説明

ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物

【課題】幅広い水分範囲における流動性の変化が少なく、成形機内での滞留安定性に優れるポリアミド−ポリフェニンレエーテルアロイ樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる成形体を提供することである。
【解決手段】(A)ポリアミド、(B)ポリフェニレンエーテル、(C)エラストマー、(D)リン酸、亜リン酸、次亜リン酸の金属塩等のリン化合物を含み、(A)〜(D)成分の合計100質量%に対し、リン元素として1〜35ppm含む樹脂組成物からなることを特徴とする樹脂組成物。
【効果】樹脂組成物や成形品の生産効率を向上し、成形時の金型への充填不良を減らすことが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルを含有する樹脂組成物であって、該樹脂組成物中に含有する水分率が幅広い範囲で変動しても成形時の流動性変化の少ない樹脂組成物およびそれから得られる成形体に関する。さらに、成形時の滞留安定性および成形体の熱安定性、特に熱暴露後の塗装密着性が著しく改良された樹脂組成物および該樹脂組成物からなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテルは機械的性質・電気的性質及び耐熱性が優れており、しかも寸法安定性に優れるため幅広い用途で使用されている。ポリフェニレンエーテル単独では成形加工性に劣っており、これを改良するためにポリアミドを配合する技術が提案されている。ポリフェニレンエーテルは現在では非常に多種多様な用途に使用される材料となっている。
最近になって、ポリアミド−ポリフェニレンエーテルアロイは自動車等の外装部品(フェンダー・ドアパネル等)への用途展開が急速に進んでおり、自動車外装部品の大型化や形状の複雑化にともない、高温での成形や成形機の能力の上限で成形されることが多くなってきている。特に、自動車フェンダーのような大型成形品では、成形体外観の品質を確保するためには成形時の滞留安定性が必要不可欠となる。特に、成形時における滞留安定性が悪いと、成形品の外観不良を生じ、塗装密着性の低下及び塗装後外観の鮮映性の悪化を招く。滞留安定性を向上させるために、ポリアミド−ポリフェニレンエーテルアロイにアセタールとポリリン酸塩を配合する技術(特許文献1)、ポリアミド−ポリフェニレンエーテルアロイに有機リン系安定剤と酸化亜鉛および/または硫化亜鉛を配合する技術(特許文献2)、リン系熱安定剤を配合する技術(特許文献3)などが開示されている。
【0003】
また、ポリアミドの一次縮合物とポリフェニレンエーテルとを、一次縮合物の相対粘度が上がるように重合反応を進めながらアロイ化する製造方法及びそれによって得られた組成物が開示されている(特許文献4,5)。これら文献には、次亜リン酸ソーダがポリアミドの高重合度化促進に有効であり、組成物の色調改善に有効であることが記載されている。
一般に、ポリアミド−ポリフェニレンエーテルアロイを成形する際、水分が多く含まれているポリマーでは、シルバーストリークが発生するなどの問題があるため、水分を減らす必要がある。その一方で、必要以上に水分を減らしすぎると流動性が低下してしまい、金型に完全に充填できないという成形不良を発生するなどの問題が生じる。このように水分をある一定範囲内に管理することが必須である。その範囲内においてもポリアミドの重合触媒である次亜リン酸ソーダが通常量存在する場合、ポリマー中の水分率により成形時にポリアミドの粘度が変化するため、流動性の制御が困難であった。
【0004】
したがって、成形体外観の品質を確保し、成形時の加工安定性を向上させるために、幅広い水分範囲においても流動性の変化が少なく、かつ滞留安定性に優れた樹脂組成物が待望されていた。
さらに静電塗装性を要求される用途においては、塗装密着性及び塗装後外観の鮮映性を確保するために成形体外観の品質を確保することが重要である。特に、自動車フェンダーの中には、オンラインによる静電塗装後、金属パネルに塗布された錆止め塗料を硬化させるために、金属パネルと共に樹脂成形体も熱処理工程を通されることになる。これらの熱処理工程は、約170℃〜200℃またはそれ以上の温度で10〜50分程度暴露されるのが通例である。したがって、使用される樹脂成形体には熱安定性、特に熱暴露後の塗装密着性の向上も求められているのが現状であった。
【特許文献1】特開平8−73730号公報
【特許文献2】特開平7−26134号公報
【特許文献3】特開平7−41658号公報
【特許文献4】特開平7−331063号公報
【特許文献5】特開平7−166053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、自動車外装部品等の大型成形品に好適であり、上述した技術では達成し得なかった、幅広い水分率範囲における流動性の変化が少なく、成形機内での滞留安定性に優れるポリアミド−ポリフェニレンエーテルアロイ樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる成形体を提供することである。さらに、成形体外観の品質を向上させ、かつ熱暴露後の塗装密着性を著しく向上させるポリアミド−ポリフェニレンエーテルアロイ樹脂組成物および成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸の金属塩、リン酸エステル等のリン化合物を含み、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、エラストマーおよびリン化合物の合計100質量%に対し、リン元素として1〜35ppm含む樹脂組成物が、上記特性に優れた樹脂組成物及び成形体を得るために有効であることを見出した。以上の知見に基づいて、本発明を完成した。
本発明の上記及びその他の解決課題、諸特徴ならびに諸利益は、以下の詳細な説明及び請求の範囲の記載から明らかになる。
本発明は(A)ポリアミド、(B)ポリフェニレンエーテル、(C)エラストマーおよび(D)リン酸類、亜リン酸類、次亜リン酸類、リン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類、次亜リン酸金属塩類およびリン酸エステル類から選ばれる1種以上のリン化合物を含む樹脂組成物であって、該樹脂組成物中に、(A)〜(D)成分の合計100質量%に対し、リン元素を1〜35ppm含むことを特徴とする樹脂組成物、及びその成形体に関する。
【0007】
次に、本発明の理解を容易にするために、本発明の基本的特徴及び好ましい諸態様を列挙する。
1.(A)ポリアミド、(B)ポリフェニレンエーテル、(C)エラストマーおよび(D)リン酸類、亜リン酸類、次亜リン酸類、リン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類、次亜リン酸金属塩類およびリン酸エステル類から選ばれる1種以上のリン化合物を含む樹脂組成物であって、該樹脂組成物中に、(A)〜(D)成分の合計100質量%に対し、リン元素を1〜35ppm含むことを特徴とする樹脂組成物。
2.(D)成分が、リン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類、次亜リン酸金属塩類から選ばれる1種以上のリン化合物であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
3.(D)成分が、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸から選ばれる1種以上のリン化合物と、周期律表第1族及び第2族、マンガン、亜鉛、アルミニウムから選ばれる1種以上の金属との塩であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
4.該樹脂組成物中の水分率100ppm当たりのメルトフローレート(MFR;ASTM D1238に従い、280℃、5kg荷重下で測定)の差(ΔMFR;該樹脂組成物中の水分率が約200ppm〜約1200ppmの範囲で少なくとも3つの異なる水分率を有するペレットについてMFRを測定し、測定したMFRの値をMFRと水分率との関係を示すグラフ上にプロットし、該プロットを最小二乗近似した直線の傾きから水分率100ppm当たりのMFRの差を得ることにより決定される)が0.80g/10min以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
5.(D)成分が(A)成分に予め配合されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
6.(D)成分が(A)成分の重合時に添加されていることを特徴とする請求項5に記載の樹脂組成物。
7.(A)成分が、リン元素の濃度が異なる2種類以上のポリアミドの混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
8.(A)成分が、(A−1)リン元素を35ppm以上250ppm以下含有したポリアミド、(A−2)リン元素を0ppm以上35ppm未満含有したポリアミドの混合物であることを特徴とする請求項7に記載の樹脂組成物。
9.(E1)酸化物、炭酸塩、アルコキシド、重炭酸塩及び水酸化物から選択された周期律表第IA族塩基及び/または(E2)IIA族、亜鉛およびアルミニウムから選ばれる1種以上の金属のカルボン酸塩及びIIA族、亜鉛およびアルミニウムから選ばれる1種以上の金属の水溶性化合物から選択された多価金属化合物を更に含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
10.(E1)周期律表第IA族塩基が、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムから選ばれた少なくも1つの化合物であることを特徴とする請求項9に記載の樹脂組成物。
11.(E2)多価金属化合物が、IIA族、亜鉛およびアルミニウムから選ばれる1種以上の金属のカルボン酸塩、IIA族、亜鉛およびアルミニウムから選ばれる1種以上の金属のハロゲン化物、IIA族、亜鉛およびアルミニウムから選ばれる1種以上の金属の硝酸塩から選択された化合物であることを特徴とする請求項9に記載の樹脂組成物。
12.該樹脂組成物が、(D)リン化合物及び(E1)周期律表第IA族塩基及び/または(E2)多価金属化合物を含み、かつ、多価金属と一価金属のモル数の和とリン(P)元素のモル数との比、すなわち、(多価金属のモル数+一価金属のモル数)/(Pのモル数)の値が1を超え8以下であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の樹脂組成物。
13.(D)成分及び(E1)成分及び/または(E2)成分が、予め(A)成分に添加されて配合されることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の樹脂組成物。
14.(F)一般式(MO)(Al(X+Y=1、かつMは周期律表第1族金属元素)で示される可溶性アルミン酸金属塩類を更に含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
15.(F)可溶性アルミン酸金属塩類が、一般式(NaO)(Al(X+Y=1かつ0.35≦Y/X≦1.25である)で示されるアルミン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項14に記載の樹脂組成物。
16.該樹脂組成物が、Al金属と一価金属とのモル比(Al金属のモル数/一価金属のモル数)が0.10〜1.0であることを特徴とする請求項14または請求項15に記載の樹脂組成物。
17.(D)成分及び(F)成分が、予め(A)成分に添加されて配合されることを特徴とする請求項14〜16のいずれかに記載の樹脂組成物。
18.該樹脂組成物が、更にハロゲン化アルカリ金属化合物及び/又は銅化合物を含むことを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の樹脂組成物。
19.該樹脂組成物の全量100質量%に対し、銅元素を1〜100ppm含むことを特徴とする請求項18に記載の樹脂組成物。
20.(A)ポリアミドが、脂肪族ポリアミドであることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の樹脂組成物。
21.(B)ポリフェニレンエーテルが、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)及び/又は2,6−ジメチル−1,4−フェノールと2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールとの共重合体であることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の樹脂組成物。
22.(G)スチレン系重合体を更に含むことを特徴とする請求項1〜21のいずれかに記載の樹脂組成物。
23.(H)無機充填材を更に含むことを特徴とする請求項1〜22のいずれかに記載の樹脂組成物。
24.(H)無機充填材が、ガラス繊維、タルク、クレイ、ウォラストナイト、酸化チタンから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項23に記載の樹脂組成物。
25.(C)エラストマーが、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体の水素添加物であることを特徴とする請求項1〜24のいずれかに記載の樹脂組成物。
26.(I)導電性炭素系フィラーを更に含み、該導電性炭素系フィラーが、カーボンフィブリル及びカーボンブラックから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜25のいずれかに記載の樹脂組成物。
27.請求項1〜26のいずれかに記載の樹脂組成物からなる射出成形体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、該樹脂組成物中の水分率の幅広い範囲においてMFRの変化が少なく、成形機内での滞留安定性に優れるポリアミド−ポリフェニレンエーテルアロイ樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる成形体を提供することができる。幅広い水分率範囲で該樹脂組成物のMFRの変化が少なくなるということは、生産時や成形前の樹脂組成物に対する厳しい水分率管理を簡略化することができるため、樹脂組成物や成形品の生産効率を向上することができるとともに、成形時の金型への充填不良などを減らすことができることを意味する。該樹脂組成物は、成形時における滞留安定性が著しく向上しているため、成形条件幅が極めて広い範囲で成形品良外観を達成できる。さらに、熱暴露後の塗装密着性を著しく向上させたポリアミド−ポリフェニレンエーテルアロイ樹脂組成物および成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の樹脂組成物を構成する各成分について詳しく述べる。
本発明で(A)成分として使用することのできるポリアミドの種類としては、ポリマー主鎖のくり返し構造単位中にアミド結合{−NH−C(=O)−}を有するものであれば、特別な制限はなく使用することができる。
一般にポリアミドは、ラクタム類の開環重合、ジアミンとジカルボン酸の重縮合、アミノカルボン酸の重縮合などによって得られるが、これらに限定されるものではない。
上記ジアミンとしては脂肪族、脂環式および芳香族ジアミンが挙げられ、具体例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどが挙げられる。
【0010】
ジカルボン酸としては、脂肪族、脂環式および芳香族ジカルボン酸が挙げられ、具体例としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,1,3−トリデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸などが挙げられる。
ラクタム類としては、具体的にはεカプロラクタム、エナントラクタム、ωラウロラクタムなどが挙げられる。
また、アミノカルボン酸としては、具体的にはε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、13−アミノトリデカン酸などが挙げられる。
【0011】
本発明においては、これらラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、ω−アミノカルボン酸は、単独で重合して得られるポリアミド及び二種以上の混合物にして重縮合を行って得られる共重合ポリアミドのいずれもが使用できる。
また、これらラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、ω−アミノカルボン酸を重合反応機内で低分子量のオリゴマーの段階まで重合し、押出機等で高分子量化したものも好適に使用することができる。
本発明に用いるポリアミドの重合方法は特に限定されず、溶融重合、界面重合、溶液重合、塊状重合、固相重合、および、これらを組み合わせた方法のいずれでもよい。これらの中では、溶融重合がより好ましく用いられる。
【0012】
特に本発明で有用に用いることのできるポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド6/6,6、ポリアミド6/6,12、ポリアミドMXD(m−キシリレンジアミン),6、ポリアミド6,T、ポリアミド6,I、ポリアミド6/6,T、ポリアミド6/6,I、ポリアミド6,6/6,T、ポリアミド6,6/6,I、ポリアミド6/6,T/6,I、ポリアミド6,6/6,T/6,I、ポリアミド6/12/6,T、ポリアミド6,6/12/6,T、ポリアミド6/12/6,I、ポリアミド6,6/12/6,I,ポリアミド9,Tなどが挙げられ、複数のポリアミドを押出機等で共重合化したポリアミド類も使用することができる。
【0013】
好ましいポリアミドは、脂肪族ポリアミドであり、さらに好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6/6,6及び、それらの混合物であり、最も好ましくはポリアミド6、ポリアミド6,6、及びそれらの混合物である。
本発明の各種樹脂組成物に使用可能なポリアミドの好ましい粘度範囲は、ISO307に従い96%硫酸中で測定した粘度数が90〜160ml/gの範囲である。より好ましくは100〜150ml/gの範囲である。
本発明においてはポリアミドの混合物であっても使用可能である。例えば、粘度数170ml/gのポリアミドと粘度数80ml/gのポリアミドの混合物、粘度数120ml/gのポリアミドと粘度数115ml/gのポリアミドの混合物等が挙げられる。
【0014】
ポリアミド混合物のなかで特に好ましい混合形態は、各々のポリアミドが粘度数90〜160ml/gの範囲内にあり、かつ粘度数の異なるポリアミドの混合物である。
これら混合物の粘度数は、混合する質量比で96%硫酸に溶解して、ISO307に従い粘度数を測定することで確認することができる。
ポリアミドは末端基として一般にアミノ基、カルボキシル基を有しているが、本発明におけるこれらの好ましい比はアミノ基/カルボキシル基濃度比で、9/1〜1/9であり、より好ましくは8/2〜1/9、更に好ましくは6/4〜1/9である。
また、末端のアミノ基の濃度としては少なくとも1×10−5mol/g以上であることが好ましい。更に好ましくは1×10−5以上、4×10−5mol/g以下である。
【0015】
末端のカルボキシル基の濃度としては少なくとも5×10−5mol/g以上であることが好ましい。更に好ましくは7×10−5以上、13×10−5mol/g以下である。
これらポリアミド樹脂の末端基の調整方法は、公知の方法を用いることができる。例えばポリアミド樹脂の重合時に所定の末端濃度となるようにジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物などから選ばれる1種以上を添加する方法が挙げられる。
さらに、上記の他にポリアミドに添加することが可能な公知の添加剤等もポリアミド100質量部に対して10質量部未満の量で添加してもかまわない。
本発明で(B)成分として使用できるポリフェニレンエーテルとは、下記式(1)の構造単位からなる、単独重合体及び/または共重合体である。
【0016】
【化1】

【0017】
〔式中、Oは酸素原子、各Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、第一級もしくは第二級のC1〜C7アルキル基、フェニル基、C1〜C7ハロアルキル基、C1〜C7アミノアルキル基、C1〜C7ヒドロカルビロキシ基、又はハロヒドロカルビロキシ基(但し、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている)を表わす。〕
本発明のポリフェニレンエーテルの具体的な例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体(例えば、日本国特公昭52−17880号公報に記載されているような2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体や2−メチル−6−ブチルフェノールとの共重合体)のごときポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。
【0018】
これらの中でも特に好ましいポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチル−1,4−フェノールと2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールとの共重合体、またはこれらの混合物である。
また、2,6−ジメチル−1,4−フェノールと2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールとの共重合体を使用する場合の各単量体ユニットの比率は、ポリフェニレンエーテル共重合体全量を100質量%としたときに、約80〜約90質量%の2,6−ジメチル−1,4−フェノールと、約10〜約20質量%の2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールからなる共重合体がさらに好ましい。
【0019】
本発明で用いるポリフェニレンエーテルの製造方法は公知の方法で得られるものであれば特に限定されるものではない。例えば、米国特許第3306874号明細書、同第3306875号明細書、同第3257357号明細書及び同第3257358号明細書、特開昭50−51197号公報、特公昭52−17880号公報及び同63−152628号公報等に記載された製造方法等が挙げられる。
本発明で使用することのできるポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/c:0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.15〜0.70dl/gの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.20〜0.60dl/gの範囲、より好ましくは0.40〜0.55dl/gの範囲である。
【0020】
本発明においては、2種以上の還元粘度の異なるポリフェニレンエーテルをブレンドしたものであっても何ら問題なく使用することができる。例えば、還元粘度0.45dl/g以下のポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dl/g以上のポリフェニレンエーテルの混合物、還元粘度0.40dl/g以下の低分子量ポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dl/g以上のポリフェニレンエーテルの混合物等が挙げられるが、もちろん、これらに限定されることはない。
また、本発明で使用できるポリフェニレンエーテルは、全部が変性されたポリフェニレンエーテル又は未変性のポリフェニレンエーテルと変性されたポリフェニレンエーテルとの混合物であっても構わない。
【0021】
ここでいう変性されたポリフェニレンエーテルとは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたポリフェニレンエーテルを指す。
該変性されたポリフェニレンエーテルの製法としては、(1)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下で100℃以上、ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度未満の温度範囲でポリフェニレンエーテルを溶融させることなく変性化合物と反応させる方法、(2)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下でポリフェニレンエーテルのガラス転移温度以上360℃以下の温度範囲で変性化合物と溶融混練し反応させる方法、(3)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下でポリフェニレンエーテルのガラス転移温度未満の温度で、ポリフェニレンエーテルと変性化合物を溶液中で反応させる方法等が挙げられる。これらいずれの方法でも構わないが、(1)及び(2)の方法が好ましい。
【0022】
次に分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する少なくとも1種の変性化合物について具体的に説明する。
分子内に炭素−炭素二重結合とカルボン酸基及び/又は酸無水物基を同時に有する変性化合物としては、マレイン酸、フマル酸、クロロマレイン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸及びこれらの酸無水物などが挙げられる。これらの内フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、フマル酸、無水マレイン酸が特に好ましい。
また、これら不飽和ジカルボン酸のカルボキシル基の、1個または2個のカルボキシル基がエステル化された化合物も使用可能である。
【0023】
分子内に炭素−炭素二重結合とグリシジル基を同時に有する変性化合物としては、アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、エポキシ化天然油脂等が挙げられる。
これらの中でグリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレートが特に好ましい。
分子内に炭素−炭素二重結合と水酸基を同時に有する変性化合物としては、アリルアルコール、4−ペンテン−1−オール、1,4−ペンタジエン−3−オールなどの一般式C2n−3OH(nは正の整数)の不飽和アルコール、一般式C2n−5OH、C2n−7OH(nは正の整数)等の不飽和アルコール等が挙げられる。
【0024】
上述した変性化合物は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
変性されたポリフェニレンエーテルを製造する際の変性化合物の添加量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、更に好ましくは0.3〜5質量部である。
上記ラジカル開始剤の例としては、公知の有機化酸化物、ジアゾ化合物などが挙げられる。具体例としては、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、tert−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
【0025】
ラジカル開始剤を用いて変性されたポリフェニレンエーテルを製造する際の好ましいラジカル開始剤の量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.001〜1質量部である。
また、変性されたポリフェニレンエーテル中の変性化合物の付加率は、0.01〜5質量%が好ましい。より好ましくは0.1〜3質量%である。
該変性されたポリフェニレンエーテル中には、未反応の変性化合物及び/または、変性化合物の重合体が残存していても構わない。
また、ポリフェニレンエーテルの安定化の為に公知となっている各種安定剤も好適に使用することができる。安定剤の例としては、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の金属系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、リン酸エステル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等の有機安定剤である。これらの好ましい配合量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して5質量部未満である。
【0026】
更に、ポリフェニレンエーテルに添加することが可能な公知の添加剤等もポリフェニレンエーテル100質量部に対して10質量部未満の量で添加しても構わない。
本発明におけるポリアミドとポリフェニレンエーテルの配合比に特に制限はないが、ポリアミド/ポリフェニレンエーテルが30/70〜80/20が好ましく、より好ましくは40/60〜75/25、さらに好ましくは45/55〜70/30である。
本発明で(C)成分として使用できるエラストマーとしては、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体及びその水素添加物、エチレン−α−オレフィン共重合体、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、及びスチレン−ゴム質重合体−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)からなる群より選ばれる1種以上である。
【0027】
本発明の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」とは、当該ブロックにおいて、少なくとも50質量%以上が芳香族ビニル化合物であるブロックを指す。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」に関しても同様で、少なくとも50質量%以上が共役ジエン化合物であるブロックを指す。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
この場合、例えば芳香族ビニル化合物ブロック中にランダムに少量の共役ジエン化合物もしくは他の化合物が結合されているブロックの場合であっても、該ブロックの50質量%が芳香族ビニル化合物より形成されていれば、芳香族ビニル化合物を主体とするブロク共重合体とみなす。また、共役ジエン化合物の場合においても同様である。
【0028】
芳香族ビニル化合物の具体例としてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもスチレンが特に好ましい。
共役ジエン化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。
ブロック共重合体の共役ジエン化合物ブロック部分のミクロ構造は1,2−ビニル含量もしくは1,2−ビニル含量と3,4−ビニル含量の合計量が5〜80%が好ましく、さらには10〜50%が好ましく、15〜40%が最も好ましい。
【0029】
本発明におけるブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック[A]と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック[B]が、A−B型、A−B−A型、A−B−A−B型から選ばれる結合形式を有するブロック共重合体である事が好ましく、これらの混合物であっても構わない。これらの中でもA−B型、A−B−A型、又はこれらの混合物がより好ましく、A−B−A型がもっとも好ましい。
また、本発明で使用することのできる芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体は、水素添加されたブロック共重合体であることがより好ましい。水素添加されたブロック共重合体とは、上述の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体を水素添加処理することにより、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの脂肪族二重結合を0を越えて100%の範囲で制御したものをいう。該水素添加されたブロック共重合体の好ましい水素添加率は80%以上であり、最も好ましくは98%以上である。
【0030】
これらブロック共重合体は水素添加されていないブロック共重合体と水素添加されたブロック共重合体の混合物としても問題なく使用可能である。
また、これら芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体は、本発明の趣旨に反しない限り、結合形式の異なるもの、芳香族ビニル化合物種の異なるもの、共役ジエン化合物種の異なるもの、1,2−結合ビニル含有量もしくは1,2−結合ビニル含有量と3,4−結合ビニル含有量の異なるもの、芳香族ビニル化合物成分含有量の異なるもの等を混合して用いても構わない。
本発明に使用するブロック共重合体として、低分子量ブロック共重合体と高分子量ブロック共重合体との混合物であることが望ましい。具体的には、数平均分子量120,000未満の低分子量ブロック共重合体と、数平均分子量120,000以上の高分子量ブロック共重合体の混合物である。より好ましくは、数平均分子量120,000未満の低分子量ブロック共重合体と、数平均分子量170,000以上の高分子量ブロック共重合体の混合物である。
【0031】
これら低分子量ブロック共重合体と高分子量ブロック共重合体の質量比は、低分子量ブロック共重合体/高分子量ブロック共重合体=95/5〜5/95である。好ましくは90/10〜10/90である。
また、本発明において、低分子量ブロック共重合体中の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの含有量の好ましい範囲は、55質量%以上90質量%未満である。低分子量ブロック共重合体に、この範囲内の芳香族ビニル重合体ブロックを持つブロック共重合体を用いることにより、耐熱性を向上させることができるため、より好適に使用することができる。
【0032】
更に、低分子量ブロック共重合体を、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックを55質量%以上90質量%未満の量で含有するブロック共重合体と、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックを20質量%以上55質量%未満の量で含有するブロック共重合体との混合物としても構わない。
また、本発明で使用するブロック共重合体は、全部が変性されたブロック共重合体であっても、未変性のブロック共重合体と変性されたブロック共重合体との混合物であっても構わない。
ここでいう変性されたブロック共重合体とは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたブロック共重合体を指す。
【0033】
該変性されたブロック共重合体の製法としては、(1)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下でブロック共重合体の軟化点温度以上250℃以下の温度範囲で変性化合物と溶融混練し反応させる方法、(2)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下でブロック共重合体の軟化点以下の温度で、ブロック共重合体と変性化合物を溶液中で反応させる方法、(3)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下でブロック共重合体の軟化点以下の温度で、ブロック共重合体と変性化合物を溶融させることなく反応させる方法等が挙げられる。これらいずれの方法でも構わないが、(1)の方法が好ましく、更には(1)の中でもラジカル開始剤存在下で行う方法が最も好ましい。
【0034】
ここでいう分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する少なくとも1種の変性化合物とは、変性されたポリフェニレンエーテルで述べた変性化合物と同じものが使用できる。
本発明におけるエラストマーの配合量としては、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの合計量100質量部に対し、50質量部未満であることが好ましい。
本発明において、公知のポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤を添加することが可能である。
【0035】
相溶化剤を使用する主な目的は、ポリアミド−ポリフェニレンエーテル混合物の物理的性質を改良することである。本発明で使用できる相溶化剤とは、ポリフェニレンエーテル、ポリアミドまたはこれら両者と相互作用する多官能性の化合物を指すものである。この相互作用は化学的(たとえばグラフト化)であっても、または物理的(たとえば分散相の表面特性の変化)であってもよい。
いずれにしても得られるポリアミド−ポリフェニレンエーテル混合物は改良された相溶性を示す。
本発明において使用することのできる相溶化剤の例としては、WO01/81473号明細書中に詳細に記載されており、これら公知の相溶化剤はすべて使用可能であり、併用使用も可能である。
【0036】
これら、種々の相溶化剤の中でも、特に好適な相溶化剤の例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、クエン酸が挙げられる。
本発明における相溶化剤の好ましい量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの混合物100質量部に対して0.01〜10質量部であり、より好ましくは0.1〜5質量部、最も好ましくは0.1〜1質量%である。
本発明で(D)成分として使用することのできるリン化合物は、1)リン酸類、亜リン酸類および次亜リン酸類、2)リン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類および次亜リン酸金属塩類、および3)リン酸エステルおよび亜リン酸エステル類等のリン酸化合物、亜リン酸化合物、次亜リン酸化合物から選ばれる1種以上である。
【0037】
前記1)のリン酸類、亜リン酸類および次亜リン酸類とは、例えばリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロ亜リン酸、二亜リン酸などを挙げることができる。
前記2)のリン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類および次亜リン酸金属塩類とは、前記1)のリン化合物と周期律表第1族及び第2族、マンガン、亜鉛、アルミニウム、アンモニア、アルキルアミン、シクロアルキルアミン、ジアミンとの塩を挙げることができる。
前記3)のリン酸エステルおよび亜リン酸エステル類とは下記一般式で表される。
リン酸エステル;(OR)PO(OH)3−n
亜リン酸エステル;(OR)P(OH)3−n
ここで、nは1、2あるいは3を表し、Rはアルキル基、フェニル基、あるいはそれらの基の一部が炭化水素基などで置換されたアルキル基を表す。nが2以上の場合、前記一般式内の複数の(RO)基は同じでも異なっていてもよい。
【0038】
前記Rとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、ノニル基、デシル基、ステアリル基、オレイル基などの脂肪族基、フェニル基、ビフェニル基などの芳香族基、あるいはヒドロキシル基、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基などの置換基を有する芳香族基などをあげることができる。
本発明の好ましいリン化合物は、リン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類あるいは次亜リン酸金属塩類から選ばれる1種以上である。中でも、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸から選ばれるリン化合物と、周期律表第1族及び第2族、マンガン、亜鉛、アルミニウムから選ばれる金属との塩であることが好ましい。より好ましくは、リン酸、亜リン酸および次亜リン酸から選ばれるリン化合物と周期律表第1族金属とからなる金属塩であり、更に好ましくは亜リン酸あるいは次亜リン酸と周期律表第1族金属とからなる金属塩であり、もっとも好ましくは次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)あるいはその水和物(NaHPO・nHO)である。
【0039】
本発明における(D)成分の配合量としては、該樹脂組成物中に、(A)〜(D)成分の合計100質量%に対し、リン元素が1〜35ppmになるように配合する必要がある。リン元素が1ppm未満であると高温成形時にシルバーストリークなどが発生しやすい。またリン元素が35ppmより多くなると流動性が水分の影響を受けて大きく変動するようになる。より好ましくは1〜30ppm、さらに好ましくは2〜25ppm、最も好ましくは2〜20ppmである。
該樹脂組成物中のリン元素の定量は、例えば、装置はThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長213.618(nm)にて定量できる。
【0040】
本発明の(D)成分を樹脂組成物中に配合する方法としては特に制限はないが、例えば、(1)ポリアミドの重合前にポリアミド形成成分中に予め(D)成分を配合して重合する方法、あるいは(2)ポリアミドの重合中の任意の時点で溶融状態のポリアミドに(D)成分を配合する方法、(3)押出機等を用いてポリアミド中に(D)成分を配合する方法、あるいは(4)ポリアミドとポリフェニレンエーテルを押出機で溶融混練する時に(D)成分を配合する方法等が挙げられる。中でも、ポリアミドとポリフェニレンエーテルを溶融混練する前に(D)成分を予めポリアミド中に配合しておくことが好ましい。その方法としては、例えば上記(1)〜(3)の方法がある。その中でも特に好ましい方法は、上記(1)の方法である。更に好ましい方法は、(D)成分を水溶液にしてポリアミド形成成分に配合し重合を行う方法である。これにより本発明の課題をより顕著に達成することができる。
【0041】
また、本発明においては、前記のように予め(D)成分を配合したポリアミドが、リン元素濃度が異なる2種類以上のポリアミドの混合物であることが好ましい。また、リン元素として35ppm以上含有したポリアミドと、リン元素として35ppm未満含有したポリアミドの混合物であることがより好ましい。さらに好ましくは、リン元素として35ppm以上250ppm未満含有したポリアミドとリン元素として0ppm以上35ppm未満含有したポリアミドの混合物である。これにより本発明の課題をより顕著に達成することができる。
本発明においては、該樹脂組成物中の水分率100ppm当たりのMFR(ASTM D1238に従い、280℃、5kg荷重下で測定)の差(ΔMFR)が0.80g/10min以下であることが好ましい。より好ましくは、ΔMFRが0.70g/10min以下、さらに好ましくは、ΔMFRが0.65g/10min以下である。
【0042】
本発明においては、(E1)酸化物、炭酸塩、アルコキシド、重炭酸塩及び水酸化物から選択された周期律表第IA族塩基及び/または(E2)IIA族、亜鉛およびアルミニウムから選ばれる1種以上の金属のカルボン酸塩及びIIA族、亜鉛およびアルミニウムから選ばれる1種以上の金属の水溶性化合物から選択された多価金属化合物を更に含むことが好ましい。
本発明の(E1)周期律表第IA族塩基は、酸化物、炭酸塩、アルコキシド、重炭酸塩及び水酸化物から選ばれることが好ましい。特に、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムがより好ましく、さらに好ましくは重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムである。
【0043】
本発明の(E2)多価金属化合物は、IIA族、亜鉛、アルミニウムから選ばれる1種以上の金属のカルボン酸塩及びIIA族、亜鉛、アルミニウムから選ばれる1種以上の金属の水溶性化合物から選ばれることが好ましい。特に、IIA族、亜鉛およびアルミニウムから選ばれる1種以上の金属のカルボン酸塩(酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、ステアリン酸塩等)、IIA族、亜鉛、アルミニウムから選ばれる1種以上の金属のハロゲン化物、IIA族、亜鉛、アルミニウムから選ばれる1種以上の金属の硝酸塩がより好ましく、さらに好ましくは酢酸カルシウム、ジステアリン酸アルミニウムである。
本発明においては、樹脂組成物1,000,000g当たり周期律表第IA族塩基及び/または多価金属化合物をトータル濃度で0.10〜50モル含有することが好ましく、0.10〜10モル含有することがより好ましく、0.10〜3モル含有することがさらに好ましい。
【0044】
本発明の樹脂組成物は、多価金属と一価金属のモル数の和とリン(P)元素のモル数との比、すなわち、(多価金属のモル数+一価金属のモル数)/(Pのモル数)の値が1を超え8以下であることが好ましく、2〜7.5であることがより好ましく、2〜7が最も好ましい。各濃度を上記範囲にすることにより、本発明の目的である溶融粘度が安定し、滞留安定性および熱暴露後の塗装性等がより向上する傾向にある。
本発明に用いる(D)リン化合物及び(E1)周期律表第IA族塩基及び/または(E2)多価金属化合物の添加方法には、ポリアミドの重合前にポリアミド形成成分中に予め添加する方法、あるいはポリアミドの重合中の任意の時点で溶融状態のポリアミドに添加する方法、押出機等を用いてポリアミド中に配合する方法、あるいはポリアミドとポリフェニレンエーテルを押出機で溶融混練する時に添加する方法等が挙げられる。これらの方法に特に限定はされないが、ポリアミドとポリフェニレンエーテルを溶融混練する前に予めポリアミド中に配合しておくことが好ましい。特に好ましい方法は、(D)リン化合物と(E1)周期律表第IA族塩基及び/または(E2)多価金属化合物のいずれも、ポリアミド形成成分に予め配合して重合を行う方法および(D)リン化合物をポリアミド形成成分に予め配合して重合を行い、次いで、重合工程の途中段階又は重合終了後に(E1)周期律表第IA族塩基及び/または(E2)多価金属化合物を溶融状態のポリアミド中に配合する方法である。
【0045】
また、予めポリアミド中に配合される(D)リン化合物と(E1)周期律表第IA族塩基及び/または(E2)多価金属化合物は、固形または水溶液の形で、ポリアミド形成成分中あるいは溶融ポリアミド中に添加することができる。
本発明において、(F)一般式(MO)(Al(X+Y=1、かつMは周期律表第1族金属元素)で示される可溶性アルミン酸金属塩類を更に含むことが好ましい。
本発明のより好ましい(F)成分は、上記一般式中のMの主たる成分がナトリウムであるアルミン酸ナトリウムである。
【0046】
上記一般式中のアルミニウム(Al)と周期律表第1族金属Mとのモル比Y/Xの値は、好ましくは0.35≦Y/X≦1.25であり、より好ましくは0.35≦Y/X≦1.00であり、更に好ましくは0.5≦Y/X≦0.90である。
本発明においては、樹脂組成物中のAl金属と一価金属とのモル比(Al金属のモル数/一価金属のモル数)は、0.10〜1.0であり、好ましくは0.25〜0.9、より好ましくは0.30〜0.75である。各濃度を上記範囲にすることにより、本発明の目的である溶融粘度が安定し、滞留安定性および熱暴露後の塗装性等がより向上する傾向にある。
【0047】
本発明においては、樹脂組成物1,000,000g当たりAl金属0.10〜10モルかつ一価金属0.10〜10モルを含有することが好ましく、Al金属0.20〜7.5モルかつ一価金属0.20〜7.5モルを含有することがより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、Al金属と一価金属のモル数の和とリン(P)元素のモル数との比、すなわち、(Al金属のモル数+一価金属のモル数)/(Pのモル数)の値が1を超え8以下であることが好ましく、2〜7.5であることがより好ましく、3〜7.5が最も好ましい。
本発明に用いる(D)リン化合物及び(F)可溶性アルミン酸金属塩類の添加方法には、ポリアミドの重合前にポリアミド形成成分中に添加する方法、あるいはポリアミドの重合中の任意の時点で溶融状態のポリアミドに添加する方法、押出機等を用いてポリアミド中に配合する方法、あるいはポリアミドとポリフェニレンエーテルを押出機で溶融混練する時に添加する方法等が挙げられる。これらの方法に特に限定されないが、ポリアミドとポリフェニレンエーテルを溶融混練する前に予めポリアミド中に配合しておくことが好ましい。特に好ましい方法は、(D)リン化合物と(F)可溶性アルミン酸金属塩のいずれも、ポリアミド形成成分中に配合して重合を行う方法および(D)リン化合物をポリアミド形成成分中に配合して重合を行い、次いで、重合工程の途中段階あるいは重合終了後に(F)可溶性アルミン酸金属塩を溶融状態のポリアミドに配合する方法である。
【0048】
更に好ましい方法は、(D)リン化合物と(F)可溶性アルミン酸金属塩とを水溶液にして配合することが好ましい。特に(F)可溶性アルミン酸塩類はpHが9を超える水溶液として添加するのがより好ましい。水溶液として添加すると、粉末として添加するよりもポリアミド形成成分、重合工程中のポリアミド及び溶融したポリアミドに対して(F)可溶性アルミン酸塩類が均一に混合しやすい傾向にある。これにより本発明の課題をより顕著に達成することができる。該pHが9を超える水溶液を調製するために、可溶性アルミン酸塩類を直接水に溶解してもよいし、予めアルカリ成分、好ましくはポリアミド形成成分となるジアミンやモノアミン等のアルカリ成分を含有する水溶液を調製し、その後アルミン酸塩類を溶解させてもよい。
【0049】
また、本発明においては、ポリアミド樹脂の耐熱安定性を向上させる目的で公知となっている特開平1−163262号公報に記載されてあるような金属系安定剤も、問題なく使用することができる。
これら金属系安定剤の中で特に好ましく使用することのできるものとしては、CuI、CuCl 、酢酸銅、ステアリン酸セリウム等が挙げられ、CuI、酢酸銅等に代表される銅化合物がより好ましい。さらに好ましくはCuIである。これら銅化合物の好ましい配合量としては、銅元素として該樹脂組成物中に、該樹脂組成物の全量100質量%に対し、1〜100ppm含む量、より好ましくは1〜30ppm、さらに好ましくは1〜10ppm含む量である。
【0050】
該樹脂組成物中の銅元素の定量は、リン元素の定量同様に、例えば、装置はThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により定量することができる。
また、ヨウ化カリウム、臭化カリウム等に代表されるハロゲン化アルキル金属化合物も好適に使用することができ、銅化合物とハロゲン化アルキル金属化合物を併用添加することが好ましい。
さらに、本発明では(G)スチレン系重合体を含んでいてもよい。本発明でいうスチレン系重合体とは、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−ゴム質重合体−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等が挙げられる。スチレン系重合体を含むことで、本発明の課題を達成する他に、耐候性を向上することができる。スチレン系重合体の好ましい配合量としては、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対し、50質量部未満の量である。
【0051】
また、本発明においては(H)無機充填材を添加しても構わない。本発明において使用できる無機充填材の例としては、ガラス繊維、ウォラストナイト、タルク、カオリン、ゾノトライト、酸化チタン、チタン酸カリウム、酸化亜鉛等が挙げられる。中でもガラス繊維、ウォラストナイト、タルク、クレイ、酸化チタン、酸化亜鉛が好ましく、より好ましくはガラス繊維、ウォラストナイト、タルク、酸化チタンである。
本発明で使用することができるガラス繊維に特に制限はなく、長繊維タイプのロービング、短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバー等から選択して使用できる。これらの中でも、平均繊維径5〜20μmのものが好ましく、より好ましくは平均繊維径8〜17μmのものである。
【0052】
これらのガラス繊維には、カップリング剤(例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等)等で表面処理しても構わない。また、集束剤が塗布されていてもよく、エポキシ系、ウレタン系、ウレタン/マレイン酸変性系、ウレタン/アミン変性系の化合物が好ましく使用できる。これら表面処理剤と集束剤は併用してもよい。これらガラス繊維の好ましい配合量は、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対して2〜80質量部である。より好ましくは2〜70質量部であり、さらに好ましくは5〜60質量部である。
本発明で使用することができるウォラストナイトは、珪酸カルシウムを成分とする天然鉱物を精製、粉砕及び分級したものである。また、人工的に合成したものも使用可能である。ウォラストナイトの大きさとしては、平均粒子径2〜9μm、アスペクト比5以上のものが好ましく、より好ましくは平均粒子径3〜7μm、アスペクト比5以上のもの、さらに好ましくは平均粒子径3〜7μm、アスペクト比8以上30以下のものである。
【0053】
また、これらのウォラストナイトには、表面処理剤として、高級脂肪酸またはそのエステル、塩等の誘導体(例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アミド、ステアリン酸エチルエステル等)やカップリング剤(例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等)を必要により使用することができる。その使用量としてはウォラストナイトに対して0.05〜5質量%であることが好ましい。
これらウォラストナイトの好ましい配合量は、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対して2〜80質量部である。より好ましくは2〜70質量部であり、さらに好ましくは5〜60質量部である。
【0054】
本発明で使用することができるタルクは、珪酸マグネシウムを成分とする天然鉱物を精製、粉砕及び分級したものである。
また、これらのタルクには、表面処理剤として、高級脂肪酸またはそのエステル、塩等の誘導体(例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アミド、ステアリン酸エチルエステル等)やカップリング剤(例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等)を必要により使用することができる。その使用量としてはタルクに対して0.05〜5質量%であることが好ましい。
これらタルクの好ましい配合量は、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対して2〜80質量部である。より好ましくは2〜70質量部であり、さらに好ましくは5〜60質量部である。
【0055】
また、本発明では(I)導電性炭素系フィラーを添加しても構わない。
本発明で使用可能な導電性炭素系フィラーの具体例としては、導電性カーボンブラック、カーボンフィブリル(カーボンナノチューブともいう)、カーボンファイバー等が挙げられる。
本発明で使用できる導電性カーボンブラックとしては、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が250ml/100g以上のものが好ましく、より好ましくはDBP吸油量が300ml/100g以上、更に好ましくは350ml/100g以上のカーボンブラックである。ここで言うDBP吸油量とは、ASTM D2414に定められた方法で測定した値である。
【0056】
また、本発明で使用できる導電性カーボンブラックはBET比表面積(JIS K6221−1982)が200m/g以上のものが好ましく、更には400m/g以上のものがより好ましい。市販されているものを例示すると、ケッチェンブラックインターナショナル社のケッチェンブラックECやケッチェンブラックEC−600JD等が挙げられる。
本発明で使用できるカーボンフィブリルとしては、米国特許4663230号明細書、米国特許5165909号公報、米国特許5171560号公報、米国特許5578543号明細書、米国特許5589152号明細書、米国特許5650370号明細書、米国特許6235674号明細書等に記載されている繊維径が75nm未満で中空構造をした分岐の少ない炭素系繊維を言う。また、1μm以下のピッチでらせんが一周するコイル状形状のものも含まれる。市販されているものとしては、ハイペリオンキャタリシスインターナショナル社から入手可能なカーボンフィブリル(BNフィブリル)を挙げることができる。
【0057】
本発明で使用できるカーボンファイバーとしては、ポリアクリロニトリル系カーボンファイバー、レーヨン系カーボンファイバー、リグニン系カーボンファイバー、ピッチ系カーボンファイバー等が挙げられる。これらを単独で使用しても構わないし、2種類以上を併用しても構わない。
本発明における導電性炭素系フィラーの好ましい配合量は、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルの合計量100質量%に対して、0.3〜3質量%の範囲である。より好ましくは、0.3〜2質量%である。
これら導電性炭素系フィラーの添加方法に関しては特に制限はないが、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの溶融混合物中に、該フィラーを添加して溶融混練する方法、ポリアミドに該フィラーを予め配合したマスターバッチの形態で添加する方法等が挙げられる。特に、ポリアミド中に該フィラーを配合したマスターバッチの形態で添加することが好ましい。
【0058】
該フィラーがカーボンフィブリルの場合には、マスターバッチとして、ハイペリオンキャタリストインターナショナル社から入手可能なポリアミド66/カーボンフィブリルマスターバッチ(商品名:Polyamide66 with Fibril TM Nanotubes RMB4620−00:カーボンフィブリル量20%)を使用することができる。
これらマスターバッチ中の導電性炭素系フィラーの量としては、マスターバッチを100質量%としたとき、導電性炭素系フィラーの量が5〜25質量%である事が望ましい。
これらマスターバッチの製造方法の例としては、上流側に1箇所と下流側に1箇所以上の供給口を有する二軸押出機を使用して、上流側よりポリアミドを供給し、下流側より導電性炭素系フィラーを添加して溶融混練する製造方法、上流側よりポリアミドの一部を供給し、下流側より残りのポリアミドと導電性炭素系フィラーを同時添加して溶融混練する製造方法が挙げられる。
【0059】
また、これらマスターバッチを製造する際の加工機械の設定温度として特に制限はないが、240〜350℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは240〜300℃の範囲、更に好ましくは240〜280℃の範囲である。
本発明では、上記した成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて付加的成分を添加しても構わない。
付加的成分の例を以下に挙げる。
無機充填材と樹脂との親和性を高める為の公知の密着性改良剤、難燃剤(ハロゲン化された樹脂、シリコーン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、有機燐酸エステル化合物、ポリ燐酸アンモニウム、赤燐など)、滴下防止効果を示すフッ素系ポリマー、可塑剤(オイル、低分子量ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)及び、三酸化アンチモン等の難燃助剤、帯電防止剤、各種過酸化物、硫化亜鉛、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等である。
【0060】
本発明の組成物を得るための具体的な加工機械としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等が挙げられる。中でも二軸押出機が好ましく、特に、上流側供給口と1カ所以上の下流側供給口を備えたスクリュー直径25mm以上でL/Dが30以上の二軸押出機が好ましく、スクリュー直径45mm以上でL/Dが30以上の二軸押出機が最も好ましい。
この際の加工機械のシリンダー設定温度は特に限定されるものではなく、通常240〜360℃の中から好適な組成物が得られる条件を任意に選ぶことができる。
このようにして得られる本発明の組成物は、従来から公知の種々の方法、例えば、射出成形により各種部品の成形体として成形できる。
【0061】
これら各種部品としては、例えばリレーブロック材料等に代表されるオートバイ・自動車の電装部品、ICトレー材料、各種ディスクプレーヤー等のシャーシー、キャビネット等の電気・電子部品、各種コンピューターおよびその周辺機器等のOA部品や機械部品、さらにはオートバイのカウルや、自動車のバンパー・フェンダー・ドアーパネル・各種モール・エンブレム・アウタードアハンドル・ドアミラーハウジング・ホイールキャップ・ルーフレール及びそのステイ材・スポイラー等に代表される外装品や、インストゥルメントパネル、コンソールボックス、トリム等に代表される内装部品等に好適に使用できる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例及び比較例により、更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に示されたものに限定されるものではない。
(使用した原料)
(1)ポリアミド6,6(以下、PAと略記)
(1−1)ポリアミド6,6(以下、PA−1と略記)
ポリアミド66形成成分(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩)1600kgを含有する50重量%水溶液に、酢酸828gとヘキサメチレンジアミン828gを末端封止剤として配合し、更に次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)の10重量%水溶液394g、シリコーン系消泡剤55gを配合した混合液を調整した。その混合液を濃縮槽に仕込み、約50℃の温度条件で混合し窒素で置換した。次に該混合液の温度を約50℃から約150℃まで昇温した。
この際濃縮槽内の圧力をゲージ圧にして約0.05〜0.15MPaに保つため水を系外に除去しながら加熱を続け該混合液の濃度を約80%まで濃縮した。得られた濃縮溶液をオートクレーブに移送し該濃縮溶液の温度を150℃から約220℃まで昇温してオートクレーブ内の圧力をゲージ圧にして約1.77MPaまで上昇させた。その後、温度を約220℃から約260℃まで昇温するが、圧力は約1.77MPaで保つように水を系外に除去しながら加熱を行った。最後に温度を約280℃まで昇温しながら圧力を大気圧までゆっくり降圧した。オートクレーブ内を窒素で加圧し下部ノズルから生成ポリマーをストランド状に排出し、水冷、カッティングしてペレットを得た。得られたペレットを窒素気流中150℃の条件下で60分間乾燥し、下記の粘度数、リン元素濃度、銅元素濃度を有するポリアミドを得た。
粘度数:141(ISO307に従い96%硫酸中で測定)
リン元素:10ppm
銅元素:0ppm
【0063】
(1−2)ポリアミド6,6(以下、PA−2と略記)
次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)の10重量%水溶液の配合量を2957gとした以外は、実施例1と同様な方法で実施し、下記のポリアミドが得られた。
粘度数:141(ISO307に従い96%硫酸中で測定)
リン元素:75ppm
銅元素:0ppm
(1−3)ポリアミド6,6(以下、PA−3と略記)
実施例1と同様な方法で実施し、下記のポリアミドが得られた。ただし、次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)の10重量%水溶液の配合量を5914gとした。また、ポリアミド中の沃化銅の濃度が270ppmになるように重合時に添加した。
粘度数:141(ISO307に従い96%硫酸中で測定)
リン元素:150ppm
銅元素:90ppm
【0064】
(1−4)ポリアミド6,6(以下、PA−4と略記)
次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)水溶液を配合しなかった以外は、実施例1と同様な方法で実施し、下記のポリアミドが得られた。
粘度数:141(ISO307に従い96%硫酸中で測定)
リン元素:0ppm
銅元素:0ppm
(1−5)ポリアミド6,6(以下、PA−5と略記)
ポリアミド66形成成分(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩)1600kgを含有する50重量%水溶液に、酢酸828gとヘキサメチレンジアミン828gを末端封止剤として配合し、更に、粉末の次亜リン酸ナトリウム138g、重炭酸カリウム345g、シリコーン系消泡剤55gを配合した混合液を調整した。その混合液を濃縮槽に仕込み、約50℃の温度条件で混合し窒素で置換した。以後の操作は実施例1と同様に実施し、下記のポリアミドが得られた。
粘度数:141(ISO307に従い96%硫酸中で測定)
リン元素:35ppm
銅元素:0ppm
【0065】
(1−6)ポリアミド6,6(以下、PA−6と略記)
ポリアミド66形成成分(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩)を含有する50重量%水溶液を40℃から100℃まで予備加熱した。次いで約3000Kg/hrの速度で連続法重合用の濃縮・反応装置に注入し、該装置内の圧力をゲージ圧にして約0.1〜0.5MPaに保つために水を系外に除去しながら、200℃から270℃の温度で該溶液の濃度を約90%まで濃縮した。
次いで該濃縮液をフラッシャーに排出し、圧力をゆっくり大気圧まで降圧した。次の重合容器に移送し、約280℃の温度、大気圧以下の条件下で保持して重合工程を行った。次いで、生成したポリマーをノズルより押し出してストランドとし、冷却、カッティングしてペレットとなり、下記のポリアミドが得られた。ただし、該連続法の重合において、ポリアミド形成成分水溶液に次亜リン酸ナトリウム水溶液を配合し、また重合工程中のポリアミドに酢酸カルシウムを配合した。次亜リン酸ナトリウム及び酢酸カルシウムの配合量は、ポリアミド中の濃度がそれぞれ100ppm及び500ppmになるようにした。
粘度数:141(ISO307に従い96%硫酸中で測定)
リン元素:35ppm
銅元素:0ppm
【0066】
(1−7)ポリアミド6,6(以下、PA−7と略記)
ポリアミド66形成成分(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩)1600kgを含有する50重量%水溶液に、酢酸828gとヘキサメチレンジアミン828gを末端封止剤として配合し、更にアルミン酸ナトリウム((NaO)(Al(X+Y=1かつY/X=0.59))の38重量%の水溶液726g、次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)の10重量%水溶液1380g、シリコーン系消泡剤55gを配合した混合液を調整した。その混合液を濃縮槽に仕込み、約50℃の温度条件で混合し窒素で置換した。以後の操作は実施例1と同様に実施し、下記のポリアミドが得られた。
粘度数:141(ISO307に従い96%硫酸中で測定)
リン元素:35ppm
銅元素:0ppm
【0067】
(1−8)ポリアミド6,6(以下、PA−8と略記)
アルミン酸ナトリウム((NaO)(Al(X+Y=1かつY/X=0.59))の38重量%の水溶液726gを、粉末アルミン酸ナトリウム((NaO)(Al(X+Y=1かつY/X=0.81))550gとした以外は(1−7)と同様に実施し、下記のポリアミドが得られた。
粘度数:141(ISO307に従い96%硫酸中で測定)
リン元素:35ppm
銅元素:0ppm
【0068】
(2)ポリフェニレンエーテル(以下、PPEと略記)
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)
還元粘度:0.52dl/g、(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)
(3)エラストマー
ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体
(以下、SEBSと略記)
商品名:クレイトンG1651(クレイトンポリマー社製)
(4)ポリスチレン(以下、GPPSと略記)
商品名:ポリスチレン685(PSジャパン社製)
(5)無機充填材
(5−1)ガラス繊維(以下、GFと略記)
商品名:CS−03−MA−FT2A(旭ファイバーグラス社製)
(6)導電性炭素系フィラー
商品名:ケッチェンブラックEC−600JD(ケッチェンブラックインターナショナル社製)(以下、CBと略記)
上流側と下流側にそれぞれ1箇所の供給口を有する二軸押出機を用いて、シリンダー温度270℃に設定した条件下で、上流側供給口より90質量部のポリアミド66(PA−4)を供給し、溶融させた後、下流側供給口より10質量部の導電性炭素系フィラーを添加して溶融混練し、マスターバッチを作製した。(以下、PA/CB−MBと略記)
(7)無水マレイン酸(以下、MAHと略記)
商品名:CRYSTALMAN−AB(日本油脂社製)
【0069】
(評価方法)
以下に、評価方法について述べる。
<金属分析>
組成物中およびポリアミド中のリンの定量は、装置はThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長213.618(nm)にて定量した。その他の金属元素も同様にして、それぞれの特性波長で定量した。
<ペレットの水分率調整>
実施例および比較例で得られた樹脂組成物ペレットを、乾燥機を用いて窒素雰囲気下、80℃で24時間乾燥した。乾燥した樹脂ペレットをアルミ防湿袋中に密閉して23℃で24時間放置した。この時の樹脂ペレットの水分率は約200ppmであった。このペレットを23℃、50RH%の恒温恒湿室中に放置し、20分、45分経過後にそれぞれアルミ防湿袋中に再度密閉して23℃で24時間放置した。この時の樹脂ペレットの水分率はそれぞれ約500ppm、約1,200ppmであった。
【0070】
<メルトフローレート(MFR)>
水分率を調整したペレットについて、ASTM D1238に従って、280℃、5kg荷重下におけるMFRを測定した。
<ΔMFR>
樹脂組成物中の水分率が約200ppm〜約1200ppmの範囲で少なくとも3つの異なる水分率を有するペレットについてMFRを測定し、測定したMFRの値をMFRと水分率との関係を示すグラフ上にプロットし、該プロットを最小二乗近似した直線の傾きから水分率100ppm当たりのMFRの差を得ることにより、ΔMFRを決定した。
<シルバーストリーク>
ペレット2(水分約500ppm)を使用し、東芝IS−80EPN成形機(溶融樹脂温度280℃、金型温度を80℃に設定)を用いて、90×50×2.5mmの平板成形片を成形した。成形条件は射出速度700mm/秒、保圧40MPa、射出時間+保圧時間の合計10秒、冷却時間15秒とした。まず10ショット成形した後、成形機を20分間停止させた後、成形を再開し、最初の5ショット分の平板成形片を目視で確認し、シルバーストリークが観察された成形片の枚数を数えた。
【0071】
<塗装密着性試験>
試験片の作成は、射出成形機(日精樹脂工業(株)製:FS80S)を用い、シリンダー温度305℃、金型温度80℃、充填時間1秒で10cm×10cm(厚み2mm)の平板を作成した。
塗装密着性の測定は、204℃で40分間の熱暴露後の平板について実施した。自動吹き付け塗装装置を用いて、塗膜厚みが20μmになるよう調節し、塗装を実施した。塗料はアクリルウレタン系塗料(オリジン電気社製、OP−Z−NY)を使用した。吹き付け塗装後、150℃の温度で20分間焼付けを実施した。
塗装実施後、温度23℃、湿度50%の環境下に静置し、24時間後、2cm×2cmの範囲で一目が2mm四方になるようにカッターナイフで碁盤目状に傷を付け(合計で100目となる)、粘着テープ貼付し一気に引き剥がす塗膜剥離試験を実施した。100目の内、剥離試験後に剥離せずに残った碁盤目数を測定した。
【0072】
[実施例1〜12、比較例1〜3]
押出機上流側から1番目のバレルに上流側供給口、6番目のバレルに下流側供給口を有し、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=44(バレル数:11)の二軸押出機[ZSK−40:コペリオン社製(ドイツ)]を用いて、上流側供給口から下流側供給口の手前までを320℃、下流側供給口からダイまでを280℃に設定し、スクリュー回転数300rpm、吐出量60kg/hで、表1記載の割合となるように、上流側供給口よりPPE、SEBS、GPPS、MAHを供給し溶融混練した後、下流側供給口よりPA、NaHPOを供給して、樹脂組成物ペレットを作製した。得られた樹脂組成物を水分調整した後、MFRとシルバーストリークを評価した。なお、物性値を組成と共に表1および表2に併記した。
【0073】
[実施例13〜16、比較例4]
押出機上流側から1番目のバレルに上流側供給口、6番目のバレルに下流側第1供給口、8番目のバレルに下流側第2供給口を有し、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=44(バレル数:11)の二軸押出機[ZSK−40:コペリオン社製(ドイツ)]を用いて、上流側供給口から下流側第1供給口の手前までを320℃、下流側第1供給口からダイまでを280℃に設定し、スクリュー回転数300rpm、吐出量60kg/hで、上流側供給口よりPPE、SEBS、MAHを供給し溶融混練した後、下流側第1供給口よりPA、PA/CB−MBを供給した。さらに、GFは下流側第2供給口より供給した。表2記載の割合となるように、樹脂組成物ペレットを作製した。得られた樹脂組成物を水分調整した後、MFRとシルバーストリークを評価した。また、導電性炭素系フィラーを配合した樹脂組成物については、成形後、塗装密着性を評価した。なお、物性値を組成と共に表3に併記した。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明により、幅広い水分率範囲におけるメルトフローレートの変化が少なく、成形機内での滞留安定性に優れるポリアミド−ポリフェニレンエーテルアロイ樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる成形体を得ることができる。電気・電子部品、OA部品、車両部品、機械部品などの幅広い分野に使用することができる。とりわけ、大型成形品が必要とされる自動車等の外装部品に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアミド、(B)ポリフェニレンエーテル、(C)エラストマーおよび(D)リン酸類、亜リン酸類、次亜リン酸類、リン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類、次亜リン酸金属塩類およびリン酸エステル類から選ばれる1種以上のリン化合物を含む樹脂組成物であって、該樹脂組成物中に、(A)〜(D)成分の合計100質量%に対し、リン元素を1〜35ppm含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
(D)成分が、リン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類、次亜リン酸金属塩類から選ばれる1種以上のリン化合物であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(D)成分が、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸から選ばれる1種以上のリン化合物と、周期律表第1族及び第2族、マンガン、亜鉛、アルミニウムから選ばれる1種以上の金属との塩であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
該樹脂組成物中の水分率100ppm当たりのメルトフローレート(MFR;ASTM D1238に従い、280℃、5kg荷重下で測定)の差(ΔMFR;該樹脂組成物中の水分率が約200ppm〜約1200ppmの範囲で少なくとも3つの異なる水分率を有するペレットについてMFRを測定し、測定したMFRの値をMFRと水分率との関係を示すグラフ上にプロットし、該プロットを最小二乗近似した直線の傾きから水分率100ppm当たりのMFRの差を得ることにより決定される)が0.80g/10min以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(D)成分が(A)成分に予め配合されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(D)成分が(A)成分の重合時に添加されていることを特徴とする請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(A)成分が、リン元素の濃度が異なる2種類以上のポリアミドの混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(A)成分が、(A−1)リン元素を35ppm以上250ppm以下含有したポリアミド、(A−2)リン元素を0ppm以上35ppm未満含有したポリアミドの混合物であることを特徴とする請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(E1)酸化物、炭酸塩、アルコキシド、重炭酸塩及び水酸化物から選択された周期律表第IA族塩基及び/または(E2)IIA族、亜鉛およびアルミニウムから選ばれる1種以上の金属のカルボン酸塩及びIIA族、亜鉛およびアルミニウムから選ばれる1種以上の金属の水溶性化合物から選択された多価金属化合物を更に含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項10】
(E1)周期律表第IA族塩基が、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムから選ばれた少なくも1つの化合物であることを特徴とする請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
(E2)多価金属化合物が、IIA族、亜鉛およびアルミニウムから選ばれる1種以上の金属のカルボン酸塩、IIA族、亜鉛およびアルミニウムから選ばれる1種以上の金属のハロゲン化物、IIA族、亜鉛およびアルミニウムから選ばれる1種以上の金属の硝酸塩から選択された化合物であることを特徴とする請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
該樹脂組成物が、(D)リン化合物及び(E1)周期律表第IA族塩基及び/または(E2)多価金属化合物を含み、かつ、多価金属と一価金属のモル数の和とリン(P)元素のモル数との比、すなわち、(多価金属のモル数+一価金属のモル数)/(Pのモル数)の値が1を超え8以下であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項13】
(D)成分及び(E1)成分及び/または(E2)成分が、予め(A)成分に添加されて配合されることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項14】
(F)一般式(MO)(Al(X+Y=1、かつMは周期律表第1族金属元素)で示される可溶性アルミン酸金属塩類を更に含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項15】
(F)可溶性アルミン酸金属塩類が、一般式(NaO)(Al(X+Y=1かつ0.35≦Y/X≦1.25である。)で示されるアルミン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項14に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
該樹脂組成物が、Al金属と一価金属とのモル比(Al金属のモル数/一価金属のモル数)が0.10〜1.0であることを特徴とする請求項14または請求項15に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
(D)成分及び(F)成分が、予め(A)成分に添加されて配合されることを特徴とする請求項14〜16のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項18】
該樹脂組成物が、更にハロゲン化アルカリ金属化合物及び/又は銅化合物を含むことを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項19】
該樹脂組成物の全量100質量%に対し、銅元素を1〜100ppm含むことを特徴とする請求項18に記載の樹脂組成物。
【請求項20】
(A)ポリアミドが、脂肪族ポリアミドであることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項21】
(B)ポリフェニレンエーテルが、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)及び/又は2,6−ジメチル−1,4−フェノールと2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールとの共重合体であることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項22】
(G)スチレン系重合体を更に含むことを特徴とする請求項1〜21のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項23】
(H)無機充填材を更に含むことを特徴とする請求項1〜22のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項24】
(H)無機充填材が、ガラス繊維、タルク、クレイ、ウォラストナイト、酸化チタンから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項23に記載の樹脂組成物。
【請求項25】
(C)エラストマーが、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体の水素添加物であることを特徴とする請求項1〜24のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項26】
(I)導電性炭素系フィラーを更に含み、該導電性炭素系フィラーが、カーボンフィブリル及びカーボンブラックから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜25のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれかに記載の樹脂組成物からなる射出成形体。

【公開番号】特開2006−316244(P2006−316244A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281055(P2005−281055)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】