説明

ボーリング装置

【課題】ケーシングパイプを地上に引き戻すことなくケーシングメタルの切刃を交換でき、掘削部分の埋め戻しを防止し、掘削効率の向上を図ることができるボーリング装置を提供する。
【解決手段】ケーシングメタル13の上端部にケーシングパイプ24下端のメタル台座25に螺合して固定できるように雄ネジ13aを刻設する。ケーシングメタル13の下端部に、切刃機能を有する複数の方形状チップブロック32同士を嵌合して積層且つ埋設する(以下、積層チップ33という。)。具体的には、ケーシングメタル13の下端に、掘削面(地面)に対して22.5度傾斜して積層チップ挿入孔を穿孔し、積層チップ33を挿入後、真ちゅうロウ着けして固着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木工事などにおいて地質調査用の試料を採取する目的で使用されるボーリング装置に関し、特に採掘孔挿入用ボーリングロッドの外側にケーシングパイプを備え、ケーシングパイプの先端にケーシングメタルを固定したボーリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、削孔用コアチューブを先端に有するボーリングロッドの外側にケーシングパイプを設け、ケーシングパイプにより削孔時の砂礫等の崩壊を防止するようにした回転式ボーリング装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−064763号公報(第2−4頁、第1図)
【特許文献2】特開2005−283359号公報
【0004】
この種のボーリング装置を用いた地質調査では、一般に削孔外径66ミリのボーリングロッドの先端部(コアチューブ)でもって地層を円筒状のコアとして採取する。ところが、砂礫等の崩壊性地層を削孔する場合は、ボーリング孔壁が崩壊し、コアチューブによるコア採取が困難になるという問題があった。このため、例えば、先ずボーリングロッドの先端部により任意の深度まで削孔し、次いで、ケーシングパイプの先端部(ケーシングチューブ)をその位置まで挿入し、引き続きボーリングロッド先端により削孔を行って、順次より深い位置まで挿入するという作業を繰り返していた。このケーシングパイプ挿入時に、崩壊性地層を追い切りしたり削孔する必要があるため、ケーシングパイプの最先端部(最深度)には、切刃機能を有するケーシングメタル、例えば、ケーシングメタルシューやケーシングメタルビットが取り付けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらケーシングメタル(シュー、ビット)には削孔能力に限界があり、掘削の途中でケーシングメタルの切れ味が悪くなることがある。特に、崩壊性地層が厚く分布している場合、切刃として埋め込まれているケーシングメタルのチップ部分の破損や磨耗により、それ以上の削孔及びパイプの挿入が不可能になる。その場合、一旦、ある深度まで挿入したケーシングパイプを地上に引き上げ、新品のケーシングメタルに交換し、再度ケーシングパイプを既削孔に挿入するという作業を繰り返している。したがって、ケーシングパイプを引き上げる手間が係るばかりでなく、ケーシングパイプを引き上げる際に孔壁が崩壊し、掘削孔が埋め戻されてしまうという不具合が生じることもある。
そこで、本発明者は、先に、特開2005−282259号をもって、ケーシングパイプを地上に引き戻すことなくケーシングメタルの切刃部を交換でき、掘削部分の埋め戻しを防止し、掘削効率の向上を図ることができるボーリング装置を提案している。この発明は、ボーリングロッド外側のケーシングパイプ先端にケーシングメタルを設けたボーリング装置において、前記ケーシングメタルが、切刃機能を有する複数の環状チップブロックをジョイント部材で上下多段に連結してなり、かつ前記各チップブロックを複数の縦割子に分解可能にしてなることを特徴としている。
本発明もまた上記従来技術の課題に鑑み、ケーシングパイプを地上に引き上げることなく、ケーシングメタルの交換を可能にし、孔壁の崩壊や掘削部分の埋め戻し等の不具合の発生を防止して掘削効率の向上を図ることができるボーリング装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため、本発明では、ボーリングロッド外側のケーシングパイプ先端に筒状のケーシングメタルを設けたボーリング装置において、前記ケーシングメタルに切刃機能を有する複数のチップブロックを積層且つ埋設してなることを第1の特徴とし、また、一端辺が切刃機能を有し、他端辺に切欠凹部が形成された複数のチップブロック同士を切刃部と切欠凹部を嵌合組み合わせて積層し、且つ埋設されていることを第2の特徴とし、さらに、チップブロックがケーシングメタルの外周縁及び内周縁に交互に外接あるいは内接して配置されていることを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ケーシングメタルの初層のチップブロックの切刃を含んだ先端部分が摩耗し、ケーシングパイプの削孔挿入が困難になった時点で、次層のケーシングメタルの切刃部分が表出し、ケーシングパイプを地上に引き上げることなく、ケーシングメタルの切刃部の交換が可能になる。したがって、そのまま連続して掘削作業を継続できるので、作業効率が向上するばかりでなく、孔壁の崩壊や掘削部分の埋め戻し等を防止できるという優れた効果がある。
【0008】
すなわち、本発明では、ボーリングロッドによる削孔挿入とケーシングパイプによる削孔挿入とを交互に行うボーリング工法において、ケーシングパイプの削孔挿入が困難になったとき、ケーシングパイプを引き上げることなく、ケーシングパイプ先端の切刃部であるケーシングメタルを自動的に新品に入れ替えることができる。ここで、ケーシングメタルには、ケーシングメタルビットとケーシングメタルシューが含まれる。ケーシングメタルビットは、表土や崩壊層をケーシング掘りする際に用いられるもので、先端及び内側と外側にはメタルチップやダイヤモンドが埋め込まれる。また、ケーシングメタルシューは、崩壊層をケーシングチューブを使って追切り、追降する際に用いられるもので、先端と外側にはメタルチップやダイヤモンドが埋め込まれる。
【0009】
本発明は、ケーシングパイプ内にボーリングロッドを上下動可能に収容して構成される。ケーシングパイプは、孔壁の崩壊防止、止水・湧水、ガス噴出などに対するボーリング孔保護、及び掘削用具と孔壁との摩擦によって生ずる磨耗を防止するための孔壁保護用のパイプである。ケーシングパイプの先端にはケーシングメタルを取り付ける。ケーシングメタルには、切刃機能を有する複数のチップブロックを積層且つ埋設されている。そして、初層のケーシングメタルのチップを含む先端部分が摩耗し、ケーシングパイプの削孔挿入が困難になった時点で、次層のケーシングメタルの切刃部であるチップ部分が表出し、ケーシングパイプを地上に引き上げることなく、ケーシングメタルの交換ができる。
【0010】
すなわち、ケーシングメタルに積層且つ埋設された初層の刃先であるチップブロックが磨耗して切削不能になっても、次層のチップブロックの切刃部が新たな刃先として機能し、ケーシングメタルの切れ味が復元し、迅速に連続して掘削作業を再開することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
本実施例は、昇降可能な削孔用ボーリングロッドの外側にケーシングパイプを設け、ケーシングパイプの下端にケーシングメタルが固定されている。
【0012】
図1は本発明に係るケーシングメタルの一実施例を示す(a)は正面図、(b)は底面図、図2は図1の要部拡大正面図、図3は本発明に係るチップブロックを示す斜視図、図4は従来のケーシングメタルを示す(a)は正面図、(b)は底面図、図5はボーリング装置を示す正面図である。
【実施例】
【0013】
図5において、1は、地盤2に設置した固定台で、固定台1の上には回転駆動源である原動機3が据え付けられている。原動機3の出力軸部は伝動部4を介して、オイルタンク5上の変速機・操作部6に駆動連結され、原動機3の速度を変換できるようになっている。変速機・操作部6の出力軸部は、図示しないギアーを介してスイベルヘッド7の回転部に駆動連結されている。
【0014】
10は、スイベルヘッド7の周囲に設置された三脚パイプやぐらで、三脚パイプやぐら10にはスナッチブロック11が吊設されている。スナッチブロック11にはホスティングスイベル12が掛け渡され、ホスティングスイベル12の先端にはスイベルヘッド7の回転部が吊り下げられている。ホスティングスイベル12の基端部は巻上げ装置8に巻回され、巻上げ装置8でホスティングスイベル12を巻上げ巻戻すことにより、ホスティングスイベル12の回転部が昇降動作するようにされている。
【0015】
スイベルヘッド7の回転部上端にはウォータスイベル14が連結され、ウォータスイベル14の上部は、デリバリホース15を介してポンプ16の出口部に連通している。ポンプ16の入口部はサクションホース17を介して、泥水バック19の中に設置したフートバルブ18に連通し、泥水バック19には、掘削孔20内から吸引した泥水が溜まるようにされている。したがって、ポンプ16の運転により、泥水バック19内の泥水を吸引してウォータスイベル14に供給すると、この泥水はスイベルヘッド7を経て掘削孔20に循環注入されるようになっている。
【0016】
22は、スイベルヘッド7の回転部下端に設けられたロッドホルダで、ロッドホルダ22には、ドライブパイプ23の上部が取り付けられ、ドライブパイプ23の下部にはケーシングパイプ24が連結されている。ケーシングパイプ24の下端側メタル台座25には、後述の円筒体形状のケーシングメタル13が設けられている。また、ロッドホルダ22には、ボーリングロッド26の上部が取り付けられ、ボーリングロッド26の下部にはセジメントチューブ27の上部が連結されている。セジメントチューブ27の下部にはセジメントチューブカップリング28を介してコアバーレル29が連結され、コアバーレル29の下端に設けたコア30には、メタルクラウン31が固着されている。
【0017】
次に、図1乃至図3に基づいて本発明に係るケーシングメタル13の構造について詳しく説明する。本実施例に係るケーシングメタル13の上端部は、ケーシングパイプ24下端のメタル台座25に螺合して固定できるように雄ネジ13aが刻設され、ケーシングメタル13の下端には、図1及び図2に示すように、一端辺が切刃機能を有し、他端辺に切欠凹部32bが形成された複数の方形状チップブロック32同士を切刃部32aと切欠凹部32bを嵌合組み合わせて積層し、且つ埋設されている(以下、積層チップ33という。)。具体的には、ケーシングメタル13の下端部周囲に、掘削面(地面)に対してθ=約20度(22.5度)傾斜して複数の積層チップ挿入孔21を穿孔し、積層チップ33を挿入後、真ちゅうロウ着けして固着される。尚、本実施例では、ケーシングメタル13掘削面(地面)に対する傾斜角度をθ=約20度としているが、これに限定されるものではなく、実験によれば、θ=15度程度でも良好な切削効果を得ている。
【0018】
すなわち、この積層チップ33の切歯部32aは、ケーシングメタル13の下端部に、掘削面(地面)に対してθ=22.5度、鉛直方向に対してθ=67.5度傾斜して固着されると共に、ケーシングメタル13の外周縁及び内周縁に交互に外接あるいは内接して配置されている。各積層チップ33は、それぞれケーシングメタル13の周回り方向に中心角度45度間隔で設けられている。すなわち、切刃としての積層チップ33が内向き外向きに交互に埋設固着される。そして、掘削により最下層の切刃チップブロック32を含むケーシングメタル13の先端部分が摩耗した時点で、最下層のチップブロック32が剥離し、次層のチップブロック32の先端部である切刃部32aが表出し、ケーシングパイプ24を地上に引き上げることなくケーシングメタルの切刃部の交換が可能になる。
【0019】
具体的には、図2に示すように、ケーシングメタル13の周縁に積層チップ挿入孔21を傾斜して穿孔するのであるが、本実施例では、その直径D=5mm、短い方の深さD=10mm及び長い方の深さD=14mmの円筒状に穿孔している。また図3に示すように、チップブロック32の大きさは、長辺L1=5mmの立方体の一部を切欠くと共に面取りされ(面取り部32c)、短辺L2=2.5mm、切欠き辺L=2.5mmとしている。この面取り部32cを設けることで、回転方向の掘削抵抗を受け易くなり、チップブロック32の先端部である切刃部32aが磨耗し切削機能が低下した時点ですぐに欠落し、次層のチップブロック32の切刃部32aの表出が円滑に行われる。
【0020】
参考までに、図4に従来のケーシングメタル13を示すが、チップブロック32は直方体状の単体で、傾斜角θ=22.5度(本実施例のメタル挿入孔とは鉛直方向に逆の勾配)で、ケーシングメタル13の下端部に埋設されている。尚、上記実施例では、積層チップ33のチップブロック32を3層としているが、これに限定されるものでなくチップブロック32を2個以上積層するものでもよいことは言うまでもない。
【0021】
このように、掘削孔作業の途中でケーシングメタルビット13の摩耗により切削が不能になった時点で、ケーシングメタルビット13の刃先として最下層のチップブロック32の代わりに次層のチップブロック32が新たに機能する。このため、ケーシングメタルビット13の切れ味が新品同様に鋭く復元される。つまり、最下層のチップブロック32が磨耗した後も切れ味のよいケーシングメタルビット13により新たに掘削孔の作業を継続することができる。この場合、ケーシングパイプ24を引き上げる必要がないので、崩壊性地層であっても掘削孔20に周囲から土壌が埋め戻されるおそれがなく、円滑な掘削孔の作業を効率良く続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るケーシングメタルの一実施例を示す(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図2】図1の要部拡大正面図である。
【図3】本発明に係るチップブロックを示す斜視図である。
【図4】従来のケーシングメタルを示す(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図5】ボーリング装置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 固定台
2 地盤
3 原動機
4 伝動部
5 オイルタンク
6 変速機・操作部
7 スイベルヘッド
8 巻上げ装置
10 三脚パイプやぐら
11 スナッチブロック
12 ホスティングスイベル
13 ケーシングメタル
13a雄ネジ
14 ウォータスイベル
15 デリバリホース
16 ポンプ
17 サクションホース
18 フートバルブ
19 泥水バック
20 掘削孔
21 積層チップ挿入孔
22 ロッドホルダ
23 ドライブパイプ
24 ケーシングパイプ
25 メタル台座
26 ボーリングロッド
27 セジメントチューブ
28 セジメントチューブカップリング
29 コアバーレル
30 コア
31 メタルクラウン
32 チップブロック
32a切刃部
32b切欠き部
32c面取り部
33 積層チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーリングロッド外側のケーシングパイプ先端に筒状のケーシングメタルを設けたボーリング装置において、前記ケーシングメタルに切刃機能を有する複数のチップブロックを積層且つ埋設してなることを特徴とするボーリング装置。
【請求項2】
一端辺が切刃機能を有し、他端辺に切欠凹部が形成された複数のチップブロック同士を切刃部と切欠凹部を嵌合組み合わせて積層し、且つ埋設されていることを特徴とする請求項1記載のボーリング装置。
【請求項3】
チップブロックがケーシングメタルの外周縁及び内周縁に交互に外接あるいは内接して配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のボーリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−97285(P2009−97285A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271721(P2007−271721)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(504125986)
【Fターム(参考)】