説明

ポット

【課題】 ガタつきの発生しない回転支持構造を有するポットを提供する。
【解決手段】 本体2の底部に固定した底体4と、底体4に回転可能に取り付けられ、底体4の環状の摺接部17に摺接し、少なくとも部分的に底体4より下側に突出した回転体5とを有するポット1において、摺接部18は、回転体5に対する摺接能力を部分的に減じた減効部19を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卓上で回転できる電気湯沸かし器、魔法瓶などのポットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のポットは、液体を受け入れる容器を含む本体の下部に底体が固定され、底体に回転可能に取り付けられた回転体が卓上でポット全体を回転可能に支持する。
【0003】
特許文献1および2に記載されているポットでは、環状の回転体が底体に設けた環状の溝に係合し、回転体には摩擦を低減するために多数の突起が設けられ、突起の先端が環状の溝の奥壁に摺接する。このような構造のポットは、回転体の突起が、環状の溝の奥壁に均等に摺接することでスムーズな回転を可能にする。
【特許文献1】実公平6−46422号公報
【特許文献2】実公平7−26973号公報
【0004】
しかしながら、底体を本体に固定するビスの締め付け具合によって、樹脂成形された底体に歪みが生じる場合が少なくない。底体に歪みが生じると、回転体が底体に均等に摺接せず、本体のガタつきや回転不良が出るという問題があった。
【0005】
ガタつきや回転不良を防止するため、底体の強度を高くすることや、ビスの締め付け強度を厳密に管理することは、製品のコストアップを招くために好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、前記問題点に鑑みて、本発明は、ガタつきや回転不良の発生しない回転支持構造を有するポットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明によるポットは、本体の底部に固定した底体と、前記底体に回転可能に取り付けられ、前記底体の環状の摺接部に摺接し、少なくとも部分的に前記底体より下側に突出した回転体とを有し、前記摺接部は、前記回転体に対する摺接能力を部分的に減じた(摺接し難く、または、摺接圧力が小さくなるようにした)減効部を有するものとする。
【0008】
この構成によれば、減効部を下方に突出させるように底体が変形したとき、底体は、突出した減効部だけが回転体に摺接することがなくなり、突出した減効部とそれ以外の摺接部とが共に、または、突出した減効部以外の摺接部が回転体に対して摺接する。このため、回転体は、ポットを多数の点でガタつかせずに回転可能に支持することができる。
【0009】
また、本発明のポットにおいて、前記減効部は、前記底体を前記本体に固定する固定力により発生し得る前記底体の変形に伴い、前記摺接部の下方に突出する部分を、予め上方に後退させて形成、または、弾性変形して後退可能に形成してなってもよい。
【0010】
この構成によれば、ポットを組み立てるための固定力が原因で発生する底体の歪みによって下方に突出する摺接部が、予め上方に後退した、または、弾性によって後退可能な減効部である。減効部は、予め後退している場合、他の摺接部よりも回転体に対して摺接し難く、弾性によって後退可能な場合、減効部だけが回転体に摺接すると荷重が集中するので弾性変形し、減効部以外の摺接部も回転体に摺接させることになる。このため、ポットの組み立てにより底体が歪んでも、回転体は、減効部とだけ摺接することがなく、減効部以外の摺接部と摺接して、ポットを3点以上でガタつかないように回転可能に支持できる。
【0011】
また、本発明のポットにおいて、前記減効部は、前記底体を前記本体に固定する固定力により発生し得る前記底体の変形に伴い、前記摺接部の下方に突出する部分を、欠落させて形成、または、組み立て時に切除可能に形成してなってもよい。
【0012】
この構成によれば、摺接部は、ポットを組み立てるための固定力が原因で発生する底体の歪みによって下方に突出する部分の予め部分的に欠落して摺接する部材が存在しないように形成された減効部、または、組み立て時に、底体の歪みによって突出する部分を必要に応じて切除して摺接する部材が存在しないようにできる減効部である。このため、ポットの組み立てにより突出した減効部には、回転体に摺接する部材が存在しない。これにより、回転体は、減効部以外の、大きく突出していない3点以上の摺接部を支持して、ポットをガタつかせずに回転可能に支持する。
【0013】
また、本発明のポットにおいて、前記底体は、複数の固定部材によって前記本体に対して固定され、前記減効部は、隣り合う前記固定部材から等距離に位置してもよい。
【0014】
この構成によれば、固定部材の固定力が強く、底体が反り返ったときに下方に突出する部分に減効部を設けるので、底体の反り返りによってガタつきや回転不良が発生しない。
【0015】
また、本発明のポットにおいて、前記複数の固定部材は、2つのねじであってもよい。
【0016】
この構成によれば、簡単な構成で底体を本体に対して固定し、2つのねじを結ぶ線と直交する2等分線上に位置する摺接部の2カ所に減効部を設ける。これによって、2つの減効部が径方向に対向する位置に設けられ、回転体によるポットの支持が不均等にならず、底体の変形によってもガタつきや回転不良が発生しない。
【0017】
また、本発明のポットにおいて、前記回転体は、前記底体に設けた環状の溝に係合してもよい。
【0018】
この構成によれば、回転体を底体に対して簡単な構造で取り付けることができ、摺接部が溝の奥壁に設けられることになるので減効部が目立たない。
【0019】
また、本発明のポットにおいて、前記摺接部は、前記底体に環状に配列して設けた多数の突起の先端であり、前記減効部は、前記突起を欠落して、または、前記突起の高さを低くしてなってもよい。
【0020】
この構成によれば、回転体と底体との摺接の摩擦力を低減してポットをスムーズに回転することができるとともに、減効部の構造が簡単になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ポットの底体の回転体に対する摺接部の一部分が底体の変形によって下方に突出しても、突出部分に減効部を設けたことによってポットを部分的に持ち上げることがなく、ガタつきや回転不良の発生しない回転支持構造を有するポットを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の電気ポット1である。電気ポット1は、筒状の本体2と、本体2の上部を封止する蓋体3と、本体2の下部に固定された底体4と、底体4の底面に回転可能に取り付けた環状の回転体5とからなる。
【0023】
本体2は、外壁を構成する外胴6と、水を収容する内容器7と、外胴6と内容器7と連結する肩体8とからなり、内容器7の底部には内容器7内の水を給湯口9に導く揚水管10と、内容器7を介して内容器7内の水を加熱するヒータ11とが設けられ、ヒータ11を内容器7の底部に固定すると共に本体2に対して底体4を固定するための座となる取付金具12が固定されている。
【0024】
図1に加えて図2および図3に示すように、底体4は、下方からねじ(固定部材)13を受け入れ、ねじ13によって取付金具12に固定される2つの凹部14と、回転体5を受け入れる環状溝15とが設けられている。底体4を取付金具12にねじ13で締め付けると、底体4に向かって内容器7が引っ張られ、内容器7が肩体8を底体4に向かって引っ張り、肩体8が外胴6を底体4の外周部に押圧し、底体4、内容器7、肩体8および外胴6を互いに固定し合うことができる。回転体5は、内側上部が内方に向かって僅かに張り出した環状突起16を有し、環状溝15の口部に突設された3つの係止突起17と当接することによって環状溝15からの脱離が防止される。環状溝15の底壁には、先端が半球形の円柱状をした多数の柱状突起18が環状に配列して設けられている。この柱状突起18の先端が回転体5の上面と摺接する断続環状の摺接部を構成する。こうして、回転体5は、下端が底体4より下方に突出するように環状溝15内に回転可能に保持されている。また、柱状突起18の摺接部にはグリスが塗られ、回転体5との間の摩擦を低減する。
【0025】
図2に二点鎖線で示すように、環状溝15の、2つのねじ13の垂直二等分線Y上に位置する減効部19には、柱状突起18が設けられていない。つまり、減効部19は、環状に並んで配置された摺接部が欠落した部分であり、回転体5に対して摺接する能力を喪失した部分である。また、減効部19は、柱状突起18の高さをゼロにした部分と解することもできる。環状溝15は円形に形成されているため、図示するように、2つのねじ13と等距離にある減効部19は、2つねじ13を結ぶ直線Xから最も遠い位置にある部分になる。
【0026】
以上の構成からなるポット1において、ねじ13を締め込むと、底体4は、2つのねじ13を結ぶ直線Xを本体2側に凹む谷にして歪むおそれがある。このように底体4が歪むと、2つのねじ13を結ぶ直線Xから遠い部分は、相対的に回転体5側に突出することになる。
【0027】
環状溝15の減効部19にも柱状突起18が設けられていれば、底体4は、2つのねじ13の垂直二等分線Y上にある2つの柱状突起18が回転体5に当接し、垂直二等分線Yの両側の2点で支持される状態になる。すると、ポット1は、垂直二等分線Yを軸にして傾斜し、いずれかもう1つの柱状突起18を回転体5に当接させて安定しようとする。この状態でポット1を回転させるために本体2に外力を加えると、その外力によって、垂直二等分線Yを軸にして底体4の傾きが変わり、ポット1全体がガタつくことになる。
【0028】
しかしながら、本実施形態のポット1は、回転体5側に突出する垂直二等分線Y上の柱状突起18を欠落してなる減効部19を有しているため、底体4が2つのねじ13を結ぶ線Xを谷にして歪んだときは、少なくとも減効部19の両側で3つ以上の柱状突起18が回転体5に当接し、底体4が、ガタつかないように回転体5上に支持される。
【0029】
また、ねじ13の固定力による歪みが大きくなる減効部19の柱状突起18が欠落しているので、存在する柱状突起18の突出量は比較的小さい。このため、柱状突起18の突出は、柱状突起18や回転体5の弾性で吸収され、多くの柱状突起18が回転体5に当接してポット1をスムーズに回転させる。
【0030】
続いて、図4に本発明の第2実施形態のポットの底体4を示す。以降の記載において、第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態の減効部19には、他の柱状突起18より高さの低い、回転体5に対して後退した突起18’が設けられている。この減効部19は、突起18’の先端(摺接部)が、他の柱状突起18の先端(摺接部)よりも、回転体5に対して後退して形成されることにより、突起18’が回転体5に対して摺接する能力を他の柱状突起18に比べて減じたものである。このため、第1実施形態と同様に、底体4が2つのねじ13を谷にして歪んだときに回転体5を2点支持せず、ガタつきのないポット1の回転を担保する。
【0031】
また、図5に示す本発明の第3実施形態のように、環状溝15の深さを変えることで柱状突起18を後退させて減効部19を構成してもよい。
【0032】
また、減効部19に柱状突起18を後退させずに設けても、図6に示す第4実施形態のように、環状溝15の減効部19の奥壁を切除し、柱状突起18を片持ちの腕部20で支持すればよい。この構成によれば、図7に示すように、腕部20が弾性変形してたわむことができるので、底体4が変形して減効部19が下方に突出しても、減効部19の周囲の柱状突起18を回転体5に当接させてポット1の重さが減効部19に集中して加わらないように、つまり、減効部19の柱状突起18と回転体5との摺接圧力が大きくならないように、減効部19の柱状突起18が後退する。これによって、多数の柱状突起18で回転体5に摺接し、ポット1のガタつきや回転不良を防止できる。
【0033】
また、底体4の材質により腕部20に弾性を期待できない場合は、図8に示す第5実施形態のように、腕部20に切溝21を設けて、組み立て時に容易に切除できるようにしてもよい。この構造によれば、例えば、ロット毎に本体2への取付による底体4の歪み具合を確認し、減効部19の柱状突起18を切除するか否かを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態のポットの断面図。
【図2】図1のポットの回転体を取り外した底面図。
【図3】図1のポットの底部の分解斜視図。
【図4】本発明の第2実施形態のポットの回転体を取り外した底部の斜視図。
【図5】本発明の第3実施形態のポットの回転体を取り外した底部の斜視図。
【図6】本発明の第4実施形態のポットの回転体を取り外した底面図。
【図7】図6のポットの減効部の断面図。
【図8】本発明の第5実施形態のポットの減効部の断面図。
【符号の説明】
【0035】
1 ポット
2 本体
4 底体
5 回転体
13 ねじ(固定部材)
15 環状溝
18 柱状突起(摺接部)
19 減効部
20 腕部
21 切溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の底部に固定した底体と、
前記底体に回転可能に取り付けられ、前記底体の環状の摺接部に摺接し、少なくとも部分的に前記底体より下側に突出した回転体とを有し、
前記摺接部は、前記回転体に対する摺接能力を部分的に減じた減効部を有することを特徴とするポット。
【請求項2】
前記減効部は、前記底体を前記本体に固定する固定力により発生し得る前記底体の変形に伴い、前記摺接部の下方に突出する部分を、予め上方に後退させて形成、または、弾性変形して後退可能に形成してなることを特徴とする請求項1に記載のポット。
【請求項3】
前記減効部は、前記底体を前記本体に固定する固定力により発生し得る前記底体の変形に伴い、前記摺接部の下方に突出する部分を、欠落させて形成、または、組み立て時に切除可能に形成してなることを特徴とする請求項1に記載のポット。
【請求項4】
前記底体は、複数の固定部材によって前記本体に対して固定され、
前記減効部は、隣り合う前記固定部材から等距離に位置することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のポット。
【請求項5】
前記複数の固定部材は、2つのねじであることを特徴とする請求項4に記載のポット。
【請求項6】
前記回転体は、前記底体に設けた環状の溝に係合していることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のポット。
【請求項7】
前記摺接部は、前記底体に環状に配列して設けた多数の突起の先端であり、
前記減効部は、前記突起を欠落して、または、前記突起の高さを低くしてなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のポット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−61110(P2007−61110A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246925(P2005−246925)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】