説明

ボルテゾミブと上皮増殖因子受容体キナーゼ阻害剤による併用療法

本発明は、腫瘍又は腫瘍転移物を処置することを対象とする医薬を製造するための方法であって、治療上有効量のEGFRキナーゼ阻害剤及びボルテゾミブが、追加の薬剤又は処置無しに、例えば他の抗癌薬又は放射線治療無しに使用されることを特徴とする、方法を提供する。本発明はまた、EGFRキナーゼ阻害剤とボルテゾミブの組み合わせを、医薬として許容される担体と組み合わせて含んで成る医薬組成物を包含する。本発明の実施に使用されうるEGFRキナーゼ阻害剤の好ましい例は、化合物エルロチニブHCl(タルセバ(登録商標)としても知られている)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌を処置するための組成物及び方法に関する。特に、本発明は、ボルテゾミブ及び上皮増殖因子受容体(EGFR)キナーゼ阻害剤を含んで成る医薬を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、無秩序な成長、分化の喪失、及び、局所組織に侵入し、かつ、転移する能力によって特徴づけられる広範囲の様々な細胞悪性腫瘍に対する総称である。これらの新生物悪性腫瘍は様々な程度の罹患度で体内の全ての組織及び器官を冒す。
【0003】
多数の治療剤が、様々なタイプの癌を処置するためにこの20〜30年の間にわたって開発されている。最も一般的に使用されているタイプの抗癌剤には、DNAアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、葉酸アンタゴニスト及び5−フルオロウラシル、ピリミジン系アンタゴニスト)、微小管破壊剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル)、DNAインターカレーター(例えば、ドキソルビシン、ダウノマイシン、シスプラチン)及びホルモン治療剤(例えば、タモキシフェン、フルタミド)が含まれる。
【0004】
国立癌研究所によると、肺癌は米国における単独で最大の癌死の原因であり、そして当該国での癌死のほぼ30%を占める。国際保健機関によると、世界中で120万超の肺癌及び気管支癌の症例が毎年存在しており、毎年約110万人が死に至っている。NSCLCは肺癌の最も一般的な形態であり、全症例のほぼ80%を占める。肺癌を処置する選択肢は、手術、放射線治療、及び化学療法であり、これらは癌の形態及び病期に依存して、単独又は組み合わせで行われる。進行したNSCLCの場合、活性であることが証明されている物質には、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、トポテカン、イリノテカン、ビノレルビン、ゲムシタビン(例えば、ジェムザール(登録商標))、及びEGFRキナーゼであるゲフィニチブ及びエルロチニブが含まれる。エルロチニブHCl(OSI−774又はタルセバ(登録商標)としても知られている)はEGFRのチロシンキナーゼ活性を阻害し、そしてアポトーシス及び細胞周期停止を誘導する(Moyer, J.D., et al. (1997) Cancer Res. 57:4838-4848; Norman P. (2001) Curr. Opin. Investig. Drugs 2:298-304)。シスプラチン含有及びカルボプラチン含有の併用化学療法は、単一の薬剤による化学療法で達成されるもの以上に高い客観的奏功率を生み出すことが証明されている(Weick, J.K., et al. (1991) J. Clin. Oncol. 9(7): 1157-1162)。パクリタキセルは、ステージIVの患者において、21%〜24%の範囲の奏功率で単剤活性を有することが報告されている(Murphy W.K., et al. (1993) J. Natl. Cancer Inst. 85(5):384-388)。パクリタキセルの併用は、比較的高い奏功率、有意な1年の生存、及び肺癌の症候の軽減、を示している(Johnson D.H., et al. (1996) J. Clin. Oncol. 14(7):2054-2060)。パクリタキセルとカルボプラチンによる治療では、奏功率は27%〜53%の範囲内にあり、同時に1年生存率は32%〜54%である。しかしながら、かかる処置の有効性は、特定のものでない治療法が現時点で標準的な治療法としてみなされうるというものである。
【0005】
上皮増殖因子受容体(EGFR)キナーゼ又はそのリガンド(TGF−α)の過剰発現が、乳癌、肺癌、結腸直腸癌及び頭部頸部癌をはじめとする多くの癌としばしば関連づけられ(Salomon D.S., et al. (1995) Crit. Rev. Oncol. Hematol. 19:183-232; Wells, A. (2000) Signal, 1:4-11)、また、これらの腫瘍の悪性成長の一因であると考えられる。EGFR遺伝子における特定の欠失変異もまた、細胞の腫瘍形成性を増大させることが見出されている(Halatsch, M-E. et al. (2000) J. Neurosurg. 92:297-305; Archer, G.E. et al. (1999) Clin. Cancer Res. 5:2646-2652)。EGFRにより刺激されるシグナル伝達経路の活性化は、潜在的には癌促進性である多数のプロセス(例えば、増殖、血管形成、細胞の運動性及び侵入、低下したアポトーシス、ならびに、薬物抵抗性の誘導)を促進させる。EGFRのキナーゼ活性を直接に阻害する化合物の、抗腫瘍剤としての使用のための開発は、EGFRの活性化を阻止することによりEGFRキナーゼ活性を低下させる抗体と同様に、精力的な研究活動の分野である(de Bono J.S. and Rowinsky, E.K. (2002) Trends in MoI. Medicine 8:S19-S26; Dancey, J. and Sausville, E.A. (2003) Nature Rev. Drug Discovery 2:92-313)。いくつかの研究では、EGFRキナーゼ阻害剤のいくつかが、ある種の他の抗癌剤又は抗癌処置あるいは化学療法剤又は化学療法処置との組合せで使用されたときに腫瘍細胞又は新生物の殺傷を改善し得ることが明らかにされているか、又は、開示されている(例えば、Raben, D. et al. (2002) Semin. Oncol. 29:37-46; Herbst, R.S. et al. (2001) Expert Opin. Biol. Ther. 1:719-732; Magne, N et al. (2003) Clin. Can. Res. 9:4735-4732; Magne, N. et al. (2002) British Journal of Cancer 86:819-827; Torrance, CJ. et al. (2000) Nature Med. 6:1024-1028; Gupta, R.A. and DuBois, R.N. (2000) Nature Med. 6:974-975; Tortora, et al. (2003) Clin. Cancer Res. 9:1566-1572; Solomon, B. et al (2003) Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 55:713-723; Krishnan, S. et al. (2003) Frontiers in Bioscience 8, el-13; Huang, S et al. (1999) Cancer Res. 59:1935-1940; Contessa, J. N. et al. (1999) Clin. Cancer Res. 5:405-411; Li, M. et al. Clin. (2002) Cancer Res. 8:3570-3578; Ciardiello, F. et al. (2003) Clin. Cancer Res. 9:1546-1556; Ciardiello, F. et al. (2000) Clin. Cancer Res. 6:3739-3747; Grunwald, V. and Hidalgo, M. (2003) J. Nat. Cancer Inst. 95:851-867; Seymour L. (2003) Current Opin. Investig. Drugs 4(6):658-666; Khalil, M.Y. et al. (2003) Expert Rev. Anticancer Ther.3:367- 380; Bulgaru, A.M. et al. (2003) Expert Rev. Anticancer Ther.3:269-279; Dancey, J. and Sausville, E.A. (2003) Nature Rev. Drug Discovery 2:92-313; Kim, E.S. et al. (2001) Current Opinion Oncol. 13:506-513; Arteaga, CL. and Johnson, D.H. (2001) Current Opinion Oncol. 13:491-498; Ciardiello, F. et al. (2000) Clin. Cancer Res. 6:2053-2063; 特許公報番号: US 2003/0108545; US 2002/0076408; 及びUS 2003/0157104; 並びに国際特許出願国際公開番号: WO 99/60023; WO 01/12227; WO 02/055106; WO 03/088971; WO 01/34574; WO 01/76586; WO 02/05791; 及びWO 02/089842).。
【0006】
肺腫瘍細胞及び他の腫瘍細胞に対して顕著な細胞毒性を有する別の新規な化合物として、ボルテゾミブがある(Adams, J. et al. (2003) Drug Discovery Today 8(7):307-315; Lenz, HJ. (2003) Cancer Treat. Rev. 29(Suppl.l):41-48)。ボルテゾミブ(ベルケード(登録商標)又はPS−341としても知られている)は、近年FDAに難治性多発性骨髄腫の処置について承認された小分子プロテアソーム阻害剤である。ボルテゾミブは、NSCLC細胞系において活性を有することが報告されており、これは濃度及び時間依存的なG2/M細胞周期停止を誘導することがわかっている(Ling, Y-H. et al. (2003) Clin. Cancer Res. 9(3): 1145-1154)。これは、重大な細胞制御分子(p53、p21)の安定化、カスパーゼ経路の活性化、そして最終的にはアポトーシスを伴う。In vitroでの活性がNSCLC異種移植において、ヒトNSCLC異種移植モデル同様に観察されており、そして臨床活性はフェーズI及びIIの試験において難治性NSCLCを有する患者において観察されている(Mack, P.C. et al (2003) Lung Cancer 41(Suppl.l):S89-S96)。ボルテゾミブ単独とボルテゾミブと標準的なドセタキセルの併用とをNSCLCにおける二次治療として比較した、無作為化したフェーズIIIは現在進行中である。
【0007】
抗新生物薬物は理想的には癌細胞を選択的に殺し、一方で、非悪性細胞に対するその毒性と比較して広い治療指数を有する。抗新生物薬物はまた、薬物に対する長期間の暴露の後でさえ、悪性細胞に対するその有効性を保持する。残念なことに、現在の化学療法剤はどれも、そのような理想的なプロフィルを有していない。代わりに、ほとんどが非常に狭い治療指数を有する。さらに、わずかに亜致死的な濃度の化学療法剤にさらされた癌性細胞は、非常に多くの場合、そのような薬剤に対する抵抗性を発達させ、また、かなり多くの場合、複数の他の抗新生物剤に対する交差抵抗性を同様に発達させる。
【0008】
従って、より有効な処置が新生物及び他の増殖性障害のために求められている。既存の薬物の治療有効性を高めるための方策には、それらを投与するためのスケジュールにおける変化、及び、同様に、他の抗癌剤又は生化学的調節剤との組合せでのそれらの使用が含まれている。併用療法が、それぞれの薬剤の単独での治療的に適切な用量の使用と比較して、より大きな有効性及び低下した副作用をもたらし得る方法として周知である、場合によっては、薬物の併用の有効性は相加的であるが(組合せの有効性がそれぞれの薬物の単独での効果の和にほぼ等しい)、他の場合には、その有効性は相乗的である(組合せの有効性がそれぞれの薬物の単独での効果の和よりも大きい)。
【0009】
しかしながら、NSCLC及び他の癌のための改善された処置の必要性は依然として大きい。本発明は、有効性のために要求される個々の成分についての投薬量を減少させ、それにより、それぞれの薬剤に関連した副作用を低下させ、その一方で、治療価値を維持又は増大させる抗癌併用治療を提供する。本明細書に記載の発明は、新規な複合薬、ならびに、NSCLC及び他の癌の処置において複合薬を使用するための方法を提供する。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、腫瘍又は腫瘍転移物を処置することを目的とする医薬を製造するための方法であって、治療上油香料のEGFRキナーゼ阻害剤とボルテゾミブの組み合わせが使用されることを特徴とする、方法を提供する。好ましくは、治療上有効量のEGFRキナーゼ阻害剤とボルテゾミブの組合せが、追加の薬剤又は処置、例えば、他の抗癌薬物又は放射線治療などとともに、追加の薬剤又は処置を伴うことなく、同時又は連続での患者への投与のために意図される。
【0011】
本発明はまた、EGFRキナーゼ阻害剤及びボルテゾミブを、医薬として許容される担体と組み合わせて含んで成る医薬組成物を包含する。
【0012】
本発明を実施する際において使用することができるEGFRキナーゼ阻害剤の好ましい一例が化合物エルロチニブHCl(これはまたタルセバ(登録商標)として知られている)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
動物の「癌」の用語は、癌を引き起こす細胞に典型的な特徴(例えば、調節されない増殖、不死性、転移の潜在的能力、迅速な成長速度及び増殖速度、ならびに、いくつかの特徴的な形態学的特徴など)を有する細胞の存在を示す。多くの場合、癌細胞は腫瘍の形態であり、しかし、そのような細胞は動物の体内に単独で存在し得るか、又は、白血病細胞などの独立した細胞として血流において循環し得る。
【0014】
本明細書中で使用する「異常な細胞成長」は、別途示されない限り、正常な調節機構とは無関係である細胞成長(例えば、接触阻害の喪失)を示す。これには、下記の細胞の異常な成長が含まれる。(1)変異したチロシンキナーゼの発現又は受容体チロシンキナーゼの過剰発現により増殖する腫瘍細胞(腫瘍);(2)正常でないチロシンキナーゼ活性化が存在する他の増殖性疾患の良性細胞及び悪性細胞;(4)受容体チロシンキナーゼにより増殖する任意の腫瘍;(5)正常でないセリン/トレオニンキナーゼ活性化により増殖する任意の腫瘍;及び(6)正常でないセリン/トレオニンキナーゼ活性化が存在する他の増殖性疾患の良性細胞及び悪性細胞。
【0015】
本明細書中で使用する用語「処置する」は、別途示されない限り、部分的又は完全のいずれかであっても、患者において、腫瘍、腫瘍転移物、又は、他の癌原因細胞もしくは新生物細胞の成長を逆戻りさせること、その成長を緩和すること、その成長の進行を阻害すること、又は、その成長を妨げることを意味する。本明細書中で使用する用語「処置」は、別途示されない限り、処置するという行為を示す。
【0016】
表現「処置する方法」又はその同等表現は、例えば、癌に対して適用されるとき、動物における癌細胞の数を減少又は削減するために、あるいは、癌の症状を緩和するために設計される行動手順又は行動方針を示す。癌又は他の増殖性障害を「処置する方法」は、癌細胞又は他の障害が実際に消失すること、細胞の数又は障害が実際に縮小すること、あるいは、癌又は他の障害の症状が実際に緩和されることを必ずしも意味しない。多くの場合、癌を処置する方法は、成功の可能性が低い場合でさえ行われ、しかし、これは、動物の病歴及び推定余命を考えた場合、それにもかかわらず、全体として有益な行動方針であると見なされる。
【0017】
用語「治療上有効な薬剤」は、研究者、獣医、医師又は他の臨床医によって求められている、組織、系、動物又はヒトの生物学的応答又は医学的応答を誘発する組成物を意味する。
【0018】
用語「薬物の製造方法」は、本明細書で規定する兆候に使用するための、特に腫瘍、腫瘍転移物又は通常の癌に使用するための薬物の製造に関する。当該用語は、規定した兆候における、いわゆる「スイスタイプ」のクレームフォーマットに関する。
【0019】
用語「治療上有効量」又は用語「有効量」は、研究者、獣医、医師又は他の臨床医によって求められている、組織、系、動物又はヒトの生物学的応答又は医学的応答を誘発する、問題としている化合物又は組合せの量を意味する。
【0020】
本明細書中で使用する用語「EGFRキナーゼ阻害剤」は、この分野において現時点で知られているか、又は、将来において同定される任意のEGFRキナーゼ阻害剤を示し、患者に投与されたとき、患者のEGF受容体の活性化に関連する生物学的活性の阻害、ならびに、そうでない場合には、EGFRがその天然のリガンドに結合することから生じる下流側の生物学的作用のいずれかの阻害をもたらす任意の化学的実体を包含する。そのようなEGFRキナーゼ阻害剤には、EGFRの活性化、又は、患者の癌を処置することに適切な、EGFRの活性化の下流側の生物学的作用のいずれかを阻止することができる任意の薬剤が含まれる。そのような阻害剤は、受容体の細胞内ドメインに直接に結合し、そのキナーゼ活性を阻害することによって作用することができる。あるいは、そのような阻害剤は、EGFR受容体のリガンド結合部位又はその一部分を占拠し、それにより、受容体がその天然のリガンドに接近できなくし、その結果、その正常な生物学的活性を妨げるか、又は、低下させることによって作用することができる。あるいは、そのような阻害剤は、EGFRポリペプチドの二量体化、又は、EGFRポリペプチドと他のタンパク質との相互作用を調節することによって作用することができ、あるいは、EGFRのユビキチン化及び食作用分解を高めることができる。EGFRキナーゼ阻害剤には、低分子量の阻害剤、抗体又は抗体フラグメント、アンチセンスコンストラクト、阻害的低分子RNA(すなわち、dsRNAによるRNA干渉;RNAi)、及び、リボザイムが含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、EGFRキナーゼ阻害剤は、ヒトEGFRに特異的に結合する小さい有機分子又は抗体である。
【0021】
本明細書中で使用する用語「EGFRキナーゼ阻害剤」は、この分野において現時点で知られているか、又は、将来において同定される任意のEGFRキナーゼ阻害剤を示し、患者に投与されたとき、患者のEGF受容体の活性化に関連する生物学的活性の阻害、ならびに、そうでない場合には、EGFRがその天然のリガンドに結合することから生じる下流側の生物学的作用のいずれかの阻害をもたらす任意の化学的実体を包含する。そのようなEGFRキナーゼ阻害剤には、EGFRの活性化、又は、患者の癌を処置することに適切な、EGFRの活性化の下流側の生物学的作用のいずれかを阻止することができる任意の薬剤が含まれる。そのような阻害剤は、受容体の細胞内ドメインに直接に結合し、そのキナーゼ活性を阻害することによって作用することができる。あるいは、そのような阻害剤は、EGFR受容体のリガンド結合部位又はその一部分を占拠し、それにより、受容体がその天然のリガンドに接近できなくし、その結果、その正常な生物学的活性を妨げるか、又は、低下させることによって作用することができる。あるいは、そのような阻害剤は、EGFRポリペプチドの二量体化、又は、EGFRポリペプチドと他のタンパク質との相互作用を調節することによって作用することができ、あるいは、EGFRのユビキチン化及び食作用分解を高めることができる。EGFRキナーゼ阻害剤には、低分子量の阻害剤、抗体又は抗体フラグメント、アンチセンスコンストラクト、阻害的低分子RNA(すなわち、dsRNAによるRNA干渉;RNAi)、及び、リボザイムが含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、EGFRキナーゼ阻害剤は、ヒトEGFRに特異的に結合する小さい有機分子又は抗体である。
【0022】
EGFRキナーゼ阻害剤には、例えば、キナゾリン系EGFRキナーゼ阻害剤、ピリドピリミジン系EGFRキナーゼ阻害剤、ピリミドピリミジン系EGFRキナーゼ阻害剤、ピロロピリミジン系EGFRキナーゼ阻害剤、ピラゾロピリミジン系EGFRキナーゼ阻害剤、フェニルアミノピリミジン系EGFRキナーゼ阻害剤、オキシインドール系EGFRキナーゼ阻害剤、インドロカルバゾール系EGFRキナーゼ阻害剤、フタラジン系EGFRキナーゼ阻害剤、イソフラボン系EGFRキナーゼ阻害剤、キナロン系EGFRキナーゼ阻害剤及びチルホスチン系EGFRキナーゼ阻害剤(例えば、下記の特許公報に記載されているEGFRキナーゼ阻害剤など)、ならびに、前記EGFRキナーゼ阻害剤の全ての医薬として許容される塩及び溶媒和物が含まれる。国際特許出願公開WO96/33980、同WO96/30347、同WO97/30034、同WO97/30044、同WO97/38994、同WO97/49688、同WO98/02434、同WO97/38983、同WO95/19774、同WO95/19970、同WO97/13771、同WO98/02437、同WO98/02438、同WO97/32881、同WO98/33798、同WO97/32880、同WO97/3288、同WO97/02266、同WO97/27199、同WO98/07726、同WO97/34895、同WO96/31510、同WO98/14449、同WO98/14450、同WO98/14451、同WO95/09847、同WO97/19065、同WO98/17662、同WO99/35146、同WO99/35132、同WO99/07701及び同WO92/20642;欧州特許出願公開EP520722、同EP566226、同EP787772、同EP837063及び同EP682027;米国特許第5,747,498号、同第5,789,427号、同第5,650,415号及び同第5,656,643;及びドイツ国特許出願公開DE19629652。低分子量のEGFRキナーゼ阻害剤のさらなる非限定的な例には、Traxler,P.、1998、Exp.Opin.Ther.Patents、8(12):1599〜1625に記載されているEGFRキナーゼ阻害剤のいずれかが含まれる。
【0023】
本明細書で使用する場合、「EGFRキナーゼ阻害剤」は、好ましくは式1の化合物:
【化1】

[ここで、mは1,2,又は3であり;
各R1は独立して水素、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、ヒドロキシアミノ、カルボキシ、(C1−C4)アルコキシカルボニル、ニトロ、グアニジノ、ウレイド、カルバモイル、シアノ、トリフルオロメチル、(R62N−カルボニル、及びフェニル−W−アルキル(ここで、Wは単結合、O,S及びNHから選択される)から選択され:
あるいは各R1は独立してシアノ−(C1−C4)−アルキル及びR9から選択され、ここでR9はR5、R5O、(R62N、R7C(=O)、R5ONH、A及びR5Yから成る群から選択され;R5は(C1−C4)アルキルであり;R6は水素又はR5であり、ここで、R5は同一であるか又は異なっており;R7はR5、R5O又は(R62Nであり;Aはピペリジノ−、モルホリノ、ピロリジノ及び4−R6−ピペラジン−1−イル、イミダゾール−1−イル、4−ピリドン−1−イル、カルボキシ−(C1−C4)−アルキル、フェノキシ、フェニル、フェニルスルファニル、(C2−C4)−アルケニル、(R62N−カルボニル−(C1−C4)−アルキルであり;そしてYはS、SO、SO2から選択され;(R62Nにおけるアルキル部分は任意にハロ又はR9で置換されており、ここで、R9は上文で定義した通りであり、そしてR5及びR5Oにおけるアルキル部分はハロ、R6O又はR9で任意に置換されており、ここで、R9及びR6は上文で定義した通りであり、そして結果として生じる基はハロ又はR9で任意に置換され、但し、窒素、酸素又は硫黄原子及び別のヘテロ原子は同一の炭素原子に結合することはできず、そして3未満の「R9」単位がR1を含んでもよく;
あるいは各R1はR5−スルホニルアミノ、フタルイミド−(C1−C4)−アルキルスルホニルアミノ、ベンズアミド、ベンゼンスルホニルアミノ、3−フェニルウレイド、2−オキソピロリジン−1−イル、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル、及びR10−(C2−C4)−アルカノイルアミノから独立して選択され、ここで、R10はハロ、R6O、(C2−C4)−アルカノイルオキシ、R7C(=O)、及び(R62Nから選択され;そしてR1における前記ベンズアミド又はベンゼンスルホニルアミノ又はフェニル又はフェノキシ又はアニリノ又はフェニルスルファニル置換基は1又は2つのハロゲン、(C1−C4)アルキル、シアノ、メタンスルホニル又は(C1−C4)−アルコキシ置換基を任意に有することがあり;
あるいは任意の2つのR1が、それと結合する炭素と一緒に、酸素、硫黄又は窒素から選択される少なくとも1又は2つのヘテロ原子を含んで成る5〜8員環を含んで成り;そしてアルキル基及びアルコキシ又はアルキルアミノ基のアルキル部分は直鎖であってもよく、あるいは、少なくとも3つの炭素原子を含んで成る場合には、分枝状又は環状であってもよく;
2は水素及び任意に置換された(C1−C6)アルキルから選択され;
nは1又は2であり、そして各R3は水素、(C1−C6)アルキル、アミノ、ハロ、ヒドロキシから独立して選択され;
4はアジド又はR11−エチニルであり、R11は水素、任意に置換された(C1−C6)アルキルから選択され、ここで、置換基は水素、アミノ、ヒドロキシ、R5O、R5NH及び(R52Nから選択される]
である。
【0024】
更に具体的には、本発明におけるEGFRキナーゼ阻害剤は、m、n、R1及びR3は上文で定義した通りであり、そしてR2は水素であり、そしてR4はR11−エチニルであり、ここでR11は水素、任意に置換された(C1−C6)アルキルから選択され、ここで、置換基は水素、アミノ、ヒドロキシ、R5O、R5NH及び(R52Nから選択され、あるいはR4はアジドである、式1の化合物に関する。
【0025】
本発明におけるEGFRキナーゼ阻害剤はまた、nが上文で定義した通りであり、そしてmが1又は2であり、各R1が水素、ヒドロキシ、アミノ、ヒドロキシアミノ、カルボキシ、ニトロ、カルバモイル、ウレイド;R6O、(C2−C4)−アルカノイルオキシ、HOC(=O)、A及び(R62N、R6OKO、R6OKNH、CN及びフェニル;ハロ、(C2−C4)−アルカノイルオキシ、R6O、R7C(=O)、(R62N、A、R6OKO、R6OKNH、C65Y、CNで任意に置換されたR5NH;
(R62NC(=O)、R5ONH、R5S、(C1−C4)アルキルスルホニルアミノ、フタルイミド−(C1−C4)−アルキルスルホニルアミノ、3−フェニルウレイド、2−オキソピロリジン−1−イル、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル、ハロ−(C2−C4)−アルカノイルアミノ、ヒドロキシ−(C2−C4)アルカノイルアミノ、(C2−C4)−アルカノイルオキシ−(C2−C4)−アルカノイルアミノ、(C1−C4)−アルコキシ−(C2−C4)−アルカノイルアミノ、カルボキシ−(C2−C4)−アルカノイルアミノ、(C1−C4)−アルコキシカルバモイル−(C2−C4)−アルカノイルアミノ、カルバモイル−(C2−C4)−アルカノイルアミノ、N−(C1−C4)−アルキルカルバモイル−(C2−C4)アルカノイルアミノ、N,N−ジ−[(C1−C4)−アルキル]カルバモイル−(C2−C4)−アルカノイルアミノ、アミノ−(C2−C4)−アルカノイルアミノ、(C1−C4)−アルキル−アミノ−(C2−C4)−アルカノイルアミノ、ジ−(C1−C4)−アルキル−アミノ−(C2−C4)−アルカノイルアミノから独立して選択され、R1における前記フェニル又はフェノキシ又はアニリノ置換基は1又は2つのハロ、(C1−C4)−アルキル又は(C1−C4)−アルコキシ置換基を任意に有することもあり;あるいは任意の2つのR1が、それらが結合する炭素原子と一緒に、酸素、硫黄又は窒素から選択される少なくとも1又は2つのヘテロ原子を含む5〜8員環を含んで成り;そしてアルキル基及びアルコキシ又はアルキルアミノ基のアルキル部分は直鎖であってもよく、あるいは、少なくとも3個の炭素を含んで成る場合に、分岐状又は環状であってもよく;
各R3が、水素、メチル、エチル、アミノ、ハロ及びヒドロキシから独立して選択され;
4がR11−エチニルであり、ここで、R11は、水素である、式1の化合物に関する。
【0026】
更に具体的には、本発明におけるEGFRキナーゼ阻害剤は、各R1が、水素、ヒドロキシ、アミノ、ヒドロキシアミノ、ニトロ、カルバモイル、ウレイド;ハロ、R6O、HOC(=O)、H2NC(=O)で任意に置換されたR5;ハロ、R6O、(C2〜C4)−アルカノイルオキシ、HOC(=O)、(R62N、A、フェニルで任意に置換されたR5O;R5NH、(R52N、R5NH2、(R52NH、R5NHC(=O)、(R52NC(=O)、R5S、フェニル−(C2〜C4)−アルコキシから独立して選択され、R1の前記フェニル置換基が任意に1又は2つのハロ、R5またはR5O置換基を有してもよく;あるいは、任意の2つのR1が、それらが結合する炭素と一緒に、酸素、硫黄又は窒素から選択される少なくとも1又は2つのヘテロ原子を含んで成る5〜8員環を含んで成り;アルキル基及びアルコキシ又はアルキルアミノ基のアルキル部分が直鎖であってもよく、あるいは、少なくとも3つの炭素を含んで成る場合、分岐状又は環状であってもよい、式1の化合物に関する。
【0027】
本発明において使用することができる低分子量のEGFRキナーゼ阻害剤の具体的な好ましい例には、[6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリン−4−イル]−(3−エチニルフェニル)アミン(これはまた、OSI−774、エルロチニブ又はタルセバ(登録商標)(エルロチニブHCl)として知られている;OSI Pharmaceuticals/Genentech/Roche)(米国特許第5,747,498号;国際特許出願公開WO01/34574、及び、Moyer,J.D.ら(1997)、Cancer Res.、57:4838〜4848);CI−1033(これは以前にはPD183805として知られていた;Pfizer)(Sherwoodら、1999、Proc.Am.Assoc.Cancer Res.、40:723);PD−158780(Pfizer);AG−1478(University of California);CGP−59326(Novartis);PKI−166(Novartis);EKB−569(Wyeth);GW−2016(これはまた、GW−572016又はラパチニブジトシラートとして知られている;GSK);及びゲフィニチブ(これはまた、ZD1839又はイレッサ(登録商標)として知られている;Astrazeneca)(Woodburnら、1997、Proc.Am.Assoc.Cancer Res.、38:633)が含まれる。本発明に従って使用することができる特に好ましい低分子量のEGFRキナーゼ阻害剤は、[6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリン−4−イル]−(3−エチニルフェニル)アミン(すなわち、エルロチニブ)、その塩酸塩(すなわち、エルロチニブHCl、タルセバ(登録商標))又は他の塩形態(例えば、エルロチニブメシラート)である。
【0028】
最も好ましくは、本発明におけるEGFRキナーゼ阻害剤は、化合物エルロチニブHCl(タルセバ(登録商標)としても知られている)に関する。
【0029】
抗体型EGFRキナーゼ阻害剤には、その天然のリガンドによるEGFRの活性化を部分的又は完全に阻止することができる任意の抗EGFR抗体又は抗体フラグメントが含まれる。抗体型EGFRキナーゼ阻害剤の非限定的な例には、Modjtahedi,H.ら、1993、Br.J.Cancer、67:247〜253;Teramoto,T.ら、1996、Cancer、77:639〜645;Goldsteinら、1995、Clin.Cancer Res.、1:1311〜1318;Huang,S.M.ら、1999、Cancer Res.、15:59(8):1935〜40;及び、Yang,X.ら、1999、Cancer Res.、59:1236〜1243に記載されている抗体型EGFRキナーゼ阻害剤が含まれる。従って、EGFRキナーゼ阻害剤はモノクローナル抗体のMab E7.6.3(Yang,X.D.ら(1999)、Cancer Res.、59:1236〜43)又はMab C225(ATCCアクセション番号HB−8508)、あるいは、その結合特異性を有する抗体又は抗体フラグメントが含まれる。好適なモノクローナル抗体EGFRキナーゼ阻害剤には、IMC−C225(これはまた、セツキシマブ又はErbitux(登録商標)として知られている;Imclone Systems)、ABX−EGF(Abgenix)、EMD72000(Merck KgaA、Darmstadt)、RH3(York Medical Bioscience Inc.)及びMDX−447(Medarex/Merck KgaA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
さらなる抗体型EGFRキナーゼ阻害剤を、適切な抗原又はエピトープを、例えば、特に、ブタ、ウシ、ウマ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ及びマウスから選択される宿主動物に投与することによって知られている方法に従って産生することができる。当業界で知られている様々なアジュバントを、抗体産生を高めるために使用することができる。
【0031】
本発明を実施することにおいて有用な抗体はポリクローナルが可能であるが、モノクローナル抗体が好ましい。EGFRに対するモノクローナル抗体を、連続培養細胞系による抗体分子の産生を規定する任意の技術を使用して調製及び単離することができる。産生及び単離のための技術には、Kohler及びMilstein(Nature、1975、256:495〜497)によって最初に記載されたハイブリドーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosborら、1983、Immunology Today、4:72;Coteら、1983、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、80:2026〜2030);及びEBVハイブリドーマ技術(Coleら、1985、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss,Inc.、77頁〜96頁)が含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
あるいは、単鎖抗体の作製について記載される技術(例えば、米国特許第4,946,778号を参照のこと)を、抗EGFR単鎖抗体を作製するために適合化することができる。本発明を実施することにおいて有用な抗体型EGFRキナーゼ阻害剤にはまた、抗EGFR抗体フラグメント、例えば、限定しないが、インタクトな抗体分子のペプシン消化により生成することができるF(ab’)2フラグメント、及びF(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することにより生成することができるFabフラグメントが含まれることがある。あるいは、Fab発現ライブラリー及び/又はscFv発現ライブラリーを、EGFRに対する所望の特異性を有するフラグメントの迅速な同定を可能にするために構築することができる(例えば、Huseら、1989、Science、246:1275〜1281を参照のこと)。
【0033】
モノクローナル抗体及び抗体フラグメントの作製及び単離のための様々な技術が当業界では広く知られており、Harlow及びLane(1988)、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory)に、また、J.W.Goding(1986)、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(Academic Press、London)に記載されている。ヒト化された抗EGFR抗体及び抗体フラグメントもまた、知られている様々な技術に従って、例えば、Vaughn,T.J.ら、1998、Nature Biotech.、16:535〜539、及び、その引用参考文献に従って調製することができ、そのような抗体又はそのフラグメントもまた、本発明を実施することにおいて有用である。
【0034】
あるいは、本発明において使用されるEGFRキナーゼ阻害剤はアンチセンスオリゴヌクレオチドコンストラクトに基づくことができる。アンチセンスRNA分子及びアンチセンスDNA分子をはじめとするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、EGFRのmRNAに結合し、従って、タンパク質の翻訳を妨げるか、又は、mRNAの分解を増大させることによってEGFRのmRNAの翻訳を直接的に阻止するように作用し、従って、細胞におけるEGFRキナーゼタンパク質のレベル、従って、活性を低下させる。例えば、少なくとも約15個の塩基を有し、かつ、EGFRをコードするmRNA転写物配列の特異な領域に対して相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを、例えば、従来のホスホジエステル技術によって合成することができ、そのようなアンチセンスオリゴヌクレオチドを、例えば、静脈内注射又は静脈内注入によって投与することができる。その配列が知られている遺伝子の遺伝子発現を特異的に阻害するためにアンチセンス技術を使用するための様々な方法が当業界では周知である(例えば、米国特許第6,566,135号;同第6,566,131号;同第6,365,354号;同第6,410,323号;同第6,107,091号;同第6,046,321号;及び同第5,981,732号を参照のこと)。
【0035】
阻害的低分子RNA(siRNA)もまた、本発明において使用されるEGFRキナーゼ阻害剤として機能し得る。EGFR遺伝子の発現を、腫瘍、対象又は細胞を小さい二本鎖RNA(dsRNA)、あるいは、小さい二本鎖RNAの産生を生じさせるベクター又はコンストラクトと接触させ、その結果、EGFRの発現が特異的に阻害されるようにすることによって低下させることができる(すなわち、RNA干渉又はRNAi)。適切なdsRNA又はdsRNAコードベクターを選択するための様々な方法が、その配列が知られている遺伝子について当業界では周知である(例えば、Tuschi,T.ら(1999)、Genes Dev.、13(24):3191〜3197;Elbashir,S.M.ら(2001)、Nature、411:494〜498;Hannon,G.J.(2002)、Nature、418:244〜251;McManus,M.T.及びSharp,P.A.(2002)、Nature、Reviews Genetics、3:737〜747;Bremmelkamp,T.R.ら(2002)、Science、296:550〜553;米国特許第6,573,099号及び同第6,506,559号;ならびに、国際特許出願公開WO01/36646、同WO99/32619及び同WO01/68836を参照のこと)。
【0036】
リボザイムもまた、本発明において使用されるEGFRキナーゼ阻害剤として機能し得る。リボザイムは、RNAの特異的な切断を触媒することができる酵素的なRNA分子である。リボザイムの作用機構には、相補的な標的RNAに対するリボザイム分子の配列特異的なハイブリダイゼーション、それに続くエンドヌクレアーゼ的切断が伴う。従って、EGFRのmRNA配列のエンドヌクレアーゼ的切断を特異的かつ効率的に触媒する操作されたハンマーヘッド型モチーフのリボザイム分子が本発明の範囲において有用である。可能性のある任意のRNA標的の内部における特異的なリボザイム切断部位が、GUA、GUU及びGUCの配列を典型的には含むリボザイム切断部位について標的分子を調べることによって最初に同定される。同定されると、切断部位を含有する標的遺伝子の領域に対応する約15リボヌクレオチド〜20リボヌクレオチドの間の短いRNA配列を、そのオリゴヌクレオチド配列を不適にし得る予測される構造的特徴(例えば、二次構造など)について評価することができる。候補となる標的の好適性はまた、例えば、リボヌクレアーゼ保護アッセイを使用して、相補的なオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションに対するその利用性を調べることによって評価することができる。
【0037】
EGFRキナーゼ阻害剤として有用なアンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイムはともに、既知の方法によって調製することができる。これらには、化学合成のための技術、例えば、固相ホスホラミダイト化学合成などによる技術が含まれる。あるいは、アンチセンスRNA分子を、RNA分子をコードするDNA配列のインビトロ転写又はインビボ転写によって生じさせることができる。そのようなDNA配列は、好適なRNAポリメラーゼプロモーター、例えば、T7ポリメラーゼプロモーター又はSP6ポリメラーゼプロモーターなどを含む広範囲の様々なベクターに組み込むことができる。本発明のオリゴヌクレオチドに対する様々な改変を、細胞内の安定性及び半減期を増大させる手段として導入することができる。可能な改変には、分子の5’末端及び/又は3’末端へのリボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドの隣接配列の付加、あるいは、オリゴヌクレオチド骨格内における、ホスホジエステル連結ではなく、ホスホロチオエート連結又は2’−O−メチル連結の使用が含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書中下記の実施例において示されるデータは、ボルテゾミブとEGFRキナーゼ阻害剤の同時投与が進行癌、例えば、NSCLC、結腸直腸癌又は膵臓癌の処置のために効果的であることを明らかにしている。従って、本発明は、患者の腫瘍又は腫瘍転移物を処置することを対象とする医薬品を製造するための方法であって、治療上有効量のEGFRキナーゼ阻害剤とボルテゾミブの組合せを使用することを特徴とする、方法を提供する。
【0039】
好ましくは、そのような組合せは患者への同時投与又は連続投与が意図される。この方法において、患者に存在している癌は、以下本明細書で言及したもの、例えばNSCLC、結腸直腸癌又は膵臓癌のいずれでもよい。好ましい態様において、前記化合物が連続投与される場合、ボルテゾミブはEGFRキナーゼ阻害剤の前に投与される。1つの態様において、処置される腫瘍又は腫瘍転移物は結腸直腸の腫瘍又は腫瘍転移物である。
【0040】
本発明の方法のいずれにおいても、薬剤の同時投与は、薬剤を同時期に別々に投与するか、あるいは固定の組み合わせとして一緒に投与することで実施されうる。また、本発明の方法のいずれにおいても、薬剤の連続投与はどのような順序でもよい。
【0041】
好ましくは、更に、1又は複数の他の細胞毒性剤又は化学療法剤又は抗癌剤、あるいは、そのような薬剤の効果を高める化合物が使用される。
【0042】
本発明に関連して、さらなる他の細胞毒性剤又は化学療法剤又は抗癌剤、あるいは、そのような薬剤の効果を高める化合物には、下記のものが含まれる。例えば、アルキル化剤、又は、アルキル化作用を有する薬剤、例えば、シクロホスファミド(CTX;例えば、シトキサン(登録商標))、クロラムブシル(CHL;例えば、ロイケラン(登録商標))、シスプラチン(CisP;例えば、プラチノール(登録商標))、ブスルファン(例えば、ミレラン(登録商標))、メルファラン、カルムスチン(BCNU)、ストレプトゾトシン、トリエチレンメラミン(TEM)、マイトマイシンCなど;代謝拮抗剤、例えば、メトトレキサート(MTX)、エトポシド(VP16;例えば、ベペシド(登録商標))、6−メルカプトプリン(6MP)、6−チオグアニン(6TG)、シタラビン(Ara−C)、5−フルオロウラシル(5−FU)、カペシタビン(例えば、ゼローダ(登録商標))、ダカルバジン(DTIC)など;抗生物質、例えば、アクチノマイシンD、ドキソルビシン(DXR;例えば、アドリアマイシン(登録商標))、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンなど;アルカロイド、例えば、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン(VCR)、ビンブラスチンなど)など;及び、他の抗腫瘍剤、例えば、パクリタキセル(例えば、タキソール(登録商標))及びパクリタキセル誘導体、細胞増殖抑制剤、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン(DEX;例えば、デカドロン(登録商標))など)及びコルチコステロイド(例えば、プレドニゾンなど)、ヌクレオシド酵素阻害剤(ヒドロキシウレアなど)、アミノ酸枯渇化酵素(例えば、アスパラギナーゼなど)、ロイコボリン及び他の葉酸誘導体、ならびに、類似する多様な抗腫瘍剤。下記の薬剤もまた、追加の薬剤として使用することができる。アルニホスチン(例えば、エチオール(登録商標))、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、ロルヌスチン(CCNU)、ドキソルビシンリポ(例えば、ドキシル(登録商標))、ゲムシタビン(例えば、ジェムザール(登録商標))、ダウノルビシンリポ(例えば、ダウノキソム(登録商標))、プロカルバジン、マイトマイシン、ドセタキセル(例えば、タキソテレ(登録商標))、アルデスロイキン、カルボプラチン、オキサリプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT11(イリノテカン)、10−ヒドロキシ−7−エチル−カンプトテシン(SN38)、フロクスウリジン、フルダラビン、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、インターフェロン−α、インターフェロン−β、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペグアスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル。
【0043】
本発明は更に、腫瘍又は腫瘍転移物を処置するための薬剤を製造するための方法であって、治療上有効量のEGFRキナーゼ及びボルテゾミブの組み合わせが使用され、そして患者に対しての同時又は連続投与が意図されることを特徴とし、更に、1又は複数の抗ホルモン剤が使用される、方法を提供する。本明細書で使用する場合、用語「抗ホルモン剤」には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する天然又は合成の有機化合物又はペプチド化合物が含まれる。
【0044】
抗ホルモン剤には、下記のものが含まれる。例えば、ステロイド受容体アンタゴニスト、抗エストロゲン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害の4(5)−イミダゾール系化合物、他のアロマターゼ阻害剤、42−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン及びトレミフェン(例えば、フェアストン(登録商標))など;抗アンドロゲン剤、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリンなど;及び、上記のいずれかの医薬として許容される塩、酸又は誘導体;糖タンパク質ホルモン(例えば、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)ならびに黄体形成ホルモン(LH)及びLHRH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)など)のアゴニスト及び/又はアンタゴニスト;LHRHアゴニストの酢酸ゴセレリン(これはゾラデックス(登録商標)(AstraZeneca)として市販されている);LHRHアンタゴニストのD−アラニンアミドN−アセチル−3−(2−ナフタレニル)−D−アラニル−4−クロロ−D−フェニルアラニル−3−(3−ピリジニル)−D−アラニル−L−セリル−N6−(3−ピリジニルカルボニル)−L−リシル−N6−(3−ピリジニルカルボニル)−D−リシル−L−ロイシル−N6−(1−メチルエチル)−L−リシル−L−プロリン(例えば、Antide(登録商標)、Ares−Serono);LHRHアンタゴニストの酢酸ガニレリキシ;ステロイド系抗アンドロゲン剤の酢酸シプロテロン(CPA)及び酢酸メゲストロール(これはメゲース(登録商標)(Bristol−Myers Oncology)から市販されている);非ステロイド系抗アンドロゲン剤のフルタミド(2−メチル−N−[4,20−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニルプロパンアミド)(これはEulexin(登録商標)(Schering Corp.)から市販されている);非ステロイド系抗アンドロゲン剤のニルタミド(5,5−ジメチル−3−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル−4’−ニトロフェニル)−4,4−ジメチルイミダゾリジンジオン);ならびに、他の非許容性受容体に対するアンタゴニスト、例えば、RAR、RXR、TR及びVDRなどに対するアンタゴニストなど。
【0045】
化学療法における上記の細胞毒性剤及び他の抗癌剤の使用は一般に、癌治療分野では十分に特徴づけられており、本明細書におけるそれらの使用は、何らかの調節を伴って、寛容性及び有効性をモニターするための、また、投与経路及び投薬量を管理するための同じ考慮の下で行われる。例えば、細胞毒性剤の実際の投薬量は、組織培養方法を使用することによって明らかにされる患者の培養細胞の応答に依存して変化し得る。一般には、投薬量は、さらなる他の薬剤の非存在下で使用される量と比較して少なくされる。
【0046】
有効な細胞毒性剤の典型的な投薬量は、製造者によって勧められる範囲が可能であり、また、インビトロ応答又は動物モデルでの応答によって示される場合には、約1桁小さい濃度又は量にまで下げることができる。従って、実際の投薬量は、医師の判断、患者の症状、及び、初代培養の悪性細胞又は組織培養された組織サンプルのインビトロ応答性に基づく治療方法の有効性、あるいは、適切な動物モデルにおいて観測される応答に依存する。
【0047】
本発明に関連して、上記の追加の他の細胞毒性剤又は化学療法剤又は抗癌剤の中では、ゲムシタビン、シスプラチン及びカルボプラチンから成る群から選択される化合物のいずれか1つ又はそれらの組み合わせが好ましい。
【0048】
本発明は更に、患者の腫瘍又は腫瘍転移物を処置するための薬剤を製造するための方法であって、治療上有効量のEGFRキナーゼ及びボルテゾミブの組み合わせが使用され、そして患者に対しての同時又は連続投与が意図されることを特徴とし、更に、1又は複数の抗血管形成剤が使用される、方法を提供する。
【0049】
抗血管形成剤には、下記のものが含まれる。例えば、VEGFR阻害剤、例えば、SU−5416及びSU−6668(Sugen Inc.、South San Francisco、Calif.、米国)、又は、例えば、国際特許出願公開WO99/24440、同WO99/62890、同WO95/21613、同WO99/61422、同WO98/50356、同WO99/10349、同WO97/32856、同WO97/22596、同WO98/54093、同WO98/02438、同WO99/16755及び同WO98/02437、ならびに、米国特許第5,883,113号、同第5,886,020号、同第5,792,783号、同第5,834,504号及び同第6,235,764号に記載されているようなVEGFR阻害剤など;VEGF阻害剤、例えば、IM862(Cytran Inc.、Kirkland、Wash.、米国)など;アンギオザイム(これは、Ribozyme(Boulder、Colo.)から得られる合成リボザイムである);及び、VEGFに対する抗体、例えば、ベバシズマブ(例えば、Avastin(登録商標)、Genentech、South San Francisco、CA)(これは、VEGFに対する組換えヒト化抗体である);インテグリン受容体アンタゴニスト及びインテグリンアンタゴニスト、例えば、avβ3、avβ5及びavβ6のインテグリンなど、ならびに、そのサブタイプに対するもの、例えば、シレンギチブ(EMD121974)、又は、抗インテグリン抗体、例えば、avβ3特異的ヒト化抗体(例えば、Vitaxin(登録商標))など;様々な因子、例えば、IFN−α(米国特許第41530,901号、同第4,503,035号及び同第5,231,176号)など;アンギオスタチン及びプラスミノーゲンフラグメント(例えば、クリングル1〜4、クリングル5、クリングル1〜3(O’Reilly,M.S.ら(1994)、Cell、79:315〜328;Caoら(1996)、J.Biol.Chem.、271:29461〜29467;Caoら(1997)、J.Biol.Chem.、272:22924〜22928);エンドスタチン(O’Reilly,M.S.ら(1997)、Cell、88:277;及び国際特許出願公開WO97/15666);トロンボスポンジン(TSP−1;Frazier(1991)、Curr.Opin.Cell Biol.、3:792);血小板因子4(PF4);プラスミノーゲン活性化因子/ウロキナーゼ阻害剤;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;へパリナーゼ;フマギリンアナログ、例えば、TNP−4701など;スラミン及びスラミンアナログ;血管形成阻害性ステロイド;bFGFアンタゴニスト;flk−1及びflt−1アンタゴニスト;抗血管形成剤、例えば、MMP−2(マトリックスメタロプロテイナーゼ2)阻害剤及びMMP−9(マトリックスメタロプロテイナーゼ9)阻害剤。有用なマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤の様々な例が、国際特許出願公開WO96/33172、同WO96/27583、同WO98/07697、同WO98/03516、同WO98/34918、同WO98/34915、同WO98/33768、同WO98/30566、同WO90/05719、同WO99/52910、同WO99/52889、同WO99/29667及び同WO99/07675、欧州特許出願公開第818,442号、同第780,386号、同第1,004,578号、同第606,046号及び同第931,788号、英国特許出願公開第9912961号、ならびに、米国特許第5,863,949号及び同第5,861,510号に記載されている。好ましいMMP−2阻害剤及びMMP−9阻害剤は、MMP−1を阻害する活性をほとんど有しないか、又は、全く有しない阻害剤である。より好ましいものは、それ以外のマトリックスメタロプロテイナーゼ(すなわち、MMP−1、MMP−3、MMP−4、MMP−5、MMP−6、MMP−7、MMP−8、MMP−10、MMP−11、MMP−12及びMMP−13)と比較してMMP−2及び/又はMMP−9を選択的に阻害する阻害剤である。
【0050】
本発明は更に、患者の腫瘍又は腫瘍転移物を処置するための薬剤を製造するための方法であって、治療上有効量のEGFRキナーゼ及びボルテゾミブの組み合わせが使用され、そして患者に対しての同時又は連続投与が意図されることを特徴とし、更に、1又は複数の腫瘍細胞プロアポトーシス又はアポトーシス刺激剤が使用される、方法を提供する。
【0051】
本発明は更に、患者の腫瘍又は腫瘍転移物を処置するための薬剤を製造するための方法であって、治療上有効量のEGFRキナーゼ及びボルテゾミブの組み合わせが使用され、そして患者に対しての同時又は連続投与が意図されることを特徴とし、更に、1又は複数のシグナル伝達阻害剤が使用される、方法を提供する。
【0052】
シグナル伝達阻害剤には、下記のものが含まれる。例えば、erbB2受容体阻害剤、例えば、有機分子、又は、erbB2受容体に結合する抗体、例えば、トラスツズマブ(例えば、ハーセプチン(登録商標))など;他のプロテインチロシンキナーゼの阻害剤、例えば、イミチニブ(例えば、グリベック(登録商標));ras阻害剤;raf阻害剤;MEK阻害剤;mTOR阻害剤;サイクリン依存性キナーゼの阻害剤;プロテインキナーゼC阻害剤;及びPDK−1阻害剤(そのような阻害剤のいくつかの例、及び、癌を処置するための臨床試験でのそれらの使用の記載については、Dancey.J.及びSausville,E.A.(2003)、Nature Rev.Drug Discovery、2:92〜313を参照のこと)。
【0053】
erbB2受容体阻害剤には、下記のものが含まれる。例えば、erbB2受容体阻害剤、例えば、GW−282974(Glaxo Wellcome plc)など、モノクローナル抗体、例えば、AR−209(Aronex Pharmaceuticals Inc.、The Woodlands、Tex.、米国)など、及び、erbB2阻害剤、例えば、国際特許出願公開WO98/02434、同WO99/35146、同WO99/35132、同WO98/02437、同WO97/13760及び同WO95/19970、ならびに、米国特許第5,587,458号、同第5,877,305号、同第6,465,449号及び同第6,541,481号に記載されているerbB2阻害剤など。
【0054】
本発明は更に、患者の腫瘍又は腫瘍転移物を処置するための薬剤を製造するための方法であって、治療上有効量のEGFRキナーゼ及びボルテゾミブの組み合わせが使用され、そして患者に対しての同時又は連続投与が意図されることを特徴とし、更に、1又は複数の抗HER2抗体又はその免疫療法上活性なフラグメントが使用される、方法を提供する。
【0055】
本発明は更に、患者の腫瘍又は腫瘍転移物を処置するための薬剤を製造するための方法であって、治療上有効量のEGFRキナーゼ及びボルテゾミブの組み合わせが使用され、そして患者に対しての同時又は連続投与が意図されることを特徴とし、更に、1又は複数の抗増殖剤が使用される、方法を提供する。
【0056】
追加の抗増殖剤には、下記のものが含まれる。例えば、酵素ファルネシルプロテイントランスフェラーゼの阻害剤、及び、受容体チロシンキナーゼPDGFRの阻害剤、これらには、米国特許第6,080,769号、同第6,194,438号、同第6,258,824号、同第6,586,447号、同第6,071,935号、同第6,495,564号、同第6,150,377号、同第6,596,735号及び同第6,479,513号、ならびに、国際特許出願公開WO01/40217に開示及び特許請求される化合物が含まれる。
【0057】
本発明は更に、患者の腫瘍又は腫瘍転移物を処置するための薬剤を製造するための方法であって、治療上有効量のEGFRキナーゼ及びボルテゾミブの組み合わせが使用され、そして患者に対しての同時又は連続投与が意図されることを特徴とし、更に、1又は複数のCOXII(シクロオキシゲナーゼII)阻害剤が使用される、方法を提供する。有用なCOX−II阻害剤の例には、アレコキシブ(例えば、セレブレックス(登録商標))、バルデコキシブ及びロフェコキシブが含まれる。
【0058】
本発明は更に、患者の腫瘍又は腫瘍転移物を処置するための薬剤を製造するための方法であって、治療上有効量のEGFRキナーゼ及びボルテゾミブの組み合わせが使用され、そして患者に対しての同時又は連続投与が意図されることを特徴とし、更に、有効量の電離放射線による処置が実施され、そして/あるいは放射線医薬が使用される、方法を提供する。
【0059】
放射線源は、処置されている患者に対して外部又は内部のいずれかが可能である。線源が患者に対して外部であるとき、治療は外部ビーム放射線治療(EBRT)として知られている。放射線源が患者に対して内部であるとき、処置は近接照射療法(BT)と呼ばれる。本発明の関連で使用される放射性原子は、ラジウム、セシウム−137、イリジウム−192、アメリシウム−241、金−198、コバルト−57、銅−67、テクネチウム−99、ヨウ素−123、ヨウ素−131及びインジウム−111(これらに限定されない)を含む群から選択することができる。本発明によるEGFRキナーゼ阻害剤が抗体である場合、抗体をそのような放射性同位体で標識することもまた可能である。
【0060】
放射線治療は、切除不可能又は手術不可能な腫瘍及び腫瘍転移物を抑制するための標準的な処置である。改善された結果が、放射線治療を化学療法と組み合わせたときに認められている。放射線治療は、標的領域に送達された高線量の放射線が腫瘍及び正常な組織の両方において増殖性細胞の死を生じさせるという原理に基づいている。放射線投与様式は、放射線吸収線量(Gy)、回数及び分割化に関して一般に規定され、腫瘍学者によって慎重に規定されなければならない。患者が受ける放射線の量は様々な検討事項に依存し、しかし、2つの最も重要な事項が、身体の他の重要な構造体又は器官に対する腫瘍の存在位置、及び、腫瘍が広がっている程度である。放射線治療を受ける患者について典型的な処置経過は1週間〜6週間の期間にわたる処置スケジュールであり、この場合、10Gy〜80Gyの総線量が、約1.8Gy〜2.0Gyの1回の1日量で1週間に5日間、患者に投与される。本発明の好ましい実施形態において、ヒト患者の腫瘍が、本発明の組合せ処置と、放射線とにより処置されるとき、相乗作用が存在する。すなわち、さらなる化学療法剤又は抗癌剤を任意に用いて、放射線と組み合わせられたとき、本発明の組合せを含む薬剤による腫瘍成長の阻害が強化される。補助的な放射線治療のパラメーターが、例えば、国際特許出願公開WO99/60023に含まれる。
【0061】
本発明は更に、患者の腫瘍又は腫瘍転移物を処置するための薬剤を製造するための方法であって、治療上有効量のEGFRキナーゼ及びボルテゾミブの組み合わせが使用され、そして患者に対しての同時又は連続投与が意図されることを特徴とし、更に、抗腫瘍免疫応答を強化することができる1又は複数の薬剤が使用される、方法を提供する。
【0062】
抗腫瘍免疫応答を強化することができる薬剤には、下記のものが含まれる。例えば、CTLA4(細胞毒性リンパ球抗原4)抗体(例えば、MDX−CTLA4)、及び、CTLA4を阻止することができる他の薬剤。本発明において使用することができる具体的なCTLA4抗体には、米国特許第6,682,736号に記載されているCTLA4抗体が含まれる。
【0063】
本発明は更に、患者の腫瘍又は腫瘍転移物を処置するための薬剤を製造するための方法であって、治療上有効量のEGFRキナーゼ及びボルテゾミブの組み合わせが使用され、そして、相加的又は超相加的又は相乗的な抗腫瘍効果をもたらすために有効であり、且つ腫瘍の成長を阻害するのに有効な量での、患者に対しての同時又は連続投与が意図されることを特徴とする、方法を提供する。
【0064】
本発明は更に、癌を処置するための方法であって、そのような処置を必要とする対象に、(i)第一有効量のEGFRキナーゼ阻害剤又はその医薬として許容される塩と、(ii)第二有効量のボルテゾミブとを投与することを含んで成る方法を提供する。この方法において、癌は本明細書の下文で言及するもの、例えば肺癌、及びNSCLCのいずれでもよい。
【0065】
本発明はまた、癌を処置するための方法であって、そのような処置を必要とする対象に、(i)治療量以下の第1の量のEGFRキナーゼ阻害剤のエルロチニブ又はその医薬として許容される塩と、(ii)治療量以下の第2の量のボルテゾミブとを投与することを含む方法を提供する。この方法において、癌は本明細書の下文で言及するもの、例えば肺癌、及びNSCLCのいずれでもよい。
【0066】
前述の方法において、第1の量と第2の量の投与順序は同時又は連続でもよく、すなわち、ボルテゾミブはEGFRキナーゼ阻害剤の前、後、又はそれと同時に投与することができる。好ましい態様において、ボルテゾミブはEGFRキナーゼ阻害剤の前に投与される。
【0067】
更に、本発明は、EGFRキナーゼ阻害剤及びボルテゾミブを医薬として許容される担体中に含んで成る医薬組成物を提供する。
【0068】
本発明は更に、(i)第一有効量のEGFRキナーゼ阻害剤又はその医薬として許容される塩と、(ii)第二有効量のボルテゾミブとを含む、特に癌において使用される医薬組成物を提供する。そのような組成物は、医薬として許容される担体及び/又は賦形剤を任意に含む。
【0069】
本発明はさらに、(i)治療量以下の第1の量のEGFRキナーゼ阻害剤のエルロチニブ又はその医薬として許容される塩と、(ii)治療量以下の第2の量のボルテゾミブとを含む、特に癌において使用される医薬組成物を提供する。そのような組成物は、医薬として許容される担体及び/又は賦形剤を任意に含む。
【0070】
好ましくは、EGFRキナーゼ阻害剤はエルロチニブである。
【0071】
本明細書中で使用する用語「患者」は、好ましくは、何らかの目的のためにEGFRキナーゼ阻害剤による処置を必要とするヒト、より好ましくは、癌、あるいは、前癌性の症状又は病変を処置ためのそのような処置を必要とするヒトを示す。しかしながら、用語「患者」はまた、EGFRキナーゼ阻害剤による処置を必要とするヒト以外の動物、好ましくは、哺乳動物(例えば、特に、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ及びヒト以外の霊長類)を言及することがある。
【0072】
好ましい態様において、患者は癌、又は前癌性の症状若しくは病変の処置が必要とされるヒトである。癌は、好ましくは、EGFRキナーゼ阻害剤の投与によって、部分的又は完全のいずれかであっても、処置可能な任意の癌である。そのような癌は、例えば、肺癌、非小細胞肺(NSCL)癌、細気管支肺胞腺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部又は頸部の癌、皮膚メラノーマ又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、結腸癌、乳癌、子宮癌、ファロピウス管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、ホジキン病、食道の癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、前立腺癌、膀胱の癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂の癌腫、中皮腫、肝細胞癌、胆管癌、慢性白血病又は急性白血病、リンパ性リンパ腫、中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、脳幹神経膠腫、多形性神経膠芽細胞腫、星状膠細胞腫、シュワン細胞腫、神経線維腫、脳室上衣細胞腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、扁平上皮癌、下垂体腺腫、ならびに、上記癌のいずれかの不応性型、あるいは、上記癌の1又は複数の組合せであり得る。前癌性の症状又は病変には、例えば、口内白斑症、紫外線角化症(日光角化症)、結腸又は直腸の前癌性ポリープ、胃上皮異形成、腺腫様異形成、遺伝性非ポリープ性癌症候群(HNPCC)、バレット食道、膀胱異形成、及び、子宮頸部の前癌性症状が含まれる。好ましくは、癌は結腸癌であり、最も好ましくは結腸直腸癌である。また、好ましくは、癌は肺癌であり、最も好ましくは非小細胞肺癌(NSCL)である。また、好ましくは、癌は膵臓癌である。
【0073】
本発明の目的のために、EGFRキナーゼ阻害剤とのボルテゾミブ「の同時投与」、及び、ボルテゾミブをEGFRキナーゼ阻害剤とともに「同時投与する」(両成分は本明細書中以降、「2つの活性な薬剤」と称する)は、これら2つの活性な薬剤が、併用治療の利益を得るために設計された適切な服用様式の一部として投与される、別個又は一緒のいずれかであっても、これら2つの活性な薬剤の任意の投与を示す。従って、これら2つの活性な薬剤は、同じ医薬組成物の一部として、又は、別個の医薬組成物として、そのいずれかで投与することができる。ボルテゾミブを、EGFRキナーゼ阻害剤の投与の前に、又は、EGFRキナーゼ阻害剤の投与と同時に、又は、EGFRキナーゼ阻害剤の投与に続いて、又は、その何らかの組合せで投与することができる。EGFRキナーゼ阻害剤が、反復した間隔で、例えば、標準的な処置経過の期間中に患者に投与される場合、ボルテゾミブを、EGFRキナーゼ阻害剤のそれぞれの投与の前に、又は、EGFRキナーゼ阻害剤のそれぞれの投与と同時に、又は、EGFRキナーゼ阻害剤のそれぞれの投与に続いて、又は、その何らかの組合せで、又は、EGFRキナーゼ阻害剤処置に関連した異なる間隔で、あるいは、1回だけの服用で、EGFRキナーゼ阻害剤による処置経過の前に、又は、EGFRキナーゼ阻害剤による処置経過の期間中の任意のときに、又は、EGFRキナーゼ阻害剤による処置経過に続いて投与することができる。
【0074】
EGFRキナーゼ阻害剤は、典型的には、当業界で知られているように、また、例えば、国際特許出願公開WO01/34574に開示されるように、患者が処置されている癌の最も有効な処置を(有効性及び安全性の両方の観点から)提供する服用様式で患者に投与される。本発明の処置方法を行うことにおいて、EGFRキナーゼ阻害剤を、処置されている癌のタイプ、使用されているEGFRキナーゼ阻害剤のタイプ(例えば、小分子、抗体、RNAiコンストラクト又はアンチセンスコンストラクト)、及び、例えば、発表された臨床研究の結果に基づくような処方医の医学的判断に依存して、当業界で知られている任意の有効な様式で、例えば、経口経路、局所的経路、静脈内経路、腹腔内経路、筋肉内経路、関節内径路、皮下経路、鼻腔内径路、眼内経路、膣経路、直腸経路又は皮内経路などによって投与することができる。
【0075】
投与されたEGFRキナーゼ阻害剤の量及びEGFRキナーゼ阻害剤投与の時期は、処置されている患者のタイプ(生物種、性別、年齢、体重など)及び症状、処置されている疾患又は症状の重篤度、ならびに、投与経路に依存する。例えば、小分子のEGFRキナーゼ阻害剤は、単回服用又は分割服用で、あるいは、連続注入によって、1日又は1週間あたり0.001mg/kg体重〜100mg/kg体重の範囲の用量で患者に投与することができる(例えば、国際特許出願公開WO01/34574を参照のこと)。具体的には、エルロチニブHClを、単回服用又は分割服用で、あるいは、連続注入によって、5mg/日〜200mg/日又は100mg/週〜1600mg/週の範囲の用量で患者に投与することができる。好ましい用量は150mg/日である。抗体型のEGFRキナーゼ阻害剤、あるいは、アンチセンスコンストラクト、RNAiコンストラクト又はリボザイムコンストラクトを、単回服用又は分割服用で、あるいは、連続注入によって、1日又は1週間あたり0.1mg/kg体重〜100mg/kg体重の範囲の用量で患者に投与することができる。任意に、上記範囲の下限よりも低い投薬量レベルが非常に十分である場合があり、その一方で、他の場合には、さらにより大きい用量が、1日を通した投与のためにいくつかの小さい用量に最初に分割されるとすれば、そのようなより大きい用量が、何らかの有害な副作用を生じさせることなく用いられる場合がある。
【0076】
EGFRキナーゼ阻害剤及びボルテゾミブは、同じ経路又は異なる経路によって別個又は一緒のいずれかで投与することができ、また、広範囲の様々な異なる剤形で投与することができる。例えば、EGFRキナーゼ阻害剤は、好ましくは、経口投与又は非経口投与により投与され、これに対して、ボルテゾミブは、好ましくは、非経口投与により投与される。EGFRキナーゼ阻害剤がエルロチニブHCl(タルセバ(登録商標))である場合、経口投与が好ましい。
【0077】
EGFRキナーゼ阻害剤は、錠剤、カプセル、薬用キャンディー、トローチ剤、ハードキャンディー、粉末剤、スプレー剤、クリーム、膏薬、坐薬、ゼリー、ゲル、ペースト、ローション、軟膏、エリキシル剤及びシロップなどの形態で、様々な医薬として許容される不活性な担体とともに投与することができる。そのような剤形の投与は単回服用又は多回服用で行うことができる。担体には、固体の希釈剤又は充填剤、無菌の水性媒体、及び、様々な非毒性の有機溶媒などが含まれる。経口用の医薬組成物は好適には、甘味剤及び/又は香料を加えることができる。
【0078】
EGFRキナーゼ阻害剤及びボルテゾミブは、スプレー剤、クリーム、膏薬、坐薬、ゼリー、ゲル、ペースト、ローション及び軟膏などの形態で、様々な医薬として許容される不活性な担体と一緒に組み合わせることができる。そのような剤形の投与は単回服用又は多回服用で行うことができる。担体には、固体の希釈剤又は充填剤、無菌の水性媒体、及び、様々な非毒性の有機溶媒などが含まれる。
【0079】
タンパク質性のEGFRキナーゼ阻害剤を含む製剤は全て、阻害剤の変性及び/又は分解ならびに生物学的活性の喪失を避けるように選択されなければならない。
【0080】
EGFRキナーゼ阻害剤を含む医薬組成物を調製する様々な方法が当業界では知られており、例えば、国際特許出願公開WO01/34574に記載されている。ボルテゾミブを含む医薬組成物を調製する様々な方法もまた、当業界では周知である。本発明の教示に照らして、EGFRキナーゼ阻害剤及びボルテゾミブの両方を含む医薬組成物を調製する方法が、上記の引用された刊行物から、また、他の知られている参考文献から、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company、Easton、Pa.、第18版(1990))などから明らかである。
【0081】
EGFRキナーゼ阻害剤の経口投与のために、活性な薬剤の一方又は両方を含有する錠剤が、様々な崩壊剤(例えば、デンプン(及び、好ましくは、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン又はタピオカデンプン)、アルギン酸及びある種の複合ケイ酸塩)と一緒に、また、ポリビニルピロリドン、スクロース、ゼラチン及びアラビアゴムのような造粒結合剤と一緒に、様々な賦形剤(例えば、微結晶セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム及びグリシンなど)のいずれかとともに組み合わされる。加えて、滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルクなど)が、多くの場合、錠剤化目的のために非常に有用である。類似するタイプの固体組成物もまた、ゼラチンカプセルにおける充填剤として用いることができ、この関連での好ましい物質にはまた、ラクトース又は乳糖、ならびに、高分子量のポリエチレングリコールが含まれる。水性の分散物及び/又はエリキシル剤が経口投与のために所望されるときには、EGFRキナーゼ阻害剤は、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン及びその様々な同様な組合せのような希釈剤と一緒に、様々な甘味剤又は矯味矯臭剤、着色物質又は色素と組み合わせることができ、また、そうすることが所望されるならば、同様に、乳化剤及び/又は懸濁化剤とも組み合わせることができる。
【0082】
活性な薬剤のいずれか又は両方の非経口投与のために、ゴマ油又はピーナッツ油のいずれかでの溶液、あるいは、水性プロピレングリコールでの溶液を、活性な薬剤又はその対応する水溶性塩を含む無菌の水溶液と同様に用いることができる。そのような無菌の水溶液は、好ましくは、好適に緩衝化され、また、好ましくは、例えば、十分な生理的食塩水又はグルコースを用いて等張性にされる。これらの特定の水溶液は、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射及び腹腔内注射の目的のために特に好適である。油性溶液は、関節内注射、筋肉内注射及び皮下注射の目的のために好適である。無菌条件下でのこれらの全ての溶液の調製は、当業者に周知の標準的な製薬技術によって容易に達成される。タンパク質性のEGFRキナーゼ阻害剤を投与するために選択された非経口用製剤はどれも、阻害剤の変性及び生物学的活性の喪失を避けるように選択されなければならない。
【0083】
加えて、活性な薬剤のいずれか又は両方を、標準的な薬学実務に従って、例えば、クリーム、ローション、ゼリー、ゲル、ペースト、軟膏及び膏薬などによって局所的に投与することが可能である。例えば、EGFRキナーゼ阻害剤又はボルテゾミブのいずれかを約0.1%(w/v)〜約5%(w/v)の濃度で含む局所用製剤を調製することができる。
【0084】
獣医学的目的のために、活性な薬剤は、上記で記載された形態のいずれかを使用して、また、上記で記載された経路のいずれかによって、別個又は一緒に動物に投与することができる。好ましい実施形態において、EGFRキナーゼ阻害剤が、カプセル、ボーラス剤、錠剤、液体ドレンチ剤の形態で、又は、注射によって、又は、インプラントとして投与される。代替として、EGFRキナーゼ阻害剤を動物飼料とともに投与することができ、この目的のために、高濃度の飼料添加物又はプリミックスを通常の動物飼料のための調製することができる。ボルテゾミブは、好ましくは、液体ドレンチ剤の形態で、又は、注射によって、又は、インプラントとして投与される。そのような製剤は標準的な獣医学実務に従って従来の様式で調製される。
【0085】
本発明はさらに、EGFRキナーゼ阻害剤及びボルテゾミブの両方を含んで成る単一の容器を含んで成るキットを提供する。本発明はさらに、EGFRキナーゼ阻害剤を含んで成る第1の容器と、ボルテゾミブを含んで成る第2の容器とを含んで成るキットを提供する。好ましい実施形態において、キットの容器はさらに、医薬として許容される担体を含んでもよい。キットはさらに、別個のさらなる容器に好ましくは貯蔵される無菌の希釈剤を含んでもよい。キットはまた、癌を処置するための方法としての組み合わされた処置の使用を導く印刷された説明書を含む包装添付物をさらに含んでもよい。
【0086】
本発明はまた、医薬として許容される担体との組合せで、EGFRキナーゼ阻害剤及びボルテゾミブの組合せから構成される医薬組成物を包含する。
【0087】
好ましくは、組成物は、医薬として許容される担体と、毒性のない治療上有効量のEGFRキナーゼ阻害剤化合物及びボルテゾミブの組合せ(その各成分の医薬として許容される塩を含む)とから構成される。
【0088】
更に、この好ましい実施形態において、本発明は、新生物細胞、良性腫瘍もしくは悪性腫瘍、又は、転移物の成長阻害がその使用によりもたらされる、疾患を処置するための医薬組成物であって、医薬として許容される担体と、毒性のない治療上有効量のEGFRキナーゼ阻害剤化合物及びボルテゾミブの組合せ(その各成分の医薬として許容される塩を含む)とを含む医薬組成物を包含する。
【0089】
用語「医薬として許容される塩」は、医薬として許容される非毒性の塩基又は酸から調製される塩を示す。本発明の化合物が酸性であるとき、その対応する塩を、無機塩基及び有機塩基を含む医薬として許容される非毒性の塩基から都合良く調製することができる。そのような無機塩基に由来する塩には、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩(第二銅塩及び第一銅塩)、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、マンガン塩(第二マンガン塩及び第一マンガン塩)、カリウム塩、ナトリウム塩及び亜鉛塩などが含まれる。特に好ましい塩が、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩及びナトリウム塩である。医薬として許容される有機の非毒性の塩基に由来する塩には、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミン、ならびに、環状アミン及び置換アミン(例えば、天然に存在する置換アミン及び合成された置換アミンなど)の塩が含まれる。塩が形成され得る他の医薬として許容される有機の非毒性の塩基には、イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N’,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン及びトロメタミンなどが含まれる。
【0090】
本発明の化合物が塩基性であるとき、その対応する塩を、無機酸及び有機酸を含む医薬として許容される非毒性の酸から都合良く調製することができる。そのような酸には、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸及びp−トルエンスルホン酸などが含まれる。特に好ましい酸はクエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸及び酒石酸である。
【0091】
本発明の医薬組成物は、EGFRキナーゼ阻害剤化合物及びボルテゾミブの組合せ(その各成分の医薬として許容される塩を含む)を有効成分として含み、かつ、医薬として許容される担体、及び、任意に、他の治療的成分又は補助成分を含む。他の治療的薬剤には、上文で列挙されたように、そのような細胞毒性剤、化学療法剤もしくは抗癌剤、又は、そのような薬剤の効果を高める薬剤が含まれ得る。組成物には、経口投与、直腸投与、局所的投与及び非経口投与(皮下投与、筋肉内投与及び静脈内投与を含む)のために好適な組成物が含まれる。だが、任意の所与の場合における最も好適な経路は、特定の宿主、ならびに、有効成分が投与されている症状の性質及び重篤度に依存する。医薬組成物は単位剤形で都合良く提供することができ、また、製薬分野で周知の様々な方法のいずれかによって調製することができる。
【0092】
実際、本発明のEGFRキナーゼ阻害剤化合物とボルテゾミブの組合せ(その各成分の医薬として許容される塩を含む)によって表される化合物は、従来の薬学的配合技術に従って医薬用担体との十分な混合で有効成分として組み合わせることができる。担体は、投与(例えば、経口又は非経口(静脈内を含む))のために所望される調製形態に依存して広範囲の様々な形態を取ることができる。従って、本発明の医薬組成物は、所定量の有効成分をそれぞれが含有する経口投与のために好適な個別的な単位物(例えば、カプセル、カシェ剤又は錠剤など)として提供することができる。さらに、組成物は、粉末剤として、顆粒として、溶液として、水性液体における懸濁物として、非水性液体として、水中油型エマルションとして、又は、油中水型エマルションとして提供することができる。上記で示された一般的な剤形に加えて、EGFRキナーゼ阻害剤化合物及びボルテゾミブの組合せ(その各成分の医薬として許容される塩を含む)はまた、制御された放出手段及び/又は送達デバイスによって投与することができる。組合せ組成物は様々な製薬方法のいずれかによって調製することができる。一般に、そのような方法は、有効成分を、1又は複数の必要な成分を構成する担体とともに一緒にする工程を含む。一般には、組成物は、有効成分を液体担体又は細かく分割された固体担体又は両方と均一かつ十分に混合することによって調製される。製造物は、その後、所望される提供物に都合良く形状化することができる。
【0093】
従って、本発明の医薬組成物は、医薬として許容される担体と、EGFRキナーゼ阻害剤化合物及びボルテゾミブの組合せ(その各成分の医薬として許容される塩を含む)とを含むことができる。EGFRキナーゼ阻害剤化合物及びボルテゾミブの組合せ(その各成分の医薬として許容される塩を含む)はまた、1又は複数の他の治療活性な化合物との組合せで医薬組成物に含めることができる。他の治療活性な化合物には、上記で列挙されたように、そのような細胞毒性剤、化学療法剤もしくは抗癌剤、又は、そのような薬剤の効果を高める薬剤が含まれ得る。
【0094】
従って、本発明の1つの実施形態において、医薬組成物は、EGFRキナーゼ阻害剤化合物及びボルテゾミブを抗癌剤との組合せで含むことができ、この場合、前記抗癌剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、微小管阻害剤、ポドフィロトキシン、抗生物質、ニトロソウレア剤、ホルモン治療剤、キナーゼ阻害剤、腫瘍細胞アポトーシスの活性化剤、及び、抗血管形成剤からなる群から選択される薬剤である。
【0095】
用いられる医薬用担体は、例えば、固体、液体又は気体が可能である。固体担体の例には、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸が含まれる。液体担体の例には、糖シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油及び水が含まれる。気体担体の例には、二酸化炭素及び窒素が含まれる。
【0096】
経口用剤形のための組成物を調製することにおいて、任意の好都合な医薬用媒体を用いることができる。例えば、水、グリコール、油、アルコール、矯味矯臭剤、保存剤及び着色剤などを、経口用の液体調製物(例えば、懸濁物、エリキシル剤及び溶液など)を形成するために使用することができ、一方で、デンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、滑剤、結合剤及び崩壊剤などの担体を、経口用の固体調製物(例えば、粉末剤、カプセル及び錠剤など)を形成させるために使用することができる。それらの容易な投与のために、錠剤及びカプセルが、好ましい経口用の投薬単位物であり、それにより、固体の医薬用担体が用いられる。任意に、錠剤は標準的な水性技術又は非水性技術によって被覆することができる。
【0097】
本発明の組成物を含有する錠剤は、任意に1又は複数の補助的成分又は補助成分を用いて、圧縮又は成型によって調製することができる。圧縮された錠剤を、任意に、結合剤、滑剤、不活性な希釈剤、表面活性剤又は分散化剤と混合された、自由流動性の形態(例えば、粉末又は顆粒)での有効成分を好適な装置で圧縮することによって調製することができる。成型された錠剤を、不活性な液体希釈剤により湿らされた粉末化されている化合物の混合物を好適な装置で成型することによって作製することができる。それぞれの錠剤は好ましくは約0.05mg〜約5gの有効成分を含有し、それぞれのカシェ剤又はカプセルは好ましくは約0.05mg〜約5gの有効成分を含有する。
【0098】
例えば、ヒトへの経口投与のために意図される製剤は、約0.5mg〜約5gの活性な薬剤を、組成物全体の約5パーセント〜約95パーセントで変化し得る適切かつ好都合な量の担体物質と配合されて含有することができる。単位剤形は一般に、約1mg〜約2gの間の有効成分(典型的には、25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mg又は1000mg)を含有する。
【0099】
非経口投与のために好適な本発明の医薬組成物は、活性な化合物の水における溶液又は懸濁物として調製することができる。好適な界面活性剤を含めることができる(例えば、ヒドロキシプロピルセルロースなど)。分散物もまた、グリセロール、液状ポリエチレングリコール、及び、その油中混合物において調製することができる。さらに、保存剤を、微生物の有害な成長を防止するために含めることができる。
【0100】
注射の用途に好適な本発明の医薬組成物には、無菌の水溶液又は水性分散物が含まれる。さらに、組成物は、そのような無菌の注射可能な溶液又は分散物を即座に調製するための無菌粉末の形態にすることができる。全ての場合において、最終的な注射可能な形態は無菌でなければならず、かつ、容易なシリンジ注入性のために効果的に流動性でなければならない。医薬組成物は製造及び貯蔵の条件の下で安定でなければならず、従って、好ましくは、微生物(例えば、細菌及び菌類など)の混入作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液状ポリエチレングリコール)、植物油及びそれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒体であり得る。
【0101】
本発明の医薬組成物は局所的使用のために好適な形態(例えば、エアロゾル、クリーム、軟膏、ローション又は散布用粉末など)にすることができる。さらに、組成物は、経皮デバイスでの使用のために好適な形態にすることができる。これらの製剤は、本発明のEGFRキナーゼ阻害剤化合物とボルテゾミブの組合せ(その各成分の医薬として許容される塩を含む)を利用して、従来の加工方法によって調製することができる。一例として、クリーム又は軟膏が、親水性物質及び水を約5wt%〜約10wt%の化合物と一緒に混合して、所望する粘稠度を有するクリーム又は軟膏を作製することによって調製される。
【0102】
本発明の医薬組成物は直腸投与のために好適な形態にすることができ、この場合、担体は固体である。混合物が単位用量の坐薬を形成することが好ましい。好適な担体には、当業界で一般に使用されているカカオ脂及び他の物質が含まれる。坐薬は、最初に組成物を軟化又は融解させた担体と混合し、その後、鋳型において冷却及び形状化することによって都合良く形成させることができる。
【0103】
上記の担体成分に加えて、上記で記載された医薬製剤は、適する場合には、1又は複数のさらなる担体成分(例えば、希釈剤、緩衝剤、矯味矯臭剤、結合剤、表面活性剤、増粘剤、滑剤及び保存剤(酸化防止剤を含む)など)を含むことができる。さらに、他の補助剤を、製剤を意図された被投与者の血液と等張性にするために含ませることができる。EGFRキナーゼ阻害剤化合物及びボルテゾミブの組合せ(その各成分の医薬として許容される塩を含む)を含有する組成物はまた、粉末又は液体の高濃度形態で調製することができる。
【0104】
本発明の組合せの化合物についての投薬量レベルはおおまかには、本明細書に記載の通りであるか、又は、これらの化合物について当業界で記載される通りである。しかしながら、任意の特定の患者についての具体的な用量レベルは、年齢、体重、全身的な健康状態、性別、食事、投与回数、投与経路、排出速度、複合薬、及び、治療を受けている特定の疾患の重篤度を含む様々な要因に依存することが理解される。
【0105】
本発明は下記の実験の詳細からより良く理解される。しかしながら、当業者であれば、議論されている具体的な方法及び結果は、下記の請求項においてより詳しく記載されている本発明を単に例示しているに過ぎず、また、それらに限定された様式で決して考慮されるべきでないことを容易に理解するであろう。
【実施例】
【0106】
実験の詳細:
序論
エルロチニブ(erltinib)とボルテゾミブの併用の効果をin vitroでNSCLC細胞系のパネルを用いて研究した。この組み合わせの合理性は、これらの2つの薬剤がそれぞれ臨床活性を示すと同時に毒性が重複しておらず、そしてそれらは細胞周期の異なる部分で作用を有していることであった。更に、EGFRの軸の活性化は、IκBのプロテオソームによる分解(Stevenson, J.P. et al. (2004) J. Clin. Oncol. 22(14S):7145)のように、NF−κB経路を活性化することが証明されており、そして我々は、上流及び下流両方の標的を阻害することにより、細胞毒性を更に誘発することができるということを主張する。
【0107】
材料と方法
化学物質:
エルロチニブは、エルロチニブHCl(タルセバ(登録商標))としてOSIファーマシューティカルズが供給しているものであり、そして臨床用のグレードのボルテゾミブはニューヨークのMontifioreメディカルセンターの外来から購入した。両薬剤をストック溶液としてDMSOに溶解させ、そしてPBSで所望の濃度に希釈した。モノクローナル抗体はSanta Cruz Biotechnology社(Santa Cruze, CA)から購入し、そして他の化学物質はSigma Aldrich Chemical社(St. Louis, MO)から購入した。
【0108】
細胞培養及び細胞毒性アッセイ
7つの非小細胞肺癌細胞系(H322,H358,H661,H460,H522,H1299,A549)をAmerican Type Cluture Collection(Manassas, VA)から購入した。全ての細胞を10%牛胎児血清を補足したRPMI1640中で5%CO2及び95%空気の加湿した雰囲気のもと生育した。
【0109】
対数増殖期の細胞を種々の濃度のエルロチニブHCl及びボルテゾミブに72時間曝露し、そして薬物誘導型の細胞毒性を概説されているMTTアッセイによりアッセイした(Ling, Y-H et al. (1993) Cancer Res. 53(7): 1583-1589)。
【0110】
組み合わせの研究のために、細胞を、エルロチニブHCl又はボルテゾミブ単独又はそれらの所定の組み合わせに、同時又は24時間空けて連続的に曝露し、そして細胞の生存を最初の薬剤の曝露から72時間目にMTTアッセイにより評価した。
【0111】
細胞周期解析
細胞をエルロチニブHCl又はボルテゾミブのいずれかを単独又は所定の組み合わせで、同時に又は24時間空けて連続して処理した。細胞を最初の薬物曝露から48時間の時点で採集し、75%エタノールを用い−20℃で一晩固定し、そして次に室温で3時間5μg/mLのヨウ化プロピジウム及び5μg/mLのRNアーゼI(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN)と一緒にインキュベートした。細胞周期の異なるステージでの細胞の数、及びアポトーシスの細胞(sub-G1)の数をフローサイトメトリーで計測した(Epics Profile Analyzer; Coulter Co., Miami, FL)。
【0112】
ウェスタンブロット解析
細胞を培養物から擦り落とし、PBSで2回洗浄し、そして50mMのTris−HCl(pH7.5)、250mMのNaCl、1mMのEDTA、1mMのEGTA、1mMのNaF、1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド、1mMのDTT、20μg/mLのロイペプチン、20μg/mLのアプロチニン、0.1%のTriton−X−100及び1%SDSを含む60〜100μLのウェスタンブロット溶解バッファー中で15分間懸濁した。1500×gで10分間0℃で遠心した後、上清を回収し、そしてタンパク質を10%SDS−PAGE上で分離した。電気泳動後、タンパク質ブロットをニトロセルロース膜にトランスファーした。当該膜を5%脱脂粉乳粉末/TBSでブロッキングし、そして相当の一次抗体と一緒に一晩4℃でインキュベートした。TBSTで3回洗浄した後、前記膜を室温で1時間、西洋ワサビペルオキシダーゼ複合二次抗体をTBSTで希釈したもの(1:1000)と一緒にインキュベートした。検出したタンパク質シグナルをエンハンスドケミルミネセンス反応系により視覚化した(Amersham, Arlington Heights, IL)。
【0113】
統計
全ての結果は、3つの独立した実験の平均値である。当該結果は平均+/−標準時偏差として表され、そして適宜スチューデントt検定を使用して平均値を比較する。
【0114】
結果
エルロチニブとボルテゾミブに対するNSCLC細胞の感受性
7つのNSCLC細胞系に対するエルロチニブHCl及びボルテゾミブの細胞毒性を図1に示す。試験した7つのNSCLC細胞系のうちわずかに2つがエルロチニブに対し感受性があり、残りはIC50値が10倍以上高く、そして耐性がある。他方、ボルテゾミブは、より狭い範囲の活性と、10〜66nMの範囲のIC50値とを有していた。エルロチニブHClに対し感受性がある2つの細胞系(H322及びH358)と、耐性がある2つの細胞系(A549及びH1299)を選択して2つの薬物の組み合わせを更に研究した。
【0115】
エルロチニブとボルテゾミブの併用時の細胞毒性作用
ヒトNSCLC細胞におけるエルロチニブとボルテゾミブの組み合わせの組み合わせ指数を図2に示す。結果が不明瞭なH358ヒト細気管支肺胞細胞を除き、エルロチニブとボルテゾミブの併用時の細胞毒性作用は相乗的でも相加的でもない。細気管支肺胞腺癌患者における両薬剤の臨床活性及び相乗解析由来の不明瞭な結果のため、H358細気管支肺胞細胞においてかかる組み合わせを更に試験した。細胞数とアポトーシス両方の時間経過解析により、エルロチニブとボルテゾミブの組み合わせの同時投与がいずれの薬物単独よりも活性であることが確認された。しかしながら、併用作用は相加的ではない(図3)。
【0116】
細胞周期及びアポトーシスに対するエルロチニブの作用
細胞周期及びアポトーシスに対する両薬物の作用を試験した。エルロチニブはG1での細胞周期停止を引き起こし、これはより感受性のある細胞において最も顕著であった。このG1細胞周期停止は、感受性はあるが耐性のない細胞のアポトーシスの増大により達成される。感受性があり、且つ耐性がある細胞におけるベースラインのEGFR発現に違いはなかった。エルロチニブは、感受性があり、且つ耐性がある細胞におけるEFG誘導型のEGFRリン酸化を阻害する。
【0117】
細胞周期及びアポトーシスに対するボルテゾミブの作用
我々がこれまでに報告した通り、ボルテゾミブはG2/Mでの細胞周期停止を誘導し、そして当該細胞周期停止は時間依存的なアポトーシスの増大によって達成された(Ling, Y-H. et al., (2003) Clin. Cancer Res. 9 (3): 1145-1154)。ボルテゾミブの作用はG2/Mでの停止を誘導し、そしてアポトーシスは、これまで報告した突然変異p53を有するH322歳傍系と比較して、野生型の細胞系(A549)又はヌルp53の細胞系(H358、H1299)においてより顕著であった。
【0118】
エルロチニブとボルテゾミブの間のスケジュール依存的な相互作用
24時間間隔で連続投与した2つの薬剤の組み合わせの作用について試験した。対数増殖期の細胞をエルロチニブHCl及びボルテゾミブを単独で、あるいは組み合わせで同時投与又は24時間間隔の連続投与することで曝露し、そして細胞周期解析を上文で言及した通り、最初の薬物曝露から48時間目に実施した。ボルテゾミブ、続いてエルロチニブHClによる連続治療はボルテゾミブ単独又は同時曝露と同様の細胞周期作用を有していた。しかしながら、予めエルロチニブに24時間曝露すると、G1細胞周期停止が引き起こされ、そしてボルテゾミブのG2/M作用が無効となる。エルロチニブを予め曝露したことによるこの拮抗作用は、感受性細胞(H322及びH358)だけでなく、多少低い程度で耐性細胞(A549及びH1299)でも見られ、そしてエルロチニブによって誘導されるG1停止の程度に比例した。この細胞周期の拮抗作用は、エルロチニブ誘導型のG1停止に対し最も耐性があるH1299細胞において最も顕著でない。
【0119】
更に、ボルテゾミブ誘導型の細胞毒性及びアポトーシスのこの細胞周期作用の結果について試験した。エルロチニブを予め曝露することで、エルロチニブ単独と比較して細胞の生存が増大し、そしてアポトーシスが低下した。再び、この作用は、エルロチニブ感受性H358細胞において耐性A549細胞同様に見られた。残念なことに、活性の増強は、ボルテゾミブ単独と比較した場合、同時曝露又は逆の順序(ボルテゾミブ、続いてエルロチニブ)のいずれでも観察されなかった。
【0120】
エルロチニブを予め曝露した場合の拮抗作用がp53の安定化と無関係であることについて
p53は、細胞ストレスに応じたアポトーシスに対して重要なメディエーターでもある。静止細胞において、p53は非常に短い半減期を有し、そしてMdm−2によって非常に密接に媒介される。この後者のものがp53と結合し、そしてそのユビキチンリガーゼ機能により、p53がプロテオソーム分解に対する標的となる。細胞ストレスはp53に対する一連のリン酸化事象をもたらし、結果としてMdm−2からの解離とp53の活性化を引き起こす。p53の活性化の結果には、細胞周期停止、DNA修復、そしてDNA修復が成功しない場合には、アポトーシスが含まれる。
【0121】
我々は、ボルテゾミブがp53タンパク質の分解を阻害すること、そしてボルテゾミブにより誘導されたG2/M停止がユビキチン化したp53タンパク質の蓄積と関連しうること、をこれまで提示してきた。我々は、p53に対するエルロチニブとボルテゾミブの異なる順序による作用を試験して、エルロチニブを予め曝露することにより見られる細胞周期の拮抗作用を排除した。野生型のp53を有するA549細胞をボルテゾミブ又はエルロチニブを単独で、又は組み合わせて、同時に又は24時間空けて連続して曝露し、そしてp53の発現をウェスタンブロットで評価した。ボルテゾミブの曝露は、ポジティブコントロールのパクリタキセルと比較して、ユビキチン化したp53の蓄積をもたらした。エルロチニブの同時又は連続の曝露は、ユビキチン化したp53のボルテゾミブ誘導型の蓄積に対しては作用しない。この結果と、我々がp53ヌルH358細胞における類似の拮抗的な結果を観察したという事実とをまとめると、エルロチニブの予めの曝露がボルテゾミブ誘導型のp53の安定化とは無関係であることが裏付けられた。
【0122】
エルロチニブの予めの曝露がボルテゾミブ誘導型のカスパーゼ3の活性化を防ぐということについて
我々のこれまでの研究は、ボルテゾミブが活性酸素種(ROS)の発生を誘導したこと、そしてこれがボルテゾミブ誘導型のG2/M停止及びアポトーシスに必須であることを証明した。このROSの発生はミトコンドリアの能力の変化、チトクロームcの細胞質への放出、及び結果として生じるエフェクターカスパーゼ、例えばカスパーゼ3の活性化、
により達成される。我々は、カスパーゼ3及びPARP開裂に対するボルテゾミブとエルロチニブの異なるスケジュールの作用を試験した。エルロチニブを24時間予め曝露することで、ボルテゾミブ誘導型のカスパーゼ3の活性化及びPARP開裂が阻害される。これはA549細胞及びH358細胞の両方で観察された。
【0123】
考察
我々の結果は、臨床上活性な生物学的因子を組み合わせる前の適切な前臨床研究の重要性を強調するものである。エルロチニブとボルテゾミブは共にNSCLCを有する患者において臨床活性を有することが示されており、そしてこれらの薬剤は毒性が重複していない。我々が観察したところによると、エルロチニブの細胞毒性はNSCLC細胞の我々のパネルにおいて選択的であるが、ボルテゾミブはより狭い範囲の細胞毒性を有している。エルロチニブとボルテゾミブの組み合わせは試験した4つの細胞系のうち3つにおいて相加的でも相乗的でもない。H358の細気管支肺胞細胞において、かかる組み合わせは、いずれかの薬剤単独よりも活性であるが、この作用は相加的ではない。
【0124】
我々は、ボルテゾミブがG2/M細胞周期停止を誘導し、そしてこれが時間依存的なアポトーシスの増大によって達成されるという我々自身の報告を確認した(Ling, Y-H. et al. (2003) Clin. Cancer Res. 9(3): 1145-1154)。エルロチニブを予め曝露することで、G1細胞周期停止が引き起こされ、ボルテゾミブの活性が無効となる。エルロチニブはユビキチン化したp53タンパク質の安定化に対して作用しない。しかしながら、ボルテゾミブによるカスパーゼの活性化は、エルロチニブに予め曝露することで阻害される。我々の研究において観察されたエルロチニブを予め曝露したことによるスケジュール依存的な拮抗作用は、活性な抗新生物薬の組み合わせにおける処置スケジュールの重要性を強調するものである。
【0125】
要約すると、本研究の結果は、エルロチニブとボルテゾミブの組み合わせが、H358細気管支肺胞細胞においていずれかの薬剤単独よりも活性であり、そしてその結果癌患者の特定のNSCLC及び他の腫瘍の処置に有用でありうることを示す。スケジュールの選択は、エルロチニブとボルテゾミブとを組み合わせる際に非常に重要なことがあり、そして更に、in vivoでの研究がこの組み合わせを更に評価するために必要である。
【0126】
引用文献による援用
本明細書中に開示される全ての特許、公開された特許出願及び他の参考文献は、本明細書によって、引用により本明細書中に特に援用される。
【0127】
均等物
当業者は、本明細書に具体的に記載されている本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を、単にルーチンな実験を使用して認識し、又は、確認することができる。そのような均等物は、下記の請求項の範囲に包含されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】エルロチニブとボルテゾミブに対するNSCLC細胞系の感受性。
【図2】4つのヒトNSCLC細胞系に対するエルロチニブとボルテゾミブの併用時の細胞毒性作用(組み合わせ指数(Combination Index)(CI))。
【図3】H358細気管支肺胞細胞に対するエルロチニブとボルテゾミブの併用時の作用。A)時間に対してプロットした細胞数の割合。B)3つの期間についてプロットしたアポトーシスのパーセンテージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGFRキナーゼ阻害剤及びボルテゾミブを医薬として許容される担体中に含んで成る医薬組成物。
【請求項2】
EGFRキナーゼ阻害剤がエルロチニブを含んで成る、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
エルロチニブが組成物中で塩酸塩として存在する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
1又は複数の追加の抗癌剤を更に含んで成る、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記の追加の抗癌剤がアルキル化剤、代謝拮抗剤、微小管阻害剤、ポドフィロトキシン、抗生物質、ニトロソウレア剤、ホルモン治療剤、キナーゼ阻害剤、腫瘍細胞アポトーシスの活性化剤、及び、抗血管形成剤からなる群から選択される薬剤である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
EGFRキナーゼ阻害剤及びボルテゾミブが使用されることを特徴とする、腫瘍又は腫瘍転移物を処置することを対象とする医薬を製造するための方法。
【請求項7】
前記医薬が癌を対象とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
EGFRキナーゼ阻害剤及びボルテゾミブが同一の製剤で患者に同時投与される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
EGFRキナーゼ阻害剤及びボルテゾミブが異なる製剤で患者に同時投与される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項10】
EGFRキナーゼ阻害剤及びボルテゾミブが、同一経路による患者への同時投与を対象とする、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
EGFRキナーゼ阻害剤及びボルテゾミブが、異なる経路による患者への同時投与を対象とする、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
EGFRキナーゼ阻害剤が非経口投与又は経口投与による患者への投与を対象とする、請求項6〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ボルテゾミブが非経口投与による患者への投与を対象とする、請求項6〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
処置されるべき腫瘍又は腫瘍転移物が、肺癌、結腸直腸癌、NSCL、細気管支肺胞腺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部又は頸部の癌、皮膚メラノーマ、眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、及び肛門領域の癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、結腸癌、乳癌、子宮癌、ファロピウス管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、ホジキン病、食道の癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、前立腺癌、膀胱の癌、腎癌、尿管の癌、腎細胞癌、腎盂の癌腫、中皮腫、肝細胞癌、胆管癌、慢性白血病、急性白血病、リンパ性リンパ腫、CNS新生物、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、脳幹神経膠腫、多形性神経膠芽細胞腫、星状膠細胞腫、シュワン細胞腫、脳室上衣細胞腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、扁平上皮癌、下垂体腺腫又は腫瘍転移物から成る群から選択される、請求項6〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記腫瘍又は腫瘍転移物が難治性である、請求項6〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
処置することが意図される腫瘍又は腫瘍転移物が肺癌腫瘍又は腫瘍転移物である、請求項6〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
EGFRキナーゼ阻害剤がエルロチニブを含んで成る、請求項6〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
1又は複数の他の抗癌剤を更に含んで成る、請求項6〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
他の抗癌剤が、アルキル化剤、シクロホスファミド、クロラムブシル、シスプラチン、オキサリプラチン、ブスルファン、メルファラン、カルムスチン、ストレプトゾトシン、トリエチレンメラミン、マイトマイシンC、代謝拮抗剤、メトトレキサート、エトポシド、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシル、カペシタビン、ダカルバジン、抗生物質、アクチノマシンD、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アルカロイド、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、グルココルチコイド、デキサメタゾン、コルチコステロイド、プレドニゾン、ヌクレオシド酵素阻害剤、ヒドロキシウレア、アミノ酸枯渇化酵素、アスパラギナーゼ、トポテカン、イリノテカン、ロイコボリン及び葉酸誘導体から選択される、請求項6〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ボルテゾミブをEGFRキナーゼ阻害剤と組み合わせることを含んで成る、患者の腫瘍又は腫瘍転移物を処置するために有用な医薬組成物を調製するための方法。
【請求項21】
EGFRキナーゼ阻害剤がエルロチニブである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
医薬として許容される担体とボルテゾミブ及びエルロチニブとを組み合わせることを更に含んで成る、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ボルテゾミブ及びEGFRキナーゼ阻害剤を含んで成る容器を含んで成るキット。
【請求項24】
無菌の希釈剤を更に含んで成る、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
EGFRキナーゼ阻害剤がエルロチニブである、請求項23又は24に記載のキット。
【請求項26】
患者の腫瘍、腫瘍転移物又は他の癌を処置するための方法として患者に対するボルテゾミブ及びエルロチニブの併用処置の使用を指示する、印刷された説明書を含んで成る包装添付物を更に含んで成る、請求項23〜25のいずれか一項に記載のキット。
【請求項27】
1又は複数の他の抗癌剤を更に含んで成る、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
前記他の抗癌剤が、アルキル化薬物、代謝拮抗剤、微小管阻害剤、ポドフィロトキシン類、抗生物質、ニトロソウレア剤、ホルモン治療剤、キナーゼ阻害剤、腫瘍細胞アポトーシスの活性化剤、及び、抗血管形成剤からなる群から選択される薬剤である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
癌を処置するための方法であって、そのような処置を必要とする対象に、(i)第一有効量のEGFRキナーゼ阻害剤又はその医薬として許容される塩と、(ii)第二有効量のボルテゾミブとを投与することを含んで成る方法。
【請求項30】
癌を処置するための方法であって、そのような処置を必要とする対象に、(i)第一の治療量以下の(sub-therapeutic)の量のEGFRキナーゼ阻害剤又はその医薬として許容される塩と、(ii)第二の治療量以下の量のボルテゾミブとを投与することを含んで成る方法。
【請求項31】
EGFRキナーゼ阻害剤がエルロチニブである、請求項29又は30に記載の癌を処置するための方法。
【請求項32】
処置される腫瘍又は腫瘍転移物が結腸直腸の腫瘍又は腫瘍転移物である、請求項6に記載の方法。
【請求項33】
(i)第一有効量のEGFRキナーゼ阻害剤又はその医薬として許容される塩と、(ii)第二有効量のボルテゾミブとを含んで成る、特に癌において使用される医薬組成物。
【請求項34】
(i)治療量以下の第1の量のEGFRキナーゼ阻害剤又はその医薬として許容される塩と、(ii)治療量以下の第2の量のボルテゾミブとを含んで成る、特に癌において使用される医薬組成物。
【請求項35】
EGFRキナーゼ阻害剤がエルロチニブである、請求項33又は34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
医薬品として使用するための、特に、癌に使用するためのEGFRキナーゼ阻害剤及びボルテゾミブ。
【請求項37】
医薬品として使用するための、特に、癌に使用するためのエルロチニブ及びボルテゾミブ。
【請求項38】
腫瘍又は腫瘍転移物を処置するための医薬品を製造するための、EGFRキナーゼ阻害剤及びボルテゾミブの使用。
【請求項39】
EGFRキナーゼ阻害剤がエルロチニブである、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
本明細書に記載の新規な化合物、プロセス、医薬組成物、方法及び使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−516983(P2008−516983A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537012(P2007−537012)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/037324
【国際公開番号】WO2006/110175
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(507125022)
【Fターム(参考)】