説明

ポインティングデバイス

【課題】 基板を薄型化しても、安定した操作性を確保できるポインティングデバイスを提供する。
【解決手段】
ポインティングデバイスは、基板21の所定位置を中心として、複数方向にそれぞれ各扇形電極231〜234を配置し、基板21上に導電性を有する弾性変形体33を配置し、弾性変形体33が変形されたとき、各扇形電極231〜234と弾性変形体33との間の位置関係が変化して、それに応じた静電容量の電気信号が出力する。扇形電極231〜234の両端縁間に端縁間間隙を設けるとともに、引き回し線m1〜m4をその端縁間間隙と対応する位置において直線状に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば携帯電話、パーソナルコンピュータ、ゲーム機等の電子機器の入力装置として用いられるようにした静電容量型のポインティングデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、静電容量型ポインティングデバイスとしては、例えば特許文献1に開示されるような構成のものが提案されている。特許文献1に記載の構成では、基板の所定位置を中心にして、絶縁膜にて覆われた静電容量検出電極が4方に配置され、前記基板上に導電性を有する弾性変形体が対応配置されている。そして、前記弾性変形体上にはキーが設けられている。このキーが操作されていない状態では、前記弾性変形体の前記静電容量検出電極に対して相対する面は、該電極に対して離間されている。又、該キーに押圧されることにより、弾性変形体は変形されて、該相対する面は電極に対して接近する。そして、この接近により、弾性変形体と静電容量検出電極との間の間隔に対応する静電容量が変化し、その静電容量の変化を示す信号が出力されるようになっている。従って、キーに対する操作量の大小に応じて弾性変形体の変形量が異なり、このため、前記間隔も操作量に応じて変化し、結果として、操作量を表す静電容量出力が得られる。
【特許文献1】特開2002−304247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、静電容量型ポインティングデバイスを搭載する機器の市場要求として薄型化がある。このため、必然的に前記ポインティングデバイスの内蔵部品である基板についても薄型化を行う必要がある。通常、前記基板は両面基板とされており、その表面には、前記静電容量検出電極が設けられ、裏面には、グランド電極や、静電容量検出電極等に接続された信号出力線が設けられている。
【0004】
ここで、従来は基板の厚みは、1mm以上であったため、裏面側にグランドや、信号出力線が存在しても、表面側の静電容量検出電極の出力は、これらの影響を受けることはほとんどなかった。これに対し、基板を薄型化した場合には、基板表面側の静電容量検出電極の静電容量出力に対して裏面のグランド電極の静電容量が影響して、キーの操作量に応じた静電容量出力を得ることができないおそれがあり、ポインタの応答性や操作性が著しく低下する問題が生じた。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、基板を薄型化しても、安定した静電容量出力を確保できるポインティングデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するために、請求項1に記載の発明においては、基板の一側面に複数の静電容量検出電極を環状に設けるとともに、前記基板の他側面には各静電容量検出電極と対応するグランド電極及び静電容量検出電極の内径側に接続された検出電極配線を設け、静電容量検出電極で検出される静電容量の変化を示す電気信号が出力されるようにしたポインティングデバイスにおいて、前記静電容量検出電極の両端縁間に端縁間間隙を設けるとともに、前記検出電極配線をその端縁間間隙と対応する位置において直線状に配置したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の発明において、前記静電容量検出電極の内径側において基板の一側面にスイッチ電極を設け、そのスイッチ電極の電源側または接地側のうちの一方のスイッチ電極配線を前記端縁間間隙の中央部に静電容量検出電極の端縁と絶縁間隔を隔てて配置するとともに、他方のスイッチ電極配線を基板の他側面において前記端縁間間隙と対応する位置に直線状に配置したことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明においては、請求項2に記載の発明において、前記基板の他側面側における静電容量検出電極及びスイッチ電極の検出電極配線及びスイッチ電極配線を前記静電容量検出電極の端縁と対応する位置に配置するとともに、前記検出電極配線及びスイッチ電極配線が配置されていない端縁側の位置に、その端縁に沿って延びるスリット状の絶縁間隙を設けたことを特徴とする。
【0009】
(作用)
請求項1の発明によれば、検出電極配線が静電容量検出電極間の端縁間間隙に対応しているため、検出電極配線とグランド電極との間の絶縁間隙が静電容量検出電極の端縁に位置することになり、静電容量の変化に悪影響を与えない。しかも、各静電容量検出電極と対応する基板の裏面側のグランドの面積を等しくすることができ、基板を薄型化しても、各静電容量検出電極から静電容量出力を等しい条件下で得ることができ、操作性を向上できる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、静電容量検出電極の内径側にスイッチ電極を設けたとしても、そのスイッチ電極に対するスイッチ電極配線を静電容量検出電極の配線と同様に処理して、各静電容量検出電極と対応する基板の裏面側のグランドの面積を等しくすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、静電容量検出電極の数と配線の数とが一致していなくても、その差を補うように絶縁間隙を設けることにより、各静電容量検出電極と対応する基板の裏面側のグランドの面積を等しくすることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、この発明によれば、基板を薄型化しても、安定した操作出力を確保できるポインティングデバイスとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、この発明の一実施形態を、図1〜図9に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態のポインティングデバイスにおいては、ガラス布基材エポキシ樹脂からなる基板21を備えている。この基板21の厚さは、本実施形態では、銅箔とレジストを含めた厚さが0.6mmであるが、この厚さに限定するものではなく、薄型化のために、0.1mm以上0.6mm未満としてもよい。
【0014】
図1及び図2に示すように、基板21の上面には、複数の接地側電極22aと電源側電極22bとが同一円周上において所定間隔おきに交互に配列され、これらの接地側電極22a及び電源側電極22bにより、環状の第1電極部22が構成されている。接地側電極22a,電源側電極22bは、スイッチ用電極を構成している。
【0015】
この第1電極部22の内周側において、基板21の上面には、同一面積の4つの静電容量検出電極としての扇形電極231〜234が第1電極部22と同心環状に、かつ等間隔に配列形成され、これらの扇形電極231〜234により第2電極部23が構成されている。各扇形電極231〜234の両端縁間には、放射方向に延びる所定幅の複数の端縁間間隙23aが形成されている(図6(a)参照)。
【0016】
前記第2電極部23の内径側において、基板21の表面には、略円環状の接地側電極24a及び円板状の電源側電極24bが同第2電極部23と同心状に配列形成され、これらの接地側電極24a及び電源側電極24bによりスイッチ電極としての第3電極部24が構成されている。前記接地側電極24aは、前記第1電極部22の接地側電極22aに対して、4本のスイッチ電極配線24cを介して接続されている。各スイッチ電極配線24cは、図6(a)から明らかなように、前記端縁間間隙23a内の中央部を通り、各扇形電極231〜234の両端縁に対して等しい絶縁距離を有するように離間して配置されている。なお、図6(a)は、基板21を裏面側から見た図である。
【0017】
基板21の表面には、前記第1電極部22を包囲するようにグランド電極(以下、グランド電極については、単にグランド30という)が形成され、このグランド30には、前記第1電極部22の接地側電極22aが接続されている。
【0018】
図1に示すように、前記基板21の上面には合成樹脂製の保持部材27が固定されている。保持部材27の中央の下面側には円形状の第1保持部28が凹設形成されるとともに、中央の上面側には第1保持部28よりも小径の第2保持部29が凹設形成されている。この第2保持部29の内底面と保持部材27の上面との間には透孔29aが形成されている。基板21の上部には金属製のカバー32が保持部材27の外周や、他の電装品25(後述するCV変換装置50を含む)等を覆う所定の位置に固定されている。
【0019】
前記基板21の上面には円板状の弾性変形体33が保持部材27の第1保持部28内に収容保持した状態で配置されている。この弾性変形体33は、例えばシリコーンゴムの母材にカーボン等の導電性材を混練することにより、導電性,弾力性及び柔軟性を有するように形成されている。弾性変形体33の下面外周及び下面内周には、リング状の脚部33a,35aが下方に突出されている。弾性変形体33は、同脚部33a,35aにより、前記第2電極部23の外径側外方及び内径側内方において基板21に当接して支持されている。弾性変形体33の下面において、脚部33aよりも内周側には、円環状の突起34(図8参照)が、脚部33a,35aと同心円となるように突出され、前記第1電極部22に対向している。そして、弾性変形体33が変形して、突起34が接地側電極22a及び電源側電極22bに接触することにより、それらの電極22a,22b間を短絡するようになっている。なお、突起34の弾性変形体33下面からの突出量は、前記脚部33a,35aの弾性変形体33下面からの突出量よりも若干少なくされている。このことによって、後述する操作キー39が操作されずに、弾性変形体33が弾性変形しない状態では、突起34は、基板21上における第1電極部22の接地側電極22a及び電源側電極22bに対して離間して配置される。
【0020】
弾性変形体33の中央部下面には、断面円形の凹部33bが形成されている。凹部33bと対応するように基板21上には、SUS(ステンレス鋼)等の金属薄板からなるドーム状の接点板36が配置され、前記第3電極部24の接地側電極24aに接続されている。接点板36は、ドーム部36aと、その下部周縁に設けられたフランジ36bを備えている。接点板36の上面側は絶縁処理が施されており、弾性変形体33と電気的に分離している。一方、弾性変形体33の下面側は電気的に導通が可能となっている。そして、弾性変形体33の脚部35aは基板21の上面に接点板36のフランジ36bを挟み込んだ状態で当接支持されている。そして、ドーム部36aは、弾性変形体33の下方移動により凹むように弾性変形することにより、第3電極部24の電源側電極24bに接触して、同第3電極部24の電極24a,24b間を短絡するようになっている。
【0021】
弾性変形体33の下面において、前記突起34と凹部33bとの間は、第2電極部23と対応する部位とされており、該部位には、円環状の傾斜面35が基板21上の第2電極部23に接近離間可能に対応するように形成されている。すなわち、傾斜面35は、弾性変形体33の中心軸O(図1参照)から遠位側に位置する部位よりも近位側に位置する部位の方が、第2電極部23に対し離間距離が短くなるように形成されている。又、この構成により、弾性変形体33が押下変形された際に、前記遠位側に位置する部位よりも近位側に位置する部位の方が先に絶縁膜23bを介して、第2電極部23(扇形電極231〜234)の表面に対して接近する。そして、傾斜面35と基板21上の第2電極部23(扇形電極231〜234)との間の間隔が変化することにより、その間隔変化に伴って傾斜面35と第2電極部23間の静電容量が変化する。
【0022】
従って、前記4つの扇形電極231〜234と、各扇形電極231〜234と対向する傾斜面35等は、それぞれコンデンサを構成している。そして、4つの扇形電極231〜234と傾斜面35からなる各コンデンサの静電容量変化は、基板21に設けたCV変換装置に出力されて電圧に変換される。次いで、同軸方向に位置するコンデンサに関する静電容量値に応じた電圧値の差分を取ることにより、後述する操作キー39の傾動操作量に応じたポインタ座標値を得ることができるようにされている。
【0023】
前記弾性変形体33上には絶縁性の合成樹脂よりなる円板状のキーベース37が保持部材27の第2保持部29内に揺動可能に収容保持した状態で載置され、そのキーベース37の上面中央には前記透孔29a内に位置する段差部37aが突出形成されている。段差部37aの中央には、前記透孔29aから上方へ突出する取付ボス38が突設されている。キーベース37の取付ボス38には操作キー39が嵌着されて止めピン40により抜け止め固定され、その操作キー39の上面にはゴム製の操作部41が設けられている。そして、操作者がこの操作キー39の操作部41の上面外周の一部を押圧操作して、キーベース37を任意の方向に揺動させたときには、弾性変形体33が弾性変形される。
【0024】
前記保持部材27とキーベース37との間には、第1規制構造42と第2規制構造43とが、分離した状態で別々に配置されている。前記第1規制構造42は、保持部材27の第2保持部29の内周面によって形成された円形状の規制面としての規制内周面44と、キーベース37の外周面に形成された円形の規制面としての規制外周面45とから構成され、キーベース37の回転以外の移動を規制するようになっている。また、前記第2規制構造43は、保持部材27の第2保持部29の透孔29aの内周縁に等間隔おきで形成された4つの規制凹部46と、キーベース37の段差部37aの外周に等間隔おきで形成された4つの規制凸部47とから構成され、キーベース37の回転を規制するようになっている。
【0025】
さて、このポインティングデバイスにおいて、図1は、操作キー39が操作されてないフリーの状態を示している。この状態においては、第1電極部22に対向する突起34が同第1電極部22から、第2電極部23に対向する傾斜面35が同第2電極部23からそれぞれ離間している。ここで、図9に示すように、操作キー39の操作部41を押圧操作すると、キーベース37の揺動を介して、弾性変形体33が弾性変形されて、その下面の突起34の一部が基板21上の第1電極部22の接地側電極24aと電源側電極24bとに接触されて、それらの間が短絡する。この短絡によって、図示しないICに起動信号が入力され、スリープ状態にあったICが起動する。
【0026】
又、この操作キー39の押圧操作時には、その傾動操作量に応じて、弾性変形体33の傾斜面35と基板21上の第2電極部23との間の間隔が変化し、その間隔変化に伴い静電容量が変化して、その静電容量の変化が出力される。これによって、操作部41の傾動操作量に応じたポインタ座標値を得ることができる。
【0027】
又、操作キー39の上面中央部を軸線C1方向に押圧操作したときには、弾性変形体33の中央部が弾性変形され、ドーム形の接点板36が下方に反転される。これにより、第3電極部24の接地側電極24aと電源側電極24bとが接続されて、操作を確定する信号等が出力される。
【0028】
次に、この実施形態の要部及びその関連構成について説明する。
図2〜図4に示すように、前記第1電極部22の電源側電極22bは複数を1単位とした複数(実施形態では3)のグループを構成し、各グループにおいて各電源側電極22bは、基板21のスルーホール31aを介して、基板21の裏面に設けられたスイッチ電極配線22cにより相互に接続されている。また、各スイッチ電極配線22cは、全体としてC形をなすように、スルーホール31bを介して基板21の表面側において接続線22eにより接続されている。なお、図3は、基板21を、表面側から透視した図である。前記スイッチ電極配線22cのうち、1つのスイッチ電極配線22c(図3の右側のスイッチ電極配線22c)は、分岐接続線22dにより、スルーホール31cを介して、基板21の表面のリード線接続部L1に接続され、結果として、各電源側電極22bは前記リード線接続部L1に接続されている。
【0029】
前記第2電極部23の各扇形電極231〜234の内径側の中央部にはそれぞれ同一幅の検出電極配線としての引き回し線m1〜m4がスルーホール31dを介して接続されている。各引き回し線m1〜m4は、基板21の裏面において扇形電極231〜234の端縁と対応するように配置され、スルーホール31eを介して基板21の表面に配置したCV変換装置50の入力端子接続部n1〜n4にそれぞれ接続されている。各引き回し線m1〜m4の第3電極部24と対応する位置においては、1重または2重に円弧状に形成されており、この円弧部位は、所要長の静電容量調整パターンSP1〜SP4となっている。各引き回し線m1〜m4は、その長さが同一とされて、各扇形電極231〜234の静電容量の検出出力が等しくなるようにされている。
【0030】
図3、図4に示すように、前記第3電極部24の電源側電極24bの中心にはスイッチ電極配線としての引き回し線m5がスルーホール31fを介して接続されている。この引き回し線m5は、複数のスルーホール31fを介して、基板21の裏面側に配置された2つの部位m5a,m5cと、表面側に配置されたm5bとからなっている。引き回し線m5cは、基板21の表面のリード線接続部L2にスルーホール31fを介して接続されている。また、引き回し線m5の部位m5aは扇形電極234の端縁と対応するように配置されている。
【0031】
扇形電極234を除く扇形電極231〜233の引き回し線m1〜m5が配置されていない端縁と対応するように、基板21の裏面にはダミーパターンDが配置されている。このダミーパターンDは、どこにも電気的に接続されていない電極である。
【0032】
ここで、図5に示すように、基板21の表裏の各電極22a、22b,231〜234,24a,24b、配線22c,24c,引き回し線m1〜m5等及びダミーパターンDは以下のように構成されている。すなわち、基板21の表裏には、前記銅箔よりなる導電膜61が貼着され、その導電膜61上には電極22a、22b,231〜234,24a,24b、配線22c,24c,引き回し線m1〜m5等及びダミーパターンDとなる導電パターン62がプリントされ、その所要位置には前記スルーホール31a〜31fが形成されている。前記導電膜61及び導電パターン62を覆うようにレジスト膜63が形成されており、そのレジスト膜63は、前記スルーホール31a〜31fの位置及び前記第1電極部22の各電極22a,22b及び第3電極部24の両電極24a,24bの位置の各部分が剥離されている。また、前記電極22a、22b,231〜234,24a,24b、配線22c,24c,引き回し線m1〜m5等及びダミーパターンDの外周には、周囲との絶縁を確保するために、導電膜61が除去されている。そして、前記導電膜61のうち所定の導電膜は、接地されていて、グランド30を構成する。すなわち、基板21の表裏において、電極22a、22b,231〜234,24a,24b、配線22c,24c,引き回し線m1〜m5等及びダミーパターンDが存在しない部分はグランド30となっている。
【0033】
図3,図4及び図6(a),(b)に示すように、各引き回し線m1〜m5及びダミーパターンDは、前記端縁間間隙23aと対応する位置において、扇形電極231〜234の端縁とラップする位置を直線状に通っている。従って、図6(b)から明らかなように、扇形電極231〜234の端縁部において、その内部側には、各引き回し線m1〜m5及びダミーパターンDとグランドとの間のスリット状の絶縁間隙Zがそれぞれ1条ずつ配置されている。また、各引き回し線m1〜m5及びダミーパターンDは、前記第3電極部24のスイッチ電極配線24cの対応位置に対して所定の間隔Lを設けて配置されている。
【0034】
さて、この実施形態においては、前記引き回し線m1〜m5及びダミーパターンDを扇形電極231〜234間の端縁間間隙23aと対応するように、放射状に、かつ直線状に配置されている。このため、引き回し線m1〜m5及びダミーパターンDの側部の絶縁間隙Zがそれぞれ1条ずつ扇形電極231〜234の端縁に対応するように配置される。このため、各扇形電極231〜234と対応する基板21の裏面側のグランド30の面積において、コンデンサとして機能する実際の面積の減少量を等しくすることができ、従って実施形態では各扇形電極231〜234同士の面積が等しいため、グランド30の面積も等しくできる。又、各扇形電極231〜234の電極面積を大きくとることもできる。このため、基板21を薄型化しても、各扇形電極231〜234からの静電容量出力を等しい条件下で得ることができ、ポインティングデバイスとしての初期ポイント(ゼロ点)不安定や、操作時の出力ばらつき、感度の低下等を抑制でき、操作性を向上できる。
【0035】
また、実施形態のように、扇形電極231〜234の数と引き回し線m1〜m5の数とが一致しなくても、それを補うようにダミーパターンDが設けられているため、前記のように各扇形電極231〜234と対応する基板21の裏面側のグランド30の面積を等しくすることができる。
【0036】
さらに、実施形態のように、引き回し線m1〜m5を扇形電極231〜234の内径側から外径側に引き出す構成を採用しても、引き回し線m1〜m5が扇形電極231〜234間の間隙23aの位置に配置されるとともに、ダミーパターンDが配置されている。このため、前記のように扇形電極231〜234対応するグランド30の面積を一致させることができるため、言い換えれば、引き回し線m1〜m5を扇形電極231〜234の外径側から引き出す必要がなく、基板21、ひいてはポインティングデバイス全体の小型化に寄与できる。
【0037】
(変形例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
○ 基板21は、前記実施形態では、ガラス布基材エポキシ樹脂積層板等の硬い絶縁材より構成したが、ポリイミドフィルム等で形成した可撓性基板にて構成してもよく、或いは、複層基板に対して具体化してもよい。
【0038】
○ 第3電極部24を有しないポインティングデバイスにこの発明を具体化してもよい。このようにすれば、静電容量検出電極の数と引き回し線の数とが一致するため、ダミーパターンが不要になる。
【0039】
○ 第2電極部23が全体として楕円形状をなす構成にこの発明を具体化してもよい。この場合は、楕円の長軸と短軸とに位置する静電容量検出電極の面積が異なることになるが、引き回し線m1〜m5やダミーパターンD等により、同軸上の静電容量検出電極と対応するグランドの面積を等しくなるように合わせることができるため、前記実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0040】
○ 前記実施形態では、扇形電極を4方向に配置したが、4方向に限定するものではなく、2〜3方向や、或いは、5方向以上の複数方向に静電容量検出電極を配置したポインティングデバイスに具体化してもよい。
【0041】
(他の技術的思想)
前記実施形態及び変形例から把握される技術的思想であって、請求項に記載以外の技術的思想を以下に列挙する。
【0042】
(1) 基板の他側面にダミーパターンを設けることにより前記絶縁間隙を形成したことを特徴とする請求項3に記載のポインティングデバイス。
このようにすれば、静電容量検出電極に対応するグランド電極を所要の面積となるように容易に調整できる。
【0043】
(2) 各静電容量検出電極同士の面積を相互に同一にし、それと対応する各グランド電極同士の面積を相互に同一としたことを特徴とする請求項1〜3,前記技術的思想(1)項のうちのいずれか一項に記載のポインティングデバイス。
【0044】
従って、同一条件下における各静電容量検出電極からの静電容量を示す出力を等しくすることができ、操作性の向上や正確性の向上に有効である。
(3) 基板上に導電性を有する弾性変形体を設け、弾性変形体が外部操作により変形されたとき、前記各静電容量検出電極と前記弾性変形体との間の位置関係が変化して、それらの間の静電容量が変化するようにしたことを特徴とする請求項請求項1〜3,前記技術的思想(1),(2)項のうちのいずれか一項に記載のポインティングデバイス。
【0045】
従って、弾性変形体を変形操作するのにともない、前述した各種の効果を得ることができる。
(4) 前記基板の厚さを、0.6mm〜0.1mmの範囲内としたことを特徴とする請求項1〜3、前記技術的思想(1)〜(3)のうちいずれか1項に記載のポインティングデバイス。
【0046】
このように、基板を薄くしても、グランド電極の面積の調整により、良好な静電容量出力を得ることができる。
(5) 基板の一側面において、前記スイッチ電極の配線を前記間隙の中央において直線状に配置するとともに、前記基板の他側面の配線を前記配線の対応位置から離間して配置したことを特徴とする請求項1〜3、前記技術的思想(1)〜(4)のうちいずれか1項に記載のポインティングデバイス。
【0047】
このようにすれば、ノイズ等の影響を抑制できる。
(6) 各静電容量検出電極同士の面積を相互に同一にし、それと対応する各グランド電極同士の面積を相互に同一としたことを特徴とするポインティングデバイス。
【0048】
従って、同一条件下における各静電容量電極からの静電容量を示す出力を等しくすることができ、操作性の向上や正確性の向上に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】一実施形態のポインティングデバイスを示す要部縦断面図。
【図2】図1のポインティングデバイスにおける基板を示す平面図。
【図3】図1のポインティングデバイにおいて、基板側の表側から見た裏面側のパターンを示す説明図。
【図4】基板の表側と裏面側のパターンの配置状態の説明図。
【図5】基板の裏面側の接地電極のパターンを示す基板の平面図。
【図6】(a)は、基板21を裏面側から見た説明図、(b)は、(a)のx−x線断面図。
【図7】図1の3−3線における断面図。
【図8】同じく弾性変形体を示す底面図。
【図9】図1のポインティングデバイスの動作状態を示す要部縦断面図。
【符号の説明】
【0050】
21…基板、231〜234…扇形電極(静電容量検出電極)、23b…絶縁膜、
24c…スイッチ電極配線(一方のスイッチ電極配線)、33…弾性変形体、
39…操作キー、m1〜m4…引き回し線(検出電極配線)、m5…引き回し線(他方のスイッチ電極配線)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一側面に複数の静電容量検出電極を環状に設けるとともに、前記基板の他側面には各静電容量検出電極と対応するグランド電極及び静電容量検出電極の内径側に接続された検出電極配線を設け、静電容量検出電極で検出される静電容量の変化を示す電気信号が出力されるようにしたポインティングデバイスにおいて、
前記静電容量検出電極の両端縁間に端縁間間隙を設けるとともに、前記検出電極配線をその端縁間間隙と対応する位置において直線状に配置したことを特徴とするポインティングデバイス。
【請求項2】
前記静電容量検出電極の内径側において基板の一側面にスイッチ電極を設け、
そのスイッチ電極の電源側または接地側のうちの一方のスイッチ電極配線を前記端縁間間隙の中央部に静電容量検出電極の端縁と絶縁間隔を隔てて配置するとともに、他方のスイッチ電極配線を基板の他側面において前記端縁間間隙と対応する位置に直線状に配置したことを特徴とする請求項1に記載のポインティングデバイス。
【請求項3】
前記基板の他側面側における静電容量検出電極及びスイッチ電極の検出電極配線及びスイッチ電極配線を前記静電容量検出電極の端縁と対応する位置に配置するとともに、前記検出電極配線及びスイッチ電極配線が配置されていない端縁側の位置に、その端縁に沿って延びるスリット状の絶縁間隙を設けたことを特徴とする請求項2に記載のポインティングデバイス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−338162(P2006−338162A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159853(P2005−159853)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000107642)スター精密株式会社 (253)
【Fターム(参考)】