説明

ポジ型感光性組成物

【課題】高感度かつ露光後焼成が不要で、アルカリ水溶液で現像することにより得られるパターニングされた透明膜の形成に有用なポジ型感光性組成物を提供する。
【解決手段】アルコキシシリルを有するラジカル重合性モノマー(a1)と、酸性基を有するラジカル重合性モノマー(a2)と、(a1)と(a2)以外のラジカル重合性モノマー(a3)とをラジカル共重合してなるポリマー(A)、光酸発生剤(B)、及び有機溶剤(C)を含有するポジ型感光性組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト分野等で利用可能なポジ型感光性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パターニングされた透明膜は、スペーサー、絶縁膜、保護膜等表示素子の多くの分野で使用されており、これまでに多くのポジ型感光性組成物がこの用途に提案されてきた(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
一般に、薄膜トランジスタ型液晶表示素子や固体撮像素子等の電子部品には、層状に配置される配線の間を絶縁するために絶縁膜が設けられている。絶縁膜を形成する材料としては、必要とするパターン形状の絶縁膜を得るための工程数が少ないポジ型感光性組成物が幅広く使用されている。ポジ型感光性組成物は、絶縁膜を形成する過程において広いプロセスマージンを有することが必要である。さらに、ポジ型感光性組成物を用いた絶縁膜や表示素子は、絶縁膜形成後の後工程(ITO成膜・ウェットエッチング、配向膜成膜など)において、溶剤、酸、アルカリ溶液等に浸漬等によって接触すること、及び熱処理されることがあるため、これらに対する耐性を有する必要がある。また、液晶ディスプレイなどの表示素子に用いられる絶縁膜においては、可視光に対する高い透明性が求められる。
【0004】
また、近年の液晶ディスプレイなどの表示素子に用いられる感光性絶縁膜の用途においては、マザーガラス寸法のさらなる巨大化に伴い、生産性を確保するために感光性材料の一連のプロセスにかかる時間(タクトタイム)を短縮する必要に迫られている。
【0005】
これらの用途に供する高感度なポジ型感光性組成物の提案がなされており、例えば、特許文献4は、カルボン酸のt−ブチルエステル基またはフェノールのt−ブチル炭酸基を有するポリマーと光酸発生剤を含有したレジストを開示している。ポリマー中のt−ブチルエステル基またはt−ブチル炭酸基は、露光時に発生した酸と露光後の焼成(PEB;Post Exposure Bake)によって脱保護され、カルボキシル基またはフェノール性OHなどの酸性基に変換される。その結果として、レジスト膜の露光部分はアルカリ現像液中で溶解するようになる。しかし、このような系では露光後にPEB工程を必要とし、露光量の点では高感度であるが、結果的にプロセスの全体的なタクトタイムが短くならないという問題があった。
一方、特許文献5には、アルコキシシラン含有ビニル系共重合体と硬化触媒とを含有するポジ型レジスト組成物が記載されており、当該共重合体のモノマー成分としてアルコキシシラン基含有アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルや、α−ハロゲン置換アクリル酸エステルが記載され、硬化触媒として塩酸を用いた例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭51−34711号公報
【特許文献2】特開昭56−122031号公報
【特許文献3】特開平5−165214号公報
【特許文献4】特公平2−27660号公報
【特許文献5】特開2002−196494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高感度かつ露光後焼成を必要としない、パターニングされた透明膜(パターン状透明膜)を形成できるポジ型感光性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、アルコキシシリルを有するラジカル重合性モノマー(a1)と、酸性基を有するラジカル重合性モノマー(a2)と、(a1)と(a2)以外のラジカル重合性モノマー(a3)とをラジカル共重合してなるポリマー(A)、光酸発生剤(B)、及び有機溶剤(C)を含有するポジ型感光性組成物によって前記の課題を解決可能であることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。本発明は以下の項を含む。
【0009】
<1>アルコキシシリルを有するラジカル重合性モノマー(a1)と、酸性基を有するラジカル重合性モノマー(a2)と、(a1)と(a2)以外のラジカル重合性モノマー(a3)とをラジカル共重合してなるポリマー(A)、光酸発生剤(B)、及び有機溶剤(C)を含有するポジ型感光性組成物。
【0010】
<2>前記アルコキシシリルを有するラジカル重合性モノマー(a1)が、下記一般式(I)、(II)、及び(III)で表される化合物の一種以上である<1>に記載のポジ型感光性組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

(式中、R1は水素、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜5のア
ルキルであり、R2〜R10はそれぞれ水素、ハロゲン、−CN、−CF3、−OCF3、−
OH、直鎖または分岐の炭素数1〜20のアルキル又は炭素数1〜5のアルコキシであり、R2〜R10におけるアルキルは、任意の−CH2−が−COO−、−OCO−、−CO−、又は−O−で置き換えられてもよく、また任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよく、但し、R2〜R4の少なくとも1つは炭素数1〜5のアルコキシであり、R5〜R7の少なくとも1つは炭素数1〜5のアルコキシであり、R8〜R10の少なくとも1つは炭素数1〜5のアルコキシである。式(I)中、nは1〜5である。)
【0011】
<3>前記酸性基を有するラジカル重合性モノマー(a2)が、フェノール性OHを有するラジカル重合性モノマー、不飽和カルボン酸を有するラジカル重合性モノマー、不飽和
カルボン酸無水物を有するラジカル重合性モノマーから選ばれるラジカル重合性モノマーの一種以上である<1>または<2>に記載のポジ型感光性組成物。
【0012】
<4>前記酸性基を有するラジカル重合性モノマー(a2)が、下記一般式(IV)で表されるフェノール性OHを有するラジカル重合性モノマーを含む<1>〜<3>のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【化4】


(式中、R11、R12及びR13は、それぞれ水素、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜3のアルキルであり、R14、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ水素、ハロゲン、−CN、−CF3、−OCF3、−OH、炭素数1〜5のアルキル、又は炭素数1〜5のアルコキシであり、R14、R15、R16、R17及びR18におけるアルキルは任意の−CH2−が−COO−、−OCO−、又は−CO−で置き換えられてもよく、R14、R15、R16、R17及びR18におけるアルキルおよびアルコキシは任意の水素がハロゲ
ンで置き換えられてもよく、但し、R14〜R18のうち少なくとも1つは−OHである。)
【0013】
<5>前記ラジカル重合性モノマー(a3)がエポキシを有するラジカル重合性モノマーである<1>〜<4>のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【0014】
<6>前記有機溶剤(C)がヒドロキシルを有する溶剤であることを特徴とする<1>〜<5>のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【0015】
<7><1>〜<6>のいずれかに記載のポジ型感光性組成物の塗膜の露光、現像、及び焼成によって形成されるパターン状透明膜。
【0016】
<8><7>に記載のパターン状透明膜を用いた絶縁膜。
【0017】
<9><7>または<8>に記載のパターン状透明膜を有する表示素子。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、前述した特定のポリマー(A)、光酸発生剤(B)及び有機溶剤(C)とを含有することから、高感度かつ露光後焼成を必要とせず、なおかつ透明性に優れるパターン状透明膜を形成可能なポジ型感光性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<1.本発明の感光性組成物>
本発明の感光性組成物は、アルコキシシリルを有するラジカル重合性モノマー(a1)と、酸性基を有するラジカル重合性モノマー(a2)と、他のラジカル重合性モノマー(a3)とをラジカル重合してなるポリマー(A)、光酸発生剤(B)、及び有機溶剤(C)を含有する。ポリマー(A)は一種類でも二種類以上のポリマーを混合して使用してもよい。また、光酸発生剤(B)も一種類でも二種類以上を混合して使用してもよく、有機溶剤(C)も一種類でも二種類以上を混合して使用してもよい。
アルコキシシリルを有するラジカル重合性モノマー(a1)を重合してなるポリマーと光酸発生剤(B)のみを含有する組成物においても露光、アルカリ現像によって一応のパターニングは可能ではあるが、形成したパターン状透明膜に必要とされる感度、透明性、耐薬品性(酸、アルカリ、有機溶剤)、耐スパッタ性、低誘電率性、信頼性などの様々な機能を付与するためには、実際的には酸性基を有するモノマー(a2)と(a1)及び(a2)以外のモノマー(a3)をも共重合する必要がある。
【0020】
<1−1.本発明のポリマー(A)>
本発明のポリマー(A)は、アルコキシシリルを有するラジカル重合性モノマー(a1)と酸性基を有するラジカル重合性モノマー(a2)と、(a1)及び(a2)以外のラジカル重合性モノマー(a3)とを重合して得られる共重合体である。
【0021】
上記ポリマー(A)は、ラジカル重合性モノマー(a1)、(a2)、(a3)としてそれぞれ単独だけでなく複数のラジカル重合性モノマーを用いてよい。
上記ポリマー(A)において、ラジカル重合性モノマー(a1)は、全モノマーの合計重量に対して5〜50重量%の割合で用いられることが好ましく、10〜40重量%の割合で用いられることがさらに好ましい。このような範囲でモノマー(a1)を含有させると、感度、透明性、基板密着性、現像安定性、溶液としての保存安定性の観点から好ましい。
また、上記ポリマー(A)において、ラジカル重合性モノマー(a2)は、全モノマーの合計重量に対して1〜20重量%の割合で用いられることが好ましく、5〜15重量%の割合で用いられることがさらに好ましい。このような範囲でモノマー(a2)を含有させると、アルカリ現像液への溶解性の観点から好ましい。
さらに、上記ポリマー(A)において、ラジカル重合性モノマー(a3)は、全モノマーの合計重量に対して30〜94重量%の割合で用いられることが好ましく、40〜80重量%の割合で用いられることがさらに好ましい。
このような範囲でモノマー(a3)を含有させると、現像性、低誘電性、耐薬品性の観点から好ましい。
【0022】
<1−1−1.アルコキシシリルを有するラジカル重合性モノマー(a1)>
アルコキシシリルを有するラジカル重合性モノマー(a1)は、下記一般式(I)、(II)及び(III)で表される化合物の中から選ぶことができる。
【化5】

【化6】

【化7】


一般式(I)、(II)及び(III)中、R1は水素、又は任意の水素がフッ素で置
き換えられてもよい炭素数1〜5のアルキルであり、R2〜R10はそれぞれ水素、ハロゲ
ン、−CN、−CF3、−OCF3、−OH、直鎖または分岐の炭素数1〜20のアルキル又は炭素数1〜5のアルコキシであり、R2〜R10におけるアルキルは、任意の−CH2−が−COO−、−OCO−、−CO−、又は−O−で置き換えられてもよく、また任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよく、但し、R2〜R4の少なくとも1つは炭素数1〜5のアルコキシであり、R5〜R7の少なくとも1つは炭素数1〜5のアルコキシであり、またR8〜R10の少なくとも1つは炭素数1〜5のアルコキシである。一般式(I)中、
nは1〜5である。
【0023】
前記R1のアルキルは、耐熱性、透明性の観点から、メチルであることが好ましい。ま
た、前記R2〜R4の直鎖または分岐の炭素数1〜20のアルキルは、アルカリ現像性と膜の耐熱性(ガラス転移点)の観点から、炭素数が1〜10であることが好ましい。
また、前記R5〜R8の直鎖または分岐の炭素数1〜20のアルキル(任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい)も同様の理由で、炭素数が1〜10であることが好ましい。
また、R2〜R4における少なくとも1つのアルコキシ、R5〜R7における少なくとも1つのアルコキシ、R8〜R10における少なくとも1つのアルコキシの炭素数は、加水分解
性の理由から、それぞれ1〜5であることが好ましい。
【0024】
アルコキシシリルを有するラジカル重合性モノマーとして、上記一般式(I)、(II)、(III)で表される化合物(a1)のポリマー中における量は、ポリマー100重量部のうちで、好ましくは5〜50重量部であるが、上記(a1)の量が多すぎると比誘電率が上昇する傾向にあるため、比誘電率を低くしたい用途では10〜40重量部が好ましい。
【0025】
一般式(I)、(II)及び(III)で表される化合物(a1)の具体例としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらのラジカル重合性モノマーを使用した共重合体を用いると、高感度なポジ型特性を有し、透明性が高く、かつ高温での焼成による透明性の劣化がほとんどなく、また現像時のアルカリ水溶液に対する溶解性が高く、すなわち現像性が高く、容易にパターン状透明膜が得られ、かつ耐溶剤性、高耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性を示し、さらには下地との密着性が高くなる。
【0026】
また、本発明では、アルコキシシリルを有するラジカル重合性モノマー(a1)をポリマー(A)のモノマーとして使用することで、露光により発生する酸に起因してポリマー(A)中のアルコキシシリルがシラノールに加水分解され、これによりアルカリ現像液にポリマー(A)が溶けるようになる。これにより、本発明のポジ型感光性組成物をもちた場合には、露光後、焼成(露光後焼成)を行う必要がなく、そのまま現像工程に進むこと
ができる。
【0027】
<1−1−2.ラジカル重合性モノマー(a2)>
本発明で用いることのできる酸性基を有するラジカル重合性モノマー(a2)としては、不飽和カルボン酸を有するラジカル重合性モノマー、不飽和カルボン酸無水物を有するラジカル重合性モノマー、フェノール性OHを有するラジカル重合性モノマー、リン酸基を有するラジカル重合性モノマー及びスルホン酸基を有するラジカル重合性モノマーが挙げられる。
不飽和カルボン酸を有するラジカル重合性モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、不飽和カルボン酸無水物を有するラジカル重合性モノマーの具体例としては、無水マレイン酸が挙げられる。
前記フェノール性OHを有するラジカル重合性モノマーとしては、例えばヒドロキシスチレンや下記一般式(IV)で表されるフェノール性OHを有するラジカル重合性モノマーが挙げられる。
【化8】


(式中、R11、R12及びR13は、それぞれ水素、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜3のアルキルであり、R14、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ水素、ハロゲン、−CN、−CF3、−OCF3、−OH、炭素数1〜5のアルキル、又は炭素数1〜5のアルコキシであり、R14、R15、R16、R17及びR18におけるアルキルは任意の−CH2−が−COO−、−OCO−、又は−CO−で置き換えられてもよく、R14、R15、R16、R17及びR18におけるアルキルおよびアルコキシは任意の水素がハロゲ
ンで置き換えられてもよく、但し、R14〜R18のうち少なくとも1つは−OHである。
上記一般式(IV)で表されるフェノール性OHを有するラジカル重合性モノマーの具体例として、4−ヒドロキシフェニルビニルケトンが挙げられる。
リン酸基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、リン酸メタクリレート、2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート、リン酸2−(メタクリロイルオキシ)エチルが挙げられる。
スルホン酸基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、ビニルスルホン酸、アクリルアミド―tert―ブチルスルホン酸が挙げられる。
上記のラジカル重合性モノマーを使用した共重合体を用いると、アルカリ可溶性の観点から好ましい。これらのラジカル重合性モノマーは単独で用いても、複数を混合して用いてもよい。
上記具体例の中でも、メタクリル酸、ヒドロキシスチレン、または4−ヒドロキシフェニルビニルケトンが好ましい。メタクリル酸およびヒドロキシスチレンは入手が容易であり、4−ヒドロキシフェニルビニルケトンは透明性、耐熱性、組成物の保存安定性の点で良好な特性を得ることができる。
【0028】
<1−1−3.ラジカル重合性モノマー(a3)>
本発明で用いることのできるその他のラジカル重合性モノマー(a3)は、エポキシを有するラジカル重合性モノマー、ジシクロペンタニルを有するラジカル重合性モノマー、N置換マレイミドを有するラジカル重合性モノマー、シロキサンを有するラジカル重合性
モノマーなどを使用することができる。使用するモノマーは1つでもよいし、複数であってもよい。エポキシを有するラジカル重合性モノマーの具体例として、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルアクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、α−エチルアクリル酸グリシジルエステル3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレート、α−エチルアクリル酸グリシジルエステル3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレートなどが挙げられる。これらのラジカル重合性モノマーを使用した共重合体を用いると、耐スパッタ性が良好であり、また耐薬品性が高くなる。
【0029】
また、ジシクロペンタニルを有するラジカル重合性モノマー、N置換マレイミドを有するラジカル重合性モノマーの具体例として、ジシクロペンタニルアクリレートまたはジシクロペンタニルメタクリレート、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(4−アセチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(4−ジメチルアミノ−3,5−ジニトロフェニル)マレイミド、N−(1−アニリノナフチル−4)マレイミド、N−[4−(2−ベンズオキサゾリル)フェニル]マレイミド、またはN−(9−アクリジニル)マレイミドなどを挙げられる。
これらのラジカル重合性モノマーを用いると、耐熱性、低誘電率性の観点で好ましい。本発明で用いられるシロキサンを有するラジカル重合性モノマーの具体例として、アクリロイロキシプロピル−トリス−トリメチルシロキシシラン、メタクリロイロキシプロピル−トリス−トリメチルシロキシシランなどを挙げることができる。
【0030】
さらには、本発明の効果を損なわない範囲で、上記ポリマー(A)は、上記以外のラジカル重合性モノマーを使用してもよい。
そのようなラジカル重合性モノマーとして、例えばベンジルメタクリレート及びシクロヘキシルメタクリレートが挙げられる。
【0031】
上記ポリマー(A)は適度なアルカリ可溶性を有するのが好ましい。本発明において、アルカリ可溶性とは、ラジカル重合してなるポリマー(A)の溶液をスピンコートによって基板に塗布し、100℃で2分間加熱して形成される厚さ0.01〜100μmの被膜を、25℃の2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で5分間浸した後に純水ですすいだときに、前記被膜が残らない程度にアルカリへ溶解する性質をいう。
【0032】
ラジカル重合してなるポリマー(A)のアルカリ可溶性は、ラジカル重合性モノマー(a2)に用いるフェノール性OHを有するラジカル重合性モノマーや不飽和カルボン酸を有するラジカル重合性モノマーあるいは不飽和カルボン酸無水物を有するラジカル重合性モノマーの量によって調整することができる。例えば、ラジカル重合してなるポリマー(A)のアルカリ可溶性は、フェノール性OHを有するラジカル重合性モノマーや不飽和カルボン酸を有するラジカル重合性モノマーあるいは不飽和カルボン酸無水物を有するラジカル重合性モノマーの量を増やすことによって高めることができる。
【0033】
ポリマー(A)の合成方法は特に制限されないが、ラジカル重合性モノマーをラジカル共重合させて作ることが可能である。具体的には、ラジカル重合性モノマー(a1)、(a2)及び(a3)の混合物を重合させて得ることができ、溶剤を用いた溶液中でのラジカル重合が好ましい。なお、このラジカル重合の際には、重合開始剤を用いることもできる。
重合開始剤を用いる場合、重合温度は使用する重合開始剤からラジカルが十分発生する温度であれば特に限定されないが、通常50℃〜150℃の範囲である。重合時間も特に限定されないが、通常1〜24時間の範囲である。また、当該重合は、加圧、減圧又は大
気圧のいずれの圧力下でも行うことができる。
【0034】
上記の重合反応に使用する溶剤は、使用するラジカル重合性モノマーおよび生成するポリマー(A)を溶解する溶剤が好ましい。特に、ヒドロキシルを有する溶剤が重合したポリマーの保存安定性の点で好ましい。ただし、ヒドロキシルを有する溶剤は他の溶剤での重合後にポリマーの希釈溶剤として使用してもよい。当該溶剤の具体例は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。前記溶剤は、これらの一種であってもよいし、これらの二種以上の混合物であってもよい。
【0035】
ポリマー(A)を合成する際に用いることのできる重合開始剤は、熱によりラジカルを発生する化合物、アゾビスイソブチロニトリルや2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤や、過酸化ベンゾイル等の過酸化物系開始剤を使用することができる。分子量を調節するために、チオグリコール酸等の連鎖移動剤を適量添加してもよい。
【0036】
ポリマー(A)は、ポリスチレンを標準としたGPC分析で求めた重量平均分子量が1,000〜100,000の範囲であると、露光部分がアルカリ現像液で溶解されるまでの現像時間が適正であり、かつ、現像時に膜の表面が荒れにくくなり好ましい。さらに、重量平均分子量が1,500〜50,000の範囲であると、未露光部分がアルカリ現像液で溶解されるまでの現像時間が適正であり、かつ、現像時に膜の表面が荒にくく、現像残渣も極めて少なくなるので、一層好ましい。同様の理由により、重量平均分子量が2,000〜20,000の範囲であると、特に一層好ましい。
【0037】
標準のポリスチレンには分子量が645〜132,900のポリスチレン(例えば、VARIAN社製のポリスチレンキャリブレーションキットPL2010−0102)、カラムにはPLgel MIXED−D(VARIAN社製)を用い、移動相としてTHFを使用して測定することができる。
【0038】
本発明のポリマー(A)は、重合時のモノマー濃度、重合開始剤の量、重合温度によって好ましい分子量に調整することが可能である。例えば、重合時のモノマー濃度(上記重合反応に使用する溶剤における溶剤に溶解したモノマー全量の濃度)は、製造の容易さの観点から、5〜60重量%であることが好ましく、15〜50重量%であることがより好ましい。
また、本発明のポジ型感光性組成物において、上記ポリマー(A)の含有量は、当該組成物全量に対して1〜60重量%であることが好ましく、3〜40重量%であることがより好ましく、5〜35重量%であることが特に好ましい。
また、上記ポリマー(A)の含有量は、本発明のポジ型感光性組成物の塗布方法に応じて、上記範囲において適宜調整することができる。例えば、スピンコートであればポリマー(A)の含有量を多くして組成物の粘度を高くし、一方、例えばスリットコートではポリマー(A)の含有量を少なくして組成物の粘度を低くする。
【0039】
<2.本発明の光酸発生剤(B)>
本発明に使用する光酸発生剤としては、ジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩などのオニウム塩系の光酸発生剤、スルホニルイミド化合物系の光酸発生剤な
どが挙げられる。
ジフェニルヨードニウム塩の例としては、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホナート、ジフェニルヨードニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロアセテート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム−p−トルエンスルホナート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホン酸等が挙げられる。
トリフェニルスルホニウム塩の例としては、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホン酸、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホナート、トリフェニルスルホニウムブチルトリス(2、6−ジフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
スルホニルイミド化合物の例としては、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(2−フルオロフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(フェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(ノナフルオロブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカ
ルボキシルイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(フェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ペンタフルオロエチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ヘプタフルオロプロピルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(エチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(プロピルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ブチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ペンチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ヘキシルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ヘプチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(オクチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ノニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミドなどが挙げられる。
本発明において、特に透明膜を作製する目的で本発明のポジ型感光性組成物を用いる場合には、上記のような光酸発生剤を用いると、現像後に残存する光酸発生剤を全て光分解させるための後露光工程を経る必要がなくなるので好ましい。
【0040】
本発明のポジ型感光性組成物において、上記光酸発生剤(B)の含有量は、ポリマー(A)に対して0.1〜10重量%であることが好ましく、0.3〜5重量%であることがより好ましく、0.5〜3重量%であることが特に好ましい。
【0041】
<3.本発明の有機溶剤(C)>
本発明のポジ型感光性組成物は、当該組成物に含まれるポリマー(A)と、光酸発生剤(B)との他に、さらに有機溶剤(C)を含む。本発明に用いられる有機溶剤は、ポリマー(A)および光酸発生剤(B)を溶解する有機溶剤が好ましく、また、組成物としての保存安定性や、パターン状透明膜の製造プロセス中にトラブルなどで工程間に時間があいた場合の塗膜の経時安定性の面から、有機溶剤はヒドロキシルを有する有機溶剤であることがより好ましい。有機溶剤の沸点は100℃〜300℃である化合物が好ましい。沸点が100℃〜300℃である前記有機溶剤の具体例には、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トルエン、キシレン、γ−ブチロラクトン、又はN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のポジ型感光性組成物において、上記有機溶剤(C)の含有量は、当該組成物全量に対して40〜99重量%であることが好ましく、50〜90重量%であることがより好ましく、60〜80重量%であることが特に好ましい。
【0042】
<4.その他の成分>
本発明の感光性組成物には、解像度、塗布均一性、現像性、接着性を向上させるために各種の添加剤を添加することができる。添加剤には、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、フッ素系又はシリコーン系のレベリング剤・界面活性剤、シランカップリング剤等の密着性向上剤、アルコキシベンゾフェノン類等の紫外線吸収剤、エポキシ化合物、メラミン化合物又はビスアジド化合物等の架橋剤、多価カルボン酸、フェノール化合物等のアルカリ溶解性促進剤、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、イオウ系化合物等の酸化防止剤が主に挙げられる。
【0043】
<4−1.>レベリング剤、界面活性剤
本発明の感光性組成物には、ポリフローNo.45、ポリフローKL−245、ポリフローNo.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(以上いずれも商品名、共栄社化学工業株式会社)、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK330、BYK342、BYK346(以上いずれも商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社)、KP−341、KP−358、KP−368、KF−96−50CS、KF−50−100CS(以上いずれも商品名、信越化学工業株式会社)、サーフロンSC−101、サーフロンKH−40(以上いずれも商品名、AGCセイミケミカル株式会社)、フタージェント222F、フタージェント251、FTX−218(以上いずれも商品名、株式会社ネオス)、EFTOP EF−351、EFTOP EF−352、EFTOP EF−601、EFTOP EF−801、EFTOP EF−802(以上いずれも商品名、三菱マテリアル株式会社)、メガファックF−171、メガファックF−177、メガファックF−475、メガファックF−556、メガファックR−30(以上いずれも商品名、DIC株式会社)、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、又はアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩等が挙げられる。これらから選ばれる少なくとも1つを前記添加剤に用いることが好ましい。
【0044】
これらの添加剤の中でも、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、又はフルオロアルキルアミノスルホン酸塩等のフッ素系の界面活性剤、BYK306、BYK346、KP−341、KP−358、又はKP−368等のシリコーン系界面活性剤の中から選ばれる少なくとも1種が添加されると、感光性組成物の塗布均一性が高くなるので好ましい。
【0045】
本発明の感光性組成物における前記レべリング剤、界面活性剤の含有量は、それぞれ組成物の全体量に対して0.001〜0.1重量%であることが好ましい。
<4−2.有機カルボン酸>
前記アルカリ溶解性促進剤には、有機カルボン酸を用いることができる。有機カルボン酸は一種でも二種以上でもよい。有機カルボン酸としては、多価カルボン酸が好ましく、このような多価カルボン酸としては、例えば無水トリメリット酸、無水フタル酸、及び4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物が挙げられる。これらの多価カルボン酸の中でも無水トリメリット酸が好ましい。
【0046】
本発明の感光性組成物に多価カルボン酸が添加されると、感光性組成物のアルカリ可溶性を高めることができる。また、多価カルボン酸のカルボキシルは、感光性組成物にエポキシが含まれる場合に、これらと反応して、耐熱性、耐薬品性をさらに向上させることができる。
【0047】
本発明の感光性組成物における前記有機カルボン酸の含有量は、ポリマー(A)100重量部に対し、1〜30重量部であることが好ましく、2〜20重量部であることがより好ましい。
【0048】
<4−3.フェノール化合物>
前記アルカリ溶解性促進剤には、フェノール化合物を用いることができる。フェノール化合物は一種でも二種以上でもよい。フェノール化合物としては、例えば2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール、及び2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバンが挙げられる。これらのフェノール化合物の中でも、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールが好ましい。
【0049】
本発明の感光性組成物にフェノール化合物が添加されると、感光性組成物のアルカリ可溶性を高めることができる。また、フェノール化合物のフェノールは、感光性組成物にエポキシが含まれる場合に、これらと反応して、耐熱性、耐薬品性をさらに向上させることができる。
【0050】
本発明のポジ型感光性組成物におけるフェノール化合物の含有量は、ポリマー(A)100重量部に対し、1〜50重量部であることが好ましく、5〜20重量部であることがより好ましい。
【0051】
<4−4.酸化防止剤>
前記酸化防止剤には、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、及びイオウ系化合物の酸化防止剤を好適に用いることができる。酸化防止剤は一種でも二種以上でもよい。酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系化合物の酸化防止剤であることが耐候性の観点から好ましい。このような酸化防止剤としては、例えばIrganox1010、IrganoxFF、Irganox1035、Irganox1035FF、Irganox1076、Irganox1076FD、Irganox1076DWJ、Irganox1098、Irganox1135、Irganox1330、Irganox1726、Irganox1425 WL、Irganox1520L、Irganox245、Irganox245FF、Irganox245DWJ、Irganox259、Irganox3114、Irganox565、Irganox565DD、Irganox295(商品名;BASFジャパン(株))、ADK STAB AO−20、ADK STAB AO−30、ADK STAB AO−50、ADK STAB
AO−60、ADK STAB AO−70、及びADK STAB AO−80(商品名;ADEKA(株))が挙げられる。この中でもIrganox1010がより好ましい。
【0052】
本発明の感光性組成物における酸化防止剤の含有量は、ポリマー(A)100重量部に対し、0.1〜15重量部であることが好ましく、1〜10重量部であることがより好ましい。
【0053】
<4−5.密着性向上剤>
前記密着性向上剤は、感光性組成物と基板との密着性を向上させるために使用される。密着性向上剤には、カップリング剤を好適に用いることができる。密着性向上剤は一種でも二種以上でもよい。前記カップリング剤には、シラン系、アルミニウム系又はチタネート系の化合物を用いることができる。このようなカップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、及びテトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネートが挙げられる。これらの中でも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが、密着性を向上させる効果が大きいため好ましい。
【0054】
本発明の感光性組成物における密着性向上剤の含有量は、ポリマー(A)100重量部に対し10重量部以下であることが好ましい。
【0055】
<4−6.紫外線吸収剤>
前記紫外線吸収剤には、アルコキシベンゾフェノン類等の、感光性組成物において紫外線吸収剤として用いられる成分を用いることができる。紫外線吸収剤は一種でも二種以上でもよい。このような紫外線吸収剤としては、例えば、チヌビンP、チヌビン120、チ
ヌビン144、チヌビン213、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン571、チヌビン765(以上いずれも商品名、BASFジャパン(株))が挙げられる。
【0056】
本発明の感光性組成物における紫外線吸収剤の含有量は、ポリマー(A)100重量部に対し、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがより好ましい。
【0057】
<4−7.架橋剤>
熱架橋剤には、感光性組成物を材料とする成膜における加熱条件下で架橋反応を起こす成分を用いることができる。熱架橋剤は一種でも二種以上でもよい。熱架橋剤にはエポキシ化合物等の熱架橋剤を用いることができ、このような熱架橋剤としては、例えば、jER807、jER815、jER825、jER827、jER828、jER190P及びjER191P(商品名;油化シェルエポキシ(株))、jER1004、jER1256、YX8000(商品名;三菱化学(株))、アラルダイトCY177、アラルダイトCY184(商品名;ハンツマン・ジャパン(株))、セロキサイド2021P、EHPE−3150(商品名;ダイセル化学工業(株))、テクモアVG3101L(商品名;(株)プリンテック)が挙げられる。
【0058】
本発明のポジ型感光性組成物における熱架橋剤の含有量は、ポリマー(A)100重量部に対し、1〜50重量部であることが好ましく、5〜30重量部であることがより好ましい。
【0059】
本発明のポジ型感光性組成物は、温度−30℃〜25℃の範囲で遮光して保存することが、ポジ型感光性組成物の経時安定性の観点から好ましい。保存温度が−20℃〜10℃であれば、ポジ型感光性組成物からの析出物の発生を防止する観点からより一層好ましい。
【0060】
本発明のポジ型感光性組成物は、透明の膜を形成するのに適しており、パターニングの際の解像度が比較的高いことから10μm以下の小さな穴の開いた絶縁膜を形成するのに最適である。ここで、絶縁膜とは、例えば、層状に配置される配線間を絶縁するために設ける膜(層間絶縁膜)等をいう。
【0061】
本発明のパターン状透明膜は、前述の本発明の感光性組成物の塗膜の露光、現像、及び焼成によって形成される。例えば、前記透明膜及び絶縁膜等の本発明のパターン状透明膜は、レジスト分野において膜を形成する通常の方法で形成することができ、例えば以下のようにして形成される。
【0062】
まず、本発明のポジ型感光性組成物をスピンコート、ロールコート、スリットコート等の公知の方法により、ガラス等の基板上に塗布する。基板としては、例えば、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラス等の透明ガラス基板、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、アクリル、塩化ビニール、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等の合成樹脂製シート、フィルム又は基板、アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板等の金属基板、その他セラミック板、及び光電変換素子を有する半導体基板が挙げられる。これらの基板には、所望により、シランカップリング剤等の薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の前処理を行うことができる。
【0063】
次に、基板上のポジ型感光性組成物の塗膜をホットプレート又はオーブンで乾燥する。通常、60〜120℃で1〜5分間乾燥する。乾燥した基板上の前記膜に、所望のパターン形状の開口部を有するマスクを介して紫外線等の放射線を照射する。照射条件は、i線
で5〜50mJ/cm2が適当である。
【0064】
放射線照射後の膜は、露光後焼成(PEB:露光後、ポリマーに存在する保護基を外すために現像を行う前に焼成を行うこと)を必要とせず、アルカリ溶液等の現像液を用いて現像される。現像により、前記膜における放射線が照射された部分は速やかに現像液に溶解する。現像方法は特に限定されず、ディップ現像、パドル現像、シャワー現像のいずれも用いることができる。
【0065】
前記現像液はアルカリ溶液が好ましい。アルカリ溶液に含まれるアルカリとしては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムが挙げられる。また、現像液としては、これらのアルカリの水溶液が好適に用いられる。すなわち、現像液としては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、又は2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の有機アルカリ類や、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウム等の無機アルカリ類の水溶液が挙げられる。
【0066】
現像液には現像残渣の低減やパターン形状の適性化を目的として、メタノール、エタノールや界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤には、例えばアニオン系、カチオン系、及びノニオン系から選択される界面活性剤を使用することができる。これらの中でも、特に、ノニオン系のポリオキシエチレンアルキルエーテルを添加すると、解像度を高める観点から好ましい。
【0067】
前記現像された前記膜は、純水で十分洗浄される。その後、150〜250℃で10〜120分間焼成される。こうして、所望のパターニングされた透明膜を得ることができる。
【0068】
このようにして得られたパターン状透明膜は、パターン状絶縁膜として用いることもできる。絶縁膜に形成された穴の形状は、真上から見た場合、正方形、長方形、円形又は楕円形であることが好ましい。さらに、該絶縁膜上に透明電極を形成し、エッチングによりパターニングを行った後、配向処理を行う膜を形成させてもよい。該絶縁膜は、耐スパッタ性が高いため、透明電極を形成しても絶縁膜にしわが発生せず、高い透明性を保つことができる。
【0069】
本発明のパターン状透明膜は、液晶表示素子等の表示素子における所望の用途に応じた通常の厚さで形成することができる。本発明のパターン状透明膜の膜厚は、1μm〜10μmであることが好ましく、パターン状透明膜の膜厚は、本発明のポジ型感光性組成物の粘度や本発明のポジ型感光性組成物における固形物の濃度によって調整することができる。
【0070】
本発明のパターン状透明膜は、液晶等を用いる表示素子に用いられる。例えば前記表示素子は、上記のようにして本発明のパターン状透明膜が設けられた素子基板と、対向基板であるカラーフィルター基板とを、位置を合わせて圧着し、その後熱処理して組み合わせ、対向する基板の間に液晶を注入し、注入口を封止することによって製作される。
【0071】
又は、前記素子基板上に液晶を散布した後、素子基板を重ね合わせ、液晶が漏れないように密封することによっても製作することができ、前記表示素子はこのように製作された表示素子であってもよい。
【0072】
このようにして、本発明のポジ型感光性組成物で形成された、優れた耐熱性と透明性を有する絶縁膜を液晶表示素子に用いることができる。なお、本発明の表示素子に用いられる液晶、すなわち液晶化合物及び液晶組成物については特に限定されず、いずれの液晶化合物及び液晶組成物をも使用することができる。
【0073】
本発明の好ましい態様に係るポジ型感光性組成物は、例えば、パターニング透明膜及び絶縁膜に対して一般的に求められている高耐溶剤性、高耐水性、高耐酸性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、下地との密着性等の各種特性をさらに有する。
【0074】
また、本発明の好ましい態様に係るポジ型感光性組成物は、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性に優れていることから、当該感光性組成物を用いた透明膜、絶縁膜、及び表示素子等は、その絶縁膜形成後の後工程において150〜250℃の高温下に晒されても、あるいは溶剤、酸、アルカリ溶液等に浸漬、接触、熱処理等がなされても、膜に表面荒れが発生しにくい。その結果、本発明の好ましい態様に係る感光性組成物を用いた透明膜等の光の透過率が高まり、それを用いた表示素子等の製品の表示品位を高めることができる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0076】
[合成例1]ポリマー(A1)の合成
攪拌器付4つ口フラスコに窒素をバブリングしながら重合溶剤としてジエチレングリコールエチルメチルエーテル、モノマーとしてグリシジルメタクリレート、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロイロキシプロピル−トリス−トリメチルシロキシシラン、ジシクロペンタニルメタクリレート、4―ビニルケトンフェノールを下記の重量で仕込み、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を下記の重量で仕込み、90℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル 15.0g
グリシジルメタクリレート 2.8g
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 2.2g
メタクリロイロキシプロピル−トリス−トリメチルシロキシシラン 2.8g
ジシクロペンタニルメタクリレート 1.2g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 1.0g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 1.0g
【0077】
溶液を室温まで冷却し、ポリマー(A1)溶液を得た。溶液の一部をサンプリングし、GPC分析(ポリスチレン標準)により重量平均分子量を測定した。ポリマー(A1)の重量平均分子量は、分子量が645〜132,900のポリスチレン(VARIAN社製のポリスチレンキャリブレーションキットPL2010−0102)を標準のポリスチレンに用い、カラムにはPLgel MIXED−D(VARIAN社製)を用い、移動相としてTHFを用い、カラム温度を35℃とし、示差屈折率検出器を用いて測定した。その結果、ポリマー(A1)の重量平均分子量は7,100であった。
【0078】
[合成例2]ポリマー(A2)の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、90℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル 15.0g
グリシジルメタクリレート 4.0g
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 3.0g
ベンジルメタクリレート 2.2g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 0.8g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 1.5g
【0079】
得られたポリマー(A2)のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は4,200であった。
【0080】
[合成例3]ポリマー(A3)の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、90℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル 15.0g
グリシジルメタクリレート 2.8g
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 2.2g
メタクリロキシプロピル−トリス−トリメチルシロキシシラン 2.8g
シクロヘキシルメタクリレート 1.2g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 1.0g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 1.0g
【0081】
得られたポリマー(A3)のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は7,500であった。
【0082】
[合成例4]ポリマー(A4)の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、90℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル 15.0g
グリシジルメタクリレート 2.8g
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 2.2g
メタクリロキシプロピル−トリス−トリメチルシロキシシラン 3.0g
N−フェニルマレイミド 1.0g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 1.0g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 1.0g
【0083】
得られたポリマー(A4)のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は7,500であった。
【0084】
[合成例5]ポリマー(A5)の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、90℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル 15.0g
グリシジルメタクリレート 4.0g
スチリルトリメトキシシラン 3.0g
ベンジルメタクリレート 1.7g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 1.3g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 1.5g
【0085】
得られたポリマー(A5)のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は4,100であった。
【0086】
[合成例6]ポリマー(A6)の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、90℃の重合温度で2時間
加熱して重合を行った。
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル 15.0g
グリシジルメタクリレート 4.0g
ビニルトリメトキシシラン 2.8g
ベンジルメタクリレート 2.0g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 1.2g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 1.5g
【0087】
得られたポリマー(A6)のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は3,900であった。
【0088】
[合成例7]ポリマー(A7)の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、90℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル 15.0g
グリシジルメタクリレート 2.5g
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 1.5g
メタクリロキシプロピル−トリス−トリメチルシロキシシラン 2.0g
シクロヘキシルメタクリレート 3.0g
メタクリル酸 1.0g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 1.0g
【0089】
得られたポリマー(A7)のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は6,900であった。
【0090】
[比較合成例1]ポリマー(B1)の合成
合成例1の酸性基を有するラジカル重合性モノマー(4−ヒドロキシビニルケトン)を非酸性分であるメチルメタクリレートに置き換えた下記の成分を下記の重量で仕込み、90℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル 15.0g
グリシジルメタクリレート 2.8g
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 2.2g
メタクリロイロキシプロピル−トリス−トリメチルシロキシシラン 2.8g
ジシクロペンタニルメタクリレート 1.2g
メチルメタクリレート 1.0g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 1.0g
【0091】
得られたポリマー(B1)のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は6,800であった。
【0092】
[比較合成例2]ポリマー(B2)の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、90℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル 15.0g
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 10.0g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 1.0g
【0093】
得られたポリマー(B2)のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は6,800であった。
【0094】
[比較合成例3]ポリマー(B3)の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、90℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル 15.0g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 10.0g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 1.0g
【0095】
得られたポリマー(B3)のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は7,800であった。
【0096】
[実施例1]
[ポジ型感光性組成物の製造]
合成例1で得られたポリマー(A1)、光酸発生剤としてBASFジャパン株式会社製Irgacure250(以下「Irg250」と略す)、増感剤として川崎化成工業株式会社製Anthracure UVS−1331(以下「UVS−1331」と略す)を表1に示した重量部で混合溶解し、さらにジエチレングリコールエチルメチルエーテル(東邦化学工業株式会社製ハイソルブEDM、以下「EDM」と略す)を希釈溶剤として組成物の固形分濃度が28重量%になるように希釈した。最後に添加剤としてシリコーン系界面活性剤である信越化学工業株式会社製KP−341を組成物重量に対して500ppm添加し、ポジ型感光性組成物を得た。なお、合成例1で得られたポリマー(A1)溶液の固形分濃度は40重量%として計算した。また、下記表1及び2におけるポリマーの重量部は、固形分としての重量部を示す。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】


※HS−1TF・・・サンアプロ株式会社製光酸発生剤
※LW−S1・・・サンアプロ株式会社製光酸発生剤
※PGME・・・東京化成株式会社製プロピレングリコールモノメチルエーテル
※DAA・・・東京化成株式会社製ダイアセトンアルコール
※EEE・・・東京化成株式会社製2-(2-エトキシエトキシ)エタノール
【0099】
[ポジ型感光性組成物の評価方法]
1)パターン状透明膜の形成
ガラス基板上に実施例1で合成されたポジ型感光性組成物をスピンコートし、100℃のホットプレート上で2分間乾燥して膜厚3μmの有機膜を得た。この基板を空気中、ホールパターン形成用のマスクを介して、株式会社トプコン製プロキシミティー露光機TME−150PRC(光源は超高圧水銀灯)を使用し、波長カットフィルターを通して350nm以下の光をカットしてg、h、i線を取り出し、露光ギャップ100μmで露光した。露光量は、ウシオ電機株式会社製積算光量計UIT−102、受光器UVD−365PDで測定した。露光後のガラス基板を、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で90秒間ディップ現像し、露光部の組成物を除去した。現像後の基板を純水で60秒間洗ってからエアブローにて基板を乾燥させた。この基板をオーブン中230℃で30分間ポストベイクし、パターン状透明膜を形成した。膜厚はKLA−Tencor Japan株式会社製触針式膜厚計αステップP15にて測定し、3箇所の測定の平均値を膜厚とした。
【0100】
2)現像の前後の膜厚及び現像後の残膜率
現像の前後で膜厚を測定した。現像後の残膜率は次式から計算した。
(現像後膜厚/現像前膜厚)×100(%)
【0101】
3)感度
フォトマスクのサイズと同じ大きさのホール状パターンが解像する最小露光量を感度とした。
【0102】
4)解像度
上記1)で得られたポストベイク後のパターン状透明膜の基板を光学顕微鏡で1,00
0倍にて観察し、ホールパターンの底にガラスが露出しているマスクサイズを確認した。
ホールパターンが解像していない場合は不良(NG:No Good)とした。
【0103】
5)透明性
ガラス基板上に実施例1で合成されたポジ型感光性組成物をスピンコートし、100℃のホットプレート上で2分間乾燥して膜厚3μmの有機膜を得た。その後、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で90秒間ディップ現像した。現像後の基板を純水で60秒間洗ってからエアブローにて基板を乾燥させた。この基板を空気中、株式会社トプコン製プロキシミティー露光機TME−150PRC(光源は超高圧水銀灯)を使用し、波長カットフィルターを通して350nm以下の光をカットしてg、h、i線を取り出し、基板全面に露光した。露光量は、ウシオ電機株式会社製積算光量計UIT−102、受光器UVD−365PDで測定して20mJ/cm2とした。この基板をオーブン中230℃で30分間ポストベイクし、パターン状透明膜を形成した。日本分光株式会社製紫外可視近赤外分光光度計V−670を使用し、透明膜を形成していないガラス基板をリファレンスとして波長400nmでの光透過率を測定した。
【0104】
6)耐熱性
上記1)で得られたパターン状透明膜の基板を230℃のオーブンで60分間追加ベイクし、追加ベイクの前後において上記4)と同様に光透過率を測定し、ポストベイク後(追加ベイク前)の光透過率をT1とし、追加ベイク後の光透過率をT2とした。ポストベイク後から追加ベイク後の光透過率の低下が少ないほど良好と判定できる。また追加ベイクの前後で膜厚を測定し、膜厚の変化率を次式から計算した。
(追加ベイク後膜厚/ポストベイク後膜厚)×100(%)
【0105】
7)密着性
上記1)で得られたパターン状透明膜の基板を碁盤目剥離試験(クロスカット試験)により評価した。評価は1mm角の碁盤目100個中におけるテープ剥離後の残存碁盤目数を表した。
【0106】
実施例1で合成されたポジ型感光性組成物について、上記の評価方法によって得られた結果を表3に示す。
【0107】
【表3】

【0108】
【表4】


*比較例3では、現像工程ですべて膜がなくなってしまったため、その後の物性は評価不可能であった。
【0109】
[実施例2〜9]
表1に記載した通りに各成分を混合して実施例1と同様にポジ型感光性組成物を調製し評価した。有機溶剤と界面活性剤の比率は実施例1と同じである。評価結果を表3に示す。
【0110】
[比較例1〜4]
表1に記載した通りに各成分を混合して実施例1と同様にポジ型感光性組成物を調製し評価したが、パターンは全く解像しなかった。評価結果を表4に示す。
比較例1、2及び4では、パターン状透明膜の形成過程で、露光部のポジ型感光性組成物がアルカリ現像液に溶解しない、つまりパターニングできなかったので、現像後の残膜率は高い値となっているものの、解像度はNGであった。
【0111】
一般的に、感度が高いポジ型感光性組成物では現像後の残膜率が低くなり、逆に感度の低いポジ型感光性組成物では現像後の残膜率が高くなる傾向があるが、上記の実施例の結果から、本願発明のポジ型感光性組成物を用いた場合には、高感度でかつ現像後の残膜率が高い膜を得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の感光性組成物は、例えば、液晶表示素子に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシシリルを有するラジカル重合性モノマー(a1)と、酸性基を有するラジカル重合性モノマー(a2)と、(a1)と(a2)以外のラジカル重合性モノマー(a3)とをラジカル共重合してなるポリマー(A)、光酸発生剤(B)、及び有機溶剤(C)を含有するポジ型感光性組成物。
【請求項2】
前記アルコキシシリルを有するラジカル重合性モノマー(a1)が、下記一般式(I)、(II)、及び(III)で表される化合物の一種以上である請求項1に記載のポジ型感光性組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

(式中、R1は水素、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜5のア
ルキルであり、R2〜R10はそれぞれ水素、ハロゲン、−CN、−CF3、−OCF3、−
OH、直鎖または分岐の炭素数1〜20のアルキル又は炭素数1〜5のアルコキシであり、R2〜R10におけるアルキルは、任意の−CH2−が−COO−、−OCO−、−CO−、又は−O−で置き換えられてもよく、また任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよく、但し、R2〜R4の少なくとも1つは炭素数1〜5のアルコキシであり、R5〜R7の少なくとも1つは炭素数1〜5のアルコキシであり、R8〜R10の少なくとも1つは炭素数1〜5のアルコキシである。式(I)中、nは1〜5である。)
【請求項3】
前記酸性基を有するラジカル重合性モノマー(a2)が、フェノール性OHを有するラジカル重合性モノマー、不飽和カルボン酸を有するラジカル重合性モノマー、不飽和カルボン酸無水物を有するラジカル重合性モノマーから選ばれるラジカル重合性モノマーの一種以上である請求項1または2に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項4】
前記酸性基を有するラジカル重合性モノマー(a2)が、下記一般式(IV)で表されるフェノール性OHを有するラジカル重合性モノマーを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載のポジ型感光性組成物。
【化4】

(式中、R11、R12及びR13は、それぞれ水素、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜3のアルキルであり、R14、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ水素、ハロゲン、−CN、−CF3、−OCF3、−OH、炭素数1〜5のアルキル、又は炭素数1〜5のアルコキシであり、R14、R15、R16、R17及びR18におけるアルキルは任意の−CH2−が−COO−、−OCO−、又は−CO−で置き換えられてもよく、R14、R15、R16、R17及びR18におけるアルキルおよびアルコキシは任意の水素がハロゲ
ンで置き換えられてもよく、但し、R14〜R18のうち少なくとも1つは−OHである。)
【請求項5】
前記ラジカル重合性モノマー(a3)がエポキシを有するラジカル重合性モノマーである請求項1〜4のいずれか一項に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項6】
前記有機溶剤(C)がヒドロキシルを有する溶剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のポジ型感光性組成物の塗膜の露光、現像、及び焼成によって形成されるパターン状透明膜。
【請求項8】
請求項7に記載のパターン状透明膜を用いた絶縁膜。
【請求項9】
請求項7または8に記載のパターン状透明膜を有する表示素子。

【公開番号】特開2013−101240(P2013−101240A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245253(P2011−245253)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【Fターム(参考)】