説明

ボールバルブ付ストレーナ

【課題】構造を簡略化してコンパクト化を図って面間距離を最小限に抑えつつ異物やゴミを捕捉分離でき、流路を直接開閉して内部の清掃やメンテナンスを簡単にでき、圧力損失を抑えてスクリーンの捕捉分離の効率を高めつつ高温・高圧の流体をろ過できるボールバルブ付ストレーナを提供する。
【解決手段】流入口6と流出口7と分岐口8とで形成したT字形ポート5を有するボデー1の中央位置に入口10と出口11とで形成したL字形ポート9を有するボール弁体2を回動自在に設け、ボール弁体2の出口11にスクリーン13を連通可能に設ける。スクリーン13をカバー体14で着脱自在に包囲し、流路室35とキャビティ室12とをボール弁体2の出口11に対比して流過面積の大きい連通流路37を介して連通させ、キャビティ室12のろ過流体を流出流路27を介して2次側の流出口7に流出させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種配管ラインを流れる水・ガス・空気・蒸気等の流体中の異物やゴミを捕捉分離するためのストレーナに関し、特に、ボールバルブを一体に設けて流路の開閉を可能にしたボールバルブ付ストレーナに関する。
【背景技術】
【0002】
ストレーナは、各種配管ラインの一部に設置され、この配管ラインを流れる流体中の様々な異物やゴミをスクリーンにより捕捉し、これらが配管ラインの2次側のバルブ、ユニット、装置等の流体機器に流れ込むことを防止するために用いられる。ストレーナにおいてスクリーンによる異物やゴミの捕捉機能を維持するためには、内部を定期的に清掃・メンテナンスする必要がある。そのため、通常はストレーナの一次側に閉止弁が設けられており、この一次側閉止弁と、ストレーナの二次側に設けられた閉止弁とにより流路を閉止した状態で清掃等が可能になっている。この閉止弁としては、通常はバタフライバルブ又はボールバルブが用いられる。また、ストレーナの一次側にバタフライバルブが一体に設けられる場合がある。
【0003】
一方、一次側にボールバルブが一体に設けられたストレーナが知られている。例えば、特許文献1には、入口流路と出口流路、これらの流路とT字状に交わる分岐流路とを有するボデー内にボールが装着され、分岐管から繋がる分岐管にフィルターエレメントが装着されたストレーナ付ボールバルブが開示されている。このバルブでは、ボールの球面部にフィルターエレメントを通過した流体を出口流路に導く通孔が形成され、この通孔を介して二次側に濾過後の流体が流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭63−53424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ストレーナと閉止弁とが別体に設けられている場合には、閉止弁がバタフライバルブ又はボールバルブの何れの場合でもこれらを取付けるための面間距離が長くなると同時に、配管ラインの構造も複雑化して配管全体も大型化することになり、配管接続時の作業の手間も余計にかかる。ストレーナ内の清掃・メンテナンス時には、ストレーナと閉止弁との距離が離れていると、閉止弁の位置まで移動してこの閉止弁を開閉操作する必要が生じる。さらに、ストレーナから閉止弁までの管路が長くなると配管スペースが大きく失われると共にその容積も大きくなり、スクリーン着脱用のカバーを外したときにこの容積内に残った大量の流体が流出することになる。
ストレーナとバタフライバルブとが一体に設けられている場合、別体の場合よりも面間距離を小さくすることは可能になる。しかし、この場合にもストレーナの位置をバタフライバルブよりも2次側にずらした構成としなければならないため、面間寸法がその分長くなることになる。さらに、バタフライバルブにおいては、シール部材がゴム材料であるため、ボールバルブの場合と比較して流体の最高使用温度ないし圧力が低くなる。
【0006】
一方、特許文献1におけるバルブでは、フィルターエレメントを通過した流体が球面部に設けた通孔を介して出口流路まで導かれる構造であるため弁体の強度が低下し、強度を確保しようとすると通孔の流過面積を大きく確保することが難しい。そのため、フィルターエレメントの1次側であるボール弁体の出口側流路に対比して2次側のフィルターエレメントからキャビティへの流路の流過面積が大幅に減少することで、圧力損失が大きくなってフィルターエレメントによる捕捉分離の効率が悪くなり、ろ過流量が少なくなる。弁体とシール部材とが断続的な摺動となることから、シール性も低下する。
更に、同文献1のバルブは、本体と一体の分岐流路内にフィルターエレメントが装着され、本体の端部に螺合された蓋体によって分岐流路の下端開口部が閉塞された構造になっている。この場合、掃除等でフィルターエレメントを取出すために蓋体を開放すると、分岐流路内に残っている大量の液体が大気開放側である下方側から全て流出することになる。この清掃の際には、フィルターエレメントの長さだけ下方向に下げてから清掃するため、下方向に広いスペースも必要になる。
【0007】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、構造を簡略化してコンパクト化を図って面間距離を最小限に抑えつつ異物やゴミを捕捉分離でき、流路を直接開閉できることで内部の清掃やメンテナンスを簡単にでき、圧力損失を抑えてスクリーンの捕捉分離の効率を高めつつ高温・高圧の流体をろ過できるボールバルブ付ストレーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、1次側の流入口と2次側の流出口と分岐口とで形成したT字形ポートを有するボデーの中央位置に入口と出口とで形成したL字形ポートを有するボール弁体を回動自在に設け、ボール弁体の出口にスクリーンを連通可能に設け、このスクリーンを容体状のカバー体で着脱自在に包囲すると共に、スクリーンの外周と前記カバー体の内周との間に形成した流路室とボール弁体と前記ボデー内との間に形成したキャビティ室とをボール弁体の出口に対比して流過面積の大きい連通流路を介して連通させ、キャビティ室のろ過流体を流出流路を介して2次側の流出口に流出させたボールバルブ付ストレーナである。
【0009】
請求項2に係る発明は、ボール弁体を少なくとも1次側のボールシートで回動自在に支受けすると共に、ボール弁体の出口に分岐流路を有するボトムステムを固着し、このボトムステムの下部をボデーの分岐口の内部に設けた環状保持部の摺動口にボール弁体の回動に伴って摺動可能に設けてトラニオン型のボールバルブとしたボールバルブ付ストレーナである。
【0010】
請求項3に係る発明は、連通流路は、分岐口内周と環状保持部との間の第1連通口とこの第1連通口とキャビティ室とを連通させる第2連通口より成るボールバルブ付ストレーナである。
【0011】
請求項4に係る発明は、キャビティ室のボデー内周面に流過面積を拡張する拡張流路を形成したボールバルブ付ストレーナである。
【0012】
請求項5に係る発明は、ボデーの流出口側に2次側のボールシートを有するキャップを螺着結合し、このキャップにキャビティ室と2次側の流出口とを連通する流出流路を形成したボールバルブ付ストレーナである。
【0013】
請求項6に係る発明は、分岐口にカバー体の上端開口部をネジ式又はフランジ式の接合手段で着脱自在に設けると共に、スクリーンの下部をカバー体の内周底部に装着し、かつスクリーン上端を環状保持部の下端に形成した装着穴に装着したボールバルブ付ストレーナである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によると、T字形のボデーの中央位置にL字形ポートを有するボール弁体を配設し、このボール弁体の出口にスクリーンを設けた構造としていることにより、全体の構造を簡略化してコンパクト化を図り、面間距離を最小限に抑えて配管ラインの所定面間内に配設して異物やゴミを捕捉分離することが可能になる。直接ボール弁体を回動させて流路を開閉できるため、スクリーン内部の清掃・メンテナンスを簡単に実施できる。流体を流す際には、入口側から出口側までの流過面積を確保して圧力損失を抑え、スクリーンによる捕捉分離の効率を高めることができる。このため、配管に接続されるポンプへの負荷を抑えて、これらのポンプ等の装置の定格を抑えることができる。
ボール弁体により流路を開閉するボールバルブ構造とすることで、バタフライバルブで流路を開閉する場合に比較して高温・高圧の流体を流すことが可能になる。
【0015】
請求項2に係る発明によると、少なくとも1次側のボールシートで支受けし、ボトムステムを環状保持部の摺動口に摺動可能に設けたトラニオン型のボールバルブとしていることで、ボール弁体に1次側圧力が作用してもこのボール弁体が2次側に押されることを防いでボールシートによる1次側のシール性を確保しながら流路を開閉できる。ボール弁体の回動時には摺動口がベアリング機能を発揮することで、この摺動口に対してボール弁体に固着されたボトムステムがスムーズに摺動回転する。このため、漏れを防ぎつつボールバルブの優れた操作性を確保することができる。
【0016】
請求項3に係る発明によると、分岐口内周と環状保持部との間に第1連通口、この第1連通口とキャビティ室との連通部分に第2連通口を設けることにより、第1連通口に続けて第2連通口のボール弁体の外周囲を利用してキャビティ室までの流路を大きく設けて連通流路の流過面積を一定の大きさに確保できる。このため、スクリーンによりろ過された流体が流路室からキャビティ室に流れるときの圧力損失を抑えることができる。
【0017】
請求項4に係る発明によると、拡張流路によりキャビティ室の容積を増やして流過面積を拡張することができる。このため、流体がこのキャビティ室を流れるときの圧力損失を抑えてスクリーンによるろ過効率を最大限に高めることが可能になる。
【0018】
請求項5に係る発明によると、キャップによりボール弁体をボデー内の所定箇所に位置決めしつつ、ボデーと別体からなるキャップに流出流路を設けることでこの流出流路の口径を大きく形成でき、キャビティ室から2次側の流出口にかけて一定の流過面積を確保して圧力損失を抑えることができる。
【0019】
請求項6に係る発明によると、カバー体内に残っている流体を下方側から流出させることを防ぎつつ、このカバー体をボデーに容易に着脱できる。このため、周囲に流体を飛散させることなくカバー体をボデーから取外してスクリーンの清掃・メンテナンス等を実施でき、しかも、カバー体の着脱スペースを最小限に抑えることができるため、狭いスペースへの設置が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のボールバルブ付ストレーナの一実施形態を示す一部切欠き斜視図である。
【図2】本発明のボールバルブ付ストレーナの縦断面図である。
【図3】図2のカバー体を外した状態を示す縦断面図である。
【図4】ボデーの一部切欠き斜視図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】ボデーの縦断面図である。
【図7】図6のB−B断面図である。
【図8】図7のC−C断面図である。
【図9】キャップの拡大斜視図である。
【図10】図9のキャップの正面図である。
【図11】キャップの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明におけるボールバルブ付ストレーナの好ましい実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1においては、本発明におけるボールバルブ付ストレーナの一実施形態を示しており、図2においては、ストレーナ本体の縦断面図を示している。
【0022】
本発明のボールバルブ付ストレーナは、ボデー1内にボール弁体2、スクリーン3が設けられた一体型のストレーナであり、ボール弁体2をステム4で操作して流体内に含まれる有害なゴミや異物等をスクリーン3で捕捉分離し、このスクリーン3を取外すことで清掃やメンテナンスを実施することが可能になっている。
【0023】
図1ないし図8において、ボデー1はT字形ポート5を有し、このT字形ポート5は1次側の流入口6と2次側の流出口7と分岐口8とで形成されている。流入口6と流出口7とには図示しない外部の配管ラインが接続可能になっており、図2に示した流入口6と流出口7との端面同士の間隔Wは、この配管ラインに配設可能な所定長さの面間距離になっている。これらの流出入口5、6はフルボア、スタンダードボア、レデューストボアの何れのボアタイプであってもよく、図示しないがこれらの流出入口5、6には適宜の管用ねじ部等の接合部が形成され、この接合部を介して配管ラインと接続可能になっている。ボデー1の中央位置にはL字形ポート9を有する前記ボール弁体2が回動自在に配設され、L字形ポート9は入口10と出口11で形成されている。このボール弁体2がボデー1内に配設されることにより、ボール弁体2とボデー1との間にキャビティ室12が形成される。ボール弁体2の出口11にはスクリーン3が連通可能に設けられ、このスクリーン3は、容体状のカバー体14で着脱自在に包囲されている。
【0024】
図4、図5、図8に示すように、ボデー1の分岐口8側の内部には環状保持部15が形成されている。この環状保持部15は、接続部28を介してボデー1と一体に設けられ、その外側に後述する第1連通口16、内側に摺動口17が形成されている。接続部28の一部には開口部29が形成され、この開口部29を介してキャビティ室12と後述する連通流路37とが連通する。
【0025】
一方、図1ないし図3に示すように、キャビティ室12の1・2次側には1次側ボールシート18、2次側ボールシート22装着用の環状の装着部19、20がそれぞれ形成され、キャビティ室12においてこの装着部19、20とボデー内周面との間に流路面積を拡張する溝状の拡張流路21が形成されている。図4、図5に示すように、この拡張流路21が装着部19、20よりも拡径側に形成されることで、キャビティ室12内の容積が大きく確保されている。
【0026】
図1において、ボールシート18、22は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂により成形される。ボールシートは、ボデー1内におけるボール弁体2の少なくとも1次側に配設されればよく、この場合、1次側のボールシート18で閉止することになる。この1次側ボールシート18により、ボール弁体2が回動自在に支受けされる。本実施形態においては、前記したように1、2次側の装着部19、20にそれぞれボールシート18、22が装着され、これにより、バルブ操作の開閉の安定化と、ボールシートのボールへの締付力のバランスが確保されている。
【0027】
この場合、2次側においてはボデーの流出口7にキャップ25が螺着結合され、このキャップ25に前記した2次側の装着部20が形成されている。2次側のボールシート22は、断面L字形に形成された環状のシートリテーナ26を介して装着部20に取付けられ、ボデー1にキャップ25を螺着したときにこの2次側ボールシート22がボール弁体2の2次側を保持する位置に配設される。この2次側ボールシート22は、1次側ボールシート18よりも小径に設けられており、これによって流路が確保されている。ボールシート22のシール機能は必ずしも必要ではなく、特に弁閉状態のボール弁体2が流体によって2次側に押されるのを支持し、このボール弁体2の移動を防止して1次側ボールシート18によるシール性を維持することができればよい。従って、2次側ボールシート22は、1次側ボールシート18よりも強度のある材質を用いてもよい。また、上記のことから、シートリテーナは必ずしも断面L字形である必要はなく、2次側ボールシート22を保持できる形状であれば、例えば、断面コ字形状などの別の断面形状に設けることも可能である。
【0028】
図9ないし図11に示すように、キャップ25には略十字形状の流出流路27がスリ割り加工により形成される。キャップ25の装着後には、この流出流路27を介してキャビティ室12と2次側の流出口7とが連通される。
【0029】
図1において、カバー体14は、ボデー分岐口8に対して上端開口部14aが螺着されることで着脱自在に設けられている。図示しないが、カバー体14は、分岐口8に対してフランジを介して取付けられていてもよく、このように、カバー体14の上端開口部をネジ式又はフランジ式、ファスナー式等の接合手段により分岐口8に着脱自在に設けることができる。
清掃・メンテナンス時においてスクリーン3を取外す際には、図3において長さLの分だけ下方にねじ結合を緩めればよく、この長さLがカバー体14の取外しに要する引き抜き長さになる。この状態でカバー体14をボデー1から取外してスクリーン3を取外すことができる。従って、例えば、Y型ストレーナと比較して、着脱の際のスクリーン3を取外すためのカバー体14の下方向のメンテナンス用スペースを大幅に小さくできる。
【0030】
カバー体14の内周底部には嵌合穴30が形成され、この嵌合穴30にスクリーン3の下部が装着可能になっている。スクリーン3は、下部側の端面3aが嵌合穴30の底面側に当接した状態で取付けられる。一方、スクリーン3の上部は環状保持部15の下端に形成された装着穴31に、上部側の端面3bが環状保持部15の上面側に当接した状態で装着される。このようにして、スクリーン3は上部側と下部側とが所定位置に位置決めされた状態で取付けられ、装着後にはこのスクリーン3の外周とカバー体14の内周との間に流路室35が形成される。
【0031】
スクリーン3を装着する場合には、このスクリーン3と嵌合穴30との嵌め合い公差をスクリーン3と装着穴31との嵌め合い公差よりも小さく設定し、カバー体14を緩めたときにスクリーン3の上部側が下部側よりも外れやすくすることが望ましい。この場合には、スクリーン3を一体に装着した状態でボデー1からカバー体14を取り出すことができ、スクリーン3やボデー1内部の掃除を容易に実施できる。
【0032】
また、カバー体14の底部には複数の有底の小穴36が形成されている。流体がカバー体14に流入したときには、スクリーン3内部ではその流速により異物やゴミ、夾雑物が渦の回転エネルギーをもつが、この小穴36を設けていることにより回転エネルギーを分散して一部分に集中的に働くことを防止可能になっている。これにより、カバー体14の底部分が浸食されることを防いで、カバー体14底部に穴が明くことが防がれている。図示しないが、カバー体14底部にガスケットを介して下面側からプラグを着脱可能に取付けるようにしてもよい。この場合、ボデーからカバー体を取外すことなく、プラグを取外すだけでスクリーン3やカバー体14内の異物やゴミを取り除くことが可能になる。
【0033】
前記した流路室35とキャビティ室12とは連通流路37を介して連通しており、ろ過流体はこの連通流路37を通過して、接続部28の間に形成された開口部29を介してキャビティ室12内に入り、流出流路27を介して2次側の流出口7より流出する。
連通流路37は、分岐口8内周と環状保持部15との間に設けられる第1連通口16と、この第1連通口16とキャビティ室12とを連通させる第2連通口39より成っている。この連通流路37は、ボール弁体2の出口11に対比して流過面積が大きくなるように設けられている。
【0034】
ボール弁体2の出口11には内側に分岐流路40を有する筒状のボトムステム41が固着され、このボトムステム41の下部が上記環状保持部15の摺動口17に嵌合されている。これにより、ボトムステム41はボール弁体2と一体となって摺動口17に対して摺動可能になり、ボール弁体2を開閉操作して摺動させたときに摺動口17がベアリング機能を発揮するようになっている。このようにして、ボデー1内に、上部側がステム4、下部側がボトムステム41に支持されたトラニオン型のボールバルブが設けられる。上記ボトムステム41は、圧入、嵌合、ろう付、ねじ込み、カシメ等の適宜の手段でボール弁体に結合すればよい。
【0035】
本実施形態においてボールバルブを組立てる場合には、ボデー1の1次側の装着部19にボールシート18、キャップ25における2次側の装着部20にシートリテーナ26とボールシート18とを装着させる。この状態でボデー1内にボール弁体2を装入し、Oリング42を装着したステム4をボデー1に形成されたネック部43の上部より挿入し、ステム4の先端に設けた平行二面部44をボール弁体2の上部に形成された平行二面形状の取付穴に嵌合させる。この状態でネック部43の上端側に環状のグランド46を螺着してステム4を回動自在に位置決め保持し、かつ、ボデー1にキャップ25を螺合させてこれらを一体化させる。
【0036】
続いて、流入口6側から図示しない筒状の固定治具を挿入し、その筒状部位をL字形ポート9の入口10に差込んでボール弁体2を回動不能な状態に保持する。そして、図示しない円筒状の取付け治具の先端側にボトムステム41を装着し、この取付け治具によりボトムステム41を摺動口17より嵌入させながらボール弁体2の出口11に圧入する。
このように固定治具と取付け治具とを利用しながらボール弁体2を装着した場合、L字形ポート9にボトムステム41を圧入するときのボール弁体2の位置ずれを防止して、ボール弁体2の出口11側に容易にボトムステム41を圧入することが可能になる。
【0037】
図1に示すように、ボール弁体2の流路内には円筒状に形成した出口11の奥部に段部23が形成されており、この段部23に先端側が突き当たるまでボトムステム41を圧入する。入口10と出口11との交点には略三角形状の凹部24がT字形ポート5の加工時に形成されており、圧入後に固定治具と取付け治具とをボデー1から取外した後に、この2箇所に形成されるこの凹部24のうち、1箇所以上の凹部24にボトムステム41の先方側を図示しない適宜の工具で拡径して、かしめた状態にする。この圧入とかしめとにより、ボトムステム41をボール弁体2の出口11に強固に固定できる。
【0038】
ボトムステム41の固定後には、スクリーン3を収納したカバー体14とボデー1とを螺着して一体化することで、スクリーン3を所定位置に取付ける。一方、ステム4の上端側には、ワッシャ48を介してナット47でハンドル50を取付ける。
【0039】
組立て後のボールバルブ付ストレーナは、1次側流入口6、2次側流出口7を介して図示しない配管ラインに接続される。この配管ラインにおいて、ストレーナの2次側は、例えば、3方弁装置や2方弁装置等のあらゆる配置等に設けられている。ストレーナのボデー1はT字形ポート5を有し、このT字形ポート5の中央位置に配設されたボール弁体2により流路が開閉される構成であり、スクリーン3を収納したカバー体14はボデー1から垂下した位置に配設されるため、このスクリーン3やカバー体14が面間距離Wよりも突出することが抑えられる。このため、面間距離Wを、ボールバルブを内部に設けるために必要な最小距離に抑えることができる。
【0040】
本発明のボールバルブ付ストレーナで流体をろ過する場合、ハンドル50を回転させてボール弁体2を閉状態から開状態にする。このとき、ボトムステム41の下部が環状保持部15の摺動口17に摺動可能に嵌合してことで、ボトムステム41と環状保持部15からの漏れが抑えられつつ、小さい操作力でボール弁体2を回転可能となる。
【0041】
ボール弁体2を開状態まで回転させ、1次側の流入口6から流体が流れ込むと、この流体はボール弁体2の入口10から出口11に90°向きが変えられて、ボトムステム41内の分岐流路40を介してスクリーン3内に流入する。流体はスクリーン3に設けられた小孔51を通過することでろ過され、このろ過流体は流路室35から連通流路37を介してキャビティ室12内に流入する。このとき、ボールバルブのトラニオン構造によりボール弁体2が流体によって2次側に押されることが防がれるため、1次側の流入口6と入口10との間が1次側ボールシート18により確実に封止され、流入口6からキャビティ室12や2次側に直接流体が流入することが防がれる。
【0042】
第1連通口16を分岐口8内周と環状保持部15との間、第2連通口39を第1連通口16とキャビティ室12とを連通させる部分とし、これらの第1連通口16と第2連通口39とを連通流路37としているので、この連通流路37をボデー1内で縮径させることなく大きく確保でき、しかも、キャビティ室12に拡張流路21を形成していることで、キャビティ室12内の容積を拡張して大流量のろ過流体をこのキャビティ室12内に導くことができる。
このときボール弁体2の出口11に対比して連通流路37の流過面積が大きくなっていることで、圧力損失を防ぎつつスクリーン3によって流体をろ過することができ、スクリーン3によるろ過機能を最大限に発揮できる。
【0043】
続いて、キャビティ室12内に流入したろ過流体は、キャップ25の流出流路27を介して2次側から流出する。このとき、流出流路27が略十字形状にスリ割り形状に構成されてその流路が大きく形成されていることで所定の流過面積が確保されている。このため、キャビティ室12から2次側の流出口7にろ過流体が流れるときにも圧力損失が防がれる。
【0044】
また、2次側シートリテーナ26の装着部20に保持されていない部分は、流出流路27に露出している。ここで、このシートリテーナ26に保持された2次側ボールシート18は、ボール弁体2の2次側を保持する役割を果たしていればよく、この露出部分及びボール弁体2との摺動部位からのろ過流体の漏れを許容することができる。このシートリテーナ26は、ボールシート18が大きく変形してキャップ25とボール弁体2との隙間に逃げ込むことも防止する。さらに、装着部20の内周側には環状突起部52が形成され、この環状突起部52により装着部20は断面略コ字形状に形成されている。ボールシート18は、この装着部20により内周方向への変形も規制され、高温状態の蒸気や高温水によって内径方向にフローしてシール面圧が低下することが防がれている。
【0045】
上述したように本発明のボールバルブ付ストレーナは、流入口6、流出口7、分岐口8とで形成したT字形ポート5を有するボデー1の中央位置にL字形ポート9を有するボール弁体2を回動自在に設けていることで、ボールバルブを構成する面間距離W内にストレーナ部分を配置しながらこの面間距離Wを最小限に抑えることができ、配管ラインの複雑化や配管全体の大型化を防ぐこともできる。これによって全体の軽量化を図ることができ、省資源化や環境性にも優れている。
【0046】
ボールバルブ部分とストレーナ部分とを一体化することで配管接続作業が容易になり、バルブをその場で開閉操作できることで清掃・メンテナンスも簡単になる。さらに、これらの一体化によりボデー1内の容積を小さくしているため、カバー体14の螺合を緩めたときに流出する流体を少なくできる。しかも、分岐口8にカバー体14の上端開口部14aを着脱自在に設けると共に、スクリーン3の下部をカバー体14の内周底部に装着し、かつスクリーン3の上部を環状保持部15の装着穴31に装着した構成としていることにより、流体を周囲に飛散させることなく流路室35に収めた状態でボデー1からカバー体14を取外しできる。しかも、カバー体14の螺合を外したときに、カバー体14をこの螺合長さLの分だけ下方に移動させて横にずらすだけでボデー1から取外しでき、下方側にカバー体14の広い着脱領域を設ける必要がなく、狭い設置スペースにストレーナを配設できる。このため、配管全体を小さく設けて配管設置スペースを有効活用できる。
【0047】
ボール弁体2の出口11にスクリーン3を連通可能に設け、このスクリーン3をカバー体14で着脱自在に包囲し、流路室35とキャビティ室12とをボール弁体2の出口11に対比して流過面積の大きい連通流路37を介して連通させ、キャビティ室12のろ過流体を流出流路27を介して2次側の流出口7に流出させている。このため、キャビティ室12を介して流出流路27から2次側の流出口7までの流過面積を大きく確保でき、延いては、1次側の流入口6から流出口7までの流過面積を略一定の大きさに確保できる。このとき、連通流路37が分岐口8内周と環状保持部15との間の第1連通口16と、この第1連通口16とキャビティ室12とを連通させる第2連通口39とより成っているので、流路室35からキャビティ室12にかけて流路がオリフィス状に絞られることがない。これらのことから、流体をろ過するときの圧力損失を最小に抑えて、スクリーン3による捕捉分離の効率を最大限に高めることが可能になる。
【0048】
さらには、ボールシート18の材料としてPTFE等のフッ素樹脂を用いることで流体の最高使用圧力や温度を高く設定でき、高温水や蒸気を流体とすることもできる。例えば、バタフライバルブとストレーナとを一体化したバタフライバルブ付ストレーナの場合には、使用温度70℃における最高使用圧力が1.21MPa、使用圧力0.69MPaにおける最高使用温度が70℃になるが、これに比較して、本発明のボールバルブ付ストレーナの場合には、同使用温度における最高使用圧力が2.00MPa、同使用圧力における最高使用温度150℃となり、バタフライバルブをスクリーンの1次側に配設した場合よりも高圧力及び高温度の流体に対応可能となる。
【0049】
上記ストレーナを配管する場合、流出入口が水平方向になる向きに設置することが望ましく、この場合、底面を下側にしてスクリーンを立設させた状態から水平の状態までの向きで配管可能であるが、スクリーン内に堆積する異物やゴミの逆流を防止する観点から、スクリーンを立設させた状態で取付けることがより望ましい。
【符号の説明】
【0050】
1 ボデー
2 ボール弁体
5 T字形ポート
6 流入口
7 流出口
8 分岐口
9 L字形ポート
10 入口
11 出口
12 キャビティ室
13 スクリーン
14 カバー体
14a 上端開口部
15 環状保持部
16 第1連通口
17 摺動口
18 ボールシート
21 拡張流路
25 キャップ
27 流出流路
31 装着穴
35 流路室
37 連通流路
39 第2連通口
40 分岐流路
41 ボトムステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次側の流入口と2次側の流出口と分岐口とで形成したT字形ポートを有するボデーの中央位置に入口と出口とで形成したL字形ポートを有するボール弁体を回動自在に設け、前記ボール弁体の出口にスクリーンを連通可能に設け、このスクリーンを容体状のカバー体で着脱自在に包囲すると共に、前記スクリーンの外周と前記カバー体の内周との間に形成した流路室と前記ボール弁体と前記ボデー内との間に形成したキャビティ室とを前記ボール弁体の出口に対比して流過面積の大きい連通流路を介して連通させ、前記キャビティ室のろ過流体を流出流路を介して2次側の流出口に流出させたことを特徴とするボールバルブ付ストレーナ。
【請求項2】
前記ボール弁体を少なくとも1次側のボールシートで回動自在に支受けすると共に、前記ボール弁体の出口に分岐流路を有するボトムステムを固着し、このボトムステムの下部を前記ボデーの分岐口の内部に設けた環状保持部の摺動口に前記ボール弁体の回動に伴って摺動可能に設けてトラニオン型のボールバルブとした請求項1に記載のボールバルブ付ストレーナ。
【請求項3】
前記連通流路は、前記分岐口内周と前記環状保持部との間の第1連通口とこの第1連通口と前記キャビティ室とを連通させる第2連通口より成る請求項2に記載のボールバルブ付ストレーナ。
【請求項4】
前記キャビティ室の前記ボデー内周面に流過面積を拡張する拡張流路を形成した請求項1乃至3の何れか1項に記載のボールバルブ付ストレーナ。
【請求項5】
前記ボデーの流出口側に2次側のボールシートを有するキャップを螺着結合し、このキャップに前記キャビティ室と2次側の流出口とを連通する流出流路を形成した請求項1乃至4の何れか1項に記載のボールバルブ付ストレーナ。
【請求項6】
前記分岐口に前記カバー体の上端開口部をネジ式又はフランジ式の接合手段で着脱自在に設けると共に、前記スクリーンの下部を前記カバー体の内周底部に装着し、かつスクリーン上端を前記環状保持部の下端に形成した装着穴に装着した請求項1乃至5の何れか1項に記載のボールバルブ付ストレーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−225395(P2012−225395A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92256(P2011−92256)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】