説明

ポリイソブテニル含有分散体およびその利用

【課題】広範囲の液体における金属酸化物ナノ粒子のための分散剤としてのPIBSAを提供する。このような液体の例は、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、ヘキサン、およびフェノキシイソプロパノールからなる群から選択される少なくとも一つの部を含む。
【解決手段】ナノ粒子または粒子、および少なくとも一のPIBSAまたはPIBSA反応生成物、を含んでなる分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリイソブテニルこはく酸無水物の使用に関係し、および様々な粒子およびナノ粒子の疎水性を向上させるための化合物に関係する。アミンまたはアルコールとのPIBSAの反応生成物は、切削液として有用な油中水型エマルジョンを調製するために金属加工産業で使用され、および炭素付着物を分散させる清浄剤として自動車添加剤のオイル産業で使用される。
【0002】
本出願は2007年1月31日の仮出願第60/898,555号の利益を主張する。この出願の開示はここで引用により組み込まれる。
【0003】
本発明の主題は同日出願され「固有光学特性を有する疎水性金属および金属酸化物粒子」と題する米国特許出願第11/583,439号、11/524,471号に関係する。これらの特許出願はここで引用により組み入れられる。
【背景技術】
【0004】
様々な分散剤が当該技術分野で知られており、例えば米国特許第2003/0032679号、米国特許第2004/0209782号、国際公開WO87/05924号、および米国特許出願第5,266,081号で開示されている。この先行特許および特許出願の開示はここで引用により組み入れられる。
【0005】
【特許文献1】米国特許第2003/0032679号
【特許文献2】米国特許第2004/0209782号
【特許文献3】国際公開WO87/05924号
【特許文献4】米国特許出願第5,266,081号
【0006】
安定性を得るために、これらの分散材は概して比較的高レベルのものを利用し、そして結果として、しばしばレオロジー特性は逆の影響をうける。この技術分野において、これらの問題のない金属酸化物表面を持つ粒子、および/または金属酸化物のマイクロ粒子および/またはナノ粒子の安定な分散体が必要とされており、且つこれらの分散体を調整する方法も必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ポリイソブテニルこはく酸無水物(PIBSA)および関連する化合物を分散剤として利用することによって、従来の分散体に関する問題を解決する。本発明は、広範囲の液体におけるナノ粒子を含む金属酸化物粒子のための分散剤として、PIBSAが効果的であり、驚くべきことに比較的低レベルでもそうであるという発見に関係する。このような液体の例は、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、ヘキサン、およびフェノキシイソプロパノールからなる群から選択される少なくとも一の部を含む。任意の理論または説明と結びつけられることは望まないが、多くの金属酸化物表面に関して、少なくとも一のアルミナ、亜鉛酸化物、ITO、ジルコニアまたはチタニア、その無水物または二塩基酸の基を含むことが、良好なアンカー基として機能すると考えられる。また他のアンカー基がより効果的である他の例では(例えば貴金属表面に対するメルカプタン)、反応性無水物の基を使用して代わりの官能基を導入することも可能であると考えられる。これらのPIBSA派生物は市販の分散剤と組み合わせて使用して、全体の分散剤の装填量を減らすこともできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、少なくとも一の有機液体において粒子の分散体を含む化合物に関係する。該化合物は:
(a)該分散体の総質量を基準として、約0.1質量%〜約25質量%の、xが1〜1000の値である以下の構造式を有する少なくとも一つの分散剤:
【化1】

または、例えば以下の構造式を有する、この分子の反応生成物:
【化2】

または
【化3】

または
【化4】

(b)該分散体の総質量を基準として、約1質量%〜約90質量%の、粒子であって、該粒子は金属酸化物粒子、金属酸化物の表面を有する粒子、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一の部(member)を含む粒子(例えば、約1nm〜約2000nmの粒子サイズを有する粒子);ならびに
(c)該分散体の総質量を基準として、約10質量%〜約90質量%の、数ある中で、芳香族または脂肪族炭化水素、ケトン、エステル、カルボン酸、アルコール、アミン、アミドおよびエーテルからなる群から選択される少なくとも一の有機液体、
を含む。
【0009】
本発明の分散体は任意の好適な方法、例えばボールミル、攪拌ビーズミル、ホモジナイザー、ロールミル、および超音波バス、によって調製可能である。
【0010】
本発明の分散剤は広い範囲の金属酸化物ナノ粒子を分散するために使用可能であり、特に亜鉛、ジルコニウム、セリウム、チタン、アルミニウム、インジウム、およびスズのものならびにこれらの混合物の粒子は重要な商業用途を有するナノ粒子の実例となる。ナノジルコニア、セリアおよびアルミナは引っ掻き抵抗性のあるコーティングおよび伝熱流体に有用である。加えて、アルミニウム酸化物の薄い層で不動態化したアルミニウム金属ナノ粒子は活発な(energetic)材料の開発において有用である。インジウムスズ酸化物(ITO)ナノ粒子は、クリアな導電コーティング、熱マネージメント層、および静電荷の散逸での用途を有する。酸化亜鉛およびチタニアは、サンスクリーン、布およびコーティングを含むUVブロック用途で有用である。金属酸化物粒子、ナノ粒子および/または金属酸化物表面を有するナノ粒子の他の用途は、例えば磁性材料、不均一系触媒、トナー組成物、およびセラミックスを含む。
【0011】
分散体マスタ・バッチまたは完全に処方された組成物で使用するのと同じくらい簡単に、ナノ粒子および/またはマイクロ粒子を供給するために、この粒子が様々な液体およびポリマー性母材で分散されることが望まれる。この分散体の質はその意図された使用に見合ったものであるべきである。例えば、多くの用途例えばあるインクおよびコーティングにおいて、色の存在は望ましくない。加えて、この分散体は概して安定であり、そのため使用の直前に調製する必要はなく、調製後は貯蔵が可能である。処方された組成物の用途に応じて、本発明の組成物は、この処方された組成物の成分の約0.5〜約90質量%を構成することができる。
【0012】
本発明の組成物を広範囲のポリマー性母材に添加することが可能である。これは、本発明の組成物を有機溶媒でのポリマーの分散体または溶液に添加することによって、最も容易に達成される。好適なポリマーの例は、ポリアクリル酸塩、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリ(スチレン−co−ブタジエン)、ポリエポキシド、ポリアルキッド、ならびにコーティング、インクおよび接着剤で使用可能な他のポリマーの中の少なくとも一を含む。
【0013】
以下の例は、本発明の或る態様を説明するために提供されるが、添付される特許請求の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0014】
以下の例を実施するために以下の材料を使用した。
【表1】

【0015】
例1および2
1.0mmジルコニアビーズ粉砕媒体を含む試料を65℃で6時間の間超音波バスに設置することによって、例1は調製した。この溶媒はミネラルスピリットであった。同じやり方で例2を調製したが、0.1mmのジルコニアビーズを使用した。この溶媒は高沸点(140〜180℃)の石油エーテルであった。例1および2における分散体は比較的小さい粒子サイズを有し、および数日後に僅かな沈殿を示しただけであった。
【0016】
【表2】

【0017】
例3〜5
ZnOおよび分散剤を、高固体(70〜75%)ペーストを生じるのに十分な溶剤のみと混合することによって、例3〜5における分散体を調製した。このペーストはロール速度が100rpmでギャップ設定が5ミル(mils)の三つのロールでできたミル(mill)を5回通過させて処理した。ミルした後、このペーストは残りの溶媒で希釈して、表2に示す組成物を生成した。この希釈した分散体は比較的小さい粒子サイズを有し、および数日後に僅かな沈殿を示しただけであった。
【0018】
【表3】

【0019】
例6〜8
Ancamine 1637マンニッヒ塩基または4−アミノサリチル酸のいずれかとPIBSAとの反応生成物は、例6〜8に示す成分を4時間環流させて、その後大気圧で溶媒を除去することによって、調製した。この反応生成物はさらに精製することなく使用した。
【0020】
【表4】

【0021】
表3の反応生成物をアルミナ、ジルコニア、およびセリアナノ粒子用の分散剤として使用することを、表4で説明する。
【0022】
例9〜16
試料を65℃で2時間の間超音波バスに設置することによって、例9〜16を調製した。このPIBSA反応生成物を伴って調製した例9〜13の分散体は、低粘性流体であり、これは数日にわたって沈殿を生じなかった。例14は、良好なAncamine 1637がペーストを創ることを示した。例10と15の比較は、分散剤レベルを4.8から2.4に下げると粘性が増加することを示した。例16は、標準的な市販の分散体がトルエン中でナノアルミナを分散させるのには効果がないことを示した。
【0023】
【表5】

【0024】
例17〜20
表5は、エポキシ硬化剤、PACM(bis-4-アミノシルコヘキシルメタン)でのナノアルミナの低粘度の分散体を生じるための、分散剤の有効性を比較した。Ancamine 1637および例6からできた反応生成物のいずれも市販の分散剤Disperbyk 163および分散剤を含まない対照よりも低い粘性を示した。
【0025】
【表6】

【0026】
例21〜25
0.05mmジルコニアビーズ粉砕媒体を含む試料を65℃で6時間の間超音波バスに設置することによって、例21〜25は調製した。この溶媒はミネラルスピリットであった。このPIBSAを、良好におよび様々なアミンの存在するところで評価した。この例21〜25で調製した分散体は、比較的小さい粒子サイズを有し、および数週間後に僅かな沈殿を示しただけであった。
【0027】
【表7】

【0028】
本発明は特定の特徴または実施態様を参照して説明されたが、他の実施態様が当業者には明らかであり、および特許請求の範囲には含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子または粒子、および少なくとも一のPIBSAまたはPIBSA反応生成物、を含んでなる分散体。
【請求項2】
前記PIBSAが、
【化1】

【化2】

【化3】

および
【化4】

からなる群から選択される少なくとも一の部を含んでなる、請求項1に記載の分散体。
【請求項3】
請求項1に記載の分散体、ならびに、
ポリアクリル酸塩、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリエポキシド、およびポリアルキッドからなる群から選択される少なくとも一の母材ポリマー部、を含んでなる組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の組成物を基材に適用することによって得た、コーティングまたはフィルム。
【請求項5】
Xは1〜1000の値である、請求項2に記載の分散体。
【請求項6】
芳香族または脂肪族炭化水素、ケトン、エステル、カルボン酸、アルコール、アミン、アミドおよびエーテルからなる群から選択される少なくとも一の有機液体をさらに含んでなる、請求項1に記載の分散体。
【請求項7】
前記粒子のサイズが約1nm〜約2000nmの範囲である、請求項1に記載の分散体。
【請求項8】
前記粒子が、亜鉛、ジルコニウム、セリウム、チタン、アルミニウム、インジウムおよびスズからなる群から選択される少なくとも一の部からできた金属酸化物を含んでなる、請求項1に記載の分散体。
【請求項9】
トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、ヘキサン、およびフェノキシイソプロパノールからなる群から選択される少なくとも一の部をさらに含んでなる、請求項1に記載の分散体。
【請求項10】
前記ナノ粒子が酸化亜鉛を含み、および前記分散体が少なくとも一の有機液体をさらに含んでなる、請求項2に記載の分散体。
【請求項11】
少なくとも一のアミンをさらに含んでなる、請求項2に記載の分散体。
【請求項12】
少なくとも一のエポキシ硬化剤をさらに含んでなる、請求項2に記載の分散体。

【公開番号】特開2008−223008(P2008−223008A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−19654(P2008−19654)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】