説明

ポリイミドフィルムの製造方法

【課題】 本発明の課題は無機粒子凝集体の少ないポリイミドフィルムの製造方法を提供することである。
【解決手段】 芳香族ジアミンと芳香族酸二無水物を反応させて得られるポリアミド酸を含むポリアミド酸溶液を支持体上に流延し、製膜し、イミド化することによって得られるポリイミドフィルムの製造方法であって、該ポリイミドフィルムが無機粒子を含有し、かつ該無機粒子を有機溶剤もしくは少なくとも有機溶剤を含む溶液に分散させた状態で、重合槽のポリアミド酸溶液中に直接添加することを特徴とする、ポリイミドフィルムの製造方法により、上記課題を解決し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑剤として添加する無機粒子の凝集による欠陥の発生を抑制したポリイミドフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、その耐熱性、絶縁性から、各種プリント基板(フレキシブルプリント基板、COF用ベースフィルム、TABテープ等)の基材フィルムとして使用されている。これらプリント基板の配線のファインピッチ化に伴い、ピッチ間よりも大きい異物が外観検査時に欠陥として認識され、収率が低下してしまうという問題がある。
【0003】
一方、ポリイミドフィルム中には滑剤として少量の無機粒子が添加されている。しかしながらこれら無機粒子の粒子径が大きい場合、大きな突起が形成され、結果として接着剤がはじかれたり、スパッタリング時のピンホール形成、さらには放電による表面処理時に異常放電を誘発し、絶縁性フィルムの表面粗度が大きくなったりする場合がある。これらの問題点に対し、滑剤としてサイズが小さい無機粒子を用いるという試みがなされている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、粒子径の小さい粒子は凝集が起こりやすく、製造の過程で凝集体がフィルム中に混入する可能性があった。混入した凝集体は最終的なプリント基板の検査時に欠陥として検出される。
【0005】
その対処法として、無機粒子を混合したポリアミド酸溶液を濾過し、無機粒子凝集体を除去する方法があるが、フィルターの目が細かすぎると濾過時の圧力が高くなり濾過速度を下げる必要があるので、生産性が低くなる傾向にある。そのため、さらなる改善により、無機粒子が重合時に凝集しにくい方法を考える必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−88372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、無機粒子凝集体の少ないポリイミドフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、ポリアミド酸反応時において、無機粒子を有機溶剤もしくは少なくとも有機溶剤を含む溶液に分散させた状態で、重合槽のポリアミド酸溶液中に直接添加するという無機粒子の適正な添加方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明は、芳香族ジアミンと芳香族酸二無水物を反応させて得られるポリアミド酸を含むポリアミド酸溶液を支持体上に流延し、製膜し、イミド化することによって得られるポリイミドフィルムの製造方法であって、該ポリイミドフィルムが無機粒子を含有し、かつ該無機粒子を有機溶剤もしくは少なくとも有機溶剤を含む溶液に分散させた状態で、重合槽のポリアミド酸溶液中に直接添加することを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、COF(ChiP on Film)、TAB(Tape Automated Bonding)、FPC(Flexible Printed Circuits)などの高密度実装用配線板に適した無機粒子凝集体の少ないポリイミドフィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の無機粒子分散液を溶液中に重合槽の側面から直接添加可能な重合槽の図である。
【図2】本発明の無機粒子分散液を溶液中に重合槽の下部から直接添加可能な重合槽の図である。
【図3】本発明の無機粒子分散液を溶液中に重合槽の上部から直接添加可能な重合槽の図である。
【図4】重合槽の溶液液面上部から無機粒子分散液を添加可能な重合槽の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の一形態について、以下に説明する。
【0013】
本発明のポリイミドフィルムはポリアミド酸を前駆体として用いて製造される。ポリアミド酸の製造方法としては公知のあらゆる方法を用いることができ、通常、芳香族酸二無水物と芳香族ジアミンを、実質的等モル量を有機溶媒中に溶解させて、得られたポリアミド酸有機溶媒溶液を、制御された温度条件下で、上記酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで攪拌することによって製造される。これらのポリアミド酸溶液は通常5〜35重量%、好ましくは10〜30重量%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に適当な分子量と溶液粘度を得る。
【0014】
重合方法としてはあらゆる公知の方法およびそれらを組み合わせた方法を用いることができる。代表的な重合方法として次のような方法が挙げられる。すなわち、
1)芳香族ジアミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法、
2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法、
3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いてここに芳香族ジアミン化合物を追加添加後、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法、
4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解及び/または分散させた後、実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法、
5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法、
などのような方法である。これら方法を単独で用いても良いし、部分的に組み合わせて用いることもできる。
【0015】
本発明で用いるポリアミド酸の構造はいかなるものでもよく、最終的なポリイミドの諸物性を達成できるようにモノマーを選ぶことにより設計される。
【0016】
ポリイミド前駆体(以下ポリアミド酸という)を合成するための好ましい溶媒は、ポリアミド酸を溶解する溶媒であればいかなるものも用いることができるが、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒を好適に用いることができ、その中でもN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましく用い得る。
【0017】
また、本発明において、ポリアミド酸溶液は重合の途中段階(溶液粘度が150ポイズ以下のポリアミド酸溶液について以下、プレポリマー溶液とする)で5μm以下、好ましくは3μm以下、特に好ましくは2μmのフィルター孔径のフィルターで濾過することが好ましい。このときの溶液粘度は100ポイズ以下、好ましくは50ポイズ以下、特に好ましくは30ポイズ以下である。濾過精度が上記範囲を超えた場合、原料中に含まれる異物により粗大突起が形成される可能性が高く、良好な表面性を有したポリイミドフィルムを得ることが困難になる場合がある。
【0018】
また、溶液粘度が上記範囲を超えた場合、濾過時の圧力が高くなりすぎ、濾過速度を下げる必要があるので精度の高い濾過と生産性の両立ができなくなる傾向にある。
【0019】
上記プレポリマー溶液に滑剤として無機粒子の分散液を加えた後、重合を完結させる、もしくはプレポリマー溶液の重合を完結させた後に無機粒子の分散液を加え、1000〜6000ポイズ、好ましくは1500〜5000ポイズのポリアミド酸溶液とする。最終的な溶液粘度がこの範囲内にあるときに良好な製膜性と生産性を実現しやすくなる。
【0020】
本発明においては、無機粒子を有機溶剤もしくは少なくとも有機溶剤を含む溶液に分散させた状態で、重合槽のポリアミド酸溶液、好ましくはプレポリマー溶液中に直接添加する。本願でいう少なくとも有機溶剤を含む溶液には、例えば、ポリアミド酸溶液、可溶性ポリイミド溶液等がある。
【0021】
本願発明の直接添加とは、重合槽のポリアミド酸溶液に、無機粒子を分散させた溶液を直接添加する意味であり、より具体的には、壁面を沿わせたり、空中を介したりをすること無しに添加されることをいう。
【0022】
無機粒子分散液の添加は、次のような方法が挙げられる。すなわち、
1)無機粒子分散液を重合槽内のプレポリマー溶液もしくはポリアミド酸溶液中に重合槽の側面から直接添加する(図1)、
2)無機粒子分散液を重合槽内のプレポリマー溶液もしくはポリアミド酸溶液中に重合槽の下部から直接添加する(図2)、
3)無機粒子分散液を重合槽内のプレポリマー溶液もしくはポリアミド酸溶液中に重合槽の上部から直接添加する(図3)。
【0023】
このような添加方法を用いることにより、重合槽の壁面をそわせて無機粒子分散液を添加した場合に問題となる、添加口付近の壁面に付着した無機粒子凝集体が、プレポリマー溶液もしくはポリアミド酸溶液へ混入することを防ぐことができる。さらに、無機粒子分散液の添加には逆流防止弁を用い、プレポリマー溶液もしくはポリアミド酸溶液の逆流が生じないようにするのが好ましい。
【0024】
無機粒子の粒径は、平均粒子径が0.1〜1.0μm、さらに好ましくは0.2〜0.5μmであることが好ましい。平均粒子径がこの範囲を下回ると均一な分散液が得られないもしくは滑剤としての機能を果たさない場合があり、この範囲を上回ると一部の凝集粒子が粗大突起を形成しやすくなる場合がある。
【0025】
滑剤としての無機粒子は酸化チタン、第二リン酸カルシウム無水物またはピロリン酸カルシウム、好ましくは二酸化ケイ素のいずれかが好ましく用いられる。リン酸水素カルシウムなどの無機粒子は、FPCの加工工程で用いられる酸によりリン酸水素カルシウムなどが溶出し、フィルムの変色を引き起こすなどの問題が起きているため二酸化ケイ素などのように化学的に安定な粒子への変更が望まれている。
【0026】
無機粒子の含有量はポリアミド溶液の固形分に対して0.01〜0.50重量%、好ましくは0.1〜0.2重量%である。範囲の下限以上、上限以下の場合にFPCの加工工程に適したフィルムの滑り性を得やすくなる傾向がある。
【0027】
無機粒子を有機溶剤もしくは少なくとも有機養座右を含む溶液に分散させる方法としては、超音波、ビーズミル等公知のいかなる方法を用いてもよい。また、分散後の凝集を起こりにくくするため、分散後の有機溶剤溶液にポリアミド酸溶液を少量添加して10〜200ポイズの状態にして使用しても良い。また、添加時にはフィルターを介して濾過しながら添加することが望ましい。
【0028】
このようにして得られたポリアミド酸溶液を支持体上に流延し、製膜し、イミド化することによって本願のポリイミドフィルムが得られる。
【0029】
これらポリアミド酸溶液からポリイミドフィルムを製造する方法については従来公知の方法を用いることができる。また、製膜条件や加熱条件は、ポリアミド酸の種類、フィルムの厚さ等により、変動し得る。
【0030】
一例を挙げると、イミド化促進剤を低温でポリアミド酸溶液中に混合して製膜ドープを得る。引き続いてこの製膜ドープをガラス板、アルミ箔、エンドレスステンレスベルト、ステンレスドラムなどの支持体上にフィルム状にキャストし、支持体上で80℃〜200℃、好ましくは100℃〜180℃の温度領域で加熱することで脱水剤及びイミド化触媒を活性化することによって部分的に硬化及び/または乾燥した後支持体から剥離してポリアミド酸フィルム(以下、ゲルフィルムという)を得る。
【0031】
ゲルフィルムは、ポリアミド酸からポリイミドへの硬化の中間段階にあり、自己支持性を有し、式(1)
(A−B)×100/B・・・・(1)
(式(1)中、A、Bは以下のものを表す。
A:ゲルフィルムの重量
B:ゲルフィルムを450℃で20分間加熱した後の重量)
から算出される揮発分含量は5〜500重量%の範囲、好ましくは5〜200重量%、より好ましくは5〜150重量%の範囲にある。この範囲のフィルムを用いることが好適であり、この範囲を逸脱した場合は、焼成過程でフィルム破断、乾燥ムラによるフィルムの色調ムラ、特性ばらつき等の不具合が起こることがある。
【0032】
前記ゲルフィルムの端部を固定して硬化時の収縮を回避して乾燥し、水、残留溶媒、残存脱水剤及びイミド化触媒を除去し、そして残ったアミド酸を完全にイミド化して、本発明のポリイミドフィルムが得られる。
【0033】
この時、最終的に400〜650℃の温度で5〜400秒加熱するのが好ましい。この温度より高い及び/または時間が長いと、フィルムの熱劣化が起こり問題が生じることがある。逆にこの温度より低い及び/または時間が短いと所定の効果が発現しないことがある。
【0034】
また、フィルム中に残留している内部応力を緩和させるためにフィルムを搬送するに必要最低限の張力下において加熱処理をすることもできる。この加熱処理はフィルム製造工程において行ってもよいし、また、別途この工程を設けても良い。加熱条件はフィルムの特性や用いる装置に応じて変動するため一概に決定することはできないが、一般的には200℃以上500℃以下、好ましくは250℃以上500℃以下、特に好ましくは300℃以上450℃以下の温度で、1〜300秒、好ましくは2〜250秒、特に好ましくは5〜200秒程度の熱処理により内部応力を緩和することができる。
【0035】
本発明におけるポリイミドフィルムは、上記の如く、プレポリマー溶液もしくはポリアミド酸溶液への無機粒子分散液の添加方法を直接添加とすることにより、得られるポリイミドフィルム中の無機粒子凝集体による欠陥の個数を減らすことが可能となる。具体的には、フィルム中の1〜50μmの無機粒子凝集体による欠陥の発生個数を100個/m2以下とすることが可能となる。よりファインピッチ化が要求される用途への展開を考慮すると80個/m2以下とすることが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例におけるポリイミドフィルムの無機粒子凝集体による欠陥個数の評価法は次の通りである。
【0037】
(フィルム欠陥個数)
長尺フィルムの一部を切り出し、実体顕微鏡によって1〜50μmの大きさの無機粒子凝集体による欠陥の個数をカウントした。
【0038】
(実施例1)
10℃に冷却したN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)にピロメリット酸二無水物(PMDA、45mol当量)を添加し30分撹拌した。さらに3、4−ジアミノフェニルエーテル(50mol当量)を溶解してプレポリマー溶液を得た(以下、A液とする)。A液の粘度は15ポイズであった。A液を孔径3μmのフィルターで濾過して別の重合槽へ移液した。
【0039】
DMF1222gに対して278gのシリカフィラー(平均粒径0.3μm)を添加して90分間超音波処理をし、粘度が0.5ポイズの分散液を得た。その分散液を孔径1μmフィルターで2回濾過した。これをA液の入っている重合槽の側面から逆流防止弁付添加設備を用いてA液中にA液に対して0.15重量%添加した後、1時間攪拌した。
【0040】
シリカフィラーを添加したA液に、別途調製したPMDAの7重量%溶液(孔径1μmのフィルターで濾過済み)を徐々に添加し、最終的に23℃での粘度が2600ポイズの固形分濃度が17重量%のポリアミド酸溶液を得た(以下、B液とする)。
【0041】
B液を孔径20μmのフィルターで濾過しながら、無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比580:70:150)からなる硬化剤をポリアミド酸DMF溶液に対して重量比40%で連続的にミキサーで攪拌しTダイから押出してダイの下25mmを10m/分の速度で走行しているステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。この樹脂膜を130℃×100秒で加熱した後エンドレスベルトから自己支持性のゲル膜を引き剥がして(揮発分含量50重量%)テンタークリップに固定し、230℃×30秒、350℃×30秒、450℃×30秒で乾燥・イミド化させ、厚み25μmのポリイミドフィルムを得た。
【0042】
上記重合と流延・製膜を連続して行い、フィルムを10000m長巻き取った。そのときのフィルム1m2あたりの無機粒子凝集体による欠陥個数を表1に示す。
【0043】
(実施例2)
実施例1と同様にA液を重合し、A液を孔径3μmのフィルターで濾過して別の重合槽へ移液した。
【0044】
A液に別途調製したPMDAの7重量%溶液(孔径1μmのフィルターで濾過済み)を徐々に添加し、23℃での粘度が2600ポイズのポリアミド酸溶液を得た(以下、C液とする)。
【0045】
DMF1222gに対して278gのシリカフィラー(平均粒径0.3μm)を添加して90分間超音波処理をし、粘度が0.5ポイズの分散液を得た。その分散液を孔径1μmのフィルターで2回濾過した。これをC液の入っている重合槽の側面から逆流防止弁付添加設備を用いてC液中にC液に対して0.15重量%添加した後1時間攪拌し、最終的に固形分濃度が17重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0046】
シリカフィラーを添加したC液を孔径20μmのフィルターで濾過しながら、無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比580:70:150)からなる硬化剤をポリアミド酸DMF溶液に対して重量比40%で連続的にミキサーで攪拌しTダイから押出してダイの下25mmを10m/分の速度で走行しているステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。この樹脂膜を130℃×100秒で加熱した後エンドレスベルトから自己支持性のゲル膜を引き剥がして(揮発分含量50重量%)テンタークリップに固定し、230℃×30秒、350℃×30秒、450℃×30秒で乾燥・イミド化させ、厚み25μmのポリイミドフィルムを得た。
【0047】
上記重合と流延・製膜を連続して行い、フィルムを10000m長巻き取った。そのときのフィルム1m2あたりの無機粒子凝集体による欠陥個数を表1に示す。
【0048】
(実施例3)
実施例1と同様にA液を重合し、A液を孔径3μmのフィルターで濾過して別の重合槽へ移液した。
【0049】
A液の一部に、別途調製したPMDAの7重量%溶液(孔径1μmのフィルターで濾過済み)を徐々に添加し、23℃での粘度が2600ポイズのポリアミド酸溶液を得た(以下、D液とする)。
【0050】
DMF1222gに対して278gのシリカフィラー(平均粒径0.3μm)を添加して90分間超音波処理をし、粘度が0.5ポイズの分散液を得た。ここにD液を添加した後、1000rpmで1時間攪拌して粘度が30ポイズの分散液を得た。
【0051】
フィラー含有量がA液に対して0.15重量%となるように孔径2.5μmのフィルターで濾過しながら分散液を重合槽の側面から逆流防止弁付添加設備を用いて残りのA液中に添加し、30分攪拌した。引き続きPMDA7重量%溶液(孔径1μmのフィルターで濾過済み)を添加し、最終的に23℃での粘度が2800ポイズのポリアミド酸溶液を得た。
【0052】
この溶液に、無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比580:70:150)からなる硬化剤をポリアミド酸DMF溶液に対して重量比40%で連続的にミキサーで攪拌しTダイから押出してダイの下25mmを10m/分の速度で走行しているステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。この樹脂膜を130℃×100秒で加熱した後エンドレスベルトから自己支持性のゲル膜を引き剥がして(揮発分含量50重量%)テンタークリップに固定し、230℃×30秒、350℃×30秒、450℃×30秒で乾燥・イミド化させ、厚み25μmのポリイミドフィルムを得た。
【0053】
上記重合と流延・製膜を連続して行い、フィルムを10000m長巻き取った。そのときのフィルム1m2あたりの無機粒子凝集体による欠陥個数を表1に示す。
【0054】
(実施例4)
実施例1と同様にA液を重合し、A液を孔径3μmのフィルターで濾過して別の重合槽へ移液した。さらに、実施例2と同様にC液を得た。
【0055】
DMF1222gに対して278gのシリカフィラー(平均粒径0.3μm)を添加して90分間超音波処理をし、粘度が0.5ポイズの分散液を得た。ここにC液の一部を添加した後、1000rpmで1時間攪拌して粘度が30ポイズの分散液を得た。
【0056】
フィラー含有量がC液に対して0.15重量%となるように、孔径2.5μmのフィルターで分散液を濾過しながら、重合槽の側面から逆流防止弁付添加設備を用いて残りのC液中に添加し、30分攪拌した。
【0057】
この溶液に、無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比580:70:150)からなる硬化剤をポリアミド酸DMF溶液に対して重量比40%で連続的にミキサーで攪拌しTダイから押出してダイの下25mmを10m/分の速度で走行しているステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。この樹脂膜を130℃×100秒で加熱した後エンドレスベルトから自己支持性のゲル膜を引き剥がして(揮発分含量50重量%)テンタークリップに固定し、230℃×30秒、350℃×30秒、450℃×30秒で乾燥・イミド化させ、厚み25μmのポリイミドフィルムを得た。
【0058】
上記重合と流延・製膜を連続して行い、フィルムを10000m長巻き取った。そのときのフィルム1m2あたりの無機粒子凝集体による欠陥個数を表1に示す。
【0059】
(比較例1)
実施例1と同様にしてA液およびシリカフィラー分散液を調合し、シリカフィラー分散液を孔径1μmのフィルターで2回濾過した。これをA液の入っている重合槽内のA液に対して液面上部から壁面を沿わせて0.15重量%添加し、1時間攪拌した。重合槽の模式図を図4に示す。
【0060】
シリカフィラーを添加したA液に、実施例1と同様にPMDA溶液を添加しポリアミド酸を得て、流延・製膜を行い厚み25μmのポリイミドフィルムを得た。
【0061】
上記重合と流延・製膜を連続して行い、フィルムを10000m長巻き取った。そのときのフィルム1m2あたりの無機粒子凝集体による欠陥個数を表1に示す。
【0062】
【表1】

【符号の説明】
【0063】
1 重合槽
2 攪拌機
3 逆流防止弁付添加設備
4 添加設備
5 プレポリマー溶液もしくはポリアミド酸溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジアミンと芳香族酸二無水物を反応させて得られるポリアミド酸を含むポリアミド酸溶液を支持体上に流延し、製膜し、イミド化することによって得られるポリイミドフィルムの製造方法であって、該ポリイミドフィルムが無機粒子を含有し、かつ該無機粒子を有機溶剤もしくは少なくとも有機溶剤を含む溶液に分散させた状態で、重合槽のポリアミド酸溶液中に直接添加することを特徴とする、ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項2】
該無機粒子を有機溶剤もしくは少なくとも有機溶剤を含む溶液に分散させた状態で、重合槽のポリアミド酸溶液中に逆流防止弁を用いて直接添加することを特徴とする請求項1記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項3】
該無機粒子を有機溶剤もしくは少なくとも有機溶剤を含む溶液に分散させた状態で、重合槽のポリアミド酸溶液中に側面から直接添加することを特徴とする請求項1または2記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項4】
該無機粒子を有機溶剤もしくは少なくとも有機溶剤を含む溶液に分散させた状態で、重合槽のポリアミド酸溶液中に下部から直接添加することを特徴とする請求項1または2記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項5】
該無機粒子を有機溶剤もしくは少なくとも有機溶剤を含む溶液に分散させた状態で、重合槽のポリアミド酸溶液中に上部から直接添加することを特徴とする請求項1または2記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項6】
平均粒子径が0.1〜1.0μmの無機粒子を0.01〜0.50重量%含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項7】
無機粒子が酸化チタン、第二リン酸カルシウム無水物、ピロリン酸カルシウムまたは二酸化ケイ素であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項8】
フィルム中の1〜50μmの無機粒子凝集体が、1m2当たり100個以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−1439(P2011−1439A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144972(P2009−144972)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】