ポラリメトリSAR画像処理方法、ポラリメトリSAR装置および画像処理装置
【課題】複雑な形状のターゲットでも、ターゲット全体を鮮明に写す1枚のSAR画像を生成可能なポラリメトリSAR画像処理方法を提供する。
【解決手段】送信機1からの垂直偏波および水平偏波の送信波をアンテナ5、6からターゲットに送信して、受信機7、8で受信したSAR画像から再生処理部13〜16でフルポラリメトリ複素画像を生成し、生成したフルポラリメトリ複素画像の偏波面を偏波回転処理部18であらかじめ定めた回転角度ずつ回転させて生成した複数個の偏波回転画像中の各画素について、画像生成処理部20で、同一の画素位置の中から、指定された代表値に該当する画素を代表画素として抽出して、該代表画素からなる1枚のSAR画像として再生する。また、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各画素の輝度値の集合を入力として、1つの実数値を出力することができる前記代表値を設定入力する設定入力部19を備える。
【解決手段】送信機1からの垂直偏波および水平偏波の送信波をアンテナ5、6からターゲットに送信して、受信機7、8で受信したSAR画像から再生処理部13〜16でフルポラリメトリ複素画像を生成し、生成したフルポラリメトリ複素画像の偏波面を偏波回転処理部18であらかじめ定めた回転角度ずつ回転させて生成した複数個の偏波回転画像中の各画素について、画像生成処理部20で、同一の画素位置の中から、指定された代表値に該当する画素を代表画素として抽出して、該代表画素からなる1枚のSAR画像として再生する。また、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各画素の輝度値の集合を入力として、1つの実数値を出力することができる前記代表値を設定入力する設定入力部19を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポラリメトリSAR(Polarimetry Synthetic Aperture Radar)画像処理方法、ポラリメトリSAR装置および画像処理装置合成開口レーダ装置(SAR:Synthetic Aperture Radar)に関し、特に、偏波マイクロ波信号を用いるポラリメトリSAR装置によって取得されたフルポラリメトリデータを用いて、鮮明度を高めた画像を得ることが可能なポラリメトリSARの画像処理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星や航空機などの飛翔体を利用したリモートセンシングの分野では、地表の状態を撮像するためのセンサとして、マイクロ波帯の信号を用いた合成開口レーダ装置(SAR装置)が使用されている。
【0003】
合成開口レーダ装置(SAR装置)を使用した地表状態の判読方法は、合成開口レーダ装置(SAR装置)によって得られた受信波の振幅データと位相データとの複素データから画像データを再生し、地表の状態を判読するものである。ポラリメトリSAR装置では、偏波面がH(水平)、V(垂直)の2種類のマイクロ波信号を交互に切り替えて送信し、それぞれの反射波のH成分、V成分を受信することにより、フルポラリメトリデータ(つまり、合計4つの偏波(HH,HV,VH,VV)に対応するデータ)を取得することができる。
【0004】
フルポラリメトリデータを使用した従来の判読方法は、特許文献1の特開平7−270529号公報「合成開口レーダの画像再生処理システム」や特許文献2の特開平5−087919号公報「ポーラリメトリック合成開口レーダ装置」に記載されているように、フルポラリメトリデータとして得られる4種類の複素データから、画像データをそれぞれ再生し、地表の状態を判読するもの、あるいは、4種類の複素データから、送信波、受信波の偏波面を任意に回転した送受信波によるSAR画像と等価の画像を再生し、地表の状態を判読するもの、のいずれかであった。
【特許文献1】特開平7−270529号公報(第2頁)
【特許文献2】特開平5−087919号公報(第3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、ポラリメトリ合成レーダ装置(ポラリメトリSAR装置)においては、開口送信波および受信波の偏波面の角度と、ターゲットの形状との組合せによっては、図2に示すように、SAR画像にターゲットが映り難い場合がある。図2は、ポラリメトリ開口合成レーダ装置(ポラリメトリSAR装置)の送信波の偏波面の傾きによる反射波の違いを説明するための説明図である。
【0006】
図2(A)に示すように、垂直方向に配置された金属格子50のターゲットに対して、垂直偏波の送信波Vを射出した場合には、受信波として大きな反射波が得られるが、図2(B)に示すように、水平偏波の送信波Hを射出した場合には、金属格子50を通り抜けてしまい、受信波となる反射波を得ることができない。
【0007】
また、図3に示すように、垂直面・水平面に対して斜めに線状ターゲット60が配置されていた場合には、線状ターゲット60に入射した電界(例えば、図3(A)のように垂直方向(V)の向きの入射電界)に対して、図3(B)のように、垂直成分(V)と水平成分(H)との双方の反射波が受信波として発生する。図3は、線状ターゲットの傾きによって、反射波の成分が複数存在することを説明するための説明図である。
【0008】
ポラリメトリ開口合成レーダ装置(ポラリメトリSAR装置)の受信系として、垂直成分(V)と水平成分(H)のうち、一方の成分の反射波のみしか受信することができない場合、受信波の大きさが線状ターゲット60の傾きによって大きく変わってしまうことになる。
【0009】
すなわち、送信波および受信波の偏波面の傾きが固定されている場合は、送信波および受信波の偏波面と線状ターゲット60とがなす角度によって、鮮明に映るSAR画像を必ずしも得ることができなくなる。
【0010】
かくのごとき問題点を解決するために、前述のように、ポラリメトリ開口合成レーダ装置(ポラリメトリSAR装置)にて得られるフルポラリメトリデータを用いる際に、送信波、受信波の偏波面を任意の角度に回転した送受信波によるSAR画像と等価の画像を再生する画像処理方法が提案されていた。
【0011】
しかしながら、従来の方法では、形状の複雑なターゲットに対して、ターゲット全体を1枚の画像で鮮明に写すことができない。その理由は、ターゲットの形状が複雑な場合、ターゲットの部位により鮮明に写す偏波面の角度が異なっているからである。
【0012】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ターゲットの形状が複雑な場合であっても、ターゲット全体を鮮明に写す1枚のSAR画像を生成することが可能なポラリメトリSAR画像処理方法、ポラリメトリSAR装置および画像処理装置を提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の課題を解決するため、本発明によるポラリメトリSAR画像処理方法、ポラリメトリSAR装置および画像処理装置は、次のような特徴的な構成を採用している。
【0014】
(1)垂直偏波および水平偏波の送信波をターゲットに送信して得られる4種類の送受信偏波の組み合わせからなるフルポラリメトリ複素画像に基づいて画像を生成するポラリメトリSAR(合成開口レーダ)画像処理方法において、前記フルポラリメトリ複素画像の偏波面をあらかじめ定めた回転角度ずつ回転させて、複数個の偏波回転画像を生成して、生成した複数個の前記偏波回転画像の中の各画素について、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の中から、ターゲットの形状に応じて指定された代表値に該当する画素を代表画素として抽出して、該代表画素からなる1枚のSAR画像として再生するポラリメトリSAR画像処理方法。
(2)前記代表画素を複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の中から抽出する際に、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各画素の輝度値の集合を入力として、1つの実数値を出力することができる前記代表値を選択する上記(1)のポラリメトリSAR画像処理方法。
(3)複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各画素の輝度値の集合を入力として、1つの前記実数値を出力する規則を設定している上記(2)のポラリメトリSAR画像処理方法。
(4)前記代表値を、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各輝度値のうち、任意の順番の輝度値、各輝度値の平均値、あるいは、各輝度値の中央値、を少なくとも含む選択項目の中から選択する上記(2)または(3)のポラリメトリSAR画像処理方法。
(5)垂直偏波および水平偏波の送信波をターゲットに送信して得られる4種類の送受信偏波の組み合わせからなるフルポラリメトリ複素画像に基づいて画像を生成するポラリメトリSAR(合成開口レーダ)画像処理装置において、前記フルポラリメトリ複素画像の偏波面をあらかじめ定めた回転角度ずつ回転させて、複数個の偏波回転画像を生成する偏波回転処理手段と、前記偏波回転処理手段により生成した複数個の前記偏波回転画像の中の各画素について、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の中から、ターゲットの形状に応じて指定された代表値に該当する画素を代表画素として抽出して、該代表画素からなる1枚のSAR画像として再生する画像生成処理手段とを少なくとも備えているポラリメトリSAR装置。
(6)前記代表画素を複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の中から抽出する際に、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各画素の輝度値の集合を入力として、1つの実数値を出力することができる前記代表値を設定入力する設定入力手段を備えている上記(5)のポラリメトリSAR装置。
(7)前記画像生成処理手段は、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各画素の輝度値の集合を入力として、1つの前記実数値を出力する規則を設定している上記(6)のポラリメトリSAR装置。
(8)前記設定入力手段は、前記代表値を、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各輝度値のうち、任意の順番の輝度値、各輝度値の平均値、あるいは、各輝度値の中央値、を少なくとも含む選択項目の中から選択する上記(6)または(7)のポラリメトリSAR装置。
(9)垂直偏波および水平偏波の送信波を送信するポラリメトリSAR装置により得られる4種類の送受信偏波の組み合わせからなるフルポラリメトリ複素画像を入力として、前記フルポラリメトリ複素画像の偏波面をあらかじめ定めた回転角度ずつ回転させて、複数個の偏波回転画像を生成する偏波回転処理手段と、前記偏波回転処理手段から出力される複数個の前記偏波回転画像の中の各画素について、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の中から、ターゲットの形状に応じて指定された代表値に該当する画素を代表画素として抽出して、該代表画素からなる1枚のSAR画像として再生する前記画像生成処理手段と、を少なくとも備えている画像処理装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポラリメトリSAR画像処理方法、ポラリメトリSAR装置および画像処理装置によれば、ターゲットの部位ごとにその部位を鮮明に写す送受信波の偏波面の傾きを適切に選択することができるので、ターゲットの形状が複雑な場合であっても、ターゲット全体を鮮明に写す1枚のSAR画像を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明によるポラリメトリSAR画像処理方法、ポラリメトリSAR装置および画像処理装置の好適な実施例について添付図を参照して説明する。
【0017】
(本発明の特徴)
本発明の実施例の説明に先立って、本発明の特徴についてまず説明する。本発明においては、ポラリメトリSAR装置の送受信部によってフルポラリメトリデータを得た後に、まず、偏波回転処理と画像再生処理とにより、偏波回転画像をn(n≧1)枚生成する。次に、n枚の偏波回転画像の同一位置の画素n個から、最適な1つの画素を生成し、当該位置の画素の代表値とする。最適な画素の代表値の求め方としては、m番目(m≧1)に大きな輝度値、平均値、中央値などのいずれかを選択して用いることができるという多様な手段を用意しており、ターゲットに応じて、適切に選択することが可能である。この操作を全ての位置の画素に対して繰返して実行することにより、代表画素値で生成された1枚の画像が得られる。
【0018】
かくのごとき処理を実施することにより、ターゲットの形状が複雑な場合であっても、ターゲット全体を鮮明に写す1枚のSAR画像を生成することができる。
【0019】
(実施例の構成)
図1は、本発明のポラリメトリSAR装置のブロック構成の一例を示す構成図である。図1に示す本実施例のポラリメトリSAR装置は、送信機1、送信波切替スイッチ2、サーキュレータ3、4、アンテナ5、6、受信機7、8、データ処理部9、10、分離処理部11、12、再生処理部13、14、15、16、記憶装置17、偏波回転処理部18、設定入力部19、画像生成処理部20を少なくとも備えて構成されている。
【0020】
送信機1は、送信トリガ信号となるパルス繰り返し周波数に同期させて直線周波数変調された送信信号(チャープ信号)を生成して、送信波切替スイッチ2に出力する。送信波切替スイッチ2は、送信機1からの送信信号をパルス繰り返し周波数ごとに交互に切り替えてサーキュレータ3、4のいずれかを介してアンテナ5、6に送出する。アンテナ5は、水平偏波(H偏波)用アンテナであり、アンテナ6は、垂直偏波(V偏波)用アンテナであり、パルス繰り返し周波数に同期させて交互に切り替えて、水平偏波(H偏波)、垂直偏波(V偏波)を送信波として、ターゲットに向かって送信する。
【0021】
水平偏波(H偏波)、垂直偏波(V偏波)それぞれの送信波が照射されたターゲット例えば地表面からの反射波は、ターゲット例えば地表面の形状に応じて、水平偏波(H偏波)、垂直偏波(V偏波)いずれの送信波についても水平偏波(H偏波)成分、垂直偏波(V偏波)成分を含んでおり、それぞれの送信波の送信タイミングに対応した時刻に、アンテナ5、6それぞれで、水平偏波(H偏波)成分、垂直偏波(V偏波)成分を、受信波(H送信−H受信)、受信波(H送信−V受信)、または、受信波(V送信−H受信)、受信波(V送信−V受信)として受信する。
【0022】
受信機7は、アンテナ5で受信された受信波(H送信−H受信)、受信波(V送信−H受信)を、サーキュレータ3を介して受信して受信処理を行ってデータ処理部9に出力する。一方、受信機8は、アンテナ6で受信された受信波(H送信−V受信)、受信波(V送信−V受信)を、サーキュレータ4を介して受信して受信処理を行ってデータ処理部10に出力する。データ処理部9は、受信機7からの受信データ(H送信−H受信)、受信データ(V送信−H受信)をSARデータとして記憶し、データ処理部10は、受信機8からの受信データ(H送信−V受信)、受信データ(V送信−V受信)をSARデータとして記憶し、それぞれ、分離処理部11、12に出力する。
【0023】
分離処理部11は、データ処理部9からのSARデータを、SARデータ(HH)、SARデータ(VH)に分離して、それぞれを、再生処理部13、14に出力する。一方、分離処理部12は、データ処理部10からのSARデータを、SARデータ(HV)、SARデータ(VV)に分離して、それぞれを、再生処理部15、16に出力する。再生処理部13、14、15、16は、分離処理部11、12から出力されたそれぞれのSARデータ(HH,VH,HV,VV)に基づいて、それぞれを複素画像として生成して、記憶装置17に、フルポラリメトリ複素画像として記憶する。
【0024】
偏波回転処理部18は、記憶装置17に記憶されたフルポラリメトリ複素画像を、あらかじめ定めた回転角度ずつ回転させて、n(n≧1)枚の偏波回転画像R_1,〜,R_nを生成する。設定入力部19は、ターゲットの形状に応じて、n(n≧1)枚の偏波回転画像R_1,〜,R_nそれぞれにおける、画素としての最適な代表値の選択方法を指定する。例えば、m番目(m≧1)に大きな輝度値、または、平均値、または、中央値などのいずれかを選択して指定する。
【0025】
画像生成処理部20は、設定入力部19により指定された代表値に該当する各画素をn(n≧1)枚の偏波回転画像R_1〜R_nそれぞれから代表画素として各画素ごとにそれぞれ抽出して、画像処理を行って、各画素の代表値を用いた1枚の画像として生成する。
【0026】
なお、図1に示したポラリメトリSAR装置の各ブロックのうち、偏波回転処理部18、設定入力部19および画像生成処理部20を、ポラリメトリSAR装置から分離して別の画像処理装置として構成することももちろん可能である。
【0027】
(実施例の動作の説明)
次に、図1のポラリメトリSAR装置の動作についてさらに説明する。まず、ポラリメトリSAR装置によりフルポラリメトリ複素画像を取得して記憶装置17に格納する動作を説明する。1台の送信機1からの2つの送信波を、送信波切替スイッチ2によりパルス繰り返し周波数ごとに切り替えて、サーキュレータ3、4を介して、2台のアンテナ5、6から、交互に、それぞれ、H偏波送信波、V偏波送信波として、ターゲットに向かって送信する。なお、アンテナ5、6にて送受信される送信波と受信波とは、1台の送信機1と2台の受信機7、8とにサーキュレータ3、4により振り分けられる。
【0028】
ターゲットから反射されてくるH偏波成分、V偏波成分を、受信波として、それぞれ、2つのアンテナ5、6で受信して、受信機7、8にて受信処理をし、2つのデータ処理部9、10にてそれぞれSARデータとして記録する。2つのデータ処理部9、10に記録されているSARデータを2つの分離処理部11、12にて、それぞれ、SARデータ(HH)とSARデータ(VH)とに、および、SARデータ(HV)とSARデータ(VV)とに分離して、4つの再生処理部13、14、15、16に入力する。
【0029】
しかる後、4つの再生処理部13、14、15、16にて、SARデータ(HH)、SARデータ(VH)、SARデータ(HV)、SARデータ(VV)、それぞれの複素画像を生成し、フルポラリメトリ複素画像として、記憶装置17に格納する。
【0030】
次に、ポラリメトリSAR装置により取得して記憶装置17に格納したフルポラリメトリ複素画像からターゲット全体を鮮明に写す1枚のSAR画像を生成する動作を説明する。
【0031】
まず、記憶装置17に格納したフルポラリメトリ複素画像を用いて、偏波回転処理部18により偏波回転処理を行う。つまり、送受信波の偏波面の角度が、それぞれ、αi,βi(1≦i≦n)となるようにn枚の偏波回転画像R(αi,βi)を生成する。その結果、n(n≧1)枚の偏波回転画像R_1,〜,R_nの偏波回転画像を得ることになる。
【0032】
さらに、設定入力部19により、ユーザは、n枚の偏波回転画像R_1,〜,R_nの各画素の代表値の算出方法を指定する。例えば、m番目(m≧1)に大きな輝度値、または、各輝度値の平均値、または、各輝度値の中央値などのうち、いずれかを指定する。
【0033】
最後に、画像生成処理部20により、n枚の偏波回転画像R_1,〜,R_nに対して、設定入力部19から指定された各画素の代表値の算出方法に従って、画像生成処理を行い、各画素の代表値で生成された1枚のSAR画像を得る。つまり、各偏波回転画像R(αi,βi)に対して、jライン目のkサンプル目に相当する画素の輝度値をbj,k(αi,βi)とし、さらに、{bj,k(α1,β1),bj,k(α2,β2),…,bj,k(αn,βn)}の集合から実数値μj,k{bj,k(α1,β1),bj,k(α2,β2),…,bj,k(αn,βn)}を1つ決定する規則μj,kが決定することができるものとしたとき、実数値μj,k{bj,k(α1,β1),bj,k(α2,β2),…,bj,k(αn,βn)}をjライン目、kサンプル目の画素値とする画像を生成する処理を行う。
【0034】
この結果、ターゲットの状況に応じて、設定入力部19より適切な各画素の代表値の算出方法を指定することにより、ターゲット全体を鮮明に写す1枚のSAR画像を生成することができる。
【0035】
以上、本発明の好適実施例の構成を説明した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のポラリメトリ開口合成レーダ装置(ポラリメトリSAR装置)のブロック構成の一例を示す構成図である。
【図2】ポラリメトリ開口合成レーダ装置(ポラリメトリSAR装置)の送信波の偏波面の傾きによる反射波の違いを説明するための説明図である。
【図3】線状ターゲットの傾きによって、反射波の成分が複数存在することを説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 送信機
2 送信波切替スイッチ
3、4 サーキュレータ
5、6 アンテナ
7、8 受信機
9、10 データ処理部
11、12 分離処理部
13、14、15、16 再生処理部
17 記憶装置
18 偏波回転処理部
19 設定入力部
20 画像生成処理部
50 金属格子
60 線状ターゲット
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポラリメトリSAR(Polarimetry Synthetic Aperture Radar)画像処理方法、ポラリメトリSAR装置および画像処理装置合成開口レーダ装置(SAR:Synthetic Aperture Radar)に関し、特に、偏波マイクロ波信号を用いるポラリメトリSAR装置によって取得されたフルポラリメトリデータを用いて、鮮明度を高めた画像を得ることが可能なポラリメトリSARの画像処理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星や航空機などの飛翔体を利用したリモートセンシングの分野では、地表の状態を撮像するためのセンサとして、マイクロ波帯の信号を用いた合成開口レーダ装置(SAR装置)が使用されている。
【0003】
合成開口レーダ装置(SAR装置)を使用した地表状態の判読方法は、合成開口レーダ装置(SAR装置)によって得られた受信波の振幅データと位相データとの複素データから画像データを再生し、地表の状態を判読するものである。ポラリメトリSAR装置では、偏波面がH(水平)、V(垂直)の2種類のマイクロ波信号を交互に切り替えて送信し、それぞれの反射波のH成分、V成分を受信することにより、フルポラリメトリデータ(つまり、合計4つの偏波(HH,HV,VH,VV)に対応するデータ)を取得することができる。
【0004】
フルポラリメトリデータを使用した従来の判読方法は、特許文献1の特開平7−270529号公報「合成開口レーダの画像再生処理システム」や特許文献2の特開平5−087919号公報「ポーラリメトリック合成開口レーダ装置」に記載されているように、フルポラリメトリデータとして得られる4種類の複素データから、画像データをそれぞれ再生し、地表の状態を判読するもの、あるいは、4種類の複素データから、送信波、受信波の偏波面を任意に回転した送受信波によるSAR画像と等価の画像を再生し、地表の状態を判読するもの、のいずれかであった。
【特許文献1】特開平7−270529号公報(第2頁)
【特許文献2】特開平5−087919号公報(第3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、ポラリメトリ合成レーダ装置(ポラリメトリSAR装置)においては、開口送信波および受信波の偏波面の角度と、ターゲットの形状との組合せによっては、図2に示すように、SAR画像にターゲットが映り難い場合がある。図2は、ポラリメトリ開口合成レーダ装置(ポラリメトリSAR装置)の送信波の偏波面の傾きによる反射波の違いを説明するための説明図である。
【0006】
図2(A)に示すように、垂直方向に配置された金属格子50のターゲットに対して、垂直偏波の送信波Vを射出した場合には、受信波として大きな反射波が得られるが、図2(B)に示すように、水平偏波の送信波Hを射出した場合には、金属格子50を通り抜けてしまい、受信波となる反射波を得ることができない。
【0007】
また、図3に示すように、垂直面・水平面に対して斜めに線状ターゲット60が配置されていた場合には、線状ターゲット60に入射した電界(例えば、図3(A)のように垂直方向(V)の向きの入射電界)に対して、図3(B)のように、垂直成分(V)と水平成分(H)との双方の反射波が受信波として発生する。図3は、線状ターゲットの傾きによって、反射波の成分が複数存在することを説明するための説明図である。
【0008】
ポラリメトリ開口合成レーダ装置(ポラリメトリSAR装置)の受信系として、垂直成分(V)と水平成分(H)のうち、一方の成分の反射波のみしか受信することができない場合、受信波の大きさが線状ターゲット60の傾きによって大きく変わってしまうことになる。
【0009】
すなわち、送信波および受信波の偏波面の傾きが固定されている場合は、送信波および受信波の偏波面と線状ターゲット60とがなす角度によって、鮮明に映るSAR画像を必ずしも得ることができなくなる。
【0010】
かくのごとき問題点を解決するために、前述のように、ポラリメトリ開口合成レーダ装置(ポラリメトリSAR装置)にて得られるフルポラリメトリデータを用いる際に、送信波、受信波の偏波面を任意の角度に回転した送受信波によるSAR画像と等価の画像を再生する画像処理方法が提案されていた。
【0011】
しかしながら、従来の方法では、形状の複雑なターゲットに対して、ターゲット全体を1枚の画像で鮮明に写すことができない。その理由は、ターゲットの形状が複雑な場合、ターゲットの部位により鮮明に写す偏波面の角度が異なっているからである。
【0012】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ターゲットの形状が複雑な場合であっても、ターゲット全体を鮮明に写す1枚のSAR画像を生成することが可能なポラリメトリSAR画像処理方法、ポラリメトリSAR装置および画像処理装置を提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の課題を解決するため、本発明によるポラリメトリSAR画像処理方法、ポラリメトリSAR装置および画像処理装置は、次のような特徴的な構成を採用している。
【0014】
(1)垂直偏波および水平偏波の送信波をターゲットに送信して得られる4種類の送受信偏波の組み合わせからなるフルポラリメトリ複素画像に基づいて画像を生成するポラリメトリSAR(合成開口レーダ)画像処理方法において、前記フルポラリメトリ複素画像の偏波面をあらかじめ定めた回転角度ずつ回転させて、複数個の偏波回転画像を生成して、生成した複数個の前記偏波回転画像の中の各画素について、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の中から、ターゲットの形状に応じて指定された代表値に該当する画素を代表画素として抽出して、該代表画素からなる1枚のSAR画像として再生するポラリメトリSAR画像処理方法。
(2)前記代表画素を複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の中から抽出する際に、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各画素の輝度値の集合を入力として、1つの実数値を出力することができる前記代表値を選択する上記(1)のポラリメトリSAR画像処理方法。
(3)複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各画素の輝度値の集合を入力として、1つの前記実数値を出力する規則を設定している上記(2)のポラリメトリSAR画像処理方法。
(4)前記代表値を、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各輝度値のうち、任意の順番の輝度値、各輝度値の平均値、あるいは、各輝度値の中央値、を少なくとも含む選択項目の中から選択する上記(2)または(3)のポラリメトリSAR画像処理方法。
(5)垂直偏波および水平偏波の送信波をターゲットに送信して得られる4種類の送受信偏波の組み合わせからなるフルポラリメトリ複素画像に基づいて画像を生成するポラリメトリSAR(合成開口レーダ)画像処理装置において、前記フルポラリメトリ複素画像の偏波面をあらかじめ定めた回転角度ずつ回転させて、複数個の偏波回転画像を生成する偏波回転処理手段と、前記偏波回転処理手段により生成した複数個の前記偏波回転画像の中の各画素について、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の中から、ターゲットの形状に応じて指定された代表値に該当する画素を代表画素として抽出して、該代表画素からなる1枚のSAR画像として再生する画像生成処理手段とを少なくとも備えているポラリメトリSAR装置。
(6)前記代表画素を複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の中から抽出する際に、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各画素の輝度値の集合を入力として、1つの実数値を出力することができる前記代表値を設定入力する設定入力手段を備えている上記(5)のポラリメトリSAR装置。
(7)前記画像生成処理手段は、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各画素の輝度値の集合を入力として、1つの前記実数値を出力する規則を設定している上記(6)のポラリメトリSAR装置。
(8)前記設定入力手段は、前記代表値を、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各輝度値のうち、任意の順番の輝度値、各輝度値の平均値、あるいは、各輝度値の中央値、を少なくとも含む選択項目の中から選択する上記(6)または(7)のポラリメトリSAR装置。
(9)垂直偏波および水平偏波の送信波を送信するポラリメトリSAR装置により得られる4種類の送受信偏波の組み合わせからなるフルポラリメトリ複素画像を入力として、前記フルポラリメトリ複素画像の偏波面をあらかじめ定めた回転角度ずつ回転させて、複数個の偏波回転画像を生成する偏波回転処理手段と、前記偏波回転処理手段から出力される複数個の前記偏波回転画像の中の各画素について、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の中から、ターゲットの形状に応じて指定された代表値に該当する画素を代表画素として抽出して、該代表画素からなる1枚のSAR画像として再生する前記画像生成処理手段と、を少なくとも備えている画像処理装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポラリメトリSAR画像処理方法、ポラリメトリSAR装置および画像処理装置によれば、ターゲットの部位ごとにその部位を鮮明に写す送受信波の偏波面の傾きを適切に選択することができるので、ターゲットの形状が複雑な場合であっても、ターゲット全体を鮮明に写す1枚のSAR画像を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明によるポラリメトリSAR画像処理方法、ポラリメトリSAR装置および画像処理装置の好適な実施例について添付図を参照して説明する。
【0017】
(本発明の特徴)
本発明の実施例の説明に先立って、本発明の特徴についてまず説明する。本発明においては、ポラリメトリSAR装置の送受信部によってフルポラリメトリデータを得た後に、まず、偏波回転処理と画像再生処理とにより、偏波回転画像をn(n≧1)枚生成する。次に、n枚の偏波回転画像の同一位置の画素n個から、最適な1つの画素を生成し、当該位置の画素の代表値とする。最適な画素の代表値の求め方としては、m番目(m≧1)に大きな輝度値、平均値、中央値などのいずれかを選択して用いることができるという多様な手段を用意しており、ターゲットに応じて、適切に選択することが可能である。この操作を全ての位置の画素に対して繰返して実行することにより、代表画素値で生成された1枚の画像が得られる。
【0018】
かくのごとき処理を実施することにより、ターゲットの形状が複雑な場合であっても、ターゲット全体を鮮明に写す1枚のSAR画像を生成することができる。
【0019】
(実施例の構成)
図1は、本発明のポラリメトリSAR装置のブロック構成の一例を示す構成図である。図1に示す本実施例のポラリメトリSAR装置は、送信機1、送信波切替スイッチ2、サーキュレータ3、4、アンテナ5、6、受信機7、8、データ処理部9、10、分離処理部11、12、再生処理部13、14、15、16、記憶装置17、偏波回転処理部18、設定入力部19、画像生成処理部20を少なくとも備えて構成されている。
【0020】
送信機1は、送信トリガ信号となるパルス繰り返し周波数に同期させて直線周波数変調された送信信号(チャープ信号)を生成して、送信波切替スイッチ2に出力する。送信波切替スイッチ2は、送信機1からの送信信号をパルス繰り返し周波数ごとに交互に切り替えてサーキュレータ3、4のいずれかを介してアンテナ5、6に送出する。アンテナ5は、水平偏波(H偏波)用アンテナであり、アンテナ6は、垂直偏波(V偏波)用アンテナであり、パルス繰り返し周波数に同期させて交互に切り替えて、水平偏波(H偏波)、垂直偏波(V偏波)を送信波として、ターゲットに向かって送信する。
【0021】
水平偏波(H偏波)、垂直偏波(V偏波)それぞれの送信波が照射されたターゲット例えば地表面からの反射波は、ターゲット例えば地表面の形状に応じて、水平偏波(H偏波)、垂直偏波(V偏波)いずれの送信波についても水平偏波(H偏波)成分、垂直偏波(V偏波)成分を含んでおり、それぞれの送信波の送信タイミングに対応した時刻に、アンテナ5、6それぞれで、水平偏波(H偏波)成分、垂直偏波(V偏波)成分を、受信波(H送信−H受信)、受信波(H送信−V受信)、または、受信波(V送信−H受信)、受信波(V送信−V受信)として受信する。
【0022】
受信機7は、アンテナ5で受信された受信波(H送信−H受信)、受信波(V送信−H受信)を、サーキュレータ3を介して受信して受信処理を行ってデータ処理部9に出力する。一方、受信機8は、アンテナ6で受信された受信波(H送信−V受信)、受信波(V送信−V受信)を、サーキュレータ4を介して受信して受信処理を行ってデータ処理部10に出力する。データ処理部9は、受信機7からの受信データ(H送信−H受信)、受信データ(V送信−H受信)をSARデータとして記憶し、データ処理部10は、受信機8からの受信データ(H送信−V受信)、受信データ(V送信−V受信)をSARデータとして記憶し、それぞれ、分離処理部11、12に出力する。
【0023】
分離処理部11は、データ処理部9からのSARデータを、SARデータ(HH)、SARデータ(VH)に分離して、それぞれを、再生処理部13、14に出力する。一方、分離処理部12は、データ処理部10からのSARデータを、SARデータ(HV)、SARデータ(VV)に分離して、それぞれを、再生処理部15、16に出力する。再生処理部13、14、15、16は、分離処理部11、12から出力されたそれぞれのSARデータ(HH,VH,HV,VV)に基づいて、それぞれを複素画像として生成して、記憶装置17に、フルポラリメトリ複素画像として記憶する。
【0024】
偏波回転処理部18は、記憶装置17に記憶されたフルポラリメトリ複素画像を、あらかじめ定めた回転角度ずつ回転させて、n(n≧1)枚の偏波回転画像R_1,〜,R_nを生成する。設定入力部19は、ターゲットの形状に応じて、n(n≧1)枚の偏波回転画像R_1,〜,R_nそれぞれにおける、画素としての最適な代表値の選択方法を指定する。例えば、m番目(m≧1)に大きな輝度値、または、平均値、または、中央値などのいずれかを選択して指定する。
【0025】
画像生成処理部20は、設定入力部19により指定された代表値に該当する各画素をn(n≧1)枚の偏波回転画像R_1〜R_nそれぞれから代表画素として各画素ごとにそれぞれ抽出して、画像処理を行って、各画素の代表値を用いた1枚の画像として生成する。
【0026】
なお、図1に示したポラリメトリSAR装置の各ブロックのうち、偏波回転処理部18、設定入力部19および画像生成処理部20を、ポラリメトリSAR装置から分離して別の画像処理装置として構成することももちろん可能である。
【0027】
(実施例の動作の説明)
次に、図1のポラリメトリSAR装置の動作についてさらに説明する。まず、ポラリメトリSAR装置によりフルポラリメトリ複素画像を取得して記憶装置17に格納する動作を説明する。1台の送信機1からの2つの送信波を、送信波切替スイッチ2によりパルス繰り返し周波数ごとに切り替えて、サーキュレータ3、4を介して、2台のアンテナ5、6から、交互に、それぞれ、H偏波送信波、V偏波送信波として、ターゲットに向かって送信する。なお、アンテナ5、6にて送受信される送信波と受信波とは、1台の送信機1と2台の受信機7、8とにサーキュレータ3、4により振り分けられる。
【0028】
ターゲットから反射されてくるH偏波成分、V偏波成分を、受信波として、それぞれ、2つのアンテナ5、6で受信して、受信機7、8にて受信処理をし、2つのデータ処理部9、10にてそれぞれSARデータとして記録する。2つのデータ処理部9、10に記録されているSARデータを2つの分離処理部11、12にて、それぞれ、SARデータ(HH)とSARデータ(VH)とに、および、SARデータ(HV)とSARデータ(VV)とに分離して、4つの再生処理部13、14、15、16に入力する。
【0029】
しかる後、4つの再生処理部13、14、15、16にて、SARデータ(HH)、SARデータ(VH)、SARデータ(HV)、SARデータ(VV)、それぞれの複素画像を生成し、フルポラリメトリ複素画像として、記憶装置17に格納する。
【0030】
次に、ポラリメトリSAR装置により取得して記憶装置17に格納したフルポラリメトリ複素画像からターゲット全体を鮮明に写す1枚のSAR画像を生成する動作を説明する。
【0031】
まず、記憶装置17に格納したフルポラリメトリ複素画像を用いて、偏波回転処理部18により偏波回転処理を行う。つまり、送受信波の偏波面の角度が、それぞれ、αi,βi(1≦i≦n)となるようにn枚の偏波回転画像R(αi,βi)を生成する。その結果、n(n≧1)枚の偏波回転画像R_1,〜,R_nの偏波回転画像を得ることになる。
【0032】
さらに、設定入力部19により、ユーザは、n枚の偏波回転画像R_1,〜,R_nの各画素の代表値の算出方法を指定する。例えば、m番目(m≧1)に大きな輝度値、または、各輝度値の平均値、または、各輝度値の中央値などのうち、いずれかを指定する。
【0033】
最後に、画像生成処理部20により、n枚の偏波回転画像R_1,〜,R_nに対して、設定入力部19から指定された各画素の代表値の算出方法に従って、画像生成処理を行い、各画素の代表値で生成された1枚のSAR画像を得る。つまり、各偏波回転画像R(αi,βi)に対して、jライン目のkサンプル目に相当する画素の輝度値をbj,k(αi,βi)とし、さらに、{bj,k(α1,β1),bj,k(α2,β2),…,bj,k(αn,βn)}の集合から実数値μj,k{bj,k(α1,β1),bj,k(α2,β2),…,bj,k(αn,βn)}を1つ決定する規則μj,kが決定することができるものとしたとき、実数値μj,k{bj,k(α1,β1),bj,k(α2,β2),…,bj,k(αn,βn)}をjライン目、kサンプル目の画素値とする画像を生成する処理を行う。
【0034】
この結果、ターゲットの状況に応じて、設定入力部19より適切な各画素の代表値の算出方法を指定することにより、ターゲット全体を鮮明に写す1枚のSAR画像を生成することができる。
【0035】
以上、本発明の好適実施例の構成を説明した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のポラリメトリ開口合成レーダ装置(ポラリメトリSAR装置)のブロック構成の一例を示す構成図である。
【図2】ポラリメトリ開口合成レーダ装置(ポラリメトリSAR装置)の送信波の偏波面の傾きによる反射波の違いを説明するための説明図である。
【図3】線状ターゲットの傾きによって、反射波の成分が複数存在することを説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 送信機
2 送信波切替スイッチ
3、4 サーキュレータ
5、6 アンテナ
7、8 受信機
9、10 データ処理部
11、12 分離処理部
13、14、15、16 再生処理部
17 記憶装置
18 偏波回転処理部
19 設定入力部
20 画像生成処理部
50 金属格子
60 線状ターゲット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直偏波および水平偏波の送信波をターゲットに送信して得られる4種類の送受信偏波の組み合わせからなるフルポラリメトリ複素画像に基づいて画像を生成するポラリメトリSAR(合成開口レーダ)画像処理方法において、前記フルポラリメトリ複素画像の偏波面をあらかじめ定めた回転角度ずつ回転させて、複数個の偏波回転画像を生成して、生成した複数個の前記偏波回転画像の中の各画素について、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の中から、ターゲットの形状に応じて指定された代表値に該当する画素を代表画素として抽出して、該代表画素からなる1枚のSAR画像として再生することを特徴とするポラリメトリSAR画像処理方法。
【請求項2】
前記代表画素を複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の中から抽出する際に、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各画素の輝度値の集合を入力として、1つの実数値を出力することができる前記代表値を選択することを特徴とする請求項1に記載のポラリメトリSAR画像処理方法。
【請求項3】
複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各画素の輝度値の集合を入力として、1つの前記実数値を出力する規則を設定していることを特徴とする請求項2に記載のポラリメトリSAR画像処理方法。
【請求項4】
前記代表値を、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各輝度値のうち、任意の順番の輝度値、各輝度値の平均値、あるいは、各輝度値の中央値、を少なくとも含む選択項目の中から選択することを特徴とする請求項2または3に記載のポラリメトリSAR画像処理方法。
【請求項5】
垂直偏波および水平偏波の送信波をターゲットに送信して得られる4種類の送受信偏波の組み合わせからなるフルポラリメトリ複素画像に基づいて画像を生成するポラリメトリSAR(合成開口レーダ)画像処理装置において、前記フルポラリメトリ複素画像の偏波面をあらかじめ定めた回転角度ずつ回転させて、複数個の偏波回転画像を生成する偏波回転処理手段と、前記偏波回転処理手段により生成した複数個の前記偏波回転画像の中の各画素について、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の中から、ターゲットの形状に応じて指定された代表値に該当する画素を代表画素として抽出して、該代表画素からなる1枚のSAR画像として再生する画像生成処理手段とを少なくとも備えていることを特徴とするポラリメトリSAR装置。
【請求項6】
前記代表画素を複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の中から抽出する際に、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各画素の輝度値の集合を入力として、1つの実数値を出力することができる前記代表値を設定入力する設定入力手段を備えていることを特徴とする請求項5に記載のポラリメトリSAR装置。
【請求項7】
前記画像生成処理手段は、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各画素の輝度値の集合を入力として、1つの前記実数値を出力する規則を設定していることを特徴とする請求項6に記載のポラリメトリSAR装置。
【請求項8】
前記設定入力手段は、前記代表値を、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各輝度値のうち、任意の順番の輝度値、各輝度値の平均値、あるいは、各輝度値の中央値、を少なくとも含む選択項目の中から選択することを特徴とする請求項6または7に記載のポラリメトリSAR装置。
【請求項9】
垂直偏波および水平偏波の送信波を送信するポラリメトリSAR装置により得られる4種類の送受信偏波の組み合わせからなるフルポラリメトリ複素画像を入力として、前記フルポラリメトリ複素画像の偏波面をあらかじめ定めた回転角度ずつ回転させて、複数個の偏波回転画像を生成する偏波回転処理手段と、前記偏波回転処理手段から出力される複数個の前記偏波回転画像の中の各画素について、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の中から、ターゲットの形状に応じて指定された代表値に該当する画素を代表画素として抽出して、該代表画素からなる1枚のSAR画像として再生する前記画像生成処理手段と、を少なくとも備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項1】
垂直偏波および水平偏波の送信波をターゲットに送信して得られる4種類の送受信偏波の組み合わせからなるフルポラリメトリ複素画像に基づいて画像を生成するポラリメトリSAR(合成開口レーダ)画像処理方法において、前記フルポラリメトリ複素画像の偏波面をあらかじめ定めた回転角度ずつ回転させて、複数個の偏波回転画像を生成して、生成した複数個の前記偏波回転画像の中の各画素について、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の中から、ターゲットの形状に応じて指定された代表値に該当する画素を代表画素として抽出して、該代表画素からなる1枚のSAR画像として再生することを特徴とするポラリメトリSAR画像処理方法。
【請求項2】
前記代表画素を複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の中から抽出する際に、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各画素の輝度値の集合を入力として、1つの実数値を出力することができる前記代表値を選択することを特徴とする請求項1に記載のポラリメトリSAR画像処理方法。
【請求項3】
複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各画素の輝度値の集合を入力として、1つの前記実数値を出力する規則を設定していることを特徴とする請求項2に記載のポラリメトリSAR画像処理方法。
【請求項4】
前記代表値を、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各輝度値のうち、任意の順番の輝度値、各輝度値の平均値、あるいは、各輝度値の中央値、を少なくとも含む選択項目の中から選択することを特徴とする請求項2または3に記載のポラリメトリSAR画像処理方法。
【請求項5】
垂直偏波および水平偏波の送信波をターゲットに送信して得られる4種類の送受信偏波の組み合わせからなるフルポラリメトリ複素画像に基づいて画像を生成するポラリメトリSAR(合成開口レーダ)画像処理装置において、前記フルポラリメトリ複素画像の偏波面をあらかじめ定めた回転角度ずつ回転させて、複数個の偏波回転画像を生成する偏波回転処理手段と、前記偏波回転処理手段により生成した複数個の前記偏波回転画像の中の各画素について、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の中から、ターゲットの形状に応じて指定された代表値に該当する画素を代表画素として抽出して、該代表画素からなる1枚のSAR画像として再生する画像生成処理手段とを少なくとも備えていることを特徴とするポラリメトリSAR装置。
【請求項6】
前記代表画素を複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の中から抽出する際に、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各画素の輝度値の集合を入力として、1つの実数値を出力することができる前記代表値を設定入力する設定入力手段を備えていることを特徴とする請求項5に記載のポラリメトリSAR装置。
【請求項7】
前記画像生成処理手段は、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各画素の輝度値の集合を入力として、1つの前記実数値を出力する規則を設定していることを特徴とする請求項6に記載のポラリメトリSAR装置。
【請求項8】
前記設定入力手段は、前記代表値を、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の各輝度値のうち、任意の順番の輝度値、各輝度値の平均値、あるいは、各輝度値の中央値、を少なくとも含む選択項目の中から選択することを特徴とする請求項6または7に記載のポラリメトリSAR装置。
【請求項9】
垂直偏波および水平偏波の送信波を送信するポラリメトリSAR装置により得られる4種類の送受信偏波の組み合わせからなるフルポラリメトリ複素画像を入力として、前記フルポラリメトリ複素画像の偏波面をあらかじめ定めた回転角度ずつ回転させて、複数個の偏波回転画像を生成する偏波回転処理手段と、前記偏波回転処理手段から出力される複数個の前記偏波回転画像の中の各画素について、複数個の前記偏波回転画像の同一の画素位置の中から、ターゲットの形状に応じて指定された代表値に該当する画素を代表画素として抽出して、該代表画素からなる1枚のSAR画像として再生する前記画像生成処理手段と、を少なくとも備えていることを特徴とする画像処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2008−232626(P2008−232626A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67985(P2007−67985)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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