ボロン酸の反応性の調節系
保護された有機ボロン酸は、sp3混成を有するホウ素、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基、及びホウ素-炭素結合を介してホウ素に結合している有機基を含む。化学反応を実施する方法は、保護された有機ボロン酸と試薬を接触させることを含み、該保護された有機ボロン酸は、sp3混成を有するホウ素、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基、及びホウ素-炭素結合を介してホウ素に結合している有機基を含む。有機基は化学的に変換され、ホウ素は化学的に変換されない。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この特許出願は、その全体を出典明示により援用する2007年7月23日出願の「ボロン酸の反応性の調節系」と題された米国仮出願番号第60/951405号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
鈴木-宮浦(Suzuki-Miyaura)反応は、ボロン酸又はボロン酸エステルと、有機ハロゲン化物又は有機偽ハロゲン化物(organo-pseudohalide)との間のパラジウム-又はニッケル触媒されるクロスカップリングである。(Miyaura, A. Chem. Rev., 1995)。このクロスカップリング変換は、複雑な分子の合成においてC-C結合を形成するための強力な方法である。反応は官能基に耐性があり、有機化合物のカップリングでのその使用は、ますます一般的で広範囲に広がってきている。(Barder, 2005; Billingsley, 2007; Littke, 2000; Nicolaou, 2005)。
【0003】
ボロン酸は、多くの一般的な試薬に対して敏感であることで有名である。(Hall, 2005; Tyrell, 2003)。よって、ビルディングブロック合成の最終工程中でボロン酸官能基を導入するのが典型的である。しかしながら、そのようにするための方法の多く(ヒドロホウ素化反応、トリメチルボラートを用いた有機金属試薬の捕捉等)は、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アルキン類及びオレフィン類等の多様な一般的官能基に対して不耐性である。これにより、構造的に複雑なボロン酸ビルディングブロックの合成は、かなり挑戦的なものとなる。これに対して、有機スタンナンは、幅広い多様な反応条件に対して際だった耐性があり、構造的に複雑なカップリングパートナーまで途中に複数の工程を経て常套的に実施される。その結果、有機スタンナンは、毒性、高分子量、除去が困難な副産物を含むそのよく知られている欠点にもかかわらず、複雑な分子の合成において幅広く使用されることが見出された(De Souza, M.V.N., 2006; Pattenden, G., 2002; Hong, B.-C., 2006)。複数の工程による合成シーケンスを通して保護されたボロン酸を同様に担持する能力により、それらの有用性は大幅に高められ、それらの適用範囲が拡大される。
【0004】
鈴木-宮浦反応についての研究の一領域は、ボロン酸官能基に対する保護基の開発である。保護されたボロン酸及び他の官能基を含む化合物は、ホウ素を化学的に変換することなく、他の官能基の化学的変換を受けることができる。ついで、保護基を除去(脱保護)することにより、遊離のボロン酸が得られ、これが鈴木-宮浦反応を受けて、化合物を有機ハロゲン化物又は有機偽ハロゲン化物とクロスカップリングさせることができる。
【0005】
ボロン酸保護基の一例では、2つのB-OH基のそれぞれが、ボロン酸エステル基(>B-O-R)又はボロン酸アミド基(>B-NH-R)(ここでRは有機基である)に転換される。有機基は加水分解により除去されて遊離のボロン酸を得ることができる。現在のデータでは、ボロン酸とPd(II)との間の金属交換反応には、電子的に活性化されたアニオン性ホウ素「アート(ate)」錯体及び/又はヒドロキソμ2-架橋有機ボロナート-Pd(II)中間体の形成が必要であることが示唆される。双方のメカニズムには、ルイス酸性であるホウ素p空軌道が必要である。強力な電子供与性ヘテロ原子を有する二座リガンドは、おそらくルイス酸度のsp2-混成ホウ素中心を還元することによって、クロスカップリングを阻害することが知られている。この効果を利用した、ハロゲンを含むホウ素保護された有機ボランとの2〜3の選択的クロスカップリングが、近年報告されている。(Deng, 2002; Hohn, 2004; Holmes, 2006; Noguchi, 2007)。これらの選択的反応に使用される保護基の例には、ピナコールエステル(ボロン酸エステル)及び1,8-ジアミノナフタレン(ボロン酸アミド)が含まれる。しかしながら、これらの保護された化合物におけるヘテロ原子-ホウ素の結合は、非常に強力になる傾向がある。典型的には、これらのリガンドを切断するのに必要とされる比較的厳しい条件は、錯体分子合成とは適合しないものである。
【0006】
保護されたボロン酸の他の例では、ホウ素含有化合物は、四配位アニオン、例えばRが有機基を表す[R-BF3]−に転換される。これらの保護基を含む化合物は、対イオン、例えばK+又はNa+との塩として存在している。これらのアニオン性化合物は、求核置換、1,3-双極性環化付加、金属ハロゲン交換、酸化、エポキシ化、ジヒドロキシル化、カルボニル化、及びアルケン化等の化学変換中においてホウ素の反応を阻害するのに効果的であることが報告されている。(ウィッティヒ又はホーナー・ワズワース・エモンズ反応)。(Molander, 2007)。ホウ素それ自体は鈴木-宮浦反応から保護されてはいないが、カップリング変換に直接使用することができる。他のクラスの四配位ホウ素アニオン[R-B(OH)3]−は、鈴木-宮浦反応に使用するためのボロン酸を精製する内容で報告されている。(Cammidge, 2006)。トリフルオロボロナートアニオンと同様、トリヒドロキシボロナートアニオンは、鈴木-宮浦反応において反応性がある。
【0007】
ボロン酸に対するこれらの典型的な保護方法にはそれぞれにいくつかの不具合がある。ボロン酸エステル及びボロン酸アミドは、鈴木-宮浦反応条件を含む多様な反応条件からホウ素を保護することができる。しかしながら、ボロン酸エステル及びボロン酸アミドの脱保護に必要とされる厳しい条件により、他の官能基との所望されない副反応が引き起こされる可能性がある。またトリフルオロボロナートアニオンは、多様な反応条件において非反応性である。しかしながら、この保護方法は、保護及び脱保護ホウ素原子が、カップリング変換中に排除されるであろうために、選択的な鈴木-宮浦反応には許容されないものである。
【0008】
鈴木-宮浦反応を含む多様な合成反応においては、ボロン酸基を保護することが所望される。理想的には、保護されたボロン酸は、温和な条件下で高収率の脱保護を受ける。ボロン酸の反応性を調節するためのこのような系は、鈴木-宮浦反応又は他のボロン酸の反応の多用途性を大きく拡大しうる。
【発明の概要】
【0009】
一態様では、本発明は、ボロナート基及び有機基を有する保護された有機ボロン酸を提供する。ボロナート基には、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基とsp3混成を有するホウ素が含まれる。有機基はホウ素-炭素結合を介してホウ素に結合している。有機基は、-C2H5、-C(CH3)2CH(CH3)2、シクロペンチル、テトラヒドロピラニル、ノルボルニル、2,4,4-トリメチル-ビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、-C6H5、-C6H4-CH3、-C6H4-CHO、-C6H4−OCH3、-C6H4-F、-C6H4-Cl、-C6H4-Br、-C6H4-CF3、及び-C6H4-NO2からなる群から選択されない。
【0010】
他の態様では、本発明は、保護された有機ボロン酸8d、8e、8f、8e、9a、9b、9c、9d、9e、9f、13、14、16、17、19、20、21、22、23、24、25、26、27、30、54a、54b、54c、54d、61、64、66、68、70、72、74、75、80、84、91、94、302、及び306からなる群から選択される、保護された有機ボロン酸を提供する。
【0011】
さらなる他の態様では、本発明は、保護された有機ボロン酸を試薬と接触させることを含み、該保護された有機ボロン酸がボロナート基と有機基を有するものである、化学反応を実施する方法を提供する。ボロナート基には、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基とsp3混成を有するホウ素が含まれる。有機基は、ホウ素-炭素結合を介してホウ素に結合している。有機基は化学的に変換され、ホウ素は化学的に変換されない。
【0012】
さらなる他の態様では、本発明は、保護された有機ボロン酸及び有機ハロゲン化物を水性塩基の存在下でパラジウム触媒と接触させ、クロスシカップリングした生成物を得ることを含む、化学反応を実施する方法を提供する。保護された有機ボロン酸はボロナート基と有機基を有する。ボロナート基には、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基とsp3混成を有するホウ素が含まれる。有機基は、ホウ素-炭素結合を介してホウ素に結合している。
【0013】
さらなる他の態様では、本発明は、式(I)
R1-B(OH)2 (I)
で表される化合物を保護試薬と反応させることを含む、保護された有機ボロン酸を形成させる方法を提供する。式(I)で表される化合物はインサイツで形成されうる。
【0014】
さらなる他の態様では、本発明は、式(XII)
により表される化合物をN-置換イミノ-ジ-カルボン酸と反応させることを含む、保護された有機ボロン酸を形成させる方法を提供する。
【0015】
さらなる他の態様では、本発明は、式(XIII):
R10-BX2 (XIII)
により表される化合物を保護試薬と反応させることを含む、保護された有機ボロン酸を形成させる方法を提供する。保護試薬には、N-メチルイミノ二酢酸が含まれうる。
【0016】
以下の定義は、明細書及び特許請求の範囲の明確で一貫した理解を提供するために含まれるものである。
【0017】
「有機ボロン酸」なる用語は、次の式(I)
R1-B(OH)2 (I)
[上式中、R1は、ホウ素-炭素結合を介してホウ素に結合する有機基である]
で表される化合物を意味する。
【0018】
「基」なる用語は、分子的実体中の原子の結合した集合体又は単一原子を意味し、ここで、分子的実体とは、別々に区別される実体として同定可能な、任意の構造的又は同位体的に異なる原子、分子、イオン、イオン対、ラジカル、ラジカルイオン、錯体、配座異性体等である。特定の化学変換「により形成」される基の記載は、この化学変換が、基を含む分子的実体の製造に関与していることを意味するものではない。
【0019】
「有機基」なる用語は、少なくとも一の炭素原子を含む基を意味する。
【0020】
「保護された有機ボロン酸」なる用語は、有機ボロン酸の化学変換体を意味し、ここでホウ素は、元の有機ボロン酸に対して低い化学反応性を有する。
【0021】
物質の「化学変換体」なる用語は、物質の化学変換による生成物を意味し、該生成物は、該物質のものとは異なる化学構造を有する。
【0022】
「化学変換」なる用語は、関与する試薬又はメカニズムにかかわらず、物質の生成物への転換を意味する。
【0023】
「SP3混成」なる用語は、原子が少なくとも50%の四面体特徴を有する配置に結合及び/又は配位していることを意味する。四配位ホウ素原子については、ホウ素原子の四面体特性は、Hopfl, H., J. Organomet. Chem. 581, 129-149, 1999の方法により算出される。この方法では、四面体特性は、
[ここで、θnはホウ素原子の6つの結合角の一つである]
と定義される。
【0024】
「保護基」なる用語は、少なくとも一の原子と結合した有機基を意味し、ここで原子は、保護基に結合していない場合より、低い化学的活性を有する。ホウ素含有化合物について、本用語は、ホウ素の化学的活性を低下させるのに使用される非有機基、例えば-BF3−及び-B(OH)3−のF−及びOH−リガンドを除く。
【0025】
「立体構造的に強固な保護基」とは、ホウ素原子に結合したとき、「立体構造的強固性試験」により、立体構造的に強固であると決定される有機保護基を意味する。
【0026】
「アルキル基」なる用語は、アルカンの炭素から水素を除去することにより形成される基を意味し、ここでアルカンとは、全体的に水素原子と飽和炭素原子とからなる非環状又は環状化合物である。アルキル基は一又は複数の置換基を含んでいてもよい。
【0027】
「ヘテロアルキル基」なる用語は、ヘテロアルカンの炭素から水素を除去することにより形成される基を意味し、ここで、ヘテロアルカンとは、全体的に、水素原子、飽和炭素原子、及び一又は複数のヘテロ原子からなる非環状又は環状化合物である。ヘテロアルキル基は一又は複数の置換基を含んでいてもよい。
【0028】
「アルケニル基」なる用語は、アルケンの炭素から水素を除去することにより形成される基を意味し、ここで、アルケンとは、全体的に、水素原子及び炭素原子からなり、少なくとも一の炭素-炭素二重結合を含む非環状又は環状化合物である。アルケニル基は一又は複数の置換基を含んでいてもよい。
【0029】
「ヘテロアルケニル基」なる用語は、ヘテロアルケンの炭素から水素を除去することにより形成される基を意味し、ここで、ヘテロアルケンとは、全体的に、水素原子、炭素原子、及び一又は複数のヘテロ原子からなり、少なくとも一の炭素-炭素二重結合を含む非環状又は環状化合物である。ヘテロアルケニル基は一又は複数の置換基を含んでいてもよい。
【0030】
「アルキニル基」なる用語は、アルキンの炭素から水素を除去することにより形成される基を意味し、ここで、アルキンとは、全体的に、水素原子及び炭素原子からなり、少なくとも一の炭素-炭素三重結合を含む非環状又は環状化合物である。アルキニル基は一又は複数の置換基を含んでいてもよい。
【0031】
「ヘテロアルキニル基」なる用語は、ヘテロアルキンの炭素から水素を除去することにより形成される基を意味し、ここで、ヘテロアルキンとは、全体的に、水素原子、炭素原子、及び一又は複数のヘテロ原子からなり、少なくとも一の炭素-炭素三重結合を含む非環状又は環状化合物である。ヘテロアルキニル基は一又は複数の置換基を含んでいてもよい。
【0032】
「アリール基」なる用語は、芳香族複素環の環炭素原子から水素を除去することにより形成される基を意味する。アリール基は、単環式又は多環式であってよく、一又は複数の置換基を含んでいてもよい。
【0033】
「ヘテロアリール基」なる用語は、それぞれ三価又は二価のヘテロ原子で、アリール基中の一又は複数のメチン(-C=)及び/又はビニレン(-CH=CH-)を置き換えることにより形成される基を意味する。ヘテロアリール基は、単環式又は多環式であってよく、一又は複数の置換基を含んでいてもよい。
【0034】
「置換基」なる用語は、分子的実体中の一又は複数の水素原子が置き換えられた基を意味する。
【0035】
「ハロゲン基」なる用語は、-F、-Cl、-Br又は-Iを意味する。
【0036】
「有機ハロゲン化物」なる用語は、少なくともハロゲン基を含む有機化合物を意味する。
【0037】
「ハロ有機ボロン酸」なる用語は、ホウ素-炭素結合を介してホウ素に結合した有機基がハロゲン基又は偽ハロゲン基を有する有機ボロン酸を意味する。
【0038】
「偽ハロゲン基」なる用語は、ハロゲン原子と同様の化学的反応性を有する基を意味する。偽ハロゲン基の例には、トリフラート(-O-S(=O)2-CF3)、メタンスルホナート(-O-S(=O)2-CH3)、シアナート(-C≡N)、アジド(-N3) チオシアナート(-N=C=S)、チオエーテル(-S-R)、アルデヒド(-C(=O)-O-C(=O)-R)、及びセレン化フェニル(-Se-C6H5)が含まれる。
【0039】
「有機偽ハロゲン化物」なる用語は、少なくとも一の偽ハロゲン基を含む有機化合物を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明は、以下の図面及び説明を参照することで、よりよく理解することができる。図中の要素は必ずしもスケール通りではなく、本発明の原理を例証するのに重きが置かれている。
【図1】図1は、保護された有機ボロン酸を形成する方法を表す。
【図2A】図2Aは、化学反応を実施する方法を表す。
【図2B】図2Bは、化学反応を実施する方法を表す。
【図3】図3は、保護された有機ボロン酸の具体例のX線結晶構造を表す。
【図4】図4は、鈴木-宮浦変換における、保護された及び脱保護された有機ボロン酸の反応例についての、化学構造、反応スキーム及び生成物比を表す。
【図5】図5は、保護されたハロ有機ボロン酸の調製例についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を表す。
【図6】図6は、(a)脱保護されたボロン酸と、保護された有機ボロン酸の実施例との反応、(b)カップリングしたビアリール化合物の脱保護についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を表す。
【図7A】図7Aは、保護された有機ボロン酸の有機基の多様な化学変換を表す。
【図7B】図7Bは、「ジョーンズ(Jones)試薬」を用いた、遊離のボロン酸、及び多様なその保護された類似体の処理についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を表す。
【図8】図8は、水性塩基性条件下での鈴木-宮浦変換における保護された有機ボロン酸の反応例を表す。
【図9】図9は、ラタニン(ratanhine)の逆合成断片化についての例示的スキームを表す。
【図10】図10は、ラタニンの全合成の例における合成工程を表す。
【図11】図11は、ポリエン類の合成例のスキームを表す。
【図12】図12は、鈴木-宮浦変換での保護及び脱保護アルケニル有機ボロン酸の反応例を表す。
【図13】図13は、保護されたハロ有機ボロン酸の形成例を表す。
【図14】図14は、保護されたハロ有機ボロン酸の形成例を表す。
【図15】図15は、保護されたハロ有機ボロン酸を使用する、ポリエンの反復合成例を表す。
【図16】図16は、保護されたハロ有機ボロン酸の形成例を表す。
【図17】図17は、保護されたハロ有機ボロン酸の例の有機基の多様な化学変換を表す。
【図18】図18は、保護されたハロ有機ボロン酸を使用するポリエン合成例を表す。
【図19】図19は、オール-トランス-レチナールの全合成の例における合成工程に対する、化学構造、反応スキーム及び反応収率を表す。
【図20】図20は、AmB骨格の半分の合成についての構造及び反応スキームを表す。
【図21】図21は、β-パリナリン酸の合成についての構造及び反応スキームを表す。
【図22】図22は、アリールハロゲン化物を用いた保護有機ボロン酸のインサイツクロスカップリングについての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を表す。
【図23】図23は、対応する遊離ボロン酸の形成のない、保護された有機ボロン酸の調製についての構造及び反応スキームを表す。
【図24】図24は、単一の反応混合物で実施された、3つの別々の成分のクロスカップリング反応についての構造及び反応スキームを表す。
【図25A】図25Aは、保護されたハロ有機ボロン酸とビルディングブロックの例を表す。
【図25B】図25Bは、保護されたハロ有機ボロン酸とビルディングブロックの例を表す。
【図26】図26は、ビス-ボロナートビルディングブロックの実施例を表す。
【図27A】図27Aは、有機基が官能基を含む保護された有機ボロン酸ビルディングブロックの例を表す。
【図27B】図27Bは、有機基が官能基を含む保護された有機ボロン酸ビルディングブロックの例を表す。
【図28】図28は、保護された有機ボロン酸ビルディングブロックの例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基とsp3混成を有するホウ素が含まれる保護された有機ボロン酸への変換により、有機ボロン酸を多様な化学反応から保護することができるという発見を利用している。ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基とsp3混成を有するホウ素が含まれる有機ボロン酸は、鈴木-宮浦変換を介し、有機ハロゲン化物又は有機偽ハロゲン化物とのクロスカップリングから保護されうる。さらに、保護された有機ボロン酸は、温和な反応条件下、高収率で脱保護され、遊離の有機ボロン酸を得ることができる。
【0042】
保護された有機ボロン酸は、有機基、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基、及びsp3混成を有するホウ素を含む。有機基はホウ素-炭素(B-C)結合を介してホウ素に結合している。保護基は三価の基でありうる。好ましくは、有機基はホウ素を化学的に変換することなく、化学変換を受けることができる。
【0043】
図1は、保護された有機ボロン酸を形成する方法を表し、ここで、sp2混成を有する有機ボロン酸100は保護変換を受け、sp3混成を有する保護された有機ボロン酸120が形成される。図1に示されるように、保護された有機ボロン酸120は脱保護変換を受け、遊離のボロン酸基を含む有機ボロン酸100が形成可能となる。ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基、及びsp3混成を有するホウ素を含む保護された有機ボロン酸とは異なり、一般的な保護された有機ボロン酸は、sp2混成を有するホウ素、アニオン性化合物に存在するホウ素、又は立体構造的に強固ではない保護基に結合したホウ素のいずれかを含む。
【0044】
一例では、保護された有機ボロン酸は、次の式(II):
R1-B-T (II)
[上式中、R1はB-C結合を介してホウ素に結合した有機基を表し、Bはsp3混成を有するホウ素を表し、Tは立体構造的に強固な保護基を表す]
により表されうる。R1基は、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はこれらの基の少なくとも2つの組合せでありうる。さらに、R1は、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、アリール、及び/又はヘテロアリール基の炭素に結合したヘテロ原子を含み得る一又は複数の置換基を含んでいてもよい。
【0045】
R1基は、一又は複数の官能基を含んでいてもよい。好ましくは、R1は、ホウ素を化学的に変換することなく化学変換を受けることのできる一又は複数の他の官能基を含んでいてもよい。R1の一部として存在し得る官能基の例には、ハロゲン又は偽ハロゲン(-X)、アルコール(-OH)、アルデヒド(-CH=O)、ケトン(>C(=O))、カルボン酸(-C(=O)OH)、チオール(-SH)、スルホン、スルホキシド、アミン、ホスフィン、亜リン酸塩、ホスファート、及びこれらの組合せが含まれる。さらに、R1の一部として存在し得る官能基の例には、金属含有基、例えばスズ(Sn)、亜鉛(Zn)、ケイ素(Si)、ホウ素等の金属を有する基、及びこれらの組合せが含まれる。官能基を含み、保護された有機ボロン酸に存在し得る有機基の例を、表1に列挙する:
保護された有機ボロン酸に存在可能な官能基を含む有機基のさらなる例を、本出願において例証し又は記載する。
【0046】
R1の一部として存在し得る官能基の例には、保護されたアルコール類、例えば特にトリメチルシリルエーテル(TMS)、t-ブチルジフェニルシリルエーテル(TBDPS)、t-ブチルジメチルシリルエーテル(TBDMS)、トリイソプロピルシリルエーテル(TIPS)等、シリルエーテルとして保護されたアルコール類;例えばメトキシメチルエーテル(MOM)、メトキシエトキシメチルエーテル(MEM)、p-メトキシベンジルエーテル(PMB)、テトラヒドロピラニルエーテル(THP)、メチルチオメチルエーテル等、アルキルエーテルとして保護されたアルコール類;アセタート又はピバロイラート等、カルボニル基として保護されたアルコール類が含まれる。R1の一部として存在し得る官能基の例には、保護されたカルボン酸、例えばメチルエステル、t-ブチルエステル、ベンジルエステル及びシリルエステル等、エステルとして保護されたカルボン酸が含まれる。R1の一部として存在し得る官能基の例には、保護されたアミン類、例えばN-(トリメチルシリル)エトキシカルバマート(Teoc)、9-フルオレニルメチルカルバマート(FMOC)、カルバミン酸ベンジル(CBZ)、t-ブトキシカルバマート(t−BOC)等、カルバマートとして保護されたアミン類;及びベンジルアミンとして保護されたアミン類が含まれる。
【0047】
他の例では、保護された有機ボロン酸は式(II)により表すことができ、ここでR1基は、次の式(III):
Y-R2-(R3)m- (III)
[上式中、Yはハロゲン基又は偽ハロゲン基を表し;R2はアリール基又はヘテロアリール基を表し;R3は、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はこれらの基の少なくとも2つの組合せを表し;mは0又は1である]
により表される。R2は、例えばヘテロアリール基でありうる。さらに、R2及びR3は独立して、R2又はR3基の炭素に結合してヘテロ原子を有していてもよい一又は複数の置換基を含んでいてもよい。また、R2及びR3基は独立して、上述したR1に対して記載したような、一又は複数の官能基を含んでいてもよい。
【0048】
この例では、保護された有機ボロン酸は保護されたハロ有機ボロン酸である。Y基は、保護された有機ボロン酸のホウ素を反応させることなく、遊離のボロン酸を含む化合物との鈴木-宮浦クロスカップリングを受けてもよい。ホウ素の脱保護により、遊離のボロン酸が得られ、ついで、ハロゲン基又は偽ハロゲン基を有する化合物と共に、鈴木-宮浦変換を受けてもよい。よって、これらの保護されたハロ有機ボロン酸は、選択的鈴木-宮浦変換を介した反復合成のための二官能性ビルディングブロックとして使用することができる。
【0049】
一例では、保護された有機ボロン酸は、sp3混成を有するホウ素、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基、及びホウ素-炭素(B-C)結合を介してホウ素に結合した有機基を含むことができ、ここで、有機基は、以下の表2に列挙される基ではない。保護基は三価の基でありうる。
【0050】
他の例では、保護された有機ボロン酸は、sp3混成を有するホウ素、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基、及びホウ素-炭素(B-C)結合を介してホウ素に結合した有機基を含んでいてもよく、ここで、有機基は、表2又は以下の表3に列挙される基ではない。保護基は三価の基でありうる。
【0051】
一例では、保護された有機ボロン酸は、式(IV):
R4-(R5)m-B-T (IV)
[上式中、R4及びR5は共に、有機基を表し、mは0又は1であり、Tは立体構造的に強固な保護基を表し、Bはsp3混成を有するホウ素を表す]
により表すことができる。R4及びR5基は独立して、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はこれらの基の少なくとも2つの組合せであってよい。好ましくは、この例において、R4は、ハロゲン置換基又は偽ハロゲン置換基を含むアリール基ではない。例えば、R4は、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、又はヘテロアリール基であってよく、ハロゲン置換基又は偽ハロゲン置換基を含んでいてもよい。例えば、R4は、ハロゲン又は偽ハロゲン基を含まない基であってよく、もしくはさらにアリール基であってもよい。
【0052】
式(II)及び(IV)において、T基はホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基を表す。ホウ素原子に結合した立体構造的に強固な有機保護基は、次の「立体構造的強固性試験」により決定される。ホウ素原子と、ホウ素に結合した有機保護基を有する化合物のサンプル10ミリグラム(mg)を、無水d6-DMSOに溶解し、NMRチューブに移す。ついで、23℃〜150℃の範囲の温度で、1H-NMRによりサンプルを分析する。各温度で、サンプルシムを最適化し、1H-NMRスペクトルを得る。保護基が立体構造的に強固でないならば、23℃で得られた1H-NMRスペクトルにおける一組のジアステレオトピックなプロトンについての分裂ピークは、100℃で得られた1H-NMRスペクトルにおける単一ピークと合体するであろう。保護基が立体構造的に強固であるならば、23℃で得られた1H-NMRスペクトルにおける一組のジアステレオトピックなプロトンについての分裂ピークは、90℃で得られた1H-NMRスペクトルにおける単一ピークと合体しないであろう。このテストの一例を以下の実施例10に提供する。
【0053】
ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基を含む保護された有機ボロン酸の一例では、保護された有機ボロン酸は、式(X):
[上式中、R10は有機基を表し、Bはsp3混成を有するホウ素を表し、R20、R21、R22、R23及びR24は独立して、水素基又は有機基である]
により表すことができる。R20、R21、R22、R23及びR24は独立して、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はこれらの基の少なくとも2つの組合せであってよい。一例では、R20はメチルであり、R21、R22、R23及びR24のそれぞれは、水素である。この例の保護された有機ボロン酸は、式(XI):
[上式中、R10は有機基を表し、Bはsp3混成を有するホウ素を表す]
により表すことができる。R10基は、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、又は上述したR1に対して記載したような、これらの基の少なくとも2つの組合せであってよい。R10基は、一又は複数の置換基、及び/又は一又は複数の官能基を有していてもよい。
【0054】
式(X)の保護された有機ボロン酸は、次の反応スキーム:
に例証されるように、対応する保護されていないボロン酸(XII)と、適切なN-置換イミノ-ジ-カルボン酸を反応させることにより調製することができる。
特定の例では、式(XI)の保護された有機ボロン酸は、次の反応スキーム:
に例証されるように、対応する保護されていないボロン酸(XII)と、N-メチルイミノ二酢酸(MIDA)を反応させることにより調製することができる。
それぞれの場合、保護された有機ボロン酸は、温和な水性塩基と接触させることにより脱保護され、遊離のボロン酸(XII)を提供される。
【0055】
また、式(X)の保護された有機ボロン酸は、試薬として単離されたボロン酸を使用することなく調製され得る。ボロン酸は、保護された有機ボロン酸に転換される直前に、インサイツで形成され得る。さらに、保護された有機ボロン酸は、遊離のボロン酸を形成することなく形成され得る。図23には、対応する遊離のボロン酸を形成することなく、保護された有機ボロン酸を調製するための構造及び反応スキームが示されている。実験の詳細を実施例20に提供する。
【0056】
一例では、ボロン酸は、例えばボロン酸エステル(すなわち、R'及びR''が有機基である、R10-B-(OR')(OR''))を加水分解することにより、インサイツで生成され得る。ボロン酸エステルは、例えばアルケン又はアルキンのC-C多重結合に対してHB(OR')(OR'')を付加することにより形成され得る。(Brown, 1972)。またボロン酸エステルは、例えば、宮浦ホウ素化(Miyaura borylation)(Miyaura, 1997; Miyaura, JOC, 1995.)により;有機ハロゲン化物を有機リチウム試薬と反応させ、続いてボロン酸トリエステル(すなわち、B(OR)3)と反応させることにより;又はボロン酸トリエステルを有機金属試薬(すなわち、R-Li、R-Mg、R-Zn;Brown, 1983)と反応させることにより形成され得る。他の例では、ボロン酸は、アセトアルデヒド(R'及びR''は有機基である)で三置換ボラン(すなわち、R10-BR'R'')を処理することにより、インサイツで生成され得る。三置換ボランは、例えばアルケン又はアルキンをHBR'R'でヒドロホウ素化し、C-C多重結合に対してHBR'R''を付加することにより形成され得る。
【0057】
他の例では、次の反応スキーム:
に例証されるように、ボロン酸ハロゲン化物(XIII)を、二酸又はその対応する塩と反応させることにより、保護された有機ボロン酸(X)を得ることができる。
ボロン酸ハロゲン化物は、HBX2(Brown, 1984; Brown, 1982)又はBX3(Soundararajan, 1990)を用いて、アルケン又はアルキンをヒドロホウ素化することにより形成され得る。またボロン酸ハロゲン化物は、BBr3でR10-SiR3等のシランを処理することにより形成され得る(Qin, 2002; Qin, 2004)。
【0058】
MIDAボロン酸エステル保護基を含む保護された有機ボロン酸は、カラムクロマトグラフィーにより、容易に精製される。これは、典型的にはクロマトグラフィー技術に対して不安定なボロン酸では普通ではない。また、これらの化合物は高度に結晶質であり、精製、利用性及び保存が容易である。これらの化合物は、空気中での卓上保存を含む長期間の保存に対して極めて安定している。また、多くのボロン酸は、長期間の保存に対して不安定であるため、このことは普通ではないことである。
【0059】
sp3混成を有するホウ素、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基、及び有機基を含む保護された有機ボロン酸は、合成ビルディングブロックとして有用である。ビルディングブロックの例には、保護されたハロ有機ボロン酸、例えば図25に列挙されているものが含まれる。ビルディングブロックの例には、sp3混成を有する第1のホウ素、第1のホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基、及びボロン酸又は異なる種類の保護されたホウ酸として存在し得る第2のホウ素原子を有するビス-ボロナート類が含まれる。ビス-ボロナート類の例には、図26に列挙されているもの、及び第2のホウ素原子が、ボロン酸、ボロン酸エステル(ピナコールエステルを含む)-、BF3−又はor-B(OH)3−として存在するこれらビス-ボロナート類の誘導体が含まれる。ビルディングブロックの例には、有機基が官能基、例えば図27に列挙されてるものを含む保護された有機ボロン酸が含まれる。他の種々のビルディングブロックの例は図28に列挙されている。これらビルディングブロックの各々における保護基は、MIDAボロン酸エステルとして表される。また保護された有機ボロン酸ビルディングブロックは、保護基に一又は複数の置換基を有する、及び/又は保護基の窒素に結合した種々の基を有する化合物をさらに含む。例えば、これらのビルディングブロックにおける保護基は、式(X)に記載したような保護基であってもよい。
【0060】
MIDAボロン酸エステル保護基を含む保護された有機ボロン酸は、多くの有利な特徴を有する。MIDA基は、典型的には、エステル化しているボロン酸の反応性の低下に効果的である。反応性のこの低減についての可能な一説明は、ルイス酸のホウ素p空軌道が、他の物質との反応に利用できないことである。例えば、保護されたホウ素は、鈴木-宮浦変換に関与するパラジウム触媒と錯化するための、ルイス酸のp空軌道をもはや有さない。よって、この保護方法は、鈴木-宮浦変換に対するその反応性を含む任意のボロン酸の反応性を低減させる。さらに、MIDAボロン酸エステル基は、クロスカップリングの他に、多様な反応条件に対して安定しているように思われる。この安定性により、ボロン酸官能基を含む複雑な合成ビルディングブロックの合成におけるそれらの利用が容易になる。
【0061】
ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基を有するこれらのsp3混成ボロン酸エステルは、80℃で28時間、無水の鈴木-宮浦カップリングから保護されているが、極めて穏やかな水性塩基性条件を使用し、23℃で容易に脱保護を達成することができる。脱保護条件の一例は、テトラヒドロフラン(THF)中の1モル(M)の水性水酸化ナトリウム(NaOH)を用いて10分処理することである。脱保護条件の他の例は、メタノール(MeOH)中の水性飽和重炭酸ナトリウム(NaHCO3)を用いて6時間処理することである。これらの温和な条件は、厳しい切断条件を必要としうるボロン酸エステルをベースにした典型的な保護基とは対照的である。
【0062】
図2Aは、保護された有機ボロン酸204を試薬と接触220させることを含む、化学反応を実施する方法200を表し、ここで、有機基は化学的に変換され、ホウ素は化学的に変換されない。保護された有機ボロン酸206は、保護された有機ボロン酸204の化学変換体であり、ここで、RAはRBに転換されているが、ホウ素は化学的に変換されていない。本方法は、場合によっては、ボロン酸202を保護試薬と反応210させることにより、保護された有機ボロン酸204を形成させることを含む。また保護された有機ボロン酸204は、ボロン酸202を形成し及び/又は単離することなく形成され得る。本方法は、場合によっては、保護された有機ボロン酸206を脱保護230することにより、ボロン酸208を形成させることを含む。
【0063】
図2Bは、保護された有機ボロン酸204を有機ハロゲン化物252と反応260させ、クロスカップリングした生成物254を得ることを含む、化学反応を実施する方法250を表す。反応260には、保護された有機ボロン酸204及び有機ハロゲン化物252を水性塩基の存在下でパラジウム触媒と接触させることを含み得る。保護基はインサイツで切断され、有機のボロン酸(すなわち、図2Aの202)が得られ、これを、ついで有機ハロゲン化物252とクロスカップリングさせることができる。よって、錯体合成中に、保護されたビルディングブロックとなることに加え、保護された有機ボロン酸は、ボロン酸の安定した純粋な誘導体として有用でありうる。
【0064】
保護された有機ボロン酸204には、sp3混成を有するホウ素、立体構造的に強固な保護基、及びB-C結合を介してホウ素に結合した有機基R1を含む。保護された有機ボロン酸204は、上に開示された任意の保護された有機ボロン酸でありうる。好ましくは、保護された有機ボロン酸204は、ホウ素に結合した三価の保護基を含む。
【0065】
保護された有機ボロン酸204は、例えば上述したような式(II)により表すことができる。例えば、保護された有機ボロン酸204は、式(III)により表すことができ、ここでR1基は、上述したような式(III)で表される。保護された有機ボロン酸204は、例えば上述したような、式(IV)により表すことができる。保護された有機ボロン酸204は、例えば上述したような、式(X)又は(XI)により表すことができる。
【0066】
図3は、保護された有機ボロン酸、(N→B)-トリル-[N-メチルイミノジアセタート-O,O’,N]ボラン3aの例のX線結晶構造を表す。この構造には、ホウ素(B2)はsp3混成していることが示され、四面体配向にある。
【0067】
図4は、鈴木-宮浦変換における保護された及び保護されていない有機ボロン酸の反応例についての、化学構造、反応スキーム及び生成物比を示す。化学量論的量のパラ-N-ブチルフェニル-ボロン酸2及び(N→B)-トリル-[N-メチルイミノジアセタート-O,O’,N]ボラン3aを、バックワルド(Buchwald)の無水鈴木-宮浦条件下で0.8当量のp-ブロモベンズアルデヒドと反応させた。(Barder, 2005)。24:1のビアリール5及び6が観察され、p-ブロモベンズアルデヒドとsp2混成ボロン酸2(項目1)との強力な優先的反応性に一致した。これに対して、p-トリルボロン酸3bを用いたコントロール実験では、1:1混合の生成物(項目2)が生じた。保護基における立体的に大きなN-アルキル置換は許容できるが、あまり有利ではなかった(項目3)。そのイミノ二酢酸対応物よりもあまり立体構造的に強固ではないことが知られているN-メチル-ジエタノールアミン付加物3d(Contreras, 1983)には選択性がないことが証明された(項目4)。これらの化合物の調製及び使用についての実験の詳細は、それぞれ実施例1及び2に提供する。
【0068】
図5は、保護されたハロ有機ボロン酸の調製例についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を示す。多様なハロボロン酸をMIDAと錯化させ、一連のB-保護された二官能性ビルディングブロックを得た。ブロモフェニルボロン酸、並びに芳香族ヘテロ環5-ブロモチオフェンボロン酸の3つ全ての位置異性体はきれいに反応し、優れた収率で8a-dが生じた。同様の錯化条件で、ビニル及びアルキルのボロン酸エステル8e及び8fが生じた。(N→B)-ビニル-[N-メチルイミノジアセタート-O,O',N]ボラン8eの錐体的性質(pyramidalized nature)を、単結晶X線回折分析を介して確認した。際だって、これらの錐体化ボロン酸エステルは安定しており、シリカゲルクロマトグラフィーにより容易に精製された。図5に示す全ての収率は、単一のクロマトグラフィー工程後、分析的に純粋で無色の結晶性固形物として単離された物質を表す。さらに、対応するボロン酸とは全く対照的に(Hall, 2005)、これら全てのボロン酸エステルは、空気下で無期限に卓上安定していた。実験の詳細を実施例3に提供する。
【0069】
図6は、(a)ハロゲン基を有する保護された有機ボロン酸と保護されていないボロン酸との反応、(b)遊離のボロン酸を提供するための、カップリングしたビアリール化合物の脱保護についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を示す。選択的クロスカップリングを可能にするMIDAリガンドの能力を、実施例2のそれぞれのB-保護された二官能性ビルディングブロックをp-トリルボロン酸と反応させることにより調査した。アリール、ヘテロアリール、ビニル、及びアルキルボロン酸の反応性は、劇的に変化しうるが(Barder, 2005; Billingsley, 2007; Littke, 2000; Nicolaou, 2005)、同様の保護基は4つ全てのクラスの求核試薬で有効であり、選択的にクロスカップリングした生成物9a-9fが生じた。また、4つ全てのクラスの求核試薬を、THF中の1モル(M)の水性NaOHで23℃で10分、温和な水性塩基性条件の標準的セットを使用して、効果的に脱保護した。飽和したNaHCO3も効果的であった(項目3)。実験の詳細を実施例4に提供する。
【0070】
図7Aは、保護された有機ボロン酸の有機基の多様な化学変換についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を示し、ここで、有機基は化学的に変換され、ホウ素は化学的に変換されない。MIDAボロン酸エステルは際だって強固であった。一例では、保護された有機ボロン酸19のMIDA-保護p-ヒドロキシメチル-フェニルボロン酸は、スワーン(Swern)酸化を介して、対応するアルデヒド20に円滑に変換され、逆変換は水素化ホウ素ナトリウムを用いて達成された。
【0071】
他の例では、非常に強力な酸化及び酸性「ジョーンズ試薬」(CrO3及び濃H2SO4)を用いて19を処理すると、予期しないことに、保護された有機ボロン酸が何ら観察できる程度に分解することなく、安息香酸誘導体21が生じた。極めて酸性の条件に対するこの際だった安定性は非常に驚くべきことであり、非常に温和な水性塩基、例えば水性NaHCO3に対するMIDA-ベースの保護された有機ボロン酸の明白な不安定さとは、はっきりと対照的であった。しかしながら、多くの非水性塩基は良好に許容されると思われる。
【0072】
図7Bは、19の21への酸化に対するものと同一の反応条件を使用し、「ジョーンズ試薬」を用いた、遊離のボロン酸及び多様なその保護された類似体の処理についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を示す。遊離のボロン酸190の反応により、p-ベンジルアルコール有機基からホウ素が完全に除去された安息香酸とp-ヒドロキシ安息香酸の混合物が得られた。191に対する保護基はピナコールエステル基であり、ここでホウ素はsp2混成していた。保護された類似体192は、アニオン性化合物の一部として、特にR-BF3−アニオンとして、ホウ素を有していた。193に対する保護基はN-メチルジエタノールアミンエステルであり、これは立体構造的に強固な保護基ではなかった(以下の実施例10を参照)。保護された類似体191、192及び193の反応により、それぞれp-ベンジルアルコール有機基からホウ素が完全に除去された安息香酸とp-ヒドロキシ安息香酸の混合物が生成された。よって、sp3混成したホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基、及びホウ素-炭素結合を介してホウ素に結合した有機基を含む保護された有機ボロン酸19のホウ素は、驚くべきことに、また予期しないことに、「ジョーンズ試薬」の酸化及び酸性条件に対して不活性であった。
【0073】
図7Aに再度言及すると、他の例では、保護された有機ボロン酸19は、カルバニオン媒介性エバンスアルドール及びHWEオレフィン化反応と適合性があり、それぞれ22及び23を生じせしめた。また、前者は、最初に形成されたホウ素-アルコキシドアルドール付加物のペルオキシド媒介性酸化切断を必要とするが、これに対して、MIDA錯体は、また驚くべきことに安定していた。異なる炭素-炭素結合形成反応の他の例では、高井オレフィン化も保護された有機ボロン酸との適合性があり、24等のB-保護されたハロボロン酸にアクセスする新規な方法を提供する。
【0074】
他の例では、いくつかの共通した官能基変換が、保護された有機ボロン酸により十分に許容された。これらの変換には、アルコールシリル化(25)及び脱シリル化、極度に酸性の触媒TfOH(26)を用いたp-メトキシベンジル化、及びヨード化(27)が含まれる。
【0075】
有機基がsp3混成ではないホウ素を有する保護された有機ボロン酸は、sp3混成を有するホウ素を化学的に変換することなく、非sp3混成ホウ素の化学変換を受けることができる。例えば、図14を参照。よって、選択的クロスカップリングは、差次的にライゲーションをされたビス-ボロナート試薬を用いて実施することができる。
【0076】
また、保護された有機ボロン酸は、ホウ素を化学的に変換することなく、2つの異なる種類の金属原子を有する化合物との金属交換反応を受けることができる。例えば、保護されたハロ有機ボロン酸と、亜鉛及びスズを含有するビス-メタル化ビニル化合物との間の根岸クロスカップリングを示す図15が参照される。このように、変換が三重金属選択性(B、Sn、Zn)であるクロスカップリング反応が実施可能である。
【0077】
図8は、水性塩基性条件下、鈴木-宮浦変換における保護された有機ボロン酸の反応についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を示す。パラジウム触媒の存在下、保護された有機ボロン酸30とメチルp-ブロモフェニルケトンとを反応させると、クロスカップリングした生成物32が提供される。反応は水性塩基の存在下で実施されるため、MIDAボロン酸エステルはインサイツで切断され、遊離のボロン酸が提供される。よって、錯体合成中に、保護されたビルディングブロックとして供給されることに加え、保護された有機ボロン酸は、ボロン酸の安定した純粋な誘導体として有用なものである。上述にて記したように、ボロン酸は生成するのが困難で、長期間の保存中、不安定であるおそれがある。対照的に、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基を有し、sp3混成を有するホウ素を含む保護された有機ボロン酸は、結晶化及び/又はクロマトグラフィーにより精製可能であり、空気中でさえ、長期間安定可能である。
【0078】
これらの反応により、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基を有し、sp3混成を有するホウ素を含む保護された有機ボロン酸の、可能な適用性のいくつかが示される。これらの化合物は、鈴木-宮浦反復クロスカップリング変換を介して、簡単な、高いモル分子の合成に使用されてもよい。これらの変換は、二官能性ビルディングブロック、例えば、ハロゲン又は偽ハロゲン基を含む保護された有機ボロン酸に関与している。与えられた合成に対して、的確な酸化状態でプレインストールされた必要な官能基を有し、所望する立体化学的関連性を持つ全てのビルディングブロックが調製され得る。ついで、これらのビルディングブロックは、温和な反応、例えば鈴木-宮浦反応の繰り返し適用により、一緒にされる。非常に簡単で、効果的であり、自動化に適していることに加えて、この方法は本来的にモジュール式であり、構造誘導体の収集作製に非常に適している。
【0079】
この反復クロスカップリング法により、小分子合成のプロセスを劇的に単純化することができる。例えば、天然生成物であるラタニンは、温和な鈴木-宮浦反応を繰り返し使用することにより調製され、容易に合成され、容易に精製され、高度に強固なビルディングブロックが収集される。合成は短くて高度にモジュール式であり、よって修飾されたビルディングブロックを同じ経路に置換することにより、多様な誘導体が簡単に入手できるに違いない。
【0080】
図9は、3つの鈴木-宮浦変換の繰り返し適用を介して、ラタニン11の4つの単純なビルディングブロック12-15への、逆合成断片化についてのスキームを示す。天然生成物であるラタニンは、薬用植物Ratanhiae radixから単離されるネオリグナンの大きなファミリーの最も複雑なメンバーである。(Arnone, 1990)。保護された有機ボロン酸についての正確なテストを提供したこの計画にはいくつかの課題があった。例えば、アリールボロン酸のクロスカップリングは、そのビニル対応物のものよりもより容易な傾向にあり、ビニルボロン酸12とブロモアリールボロナート13との間の選択的クロスカップリングを保証されないものにする。さらに、芳香族複素環ボロン酸、例えば13の脱保護されたバージョンは、分解に対して非常に敏感である場合がある(Tyrell, 2003)。さらに、高度に電子が豊富で、立体的に妨害されたアリール臭化物14とのクロスカップリングには、MIDAリガンドについての安定性の限界を試験する高温及び/又は長時間の反応時間を必要とすることが予期された。
【0081】
図10は、ラタニンの全合成における合成工程についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を示す。実験の詳細を実施例6−9に提供する。ビルディングブロック13-15が調製される(それぞれ、実施例6−8を参照)と、ビニルボロン酸12とブロモアリールボロナート13との間の成功裏の選択的クロスカップリングが開始され、中間体16が生じる。意外にも、ベンゾフラニルボロナート13及び16は、少なくとも1ヶ月、空気下でも卓上安定していた。これに対して、16の脱保護から得られた2-ベンゾフラニルボロン酸は、数日で直ぐに分解した。14とクロスカップリングさせる直前に、16を脱保護することにより、この課題は簡単に克服された。予期したように、この電子が豊富で、立体的に大きなアリール臭化物14には、高温(80℃、密封チューブ)及び反応時間の延長(28時間)の双方が必要であった。顕著なことに、MIDA保護基は、これらの強制条件に対して完全に安定しており、高度な中間体17が生じることが見出された。B-脱保護、15とのクロスカップリング、及び2つのMOMエーテルの切断の最終シーケンスにより、ラタニンの第1の全合成が完了した。この合成は、最も長い線形シーケンスにおける7つの工程を含む。最終生成物の全てのスペクトルデータは、Arnone(1990)に報告されたものと一致した。
【0082】
「ポリエン天然生成物」と集合的に称される小分子のクラスは、元来、極めて多様で、細菌、真菌、粘菌、植物、広範囲の水性種、さらには動物によっても合成される。またこれらの化合物は、並はずれて多様な構造と機能を示し、多様な二重結合、例えばE-及びZ-1,2-二置換、三置換、及び四置換されたオレフィン類を含み得る。これらの化合物の活性には、抗真菌、抗菌及び抗腫瘍特性が含まれ、多くの研究により、これらの構造をわずかに変えるだけで、それらの活性に劇的な衝撃を付与可能であることが示されている。疑いようもなく、ポリエン天然生成物は、ヒトの健康を改善するための、実質的な未開発の可能性を有しており、これらの化合物及びそれらの誘導体への足かせのない合成手段が、この可能性を実現するのに重要となる。保護された有機ボロン酸及び合成方法におけるそれらの使用により、反復クロスカップリングを介した広範囲のこれら標的の簡単なモジュラーアセンブリーが得られうる。
【0083】
ポリエン類の合成は、多くの一般的な合成試薬に対してコンジュゲートした二重結合フレームワークが敏感なことが、これを挑戦的なものにしている。それぞれの二重結合の幾何のコントロールは重要な問題である。多くの有益な方法が開発されているが、パラジウム媒介性クロスカップリングをベースにした合成方法は、これらの試薬の温和で立体特異的な性質のために特に魅力的である。この調子で、ビス-メタル化(Lhermitte, 1996; Lipshutz 1997; Pihko, 1999; Babudri, 1998; Murakami, 2004; Denmark, 2005; Lipshutz, 2005; Coleman, 2005; Coleman, 2007)、又はビス-ハロゲン化(Organ, 2000; Antunes, 2003; Organ, 2004)されたリンチピン(lynchpin)試薬をベースにした多様な方法が報告されている。これらのアプローチにおいて、3つのフラグメントを、2つのクロスカップリング反応を使用し、リンチピンの直交反応性末端に一緒にする。ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基を有し、sp3混成を有するホウ素を含む保護された有機ボロン酸を使用する反復クロスカップリング法の重要な利点は、無限の反復といった固有の可能性にある。すなわち、必要とされる全てのビルディングブロックを、理論的には、単純で温和な反応の繰り返し適用を介して一緒にすることができる。これにより、合成方法を劇的に単純化することができ、類似体調製が直ぐにできるようになる。ただ一つの反応の使用は、ビルディングブロックに付加された官能基と、それらをカップリングするのに使用される反応条件との間で不適合となる可能性を最小にするのに役立つ。さらに、二官能性ハロ有機ボロン酸を使用すると、ビス-メタル化リンチピン型の試薬で頻繁に使用される有毒金属、例えば有機スタナンを回避することができる。最後に、保護されたハロ有機ボロン酸は、シリカゲルコンジュゲート及び/又は再結晶化により容易に精製でき、空気下で卓上に無期限で保存される自由に流動する結晶性固形物になる傾向にある。
【0084】
図11は、ポリエン天然生成物を含むポリエン類を合成する反復クロスカップリング方法の一般的適用例についてのスキームを示す。ポリエンは少なくとも2つの交互炭素-炭素二重結合を含む化合物である。鈴木-宮浦反応を介した保護されたハロ有機ボロン酸54とボロン酸55とのカップリングにより、保護された有機ボロン酸56が得られる。56の脱保護により、有機ハロゲン化物又は有機偽ハロゲン化物とのカップリングが可能な、遊離のボロン酸が提供される。有機ハロゲン化物又は有機偽ハロゲン化物が保護された有機ボロン酸を含むならば、ポリエン鎖は反復伸長可能となる。図11の例では、脱保護後に有機ハロゲン化物57を付加することでポリエン生成物58が提供される。
【0085】
図12は、鈴木-宮浦変換における保護された及び保護されていないアルケニルボロン酸の反応例についての、化学構造、反応スキーム及び生成比率を示す。N-メチルイミノ二酢酸は1-ヘキセニルボロン酸と錯化し、以前には知られていない(N→B)-(1-ヘキセニル)-[N-メチルイミノジアセタート-O,N]ボラン54dが生じた。この保護された有機ボロン酸は、温度依存性の1H NMR(Mancilla, 2005)により研究され、N→B結合が少なくとも110℃まで安定していることが見出された。化学量論的量の1-プロピレンボロン酸50と(N→B)-(1-ヘキセニル)-[N-メチルイミノジアセタート-O,O',N]ボラン54dとを、鈴木-宮浦クロスカップリング条件下で0.8当量のβ-ブロモスチレンと反応させた。生成物51及び52の75:1混合物を観察したところ、保護されていないビニルボロン酸50のカップリングに対する非常に高度な選択性と一致した。
【0086】
図13−18は、保護されたハロ有機ボロン酸54a、54b及び54cの調製について、また54a及び54cを用いた後続反応についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を示す。図13において、(E)-ジブロモ(2-ブロモビニル)ボラン59とMIDAとの錯化により、二官能性オレフィン54aが効率的に生じた。この反応を75mmolスケールで再生し、空気下で無期限の保存に対して安定した、自由に流動する結晶性固形物として12gの54aが生じた。実験の詳細を実施例11に提供する。
【0087】
1,2-二置換-ビニルハロゲン化物を用いた宮浦ホウ素化は希であるが、54aは新規のビス-ホウ素化オレフィン61に円滑に転換された(図14)。61のX線構造により、ピナコールとMIDAボロン酸エステル保護基のsp2−及びsp3混成を、それぞれはっきりと確認した。61と(E)-1-ヨード-2-クロロエチレン62との間の、後続する二重選択(金属及びハロゲン)鈴木-宮浦クロスカップリングにより、標的とするジエン54が生じた。この反応により、差異的なライゲーションをされたビス-ボロナート試薬との、選択的クロスカップリングが示された。実験の詳細を実施例12に提供する。
【0088】
図15において、54aとビス-メタル化ビニル亜鉛63との間の根岸クロスカップリングにより、ボロニル/スタンニルジエン64が生じた。この反応により、三重金属選択(B、Sn、Zn)クロスカップリング反応が示された。64と62との間の、後続する金属及びハロゲン選択的クロスカップリングにより、標的となるB-保護されたハロトリエニルボロン酸54cが調製された。実験の詳細を実施例13に提供する。
【0089】
この経路は効果的ではあるが、有機スタンナンには毒性があり、スズ含有中間体を使用することなく、54cを調製することが好ましい。図16において、ビス-ホウ素化ジエン66が、54a及びビニルピナコールボロン酸エステル65との間のヘック型カップリングを介して、又は54bの宮浦ホウ素化を介して、塩化トリエニルビルディングブロック合成についてのスズ非含有の代替中間体として合成される。
【0090】
図17において、保護されたハロアルケニルボロン酸54aは、選択的鈴木-宮浦、スティル、ヘック、及び薗頭(Sonogashira)カップリングを受け、それぞれ生成物68、70、72及び74が生じた。保護された有機ボロン酸80は鈴木-宮浦クロスカップリングの生成物であった。実験の詳細を実施例14に提供する。
【0091】
図18において、塩化ビニルを用いたクロスカップリングは相対的に希であるが、バックワルドの電子が豊富で、立体的に大きなホスフィンリガンド4cを使用すると、塩化トリエニル54cとビニルボロン酸55との間に、非常に効果的なカップリングが提供される。実験の詳細を実施例15に提供する。
【0092】
図19は、オール-トランス-レチナールの全合成における合成工程についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を示す。公知のトリエニルボロン酸83(Uenishi, 2003)は、二官能性ビルディングブロック54aと選択的にカップリングし、テトラエニルボロン酸エステル84が生じた。驚くべきことに、ボロン酸83は濃縮及び保存に対して不安定であるが、より先進のMIDAボロナート84は、シリカゲルコンジュゲートを介して結晶性固形物として単離され、保存に対して非常に安定していた。ボロン酸の脱保護及びアルデヒド85を用いたクロスカップリング(Romo, 1998)の最終シーケンスで、天然生成物が生じた。実験の詳細を実施例16に提供する。
【0093】
変異可能な巨大分子標的の阻害を介して機能し、よって微生物抵抗性に非常に影響を受けやすいほとんどの抗生物質とは対照的に、抗真菌剤アンホテリシンB(AmB)は、真菌脂質膜において、エルゴステロールとの自己アセンブリーを介して作用し、透過イオンチャンネルを形成する。変異可能なタンパク質標的を欠くため、この広域抗真菌剤に対する耐性は、40年以上広範囲に使用されているにもかかわらず、極めて希有である。しかしながら、コレステロールとの競合性自己アセンブリーにより、ヒト細胞において関連チャンネルが形成され、AmBはかなりの毒性があり、多くの場合はその臨床的有用性が制限される。最初であり、現在、唯一報告されているAmBの全合成は、K.C. Nicolaou及び共同研究者、1986により達成された。(Nicolaou, 1987; Nicolaou, 1988)。最も長い直鎖状シーケンスにおいて、この合成には56工程が必要であり、後期の変換の幾つかは非常に低収率で進行した。これらの欠点に加えて、十分なモジュール性及び柔軟性が欠如しているため、AmBの構造的誘導体の実用的な調製へのこの合成の使用が排除される。
【0094】
図20は、AmB骨格の半分の合成についての、構造及び反応スキームを示す。1,3-ヘプテ-2-エンボロン酸90とBB3との反応により、有機基がポリエンである保護された有機ボロン酸91が生じた。水酸化ナトリウムを用いて91を脱保護すると、遊離のボロン酸が生成され、鈴木-宮浦クロスカップリング反応を介してBB4と反応し、ポリエン92が生じる。この生成物はAmB骨格の半分に対応する。実験の詳細を実施例17に提供する。
【0095】
他の興味あるポリエン、β-パリナリン酸96は、膜特性用の蛍光プローブとして、30年以上使用されている。さらに、関連するテトラエン酸は、単一のエナンチオマーからの反足キラル凝集体の形成を含む際だった凝集性を示す。96及び/又はその類似体の有用性は、このクラスの化合物への、さらに効率的なモジュラー合成手段から、有益であるだろう。
【0096】
図21は、β-パリリナン酸96の合成についての、合成及び反応スキームを示す。保護されたクロロジエニルボロン酸54bを、容易に入手可能な出発物質から、β-パリナリン酸をモジュラー式の3工程で合成するのに使用した。特に、塩化ポリエニルクロスカップリングについての新規に同定された条件の修正法を使用することにより、二官能性塩化ジエニル54bと(E)-1-ブテニルボロン酸93との間で選択的ペアリングがなされ、オール-トランス-トリエニルボロナート94が生じた。この保護された有機ボロン酸は、カラムクロマトグラフィーによる精製に対して安定していた。温和な水性塩基性条件下で、94の脱保護がなされ、ヨウ化ビニル95を用いた後続するクロスカップリングにより、蛍光固形物として、β-パリナリン酸96が生じた。実験の詳細を実施例18に提供する。
【0097】
図22は、保護された有機ボロン酸とアリールハロゲン化物とのインサイツクロスカップリングについての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を示す。この例では、保護された有機ボロン酸は、対応するボロン酸の代替として機能する。対応するボロン酸は精製が困難である。実験の詳細を実施例19に提供する。
【0098】
次の実施例は、本発明の一又は複数の好ましい実施態様を例証するために提供される。本発明の範囲内である以下の実施例においては、多くの変形がなされてもよい。
【実施例】
【0099】
一般的手順
市販試薬を、Sigma-Aldrich (St. Louis, MO)、Fisher Scientific (Waltham, MA)、Alfa Aesar / Lancaster Synthesis (Ward Hill, MA)、又はFrontier Scientific (Logan, UT)から購入し、他に記載がない限りは、さらなる精製をすることなく使用した。N-ブロモスクシンイミドと4-ブチルフェニルボロン酸を、使用前に、温水から再結晶化させた。Pangbornと共同研究者(Pangborn, 1996)により記載されているようにして(THF、Et2O、CH3CN、CH2Cl2:無水の中性アルミナ;ヘキサン、ベンゼン、及びトルエン、無水の中性アルミナ及びQ5反応物質;DMSO、DMF:活性型分子ふるい)、充填カラムを通過させることを介して、溶媒を精製した。水を2回蒸留した。CaH2からの窒素雰囲気下、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエチルアミン、ピリジン、及び2,6-ルチジンを新たに蒸留した。Hoya及び共同研究者の方法に従い、n-ブチルリチウムの溶液を滴定した(Hoye, T. R., 2004)。
【0100】
以下の化合物を、以前の文献に従い調製した:N-イソプロピルイミノ二酢酸(Stein, A., 1995; Dube, C. E., 2005)、(E)-3-ブロモスチリルボロン酸(Perner, R.J., 2005)、5-ブロモ-2-ベンゾフラニルボロン酸(Friedman, M. R., 2001)、2-ブロモ-5-メトキシフェノール(Albert, J. S., 2002)、4-(メトキシメトキシ)安息香酸(Lampe, J.W., 2002)、(E)-(2-ブロモエテニル)ジブロモボラン(59)(Hyuga, S., 1987)、(E)-1-クロロ-2-ヨードエチレン(62)(Negishi, E. I., 1984; Organ, M. G., 2004)、(1E,3E)-2-メチル-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセ-1-エニル)ブタ-1,3-ジエニルボロン酸(83)(Uenishi, 2003)、(E)-3-ブロモブテ-2-エナール(85)(Romo, 1998)、(E)-2-(トリブチルスタンニル)ビニル亜鉛クロリド(63)(Pihko, 1999)、(E)-メチル10−ヨードデセ-9-エノアート(Zhang, 2006)、ジオールCH3-CH(OH)-CH(CH3)-CH(OH)-CH(CH3)-CH2-O-CH2-C6H5(Paterson, 2001)、及びジクロロメチルピナコールボロン酸エステル(Wuts, 1982; Raheem, 2004)。
【0101】
鈴木-宮浦クロスカップリング反応を、典型的には、ポリ(テトラフルオロエチレン)-線入プラスチックキャップで密封され、オーブン又は火力乾燥されたアイ-ケム(I-Chem)又はホイートン(Wheaton)バイアル中においてアルゴン雰囲気下で実施した。他に記載しない限りは、アルゴン又は窒素の正圧下、ゴム隔膜で固定され、オーブン又は火力乾燥された丸底又は改良シュレンク(Schlenk)フラスコにおいて、全ての他の反応を実施した。減圧下、ロータリーエバポレーターを介して、有機溶液を濃縮した。E.メルク(Merck)シリカゲル60F254プレート(0.25mM)において、指示溶媒を使用して実施される分析用薄層クロマトグラフィー(TLC)により、反応をモニターした。化合物を、UVランプ(λ=254nm)、ヨウ素を含有するガラスチャンバー、及び/又はKMnO4溶液、p-アニスアルデヒドの酸性溶液、又はモリブデン酸セリウムアンモニウム(CAM)溶液に暴露し、バリテンプ(Varitemp)加熱ガンを使用して簡単に加熱することにより可視化させた。EMメルクシリカゲル60(230-400メッシュ)を使用し、Stil及び共同研究者により記載されているようにして(Still, W.C., 1978)、フラッシュカラムクロマトグラフィーを実施した。
【0102】
以下の機器:バリアン・ユニティ(Varian Unity)400、バリアン・ユニティ500、バリアン・ユニティ・イノバ(Inova)500NBの一つにおいて、1H NMRスペクトルを23℃で記録した。化学シフト(δ)をテトラメチルシランからの100万分の1(ppm)低磁場で報告し、NMR溶媒中の残留プロチウム(CHCl3、δ=7.26; CD2HCN、δ=1.93、中心線)、又は添加されたテトラメチルシラン(δ=0.00)を基準とした。データには以下の通りに報告する:化学シフト、多重度(s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、sept=七重線、m=多重項、b=広域、app=みかけ)、ヘルツ(Hz)での結合定数(J)、及び積分。
【0103】
以下の機器:バリアン・ユニティ500又はバリアン・ユニティ・イノバ500NBの一つにおいて、1C NMRスペクトルを23℃で記録した。化学シフト(δ)をテトラメチルシランからのppm低磁場で報告し、NMR溶媒中における炭素共鳴(CDCl3、δ=77.0中心線;CD3CN、δ=1.30、中心線)、又は添加されたテトラメチルシラン(δ=0.00)を基準とした。炭素を担持しているホウ素置換基は観察されなかった(四重極緩和)。
【0104】
11B NMRは、ゼネラル・エレクトリック(General Electric)GN300WB機器を使用して記録され、(BF3・Et2O)の外部標準を基準とした。化学的質量分析研究所(Chemical Sciences Mass Spectrometry Laboratory)のイリノイ校(Illinois School)の大学で、Furong Sun及びDr. Steve Mullenにより、高分解能質量分析(HRMS)を実施した。内部基準を用い、マットソン・ギャラクシー・シリーズ(Mattson Galaxy Series)FTIR5000分光計において、NaClプレートの薄層から、赤外線スペクトルを収集した。吸収極大(vmax)を波数(cm-1)で報告する。イリノイ・ジョージ・エル・クラークX線機関(Illinois George L. Clark X-Ray facility)の大学で、Dr. Scott Wilsonにより、X線結晶学的解析を実施した。
【0105】
実施例1:三価の基を有する保護された有機ボロン酸の調製
保護された有機ボロン酸3aを形成させるために、500mLのフラスコに、p-トリルボロン酸(3.00g、22.1mmol、1当量)、N-メチルイミノ二酢酸(3.25g、22.1mmol、1当量)、ベンゼン(360mL)及びDMSO(40mL)を充填した。フラスコをディーン・スターク・トラップ(Dean-Stark trap)及び還流冷却器に固定し、混合物を16時間、攪拌しつつ還流し、真空で濃縮した。得られた粗生成物をMeCN溶液からのフロリジルゲルに吸着させた。得られたパウダーを、EtOAcと共にスラリー充填されたシリカゲルカラムの頂部に乾燥充填(dry-loaded)した。勾配(EtOAc→EtOAc:MeCN 2:1)を使用して生成物を溶出させたところ、無色の結晶性固形物としてボロン酸エステル3a(5.05g、93%)が生じた。3aのX線構造を図3に示す。
【0106】
保護された有機ボロン酸3cを形成させるために、250mLの丸底フラスコに、p-トリルボロン酸(7.36mmol、1.00g)、N-イソプロピルイミノ二酢酸(7.36mmol、1.29g)、ベンゼン(150mL)及びDMSO(15mL)を充填した。フラスコをディーン・スターク・トラップ及び還流冷却器に固定し、混合物を14時間、攪拌しつつ還流し、真空で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(Et2O→Et2O:MeCN 1:2)により精製したところ、無色の結晶性固形物としてボロン酸エステル3c(747mg、37%)が生じた。
【0107】
保護された有機ボロン酸3dを形成するために、100mLの丸底フラスコに、p-トリルボロン酸(3.68mmol、500mg)、N-メチルジエタノールアミン(3.68mmol、422μL)及びトルエン(70mL)を充填した。フラスコをディーン・スターク・トラップ及び還流冷却器に固定し、溶液を8時間、攪拌しつつ還流し、23℃まで冷却させた。ついで、CaCl2(約200mg、微粉)及びNaHCO3(約200mg)を添加し、得られた混合物を15分攪拌し、ついで濾過した。濾液を真空で濃縮し、残留溶媒をCH2Cl2と共に同時蒸発させることにより除去したところ、無色の結晶性固形物としてボロン酸エステル3d(399mg、50%)が生じた。
【0108】
実施例2:三価の基を有する保護された有機ボロン酸及び保護されていない有機ボロン酸の反応性研究
実施例1の化合物の反応性研究を以下の通りに実施した。グローブボックス中において、小さな攪拌棒が具備され、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)ビフェニルリガンドが収容されたバイアルに、THFにPd(OAc)2が入った0.02M溶液を添加し、ホスフィンリガンドに関する0.04M溶液を得た。PTFE-線入キャップでバイアルを密封し、グローブボックスから取り出し、30分攪拌しつつ65℃で維持したところ、触媒保存溶液が得られた。
【0109】
グローブボックス中において、小さな攪拌棒が具備されたガラスバイアルに、ボロン酸エステル3(0.06mmol)、及び微細に挽いたパウダーとしての無水K3PO4を充填した。ついで、このバイアルに、4-ブチルフェニルボロン酸(0.24M、0.06mmol)、4-ブロモベンズアルデヒド(0.20M、0.05mmol)及びビフェニル(0.08M、HPLC分析用の内部標準)のTHF溶液を250μL添加した。最終的に、この同じバイアルに、上述した触媒保存溶液を50μL添加した。ついで、PTFE-線入キャップでバイアルを密封し、グローブボックスから取り出し、12時間分攪拌しつつ、油浴で65℃に維持した。ついで、反応溶液を23℃まで冷却し、シリカゲルのプラグを介して濾過し、MeCN:THF 1:1で溶出させた。ついで、濾液をHPLCにより分析した。
【0110】
生成物5及び6の比率を、ウォーターズ・サンファイア・プレップC185μmカラム(10x250mm、Lot番号156-160331)を具備し、4mL/分の流量、23分以上、5:95→95:5のMeCN:H2O勾配、268nm(4-ブロモベンズアルデヒド、tR=14.66分;ビフェニル、tR=21.80分)及び293nm(5、tR=25.79分;6、tR=20.50分;293nmでの5及び6の吸収係数が、実験誤差の限界内と等しいと決定された)でのUV検出を用いたHPLCシステム(Agilent Technologies)を使用して測定した。
【0111】
反応及び特徴付けを、保護された有機ボロン酸3a、3b、3c及び3dについて実施した。それぞれの種について、保護された有機ボロン酸の出発濃度は0.06mmolであった。反応を3回実施し、生成物比率の平均値を求めた。3aの反応により、5:6が24:1.0の比率で生じた。3bの反応により、5:6が1.0:1.0の比率で生じた。3cの反応により、5:6が26:1.0の比率で生じた。これらの結果を図4に列挙する。
【0112】
実施例3:ハロゲン-官能化され、保護された有機ボロン酸の調製
保護されたハロ有機ボロン酸を合成するための一般的方法は以下の通りである。攪拌棒が具備された丸底フラスコに、ハロボロン酸(1当量)、N-メチルイミノ二酢酸(1-1.5当量)、及びベンゼン:DMSO(10:1)を充填した。フラスコをディーン・スターク・トラップ(Dean-Stark trap)及び還流冷却器に固定し、混合物を12-18時間、攪拌しつつ還流した。反応溶液を23℃まで冷却し、溶媒を真空で除去した。得られた粗固体をMeCN溶液からのフロリジルゲルに吸着させた。得られたパウダーを、Et2Oと共にスラリー充填されたシリカゲルカラムの頂部に乾燥充填した。大量のEt2Oを用いて、カラムを洗い流し;ついで、Et2O:MeCNの混合物を用いて、生成物を溶出させた。このようにして得られた全ての生成物は、空気下、23℃で無期限に卓上安定している、分析的に純粋で、無色の結晶性固形物であった。収率を以下及び図5に記載する。
【0113】
保護されたハロ有機ボロン酸8aについて、一般的手順は以下の通りであり、4-ブロモフェニルボロン酸(1.00g、4.98mmol、1当量)、N-メチルイミノ二酢酸(733mg、4.98mmol)、ベンゼン(150mL)及びDMSO(15mL)を使用した。混合物を12時間還流した。勾配;Et2O→Et2O:CH3CN 1:1を用い、生成物を溶出させた。分析的に純粋で、無色の結晶性固形物として、化合物8a(1.53g、98%)が単離された。
【0114】
保護されたハロ有機ボロン酸8bについて、一般的手順は以下の通りであり、3-ブロモフェニルボロン酸(2.00g、9.96mmol)、N-メチルイミノ二酢酸(1.47g、9.96mmol)、ベンゼン(300mL)及びDMSO(30mL)を使用した。混合物を18時間還流した。Et2O:CH3CN 1:1を用い、生成物を溶出させた。分析的に純粋で、無色の結晶性固形物として、化合物8b(2.89g、93%)が単離された。
【0115】
保護されたハロ有機ボロン酸8cについて、一般的手順は以下の通りであり、2-ブロモフェニルボロン酸(2.00g、9.96mmol)、N-メチルイミノ二酢酸(1.47g、9.96mmol)、ベンゼン(300mL)及びDMSO(30mL)を使用した。混合物を13時間還流した。Et2O:MeCN 1:1を用い、生成物を溶出させた。分析的に純粋で、無色の結晶性固形物として、化合物8c(3.01g、97%)が単離された。
【0116】
保護されたハロ有機ボロン酸8dについて、一般的手順は以下の通りであり、4-ブロモチオフェン-2-ボロン酸(281mg、1.36mmol)、N-メチルイミノ二酢酸(240mg、1.63mmol)、ベンゼン(50mL)及びDMSO(5mL)を使用した。混合物を13時間還流した。Et2O:MeCN 3:1を用い、生成物を溶出させた。分析的に純粋で、無色の結晶性固形物として、化合物8d(429mg、99%)が単離された。
【0117】
保護されたハロ有機ボロン酸8eについて、一般的手順は以下の通りであり、2-(3-ブロモフェニル)エテニルボロン酸(227mg、1.0mmol)、N-メチルイミノ二酢酸(147mg、1.0mmol)、ベンゼン(50mL)及びDMSO(5mL)を使用した。混合物を11時間還流した。Et2O:MeCN 5:1を用い、生成物を溶出させた。分析的に純粋で、無色の結晶性固形物として、化合物8e(334mg、99%)が単離された。
【0118】
保護されたハロ有機ボロン酸8fについて、最初は保護されていないボロン酸、2-(3-ブロモフェニル)シクロプロピルボロン酸を、化合物8eから形成させた。0℃で、250mLのシュレンクフラスコにおいて、THF(24mL)に8e(1.21g、3.59mmol)及びPd(OAc)2(0.0239g、0.11mmol)が入った攪拌溶液に、新たに調製されたジアゾメタン(0.25M溶液を35mL、8.8mmol)のエーテル含有溶液を、20分以上かけて滴下した。ついで、THF(1mL)溶液として、さらなるPd(OAc)2(0.0239g、0.11mmol)を添加し、ついで、0.25Mのエーテル含有ジアゾメタン(8.8mmol)をさらに35mL、20分以上かけて滴下した。ついで、反応物を23℃まで温め、N2流下で、過剰のジアゾメタンを除去した。ついで、粗反応混合物を0.5M、pH7.0のリン酸ナトリウムバッファー120mLに注ぎ、THF:Et2O 1:1(3x120mL)で抽出した。次に、組合せた有機フラクションをブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、Et2O→Et2O:CH3CN 1:1)での精製により、8f(1.21g、96%)が生じた。THF(20mL)に8f(0.513g、1.46mmol)が入った攪拌溶液に、1MのNaOH水(4.37mL、4.37mmol)を添加し、得られた混合物を23℃で20分攪拌した。ついで、0.5M、pH7のホスファートバッファー(20mL)を添加することにより反応を停止させ、Et2O(20mL)で希釈した。相分離させ、水性相をTHF:Et2O 1:1(40mL)で抽出した。組合せた有機フラクションをMgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、無色の固形物として所望の2-(3-ブロモフェニル)シクロプロピルボロン酸(0.339g、97%)が生じた。
【0119】
8fは、2-(3-ブロモフェニル)シクロプロピルボロン酸への中間体として形成されるが、化合物は、2-(3-ブロモフェニル)シクロプロピルボロン酸とN-メチルイミノ二酢酸とを反応させることにより形成することもできる。このケースにおいて、一般的手順は以下の通りであり、2-(3-ブロモフェニル)シクロプロピルボロン酸(316mg、1.31mmol)、N-メチルイミノ二酢酸(232mg、1.58mmol)、ベンゼン(50mL)及びDMSO(5mL)を使用した。混合物を6時間還流した。MeCN:Et2O 5:1を用い、生成物を溶出させた。分析的に純粋で、無色の固形物として、化合物8f(408mg、88%)が単離された。
【0120】
実施例4:鈴木-宮浦反応における、ハロゲン基を有する保護された有機ボロン酸の反応
実施例3の化合物の反応性研究を、以下の通りに実施した。グローブボックスにおいて、攪拌棒が具備されたバイアルにホスフィンリガンドを添加した。ついで、バイアルに、十分な量のTHFにPd(OAc)2が入った0.02M溶液を添加し、ホスフィンリガンドに関する0.04M溶液を得た。PTFE-線入キャップでバイアルを密封し、グローブボックスから取り出し、30分攪拌しつつ65℃で維持したところ、触媒保存溶液が得られた。
【0121】
攪拌棒が具備された40mLのバイアルに、実施例3のハロボロン酸エステル(1.0mmol)及びボロン酸(典型的には1.2−1.5mmol)を添加した。バイアルをグローブボックスに入れた。バイアルにK3PO4(3.0mmol、636.8mg、微細に挽いたパウダー)、THF(9.0mL)、ついで、触媒保存溶液(1.0mL)を添加した。PTFE-線入キャップでバイアルを密封し、グローブボックスから取り出し、12時間攪拌しつつ、65℃の油浴に配した。反応混合物を23℃まで冷却し、砂、ついでセライトで蓋をされた非常に薄いシリカゲルパッドを通して濾過し、十分な量のMeCNで溶出させた。得られた溶液にフロリジルゲル(約25mg/mLの溶液)を添加し、ついで、溶液を真空で除去した。得られたパウダーを、Et2Oと共にスラリー充填されたシリカゲルカラムの頂部に乾燥充填した。大量のEt2Oを用いて、カラムを洗い流し;ついで、Et2O:MeCNを用いて、生成物を溶出させた。反応収率を図6に列挙する。
【0122】
保護された有機ボロン酸9aについて、一般的手順は以下の通りであり、8a(312mg、1.00mmol)、トリルボロン酸(163mg、1.20mmol)、及び2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニルを使用した。Et2O:MeCN 1:1を用い、生成物を溶出させた。無色の固形物として、化合物9a(280mg、87%)が単離された。この同様の反応を、グローブボックスを使用することなく、標準的なシュレンク技術を用いてセットした。攪拌棒が具備され、火力乾燥された25mLのシュレンクフラスコを空にし、アルゴンを3回パージした。このフラスコに2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-ビフェニル(14.1mg、0.04mmol)Pd(OAc)2(4.4mg、0.02mmol)、及びTHF(10mL)を充填した。ついで、フラスコを還流冷却器に固定し、黄色の液体を加熱して、5分還流し、変色させた。攪拌棒が具備され、火力乾燥された25mLの分離用シュレンクフラスコを空にし、アルゴンを3回パージした。このフラスコにハロボロン酸エステル8a(312.1mg、1.00mmol)、トリルボロン酸(163.2mg、1.20mmol)、及び新たに挽いた無水K3PO4(637.2mg、3.00mmol)を充填した。ついで、このフラスコを還流冷却器に固定した。ついで、カニューラを介して、カップリングパートナーと塩基を収容するフラスコに、触媒溶液を移した。得られた混合物を12時間、還流して加熱した。上述した一般的手順に記載したように、反応を進行させた。生成物をEt2O:MeCN 3:1→1:1で溶出させた。ほとんど無色の固形物として、化合物9a(279.6mg、87%)が単離された。
【0123】
保護された有機ボロン酸9bについて、一般的手順は以下の通りであり、8b(312mg、1.00mmol)、トリルボロン酸(163mg、1.20mmol)、及び2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニルを使用した。Et2O:MeCN 1:1を用い、生成物を溶出させた。無色の結晶性固形物として、化合物9b(276mg、85%)が単離された。
【0124】
保護された有機ボロン酸9cについて、一般的手順は以下の通りであり、8c(312mg、1.00mmol)、トリルボロン酸(172mg、2.00mmol)及び2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニルを使用した。Et2O:MeCN 5:1→1:1の勾配を用い、生成物を溶出させた。淡黄色固形物として、化合物9c(257mg、80%)が単離された。
【0125】
保護された有機ボロン酸9dについて、一般的手順は以下の通りであり、8d(318mg、1.00mmol)、トリルボロン酸(204mg、1.50mmol)、K2CO3(415mg、3.00mmol)及び2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-2',4',6'-トリ-イソプロピル-1,1'-ビフェニルを使用した。Et2O:MeCN 5:1→3:1の勾配を用い、生成物を溶出させた。淡黄色固形物として、化合物9d(266mg、81%)が単離された。
【0126】
保護された有機ボロン酸9eについて、一般的手順は以下の通りであり、8e(338mg、1.00mmol)、トリルボロン酸(163mg、1.20mmol)、及び2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニルを使用した。Et2O:MeCN 5:1を用い、生成物を溶出させた。オフホワイト色の固形物として、化合物9e(282mg、82%)が単離された。
【0127】
保護された有機ボロン酸9fについて、一般的手順は以下の通りであり、8f(237mg、0.674mmol)、トリルボロン酸(109mg、0.808mmol)、K3PO4(429mg、2.02mmol)、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニルの触媒保存溶液(674μl)、及びTHF6.06mLを使用した。Et2O:MeCN (1:1)を用い、生成物を溶出させた。オフホワイト色の結晶性固形物として、化合物9f(229mg、94%)が単離された。
【0128】
実施例5:保護された有機ボロン酸の脱保護
実施例4の保護された有機ボロン酸を脱保護するための一般的方法は以下の通りである。攪拌棒が具備された丸底フラスコに、ボロン酸エステル(1当量)、THF(10mL)、及び1MのNaOH水(3当量)を充填し、得られた混合物を23℃で10分、激しく攪拌した。ついで、反応混合物をリン酸ナトリウムバッファー水(0.5M、pH7.0、10mL)及びEt2O(10mL)で希釈し、相分離させ、水性相THF:Et2O 1:1(20mL)で1回抽出した。(時折、リン酸塩は沈殿し、抽出プロセス中、水を添加することにより再溶解させた。ついで、組合せた有機フラクションをMgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。残留溶媒をMeCNと共に同時蒸発させた。反応収率を図6に列挙する。
【0129】
有機ボロン酸10aについて、一般的手順は以下の通りであり、9a(261mg、0.806mmol)及び1MのNaOH水(2.42mL、2.42mmol)を使用した。白色の固形物として、化合物10a(147.4mg、86%)が単離された。
【0130】
有機ボロン酸10bについて、一般的手順は以下の通りであり、9b(268mg、0.830mmol)及び1MのNaOH水(2.49mL、2.49mmol)を使用した。白色の固形物として、化合物10b(161mg、92%)が単離された。
【0131】
有機ボロン酸10cについて、一般的手順は以下の通りであり、9c(236mg、0.729mmol)及び1MのNaOH水(2.19mL、2.19mmol)を使用した。白色の固形物として、化合物10c(150mg、97%)が単離された。他のアプローチにおいては、NaOHの代わりに、NaHCO3を用いて加水分解を実施した。この脱保護は以下の通りに実施した。攪拌棒が具備され、8c(0.672mmol、217mg)が収容された40mLのアイ-ケムバイアルに、MeOH(7mL)及び飽和したNaHCO3水(3.5mL)を添加した。混合物を23℃で6時間、激しく攪拌した。ついで、混合物を飽和したNH4Cl水(7mL)及びEt2O(14mL)で希釈し、相分離させた。水性相をEt2O(14mL)で2回抽出し、組合せた有機相をMgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。残留物をMeCNに2回懸濁させ、ついで真空で蒸発させ、CH2Cl2に溶解させ、真空で濃縮したところ、無色の結晶性固形物として10c(121mg、85%)が生じた。
【0132】
有機ボロン酸10dについて、一般的手順は以下の通りであり、9d(226mg、0.686mmol)及び1MのNaOH水(2.06mL、2.06mmol)を使用した。淡緑色の固形物として、化合物10d(131mg、88%)が単離された。
【0133】
有機ボロン酸10eについて、一般的手順は以下の通りであり、9e(243mg、0.696mmol)及び1MのNaOH水(2.09mL、2.09mmol)を使用した。オフホワイト色の固形物として、化合物10e(138mg、83%)が単離された。
【0134】
有機ボロン酸10fについて、一般的手順は以下の通りであり、9f(202mg、0.56mmol)及び1MのNaOH水(1.67mL、1.67mmol)を使用した。淡オフホワイト色の固形物として、化合物10f(127mg、91%)が単離された。
【0135】
実施例6:ラタニンの全合成に使用するための保護された有機ボロン酸の調製
5-ブロモ-2-ベンゾフラニルボロン酸(Friedman, M. R., 2001)(1.33g、5.50mmol)、N-メチルイミノ二酢酸(970mg、6.60mmol)、ベンゼン(80mL)及びDMSO(8mL)を使用し、実施例3の一般的手順により、保護されたハロ有機ボロン酸13を合成した。混合物を13時間還流した。Et2O:MeCN 1:1→1:2の勾配を用い、生成物を溶出させた。分析的に純粋で、オフホワイト色の結晶性固形物として、化合物13(1.73g、90%)が単離された。
【0136】
実施例7:ラタニンの全合成に使用するための保護された有機ボロン酸の調製
保護されたハロ有機ボロン酸14を、複数回工程のプロセスにより合成した。アセトン(55mL)に2-ブロモ-5-メトキシフェノール(Albert, 2002)(2.19g、10.8mmol)及びK2CO3(4.46g、32.3mmol)が入った攪拌混合物に、クロロメチルメチルエーテル(1.63mL、21.5mmol)を添加した。混合物を濾過し、濾液を真空で濃縮した。ついで、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン:EtOAc 95:5)により精製したところ、無色の液体として、2-ブロモ-5-メトキシ-1-メトキシメトキシベンゼン(2.43g、92%)が提供された。
【0137】
−95℃(ヘキサン/N2)で、THF(13mL)に2-ブロモ-5-メトキシ-1-メトキシメトキシベンゼン(1.04g、4.23mmol)が入った攪拌溶液に、n-BuLi(ヘキサンに1.6M、2.91mL、4.65mmol)を添加し、得られた溶液を5分攪拌した。ついで、黄色の色調が持続するまで、THF(8.5mL)にI2(1.28g、5.07mmol)が入った溶液を、この溶液にシリンジにより添加した。ついで、溶液を23℃まで温め、真空で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、石油エーテル:Et2O 8:1)により精製したところ、淡オレンジ色の油として、2-ヨード-5-メトキシ-1-メトキシメトキシベンゼン(1.04g、84%)が提供された。Tsukayama, M., 1997を参照。
【0138】
MeCN(55mL)に2-ヨード-5-メトキシ-1-メトキシメトキシベンゼン(5.24g、17.8mmol)が入った攪拌溶液に、シリカゲル(1.32 g)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(60mg)、ついでN-ブロモスクシンイミド(3.17g、17.8mmol)を添加した。混合物を23℃で1時間攪拌し、ついで濾過した。濾液を真空で濃縮し、残留物をCH2Cl2(100mL)に溶解させた。この溶液に水(100mL)を添加し、得られた混合物を5分、激しく攪拌した。ついで、相分離させ、水性相をCH2Cl2(2×100mL)で抽出した。組合せた有機物をMgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。残留物をフラッシュ-カラムクロマトグラフィー(SiO2、石油エーテル:Et2O 8:1)により精製したところ、黄色の油として、2-ヨード-4-ブロモ-5-メトキシ-1-メトキシメトキシベンゼン(5.05g、76%)が提供された。
【0139】
グローブボックスにおいて、攪拌棒が具備され、2-ヨード-4-ブロモ-5-メトキシ-1-メトキシメトキシベンゼン(500mg、1.34mmol)が収容された40mLのアイ-ケムバイアルに、酢酸カリウム(395mg、4.02mmol)、ビス(ネオペンチルグリコラト)二ホウ素(363mg、1.61mmol)及びPdCl2(dppf)(33mg、0.040mmol)を添加した。バイアルを隔膜キャップで封鎖し、ついで、グローブボックスから取り出した。ついで、バイアルにDMSO(11mL)を添加し、得られた混合物をアルゴン雰囲気下で密封し、80℃で13時間攪拌した。ついで、混合物を23℃まで冷却し、1MのNaOH水(0.9mL、0.9mmol)を添加した。混合物を23℃で10分攪拌し、ついで、飽和したNH4Cl水(50mL)、水(50mL)、及びEt2O(100mL)で希釈した。相分離させ、有機相を水(3×100mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。残留物をMeCNに3倍溶解させ、真空で濃縮したところ、ライトブラウン色の固形物として、2-メトキシメトキシ-4-メトキシ-5-ブロモフェニルボロン酸の粗サンプル(343mg)が提供された:TLC(EtOAc)Rf=0.50、KMnO4により染色;1H-NMR(400MHzM、CDCl3)δ7.97(s,1H)、6.75(s,1H)、5.97(s,2H)、5.29(s,2H)、3.91(s,3H)、3.52(s,3H)。ベンゼン:DMSO(10:1)に溶解したこの粗ボロン酸に、N-メチルイミノ二酢酸(210mg、1.43mmol)を添加した。フラスコをディーン・スターク・トラップ及び還流冷却器に固定し、混合物を11時間、攪拌しつつ還流し、真空で濃縮した。得られた粗生成物をMeCN溶液からのフロリジルゲルに吸着させた。得られたパウダーを、Et2Oと共にスラリー充填されたシリカゲルカラムの頂部に乾燥充填した。大量のEt2Oを用いて、カラムを洗い流し、ついで、Et2O:MeCN 1:1を用いて、生成物を溶出させたところ、オフホワイト色の固形物として、ビルディングブロック14(365mg、2工程以上での収率68%)が生じた。
【0140】
実施例8:ラタニンの全合成に使用するためのハロ有機化合物の調製
ハロ有機化合物15を、複数回工程のプロセスにより合成した。23℃で、トルエンにメチルトリフェニルホスホニウムブロミド(14.08g、39.4mmol)が入った混合物に、THF(60mL)にtert-ブトキシド(4.47g、39.8mmol)が入った溶液を、カニューラを介して滴下し、得られた混合物を23℃で4時間攪拌した。得られた黄色の混合物を−78℃まで冷却し、トルエン(40mL)に4-ヨード-サリチルアルデヒド(4.35g、17.5mmol)が入った溶液を、カニューラを介して滴下した。得られた混合物を23℃までゆっくりと温め、その温度で12時間攪拌した。ついで、飽和した塩化アンモニウム水(100mL)を添加することにより、反応を停止させた。ついで、得られた混合物を水(200mL)で希釈し、Et2O(3×100mL)で抽出した。ついで、組合せた有機フラクションをブライン(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン:酢酸エチル 7:1→1:1)により精製したところ、無色の固形物として、2-ヒドロキシ-5-ヨードスチレン(4.0g、98%)が生じた。Gligorich, K. M., 2006を参照。
【0141】
23℃で、塩化メチレンに2-ヒドロキシ-5-ヨードスチレン、4-(メトキシメトキシ)安息香酸,及びDCCが入った攪拌溶液に、DMAPを添加し、得られた混合物を23℃で21時間攪拌した。ついで、反応混合物をセライトで濾過し、及び真空で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン:酢酸エチル 5:1)により精製したところ、無色の固形物として、(2-ビニル-4-ヨードフェニル)-4-メトキシメトキシベンゾアート(4.6g、79%)が生じた。
【0142】
0℃で、塩化メチレンに(2-ビニル-4-ヨードフェニル)-4-メトキシメトキシベンゾアート(2x50mLのベンゼンで共沸的に乾燥)が入った攪拌溶液に、5分以上、シリンジを介して臭素を添加した。得られた溶液を0℃でさらに5分攪拌し、ついで、0℃で30分以上、真空で濃縮した。0℃で3x15mLの塩化メチレンと共に、同時蒸発を介して残留臭素を除去した。ついで、得られた粗生成混合物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン:酢酸エチル 5:1→2:1)により精製したところ、無色の固形物として、(2-(1,2-ジブロモエチル)-4-ヨードフェニル)-4-メトキシメトキシベンゾアート(3.7g、59%)が生じた。
【0143】
23℃で、アセトニトリル(75mL)に、(2-(1,2-ジブロモエチル)-4-ヨードフェニル)-4-メトキシメトキシベンゾアート(3.61g、6.33mmol、アセトニトリルで共沸的に乾燥)が入った攪拌溶液に、2分以上、シリンジを介して、DBU(1.928g、12.7mmol、2.0当量)を滴下した。 得られた混合物を23℃で25分攪拌した。ついで、1MのHCl水(200mL)を添加することにより、反応を停止させ、得られた混合物を酢酸エチル(1x200mL及び2x125mL)で抽出した。組合せた有機フラクションをブライン(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、石油エーテル:Et2O 3:1)により、無色の油として、(2-(1-ブロモエテニル)-4-ヨードフェニル)-4-メトキシメトキシベンゾアート(3.01g、97%)が生じた。
【0144】
グローブボックスにおいて、攪拌棒が具備され、(2-(1-ブロモエテニル)-4-ヨードフェニル)-4-メトキシメトキシベンゾアート(0.8695g、1.78mmol;3x5mLのベンゼンで共沸的に乾燥)が収容された40mLのアイ-ケムバイアルに、THF(3.6mL)の溶液として、K3PO4(0.7548g、3.56mmol)、プロペニルボロン酸(0.183g、2.13mmol)、及び固形物としてPdCl2dppf(72.6mg、0.09mmol)を添加した。さらに6.8mLのTHFを添加し、得られた混合物をPTFE-線入キャップでバイアルを密封し、15時間分攪拌しつつ、65℃で維持した。ついで、得られた混合物を23℃まで冷却し、1M、pH7のホスファートバッファー(60mL)の添加によりクエンチし、ジエチルエーテル(3x60mL)で抽出した。ついで、組合せた有機フラクションを水(20mL)とブライン(40mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、トルエン)により、無色の油として、ハロ有機化合物15(0.4994g、1.24mmol、70%)が生じた。
【0145】
実施例9:反復鈴木-宮浦反応を使用するラタニンの全合成
鈴木-宮浦カップリング反応を、15と保護されたハロ有機ボロン酸13及び14を用い、実施例4の一般的手順を使用して実施した。反応スキーム及び収率を図10に付与する。第1工程において、反応体は、13(352mg、1.00mmol)と(E)-1-プロペニルボロン酸(144mg、2.00mmol)であった。Et2O:MeCN 10:1→1:1の勾配を使用し、生成物を溶出させた。無色の結晶性固形物として、所望の生成物16(251mg、80%)が単離された。
【0146】
16(313mg、1.00mmol)、1MのNaOH水(3.0mL、3.0mmol)を使用し、実施例5のボロン酸エステルの脱保護のための一般的手順を行ったところ、オフホワイト色の固形物として、遊離のボロン酸(188mg、93%)が提供された;TLC:(EtOAc)Rf=0.2、UVにより可視化;HRMS(EI+):C11H11O3B(M)+についての算出値202.0801、実測値202.0805。遊離のボロン酸は保存時における分解に対して非常に敏感であることが見出され、よって次の反応に直ちに使用した。グローブボックスにおいて、14(141mg、0.351mmol)が収容された40mLのアイ-ケムバイアルに、THF(3.15mL)の溶液として遊離のボロン酸(106mg、0.526mmol)、続いて固形状K2CO3(145mg、1.05mmol)を添加した。ついで、65℃で30分プレインキュベートされ、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル(0.04 M)とPd2dba3(0.01M)を含有するTHF触媒保存溶液350μLを、攪拌しつつ、バイアルに添加した。バイアルをPTFE線入キャップで封鎖し、クローブボックスから取り出し、28時間攪拌しつつ、80℃で維持した。反応混合物を23℃まで冷却し、セライトで蓋をされた、薄いシリカゲルパッドを通して濾過し、十分な量のEt2Oで溶出させた。濾液を真空で濃縮し、得られた粗生成物をMeCN溶液からのフロリジルゲルに吸着させた。得られたパウダーを、Et2Oと共にスラリー充填されたシリカゲルカラムの頂部に乾燥充填した。大量のEt2Oを用いて、カラムを洗い流し;ついで、Et2O:MeCN 3:1を用いて、生成物を溶出させたところ、オフホワイト色の固形物として、保護された有機ボロン酸17(123mg、73%)が生じた。
【0147】
攪拌棒が具備された6mLのバイアルに、保護された有機ボロン酸17(51mg、0.106mmol)、THF(1.0mL)、1MのNaOH水(0.32mL、0.32mmol)を充填した。得られた混合物を10分、激しく攪拌し、ついで、0.5M、pH7のホスファートバッファー(2.0mL)及びEt2O(1.0mL)で希釈した。相分離させ、水性相をTHF:Et2O 1:1(2.0mL)で1回抽出した。組合せた有機物をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、ついで真空で濃縮した。PhMe、ついでMeCN(2X)、さらにCH2Cl2(2X)(浴温を<30℃で維持)を用いた同時蒸発を介して、残留溶媒を除去したところ、オフホワイト色の固形物として、遊離のボロン酸(39.2mg、99%)が生じた:TLC(EtOAc)Rf=0.53、UVにより可視化;1H NMR(400MHz,CDCl3)δ8.49(s,1H)、7.49(s,1H)、7.42(d,J=8Hz,1H)、7.26(m,1H)、7.17(s,1H)、6.84(s,1H)、6.49(d,J=16Hz,1H)、6.20(dq,J=16, 6.4Hz,1H)、5.77(s,2H)、5.35(s,2H)、4.03(s,3H)、3.55(s,3H)、1.90(d,J=6.4Hz,3H);HRMS(TOF ES+):C20H22O6B(M+H)+についての算出値369.1509、実測値369.1515。
【0148】
ついで、この遊離のボロン酸を、15(28.5mg、0.071mmol)を収容する6mLのバイアルに、THFの溶液として定量的に移し、溶媒を真空で除去した。グローブボックスにおいて、固形状K2CO3(39.2mg、0.28mmol)、及び新たに調製された2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル(0.008M)のTHF溶液(1.06mL)及びPd2dba3(0.002M)を、このバイアルに添加した。攪拌棒を加え、バイアルをPTFE線入キャップで封鎖し、グローブボックスから取り出し、20時間攪拌しつつ、65℃で維持した。ついで、反応混合物を23℃まで冷却し、セライトで蓋をされた、薄いシリカゲルパッドを通して濾過し、十分な量のEtOAcで溶出させた。濾液を真空で濃縮し、得られた粗生成物をCH2Cl2溶液からのフロリジルゲルに吸着させた。得られたパウダーを、ヘキサン:EtOAc 10:1と共にスラリー充填されたシリカゲルカラムの頂部に乾燥充填した。カラムを、ヘキサン:EtOAc 10:1→3:1で溶出させたところ、粘性のある黄色の油として、保護されたラタニン18(37.0mg、81%)が生じた。
【0149】
最適化されていない手順において、攪拌棒が具備された6mLのバイアルに、18(27mg、0.042mmol)、THF(0.3mL)、MeOH(0.6mL)、及び濃HCl(12μL)を充填した。バイアルをPTFE線入キャップで封鎖し、1時間攪拌しつつ、65℃で維持した。ついで、溶液を23℃まで冷却し、H2O(1mL)、THF(1mL)及びEt2O(2mL)で希釈した。相分離させ、水性相をEtOAcで繰り返し抽出した。
組合せた有機物を真空で濃縮し、得られた粗生成物を調整用HPLC(ウォーターズ・サンファイア・プレップC18 ODB 30x150mmカラム、Lot#168I1617、25mL/分、20分以上、H2O:MeCN 95:5→5:95、ついで15分、H2O:MeCN 5:95;tR=24.84分、325及び218nmでUV検出)で精製したところ、11(9.6mg、41%)が生じた[1H NMR分析により、このサンプルが少量(〜5-10%)の同定されていない不純物を含有していることが示された]。最適化された調整用HPLC法が続いて開発され(ウォーターズ・サンファイア・プレップC18 ODB 30x150mmカラム、Lot#168I161701、33mL/分、isochratic H2O:MeCN 20:80;tR=21.72分、325及び218nmでUV検出)、純粋な天然生成物が生じた。合成11の1H NMR、13C NMR、HRMS、及びIR分析は、単離された天然生成物ラタニンについて報告されているデータと、完全に一致し、よってArnone及び共同研究者(Arnone, 1990)により提案されている元々の構造が確認された。
【0150】
実施例10:保護基の立体構造的強固性の測定
化合物19及び193の有機保護基の立体構造的強固性を、「立体構造的強固性テスト」により測定した。193のサンプル(約10mg)を無水d6-DMSOに溶解させ、5mmのNMRチューブに移した。サンプルをバリアン・ユニティ500MHz NMR分光計において分析した。第1に、23℃で1H-NMRを得た。ついで、サンプル温度を徐々に、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃及び70℃と高めていった。各温度で、サンプルシムを最適化し、1H-NMRスペクトルを得た。23℃まで冷却されたときに、1H-NMRスペクトルが得られ、この温度で以前に得られていたものと同一であった。19のサンプル(約10mg)を無水d6-DMSOに溶解させ、5mmのNMRチューブに移した。1H-NMRスペクトルが23℃、60℃、80℃、110℃、150℃、ついで再度23℃で得れたことを除き、このサンプルを同じ方法で分析した。
【0151】
193について、ジアステレオトピックなメチレンプロトンに対応する、1H-NMRスペクトルの12のピークは、23℃で3.833〜3.932に存在した。温度が上昇すると、これらのピークは40℃程の温度で合体し始めた。ピークは、70℃で3.921での単一ピークに完全に合体した。よって、193の保護基は立体構造的に強固ではなかった。
【0152】
19について、ジアステレオトピックなメチレンプロトンに対応する、1H-NMRスペクトルの4つのピークは、23℃で3.992〜4.236に存在した。温度が上昇しても、これらのピークは4つの異なるピークに分裂したままであった。150℃で得られたスペクトルにおいてさえ、合体は何ら観察されなかった。よって、19の保護基は立体構造的に強固であった。
【0153】
実施例11:保護されたハロアルケニルボロン酸54aの合成
(E)-(2-ブロモエテニル)ジブロモボラン(59)を、文献の手順(Hyuga, S., 1987)に従い合成した。59との後続反応を、磁石式攪拌棒が具備され、オーブン乾燥された500mLの三口丸底フラスコにおいて、穏やかな光環境にて実施した。0℃、アルゴン下で、DMSO(250mL)にN-メチルイミノ二酢酸(MIDA、1)(16.93g、113.9mmol、1.50当量)及び2,6-ルチジン(17.69mL、151.86mmol、2.0当量)が入った攪拌混合物に、15分以上かけて、シリンジを介し、新たに蒸留された59(21.00g、75.93mmol)を滴下した。反応混合物を23℃まで温め、ついで、23℃で48時間攪拌した。得られた黄色の混合物を水(300mL)で処理し、THF:ジエチルエーテル 1:1(3x500mL)で抽出した。組合せた有機相をブライン(3x350mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、淡黄色の固形物が提供された。シリカゲルにおいて、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc:石油エーテル1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 9:1)で精製すると、結晶性固形物として、54a(11.98g、45.75mmol、60%)が得られた。23℃で酢酸エチルから、ゆっくりと蒸発させることにより、X線結晶学的分析に適した結晶に成長した。この物質を、空気下、23℃で1年間と6ヶ月間、分解することなく保存した。
【0154】
実施例12:ビス-ホウ素化オレフィンの合成、及び選択的クロスカップリングにおけるその使用
(E)-(2-ピナコールエテニル)ボロン酸エステル(61)の合成
触媒の溶液を以下の通りに調製した:磁石式攪拌棒が具備された20mLのホイートンバイアルに、PdCl2(CH3CN)2(7.9mg、0.030mmol、1.0当量)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシ-1,1'-ビフェニル(4d)(38.0mg、0.090mmol、3.0当量)を充填した。トルエン(3.00mL)を添加し、PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封した。得られた混合物を23℃で30分攪拌したところ、透明で黄色のPd/4d触媒溶液が生じた。
【0155】
ついで、この触媒溶液を以下の手順で利用した:磁石式攪拌棒が具備された30mLのホイートンバイアルに、54a(0.262g、1.00mmol、1.0当量)、ビス(ピナコラート)二ホウ素(60)(0.324g、1.25mmol、1.25当量)、酢酸カリウム(0.297g、3.00mmol、3.0当量)、トルエン(5.0mL)、及び触媒溶液(3.0mL、3.0mol%Pd)を充填した。PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封し、反応混合物を45℃で36時間攪拌した。得られた不均質な混合物を酢酸エチル(5.0mL)で希釈し、セライトの短いパッドを通して濾過した。濾液を真空で濃縮したところ、淡黄色の固形物が提供された。シリカゲルにおいて、この粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc:石油エーテル1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 15:1)で精製すると、無色の結晶性固形物として、(E)-(2-ピナコールエテニル)ボロン酸エステル61(0.219g、0.710mmol、71%)が得られた。23℃でEtOAcから、ゆっくりと蒸発させることにより、X線結晶学的分析に適した結晶に成長した。この物質を、空気下、23℃で1年間と6ヶ月間、分解することなく保存した。
【0156】
(E,E)-1,3-ブタジエニル-(4-クロロ)ボロナート(54b)の合成
攪拌棒が具備された20mLのアイ-ケムバイアルに、61(320mg、1.05mmol、1.0当量)、微細に挽かれた無水K3PO4(669mg、3.15mmol、3.0当量)、PdCl2dppf・CH2Cl2(26mg、0.32mmol、3mol%)、及び(E)-1-クロロ-2-ヨードエチレン(62)(396mg、2.10mmol、2.0当量)を添加した。PTFE線入キャップでバイアルを密封し、シリンジを介してDMSO(8.4mL)を添加した。得られた混合物を23℃で9時間攪拌した。0.5M、pH7のホスファートバッファー(8mL)を添加することにより、反応をクエンチさせ、得られた混合物をTHF:Et2O 1:1(4x15mL)で抽出した。組合せた有機抽出物をブライン(25mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。得られた残留物をアセトン(15mL)で希釈し、フロリジル(登録商標)において濃縮した。得られたパウダーをシリカゲルカラムの頂部に乾燥充填し、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc 1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 9:1)を実施したところ、無色の結晶性固形物として、54b(139mg、0.571mmol、54%)が生じた。
【0157】
実施例13:ビス-メタル化オレフィンの合成、及び選択的クロスカップリングにおけるその使用
(E,E)-1,3-ブタジエニル-4-(トリブチルスタンニル)ボロン酸エステル(64)
触媒の溶液を以下の通りに調製した:磁石式攪拌棒が具備され、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシ-1,1'-ビフェニル(4d)(15.2mg、0.037mmol、2.0当量)が収容された4mLのバイアルに、THF(0.095M、0.19mL、0.018mmol、1.0当量)にPd(OAc)2 が入った溶液を添加した。PTFE-線入キャップでバイアルを密封し、15分攪拌しつつ、23℃で維持したところ、透明で黄色のPd/4d触媒溶液が生じた。
【0158】
ついで、この触媒溶液を以下の手順で利用した:(E)-2-(トリブチルスタンニル)ビニル亜鉛クロリド(63)を、以前の文献(Pihko, 1999)に従い調製した。ネギシ試薬63の形成中、23℃で、THF(0.2mL)に54a(50mg、0.191mmol、1.0当量)が入ったスラリーに、上述した触媒保存溶液(0.10mL、0.0095mmolPd、5mol%Pd)を添加し、得られたスラリーを30分攪拌し、その後0℃まで冷却した。ついで、ネギシ試薬63を、5分以上かけて54a溶液にカニュレーションした。0℃で2時間後、反応物をEtOAc(10mL)で希釈し、ついで真空で濃縮した。得られた赤い油をEtOAcに溶解させ、大量のEtOAcと共に、シリカゲルの短いパッドを通して濾過し、濾液を真空で濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルにおいてフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc:ヘキサン 1:1→EtOAc)により精製したところ、淡黄色の泡として、64(62.2mg、0.125mmol、66%)が生じた。
【0159】
(E,E,E)-(6-クロロ)-1,3,5-ヘキサトリエニルボロン酸エステル(54c)
磁石式攪拌棒が具備された30mLのホイートンバイアルに、Pd2(dba)3(0.021g、0.023mmol、1.5mol%)、Ph3As(0.014g、0.046mmol、3.0mol%)、64(0.760g、1.53mmol、1.0当量)をDMF(5.0mL)の溶液として、最終的に(E)-1-クロロ-2-ヨードエチレン(0.575g、3.05mmol、2.0当量)を充填した。PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封し、反応混合物を23Coで3.5時間攪拌した。ついで、得られた深い赤色がかった混合物を飽和したNa2S2O3水(50mL)に添加し、得られた混合物をEtOAc(3x85mL)で抽出した。組合せた有機抽出物をブライン(3x50mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、オレンジ色の固形物が提供された。この粗生成物を、フロリジル(登録商標)におけるフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc 1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 9:1)により精製したところ、淡黄色の固形物として、54c(0.297g、1.10mmol、72%)が得られた。
【0160】
実施例14:保護されたハロアルケニルボロン酸54aを使用する選択的カップリング
鈴木-宮浦カップリング−(E,E)-1,3-ヘプタジエニルボロン酸エステル(68)の合成
触媒の溶液を以下の通りに調製した:磁石式攪拌棒が具備され、オーブン乾燥されたホイートンバイアルに、Pd(OAc)2(5.60mg、0.025mmol、1.0当量)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシ-1,1'-ビフェニル(4d)(20.5mg、0.050mmol、2.0当量)を充填した。トルエン(3.00mL)を添加し、PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封した。得られた混合物を23℃で45分攪拌したところ、黄色のPd/4d触媒溶液が生じた(トルエンに0.00833N Pd)。
【0161】
ついで、この触媒溶液を以下の手順で利用した:磁石式攪拌棒が具備され、オーブン乾燥されたホイートンバイアルに、54a(0.262g、1.00mmol、1.0当量)、(E)-1-ペンテニルボロン酸55(0.171g、1.50mmol、1.5当量)、KF(0.116g、2.00mmol、2.0当量)、トルエン(7.0mL)及び触媒溶液(1.20mL、0.01mmol、1.0 mol%Pd)を充填した。PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封し、反応混合物を23℃で36時間攪拌した。得られた不均質な淡黄色の混合物をアセトニトリル(10.0mL)で希釈し、セライトの短いパッドを通して濾過した。濾液を真空で濃縮した。ついで、シリカゲルにおいて、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc 1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 9:1)で精製すると、無色の結晶性固形物として、68(0.241g、0.959mmol、96%)が得られた。
【0162】
鈴木-宮浦カップリング−(E,E)-1,3-ブタジエニル-(4-フェニル)ボロン酸エステル(80)の合成
触媒の溶液を以下の通りに調製した:磁石式攪拌棒が具備された20mLのホイートンバイアルに、Pd(OAc)2(5.60mg、0.025mmol、1.0当量)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシ-1,1'-ビフェニル(4d)(20.5mg、0.050mmol、2.0当量)を充填した。トルエン(3.00mL)を添加し、PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封した。得られた混合物を23℃で45分攪拌したところ、黄色のPd/4d触媒溶液が生じた(トルエンに0.00833N Pd)。
【0163】
ついで、この触媒溶液を以下の手順で利用した:磁石式攪拌棒が具備された30mLのホイートンバイアルに、54a(0.262g、1.00mmol、1.0当量)、トランス-2-フェニルビニルボロン酸(0.229g、1.50mmol、1.5当量)、KF(0.116g、2.00mmol、2.0当量;54aに基づく)、トルエン(7.0mL)、及び触媒溶液(1.20mL、0.01mmol、1.0mol%Pd)を充填した。PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封し、反応混合物を23℃で24時間攪拌した。得られた不均質な黄色の混合物をアセトニトリル(10.0mL)で希釈し、アセトニトリル(100mL)を使用するセライトの短いパッドを通して濾過し、真空で濃縮した。ついで、シリカゲルにおいて、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc:石油エーテル 1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 2:1)で精製すると、無色の結晶性固形物として、80(0.263g、0.922mmol、92%)が得られた。
【0164】
スティルカップリング−(E,E)-1,3-ブタジエニル-ボロン酸エステル(70)の合成
磁石式攪拌棒が具備された30mLのホイートンバイアルに、54a(0.262g、1.00mmol、1.0当量)、Pd2dba3(0.037g、0.040mmol、4.0mol%Pd)、Fur3P(0.021g、0.090mmol、9.0mol%)、DMF(8.0mL)及びトリブチル(ビニル)スズ(69)(0.346mL、1.15mmol、1.15当量)を充填した。PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封し、反応混合物を45℃で12時間攪拌した。得られた赤みがかった混合物をブライン(50mL)で希釈し、ついで酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。組合せた有機フラクションを無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮した。シリカゲルにおいて、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc:石油エーテル 1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 15:1)で精製すると、無色の結晶性固形物として、70(0.190g、0.909mmol、91%)が得られた。
【0165】
ヘックカップリング−(E,E)-1,3-ブタジエニル-(4-メチルエステル)ボロン酸エステル(72)の合成
磁石式攪拌棒が具備された30mLのホイートンバイアルに、54a(0.262g、1.00mmol、1.0当量)、PPh3(0.0159g、0.060mmol、6.0mol%)、Pd(OAc)2(0.0067g、0.030mmol、3.0mol%Pd)、Et3N(0.279mL、2.00mmol、2.0当量;54aに基づく)、アクリル酸メチル(71)(0.136mL、1.50mmol、1.5当量)、及びDMF(7.0mL)を充填した。PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封し、反応混合物を45℃で12時間攪拌した。得られた混合物をブライン(50mL)で希釈し、酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。組合せた有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮した。シリカゲルにおいて、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc:石油エーテル 1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 15:1)で精製すると、淡黄色の固形物として、72(0.240g、0.898mmol、90%)が得られた。
【0166】
ソノガシラカップリング−(E)-2-トリメチルシリルエチレンボロン酸エステル(74)の合成
磁石式攪拌棒が具備された30mLのホイートンバイアルに、54a(0.262g、1.00mmol、1.0当量)、Pd(PPh)4(0.058g、0.050mmol、5.0mol%)、CuI(0.019g、0.100mmol、10.0mol%)、ピペリジン(0.227mL、2.30mmol、3.0当量)、THF(5.0mL)、及びトリメチルシリルアセチレン(73)(0.166mL、1.15mmol、1.5当量)を充填した。ついで、PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封し、反応混合物を23℃で3時間攪拌した。得られた混合物をEtOAc(5.0mL)で希釈し、EtOAc(100mL)を使用するシリカゲルの短いパッドを通して濾過した。濾液を真空で濃縮し、シリカゲルにおいて、得られた粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc:石油エーテル 1:1→EtOAc)で精製すると、無色の結晶性固形物として、74(0.203g、0.728mmol、73%)が得られた。
【0167】
実施例15:トリエニルクロリドとビニルボロン酸とのクロスカップリング
パラジウム触媒の溶液を以下の通りに調製した:攪拌棒が具備され、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',4',6'-トリ-イソ-プロピル-1,1'-ビフェニル(4c)(3.0mg、0.0063mmol、2.0当量)、THF(0.577mL)が収容された4mLのバイアルに、THF(0.00547M、0.577mL、0.0032mmol、1.0当量)にPd(OAc)2が入った溶液を添加した。PTFE-線入キャップでバイアルを密封し、23℃で15分攪拌した。
【0168】
ついで、この触媒溶液を以下の手順で利用した:磁石式攪拌棒が具備され、54c(11.0mg、0.0408mmol、1.0当量)が収容された7mLのバイアルに、(E)-1-ペンテン-1-イルボロン酸(55)(7.0mg、0.0612mmol、1.5当量)、Cs2CO3(39.9mg、0.122mmol、3.0当量)、THF(0.835mL)及び触媒溶液(0.298mL、2mol%Pd)を添加した。ついで、得られた混合物を、PTFE-線入プラスチックキャップで封鎖し、45℃で24時間攪拌した。(54c及び生成物75を、EtOAcを用いて2回溶出させることにより、TCLプレート上で良好に分離させた)。得られた不均質な混合物を酢酸エチル(〜1.0mL)で希釈し、大量のEtOAcと共に、フロリジル(登録商標)の薄いパッドを通して濾過した。フロリジル(登録商標)において、粗生成物をシリカゲルにおいてフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc 1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 15:1)で精製すると、黄色の固形物として、(E,E,E,E)-1,3,5,7-ウンデカテトラエニルボロン酸エステル75が得られた(7.9mg、0.0261mmol、64%)。
【0169】
実施例16:反復鈴木-宮浦反応を使用するオール-トランス-レチナールの全合成
第1のカップリング−テトラエニルボロン酸エステル(84)の合成
触媒の溶液を以下の通りに調製した:攪拌棒が具備され、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシ-1,1'-ビフェニル(4d)(23.1mg、0.056mmol、2.0当量)が収容された4mLのバイアルに、トルエン(0.038M、0.740mL、0.028mmol、1.0当量)にPd(OAc)2が入った溶液を添加した。PTFE-線入キャップでバイアルを密封し、15分攪拌しつつ、65℃で維持した。
【0170】
ついで、この触媒溶液を以下の手順で利用した:磁石式攪拌棒が具備され、トルエン(推定0.17M、11.5mL、1.96mmol、1.5当量)に83が入った溶液を溶液が収容された、40mLのアイ-ケムバイアルに、微細に挽かれたパウダーとして無水K3PO4 (0.833g、3.92mmol、3.0当量)、54a(0.342g、1.30mmol、1.0当量)、及び触媒溶液(0.688mL、0.026mmol Pd、2mol%Pd)を添加した。得られた混合物を、PTFE-線入キャップで封鎖し、23℃で60時間攪拌した。ついで、混合物を、大量のアセトニトリルと共に、シリカゲルのパッドを通して濾過した。得られた溶液にフロリジル(登録商標)を添加し、溶媒を真空で除去した。得られたパウダーをシリカゲルカラムの頂部に乾燥充填し、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc 1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 9:1)を実施したところ、黄色のパウダーとして、保護されたテトラエニルボロン酸エステル84(0.377g、1.02mmol、78%)が生じた。
【0171】
第2のカップリング−オールトランス-レチナール(49)の合成
MIDAボロナート84を、以下の手順を介して、その対応するボロン酸に転換させた。7mLのホイートンバイアルにおいて、23℃で、THF(1.44mL)に84(35.9mg、0.101mmol、1.0当量)が入った攪拌溶液に、1MのNaOH水(0.30mL、0.30mmol、3.0当量)を添加し、得られた混合物を15分攪拌した。ついで、0.5M、pH7のホスファートバッファー(1.5mL)を添加することにより、反応をクエンチさせ、Et2O(1.5mL)で希釈した。相分離させ、水性相をTHF:Et2O 1:1(3x3mL)で抽出した。組合せた有機相をMgSO4上で乾燥させ、少量(〜1mL)のTHFが残存するまで、真空で濃縮したところ、ボロン酸溶液が生じた;TLC:(EtOAc) Rf=0.70、KMnO4により可視化。
【0172】
パラジウム触媒の溶液を以下の通りに調製した:磁石式攪拌棒が具備され、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシ-1,1'-ビフェニル(4d)(3.6mg、0.0088mmol、2.0当量)が収容された1.5mLのバイアルに、トルエン(0.038M、0.115mL、0.0044mmol、1.0当量)にPd(OAc)2が入った溶液を添加した。PTFE-線入キャップでバイアルを密封し、15分攪拌しつつ、65℃で維持した。
【0173】
ついで、この触媒溶液を以下の手順で利用した:磁石式攪拌棒が具備され、エナル(enal)85(10mg、0.067mmol、1.0当量)が収容された4mLのバイアルに、THF(推定0.101M、1mL、0.101mmol、1.5当量)の溶液として、ボロン酸(ボロナート84に対応;上述を参照)、微細に挽いたパウダーとして、無水K3PO4(42.6mg、0.201mmol、3.0当量)、及び上述した触媒保存溶液(0.035mL、0.0013mmol Pd、2mol%Pd)を添加した。PTFE-線入キャップで得られた混合物を密封し、23℃で5時間攪拌した。ついで、飽和したNaHCO3水(2mL)を添加することにより、反応を停止させた。相分離させ、水性相をEt2O(3x5mL)で抽出した。組合せた有機相をNa2SO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc 32:1)で精製すると、明るい黄色の固形物として、オール-トランス-レチナール(49)(12.6mg、0.044mmol、66%)が生じた。合成49の1H NMR、13C NMR、HRMS、及びIR分析は、単離された天然生成物について報告されているデータと、完全に一致した。
【0174】
実施例17:アンホテリシンBマクロライドの骨格の半分の合成
BB4の合成
200mLの回収用フラスコに、ジオールCH3-CH(OH)-CH(CH3)-CH(OH)-CH(CH3)-CH2-O-CH2-C6H5(Paterson, 2001)(1.18g、4.69mmol、1.0当量)、リパーゼPS(295mg、0.25質量当量)、及びヘキサン(115mL)を充填し、得られたスラリーを50℃で15分攪拌した。ついで、酢酸ビニル(4.33mL、47.0mmol、10.0当量)を添加し、反応混合物を50℃で40時間攪拌した。得られた混合物を23℃まで冷却し、濾過し、残留酵素を大量のEt2Oで洗浄した。ついで、濾液を真空で濃縮し、得られた粘性のある黄色の油を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc 15:1→1:1)で精製したところ、淡黄色の油として、モノアセタートCH3-CH(OAc)-CH(CH3)-CH(OH)-CH(CH3)-CH2-O-CH2-C6H5(1.05g、3.57mmol、76%)が生じた。
【0175】
0℃で、CH2Cl2(230mL)にこのモノアセタート(5.98g、20.31mmol、1.0当量)が入った攪拌溶液に、2,6-ルチジン(7.84mL、67.35mmol、3.3当量)を添加し、得られた溶液を−78℃まで冷却した。ついで、トリフルオロメタンスルホン酸トリエチルシリル(7.11mL、31.43mmol、1.5当量)を滴下し、得られた溶液を−78℃で1時間攪拌した。ついで、飽和したNaHCO3水(115mL)を添加することにより、反応をクエンチさせ、23℃まで温めた。相分離させ、水性相をEt2O(3x200mL)で抽出した。組合せた有機抽出物をMgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、黄色の油が得られた。フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc 7:1→1:1)による精製で、黄色の油として、トリエチルシリルエーテルCH3-CH(OAc)-CH(CH3)-CH(OTES)-CH(CH3)-CH2-O-CH2-C6H5(7.34g、17.96mmol、88%)が提供された。
【0176】
磁石式攪拌棒が具備された25mLの三口丸底フラスコに、パラジウム黒(17.3mg、0.163mmol、0.6当量)を添加した。注:パラジウム黒は自然発火性があり、いつでも、不活性雰囲気下で維持されるべきである。この理由により、EtOH及びEtOAcを、活性型4Å分子ふるい上で、新たに蒸留した。ついで、このフラスコに、カニューラを介して、EtOH:EtOAc 2:1(4.65mL)にトリエチルシリルエーテル(上述を参照;111.0mg、0.271mmol、1.0当量)が入った溶液を添加した。反応用フラスコをH2(バルーン)でパージし、H2(バルーン)の陽圧下、23℃で25時間攪拌した。ついで、セライトの短いカラムを通して、N2圧下、反応混合物を濾過し、大量のEtOHで洗い流した(Pd残留物は、いつでも溶媒下に保持された)。フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc 12:1→4:1)による精製で、淡黄色の油として、第1級アルコールCH3-CH(OAc)-CH(CH3)-CH(OTES)-CH(CH3)-CH2-OHが生じた(79.1mg、0.248mmol、91%)。
【0177】
−78℃で、CH2Cl2(20mL)に塩化オキサニル(3.44mL、40.1mmol、5.0当量)が入った攪拌溶液に、DMSO(5.70mL、80.2mmol、10.0当量)を滴下し、得られた溶液を−78℃で30分攪拌した。ついで、CH2Cl2(55.7mL)に第1級アルコール(上述を参照;2.56g、8.02mmol、1.0当量)が入った溶液を、カニューラを介して、反応体に添加し、得られた溶液を−78℃で1.5時間攪拌した。ついで、トリエチルアミン(28mL、201mmol、25.0当量)を添加し、得られた混合物を40分以上、−15℃まで温めた。ついで、飽和したNH4Cl水(50mL)を添加することにより、反応をクエンチさせた。相分離させ、水性相をCH2Cl2(3x50mL)で抽出した。組合せた有機相をブライン(50mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、黄色の油として、アルデヒドCH3-CH(OAc)-CH(CH3)-CH(OTES)-CH(CH3)-CH=O(2.36g、7.46mmol、93%)が生じた。
【0178】
23℃で、THF(2mL)にCrCl2(0.204g、1.66mmol、18.0当量)が入った攪拌スラリーに、THF(0.18mL)に、このアルデヒド(29.2mg、0.0923mmol、1.0当量)及びジクロメチルピナコールボロン酸エステル(Wuts, 1982;Raheem, 2004;0.117g、0.554mmol、6.0当量)が入った溶液を添加した。ついで、THF(0.3mL)にLiI(0.149g、1.11mmol、12.0当量)が入った溶液を添加し、得られたスラリーを23℃で7時間攪拌した。ついで、反応物を氷水(2mL)に注ぎ、Et2O(2x5mL)で抽出した。組合せた有機抽出物をMgSO4上で乾燥させ、セライトを通して濾過し、真空で濃縮した。フロリジル(登録商標)において、粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc 35:1→3:1)で精製すると、淡黄色の油として、以下に示すピナコールボロン酸エステル(25.7mg、0.58mmol、63%)が提供された。
【0179】
攪拌棒が具備された15mLの丸底フラスコに、このピナコールボロン酸エステル(126.9mg、0.288mmol、1.5当量)を充填した。ついで、このフラスコに、THF(4.5mL)の溶液として、(E)-1-クロロ-2-ヨードエチレン(62)(36.2mg、0.192mmol、1.0当量)及びPd(PPh3)4(16.6mg、0.0144mmol、5 mol%)の溶液、続いて3MのNaOH水(0.192mL、0.576mmol、2.0当量)を添加した。得られた混合物を23℃で17時間攪拌し、ついで、飽和したNH4Cl水(5mL)を用い、反応を停止させた。得られた混合物をジエチルエーテル(5mL)で希釈し、相分離させた。水性相をジエチルエーテル(3x5mL)で抽出し、組合せた有機相をMgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。得られた残留物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc 35:1→5:1、全ての溶出液に1%のEt3N(v/v)を添加したものを用いる)で精製することにより、黄色の油として、塩化ジエニルBB4(51.0mg、0.136mmol、71%)が提供された。
【0180】
(E,E,E,E,E)-1,3,5,7,9-デカペンテニル-(10-プロピル)ボロン酸エステル(91)
MIDAボロナート68(実施例14を参照)を、以下の手順を介して、(E,E)-1,3-ヘプタジエニルボロン酸90に転換させた。23℃で、THF(1.0mL)に68(25.6mg、0.102mmol、1.0当量)が入った攪拌混合物に、シリンジを介して、1NのNaOH(水性)(0.306mL、0.306mmol、3.0当量)を添加した。反応混合物を23℃で15分攪拌した。得られた混合物を1.0Nのホスファートバッファー溶液(pH7、0.5mL)で処理し、及びEt2O(1.0mL)で希釈した。有機相を分離させ、水性相をTHF:Et2O 1:1(3x1.50mL)で抽出した。組合せた有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。濾過後、得られた無色の溶液を、真空で、THFの〜50mL容量まで濃縮した。THF(5.0mL)を添加し、再度、真空で、THFの〜25mL容量まで濃縮した。ボロン酸90の単離収率を、68に基づき、90%であると仮定し、THFにおけるボロン酸90の0.1836N溶液(0.0918mmol/0.50mLTHF)を、1.0mL(v/v)容積測定用バイアルを使用して調製した。さらなる精製をすることなく、この溶液を次の反応に直ちに使用した。TLC(EtOAc)Rf=0.88、UVランプ(λ=254nm)により、又はKMnO4を用いて可視化。
【0181】
触媒の溶液を以下の通りに調製した:磁石式攪拌棒が具備された20mLのホイートンバイアルに、Pd(OAc)2(5.60mg、0.025mmol、1.0当量)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',4',6'-トリ-イソ-プロピル-1,1'-ビフェニル(4c)(24.5mg、0.050mmol、2.0当量)を充填した。トルエン(3.0mL)を添加し、PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封した。得られた混合物を23℃で1時間攪拌したところ、赤みがかったPd/4c触媒溶液が生じた(トルエンに0.00833N Pd)。
【0182】
ついで、この触媒溶液を以下の手順で利用した:磁石式攪拌棒が具備された10mLのホイートンバイアルに、BB3(16.5mg、0.0612mmol、1.0当量)、Cs2CO3(40.0mg、0.1224mmol、2.0当量)、0.1836Nのボロン酸が入ったTHF溶液(0.0918mmol、0.50mL)、及び触媒溶液(0.110mL、1.5mol%Pd)を充填した。ついで、トルエン(1.64mL)を添加し、PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封し、45℃で18時間攪拌した。得られた深いオレンジ色の混合物をEtOAc(5.0mL)で希釈し、フロリジル(登録商標)の短いパッドを通して濾過した。濾液を真空で濃縮したところ、オレンジ色の固形物が提供された。フロリジル(登録商標)において、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc 1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 9:1)で精製すると、淡黄色の固形物として、91(8.40mg、0.0255mmol、42%)が得られた。
【0183】
アンホテリシンBマクロライド(92)の1/2
触媒の溶液を以下の通りに調製した:磁石式攪拌棒が具備され、オーブン乾燥されたホイートンバイアルに、Pd(OAc)2(5.60mg、0.025mmol、1.0当量)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',4',6'-トリ-イソ-プロピル-1,1'-ビフェニル(4c)(24.5mg、0.050mmol、2.0当量)を充填した。トルエン(3.0mL)を添加し、PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封した。得られた混合物を23℃で1時間攪拌したところ、赤みがかったPd/4c触媒溶液が生じた(トルエンに0.00833N Pd)。
【0184】
ついで、触媒溶液を以下の手順で利用した:磁石式攪拌棒が具備され、オーブン乾燥されたホイートンバイアルに、BB4(7.0mg、0.0187mmol、1.0当量)、91(14.0mg、0.0421mmol、2.25当量)、触媒溶液(0.034mL、1.5mol%Pd)、及びTHF(1.50mL)を充填し、PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封した。脱気された1NのNaOH(水性)(0.211mL、0.211mmol、5.00当量 91に基づく)、シリンジを介してバイアルに添加した。黄色の反応混合物を23℃で15分攪拌し、ついで45℃で16時間攪拌した。得られた不均質の深い赤みがかった混合物を酢酸エチル(5.0mL)で希釈し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。オレンジ色の溶液を、フロリジル(登録商標)の短いパッドを通して濾過し、濾液を真空で濃縮したところ、オレンジ色の固形物が提供された。フロリジル(登録商標)において、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc 60:1)で精製すると、淡黄色の固形物として、92(4.60mg、0.0090mmol、48%)が得られた。
【0185】
実施例18:β-パリナリン酸の合成
(E)-1-ブテニルボロン酸(23)
磁石式攪拌棒が具備された150mLのボムフラスコ(bomb flask)に、BH3・SMe2(1.8mL、19.4mmol、1.0当量)及びTHF(11mL)を充填した。溶液を0℃まで冷却し、(+)-α-ピネン(6.3mL、39.7mmol、2.0当量)を滴下した。溶液を0℃で10分攪拌し、ついで23℃まで温め、23℃で2時間攪拌し、その間に白色沈殿物が形成された。ついで、溶液を0℃まで再度冷却し、バルーンを介して、過剰の1-ブチンを反応体に濃縮し、無色透明の溶液を得た。ついで、テフロン・スクリューキャップでフラスコを密封し、0℃で30分攪拌し、23℃まで温め、23℃で1.5時間攪拌した。溶液を0℃まで再度冷却し、アセトアルデヒド(10.4mL、185mmol、9.5当量)を添加した。テフロン・スクリューキャップでボムフラスコを再封鎖し、反応物を40℃で14時間攪拌した。反応物を23℃まで冷却し、水(5mL)を添加した。23℃で3時間攪拌した後、溶液をEtOAc(50mL)で希釈し、MgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。得られた残留物をヘキサン(50mL)に溶解させ、得られた混合物を10%のNaOH水(2×10mL)で抽出した。組合せた水性抽出物をヘキサン(2x20mL)で洗浄し、ついで、濃塩酸を用いて、pH2-3に酸性化させた。ついで、酸性化させた水性相をEtOAc(3x30mL)で抽出し、組合せた有機抽出物を飽和したNaHCO3水(50mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、無色の固形物として、化合物93(0.928g、9.3mmol、48%)が生じた。
【0186】
(E,E,E)-1,3,5-オクタトリエニルボロン酸エステル(94)
パラジウム触媒の溶液を以下の通りに調製した:磁石式攪拌棒が具備され、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',4',6'-トリ-イソ-プロピル-1,1'-ビフェニル(4c)(17.3mg、0.036mmol、2.0当量)が収容された4mLのバイアルに、THF(0.0109M、1.664mL、0.018mmol、1.0当量)にPd(OAc)2が入った溶液を添加した。PTFE-線入キャップでバイアルを密封し、23℃で30分攪拌した。
【0187】
ついで、この触媒溶液を以下の手順で利用した:攪拌棒が具備され、(E)-1-ブテニルボロン酸(93)(113mg、1.13mmol、2.0当量)が収容された20mLのアイ-ケムバイアルに、54b(138mg、0.521mmol、1.0当量)、微細に挽かれたパウダーとして無水K3PO4(301mg、1.42mmol、2.5当量)、THF(7.9mL)、及び触媒溶液(0.780mL、0.0085mmol Pd、1.5mol%Pd)を添加した。得られた混合物を、PTFE-線入キャップで封鎖し、45℃で23時間攪拌した。(54b及び生成物94を、ヘキサン:EtOAc 2:3を用いて3回溶出させることにより、TCLプレート上で良好に分離させた)。ついで、大量のアセトニトリルと共に、シリカゲルのパッドを通して濾過した。得られた溶液にフロリジル(登録商標)ゲルを添加し、ついで溶媒を真空で除去した。得られたパウダーをシリカゲルカラムの頂部に乾燥充填し、フラッシュクロマトグラフィー(Et2O→Et2O:MeCN 4:1)を実施したところ、黄色のパウダーとして、94(120mg、0.456mmol、88%)が生じた。
【0188】
10-ヨード-9-デカン酸(95)
23℃で、THF(1.5mL)にCrCl2(454mg、3.75mmol、7.0当量)が入った懸濁液に、ジオキサン(9.2mL)に(E)-メチル10-ヨードデセ-9-エノアート(100mg、0.537mmol、1.0当量)及びヨードホルム(422mg、1.07mmol、2.0当量)が入った溶液を滴下した。12時間攪拌した後、反応混合物をEt2O(10mL)で希釈し、水(10mL)に注いだ。相分離させ、水性相をEt2O(3x15mL)で抽出した。組合せた有機抽出物をブライン(10mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン→ヘキサン:EtOAc 9:1)で精製したところ、黄色の油として、10-ヨード-9-デセノアートメチルエステル(105mg、0.337mmol、63%)が提供された。1H NMRには、E:Z比が10:1と示された。
【0189】
THF:H2O 3:1(3.3mL)に、この10-ヨード-9-デカノアートメチルエステル(51.0mg、0.164mmol、1.0当量)が入った攪拌溶液に、LiOH(69.0mg、1.64mmol、10.0当量)を添加した。反応物を50℃で4時間攪拌し、その後Et2O(5mL)で希釈し、1MのHCl水(5mL)に注いだ。 相分離させ、水性相をEt2O(3x5mL)で抽出した。組合せた有機相をブライン(5mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc 5:1→EtOAc)で精製したところ、淡黄色の固形物として、95(44.0mg、0.149mmol、91%)が提供された。1H NMRには、E:Z比が10:1と示された。
【0190】
β-パリナリン酸(96)
MIDAボロナート94を、以下の手順を介して、その対応するボロン酸に転換させた:23℃で、THF(1.34mL)に94(24.7mg、0.094mmol、1.0当量)が入った攪拌溶液に、1MのNaOH水(0.28mL、0.28mmol、3.0当量)を添加し、得られた混合物を23℃で15分攪拌した。ついで、0.5M、pH7のホスファートバッファー(1.5mL)を添加することにより、反応をクエンチさせ、Et2O(1.5mL)で希釈した。相分離させ、水性相をTHF:Et2O 1:1(3x3mL)で抽出した。組合せた有機相をMgSO4上で乾燥させ、少量(〜3.7mL)のTHFが残存するまで、真空で濃縮したところ、ボロン酸溶液が生じた;TLC:(EtOAc) Rf=0.63、KMnO4により可視化。
【0191】
パラジウム触媒の溶液を以下の通りに調製した:磁石式攪拌棒が具備され、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',4',6'-トリ-イソ-プロピル-1,1'-ビフェニルリガンド(4c)(2.1mg、0.0044mmol、2.0当量)が収容された4mLのバイアルに、THF(0.004M、0.545mL、0.0022mmol、1.0当量)にPd(OAc)2が入った溶液を添加した。PTFE-線入キャップでバイアルを密封し、23℃で30分攪拌した。
【0192】
ついで、この触媒溶液を以下の手順で利用した:磁石式攪拌棒が具備され、95(18.5mg、0.062mmol、1.0当量;1H NMRにより、E:Zは7:1)が収容された20mLのアイ-ケムバイアルに、ボロナート94に対応するボロン酸(上述を参照;3.7mL、推定0.094mmol、1.5当量)及び上述した触媒溶液(0.31mL、0.0013mmol Pd、2mol%Pd)を添加した。得られた混合物を、テフロン-線入隔膜キャップで封鎖し、1MのNaOH水(0.19mL、0.190mmol、3.0当量)を添加した。反応物を23℃で40分攪拌し、ついで、飽和したNH4Cl水(3mL)を添加することによりクエンチした。相分離させ、水性相をEt2O(3x5mL)で抽出した。組合せた有機抽出物をNa2SO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。得られた粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:Et2O 4:1→Et2O)で精製したところ、蛍光固形物として、β-パリナリン酸96(14.8mg、0.054mmol、86%)が生じた。1H NMRには、β-パリナリン酸:9-(Z)パリナリン酸の7:1混合物が示された(出発物質95の7:1 E:Z混合物から生じる)。合成96の1H NMR及び13C NMR分析は、β-パリナリン酸について以前から報告されているデータと完全に一致した。
【0193】
実施例19:アリールハロゲン化物を用いた、保護された有機ボロン酸のインシトゥークロスカップリング
3-メトキシフェニル-MIDA-ボロナート(300)の反応
攪拌棒が具備された50mLの丸底フラスコに、3-メトキシフェニルボロン酸(6.591mmol、1.002g)とN-メチルイミノ二酢酸(6.27mmol、922mg)を添加した。フラスコにトルエン(6mL)及びDMSO(2mL)を添加した。フラスコを、トルエンで満たされたディーン・スターク・トラップに固定した。混合物を2.5時間攪拌した。溶液を真空で濃縮した(1トール、90-100°C)。得られた粘性のある黄色の油を−78℃で凍結させ、ついで、12時間、凍結乾燥機(lyopholizer)に配した。ほとんど固体状の黄色の油をアセトン(3mL)に懸濁させた。混合物にEt2O(6mL)を添加した。混合物を穏やかに攪拌した。黄色の溶液をデカントして、オフホワイト色の固形物から離した。固形物を30分加熱(約80℃)しつつ、真空(1トール)下に配したところ、自由に流れるオフホワイト色の固形物として、所望の生成物1.562g(95%)が提供された。
【0194】
テフロンコートされた攪拌棒が具備された20mLのバイアルに、4-ブロモアセトフェノン(0.200g、1.005mmol)、3-メトキシフェニル-MIDA-ボロナート(0.397g、1.509mmol)、及び水酸化ナトリウム(0.302g、7.550mmol)を添加した。バイアルを即座にグローブボックスに入れ、テトラキス(トリフェニルホスフィン)-パラジウム(0)(0.023g、0.020mmol)及びTHF(10mL)を添加した。隔膜キャップでバイアルを密封し、グローブボックスから取り出した。アルゴンをスパージすることにより、20分脱気されたH2O(2mL)を、シリンジを介してバイアルに添加した。24時間激しく攪拌しつつ、60℃で反応を維持した。室温まで冷却し、反応物を1MのNaOH水10mLに注いだ。水性相を分離させ、エーテル3×10mLで抽出した。組合せた有機フラクションを10mLの飽和したNaHCO3水及び10mLのブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。溶媒を真空(〜20トール、30℃)で除去したころ、黄色の油として粗生成物が提供された。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(50:45:5 ヘキサン/CH2Cl2/EtOAc)により精製すると、真空下で結晶化する無色透明の液体(0.220g、97%)が生じた。この反応は、全濃度0.33M(2mLのTHF、1mLのH2O)、収率96%で操作され得る。濃縮反応を同じ大きさのバイアルで操作した。反応におけるいくつかの成分が、反応の全課程において完全に溶解していない場合は、かなり効果的な攪拌が重要となる。
【0195】
4-ピリジル-MIDA-ボロナート(302)の反応
攪拌棒が具備された50mLの丸底フラスコに、4-ピリジルボロン酸(8.160mmol、1.002g;フロンティア化学(Frontier Scientific)から受容したような紫色の固形物)とN-メチルイミノ二酢酸(7.728mmol、1.136g)を添加した。フラスコにトルエン(6mL)及びDMSO(8mL)を添加した。フラスコを、トルエンで満たされたディーン・スターク・トラップに固定した。混合物を2時間攪拌した。反応が進行しているため、フラスコの側面に暗色の固形物が蓄積した。この物質はアセトンに溶解せず、水に溶解して、青/紫の溶液が形成された。この物質を、出発物質の不純物であるとみなした。セライトの薄いパッドを通して、混合物を濾過した。セライトパッドをアセトン(2×10mL)で洗浄した。溶液を真空(1トール、90-100℃)で濃縮した。暗紫色の残留物をMeCN(5mL)に懸濁させた。混合物を攪拌した。混合物にEt2O(10mL)を添加した。混合物を攪拌し、ついで、紫色の溶液をデカントして、紫色の固形物から離した。固形物をEt2O(5mL)で洗浄した。残留溶媒を真空で除去したところ、自由に流れる紫色の固形物として、所望の生成物1.341g(74%)が提供された。この物質はDMSO(推定5%)で汚染されており、粉砕して除去し、固体状物質をMeCN(5mL)に懸濁させ、混合を容易にするために、40℃で5分、懸濁液をロータリーエバポレータで回転させた。混合物にEt2O(10mL)を添加し、混合物を攪拌した。溶液をデカントして、紫色の固形物から離した。残留溶媒を真空で除去したところ、自由に流れる紫色の固形物として、所望の生成物1.235g(68%)が提供された。
【0196】
テフロンコートされた攪拌棒が具備された20mLのバイアルに、4-ブロモアセトフェノン(0.200g、1.005mmol)、4-ピリジル-MIDA-ボロナート(0.353g、1.508mmol)、及びK2CO3(1.043g、7.55mmol)を添加した。バイアルを即座にグローブボックスに入れ、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.024g、0.021mmol)及びジオキサン(10mL)を添加した。隔膜キャップでバイアルを密封し、グローブボックスから取り出した。アルゴンをスパージすることにより、20分脱気されたH2O(2mL)を、シリンジを介してバイアルに添加した。12時間激しく攪拌しつつ、100℃で反応を維持した。室温まで冷却し、反応物を、エーテル10mL、及び1MのNaOH(水性)10mLに注いだ。水性相を分離させ、エーテル3×10mLで抽出した。組合せた有機フラクションを10mLの飽和したNaHCO3(水性)及び10mLのブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。溶媒を真空(〜20トール及び30℃)で除去したころ、黄色の固形物として粗生成物が提供された。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(100% EtOAc)により精製すると、無色の結晶性固形物(0.188g、95%)が生じた。この反応は、全濃度0.33M(2mLのジオキサン、1mLのH2O)、収率96%で操作可能である。濃縮反応を同じ大きさのバイアルで操作した。反応におけるいくつかの成分が、反応の全課程において完全に溶解していない場合は、かなり効果的な攪拌が重要となる。
【0197】
実施例20:対応する遊離のボロン酸を形成することのない、保護された有機ボロン酸の調製
フェニル-MIDA-ボロナート(304)
攪拌棒が具備され、ゴム隔膜で固定され、Ar雰囲気下に配された100mLの乾燥シュレンクフラスコに、THF(25mL)、ブロモベンゼン(boenzene)(2.0mL、19mmol)及びホウ酸トリイソプロピル(5.3mL、23mmol)を添加した。攪拌した溶液を−78℃まで冷却した。溶液に、n-BuLi(9.1mL、2.5M、23mmol)を添加した。淡オレンジ色の溶液を15分攪拌した。30分攪拌しつつ、溶液を室温まで温めた。溶液に、、DMSO(15mL)とN-メチルイミノ二酢酸(8.39g、57.1mmol)を添加した。フラスコを蒸留装置に固定した。溶媒を蒸留する際に、混合物を還流し、蒸留ポットには定期的にトルエンを充填し、一定容量を維持した。粗反応混合物を真空で濃縮すると、オフホワイト色の固形物が提供された。フラスコにアセトン(200mL)を添加した。セライトの薄いパッドを通して、得られた懸濁液を濾過した。濾液を真空で濃縮した。得られた残留物をフロリジルゲルに吸着させた。このパウダーをEt2Oにスラリー充填されたシリカゲルカラムに乾燥充填した。カラムをEt2O(約400mL)で洗い流し、ついで、Et2O:MeCN(5:1)で溶出させたところ、無色の固形物として、304が3.592g(81%)提供された。
【0198】
ビニル-MIDA-ボロナート(306)
攪拌棒が具備され、ゴム隔膜で固定され、Ar雰囲気下に配された6mLの乾燥バイアルに、CH2Cl2(1.3mL、1.0M、1.3mmol)に入ったBBr3を添加した。攪拌溶液にビニルトリメチルシラン(140μL、0.983mmol)を添加した。溶液を室温で13時間攪拌した。別に、攪拌棒が具備され、ゴム隔膜で固定され、Ar雰囲気下に配された25mLの乾燥丸底フラスコに、N-メチルイミノニ酢酸ナトリウム(478mg、2.50mmol)及びDMSO(4mL)を充填した。この攪拌懸濁液に、シリンジを介して、粗ビニルボロンジブロミド溶液を滴下した。混合物を5分攪拌した。混合物を真空で濃縮した。残留物を、アセトン懸濁液から、フロリジルゲルに吸着させた。得られたパウダーをEt2Oにスラリー充填されたシリカゲルカラムに乾燥充填した。カラムをEt2O(約200mL)で洗い流し、ついで、Et2O:MeCN(3:1)で溶出させたところ、無色の固形物として、306が88mg(48%)提供された。
【0199】
実施例21:単一の反応混合物中における3成分のカップリング
図24には、単一の反応混合物において実施される、3つの別々の成分のクロスカップリング反応についての、構造及び反応スキームを示す。火力乾燥された7-mLのバイアルに、4-ブロモフェニル-MIDA-ボロナート(8a、0.0625g、0.200mmol、1.00当量)及びp-トリルボロン酸(0.0410g、0.3016、1.50当量)を添加した。w/aキムワイプ(Kimwipe)(登録商標)でバイアルをキャップし、直ちにグローブボックスに入れ、その時に、微細に挽いたリン酸カリウム(0.2975g、1.40mmol、7.00当量)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(0.0116g、0.0100mmol、0.05当量)を添加した。磁石式攪拌棒及びジオキサン(2.0mL)を添加し、PTFE-線入スクリューキャップでバイアルを密封した。グローブボックスから取り出し、100℃で12時間攪拌しつつ、反応を維持した。バイアルを23℃まで冷却し、再度、グローブボックスに入れ、その時に、20μLのアリコートを1H-NMR分析用に取り出した。4-ブロモアセトフェノン(0.0797g、0.400mmol、2.0当量)を、ジオキサン(1.0mL)の溶液として添加した。PTFE-線入隔膜スクリューキャップでバイアルを密封した。グローブボックスから取り出し、シリンジを介して、バイアルに水(0.60mL)を添加した。100℃でさらに12時間攪拌しつつ、反応を維持した。
【0200】
23℃まで冷却した後、 白色懸濁している上部有機相と透明無色の下部水性相とからなる反応物を、1MのNaOH水(10mL)とEt2O(10mL)の混合物に注いだ。不溶性の白色沈殿物を含んでいた有機相を分離し、水性相をEt2O(3×10mL)で抽出した。組合せた有機フラクションを飽和したNaHCO3水(1×10mL)及びブライン(1×10mL)で洗浄した。白色沈殿物を濾過により除去し、残留溶液を真空で濃縮した。1H NMRによる分析で、得られた白色の残留物は、生成物308及び310の1:1混合物であることが明らかとなった。1H NMRによる分析で、単離された白色沈殿物は、排他的に、所望の化合物308であることが明らかとなった。12時間で取り出されたアリコートの1H NMR分析では、8aの完全な転換が示された。
【0201】
本発明の様々な実施態様を記載したが、本発明の範囲内で他の実施態様及び実施も可能であることは当業者には明らかであろう。従って、本発明は、添付する特許請求の範囲及びその均等物に照らして、制限され除かれるものではない。
【0202】
参考文献
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【関連出願の相互参照】
【0001】
この特許出願は、その全体を出典明示により援用する2007年7月23日出願の「ボロン酸の反応性の調節系」と題された米国仮出願番号第60/951405号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
鈴木-宮浦(Suzuki-Miyaura)反応は、ボロン酸又はボロン酸エステルと、有機ハロゲン化物又は有機偽ハロゲン化物(organo-pseudohalide)との間のパラジウム-又はニッケル触媒されるクロスカップリングである。(Miyaura, A. Chem. Rev., 1995)。このクロスカップリング変換は、複雑な分子の合成においてC-C結合を形成するための強力な方法である。反応は官能基に耐性があり、有機化合物のカップリングでのその使用は、ますます一般的で広範囲に広がってきている。(Barder, 2005; Billingsley, 2007; Littke, 2000; Nicolaou, 2005)。
【0003】
ボロン酸は、多くの一般的な試薬に対して敏感であることで有名である。(Hall, 2005; Tyrell, 2003)。よって、ビルディングブロック合成の最終工程中でボロン酸官能基を導入するのが典型的である。しかしながら、そのようにするための方法の多く(ヒドロホウ素化反応、トリメチルボラートを用いた有機金属試薬の捕捉等)は、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アルキン類及びオレフィン類等の多様な一般的官能基に対して不耐性である。これにより、構造的に複雑なボロン酸ビルディングブロックの合成は、かなり挑戦的なものとなる。これに対して、有機スタンナンは、幅広い多様な反応条件に対して際だった耐性があり、構造的に複雑なカップリングパートナーまで途中に複数の工程を経て常套的に実施される。その結果、有機スタンナンは、毒性、高分子量、除去が困難な副産物を含むそのよく知られている欠点にもかかわらず、複雑な分子の合成において幅広く使用されることが見出された(De Souza, M.V.N., 2006; Pattenden, G., 2002; Hong, B.-C., 2006)。複数の工程による合成シーケンスを通して保護されたボロン酸を同様に担持する能力により、それらの有用性は大幅に高められ、それらの適用範囲が拡大される。
【0004】
鈴木-宮浦反応についての研究の一領域は、ボロン酸官能基に対する保護基の開発である。保護されたボロン酸及び他の官能基を含む化合物は、ホウ素を化学的に変換することなく、他の官能基の化学的変換を受けることができる。ついで、保護基を除去(脱保護)することにより、遊離のボロン酸が得られ、これが鈴木-宮浦反応を受けて、化合物を有機ハロゲン化物又は有機偽ハロゲン化物とクロスカップリングさせることができる。
【0005】
ボロン酸保護基の一例では、2つのB-OH基のそれぞれが、ボロン酸エステル基(>B-O-R)又はボロン酸アミド基(>B-NH-R)(ここでRは有機基である)に転換される。有機基は加水分解により除去されて遊離のボロン酸を得ることができる。現在のデータでは、ボロン酸とPd(II)との間の金属交換反応には、電子的に活性化されたアニオン性ホウ素「アート(ate)」錯体及び/又はヒドロキソμ2-架橋有機ボロナート-Pd(II)中間体の形成が必要であることが示唆される。双方のメカニズムには、ルイス酸性であるホウ素p空軌道が必要である。強力な電子供与性ヘテロ原子を有する二座リガンドは、おそらくルイス酸度のsp2-混成ホウ素中心を還元することによって、クロスカップリングを阻害することが知られている。この効果を利用した、ハロゲンを含むホウ素保護された有機ボランとの2〜3の選択的クロスカップリングが、近年報告されている。(Deng, 2002; Hohn, 2004; Holmes, 2006; Noguchi, 2007)。これらの選択的反応に使用される保護基の例には、ピナコールエステル(ボロン酸エステル)及び1,8-ジアミノナフタレン(ボロン酸アミド)が含まれる。しかしながら、これらの保護された化合物におけるヘテロ原子-ホウ素の結合は、非常に強力になる傾向がある。典型的には、これらのリガンドを切断するのに必要とされる比較的厳しい条件は、錯体分子合成とは適合しないものである。
【0006】
保護されたボロン酸の他の例では、ホウ素含有化合物は、四配位アニオン、例えばRが有機基を表す[R-BF3]−に転換される。これらの保護基を含む化合物は、対イオン、例えばK+又はNa+との塩として存在している。これらのアニオン性化合物は、求核置換、1,3-双極性環化付加、金属ハロゲン交換、酸化、エポキシ化、ジヒドロキシル化、カルボニル化、及びアルケン化等の化学変換中においてホウ素の反応を阻害するのに効果的であることが報告されている。(ウィッティヒ又はホーナー・ワズワース・エモンズ反応)。(Molander, 2007)。ホウ素それ自体は鈴木-宮浦反応から保護されてはいないが、カップリング変換に直接使用することができる。他のクラスの四配位ホウ素アニオン[R-B(OH)3]−は、鈴木-宮浦反応に使用するためのボロン酸を精製する内容で報告されている。(Cammidge, 2006)。トリフルオロボロナートアニオンと同様、トリヒドロキシボロナートアニオンは、鈴木-宮浦反応において反応性がある。
【0007】
ボロン酸に対するこれらの典型的な保護方法にはそれぞれにいくつかの不具合がある。ボロン酸エステル及びボロン酸アミドは、鈴木-宮浦反応条件を含む多様な反応条件からホウ素を保護することができる。しかしながら、ボロン酸エステル及びボロン酸アミドの脱保護に必要とされる厳しい条件により、他の官能基との所望されない副反応が引き起こされる可能性がある。またトリフルオロボロナートアニオンは、多様な反応条件において非反応性である。しかしながら、この保護方法は、保護及び脱保護ホウ素原子が、カップリング変換中に排除されるであろうために、選択的な鈴木-宮浦反応には許容されないものである。
【0008】
鈴木-宮浦反応を含む多様な合成反応においては、ボロン酸基を保護することが所望される。理想的には、保護されたボロン酸は、温和な条件下で高収率の脱保護を受ける。ボロン酸の反応性を調節するためのこのような系は、鈴木-宮浦反応又は他のボロン酸の反応の多用途性を大きく拡大しうる。
【発明の概要】
【0009】
一態様では、本発明は、ボロナート基及び有機基を有する保護された有機ボロン酸を提供する。ボロナート基には、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基とsp3混成を有するホウ素が含まれる。有機基はホウ素-炭素結合を介してホウ素に結合している。有機基は、-C2H5、-C(CH3)2CH(CH3)2、シクロペンチル、テトラヒドロピラニル、ノルボルニル、2,4,4-トリメチル-ビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、-C6H5、-C6H4-CH3、-C6H4-CHO、-C6H4−OCH3、-C6H4-F、-C6H4-Cl、-C6H4-Br、-C6H4-CF3、及び-C6H4-NO2からなる群から選択されない。
【0010】
他の態様では、本発明は、保護された有機ボロン酸8d、8e、8f、8e、9a、9b、9c、9d、9e、9f、13、14、16、17、19、20、21、22、23、24、25、26、27、30、54a、54b、54c、54d、61、64、66、68、70、72、74、75、80、84、91、94、302、及び306からなる群から選択される、保護された有機ボロン酸を提供する。
【0011】
さらなる他の態様では、本発明は、保護された有機ボロン酸を試薬と接触させることを含み、該保護された有機ボロン酸がボロナート基と有機基を有するものである、化学反応を実施する方法を提供する。ボロナート基には、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基とsp3混成を有するホウ素が含まれる。有機基は、ホウ素-炭素結合を介してホウ素に結合している。有機基は化学的に変換され、ホウ素は化学的に変換されない。
【0012】
さらなる他の態様では、本発明は、保護された有機ボロン酸及び有機ハロゲン化物を水性塩基の存在下でパラジウム触媒と接触させ、クロスシカップリングした生成物を得ることを含む、化学反応を実施する方法を提供する。保護された有機ボロン酸はボロナート基と有機基を有する。ボロナート基には、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基とsp3混成を有するホウ素が含まれる。有機基は、ホウ素-炭素結合を介してホウ素に結合している。
【0013】
さらなる他の態様では、本発明は、式(I)
R1-B(OH)2 (I)
で表される化合物を保護試薬と反応させることを含む、保護された有機ボロン酸を形成させる方法を提供する。式(I)で表される化合物はインサイツで形成されうる。
【0014】
さらなる他の態様では、本発明は、式(XII)
により表される化合物をN-置換イミノ-ジ-カルボン酸と反応させることを含む、保護された有機ボロン酸を形成させる方法を提供する。
【0015】
さらなる他の態様では、本発明は、式(XIII):
R10-BX2 (XIII)
により表される化合物を保護試薬と反応させることを含む、保護された有機ボロン酸を形成させる方法を提供する。保護試薬には、N-メチルイミノ二酢酸が含まれうる。
【0016】
以下の定義は、明細書及び特許請求の範囲の明確で一貫した理解を提供するために含まれるものである。
【0017】
「有機ボロン酸」なる用語は、次の式(I)
R1-B(OH)2 (I)
[上式中、R1は、ホウ素-炭素結合を介してホウ素に結合する有機基である]
で表される化合物を意味する。
【0018】
「基」なる用語は、分子的実体中の原子の結合した集合体又は単一原子を意味し、ここで、分子的実体とは、別々に区別される実体として同定可能な、任意の構造的又は同位体的に異なる原子、分子、イオン、イオン対、ラジカル、ラジカルイオン、錯体、配座異性体等である。特定の化学変換「により形成」される基の記載は、この化学変換が、基を含む分子的実体の製造に関与していることを意味するものではない。
【0019】
「有機基」なる用語は、少なくとも一の炭素原子を含む基を意味する。
【0020】
「保護された有機ボロン酸」なる用語は、有機ボロン酸の化学変換体を意味し、ここでホウ素は、元の有機ボロン酸に対して低い化学反応性を有する。
【0021】
物質の「化学変換体」なる用語は、物質の化学変換による生成物を意味し、該生成物は、該物質のものとは異なる化学構造を有する。
【0022】
「化学変換」なる用語は、関与する試薬又はメカニズムにかかわらず、物質の生成物への転換を意味する。
【0023】
「SP3混成」なる用語は、原子が少なくとも50%の四面体特徴を有する配置に結合及び/又は配位していることを意味する。四配位ホウ素原子については、ホウ素原子の四面体特性は、Hopfl, H., J. Organomet. Chem. 581, 129-149, 1999の方法により算出される。この方法では、四面体特性は、
[ここで、θnはホウ素原子の6つの結合角の一つである]
と定義される。
【0024】
「保護基」なる用語は、少なくとも一の原子と結合した有機基を意味し、ここで原子は、保護基に結合していない場合より、低い化学的活性を有する。ホウ素含有化合物について、本用語は、ホウ素の化学的活性を低下させるのに使用される非有機基、例えば-BF3−及び-B(OH)3−のF−及びOH−リガンドを除く。
【0025】
「立体構造的に強固な保護基」とは、ホウ素原子に結合したとき、「立体構造的強固性試験」により、立体構造的に強固であると決定される有機保護基を意味する。
【0026】
「アルキル基」なる用語は、アルカンの炭素から水素を除去することにより形成される基を意味し、ここでアルカンとは、全体的に水素原子と飽和炭素原子とからなる非環状又は環状化合物である。アルキル基は一又は複数の置換基を含んでいてもよい。
【0027】
「ヘテロアルキル基」なる用語は、ヘテロアルカンの炭素から水素を除去することにより形成される基を意味し、ここで、ヘテロアルカンとは、全体的に、水素原子、飽和炭素原子、及び一又は複数のヘテロ原子からなる非環状又は環状化合物である。ヘテロアルキル基は一又は複数の置換基を含んでいてもよい。
【0028】
「アルケニル基」なる用語は、アルケンの炭素から水素を除去することにより形成される基を意味し、ここで、アルケンとは、全体的に、水素原子及び炭素原子からなり、少なくとも一の炭素-炭素二重結合を含む非環状又は環状化合物である。アルケニル基は一又は複数の置換基を含んでいてもよい。
【0029】
「ヘテロアルケニル基」なる用語は、ヘテロアルケンの炭素から水素を除去することにより形成される基を意味し、ここで、ヘテロアルケンとは、全体的に、水素原子、炭素原子、及び一又は複数のヘテロ原子からなり、少なくとも一の炭素-炭素二重結合を含む非環状又は環状化合物である。ヘテロアルケニル基は一又は複数の置換基を含んでいてもよい。
【0030】
「アルキニル基」なる用語は、アルキンの炭素から水素を除去することにより形成される基を意味し、ここで、アルキンとは、全体的に、水素原子及び炭素原子からなり、少なくとも一の炭素-炭素三重結合を含む非環状又は環状化合物である。アルキニル基は一又は複数の置換基を含んでいてもよい。
【0031】
「ヘテロアルキニル基」なる用語は、ヘテロアルキンの炭素から水素を除去することにより形成される基を意味し、ここで、ヘテロアルキンとは、全体的に、水素原子、炭素原子、及び一又は複数のヘテロ原子からなり、少なくとも一の炭素-炭素三重結合を含む非環状又は環状化合物である。ヘテロアルキニル基は一又は複数の置換基を含んでいてもよい。
【0032】
「アリール基」なる用語は、芳香族複素環の環炭素原子から水素を除去することにより形成される基を意味する。アリール基は、単環式又は多環式であってよく、一又は複数の置換基を含んでいてもよい。
【0033】
「ヘテロアリール基」なる用語は、それぞれ三価又は二価のヘテロ原子で、アリール基中の一又は複数のメチン(-C=)及び/又はビニレン(-CH=CH-)を置き換えることにより形成される基を意味する。ヘテロアリール基は、単環式又は多環式であってよく、一又は複数の置換基を含んでいてもよい。
【0034】
「置換基」なる用語は、分子的実体中の一又は複数の水素原子が置き換えられた基を意味する。
【0035】
「ハロゲン基」なる用語は、-F、-Cl、-Br又は-Iを意味する。
【0036】
「有機ハロゲン化物」なる用語は、少なくともハロゲン基を含む有機化合物を意味する。
【0037】
「ハロ有機ボロン酸」なる用語は、ホウ素-炭素結合を介してホウ素に結合した有機基がハロゲン基又は偽ハロゲン基を有する有機ボロン酸を意味する。
【0038】
「偽ハロゲン基」なる用語は、ハロゲン原子と同様の化学的反応性を有する基を意味する。偽ハロゲン基の例には、トリフラート(-O-S(=O)2-CF3)、メタンスルホナート(-O-S(=O)2-CH3)、シアナート(-C≡N)、アジド(-N3) チオシアナート(-N=C=S)、チオエーテル(-S-R)、アルデヒド(-C(=O)-O-C(=O)-R)、及びセレン化フェニル(-Se-C6H5)が含まれる。
【0039】
「有機偽ハロゲン化物」なる用語は、少なくとも一の偽ハロゲン基を含む有機化合物を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明は、以下の図面及び説明を参照することで、よりよく理解することができる。図中の要素は必ずしもスケール通りではなく、本発明の原理を例証するのに重きが置かれている。
【図1】図1は、保護された有機ボロン酸を形成する方法を表す。
【図2A】図2Aは、化学反応を実施する方法を表す。
【図2B】図2Bは、化学反応を実施する方法を表す。
【図3】図3は、保護された有機ボロン酸の具体例のX線結晶構造を表す。
【図4】図4は、鈴木-宮浦変換における、保護された及び脱保護された有機ボロン酸の反応例についての、化学構造、反応スキーム及び生成物比を表す。
【図5】図5は、保護されたハロ有機ボロン酸の調製例についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を表す。
【図6】図6は、(a)脱保護されたボロン酸と、保護された有機ボロン酸の実施例との反応、(b)カップリングしたビアリール化合物の脱保護についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を表す。
【図7A】図7Aは、保護された有機ボロン酸の有機基の多様な化学変換を表す。
【図7B】図7Bは、「ジョーンズ(Jones)試薬」を用いた、遊離のボロン酸、及び多様なその保護された類似体の処理についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を表す。
【図8】図8は、水性塩基性条件下での鈴木-宮浦変換における保護された有機ボロン酸の反応例を表す。
【図9】図9は、ラタニン(ratanhine)の逆合成断片化についての例示的スキームを表す。
【図10】図10は、ラタニンの全合成の例における合成工程を表す。
【図11】図11は、ポリエン類の合成例のスキームを表す。
【図12】図12は、鈴木-宮浦変換での保護及び脱保護アルケニル有機ボロン酸の反応例を表す。
【図13】図13は、保護されたハロ有機ボロン酸の形成例を表す。
【図14】図14は、保護されたハロ有機ボロン酸の形成例を表す。
【図15】図15は、保護されたハロ有機ボロン酸を使用する、ポリエンの反復合成例を表す。
【図16】図16は、保護されたハロ有機ボロン酸の形成例を表す。
【図17】図17は、保護されたハロ有機ボロン酸の例の有機基の多様な化学変換を表す。
【図18】図18は、保護されたハロ有機ボロン酸を使用するポリエン合成例を表す。
【図19】図19は、オール-トランス-レチナールの全合成の例における合成工程に対する、化学構造、反応スキーム及び反応収率を表す。
【図20】図20は、AmB骨格の半分の合成についての構造及び反応スキームを表す。
【図21】図21は、β-パリナリン酸の合成についての構造及び反応スキームを表す。
【図22】図22は、アリールハロゲン化物を用いた保護有機ボロン酸のインサイツクロスカップリングについての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を表す。
【図23】図23は、対応する遊離ボロン酸の形成のない、保護された有機ボロン酸の調製についての構造及び反応スキームを表す。
【図24】図24は、単一の反応混合物で実施された、3つの別々の成分のクロスカップリング反応についての構造及び反応スキームを表す。
【図25A】図25Aは、保護されたハロ有機ボロン酸とビルディングブロックの例を表す。
【図25B】図25Bは、保護されたハロ有機ボロン酸とビルディングブロックの例を表す。
【図26】図26は、ビス-ボロナートビルディングブロックの実施例を表す。
【図27A】図27Aは、有機基が官能基を含む保護された有機ボロン酸ビルディングブロックの例を表す。
【図27B】図27Bは、有機基が官能基を含む保護された有機ボロン酸ビルディングブロックの例を表す。
【図28】図28は、保護された有機ボロン酸ビルディングブロックの例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基とsp3混成を有するホウ素が含まれる保護された有機ボロン酸への変換により、有機ボロン酸を多様な化学反応から保護することができるという発見を利用している。ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基とsp3混成を有するホウ素が含まれる有機ボロン酸は、鈴木-宮浦変換を介し、有機ハロゲン化物又は有機偽ハロゲン化物とのクロスカップリングから保護されうる。さらに、保護された有機ボロン酸は、温和な反応条件下、高収率で脱保護され、遊離の有機ボロン酸を得ることができる。
【0042】
保護された有機ボロン酸は、有機基、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基、及びsp3混成を有するホウ素を含む。有機基はホウ素-炭素(B-C)結合を介してホウ素に結合している。保護基は三価の基でありうる。好ましくは、有機基はホウ素を化学的に変換することなく、化学変換を受けることができる。
【0043】
図1は、保護された有機ボロン酸を形成する方法を表し、ここで、sp2混成を有する有機ボロン酸100は保護変換を受け、sp3混成を有する保護された有機ボロン酸120が形成される。図1に示されるように、保護された有機ボロン酸120は脱保護変換を受け、遊離のボロン酸基を含む有機ボロン酸100が形成可能となる。ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基、及びsp3混成を有するホウ素を含む保護された有機ボロン酸とは異なり、一般的な保護された有機ボロン酸は、sp2混成を有するホウ素、アニオン性化合物に存在するホウ素、又は立体構造的に強固ではない保護基に結合したホウ素のいずれかを含む。
【0044】
一例では、保護された有機ボロン酸は、次の式(II):
R1-B-T (II)
[上式中、R1はB-C結合を介してホウ素に結合した有機基を表し、Bはsp3混成を有するホウ素を表し、Tは立体構造的に強固な保護基を表す]
により表されうる。R1基は、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はこれらの基の少なくとも2つの組合せでありうる。さらに、R1は、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、アリール、及び/又はヘテロアリール基の炭素に結合したヘテロ原子を含み得る一又は複数の置換基を含んでいてもよい。
【0045】
R1基は、一又は複数の官能基を含んでいてもよい。好ましくは、R1は、ホウ素を化学的に変換することなく化学変換を受けることのできる一又は複数の他の官能基を含んでいてもよい。R1の一部として存在し得る官能基の例には、ハロゲン又は偽ハロゲン(-X)、アルコール(-OH)、アルデヒド(-CH=O)、ケトン(>C(=O))、カルボン酸(-C(=O)OH)、チオール(-SH)、スルホン、スルホキシド、アミン、ホスフィン、亜リン酸塩、ホスファート、及びこれらの組合せが含まれる。さらに、R1の一部として存在し得る官能基の例には、金属含有基、例えばスズ(Sn)、亜鉛(Zn)、ケイ素(Si)、ホウ素等の金属を有する基、及びこれらの組合せが含まれる。官能基を含み、保護された有機ボロン酸に存在し得る有機基の例を、表1に列挙する:
保護された有機ボロン酸に存在可能な官能基を含む有機基のさらなる例を、本出願において例証し又は記載する。
【0046】
R1の一部として存在し得る官能基の例には、保護されたアルコール類、例えば特にトリメチルシリルエーテル(TMS)、t-ブチルジフェニルシリルエーテル(TBDPS)、t-ブチルジメチルシリルエーテル(TBDMS)、トリイソプロピルシリルエーテル(TIPS)等、シリルエーテルとして保護されたアルコール類;例えばメトキシメチルエーテル(MOM)、メトキシエトキシメチルエーテル(MEM)、p-メトキシベンジルエーテル(PMB)、テトラヒドロピラニルエーテル(THP)、メチルチオメチルエーテル等、アルキルエーテルとして保護されたアルコール類;アセタート又はピバロイラート等、カルボニル基として保護されたアルコール類が含まれる。R1の一部として存在し得る官能基の例には、保護されたカルボン酸、例えばメチルエステル、t-ブチルエステル、ベンジルエステル及びシリルエステル等、エステルとして保護されたカルボン酸が含まれる。R1の一部として存在し得る官能基の例には、保護されたアミン類、例えばN-(トリメチルシリル)エトキシカルバマート(Teoc)、9-フルオレニルメチルカルバマート(FMOC)、カルバミン酸ベンジル(CBZ)、t-ブトキシカルバマート(t−BOC)等、カルバマートとして保護されたアミン類;及びベンジルアミンとして保護されたアミン類が含まれる。
【0047】
他の例では、保護された有機ボロン酸は式(II)により表すことができ、ここでR1基は、次の式(III):
Y-R2-(R3)m- (III)
[上式中、Yはハロゲン基又は偽ハロゲン基を表し;R2はアリール基又はヘテロアリール基を表し;R3は、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はこれらの基の少なくとも2つの組合せを表し;mは0又は1である]
により表される。R2は、例えばヘテロアリール基でありうる。さらに、R2及びR3は独立して、R2又はR3基の炭素に結合してヘテロ原子を有していてもよい一又は複数の置換基を含んでいてもよい。また、R2及びR3基は独立して、上述したR1に対して記載したような、一又は複数の官能基を含んでいてもよい。
【0048】
この例では、保護された有機ボロン酸は保護されたハロ有機ボロン酸である。Y基は、保護された有機ボロン酸のホウ素を反応させることなく、遊離のボロン酸を含む化合物との鈴木-宮浦クロスカップリングを受けてもよい。ホウ素の脱保護により、遊離のボロン酸が得られ、ついで、ハロゲン基又は偽ハロゲン基を有する化合物と共に、鈴木-宮浦変換を受けてもよい。よって、これらの保護されたハロ有機ボロン酸は、選択的鈴木-宮浦変換を介した反復合成のための二官能性ビルディングブロックとして使用することができる。
【0049】
一例では、保護された有機ボロン酸は、sp3混成を有するホウ素、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基、及びホウ素-炭素(B-C)結合を介してホウ素に結合した有機基を含むことができ、ここで、有機基は、以下の表2に列挙される基ではない。保護基は三価の基でありうる。
【0050】
他の例では、保護された有機ボロン酸は、sp3混成を有するホウ素、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基、及びホウ素-炭素(B-C)結合を介してホウ素に結合した有機基を含んでいてもよく、ここで、有機基は、表2又は以下の表3に列挙される基ではない。保護基は三価の基でありうる。
【0051】
一例では、保護された有機ボロン酸は、式(IV):
R4-(R5)m-B-T (IV)
[上式中、R4及びR5は共に、有機基を表し、mは0又は1であり、Tは立体構造的に強固な保護基を表し、Bはsp3混成を有するホウ素を表す]
により表すことができる。R4及びR5基は独立して、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はこれらの基の少なくとも2つの組合せであってよい。好ましくは、この例において、R4は、ハロゲン置換基又は偽ハロゲン置換基を含むアリール基ではない。例えば、R4は、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、又はヘテロアリール基であってよく、ハロゲン置換基又は偽ハロゲン置換基を含んでいてもよい。例えば、R4は、ハロゲン又は偽ハロゲン基を含まない基であってよく、もしくはさらにアリール基であってもよい。
【0052】
式(II)及び(IV)において、T基はホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基を表す。ホウ素原子に結合した立体構造的に強固な有機保護基は、次の「立体構造的強固性試験」により決定される。ホウ素原子と、ホウ素に結合した有機保護基を有する化合物のサンプル10ミリグラム(mg)を、無水d6-DMSOに溶解し、NMRチューブに移す。ついで、23℃〜150℃の範囲の温度で、1H-NMRによりサンプルを分析する。各温度で、サンプルシムを最適化し、1H-NMRスペクトルを得る。保護基が立体構造的に強固でないならば、23℃で得られた1H-NMRスペクトルにおける一組のジアステレオトピックなプロトンについての分裂ピークは、100℃で得られた1H-NMRスペクトルにおける単一ピークと合体するであろう。保護基が立体構造的に強固であるならば、23℃で得られた1H-NMRスペクトルにおける一組のジアステレオトピックなプロトンについての分裂ピークは、90℃で得られた1H-NMRスペクトルにおける単一ピークと合体しないであろう。このテストの一例を以下の実施例10に提供する。
【0053】
ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基を含む保護された有機ボロン酸の一例では、保護された有機ボロン酸は、式(X):
[上式中、R10は有機基を表し、Bはsp3混成を有するホウ素を表し、R20、R21、R22、R23及びR24は独立して、水素基又は有機基である]
により表すことができる。R20、R21、R22、R23及びR24は独立して、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はこれらの基の少なくとも2つの組合せであってよい。一例では、R20はメチルであり、R21、R22、R23及びR24のそれぞれは、水素である。この例の保護された有機ボロン酸は、式(XI):
[上式中、R10は有機基を表し、Bはsp3混成を有するホウ素を表す]
により表すことができる。R10基は、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、又は上述したR1に対して記載したような、これらの基の少なくとも2つの組合せであってよい。R10基は、一又は複数の置換基、及び/又は一又は複数の官能基を有していてもよい。
【0054】
式(X)の保護された有機ボロン酸は、次の反応スキーム:
に例証されるように、対応する保護されていないボロン酸(XII)と、適切なN-置換イミノ-ジ-カルボン酸を反応させることにより調製することができる。
特定の例では、式(XI)の保護された有機ボロン酸は、次の反応スキーム:
に例証されるように、対応する保護されていないボロン酸(XII)と、N-メチルイミノ二酢酸(MIDA)を反応させることにより調製することができる。
それぞれの場合、保護された有機ボロン酸は、温和な水性塩基と接触させることにより脱保護され、遊離のボロン酸(XII)を提供される。
【0055】
また、式(X)の保護された有機ボロン酸は、試薬として単離されたボロン酸を使用することなく調製され得る。ボロン酸は、保護された有機ボロン酸に転換される直前に、インサイツで形成され得る。さらに、保護された有機ボロン酸は、遊離のボロン酸を形成することなく形成され得る。図23には、対応する遊離のボロン酸を形成することなく、保護された有機ボロン酸を調製するための構造及び反応スキームが示されている。実験の詳細を実施例20に提供する。
【0056】
一例では、ボロン酸は、例えばボロン酸エステル(すなわち、R'及びR''が有機基である、R10-B-(OR')(OR''))を加水分解することにより、インサイツで生成され得る。ボロン酸エステルは、例えばアルケン又はアルキンのC-C多重結合に対してHB(OR')(OR'')を付加することにより形成され得る。(Brown, 1972)。またボロン酸エステルは、例えば、宮浦ホウ素化(Miyaura borylation)(Miyaura, 1997; Miyaura, JOC, 1995.)により;有機ハロゲン化物を有機リチウム試薬と反応させ、続いてボロン酸トリエステル(すなわち、B(OR)3)と反応させることにより;又はボロン酸トリエステルを有機金属試薬(すなわち、R-Li、R-Mg、R-Zn;Brown, 1983)と反応させることにより形成され得る。他の例では、ボロン酸は、アセトアルデヒド(R'及びR''は有機基である)で三置換ボラン(すなわち、R10-BR'R'')を処理することにより、インサイツで生成され得る。三置換ボランは、例えばアルケン又はアルキンをHBR'R'でヒドロホウ素化し、C-C多重結合に対してHBR'R''を付加することにより形成され得る。
【0057】
他の例では、次の反応スキーム:
に例証されるように、ボロン酸ハロゲン化物(XIII)を、二酸又はその対応する塩と反応させることにより、保護された有機ボロン酸(X)を得ることができる。
ボロン酸ハロゲン化物は、HBX2(Brown, 1984; Brown, 1982)又はBX3(Soundararajan, 1990)を用いて、アルケン又はアルキンをヒドロホウ素化することにより形成され得る。またボロン酸ハロゲン化物は、BBr3でR10-SiR3等のシランを処理することにより形成され得る(Qin, 2002; Qin, 2004)。
【0058】
MIDAボロン酸エステル保護基を含む保護された有機ボロン酸は、カラムクロマトグラフィーにより、容易に精製される。これは、典型的にはクロマトグラフィー技術に対して不安定なボロン酸では普通ではない。また、これらの化合物は高度に結晶質であり、精製、利用性及び保存が容易である。これらの化合物は、空気中での卓上保存を含む長期間の保存に対して極めて安定している。また、多くのボロン酸は、長期間の保存に対して不安定であるため、このことは普通ではないことである。
【0059】
sp3混成を有するホウ素、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基、及び有機基を含む保護された有機ボロン酸は、合成ビルディングブロックとして有用である。ビルディングブロックの例には、保護されたハロ有機ボロン酸、例えば図25に列挙されているものが含まれる。ビルディングブロックの例には、sp3混成を有する第1のホウ素、第1のホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基、及びボロン酸又は異なる種類の保護されたホウ酸として存在し得る第2のホウ素原子を有するビス-ボロナート類が含まれる。ビス-ボロナート類の例には、図26に列挙されているもの、及び第2のホウ素原子が、ボロン酸、ボロン酸エステル(ピナコールエステルを含む)-、BF3−又はor-B(OH)3−として存在するこれらビス-ボロナート類の誘導体が含まれる。ビルディングブロックの例には、有機基が官能基、例えば図27に列挙されてるものを含む保護された有機ボロン酸が含まれる。他の種々のビルディングブロックの例は図28に列挙されている。これらビルディングブロックの各々における保護基は、MIDAボロン酸エステルとして表される。また保護された有機ボロン酸ビルディングブロックは、保護基に一又は複数の置換基を有する、及び/又は保護基の窒素に結合した種々の基を有する化合物をさらに含む。例えば、これらのビルディングブロックにおける保護基は、式(X)に記載したような保護基であってもよい。
【0060】
MIDAボロン酸エステル保護基を含む保護された有機ボロン酸は、多くの有利な特徴を有する。MIDA基は、典型的には、エステル化しているボロン酸の反応性の低下に効果的である。反応性のこの低減についての可能な一説明は、ルイス酸のホウ素p空軌道が、他の物質との反応に利用できないことである。例えば、保護されたホウ素は、鈴木-宮浦変換に関与するパラジウム触媒と錯化するための、ルイス酸のp空軌道をもはや有さない。よって、この保護方法は、鈴木-宮浦変換に対するその反応性を含む任意のボロン酸の反応性を低減させる。さらに、MIDAボロン酸エステル基は、クロスカップリングの他に、多様な反応条件に対して安定しているように思われる。この安定性により、ボロン酸官能基を含む複雑な合成ビルディングブロックの合成におけるそれらの利用が容易になる。
【0061】
ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基を有するこれらのsp3混成ボロン酸エステルは、80℃で28時間、無水の鈴木-宮浦カップリングから保護されているが、極めて穏やかな水性塩基性条件を使用し、23℃で容易に脱保護を達成することができる。脱保護条件の一例は、テトラヒドロフラン(THF)中の1モル(M)の水性水酸化ナトリウム(NaOH)を用いて10分処理することである。脱保護条件の他の例は、メタノール(MeOH)中の水性飽和重炭酸ナトリウム(NaHCO3)を用いて6時間処理することである。これらの温和な条件は、厳しい切断条件を必要としうるボロン酸エステルをベースにした典型的な保護基とは対照的である。
【0062】
図2Aは、保護された有機ボロン酸204を試薬と接触220させることを含む、化学反応を実施する方法200を表し、ここで、有機基は化学的に変換され、ホウ素は化学的に変換されない。保護された有機ボロン酸206は、保護された有機ボロン酸204の化学変換体であり、ここで、RAはRBに転換されているが、ホウ素は化学的に変換されていない。本方法は、場合によっては、ボロン酸202を保護試薬と反応210させることにより、保護された有機ボロン酸204を形成させることを含む。また保護された有機ボロン酸204は、ボロン酸202を形成し及び/又は単離することなく形成され得る。本方法は、場合によっては、保護された有機ボロン酸206を脱保護230することにより、ボロン酸208を形成させることを含む。
【0063】
図2Bは、保護された有機ボロン酸204を有機ハロゲン化物252と反応260させ、クロスカップリングした生成物254を得ることを含む、化学反応を実施する方法250を表す。反応260には、保護された有機ボロン酸204及び有機ハロゲン化物252を水性塩基の存在下でパラジウム触媒と接触させることを含み得る。保護基はインサイツで切断され、有機のボロン酸(すなわち、図2Aの202)が得られ、これを、ついで有機ハロゲン化物252とクロスカップリングさせることができる。よって、錯体合成中に、保護されたビルディングブロックとなることに加え、保護された有機ボロン酸は、ボロン酸の安定した純粋な誘導体として有用でありうる。
【0064】
保護された有機ボロン酸204には、sp3混成を有するホウ素、立体構造的に強固な保護基、及びB-C結合を介してホウ素に結合した有機基R1を含む。保護された有機ボロン酸204は、上に開示された任意の保護された有機ボロン酸でありうる。好ましくは、保護された有機ボロン酸204は、ホウ素に結合した三価の保護基を含む。
【0065】
保護された有機ボロン酸204は、例えば上述したような式(II)により表すことができる。例えば、保護された有機ボロン酸204は、式(III)により表すことができ、ここでR1基は、上述したような式(III)で表される。保護された有機ボロン酸204は、例えば上述したような、式(IV)により表すことができる。保護された有機ボロン酸204は、例えば上述したような、式(X)又は(XI)により表すことができる。
【0066】
図3は、保護された有機ボロン酸、(N→B)-トリル-[N-メチルイミノジアセタート-O,O’,N]ボラン3aの例のX線結晶構造を表す。この構造には、ホウ素(B2)はsp3混成していることが示され、四面体配向にある。
【0067】
図4は、鈴木-宮浦変換における保護された及び保護されていない有機ボロン酸の反応例についての、化学構造、反応スキーム及び生成物比を示す。化学量論的量のパラ-N-ブチルフェニル-ボロン酸2及び(N→B)-トリル-[N-メチルイミノジアセタート-O,O’,N]ボラン3aを、バックワルド(Buchwald)の無水鈴木-宮浦条件下で0.8当量のp-ブロモベンズアルデヒドと反応させた。(Barder, 2005)。24:1のビアリール5及び6が観察され、p-ブロモベンズアルデヒドとsp2混成ボロン酸2(項目1)との強力な優先的反応性に一致した。これに対して、p-トリルボロン酸3bを用いたコントロール実験では、1:1混合の生成物(項目2)が生じた。保護基における立体的に大きなN-アルキル置換は許容できるが、あまり有利ではなかった(項目3)。そのイミノ二酢酸対応物よりもあまり立体構造的に強固ではないことが知られているN-メチル-ジエタノールアミン付加物3d(Contreras, 1983)には選択性がないことが証明された(項目4)。これらの化合物の調製及び使用についての実験の詳細は、それぞれ実施例1及び2に提供する。
【0068】
図5は、保護されたハロ有機ボロン酸の調製例についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を示す。多様なハロボロン酸をMIDAと錯化させ、一連のB-保護された二官能性ビルディングブロックを得た。ブロモフェニルボロン酸、並びに芳香族ヘテロ環5-ブロモチオフェンボロン酸の3つ全ての位置異性体はきれいに反応し、優れた収率で8a-dが生じた。同様の錯化条件で、ビニル及びアルキルのボロン酸エステル8e及び8fが生じた。(N→B)-ビニル-[N-メチルイミノジアセタート-O,O',N]ボラン8eの錐体的性質(pyramidalized nature)を、単結晶X線回折分析を介して確認した。際だって、これらの錐体化ボロン酸エステルは安定しており、シリカゲルクロマトグラフィーにより容易に精製された。図5に示す全ての収率は、単一のクロマトグラフィー工程後、分析的に純粋で無色の結晶性固形物として単離された物質を表す。さらに、対応するボロン酸とは全く対照的に(Hall, 2005)、これら全てのボロン酸エステルは、空気下で無期限に卓上安定していた。実験の詳細を実施例3に提供する。
【0069】
図6は、(a)ハロゲン基を有する保護された有機ボロン酸と保護されていないボロン酸との反応、(b)遊離のボロン酸を提供するための、カップリングしたビアリール化合物の脱保護についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を示す。選択的クロスカップリングを可能にするMIDAリガンドの能力を、実施例2のそれぞれのB-保護された二官能性ビルディングブロックをp-トリルボロン酸と反応させることにより調査した。アリール、ヘテロアリール、ビニル、及びアルキルボロン酸の反応性は、劇的に変化しうるが(Barder, 2005; Billingsley, 2007; Littke, 2000; Nicolaou, 2005)、同様の保護基は4つ全てのクラスの求核試薬で有効であり、選択的にクロスカップリングした生成物9a-9fが生じた。また、4つ全てのクラスの求核試薬を、THF中の1モル(M)の水性NaOHで23℃で10分、温和な水性塩基性条件の標準的セットを使用して、効果的に脱保護した。飽和したNaHCO3も効果的であった(項目3)。実験の詳細を実施例4に提供する。
【0070】
図7Aは、保護された有機ボロン酸の有機基の多様な化学変換についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を示し、ここで、有機基は化学的に変換され、ホウ素は化学的に変換されない。MIDAボロン酸エステルは際だって強固であった。一例では、保護された有機ボロン酸19のMIDA-保護p-ヒドロキシメチル-フェニルボロン酸は、スワーン(Swern)酸化を介して、対応するアルデヒド20に円滑に変換され、逆変換は水素化ホウ素ナトリウムを用いて達成された。
【0071】
他の例では、非常に強力な酸化及び酸性「ジョーンズ試薬」(CrO3及び濃H2SO4)を用いて19を処理すると、予期しないことに、保護された有機ボロン酸が何ら観察できる程度に分解することなく、安息香酸誘導体21が生じた。極めて酸性の条件に対するこの際だった安定性は非常に驚くべきことであり、非常に温和な水性塩基、例えば水性NaHCO3に対するMIDA-ベースの保護された有機ボロン酸の明白な不安定さとは、はっきりと対照的であった。しかしながら、多くの非水性塩基は良好に許容されると思われる。
【0072】
図7Bは、19の21への酸化に対するものと同一の反応条件を使用し、「ジョーンズ試薬」を用いた、遊離のボロン酸及び多様なその保護された類似体の処理についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を示す。遊離のボロン酸190の反応により、p-ベンジルアルコール有機基からホウ素が完全に除去された安息香酸とp-ヒドロキシ安息香酸の混合物が得られた。191に対する保護基はピナコールエステル基であり、ここでホウ素はsp2混成していた。保護された類似体192は、アニオン性化合物の一部として、特にR-BF3−アニオンとして、ホウ素を有していた。193に対する保護基はN-メチルジエタノールアミンエステルであり、これは立体構造的に強固な保護基ではなかった(以下の実施例10を参照)。保護された類似体191、192及び193の反応により、それぞれp-ベンジルアルコール有機基からホウ素が完全に除去された安息香酸とp-ヒドロキシ安息香酸の混合物が生成された。よって、sp3混成したホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基、及びホウ素-炭素結合を介してホウ素に結合した有機基を含む保護された有機ボロン酸19のホウ素は、驚くべきことに、また予期しないことに、「ジョーンズ試薬」の酸化及び酸性条件に対して不活性であった。
【0073】
図7Aに再度言及すると、他の例では、保護された有機ボロン酸19は、カルバニオン媒介性エバンスアルドール及びHWEオレフィン化反応と適合性があり、それぞれ22及び23を生じせしめた。また、前者は、最初に形成されたホウ素-アルコキシドアルドール付加物のペルオキシド媒介性酸化切断を必要とするが、これに対して、MIDA錯体は、また驚くべきことに安定していた。異なる炭素-炭素結合形成反応の他の例では、高井オレフィン化も保護された有機ボロン酸との適合性があり、24等のB-保護されたハロボロン酸にアクセスする新規な方法を提供する。
【0074】
他の例では、いくつかの共通した官能基変換が、保護された有機ボロン酸により十分に許容された。これらの変換には、アルコールシリル化(25)及び脱シリル化、極度に酸性の触媒TfOH(26)を用いたp-メトキシベンジル化、及びヨード化(27)が含まれる。
【0075】
有機基がsp3混成ではないホウ素を有する保護された有機ボロン酸は、sp3混成を有するホウ素を化学的に変換することなく、非sp3混成ホウ素の化学変換を受けることができる。例えば、図14を参照。よって、選択的クロスカップリングは、差次的にライゲーションをされたビス-ボロナート試薬を用いて実施することができる。
【0076】
また、保護された有機ボロン酸は、ホウ素を化学的に変換することなく、2つの異なる種類の金属原子を有する化合物との金属交換反応を受けることができる。例えば、保護されたハロ有機ボロン酸と、亜鉛及びスズを含有するビス-メタル化ビニル化合物との間の根岸クロスカップリングを示す図15が参照される。このように、変換が三重金属選択性(B、Sn、Zn)であるクロスカップリング反応が実施可能である。
【0077】
図8は、水性塩基性条件下、鈴木-宮浦変換における保護された有機ボロン酸の反応についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を示す。パラジウム触媒の存在下、保護された有機ボロン酸30とメチルp-ブロモフェニルケトンとを反応させると、クロスカップリングした生成物32が提供される。反応は水性塩基の存在下で実施されるため、MIDAボロン酸エステルはインサイツで切断され、遊離のボロン酸が提供される。よって、錯体合成中に、保護されたビルディングブロックとして供給されることに加え、保護された有機ボロン酸は、ボロン酸の安定した純粋な誘導体として有用なものである。上述にて記したように、ボロン酸は生成するのが困難で、長期間の保存中、不安定であるおそれがある。対照的に、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基を有し、sp3混成を有するホウ素を含む保護された有機ボロン酸は、結晶化及び/又はクロマトグラフィーにより精製可能であり、空気中でさえ、長期間安定可能である。
【0078】
これらの反応により、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基を有し、sp3混成を有するホウ素を含む保護された有機ボロン酸の、可能な適用性のいくつかが示される。これらの化合物は、鈴木-宮浦反復クロスカップリング変換を介して、簡単な、高いモル分子の合成に使用されてもよい。これらの変換は、二官能性ビルディングブロック、例えば、ハロゲン又は偽ハロゲン基を含む保護された有機ボロン酸に関与している。与えられた合成に対して、的確な酸化状態でプレインストールされた必要な官能基を有し、所望する立体化学的関連性を持つ全てのビルディングブロックが調製され得る。ついで、これらのビルディングブロックは、温和な反応、例えば鈴木-宮浦反応の繰り返し適用により、一緒にされる。非常に簡単で、効果的であり、自動化に適していることに加えて、この方法は本来的にモジュール式であり、構造誘導体の収集作製に非常に適している。
【0079】
この反復クロスカップリング法により、小分子合成のプロセスを劇的に単純化することができる。例えば、天然生成物であるラタニンは、温和な鈴木-宮浦反応を繰り返し使用することにより調製され、容易に合成され、容易に精製され、高度に強固なビルディングブロックが収集される。合成は短くて高度にモジュール式であり、よって修飾されたビルディングブロックを同じ経路に置換することにより、多様な誘導体が簡単に入手できるに違いない。
【0080】
図9は、3つの鈴木-宮浦変換の繰り返し適用を介して、ラタニン11の4つの単純なビルディングブロック12-15への、逆合成断片化についてのスキームを示す。天然生成物であるラタニンは、薬用植物Ratanhiae radixから単離されるネオリグナンの大きなファミリーの最も複雑なメンバーである。(Arnone, 1990)。保護された有機ボロン酸についての正確なテストを提供したこの計画にはいくつかの課題があった。例えば、アリールボロン酸のクロスカップリングは、そのビニル対応物のものよりもより容易な傾向にあり、ビニルボロン酸12とブロモアリールボロナート13との間の選択的クロスカップリングを保証されないものにする。さらに、芳香族複素環ボロン酸、例えば13の脱保護されたバージョンは、分解に対して非常に敏感である場合がある(Tyrell, 2003)。さらに、高度に電子が豊富で、立体的に妨害されたアリール臭化物14とのクロスカップリングには、MIDAリガンドについての安定性の限界を試験する高温及び/又は長時間の反応時間を必要とすることが予期された。
【0081】
図10は、ラタニンの全合成における合成工程についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を示す。実験の詳細を実施例6−9に提供する。ビルディングブロック13-15が調製される(それぞれ、実施例6−8を参照)と、ビニルボロン酸12とブロモアリールボロナート13との間の成功裏の選択的クロスカップリングが開始され、中間体16が生じる。意外にも、ベンゾフラニルボロナート13及び16は、少なくとも1ヶ月、空気下でも卓上安定していた。これに対して、16の脱保護から得られた2-ベンゾフラニルボロン酸は、数日で直ぐに分解した。14とクロスカップリングさせる直前に、16を脱保護することにより、この課題は簡単に克服された。予期したように、この電子が豊富で、立体的に大きなアリール臭化物14には、高温(80℃、密封チューブ)及び反応時間の延長(28時間)の双方が必要であった。顕著なことに、MIDA保護基は、これらの強制条件に対して完全に安定しており、高度な中間体17が生じることが見出された。B-脱保護、15とのクロスカップリング、及び2つのMOMエーテルの切断の最終シーケンスにより、ラタニンの第1の全合成が完了した。この合成は、最も長い線形シーケンスにおける7つの工程を含む。最終生成物の全てのスペクトルデータは、Arnone(1990)に報告されたものと一致した。
【0082】
「ポリエン天然生成物」と集合的に称される小分子のクラスは、元来、極めて多様で、細菌、真菌、粘菌、植物、広範囲の水性種、さらには動物によっても合成される。またこれらの化合物は、並はずれて多様な構造と機能を示し、多様な二重結合、例えばE-及びZ-1,2-二置換、三置換、及び四置換されたオレフィン類を含み得る。これらの化合物の活性には、抗真菌、抗菌及び抗腫瘍特性が含まれ、多くの研究により、これらの構造をわずかに変えるだけで、それらの活性に劇的な衝撃を付与可能であることが示されている。疑いようもなく、ポリエン天然生成物は、ヒトの健康を改善するための、実質的な未開発の可能性を有しており、これらの化合物及びそれらの誘導体への足かせのない合成手段が、この可能性を実現するのに重要となる。保護された有機ボロン酸及び合成方法におけるそれらの使用により、反復クロスカップリングを介した広範囲のこれら標的の簡単なモジュラーアセンブリーが得られうる。
【0083】
ポリエン類の合成は、多くの一般的な合成試薬に対してコンジュゲートした二重結合フレームワークが敏感なことが、これを挑戦的なものにしている。それぞれの二重結合の幾何のコントロールは重要な問題である。多くの有益な方法が開発されているが、パラジウム媒介性クロスカップリングをベースにした合成方法は、これらの試薬の温和で立体特異的な性質のために特に魅力的である。この調子で、ビス-メタル化(Lhermitte, 1996; Lipshutz 1997; Pihko, 1999; Babudri, 1998; Murakami, 2004; Denmark, 2005; Lipshutz, 2005; Coleman, 2005; Coleman, 2007)、又はビス-ハロゲン化(Organ, 2000; Antunes, 2003; Organ, 2004)されたリンチピン(lynchpin)試薬をベースにした多様な方法が報告されている。これらのアプローチにおいて、3つのフラグメントを、2つのクロスカップリング反応を使用し、リンチピンの直交反応性末端に一緒にする。ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基を有し、sp3混成を有するホウ素を含む保護された有機ボロン酸を使用する反復クロスカップリング法の重要な利点は、無限の反復といった固有の可能性にある。すなわち、必要とされる全てのビルディングブロックを、理論的には、単純で温和な反応の繰り返し適用を介して一緒にすることができる。これにより、合成方法を劇的に単純化することができ、類似体調製が直ぐにできるようになる。ただ一つの反応の使用は、ビルディングブロックに付加された官能基と、それらをカップリングするのに使用される反応条件との間で不適合となる可能性を最小にするのに役立つ。さらに、二官能性ハロ有機ボロン酸を使用すると、ビス-メタル化リンチピン型の試薬で頻繁に使用される有毒金属、例えば有機スタナンを回避することができる。最後に、保護されたハロ有機ボロン酸は、シリカゲルコンジュゲート及び/又は再結晶化により容易に精製でき、空気下で卓上に無期限で保存される自由に流動する結晶性固形物になる傾向にある。
【0084】
図11は、ポリエン天然生成物を含むポリエン類を合成する反復クロスカップリング方法の一般的適用例についてのスキームを示す。ポリエンは少なくとも2つの交互炭素-炭素二重結合を含む化合物である。鈴木-宮浦反応を介した保護されたハロ有機ボロン酸54とボロン酸55とのカップリングにより、保護された有機ボロン酸56が得られる。56の脱保護により、有機ハロゲン化物又は有機偽ハロゲン化物とのカップリングが可能な、遊離のボロン酸が提供される。有機ハロゲン化物又は有機偽ハロゲン化物が保護された有機ボロン酸を含むならば、ポリエン鎖は反復伸長可能となる。図11の例では、脱保護後に有機ハロゲン化物57を付加することでポリエン生成物58が提供される。
【0085】
図12は、鈴木-宮浦変換における保護された及び保護されていないアルケニルボロン酸の反応例についての、化学構造、反応スキーム及び生成比率を示す。N-メチルイミノ二酢酸は1-ヘキセニルボロン酸と錯化し、以前には知られていない(N→B)-(1-ヘキセニル)-[N-メチルイミノジアセタート-O,N]ボラン54dが生じた。この保護された有機ボロン酸は、温度依存性の1H NMR(Mancilla, 2005)により研究され、N→B結合が少なくとも110℃まで安定していることが見出された。化学量論的量の1-プロピレンボロン酸50と(N→B)-(1-ヘキセニル)-[N-メチルイミノジアセタート-O,O',N]ボラン54dとを、鈴木-宮浦クロスカップリング条件下で0.8当量のβ-ブロモスチレンと反応させた。生成物51及び52の75:1混合物を観察したところ、保護されていないビニルボロン酸50のカップリングに対する非常に高度な選択性と一致した。
【0086】
図13−18は、保護されたハロ有機ボロン酸54a、54b及び54cの調製について、また54a及び54cを用いた後続反応についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を示す。図13において、(E)-ジブロモ(2-ブロモビニル)ボラン59とMIDAとの錯化により、二官能性オレフィン54aが効率的に生じた。この反応を75mmolスケールで再生し、空気下で無期限の保存に対して安定した、自由に流動する結晶性固形物として12gの54aが生じた。実験の詳細を実施例11に提供する。
【0087】
1,2-二置換-ビニルハロゲン化物を用いた宮浦ホウ素化は希であるが、54aは新規のビス-ホウ素化オレフィン61に円滑に転換された(図14)。61のX線構造により、ピナコールとMIDAボロン酸エステル保護基のsp2−及びsp3混成を、それぞれはっきりと確認した。61と(E)-1-ヨード-2-クロロエチレン62との間の、後続する二重選択(金属及びハロゲン)鈴木-宮浦クロスカップリングにより、標的とするジエン54が生じた。この反応により、差異的なライゲーションをされたビス-ボロナート試薬との、選択的クロスカップリングが示された。実験の詳細を実施例12に提供する。
【0088】
図15において、54aとビス-メタル化ビニル亜鉛63との間の根岸クロスカップリングにより、ボロニル/スタンニルジエン64が生じた。この反応により、三重金属選択(B、Sn、Zn)クロスカップリング反応が示された。64と62との間の、後続する金属及びハロゲン選択的クロスカップリングにより、標的となるB-保護されたハロトリエニルボロン酸54cが調製された。実験の詳細を実施例13に提供する。
【0089】
この経路は効果的ではあるが、有機スタンナンには毒性があり、スズ含有中間体を使用することなく、54cを調製することが好ましい。図16において、ビス-ホウ素化ジエン66が、54a及びビニルピナコールボロン酸エステル65との間のヘック型カップリングを介して、又は54bの宮浦ホウ素化を介して、塩化トリエニルビルディングブロック合成についてのスズ非含有の代替中間体として合成される。
【0090】
図17において、保護されたハロアルケニルボロン酸54aは、選択的鈴木-宮浦、スティル、ヘック、及び薗頭(Sonogashira)カップリングを受け、それぞれ生成物68、70、72及び74が生じた。保護された有機ボロン酸80は鈴木-宮浦クロスカップリングの生成物であった。実験の詳細を実施例14に提供する。
【0091】
図18において、塩化ビニルを用いたクロスカップリングは相対的に希であるが、バックワルドの電子が豊富で、立体的に大きなホスフィンリガンド4cを使用すると、塩化トリエニル54cとビニルボロン酸55との間に、非常に効果的なカップリングが提供される。実験の詳細を実施例15に提供する。
【0092】
図19は、オール-トランス-レチナールの全合成における合成工程についての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を示す。公知のトリエニルボロン酸83(Uenishi, 2003)は、二官能性ビルディングブロック54aと選択的にカップリングし、テトラエニルボロン酸エステル84が生じた。驚くべきことに、ボロン酸83は濃縮及び保存に対して不安定であるが、より先進のMIDAボロナート84は、シリカゲルコンジュゲートを介して結晶性固形物として単離され、保存に対して非常に安定していた。ボロン酸の脱保護及びアルデヒド85を用いたクロスカップリング(Romo, 1998)の最終シーケンスで、天然生成物が生じた。実験の詳細を実施例16に提供する。
【0093】
変異可能な巨大分子標的の阻害を介して機能し、よって微生物抵抗性に非常に影響を受けやすいほとんどの抗生物質とは対照的に、抗真菌剤アンホテリシンB(AmB)は、真菌脂質膜において、エルゴステロールとの自己アセンブリーを介して作用し、透過イオンチャンネルを形成する。変異可能なタンパク質標的を欠くため、この広域抗真菌剤に対する耐性は、40年以上広範囲に使用されているにもかかわらず、極めて希有である。しかしながら、コレステロールとの競合性自己アセンブリーにより、ヒト細胞において関連チャンネルが形成され、AmBはかなりの毒性があり、多くの場合はその臨床的有用性が制限される。最初であり、現在、唯一報告されているAmBの全合成は、K.C. Nicolaou及び共同研究者、1986により達成された。(Nicolaou, 1987; Nicolaou, 1988)。最も長い直鎖状シーケンスにおいて、この合成には56工程が必要であり、後期の変換の幾つかは非常に低収率で進行した。これらの欠点に加えて、十分なモジュール性及び柔軟性が欠如しているため、AmBの構造的誘導体の実用的な調製へのこの合成の使用が排除される。
【0094】
図20は、AmB骨格の半分の合成についての、構造及び反応スキームを示す。1,3-ヘプテ-2-エンボロン酸90とBB3との反応により、有機基がポリエンである保護された有機ボロン酸91が生じた。水酸化ナトリウムを用いて91を脱保護すると、遊離のボロン酸が生成され、鈴木-宮浦クロスカップリング反応を介してBB4と反応し、ポリエン92が生じる。この生成物はAmB骨格の半分に対応する。実験の詳細を実施例17に提供する。
【0095】
他の興味あるポリエン、β-パリナリン酸96は、膜特性用の蛍光プローブとして、30年以上使用されている。さらに、関連するテトラエン酸は、単一のエナンチオマーからの反足キラル凝集体の形成を含む際だった凝集性を示す。96及び/又はその類似体の有用性は、このクラスの化合物への、さらに効率的なモジュラー合成手段から、有益であるだろう。
【0096】
図21は、β-パリリナン酸96の合成についての、合成及び反応スキームを示す。保護されたクロロジエニルボロン酸54bを、容易に入手可能な出発物質から、β-パリナリン酸をモジュラー式の3工程で合成するのに使用した。特に、塩化ポリエニルクロスカップリングについての新規に同定された条件の修正法を使用することにより、二官能性塩化ジエニル54bと(E)-1-ブテニルボロン酸93との間で選択的ペアリングがなされ、オール-トランス-トリエニルボロナート94が生じた。この保護された有機ボロン酸は、カラムクロマトグラフィーによる精製に対して安定していた。温和な水性塩基性条件下で、94の脱保護がなされ、ヨウ化ビニル95を用いた後続するクロスカップリングにより、蛍光固形物として、β-パリナリン酸96が生じた。実験の詳細を実施例18に提供する。
【0097】
図22は、保護された有機ボロン酸とアリールハロゲン化物とのインサイツクロスカップリングについての、化学構造、反応スキーム及び反応収率を示す。この例では、保護された有機ボロン酸は、対応するボロン酸の代替として機能する。対応するボロン酸は精製が困難である。実験の詳細を実施例19に提供する。
【0098】
次の実施例は、本発明の一又は複数の好ましい実施態様を例証するために提供される。本発明の範囲内である以下の実施例においては、多くの変形がなされてもよい。
【実施例】
【0099】
一般的手順
市販試薬を、Sigma-Aldrich (St. Louis, MO)、Fisher Scientific (Waltham, MA)、Alfa Aesar / Lancaster Synthesis (Ward Hill, MA)、又はFrontier Scientific (Logan, UT)から購入し、他に記載がない限りは、さらなる精製をすることなく使用した。N-ブロモスクシンイミドと4-ブチルフェニルボロン酸を、使用前に、温水から再結晶化させた。Pangbornと共同研究者(Pangborn, 1996)により記載されているようにして(THF、Et2O、CH3CN、CH2Cl2:無水の中性アルミナ;ヘキサン、ベンゼン、及びトルエン、無水の中性アルミナ及びQ5反応物質;DMSO、DMF:活性型分子ふるい)、充填カラムを通過させることを介して、溶媒を精製した。水を2回蒸留した。CaH2からの窒素雰囲気下、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエチルアミン、ピリジン、及び2,6-ルチジンを新たに蒸留した。Hoya及び共同研究者の方法に従い、n-ブチルリチウムの溶液を滴定した(Hoye, T. R., 2004)。
【0100】
以下の化合物を、以前の文献に従い調製した:N-イソプロピルイミノ二酢酸(Stein, A., 1995; Dube, C. E., 2005)、(E)-3-ブロモスチリルボロン酸(Perner, R.J., 2005)、5-ブロモ-2-ベンゾフラニルボロン酸(Friedman, M. R., 2001)、2-ブロモ-5-メトキシフェノール(Albert, J. S., 2002)、4-(メトキシメトキシ)安息香酸(Lampe, J.W., 2002)、(E)-(2-ブロモエテニル)ジブロモボラン(59)(Hyuga, S., 1987)、(E)-1-クロロ-2-ヨードエチレン(62)(Negishi, E. I., 1984; Organ, M. G., 2004)、(1E,3E)-2-メチル-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセ-1-エニル)ブタ-1,3-ジエニルボロン酸(83)(Uenishi, 2003)、(E)-3-ブロモブテ-2-エナール(85)(Romo, 1998)、(E)-2-(トリブチルスタンニル)ビニル亜鉛クロリド(63)(Pihko, 1999)、(E)-メチル10−ヨードデセ-9-エノアート(Zhang, 2006)、ジオールCH3-CH(OH)-CH(CH3)-CH(OH)-CH(CH3)-CH2-O-CH2-C6H5(Paterson, 2001)、及びジクロロメチルピナコールボロン酸エステル(Wuts, 1982; Raheem, 2004)。
【0101】
鈴木-宮浦クロスカップリング反応を、典型的には、ポリ(テトラフルオロエチレン)-線入プラスチックキャップで密封され、オーブン又は火力乾燥されたアイ-ケム(I-Chem)又はホイートン(Wheaton)バイアル中においてアルゴン雰囲気下で実施した。他に記載しない限りは、アルゴン又は窒素の正圧下、ゴム隔膜で固定され、オーブン又は火力乾燥された丸底又は改良シュレンク(Schlenk)フラスコにおいて、全ての他の反応を実施した。減圧下、ロータリーエバポレーターを介して、有機溶液を濃縮した。E.メルク(Merck)シリカゲル60F254プレート(0.25mM)において、指示溶媒を使用して実施される分析用薄層クロマトグラフィー(TLC)により、反応をモニターした。化合物を、UVランプ(λ=254nm)、ヨウ素を含有するガラスチャンバー、及び/又はKMnO4溶液、p-アニスアルデヒドの酸性溶液、又はモリブデン酸セリウムアンモニウム(CAM)溶液に暴露し、バリテンプ(Varitemp)加熱ガンを使用して簡単に加熱することにより可視化させた。EMメルクシリカゲル60(230-400メッシュ)を使用し、Stil及び共同研究者により記載されているようにして(Still, W.C., 1978)、フラッシュカラムクロマトグラフィーを実施した。
【0102】
以下の機器:バリアン・ユニティ(Varian Unity)400、バリアン・ユニティ500、バリアン・ユニティ・イノバ(Inova)500NBの一つにおいて、1H NMRスペクトルを23℃で記録した。化学シフト(δ)をテトラメチルシランからの100万分の1(ppm)低磁場で報告し、NMR溶媒中の残留プロチウム(CHCl3、δ=7.26; CD2HCN、δ=1.93、中心線)、又は添加されたテトラメチルシラン(δ=0.00)を基準とした。データには以下の通りに報告する:化学シフト、多重度(s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、sept=七重線、m=多重項、b=広域、app=みかけ)、ヘルツ(Hz)での結合定数(J)、及び積分。
【0103】
以下の機器:バリアン・ユニティ500又はバリアン・ユニティ・イノバ500NBの一つにおいて、1C NMRスペクトルを23℃で記録した。化学シフト(δ)をテトラメチルシランからのppm低磁場で報告し、NMR溶媒中における炭素共鳴(CDCl3、δ=77.0中心線;CD3CN、δ=1.30、中心線)、又は添加されたテトラメチルシラン(δ=0.00)を基準とした。炭素を担持しているホウ素置換基は観察されなかった(四重極緩和)。
【0104】
11B NMRは、ゼネラル・エレクトリック(General Electric)GN300WB機器を使用して記録され、(BF3・Et2O)の外部標準を基準とした。化学的質量分析研究所(Chemical Sciences Mass Spectrometry Laboratory)のイリノイ校(Illinois School)の大学で、Furong Sun及びDr. Steve Mullenにより、高分解能質量分析(HRMS)を実施した。内部基準を用い、マットソン・ギャラクシー・シリーズ(Mattson Galaxy Series)FTIR5000分光計において、NaClプレートの薄層から、赤外線スペクトルを収集した。吸収極大(vmax)を波数(cm-1)で報告する。イリノイ・ジョージ・エル・クラークX線機関(Illinois George L. Clark X-Ray facility)の大学で、Dr. Scott Wilsonにより、X線結晶学的解析を実施した。
【0105】
実施例1:三価の基を有する保護された有機ボロン酸の調製
保護された有機ボロン酸3aを形成させるために、500mLのフラスコに、p-トリルボロン酸(3.00g、22.1mmol、1当量)、N-メチルイミノ二酢酸(3.25g、22.1mmol、1当量)、ベンゼン(360mL)及びDMSO(40mL)を充填した。フラスコをディーン・スターク・トラップ(Dean-Stark trap)及び還流冷却器に固定し、混合物を16時間、攪拌しつつ還流し、真空で濃縮した。得られた粗生成物をMeCN溶液からのフロリジルゲルに吸着させた。得られたパウダーを、EtOAcと共にスラリー充填されたシリカゲルカラムの頂部に乾燥充填(dry-loaded)した。勾配(EtOAc→EtOAc:MeCN 2:1)を使用して生成物を溶出させたところ、無色の結晶性固形物としてボロン酸エステル3a(5.05g、93%)が生じた。3aのX線構造を図3に示す。
【0106】
保護された有機ボロン酸3cを形成させるために、250mLの丸底フラスコに、p-トリルボロン酸(7.36mmol、1.00g)、N-イソプロピルイミノ二酢酸(7.36mmol、1.29g)、ベンゼン(150mL)及びDMSO(15mL)を充填した。フラスコをディーン・スターク・トラップ及び還流冷却器に固定し、混合物を14時間、攪拌しつつ還流し、真空で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(Et2O→Et2O:MeCN 1:2)により精製したところ、無色の結晶性固形物としてボロン酸エステル3c(747mg、37%)が生じた。
【0107】
保護された有機ボロン酸3dを形成するために、100mLの丸底フラスコに、p-トリルボロン酸(3.68mmol、500mg)、N-メチルジエタノールアミン(3.68mmol、422μL)及びトルエン(70mL)を充填した。フラスコをディーン・スターク・トラップ及び還流冷却器に固定し、溶液を8時間、攪拌しつつ還流し、23℃まで冷却させた。ついで、CaCl2(約200mg、微粉)及びNaHCO3(約200mg)を添加し、得られた混合物を15分攪拌し、ついで濾過した。濾液を真空で濃縮し、残留溶媒をCH2Cl2と共に同時蒸発させることにより除去したところ、無色の結晶性固形物としてボロン酸エステル3d(399mg、50%)が生じた。
【0108】
実施例2:三価の基を有する保護された有機ボロン酸及び保護されていない有機ボロン酸の反応性研究
実施例1の化合物の反応性研究を以下の通りに実施した。グローブボックス中において、小さな攪拌棒が具備され、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)ビフェニルリガンドが収容されたバイアルに、THFにPd(OAc)2が入った0.02M溶液を添加し、ホスフィンリガンドに関する0.04M溶液を得た。PTFE-線入キャップでバイアルを密封し、グローブボックスから取り出し、30分攪拌しつつ65℃で維持したところ、触媒保存溶液が得られた。
【0109】
グローブボックス中において、小さな攪拌棒が具備されたガラスバイアルに、ボロン酸エステル3(0.06mmol)、及び微細に挽いたパウダーとしての無水K3PO4を充填した。ついで、このバイアルに、4-ブチルフェニルボロン酸(0.24M、0.06mmol)、4-ブロモベンズアルデヒド(0.20M、0.05mmol)及びビフェニル(0.08M、HPLC分析用の内部標準)のTHF溶液を250μL添加した。最終的に、この同じバイアルに、上述した触媒保存溶液を50μL添加した。ついで、PTFE-線入キャップでバイアルを密封し、グローブボックスから取り出し、12時間分攪拌しつつ、油浴で65℃に維持した。ついで、反応溶液を23℃まで冷却し、シリカゲルのプラグを介して濾過し、MeCN:THF 1:1で溶出させた。ついで、濾液をHPLCにより分析した。
【0110】
生成物5及び6の比率を、ウォーターズ・サンファイア・プレップC185μmカラム(10x250mm、Lot番号156-160331)を具備し、4mL/分の流量、23分以上、5:95→95:5のMeCN:H2O勾配、268nm(4-ブロモベンズアルデヒド、tR=14.66分;ビフェニル、tR=21.80分)及び293nm(5、tR=25.79分;6、tR=20.50分;293nmでの5及び6の吸収係数が、実験誤差の限界内と等しいと決定された)でのUV検出を用いたHPLCシステム(Agilent Technologies)を使用して測定した。
【0111】
反応及び特徴付けを、保護された有機ボロン酸3a、3b、3c及び3dについて実施した。それぞれの種について、保護された有機ボロン酸の出発濃度は0.06mmolであった。反応を3回実施し、生成物比率の平均値を求めた。3aの反応により、5:6が24:1.0の比率で生じた。3bの反応により、5:6が1.0:1.0の比率で生じた。3cの反応により、5:6が26:1.0の比率で生じた。これらの結果を図4に列挙する。
【0112】
実施例3:ハロゲン-官能化され、保護された有機ボロン酸の調製
保護されたハロ有機ボロン酸を合成するための一般的方法は以下の通りである。攪拌棒が具備された丸底フラスコに、ハロボロン酸(1当量)、N-メチルイミノ二酢酸(1-1.5当量)、及びベンゼン:DMSO(10:1)を充填した。フラスコをディーン・スターク・トラップ(Dean-Stark trap)及び還流冷却器に固定し、混合物を12-18時間、攪拌しつつ還流した。反応溶液を23℃まで冷却し、溶媒を真空で除去した。得られた粗固体をMeCN溶液からのフロリジルゲルに吸着させた。得られたパウダーを、Et2Oと共にスラリー充填されたシリカゲルカラムの頂部に乾燥充填した。大量のEt2Oを用いて、カラムを洗い流し;ついで、Et2O:MeCNの混合物を用いて、生成物を溶出させた。このようにして得られた全ての生成物は、空気下、23℃で無期限に卓上安定している、分析的に純粋で、無色の結晶性固形物であった。収率を以下及び図5に記載する。
【0113】
保護されたハロ有機ボロン酸8aについて、一般的手順は以下の通りであり、4-ブロモフェニルボロン酸(1.00g、4.98mmol、1当量)、N-メチルイミノ二酢酸(733mg、4.98mmol)、ベンゼン(150mL)及びDMSO(15mL)を使用した。混合物を12時間還流した。勾配;Et2O→Et2O:CH3CN 1:1を用い、生成物を溶出させた。分析的に純粋で、無色の結晶性固形物として、化合物8a(1.53g、98%)が単離された。
【0114】
保護されたハロ有機ボロン酸8bについて、一般的手順は以下の通りであり、3-ブロモフェニルボロン酸(2.00g、9.96mmol)、N-メチルイミノ二酢酸(1.47g、9.96mmol)、ベンゼン(300mL)及びDMSO(30mL)を使用した。混合物を18時間還流した。Et2O:CH3CN 1:1を用い、生成物を溶出させた。分析的に純粋で、無色の結晶性固形物として、化合物8b(2.89g、93%)が単離された。
【0115】
保護されたハロ有機ボロン酸8cについて、一般的手順は以下の通りであり、2-ブロモフェニルボロン酸(2.00g、9.96mmol)、N-メチルイミノ二酢酸(1.47g、9.96mmol)、ベンゼン(300mL)及びDMSO(30mL)を使用した。混合物を13時間還流した。Et2O:MeCN 1:1を用い、生成物を溶出させた。分析的に純粋で、無色の結晶性固形物として、化合物8c(3.01g、97%)が単離された。
【0116】
保護されたハロ有機ボロン酸8dについて、一般的手順は以下の通りであり、4-ブロモチオフェン-2-ボロン酸(281mg、1.36mmol)、N-メチルイミノ二酢酸(240mg、1.63mmol)、ベンゼン(50mL)及びDMSO(5mL)を使用した。混合物を13時間還流した。Et2O:MeCN 3:1を用い、生成物を溶出させた。分析的に純粋で、無色の結晶性固形物として、化合物8d(429mg、99%)が単離された。
【0117】
保護されたハロ有機ボロン酸8eについて、一般的手順は以下の通りであり、2-(3-ブロモフェニル)エテニルボロン酸(227mg、1.0mmol)、N-メチルイミノ二酢酸(147mg、1.0mmol)、ベンゼン(50mL)及びDMSO(5mL)を使用した。混合物を11時間還流した。Et2O:MeCN 5:1を用い、生成物を溶出させた。分析的に純粋で、無色の結晶性固形物として、化合物8e(334mg、99%)が単離された。
【0118】
保護されたハロ有機ボロン酸8fについて、最初は保護されていないボロン酸、2-(3-ブロモフェニル)シクロプロピルボロン酸を、化合物8eから形成させた。0℃で、250mLのシュレンクフラスコにおいて、THF(24mL)に8e(1.21g、3.59mmol)及びPd(OAc)2(0.0239g、0.11mmol)が入った攪拌溶液に、新たに調製されたジアゾメタン(0.25M溶液を35mL、8.8mmol)のエーテル含有溶液を、20分以上かけて滴下した。ついで、THF(1mL)溶液として、さらなるPd(OAc)2(0.0239g、0.11mmol)を添加し、ついで、0.25Mのエーテル含有ジアゾメタン(8.8mmol)をさらに35mL、20分以上かけて滴下した。ついで、反応物を23℃まで温め、N2流下で、過剰のジアゾメタンを除去した。ついで、粗反応混合物を0.5M、pH7.0のリン酸ナトリウムバッファー120mLに注ぎ、THF:Et2O 1:1(3x120mL)で抽出した。次に、組合せた有機フラクションをブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、Et2O→Et2O:CH3CN 1:1)での精製により、8f(1.21g、96%)が生じた。THF(20mL)に8f(0.513g、1.46mmol)が入った攪拌溶液に、1MのNaOH水(4.37mL、4.37mmol)を添加し、得られた混合物を23℃で20分攪拌した。ついで、0.5M、pH7のホスファートバッファー(20mL)を添加することにより反応を停止させ、Et2O(20mL)で希釈した。相分離させ、水性相をTHF:Et2O 1:1(40mL)で抽出した。組合せた有機フラクションをMgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、無色の固形物として所望の2-(3-ブロモフェニル)シクロプロピルボロン酸(0.339g、97%)が生じた。
【0119】
8fは、2-(3-ブロモフェニル)シクロプロピルボロン酸への中間体として形成されるが、化合物は、2-(3-ブロモフェニル)シクロプロピルボロン酸とN-メチルイミノ二酢酸とを反応させることにより形成することもできる。このケースにおいて、一般的手順は以下の通りであり、2-(3-ブロモフェニル)シクロプロピルボロン酸(316mg、1.31mmol)、N-メチルイミノ二酢酸(232mg、1.58mmol)、ベンゼン(50mL)及びDMSO(5mL)を使用した。混合物を6時間還流した。MeCN:Et2O 5:1を用い、生成物を溶出させた。分析的に純粋で、無色の固形物として、化合物8f(408mg、88%)が単離された。
【0120】
実施例4:鈴木-宮浦反応における、ハロゲン基を有する保護された有機ボロン酸の反応
実施例3の化合物の反応性研究を、以下の通りに実施した。グローブボックスにおいて、攪拌棒が具備されたバイアルにホスフィンリガンドを添加した。ついで、バイアルに、十分な量のTHFにPd(OAc)2が入った0.02M溶液を添加し、ホスフィンリガンドに関する0.04M溶液を得た。PTFE-線入キャップでバイアルを密封し、グローブボックスから取り出し、30分攪拌しつつ65℃で維持したところ、触媒保存溶液が得られた。
【0121】
攪拌棒が具備された40mLのバイアルに、実施例3のハロボロン酸エステル(1.0mmol)及びボロン酸(典型的には1.2−1.5mmol)を添加した。バイアルをグローブボックスに入れた。バイアルにK3PO4(3.0mmol、636.8mg、微細に挽いたパウダー)、THF(9.0mL)、ついで、触媒保存溶液(1.0mL)を添加した。PTFE-線入キャップでバイアルを密封し、グローブボックスから取り出し、12時間攪拌しつつ、65℃の油浴に配した。反応混合物を23℃まで冷却し、砂、ついでセライトで蓋をされた非常に薄いシリカゲルパッドを通して濾過し、十分な量のMeCNで溶出させた。得られた溶液にフロリジルゲル(約25mg/mLの溶液)を添加し、ついで、溶液を真空で除去した。得られたパウダーを、Et2Oと共にスラリー充填されたシリカゲルカラムの頂部に乾燥充填した。大量のEt2Oを用いて、カラムを洗い流し;ついで、Et2O:MeCNを用いて、生成物を溶出させた。反応収率を図6に列挙する。
【0122】
保護された有機ボロン酸9aについて、一般的手順は以下の通りであり、8a(312mg、1.00mmol)、トリルボロン酸(163mg、1.20mmol)、及び2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニルを使用した。Et2O:MeCN 1:1を用い、生成物を溶出させた。無色の固形物として、化合物9a(280mg、87%)が単離された。この同様の反応を、グローブボックスを使用することなく、標準的なシュレンク技術を用いてセットした。攪拌棒が具備され、火力乾燥された25mLのシュレンクフラスコを空にし、アルゴンを3回パージした。このフラスコに2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-ビフェニル(14.1mg、0.04mmol)Pd(OAc)2(4.4mg、0.02mmol)、及びTHF(10mL)を充填した。ついで、フラスコを還流冷却器に固定し、黄色の液体を加熱して、5分還流し、変色させた。攪拌棒が具備され、火力乾燥された25mLの分離用シュレンクフラスコを空にし、アルゴンを3回パージした。このフラスコにハロボロン酸エステル8a(312.1mg、1.00mmol)、トリルボロン酸(163.2mg、1.20mmol)、及び新たに挽いた無水K3PO4(637.2mg、3.00mmol)を充填した。ついで、このフラスコを還流冷却器に固定した。ついで、カニューラを介して、カップリングパートナーと塩基を収容するフラスコに、触媒溶液を移した。得られた混合物を12時間、還流して加熱した。上述した一般的手順に記載したように、反応を進行させた。生成物をEt2O:MeCN 3:1→1:1で溶出させた。ほとんど無色の固形物として、化合物9a(279.6mg、87%)が単離された。
【0123】
保護された有機ボロン酸9bについて、一般的手順は以下の通りであり、8b(312mg、1.00mmol)、トリルボロン酸(163mg、1.20mmol)、及び2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニルを使用した。Et2O:MeCN 1:1を用い、生成物を溶出させた。無色の結晶性固形物として、化合物9b(276mg、85%)が単離された。
【0124】
保護された有機ボロン酸9cについて、一般的手順は以下の通りであり、8c(312mg、1.00mmol)、トリルボロン酸(172mg、2.00mmol)及び2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニルを使用した。Et2O:MeCN 5:1→1:1の勾配を用い、生成物を溶出させた。淡黄色固形物として、化合物9c(257mg、80%)が単離された。
【0125】
保護された有機ボロン酸9dについて、一般的手順は以下の通りであり、8d(318mg、1.00mmol)、トリルボロン酸(204mg、1.50mmol)、K2CO3(415mg、3.00mmol)及び2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-2',4',6'-トリ-イソプロピル-1,1'-ビフェニルを使用した。Et2O:MeCN 5:1→3:1の勾配を用い、生成物を溶出させた。淡黄色固形物として、化合物9d(266mg、81%)が単離された。
【0126】
保護された有機ボロン酸9eについて、一般的手順は以下の通りであり、8e(338mg、1.00mmol)、トリルボロン酸(163mg、1.20mmol)、及び2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニルを使用した。Et2O:MeCN 5:1を用い、生成物を溶出させた。オフホワイト色の固形物として、化合物9e(282mg、82%)が単離された。
【0127】
保護された有機ボロン酸9fについて、一般的手順は以下の通りであり、8f(237mg、0.674mmol)、トリルボロン酸(109mg、0.808mmol)、K3PO4(429mg、2.02mmol)、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニルの触媒保存溶液(674μl)、及びTHF6.06mLを使用した。Et2O:MeCN (1:1)を用い、生成物を溶出させた。オフホワイト色の結晶性固形物として、化合物9f(229mg、94%)が単離された。
【0128】
実施例5:保護された有機ボロン酸の脱保護
実施例4の保護された有機ボロン酸を脱保護するための一般的方法は以下の通りである。攪拌棒が具備された丸底フラスコに、ボロン酸エステル(1当量)、THF(10mL)、及び1MのNaOH水(3当量)を充填し、得られた混合物を23℃で10分、激しく攪拌した。ついで、反応混合物をリン酸ナトリウムバッファー水(0.5M、pH7.0、10mL)及びEt2O(10mL)で希釈し、相分離させ、水性相THF:Et2O 1:1(20mL)で1回抽出した。(時折、リン酸塩は沈殿し、抽出プロセス中、水を添加することにより再溶解させた。ついで、組合せた有機フラクションをMgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。残留溶媒をMeCNと共に同時蒸発させた。反応収率を図6に列挙する。
【0129】
有機ボロン酸10aについて、一般的手順は以下の通りであり、9a(261mg、0.806mmol)及び1MのNaOH水(2.42mL、2.42mmol)を使用した。白色の固形物として、化合物10a(147.4mg、86%)が単離された。
【0130】
有機ボロン酸10bについて、一般的手順は以下の通りであり、9b(268mg、0.830mmol)及び1MのNaOH水(2.49mL、2.49mmol)を使用した。白色の固形物として、化合物10b(161mg、92%)が単離された。
【0131】
有機ボロン酸10cについて、一般的手順は以下の通りであり、9c(236mg、0.729mmol)及び1MのNaOH水(2.19mL、2.19mmol)を使用した。白色の固形物として、化合物10c(150mg、97%)が単離された。他のアプローチにおいては、NaOHの代わりに、NaHCO3を用いて加水分解を実施した。この脱保護は以下の通りに実施した。攪拌棒が具備され、8c(0.672mmol、217mg)が収容された40mLのアイ-ケムバイアルに、MeOH(7mL)及び飽和したNaHCO3水(3.5mL)を添加した。混合物を23℃で6時間、激しく攪拌した。ついで、混合物を飽和したNH4Cl水(7mL)及びEt2O(14mL)で希釈し、相分離させた。水性相をEt2O(14mL)で2回抽出し、組合せた有機相をMgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。残留物をMeCNに2回懸濁させ、ついで真空で蒸発させ、CH2Cl2に溶解させ、真空で濃縮したところ、無色の結晶性固形物として10c(121mg、85%)が生じた。
【0132】
有機ボロン酸10dについて、一般的手順は以下の通りであり、9d(226mg、0.686mmol)及び1MのNaOH水(2.06mL、2.06mmol)を使用した。淡緑色の固形物として、化合物10d(131mg、88%)が単離された。
【0133】
有機ボロン酸10eについて、一般的手順は以下の通りであり、9e(243mg、0.696mmol)及び1MのNaOH水(2.09mL、2.09mmol)を使用した。オフホワイト色の固形物として、化合物10e(138mg、83%)が単離された。
【0134】
有機ボロン酸10fについて、一般的手順は以下の通りであり、9f(202mg、0.56mmol)及び1MのNaOH水(1.67mL、1.67mmol)を使用した。淡オフホワイト色の固形物として、化合物10f(127mg、91%)が単離された。
【0135】
実施例6:ラタニンの全合成に使用するための保護された有機ボロン酸の調製
5-ブロモ-2-ベンゾフラニルボロン酸(Friedman, M. R., 2001)(1.33g、5.50mmol)、N-メチルイミノ二酢酸(970mg、6.60mmol)、ベンゼン(80mL)及びDMSO(8mL)を使用し、実施例3の一般的手順により、保護されたハロ有機ボロン酸13を合成した。混合物を13時間還流した。Et2O:MeCN 1:1→1:2の勾配を用い、生成物を溶出させた。分析的に純粋で、オフホワイト色の結晶性固形物として、化合物13(1.73g、90%)が単離された。
【0136】
実施例7:ラタニンの全合成に使用するための保護された有機ボロン酸の調製
保護されたハロ有機ボロン酸14を、複数回工程のプロセスにより合成した。アセトン(55mL)に2-ブロモ-5-メトキシフェノール(Albert, 2002)(2.19g、10.8mmol)及びK2CO3(4.46g、32.3mmol)が入った攪拌混合物に、クロロメチルメチルエーテル(1.63mL、21.5mmol)を添加した。混合物を濾過し、濾液を真空で濃縮した。ついで、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン:EtOAc 95:5)により精製したところ、無色の液体として、2-ブロモ-5-メトキシ-1-メトキシメトキシベンゼン(2.43g、92%)が提供された。
【0137】
−95℃(ヘキサン/N2)で、THF(13mL)に2-ブロモ-5-メトキシ-1-メトキシメトキシベンゼン(1.04g、4.23mmol)が入った攪拌溶液に、n-BuLi(ヘキサンに1.6M、2.91mL、4.65mmol)を添加し、得られた溶液を5分攪拌した。ついで、黄色の色調が持続するまで、THF(8.5mL)にI2(1.28g、5.07mmol)が入った溶液を、この溶液にシリンジにより添加した。ついで、溶液を23℃まで温め、真空で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、石油エーテル:Et2O 8:1)により精製したところ、淡オレンジ色の油として、2-ヨード-5-メトキシ-1-メトキシメトキシベンゼン(1.04g、84%)が提供された。Tsukayama, M., 1997を参照。
【0138】
MeCN(55mL)に2-ヨード-5-メトキシ-1-メトキシメトキシベンゼン(5.24g、17.8mmol)が入った攪拌溶液に、シリカゲル(1.32 g)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(60mg)、ついでN-ブロモスクシンイミド(3.17g、17.8mmol)を添加した。混合物を23℃で1時間攪拌し、ついで濾過した。濾液を真空で濃縮し、残留物をCH2Cl2(100mL)に溶解させた。この溶液に水(100mL)を添加し、得られた混合物を5分、激しく攪拌した。ついで、相分離させ、水性相をCH2Cl2(2×100mL)で抽出した。組合せた有機物をMgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。残留物をフラッシュ-カラムクロマトグラフィー(SiO2、石油エーテル:Et2O 8:1)により精製したところ、黄色の油として、2-ヨード-4-ブロモ-5-メトキシ-1-メトキシメトキシベンゼン(5.05g、76%)が提供された。
【0139】
グローブボックスにおいて、攪拌棒が具備され、2-ヨード-4-ブロモ-5-メトキシ-1-メトキシメトキシベンゼン(500mg、1.34mmol)が収容された40mLのアイ-ケムバイアルに、酢酸カリウム(395mg、4.02mmol)、ビス(ネオペンチルグリコラト)二ホウ素(363mg、1.61mmol)及びPdCl2(dppf)(33mg、0.040mmol)を添加した。バイアルを隔膜キャップで封鎖し、ついで、グローブボックスから取り出した。ついで、バイアルにDMSO(11mL)を添加し、得られた混合物をアルゴン雰囲気下で密封し、80℃で13時間攪拌した。ついで、混合物を23℃まで冷却し、1MのNaOH水(0.9mL、0.9mmol)を添加した。混合物を23℃で10分攪拌し、ついで、飽和したNH4Cl水(50mL)、水(50mL)、及びEt2O(100mL)で希釈した。相分離させ、有機相を水(3×100mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。残留物をMeCNに3倍溶解させ、真空で濃縮したところ、ライトブラウン色の固形物として、2-メトキシメトキシ-4-メトキシ-5-ブロモフェニルボロン酸の粗サンプル(343mg)が提供された:TLC(EtOAc)Rf=0.50、KMnO4により染色;1H-NMR(400MHzM、CDCl3)δ7.97(s,1H)、6.75(s,1H)、5.97(s,2H)、5.29(s,2H)、3.91(s,3H)、3.52(s,3H)。ベンゼン:DMSO(10:1)に溶解したこの粗ボロン酸に、N-メチルイミノ二酢酸(210mg、1.43mmol)を添加した。フラスコをディーン・スターク・トラップ及び還流冷却器に固定し、混合物を11時間、攪拌しつつ還流し、真空で濃縮した。得られた粗生成物をMeCN溶液からのフロリジルゲルに吸着させた。得られたパウダーを、Et2Oと共にスラリー充填されたシリカゲルカラムの頂部に乾燥充填した。大量のEt2Oを用いて、カラムを洗い流し、ついで、Et2O:MeCN 1:1を用いて、生成物を溶出させたところ、オフホワイト色の固形物として、ビルディングブロック14(365mg、2工程以上での収率68%)が生じた。
【0140】
実施例8:ラタニンの全合成に使用するためのハロ有機化合物の調製
ハロ有機化合物15を、複数回工程のプロセスにより合成した。23℃で、トルエンにメチルトリフェニルホスホニウムブロミド(14.08g、39.4mmol)が入った混合物に、THF(60mL)にtert-ブトキシド(4.47g、39.8mmol)が入った溶液を、カニューラを介して滴下し、得られた混合物を23℃で4時間攪拌した。得られた黄色の混合物を−78℃まで冷却し、トルエン(40mL)に4-ヨード-サリチルアルデヒド(4.35g、17.5mmol)が入った溶液を、カニューラを介して滴下した。得られた混合物を23℃までゆっくりと温め、その温度で12時間攪拌した。ついで、飽和した塩化アンモニウム水(100mL)を添加することにより、反応を停止させた。ついで、得られた混合物を水(200mL)で希釈し、Et2O(3×100mL)で抽出した。ついで、組合せた有機フラクションをブライン(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン:酢酸エチル 7:1→1:1)により精製したところ、無色の固形物として、2-ヒドロキシ-5-ヨードスチレン(4.0g、98%)が生じた。Gligorich, K. M., 2006を参照。
【0141】
23℃で、塩化メチレンに2-ヒドロキシ-5-ヨードスチレン、4-(メトキシメトキシ)安息香酸,及びDCCが入った攪拌溶液に、DMAPを添加し、得られた混合物を23℃で21時間攪拌した。ついで、反応混合物をセライトで濾過し、及び真空で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン:酢酸エチル 5:1)により精製したところ、無色の固形物として、(2-ビニル-4-ヨードフェニル)-4-メトキシメトキシベンゾアート(4.6g、79%)が生じた。
【0142】
0℃で、塩化メチレンに(2-ビニル-4-ヨードフェニル)-4-メトキシメトキシベンゾアート(2x50mLのベンゼンで共沸的に乾燥)が入った攪拌溶液に、5分以上、シリンジを介して臭素を添加した。得られた溶液を0℃でさらに5分攪拌し、ついで、0℃で30分以上、真空で濃縮した。0℃で3x15mLの塩化メチレンと共に、同時蒸発を介して残留臭素を除去した。ついで、得られた粗生成混合物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン:酢酸エチル 5:1→2:1)により精製したところ、無色の固形物として、(2-(1,2-ジブロモエチル)-4-ヨードフェニル)-4-メトキシメトキシベンゾアート(3.7g、59%)が生じた。
【0143】
23℃で、アセトニトリル(75mL)に、(2-(1,2-ジブロモエチル)-4-ヨードフェニル)-4-メトキシメトキシベンゾアート(3.61g、6.33mmol、アセトニトリルで共沸的に乾燥)が入った攪拌溶液に、2分以上、シリンジを介して、DBU(1.928g、12.7mmol、2.0当量)を滴下した。 得られた混合物を23℃で25分攪拌した。ついで、1MのHCl水(200mL)を添加することにより、反応を停止させ、得られた混合物を酢酸エチル(1x200mL及び2x125mL)で抽出した。組合せた有機フラクションをブライン(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、石油エーテル:Et2O 3:1)により、無色の油として、(2-(1-ブロモエテニル)-4-ヨードフェニル)-4-メトキシメトキシベンゾアート(3.01g、97%)が生じた。
【0144】
グローブボックスにおいて、攪拌棒が具備され、(2-(1-ブロモエテニル)-4-ヨードフェニル)-4-メトキシメトキシベンゾアート(0.8695g、1.78mmol;3x5mLのベンゼンで共沸的に乾燥)が収容された40mLのアイ-ケムバイアルに、THF(3.6mL)の溶液として、K3PO4(0.7548g、3.56mmol)、プロペニルボロン酸(0.183g、2.13mmol)、及び固形物としてPdCl2dppf(72.6mg、0.09mmol)を添加した。さらに6.8mLのTHFを添加し、得られた混合物をPTFE-線入キャップでバイアルを密封し、15時間分攪拌しつつ、65℃で維持した。ついで、得られた混合物を23℃まで冷却し、1M、pH7のホスファートバッファー(60mL)の添加によりクエンチし、ジエチルエーテル(3x60mL)で抽出した。ついで、組合せた有機フラクションを水(20mL)とブライン(40mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、トルエン)により、無色の油として、ハロ有機化合物15(0.4994g、1.24mmol、70%)が生じた。
【0145】
実施例9:反復鈴木-宮浦反応を使用するラタニンの全合成
鈴木-宮浦カップリング反応を、15と保護されたハロ有機ボロン酸13及び14を用い、実施例4の一般的手順を使用して実施した。反応スキーム及び収率を図10に付与する。第1工程において、反応体は、13(352mg、1.00mmol)と(E)-1-プロペニルボロン酸(144mg、2.00mmol)であった。Et2O:MeCN 10:1→1:1の勾配を使用し、生成物を溶出させた。無色の結晶性固形物として、所望の生成物16(251mg、80%)が単離された。
【0146】
16(313mg、1.00mmol)、1MのNaOH水(3.0mL、3.0mmol)を使用し、実施例5のボロン酸エステルの脱保護のための一般的手順を行ったところ、オフホワイト色の固形物として、遊離のボロン酸(188mg、93%)が提供された;TLC:(EtOAc)Rf=0.2、UVにより可視化;HRMS(EI+):C11H11O3B(M)+についての算出値202.0801、実測値202.0805。遊離のボロン酸は保存時における分解に対して非常に敏感であることが見出され、よって次の反応に直ちに使用した。グローブボックスにおいて、14(141mg、0.351mmol)が収容された40mLのアイ-ケムバイアルに、THF(3.15mL)の溶液として遊離のボロン酸(106mg、0.526mmol)、続いて固形状K2CO3(145mg、1.05mmol)を添加した。ついで、65℃で30分プレインキュベートされ、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル(0.04 M)とPd2dba3(0.01M)を含有するTHF触媒保存溶液350μLを、攪拌しつつ、バイアルに添加した。バイアルをPTFE線入キャップで封鎖し、クローブボックスから取り出し、28時間攪拌しつつ、80℃で維持した。反応混合物を23℃まで冷却し、セライトで蓋をされた、薄いシリカゲルパッドを通して濾過し、十分な量のEt2Oで溶出させた。濾液を真空で濃縮し、得られた粗生成物をMeCN溶液からのフロリジルゲルに吸着させた。得られたパウダーを、Et2Oと共にスラリー充填されたシリカゲルカラムの頂部に乾燥充填した。大量のEt2Oを用いて、カラムを洗い流し;ついで、Et2O:MeCN 3:1を用いて、生成物を溶出させたところ、オフホワイト色の固形物として、保護された有機ボロン酸17(123mg、73%)が生じた。
【0147】
攪拌棒が具備された6mLのバイアルに、保護された有機ボロン酸17(51mg、0.106mmol)、THF(1.0mL)、1MのNaOH水(0.32mL、0.32mmol)を充填した。得られた混合物を10分、激しく攪拌し、ついで、0.5M、pH7のホスファートバッファー(2.0mL)及びEt2O(1.0mL)で希釈した。相分離させ、水性相をTHF:Et2O 1:1(2.0mL)で1回抽出した。組合せた有機物をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、ついで真空で濃縮した。PhMe、ついでMeCN(2X)、さらにCH2Cl2(2X)(浴温を<30℃で維持)を用いた同時蒸発を介して、残留溶媒を除去したところ、オフホワイト色の固形物として、遊離のボロン酸(39.2mg、99%)が生じた:TLC(EtOAc)Rf=0.53、UVにより可視化;1H NMR(400MHz,CDCl3)δ8.49(s,1H)、7.49(s,1H)、7.42(d,J=8Hz,1H)、7.26(m,1H)、7.17(s,1H)、6.84(s,1H)、6.49(d,J=16Hz,1H)、6.20(dq,J=16, 6.4Hz,1H)、5.77(s,2H)、5.35(s,2H)、4.03(s,3H)、3.55(s,3H)、1.90(d,J=6.4Hz,3H);HRMS(TOF ES+):C20H22O6B(M+H)+についての算出値369.1509、実測値369.1515。
【0148】
ついで、この遊離のボロン酸を、15(28.5mg、0.071mmol)を収容する6mLのバイアルに、THFの溶液として定量的に移し、溶媒を真空で除去した。グローブボックスにおいて、固形状K2CO3(39.2mg、0.28mmol)、及び新たに調製された2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル(0.008M)のTHF溶液(1.06mL)及びPd2dba3(0.002M)を、このバイアルに添加した。攪拌棒を加え、バイアルをPTFE線入キャップで封鎖し、グローブボックスから取り出し、20時間攪拌しつつ、65℃で維持した。ついで、反応混合物を23℃まで冷却し、セライトで蓋をされた、薄いシリカゲルパッドを通して濾過し、十分な量のEtOAcで溶出させた。濾液を真空で濃縮し、得られた粗生成物をCH2Cl2溶液からのフロリジルゲルに吸着させた。得られたパウダーを、ヘキサン:EtOAc 10:1と共にスラリー充填されたシリカゲルカラムの頂部に乾燥充填した。カラムを、ヘキサン:EtOAc 10:1→3:1で溶出させたところ、粘性のある黄色の油として、保護されたラタニン18(37.0mg、81%)が生じた。
【0149】
最適化されていない手順において、攪拌棒が具備された6mLのバイアルに、18(27mg、0.042mmol)、THF(0.3mL)、MeOH(0.6mL)、及び濃HCl(12μL)を充填した。バイアルをPTFE線入キャップで封鎖し、1時間攪拌しつつ、65℃で維持した。ついで、溶液を23℃まで冷却し、H2O(1mL)、THF(1mL)及びEt2O(2mL)で希釈した。相分離させ、水性相をEtOAcで繰り返し抽出した。
組合せた有機物を真空で濃縮し、得られた粗生成物を調整用HPLC(ウォーターズ・サンファイア・プレップC18 ODB 30x150mmカラム、Lot#168I1617、25mL/分、20分以上、H2O:MeCN 95:5→5:95、ついで15分、H2O:MeCN 5:95;tR=24.84分、325及び218nmでUV検出)で精製したところ、11(9.6mg、41%)が生じた[1H NMR分析により、このサンプルが少量(〜5-10%)の同定されていない不純物を含有していることが示された]。最適化された調整用HPLC法が続いて開発され(ウォーターズ・サンファイア・プレップC18 ODB 30x150mmカラム、Lot#168I161701、33mL/分、isochratic H2O:MeCN 20:80;tR=21.72分、325及び218nmでUV検出)、純粋な天然生成物が生じた。合成11の1H NMR、13C NMR、HRMS、及びIR分析は、単離された天然生成物ラタニンについて報告されているデータと、完全に一致し、よってArnone及び共同研究者(Arnone, 1990)により提案されている元々の構造が確認された。
【0150】
実施例10:保護基の立体構造的強固性の測定
化合物19及び193の有機保護基の立体構造的強固性を、「立体構造的強固性テスト」により測定した。193のサンプル(約10mg)を無水d6-DMSOに溶解させ、5mmのNMRチューブに移した。サンプルをバリアン・ユニティ500MHz NMR分光計において分析した。第1に、23℃で1H-NMRを得た。ついで、サンプル温度を徐々に、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃及び70℃と高めていった。各温度で、サンプルシムを最適化し、1H-NMRスペクトルを得た。23℃まで冷却されたときに、1H-NMRスペクトルが得られ、この温度で以前に得られていたものと同一であった。19のサンプル(約10mg)を無水d6-DMSOに溶解させ、5mmのNMRチューブに移した。1H-NMRスペクトルが23℃、60℃、80℃、110℃、150℃、ついで再度23℃で得れたことを除き、このサンプルを同じ方法で分析した。
【0151】
193について、ジアステレオトピックなメチレンプロトンに対応する、1H-NMRスペクトルの12のピークは、23℃で3.833〜3.932に存在した。温度が上昇すると、これらのピークは40℃程の温度で合体し始めた。ピークは、70℃で3.921での単一ピークに完全に合体した。よって、193の保護基は立体構造的に強固ではなかった。
【0152】
19について、ジアステレオトピックなメチレンプロトンに対応する、1H-NMRスペクトルの4つのピークは、23℃で3.992〜4.236に存在した。温度が上昇しても、これらのピークは4つの異なるピークに分裂したままであった。150℃で得られたスペクトルにおいてさえ、合体は何ら観察されなかった。よって、19の保護基は立体構造的に強固であった。
【0153】
実施例11:保護されたハロアルケニルボロン酸54aの合成
(E)-(2-ブロモエテニル)ジブロモボラン(59)を、文献の手順(Hyuga, S., 1987)に従い合成した。59との後続反応を、磁石式攪拌棒が具備され、オーブン乾燥された500mLの三口丸底フラスコにおいて、穏やかな光環境にて実施した。0℃、アルゴン下で、DMSO(250mL)にN-メチルイミノ二酢酸(MIDA、1)(16.93g、113.9mmol、1.50当量)及び2,6-ルチジン(17.69mL、151.86mmol、2.0当量)が入った攪拌混合物に、15分以上かけて、シリンジを介し、新たに蒸留された59(21.00g、75.93mmol)を滴下した。反応混合物を23℃まで温め、ついで、23℃で48時間攪拌した。得られた黄色の混合物を水(300mL)で処理し、THF:ジエチルエーテル 1:1(3x500mL)で抽出した。組合せた有機相をブライン(3x350mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、淡黄色の固形物が提供された。シリカゲルにおいて、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc:石油エーテル1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 9:1)で精製すると、結晶性固形物として、54a(11.98g、45.75mmol、60%)が得られた。23℃で酢酸エチルから、ゆっくりと蒸発させることにより、X線結晶学的分析に適した結晶に成長した。この物質を、空気下、23℃で1年間と6ヶ月間、分解することなく保存した。
【0154】
実施例12:ビス-ホウ素化オレフィンの合成、及び選択的クロスカップリングにおけるその使用
(E)-(2-ピナコールエテニル)ボロン酸エステル(61)の合成
触媒の溶液を以下の通りに調製した:磁石式攪拌棒が具備された20mLのホイートンバイアルに、PdCl2(CH3CN)2(7.9mg、0.030mmol、1.0当量)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシ-1,1'-ビフェニル(4d)(38.0mg、0.090mmol、3.0当量)を充填した。トルエン(3.00mL)を添加し、PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封した。得られた混合物を23℃で30分攪拌したところ、透明で黄色のPd/4d触媒溶液が生じた。
【0155】
ついで、この触媒溶液を以下の手順で利用した:磁石式攪拌棒が具備された30mLのホイートンバイアルに、54a(0.262g、1.00mmol、1.0当量)、ビス(ピナコラート)二ホウ素(60)(0.324g、1.25mmol、1.25当量)、酢酸カリウム(0.297g、3.00mmol、3.0当量)、トルエン(5.0mL)、及び触媒溶液(3.0mL、3.0mol%Pd)を充填した。PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封し、反応混合物を45℃で36時間攪拌した。得られた不均質な混合物を酢酸エチル(5.0mL)で希釈し、セライトの短いパッドを通して濾過した。濾液を真空で濃縮したところ、淡黄色の固形物が提供された。シリカゲルにおいて、この粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc:石油エーテル1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 15:1)で精製すると、無色の結晶性固形物として、(E)-(2-ピナコールエテニル)ボロン酸エステル61(0.219g、0.710mmol、71%)が得られた。23℃でEtOAcから、ゆっくりと蒸発させることにより、X線結晶学的分析に適した結晶に成長した。この物質を、空気下、23℃で1年間と6ヶ月間、分解することなく保存した。
【0156】
(E,E)-1,3-ブタジエニル-(4-クロロ)ボロナート(54b)の合成
攪拌棒が具備された20mLのアイ-ケムバイアルに、61(320mg、1.05mmol、1.0当量)、微細に挽かれた無水K3PO4(669mg、3.15mmol、3.0当量)、PdCl2dppf・CH2Cl2(26mg、0.32mmol、3mol%)、及び(E)-1-クロロ-2-ヨードエチレン(62)(396mg、2.10mmol、2.0当量)を添加した。PTFE線入キャップでバイアルを密封し、シリンジを介してDMSO(8.4mL)を添加した。得られた混合物を23℃で9時間攪拌した。0.5M、pH7のホスファートバッファー(8mL)を添加することにより、反応をクエンチさせ、得られた混合物をTHF:Et2O 1:1(4x15mL)で抽出した。組合せた有機抽出物をブライン(25mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。得られた残留物をアセトン(15mL)で希釈し、フロリジル(登録商標)において濃縮した。得られたパウダーをシリカゲルカラムの頂部に乾燥充填し、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc 1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 9:1)を実施したところ、無色の結晶性固形物として、54b(139mg、0.571mmol、54%)が生じた。
【0157】
実施例13:ビス-メタル化オレフィンの合成、及び選択的クロスカップリングにおけるその使用
(E,E)-1,3-ブタジエニル-4-(トリブチルスタンニル)ボロン酸エステル(64)
触媒の溶液を以下の通りに調製した:磁石式攪拌棒が具備され、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシ-1,1'-ビフェニル(4d)(15.2mg、0.037mmol、2.0当量)が収容された4mLのバイアルに、THF(0.095M、0.19mL、0.018mmol、1.0当量)にPd(OAc)2 が入った溶液を添加した。PTFE-線入キャップでバイアルを密封し、15分攪拌しつつ、23℃で維持したところ、透明で黄色のPd/4d触媒溶液が生じた。
【0158】
ついで、この触媒溶液を以下の手順で利用した:(E)-2-(トリブチルスタンニル)ビニル亜鉛クロリド(63)を、以前の文献(Pihko, 1999)に従い調製した。ネギシ試薬63の形成中、23℃で、THF(0.2mL)に54a(50mg、0.191mmol、1.0当量)が入ったスラリーに、上述した触媒保存溶液(0.10mL、0.0095mmolPd、5mol%Pd)を添加し、得られたスラリーを30分攪拌し、その後0℃まで冷却した。ついで、ネギシ試薬63を、5分以上かけて54a溶液にカニュレーションした。0℃で2時間後、反応物をEtOAc(10mL)で希釈し、ついで真空で濃縮した。得られた赤い油をEtOAcに溶解させ、大量のEtOAcと共に、シリカゲルの短いパッドを通して濾過し、濾液を真空で濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルにおいてフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc:ヘキサン 1:1→EtOAc)により精製したところ、淡黄色の泡として、64(62.2mg、0.125mmol、66%)が生じた。
【0159】
(E,E,E)-(6-クロロ)-1,3,5-ヘキサトリエニルボロン酸エステル(54c)
磁石式攪拌棒が具備された30mLのホイートンバイアルに、Pd2(dba)3(0.021g、0.023mmol、1.5mol%)、Ph3As(0.014g、0.046mmol、3.0mol%)、64(0.760g、1.53mmol、1.0当量)をDMF(5.0mL)の溶液として、最終的に(E)-1-クロロ-2-ヨードエチレン(0.575g、3.05mmol、2.0当量)を充填した。PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封し、反応混合物を23Coで3.5時間攪拌した。ついで、得られた深い赤色がかった混合物を飽和したNa2S2O3水(50mL)に添加し、得られた混合物をEtOAc(3x85mL)で抽出した。組合せた有機抽出物をブライン(3x50mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、オレンジ色の固形物が提供された。この粗生成物を、フロリジル(登録商標)におけるフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc 1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 9:1)により精製したところ、淡黄色の固形物として、54c(0.297g、1.10mmol、72%)が得られた。
【0160】
実施例14:保護されたハロアルケニルボロン酸54aを使用する選択的カップリング
鈴木-宮浦カップリング−(E,E)-1,3-ヘプタジエニルボロン酸エステル(68)の合成
触媒の溶液を以下の通りに調製した:磁石式攪拌棒が具備され、オーブン乾燥されたホイートンバイアルに、Pd(OAc)2(5.60mg、0.025mmol、1.0当量)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシ-1,1'-ビフェニル(4d)(20.5mg、0.050mmol、2.0当量)を充填した。トルエン(3.00mL)を添加し、PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封した。得られた混合物を23℃で45分攪拌したところ、黄色のPd/4d触媒溶液が生じた(トルエンに0.00833N Pd)。
【0161】
ついで、この触媒溶液を以下の手順で利用した:磁石式攪拌棒が具備され、オーブン乾燥されたホイートンバイアルに、54a(0.262g、1.00mmol、1.0当量)、(E)-1-ペンテニルボロン酸55(0.171g、1.50mmol、1.5当量)、KF(0.116g、2.00mmol、2.0当量)、トルエン(7.0mL)及び触媒溶液(1.20mL、0.01mmol、1.0 mol%Pd)を充填した。PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封し、反応混合物を23℃で36時間攪拌した。得られた不均質な淡黄色の混合物をアセトニトリル(10.0mL)で希釈し、セライトの短いパッドを通して濾過した。濾液を真空で濃縮した。ついで、シリカゲルにおいて、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc 1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 9:1)で精製すると、無色の結晶性固形物として、68(0.241g、0.959mmol、96%)が得られた。
【0162】
鈴木-宮浦カップリング−(E,E)-1,3-ブタジエニル-(4-フェニル)ボロン酸エステル(80)の合成
触媒の溶液を以下の通りに調製した:磁石式攪拌棒が具備された20mLのホイートンバイアルに、Pd(OAc)2(5.60mg、0.025mmol、1.0当量)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシ-1,1'-ビフェニル(4d)(20.5mg、0.050mmol、2.0当量)を充填した。トルエン(3.00mL)を添加し、PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封した。得られた混合物を23℃で45分攪拌したところ、黄色のPd/4d触媒溶液が生じた(トルエンに0.00833N Pd)。
【0163】
ついで、この触媒溶液を以下の手順で利用した:磁石式攪拌棒が具備された30mLのホイートンバイアルに、54a(0.262g、1.00mmol、1.0当量)、トランス-2-フェニルビニルボロン酸(0.229g、1.50mmol、1.5当量)、KF(0.116g、2.00mmol、2.0当量;54aに基づく)、トルエン(7.0mL)、及び触媒溶液(1.20mL、0.01mmol、1.0mol%Pd)を充填した。PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封し、反応混合物を23℃で24時間攪拌した。得られた不均質な黄色の混合物をアセトニトリル(10.0mL)で希釈し、アセトニトリル(100mL)を使用するセライトの短いパッドを通して濾過し、真空で濃縮した。ついで、シリカゲルにおいて、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc:石油エーテル 1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 2:1)で精製すると、無色の結晶性固形物として、80(0.263g、0.922mmol、92%)が得られた。
【0164】
スティルカップリング−(E,E)-1,3-ブタジエニル-ボロン酸エステル(70)の合成
磁石式攪拌棒が具備された30mLのホイートンバイアルに、54a(0.262g、1.00mmol、1.0当量)、Pd2dba3(0.037g、0.040mmol、4.0mol%Pd)、Fur3P(0.021g、0.090mmol、9.0mol%)、DMF(8.0mL)及びトリブチル(ビニル)スズ(69)(0.346mL、1.15mmol、1.15当量)を充填した。PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封し、反応混合物を45℃で12時間攪拌した。得られた赤みがかった混合物をブライン(50mL)で希釈し、ついで酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。組合せた有機フラクションを無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮した。シリカゲルにおいて、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc:石油エーテル 1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 15:1)で精製すると、無色の結晶性固形物として、70(0.190g、0.909mmol、91%)が得られた。
【0165】
ヘックカップリング−(E,E)-1,3-ブタジエニル-(4-メチルエステル)ボロン酸エステル(72)の合成
磁石式攪拌棒が具備された30mLのホイートンバイアルに、54a(0.262g、1.00mmol、1.0当量)、PPh3(0.0159g、0.060mmol、6.0mol%)、Pd(OAc)2(0.0067g、0.030mmol、3.0mol%Pd)、Et3N(0.279mL、2.00mmol、2.0当量;54aに基づく)、アクリル酸メチル(71)(0.136mL、1.50mmol、1.5当量)、及びDMF(7.0mL)を充填した。PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封し、反応混合物を45℃で12時間攪拌した。得られた混合物をブライン(50mL)で希釈し、酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。組合せた有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮した。シリカゲルにおいて、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc:石油エーテル 1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 15:1)で精製すると、淡黄色の固形物として、72(0.240g、0.898mmol、90%)が得られた。
【0166】
ソノガシラカップリング−(E)-2-トリメチルシリルエチレンボロン酸エステル(74)の合成
磁石式攪拌棒が具備された30mLのホイートンバイアルに、54a(0.262g、1.00mmol、1.0当量)、Pd(PPh)4(0.058g、0.050mmol、5.0mol%)、CuI(0.019g、0.100mmol、10.0mol%)、ピペリジン(0.227mL、2.30mmol、3.0当量)、THF(5.0mL)、及びトリメチルシリルアセチレン(73)(0.166mL、1.15mmol、1.5当量)を充填した。ついで、PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封し、反応混合物を23℃で3時間攪拌した。得られた混合物をEtOAc(5.0mL)で希釈し、EtOAc(100mL)を使用するシリカゲルの短いパッドを通して濾過した。濾液を真空で濃縮し、シリカゲルにおいて、得られた粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc:石油エーテル 1:1→EtOAc)で精製すると、無色の結晶性固形物として、74(0.203g、0.728mmol、73%)が得られた。
【0167】
実施例15:トリエニルクロリドとビニルボロン酸とのクロスカップリング
パラジウム触媒の溶液を以下の通りに調製した:攪拌棒が具備され、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',4',6'-トリ-イソ-プロピル-1,1'-ビフェニル(4c)(3.0mg、0.0063mmol、2.0当量)、THF(0.577mL)が収容された4mLのバイアルに、THF(0.00547M、0.577mL、0.0032mmol、1.0当量)にPd(OAc)2が入った溶液を添加した。PTFE-線入キャップでバイアルを密封し、23℃で15分攪拌した。
【0168】
ついで、この触媒溶液を以下の手順で利用した:磁石式攪拌棒が具備され、54c(11.0mg、0.0408mmol、1.0当量)が収容された7mLのバイアルに、(E)-1-ペンテン-1-イルボロン酸(55)(7.0mg、0.0612mmol、1.5当量)、Cs2CO3(39.9mg、0.122mmol、3.0当量)、THF(0.835mL)及び触媒溶液(0.298mL、2mol%Pd)を添加した。ついで、得られた混合物を、PTFE-線入プラスチックキャップで封鎖し、45℃で24時間攪拌した。(54c及び生成物75を、EtOAcを用いて2回溶出させることにより、TCLプレート上で良好に分離させた)。得られた不均質な混合物を酢酸エチル(〜1.0mL)で希釈し、大量のEtOAcと共に、フロリジル(登録商標)の薄いパッドを通して濾過した。フロリジル(登録商標)において、粗生成物をシリカゲルにおいてフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc 1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 15:1)で精製すると、黄色の固形物として、(E,E,E,E)-1,3,5,7-ウンデカテトラエニルボロン酸エステル75が得られた(7.9mg、0.0261mmol、64%)。
【0169】
実施例16:反復鈴木-宮浦反応を使用するオール-トランス-レチナールの全合成
第1のカップリング−テトラエニルボロン酸エステル(84)の合成
触媒の溶液を以下の通りに調製した:攪拌棒が具備され、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシ-1,1'-ビフェニル(4d)(23.1mg、0.056mmol、2.0当量)が収容された4mLのバイアルに、トルエン(0.038M、0.740mL、0.028mmol、1.0当量)にPd(OAc)2が入った溶液を添加した。PTFE-線入キャップでバイアルを密封し、15分攪拌しつつ、65℃で維持した。
【0170】
ついで、この触媒溶液を以下の手順で利用した:磁石式攪拌棒が具備され、トルエン(推定0.17M、11.5mL、1.96mmol、1.5当量)に83が入った溶液を溶液が収容された、40mLのアイ-ケムバイアルに、微細に挽かれたパウダーとして無水K3PO4 (0.833g、3.92mmol、3.0当量)、54a(0.342g、1.30mmol、1.0当量)、及び触媒溶液(0.688mL、0.026mmol Pd、2mol%Pd)を添加した。得られた混合物を、PTFE-線入キャップで封鎖し、23℃で60時間攪拌した。ついで、混合物を、大量のアセトニトリルと共に、シリカゲルのパッドを通して濾過した。得られた溶液にフロリジル(登録商標)を添加し、溶媒を真空で除去した。得られたパウダーをシリカゲルカラムの頂部に乾燥充填し、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc 1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 9:1)を実施したところ、黄色のパウダーとして、保護されたテトラエニルボロン酸エステル84(0.377g、1.02mmol、78%)が生じた。
【0171】
第2のカップリング−オールトランス-レチナール(49)の合成
MIDAボロナート84を、以下の手順を介して、その対応するボロン酸に転換させた。7mLのホイートンバイアルにおいて、23℃で、THF(1.44mL)に84(35.9mg、0.101mmol、1.0当量)が入った攪拌溶液に、1MのNaOH水(0.30mL、0.30mmol、3.0当量)を添加し、得られた混合物を15分攪拌した。ついで、0.5M、pH7のホスファートバッファー(1.5mL)を添加することにより、反応をクエンチさせ、Et2O(1.5mL)で希釈した。相分離させ、水性相をTHF:Et2O 1:1(3x3mL)で抽出した。組合せた有機相をMgSO4上で乾燥させ、少量(〜1mL)のTHFが残存するまで、真空で濃縮したところ、ボロン酸溶液が生じた;TLC:(EtOAc) Rf=0.70、KMnO4により可視化。
【0172】
パラジウム触媒の溶液を以下の通りに調製した:磁石式攪拌棒が具備され、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシ-1,1'-ビフェニル(4d)(3.6mg、0.0088mmol、2.0当量)が収容された1.5mLのバイアルに、トルエン(0.038M、0.115mL、0.0044mmol、1.0当量)にPd(OAc)2が入った溶液を添加した。PTFE-線入キャップでバイアルを密封し、15分攪拌しつつ、65℃で維持した。
【0173】
ついで、この触媒溶液を以下の手順で利用した:磁石式攪拌棒が具備され、エナル(enal)85(10mg、0.067mmol、1.0当量)が収容された4mLのバイアルに、THF(推定0.101M、1mL、0.101mmol、1.5当量)の溶液として、ボロン酸(ボロナート84に対応;上述を参照)、微細に挽いたパウダーとして、無水K3PO4(42.6mg、0.201mmol、3.0当量)、及び上述した触媒保存溶液(0.035mL、0.0013mmol Pd、2mol%Pd)を添加した。PTFE-線入キャップで得られた混合物を密封し、23℃で5時間攪拌した。ついで、飽和したNaHCO3水(2mL)を添加することにより、反応を停止させた。相分離させ、水性相をEt2O(3x5mL)で抽出した。組合せた有機相をNa2SO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc 32:1)で精製すると、明るい黄色の固形物として、オール-トランス-レチナール(49)(12.6mg、0.044mmol、66%)が生じた。合成49の1H NMR、13C NMR、HRMS、及びIR分析は、単離された天然生成物について報告されているデータと、完全に一致した。
【0174】
実施例17:アンホテリシンBマクロライドの骨格の半分の合成
BB4の合成
200mLの回収用フラスコに、ジオールCH3-CH(OH)-CH(CH3)-CH(OH)-CH(CH3)-CH2-O-CH2-C6H5(Paterson, 2001)(1.18g、4.69mmol、1.0当量)、リパーゼPS(295mg、0.25質量当量)、及びヘキサン(115mL)を充填し、得られたスラリーを50℃で15分攪拌した。ついで、酢酸ビニル(4.33mL、47.0mmol、10.0当量)を添加し、反応混合物を50℃で40時間攪拌した。得られた混合物を23℃まで冷却し、濾過し、残留酵素を大量のEt2Oで洗浄した。ついで、濾液を真空で濃縮し、得られた粘性のある黄色の油を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc 15:1→1:1)で精製したところ、淡黄色の油として、モノアセタートCH3-CH(OAc)-CH(CH3)-CH(OH)-CH(CH3)-CH2-O-CH2-C6H5(1.05g、3.57mmol、76%)が生じた。
【0175】
0℃で、CH2Cl2(230mL)にこのモノアセタート(5.98g、20.31mmol、1.0当量)が入った攪拌溶液に、2,6-ルチジン(7.84mL、67.35mmol、3.3当量)を添加し、得られた溶液を−78℃まで冷却した。ついで、トリフルオロメタンスルホン酸トリエチルシリル(7.11mL、31.43mmol、1.5当量)を滴下し、得られた溶液を−78℃で1時間攪拌した。ついで、飽和したNaHCO3水(115mL)を添加することにより、反応をクエンチさせ、23℃まで温めた。相分離させ、水性相をEt2O(3x200mL)で抽出した。組合せた有機抽出物をMgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、黄色の油が得られた。フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc 7:1→1:1)による精製で、黄色の油として、トリエチルシリルエーテルCH3-CH(OAc)-CH(CH3)-CH(OTES)-CH(CH3)-CH2-O-CH2-C6H5(7.34g、17.96mmol、88%)が提供された。
【0176】
磁石式攪拌棒が具備された25mLの三口丸底フラスコに、パラジウム黒(17.3mg、0.163mmol、0.6当量)を添加した。注:パラジウム黒は自然発火性があり、いつでも、不活性雰囲気下で維持されるべきである。この理由により、EtOH及びEtOAcを、活性型4Å分子ふるい上で、新たに蒸留した。ついで、このフラスコに、カニューラを介して、EtOH:EtOAc 2:1(4.65mL)にトリエチルシリルエーテル(上述を参照;111.0mg、0.271mmol、1.0当量)が入った溶液を添加した。反応用フラスコをH2(バルーン)でパージし、H2(バルーン)の陽圧下、23℃で25時間攪拌した。ついで、セライトの短いカラムを通して、N2圧下、反応混合物を濾過し、大量のEtOHで洗い流した(Pd残留物は、いつでも溶媒下に保持された)。フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc 12:1→4:1)による精製で、淡黄色の油として、第1級アルコールCH3-CH(OAc)-CH(CH3)-CH(OTES)-CH(CH3)-CH2-OHが生じた(79.1mg、0.248mmol、91%)。
【0177】
−78℃で、CH2Cl2(20mL)に塩化オキサニル(3.44mL、40.1mmol、5.0当量)が入った攪拌溶液に、DMSO(5.70mL、80.2mmol、10.0当量)を滴下し、得られた溶液を−78℃で30分攪拌した。ついで、CH2Cl2(55.7mL)に第1級アルコール(上述を参照;2.56g、8.02mmol、1.0当量)が入った溶液を、カニューラを介して、反応体に添加し、得られた溶液を−78℃で1.5時間攪拌した。ついで、トリエチルアミン(28mL、201mmol、25.0当量)を添加し、得られた混合物を40分以上、−15℃まで温めた。ついで、飽和したNH4Cl水(50mL)を添加することにより、反応をクエンチさせた。相分離させ、水性相をCH2Cl2(3x50mL)で抽出した。組合せた有機相をブライン(50mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、黄色の油として、アルデヒドCH3-CH(OAc)-CH(CH3)-CH(OTES)-CH(CH3)-CH=O(2.36g、7.46mmol、93%)が生じた。
【0178】
23℃で、THF(2mL)にCrCl2(0.204g、1.66mmol、18.0当量)が入った攪拌スラリーに、THF(0.18mL)に、このアルデヒド(29.2mg、0.0923mmol、1.0当量)及びジクロメチルピナコールボロン酸エステル(Wuts, 1982;Raheem, 2004;0.117g、0.554mmol、6.0当量)が入った溶液を添加した。ついで、THF(0.3mL)にLiI(0.149g、1.11mmol、12.0当量)が入った溶液を添加し、得られたスラリーを23℃で7時間攪拌した。ついで、反応物を氷水(2mL)に注ぎ、Et2O(2x5mL)で抽出した。組合せた有機抽出物をMgSO4上で乾燥させ、セライトを通して濾過し、真空で濃縮した。フロリジル(登録商標)において、粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc 35:1→3:1)で精製すると、淡黄色の油として、以下に示すピナコールボロン酸エステル(25.7mg、0.58mmol、63%)が提供された。
【0179】
攪拌棒が具備された15mLの丸底フラスコに、このピナコールボロン酸エステル(126.9mg、0.288mmol、1.5当量)を充填した。ついで、このフラスコに、THF(4.5mL)の溶液として、(E)-1-クロロ-2-ヨードエチレン(62)(36.2mg、0.192mmol、1.0当量)及びPd(PPh3)4(16.6mg、0.0144mmol、5 mol%)の溶液、続いて3MのNaOH水(0.192mL、0.576mmol、2.0当量)を添加した。得られた混合物を23℃で17時間攪拌し、ついで、飽和したNH4Cl水(5mL)を用い、反応を停止させた。得られた混合物をジエチルエーテル(5mL)で希釈し、相分離させた。水性相をジエチルエーテル(3x5mL)で抽出し、組合せた有機相をMgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。得られた残留物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc 35:1→5:1、全ての溶出液に1%のEt3N(v/v)を添加したものを用いる)で精製することにより、黄色の油として、塩化ジエニルBB4(51.0mg、0.136mmol、71%)が提供された。
【0180】
(E,E,E,E,E)-1,3,5,7,9-デカペンテニル-(10-プロピル)ボロン酸エステル(91)
MIDAボロナート68(実施例14を参照)を、以下の手順を介して、(E,E)-1,3-ヘプタジエニルボロン酸90に転換させた。23℃で、THF(1.0mL)に68(25.6mg、0.102mmol、1.0当量)が入った攪拌混合物に、シリンジを介して、1NのNaOH(水性)(0.306mL、0.306mmol、3.0当量)を添加した。反応混合物を23℃で15分攪拌した。得られた混合物を1.0Nのホスファートバッファー溶液(pH7、0.5mL)で処理し、及びEt2O(1.0mL)で希釈した。有機相を分離させ、水性相をTHF:Et2O 1:1(3x1.50mL)で抽出した。組合せた有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。濾過後、得られた無色の溶液を、真空で、THFの〜50mL容量まで濃縮した。THF(5.0mL)を添加し、再度、真空で、THFの〜25mL容量まで濃縮した。ボロン酸90の単離収率を、68に基づき、90%であると仮定し、THFにおけるボロン酸90の0.1836N溶液(0.0918mmol/0.50mLTHF)を、1.0mL(v/v)容積測定用バイアルを使用して調製した。さらなる精製をすることなく、この溶液を次の反応に直ちに使用した。TLC(EtOAc)Rf=0.88、UVランプ(λ=254nm)により、又はKMnO4を用いて可視化。
【0181】
触媒の溶液を以下の通りに調製した:磁石式攪拌棒が具備された20mLのホイートンバイアルに、Pd(OAc)2(5.60mg、0.025mmol、1.0当量)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',4',6'-トリ-イソ-プロピル-1,1'-ビフェニル(4c)(24.5mg、0.050mmol、2.0当量)を充填した。トルエン(3.0mL)を添加し、PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封した。得られた混合物を23℃で1時間攪拌したところ、赤みがかったPd/4c触媒溶液が生じた(トルエンに0.00833N Pd)。
【0182】
ついで、この触媒溶液を以下の手順で利用した:磁石式攪拌棒が具備された10mLのホイートンバイアルに、BB3(16.5mg、0.0612mmol、1.0当量)、Cs2CO3(40.0mg、0.1224mmol、2.0当量)、0.1836Nのボロン酸が入ったTHF溶液(0.0918mmol、0.50mL)、及び触媒溶液(0.110mL、1.5mol%Pd)を充填した。ついで、トルエン(1.64mL)を添加し、PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封し、45℃で18時間攪拌した。得られた深いオレンジ色の混合物をEtOAc(5.0mL)で希釈し、フロリジル(登録商標)の短いパッドを通して濾過した。濾液を真空で濃縮したところ、オレンジ色の固形物が提供された。フロリジル(登録商標)において、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc 1:1→EtOAc→EtOAc:MeCN 9:1)で精製すると、淡黄色の固形物として、91(8.40mg、0.0255mmol、42%)が得られた。
【0183】
アンホテリシンBマクロライド(92)の1/2
触媒の溶液を以下の通りに調製した:磁石式攪拌棒が具備され、オーブン乾燥されたホイートンバイアルに、Pd(OAc)2(5.60mg、0.025mmol、1.0当量)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',4',6'-トリ-イソ-プロピル-1,1'-ビフェニル(4c)(24.5mg、0.050mmol、2.0当量)を充填した。トルエン(3.0mL)を添加し、PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封した。得られた混合物を23℃で1時間攪拌したところ、赤みがかったPd/4c触媒溶液が生じた(トルエンに0.00833N Pd)。
【0184】
ついで、触媒溶液を以下の手順で利用した:磁石式攪拌棒が具備され、オーブン乾燥されたホイートンバイアルに、BB4(7.0mg、0.0187mmol、1.0当量)、91(14.0mg、0.0421mmol、2.25当量)、触媒溶液(0.034mL、1.5mol%Pd)、及びTHF(1.50mL)を充填し、PTFE-線入プラスチックキャップでバイアルを密封した。脱気された1NのNaOH(水性)(0.211mL、0.211mmol、5.00当量 91に基づく)、シリンジを介してバイアルに添加した。黄色の反応混合物を23℃で15分攪拌し、ついで45℃で16時間攪拌した。得られた不均質の深い赤みがかった混合物を酢酸エチル(5.0mL)で希釈し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。オレンジ色の溶液を、フロリジル(登録商標)の短いパッドを通して濾過し、濾液を真空で濃縮したところ、オレンジ色の固形物が提供された。フロリジル(登録商標)において、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc 60:1)で精製すると、淡黄色の固形物として、92(4.60mg、0.0090mmol、48%)が得られた。
【0185】
実施例18:β-パリナリン酸の合成
(E)-1-ブテニルボロン酸(23)
磁石式攪拌棒が具備された150mLのボムフラスコ(bomb flask)に、BH3・SMe2(1.8mL、19.4mmol、1.0当量)及びTHF(11mL)を充填した。溶液を0℃まで冷却し、(+)-α-ピネン(6.3mL、39.7mmol、2.0当量)を滴下した。溶液を0℃で10分攪拌し、ついで23℃まで温め、23℃で2時間攪拌し、その間に白色沈殿物が形成された。ついで、溶液を0℃まで再度冷却し、バルーンを介して、過剰の1-ブチンを反応体に濃縮し、無色透明の溶液を得た。ついで、テフロン・スクリューキャップでフラスコを密封し、0℃で30分攪拌し、23℃まで温め、23℃で1.5時間攪拌した。溶液を0℃まで再度冷却し、アセトアルデヒド(10.4mL、185mmol、9.5当量)を添加した。テフロン・スクリューキャップでボムフラスコを再封鎖し、反応物を40℃で14時間攪拌した。反応物を23℃まで冷却し、水(5mL)を添加した。23℃で3時間攪拌した後、溶液をEtOAc(50mL)で希釈し、MgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。得られた残留物をヘキサン(50mL)に溶解させ、得られた混合物を10%のNaOH水(2×10mL)で抽出した。組合せた水性抽出物をヘキサン(2x20mL)で洗浄し、ついで、濃塩酸を用いて、pH2-3に酸性化させた。ついで、酸性化させた水性相をEtOAc(3x30mL)で抽出し、組合せた有機抽出物を飽和したNaHCO3水(50mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、無色の固形物として、化合物93(0.928g、9.3mmol、48%)が生じた。
【0186】
(E,E,E)-1,3,5-オクタトリエニルボロン酸エステル(94)
パラジウム触媒の溶液を以下の通りに調製した:磁石式攪拌棒が具備され、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',4',6'-トリ-イソ-プロピル-1,1'-ビフェニル(4c)(17.3mg、0.036mmol、2.0当量)が収容された4mLのバイアルに、THF(0.0109M、1.664mL、0.018mmol、1.0当量)にPd(OAc)2が入った溶液を添加した。PTFE-線入キャップでバイアルを密封し、23℃で30分攪拌した。
【0187】
ついで、この触媒溶液を以下の手順で利用した:攪拌棒が具備され、(E)-1-ブテニルボロン酸(93)(113mg、1.13mmol、2.0当量)が収容された20mLのアイ-ケムバイアルに、54b(138mg、0.521mmol、1.0当量)、微細に挽かれたパウダーとして無水K3PO4(301mg、1.42mmol、2.5当量)、THF(7.9mL)、及び触媒溶液(0.780mL、0.0085mmol Pd、1.5mol%Pd)を添加した。得られた混合物を、PTFE-線入キャップで封鎖し、45℃で23時間攪拌した。(54b及び生成物94を、ヘキサン:EtOAc 2:3を用いて3回溶出させることにより、TCLプレート上で良好に分離させた)。ついで、大量のアセトニトリルと共に、シリカゲルのパッドを通して濾過した。得られた溶液にフロリジル(登録商標)ゲルを添加し、ついで溶媒を真空で除去した。得られたパウダーをシリカゲルカラムの頂部に乾燥充填し、フラッシュクロマトグラフィー(Et2O→Et2O:MeCN 4:1)を実施したところ、黄色のパウダーとして、94(120mg、0.456mmol、88%)が生じた。
【0188】
10-ヨード-9-デカン酸(95)
23℃で、THF(1.5mL)にCrCl2(454mg、3.75mmol、7.0当量)が入った懸濁液に、ジオキサン(9.2mL)に(E)-メチル10-ヨードデセ-9-エノアート(100mg、0.537mmol、1.0当量)及びヨードホルム(422mg、1.07mmol、2.0当量)が入った溶液を滴下した。12時間攪拌した後、反応混合物をEt2O(10mL)で希釈し、水(10mL)に注いだ。相分離させ、水性相をEt2O(3x15mL)で抽出した。組合せた有機抽出物をブライン(10mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン→ヘキサン:EtOAc 9:1)で精製したところ、黄色の油として、10-ヨード-9-デセノアートメチルエステル(105mg、0.337mmol、63%)が提供された。1H NMRには、E:Z比が10:1と示された。
【0189】
THF:H2O 3:1(3.3mL)に、この10-ヨード-9-デカノアートメチルエステル(51.0mg、0.164mmol、1.0当量)が入った攪拌溶液に、LiOH(69.0mg、1.64mmol、10.0当量)を添加した。反応物を50℃で4時間攪拌し、その後Et2O(5mL)で希釈し、1MのHCl水(5mL)に注いだ。 相分離させ、水性相をEt2O(3x5mL)で抽出した。組合せた有機相をブライン(5mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc 5:1→EtOAc)で精製したところ、淡黄色の固形物として、95(44.0mg、0.149mmol、91%)が提供された。1H NMRには、E:Z比が10:1と示された。
【0190】
β-パリナリン酸(96)
MIDAボロナート94を、以下の手順を介して、その対応するボロン酸に転換させた:23℃で、THF(1.34mL)に94(24.7mg、0.094mmol、1.0当量)が入った攪拌溶液に、1MのNaOH水(0.28mL、0.28mmol、3.0当量)を添加し、得られた混合物を23℃で15分攪拌した。ついで、0.5M、pH7のホスファートバッファー(1.5mL)を添加することにより、反応をクエンチさせ、Et2O(1.5mL)で希釈した。相分離させ、水性相をTHF:Et2O 1:1(3x3mL)で抽出した。組合せた有機相をMgSO4上で乾燥させ、少量(〜3.7mL)のTHFが残存するまで、真空で濃縮したところ、ボロン酸溶液が生じた;TLC:(EtOAc) Rf=0.63、KMnO4により可視化。
【0191】
パラジウム触媒の溶液を以下の通りに調製した:磁石式攪拌棒が具備され、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',4',6'-トリ-イソ-プロピル-1,1'-ビフェニルリガンド(4c)(2.1mg、0.0044mmol、2.0当量)が収容された4mLのバイアルに、THF(0.004M、0.545mL、0.0022mmol、1.0当量)にPd(OAc)2が入った溶液を添加した。PTFE-線入キャップでバイアルを密封し、23℃で30分攪拌した。
【0192】
ついで、この触媒溶液を以下の手順で利用した:磁石式攪拌棒が具備され、95(18.5mg、0.062mmol、1.0当量;1H NMRにより、E:Zは7:1)が収容された20mLのアイ-ケムバイアルに、ボロナート94に対応するボロン酸(上述を参照;3.7mL、推定0.094mmol、1.5当量)及び上述した触媒溶液(0.31mL、0.0013mmol Pd、2mol%Pd)を添加した。得られた混合物を、テフロン-線入隔膜キャップで封鎖し、1MのNaOH水(0.19mL、0.190mmol、3.0当量)を添加した。反応物を23℃で40分攪拌し、ついで、飽和したNH4Cl水(3mL)を添加することによりクエンチした。相分離させ、水性相をEt2O(3x5mL)で抽出した。組合せた有機抽出物をNa2SO4上で乾燥させ、真空で濃縮した。得られた粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:Et2O 4:1→Et2O)で精製したところ、蛍光固形物として、β-パリナリン酸96(14.8mg、0.054mmol、86%)が生じた。1H NMRには、β-パリナリン酸:9-(Z)パリナリン酸の7:1混合物が示された(出発物質95の7:1 E:Z混合物から生じる)。合成96の1H NMR及び13C NMR分析は、β-パリナリン酸について以前から報告されているデータと完全に一致した。
【0193】
実施例19:アリールハロゲン化物を用いた、保護された有機ボロン酸のインシトゥークロスカップリング
3-メトキシフェニル-MIDA-ボロナート(300)の反応
攪拌棒が具備された50mLの丸底フラスコに、3-メトキシフェニルボロン酸(6.591mmol、1.002g)とN-メチルイミノ二酢酸(6.27mmol、922mg)を添加した。フラスコにトルエン(6mL)及びDMSO(2mL)を添加した。フラスコを、トルエンで満たされたディーン・スターク・トラップに固定した。混合物を2.5時間攪拌した。溶液を真空で濃縮した(1トール、90-100°C)。得られた粘性のある黄色の油を−78℃で凍結させ、ついで、12時間、凍結乾燥機(lyopholizer)に配した。ほとんど固体状の黄色の油をアセトン(3mL)に懸濁させた。混合物にEt2O(6mL)を添加した。混合物を穏やかに攪拌した。黄色の溶液をデカントして、オフホワイト色の固形物から離した。固形物を30分加熱(約80℃)しつつ、真空(1トール)下に配したところ、自由に流れるオフホワイト色の固形物として、所望の生成物1.562g(95%)が提供された。
【0194】
テフロンコートされた攪拌棒が具備された20mLのバイアルに、4-ブロモアセトフェノン(0.200g、1.005mmol)、3-メトキシフェニル-MIDA-ボロナート(0.397g、1.509mmol)、及び水酸化ナトリウム(0.302g、7.550mmol)を添加した。バイアルを即座にグローブボックスに入れ、テトラキス(トリフェニルホスフィン)-パラジウム(0)(0.023g、0.020mmol)及びTHF(10mL)を添加した。隔膜キャップでバイアルを密封し、グローブボックスから取り出した。アルゴンをスパージすることにより、20分脱気されたH2O(2mL)を、シリンジを介してバイアルに添加した。24時間激しく攪拌しつつ、60℃で反応を維持した。室温まで冷却し、反応物を1MのNaOH水10mLに注いだ。水性相を分離させ、エーテル3×10mLで抽出した。組合せた有機フラクションを10mLの飽和したNaHCO3水及び10mLのブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。溶媒を真空(〜20トール、30℃)で除去したころ、黄色の油として粗生成物が提供された。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(50:45:5 ヘキサン/CH2Cl2/EtOAc)により精製すると、真空下で結晶化する無色透明の液体(0.220g、97%)が生じた。この反応は、全濃度0.33M(2mLのTHF、1mLのH2O)、収率96%で操作され得る。濃縮反応を同じ大きさのバイアルで操作した。反応におけるいくつかの成分が、反応の全課程において完全に溶解していない場合は、かなり効果的な攪拌が重要となる。
【0195】
4-ピリジル-MIDA-ボロナート(302)の反応
攪拌棒が具備された50mLの丸底フラスコに、4-ピリジルボロン酸(8.160mmol、1.002g;フロンティア化学(Frontier Scientific)から受容したような紫色の固形物)とN-メチルイミノ二酢酸(7.728mmol、1.136g)を添加した。フラスコにトルエン(6mL)及びDMSO(8mL)を添加した。フラスコを、トルエンで満たされたディーン・スターク・トラップに固定した。混合物を2時間攪拌した。反応が進行しているため、フラスコの側面に暗色の固形物が蓄積した。この物質はアセトンに溶解せず、水に溶解して、青/紫の溶液が形成された。この物質を、出発物質の不純物であるとみなした。セライトの薄いパッドを通して、混合物を濾過した。セライトパッドをアセトン(2×10mL)で洗浄した。溶液を真空(1トール、90-100℃)で濃縮した。暗紫色の残留物をMeCN(5mL)に懸濁させた。混合物を攪拌した。混合物にEt2O(10mL)を添加した。混合物を攪拌し、ついで、紫色の溶液をデカントして、紫色の固形物から離した。固形物をEt2O(5mL)で洗浄した。残留溶媒を真空で除去したところ、自由に流れる紫色の固形物として、所望の生成物1.341g(74%)が提供された。この物質はDMSO(推定5%)で汚染されており、粉砕して除去し、固体状物質をMeCN(5mL)に懸濁させ、混合を容易にするために、40℃で5分、懸濁液をロータリーエバポレータで回転させた。混合物にEt2O(10mL)を添加し、混合物を攪拌した。溶液をデカントして、紫色の固形物から離した。残留溶媒を真空で除去したところ、自由に流れる紫色の固形物として、所望の生成物1.235g(68%)が提供された。
【0196】
テフロンコートされた攪拌棒が具備された20mLのバイアルに、4-ブロモアセトフェノン(0.200g、1.005mmol)、4-ピリジル-MIDA-ボロナート(0.353g、1.508mmol)、及びK2CO3(1.043g、7.55mmol)を添加した。バイアルを即座にグローブボックスに入れ、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.024g、0.021mmol)及びジオキサン(10mL)を添加した。隔膜キャップでバイアルを密封し、グローブボックスから取り出した。アルゴンをスパージすることにより、20分脱気されたH2O(2mL)を、シリンジを介してバイアルに添加した。12時間激しく攪拌しつつ、100℃で反応を維持した。室温まで冷却し、反応物を、エーテル10mL、及び1MのNaOH(水性)10mLに注いだ。水性相を分離させ、エーテル3×10mLで抽出した。組合せた有機フラクションを10mLの飽和したNaHCO3(水性)及び10mLのブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。溶媒を真空(〜20トール及び30℃)で除去したころ、黄色の固形物として粗生成物が提供された。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(100% EtOAc)により精製すると、無色の結晶性固形物(0.188g、95%)が生じた。この反応は、全濃度0.33M(2mLのジオキサン、1mLのH2O)、収率96%で操作可能である。濃縮反応を同じ大きさのバイアルで操作した。反応におけるいくつかの成分が、反応の全課程において完全に溶解していない場合は、かなり効果的な攪拌が重要となる。
【0197】
実施例20:対応する遊離のボロン酸を形成することのない、保護された有機ボロン酸の調製
フェニル-MIDA-ボロナート(304)
攪拌棒が具備され、ゴム隔膜で固定され、Ar雰囲気下に配された100mLの乾燥シュレンクフラスコに、THF(25mL)、ブロモベンゼン(boenzene)(2.0mL、19mmol)及びホウ酸トリイソプロピル(5.3mL、23mmol)を添加した。攪拌した溶液を−78℃まで冷却した。溶液に、n-BuLi(9.1mL、2.5M、23mmol)を添加した。淡オレンジ色の溶液を15分攪拌した。30分攪拌しつつ、溶液を室温まで温めた。溶液に、、DMSO(15mL)とN-メチルイミノ二酢酸(8.39g、57.1mmol)を添加した。フラスコを蒸留装置に固定した。溶媒を蒸留する際に、混合物を還流し、蒸留ポットには定期的にトルエンを充填し、一定容量を維持した。粗反応混合物を真空で濃縮すると、オフホワイト色の固形物が提供された。フラスコにアセトン(200mL)を添加した。セライトの薄いパッドを通して、得られた懸濁液を濾過した。濾液を真空で濃縮した。得られた残留物をフロリジルゲルに吸着させた。このパウダーをEt2Oにスラリー充填されたシリカゲルカラムに乾燥充填した。カラムをEt2O(約400mL)で洗い流し、ついで、Et2O:MeCN(5:1)で溶出させたところ、無色の固形物として、304が3.592g(81%)提供された。
【0198】
ビニル-MIDA-ボロナート(306)
攪拌棒が具備され、ゴム隔膜で固定され、Ar雰囲気下に配された6mLの乾燥バイアルに、CH2Cl2(1.3mL、1.0M、1.3mmol)に入ったBBr3を添加した。攪拌溶液にビニルトリメチルシラン(140μL、0.983mmol)を添加した。溶液を室温で13時間攪拌した。別に、攪拌棒が具備され、ゴム隔膜で固定され、Ar雰囲気下に配された25mLの乾燥丸底フラスコに、N-メチルイミノニ酢酸ナトリウム(478mg、2.50mmol)及びDMSO(4mL)を充填した。この攪拌懸濁液に、シリンジを介して、粗ビニルボロンジブロミド溶液を滴下した。混合物を5分攪拌した。混合物を真空で濃縮した。残留物を、アセトン懸濁液から、フロリジルゲルに吸着させた。得られたパウダーをEt2Oにスラリー充填されたシリカゲルカラムに乾燥充填した。カラムをEt2O(約200mL)で洗い流し、ついで、Et2O:MeCN(3:1)で溶出させたところ、無色の固形物として、306が88mg(48%)提供された。
【0199】
実施例21:単一の反応混合物中における3成分のカップリング
図24には、単一の反応混合物において実施される、3つの別々の成分のクロスカップリング反応についての、構造及び反応スキームを示す。火力乾燥された7-mLのバイアルに、4-ブロモフェニル-MIDA-ボロナート(8a、0.0625g、0.200mmol、1.00当量)及びp-トリルボロン酸(0.0410g、0.3016、1.50当量)を添加した。w/aキムワイプ(Kimwipe)(登録商標)でバイアルをキャップし、直ちにグローブボックスに入れ、その時に、微細に挽いたリン酸カリウム(0.2975g、1.40mmol、7.00当量)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(0.0116g、0.0100mmol、0.05当量)を添加した。磁石式攪拌棒及びジオキサン(2.0mL)を添加し、PTFE-線入スクリューキャップでバイアルを密封した。グローブボックスから取り出し、100℃で12時間攪拌しつつ、反応を維持した。バイアルを23℃まで冷却し、再度、グローブボックスに入れ、その時に、20μLのアリコートを1H-NMR分析用に取り出した。4-ブロモアセトフェノン(0.0797g、0.400mmol、2.0当量)を、ジオキサン(1.0mL)の溶液として添加した。PTFE-線入隔膜スクリューキャップでバイアルを密封した。グローブボックスから取り出し、シリンジを介して、バイアルに水(0.60mL)を添加した。100℃でさらに12時間攪拌しつつ、反応を維持した。
【0200】
23℃まで冷却した後、 白色懸濁している上部有機相と透明無色の下部水性相とからなる反応物を、1MのNaOH水(10mL)とEt2O(10mL)の混合物に注いだ。不溶性の白色沈殿物を含んでいた有機相を分離し、水性相をEt2O(3×10mL)で抽出した。組合せた有機フラクションを飽和したNaHCO3水(1×10mL)及びブライン(1×10mL)で洗浄した。白色沈殿物を濾過により除去し、残留溶液を真空で濃縮した。1H NMRによる分析で、得られた白色の残留物は、生成物308及び310の1:1混合物であることが明らかとなった。1H NMRによる分析で、単離された白色沈殿物は、排他的に、所望の化合物308であることが明らかとなった。12時間で取り出されたアリコートの1H NMR分析では、8aの完全な転換が示された。
【0201】
本発明の様々な実施態様を記載したが、本発明の範囲内で他の実施態様及び実施も可能であることは当業者には明らかであろう。従って、本発明は、添付する特許請求の範囲及びその均等物に照らして、制限され除かれるものではない。
【0202】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
sp3混成を有するホウ素と、
ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基と、
ホウ素-炭素結合を介してホウ素に結合している有機基
を含み、該有機基が-C2H5、-C(CH3)2CH(CH3)2、シクロペンチル、テトラヒドロピラニル、ノルボルニル、2,4,4-トリメチル-ビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、-C6H5、-C6H4-CH3、-C6H4-CHO、-C6H4−OCH3、-C6H4-F、-C6H4-Cl、-C6H4-Br、-C6H4-CF3、及び-C6H4-NO2からなる群から選択されない、保護された有機ボロン酸。
【請求項2】
有機基が、さらに-C6H4-C6H4-CH3、-4-ブロモチオフェニル、-4-トリル-チオフェニル、-シクロプロピル-C6H4-Br、-シクロプロピル-C6H4-C6H4-CH3、-CH=CH-C6H4-Br、CH=CH-C6H4-C6H4-CH3、-5-ブロモ-2-ベンゾフラニル、5-(1-プロペニル)-2-ベンゾフラニル、-2-メトキシメトキシ-4-メトキシ-5-ブロモフェニル及び-2-メトキシメトキシ-4-メトキシ-5-(5-(1-プロペニル)-2-ベンゾフラニル)フェニルからなる群から選択されない、請求項1に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項3】
立体構造的に強固な保護基が三価の基である、請求項1又は2に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項4】
保護された有機ボロン酸が、式(II):
R1-B-T (II)
[上式中、
R1は有機基を表し、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含み、
Tは三価の基を表し、
Bはsp3混成を有するホウ素を表す]
により表される、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項5】
R1が官能基を含む、請求項4に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項6】
官能基が、ハロゲン、偽ハロゲン、アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、チオール、スルホン、スルホキシド、アミン、ホスフィン、亜リン酸塩、ホスファート、金属含有基、保護されたアルコール、保護されたカルボン酸、及び保護されたアミンからなる群から選択される、請求項5に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項7】
R1が少なくとも2つの交互炭素-炭素二重結合を含む、請求項4ないし6のいずれか一項に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項8】
R1が、式(III):
Y-R2-(R3)m- (III)
[上式中、Yはハロゲン基又は偽ハロゲン基を表し、
R2はアリール基を表し、
R3は、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含み、
mは0又は1である]
により表される基である、請求項4ないし7のいずれか一項に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項9】
保護された有機ボロン酸が、式(IV):
R4-(R5)m-B-T (IV)
[上式中、R4及びR5は共に有機基を表し、独立して、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含み、
mは0又は1であり、
Tは三価の基を表し、
Bはsp3混成を有するホウ素を表す]
により表される、請求項4ないし8のいずれか一項に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項10】
R4が、ハロゲン置換基又は偽ハロゲン置換基を含むアリール基ではない、請求項9に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項11】
R4が、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、及びヘテロアルキニル基からなる群から選択される少なくとも一の基を含み、
R4が、ハロゲン置換基又は偽ハロゲン置換基をさらに含む、請求項10に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項12】
R4がハロゲン基又は偽ハロゲン基を含まない、請求項10記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項13】
R4が、アリール基及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含む、請求項12に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項14】
保護された有機ボロン酸が、式(X):
[上式中、R10は有機基を表し、
Bはsp3混成を有するホウ素を表し、
R20、R21、R22、R23及びR24は、独立して、水素基及び有機基からなる群から選択される]
により表される、請求項1ないし13のいずれか一項に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項15】
R20が、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含む、請求項14に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項16】
R20がメチル基である、請求項14に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項17】
R21、R22、R23及びR24が、独立して、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含む、請求項14に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項18】
R21、R22、R23及びR24が水素である、請求項14に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項19】
R10が、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含む、請求項14に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項20】
保護された有機ボロン酸が、式(XI):
[上式中、R10は有機基を表し、
Bはsp3混成を有するホウ素を表す]
により表される、請求項1ないし19のいずれか一項に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項21】
R10が、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含む、請求項20に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項22】
保護された有機ボロン酸8d、8e、8f、8e、9a、9b、9c、9d、9e、9f、13、14、16、17、19、20、21、22、23、24、25、26、27、30、54a、54b、54c、54d、61、64、66、68、70、72、74、75、80、84、91、94、302、及び306からなる群から選択される、請求項1ないし21のいずれか一項に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項23】
保護された有機ボロン酸を試薬と接触させることを含む化学反応を実施する方法であって、
該保護された有機ボロン酸が、sp3混成を有するホウ素と、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基と、ホウ素-炭素結合を介してホウ素に結合している有機基とを含み;
有機基が化学的に変換され、
ホウ素は化学的に変換されない、方法。
【請求項24】
立体構造的に強固な保護基が三価の基である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
立体構造的に強固な保護基をホウ素から除去することをさらに含む、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
保護された有機ボロン酸が、式(II):
R1-B-T (II)
[上式中、
R1は有機基を表し、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含み、
Tは三価の基を表し、
Bはsp3混成を有するホウ素を表す]
により表される、請求項23ないし25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
R1が、式(III):
Y-R2-(R3)m- (III)
[上式中、Yはハロゲン基又は偽ハロゲン基を表し、
R2はアリール基を表し、
R3は、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含み、
mは0又は1である]
により表される基である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
式(I):
R1-B(OH)2 (I)
により表される化合物を保護試薬と反応させることにより、式(II)で表される化合物を形成させることをさらに含む、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
保護された有機ボロン酸が、次の式(X):
[上式中、R10は有機基を表し、
Bはsp3混成を有するホウ素を表し、
R20、R21、R22、R23及びR24は、独立して、水素基及び有機基からなる群から選択される]
により表される、請求項23ないし28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
次の式(XII):
により表される化合物を、N-置換イミノ-ジ-カルボン酸と反応させることにより、式(X)で表される化合物を形成させることをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
保護された有機ボロン酸が、式(XI):
[上式中、R10は有機基を表し、
Bはsp3混成を有するホウ素を表す]
により表される、請求項23ないし30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
式(XII):
により表される化合物をN-メチルイミノ二酢酸と反応させることにより、式(XI)で表される化合物を形成させることをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
有機基が少なくとも2つの交互炭素-炭素二重結合を含む、請求項23ないし32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
保護された有機ボロン酸が、保護された有機ボロン酸3a、3c、8a、8b、8c、8d、8e、8f、8e、9a、9b、9c、9d、9e、9f、13、14、16、17、19、20、21、22、23、24、25、26、27、30、54a、54b、54c、54d、61、64、66、68、70、72、74、75、80、84、91、94、300、302、304及び306からなる群から選択される、請求項23ないし33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
保護された有機ボロン酸が、請求項2に記載の保護された有機ボロン酸である、請求項23ないし34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
化学反応が、鈴木-宮浦反応、酸化、還元、エバンスアルドール反応、HWEオレフィン化、タカイオレフィン化、アルコールシリル化、脱シリル化、p-メトキシベンジル化、ヨード化、ネギシクロスカップリング、ヘックカップリング、ミヤウラホウ素化、スティルカップリング、及びソノガシラカップリングからなる群から選択される、請求項23ないし35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
化学反応がスワーン酸化及び「ジョーンズ試薬」酸化から選択される酸化反応である、請求項23ないし36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
水性塩基の存在下で、保護された有機ボロン酸と有機ハロゲン化物をパラジウム触媒に接触させ、
ここで、保護された有機ボロン酸が、sp3混成を有するホウ素と、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基と、ホウ素-炭素結合を介してホウ素に結合している有機基を含み;
クロスカップリングした生成物を得る
ことを含む、化学反応を実施する方法。
【請求項39】
立体構造的に強固な保護基が三価の基である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
保護された有機ボロン酸が、式(II):
R1-B-T (II)
[上式中、
R1は有機基を表し、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含み、
Tは三価の基を表し、
Bはsp3混成を有するホウ素を表す]
により表される、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
R1が、式(III):
Y-R2-(R3)m- (III)
[上式中、Yはハロゲン基又は偽ハロゲン基を表し、
R2はアリール基を表し、
R3は、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含み、
mは0又は1である]
により表される基である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
式(I):
R1-B(OH)2 (I)
により表される化合物を保護試薬と反応させることにより、式(II)で表される化合物を形成させることをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
保護された有機ボロン酸が、次の式(X):
[上式中、R10は有機基を表し、
Bはsp3混成を有するホウ素を表し、
R20、R21、R22、R23及びR24は、独立して、水素基及び有機基からなる群から選択される]
により表される、請求項38ないし42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
次の式(XII):
により表される化合物をN-置換イミノ-ジ-カルボン酸と反応させることにより、式(X)で表される化合物を形成させることをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
保護された有機ボロン酸が、次の式(XI):
[上式中、R10は有機基を表し、
Bはsp3混成を有するホウ素を表す]
により表される、請求項38ないし44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
次の式(XII):
により表される化合物をN-メチルイミノ二酢酸と反応させることにより、式(XI)で表される化合物を形成させることをさらに含む、請求項38ないし45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
有機基が少なくとも2つの交互炭素-炭素二重結合を含む、請求項38ないし46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
保護された有機ボロン酸が、保護された有機ボロン酸3a、3c、8a、8b、8c、8d、8e、8f、8e、9a、9b、9c、9d、9e、9f、13、14、16、17、19、20、21、22、23、24、25、26、27、30、54a、54b、54c、54d、61、64、66、68、70、72、74、75、80、84、91、94、300、302、304及び306からなる群から選択される、請求項38ないし47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
保護された有機ボロン酸が、請求項2に記載の保護された有機ボロン酸である、請求項38ないし48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
式(I):
R1-B(OH)2 (I)
により表される化合物を保護試薬と反応させることを含む、請求項4に記載の保護された有機ボロン酸を形成させる方法。
【請求項51】
式(I)により表される化合物が、インサイツで形成される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
式(V):
R4-(R5)m-B(OH)2 (V)
により表される化合物を保護試薬と反応させることを含む、請求項9に記載の保護された有機ボロン酸を形成させる方法。
【請求項53】
式(V)により表される化合物が、インサイツで形成される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
式(XII):
により表される化合物と、N-置換されたイミノ-ジ-カルボン酸とを反応させること含む、請求項14に記載の保護された有機ボロン酸を形成させる方法。
【請求項55】
式(XII)により表される化合物が、インサイツで形成される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
式(XIII):
R10-BX2 (XIII)
により表される化合物を保護試薬と反応させることを含む、請求項14に記載の保護された有機ボロン酸を形成させる方法。
【請求項57】
式(XII):
により表される化合物をN-メチルイミノ二酢酸と反応させること含む、請求項20に記載の保護された有機ボロン酸を形成させる方法。
【請求項58】
式(XII)により表される化合物が、インサイツで形成される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
式(XIII):
R10-BX2 (XIII)
により表される化合物をN-メチルイミノ二酢酸と反応させることを含む、請求項20に記載の保護された有機ボロン酸を形成させる方法。
【請求項1】
sp3混成を有するホウ素と、
ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基と、
ホウ素-炭素結合を介してホウ素に結合している有機基
を含み、該有機基が-C2H5、-C(CH3)2CH(CH3)2、シクロペンチル、テトラヒドロピラニル、ノルボルニル、2,4,4-トリメチル-ビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、-C6H5、-C6H4-CH3、-C6H4-CHO、-C6H4−OCH3、-C6H4-F、-C6H4-Cl、-C6H4-Br、-C6H4-CF3、及び-C6H4-NO2からなる群から選択されない、保護された有機ボロン酸。
【請求項2】
有機基が、さらに-C6H4-C6H4-CH3、-4-ブロモチオフェニル、-4-トリル-チオフェニル、-シクロプロピル-C6H4-Br、-シクロプロピル-C6H4-C6H4-CH3、-CH=CH-C6H4-Br、CH=CH-C6H4-C6H4-CH3、-5-ブロモ-2-ベンゾフラニル、5-(1-プロペニル)-2-ベンゾフラニル、-2-メトキシメトキシ-4-メトキシ-5-ブロモフェニル及び-2-メトキシメトキシ-4-メトキシ-5-(5-(1-プロペニル)-2-ベンゾフラニル)フェニルからなる群から選択されない、請求項1に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項3】
立体構造的に強固な保護基が三価の基である、請求項1又は2に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項4】
保護された有機ボロン酸が、式(II):
R1-B-T (II)
[上式中、
R1は有機基を表し、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含み、
Tは三価の基を表し、
Bはsp3混成を有するホウ素を表す]
により表される、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項5】
R1が官能基を含む、請求項4に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項6】
官能基が、ハロゲン、偽ハロゲン、アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、チオール、スルホン、スルホキシド、アミン、ホスフィン、亜リン酸塩、ホスファート、金属含有基、保護されたアルコール、保護されたカルボン酸、及び保護されたアミンからなる群から選択される、請求項5に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項7】
R1が少なくとも2つの交互炭素-炭素二重結合を含む、請求項4ないし6のいずれか一項に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項8】
R1が、式(III):
Y-R2-(R3)m- (III)
[上式中、Yはハロゲン基又は偽ハロゲン基を表し、
R2はアリール基を表し、
R3は、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含み、
mは0又は1である]
により表される基である、請求項4ないし7のいずれか一項に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項9】
保護された有機ボロン酸が、式(IV):
R4-(R5)m-B-T (IV)
[上式中、R4及びR5は共に有機基を表し、独立して、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含み、
mは0又は1であり、
Tは三価の基を表し、
Bはsp3混成を有するホウ素を表す]
により表される、請求項4ないし8のいずれか一項に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項10】
R4が、ハロゲン置換基又は偽ハロゲン置換基を含むアリール基ではない、請求項9に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項11】
R4が、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、及びヘテロアルキニル基からなる群から選択される少なくとも一の基を含み、
R4が、ハロゲン置換基又は偽ハロゲン置換基をさらに含む、請求項10に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項12】
R4がハロゲン基又は偽ハロゲン基を含まない、請求項10記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項13】
R4が、アリール基及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含む、請求項12に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項14】
保護された有機ボロン酸が、式(X):
[上式中、R10は有機基を表し、
Bはsp3混成を有するホウ素を表し、
R20、R21、R22、R23及びR24は、独立して、水素基及び有機基からなる群から選択される]
により表される、請求項1ないし13のいずれか一項に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項15】
R20が、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含む、請求項14に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項16】
R20がメチル基である、請求項14に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項17】
R21、R22、R23及びR24が、独立して、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含む、請求項14に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項18】
R21、R22、R23及びR24が水素である、請求項14に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項19】
R10が、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含む、請求項14に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項20】
保護された有機ボロン酸が、式(XI):
[上式中、R10は有機基を表し、
Bはsp3混成を有するホウ素を表す]
により表される、請求項1ないし19のいずれか一項に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項21】
R10が、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含む、請求項20に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項22】
保護された有機ボロン酸8d、8e、8f、8e、9a、9b、9c、9d、9e、9f、13、14、16、17、19、20、21、22、23、24、25、26、27、30、54a、54b、54c、54d、61、64、66、68、70、72、74、75、80、84、91、94、302、及び306からなる群から選択される、請求項1ないし21のいずれか一項に記載の保護された有機ボロン酸。
【請求項23】
保護された有機ボロン酸を試薬と接触させることを含む化学反応を実施する方法であって、
該保護された有機ボロン酸が、sp3混成を有するホウ素と、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基と、ホウ素-炭素結合を介してホウ素に結合している有機基とを含み;
有機基が化学的に変換され、
ホウ素は化学的に変換されない、方法。
【請求項24】
立体構造的に強固な保護基が三価の基である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
立体構造的に強固な保護基をホウ素から除去することをさらに含む、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
保護された有機ボロン酸が、式(II):
R1-B-T (II)
[上式中、
R1は有機基を表し、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含み、
Tは三価の基を表し、
Bはsp3混成を有するホウ素を表す]
により表される、請求項23ないし25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
R1が、式(III):
Y-R2-(R3)m- (III)
[上式中、Yはハロゲン基又は偽ハロゲン基を表し、
R2はアリール基を表し、
R3は、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含み、
mは0又は1である]
により表される基である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
式(I):
R1-B(OH)2 (I)
により表される化合物を保護試薬と反応させることにより、式(II)で表される化合物を形成させることをさらに含む、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
保護された有機ボロン酸が、次の式(X):
[上式中、R10は有機基を表し、
Bはsp3混成を有するホウ素を表し、
R20、R21、R22、R23及びR24は、独立して、水素基及び有機基からなる群から選択される]
により表される、請求項23ないし28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
次の式(XII):
により表される化合物を、N-置換イミノ-ジ-カルボン酸と反応させることにより、式(X)で表される化合物を形成させることをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
保護された有機ボロン酸が、式(XI):
[上式中、R10は有機基を表し、
Bはsp3混成を有するホウ素を表す]
により表される、請求項23ないし30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
式(XII):
により表される化合物をN-メチルイミノ二酢酸と反応させることにより、式(XI)で表される化合物を形成させることをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
有機基が少なくとも2つの交互炭素-炭素二重結合を含む、請求項23ないし32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
保護された有機ボロン酸が、保護された有機ボロン酸3a、3c、8a、8b、8c、8d、8e、8f、8e、9a、9b、9c、9d、9e、9f、13、14、16、17、19、20、21、22、23、24、25、26、27、30、54a、54b、54c、54d、61、64、66、68、70、72、74、75、80、84、91、94、300、302、304及び306からなる群から選択される、請求項23ないし33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
保護された有機ボロン酸が、請求項2に記載の保護された有機ボロン酸である、請求項23ないし34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
化学反応が、鈴木-宮浦反応、酸化、還元、エバンスアルドール反応、HWEオレフィン化、タカイオレフィン化、アルコールシリル化、脱シリル化、p-メトキシベンジル化、ヨード化、ネギシクロスカップリング、ヘックカップリング、ミヤウラホウ素化、スティルカップリング、及びソノガシラカップリングからなる群から選択される、請求項23ないし35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
化学反応がスワーン酸化及び「ジョーンズ試薬」酸化から選択される酸化反応である、請求項23ないし36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
水性塩基の存在下で、保護された有機ボロン酸と有機ハロゲン化物をパラジウム触媒に接触させ、
ここで、保護された有機ボロン酸が、sp3混成を有するホウ素と、ホウ素に結合した立体構造的に強固な保護基と、ホウ素-炭素結合を介してホウ素に結合している有機基を含み;
クロスカップリングした生成物を得る
ことを含む、化学反応を実施する方法。
【請求項39】
立体構造的に強固な保護基が三価の基である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
保護された有機ボロン酸が、式(II):
R1-B-T (II)
[上式中、
R1は有機基を表し、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含み、
Tは三価の基を表し、
Bはsp3混成を有するホウ素を表す]
により表される、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
R1が、式(III):
Y-R2-(R3)m- (III)
[上式中、Yはハロゲン基又は偽ハロゲン基を表し、
R2はアリール基を表し、
R3は、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも一の基を含み、
mは0又は1である]
により表される基である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
式(I):
R1-B(OH)2 (I)
により表される化合物を保護試薬と反応させることにより、式(II)で表される化合物を形成させることをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
保護された有機ボロン酸が、次の式(X):
[上式中、R10は有機基を表し、
Bはsp3混成を有するホウ素を表し、
R20、R21、R22、R23及びR24は、独立して、水素基及び有機基からなる群から選択される]
により表される、請求項38ないし42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
次の式(XII):
により表される化合物をN-置換イミノ-ジ-カルボン酸と反応させることにより、式(X)で表される化合物を形成させることをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
保護された有機ボロン酸が、次の式(XI):
[上式中、R10は有機基を表し、
Bはsp3混成を有するホウ素を表す]
により表される、請求項38ないし44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
次の式(XII):
により表される化合物をN-メチルイミノ二酢酸と反応させることにより、式(XI)で表される化合物を形成させることをさらに含む、請求項38ないし45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
有機基が少なくとも2つの交互炭素-炭素二重結合を含む、請求項38ないし46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
保護された有機ボロン酸が、保護された有機ボロン酸3a、3c、8a、8b、8c、8d、8e、8f、8e、9a、9b、9c、9d、9e、9f、13、14、16、17、19、20、21、22、23、24、25、26、27、30、54a、54b、54c、54d、61、64、66、68、70、72、74、75、80、84、91、94、300、302、304及び306からなる群から選択される、請求項38ないし47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
保護された有機ボロン酸が、請求項2に記載の保護された有機ボロン酸である、請求項38ないし48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
式(I):
R1-B(OH)2 (I)
により表される化合物を保護試薬と反応させることを含む、請求項4に記載の保護された有機ボロン酸を形成させる方法。
【請求項51】
式(I)により表される化合物が、インサイツで形成される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
式(V):
R4-(R5)m-B(OH)2 (V)
により表される化合物を保護試薬と反応させることを含む、請求項9に記載の保護された有機ボロン酸を形成させる方法。
【請求項53】
式(V)により表される化合物が、インサイツで形成される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
式(XII):
により表される化合物と、N-置換されたイミノ-ジ-カルボン酸とを反応させること含む、請求項14に記載の保護された有機ボロン酸を形成させる方法。
【請求項55】
式(XII)により表される化合物が、インサイツで形成される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
式(XIII):
R10-BX2 (XIII)
により表される化合物を保護試薬と反応させることを含む、請求項14に記載の保護された有機ボロン酸を形成させる方法。
【請求項57】
式(XII):
により表される化合物をN-メチルイミノ二酢酸と反応させること含む、請求項20に記載の保護された有機ボロン酸を形成させる方法。
【請求項58】
式(XII)により表される化合物が、インサイツで形成される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
式(XIII):
R10-BX2 (XIII)
により表される化合物をN-メチルイミノ二酢酸と反応させることを含む、請求項20に記載の保護された有機ボロン酸を形成させる方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25A】
【図25B】
【図26】
【図27A】
【図27B】
【図28】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25A】
【図25B】
【図26】
【図27A】
【図27B】
【図28】
【公表番号】特表2010−534240(P2010−534240A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518164(P2010−518164)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/084156
【国際公開番号】WO2009/014550
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(503060525)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ イリノイ (25)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/084156
【国際公開番号】WO2009/014550
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(503060525)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ イリノイ (25)
【Fターム(参考)】
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