説明

ポジ型感光性樹脂組成物、パターンの製造方法及び電子部品

【課題】低温硬化でも耐熱性良好な硬化膜が得られるポジ型感光性樹脂組成物の提供。
【解決手段】本発明の樹脂組成物は、(a)ポリオキサゾール前駆体の構造を有するアルカリ水溶液可溶性のポリアミドと、(b)o−キノンジアジド化合物と、(c)加熱により酸を発生する熱潜在酸発生剤とを含んでなり、(c)成分が、パラトルエンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸のトリメチルスルホニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸のジメチルフェニルスルホニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸のジフェニルメチルスルホニウム塩、ノナフルオロブタンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩、ベンゼンスルホン酸のジメチルフェニルスルホニウム塩、トルエンスルホン酸のジフェニルメチルスルホニウム塩のいずれかである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性を有するポリオキサゾール前駆体を含有する耐熱性ポジ型感光性樹脂組成物、該組成物を用いたパターンの製造方法及び電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜には優れた耐熱性と電気特性、機械特性等を併せ持つポリイミド樹脂が用いられている。しかし、近年半導体素子の高集積化、小型化が進む中、封止樹脂パッケージの薄型化小型化の要求があり、LOC(リード・オン・チップ)や半田リフローによる表面実装などの方式が取られてきているため、これまで以上に半導体回路の最表面に保護膜として形成されるのに適した特性、すなわち、機械特性、耐熱性等に優れたポリイミド樹脂が必要とされるようになっている。
【0003】
一方、パターン作成工程が簡略化でき、煩雑な製造工程の短縮が行えるという特徴を有することから、ポリイミド樹脂自身に感光特性を付与した感光性ポリイミドが用いられてきている。
【0004】
このような従来の感光性ポリイミドまたはその前駆体を用いてなる耐熱性フォトレジストは良く知られている。例えば、ネガ型の感光性樹脂では、ポリイミド前駆体にエステル結合またはイオン結合を介してメタクリロイル基を導入する方法(例えば、特許文献1〜4参照)、光重合性オレフィンを有する可溶性ポリイミド(例えば、特許文献5〜10参照)により得られるポリイミド、ベンゾフェノン骨格を有し、かつ窒素原子が結合する芳香環のオルソ位にアルキル基を有する自己増感型ポリイミド(例えば、特許文献11、12参照)などが挙げられる。また、これらの用途についても良く知られている。しかしながら、上記ネガ型の感光性樹脂では、現像の際にN−メチルピロリドン等の有機溶剤を必要とするため、最近では、アルカリ水溶液で現像ができるポジ型の感光性樹脂の提案がなされている。
【0005】
ポジ型の感光性樹脂としては、例えば、ポリイミド前駆体にエステル結合を介してo−ニトロベンジル基を導入する方法(例えば、非特許文献1参照)、可溶性ヒドロキシルイミドまたはポリオキサゾール前駆体にナフトキノンジアジド化合物を混合する方法(例えば、特許文献13、14参照)、可溶性ポリイミドにエステル結合を介してナフトキノンジアジドを導入する方法(例えば、非特許文献2参照)などにより得られるポジ型の感光性樹脂や、ポリイミド前駆体にナフトキノンジアジドを混合して得られる感光性樹脂組成物(例えば、特許文献15参照)などが知られている。
【0006】
しかしながら、上記のネガ型の感光性樹脂では、感光剤の吸収波長から生じる解像度に問題があったり、用途によっては製造時の歩留まり低下を招いたりするなどの問題がある。また、上記のポリイミド樹脂では用いるポリマーの構造が限定されるために、最終的に得られる被膜の物性が限定されてしまい多目的用途には不向きなものもある。また、ポジ型の感光性樹脂においてもネガ型の感光性樹脂と同様に感光剤の吸収波長に伴う問題から感度や解像度が低くなったり、構造が限定されたりして、同様の問題を生じる。
【0007】
また、ポリベンゾオキサゾール前駆体にジアゾナフトキノン化合物を混合した材料(例えば、特許文献16参照)や、ポリアミド酸にエステル結合を介してフェノール部位を導入した材料(例えば、特許文献17参照)などカルボン酸の代わりにフェノール性水酸基を導入した材料も提案されているが、これらの材料は現像性が不十分である。また、未露光部の膜減りや基材から樹脂が剥離するという問題点がある。
【0008】
このような現像性や接着の改良を目的に、シロキサン部位をポリマー骨格中に有するポリアミド酸を混合した材料(例えば、特許文献18、19参照)が提案されているが、ポリアミド酸を用いるため保存安定性が悪化する。そこで、保存安定性や接着の改良を目的に、アミン末端基を重合性基で封止した材料(例えば、特許文献20〜22参照)も提案されている。しかしながら、これらの材料は、酸発生剤として芳香環を多数含むジアゾキノン化合物を用いるため、感度が低い。さらに、ジアゾキノン化合物の添加量を増やす必要があることから、熱硬化後の機械物性を著しく低下させるという問題があり、実用レベルの材料とは言い難い。
【0009】
上記ジアゾキノン化合物の問題点の改良を目的に種々の化学増幅システムを適用した材料も提案されている。化学増幅型のポリイミド(例えば、特許文献23参照)、化学増幅型のポリイミド、ポリベンゾオキサゾール前駆体(例えば、特許文献24〜30参照)が挙げられる。しかしながら、これらのうち、高感度のものは低分子量であるため、膜特性の低下が認められる。一方、膜特性に優れるものは高分子量であるため、溶解性が不十分となり、感度の低下が認められる。従って、いずれも実用レベルの材料とは言い難く、いずれも未だ実用化レベルで充分な材料はないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭49−11541号公報
【特許文献2】特開昭50−40922号公報
【特許文献3】特開昭54−145794号公報
【特許文献4】特開昭56−38038号公報
【特許文献5】特開昭59−108031号公報
【特許文献6】特開昭59−220730号公報
【特許文献7】特開昭59−232122号公報
【特許文献8】特開昭60−6729号公報
【特許文献9】特開昭60−72925号公報
【特許文献10】特開昭61−57620号公報
【特許文献11】特開昭59−219330号公報
【特許文献12】特開昭59−231533号公報
【特許文献13】特開昭64−60630号公報
【特許文献14】米国特許4395482号明細書
【特許文献15】特開昭52−13315号公報
【特許文献16】特公平1−46862号公報
【特許文献17】特開平10−307393号公報
【特許文献18】特開平4−31861号公報
【特許文献19】特開平4−46345号公報
【特許文献20】特開平5−197153号公報
【特許文献21】特開平9−183846号公報
【特許文献22】特開2001−183835号公報
【特許文献23】特開平3−763号公報
【特許文献24】特開平7−219228号公報
【特許文献25】特開平10−186664号公報
【特許文献26】特開平11−202489号公報
【特許文献27】特開2000−56559号公報
【特許文献28】特開2001−194791号公報
【特許文献29】特表2002−526793号公報
【特許文献30】米国特許6143467号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】J. Macromol. Sci. Chem., A24, 10, 1407, 1987
【非特許文献2】Macromolecules, 23, 1990
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
感光性ポリイミドあるいは感光性ポリベンゾオキサゾールは、パターン形成後に、通常、350℃前後の高温で硬化を行う。これに対して、最近、登場してきた次世代メモリとして有望なMRAM(Magnet Resistive RAM:不揮発性磁気抵抗メモリ)は、高温プロセスに弱く、低温プロセスでの製造が望まれている。したがって、バッファーコート(表面保護膜)の材料として、従来の350℃前後というような高温でなく、約280℃の以下の低温で硬化することができ、さらに硬化後の膜の物性が、高温で硬化した膜の物性と遜色ない性能が得られる感光性樹脂組成物が不可欠となってきている。
【0013】
そこで、本発明は、アルカリ現像可能な感光性ポリベンゾオキサゾール前駆体に対して、特定の添加剤を用いることにより、低温での硬化プロセスによっても高温での硬化膜の物性と差がないような耐熱性に富んだ硬化膜を得ることができるポジ型の感光性樹脂組成物を提供する。
【0014】
また、本発明のパターン製造方法は、上記ポジ型感光性樹脂組成物を用いるため、アルカリ水溶液で現像可能であり、感度、解像度に優れ、良好な形状のパターンが得られる。
また、280℃以下の低温硬化プロセスによって耐熱性に優れたパターンを得ることができる。
【0015】
また、本発明は、良好な形状と特性のパターンを有し、さらには低温プロセスによって硬化できるため、デバイスへのダメージが避けられ、信頼性の高い電子部品を歩留まり良く提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、次のものに関する。
[1] (a)ポリオキサゾール前駆体の構造を有するアルカリ水溶液可溶性のポリアミドと、(b)o−キノンジアジド化合物と、(c)加熱により酸を発生する熱潜在酸発生剤とを含むポジ型感光性樹脂組成物であって、前記(c)成分が、パラトルエンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸のトリメチルスルホニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸のジメチルフェニルスルホニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸のジフェニルメチルスルホニウム塩、ノナフルオロブタンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩、ベンゼンスルホン酸のジメチルフェニルスルホニウム塩、及びトルエンスルホン酸のジフェニルメチルスルホニウム塩のいずれかであることを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
[2] 上記(a)成分が、下記一般式(I)
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、Uは4価の有機基を示し、Vは2価の有機基を示す)で表される繰り返し単位を有するポリアミドであることを特徴とする上記[1]に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[3] 上記(c)成分の分解開始温度が、140℃以上250℃以下であることを特徴とする上記[1]または[2]のいずれか1つに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[4]さらに、(d)フェノール性水酸基を有する化合物を含むことを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[5]上記(d)成分が、下記一般式(II)
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、Xは単結合又は2価の有機基を示し、R3〜R6は各々独立に水素原子または一価の有機基を示し、m及びnは各々独立に1〜3の整数であり、p及びqは各々独立に0〜4の整数である)で表される化合物であることを特徴とする上記[4]に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[6]上記一般式(II)中、Xで表される基が、下記一般式(III)
【0021】
【化3】

【0022】
(式中、2つのAは各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基を示し、酸素原子及び/又はフッ素原子を含んでいても良い)で表される基であることを特徴とする上記[5]に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[7] 上記(a)成分、(b)成分、および(c)成分間の配合割合が、上記(a)成分100重量部に対して、上記(b)成分5〜100重量部、上記(c)成分0.1〜30重量部であることを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれか1つに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[8] 上記(a)成分、(b)成分、(c)成分、および(d)成分間の配合割合が、上記(a)成分100重量部に対して、上記(b)成分5〜100重量部、上記(c)成分0.1〜30重量部、上記(d)成分1〜30重量部であることを特徴とする上記[4]〜[7]のいずれか1つに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[9] 上記[1]〜[8]のいずれか1つに記載のポジ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥し、感光性樹脂膜を得る工程と、上記感光性樹脂膜を所定のパターンの活性光線に露光する工程と、上記露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン製造方法。
[10] 上記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程をさらに含むことを特徴とする、上記[9]に記載のパターン製造方法。
[11] 上記加熱処理は、周波数を変化させながらマイクロ波をパルス状に照射する処理であることを特徴とする上記[10]に記載のパターン製造方法。
[12] 上記加熱処理が、280℃以下の温度において行われることを特徴とする上記[10]又は[11]に記載のパターン製造方法。
[13]上記[9]〜[12]のいずれか1つに記載のパターンの製造方法により得られるパターンの層を有してなる電子デバイスを有する電子部品であって、上記電子デバイスが、その中に設けられた上記パターンの層を、層間絶縁膜層及び/または表面保護膜層として含むことを特徴とする電子部品。
[14] MRAMであることを特徴とする上記[13]に記載の電子部品。
【発明の効果】
【0023】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、感光性樹脂膜を露光、現像後に加熱処理する工程において、熱潜在酸発生剤から発生した酸が、ポリベンゾオキサゾール前駆体のフェノール性水酸基含有ポリアミド構造が脱水反応を起こして環化する際の触媒としてはたらく。そのため、より低温で効率的に環化反応や硬化反応が起きる。用いる熱潜在酸発生剤として、所定のものを使用することにより、露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度差(溶解コントラスト)には悪影響を及ぼさず、感度、解像度に優れる。また、本発明のパターン製造方法によれば、上記ポジ型感光性樹脂組成物の使用により、感度、解像度、接着性に優れ、さらに低温硬化プロセスでも耐熱性に優れ、吸水率の低い、良好な形状のパターンが得られる。
【0024】
また、本発明の電子部品は、良好な形状と接着性、耐熱性に優れたパターンを有し、さらに低温プロセスで硬化できることにより、デバイスへのダメージが避けられ、信頼性の高いものである。また、デバイスへのダメージが少ないことから、歩留まりも高い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、多層配線構造の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示す工程に続く製造工程を示す断面図である。
【図3】図3は、図2に示す工程に続く製造工程を示す断面図である。
【図4】図4は、図3に示す工程に続く製造工程を示す断面図である。
【図5】図5は、図4に示す工程に続く製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(a)成分として、ポリオキサゾール前駆体の構造を有するアルカリ水溶液可溶性のポリアミドを含む。本発明に用いられるポリアミドは、ポリオキサゾール前駆体の構造を一部に有し、全体としてアルカリ水溶液可溶性であれば特に制限はなく、例えば、ポリオキサゾール前駆体ではないポリアミドの構造、ポリベンゾオキサゾールの構造、ポリイミドやポリイミド前駆体(ポリアミド酸やポリアミド酸エステル)の構造等をポリオキサゾール前駆体の構造と共に有していても良い。
【0027】
本発明に用いられるポリアミドとしては、上記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するアルカリ水溶液可溶性のフェノール性水酸基含有ポリアミドが好ましいものとして挙げられる。このフェノール性水酸基含有ポリアミドは、一般にポリオキサゾール、好ましくはポリベンゾオキサゾールの前駆体として機能する。なお、アルカリ水溶液とは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液等のアルカリ性の溶液をいう。ポリオキサゾール前駆体の構造、例えば、一般式(I)で表されるヒドロキシ基を含有するアミドユニットは、最終的には硬化時の脱水閉環により、耐熱性、機械特性、電気特性に優れるオキサゾール体に変換される。
【0028】
本発明に用いられるポリアミドは、上記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するものが好ましいが、そのポリアミドのアルカリ水溶液に対する可溶性は、Uに結合するOH基(一般にはフェノール性水酸基)に由来するため、上記OH基を含有するアミドユニットが、ある割合以上含まれていることが好ましい。
【0029】
即ち、下記一般式(IV)
【0030】
【化4】

【0031】
(式中、Uは4価の有機基を示し、VとWは2価の有機基を示す。jとkは、モル分率を示し、jとkの和は100モル%であり、jが60〜100モル%、kが40〜0モル%である)で表されるポリアミドであることが好ましい。ここで、式中のjとkのモル分率は、j=80〜100モル%、k=20〜0モル%であることがより好ましい。
【0032】
(a)成分の分子量は、重量平均分子量で3,000〜200,000が好ましく、5,000〜100,000がより好ましい。ここで、分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得た値である。
【0033】
本発明に用いられるポリアミドの製造方法に特に制限はなく、例えば上記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリアミドは、一般的にジカルボン酸誘導体とヒドロキシ基含有ジアミン類とから合成できる。具体的には、ジカルボン酸誘導体をジハライド誘導体に変換後、上記ジアミン類との反応を行うことにより合成できる。ジハライド誘導体としては、ジクロリド誘導体が好ましい。
【0034】
ジクロリド誘導体は、ジカルボン酸誘導体にハロゲン化剤を作用させて合成することができる。ハロゲン化剤としては通常のカルボン酸の酸クロ化反応に使用される、塩化チオニル、塩化ホスホリル、オキシ塩化リン、五塩化リン等が使用できる。
【0035】
ジクロリド誘導体を合成する方法としては、ジカルボン酸誘導体と上記ハロゲン化剤を溶媒中で反応させる方法や、過剰のハロゲン化剤中で反応を行った後、過剰分を留去する方法が挙げられる。反応溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン等が使用できる。
【0036】
これらのハロゲン化剤の使用量は、溶媒中で反応させる場合は、ジカルボン酸誘導体に対して、1.5〜3.0モルが好ましく、1.7〜2.5モルがより好ましい。ハロゲン化剤中で反応させる場合は、4.0〜50モルが好ましく、5.0〜20モルがより好ましい。反応温度は、−10〜70℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
【0037】
ジクロリド誘導体とジアミン類との反応は、脱ハロゲン化水素剤の存在下、有機溶媒中で行うことが好ましい。脱ハロゲン化水素剤としては、通常、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基が使用される。また、有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が使用できる。反応温度は、−10〜30℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
【0038】
ここで、一般式(I)において、Uで表される4価の有機基とは、一般に、ジカルボン酸と反応してポリアミド構造を形成するジヒドロキシジアミン由来の残基であり、4価の芳香族基が好ましい。炭素原子数としては6〜40のものが好ましく、炭素原子数6〜40の4価の芳香族基がより好ましい。4価の芳香族基としては、4個の結合部位がいずれも芳香環上に存在し、2個のヒドロキシ基がそれぞれアミンのオルト位に位置した構造を有するジアミンの残基が好ましい。
【0039】
このようなジアミン類としては、例えば、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジヒドロキシビフェニル、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
また、上記ポリアミドの式において、Wで表される2価の有機基とは、一般に、ジカルボン酸と反応してポリアミド構造を形成する、ジアミン由来(但し上記Uを形成するジヒドロキシジアミン以外)の残基であり、2価の芳香族基又は脂肪族基が好ましい。炭素原子数としては4〜40のものが好ましく、炭素原子数4〜40の2価の芳香族基がより好ましい。
【0041】
このようなジアミン類としては、例えば、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、ベンジジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン化合物、この他にもシリコーン基の入ったジアミンとして、LP−7100、X−22−161AS、X−22−161A、X−22−161B、X−22−161C及びX−22−161E(商品名、いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いる。
【0042】
また、一般式(I)において、Vで表される2価の有機基とは、ジアミンと反応してポリアミド構造を形成する、ジカルボン酸由来の残基であり、2価の芳香族基が好ましい。炭素原子数としては6〜40のものが好ましく、炭素原子数6〜40の2価の芳香族基がより好ましい。2価の芳香族基としては、2個の結合部位がいずれも芳香環上に存在するものが好ましい。
【0043】
このようなジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4'−ジカルボキシビフェニル、4,4'−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4'−ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(p−カルボキシフェニル)プロパン、5−tert−ブチルイソフタル酸、5−ブロモイソフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、5−クロロイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族系ジカルボン酸、1,2−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等の脂肪族系ジカルボン酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの化合物を、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
前述したように、本発明で用いられる(a)成分のポリアミドとしては、ポリイミド前駆体の構造を有するポリオキサゾール前駆体を用いてもよい。具体的には、下記一般式(VI)で表される繰り返し単位を有するポリアミドを用いることができる。
【0045】
【化5】

【0046】
(式中Yは少なくとも2個以上の炭素原子を有する2価から8価までの有機基、Zは少なくとも2個以上の炭素原子を有する2価から6価までの有機基、R7は水素、または炭素数1から20までの有機基を示す。lは0から2までの整数、g、hは0から4までの整数を示す。iは繰り返し数であり、好ましくは10から100000までの整数である。また、全繰り返し単位中少なくとも一部の繰り返し単位のlは1又は2であり、少なくとも一部の繰り返し単位のgとhの和が1以上である。)
【0047】
Y,Zの好ましい構造としては、例えば以下のものが挙げられる。Y,Zの各構造上の、他の原子との結合手は芳香環上に位置する。
【0048】
【化6】

【0049】
これらの構造において、Y,Zの各構造上の、他の原子との結合手は一般に芳香環上に位置する。アミド基及びカルボキシル基との結合手は各構造の末端の芳香環に位置することが好ましい。水酸基(OH)は、X,Yがアミド結合を有する構造の場合、後にベンゾオキサゾール環を形成しうるように窒素原子が結合する芳香環上、窒素原子のオルト位に位置することが好ましい。
【0050】
また、R7の好ましいものとしては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、n−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、p−ヒドロキシベンジル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
【0051】
このような、ポリイミド前駆体の構造を有するポリオキサゾール前駆体の製造方法は特に制限されないが、例えば、ポリイミド前駆体を製造する材料とするジアミン及び/又はテトラカルボン酸二無水物として、その構造中にオキサゾール環を形成しうる構造を有するジアミン及び/又はテトラカルボン酸二無水物(以下、これらをそれぞれジアミン(i)及びテトラカルボン酸二無水物(ii)という場合がある。)を使用して、ポリイミド前駆体を製造することが好ましい。
ジアミン(i)及びテトラカルボン酸二無水物(ii)としては次のものが挙げられる。
【0052】
【化7】

【0053】
【化8】

【0054】
テトラカルボン酸二無水物(ii)と併用されるジアミンとしては、ジアミン(i)に加え前記一般式(I)においてU又はWの説明で例示したジアミン類が挙げられ、ジアミン(i)と併用されるテトラカルボン酸二無水物としては、テトラカルボン酸二無水物(ii)に加えピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物等が挙げられる。
【0055】
本発明に用いられる(b)成分であるo−キノンジアジド化合物は、感光剤であり、光の照射によりカルボン酸を発生し、光の照射部のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有するものである。そのようなo−キノンジアジド化合物は、例えば、o−キノンジアジドスルホニルクロリド類と、ヒドロキシ化合物、アミノ化合物などとを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られる。上記o−キノンジアジドスルホニルクロリド類としては、例えば、ベンゾキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド等が挙げられる。
【0056】
上記ヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2',3'−ペンタヒドロキシベンゾフェノン,2,3,4,3',4',5'−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10−テトラヒドロ−1,3,6,8−テトラヒドロキシ−5,10−ジメチルインデノ[2,1−a]インデン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
【0057】
アミノ化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジヒドロキシビフェニル、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。
【0058】
o−キノンジアジドスルホニルクロリドとヒドロキシ化合物及び/又はアミノ化合物との配合割合は、o−キノンジアジドスルホニルクロリド1モルに対して、ヒドロキシ基とアミノ基の合計が0.5〜1当量になるように配合することが好ましい。脱塩酸剤とo−キノンジアジドスルホニルクロリドの好ましい割合は、0.95/1〜1/0.95の範囲である。反応温度は0〜40℃が好ましく、反応時間は1〜10時間が好ましい。
【0059】
反応溶媒としては、例えば、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、N−メチルピロリドン等の溶媒が用いられる。脱塩酸剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどがあげられる。
【0060】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、(b)成分の配合量は、露光部と未露光部の溶解速度差と、感度の許容幅の点から、(a)成分100重量部に対して、5〜100重量部が好ましく、8〜40重量部がより好ましい。
【0061】
本発明で用いられる(c)成分は、加熱により酸を発生する熱潜在酸発生剤である。本発明の熱潜在酸発生剤は、熱分解開始温度が50℃〜270℃であるものが好ましい。具体的には、熱重量分析(TG)で測定される1%重量減少温度が50℃〜270℃、あるいは5%重量減少温度が60℃〜300℃であるものが好ましい。さらには、熱分解開始温度が140℃〜250℃であるものが、プリベーク時の際に酸が発生せず、感光特性等に悪影響を与える可能性がないため、より好ましい。具体的には、熱重量分析(TG)で測定される1%重量減少温度が140℃〜250℃、あるいは5%重量減少温度が170℃〜265℃であるものが好ましい。
【0062】
上記熱潜在酸発生剤から発生する酸としては、強酸が好ましく、具体的には、例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸のようなアリールスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸のようなパーフルオロアルキルスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸のようなアルキルスルホン酸等が好ましい。これらの酸は、ポリベンゾオキサゾール前駆体のフェノール性水酸基含有ポリアミド構造が脱水反応を起こして環化する際の触媒として効率的にはたらく。これらに対して、塩酸、臭素酸、ヨウ素酸や硝酸が出るような酸発生剤では、発生した酸の酸性度が弱く、さらに加熱で揮発し易いこともあって、ポリベンゾオキサゾール前駆体の環化脱水反応には殆ど関与しないと考えられ、本発明の十分な効果が得られにくい。
【0063】
これらの酸は、熱潜在酸発生剤として、オニウム塩としての塩の形やイミドスルホナートのような共有結合の形で本発明のポジ型感光性樹脂組成物に添加される。
【0064】
上記オニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウム塩のようなジアリールヨードニウム塩、ジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩のようなジ(アルキルアリール)ヨードニウム塩、トリメチルスルホニウム塩のようなトリアルキルスルホニウム塩、ジメチルフェニルスルホニウム塩のようなジアルキルモノアリールスルホニウム塩、ジフェニルメチルスルホニウム塩のようなジアリールモノアルキルヨードニウム塩等が好ましい。これらは、分解開始温度が150℃〜250℃の範囲にあり、280℃以下でのポリベンゾオキサゾール前駆体の環化脱水反応に際して効率的に分解するためである。これに対してトリフェニルスルホニウム塩は、本発明の熱潜在酸発生剤としては望ましくない。トリフェニルスルホニウム塩は熱安定性が高く、一般に分解温度が300℃を超えているため、280℃以下でのポリベンゾオキサゾール前駆体の環化脱水反応に際しては分解が起きず、環化脱水の触媒としては十分に働かないと考えられるためである。
【0065】
以上の点から、オニウム塩としての熱潜在酸発生剤としては、例えば、アリールスルホン酸、カンファースルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸またはアルキルスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ジ(アルキルアリール)ヨードニウム塩、トリアルキルスルホニウム塩、ジアルキルモノアリールスルホニウム塩またはジアリールモノアルキルヨードニウム塩が好ましい。さらに具体的には、パラトルエンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩(1%重量減少温度180℃、5%重量減少温度185℃)、トリフルオロメタンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩(1%重量減少温度151℃、5%重量減少温度173℃)、トリフルオロメタンスルホン酸のトリメチルスルホニウム塩(1%重量減少温度255℃、5%重量減少温度278℃)、トリフルオロメタンスルホン酸のジメチルフェニルスルホニウム塩(1%重量減少温度186℃、5%重量減少温度214℃)、トリフルオロメタンスルホン酸のジフェニルメチルスルホニウム塩(1%重量減少温度154℃、5%重量減少温度179℃)、ノナフルオロブタンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩、カンファースルホン酸のジフェニルヨードニウム塩、エタンスルホン酸のジフェニルヨードニウム塩、ベンゼンスルホン酸のジメチルフェニルスルホニウム塩、トルエンスルホン酸のジフェニルメチルスルホニウム塩等を好ましいものとして挙げることができる。
【0066】
また、イミドスルホナートとしては、ナフトイルイミドスルホナートが望ましい。これに対して、フタルイミドスルホナートは、熱安定性が悪いために、硬化反応よりも前に酸が出て、保存安定性等を劣化させるので望ましくない。ナフトイルイミドスルホナートの具体例としては、例えば、1,8−ナフトイルイミドトリフルオロメチルスルホナート(1%重量減少温度189℃、5%重量減少温度227℃)、2,3−ナフトイルイミドトリフルオロメチルスルホナート(1%重量減少温度185℃、5%重量減少温度216℃)などを好ましいものとして挙げることができる。
【0067】
また、上記(c)成分として、下記化学式に示すように、R12C=N−O−SO2−Rの構造を持つ化合物(1%重量減少温度204℃、5%重量減少温度235℃)を用いることもできる。ここで、Rとしては、例えば、p−メチルフェニル基、フェニル基等のアリール基、メチル基、エチル基、イソプロピル基等のアルキル基、トリフルオロメチル基、ノナフルオロブチル基等のパーフルオロアルキル基などが挙げられる。また、R1としては、シアノ基、R2としては、例えば、メトキシフェニル基、フェニル基等が挙げられる。
【0068】
【化9】

【0069】
また、上記(c)成分として、下記化学式に示すように、アミド構造−HN−SO2−Rをもつ化合物(1%重量減少温度104℃、5%重量減少温度270℃)を用いることもできる。ここでRとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、メチルフェニル基、フェニル基等のアリール基、トリフルオロメチル基、ノナフルオロブチル等のパーフルオロアルキル基などが挙げられる。また、−HN−SO2−Rの結合する基としては、例えば、2,2'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンや2,2'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ジ(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等が挙げられる。
【0070】
【化10】

【0071】
また、本発明で用いる(c)成分としては、オニウム塩以外の強酸と塩基から形成された塩を用いることもできる。上記、強酸としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸のようなアリールスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸のようなパーフルオロアルキルスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸のようなアルキルスルホン酸が好ましい。塩基としては、例えば、ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジンのようなアルキルピリジン、2−クロロ−N−メチルピリジンのようなN−アルキルピリジン、ハロゲン化−N−アルキルピリジン等が好ましい。さらに具体的には、p−トルエンスルホン酸のピリジン塩(1%重量減少温度147℃、5%重量減少温度190℃)、p−トルエンスルホン酸のL−アスパラギン酸ジベンジルエステル塩(1%重量減少温度202℃、5%重量減少温度218℃)、p−トルエンスルホン酸の2,4,6−トリメチルピリジン塩、p−トルエンスルホン酸の1,4−ジメチルピリジン塩などが好ましいものとして挙げられる。これらも280℃以下でのポリベンゾオキサゾール前駆体の環化脱水反応に際して分解し、触媒として働くことができる。
【0072】
(c)成分の配合量は、(a)成分100重量部に対して0.1〜30重量部が好ましく、0.2〜20重量部がより好ましく、0.5〜10重量部がさらに好ましい。
【0073】
本発明で任意に使用される(d)成分であるフェノール性水酸基を有する化合物は、これを加えることで、アルカリ水溶液で現像する際に露光部の溶解速度が増加し感度が上がる。また、パターン形成後の膜の硬化時に、膜の溶融を防ぐことができる。本発明に使用することのできるフェノール性水酸基を有する化合物に特に制限はないが、分子量が大きくなると露光部の溶解促進効果が小さくなるので、一般に分子量が1,500以下の化合物が好ましい。中でも下記一般式(II)に挙げられるものが、露光部の溶解促進効果と膜の硬化時の溶融を防止する効果のバランスに優れ、特に好ましい。
【0074】
【化11】

(式中、Xは単結合又は2価の有機基を示し、R3〜R6は各々独立に水素原子または一価の有機基を示し、m及びnは各々独立に1〜3の整数であり、p及びqは各々独立に0〜4の整数である)
【0075】
上記一般式(II)において、Xで示される2価の基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数が1〜10のアルキレン基、エチリデン基等の炭素数が2〜10のアルキリデン基、フェニレン基等の炭素数が6〜30のアリーレン基、これら炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子等のハロゲン原子で置換した基、スルホン基、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、アミド結合等が挙げられ、また、下記一般式(V)
【0076】
【化12】

【0077】
(式中、個々のX'は、各々独立に、単結合、アルキレン基(例えば炭素原子数が1〜10のもの)、アルキリデン基(例えば炭素数が2〜10のもの)、それらの水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換した基、スルホン基、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、アミド結合等から選択されるものであり、R9は水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基又はハロアルキル基であり、複数存在する場合は互いに同一でも異なっていてもよく、mは1〜10である)で示される2価の有機基が好ましいものとして挙げられる。
【0078】
上記一般式(II)の中で、Xで表される基が、下記一般式(III)
【0079】
【化13】

【0080】
(式中、2つのAは各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基を示し、酸素原子及び/又はフッ素原子を含んでいても良い)であるものはその効果が高く、さらに好ましいものとして挙げられる。
【0081】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、(d)成分の配合量は、現像時間と、未露光部残膜率の許容幅の点から、(a)成分100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、3〜25重量部がより好ましい。
【0082】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、任意成分として溶剤を含むことができる。通常使用される溶剤としては、例えば、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n−ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、3−メチルメトキシプロピオネート、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン等が挙げられる。
【0083】
これらの溶剤は単独で又は2種以上併用して用いることができる。また、使用する溶剤の量は特に制限はないが、一般に組成物中溶剤の割合が20〜90重量%となるように調整するのが好ましい。
【0084】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物においては、さらに(a)成分のアルカリ水溶液に対する溶解性を阻害する化合物を含有させてもよい。溶解性を阻害する化合物として、具体的には、例えば、ジフェニルヨードニウムニトラート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムニトラート、ジフェニルヨードニウムブロマイド、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヨーダイト等が挙げられる。
【0085】
これらは、発生する酸が揮発し易いこともあり、ポリベンゾオキサゾール前駆体の環化脱水反応には関与しない。しかし、効果的に溶解阻害を起こし、残膜厚や現像時間をコントロールするのに役立つ。上記成分の配合量は、感度と現像時間の許容幅の点から、(a)成分100重量部に対して0.01〜15重量部が好ましく、0.01〜10重量部がより好ましく、0.05〜3重量部がさらに好ましい。
【0086】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、硬化膜の基板との接着性を高めるために、有機シラン化合物、アルミキレート化合物等を含むことができる。有機シラン化合物としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシラン、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n−プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n−ブチルシフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert−ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、エチルメチルフェニルシラノール、n−プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n−ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert−ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn−プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n−ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert−ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n−プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n−ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert−ブチルジフェニルシラノール、フェニルシラントリオール、1,4−ビス(トリヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(メチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(エチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(プロピルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ブチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジエチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジプロピルドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジブチルヒドロキシシリル)ベンゼン等が挙げられる。アルミキレート化合物としては、例えば、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、アセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。これらの密着性付与剤を用いる場合は、配合量は、(a)成分100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。
【0087】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、塗布性、例えばストリエーション(膜厚のムラ)を防いだり、現像性を向上させたりするために、適当な界面活性剤あるいはレベリング剤を添加することができる。このような界面活性剤あるいはレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等があり、市販品としては、メガファックスF171、F173、R−08(大日本インキ化学工業株式会社製商品名)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム株式会社商品名)、オルガノシロキサンポリマーKP341、KBM303、KBM403、KBM803(信越化学工業株式会社製商品名)等が挙げられる。
【0088】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、支持基板上に塗布し乾燥する工程、所定のパターンに露光する工程、現像する工程及び任意に加熱処理する工程を経て、ポリオキサゾールのパターンとすることができる。支持基板上に塗布し乾燥する工程では、ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えばTiO2、SiO2等)、窒化ケイ素などの支持基板上に、本発明の感光性樹脂組成物をスピンナーなどを用いて回転塗布し、その後、ホットプレート、オーブンなどを用いて乾燥する。
【0089】
次いで、露光する工程では、支持基板上で被膜となった感光性樹脂組成物に、マスクを介して紫外線、可視光線、放射線などの活性光線を照射する。現像する工程では、露光部を現像液で除去することによりパターンが得られる。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,ケイ酸ナトリウム,アンモニア,エチルアミン,ジエチルアミン,トリエチルアミン,トリエタノールアミン,テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどのアルカリ水溶液が好ましいものとして挙げられる。これらの水溶液の塩基濃度は、0.1〜10重量%とされることが好ましい。さらに上記現像液にアルコール類や界面活性剤を添加して使用することもできる。これらはそれぞれ、現像液100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲で配合することができる。
【0090】
次いで、加熱処理する工程では、得られたパターンに好ましくは280℃以下、より好ましくは150〜280℃の加熱処理をすることにより、オキサゾール環や他の官能基を有する耐熱性のポリオキサゾールのパターンを製造する。加熱処理する工程において、より好ましい加熱処理温度は、220〜260℃である。また、加熱処理は、窒素下で行う方が感光性樹脂組成物膜の酸化を防ぐことができるので好ましい。上記温度範囲では、環化脱水反応が効率的に起き、さらには基板やデバイスへのダメージが小さい。したがって、本発明のパターン製造方法を用いることによって、デバイスが歩留り良くできる。また、プロセスの省エネルギー化につながる。
【0091】
また、本発明の加熱処理としては、通常の窒素置換されたオーブンを用いる以外に、マイクロ波硬化装置や周波数可変マイクロ波硬化装置を用いることもできる。これらの装置をもちいることにより、基板やデバイスの温度を、例えば250℃以下に保ったままで、感光性樹脂組成物膜のみを効果的に加熱することが可能である。
【0092】
ここで、マイクロ波を用いたポリイミド前駆体の脱水閉環については、例えば、特許第2587148号及び特許第3031434号で検討され、公開されている。さらに、米国特許第5738915号により、マイクロ波を用いてポリイミド前駆体薄膜を脱水閉環する場合に、周波数を短い周期で変化させて照射することによって、ポリイミド薄膜や基材のダメージを避ける方法が提案されている。
【0093】
周波数を変化させながらマイクロ波をパルス状に照射した場合は、定在波を防ぐことができ、基板面を均一に加熱することができる点で好ましい。また、後述する電子部品のように金属配線を含む基板の場合は、周波数を変化させながらマイクロ波をパルス状に照射することにより、金属からの放電等の発生を防ぐことができ、電子部品を放電等による破壊から守ることができる点で好ましい。
【0094】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物中のポリアミドを脱水閉環させる際に照射するマイクロ波の周波数は0.5〜20GHzの範囲である。この範囲の中でも、実用的には1〜10GHzの範囲が好ましく、2〜9GHzの範囲がより好ましい。
【0095】
照射するマイクロ波の周波数は、連続的に変化させることが望ましいが、実際は周波数を階段状に変化させて照射する。その際、単一周波数のマイクロ波を照射する時間はできるだけ短い方が定在波や金属からの放電等が生じにくい。単一周波数のマイクロ波を照射する時間は1ミリ秒以下が好ましく、100マイクロ秒以下が特に好ましい。
【0096】
照射するマイクロ波の出力は、使用する装置の大きさや被加熱体の量によっても異なるが、概ね10〜2000Wの範囲である。この範囲の中でも、実用上は100〜1000Wが好ましく、100〜700Wがより好ましく、100〜500Wが最も好ましい。出力が、10W以下では被加熱体を短時間で加熱することが難しく、2000W以上では急激な温度上昇が起こりやすい。
【0097】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物中のポリアミドを脱水閉環する温度は、上述したように、脱水閉環後のポリオキサゾール薄膜や基材へのダメージを避けるため、低い方が好ましい。本発明においてポジ型感光性樹脂組成物中のポリアミドを脱水閉環する温度は、280℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、210℃以下が最も好ましい。なお、基材の温度は、赤外線やGaAsなどの熱電対といった公知の方法で測定することができる。
【0098】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物中のポリアミドを脱水閉環させる際に照射するマイクロ波は、パルス状に「入/切」を繰り返して照射することが好ましい。マイクロ波をパルス状に照射することにより、設定した加熱温度を保持することができ、また、ポリオキサゾール薄膜や基材へのダメージを避けることができるためである。パルス状のマイクロ波を1回に照射する時間は条件によって異なるが、概ね10秒以下である。
【0099】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物中のポリアミドを脱水閉環させる時間は、脱水閉環反応が十分進行するまでの時間である。好ましくは、作業効率との兼ね合いから概ね5時間以下である。また、脱水閉環の雰囲気は大気中、または窒素等の不活性雰囲気中いずれをも選択することができる。
【0100】
このようにして、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を層として有する基材に、上述の条件でマイクロ波を照射して本発明のポジ型感光性樹脂組成物中のポリアミドを脱水閉環すれば、マイクロ波による低温での脱水閉環プロセスによっても、熱拡散炉を用いた高温での脱水閉環プロセスで得られた膜の物性と差がないポリオキサゾール薄膜を得ることができる。
【0101】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、半導体装置や多層配線板等の電子部品に使用することができ、具体的には、半導体装置の表面保護膜や層間絶縁膜、多層配線板の層間絶縁膜等の形成に使用することができる。本発明の半導体装置は、上記組成物を用いて形成される表面保護膜や層間絶縁膜を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとることができる。
【0102】
本発明の半導体装置の製造工程の一例を以下に説明する。図1〜図5は多層配線構造の半導体装置の製造工程図である。図1〜図5は、第1の工程から第5の工程への一連の工程を表している。図1〜図5において、回路素子を有するSi基板等の半導体基板1は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜等の保護膜2で被覆され、露出した回路素子上に第1導体層3が形成されている。上記半導体基板上にスピンコート法等で層間絶縁膜としてのポリイミド樹脂等の膜4が形成される(第1の工程)。
【0103】
次に、塩化ゴム系、フェノールノボラック系等の感光性樹脂層5が上記層間絶縁膜4上にスピンコート法で形成され、公知の写真食刻技術によって所定部分の層間絶縁膜4が露出するように窓6Aが設けられている(第2の工程)。上記窓6Aの層間絶縁膜4は、酸素、四フッ化炭素等のガスを用いるドライエッチング手段によって選択的にエッチングされ、窓6Bがあけられている。ついで窓6Bから露出した第1導体層3を腐食することなく、感光樹脂層5のみを腐食するようなエッチング溶液を用いて感光樹脂層5が完全に除去される(第3の工程)。
【0104】
さらに、公知の写真食刻技術を用いて、第2導体層7を形成させ、第1導体層3との電気的接続が完全に行われる(第4の工程)。3層以上の多層配線構造を形成する場合は、上記の工程を繰り返して行い各層を形成することができる。
【0105】
次に、表面保護膜8が形成される。この図1〜5の例では、この表面保護膜を上記感光性樹脂組成物を用いて形成する。まず、この感光性樹脂組成物をスピンコート法にて塗布、乾燥し、所定部分に窓6Cを形成するパターンを描いたマスク上から光を照射して露光する。次いで、アルカリ水溶液にて現像してパターンを形成する。そして、その後、加熱処理して表面保護膜層(ポリベンゾオキサゾール膜)8とする(第5の工程)。この表面保護膜層(ポリベンゾオキサゾール膜)8は、導体層を外部からの応力、α線などから保護するものであり、得られる半導体装置は信頼性に優れる。なお、上記露光後の感光性樹脂膜を現像前に加熱(PEB)してもよい。
【0106】
本発明では、従来は300℃以上を必要としていた上記ポリオキサゾール膜にする加熱処理の工程において、280℃以下の低温の加熱処理によって硬化が可能である。280℃以下での硬化においても、本発明の感光性樹脂組成物は環化脱水反応が十分に起きることから、その膜物性(伸び、吸水率、重量減少温度、アウトガス等)が300℃以上で硬化したときに比べて遜色ないものとなる。プロセスが低温化できることから、デバイスの熱による欠陥を低減でき、信頼性に優れた半導体装置を高収率で得ることができる。
【0107】
なお、上記例において、層間絶縁膜を本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成することも可能である。
【0108】
本発明の感光性樹脂組成物を使用して得られる表面保護膜や層間絶縁膜等を有する電子デバイスを有する電子部品としては、例えば、耐熱性の低いMRAMが好ましいものとして挙げられる。すなわち、本発明の感光性樹脂組成物は、MRAMの表面保護膜用として好適である。
【0109】
また、上記MRAM以外にも次世代メモリとして有望なポリマーメモリ(Polymer Ferroelectric RAM:PFRAM)や相変化メモリ(Phase Change RAM:PCRAM、あるいはOvonics Unified Memory:OUM)も、従来のメモリに比べて耐熱性の低い新材料を用いる可能性が高い。したがって、本発明の感光性樹脂組成物は、これらの表面保護膜用としても好適である。
【実施例】
【0110】
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0111】
実施例1〜6、参考例1〜8
合成例1 ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸15.48gと、N−メチルピロリドン90gとを仕込み、フラスコを5℃に冷却した後、塩化チオニル12.64gを滴下し、30分間反応させて、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリドの溶液を得た。次いで、攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン87.5gを仕込み、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン18.30gを添加し、攪拌溶解した。次いで、ピリジン8.53gを添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリドの溶液を30分間で滴下した後、30分間攪拌を続けた。得られた溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した後、減圧乾燥してポリヒドロキシアミド(ポリベンゾオキサゾール前駆体)を得た(以下、ポリマーIとする)。ポリマーIのGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は14580、分散度は1.6であった。
【0112】
合成例2
合成例1で使用した4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸の20mol%をシクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸に置き換えた以外は合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーIIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は18580、分散度は1.5であった。
【0113】
感光特性評価
上記ポリベンゾオキサゾール前駆体100重量部[(a)成分]に対し、感光剤である成分(b)、加熱により酸を発生する熱潜在酸発生剤(c)、フェノール性水酸基を有する化合物(d)、溶剤(e)を下記表1に示した所定量にて配合し、さらに接着助剤として尿素プロピルトリエトキシシランの50%メタノール溶液10重量部を配合した。この溶液を3μm孔のテフロン(登録商標)フィルタを用いて加圧ろ過して、感光性樹脂組成物の溶液を得た。
【0114】
【表1】

【0115】
上記、表1中に示される(b)成分、(c)成分、および(d)成分の化学式を下記に示す。
【0116】
【化14】

【0117】
【化15】

【0118】
また、上記(e)成分であるE1とは、γ−ブチロラクトン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=90/10(重量部)であり、E2とは、γ−ブチロラクトン/N−メチル−2−ピロリドン=50/50(重量部)である。
【0119】
上記溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚11〜13μmの塗膜を形成した。その後、i線ステッパー(キャノン製FPA−3000iW)を用いてマスクを介してi線(365nm)での縮小投影露光を行った。露光後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38%水溶液にて現像を行い、残膜厚が初期膜厚の70〜90%程度となるように現像を行った。その後、水でリンスし、パターン形成に必要な最小露光量と解像度を求めた。結果を下記表2に記す。
【0120】
【表2】

【0121】
さらに、上記溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚15μmの塗膜を形成した。その後、上記塗膜をイナートガスオーブン中、窒素雰囲気下、150℃で30分加熱した後、さらに300℃で1時間あるいは250℃で1時間加熱して硬化膜を得た。次にフッ酸水溶液を用いて、この硬化膜を剥離し、水洗、乾燥した後、膜物性としてガラス転移点(Tg)、吸水率、伸び(引っ張り試験機で測定)、5%重量減少温度を測定した。これらの結果を下記表3に示す。
【0122】
【表3】

【0123】
表2に示すように、本発明の感光性樹脂組成物は高感度であり、高解像度でパターン形成が可能であった。また、表3に示すように、伸び、吸水率は、250℃硬化においても、300℃で硬化時と遜色ない膜物性が得られた。5%重量減少温度に関しては、250℃で硬化したときの方が、若干低い値となったが、いずれもほぼ450℃以上で実用上問題ない値であった。さらに、実施例10に関して、300℃1時間でホールドしたときのアウトガスを調べたところ、250℃硬化では1.3%であり、300℃硬化の際の0.95%に比べて、遜色ない値であった。
【0124】
実施例7〜12、参考例9、10
さらに、表1に示した実施例1、2、3、4、5、6、参考例4、5で用いた材料からなるポジ型感光性樹脂組成物溶液に関して、硬化方法を変えた検討を行った。まず、これらのポジ型感光性樹脂組成物溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚15μmの塗膜を形成した。その後、上記塗膜をラムダテクノロジー社製Microcure2100により、マイクロ波出力450W、マイクロ波周波数5.9〜7.0GHzとし、基板温度を200℃に保って、2時間硬化し、膜厚約10μmの硬化膜を得た。
【0125】
次に、フッ酸水溶液を用いて、この硬化膜を剥離し、水洗、乾燥して、ガラス転移点(Tg)、伸び、5%重量減少温度といった物性を測定した。これらの結果を下記表4に示す。
【0126】
【表4】

【0127】
実施例7〜12の結果、本発明の感光性樹脂組成物は、基板温度を200℃に保ちつつ、周波数を変化させながらパルス状にマイクロ波を照射する方法によっても、効果的にポリアミドの脱水閉環が起き、硬化することが確認された。また、上記表4に示すように、この硬化膜のガラス転移点、伸び、および5%重量減少温度は、250℃で熱硬化炉を用いて脱水閉環した膜の物性と比較して差がないことが確認された。これらの知見より、本発明の感光性樹脂組成物は、周波数を変化させながらパルス状にマイクロ波を照射する硬化方法を採用することによって、通常行なわれる窒素置換されたオーブンによる硬化に比べて低温での硬化が可能であることが確認された。
【0128】
比較例1〜6
実施例1と同様に合成例で合成したポリベンゾオキサゾール前駆体100重量部[(a)成分]に対し、感光剤である成分(b)、成分(c)、フェノール性水酸基を有する化合物(d)、溶剤(e)を下記表5に示した所定量にて配合し、さらに接着助剤として尿素プロピルトリエトキシシランの50%メタノール溶液10重量部を配合した。なお、ここでは、成分(c)に関しては添加しないか、あるいは以下に示すC15〜C19を用いた。上記溶液を3μm孔のテフロン(登録商標)フィルタを用いて加圧ろ過して、感光性樹脂組成物の溶液を得た。
【0129】
【表5】

【0130】
上記、表5中に示される(c)成分の化学式を下記に示す。
【0131】
【化16】

【0132】
上記溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚11〜13μmの塗膜を形成した。その後、i線ステッパー(キャノン製FPA−3000iW)を用いてマスクを介してi線(365nm)での縮小投影露光を行った。露光後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38%水溶液にて現像を行い、残膜厚が初期膜厚の70〜90%程度となるように現像を行った。その後、水でリンスし、パターン形成に必要な最小露光量と解像度を求めた。結果を下記表6に記す。
【0133】
【表6】

【0134】
さらに、上記溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚15μmの塗膜を形成した。その後、上記塗膜をイナートガスオーブン中、窒素雰囲気下で、150℃、30分間加熱した後、さらに300℃で1時間、あるいは250℃で1時間加熱して硬化膜を得た。次に、フッ酸水溶液を用いて、この硬化膜を剥離し、水洗、乾燥した後、膜物性としてガラス転移点(Tg)、吸水率、伸び、5%重量減少温度を測定した。これらの結果を下記表7に示す。
【0135】
【表7】

【0136】
上記表7の膜物性が示すように、比較例の250℃の硬化では、環化脱水反応が完全に進行しないと考えられるため、300℃硬化に比べて吸水率が大きく、その値も1.5%程度と高かった。また、5%重量減少温度も250℃での硬化の場合、450℃より低い値となった。
【0137】
実施例13、14、参考例11、12
合成例3 ヒドロキシ基含有ジアミン化合物(VII)の合成
乾燥窒素気流下、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン18.3g(0.05mol)をアセトン100ml、プロピレンオキシド17.4g(0.3mol)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここに4−ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11mol)をアセトン100mlに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。次に得られた固体30gを300mlのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセルソルブ250mlに分散させ、5%パラジウム−カーボンを2g加えた。ここに水素を導入して、還元反応を室温で行った。約2時間反応後、ろ過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、ジアミン化合物(VII)を得た。得られた固体をそのまま反応に使用した。
【0138】
【化17】

【0139】
合成例4 ヒドロキシル基含有酸無水物(VIII)の合成
乾燥窒素気流下、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン18.3g(0.05mol)とアリルグリシジルエーテル34.2g(0.3mol)をγ−ブチロラクトン100gに溶解させ、−15℃に冷却した。ここにγ−ブチロラクトンに溶解させた無水トリメリット酸クロリド22.1g(0.11mol)を反応液の温度が0℃を超えないように滴下した。滴下終了後、0℃で4時間反応させた。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して、トルエン1lに投入して酸無水物(VIII)を得た。
【0140】
【化18】

【0141】
合成例5 ポリ(イミド−ベンゾオキサゾール)前駆体の合成
乾燥窒素気流下、合成例3で得られたヒドロキシル基含有ジアミン(VII)15.1g(0.025mol)をN−メチル−2−ピロリドン50gに溶解させた。ここに合成例4で得られたヒドロキシ基含有酸無水物(VIII)17.5g(0.025mol)をピリジン30gとともに加えて、60℃で6時間反応させた。反応終了後、溶液を水2lに投入してポリマー固体の沈殿をろ過により集めた後、水洗、減圧乾燥して、ポリ(イミドーベンゾオキサゾール)前駆体を得た(以下、ポリマーIIIとする)。
【0142】
合成例6 ポリ(イミド−ベンゾオキサゾール)前駆体の合成
合成例5で使用したヒドロキシル基含有ジアミン(VII)を4,4’−ジアミノフェニルエーテル5.01g(0.025mol)に置き換えた以外は、合成例5と同様の条件にて合成を行い、ポリ(イミドーベンゾオキサゾール)前駆体を得た(以下、ポリマーIVとする)。
【0143】
(a)成分として表8に示す通り上記ポリマーIII又はIVを用い、(e)成分としてN−メチル−2−ピロリドン(以下、E3と略記する)を用い、(a)〜(e)成分の割合を表8の通りとした他は、実施例1〜12と同様に操作し、感光特性を評価した。結果を表9及び表10に示す。
【0144】
【表8】

【0145】
【表9】

【0146】
【表10】

【0147】
表9に示すように、本発明の感光性樹脂組成物は比較的高感度であり、高解像度でパターン形成が可能であった。また、表10に示すように、伸び、吸水率は、250℃硬化においても、300℃で硬化時と遜色ない膜物性が得られた。5%重量減少温度に関しては、250℃で硬化したときの方が、若干低い値となったが、いずれもほぼ450℃以上で実用上問題ない値であった。
【産業上の利用可能性】
【0148】
以上のように、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、感度、解像度、接着性に優れ、さらに低温硬化プロセスで用いても耐熱性に優れ、吸水率の低い、良好な形状のパターンが得られる。従って、電子部品、特に低温硬化が要求されるMRAMなどの製造に適している。
【符号の説明】
【0149】
1 半導体基板
2 保護膜
3 第1導体層
4 層間絶縁膜層
5 感光樹脂層
6A、6B、6C 窓
7 第2導体層
8 表面保護膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリオキサゾール前駆体の構造を有するアルカリ水溶液可溶性のポリアミドと、(b)o−キノンジアジド化合物と、(c)加熱により酸を発生する熱潜在酸発生剤とを含むポジ型感光性樹脂組成物であって、
前記(c)成分が、パラトルエンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸のトリメチルスルホニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸のジメチルフェニルスルホニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸のジフェニルメチルスルホニウム塩、ノナフルオロブタンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩、ベンゼンスルホン酸のジメチルフェニルスルホニウム塩、及びトルエンスルホン酸のジフェニルメチルスルホニウム塩のいずれかであることを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(a)成分が、下記一般式(I)
【化1】

(式中、Uは4価の有機基を示し、Vは2価の有機基を示す)で表される繰り返し単位を有するポリアミドであることを特徴とする請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(c)成分の分解開始温度が、140℃以上250℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、(d)フェノール性水酸基を有する化合物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(d)成分が、下記一般式(II)
【化2】

(式中、Xは単結合又は2価の有機基を示し、R3〜R6は各々独立に水素原子または一価の有機基を示し、m及びnは各々独立に1〜3の整数であり、p及びqは各々独立に0〜4の整数である)で表される化合物であることを特徴とする請求項4に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記一般式(II)中、Xで表される基が、下記一般式(III)
【化3】

(式中、2つのAは各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基を示し、酸素原子及び/又はフッ素原子を含んでいても良い)で表される基であることを特徴とする請求項5に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(a)成分、(b)成分、および(c)成分間の配合割合が、前記(a)成分100重量部に対して、前記(b)成分5〜100重量部、前記(c)成分0.1〜30重量部であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(a)成分、(b)成分、(c)成分、および(d)成分間の配合割合が、前記(a)成分100重量部に対して、前記(b)成分5〜100重量部、前記(c)成分0.1〜30重量部、前記(d)成分1〜30重量部であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥し、感光性樹脂膜を得る工程と、
前記感光性樹脂膜を所定のパターンの活性光線に露光する工程と、
前記露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン製造方法。
【請求項10】
前記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項9記載のパターン製造方法。
【請求項11】
前記加熱処理は、周波数を変化させながらマイクロ波をパルス状に照射する処理であることを特徴とする請求項10に記載のパターン製造方法。
【請求項12】
前記加熱処理が280℃以下の温度において行われることを特徴とする請求項10又は11に記載のパターン製造方法。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか1項に記載のパターンの製造方法により得られるパターンの層を有してなる電子デバイスを有する電子部品であって、前記電子デバイスが、その中に設けられた前記パターンの層を、層間絶縁膜層及び/または表面保護膜層として含むことを特徴とする電子部品。
【請求項14】
MRAMであることを特徴とする請求項13に記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−158921(P2011−158921A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95992(P2011−95992)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【分割の表示】特願2006−519410(P2006−519410)の分割
【原出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(398008295)日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社 (81)
【Fターム(参考)】