説明

ボンディング方法及びボンディング装置

【課題】テープキャリヤのリードと半導体チップ上の電極とのシングルポイントボンディングで、ヒータプレートが傾いていても安定してボンディングができること。
【解決手段】ボンディングツールの原点における先端部とヒータプレート表面との距離を測定して算出したヒータプレートの傾きと、ヒータプレート上に半導体チップを搭載してボンディングツールの先端部と半導体チップ上の電極との距離及び測定位置とから、半導体チップの各電極の位置に応じて前記半導体チップの各電極と前記ボンディングツールの原点までの高さであるツール高さを算出し、算出したツール高さのデータに基づいてサーチレベルを半導体チップのパッド表面から一定の距離となるようにボンディングツールを制御するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの組立工程において、テープ状のフイルム(テープキャリヤ)に形成されたリードと半導体チップ上の電極(パッド)とを接続するシングルポイント方式のボンディングに関し、特に半導体チップを搭載するヒータプレートの傾きの影響を受けることなしに、安定したボンディングが可能なボンディング方法及びボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テープキャリヤに形成されたリードと半導体チップ(ICチップともいう)上のパッドとを接続するシングルポイント方式のボンディングでは、ツール高さ、サーチ高さ、サーチレベル、サーチスピード等によりボンディングツールが制御されている。ツール高さは、ボンディングツールの原点からボンディング対象物のボンド面までの高さであり、サーチ高さは、サーチレベルからボンディング面であるパッドまでの高さであり、サーチレベルからパッドまではボンディングツールがサーチスピードで動作する領域である。サーチスピードは、サーチレベル(サーチ高さ)以下でのボンディングツールの下降速度である。サーチレベルは、ボンディングツールの下降速度が高速域から低速域に変わるときのボンディングツールの高さである。なお、サーチレベルは、ツール高さとサーチ高さにより規定されており、ツール高さからサーチ高さを差し引いた値に相当するものである。
【0003】
従来のボンディング方法又はボンディング装置におけるツール高さは、以下に示す1)又は2)のようにボンディングにおける基準値として用いられている。
1)全てのパッドに対して前もって設定した同一のツール高さ(基準ツール高さ)でボンディングを行う。
2)最初のパッドは基準ツール高さでボンディングし、以後のパッドは、1つ前のボンディングでのリードを介してパッドにタッチしたツール高さを用いて次のボンディングを行い、ツール高さを順次更新しながらボンディングを行う。
【0004】
また、シングルポイントボンディングにおいてボンディング中のツール高さの変化を検知して、ステージと半導体チップの裏面に介在する異物等による不良発生を防止するボンディング装置が特許文献1に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−332387公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シングルポイント方式のボンディングでは、ヒータプレート(ヒートプレートともいう。)上に半導体チップを搭載して、テープキャリヤに形成されているリードと半導体チップのパッドとのボンディングが行われるが、ヒータプレートの平面が傾いていた場合には、半導体チップも傾いて搭載される。
【0007】
全てのパッドに対して前もって設定した同一のツール高さ(基準ツール高さ)を用いたボンディングでは、ヒータプレート上の半導体チップが傾いていたときには、サーチレベルから半導体チップのパッドまでの距離が変化し、ボンディングツールの下降速度を十分な低速度に切り替えるよりも早くボンディングツールがパッドに衝突する危険がある。このため、サーチレベルを十分な高さに設定しておく必要がある。さらに、半導体チップの傾きによりサーチレベルからのサーチ動作領域における低速度での移動時間にバラツキが発生し、ボンディング時間が一定にならないため、安定したボンディングが行えない。
【0008】
また、最初のパッドは基準ツール高さでボンディングし、以後のパッドでは、1つ前のボンディングでのリードを介してパッドにタッチしたツール高さを用いるようにして、ツール高さを順次更新しながら行うボンディングでは、パッドと次のパッドが近傍にあってパッドを順番にボンディングする場合には、1つ前のパッドでのツール高さからサーチレベルを変更することにより半導体チップの傾きに対して補正効果はあるが、パッドから次のパッドまでが離れている場合には、半導体チップの傾きによってツール高さが大きく異なり、1つ前のツール高さでは半導体チップの傾きに対して補正効果が得られないことがある。また、パッドのボンディングの順序も制限される。
【0009】
このため、半導体チップが傾斜しているような場合には、ツール高さが急激に変化していることがあり、サーチレベルからのボンディングツールの下降速度を十分な低速度に切り替えるよりも早くボンディングツールがリードを介してパッドに衝突する危険がある。 従って、ボンディングツールがボンディング面に衝突することがないようにサーチレベルを十分な高さに設定して、高速から低速に早めに切り替えてボンディングを行うようになされているものの、この場合には高速化が図れないという問題がある。なお、サーチレベルは、ボンディング面であるパッドに近いほどボンディングツールの低速での移動時間が短いためボンディングの高速化が可能となる。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点に着目して成されたものであり、ヒータプレートの表面の傾きにより被ボンディング部品である半導体チップのボンディング面の高さが異なる場合であってもボンディングツールの高さを自動的に補正して、サーチレベルを半導体チップのパッド表面から一定の距離となるようにボンディングツールを制御することにより安定したボンディングが可能であり、かつ高速ボンディングを図ることができるボンディング方法及びボンディング装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目標達成のため、本発明のボンディング方法は、ボンディングデバイスを加熱するヒータプレート上にボンディングデバイスとしての半導体チップを直接搭載して、テープキャリヤのリードと前記半導体チップ上の電極とをボンディングするボンディング方法において、ボンディングツールを下降させてボンディングツールの原点における先端部と前記ヒータプレート表面との距離を測定し、測定した距離から前記ヒータプレートの平面の傾きを求める第1の工程と、前記ヒータプレート上に半導体チップを搭載した状態で、測定位置でのボンディングツールの先端部と半導体チップ上の電極との距離を測定する第2の工程とを有し、前記第1の工程で求めたヒータプレートの傾きと前記第2の工程で求めたボンディングツールの先端部と半導体チップ上の電極との距離及び測定位置から、半導体チップの各電極の位置に応じて前記半導体チップの各電極と前記ボンディングツールの原点までの高さであるツール高さを算出し、算出したツール高さのデータに基づいてボンディング時に前記ボンディングツールを制御するようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記ツール高さに基づいてボンディング時の前記ボンディングツールの下降速度を高速から低速に切り換えるサーチレベルを、サーチレベルから半導体チップのパッド表面までの距離が一定となるように設定して、前記ボンディングツールを制御するようにしたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、ボンディング時に前記テープキャリヤ上に一体に形成されたリードを前記ボンディングツールで個別に切断する工程を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明のボンディング方法は、シングルポイント方式のボンディングであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記第1の工程で求めたヒータプレートの平面の傾きが規定値を超えている場合には、警報を発することを特徴とする。
【0016】
また、本発明のボンディング装置は、ボンディングデバイスを加熱するヒータプレート上にボンディングデバイスとしての半導体チップを直接搭載して、テープキャリヤのリードと前記半導体チップ上の電極とをボンディングするボンディング装置において、ボンディングツールを下降させてボンディングツールの原点における先端部と前記ヒータプレート表面との距離を測定し、測定した距離から前記ヒータプレートの平面の傾きを求める第1の工程と、前記ヒータプレート上に半導体チップを搭載した状態で、測定位置でのボンディングツールの先端部と半導体チップ上の電極との距離を測定する第2の工程とを有し、前記第1の工程で求めたヒータプレートの傾きと前記第2の工程で求めたボンディングツールの先端部と半導体チップ上の電極との距離及び測定位置から、半導体チップの各電極の位置に応じて前記半導体チップの各電極と前記ボンディングツールの原点までの高さであるツール高さを算出し、算出したツール高さのデータに基づいてボンディング時に前記ボンディングツールを制御するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
ヒータプレートの平面の傾きを算出して半導体チップのボンディング位置におけるツール高さのデータを補正してサーチレベルが半導体チップのパッド表面から一定の距離となるようにボンディングツールを制御することにより、高速移動領域からサーチ動作領域のボンディングツールの軌跡及び動作スピードを均一にコントロールすることができ、パッドへのダメージが軽減され、均一なボンディングが可能となる。
【0018】
また、ヒータプレートの傾きを補正することによりヒータ部とヒータプレートの組立調整におけるばらつき、ヒータプレートの熱変形等によるボンディングへの悪影響を排除することができる。
【0019】
また、ヒータプレートの傾きを量的に捉えることができるため、ヒータプレートの調整、交換後の確認作業が短時間で行うことができ、良否の結果を直ちに得ることができる。
【0020】
また、ヒータプレートの平面の傾きが規定値を超えている場合には、警報等を発することにより、ヒータプレートの傾きによるボンディングへの悪影響を排除することができる。
【0021】
更に、ヒータプレートの傾きを補正することにより、サーチレベルがボンディング面に対して一定となるため、ボンディングの順序を自由に選択することができる。
【0022】
また、ヒータプレートの平面が傾いている場合でもサーチレベルからボンディング面までのボンディングツールの移動距離を最小にすることができるため、ボンディングスピードが速くなり、ボンディング工程でのスループットの向上が可能となる。
【0023】
また、テープキャリヤ上に一体に形成されたリードをボンディングツールで個別に切断する工程においても、ヒータプレートの平面の傾きに影響されることなしに、安定したボンディングを行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下図面を参照して、本発明によるボンディング方法及びボンディング装置の実施形態について詳述する。なお、本発明は、テープキャリヤに形成されたリードと半導体チップ上のパッドとを接続するシングルポイント方式のボンディングに関し、前もってヒータプレートの平面の傾きを算出して、ボンディング時に半導体チップのボンディング位置におけるツール高さのデータをヒータプレートの平面の傾きデータを用いて補正してサーチレベルが半導体チップのパッド表面から一定の距離となるようにボンディングツールを制御することにより、高速移動領域からサーチ動作領域のボンディングツールの軌跡及び動作スピードを均一にコントロールすることができ、パッドへのダメージが軽減され、また、高速で均一なボンディングが可能となるようにしたものである。
【0025】
図1は、ボンディング装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、ボンディング装置1は、光学レンズ5aを取り付けた撮像手段としてのカメラ5と、カメラ5からの映像信号を表示するモニタ17と、ボンディングツール2aが先端に装着されたボンディングアーム2と、ボンディングアーム2を上下に駆動するリニアモータを有するボンディングヘッド3と、ボンディングアーム2及びボンディングヘッド3からなるボンディング手段及び撮像手段を搭載してX方向及びY方向に二次元的に移動させて位置決めする位置決め手段としてのXYテーブル4と、半導体チップ20を搭載しボンディングツール2a、ボンディングアーム2及びボンディングヘッド3によるボンディング作業が行なわれるヒータプレート8と、ボンディング装置1全体の制御を行うマイクロプロセッサを含む制御装置12と、この制御装置12からの指令信号に応じて前記ボンディングヘッド3及びXYテーブル4への駆動信号を発する駆動装置11とを備えている。なお、ヒータプレート8はヒータ部9により加熱され、ヒータプレート8のサイズ、形状は、ボンディングする半導体チップ20のサイズ、搭載する半導体チップ20の個数に決定される。
【0026】
また、ボンディング装置1は、XYテーブル4を手動にて移動させることが可能なマニピュレータ15と数値入力キー、操作スイッチを備える操作パネル16を有している。
【0027】
ボンディングアーム2を上下に駆動するボンディングヘッド3には、ボンディングアーム2の位置を検出する位置検出センサ10を備えており、位置検出センサ10は、ボンディングアーム2の原点からのボンディングアーム2先端に装着されたボンディングツール2aの位置を制御装置12に出力するようになっている。また、このボンディング装置1は、ボンディングツール2aに超音波振動を印加できるように構成されている。
【0028】
図1から明らかなように、カメラ5の光学レンズ5aの位置とXYテーブル4に搭載されたボンディングヘッド3のボンディングアーム2先端に装着されたボンディングツール2aの位置とは異なっており、光学レンズ5aの位置とボンディングツール2aの位置との距離(ずれ量)をオフセットデータとして設定しておく。カメラ5で撮像した画像をモニタに表示し、マニピュレータ15でモニタの表示画面の中心に表示されている十字マークの交点に所定の位置を目合わせし、目合わせした位置でのXYテーブル4のX軸及びY軸の位置を制御装置12が目合わせ位置の座標とし記憶することができるようになっている。また、XYテーブル4がオフセットデータ分移動することにより、ボンディングツール2aがカメラ5で目合わせした位置の上方に位置するようになっている。
【0029】
図1に示すボンディング装置1は、テープキャリヤ22に形成されたリード22aと半導体チップ20の対応するパッドとを重ね合わせて、ボンディングツール2aで端子を1本ずつ接合するシングルポイントボンディング方式に用いるものである。
【0030】
シングルポイントボンディングは、半導体チップ20のサイズとほぼ同じ大きさのヒータプレート8上に半導体チップ20を直接搭載し、テープキャリヤ22のリード22aが半導体チップ20の所定のパッド上に位置するように設定し、半導体チップ20を加熱しつつ、パッド直上に位置するリード22aをボンディングツール2aで押圧してパッドとリード22aを接触させてボンディングツール2aの超音波振動及び荷重を印加して接合を行うものである。なお、ボンディングエリア内で複数の半導体チップ20をボンディングするときには、複数の半導体チップ20を搭載できるヒータプレート8を設けるようにする。
【0031】
次に、ボンディング時に使用するボンディングパラメータについて、図2及び図3を参照して説明する。図2は、ヒータプレート8上に半導体チップ20を搭載した状態でのツール高さ、サーチレベルを示す図である。図3は、ボンディング時のボンディングアーム2の下降時の速度波形及びボンディングツール2aの軌跡を示す図である。
【0032】
まずボンディングツール2aの高さ位置の測定基準となるボンディングアーム2の原点の位置は、位置検出センサ10に内蔵した光センサ等の原点センサ信号により検出するようにする。なお、光センサによる原点検出では光センサの取り付け位置を変更できるようにして、ボンディングアーム2の原点の位置を調節可能にすることが望ましい。
【0033】
ボンディング時にボンディングツール2aを制御する条件としては、ツール高さ、サーチ高さ、サーチレベル、サーチスピード等などがある。図2に示すように、ツール高さとは、ボンディングアーム2の先端に装着されているボンディングツール2aの原点位置(図2の0)からボンディング点である半導体チップ20上のパッドの表面までの距離(図2のLa)をいう。ボンディングツール2aの原点位置は、ボンディングアーム2の原点位置に対応して決まる。
【0034】
このツール高さは、前述したボンディングアーム2の原点位置からボンディングアーム2を低速で降下させボンディングツール2aの先端がボンディング表面、すなわち半導体チップ20のパッドに当接するまでの距離である。この距離を位置検出センサ10により計測し、ツール高さのデータとして設定する。
【0035】
サーチ高さdとは、半導体チップ20面までボンディングツール2aを低速(一定速)でコントロールしたい領域をいう。サーチ高さdの値は、ボンディングを行う半導体チップ20上のパッドの高さの変化を十分吸収できる値とするようにする。これは経験則上の最適な値を操作パネル16の数値入力キーによって入力すればよい。また、ボンディング装置1内の制御回路12のメモリに前もって初期値を記憶しておき、これを使用することも可能である。また、図2に示すように、サーチレベルSとは、ボンディングアーム2の下降速度が高速から低速に変わる時のボンディングツール2aの高さであり、ボンディングツール2aの原点位置(図2のO)からの距離(図2のLb)に相当する。サーチレベルSは、ツール高さLa−dから求めることができる。
【0036】
図3(a)は、ボンディング時のボンディングアーム2の下降時の速度波形を示し、図3(b)はボンディングツール2aの軌跡を夫々示す。図3(a)及び図3(b)に示すように、ボンディングアーム2は高速で降下し、サーチレベルSの手前より減速しサーチレベルSよりサーチスピード(図3(a)のVs)で降下してボンディングツール2aの先端がパッド直上に位置するリード22aを介してパッドに当接する。
【0037】
また、サーチスピードVsとは、サーチレベル以下、すなわちボンディングアーム2の下降速度が高速から低速に変わる時のボンディングツール2aの高さ以下でのボンディングツール2aの下降速度をいう。このサーチスピードVsにより、ボンディングツール2aのリード22aを介してパッドへの当接時の衝撃によるパッドへのダメージ、ボンディングツール2aの当接時のバウンドを小さくすることができる。
【0038】
従って、従来は、ヒータプレート8の平面が傾いていた場合には、半導体チップ20も傾いてヒータプレート8上に位置するため、パッドの位置によりサーチレベルからパッドまでの距離が変化するため、サーチレベルSは、半導体チップ20のパッドの位置における高さのばらつき等を十分考慮して設定する必要があった。
【0039】
そこで、本発明は、前もってヒータプレートの平面の傾きを算出して、ボンディング時に、算出したヒータプレートの平面の傾きのデータでツール高さを補正してサーチレベルが半導体チップのパッド表面から一定の距離となるようにボンディングツールを制御するようにして、ヒータプレートの傾きに影響を受けないようにしたものである。
【0040】
次に、ボンディングヘッド3及びXYテーブル4を用いてヒータプレート8の平面の傾きの測定及び測定結果からのヒータプレート8の傾き(角度)の算出方法について図4及び図5を用いて説明する。なお、ヒータプレート8の半導体チップ20を搭載する面は、平面であるものとする。 図4は、ヒータプレートの平面の傾きの測定及び測定結果からのヒータプレート8の傾きの算出する手順を示すフローチャートであり、図5は、ヒータプレート8の計測点となる3点のX、Y、Z座標上の位置座標を示す図である。
【0041】
最初に、ヒータプレート8上に半導体チップ20を搭載しない状態で、ヒータプレート8表面の測定する個所を決定する。測定個所は、ヒータプレート8表面の中心から離れた3個所とする。なお、測定精度を確保するためにヒータプレート8上の四隅のいずれかを指定するのが望ましいが、これ以外の場所でもよい。3個所の測定点は一直線上にならない位置にすることが望ましい。例えば、ヒータプレート8の表面形状が4角形の場合には、4角形のかど付近の3個所を測定点とする。カメラ5からの映像信号をモニタ17を見ながらX方向及びY方向に二次元的に移動して位置決めするXYテーブル4をマニピュレータ15を操作して図5に示すヒータプレート8(図4に示すフローチャートではヒータプレートをHPと記す。)表面の第1の点Aに目合わせを行う。目合わせした第1の点AのXYテーブル4の位置をA′(Xa,Ya)とする。次に、操作パネル16のスイッチを押し、XYテーブル4をオフセットデータ(カメラ5の光学レンズ5aとボンディングツール2aとのずれ量)分移動させて、XYテーブル4の移動が行われる面に対して直交する方向に上下するボンディングアーム2を原点Oから下降させて、ボンディングアーム2の先端部に位置するボンディングツール2aの先端がヒータプレート8表面に接触したときのボンディングアーム2の移動量からヒータプレート8の高さを測定する(ステップS1)。A′(Xa,Ya)の位置でのボンディングアーム2の原点からの移動量をZaとすると、ヒータプレート8の第1の点Aの高さデータをZaとして、XYテーブル4の位置データ(Xa,Ya)及び高さデータZaを制御装置12のメモリに記憶する(ステップS2)。
【0042】
次に、カメラ5からの映像信号をモニタ17を見ながらX方向及びY方向に二次元的に移動して位置決めするXYテーブル4をマニピュレータ15を操作して図5に示すヒータプレート8表面の第2の点Bに目合わせを行う。目合わせした第2の点BのXYテーブル4の位置をB′(Xb,Yb)とする。次に、操作パネル16のスイッチを押し、XYテーブル4をオフセットデータ分移動させて、XYテーブル4の移動が行われる面に対して直交する方向に上下するボンディングアーム2を原点Oから下降させて、ボンディングアーム2の先端部に位置するボンディングツール2aの先端がヒータプレート8表面に接触したときのボンディングアーム2の移動量からヒータプレート8の高さを測定する(ステップS3)。B′(Xb,Yb)の位置でのボンディングアーム2の原点からの移動量をZbとすると、ヒータプレート8の第2の点Bの高さデータをZbとして、XYテーブル4の位置データ(Xb,Yb)及び高さデータZbを制御装置12のメモリに記憶する(ステップS4)。
【0043】
次に、カメラ5からの映像信号をモニタ17を見ながらX方向及びY方向に二次元的に移動して位置決めするXYテーブル4をマニピュレータ15を操作して図5に示すヒータプレート8表面の第3の点Cに目合わせを行う。目合わせした第3の点CのXYテーブル4の位置をC′(Xc,Yc)とする。次に、操作パネル16のスイッチを押し、XYテーブル4をオフセットデータ分移動させて、XYテーブル4の移動が行われる面に対して直交する方向に上下するボンディングアーム2を原点Oから下降させて、ボンディングアーム2の先端部に位置するボンディングツール2aの先端がヒータプレート8表面に接触したときのボンディングアーム2の移動量からヒータプレート8の高さを測定する(ステップS5)。C′(Xc,Yc)の位置でのボンディングアーム2の移動量をZcとすると、ヒータプレート8の第3の点Cの高さデータをZcとして、XYテーブル4の位置データ(Xc,Yc)及び高さデータZcを制御装置12のメモリに記憶する(ステップS6)。
【0044】
次に、XY方向の3点、A′(Xa,Ya)、B′(Xb,Yb)、C′(Xc,Yc)における高さデータZa、Zb、ZcからXYテーブル4の成すXY軸平面に対するヒータプレート8の平面の傾きを算出する(ステップS7)。
【0045】
図5に示すように、A、B、Cの3点のX、Y、Z座標上での位置座標はそれぞれ(Xa,Ya,Za)、(Xb,Yb,Zb)、(Xc,Yc,Zc)で示される。
【0046】
ヒータプレート8の表面は平面と見なすことができ、3点(Xa,Ya,Za)、(Xb,Yb,Zb)、(Xc,Yc,Zc)を含む平面から、XY軸平面との角度(傾き)を算出する。
【0047】
算出されたヒータプレート8の傾きをオフセットデータとして制御装置12のメモリに記憶する(ステップS8)。なお、ステップS8で算出されたヒータプレート8の傾きのデータが前もって設定した許容角度(規定値)以上の時には、警報を発するようにしてもよい。これは、ヒータプレート8の傾きが大きい場合には、ボンディングツール2aの先端部とボンディング面との接触が均一とならずに、片当たり状態となり、ボンディングが不安定になることを防止するためである。
【0048】
次に、ヒータプレート8上に半導体チップ20搭載して、ボンディングツール2aの先端部と半導体チップ20のパッドとの距離を測定する。ヒータプレート8上に半導体チップ20を搭載して半導体チップ20上の例えばパッドに目合わせして、ボンディングアーム2の先端部に位置するボンディングツール2aの先端が半導体チップ20のパッド表面に接触したときのボンディングアーム2の原点からの移動量から半導体チップ20表面までの高さZpを測定する。このときの目合わせしたXYテーブル4の測定位置の位置データを(Xp,Yp)とすると、位置データ(Xp,Yp)と測定位置における半導体チップ20表面までの高さZpを制御装置12のメモリに記憶する(ステップS9)。半導体チップ20のボンディングパラメータとしてのツール高さをステップS9で求めたZpとする。なお、リードとボンディングする半導体チップ20のパッドのXY軸上の位置を示す位置データである座標データは前もって登録するようにしておく。
【0049】
また、ツール高さは、半導体チップのパッド表面までの距離を用いているが、テープキャリヤ22のリード22aが形成されているリードの厚さを測定して、キーボード等の入力装置でリードの厚さを制御装置12に入力し、Zpからリードの厚さを差し引いた値をツール高さとして用いてもよい。サーチレベルは、ボンディングアーム2の下降速度が高速から低速に変わり、低速スピードが一定になるまでに必要な移動量をツール高さから差し引いた値を設定するようにする。
【0050】
なお、ボンディングエリア内に複数のヒータプレート8を有する場合には、各ヒータプレート8毎に図4に示すステップS1からステップS9までの測定、演算を行い、ヒータプレート8毎にヒータプレートの傾き、測定位置の位置データ(Xp,Yp)でのパッドまでの距離Zpを記憶するようにする。
【0051】
次に、図4のステップS9で設定したツール高さZpを用いて半導体チップ20のパッドとテープに形成されているリード22aとのボンディングを行うシングルポイントボンディングについて説明する。
【0052】
最初に、制御装置12は、ボンディングする最初のパッドの座標データ及びツール高さZpをメモリから読み出す。次に、図4に示すステップS8でメモリに記憶されているヒータプレート8の傾きに関するオフセットデータを読み出す。パッドの座標データと測定位置の位置データ(Xp,Yp)及びヒータプレート8の傾きに関するオフセットデータからパッドの位置でのZ軸方向の変位量を算出する。算出された変位量をツール高さZpに加算した値を新たなツール高さとする。また、ツール高さの値が変わったときには、サーチレベルから半導体チップのパッド表面までの距離が一定のとなるようにサーチレベルも再設定する。
【0053】
ボンディングは、最初に、XYテーブル4をボンディングツール2aが半導体チップ20のパッドの直上に位置するように移動し、ボンディングツール2aはサーチレベルのデータに基づいて、サーチレベルの位置まで高速で下降する。サーチレベル到達後に低速で下降し、リードとパッドが接触後、ボンディングツール2aの下降を停止し、超音波振動、荷重を印加してリードとパッドの接合を行う。ボンディングツール2aは、超音波振動、荷重を一定時間印加した後、上昇し、またXYテーブルを移動させて次のパッドの位置直上に移動する
そして、次にボンディングするパッドの座標データ及びツール高さZpのデータをメモリから読み出す。次に、図4に示すステップS8でメモリに記憶されているヒータプレート8の傾きに関するオフセットデータを読み出す。パッドの座標データと測定位置の位置データ(Xp,Yp)及びヒータプレート8の傾きに関するオフセットデータからパッドの位置でのZ軸方向の変位量を算出する。算出された変位量をツール高さZpから差し引いた値を新たなツール高さとする。また、ツール高さの値が変わったときには、サーチレベルから半導体チップのパッド表面までの距離が一定のとなるようにサーチレベルを再設定してボンディングを行う。以下同様に、残りのパッドについても上記と同様の処理を行ってボンディングを行う。
【0054】
以上述べたように、ヒータプレートの平面の傾きを算出して、ボンディング時に半導体チップのボンディング位置におけるツール高さのデータを補正することにより、サーチレベルが半導体チップのパッド表面から一定の距離となるようにボンディングツールを制御することが可能となる。
【0055】
また、本発明によればヒータプレートの平面の傾きを算出して半導体チップのボンディング位置におけるツール高さのデータを補正してボンディングツールを制御することにより、高速移動領域からサーチ動作領域のボンディングツールの軌跡及び動作スピードを均一にコントロールすることができ、パッドへのダメージが軽減され、均一なボンディングが可能となる。
【0056】
また、ヒータプレートの傾きを補正することによりヒータ部とヒータプレートの組立調整におけるばらつき、ヒータプレートの熱変形等によるボンディングへの悪影響を排除することができる。
【0057】
また、ヒータプレートの傾きを量的に捉えることができるため、ヒータプレートの調整、交換後の確認作業が短時間で行うことができ、良否の結果を直ちに得ることができる。
【0058】
また、ヒータプレートの平面の傾きが規定値を超えている場合には、警報等を発することにより、ヒータプレートの傾きによるボンディングへの悪影響を排除することができる。
【0059】
更に、ヒータプレートの傾きを補正することにより、サーチレベルがボンディング面に対して一定となるため、ボンディングの順序を自由に選択することができる。
【0060】
また、ヒータプレートの平面が傾いている場合でもボンディングツールのサーチレベルからの移動距離を最小にするようにサーチレベルを設定することができるため、ボンディングスピードが速くなり、ボンディング工程でのスループットの向上が可能となる。
【実施例】
【0061】
以上述べたシングルポイントボンディングは、テープキャリヤに形成されているリードが個別に形成されており、各リートを半導体チップの対応するパッド上に位置するようにしてボンディングを行うものである。次に、本発明をボンディング時にテープキャリヤ上に一体に形成されたリードをボンディングツールで個別に切断しながらリードとパッドをボンディングするシングルポイントボンディングに適用した実施例について図6及び図7を用いて説明する。
【0062】
図6は、ボンディング時にテープキャリヤ上に一体に形成されたリードをボンディングツールで個別に切断しながらリードとパッドをボンディング動作を示した図である。図7(a)は、ヒータプレート8が傾いて従来のように傾きの補正を行わない場合のボンディング状態を、図7(b)は、ヒータプレート8の平面の傾きを算出して半導体チップのボンディング位置におけるツール高さのデータを補正した場合のボンディング状態を示す図である。
【0063】
図6(a)に示すように、ボンディングツール2aは、サーチレベルまで高速で降下し、降下中にテープキャリヤ22のリード22aに接触する。テープキャリヤ22のリード22aは、ボンディングツール2aにより下方に力が加わり、図6(b)に示すように、ボンディングツール2aを中心としてポリミド等からなる樹脂までの距離が短い側のリードが切断される。次に、ボンディングツール2aはサーチレベルに到達後、パッドの直上に位置するように移動し、図6(c)に示すように、パッドとリードが接触後に超音波、荷重を印加してボンディングを行う。
【0064】
しかしながら、ヒータプレート8が傾いて従来のように傾きの補正を行わない場合には、図7(a)に示すように、ボンディングツール2aがリード22aを切断する前にサーチレベルに到達してしまい、リード22a切断ができないことがある。このため、ボンディング不良が発生してしまう恐れがある。
【0065】
これに対して、本発明は、ヒータプレート8の平面の傾きを算出して半導体チップのボンディング位置におけるツール高さのデータを補正してボンディングツールを制御することにより、図7(b)に示すように、破線で示すサーチレベルは半導体チップ20のパッド表面から一定の距離に保てるため、リード切断の不良等が発生することなく安定したボンディングが可能となる。なお、図7(b)に示す原点Oの破線下の三角形はツール高さの補正量を図で示したものである。
【0066】
以上述べたように、本発明は、シングルポイントボンディング時にテープキャリヤ上に一体に形成されたリードをボンディングツールで個別に切断する工程においても、ヒータプレートの平面の傾きに影響されることなしに、安定したボンディングを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】シングルポイントボンディング装置の構成を示すブロック図である。
【図2】ヒータプレート上に半導体チップを搭載した状態でのツール高さ、サーチレベルを示す図である。
【図3】(a)は、ボンディング時のボンディングアームの下降時の速度波形を示し、(b)はボンディングツールの軌跡を夫々示す図である。
【図4】ヒータプレートの平面の傾きの測定及び測定結果からのヒータプレートの傾きの算出する手順を示すフローチャートである。
【図5】ヒータプレートの計測点となる3点のX、Y、Z座標上の位置座標を示す図である。
【図6】ボンディング時にテープキャリヤ上に一体に形成されたリードをボンディングツールで個別に切断しながらリードとパッドをボンディング動作を示した図である。
【図7】(a)は、ヒータプレートが傾いて従来のように傾きの補正を行わない場合のボンディング状態を、(b)は、ヒータプレートの平面の傾きを算出して半導体チップのボンディング位置におけるツール高さのデータを補正した場合のボンディング状態を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 ボンディング装置(シングルポイントボンディング装置)
2 ボンディングアーム
2a ボンディングツール
3 ボンディングヘッド
4 XYテーブル
5 カメラ
5a 光学レンズ
8 ヒータプレート(ヒートプレート)
9 ヒータ部
10 位置検出センサ
11 駆動装置
12 制御装置
15 マニピュレータ
16 操作パネル
17 モニタ
20 半導体チップ(ICチップ)
22 テープキャリヤ
22a リード
22b 樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンディングデバイスを加熱するヒータプレート上にボンディングデバイスとしての半導体チップを直接搭載して、テープキャリヤのリードと前記半導体チップ上の電極とをボンディングするボンディング方法において、
ボンディングツールを下降させてボンディングツールの原点における先端部と前記ヒータプレート表面との距離を測定し、測定した距離から前記ヒータプレートの平面の傾きを求める第1の工程と、
前記ヒータプレート上に半導体チップを搭載した状態で、測定位置でのボンディングツールの先端部と半導体チップ上の電極との距離を測定する第2の工程とを有し、
前記第1の工程で求めたヒータプレートの傾きと前記第2の工程で求めたボンディングツールの先端部と半導体チップ上の電極との距離及び測定位置から、半導体チップの各電極の位置に応じて前記半導体チップの各電極と前記ボンディングツールの原点までの高さであるツール高さを算出し、算出したツール高さのデータに基づいてボンディング時に前記ボンディングツールを制御するようにしたことを特徴とするボンディング方法。
【請求項2】
前記ツール高さに基づいてボンディング時の前記ボンディングツールの下降速度を高速から低速に切り換えるサーチレベルを、サーチレベルから半導体チップのパッド表面までの距離が一定となるように設定して、前記ボンディングツールを制御するようにしたことを特徴とする請求項1記載のボンディング方法。
【請求項3】
ボンディング時に前記テープキャリヤ上に一体に形成されたリードを前記ボンディングツールで個別に切断する工程を有することを特徴とする請求項1記載のボンディング方法。
【請求項4】
前記ボンディング方法は、シングルポイント方式のボンディングであることを特徴とする請求項1記載のボンディング方法。
【請求項5】
前記第1の工程で求めたヒータプレートの平面の傾きが規定値を超えている場合には、警報を発することを特徴とする請求項1記載のボンディング方法。
【請求項6】
ボンディングデバイスを加熱するヒータプレート上にボンディングデバイスとしての半導体チップを直接搭載して、テープキャリヤのリードと前記半導体チップ上の電極とをボンディングするボンディング装置において、
ボンディングツールを下降させてボンディングツールの原点における先端部と前記ヒータプレート表面との距離を測定し、測定した距離から前記ヒータプレートの平面の傾きを求める第1の工程と、
前記ヒータプレート上に半導体チップを搭載した状態で、測定位置でのボンディングツールの先端部と半導体チップ上の電極との距離を測定する第2の工程とを有し、
前記第1の工程で求めたヒータプレートの傾きと前記第2の工程で求めたボンディングツールの先端部と半導体チップ上の電極との距離及び測定位置から、半導体チップの各電極の位置に応じて前記半導体チップの各電極と前記ボンディングツールの原点までの高さであるツール高さを算出し、算出したツール高さのデータに基づいてボンディング時に前記ボンディングツールを制御するようにしたことを特徴とするボンディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−200081(P2009−200081A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36999(P2008−36999)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000124959)株式会社カイジョー (83)
【Fターム(参考)】