説明

ボンディング方法、ボンディング装置及び製造方法

【課題】高速で均一なループを形成させる。
【解決手段】ボンディング装置1は、キャピラリ5をボンディング位置まで下降させて、オーバーハングダイ100のパッド104にイニシャルボール10をボンディングするが、その際、所定時間ごとに、キャピラリ5のZ軸方向の位置を検出するとともに、荷重センサ7で検出した荷重を検出して蓄積しておく。そして、蓄積したキャピラリ5に作用する荷重とキャピラリ5の位置とを参照して、荷重変化点を検出して、この荷重変化点におけるキャピラリ5の荷重変化位置からボンディング位置を減算することで、荷重変化位置からボンディング位置に至るキャピラリ5の移動量Z算出する。そして、この算出した移動量Z分、キャピラリ5を上昇させた後、パッド104とリード105との間にワイヤループを形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーバーハングダイの自由端に形成されたパッドに、キャピラリに挿通されたワイヤをボンディングするボンディング方法、ボンディング装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤボンディング装置は、揺動可能に取り付けられたボンディングアームに、金属細線などのワイヤを繰り出すキャピラリが取り付けられており、ボンディングアームを揺動させてキャピラリを半導体ダイのパッドに押し付けることで、半導体ダイのパッドにワイヤをボンディングしている。
【0003】
近年、積層化の一態様として、下層の半導体ダイやスペーサなどからはみ出したオーバーハングダイが用いられるようになってきた。ところが、オーバーハングダイは、端部が下層の半導体ダイやスペーサなどに支持されない自由端となっているため、この自由端に設けられたパッドにワイヤをボンディングすると、オーバーハングダイがキャピラリに押し付けられて撓んでしまう。このため、ワイヤのボンディング後にワイヤループを形成すると、ワイヤループの始点となる基準位置が安定しないため、ワイヤループのループ高さが不均一となるという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1,2では、ボンディングアームに低荷重を加えて下降させると、オーバーハングダイにキャピラリが接触した位置でボンディングアームの下降が停止することを利用して、オーバーハングダイにキャピラリが接触する接触位置を検出している。そして、ワイヤをボンディングした後にキャピラリを接触位置まで上昇させた後、ワイヤループを形成している。
【特許文献1】特許4068049号公報
【特許文献2】特開2006−032875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に記載された技術では、オーバーハングダイに接触したことを検出するために、接触位置でキャピラリの移動を停止させる必要があり、ループの形成に時間がかかるという問題があった。なお、特許文献1,2に記載された技術では、接触の検出には低荷重の検出が必要となるため、外乱による荷重変動の誤差等によって、検出の精度が低下するという問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、高速で均一なループを形成させることができるボンディング方法、ボンディング装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るボンディング方法は、キャピラリに挿通されたワイヤをオーバーハングダイの自由端に形成されたパッドにボンディングするボンディング方法であって、所定のボンディング位置までキャピラリを移動させる第1移動ステップと、キャピラリを移動させる際に、キャピラリの位置とキャピラリに作用する荷重とを対応付けて検出する荷重検出ステップと、ボンディング位置においてパッドにワイヤをボンディングさせるボンディングステップと、キャピラリに作用する荷重が変化した荷重変化点を検出し、荷重変化点におけるキャピラリの位置とボンディング位置との差分を演算してキャピラリの移動量を算出する移動量演算ステップと、パッドにワイヤをボンディングした後、移動量分、キャピラリを後退させる第2移動ステップと、第2移動ステップの後、キャピラリを所定の軌跡により移動させてワイヤループを形成させるループ形成ステップと、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るボンディング方法では、キャピラリをボンディング位置まで移動させる際に、キャピラリの位置とキャピラリに作用する荷重とを検出しておく。そして、キャピラリがオーバーハングダイに接触するとキャピラリに作用する荷重が変化することから、荷重変化点を検出して、この荷重変化点におけるキャピラリの位置とボンディング位置におけるキャピラリの位置との差分を演算することで、オーバーハングダイに接触してからボンディング位置に到達するまでのキャピラリの移動量を算出することができる。そして、パッドにワイヤをボンディングした後、この移動量分、キャピラリを後退させた後、ワイヤループを形成することで、ワイヤループの始点となる基準位置を均一にすることができる。このため、キャピラリがオーバーハングダイに接触した際にキャピラリの移動を停止させる必要がなくなり、高速で均一なループを形成させることができる。
【0009】
この場合、上記荷重変化点は、ボンディング位置の最も近傍においてキャピラリに作用する荷重が変化した点であることが好ましい。キャピラリがオーバーハングダイに接触するまでは、キャピラリの振動などによってもキャピラリに作用する荷重が変化するため、この荷重の変化が、キャピラリがオーバーハングダイに接触したことによるものか、キャピラリの振動などによるものかを判別することが困難となる。そこで、このボンディング方法によれば、ボンディング位置の最も近傍において荷重が変化した点を荷重変化点とすることで、キャピラリがオーバーハングダイに接触する前に生じるキャピラリの振動などの影響を排除することができ、より高精度に移動量を演算することができる。
【0010】
本発明に係るボンディング装置は、キャピラリに挿通されたワイヤをオーバーハングダイの自由端に形成されたパッドにボンディングするボンディング装置であって、所定のボンディング位置までキャピラリを移動させてパッドにワイヤをボンディングさせ、キャピラリを所定の軌跡により移動させてワイヤループを形成させるボンディング制御手段と、キャピラリを移動させる際に、キャピラリの位置とキャピラリに作用する荷重とを対応付けて検出する荷重検出手段と、を有し、ボンディング制御手段は、荷重検出手段で検出したキャピラリの位置とキャピラリに作用する荷重とに基づいて、キャピラリに作用する荷重が変化した荷重変化点を検出し、荷重変化点におけるキャピラリの位置とボンディング位置との差分を演算してキャピラリの移動量を演算し、移動量分、キャピラリを後退させた後、キャピラリを所定の軌跡により移動させてワイヤループを形成させることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るボンディング装置では、キャピラリをボンディング位置まで移動させる際に、キャピラリの位置とキャピラリに作用する荷重とを検出しておく。そして、キャピラリがオーバーハングダイに接触するとキャピラリに作用する荷重が変化することから、荷重変化点を検出して、この荷重変化点におけるキャピラリの位置とボンディング位置におけるキャピラリの位置との差分を演算することで、オーバーハングダイに接触してからボンディング位置に到達するまでのキャピラリの移動量を算出することができる。そして、パッドにワイヤをボンディングした後、この移動量分、キャピラリを後退させた後、ワイヤループを形成することで、ワイヤループの始点となる基準位置を均一にすることができる。このため、キャピラリがオーバーハングダイに接触した際にキャピラリの移動を停止させる必要がなくなり、高速で均一なループを形成させることができる。
【0012】
そして、揺動可能に取り付けられてキャピラリを保持するボンディングアームを更に有し、ボンディングアームは、ボンディングアームを揺動する駆動部が取り付けられたアーム基端部と、アーム基端部の先端側に位置してキャピラリを保持するアーム先端部と、アーム基端部とアーム先端部とを連結して可撓性を有する連結部と、を備え、荷重検出手段は、アーム先端部とアーム基端部との間に配置されていることが好ましい。このボンディング装置によれば、ボンディングアームのアーム基端部とアーム先端部とが、可撓性を有する連結部により連結されているため、キャピラリに荷重が作用するとアーム基端部に対してアーム先端部が撓む。そして、アーム基端部とアーム先端部との間に荷重検出手段が配置されているため、アーム基端部に対するアーム先端部の撓みにより、キャピラリに作用する荷重を適切に検出することができる。
【0013】
本発明に係る製造方法は、オーバーハングダイの自由端に形成されたパッドにボンディングして半導体装置を製造する製造方法であって、ワイヤが挿通されたキャピラリと、揺動可能に取り付けられたアーム基端部と、アーム基端部の先端側に位置してキャピラリを保持するアーム先端部と、アーム基端部とアーム先端部とを連結して可撓性を有する連結部とを有するボンディングアームと、キャピラリを保持するとともにアーム先端部に取り付けられて超音波を発生する超音波ホーンと、超音波ホーンの長手方向の中心軸からボンディング対象に対する接離方向にオフセットして、ボンディングアームの回転中心とアーム先端部との間に取り付けられる荷重検出手段と、を備える半導体装置を用意し、所定のボンディング位置までキャピラリを移動させる第1移動ステップと、キャピラリを移動させる際に、荷重検出手段によりキャピラリの位置とキャピラリに作用する荷重とを対応付けて検出する荷重検出ステップと、ボンディング位置においてパッドにワイヤをボンディングさせるボンディングステップと、キャピラリに作用する荷重が変化した荷重変化点を検出し、加重変換点におけるキャピラリの位置とボンディング位置との差分を演算してキャピラリの移動量を算出する移動量演算ステップと、パッドにワイヤをボンディングした後、移動量分、キャピラリを後退させる第2移動ステップと、第2移動ステップの後、キャピラリを所定の軌跡により移動させてワイヤループを形成させるループ形成ステップと、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る製造方法では、キャピラリをボンディング位置まで移動させる際に、キャピラリの位置とキャピラリに作用する荷重とを検出しておく。そして、キャピラリがオーバーハングダイに接触するとキャピラリに作用する荷重が変化することから、荷重変化点を検出して、この荷重変化点におけるキャピラリの位置とボンディング位置におけるキャピラリの位置との差分を演算することで、オーバーハングダイに接触してからボンディング位置に到達するまでのキャピラリの移動量を算出することができる。そして、パッドにワイヤをボンディングした後、この移動量分、キャピラリを後退させた後、ワイヤループを形成することで、ワイヤループの始点となる基準位置を均一にすることができる。このため、キャピラリがオーバーハングダイに接触した際にキャピラリの移動を停止させる必要がなくなり、高速で均一なループが形成された半導体装置を製造することができる。
【0015】
この場合、上記荷重変化点は、ボンディング位置の最も近傍においてキャピラリに作用する荷重が変化した点であることが好ましい。キャピラリがオーバーハングダイに接触するまでは、キャピラリの振動などによってもキャピラリに作用する荷重が変化するため、この荷重の変化が、キャピラリがオーバーハングダイに接触したことによるものか、キャピラリの振動などによるものかを判別することが困難となる。そこで、このボンディング方法によれば、ボンディング位置の最も近傍において荷重が変化した点を荷重変化点とすることで、キャピラリがオーバーハングダイに接触する前に生じるキャピラリの振動などの影響を排除することができ、より高精度に移動量を演算することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高速で均一なループを形成させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係るボンディング方法、ボンディング装置及び製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0018】
図1は、実施形態に係るボンディング装置を示した図であり、図2は、ボンディング装置におけるボンディングアームの一部拡大図であり、図2(a)は、ボンディングアームの上面図、図2(b)は、ボンディングアームの底面図である。
【0019】
図1に示すように、ボンディング装置1によりボンディングを行うオーバーハングダイ100は、下層ダイ101及びスペーサ102を介して、基板103に固着されており、その端部が、下層ダイ101からはみ出した自由端となっている。なお、スペーサ102は、例えば、ダイアタッチメントフィルムテープなどが用いられ、下層ダイ101とオーバーハングダイ100との接着を行っている。そして、オーバーハングダイ100の自由端にボンディング対象となるパッド104が形成されており、このパッド104と基板103に形成されたリード105との間で、ワイヤループが形成される。
【0020】
図1及び図2に示すように、本実施形態のボンディング装置1は、基本的に、本願の出願人が先に出願した特願2008−169797号に記載されたボンディング装置と同様の構成をしている。ボンディング装置1は、オーバーハングダイ100の自由端に設けられたパッド104に、ワイヤの先端が球状に形成されたイニシャルボール10をボンディングするとともに、パッド104とリード105との間でワイヤループを形成するワイヤボンディング装置である。このため、ボンディング装置1には、XY軸方向に移動可能なボンディングヘッド2と、ボンディングヘッド2に揺動可能に取り付けられるボンディングアーム3と、ボンディングヘッド2に対してボンディングアーム3を揺動させる駆動モータ4と、挿通されたワイヤを繰り出してボンディングするキャピラリ5と、キャピラリ5を保持して超音波振動を発生する超音波ホーン6と、キャピラリ5に作用する荷重を検出する荷重センサ7と、ボンディング装置1を統括的に制御する制御部20と、ボンディング対象であるオーバーハングダイ100が積層された基板103を吸着保持するボンディングステージ9と、が設けられている。
【0021】
ボンディングアーム3は、ボンディングヘッド2からボンディングステージ9に向けて延びる略直方体に形成されている。このボンディングアーム3には、ボンディングヘッド2に取り付けられるアーム基端部11と、アーム基端部11の先端側に位置して超音波ホーン6が取り付けられるアーム先端部12と、アーム基端部11とアーム先端部12とを連結して可撓性を有する連結部13とにより構成されている。この連結部13は、ボンディングアーム3の上面(図1において上面)3aから所定厚さのスリット(切り欠き)14aが形成されるとともに、ボンディングアーム3の下面(図1において下面)3bから所定厚さのスリット14bが形成されており、薄板状に形成されている。このように、連結部13においてボンディングアーム3が局部的に薄くなっているため、アーム先端部12はアーム基端部11に対して撓むようになっている。
【0022】
図1及び図2(b)に示すように、ボンディングアーム3の下面3b側には、超音波ホーン6が収容される凹部16が形成されている。そして、超音波ホーン6が、ボンディングアーム3の凹部16に収容された状態で、アーム先端部12に取り付けられている。この超音波ホーン6は、凹部16から突出した先端部においてキャピラリ5を保持しており、凹部16に収容された不図示の基板部に超音波振動を発生する超音波振動子17が取り付けられている。なお、超音波振動子17には、例えば、ピエゾ振動子が用いられる。
【0023】
一方、図1及び図2(a)に示すように、上面3a側のスリット14aは、上部が幅広に形成されている。そして、この幅広に形成されたスリット14aの上部に、アーム基端部11とアーム先端部12との間に挟みこまれるように、荷重センサ7が嵌め込まれて(配置されて)いる。すなわち、荷重センサ7は、超音波ホーン6の長手方向の中心軸からボンディング対象に対する接離方向にオフセットして、ボンディングアーム3の回転中心とアーム先端部12における超音波ホーン6の取付面(アーム先端部12におけるキャピラリ5側の先端面)との間に取り付けられている。そして、上述したように、キャピラリ5を保持する超音波ホーン6がアーム先端部12に取り付けられているため、撓んだオーバーハングダイ100の反力よりキャピラリ5に荷重が作用すると、アーム基端部11に対してアーム先端部12が撓み、荷重センサ7において荷重を検出することが可能となっている。なお、荷重センサ7には、例えば、ピエゾ荷重センサが用いられる。
【0024】
そして、制御部20は、駆動モータ4、超音波ホーン6、荷重センサ7と接続されており、ボンディングヘッド2、駆動モータ4及び超音波振動子17を駆動制御することで、パッド104にイニシャルボール10をボンディングさせるとともに、パッド104とリード105との間でワイヤループを形成させる。このため、制御部20には、駆動モータ4との間で情報の送受を行うZ軸モータI/F21と、超音波ホーン6との間で情報の送受を行うセンサI/F22と、荷重センサ7との間でデータの送受を行うセンサI/F23と、モニタなどの表示装置であって制御部20の各種制御情報を表示する出力部24と、キーボードなどの入力装置であって作業者からの各種制御情報の入力を受け付ける入力部25と、駆動モータ4、超音波ホーン6、荷重センサ7、及び入力部25で取得した情報に基づいて各種制御を行うCPU26と、メモリ27とが設けられている。このメモリ27には、制御部20において、ボンディング制御部として機能するボンディング制御プログラム271と、荷重変化検出部として機能する荷重変化検出プログラム272とが格納されている。
【0025】
ボンディング制御プログラム271は、オーバーハングダイ100にワイヤボンディングを行うためのプログラムである。すなわち、ボンディング制御プログラム271は、駆動モータ4を駆動制御して所定のボンディング位置までキャピラリ5を下降させて、超音波振動子17を駆動制御してパッド104にイニシャルボール10をボンディングさせ、その後、駆動モータ4を駆動制御してキャピラリを上昇させた後、ボンディングヘッド2を移動させながら駆動モータ4を駆動制御してパッド104とリード105との間にワイヤループを形成させるものである。
【0026】
荷重変化検出プログラム272は、キャピラリ5のZ軸方向の位置とキャピラリ5に作用する荷重の変化とを検出するためのプログラムである。すなわち、荷重変化プログラム272は、キャピラリ5がボンディング位置まで下降する際、所定時間ごとに、荷重センサ7で検出した荷重と、キャピラリ5のZ軸方向の位置(高さ)とを検出し、これらの検出した荷重とキャピラリ5のZ軸位置とを対応付けて蓄積するものである。なお、上述したように、キャピラリ5に作用する荷重が変化すると、荷重変化検出部22が検出する荷重も変化する。
【0027】
そして、CPU26は、メモリ27からボンディング制御プログラム271及び荷重変化検出プログラム272を読み出して、図示しないRAMなどに展開し、このボンディング制御プログラム271及び荷重変化検出プログラム272を実行することで、ボンディング制御及び荷重変化検出を行う。具体的には、荷重変化検出部22に蓄積された荷重とキャピラリ5のZ軸位置とを参照して、キャピラリ5に作用する荷重が変化する荷重変化点を検出し、この荷重変化点におけるキャピラリ5のZ軸位置である荷重変化位置を求める。そして、ボンディング制御部21は、荷重変化位置からボンディング位置を減算することで、イニシャルボール10がパッド104に接触してからキャピラリ5がボンディング位置に到達するまでの移動量Zを算出する。そして、荷重変化検出部22は、パッド104にイニシャルボール10がボンディングされると、パッド104とリード105との間にワイヤループを形成させる前に、キャピラリ5を移動量Zだけ上昇させる。なお、キャピラリ5を移動量Zだけ上昇させた位置が、ワイヤループを形成する始点の基準位置となる。
【0028】
次に、図3〜図6を参照して、ボンディング装置1を用いてオーバーハングダイ100にワイヤをボンディングするボンディング方法について説明する。図3は、ボンディング方法を説明するためのフローチャート、図4は、キャピラリとオーバーハングダイとの関係を示した図である。なお、以下に説明する処理は、制御部20の制御により行われる。
【0029】
図3に示すように、制御部20は、キャピラリ5に作用する荷重を検出しながら、キャピラリ5を下降させる(ステップS1)。ステップS1において、制御部20は、まず、キャピラリ5に挿通されたワイヤの先端を、図示しない放電トーチなどによって球状のイニシャルボール10に形成する(図4(a)参照)。そして、制御部20は、駆動モータ4を駆動制御することで、ボンディングアーム3に所定の荷重を与えて揺動させ、キャピラリ5を下降させる。すると、イニシャルボール10がパッド104に接触する(図4(b)参照)。そして、更に、パッド104がイニシャルボール10に押し付けられ、オーバーハングダイ100が下方に撓む(図4(c)参照)。なお、ボンディングアーム3に与える所定の荷重とは、所定のボンディング位置までオーバーハングダイ100を撓ませながらキャピラリ5を下降させたときに、オーバーハングダイ100からの反力とバランスしてキャピラリ5の下降が停止される荷重である。このため、キャピラリ5がボンディング位置に到達すると、キャピラリ5の下降が停止される。また、制御部20は、キャピラリ5が下降する間中、所定時間ごとに、キャピラリ5のZ軸方向の位置(高さ)を検出するとともに、荷重センサ7で検出した荷重を検出する。そして、制御部20は、キャピラリ5のZ軸位置と荷重センサ7で検出した荷重とを対応付けて蓄積する。
【0030】
次に、制御部20は、キャピラリ5がボンディング位置まで下降したか否かを判定する(ステップS2)。上述したように、キャピラリ5がボンディング位置まで下降すると、キャピラリ5の下降が停止されるため、制御部20は、キャピラリ5の下降が停止するとキャピラリ5がボンディング位置まで下降したと判定し、キャピラリ5の下降が継続されているとキャピラリ5がボンディング位置まで下降していないと判定する。
【0031】
そして、ステップS2において、キャピラリ5がボンディング位置まで下降したと判定すると(ステップS2:YES)、制御部20は、オーバーハングダイ100のパッド104にイニシャルボール10をボンディングする(ステップS3)。すなわち、制御部20は、超音波振動子17を駆動制御して超音波振動を発生させることで、キャピラリ5を介してイニシャルボール10に超音波振動を与える。すると、イニシャルボール10とパッド104とは所定圧力で押し付けあっているため、イニシャルボール10とパッド104との間に摩擦力が発生し、パッド104にイニシャルボール10が接合(ボンディング)される(図4(d)参照)。
【0032】
次に、制御部20は、ステップS1において蓄積したキャピラリ5のZ軸位置と荷重センサ7で検出した荷重とを参照して、荷重変化位置からボンディング位置に至るキャピラリ5の移動量Zを算出する(ステップS4)。
【0033】
ここで、図5を参照して、移動量Zの算出について詳しく説明する。図5は、キャピラリのZ軸方位置と荷重センサで検出した荷重との関係を模式的に示した図である。なお、図4の(a)〜(e)は、図5に示した(a)〜(e)点におけるキャピラリ5とオーバーハングダイ100との関係を示している。図5に示すように、キャピラリ5が下降して(a)点から(b)点に至ると、イニシャルボール10がパッド104に接触するため、(b)点から荷重センサ7で検出する荷重が増加し始める。そして、キャピラリ5が(c)点に至ってボンディング位置に到着すると、キャピラリ5の移動が停止され、荷重センサ7において検出する荷重の増加も停止する。このため、キャピラリ5が荷重変化位置に位置するときに、イニシャルボール10がパッド104に接触する。
【0034】
そこで、ステップS4では、まず、ステップS1において蓄積されたキャピラリ5に作用する荷重とキャピラリ5の位置とを参照して、荷重変化点を検出し、この荷重変化点におけるキャピラリ5の荷重変化位置を求める。そして、荷重変化位置からボンディング位置を減算することで、荷重変化位置からボンディング位置に至るキャピラリ5の移動量Zキャピラリ5の移動量Zを算出する。
【0035】
図6は、荷重センサで検出した荷重及びオーバーハングダイに作用する荷重の実測値を示した図であり、(a)は、荷重センサで検出した荷重、(b)は、オーバーハングダイに作用する荷重を示している。図6(b)に示すように、オーバーハングダイ100に作用する荷重は、滑らかな曲線又は直線を描くように変動するが、図6(a)に示すように、荷重センサ7で検出する荷重は、小刻みに振動しながら変動している。すなわち、駆動モータ4の駆動によりボンディングアーム3を揺動させてキャピラリ5を下降させると、超音波ホーン6の固有振動などによって、アーム先端部12が振動する。そして、キャピラリ5が下降してイニシャルボール10がパッド104に接触するまでの間は、アーム先端部12の振動が十分に抑制されないため、荷重センサ7で検出する荷重が増加と減少とを繰り返す。なお、図6(a)において、キャピラリ5がボンディング位置にあるときの荷重変動は、超音波振動子17による超音波振動の発生により生じた荷重変動である。
【0036】
そこで、ステップS4では、ボンディング位置から最も近傍の荷重変化点におけるキャピラリ5の荷重変化位置からボンディング位置を減算することで、移動量Zを算出する。
【0037】
次に、制御部20は、ステップS3において算出した移動量Z分、キャピラリ5を上昇させる(ステップS5)。すなわち、ステップS5では、駆動モータ4に加えている荷重を開放し、キャピラリ5を移動量Z分上昇させる。これにより、キャピラリ5は、オーバーハングダイ100を押し下げる前の位置に戻る(図4(e)参照)。
【0038】
その後、制御部20は、ステップS5において上昇されたキャピラリ5の位置を、ワイヤループを形成する始点の基準位置とし、駆動モータ4及びボンディングヘッド2の駆動制御によりキャピラリ5を所定の軌跡により移動させて、パッド104とリード105との間にワイヤループを形成させる(ステップS6)。
【0039】
このように、本実施形態では、キャピラリ5をボンディング位置まで移動させる際に、キャピラリ5のZ軸位置とキャピラリ5に作用する荷重とを検出して蓄積しておく。そして、キャピラリがオーバーハングダイに接触するとキャピラリに作用する荷重が変化することから、蓄積したキャピラリ5のZ軸位置とキャピラリ5に作用する荷重とに基づいて、荷重変化点におけるキャピラリ5の荷重変化位置からボンディング位置を減算することで、オーバーハングダイ100に接触してからボンディング位置に到達するまでのキャピラリ5の移動量Zを算出する。そして、パッド104にイニシャルボール10をボンディングした後、この移動量Z分、キャピラリ5を上昇させた後、ワイヤループを形成することで、ワイヤループの始点となる基準位置を均一にすることができる。このため、キャピラリ5がオーバーハングダイ100に接触した際にキャピラリ5の下降を停止させる必要がなくなり、高速で均一なループを形成させることができる。
【0040】
そして、キャピラリ5がオーバーハングダイ100に接触するまでは、アーム先端部12、超音波ホーン6及びキャピラリ5の振動などによってもキャピラリ5に作用する荷重が変化するため、この荷重の変化が、キャピラリ5がオーバーハングダイ100に接触したことによるものか、アーム先端部12の振動などによるものかを判別することが困難となる。そこで、ボンディング位置の最も近傍における荷重変化点を、移動量Zを算出するための荷重変化点とすることで、キャピラリ5がオーバーハングダイ100に接触する前に生じるアーム先端部12の振動などの影響を排除することができ、より高精度に移動量Zを算出することができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、ボンディングアーム3のアーム基端部11とアーム先端部12とが、可撓性を有する連結部13により連結されているため、キャピラリ5に荷重が作用するとアーム基端部11に対してアーム先端部12が撓む。そして、アーム基端部11とアーム先端部12との間に荷重センサ7が配置されているため、アーム基端部11に対するアーム先端部12の撓みにより、キャピラリ5に作用する荷重を適切に検出することができる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ステップS3においてボンディングを行った後、ステップS4において移動量Zを算出するものとして説明したが、ステップS3とステップS4とを入れ替えてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、荷重センサ7をボンディングヘッド2の上面3a側のスリット14aに設けるものとして説明したが、ボンディングヘッド2の下面3b側のスリット14bに設けるものとしてもよい。この場合、荷重センサ7が検出する荷重は、上記実施形態において検出する荷重と正負が逆になる。
【0044】
また、上記実施形態では、イニシャルボール10をパッド104にボンディングした後、駆動モータ4に加えている荷重を開放することで、キャピラリ5を上昇させるものとして説明したが、例えば、駆動モータ4に、正負が逆の荷重を加えることで、キャピラリ5を上昇させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施形態に係るボンディング装置を示した図である。
【図2】ボンディング装置におけるボンディングアームの一部拡大図であり、(a)は、ボンディングアームの上面図、(b)は、ボンディングアームの底面図である。
【図3】ボンディング方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】キャピラリとオーバーハングダイとの関係を示した図である。
【図5】キャピラリのZ軸方位置と荷重センサで検出した荷重との関係を模式的に示した図である。
【図6】荷重センサで検出した荷重及びオーバーハングダイに作用する荷重の実測値を示した図であり、(a)は、荷重センサで検出した荷重、(b)は、オーバーハングダイに作用する荷重である。
【符号の説明】
【0046】
1…ボンディング装置、2…ボンディングヘッド、3…ボンディングアーム、3a…上面、3b…下面、4…駆動モータ、5…キャピラリ、6…超音波ホーン、7…荷重センサ、9…ボンディングステージ、10…イニシャルボール、11…アーム基端部、12…アーム先端部、13…連結部、14a…スリット、14b…スリット、16…凹部、17…超音波振動子、20…制御部、21…ボンディング制御部、22…荷重変化検出部、100…オーバーハングダイ、101…下層ダイ、102…スペーサ、103…基板、104…パッド、105…リード、Z…移動量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャピラリに挿通されたワイヤをオーバーハングダイの自由端に形成されたパッドにボンディングするボンディング方法であって、
所定のボンディング位置まで前記キャピラリを移動させる第1移動ステップと、
前記キャピラリを移動させる際に、前記キャピラリの位置と前記キャピラリに作用する荷重とを対応付けて検出する荷重検出ステップと、
ボンディング位置において前記パッドにワイヤをボンディングさせるボンディングステップと、
前記キャピラリに作用する荷重が変化した荷重変化点を検出し、前記荷重変化点における前記キャピラリの位置と前記ボンディング位置との差分を演算して前記キャピラリの移動量を算出する移動量演算ステップと、
前記パッドにワイヤをボンディングした後、前記移動量分、前記キャピラリを後退させる第2移動ステップと、
前記第2移動ステップの後、前記キャピラリを所定の軌跡により移動させてワイヤループを形成させるループ形成ステップと、
を有することを特徴とするボンディング方法。
【請求項2】
前記荷重変化点は、前記ボンディング位置の最も近傍において前記キャピラリに作用する荷重が変化した点であることを特徴とする請求項1に記載のボンディング方法。
【請求項3】
キャピラリに挿通されたワイヤをオーバーハングダイの自由端に形成されたパッドにボンディングするボンディング装置であって、
所定のボンディング位置まで前記キャピラリを移動させて前記パッドにワイヤをボンディングさせ、前記キャピラリを所定の軌跡により移動させてワイヤループを形成させるボンディング制御手段と、
前記キャピラリを移動させる際に、前記キャピラリの位置と前記キャピラリに作用する荷重とを対応付けて検出する荷重検出手段と、を有し、
前記ボンディング制御手段は、前記荷重検出手段で検出した前記キャピラリの位置と前記キャピラリに作用する荷重とに基づいて、前記キャピラリに作用する荷重が変化した荷重変化点を検出し、前記荷重変化点における前記キャピラリの位置と前記ボンディング位置との差分を演算して前記キャピラリの移動量を演算し、前記移動量分、前記キャピラリを後退させた後、前記キャピラリを所定の軌跡により移動させてワイヤループを形成させることを特徴とするボンディング装置。
【請求項4】
揺動可能に取り付けられて前記キャピラリを保持するボンディングアームを更に有し、
前記ボンディングアームは、前記ボンディングアームを揺動する駆動部が取り付けられたアーム基端部と、前記アーム基端部の先端側に位置して前記キャピラリを保持するアーム先端部と、前記アーム基端部と前記アーム先端部とを連結して可撓性を有する連結部と、を備え、
前記荷重検出手段は、前記アーム先端部と前記アーム基端部との間に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のボンディング装置。
【請求項5】
オーバーハングダイの自由端に形成されたパッドにボンディングして半導体装置を製造する製造方法であって、
ワイヤが挿通されたキャピラリと、
揺動可能に取り付けられたアーム基端部と、前記アーム基端部の先端側に位置して前記キャピラリを保持するアーム先端部と、前記アーム基端部と前記アーム先端部とを連結して可撓性を有する連結部とを有するボンディングアームと、
前記キャピラリを保持するとともに前記アーム先端部に取り付けられて超音波を発生する超音波ホーンと、
前記超音波ホーンの長手方向の中心軸からボンディング対象に対する接離方向にオフセットして、前記ボンディングアームの回転中心と前記アーム先端部との間に取り付けられる荷重検出手段と、を備える半導体装置を用意し、
所定のボンディング位置まで前記キャピラリを移動させる第1移動ステップと、
前記キャピラリを移動させる際に、前記荷重検出手段により前記キャピラリの位置と前記キャピラリに作用する荷重とを対応付けて検出する荷重検出ステップと、
ボンディング位置において前記パッドにワイヤをボンディングさせるボンディングステップと、
前記キャピラリに作用する荷重が変化した荷重変化点を検出し、前記加重変換点における前記キャピラリの位置と前記ボンディング位置との差分を演算して前記キャピラリの移動量を算出する移動量演算ステップと、
前記パッドにワイヤをボンディングした後、前記移動量分、前記キャピラリを後退させる第2移動ステップと、
前記第2移動ステップの後、前記キャピラリを所定の軌跡により移動させてワイヤループを形成させるループ形成ステップと、
を有することを特徴とする製造方法。
【請求項6】
前記荷重変化点は、前記ボンディング位置の最も近傍において前記キャピラリに作用する荷重が変化した点であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−67780(P2010−67780A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232444(P2008−232444)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【特許番号】特許第4425319号(P4425319)
【特許公報発行日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000146722)株式会社新川 (128)
【Fターム(参考)】