説明

ポリアミド複合物品

本発明は、工業用織物の布地の形態をとる補強材料の含浸に使用されるヒドロキシ芳香族化合物によって変性されたポリアミドを複合材料の製造のために使用することに関する。本発明の分野は、複合材料及びそれらの製造方法の分野である。また、本発明は、(a)補強用生地に、ポリアミドが該ポリアミドの鎖に化学的に結合したヒドロキシ芳香族単位を含む、溶融状態のポリアミド組成物を含浸させる工程;(b)該複合物品を冷却し、その後回収する工程を含む複合物品の製造方法に関するものでもある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用織物の布地の形態をとる補強材料の含浸に使用されるヒドロキシ芳香族化合物によって変性されたポリアミドを複合材料の製造のために使用することに関する。本発明の分野は、複合材料及びそれらの製造方法の分野である。
【背景技術】
【0002】
従来技術
高性能材料の分野においては、性能及び省重量のため、複合材料が優位を占めている。近年最もよく知られている高性能複合材料は、熱硬化性樹脂から得られるものであるが、その使用は、主として航空機やモータースポーツにおける小規模から中規模の用途に限られており、そして、最良の条件において、これらは、例えばスキーの製造中など約15分の範囲の製造時間を示す。これらの材料のコスト及び/又は製造時間では、大量生産の用途に合致させるのは困難である。さらに、熱硬化性樹脂の使用には、溶媒及び単量体の存在を伴う場合が多い。最後に、これらの複合材料は、リサイクルが困難である。
【0003】
熱可塑性重合体は、一般的に粘度の高いものとして知られており、これは、非常に高密度のマルチフィラメント束から一般的に構成される補強材料の含浸に関する基準となるものである。市場で入手可能な熱可塑性マトリックスを使用すると含浸が困難になり、含浸時間の延長やかなりの処理圧力のいずれかが必要となってしまう。たいていの場合、これらのマトリックスから得られた複合材料は、微小空間及び非含浸領域を有することがある。これらの微小空間は、機械的性質の減少、該材料の早期劣化及び該材料がいくつかの補強層から構成される場合には層間剥離の問題をもたらす。この機械的性質が減少する現象は、該複合物品を製造するにあたってのサイクル時間が短い場合にはさらに際だつ。
【0004】
重合体マトリックスを含む複合材料によくみられる別の問題は、それらの劣化、特に湿熱劣化に対する抵抗性である。複合材料内に水が拡散すると、例えばガラス転移温度やマトリックスの膨潤といった所定の物性が実質的に変化する。また、マトリックス/繊維境界での変化も観察される場合があるが、これは一般的に不可逆的な性質のものである。この劣化は、機械的性能、特に極限強度の悪化によって示される。そのため、それらの部品を大型にすることが必要となるが、これは重量の増加をもたらすし、決して少額ではない追加費用も必要となってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、短いサイクル時間で製造することができると共に、良好な機械的性質及び良好な湿熱劣化に対する抵抗性といった良好な使用特性を有する複合物品を提供することによって、これらの不利益を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明
出願人の会社は、予期せず、複合物品の製造の際に、ヒドロキシ芳香族化合物で変性されたポリアミド樹脂を使用すると、該複合物品を通常使用されるよりも短いサイクル時間でかつ他の処理なしで製造した場合であっても、特に剛性、極限強度、衝撃強度及び疲労挙動といった良好な機械的性質のみならず、良好な湿熱劣化に対する抵抗性も示す物品を得ることが可能になることを見い出した。これは、短いサイクル時間を採用する装置を使用することによって製造コストが減少するという利点のみならず、構造応用に十分な耐久性も示す複合材料を提供することを可能にする。
【0007】
これらの複合物品は、特に従来のポリアミド複合物品と比較して、特に湿熱劣化後の機械的性質の非常に良好な維持を示す。
【0008】
本発明の物品には、特に、剛性、明るさ及びリサイクル能力並びに良好な外観という利点がある。
【0009】
また、これらの物品は、良好な難燃性も示す。
【0010】
本発明の第1の主題は、少なくとも次の工程を含む複合物品の製造方法である:
(a)補強用生地に、ポリアミドが該ポリアミドの鎖に化学的に結合したヒドロキシ芳香族単位を有する、溶融状態のポリアミド組成物を含浸させる工程;
(b)冷却し、その後複合物品を回収する工程。
【0011】
また、本発明は、少なくとも1種の補強用生地と、ポリアミドの鎖に化学的に結合したヒドロキシ芳香族単位を含む1種の変性ポリアミドとを有する複合物品に関するものでもある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
生地とは、特に接着、フェルト化、編み、織り又は編組などの任意の方法で一体化されていてよい糸又は繊維のテキスタイル表面を意味するものと解する。また、これらの生地は、繊維状又はフィラメント状ネットワークとも呼ばれる。糸とは、単一種の繊維又は緊密な混合物として数種の繊維から得られた、モノフィラメント、連続マルチフィラメント糸又はスフ糸を意味するものと解する。また、連続糸は、数種のマルチフィラメント糸を集めることによって得ることもできる。繊維とは、フィラメント又は切断され、分解され若しくは変形されたフィラメントの組み合わせを意味するものと解する。
【0013】
本発明の補強用糸及び/又は繊維は、好ましくは、炭素、ガラス、アラミド、ポリイミド、亜麻、麻、サイザル麻、コイア、黄麻、ケナフ麻及び/又はそれらの混合物から形成された糸及び/又は繊維から選択される。さらに好ましくは、補強用生地は、もっぱら、炭素、ガラス、アラミド、ポリイミド、亜麻、麻、サイザル麻、コイア、黄麻、ケナフ麻及び/又はそれらの混合物から形成された糸及び/又は繊維から選択される糸及び/又は繊維からなる。
【0014】
これらの生地は、好ましくは、所定の坪量、すなわち、100〜1000g/m2という平方メートル当たりの重量を有する。
【0015】
それらの構造は、ランダム、一方向(1D)又は多方向(2D、2.5D、3Dなど)であることができる。
【0016】
本発明の複合物品は、性質の同じ又は異なる数種の補強用生地を備えることができる。
【0017】
これらの生地は、特に特定の機能的特徴を導入するために、随意に被覆され又はサイジングされていてよい。
【0018】
本発明のポリアミドは、有利には、250Pa・s、好ましくは1〜50Pa・sの溶融粘度ηを有する。この粘度は、1〜160s-1の範囲の段階的せん断掃引運動下において、50mmの直径のプレート/プレートレオメーターを使用して測定できる。重合体は、150μmの厚さを有するフィルム、顆粒又は粉末の状態である。重合体をその融点よりも25〜30℃高い温度にして、測定を実施する。
【0019】
ポリアミドの数平均分子量(Mn)は、好ましくは6000g/mol超、より好ましくは8000g/mol〜20000g/molであり、満足のいく機械的性質及び各種成形プロセスの間においてある程度の保持性を有する。
【0020】
半結晶性ポリアミドが特に好ましい。熱可塑性半結晶性ポリアミドが特に好ましい。
【0021】
本発明は、特に、少なくとも1個の芳香族ヒドロキシル基が重合体鎖に化学的に結合してなる化合物によって変性されたポリアミドに関するものであり、ここで、このポリアミドは、該ポリアミドの単量体とは別にヒドロキシ芳香族化合物を重合させることによって又は部分的に若しくは完全に形成されたポリアミドとヒドロキシ芳香族化合物とを、特に反応性押出中に溶融ブレンドすることによって得ることが可能である。また、本発明の変性ポリアミドは、同ポリアミドに対する固相又は溶媒相重縮合によって得ることもできる。
【0022】
該ポリアミドの単量体は、特に二酸単量体、特に脂肪族、脂環式、アリール脂肪族若しくは芳香族二酸単量体、ジアミン単量体、特に脂肪族ジアミン単量体及び/又はアミノ酸若しくはラクタムであることができる。これらは、一般に、半結晶性ポリアミドの製造に従来から使用されている単量体、例えば、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、さらに一般的には飽和脂肪族又は芳香族二酸と飽和芳香族又は脂肪族第一級ジアミンとの重縮合によって得られる直鎖状ポリアミド、ラクタム又はアミノ酸の縮合によって得られるポリアミド或いはこれら様々な単量体の混合物の縮合によって得られる直鎖状ポリアミドである。より具体的には、これらのコポリアミドは、例えば、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸から得られるポリフタルアミド或いはアジピン酸、ヘキサメチレンジアミン及びカプロラクタムから得られるコポリアミドであることができる。
【0023】
該ポリアミドの単量体は、随意に、不飽和結合や、酸素、硫黄又は窒素などのヘテロ原子を有していてよい。
【0024】
例えば、ポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミド6.10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6.12、ポリ(m−キシリレンアジパミド)(MXD6)、ポリアミド6.6/6.T、ポリアミド6.6/6.I並びにそれらのブレンド及びコポリアミド、例えばコポリアミド6.6/6よりなる群から選択されるポリアミドを特に使用することができる。また、本発明の組成物は、特に上記ポリアミド又はこれらのポリアミド若しくはコポリアミドのブレンドから誘導されるコポリアミドを含むこともできる。
【0025】
好ましいポリアミドは、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリカプロラクタム、又はポリ(ヘキサメチレンアジパミド)とポリカプロラクタムとの共重合体若しくはブレンドである。
【0026】
また、ジカルボン酸は、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,2−又は1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−又は1,3−フェニレン二酢酸、1,2−又は1,3−シクロヘキサン二酢酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、2,5−ナフタリンジカルボン酸及びp−(t−ブチル)イソフタル酸からも選択できる。好ましいジカルボン酸はアジピン酸である。
【0027】
ジアミンは、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−メチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,2−ジメチルペンタメチレンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、5−メチルノナンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,7,7−テトラメチルオクタメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、及び1個以上のアルキル基で置換されていてよいC2〜C16脂肪族ジアミンから選択できる。好ましいジアミンはヘキサメチレンジアミンである。
【0028】
本発明の変性ポリアミドは、特にラクタム単量体又はアミノ酸、好ましくは脂肪族のものから得ることができる。このようなラクタム又はアミノ酸の例としては、カプロラクタム、6−アミノヘキサン酸、5−アミノペンタン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸又はドデカノラクタムが挙げられる。
【0029】
これらのポリアミドは、特に二官能性又は一官能性単量体、例えば、特に、二酸若しくはジアミン又は一酸又はモノアミンによって変性できる。また、多官能性分子、少なくとも三官能性分子を使用してポリアミドに分岐を導入することもできる。例えば、ビスヘキサメチレントリアミンが挙げられる。
【0030】
また、本発明のポリアミドは、鎖の長さを変更する単量体を、特にジアミン、ジカルボン酸、モノアミン及び/又はモノカルボン酸といった鎖の長さを変更する単量体とブレンド、特に溶融ブレンドすることによって得ることもできる。
【0031】
また、本発明の組成物は、特に、上記ポリアミド又はこれらのポリアミド若しくは(コ)ポリアミドのブレンドから誘導されるコポリアミドを含むこともできる。
【0032】
また、高メルトフローのポリアミドとして、星形高分子鎖と、適宜線状高分子鎖とを有する星形ポリアミドを使用することもできる。
【0033】
星形構造を有するポリアミドとは、星形高分子鎖と、随意に線状高分子鎖とを有する重合体のことである。このような星形高分子鎖を有する重合体は、例えば、仏国特許第2743077号、仏国特許第2779730号、欧州特許第0682057号及び欧州特許第0832149号に記載されている。これらの化合物は、線状ポリアミドと比較してメルトフローが改善されていることが知られている。
【0034】
星形高分子鎖は、コアと、少なくとも3個のポリアミド分岐とを有する。これらの分岐は、アミド基又は別の性質の基を介して共有結合によりコアに結合している。コアは、有機又は有機金属化学化合物、好ましくはヘテロ原子を有していてよい炭化水素化合物であり、それに分岐が結合する。分岐はポリアミド鎖である。これらの分岐を構成するポリアミド鎖は、好ましくは、ラクタム又はアミノ酸の重合によって得られるタイプのもの、例えばナイロン−6型のものである。
【0035】
本発明の星形構造を有するポリアミドは、随意に、星形鎖の他に、線状ポリアミド鎖を有する。この場合、星形鎖及び線状鎖の量の合計に対する星形鎖の量の重量比は、0.5〜1である。これは、好ましくは0.6〜0.9である。
【0036】
カルボン酸とは、カルボン酸及びそれらの誘導体、例えば、酸無水物、酸塩化物、アミド又はエステルを意味するものと解する。
【0037】
星形ポリアミドの製造方法は、仏国特許第2743077号及び仏国特許第2779730号に記載されている。これらの方法により、随意に線状高分子鎖との混合物としての星形高分子鎖が形成される。
【0038】
本発明の組成物は、好ましくは、該組成物の総重量に対して、10〜100重量%、より好ましくは30〜75重量%、より好ましくは35〜60重量%のポリアミドを有する。
【0039】
ヒドロキシ芳香族化合物とは、特に、ポリアミド又はポリアミド単量体のアミン又は酸官能基と反応することのできる少なくとも1個、特に1個又は2個の官能基を有する化合物のことである。
【0040】
用語「芳香族ヒドロキシル基」とは、芳香族環の一部をなす炭素原子に結合したヒドロキシル官能基を意味するものと解する。
【0041】
用語「ヒドロキシ芳香族化合物」とは、少なくとも1個の芳香族ヒドロキシル基を有する有機化合物を意味するものと解する。
【0042】
用語「化学的に結合」とは、共有結合による結合を意味するものと解する。ヒドロキシ芳香族化合物は、ポリアミド鎖に化学的に結合するとヒドロキシ芳香族単位になるため、本発明の変性ポリアミドは、ヒドロキシ芳香族単位を有するポリアミドである。
【0043】
ポリアミドの官能基と反応することのできるヒドロキシ芳香族化合物の官能基は、特に酸、ケトン、アミン及びアルデヒド官能基である。
【0044】
用語「酸官能基」とは、カルボン酸官能基又は酸塩化物、酸無水物、アミド若しくはエステルなどのカルボン酸官能基から誘導される官能基を意味するものと解する。
【0045】
本発明の芳香族ヒドロキシル基は、酸官能基と反応する官能基とはみなさない。
【0046】
有利には、単量体のヒドロキシル基は、立体妨害とはならない。すなわち、例えば、ヒドロキシル官能基に対してα位に位置する炭素原子は、好ましくは分岐アルキルなどの嵩高な置換基では置換されていない。
【0047】
ヒドロキシ芳香族化合物は、例えば、次式(I)によって表すことができる:
(HO)x−Z−(F)n (I)
式中:
・Zは、多価(少なくとも2価)芳香族又はアリール脂肪族炭化水素基であり、
・xは1〜10であり、
・Fは、前記ポリアミドの単量体の酸又はアミン官能基に結合することのできる酸、アルデヒド、アミン又はケトン官能基であり、そして
・nは1〜5である。
【0048】
Zは、例えば、ベンゼン、メチルベンゼン、ナフタリン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、硫化ジフェニル、ジフェニルスルホン、ジトリルエーテル、キシリレン、ジエチルベンゼン及びピリジンよりなる群から選択できる。
【0049】
用語「アリール脂肪族基」とは、式(I)の化合物の少なくとも1個の官能基Fが芳香族環の一部をなす炭素原子を介してこの基に結合していない基を意味するものと解する。
【0050】
有利には、Zは6〜18個の炭素原子を有する。
【0051】
ヒドロキシ芳香族化合物は、もちろん、性質の異なる様々なタイプの官能基Fを含むこともできる。
【0052】
この化合物は、好ましくは、2−ヒドロキシテレフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸又は没食子酸、L−チロシン、4−ヒドロキシフェニル酢酸、3,5−ジアミノフェノール、5−ヒドロキシ−m−キシリレンジアミン、3−アミノフェノール、3−アミノ−4−メチルフェノール及び3−ヒドロキシ−5−アミノ安息香酸よりなる群から選択される。
【0053】
本発明においては、様々な式(I)の化合物の混合物を使用することができる。
【0054】
前記ポリアミドを構成する全ての単量体、例えば二酸、ジアミン及びアミノ酸単量体並びにヒドロキシ芳香族化合物の合計に対するヒドロキシ芳香族化合物のモル割合は、一般に、0.1〜100%、好ましくは1〜70%、より好ましくは0.5〜60%、さらに好ましくは2.5〜50%である。
【0055】
本発明のポリアミドは、特に、上記様々な単量体の溶融重合方法によって得られるところ、これらの単量体は、全て又は一部で存在する。
【0056】
「溶融重合」という表現は、重合を液体の状態で実施し、しかも重合媒体が随意に水以外の溶媒を含まないことを意味するものと解する。この重合媒体は、例えば、前記単量体を含む水溶液又は該単量体を含む液体であることができる。有利には、重合媒体は、溶媒として水を含む。これにより、媒体を撹拌するのが容易になり、それによってその均一性が助長される。また、重合媒体は連鎖禁止剤などの添加剤も含むことができる。本発明の変性ポリアミドは、一般に、ポリアミド鎖を形成させるために、全て又は一部として存在する様々な単量体の重縮合により得られ、それに伴って、一部が蒸発し得る脱離生成物、特に水が形成される。本発明の変性ポリアミドは、一般に、例えば単量体を含む水溶液又は単量体を含む液体を高温及び高圧で加熱して脱離生成物、特に水(重合媒体中に元々存在する及び/又は重縮合中に形成された)を除去すると共に、固相の形成を防止して混合物が固形物に凝固しないようにすることによって得られる。
【0057】
重縮合反応は、一般に、約0.5〜3.5MPa(0.5〜2.5MPa)の圧力で約100〜320℃(180〜300℃)の温度で実施される。重縮合は、所望の進行度に到達するように、大気圧又は減圧で溶融状態で続行される。
【0058】
重縮合生成物は、溶融重合体又はプレポリマーである。このものは、形成及び/又は蒸発可能な脱離生成物の蒸気、特に水蒸気から本質的になる蒸気相を含むことができる。
【0059】
この生成物に、蒸気相の分離工程及び所望の重縮合度を達成するための仕上げ工程を施すことができる。蒸気相の分離は、例えば、サイクロン型の装置で実施できる。このような装置は周知である。
【0060】
仕上げは、大気圧付近の圧力下又は減圧下において、所望の進行度を達成するのに十分な時間にわたって重縮合生成物を溶融状態で保持することからなる。このような操作は当業者に知られている。この仕上げ工程の温度は、有利には、100℃よりも高く、全ての場合において重合体が固化する温度よりも高い。仕上げ装置内での滞留時間は、好ましくは5分以上である。
【0061】
また、重縮合生成物に固相縮合後工程を施すこともできる。この工程は当業者に知られており、重縮合度を所望の値に増加させることを可能にする。
【0062】
本発明の方法は、その条件の点で、ジカルボン酸及びジアミンから得られるタイプのポリアミドの従来の製造方法、特にアジピン酸及びヘキサメチレンジアミンからポリアミド6.6を製造する方法と同様である。このポリアミド6.6の製造方法は当業者に知られている。ジカルボン酸及びジアミンから得られるタイプのポリアミドの製造方法は、一般に、出発材料として、一般には水などの溶媒中において二酸とジアミンとを化学量論量で混合させることによって得られる酸を使用する。つまり、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)を製造する際に、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとを一般には水中で混合させて、ナイロン塩又は「N塩」という名でよく知られているヘキサメチレンジアンモニウムアジペートを得る。
【0063】
つまり、本発明の方法が二酸及びジアミンを使用する場合には、これらの化合物は、少なくとも部分的に塩の状態で導入できる。特に、二酸がアジピン酸であり、しかもジアミンがヘキサメチレンジアミンの場合には、これらの化合物は、少なくとも部分的にN塩の状態で導入できる。これにより、化学量論的平衡となることが可能になる。同様に、ヒドロキシ芳香族化合物が二酸又はジアミンの場合には、このものをジアミン又は二酸と共に塩の状態で導入することも可能である。
【0064】
本発明の方法は、通常、ヒドロキシ芳香族化合物が多官能性、特に少なくとも二官能性の場合にはランダム重合体をもたらし、ヒドロキシ芳香族化合物が一官能性の場合には部分的に又は完全にヒドロキシ芳香族末端を有するポリアミドをもたらす。
【0065】
仕上げ工程の終了時に得られる変性ポリアミドを冷却し、そして顆粒に形成することができる。
【0066】
本発明の方法により得られる溶融状態の変性ポリアミドを直接成形してもよいし、或いは後で溶融後に成形するために押し出し、そして造粒してもよい。
【0067】
本発明の変性ポリアミドは、マトリックス、単独で又は他の熱可塑性重合体、特にポリアミド、ポリエステル又はポリオレフィンと共に、マトリックスとして使用できる。
【0068】
本発明のポリアミド組成物は、特に造粒、カレンダー成形、フィルムの状態での押出、粉砕、射出、成形、射出成形、プレスなどによって、マトリックスとして特に使用される。
【0069】
本発明のポリアミド組成物及び補強用生地の含浸工程は、可能な様々なプロセスに従って様々な方法で実施できる。1種以上の補強用生地を含浸することが完全に可能である。
【0070】
例えば、溶融ポリアミド組成物を、少なくとも1種以上の補強用生地を有する成形チャンバーに注入することが可能である。成形チャンバーの内部は、該ポリアミドの融点に対してプラス又はマイナス50℃の温度である。その後、この成形チャンバー及び得られた物品を冷却して、最終的に該物品を回収することが可能である。この方法は、樹脂トランスファー成形(RTM)法という名称で、熱硬化方法としても知られており、この方法は、補強用繊維が予め設置された密閉式の型に樹脂を注入することからなる。この方法は、加圧下で実施できる。
【0071】
また、本発明の複合物品を、積み重ねられた補強用生地及びポリアミドフィルムの温度圧縮からなる積層方法によって製造することも可能である。特に、1種以上の補強用生地と、1種以上のヒドロキシ芳香族化合物変性ポリアミドのフィルムとを接触させ、そしてこれらの生地にポリアミドを溶融させることによって含浸させる。良好な組み立てに要する圧力は、一般に30barを超える。
【0072】
また、本発明の複合物品は、1種以上の補強用生地を上記ポリアミドの粉末、特に微粉末と接触させることによって製造することもでき、また、該含浸は、ポリアミドの融点以上の温度で、随意に加圧下においてポリアミドを溶融させることによって実施される。
【0073】
また、本発明の複合物品を引抜成形で製造することもできる。この技術は、一般的に、1以上の連続糸及び繊維に溶融熱可塑性樹脂を含浸させるように該糸及び繊維を加熱ダイを介して引き出して最終又は半最終ロッド又は物品を得ることからなる。
【0074】
補強用生地をポリアミドで含浸した後に、マトリックスを固化させることによって物品を得る。有利には、特に物品の特性を維持するために、冷却を迅速に実施してかなりのポリアミドが結晶化してしまわないようにする。冷却は、5分未満、より好ましくは1分未満で実施できる。型は、例えば冷却流体の循環により冷却できる。また、随意に複合物品を冷却型に随意に加圧下で移すことも可能である。
【0075】
また、本発明のポリアミド組成物及び/又は複合物品は、物品の製造のために使用されるポリアミド系組成物に通常使用される全ての添加剤を含むこともできる。つまり、添加剤の例としては、熱安定剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、補強充填剤、衝撃強度改善剤及びカップリング剤が挙げられる。
【0076】
また、補強用生地/ポリアミド界面の品質を改善させるための添加剤を使用することもできる。これらの添加剤を、例えばポリアミド組成物に配合し、糸に配合し及び/又は補強用生地の繊維に配合すること、糸及び/又は該生地の繊維上に存在させること、或いは補強用生地に付着させることができる。これらの添加剤は、カップリング剤、例えばアミノシラン又はクロルシラン型のカップリング剤や、液化剤又は湿潤剤、或いはそれらの組み合わせであることができる。
【0077】
補強充填剤をポリアミド組成物に配合することができる。これらの充填剤は、例えばガラス短繊維のような繊維充填剤や、カオリン、タルク、シリカ、マイカ又はウォラストナイトなどの非繊維充填剤であることができる。これらのサイズは、概して1〜25μmである。また、サブミクロン、実際にはナノミクロンの充填剤も単独で又は他の充填剤に追加して使用することもできる。
【0078】
本発明は、本発明の方法によって得ることのできる物品に関するものである。この物品は、特に、補強用生地を含み、ポリアミドが1〜50Pa・sの溶融粘度ηを有するポリアミド系複合物品であることができる。
【0079】
本発明の物品は、好ましくは、全体積に対して、25〜80体積%の補強用生地を含む。
【0080】
本発明の物品は、予備含浸物品ということもできる完成品又は半完成品であることができる。例えば、シートの形態の複合物品の熱成形を実施して、これらに所定の形状を付与することが可能である。したがって、本発明は、本発明の方法によって得ることのできる複合物品又はプリフォームに関する。
【0081】
また、本発明の物品は、コアが二つの外皮間に挿入されたサンドイッチ型の構造であることもできる。本発明の複合材料は、これらとハニカム型又はフォーム型のコアとを組み合わせることで外部層を形成させるために使用できる。これらの層は、化学的結合又は熱結合により組み立てることができる。
【0082】
本発明の複合構造は、様々な分野、例えば、航空、自動車、エネルギー、電気又はスポーツ及びレジャー産業で使用できる。これらの構造を使用して、スキーなどのスポーツ用具や、特別の床、間仕切り、自動車本体又は広告板などの様々な表面を製造することができる。航空機において、これらの構造は、特にフェアリング(機体、翼、水平尾翼)のために使用される。自動車産業では、これらは、例えば床又は支持体、例えば手荷物棚のために、或いは構造部品として使用される。
【0083】
本明細書においては、本発明の原理の理解を容易にするために、特定の用語を使用している。とはいえ、本発明の範囲は、この特定の用語の使用により限定されるものではないと解すべきである。特に、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、技術常識を考慮して改変及び改善を想起できる。
【0084】
「及び/又は」という用語には、及び、又はという意味と、この用語に関連する要素の見込まれる他の全ての組み合わせが含まれる。
【0085】
本発明の他の詳しい説明又は利点は、以下に単なる例示として与える実施例を考慮すれば、より明らかになるであろう。
【実施例】
【0086】
実験の部
酸末端基(CEG)及びアミン末端基(AEG)の含有量:電位差測定法により分析され、meq/kgで表される。フェノール末端基PEGの含有量(一官能性ヒドロキシ芳香族化合物について)は、合成反応器に導入された反応物質の出発量から決定する。
【0087】
数平均モル質量は、式Mn=2×106/(AEG+CEG+PEG)で決定し、g/molで表す。
【0088】
融点(M.p.)及びそれに関わるエンタルピー(ΔHf)、冷却時結晶化温度(Tc):パーキン・エルマー社製Pyris1装置を10℃/分の速度で使用して示差走査熱量測定法(DSC)により決定する。
【0089】
ガラス転移温度(Tg)は、同じ装置で40℃/分の速度で決定する。
【0090】
これらのポリアミドを、280℃でAresプレート/プレートレオメーター(Rheometrics)により実施される溶融粘度測定によって特徴付けた。剪断速度に応じた粘度曲線は、目的の重合体が1〜150s-1の範囲のせん断速度でニュートン挙動を有することを示す:選択した粘度は、プラトー時の値である(1〜150s-1)。
【0091】
実施例で使用した補強材は、プラックの製造に要求される寸法、すなわち、150×150mm又は200×300mmに切断された、ガラス繊維から作られたプリフォームの形態である。使用した補強用生地は、1200texのロービングから得られるSynteen&Luckenhaus社製のガラス繊維(0°〜90°)から作られた、600g/m2の坪量を示す織物である。
【0092】
これらの例で使用した比較ポリアミドC1は、97ml/gの粘度数VN、30Pa・sの溶融粘度η及び11200g/molのMnを有する高メルトフローポリアミド6.6である。
【0093】
例1:コポリアミドPA6.6/6.HIA(95/5モル又は重量基準で94.2/5.8)の製造
87.3kg(332.8モル)のN塩(ヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸の1:1塩)、3219gの99.5%5−ヒドロキシイソフタル酸(HIA)(17.5モル)、6276gのヘキサメチレンジアミン(HMD)水溶液32.4重量%(17.5モル)、81.2kgの脱イオン水及び6.4gの消泡剤Silcolapse5020(商標)を重合反応器に導入する。
【0094】
標準的なポリアミド6.6型の重合方法に従ってコポリアミドを製造し、35分間にわたって仕上げを行う。
【0095】
得られた重合体を棒状に流延し、冷却し、そしてこれらの棒状物を切断することによって顆粒に形成する。
【0096】
得られた重合体は次の特性を示す:CEG=78.4meq/kg、AEG=57.6meq/kg、Mn=14700g/mol。
【0097】
このコポリアミドは半結晶性であり、次の熱的特性を有する:
Tg=76.8℃、Tc=218.4℃、M.p.=256.2℃、ΔHf=62.5J/g。このコポリアミドは、PA6.6に対して6.2℃高いTgを有する。
【0098】
例2:コポリアミドPA6.6/6.HIA(85/15モル又は重量基準で83/17)の製造
76.9kg(293.1モル)のN塩(ヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸の1:1塩)、9462gの99.5%5−ヒドロキシイソフタル酸(HIA)(51.7モル)、18624gのヘキサメチレンジアミン(HMD)水溶液32.25重量%(51.7モル)、72.6kgの脱イオン水及び6.4gの消泡剤Silcolapse5020(商標)を重合反応器に導入する。
【0099】
標準的なポリアミド6.6型の重合方法に従ってコポリアミドを製造し、35分間にわたって仕上げを行う。
【0100】
得られた重合体を棒状に流延し、冷却し、そしてこれらの棒状物を切断することによって顆粒に形成する。
【0101】
得られた重合体は次の特性を示す:CEG=82.7meq/kg、AEG=61.5meq/kg、Mn=13870g/mol。
【0102】
このコポリアミドは半結晶性であり、次の熱的特性を有する:
Tg=85.8℃、Tc=186.2℃、M.p.=240.4℃、ΔHf=41.9J/g。このコポリアミドは、PA6.6に対して15.2℃高いTgを有する。
【0103】
このポリアミドは、37Pa・sの溶融粘度ηを有する。
【0104】
例3:ポリアミドPA6.HIA及びブレンドPA6.6・PA6.HIA(重量で85/15)の製造
水中51重量%の6.HIA塩を、ヘキサメチレンジアミン及び5−ヒドロキシイソフタル酸の化学量論量を水中で混合させることによって製造する。その後、5623gの51%6.HIA塩、112.1gの99.5%5−ヒドロキシイソフタル酸、105gの水及び3.3gの消泡剤を重合反応器に導入する。
【0105】
ポリアミドPA6.HIAをポリアミド6.6の標準的な重合方法に従って製造し、30分間仕上げを行う。得られた重合体を棒状に流延し、冷却し、そして棒状物を切断することによって顆粒に形成する。得られた重合体は非晶質であり、Tg=166.6℃のガラス転移温度を有する。
【0106】
PA6.6とこのようにして製造されたPA6.HIAとを、DSM MIDI 2000微量押出器(微量混練器)(15cm3)内において275℃の温度で溶融経路により85/15の重量割合でブレンドする。このブレンドは、35Pa・sの溶融粘度ηを有する。
【0107】
また、50/50の重量割合を有する別のブレンドも製造する。このブレンドは、10Pa・sの溶融粘度を有する。
【0108】
例4:一酸−フェノールにより官能化されたポリアミドPA6.6フェノールの製造
135.2gのN塩(0.52モル)、9.41gの98%4−ヒドロキシフェニル酢酸(0.06モル)、10.87gのヘキサメチレンジアミン水溶液32.4%(0.03モル)、127.2gの脱イオン水及び2gの消泡剤を重合反応器に導入する。
【0109】
ポリアミド6.6型の標準的な重合方法に従ってポリアミドを製造し、30分間にわたって仕上げを行う。
【0110】
得られた重合体を棒状に流延し、冷却し、そしてこれらの棒状物を切断することによって顆粒に形成する。
【0111】
得られた重合体は次の特性を示す:
CEG=103.3meq/kg、AEG=29.4meq/kg。鎖末端でのフェノール官能基の理論量(PEG)を反応器に導入した出発量から算出する。PEG=437meq/kg。Mn=2×106/(AEG+CEG+PEG)=3510g/mol。
【0112】
4−ヒドロキシフェニル酢酸によって官能化されたポリアミドPA6.6フェノールは半結晶性であり、次の熱的特性を有する:Tc=231.9℃、M.p.=259℃、ΔHf=81.5J/g。
【0113】
例5:複合材料の製造
検討中の様々な重合体を大部分流体用の粉末の状態、そうでなければフィルムの形態で使用する。粉末は、ドライアイスか又は液体窒素のいずれかで極低温粉砕することにより得る。フィルムは、フラットダイ及び成膜装置を備える、34の直径及び34のL/Dを有するLeistritz二軸押出器で顆粒を押し出すことにより製造する(10kg/時の押出器流量、250rpmのスクリュー速度、270℃の温度)。ダイのリップ間の間隙は、30cmの幅にわたって約300μmであり、供給速度は、115℃に調節されたローラーについて3.2m/分である:得られたフィルムは、160〜180μmの範囲の厚みを有する(300mmの幅を有するスプール)。
【0114】
重合体フィルムを、上で得られたスプールから150×150mm又は200×300mmの寸法のシートの状態に切断する。補強用生地についても同様である。
【0115】
複合材料を、2個の温度制御板(Polystat300A):加熱板(耐熱性)及び冷却板(水の循環)を備えるSchwabenthan油圧プレスの手段によって製造する。150mm×150mm又は200×300mmの寸法の空洞を有する金型を使用する。
【0116】
80重量%(65体積%)のガラス繊維を600g/m2の秤量を有する織物と共に含む複合材料を製造するために、6個のガラス繊維シートと、それぞれの間に重合体のシートか又は均一に分散した粉末とを有する交互の積み重ねからなるプリフォームを型に導入する。ここで、2つの外部層はガラス繊維のシートである。
【0117】
プレスの板の温度を、プリフォームを導入する前に、290℃に予め上昇させておく。この温度で、1〜50barの圧力を加え、そして圧力をこの弁で維持する;ベントを迅速に実施する。この集成物を、ベントすることなく同じ温度及び圧力で保持する。その後、一連のベントを再度実施し、続いて集成物を再度同じ温度及び圧力で保持する。続いて、型を、冷却された板を備える装置上に移し、そして1〜50barの圧力で保持する。
【0118】
このようにして得られた複合材料は、150×150mm又は200×300mmのサイズ及び約2mmの厚みを有する。
【0119】
例6:複合材料のキャラクタリゼーション
一タイプのサイクルを実施した:15〜50barの中程度の圧力下において5分のサイクル(15barで1分、続いて50barで2分、続いて50barで2分)。この時間は、型に熱を加え、加圧下で冷却する間のサイクルの全持続期間に相当する。
【0120】
150×150mm又は200×300mmのシートを切断して150×20×2mmの寸法を有する試料を得る。
【0121】
第1シリーズの試料を製造直後に特徴づける(試料乾燥状態RH0に維持するために密閉被覆下に置く)。
【0122】
また、状態調整処理も基準法ISO1110「Plastics−Polyamides−Accelerated conditioning of test specimens」:「RH50」状態に従って実施することもできる。平衡時の含水量は、62%の残留湿度下において70℃で14日のサイクルで複合物品を状態調整することによって得られる。
【0123】
機械的性質は、23℃及び周囲湿度RH=50%で得た。
【0124】
周囲温度での3点曲げ試験を、基準法ISO No.14125に従って、Zwick1478機:ロッド間の距離64mm、クロスヘッド速度5mm/分により、平行六面体試験片(150×20×2mm)で実施する。ヤングの弾性率E(GPa)及びピーク時最大応力σ(MPa)の値を測定し、計算する。
【0125】
周囲温度での直接引張試験を、基準法ASTM D3039/D3039Mに従って、Zwick1478機:クロスヘッド速度1〜5mm/分により、平行六面体試験片(250×25×2mm)で実施する。ヤングの弾性率E(GPa)及びピーク時最大応力σ(MPa)の値を測定し、計算する。
【0126】
結果を次の表1に与える:
【表1】

【0127】
中程度の圧力下で5分の製造サイクルの場合には、得られた機械的性質は高い:27〜29GPaの弾性率値に対して550〜650MPaの最大曲げ応力(ピーク)。
【0128】
6.HIAヒドロキシ芳香族単位を含む変性ポリアミドについては、僅かな性能の改善が破断応力で観察される。引張破断の形態は、非変性ポリアミドの場合には著しく突発的である。
【0129】
例7:湿熱劣化後の複合材料のキャラクタリゼーション
例6に従って製造された試料に湿熱劣化を施した。試料を80℃の水中に8日間にわたって浸漬することにより加速型の劣化を実施した(加速試験)。
【0130】
劣化後、試験片をそのまま試験し、又は吸着水を除去することによって再度状態調整した:真空下において80℃で24時間にわたる処理(乾燥状態:RH0)。
【0131】
機械的性質を23℃及び周囲湿度RH=50%で測定した(そのままの状態又はRH=0での試験片)。
【0132】
結果を次の表2に与える:
【表2】

【0133】
6.HIAヒドロキシ芳香族単位を含まない高メルトフローポリアミドの場合には、機械的性能、特に最大応力(破壊応力)の低下が認められる:つまり、曲げで測定される最大応力は、610MPa(RH50)から340MPa(そのまま)に変化し、或いは650MPa(RH0)から450MPa(RH0)まで変化する。すなわち、45%(湿った状態)又は30%(RH0)の減少である。
【0134】
15%のPAHIAが存在すると、湿熱劣化後でも機械的性能の著しい改善が認められる。つまり、劣化は、3%の曲げ機械的強度(PA6.6/PA6.HIA85/15ブレンド)又は15%(PA6.6/PA6.HIA50/50ブレンド)の限定された減少をもたらす。
【0135】
同様の挙動が直接引張でも認められる:引張での機械的強度の低下は、PA6.6/PA6.HIA85/15ブレンド(RH0)について7%に限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも次の工程を含む複合物品の製造方法:
(a)補強用生地に、ポリアミドが該ポリアミドの鎖に化学的に結合したヒドロキシ芳香族単位を含む、溶融状態のポリアミド組成物を含浸させる工程;
(b)該複合物品を冷却し、その後回収する工程。
【請求項2】
前記ポリアミド組成物が1〜50Pa・sの溶融粘度ηを有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶融粘度を、150μmの厚さのポリアミドのフィルムをその融点よりも25〜30℃高い温度で溶融することによって、1〜160s-1の範囲の段階的せん断掃引下で50mmの直径のプレート/プレートレオメーターを使用して測定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリアミドが、少なくとも1種の直鎖状脂肪族カルボン酸と脂肪族若しくは環状ジアミンとの重縮合によって得られたポリアミド又は少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と1種の脂肪族若しくは芳香族ジアミンとの重縮合によって得られたポリアミド、少なくとも1種のアミノ酸又はラクタム自体の重縮合によって得られたポリアミド、或いはそれらのブレンド及び(コ)ポリアミドよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ポリアミドを、ポリアミド単量体の重合前又は重合中に、ジアミン、ジカルボン酸、モノアミン及び/又はモノカルボン酸型の単量体を添加することによって得ることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリアミドがポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミド6.10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6.12、ポリ(m−キシリレンアジパミド)、ポリアミド6.6/6.T、ポリアミド6.6/6.I及びそれらのブレンド及びコポリアミドよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ポリアミドの鎖に化学的結合したヒドロキシ芳香族単位を含むポリアミドを、前記ポリアミドをヒドロキシ芳香族化合物で変性させることによって得ることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ポリアミドの鎖に化学的に結合したヒドロキシ芳香族単位を含むポリアミドを、重合の際に該ポリアミドの単量体の存在下で該ヒドロキシ芳香族単位を含む化合物を添加することによって得ることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ヒドロキシ芳香族化合物が、前記ポリアミドの官能基又は該ポリアミドの単量体の官能基と反応することのできる少なくとも1個の官能基を有することを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記ヒドロキシ芳香族化合物が次式(I)によって表されることを特徴とする、請求項7〜9のいずれかに記載の方法:
(HO)x−Z−(F)n (I)
式中:
・Zは、多価芳香族又はアリール脂肪族炭化水素基であり、
・xは1〜10であり、
・Fは、前記ポリアミドの単量体の酸又はアミン官能基に結合することのできる酸、アルデヒド、アミン又はケトン官能基であり、そして
・nは1〜5である。
【請求項11】
Zが多価基であり、ベンゼン、メチルベンゼン、ナフタリン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、硫化ジフェニル、ジフェニルスルホン、ジトリルエーテル、キシリレン、ジエチルベンゼン及びピリジンよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒドロキシ芳香族化合物が2−ヒドロキシテレフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸又は没食子酸、L−チロシン、4−ヒドロキシフェニル酢酸、3,5−ジアミノフェノール、5−ヒドロキシ−m−キシリレンジアミン、3−アミノフェノール、3−アミノ−4−メチルフェノール及び3−ヒドロキシ−5−アミノ安息香酸よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項7〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記補強用生地が、炭素、ガラス、アラミド、ポリイミド、亜麻、麻、サイザル麻、コイア、黄麻、ケナフ麻及び/又はそれらの混合物から形成された糸及び/又は繊維から選択される繊維状又はフィラメント状ネットワーク、糸及び繊維であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記ポリアミド組成物を、少なくとも1種の補強用生地を含む成形チャンバーに注入して含浸を実施することを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
1種以上の補強用生地と1種以上のポリアミドフィルムとを接触させ、そして該ポリアミドを溶融させることによって前記含浸を実施することを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
1種以上の補強用生地とポリアミド粉末とを接触させ、そして該ポリアミドを溶融させることによって前記含浸を実施することを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記方法が引抜方法であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記複合物品が、該物品の総体積に対して、25〜80体積%の補強用生地を含むことを特徴とする、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の方法によって得られた複合物品又はプリフォーム。

【公表番号】特表2012−532938(P2012−532938A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518897(P2012−518897)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059281
【国際公開番号】WO2011/003787
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(508076598)ロディア オペレーションズ (98)
【氏名又は名称原語表記】RHODIA OPERATIONS
【住所又は居所原語表記】40 rue de la Haie Coq F−93306 Aubervilliers FRANCE
【Fターム(参考)】