説明

ポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法

【課題】 解像度が高く、かつLERが小さいレジストパターンを形成できるようにする。
【解決手段】酸解離性溶解抑制基を含有するモノ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)、ラクトン含有単環又は多環式基を有するモノ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)、水酸基又はカルボキシル基を含有する多環の脂環式炭化水素基を有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される前駆単位の、水酸基又はカルボキシル基の水素原子が下記一般式(I)で表される架橋基で置換され、分子内または分子間で架橋されているポリ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a4)を有する共重合体(A1)を含有する化学増幅型ポジ型レジスト組成物。
【化1】


(Aは2価又は3価の有機基、pは1〜3の整数、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の微細化に伴って、例えばArFエキシマレーザー(193nm)を用いたリソグラフィプロセスの開発が精力的に進められている。ArFエキシマレーザー用の化学増幅型レジストのベース樹脂としては、ArFエキシマレーザーに対して透明性の高いものが好ましい。
例えば、エステル部にアダマンタン骨格のような多環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を主鎖に有する樹脂が注目され、これまでに多数の提案がなされている(下記特許文献1)。
【特許文献1】特許第2881969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、半導体素子の急激な微細化に伴い、いっそうの高解像度が求められている。しかしながら、レジストパターンの微細化に伴いLER(ラインエッジラフネス)が深刻な問題となっている。
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、解像度が高く、かつLERが小さいレジストパターンを形成できるポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明のポジ型レジスト組成物は、酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分(A)、及び露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)を含有するレジスト組成物であって、前記樹脂成分(A)が、酸解離性溶解抑制基を含有するモノ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)、ラクトン含有単環又は多環式基を有するモノ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)、および水酸基又はカルボキシル基を含有する多環の脂環式炭化水素基を有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される前駆単位の、前記水酸基又はカルボキシル基の水素原子が下記一般式(I)で表される架橋基で置換され、分子内または分子間で架橋されているポリ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a4)を有する共重合体(A1)を含有することを特徴とする。
【0006】
【化1】

(式中、Aは2価又は3価の有機基であり、pは1〜3の整数である。R、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。)
【0007】
また本発明のレジストパターン形成方法は、本発明のポジ型レジスト組成物を基板上に塗布し、プレべークし、選択的に露光した後、PEB(露光後加熱)を施し、アルカリ現像してレジストパターンを形成することを特徴とする。
【0008】
なお、本明細書において、「(α−低級アルキル)アクリル酸エステル」とは、メタクリル酸エステル等のα−低級アルキルアクリル酸エステルと、アクリル酸エステルの一方あるいは両方を意味する。ここで、「α−低級アルキルアクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステルのα炭素原子に結合した水素原子が低級アルキル基で置換されたものを意味する。
「構成単位」とは、重合体を構成するモノマー単位を意味する。また本発明ではモノマー単位どうしが架橋された構造のものも「構成単位」という。
「(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
また、「(α−低級アルキル)アクリル酸」、「(α−低級アルキル)アクリル酸エステル」において、「低級アルキル基」は、特にことわりがない限り、好ましくは炭素数1〜5の直鎖又は分岐状アルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられ、工業的にはメチル基が好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、解像度が高く、かつLERが小さいレジストパターンを形成できるポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
[ポジ型レジスト組成物]
本発明のポジ型レジスト組成物は、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する樹脂成分(A)、および露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)を含有するポジ型レジスト組成物において、(A)成分が特定の共重合体(A1)を含むものである。
【0011】
・共重合体(A1)(以下、(A1)成分ということもある。)
(A1)成分は、少なくとも下記3つの構成単位(a1)、(a2)、(a4)を有する。(A1)成分が、さらに下記の構成単位(a3)を有していてもよい。
(a1):酸解離性溶解抑制基を含有するモノ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位。
(a2):ラクトン含有単環又は多環式基を有するモノ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位。
(a4):水酸基又はカルボキシル基を含有する多環の脂環式炭化水素基を有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される前駆単位の、前記水酸基又はカルボキシル基の水素原子が下記一般式(I)で表される架橋基で置換され、分子内または分子間で架橋されているポリ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位。
(a3):水酸基又はカルボキシル基を含有する多環の脂環式炭化水素基を有するモノ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位。
【0012】
【化2】

(式中、Aは2価又は3価の有機基であり、pは1〜3の整数である。R、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。)
【0013】
ここで、モノ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルの、「モノ」とは、(α−低級アルキル)アクリル酸エステル残基をひとつ有することを意味する。
ポリ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルの、「ポリ」とは、一般式(I)から明らかなように、(α−低級アルキル)アクリル酸エステル残基をふたつ以上有することを意味する。
そして、(A1)成分においては、モノ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位、ポリ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位のいずれもが、エチレン性二重結合の開裂によって、隣接する他の構成単位と結合して重合体を構成している。
【0014】
・・構成単位(a1)
構成単位(a1)は、酸解離性溶解抑制基を含むモノ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
酸解離性溶解抑制基は、例えば従来公知のものを利用することができ、特に限定されるものではない。
【0015】
構成単位(a1)としては、例えば単環又は多環式基含有酸解離性溶解抑制基を含むモノ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位、鎖状酸解離性溶解抑制基を含むモノ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位のいずれでもよい。
酸解離性溶解抑制基は、一般的には(α−低級アルキル)アクリル酸の側鎖のカルボキシル基と、鎖状又は環状の第3級アルキルエステルを形成するものが広く知られており、鎖状、単環または多環の脂環式炭化水素基、特に好ましくは多環の脂環式炭化水素基を含むものが好ましい。該炭化水素基は飽和であることが好ましい。
【0016】
前記単環の脂環式炭化水素基としては、シクロアルカン等から1個の水素原子を除いた基等を例示できる。具体的には、シクロヘキサン、シクロペンタン等から1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
前記多環の脂環式炭化水素基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等から1個の水素原子を除いた基等を例示できる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。これらの中でもアダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロドデカニル基が工業上好ましい。
【0017】
構成単位(a1)を誘導する鎖状酸解離性溶解抑制基を含むモノ(α−低級アルキル)アクリル酸エステル(モノマー)としては、例えば次のものを挙げることができる。
例えば、tert−ブチル(メタ)アクリレート、tert−アミル(メタ)アクリレート、tert−ブチルオキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、tert−アミルオキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルオキシカルボニルエチル(メタ)アクリレート、tert−アミルオキシカルボニルエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中ではtert-ブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0018】
単環又は多環式基含有酸解離性溶解抑制基を含むモノ(α−低級アルキル)アクリル酸エステル(モノマー)から誘導される構成単位(a1)の具体例としては、1−メチルシクロペンチル(メタ)アクリレートのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位、1−エチルシクロペンチル(メタ)アクリレートのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位、1−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位、1−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位、下記一般式(aI−1)、(aI−2)、(aI−3)でそれぞれ表される構成単位等が挙げられる。
【0019】
【化3】

(式中、Rは水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基であり、R10は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。)
【0020】
【化4】

(式中、Rは水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基であり、R21およびR22はそれぞれ独立して直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。)
【0021】
【化5】

(式中、Rは水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基であり、R23は第3級アルキル基である。)
【0022】
前記Rとしての低級アルキル基(α−低級アルキル基)は、好ましくは炭素数1〜5の直鎖又は分岐状アルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。工業的にはメチル基が好ましい。
一般式(aI−1)において、R10は、炭素数1〜5の低級の直鎖又は分岐状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。その中でも、メチル基、エチル基であることが工業的に入手が容易であることから好ましい。
【0023】
一般式(aI−2)において、R21及びR22は、それぞれ独立に、好ましくは炭素数1〜5の直鎖または分岐の低級アルキル基である。中でも、R21及びR22が共にメチル基である場合が工業的に好ましく、具体的には、2−(1−アダマンチル)−2−プロピル(α−低級アルキル)アクリレートから誘導される構成単位を挙げることができる。
一般式(aI−3)において、R23は、tert−ブチル基やtert−アミル基のような第3級アルキル基であり、tert−ブチル基である場合が工業的に好ましい。
基−COOR23は、式中に示したテトラシクロドデカニル基の3または4の位置に結合していてよいが、結合位置は特定できない。また、(α−低級アルキル)アクリレート構成単位のカルボキシル基残基も同様に式中に示した8または9の位置に結合していてよいが、結合位置は特定できない。
【0024】
・・構成単位(a2)
構成単位(a2)は、ラクトン含有単環又は多環式基を有するモノ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位であり、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルのエステル側鎖部にラクトン環からなる単環式基またはラクトン環を有する多環の脂環式基が結合した構成単位が挙げられる。
なお、このときラクトン環とは、−O−C(O)−構造を含むひとつの環を示し、これをひとつの目の環として数える。したがって、ここではラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。
構成単位(a2)におけるラクトン含有単環又は多環式基の具体例としては、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた単環式基や、ラクトン環含有ポリシクロアルカンから水素原子を1つを除いた多環式基等が挙げられる。
【0025】
構成単位(a2)の具体例としては、下記一般式(aII−1)、(aII−2)、(aII−3)でそれぞれ表される構成単位が挙げられる。
【0026】
【化6】

(式中、R11、R12、R13は、それぞれ独立して水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。)
【0027】
【化7】

(式中、R11は水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。)
【0028】
【化8】

(式中、R11は水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。)
【0029】
【化9】

(式中、R11は水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。mは0又は1である。)
【0030】
【化10】

(式中、R11は水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。)
【0031】
前記R11としての低級アルキル基(α−低級アルキル基)は、好ましくは炭素数1〜5の直鎖又は分岐状アルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。工業的にはメチル基が好ましい。
【0032】
・・構成単位(a3)
構成単位(a3)は、水酸基又はカルボキシル基を含有する多環の脂環式炭化水素基を有するモノ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位であり、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルのエステル側鎖部に、多環の脂環式炭化水素基の水素原子の少なくとも1個が水酸基又はカルボキシル基で置換されてなる基が結合した構成単位である。
前記多環の脂環式炭化水素基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等から1個の水素原子を除いた基等を例示できる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。これらの中でもアダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロドデカニル基が工業上好ましく、特にアダマンチル基が好ましい。
多環の脂環式炭化水素基の水素原子と置換している水酸基またはカルボキシル基の数は1以上であればよく、上限は置換可能な数とすることができる。好ましくは1〜3である。1つの多環の脂環式炭化水素基に水酸基およびカルボキシル基の両方が置換していてもよい。
【0033】
構成単位(a3)の具体例としては、下記一般式(aIII)で表される構成単位が挙げられる。
【0034】
【化11】

(式中、R14は水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。nは1〜3の整数である。)
【0035】
前記R14としての低級アルキル基(α−低級アルキル基)は、好ましくは炭素数1〜5の直鎖又は分岐状アルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。工業的にはメチル基が好ましい。
また一般式(aIII)中のnは、好ましくは1であり、1つの水酸基がアダマンチル基の3位に結合していることが好ましい。
【0036】
・・構成単位(a4)
構成単位(a4)は、水酸基又はカルボキシル基を含有する多環の脂環式炭化水素基を有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される前駆単位の、前記水酸基又はカルボキシル基の水素原子が前記一般式(I)で表される架橋基で置換され、分子内または分子間で架橋されているポリ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
ここでの「前駆単位」とは、重合体を構成するモノマー単位であって、架橋される前の状態のものを意味する。
【0037】
構成単位(a4)の前駆単位としては、前記構成単位(a3)と同じものが例示できる。すなわち、構成単位(a4)は、構成単位(a3)の水酸基又はカルボキシル基の水素原子が前記架橋基で置換され、該架橋基を介して他の構成単位(以下、架橋相手の構成単位ということもある)と架橋されたものである。
架橋される前の前駆単位と架橋相手の構成単位とが、同一の共重合体を構成している分子内架橋であってもよく、両者が互いに異なる共重合体を構成している分子間架橋であってもよい。好ましくは分子間架橋である。
【0038】
一般式(I)において、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。R、Rとしての低級アルキル基は、好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜5の直鎖又は分岐状アルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。工業的にはメチル基が好ましい。
およびRの一方が水素原子で、他方がメチル基であることがより好ましい。
【0039】
前記一般式(I)で表される架橋基は酸解離性基を形成し、該酸解離性基が酸の作用によって解離することにより、本発明の効果が得られる。構成単位(a4)において、かかる酸解離性基が少なくとも1つあればよく、したがってpは1以上であるが、好ましくは2または3である。
Aが2価の場合、1つの構成単位(a4)は、1つの前記前駆単位と1つの架橋相手の構成単位とが、前記一般式(I)で表される架橋基を介して架橋されたものである。この場合に、一般式(I)から有機基Aを除いた2価の基[−O−CR−]を残基Bとすると、pが1であれば、前記1つの前駆単位と1つの架橋相手の構成単位の一方は、残基Bを介して有機基Aと結合されており、他方は直接有機基Aと結合されている。又、pが2であれば、前記1つの前駆単位と1つの架橋相手の構成単位の両方が、それぞれ残基Bを介して1つの有機基Aに結合されている。
またAが3価の場合は、1つの構成単位(a4)は、1つの前記前駆単位と、2つの架橋相手の構成単位とが、前記一般式(I)で表される架橋基を介して架橋されたものである。この場合に、pが1であれば、前記1つの前駆単位と2つの架橋相手の構成単位のうちの1つは、残基Bを介して有機基Aと結合されており、残りの2つは直接有機基Aと結合されている。又、pが2であれば、前記1つの前駆単位と2つの架橋相手の構成単位のうちの2つは、残基Bを介して有機基Aと結合されており、残りの1つは直接有機基Aと結合されている。又、pが3であれば、前記1つの前駆単位と2つの架橋相手の構成単位の全部が、それぞれ残基Bを介して1つの有機基Aに結合されている。
Aが2価の場合、pは好ましくは2であり、Aが3価の場合、pは好ましくは3である。特にAが2価でpが2であることが好ましい。
【0040】
架橋相手の構成単位は、(α−低級アルキル)アクリル酸エステル残基を有するものであればよく、前記構成単位(a3)の例として挙げたものを好ましく用いることができる。
架橋される前の前駆単位と架橋相手の構成単位とが同一の構造であってもよく、互いに異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。。
【0041】
有機基Aの具体例としては、アルキレン基、シクロへキシレン基、アリーレン基などの飽和又は不飽和の芳香族又は脂肪族炭化水素基(これらはエーテル基、ポリエーテル基、エステル基のような、酸素原子を含んでもよい)、窒素などの異原子を有してもよい飽和又は不飽和の芳香族又は脂肪族炭化水素基などが挙げられる。
より好ましくは、Aが炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基、アルキレンエーテル基、シクロへキシレン基またはアリーレン基である。
【0042】
構成単位(a4)の具体例として下記一般式(II)で表される構成単位が挙げられる。
【0043】
【化12】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。Aは炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状アルキレン基、又は炭素数4〜10の脂環式基である。X、Yはそれぞれ独立して炭素数4〜12の脂環式基であって、置換基として直鎖又は分岐状の低級アルキル基を有していてもよい。)
【0044】
一般式(II)において、R、Rとしての低級アルキル基(α−低級アルキル基)は、好ましくは炭素数1〜5の直鎖又は分岐状アルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。工業的にはメチル基が好ましい。
、Rは前記R、Rと同様である。R、Rも前記R、Rと同様である。
【0045】
Aは炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状アルキレン基、又は炭素数4〜10の脂環式基である。Aとしての直鎖状又は分岐状アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n−ブタン−1,4−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジイル基等が挙げられる。Aとしての脂環式基の具体例としては、シクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンまたは水素原子の1個以上が直鎖状または分岐状の炭化水素基で置換された前述の環状の炭化水素等から2個水素原子を除いた基等を例示できる。より具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基等が挙げられる。Aは、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキレン基である。
【0046】
X、Yはそれぞれ独立して炭素数4〜12の脂環式基であって、置換基として直鎖又は分岐状の低級アルキル基を有していてもよい。
X、Yの具体例としては、置換基を有していてもよい、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等から2個水素原子を除いた基等を例示できる。より具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基などが挙げられる。これらの中でもアダマンタン、ノルボルナン、テトラシクロドデカンから2個の水素原子を除いた基が工業上好ましく、特にアダマンタンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。
【0047】
X、Yにおける置換基としては、炭素数1〜4の直鎖または分岐状の低級アルキル基が好ましい。置換位置は特に限定されないが、X、Yとしての脂環式基を構成している炭素原子のうち、(α−低級アルキル)アクリル酸エステル残基と結合している炭素原子以外の炭素原子に置換基が結合していることが好ましい。
【0048】
構成単位(a4)のより好ましい例として、下記一般式(aIV)で表される構成単位が挙げられる。
【0049】
【化13】

(式中、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。Aは炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状アルキレン基又は炭素数4〜10の脂環式基である。R15、R16はそれぞれ独立して、直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。)
【0050】
式(aIV)において、A、およびR、Rは前記と同じである。
15、R16としての低級アルキル基は、炭素数1〜5の直鎖又は分岐状アルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられ、メチル基が好ましい。R15とR16は互いに同一でもよく、異なっていてもよい。好ましくは、R15とR16の両方がメチル基である。
【0051】
中でも、構成単位(a4)として、下記一般式(aV)で表されるように、Aが炭素数4の直鎖状アルキレン基(n−ブタン−1,4−ジイル基)である構成単位が好ましい。
【0052】
【化14】

(式中、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。R15、R16はそれぞれ独立して、直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。)
一般式(aV)において、R、R、R15、R16は前記と同じである。
【0053】
このような構成単位(a1)(a2)(a4)を有する共重合体(A1)は、例えば、概略、構成単位(a1)、(a2)、および構成単位(a4)の前駆単位とを有する共重合体(以下、架橋反応前の共重合体を前駆重合体ということもある)を予め合成し、前記一般式(I)で表される架橋基を誘導し得る架橋剤を用い、前駆単位間で架橋反応させることにより形成することができる。架橋反応の際、前駆重合体中に存在する前駆単位の全部を架橋させてもよく、一部のみを架橋させてもよい。一部の前駆単位のみが架橋された場合、架橋後の共重合体(A1)においては、架橋により形成された構成単位(a4)の他に、架橋されなかった前駆単位が前記構成単位(a3)として存在する。
【0054】
共重合体(A1)の好ましい例として、下記一般式(III−1)、(III−2)、(III−3)、および(III−4)でそれぞれ表される構成単位を有する重合体、または下記一般式(VI−1)、(IV−2)、(IV−3)、および(IV−4)でそれぞれ表される構成単位を有する重合体が挙げられる。これらにおいて、一般式(III−1)および(VI−1)で表される構成単位は、構成単位(a1)に相当し、一般式(III−2)および(VI−2)で表される構成単位は、構成単位(a2)に相当し、一般式(III−3)および(VI−3)で表される構成単位は、構成単位(a3)に相当し、一般式(III−4)および(VI−4)で表される構成単位は、構成単位(a4)に相当する。
【0055】
【化15】

(式中、R14’、R16’、R17’、R18’は各々独立して水素原子又はメチル基を示し、好ましくはメチル基である。
15’は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示し、好ましくはメチル基である。)
【0056】
【化16】

(式中、R19’、R20’、R21’、R22’は各々独立して水素原子又はメチル基を示し、好ましくはメチル基である。)
【0057】
以下、共重合体(A1)の合成方法を説明する。
本発明の(A1)成分は通常、以下に詳述する〔方法1〕または〔方法2〕によって合成されるが、本発明においてはこの方法に限定されるものではない。
【0058】
〔方法1〕 本発明の(A1)成分は、重合後にそれぞれ構成単位(a1)、(a2)並びに(a3)を形成する(メタ)アクリル酸エステル化合物および重合後に構成単位(a4)を形成する、例えば下記一般式(II−1)で示されるような、(メタ)アクリル基を2個有する架橋性(メタ)アクリル酸エステル化合物と重合開始剤を有機溶剤に溶解させ、適当な温度で適当な時間、その温度を保持し、重合することによって合成される。
【0059】
【化17】

(式中、R1’は水素原子又はメチル基であり、R2’は多環の脂環式炭化水素基(好ましくは前記したX,Yと同定義)であり、R3’、R4’、R5’、R6’は各々独立して水素原子又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R7は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基、アルキレンエーテル基、シクロへキシレン基またはアリーレン基を表す。)
【0060】
用いられる有機溶剤としては、前述の(メタ)アクリル酸エステル化合物、および得られる重合体のいずれも溶解できる溶剤が好ましく、例えば、1,4−ジオキサン、アセトン、テトラヒドロフラン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノンなどが例示される。
用いる重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物などが例示される。
この時の重合条件は適宜設定することができるが、重合温度は、通常50〜150℃の範囲が好ましく、また、重合時間は、1時間から10時間とするのが好ましく、さらに好ましくは4時間程度以上である。
次に、このように合成した重合体の溶液を、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどの良溶媒にて適当な溶液粘度に希釈した後、メタノール、水などの多量の貧溶媒中に注入して析出させる。その後、その析出物を濾別、十分に乾燥することにより本発明の(A1)成分を得ることができる。
【0061】
〔方法2〕 また、 本発明の(A1)成分は、重合後にそれぞれ構成単位(a1)、(a2)、(a3)を形成する(メタ)アクリル酸エステル化合物と重合開始剤とを有機溶剤に溶解させ、適当な温度で適当な時間、その温度を保持し重合することによって合成した前駆重合体を、架橋後に構成単位(a4)を形成する架橋性ポリビニルエーテル化合物を用いて架橋反応を行うことによって合成することができる。
前駆重合体の合成に用いられる有機溶剤としては、前述の(メタ)アクリル酸エステル化合物、および得られる重合体のいずれも溶解できる溶剤が好ましく、例えば、1,4−ジオキサン、アセトン、テトラヒドロフラン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノンなどが例示される。用いられる重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物などが例示される。
この時の重合条件は適宜設定することができるが、重合温度については、通常50〜150℃の範囲が好ましく、また、反応時間は、1時間から10時間とするのが好ましく、さらに好ましくは4時間程度以上である。このようにして得た前駆重合体溶液、あるいは前駆重合体溶液から前駆重合体を分離した後、適当な溶媒に溶解した前駆重合体の溶液に、架橋後に構成単位(a4)を形成する架橋剤と酸触媒を添加して適当な温度で適当な時間、その温度を保持し、架橋反応を行うことによって、本発明の(A1)成分を合成する。
前駆重合体の分離は、前駆重合体溶液をテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどの良溶媒にて適当な溶液粘度に希釈した後、メタノール、水などの多量の貧溶媒中に注入して析出させる。その後、その析出物を濾別、十分に乾燥することにより行う。
前駆重合体を溶解する溶剤としては、前述の前駆重合体を溶解できる溶剤が好ましく、例えば、1,4−ジオキサン、アセトン、テトラヒドロフラン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、酢酸エチルなどが例示される。
【0062】
架橋剤は、前記一般式(I)で表される構成単位(a4)における架橋部分を形成し得るものであれよく、特に限定されないが、例えば架橋性のビニルエーテル基を2個有する架橋性ポリビニルエーテル化合物を用いることができる。具体例としては、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテ、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルなどが例示される。
【0063】
用いられる酸触媒としては、特に限定されないが、例えば、p−トルエンスルホン酸、ピリジニウム−p−トルエンスルホンネート、硫酸などが例示される。
架橋剤の使用量は、(A1)成分をポジ型レジスト組成物に用いたときに好ましい構成単位(a4)の割合を得る量によって決定され、酸触媒の使用量は、用いる架橋性ポリビニルエーテル化合物に対して0.001〜50モル%が好ましい。
架橋反応条件は適宜設定することができるが、反応温度は、通常0〜100℃の範囲が好ましく、また、反応時間は、15分から10時間とするのが好ましく、さらに好ましくは30分以上である。
架橋反応終了後、反応溶液に例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジンなどの塩基性化合物を添加して反応を停止させ、次いでこの溶液を、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどの良溶媒にて適当な溶液粘度に希釈した後、メタノール、水などの多量の貧溶媒中に注入して析出させる。その後、その析出物を濾別、十分に乾燥することにより本発明の(A1)成分を得ることができる。
前駆重合体の合成後および/または架橋反応後に、必要に応じて、公知の精製工程を行って分散度を調整してもよい。
【0064】
前記〔方法1〕によって(A1)成分を合成する場合、重合後の(A1)成分において、構成単位(a1)が20〜70モル%であることが好ましく、より好ましくは30〜60モル%である。前記下限値以上とすることによって良好な微細パターンを得ることができ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
構成単位(a2)は、20〜60モル%、好ましくは20〜50モル%含まれていると好ましい。下限値以上とすることによって良好な微細パターンを得ることができ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
構成単位(a3)は、0〜40モル%、好ましくは0.15〜6モル%含まれていると好ましい。上限値以下とすることにより、ポジ型レジスト組成物に用いたときに良好な微細パターンを得ることができる。
構成単位(a4)は、5〜40モル%であることが好ましく、より好ましくは10〜30モル%である。下限値以上とすることにより、レジストとして好ましい割合の(a4)構成単位を導入することができ、上限値以下とすることにより、ゲル化など過剰の架橋反応を防止してポジ型レジスト組成物に用いたときに良好な微細パターンを得ることができる。
【0065】
前記〔方法2〕によって(A1)成分を合成する場合、架橋される前の前駆重合体において、該前駆重合体を構成する全構成単位の合計に対して、構成単位(a1)が20〜70モル%であることが好ましく、より好ましくは30〜60モル%である。前記下限値以上とすることによって良好な微細パターンを得ることができ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0066】
構成単位(a2)は、前駆重合体を構成する全構成単位の合計に対して、20〜60モル%、好ましくは20〜50モル%含まれていると好ましい。下限値以上とすることによって良好な微細パターンを得ることができ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0067】
前駆重合体における構成単位(a4)の前駆単位の割合は、5〜40モル%であることが好ましく、より好ましくは10〜30モル%である。下限値以上とすることにより、レジストとして好ましい割合の(a4)構成単位を導入することができ、上限値以下とすることにより、ゲル化など過剰の架橋反応を防止してポジ型レジスト組成物に用いたときに良好な微細パターンを得ることができる。
そして架橋反応の際に、前駆重合体中の前駆単位のうちの0〜98モル%、より好ましくは3〜15モル%が架橋されずに、架橋後の(A1)成分中に構成単位(a3)として存在することが好ましい。即ち、(A1)成分中に、構成単位(a3)は、0〜40モル%、好ましくは0.15〜6モル%含まれていると好ましい。上限値以下とすることにより、ポジ型レジスト組成物に用いたときに良好な微細パターンを得ることができる。
【0068】
・・その他の構成単位
共重合体(A1)には、前記構成単位(a1)、(a2)、(a3)、および(a4)の他に、さらに他の構成単位を含むものであってもよい。
他の構成単位としては、構成単位(a1)ないし(a4)以外の構成単位(a5)等が挙げられる。
【0069】
・・構成単位(a5)
構成単位(a5)は、上述の構成単位(a1)ないし(a4)に分類されない他の構成単位であれば特に限定するものではない。すなわち酸解離性溶解抑制基、ラクトン含有単環又は多環式基、水酸基又はカルボキシル基を含有する多環の脂環式炭化水素基、および前記架橋基を含有しないものであればよい。例えば多環の脂環式炭化水素基を含み、かつ(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位などが好ましい。この様な構成単位を用いると、ポジ型レジスト組成物用として用いたときに、孤立パターンからセミデンスパターン(ライン幅1に対してスペース幅が1.2〜2のラインアンドスペースパターン)の解像性に優れ、好ましい。
【0070】
かかる多環の脂環式炭化水素基は、例えば、前記の構成単位(a1)および(a3)において例示したものと同様のものを挙げることができ、ArFポジレジスト材料として従来から知られている多数のものから適宜選択して使用可能である。
特にトリシクロデカニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基から選ばれる少なくとも1種以上であると、工業上入手し易いなどの点で好ましい。
【0071】
これら構成単位(a5)の例として下記一般式(V)〜(VII)で表される化合物が挙げられる。
【0072】
【化18】

(式中Rは水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。)
【0073】
【化19】

(式中Rは水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。)
【0074】
【化20】

(式中Rは水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。)
【0075】
前記Rとしての低級アルキル基(α−低級アルキル基)は、好ましくは炭素数1〜5の直鎖又は分岐状アルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。工業的にはメチル基が好ましい。
構成単位(a5)は(A1)成分の必須成分ではないが、これを(A1)成分に含有させる際には、(A1)成分の全構成単位の合計に対して、構成単位(a5)が1〜30モル%、好ましくは10〜20モル%となるように含有させると、孤立パターンからセミデンスパターンの解像性において良好な向上効果が得られるので好ましい。
【0076】
共重合体(A1)成分の架橋される前の前駆重合体の質量平均分子量Mwは、1000〜20000が好ましく、より好ましくは1000〜10000、更に好ましくは2000〜7000である。該質量平均分子量を上記範囲の上限以下、下限以上とすることにより架橋後の(A1)成分を、ポジ型レジスト組成物に用いたときに良好な微細パターンを得ることができる。
また前駆重合体における分散度、すなわち質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、1.2〜3.0の範囲が好ましく、1.4〜2.5、さらには1.4〜2.0の範囲が好ましい。該分散度を上記範囲の上限以下、下限以上とすることにより架橋後の(A1)成分を、ポジ型レジスト組成物に用いたときに良好な微細パターンを得ることができる。
【0077】
また架橋後の共重合体(A1)の質量平均分子量Mwは、2000〜30000が好ましく、より好ましくは5000〜20000、更に好ましくは7000〜18000である。該質量平均分子量を上記範囲の上限以下、下限以上とすることにより(A1)成分をポジ型レジスト組成物に用いたときに良好な微細パターンを得ることができる。
また架橋後の(A1)成分における分散度(Mw/Mn)は、1.5〜4.0の範囲が好ましく、1.7〜3.5、さらには1.9〜3.0の範囲が好ましい。該分散度を上記範囲の上限以下とすることにより(A1)成分を、ポジ型レジスト組成物に用いたときに良好な微細パターンを得ることができる。
【0078】
なお、樹脂成分(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で(A1)成分以外の適宜の樹脂を含んでいてもよいが、(A)成分の100質量%が(A1)成分であることが好ましい。
【0079】
・酸発生剤成分(B)(以下、(B)成分ということもある)
(B)成分は、従来の化学増幅型レジスト組成物において使用されている公知の酸発生剤から特に限定せずに用いることができる。
このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類、ジアゾメタンニトロベンジルスルホネート類などのジアゾメタン系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
【0080】
オニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−メチルフェニル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、モノフェニルジメチルスルホニウムのトリフルオロンメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニルモノメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−tert−ブチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネートなどが挙げられる。
【0081】
オキシムスルホネート系酸発生剤の具体例としては、α‐(p‐トルエンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(p‐クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(4‐ニトロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(4‐ニトロ‐2‐トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐クロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐2,4‐ジクロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐2,6‐ジクロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシベンジルシアニド、α‐(2‐クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐チエン‐2‐イルアセトニトリル、α‐(4‐ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐[(p‐トルエンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシフェニル]アセトニトリル、α‐[(ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシフェニル]アセトニトリル、α‐(トシルオキシイミノ)‐4‐チエニルシアニド、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘプテニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロオクテニルアセトニトリル、α‐(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)‐シクロヘキシルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐エチルアセトニトリル、α‐(プロピルスルホニルオキシイミノ)‐プロピルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐シクロペンチルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐シクロヘキシルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(n‐ブチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(n‐ブチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−p−メチルフェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−ブロモフェニルアセトニトリルなどが挙げられる。これらの中で、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリルが好ましい。
【0082】
ジアゾメタン系酸発生剤のうち、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類の具体例としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
また、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類としては、例えば、以下に示す構造をもつ1,3−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン(化合物A、分解点135℃)、1,4−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ブタン(化合物B、分解点147℃)、1,6−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン(化合物C、融点132℃、分解点145℃)、1,10−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン(化合物D、分解点147℃)、1,2−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)エタン(化合物E、分解点149℃)、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン(化合物F、分解点153℃)、1,6−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン(化合物G、融点109℃、分解点122℃)、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン(化合物H、分解点116℃)などを挙げることができる。
【0083】
【化21】

【0084】
本発明においては、中でも(B)成分としてフッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩を用いることが好ましい。
【0085】
(B)成分としては、1種の酸発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.5〜30質量部、好ましくは1〜10質量部とされる。上記範囲より少ないとパターン形成が十分に行われないおそれがあり、上記範囲を超えると均一な溶液が得られにくく、保存安定性が低下する原因となるおそれがある。
【0086】
・含窒素有機化合物(D)
本発明のポジ型レジスト組成物には、レジストパターン形状、引き置き経時安定性などを向上させるために、さらに任意の成分として、含窒素有機化合物(D)(以下、(D)成分という)を配合させることができる。
この(D)成分は、既に多種多様なものが提案されているので、公知のものから任意に用いれば良いが、アミン、特に第2級低級脂肪族アミンや第3級低級脂肪族アミンが好ましい。
ここで、低級脂肪族アミンとは炭素数5以下のアルキルまたはアルキルアルコールのアミンを言い、この第2級や第3級アミンの例としては、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどが挙げられるが、特にトリエタノールアミンのような第3級アルカノールアミンが好ましい。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0087】
・(E)成分
また、前記(D)成分との配合による感度劣化を防ぎ、またレジストパターン形状、引き置き安定性等の向上の目的で、さらに任意の成分として、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(E)(以下、(E)成分という)を含有させることができる。なお、(D)成分と(E)成分は併用することもできるし、いずれか1種を用いることもできる。
有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸若しくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ‐n‐ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸又はそれらのエステルのような誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸‐ジ‐n‐ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステルなどのホスホン酸及びそれらのエステルのような誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸及びそれらのエステルのような誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。
(E)成分は、(A)成分100質量部当り0.01〜5.0質量部の割合で用いられる。
【0088】
・有機溶剤
本発明のポジ型レジスト組成物は、材料を有機溶剤に溶解させて製造することができる。
有機溶剤としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
例えば、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、またはジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルまたはモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類およびその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類などを挙げることができる。
これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
また、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と極性溶剤とを混合した混合溶媒は好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2の範囲内とすることが好ましい。
より具体的には、極性溶剤としてELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比が好ましくは2:8〜8:2、より好ましくは3:7〜7:3であると好ましい。
また、有機溶剤として、その他には、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者の質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
有機溶剤の使用量は特に限定しないが、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定されるものであるが、一般的にはレジスト組成物の固形分濃度2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲内となる様に用いられる。
【0089】
・その他の任意成分
本発明のポジ型レジスト組成物には、さらに所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料などを適宜、添加含有させることができる。
【0090】
・レジストパターン形成方法
本発明のレジストパターン形成方法は例えば以下の様にして行うことができる。
すなわち、まずシリコンウェーハのような基板上に、上記ポジ型レジスト組成物をスピンナーなどで塗布し、80〜150℃の温度条件下、プレベークを40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施し、これに例えばArF露光装置などにより、ArFエキシマレーザー光を所望のマスクパターンを介して選択的に露光した後、80〜150℃の温度条件下、PEB(露光後加熱)を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施す。次いでこれをアルカリ現像液、例えば0.1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像処理する。このようにして、マスクパターンに忠実なレジストパターンを得ることができる。
なお、基板とレジスト組成物の塗布層との間には、有機系または無機系の反射防止膜を設けることもできる。
【0091】
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線などの放射線を用いて行うことができる。特に、本発明にかかるホトレジスト組成物は、ArFエキシマレーザーに対して有効である。
【0092】
本発明における(A)成分は、酸解離性溶解抑制基を有し、(B)成分から発生した酸の作用により該酸解離性溶解抑制基が解離して、アルカリ可溶性が増大する。
さらに詳しくは、露光により(B)成分から発生した酸が(A)成分に作用すると、(A)成分中の酸解離性溶解抑制基が解離し、これによってポジ型レジスト全体がアルカリ不溶性からアルカリ可溶性に変化する。そのため、レジストパターンの形成においてマスクパターンを介してポジ型レジストの露光を行うと、又は露光に加えてPEBを行うと、露光部はアルカリ可溶性へ転じる一方で未露光部はアルカリ不溶性のまま変化しないので、アルカリ現像することによりポジ型のレジストパターンが形成できる。
【0093】
特に本発明によれば、解像度が高く、かつLERが小さいレジストパターンを形成することができる。このことは、(A1)成分が架橋された構成単位(a4)を有することにより、(A1)成分自体のアルカリ現像液に対する溶解性が低くなること、および該構成単位(a4)の架橋部位に酸解離性基が形成されていることから、露光部で該架橋部位の切断が生じ、その結果、アルカリ現像液に対する溶解性が高くなることが大きく寄与していると考えられる。そして、このように露光部と未露光部とで溶解性が大きく変化することにより、コントラストが大きくなって限界解像度が向上するとともに、LERも小さくなると考えられる。
特に構成単位(a4)が分子間結合されている場合は、該構成単位(a4)の架橋部位に切断が生じることによって、樹脂成分の分子量が大幅に低下し、その結果、アルカリ現像液に対する溶解性が大きく変化すると考えられる。
【実施例】
【0094】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0095】
(合成例1)
下記一般式で表される共重合体(A1−1)を合成した。
【0096】
【化22】

【0097】
(1)前駆重合体の合成
窒素吹き込み管と還流器と、滴下ロートと温度計を取り付けた4口フラスコに、テトラヒドロフラン2500g、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート320g、γ−ブチロラクトンメタクリレート230gと3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート160gを入れ、窒素置換した後、攪拌しながら70℃に昇温した。その温度を維持しつつ、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)80gを120gのテトラヒドロフランに溶解させた重合開始剤溶液を15分かけて滴下した。滴下終了後、その温度を維持しつつ5時間攪拌を続けた後、25℃に冷却し重合を完了した。
その後、得られた重合溶液を大量のメタノール/水の混合溶液中に滴下して析出物を得た。この析出物をろ別、洗浄、乾燥して白色固体のランダムコポリマー(前駆重合体)を得た。
(2)(1)で得られた白色固体の同定
・ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算で求めた質量平均分子量;5,600,分散度1.9
・同位体炭素核磁気共鳴(13C−NMR)分析による単量体組成比;2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート/γ−ブチロラクトンメタクリレート/3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート=39/41/20モル%
【0098】
(3)架橋
窒素吹き込み管と還流器と、滴下ロートと温度計を取り付けた4口フラスコに、得られた白色固体140g、テトラヒドロフラン700g、p−トルエンスルホン酸・1水和物20mgを入れ、攪拌しながら50℃に昇温した。その温度を維持しつつ、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル6gを1gのテトラヒドロフランに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、その温度を維持しつつ3時間攪拌後、25℃まで冷却した。その後、トリエチルアミンを加え反応を停止した。
得られた反応溶液を、大量の水中に滴下して析出物を得た。この析出物をろ別、洗浄、乾燥して白色固体のランダムコポリマー(共重合体(A1−1))を得た。
(4)(3)で得られた白色固体の同定
・ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算で求めた質量平均分子量;10,700,分散度2.9
・同位体水素核磁気共鳴(H−NMR)分析で求めた3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート部位のヒドロキシル基の架橋率;4%
【0099】
(合成例2)
下記一般式で表される共重合体(A1−2)を合成した。
【0100】
【化23】

【0101】
(1)前駆重合体の合成
窒素吹き込み管と還流器と、滴下ロートと温度計を取り付けた4口フラスコにメチルエチルケトン520g、1−シクロヘキシルメタクリレート20g、γ−ブチロラクトンメタクリレート20gと3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート60gを入れ、窒素置換した後、攪拌しながら85℃に昇温した。その温度を維持しつつ、1−シクロヘキシルメタクリレート250g、γ−ブチロラクトンメタクリレート210g、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート150gとジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート80gを1250gのメチルエチルケトンに溶解させた溶解液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、その温度を維持しつつ3時間攪拌を続けた後、25℃に冷却し重合を完了した。
その後、得られた重合溶液を大量のメタノール中に滴下して析出物を得た。この析出物をろ別、洗浄、乾燥して白色固体のランダムコポリマー(前駆重合体)を得た。
(2)(1)で得られた白色固体の同定
・ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算で求めた質量平均分子量;5,000,分散度1.7
・同位体炭素核磁気共鳴(13C−NMR)分析による単量体組成比;1−シクロヘキシルメタクリレート/γ−ブチロラクトンメタクリレート/3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート=35/43/22モル%
【0102】
(3)架橋
窒素吹き込み管と還流器と、滴下ロートと温度計を取り付けた4口フラスコに得られた白色固体130g、テトラヒドロフラン650g、p−トルエンスルホン酸・1水和物20mgを入れ、攪拌しながら50℃に昇温した。その温度を維持しつつ、1、4−ブタンジオールジビニルエーテル8gを1gのテトラヒドロフランに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、その温度に維持しつつ3時間攪拌後、25℃まで冷却した。その後、トリエチルアミンを加え反応を停止した。
得られた反応溶液を、大量の水中に滴下して析出物を得た。この析出物をろ別、洗浄、乾燥して白色固体のランダムコポリマー(共重合体(A1−2))を得た。
(4)(3)で得られた白色固体の同定
・ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算で求めた質量平均分子量;9,400,分散度2.6
・同位体水素核磁気共鳴(H−NMR)分析で求めた3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート部位のヒドロキシル基の架橋率;4%
【0103】
(実施例1)
合成例1の(3)で得られた共重合体(A1−1)を用い、以下の組成でポジ型レジスト組成物を調製した。
(A)成分として共重合体(A1−1) 100質量部、
(B)成分として4-メチルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート 3.0質量部
(D)成分としてトリエタノールアミン 0.35質量部
上記(A)〜(D)をPGMEA:EL=6:4の有機溶剤に溶解して、固形分濃度10質量%のポジ型レジスト組成物を調整した。
【0104】
(比較例1)
実施例1において、共重合体(A1−1)に代えて、前記合成例1の(1)で得られた前駆重合体100質量部を用いた他は、実施例1と同様にしてポジ型レジスト組成物を調製した。
【0105】
(比較例2)
前記合成例1の(1)において、合成条件を変えることにより、質量平均分子量;10,000,分散度1.9、単量体組成比;2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート/γ−ブチロラクトンメタクリレート/3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート=39/41/20モル%の、架橋基を有さない共重合体を合成した。
この得られた共重合体を、前記共重合体(A1−1)に代えて用いた他は実施例1と同様にしてポジ型レジスト組成物を調製した。
【0106】
(評価方法)
実施例1および比較例1,2で得られたポジ型レジスト組成物を用いてレジストパターンを形成した。
まず、有機系反射防止膜組成物「ARC−29A」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて8インチシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚77nmの有機系反射防止膜を形成した。
次いで、ポジ型レジスト組成物を、スピンナーを用いて反射防止膜上に塗布し、ホットプレート上で120℃、90秒間プレベーク(PAB)し、乾燥することにより、膜厚300nmのレジスト層を形成した。
次いで、ArF露光装置NSR−S302(ニコン社製;NA(開口数)=0.60,2/3輪帯)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、マスクパターン(ハーフトーン)を介して選択的に照射した。
そして、120℃、90秒間の条件でPEB処理し、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間パドル現像し、その後20秒間水洗して乾燥してレジストパターンを形成した。
なお、比較例2においては、プレベーク温度を130℃に、PEB温度を130℃にそれぞれ変更した。
このようにして、1:1の130nmのラインアンドスペースパターンを形成した。
【0107】
上記で形成したレジストパターンについて以下の項目について評価した。
<感度>
130nmのラインアンドスペースが1:1に形成される露光時間を感度(EOP)としてmJ/cm(エネルギー量)単位で測定した。
<LER>
ライン幅130nmの1:1ラインアンドスペースパターンについて、LERを示す尺度である3σを求めた。側長SEM(日立製作所社製,商品名「S−9220」)により、試料のレジストパターンの幅を32箇所測定し、その結果から算出した標準偏差(σ)の3倍値(3σ)である。この3σは、その値が小さいほどラフネスが小さく、均一幅のレジストパターンが得られたことを意味する。
【0108】
【表1】

【0109】
上記の結果より、実施例1は解像性が高く、かつLERが低減されていることがわかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分(A)、及び露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)を含有するレジスト組成物であって、
前記樹脂成分(A)が、酸解離性溶解抑制基を含有するモノ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)、ラクトン含有単環又は多環式基を有するモノ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)、および水酸基又はカルボキシル基を含有する多環の脂環式炭化水素基を有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される前駆単位の、前記水酸基又はカルボキシル基の水素原子が下記一般式(I)
【化1】

(式中、Aは2価又は3価の有機基であり、pは1〜3の整数である。R、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。)
で表される架橋基で置換され、分子内または分子間で架橋されているポリ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a4)を有する共重合体(A1)を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【請求項2】
前記共重合体(A1)が、さらに水酸基又はカルボキシル基を含有する多環の脂環式炭化水素基を有するモノ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)を有することを特徴とする請求項1記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項3】
前記構成単位(a4)が、下記一般式(II)
【化2】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。Aは炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状アルキレン基、又は炭素数4〜10の脂環式基である。X、Yはそれぞれ独立して炭素数4〜12の脂環式基であって、置換基として直鎖又は分岐状の低級アルキル基を有していてもよい。)
で表されることを特徴とする請求項1または2に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項4】
前記XおよびYの一方または両方が、置換基として直鎖又は分岐状の低級アルキル基を有していてもよいアダマンタンから水素原子を2個除いた基であることを特徴とする請求項3記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項5】
前記構成単位(a1)が下記一般式(aI)
【化3】

(式中、Rは水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基であり、R10は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。)
で表される構成単位であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項6】
前記構成単位(a2)が下記一般式(aII)
【化4】

(式中、R11、R12、R13は、それぞれ独立して水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。)
で表される構成単位であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項7】
前記構成単位(a3)が下記一般式(aIII)
【化5】

(式中、R14は水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。nは1〜3の整数である。)
で表される構成単位であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項8】
前記構成単位(a4)が下記一般式(aIV)
【化6】

(式中、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。Aは炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状アルキレン基又は炭素数4〜10の脂環式基である。R15、R16はそれぞれ独立して、直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。)
で表される構成単位であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項9】
前記構成単位(a4)が下記一般式(aV)
【化7】

(式中、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子、又は直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。R15、R16はそれぞれ独立して、直鎖又は分岐状の低級アルキル基である。)
で表されることを特徴とする請求項8記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項10】
さらに含窒素有機化合物を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のポジ型レジスト組成物を基板上に塗布し、プレべークし、選択的に露光した後、PEB(露光後加熱)を施し、アルカリ現像してレジストパターンを形成することを特徴とするレジストパターン形成方法。


【公開番号】特開2006−3844(P2006−3844A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183041(P2004−183041)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】