g)、及びトルエン100mLをゆっくりと1時間にわたって添加し、粘稠な白いスラリーを得た。添加の間、4℃の発熱があった。このスラリーを室温で1時間撹拌し、それから真空濾過して4時間乾燥させ、白色粉末17.20gを得た(収率93.5%)。
11B−NMR:11.8ppm。
【0063】
実施例P6
スピロCAT
CAS名称:ピリジン,2−[(1,3,2−ベンゾジオキサボロル−2−イロキシ)メチル]−
【化15】

【0064】
2−ピリジンカルボキシアルデヒドをトルエン中でカテコールボラン(CATB)により還元して、このスピロボレートを製造した。清潔で乾いた500mLの三つ口丸底フラスコに、窒素バブラーに行く弁を備えるコールドフィンガー式冷却器、マグネチックスターラー、60mLの付加的な漏斗、1/4インチのステンレス鋼製熱電対を取り付け、そして氷水浴に入れた。フラスコに2−ピリジンカルボキシアルデヒド0.084mol(9.0g)、及びトルエン300mLを装入し、非常に黄色い溶液を得た。CATBの0.084mol溶液(10.0g)、及びトルエン50mLを、0〜5℃の反応温度を維持しながら1時間にわたって添加した。CATB添加の際、形成されていた沈殿物(最終的に赤い油っぽい固体として沈降した)は、撹拌するのが困難であった。赤い油っぽい固体と、黄色いスラリーは、13ppmで同一の11B−NMRを有していた。この混合物を減圧下、70℃、25mmHgで濃縮すると、赤い油になった。浴のスイッチを切り、反応がゆっくりと室温まで下がるようにフラスコを真空下で回転させた。こうしてフラスコの底にいくつかの油っぽい箇所とともに、赤茶色の針結晶16.25g(収率85.53%)が得られた。生成物のプロトンNMRは、極微量の未反応のアルデヒド、トルエン、及び他の不詳の不純物を示した。
11B−NMR:13ppm。
【0065】
実施例T3
DEANBとスピロCATを用いたアセトフェノンの還元
THF10mL中で、室温で、DEANB0.05molと5mol%のスピロCATを用いたアセトフェノン0.05molの還元を、1時間で完了させた。この還元はスピロCAT無しで、50℃で4時間かかる。5質量%のDMSを有するDEANBを用いて、還元は50℃で3時間かかる。反応の完了は、1690cm-1にあるカルボニルアセトフェノンストレッチのFT−IR分析により測定した。
【0066】
実施例T4
DEANBを用いたヘプタンニトリルの還元(スピロCAT有りと無し)
THF10mL中で、DEANB0.05molを用いたヘプタンニトリル0.05molの還元を、50℃で24時間、5mol%のスピロCAT有りと無しで行った。試料をGCにより分析して、反応の速度と完了を同定した。6時間でスピロCATがない方は反応が33.9%完了しており、スピロCATが有る方は74.5%完了していた。24時間で、スピロCATがない方は反応が79.4%完了しており、スピロCATが有る方は89.7%完了していた。ヘプタンニトリルの還元が未だにゆっくりである一方、スピロCATを使用する場合には、速度において著しい上昇が見られる。
【0067】
還元例1〜17
(R=参照例)
添加剤を含有するDEANBをエステルに添加することによって(ボラン対エステルのモル比は1:1)、DEANBを用いたエチルブチレートの還元を選択された温度で行った。反応はIR分光分析により、カルボニルストレッチの消失を観察してモニターした。50℃で多数の添加剤を用いた結果が、表1に示されている。
【0068】
表1が示しているのは、加速試薬としてオキサザボロリジンを有するDEANBを用いた、エチルブチレート還元の加速度である。還元速度の大きな上昇が、(R)MeCBSについて観察された。この肯定的な結果ともに、他の添加剤を用いた研究のために、エチルブチレートの還元を選択した。表1を参照。
【化16】

【0069】
速度の加速はまた、アミノアルコールから誘導される他のオキサボロリジンについても観察された。この加速試薬はその場で、アミノアルコールとボラン(BH3、実施例6と7)から形成することができる。
【0070】
加速は、アミノジアルコキシボレート、DMABO2を用いた時でさえも観察され、このことは窒素原子が環の一部である必要がないことを示している。
【化17】

【0071】
二環式アミノボランを、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9BBN−PROと呼ばれる)とピロリジンから製造した。この化合物は、エステル還元には効果的ではなかった。
【0072】
第二級アミノアルコールから誘導されるスピロボレート化合物は、これまでで最良の結果を示す。スピロMOとスピロCATの頭文字で示された化合物は、エチルブチレートの還元時間を20℃で4〜5時間に減少させる。スピロMOに勝るスピロCATの利点は、アミノアルコールが高価ではなく、そしてエステル又はアミド還元のために、キラルな触媒が必要ないことである。
【化18】

【0073】
【表1】

【0074】
ボロンに対してピリジン窒素配位結合を有する化合物(スピロPCAT)、及びボロンに対して第三級アミン配位結合を有する化合物(スピロDIME)は、触媒ほど効果的でなく、このことは反応においてアミン水素が重要であることを示唆している。しかしながら第一級アミン、エタノールアミンから誘導されるスピロEAは、エステル還元を効果的には触媒しない。
【0075】
実施例18〜27
表2は、エチルベンゾエートの還元における添加剤の結果を示す。表3が示しているのは、オキサザボロリジンと、加速試薬として他のボロン化合物とを有するDEANBによる、N,N−ジメチルアセトアミドの加速還元である。
【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
ここで本発明は説明された実施態様を参照しながら記載される一方、本発明はこれらの実施例に限定されると理解されるべきではない。従って本発明は、本願に添付された特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル、アミド、ニトリル、酸、ケトン、イミン、又はこれらの混合物からなる群から選択される有機基材を、ボラン供給源としてのアミンボラン錯体、スルフィドボラン錯体、又はエーテルボラン錯体と、化合物構造中にルイス酸部位とルイス塩基部位の両方(当該化合物のルイス酸部位は、基材のカルボニル基、又はニトリル基、又はイミノ基と配位結合することができ、そして前記ルイス塩基部位は、ボランと配位結合することができる)を含有する促進剤有機化合物の存在下で反応させる、加速還元方法。
【請求項2】
エステル、酸、及びケトンは還元されてアルコールになり、そしてアミド、ニトリル、及びイミンは還元されてアミンになる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アミンボラン、スルフィドボラン、及びエーテルボランが、式
【化1】

[式中、R5〜R12は独立してC1-6アルキル、フェニルであるか、又はそのうちR5とR6、R9とR10、R11とR12の2つが独立してC4-6アルキレン基をともに形成することができ、そしてR5〜R12はハロゲンにより置換されていてよく、そしてR7とR8はまた、水素であってよい]
に当てはまるアミン、スルフィド、及びエーテルから誘導される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アミンボランが、N,N−ジエチルアニリン(DEANB)であり、前記スルフィドボランがジメチルスルフィドボラン(DMSB)であり、そして前記エーテルボランがボランテトラヒドロフラン(BTHF)又はボラン−2−メチルテトラヒドロフランである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記有機基材が4〜30個の炭素原子を含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記有機基材が、エステル官能基、アミド官能基、ニトリル官能基、酸官能基、ケト官能基、又はイミノ官能基の他に、1つ又は1つより多くの、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルカリール基、ヘテロシクロアルキル基、及びヘテロアリール基を含み、かつボランにより還元されない他の官能基を含むことができる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記エステル、アミド、ニトリル、酸、ケトン、及びイミンが、式
1−C(=O)−OR2、R1−C(=O)−NR34、R1−CN、
1−COOH、R1−C(=O)−R2、R12C=NH、R12C=NR3
[式中、R1〜R4は独立して、ボランにより還元されない他の官能基によって置換されていてもよい、C1-12アルキル、C6-12アリール、C7-12アラルキル、C7-12アルカリールである]
に当てはまる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記促進剤有機化合物が、式N−Bの構造要素を含むか、或いはオキサザボロリジン化合物であるか、又は式N−B−O[式中、N−とO−は1つの炭素鎖により結合されている]の構造要素を含む環状化合物である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記促進剤有機化合物が、以下の式
【化2】

[式中、環は5つ、6つ、又は7つの要素を含むことができる]
のうちの1つの構造要素を含むスピロボレート化合物である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記促進剤有機化合物が、以下の一般式
【化3】

[式中、
各位置にあるR13、R14、R15、R16は独立して、水素、C1-12アルキル、C6-12アリール、C7-12アラルキル、C7-12アルカリールであり、ここでR13とR14、又はR13とR15が、環状残基をともに形成することができ(ただし、最大4つの残基R16が水素と異なる)、
nは1、2,又は3である]
のうち1つを有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記オキサザボロリジン化合物が、
【化4】

から成る群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記スピロボレート化合物が
【化5】

から成る群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記促進剤化合物の量が、アミンボラン、スルフィドボラン、又はエーテルボランに対して0.01〜100mol%である、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
エステル、アミド、ニトリル、酸、ケトン、イミン、又はこれらの混合物からなる群から選択される有機基材を加速還元するための組成物であって、少なくとも1つのアミンボラン錯体、スルフィドボラン錯体、又はエーテルボラン錯体をボラン供給源として含み、かつ化合物構造中にルイス酸部位とルイス塩基部位の両方(当該化合物のルイス酸部位は、基材のカルボニル基、又はニトリル基、又はイミノ基と配位結合することができ、そして前記ルイス塩基部位は、ボランと配位結合することができる)を含有する、少なくとも1つの促進剤有機化合物を含む、組成物。
【請求項15】
請求項10で定義された促進剤有機化合物。
【請求項16】
請求項12で定義された促進剤有機化合物。

【公表番号】特表2010−539219(P2010−539219A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525345(P2010−525345)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062432
【国際公開番号】WO2009/037307
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】