ポリイミドマトリクス電解質
ポリマーマトリクス電解質(PME)がポリイミド、少なくとも1つの塩および混合する少なくとも1つの溶媒を含む。PMEは高度な光学的透明性で証明されるように一般的に均一である。PMEは過酷な温度および圧力に対して安定である。PMEを形成する方法は、ポリイミドを少なくとも1つの溶媒に溶解する工程、少なくとも1つの塩をポリイミドと溶媒に加える工程を含み、前記ポリイミド、塩および溶媒が混合状態となりPMEを形成し、PMEは実質的に光学的に透明である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に電解質に関し、より具体的にはポリイミド、リチウム塩および溶媒の均一な混合物である光学的に透明なポリイミドに基づく電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の性能因子の多くは選択される電解質セパレーター、および選択された電解質と使用される陽極および陰極材料との相互作用に関係する。すべての電池は電解質が必要であり、それが高いイオン導電率および、温度と電位の広範囲にわたる電気化学的安定性を与える。イオン導電率は電解質の最も重要な性質の1つである。一般的に、高イオン導電率によって電池性能は改良される。従って、重要な研究は、電気化学的セルに使用する電解質のイオン導電率を高める方法の開発に集中してきた。
【0003】
リチウム電池で用いる電解質は、液体またはポリマーに基づく電解質でも可能である。液体電解質を含むリチウム電池は数年前に市場に出された。液体電解質のリチウム2次電池は最近、ノート型パソコン、ビデオカメラ、携帯電話のような用途に大量生産されている。しかしながら、液体電解質技術のリチウム電池はいくつかの重大な欠点がある。その欠点は液体電解質を使用することによる価格と安全性に関係する。液体電解質は一般に、硬く密封した金属缶にパッケージする必要があり、その結果エネルギー密度が減少することになる。加えて、安全性の理由から、液体電解質のリチウムイオン2次電池およびリチウム金属の1次電池はある不正な使用条件、例えば、外部または内部の過熱によって引きおかされる内圧に大きな増加などが発生したときに自動的に通気するように設計されている。もしセルが過大な圧力下に通気されないと、液体Liセルに用いられる液体電解質は非常に燃えやすいので爆発することがありえる。
【0004】
固体ポリマー電解質のリチウム電池は液体電解質のリチウム電池の進化した代替である。一般に、固体ポリマー電極はポリマーの空隙に溶媒と塩を閉じ込めて、媒体にイオン導電性をあたえるゲル状電解質である。典型的なポリマー電解質は、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエーテルベースポリマーおよびゲルを形成する他のポリマー、例えば、ポリアクリルロニトリル(PAN),ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ弗化ビニリデン(PVDF)などからなる。一般にポリマー電解質は電池の陽極と陰極膜間に挿入されるセパレーターの働きがある。
【0005】
ポリマー電解質は一般に不揮発性物で正常な作業条件では一般に液漏れをしないので、ポリマー電解質のリチウム電池は、液体電解質のリチウム電池よりも本質的に安全である。さらに、ポリマー電解質では、液体電解質のリチウム電池の作業に一般的に要求される通気およびパッケージ圧制御の必要がない。それゆえ、ポリマー電解質では、金属樹脂袋のような柔軟なケースを使用できるので、液体電解質の缶型Li電池と比較して、重量および厚みの面で改良になる。
【0006】
リチウム電池の性能因子の多くは、電解質の選択および、選択した電解質と使用する陽極および陰極材料との相互作用とに関連する。一般に、高い電解質イオン導電率は改良された電池性能に結びつく。ゲルポリマー電解質のイオン導電率は25℃で約10-4S/cmもの高い値が報告されている。しかしながら、電池用途によっては、ポリマー電解質のイオン導電率がさらにより高い値に到達することが望まれている。加えて、ポリマー電解質と陰極および陽極材料との電気化学的安定性を高めて電池の信頼性のほか、貯蔵とサイクル特性を改善するのも望まれるであろう。
【0007】
ゲルポリマー電解質が液体電解質より、安全性と製造の点で優れているが、安全性の問題は依然残る。なぜならゲルポリマーはその空隙に溶媒を閉じ込めているが、過酷な条件(例、熱および/または圧力)下で、溶媒が開放され被害を起こすからである。ゲルポリマー電解質は、低温で一般に凍結し、高温では他の電池部品と反応したり、溶融したりするなどの理由で広範囲で働かないのが一般的である。さらに、電極が不安定で、それによるサイクル特性が悪く、特に金属リチウム含有陰極に対してであるが、これが理由からゲルポリマー電解質で形成される電池への可能な応用が制限される。
【0008】
特性を改良するために、既存のものに代わるポリマー材料が入手可能なポリマー選択にわたって精力的に検討されてきた。例えば、グスタソン(Gustafson)らの米国特許第5,888,672号(略672特許)によると、ポリイミド電解質とそれを用いた室温および広い温度範囲で作動する電池が開示されている。開示されたポリイミドは数種の溶媒に溶解し、実質的に非晶質である。リチウム塩と混合すると、得られたポリイミドに基づく電解質は驚くほど高いイオン導電率となる。672特許で開示された電解質はすべて光学的に不透明であり、これは電解質を構成する各種成分の相分離の証しである。672特許で開示された電解質はポリマー電解質を形成するのに用いることができ、従来のゲルポリマー電解質よりも作動温度範囲が改良され、製造が簡便で、安全性が改良されるが、もし電解質の安定性およびイオン導電率が改良されれば、有用であろう。
【特許文献1】米国特許第5,888,672号明細書
【発明の開示】
【0009】
ポリマーマトリクス電解質(PME)は、ポリイミド、ポリイミドによってもたらされたイミド環モル当たり、少なくとも0.5モルのリチウム濃度の少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの溶媒を含み、すべてが混合される。PMEは高レベルの光学的透明性で証明されるように一般的に均一である。本明細書で用いられるように、PMEは「実質的に光学的に透明」であると称する場合、それは、540nmの光を用い、規格化した1milの膜を透過する標準濁度測定によって、PMEが少なくとも90%透明、好ましくは少なくとも95%、および最も好ましくは少なくとも99%透明であることを示す。
【0010】
リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiBOB、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2およびリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSi)からなる群から選択できる。リチウム塩の濃度がポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり0.5から2.0モルLiであり、またはポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり1.2から2.0モルLiである。
【0011】
ポリイミドのイミド環当たり繰り返し単位の重量は350以下、300以下、250以下が可能である。ポリイミドは、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)およびジメチルホルムアミド(DMF)なる群から選択される少なくとも1つの溶媒に25℃で溶解することができる。
【0012】
PMEのイオン導電率が25℃で少なくとも1×10-4S/cm、好ましくは少なくとも3×10-4S/cmである。PMEは約1630と1690cm-1の間に少なくとも1つの吸収ピークを与えるが、しかし塩、ポリイミドいずれもこの範囲にいかなる吸収ピークを与えない。
【0013】
ポリマーマトリクス電解質(PME)を形成する方法は、ポリイミドを少なくとも1つの溶媒に溶解する工程、ポリイミドおよび溶媒に、ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩を加える工程を含み、ポリイミド、塩および溶媒が混合状態になる。PMEは各成分の相分離がないことを証明する実質的に光学的に透明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、ポリイミド、少なくとも1つの塩および少なくとも1つの溶媒を含む実質的に光学的に透明な電解質セパレーターマトリクスを記述する。溶媒は一般に、低分子量、低粘度液体で、低濃度でポリイミドを膨潤させ、十分な高濃度でポリイミド、塩および溶媒を均一な混合状態にする。本明細書で用いるように、実質的に光学的に透明な電解質マトリクスは、「ポリマーマトリクス電解質」またはPMEと称する。PMEは電池、超コンデンサーおよび他の用途に用いることができる。
【0015】
電池に関して、PMEはリチウムイオンおよびリチウム金属含有電池の両方に使用できる。ゲルポリマー電解質と違って、一度PMEが形成されると、一般的に自由な溶媒または検出可能な細孔はない。例えば、50A解像力をもつSEMを用いてもPME内に細孔は検出されない。その代わりに、溶媒はポリマーおよびリチウム塩と、均一で実質的に光学的に透明なマトリクス中に一体化している。なお、ポリマーが単に機械的な支えをするだけの従来のゲルポリマーと異なり、PMEを構成するポリマー、塩および溶媒はすべてイオン伝導性に機能する。
【0016】
PMEは高電流容量、サイクル安定性を与え、そしてこの性能は広範囲な温度、例えば、少なくとも−40℃から100℃まで保持する。例えば、PMEを含む電池は開回路電圧および容量がわずかに変化するが、クレジットカード製造時の熱積層プロセスで一般に用いられる条件または、さらに代表的な射出成形プロセスのような、高温および高圧に耐える。
【0017】
本明細書で用いられるように、用語「実質的に光学的に透明」とは、540nmの光を用い、規格化した1milの膜を透過する標準濁度測定によって、材料が少なくとも90%透明、好ましくは少なくとも95%、および最も好ましくは少なくとも99%透明であることを示す。本発明により形成されるPMEの光学的透明性のデータはこれらの測定条件において実施例1に示されるが、1mil(規格化)PME膜を通して少なくとも99%の光学的透明性を実証している。PMEの高レベルの光学的透明性によって、いかなる有意な相分離が膜の光学的透明性を大きく減ずるであろう各成分(ポリマー、塩および溶媒)を含むPMEの均一性を証明している。
【0018】
本発明による塩とポリマーとの相互作用が一般的に高度に光学的に透明な膜を作り出す。溶媒の添加によって一般に膜の光学的透明性は変化しない。塩の濃度が高くなると、塩が分離相を形成し始める点に至る。その点において、PME膜はその光学的透明性を失い始める。
【0019】
PMEは一般に、1つまたはそれより多いポリイミドに基づいており、他のポリマーベース電解質と違って、イミド環および他の極性基の存在によりイオン導電率に機能する。リチウム塩と錯体をつくりイオン導電性に機能することができる官能基をもつ高度な極性基を含む他のポリマータイプとして、ポリベンズイミダゾールおよびポリアミドイミドが挙げられる。従って、これらのポリマータイプもPMEを形成する際に有用な種に含めることができる。
【0020】
ポリイミドはジアミンと酸二無水物とが初期にポリアミック酸中間体を形成する縮合反応の反応生成物である。ジアミンと酸二無水物試薬の一方または両方が、ジアミン種の混合物または酸二無水物種の混合物でもよい。ポリアミック酸中間体は次に完全にイミド化されたポリイミドに転換される。
【0021】
このように形成され得られるポリイミドの性質は特定のジアミンモノマーおよび酸二無水物モノマーの選択に依存する。ポリイミドは一般に知られているように、高い耐熱性、耐薬品性、200℃から400℃を超える高いガラス転移温度を有している。
【0022】
本発明は特許672で開示されたものと異なるポリイミドを同定し、これらの異なるポリイミドのなかには溶媒の添加により、PMEの形成になり得ることを見出した。本明細書で同定したポリイミドのいくつかは新規に合成したポリマーを表す。特許672で開示されたポリマーと異なり、本明細書で開示したポリマーは、適当な濃度の塩と溶媒が結合して実質的に均一なマトリクス材料(PME)を形成する。均一性は得られた高レベルの光学的透明性によって証明される。対照的に、特許672で開示された電解質は、各成分の相分離を示唆する不透明性で証明されるように、不均一な混合物である。
【0023】
本発明者らは、特定のポリマー因子とイオン導電率とを定性的に関係づけて、PMEの形成に用いる改良されたポリイミドを同定し合成した。イミド環密度は、リチウム塩を負荷させると、ポリイミド膜が溶媒の無い状態であっても十分なイオン導電率を示す理由を説明できると考えられる。イミド環当たり繰り返しの重量は、イミド環密度の1つの指標であり、各繰り返し単位内で、各ポリイミドの全繰り返し単位の分子量をイミド環の数で除して計算される。
【0024】
イミド環は、その環によって与えられる高い電子密度の理由から、材料に高い誘電率に相当するものを与えることができる。従って、イミド環とリチウムイオンとの相互作用がPMEのイオン導電率を決定する因子であると考えられる。それゆえ、PMEとして使用するために改良するポリイミドは、一般的にさらに以下の点に考慮して選択される。最初に、あるポリイミド中の分子繰り返し単位当たりイミド環の数を計算することによって(スルホン、カルボニル、シアン化物のような他の高い極性基はより少ない程度で)選択する。単位重量当たりに存在するイミド環機能が多いほど、ポリマーの相当する平均誘電強度が高い。相当する誘電強度が高い程、一般に塩との相互作用の改良につながると考えられ、PMEのイオン導電率の改良ができる。
【0025】
代わりに、ポリイミド中のイミド環の相対的濃度を比較するため、イミド環当たり繰り返しの重量と称するイミド環密度の逆数を概算することができる。イミド環当たりの繰り返しの重量が減少するにつれて、イミド環は、全体として繰り返し単位に対して、ますます、より大きな寄与となる。その結果、イミド環当たり繰り返しの重量が減少するにつれ、ポリイミドの相当する誘電率およびイオン導電率は一般に増加する。
【0026】
高いヘリウム透過率があるポリイミドは一般的により高いイオン導電率を与えて、それゆえ、より良いPMEを形成することができる。本発明による大半のポリイミドで調べられた25℃でのHe透過率の測定値は少なくとも20barrersである。He透過率が25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、または80barrersまたはそれ以上も可能である。
【0027】
ヘリウム透過率は以下の提案されている方法で測定することができる。厚み(l)、面積(A)の所定の膜を通してガス成分のガス透過率(GP)は、膜に圧力(p)をかけて決定できるが、この圧力はガス成分の一次圧から二次圧を引いた差圧であり、標準条件(STP)で膜を透過する定常状態のガス流量(f)を測定することにより決定できる。
【0028】
GP=(fl)/(Ap)
【0029】
GPの好適な単位は、(cm2)(sec)-1(cmHg)、ここで1barrerはGPに1010を乗じた単位として定義される。
【0030】
PMEの最大イオン導電率は一般的に、ポリイミド/塩/溶媒の組み合わせが完全に均一で透明なマトリクスを創造する場合に生じると考えられる。相分離はPME内にねじれを増加させる理由から、いかなる相分離はイオン導電率の値を減じると推定される。
【0031】
ある温度においてPMEの最大の電解質導電率は一般に、ポリイミド/塩/溶媒のマトリクスが特定範囲の比率を有するときに生じる。最適な塩濃度は一般に、ポリイミドに対しイミド環のモル当たり0.5から2.0モルLiの範囲にある。少なすぎる塩は一般に、電荷移動に寄与する十分な数のイオンを提供しない。多すぎる塩は一般に、不安定な相につながり、ポリイミドの析出をもたらす可能性があり、その結果、光学的透明性の損失で明らかにできる、均一性を失うことになる。
【0032】
溶媒はポリマーに対し膨潤剤の役割をもち、骨格鎖を少し引き離して、より大きなイオン拡散係数を可能とすると考えられる。また、溶媒はイオンの溶媒和キャリヤとして働く。典型的に、溶媒は選択した電池のタイプの制限範囲内で安定でもあるものが選択される。例えば、リチウムイオンタイプの電池の場合、溶媒はリチウム金属の還元電位まで安定でなければならない。溶媒の量は希望する導電率あるいは、ある要求される温度でマトリクスの軟化点に依存して最適化できる。溶媒は、ガンマブチロラクトン(GBL)、プロピレンカーボネート、N−メチルピロリジノン(NMP)、テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド(TMS)、ポリカーボネート(PC)およびジメチルホルムアミド(DMF)を含む群から選択することができる。
【0033】
図1a〜1mは、本発明の実施態様による、各種ポリイミドの繰り返し単位構造を例示する。ポリイミドAと称するポリマーの繰り返し単位は図1aに示される。このポリイミドはPMDA[89−32−7]とTMMDA[4037−98−7]との反応でつくることができる。この高分子量のポリマーはNMPにある限られた時間溶解するゆえ、リチウム塩含有電解質を製造することはできなかった。
【0034】
本明細書でポリイミドBと称するポリマーの繰り返し単位は図1bに示される。このポリイミドは90モル%のPMDA[89−32−7]、10モル%の6FDA[1107−00−2]の酸二無水物およびジアミンTMMDA[4037−98−7]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解した。
【0035】
本明細書でポリイミドCと称するポリマーの繰り返し単位は図1cに示される。このポリイミドは85.7モル%のPMDA[89−32−7]、14.3モル%の6FDA[1107−00−2]およびTMMDA[4037−98−7]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解した。
【0036】
本明細書でポリイミドDと称するポリマーの繰り返し単位は図1dに示される。このポリイミドは80モル%のPMDA[89−32−7]、20モル%のPSDA[2540−99−0]およびTMMDA[4037−98−7]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解した。
【0037】
本明細書でポリイミドEと称するポリマーの繰り返し単位は図1eに示される。このポリイミドはBPDA[2421−28−5]と3,6ジアミノズレン[3102−87−2]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解した。
【0038】
本明細書でポリイミドFと称するポリマーの繰り返し単位は図1fに示される。このポリイミドは6FDA[1107−00−2]と3,6ジアミノズレン[3102−87−2]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解し、またアセトン、GBL、DMAcおよびDMFにも溶解する。
【0039】
本明細書でポリイミドGと称するポリマーの繰り返し単位は図1gに示される。このポリイミドはPSDA[2540−99−0]とTMMDA[4037−98−7]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解し、GBLに溶解する。
【0040】
本明細書でポリイミドHと称するポリマーの繰り返し単位は図1hに示される。このポリイミドは6FDA[1107−00−2]とTMMDA[4037−98−7]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解し、アセトン、GBL、DMAcおよびDMFにも溶解する。
【0041】
本明細書でポリイミドIと称するポリマーの繰り返し単位は図1iに示される。このポリイミドはBPDA[2421−28−5]と4,4’−(9−フルオレニリデン)ジアニリン[15499−84−0]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解した。
【0042】
本明細書でポリイミドJと称するポリマーの繰り返し単位は図1jに示される。このポリイミドはPMDA[89−32−7]と33.3モル%のTMPDA[22567−64−3]および66.7モル%のTMMDA[4037−98−7]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解した。
【0043】
本明細書でポリイミドKと称するポリマーの繰り返し単位は図1kに示される。このポリイミドはPMDA[89−32−7]とDAMs[3102−70−3]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに短時間だけ溶解した。
【0044】
本明細書でポリイミドLと称するポリマーの繰り返し単位は図1lに示される。このポリイミドはPMDA[89−32−7]と4−イソプロピル−m−フェニレンジアミン[14235−45−1]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解した。
【0045】
本明細書でポリイミドMと称するポリマーの繰り返し単位は図1mに示される。このポリイミドはPMDA[89−32−7]と33.3モル%のDAMs[3102−70−2]および66.7モル%のTMMDA[4037−98−7]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解した。
【0046】
図1に示した例示的構造以外のポリイミド構造はPMEマトリクスを形成するのに用いる良い候補であってもよい。良いPIが示すべき特性は、例えば、NMPへの溶解度(または他の適切な溶媒)が少なくとも20重量%で、イミド環当たり繰り返し単位の重量が小さいことが第一の基準とできる。しかしながら、PI自体の溶解性または電池用途に適用可能な高いリチウム塩濃度で結合したときの溶液安定性は簡単には予測し難い。
【0047】
溶液中の挙動はポリマーの繰り返し単位構造を見るだけでは、一般的に確認することができない。しかしながら、それはポリマーが結晶化できるかどうか、または、固相で高いまたは低い密度をもつかどうか構造を見ることで決定できる可能性がある。ポリイミドは非結晶性で低密度繰り返し構造が好ましいが、それらは大抵非常に溶解性がある理由からである。しかしながら、メチル基からエチル基に単一の側鎖基を変えるだけでPIの性質を有益から無益に変えてしまうこともあり得る。電池用途用に代替ポリイミドを求める提案された重要な選別手順において、溶媒そのものに良い溶解性をもつと知られているポリイミドを選び、それにイミド環当たり0.5モルLiまたはそれ以上のリチウム塩の導入を試みて、(i)得られたPI/塩/溶媒の溶液が、数時間透明で均一かどうか、および(ii)その溶液から成形された膜が大半の溶媒(例、95%)を蒸発させたとき、実質的に透明な状態を保つかをチェックする。
【0048】
相対的に局所電子密度(例、ポリイミド中のイミド環に隣接する電子密度に匹敵することのできる)および多重結合共役による電荷分離のための電位を与えるポリイミド以外のポリマーは、ポリマー/塩の錯体を形成し、それらが溶解する場合、錯体形成に基づく特性吸収ピークを示すことができる。このように、FTIRのような吸収分光法は、PMEとして錯体形成の証拠を示すこれらのポリイミド以外の溶解ポリマーを同定するのに用いることができる。
【0049】
PMEは少なくとも1つのリチウム塩を含む。高導電性のPMEは一般に、ポリイミドポリマーに対しイミド環のモル当たりLiが溶液と共に約0.5から2.0モルのような高い塩含有量を用いて達成される。しかしながら、リチウム塩濃度はポリイミドのイミド環のモル当たりLiが、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4または、2.5モルであってもよい。
【0050】
塩濃度はまた本明細書において、塩の重量と塩を除くポリマー(例、ポリイミド)重量との比率で説明される。例えば、1×濃度は塩とポリマーの等量に対応し、2×塩濃度はポリマー濃度に比較して2倍の塩濃度に対応する。リチウム塩は一般に、業界公知のリチウム塩であってよい。好ましくは、リチウム塩は以下のものから選択される。LiCl、LiBr、LiI、Li(CLO4)、Li(BF4)、Li(PF6)、Li(AsF6)、Li(CH3CO2)、Li(CF3SO3)、Li(CF3SO2)2N、Li(CF3SO2)3、Li(CF3CO2)、Li(B(C6H5)4、Li(SCN)およびLi(NO3)、リチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSI)、LiBOB、およびLiSCN、好ましくは、塩はLi(PF6)またはLiTFSiである。
【0051】
図2は、本発明の実施態様による、20.5℃でのイオン導電率および図1mに示すポリイミド、LiTFSi塩(2.2×)およびGBL溶媒を含むポリイミドベースのPMEに対して、対応する膜組成を例証する表である。PME膜の室温でのイオン導電率値は、複素インピーダンス解析器を用いたインピーダンス測定値から計算した。インピーダンス解析器を用いた測定は1MHzから0.1Hzの周波数範囲で行った。膜抵抗値、Rはナイキストプッロトの実軸の切片として、または応答曲線の高周波数部分を実軸に外挿して得られた。測定は抵抗値が直接読み取れる10kHz固定周波数でLCRメーターでも実施した。イオン導電率は以下の公式を用いて計算した。
C(ジーメンス/センチメートル)=t/R×10-4
式中、tはミクロン単位の膜厚でRはオーム単位の膜抵抗測定値である。
【0052】
図2に示すように、試験したPMEは、37.9%GBLを含むPME膜の場合、20.5℃での最大イオン導電率は、1×塩濃度で約1×10-4S/cmで、2.2×濃度で4×10-4S/cmであった。図2の表の下段部分は1.0、1.4、1.8および2.2×塩濃度に対して、1×10-4S/cmの導電率を与えるために必要な最小溶媒レベルを示してある。
【0053】
図2の溶媒範囲は溶媒/PI比率として表しており、約1から約2の範囲にある。より低い値はある用途に対して、1×10-4S/cmのようなイオン導電率の最小値に設定される。最大の導電率は塩濃度に依存し、溶媒/PI比率が1.5から2.0の範囲で生じることが分かった。
【0054】
2に近い溶媒/PIの上限値はPMEの力学的性質で支配される。高溶媒/PI比率では、PME膜は柔らかく、電池セパレーターとしての広い温度範囲では使用できないかもしれない。リチウム金属電池に応用される場合、実用問題として、溶媒はリチウム金属に対して適度に安定なもの、高い沸点(>150℃)、選択した塩を溶解でき、PIを膨潤できるものが選択され、最後に、塩/溶媒の組み合わせ自体並びにPMEのために高導電率を促進する低粘度であるべきである。
【0055】
PI、塩および溶媒濃度をそれぞれ最適化するために、提案された手順を以下で説明する。第一段階において、NMPまたはGBLのような適当な溶媒に溶解するPI種が選択される。図1kに示すポリイミドを除く、図1に示すすべてのポリイミドはNMPに溶解する。第二段階において、望まれるリチウム塩が選択され、初期濃度は、例えば、選択したPIによりもたらされるイミド環当たり1つのリチウムイオンを与える重量比率のようにして選択される。それから溶媒濃度は、溶媒/PI比率を約0.8から2.0まで変化させ、その間で溶媒/PIデータの数点のイオン導電率を測定する。これを塩濃度がより高いおよび、より低い点で繰り返すことができる。一般に、2倍程度の範囲内で、同じようなイオン導電率を与える重量比率PI/塩/溶媒の幾つかの組み合わせがある。
【0056】
図3a〜3dは、図1mで示すポリイミドおよびリチウム塩LiTFSi(2.2×)を含むPMEのイオン導電率を、溶媒負荷および温度の関数とした、溶媒TMS、PC、GBL、NMPそれぞれについてのプロットである。一般に、これらの曲線は明瞭な導電率の最大値を示さない。なぜなら、塩含有量は2.2×で、その結果、最大イオン導電率を与えるのに必要な溶媒の量は非常に多くて一般に実用的でないからである。
【0057】
図4は、図1mで示すポリイミドおよびリチウム塩(LiTFSi;2.2×)を含むPMEのイオン導電率を、溶媒がGBLの場合について、20℃で溶媒/ポリイミド比率の関数としたプロットである。イオン導電率は溶媒のポリイミドに対する比率が増加するにつれ増加し、GBL/ポリイミド比率が、イオン導電率が7×10-4S/cmで飽和する約1.5になるまで増加するのが見られる。
【0058】
ポリイミドに基づくPMEのイオン導電率はポリイミドがアルカリ塩、特にLi塩と会合する程度に関係していると考えられている。この会合はポリイミドの極性基(例、イミドおよびベンゼン)と塩との錯体形成におそらく関係している。この会合の証拠は、塩と混合されたポリマーが示す吸収周波数を測定し、そのデータをポリイミドと塩とがそれ自体で示す吸収周波数と比較するのとによって、見出すことができる。
【0059】
ポリイミドの場合、特性吸収周波数はポリイミド骨格を構成するイミド環とベンゼン環に関係していると考えられる。これらの吸収ピークはイミド環の約1778cm-1および1721cm-1並びにベンゼン環の730cm-1である。LiPF6、LiBOB、LiIおよびLiTFSiを含む汎用のLi塩はこれらの周波数に吸収を示さないし、1630と1690cm-1の間にも、いかなる吸収ピークを示さない。しかしながら、Li塩と非常に強く会合したある種のポリイミドが、それらの塩と結合すると、得られたポリイミド/塩の膜は約1672cm-1の第一ピークおよび約1640cm-1の第二ピークに非常に強いダブレットの出現を示す。
【0060】
第一の吸収周波数は、ポリイミド膜中に高い濃度、例えば、少なくとも33重量%であると、塩濃度の増加によって有意には変化しない。それゆえ、このピークは、十分な塩濃度の場合、相互作用を示すのに用いることができる。第二のピーク強度はLiイオン濃度のイミド環との比率にほぼ比例し、ポリイミドと塩との間の相互作用の程度を推量するのに用いることができる。
【0061】
図5aは、例示用のポリイミドのとして、Li塩および溶媒を添加していない、図1cで示すポリイミドのFTIRデータである。イミド環に関係する吸収ピークは、約1778cm-1と1721cm-1およびベンゼン環の730cm-1に現れる。このポリイミドは1630cmと1690cm-1の間に検出可能な吸収ピークを示さない。
【0062】
LiPF6、LiBOB、LiIおよびLiTFSiを含む汎用のLi塩は、1630cmと1690cm-1の間に吸収を示さない。図5bは、1630cmと1690cm-1の間に赤外吸収のないことを確認するLiBOBのFTIRを示す。
【0063】
図5cは、図1cで示すポリイミドとLiBOBとが結合したFTIRを示す。得られたポリイミド電解質は、約1672cm-1の第一のピークおよび1640cm-1の第二ピークに非常に強いダブレットを示す。
【0064】
従って、本発明による、例示的PMEからのFTIR測定によって、リチウム塩がポリイミドのイミド環と錯体を形成する証拠が提供される。このことは、ポリイミド/リチウムとの塩形成が、乾燥膜において明瞭な構造または結晶をもたない主たる理由の1つであろう。結晶がないことは、フラットDCSトレースによって示すことができる。この証拠は、自立膜であれ上塗りした膜であれ、PME膜は光学的に透明であるので、リチウム塩とポリイミド間の相互作用からも見出された。
【0065】
PMEは広範囲な用途に使用できる。リチウムイオン陰極またはリチウム金属陰極から形成される1次電池および2次電池の両方が本発明を用いて形成することができる。PMEは超コンデンサーおよび他の用途にも使用できる。
【0066】
ポリイミドは一般に、1つまたはそれ以上のジアミンモノマーと1つまたはそれ以上の酸二無水物モノマーとを段階的に縮合重合して製造される。好ましいジアミンと酸二無水物を図6に示す。
【0067】
モノマー反応剤の純度が重要であることが分かっている。芳香族ジアミンは空気に敏感であることが知られている。従って、精製プロセスは一般に、酸化されたジアミン材料の部分を除去することを含んでいる。精製後は、芳香族ジアミンは典型的に白色になる。しかしながら、完全に純粋なジアミンは達成するのは困難であり、通常不必要である。アルコールと水の混合物からジアミンを再結晶することが効率的かつ十分であることが分かっている。集められた結晶は好ましく減圧下で乾燥される。なぜなら結晶化のために使用した水が室温では簡単に取り除けない理由からである。
【0068】
酸二無水物もまた、精製するのが好ましく、少なくとも2つの方法を用いて精製することができる。好ましい精製法は無水酢酸から再結晶するものである。無水酢酸は閉じて活性な無水物環になる。しかしながら、生成した酢酸を除去するのは時々困難である。残留酢酸を除去するためエーテルまたはMTBEを使用できる。酸二無水物の結晶は一般に、真空オーブン内で乾燥する必要がある。代わる方法として、開いた無水物環を除去するために無水エタノールで結晶を迅速に洗浄し、真空オーブン内で洗浄した粉末をすばやく乾燥する方法である。この方法は、精製前の純度が少なくとも96%であればBPDAの精製に役立つ。
【0069】
縮合反応によりポリアミック酸の段階になる。1モルのジアミンが約1.005から1.01等量の酸二無水物と反応する。酸二無水物試薬が反応生成物の末端基を決定するのを確実にするために、過剰な酸二無水物が一般に好ましく用いられ、過剰な酸二無水物が、ポリマー製品の安定性を最大にするために知られたポリマー鎖を酸二無水物末端基で封鎖するのを確実にしている。加えて、そのような過剰は、微量の水が酸二無水物基と反応できて帳消しになる。
【0070】
溶液はNMP溶媒に約15から20重量%濃度が好ましい。通常、ジアミンを最初に、すべてのジアミンに必要ではないが好ましくは、窒素下で溶解させる。それから酸二無水物を添加する。大規模な反応では、酸二無水物を分けて添加するのが好ましいが、その理由は反応熱が幾分あり、温度を40℃未満に保つのが望ましいからである。例えば、50グラムの小規模では、初期に十分撹拌があれば、一度に酸二無水物を添加することもできるであろう。
【0071】
酸二無水物は一般に、ジアミンよりずっとゆっくり溶解する。小規模反応の場合、反応を実施する最良かつ最も簡単な方法はポリテトラフルオロエチレン製密封蓋付の円筒状の瓶を用いることである。この瓶は初期に手で揺り動かし、それから低速で回転するミルの上に乗せて瓶をゆっくりと回転させる。反応は室温で2〜12時間かけて最良に進行する。初期反応が完了すると、完了は実質的に一定の溶液の色と粘度から明らかになるが、溶液はイミド閉環ができる状態である。
【0072】
ポリアミック酸からポリイミドを形成する化学反応は、イミド環当たり無水酢酸1.1等量と閉環触媒としてピリジンを1等量で実施される。ピリジンを加えて混合されるまで回転を続けるのが好ましい。無水酢酸はアミック酸ポリマーの一部を沈殿させることがある。
【0073】
ポリマーは加熱前に再溶解すべきである。注意深く瓶を、80℃を超え90℃を越えない温度で加熱する必要がある。オーブンを使用し、時々瓶を取り出して振り混ぜるのが最良である。加熱は、ずっと加熱して60分間実施するか、または色の変化が完了するまで実施する。瓶を回転するミルに置き、回転させながら冷却する。溶液が室温に戻ると、NMPに溶解した完全にイミド化したポリマーとなる。しかしながら、溶液は一般に、幾分かの残留ピリジン、酢酸をも有し、いくらかの無水酢酸を含むことがある。溶液は適正な期間安定であると期待される。
【0074】
小規模反応から製品を集める好ましい方法は、ポリマーをメチルアルコールで沈殿させることである。これにより、溶媒負荷と反応しなかった微量のモノマーを除去する。測定した粘度に関連して、重合の質を評価するのにも用いられる。良好な高分子量のポリイミドはメチルアルコールに、ほとんどまたは曇りがなく清浄に沈殿する。粘度は高くなくてはならない(例、8,000〜10,000cp)。
【0075】
沈殿したポリマーは好ましくは、ピリジンの臭いが僅かになるまで2回以上洗浄する。それからポリマーはフード内で数時間風乾し、それから真空内で125℃、一昼夜乾燥する。メチルアルコールの容量は好ましくはポリマー100グラム当たり1ガロンである。
【0076】
大規模のときには、溶媒または微量材料を除去するのに水を使用する。しかしながら、この目的に水はメチルアルコールよりも効率が良くないと考えられる。最後にメチルアルコールで浸漬するには、水を大量のポリマーに用いた場合、乾燥前に加えるのが好ましい。
【実施例】
【0077】
本発明を以下の具体的な実施例によってさらに説明する。実施例は説明のためだけに提供されるのであって、本発明の範囲または主旨を制限するように意図したものでは決してない。
【0078】
〔実施例1〕
(本発明による例示のPMEに比較して市販のポリイミド/塩/溶媒の光学的透明性)
この実施例の目的は、可視光の高レベルの光学的透過性によって実証されるように、リチウム塩と強い相互作用をもつポリイミドから形成されるPMEの均一性の本質を明らかにすることである。PME膜は、図1b、1cおよび1mで示すポリイミドから生成されるが、一方、マトリミド(Matrimid)5218p/塩/溶媒は比較のために生成した。PMEおよびマトリミドベースの膜はNMPから透明なポリエチレンテレフタレート支持フィルム上に成形し、真空オーブン内、120℃で3時間乾燥して作成された。残存溶媒量は約4重量%であった。PME組成およびマトリミド配合はすべて、ポリイミド32%、LiTFSi塩64%で、残りは少量の溶媒であった。すべての測定は540nm光を用いて室温で実施した。
【0079】
【表1】
【0080】
上記表から実証されるように、マトリミドのポリイミドはリチウム塩濃度が64%のとき、透明な均一な組成を形成しない。さらに、マトリミドのポリイミドは実質的により低い塩濃度でも、例えば、ポリイミドによりもたれらされたイミド環当たり0.5モルのリチウム塩濃度でも透明で均一な組成を形成しない。ポリイミドによりもたれらされたイミド環当たり0.5モルまたはそれより低いリチウム塩濃度を含むポリイミドは一般に、電気化学的セル用の有用な電解質セパレーターとなりえるに十分な最小のイオン導電率が欠けている。
【0081】
図1b、1cおよび1mで示すポリイミドのデータが上述されているだけであるが、図1aから1mで示すポリイミドはすべて、上で示したポリイミド(b)、(c)および(m)と同じように、光学的性質を有する均一で透明な膜を形成する。このPME性質は最大の膜安定性とイオン導電率に望まれるものである。
【0082】
〔実施例2〕
本発明によるPMEの形態を評価するために走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮った。図7は、PMEの2枚の(2)SEM写真であり、それぞれ実質的に欠陥が無く、細孔が無い膜を証拠づけている。示したPME膜の厚みは両方とも約75μmであった。
【0083】
本発明の好適な実施態様を例証し説明してきたが、本発明はそのように限定されないのは明らかであろう。数多くの改善、修正、変化、置換および同等物は、特許請求の範囲に記載する本発明の精神および範囲を逸脱することなく当業者には考えつくであろう。要約すると、本発明の実施態様1は、ポリマーマトリクス電解質(PME)を提供するが、それはポリイミド、前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの溶媒、すべてが混合され、前記PMEが実質的に光学的に透明であることを含む。
【0084】
第2の実施態様は、前記PMEが540nmで前記PMEの1mil膜を通して少なくとも95%の光学的透明性を与える実施態様1のPMEである。第3の実施例は、前記電解質が540nmで前記PMEの1mil膜を通して少なくとも99%の光学的透明性を与える実施態様1のPMEである。第4の実施態様は、前記リチウム塩が、LiCl、LiBr、LiI、LiBOB、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2およびリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSi)からなる群から選択される実施態様1のPMEである。本発明の第5の実施態様は、前記ポリイミドのイミド環当たり繰り返し単位の重量が350以下である実施態様1のPMEである。本発明の第6の実施態様は、前記ポリイミドのイミド環当たり繰り返し単位の重量が300以下である実施態様1のPMEである。第7の実施態様は、前記ポリイミドのイミド環当たり繰り返し単位の重量が250以下である実施態様1のPMEである。第8の実施態様は、前記ポリイミドが、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)およびジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒に25℃で溶解する実施態様1のPMEである。第9の実施態様は、前記PMEのイオン導電率が25℃で少なくとも1×10-4S/cmである実施態様1のPMEである。第10の実施態様は、前記PMEのイオン導電率が25℃で少なくとも3×10-4S/cmである実施態様1のPMEである。第11の実施態様は、前記リチウム塩の濃度が前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり0.5から2.0モルLiである実施態様1のPMEである。第12の実施態様は、前記リチウム塩の濃度が前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり1.2から2.0モルLiである実施態様1のPMEである。第13の実施態様は、前記塩および前記ポリイミドが1630と1690cm-1の間にいかなる吸収ピークを与えず、前記PMEは約1630と1690cm-1の間に少なくとも1つの吸収ピークを与える実施態様1のPMEである。
【0085】
第14の実施態様は、ポリマーマトリクス電解質(PME)を形成する方法であって、
ポリイミドを少なくとも1つの溶媒に溶解する工程と、
前記ポリイミドと前記溶媒に、前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩を加える工程とを含み、前記ポリイミド、前記塩および前記溶媒が混合状態になり、前記PMEが実質的に光学的に透明であるPMEを形成する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1a−1m】本発明の実施態様による、数種の適切なポリイミドの繰り返し単位構造を示す。
【図2】本発明の実施態様による、図1mに示すポリイミド、LiTFSi塩(2.2×)およびガンマブチロラクトン(GBL)溶媒を含むPMEの20.5℃におけるイオン導電率と得られた膜組成を示す表である。
【図3a−3d】は、図1mに示すポリイミドおよびリチウム塩LiTFSi(2.2×)を含むPMEのイオン導電率を、TMS、PC、GBL、NMP溶媒それぞれに対し、溶媒負荷と温度の関数としたプロットである。
【図4】図1mに示すポリイミドおよびリチウム塩LiTFSi(2.2×)を含むPMEのイオン導電率を、溶媒がGBLの場合の20℃での、溶媒/ポリイミドの比率の関数としたプロットある。
【図5a】Li塩また溶媒を添加していない例示的なポリイミドのFTIRデータである。
【図5b】例示的なLi塩のFTIRデータである。
【図5c】FTIRデータを図5aで示した例示的なポリイミドと、FTIRデータを図5bで示した例示的なLi塩を混合したFTIRデータであり、1630cm-1と1690cm-1との間でダブレット吸収ピークの出現を証明するものである。
【図6】本明細書で示すポリイミドを作成するため使用できる酸二無水物および芳香族ジアミンを含む表である。
【図7】欠陥のないPMEを証明するSEMである。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図1f】
【図1g】
【図1h】
【図1i】
【図1j】
【図1k】
【図1l】
【図1m】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に電解質に関し、より具体的にはポリイミド、リチウム塩および溶媒の均一な混合物である光学的に透明なポリイミドに基づく電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の性能因子の多くは選択される電解質セパレーター、および選択された電解質と使用される陽極および陰極材料との相互作用に関係する。すべての電池は電解質が必要であり、それが高いイオン導電率および、温度と電位の広範囲にわたる電気化学的安定性を与える。イオン導電率は電解質の最も重要な性質の1つである。一般的に、高イオン導電率によって電池性能は改良される。従って、重要な研究は、電気化学的セルに使用する電解質のイオン導電率を高める方法の開発に集中してきた。
【0003】
リチウム電池で用いる電解質は、液体またはポリマーに基づく電解質でも可能である。液体電解質を含むリチウム電池は数年前に市場に出された。液体電解質のリチウム2次電池は最近、ノート型パソコン、ビデオカメラ、携帯電話のような用途に大量生産されている。しかしながら、液体電解質技術のリチウム電池はいくつかの重大な欠点がある。その欠点は液体電解質を使用することによる価格と安全性に関係する。液体電解質は一般に、硬く密封した金属缶にパッケージする必要があり、その結果エネルギー密度が減少することになる。加えて、安全性の理由から、液体電解質のリチウムイオン2次電池およびリチウム金属の1次電池はある不正な使用条件、例えば、外部または内部の過熱によって引きおかされる内圧に大きな増加などが発生したときに自動的に通気するように設計されている。もしセルが過大な圧力下に通気されないと、液体Liセルに用いられる液体電解質は非常に燃えやすいので爆発することがありえる。
【0004】
固体ポリマー電解質のリチウム電池は液体電解質のリチウム電池の進化した代替である。一般に、固体ポリマー電極はポリマーの空隙に溶媒と塩を閉じ込めて、媒体にイオン導電性をあたえるゲル状電解質である。典型的なポリマー電解質は、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエーテルベースポリマーおよびゲルを形成する他のポリマー、例えば、ポリアクリルロニトリル(PAN),ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ弗化ビニリデン(PVDF)などからなる。一般にポリマー電解質は電池の陽極と陰極膜間に挿入されるセパレーターの働きがある。
【0005】
ポリマー電解質は一般に不揮発性物で正常な作業条件では一般に液漏れをしないので、ポリマー電解質のリチウム電池は、液体電解質のリチウム電池よりも本質的に安全である。さらに、ポリマー電解質では、液体電解質のリチウム電池の作業に一般的に要求される通気およびパッケージ圧制御の必要がない。それゆえ、ポリマー電解質では、金属樹脂袋のような柔軟なケースを使用できるので、液体電解質の缶型Li電池と比較して、重量および厚みの面で改良になる。
【0006】
リチウム電池の性能因子の多くは、電解質の選択および、選択した電解質と使用する陽極および陰極材料との相互作用とに関連する。一般に、高い電解質イオン導電率は改良された電池性能に結びつく。ゲルポリマー電解質のイオン導電率は25℃で約10-4S/cmもの高い値が報告されている。しかしながら、電池用途によっては、ポリマー電解質のイオン導電率がさらにより高い値に到達することが望まれている。加えて、ポリマー電解質と陰極および陽極材料との電気化学的安定性を高めて電池の信頼性のほか、貯蔵とサイクル特性を改善するのも望まれるであろう。
【0007】
ゲルポリマー電解質が液体電解質より、安全性と製造の点で優れているが、安全性の問題は依然残る。なぜならゲルポリマーはその空隙に溶媒を閉じ込めているが、過酷な条件(例、熱および/または圧力)下で、溶媒が開放され被害を起こすからである。ゲルポリマー電解質は、低温で一般に凍結し、高温では他の電池部品と反応したり、溶融したりするなどの理由で広範囲で働かないのが一般的である。さらに、電極が不安定で、それによるサイクル特性が悪く、特に金属リチウム含有陰極に対してであるが、これが理由からゲルポリマー電解質で形成される電池への可能な応用が制限される。
【0008】
特性を改良するために、既存のものに代わるポリマー材料が入手可能なポリマー選択にわたって精力的に検討されてきた。例えば、グスタソン(Gustafson)らの米国特許第5,888,672号(略672特許)によると、ポリイミド電解質とそれを用いた室温および広い温度範囲で作動する電池が開示されている。開示されたポリイミドは数種の溶媒に溶解し、実質的に非晶質である。リチウム塩と混合すると、得られたポリイミドに基づく電解質は驚くほど高いイオン導電率となる。672特許で開示された電解質はすべて光学的に不透明であり、これは電解質を構成する各種成分の相分離の証しである。672特許で開示された電解質はポリマー電解質を形成するのに用いることができ、従来のゲルポリマー電解質よりも作動温度範囲が改良され、製造が簡便で、安全性が改良されるが、もし電解質の安定性およびイオン導電率が改良されれば、有用であろう。
【特許文献1】米国特許第5,888,672号明細書
【発明の開示】
【0009】
ポリマーマトリクス電解質(PME)は、ポリイミド、ポリイミドによってもたらされたイミド環モル当たり、少なくとも0.5モルのリチウム濃度の少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの溶媒を含み、すべてが混合される。PMEは高レベルの光学的透明性で証明されるように一般的に均一である。本明細書で用いられるように、PMEは「実質的に光学的に透明」であると称する場合、それは、540nmの光を用い、規格化した1milの膜を透過する標準濁度測定によって、PMEが少なくとも90%透明、好ましくは少なくとも95%、および最も好ましくは少なくとも99%透明であることを示す。
【0010】
リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiBOB、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2およびリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSi)からなる群から選択できる。リチウム塩の濃度がポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり0.5から2.0モルLiであり、またはポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり1.2から2.0モルLiである。
【0011】
ポリイミドのイミド環当たり繰り返し単位の重量は350以下、300以下、250以下が可能である。ポリイミドは、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)およびジメチルホルムアミド(DMF)なる群から選択される少なくとも1つの溶媒に25℃で溶解することができる。
【0012】
PMEのイオン導電率が25℃で少なくとも1×10-4S/cm、好ましくは少なくとも3×10-4S/cmである。PMEは約1630と1690cm-1の間に少なくとも1つの吸収ピークを与えるが、しかし塩、ポリイミドいずれもこの範囲にいかなる吸収ピークを与えない。
【0013】
ポリマーマトリクス電解質(PME)を形成する方法は、ポリイミドを少なくとも1つの溶媒に溶解する工程、ポリイミドおよび溶媒に、ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩を加える工程を含み、ポリイミド、塩および溶媒が混合状態になる。PMEは各成分の相分離がないことを証明する実質的に光学的に透明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、ポリイミド、少なくとも1つの塩および少なくとも1つの溶媒を含む実質的に光学的に透明な電解質セパレーターマトリクスを記述する。溶媒は一般に、低分子量、低粘度液体で、低濃度でポリイミドを膨潤させ、十分な高濃度でポリイミド、塩および溶媒を均一な混合状態にする。本明細書で用いるように、実質的に光学的に透明な電解質マトリクスは、「ポリマーマトリクス電解質」またはPMEと称する。PMEは電池、超コンデンサーおよび他の用途に用いることができる。
【0015】
電池に関して、PMEはリチウムイオンおよびリチウム金属含有電池の両方に使用できる。ゲルポリマー電解質と違って、一度PMEが形成されると、一般的に自由な溶媒または検出可能な細孔はない。例えば、50A解像力をもつSEMを用いてもPME内に細孔は検出されない。その代わりに、溶媒はポリマーおよびリチウム塩と、均一で実質的に光学的に透明なマトリクス中に一体化している。なお、ポリマーが単に機械的な支えをするだけの従来のゲルポリマーと異なり、PMEを構成するポリマー、塩および溶媒はすべてイオン伝導性に機能する。
【0016】
PMEは高電流容量、サイクル安定性を与え、そしてこの性能は広範囲な温度、例えば、少なくとも−40℃から100℃まで保持する。例えば、PMEを含む電池は開回路電圧および容量がわずかに変化するが、クレジットカード製造時の熱積層プロセスで一般に用いられる条件または、さらに代表的な射出成形プロセスのような、高温および高圧に耐える。
【0017】
本明細書で用いられるように、用語「実質的に光学的に透明」とは、540nmの光を用い、規格化した1milの膜を透過する標準濁度測定によって、材料が少なくとも90%透明、好ましくは少なくとも95%、および最も好ましくは少なくとも99%透明であることを示す。本発明により形成されるPMEの光学的透明性のデータはこれらの測定条件において実施例1に示されるが、1mil(規格化)PME膜を通して少なくとも99%の光学的透明性を実証している。PMEの高レベルの光学的透明性によって、いかなる有意な相分離が膜の光学的透明性を大きく減ずるであろう各成分(ポリマー、塩および溶媒)を含むPMEの均一性を証明している。
【0018】
本発明による塩とポリマーとの相互作用が一般的に高度に光学的に透明な膜を作り出す。溶媒の添加によって一般に膜の光学的透明性は変化しない。塩の濃度が高くなると、塩が分離相を形成し始める点に至る。その点において、PME膜はその光学的透明性を失い始める。
【0019】
PMEは一般に、1つまたはそれより多いポリイミドに基づいており、他のポリマーベース電解質と違って、イミド環および他の極性基の存在によりイオン導電率に機能する。リチウム塩と錯体をつくりイオン導電性に機能することができる官能基をもつ高度な極性基を含む他のポリマータイプとして、ポリベンズイミダゾールおよびポリアミドイミドが挙げられる。従って、これらのポリマータイプもPMEを形成する際に有用な種に含めることができる。
【0020】
ポリイミドはジアミンと酸二無水物とが初期にポリアミック酸中間体を形成する縮合反応の反応生成物である。ジアミンと酸二無水物試薬の一方または両方が、ジアミン種の混合物または酸二無水物種の混合物でもよい。ポリアミック酸中間体は次に完全にイミド化されたポリイミドに転換される。
【0021】
このように形成され得られるポリイミドの性質は特定のジアミンモノマーおよび酸二無水物モノマーの選択に依存する。ポリイミドは一般に知られているように、高い耐熱性、耐薬品性、200℃から400℃を超える高いガラス転移温度を有している。
【0022】
本発明は特許672で開示されたものと異なるポリイミドを同定し、これらの異なるポリイミドのなかには溶媒の添加により、PMEの形成になり得ることを見出した。本明細書で同定したポリイミドのいくつかは新規に合成したポリマーを表す。特許672で開示されたポリマーと異なり、本明細書で開示したポリマーは、適当な濃度の塩と溶媒が結合して実質的に均一なマトリクス材料(PME)を形成する。均一性は得られた高レベルの光学的透明性によって証明される。対照的に、特許672で開示された電解質は、各成分の相分離を示唆する不透明性で証明されるように、不均一な混合物である。
【0023】
本発明者らは、特定のポリマー因子とイオン導電率とを定性的に関係づけて、PMEの形成に用いる改良されたポリイミドを同定し合成した。イミド環密度は、リチウム塩を負荷させると、ポリイミド膜が溶媒の無い状態であっても十分なイオン導電率を示す理由を説明できると考えられる。イミド環当たり繰り返しの重量は、イミド環密度の1つの指標であり、各繰り返し単位内で、各ポリイミドの全繰り返し単位の分子量をイミド環の数で除して計算される。
【0024】
イミド環は、その環によって与えられる高い電子密度の理由から、材料に高い誘電率に相当するものを与えることができる。従って、イミド環とリチウムイオンとの相互作用がPMEのイオン導電率を決定する因子であると考えられる。それゆえ、PMEとして使用するために改良するポリイミドは、一般的にさらに以下の点に考慮して選択される。最初に、あるポリイミド中の分子繰り返し単位当たりイミド環の数を計算することによって(スルホン、カルボニル、シアン化物のような他の高い極性基はより少ない程度で)選択する。単位重量当たりに存在するイミド環機能が多いほど、ポリマーの相当する平均誘電強度が高い。相当する誘電強度が高い程、一般に塩との相互作用の改良につながると考えられ、PMEのイオン導電率の改良ができる。
【0025】
代わりに、ポリイミド中のイミド環の相対的濃度を比較するため、イミド環当たり繰り返しの重量と称するイミド環密度の逆数を概算することができる。イミド環当たりの繰り返しの重量が減少するにつれて、イミド環は、全体として繰り返し単位に対して、ますます、より大きな寄与となる。その結果、イミド環当たり繰り返しの重量が減少するにつれ、ポリイミドの相当する誘電率およびイオン導電率は一般に増加する。
【0026】
高いヘリウム透過率があるポリイミドは一般的により高いイオン導電率を与えて、それゆえ、より良いPMEを形成することができる。本発明による大半のポリイミドで調べられた25℃でのHe透過率の測定値は少なくとも20barrersである。He透過率が25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、または80barrersまたはそれ以上も可能である。
【0027】
ヘリウム透過率は以下の提案されている方法で測定することができる。厚み(l)、面積(A)の所定の膜を通してガス成分のガス透過率(GP)は、膜に圧力(p)をかけて決定できるが、この圧力はガス成分の一次圧から二次圧を引いた差圧であり、標準条件(STP)で膜を透過する定常状態のガス流量(f)を測定することにより決定できる。
【0028】
GP=(fl)/(Ap)
【0029】
GPの好適な単位は、(cm2)(sec)-1(cmHg)、ここで1barrerはGPに1010を乗じた単位として定義される。
【0030】
PMEの最大イオン導電率は一般的に、ポリイミド/塩/溶媒の組み合わせが完全に均一で透明なマトリクスを創造する場合に生じると考えられる。相分離はPME内にねじれを増加させる理由から、いかなる相分離はイオン導電率の値を減じると推定される。
【0031】
ある温度においてPMEの最大の電解質導電率は一般に、ポリイミド/塩/溶媒のマトリクスが特定範囲の比率を有するときに生じる。最適な塩濃度は一般に、ポリイミドに対しイミド環のモル当たり0.5から2.0モルLiの範囲にある。少なすぎる塩は一般に、電荷移動に寄与する十分な数のイオンを提供しない。多すぎる塩は一般に、不安定な相につながり、ポリイミドの析出をもたらす可能性があり、その結果、光学的透明性の損失で明らかにできる、均一性を失うことになる。
【0032】
溶媒はポリマーに対し膨潤剤の役割をもち、骨格鎖を少し引き離して、より大きなイオン拡散係数を可能とすると考えられる。また、溶媒はイオンの溶媒和キャリヤとして働く。典型的に、溶媒は選択した電池のタイプの制限範囲内で安定でもあるものが選択される。例えば、リチウムイオンタイプの電池の場合、溶媒はリチウム金属の還元電位まで安定でなければならない。溶媒の量は希望する導電率あるいは、ある要求される温度でマトリクスの軟化点に依存して最適化できる。溶媒は、ガンマブチロラクトン(GBL)、プロピレンカーボネート、N−メチルピロリジノン(NMP)、テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド(TMS)、ポリカーボネート(PC)およびジメチルホルムアミド(DMF)を含む群から選択することができる。
【0033】
図1a〜1mは、本発明の実施態様による、各種ポリイミドの繰り返し単位構造を例示する。ポリイミドAと称するポリマーの繰り返し単位は図1aに示される。このポリイミドはPMDA[89−32−7]とTMMDA[4037−98−7]との反応でつくることができる。この高分子量のポリマーはNMPにある限られた時間溶解するゆえ、リチウム塩含有電解質を製造することはできなかった。
【0034】
本明細書でポリイミドBと称するポリマーの繰り返し単位は図1bに示される。このポリイミドは90モル%のPMDA[89−32−7]、10モル%の6FDA[1107−00−2]の酸二無水物およびジアミンTMMDA[4037−98−7]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解した。
【0035】
本明細書でポリイミドCと称するポリマーの繰り返し単位は図1cに示される。このポリイミドは85.7モル%のPMDA[89−32−7]、14.3モル%の6FDA[1107−00−2]およびTMMDA[4037−98−7]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解した。
【0036】
本明細書でポリイミドDと称するポリマーの繰り返し単位は図1dに示される。このポリイミドは80モル%のPMDA[89−32−7]、20モル%のPSDA[2540−99−0]およびTMMDA[4037−98−7]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解した。
【0037】
本明細書でポリイミドEと称するポリマーの繰り返し単位は図1eに示される。このポリイミドはBPDA[2421−28−5]と3,6ジアミノズレン[3102−87−2]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解した。
【0038】
本明細書でポリイミドFと称するポリマーの繰り返し単位は図1fに示される。このポリイミドは6FDA[1107−00−2]と3,6ジアミノズレン[3102−87−2]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解し、またアセトン、GBL、DMAcおよびDMFにも溶解する。
【0039】
本明細書でポリイミドGと称するポリマーの繰り返し単位は図1gに示される。このポリイミドはPSDA[2540−99−0]とTMMDA[4037−98−7]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解し、GBLに溶解する。
【0040】
本明細書でポリイミドHと称するポリマーの繰り返し単位は図1hに示される。このポリイミドは6FDA[1107−00−2]とTMMDA[4037−98−7]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解し、アセトン、GBL、DMAcおよびDMFにも溶解する。
【0041】
本明細書でポリイミドIと称するポリマーの繰り返し単位は図1iに示される。このポリイミドはBPDA[2421−28−5]と4,4’−(9−フルオレニリデン)ジアニリン[15499−84−0]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解した。
【0042】
本明細書でポリイミドJと称するポリマーの繰り返し単位は図1jに示される。このポリイミドはPMDA[89−32−7]と33.3モル%のTMPDA[22567−64−3]および66.7モル%のTMMDA[4037−98−7]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解した。
【0043】
本明細書でポリイミドKと称するポリマーの繰り返し単位は図1kに示される。このポリイミドはPMDA[89−32−7]とDAMs[3102−70−3]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに短時間だけ溶解した。
【0044】
本明細書でポリイミドLと称するポリマーの繰り返し単位は図1lに示される。このポリイミドはPMDA[89−32−7]と4−イソプロピル−m−フェニレンジアミン[14235−45−1]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解した。
【0045】
本明細書でポリイミドMと称するポリマーの繰り返し単位は図1mに示される。このポリイミドはPMDA[89−32−7]と33.3モル%のDAMs[3102−70−2]および66.7モル%のTMMDA[4037−98−7]との反応でつくることができる。つくられたこのポリマーはNMPに20重量%でいつまでも溶解した。
【0046】
図1に示した例示的構造以外のポリイミド構造はPMEマトリクスを形成するのに用いる良い候補であってもよい。良いPIが示すべき特性は、例えば、NMPへの溶解度(または他の適切な溶媒)が少なくとも20重量%で、イミド環当たり繰り返し単位の重量が小さいことが第一の基準とできる。しかしながら、PI自体の溶解性または電池用途に適用可能な高いリチウム塩濃度で結合したときの溶液安定性は簡単には予測し難い。
【0047】
溶液中の挙動はポリマーの繰り返し単位構造を見るだけでは、一般的に確認することができない。しかしながら、それはポリマーが結晶化できるかどうか、または、固相で高いまたは低い密度をもつかどうか構造を見ることで決定できる可能性がある。ポリイミドは非結晶性で低密度繰り返し構造が好ましいが、それらは大抵非常に溶解性がある理由からである。しかしながら、メチル基からエチル基に単一の側鎖基を変えるだけでPIの性質を有益から無益に変えてしまうこともあり得る。電池用途用に代替ポリイミドを求める提案された重要な選別手順において、溶媒そのものに良い溶解性をもつと知られているポリイミドを選び、それにイミド環当たり0.5モルLiまたはそれ以上のリチウム塩の導入を試みて、(i)得られたPI/塩/溶媒の溶液が、数時間透明で均一かどうか、および(ii)その溶液から成形された膜が大半の溶媒(例、95%)を蒸発させたとき、実質的に透明な状態を保つかをチェックする。
【0048】
相対的に局所電子密度(例、ポリイミド中のイミド環に隣接する電子密度に匹敵することのできる)および多重結合共役による電荷分離のための電位を与えるポリイミド以外のポリマーは、ポリマー/塩の錯体を形成し、それらが溶解する場合、錯体形成に基づく特性吸収ピークを示すことができる。このように、FTIRのような吸収分光法は、PMEとして錯体形成の証拠を示すこれらのポリイミド以外の溶解ポリマーを同定するのに用いることができる。
【0049】
PMEは少なくとも1つのリチウム塩を含む。高導電性のPMEは一般に、ポリイミドポリマーに対しイミド環のモル当たりLiが溶液と共に約0.5から2.0モルのような高い塩含有量を用いて達成される。しかしながら、リチウム塩濃度はポリイミドのイミド環のモル当たりLiが、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4または、2.5モルであってもよい。
【0050】
塩濃度はまた本明細書において、塩の重量と塩を除くポリマー(例、ポリイミド)重量との比率で説明される。例えば、1×濃度は塩とポリマーの等量に対応し、2×塩濃度はポリマー濃度に比較して2倍の塩濃度に対応する。リチウム塩は一般に、業界公知のリチウム塩であってよい。好ましくは、リチウム塩は以下のものから選択される。LiCl、LiBr、LiI、Li(CLO4)、Li(BF4)、Li(PF6)、Li(AsF6)、Li(CH3CO2)、Li(CF3SO3)、Li(CF3SO2)2N、Li(CF3SO2)3、Li(CF3CO2)、Li(B(C6H5)4、Li(SCN)およびLi(NO3)、リチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSI)、LiBOB、およびLiSCN、好ましくは、塩はLi(PF6)またはLiTFSiである。
【0051】
図2は、本発明の実施態様による、20.5℃でのイオン導電率および図1mに示すポリイミド、LiTFSi塩(2.2×)およびGBL溶媒を含むポリイミドベースのPMEに対して、対応する膜組成を例証する表である。PME膜の室温でのイオン導電率値は、複素インピーダンス解析器を用いたインピーダンス測定値から計算した。インピーダンス解析器を用いた測定は1MHzから0.1Hzの周波数範囲で行った。膜抵抗値、Rはナイキストプッロトの実軸の切片として、または応答曲線の高周波数部分を実軸に外挿して得られた。測定は抵抗値が直接読み取れる10kHz固定周波数でLCRメーターでも実施した。イオン導電率は以下の公式を用いて計算した。
C(ジーメンス/センチメートル)=t/R×10-4
式中、tはミクロン単位の膜厚でRはオーム単位の膜抵抗測定値である。
【0052】
図2に示すように、試験したPMEは、37.9%GBLを含むPME膜の場合、20.5℃での最大イオン導電率は、1×塩濃度で約1×10-4S/cmで、2.2×濃度で4×10-4S/cmであった。図2の表の下段部分は1.0、1.4、1.8および2.2×塩濃度に対して、1×10-4S/cmの導電率を与えるために必要な最小溶媒レベルを示してある。
【0053】
図2の溶媒範囲は溶媒/PI比率として表しており、約1から約2の範囲にある。より低い値はある用途に対して、1×10-4S/cmのようなイオン導電率の最小値に設定される。最大の導電率は塩濃度に依存し、溶媒/PI比率が1.5から2.0の範囲で生じることが分かった。
【0054】
2に近い溶媒/PIの上限値はPMEの力学的性質で支配される。高溶媒/PI比率では、PME膜は柔らかく、電池セパレーターとしての広い温度範囲では使用できないかもしれない。リチウム金属電池に応用される場合、実用問題として、溶媒はリチウム金属に対して適度に安定なもの、高い沸点(>150℃)、選択した塩を溶解でき、PIを膨潤できるものが選択され、最後に、塩/溶媒の組み合わせ自体並びにPMEのために高導電率を促進する低粘度であるべきである。
【0055】
PI、塩および溶媒濃度をそれぞれ最適化するために、提案された手順を以下で説明する。第一段階において、NMPまたはGBLのような適当な溶媒に溶解するPI種が選択される。図1kに示すポリイミドを除く、図1に示すすべてのポリイミドはNMPに溶解する。第二段階において、望まれるリチウム塩が選択され、初期濃度は、例えば、選択したPIによりもたらされるイミド環当たり1つのリチウムイオンを与える重量比率のようにして選択される。それから溶媒濃度は、溶媒/PI比率を約0.8から2.0まで変化させ、その間で溶媒/PIデータの数点のイオン導電率を測定する。これを塩濃度がより高いおよび、より低い点で繰り返すことができる。一般に、2倍程度の範囲内で、同じようなイオン導電率を与える重量比率PI/塩/溶媒の幾つかの組み合わせがある。
【0056】
図3a〜3dは、図1mで示すポリイミドおよびリチウム塩LiTFSi(2.2×)を含むPMEのイオン導電率を、溶媒負荷および温度の関数とした、溶媒TMS、PC、GBL、NMPそれぞれについてのプロットである。一般に、これらの曲線は明瞭な導電率の最大値を示さない。なぜなら、塩含有量は2.2×で、その結果、最大イオン導電率を与えるのに必要な溶媒の量は非常に多くて一般に実用的でないからである。
【0057】
図4は、図1mで示すポリイミドおよびリチウム塩(LiTFSi;2.2×)を含むPMEのイオン導電率を、溶媒がGBLの場合について、20℃で溶媒/ポリイミド比率の関数としたプロットである。イオン導電率は溶媒のポリイミドに対する比率が増加するにつれ増加し、GBL/ポリイミド比率が、イオン導電率が7×10-4S/cmで飽和する約1.5になるまで増加するのが見られる。
【0058】
ポリイミドに基づくPMEのイオン導電率はポリイミドがアルカリ塩、特にLi塩と会合する程度に関係していると考えられている。この会合はポリイミドの極性基(例、イミドおよびベンゼン)と塩との錯体形成におそらく関係している。この会合の証拠は、塩と混合されたポリマーが示す吸収周波数を測定し、そのデータをポリイミドと塩とがそれ自体で示す吸収周波数と比較するのとによって、見出すことができる。
【0059】
ポリイミドの場合、特性吸収周波数はポリイミド骨格を構成するイミド環とベンゼン環に関係していると考えられる。これらの吸収ピークはイミド環の約1778cm-1および1721cm-1並びにベンゼン環の730cm-1である。LiPF6、LiBOB、LiIおよびLiTFSiを含む汎用のLi塩はこれらの周波数に吸収を示さないし、1630と1690cm-1の間にも、いかなる吸収ピークを示さない。しかしながら、Li塩と非常に強く会合したある種のポリイミドが、それらの塩と結合すると、得られたポリイミド/塩の膜は約1672cm-1の第一ピークおよび約1640cm-1の第二ピークに非常に強いダブレットの出現を示す。
【0060】
第一の吸収周波数は、ポリイミド膜中に高い濃度、例えば、少なくとも33重量%であると、塩濃度の増加によって有意には変化しない。それゆえ、このピークは、十分な塩濃度の場合、相互作用を示すのに用いることができる。第二のピーク強度はLiイオン濃度のイミド環との比率にほぼ比例し、ポリイミドと塩との間の相互作用の程度を推量するのに用いることができる。
【0061】
図5aは、例示用のポリイミドのとして、Li塩および溶媒を添加していない、図1cで示すポリイミドのFTIRデータである。イミド環に関係する吸収ピークは、約1778cm-1と1721cm-1およびベンゼン環の730cm-1に現れる。このポリイミドは1630cmと1690cm-1の間に検出可能な吸収ピークを示さない。
【0062】
LiPF6、LiBOB、LiIおよびLiTFSiを含む汎用のLi塩は、1630cmと1690cm-1の間に吸収を示さない。図5bは、1630cmと1690cm-1の間に赤外吸収のないことを確認するLiBOBのFTIRを示す。
【0063】
図5cは、図1cで示すポリイミドとLiBOBとが結合したFTIRを示す。得られたポリイミド電解質は、約1672cm-1の第一のピークおよび1640cm-1の第二ピークに非常に強いダブレットを示す。
【0064】
従って、本発明による、例示的PMEからのFTIR測定によって、リチウム塩がポリイミドのイミド環と錯体を形成する証拠が提供される。このことは、ポリイミド/リチウムとの塩形成が、乾燥膜において明瞭な構造または結晶をもたない主たる理由の1つであろう。結晶がないことは、フラットDCSトレースによって示すことができる。この証拠は、自立膜であれ上塗りした膜であれ、PME膜は光学的に透明であるので、リチウム塩とポリイミド間の相互作用からも見出された。
【0065】
PMEは広範囲な用途に使用できる。リチウムイオン陰極またはリチウム金属陰極から形成される1次電池および2次電池の両方が本発明を用いて形成することができる。PMEは超コンデンサーおよび他の用途にも使用できる。
【0066】
ポリイミドは一般に、1つまたはそれ以上のジアミンモノマーと1つまたはそれ以上の酸二無水物モノマーとを段階的に縮合重合して製造される。好ましいジアミンと酸二無水物を図6に示す。
【0067】
モノマー反応剤の純度が重要であることが分かっている。芳香族ジアミンは空気に敏感であることが知られている。従って、精製プロセスは一般に、酸化されたジアミン材料の部分を除去することを含んでいる。精製後は、芳香族ジアミンは典型的に白色になる。しかしながら、完全に純粋なジアミンは達成するのは困難であり、通常不必要である。アルコールと水の混合物からジアミンを再結晶することが効率的かつ十分であることが分かっている。集められた結晶は好ましく減圧下で乾燥される。なぜなら結晶化のために使用した水が室温では簡単に取り除けない理由からである。
【0068】
酸二無水物もまた、精製するのが好ましく、少なくとも2つの方法を用いて精製することができる。好ましい精製法は無水酢酸から再結晶するものである。無水酢酸は閉じて活性な無水物環になる。しかしながら、生成した酢酸を除去するのは時々困難である。残留酢酸を除去するためエーテルまたはMTBEを使用できる。酸二無水物の結晶は一般に、真空オーブン内で乾燥する必要がある。代わる方法として、開いた無水物環を除去するために無水エタノールで結晶を迅速に洗浄し、真空オーブン内で洗浄した粉末をすばやく乾燥する方法である。この方法は、精製前の純度が少なくとも96%であればBPDAの精製に役立つ。
【0069】
縮合反応によりポリアミック酸の段階になる。1モルのジアミンが約1.005から1.01等量の酸二無水物と反応する。酸二無水物試薬が反応生成物の末端基を決定するのを確実にするために、過剰な酸二無水物が一般に好ましく用いられ、過剰な酸二無水物が、ポリマー製品の安定性を最大にするために知られたポリマー鎖を酸二無水物末端基で封鎖するのを確実にしている。加えて、そのような過剰は、微量の水が酸二無水物基と反応できて帳消しになる。
【0070】
溶液はNMP溶媒に約15から20重量%濃度が好ましい。通常、ジアミンを最初に、すべてのジアミンに必要ではないが好ましくは、窒素下で溶解させる。それから酸二無水物を添加する。大規模な反応では、酸二無水物を分けて添加するのが好ましいが、その理由は反応熱が幾分あり、温度を40℃未満に保つのが望ましいからである。例えば、50グラムの小規模では、初期に十分撹拌があれば、一度に酸二無水物を添加することもできるであろう。
【0071】
酸二無水物は一般に、ジアミンよりずっとゆっくり溶解する。小規模反応の場合、反応を実施する最良かつ最も簡単な方法はポリテトラフルオロエチレン製密封蓋付の円筒状の瓶を用いることである。この瓶は初期に手で揺り動かし、それから低速で回転するミルの上に乗せて瓶をゆっくりと回転させる。反応は室温で2〜12時間かけて最良に進行する。初期反応が完了すると、完了は実質的に一定の溶液の色と粘度から明らかになるが、溶液はイミド閉環ができる状態である。
【0072】
ポリアミック酸からポリイミドを形成する化学反応は、イミド環当たり無水酢酸1.1等量と閉環触媒としてピリジンを1等量で実施される。ピリジンを加えて混合されるまで回転を続けるのが好ましい。無水酢酸はアミック酸ポリマーの一部を沈殿させることがある。
【0073】
ポリマーは加熱前に再溶解すべきである。注意深く瓶を、80℃を超え90℃を越えない温度で加熱する必要がある。オーブンを使用し、時々瓶を取り出して振り混ぜるのが最良である。加熱は、ずっと加熱して60分間実施するか、または色の変化が完了するまで実施する。瓶を回転するミルに置き、回転させながら冷却する。溶液が室温に戻ると、NMPに溶解した完全にイミド化したポリマーとなる。しかしながら、溶液は一般に、幾分かの残留ピリジン、酢酸をも有し、いくらかの無水酢酸を含むことがある。溶液は適正な期間安定であると期待される。
【0074】
小規模反応から製品を集める好ましい方法は、ポリマーをメチルアルコールで沈殿させることである。これにより、溶媒負荷と反応しなかった微量のモノマーを除去する。測定した粘度に関連して、重合の質を評価するのにも用いられる。良好な高分子量のポリイミドはメチルアルコールに、ほとんどまたは曇りがなく清浄に沈殿する。粘度は高くなくてはならない(例、8,000〜10,000cp)。
【0075】
沈殿したポリマーは好ましくは、ピリジンの臭いが僅かになるまで2回以上洗浄する。それからポリマーはフード内で数時間風乾し、それから真空内で125℃、一昼夜乾燥する。メチルアルコールの容量は好ましくはポリマー100グラム当たり1ガロンである。
【0076】
大規模のときには、溶媒または微量材料を除去するのに水を使用する。しかしながら、この目的に水はメチルアルコールよりも効率が良くないと考えられる。最後にメチルアルコールで浸漬するには、水を大量のポリマーに用いた場合、乾燥前に加えるのが好ましい。
【実施例】
【0077】
本発明を以下の具体的な実施例によってさらに説明する。実施例は説明のためだけに提供されるのであって、本発明の範囲または主旨を制限するように意図したものでは決してない。
【0078】
〔実施例1〕
(本発明による例示のPMEに比較して市販のポリイミド/塩/溶媒の光学的透明性)
この実施例の目的は、可視光の高レベルの光学的透過性によって実証されるように、リチウム塩と強い相互作用をもつポリイミドから形成されるPMEの均一性の本質を明らかにすることである。PME膜は、図1b、1cおよび1mで示すポリイミドから生成されるが、一方、マトリミド(Matrimid)5218p/塩/溶媒は比較のために生成した。PMEおよびマトリミドベースの膜はNMPから透明なポリエチレンテレフタレート支持フィルム上に成形し、真空オーブン内、120℃で3時間乾燥して作成された。残存溶媒量は約4重量%であった。PME組成およびマトリミド配合はすべて、ポリイミド32%、LiTFSi塩64%で、残りは少量の溶媒であった。すべての測定は540nm光を用いて室温で実施した。
【0079】
【表1】
【0080】
上記表から実証されるように、マトリミドのポリイミドはリチウム塩濃度が64%のとき、透明な均一な組成を形成しない。さらに、マトリミドのポリイミドは実質的により低い塩濃度でも、例えば、ポリイミドによりもたれらされたイミド環当たり0.5モルのリチウム塩濃度でも透明で均一な組成を形成しない。ポリイミドによりもたれらされたイミド環当たり0.5モルまたはそれより低いリチウム塩濃度を含むポリイミドは一般に、電気化学的セル用の有用な電解質セパレーターとなりえるに十分な最小のイオン導電率が欠けている。
【0081】
図1b、1cおよび1mで示すポリイミドのデータが上述されているだけであるが、図1aから1mで示すポリイミドはすべて、上で示したポリイミド(b)、(c)および(m)と同じように、光学的性質を有する均一で透明な膜を形成する。このPME性質は最大の膜安定性とイオン導電率に望まれるものである。
【0082】
〔実施例2〕
本発明によるPMEの形態を評価するために走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮った。図7は、PMEの2枚の(2)SEM写真であり、それぞれ実質的に欠陥が無く、細孔が無い膜を証拠づけている。示したPME膜の厚みは両方とも約75μmであった。
【0083】
本発明の好適な実施態様を例証し説明してきたが、本発明はそのように限定されないのは明らかであろう。数多くの改善、修正、変化、置換および同等物は、特許請求の範囲に記載する本発明の精神および範囲を逸脱することなく当業者には考えつくであろう。要約すると、本発明の実施態様1は、ポリマーマトリクス電解質(PME)を提供するが、それはポリイミド、前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの溶媒、すべてが混合され、前記PMEが実質的に光学的に透明であることを含む。
【0084】
第2の実施態様は、前記PMEが540nmで前記PMEの1mil膜を通して少なくとも95%の光学的透明性を与える実施態様1のPMEである。第3の実施例は、前記電解質が540nmで前記PMEの1mil膜を通して少なくとも99%の光学的透明性を与える実施態様1のPMEである。第4の実施態様は、前記リチウム塩が、LiCl、LiBr、LiI、LiBOB、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2およびリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSi)からなる群から選択される実施態様1のPMEである。本発明の第5の実施態様は、前記ポリイミドのイミド環当たり繰り返し単位の重量が350以下である実施態様1のPMEである。本発明の第6の実施態様は、前記ポリイミドのイミド環当たり繰り返し単位の重量が300以下である実施態様1のPMEである。第7の実施態様は、前記ポリイミドのイミド環当たり繰り返し単位の重量が250以下である実施態様1のPMEである。第8の実施態様は、前記ポリイミドが、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)およびジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒に25℃で溶解する実施態様1のPMEである。第9の実施態様は、前記PMEのイオン導電率が25℃で少なくとも1×10-4S/cmである実施態様1のPMEである。第10の実施態様は、前記PMEのイオン導電率が25℃で少なくとも3×10-4S/cmである実施態様1のPMEである。第11の実施態様は、前記リチウム塩の濃度が前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり0.5から2.0モルLiである実施態様1のPMEである。第12の実施態様は、前記リチウム塩の濃度が前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり1.2から2.0モルLiである実施態様1のPMEである。第13の実施態様は、前記塩および前記ポリイミドが1630と1690cm-1の間にいかなる吸収ピークを与えず、前記PMEは約1630と1690cm-1の間に少なくとも1つの吸収ピークを与える実施態様1のPMEである。
【0085】
第14の実施態様は、ポリマーマトリクス電解質(PME)を形成する方法であって、
ポリイミドを少なくとも1つの溶媒に溶解する工程と、
前記ポリイミドと前記溶媒に、前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩を加える工程とを含み、前記ポリイミド、前記塩および前記溶媒が混合状態になり、前記PMEが実質的に光学的に透明であるPMEを形成する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1a−1m】本発明の実施態様による、数種の適切なポリイミドの繰り返し単位構造を示す。
【図2】本発明の実施態様による、図1mに示すポリイミド、LiTFSi塩(2.2×)およびガンマブチロラクトン(GBL)溶媒を含むPMEの20.5℃におけるイオン導電率と得られた膜組成を示す表である。
【図3a−3d】は、図1mに示すポリイミドおよびリチウム塩LiTFSi(2.2×)を含むPMEのイオン導電率を、TMS、PC、GBL、NMP溶媒それぞれに対し、溶媒負荷と温度の関数としたプロットである。
【図4】図1mに示すポリイミドおよびリチウム塩LiTFSi(2.2×)を含むPMEのイオン導電率を、溶媒がGBLの場合の20℃での、溶媒/ポリイミドの比率の関数としたプロットある。
【図5a】Li塩また溶媒を添加していない例示的なポリイミドのFTIRデータである。
【図5b】例示的なLi塩のFTIRデータである。
【図5c】FTIRデータを図5aで示した例示的なポリイミドと、FTIRデータを図5bで示した例示的なLi塩を混合したFTIRデータであり、1630cm-1と1690cm-1との間でダブレット吸収ピークの出現を証明するものである。
【図6】本明細書で示すポリイミドを作成するため使用できる酸二無水物および芳香族ジアミンを含む表である。
【図7】欠陥のないPMEを証明するSEMである。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図1f】
【図1g】
【図1h】
【図1i】
【図1j】
【図1k】
【図1l】
【図1m】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリクス電解質(PME)であって、
ポリイミド、前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの溶媒、すべてが混合され、前記PMEが実質的に光学的に透明であるPME。
【請求項2】
前記PMEが540nmで前記PMEの規格化した1mil膜を通して少なくとも95%の光学的透明性を与える、請求項1に記載のPME。
【請求項3】
前記PMEが540nmで前記PMEの規格化した1mil膜を通して少なくとも99%の光学的透明性を与える、請求項1に記載のPME。
【請求項4】
前記リチウム塩が、LiCl、LiBr、LiI、LiBOB、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2およびリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSi)からなる群から選択される、請求項1に記載のPME。
【請求項5】
前記ポリイミドのイミド環当たり繰り返し単位の重量が350以下である、請求項1に記載のPME。
【請求項6】
前記ポリイミドのイミド環当たり繰り返し単位の重量が300以下である、請求項1に記載のPME。
【請求項7】
前記ポリイミドのイミド環当たり繰り返し単位の重量が250以下である、請求項1に記載のPME。
【請求項8】
前記ポリイミドがN−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)およびジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒に25℃で溶解する、請求項1に記載のPME。
【請求項9】
前記PMEのイオン導電率が25℃で少なくとも1×10-4S/cmである、請求項1に記載のPME。
【請求項10】
前記PMEのイオン導電率が25℃で少なくとも3×10-4S/cmである、請求項1に記載のPME。
【請求項11】
前記リチウム塩の濃度が前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり0.5から2.0モルLiである、請求項1に記載のPME。
【請求項12】
前記リチウム塩の濃度が前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり1.2から2.0モルLiである、請求項1に記載のPME。
【請求項13】
前記塩が1630と1690cm-1の間にいかなる吸収ピークを与えず、前記ポリイミドが1630と1690cm-1の間にいかなる吸収ピークを与えず、しかし、前記PMEは約1630と1690cm-1の間に少なくとも1つの吸収ピークを与える、請求項1に記載のPME。
【請求項14】
前記PMEが540nmで前記PMEの規格化した1mil膜を通して少なくとも95%の光学的透明性を与え、前記ポリイミドが、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)およびジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒に25℃で溶解する、請求項1に記載のPME。
【請求項15】
前記PMEのイオン導電率が25℃で少なくとも1×10-4S/cmであり、および前記塩が1630と1690cm-1の間にいかなる吸収ピークを与えず、前記ポリイミドが1630と1690cm-1の間にいかなる吸収ピークを与えず、前記PMEは約1630と1690cm-1の間に少なくとも1つの吸収ピークを与える、請求項14に記載のPME。
【請求項16】
前記ポリイミドのイミド環当たり繰り返し単位の重量が350以下であり、前記リチウム塩の濃度が前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり1.2から2.0モルLiである、請求項1に記載のPME。
【請求項17】
前記リチウムi塩が、LiCl、LiBr、LiI、LiBOB、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2およびリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSi)からなる群から選択され、前記PMEが540nmで前記PMEの規格化した1mil膜を通して少なくとも95%の光学的透明性を与える、請求項16に記載のPME。
【請求項18】
前記PMEが540nmで前記PMEの規格化した1mil膜を通して少なくとも99%の光学的透明性を与え、前記ポリイミドが、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)およびジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒に25℃で溶解する、請求項1に記載のPME。
【請求項19】
前記PMEのイオン導電率が25℃で少なくとも1×10-4S/cmである、請求項18に記載のPME。
【請求項20】
ポリマーマトリクス電解質(PME)であって、
リチウム塩と錯体をつくりイオン導電性に機能することができる官能基をもつ高い極性基を含むポリマー、少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの溶媒、すべてが混合され、前記PMEが実質的に光学的に透明であるPME。
【請求項21】
ポリマーが200℃〜400℃のガラス転移温度を有する、請求項20に記載のPME。
【請求項22】
ポリマーマトリクス電解質(PME)であって、
ポリイミドおよび前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩を含み、前記PMEが実質的に光学的に透明であるPME。
【請求項23】
前記PMEがさらに、リチウム金属の還元電位まで安定である溶媒を含む、請求項22に記載のPME。
【請求項24】
ポリマーマトリクス電解質(PME)であって、
リチウム塩と錯体をつくりイオン導電性に機能することができる官能基をもつ高い極性基を含むポリマーおよび少なくとも1つのリチウム塩を含み、前記PMEが実質的に光学的に透明であるPME。
【請求項25】
ポリマーが200℃〜400℃のガラス転移温度を有し、前記PMEがさらに、リチウム金属の還元電位まで安定である溶媒を含む、請求項24に記載のPME。
【請求項26】
ポリマーマトリクス電解質(PME)であって、
ポリイミド、前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの溶媒、すべてが混合され、前記PMEが540nmで前記PMEの規格化した1mil膜を通して少なくとも90%の光学的透明性を与えるPME。
【請求項27】
ポリマーマトリクス電解質(PME)であって、
ポリイミド、前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩を含み、前記PMEが540nmで前記PMEの規格化した1mil膜を通して少なくとも90%の光学的透明性を与えるPME。
【請求項28】
ポリマーマトリクス電解質(PME)であって、
ポリイミド、前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの溶媒、溶媒の重量が溶媒/ポリイミド比率を基に約1から約2で、前記ポリイミド、リチウム塩および塩がすべて混合され、前記PMEが実質的に光学的に透明であり、前記PMEのイオン導電率が25℃で少なくとも1×10-4S/cmであるPME。
【請求項29】
ポリマーマトリクス電解質(PME)であって、
ポリイミド、前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの溶媒、すべてが混合され、前記PMEが実質的に光学的に透明であり、50A解像力のSEM写真に基づいて細孔がない膜を膜形成してなるPME。
【請求項30】
電解質膜であって、
ポリイミド、前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの溶媒、すべてが混合され、前記膜が実質的に光学的に透明である電解質膜。
【請求項31】
電解質膜であって、
ポリイミド、前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの溶媒、すべてが混合され、前記膜が実質的に光学的に透明で結晶性を有しない電解質膜。
【請求項32】
ポリマー電解質膜であって、
ポリイミド、前記ポリイミドがN−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)およびジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒に25℃で溶解する、および
前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも1.2モルのリチウム濃度である少なくとも1つの混合されたリチウム塩を含み、
前記膜が540nmで規格化した1mil膜を通して少なくとも99%の光学的透明性を与え、前記PMEのイオン導電率が25℃で少なくとも1×10-4S/cmである、および
前記塩が1630と1690cm-1の間にいかなる吸収ピークを与えず、前記ポリイミドが1630と1690cm-1の間にいかなる吸収ピークを与えず、前記ポリマー電解質は約1630と1690cm-1の間に少なくとも1つの吸収ピークを与えるポリマー電解質膜。
【請求項33】
さらに溶媒を含む、請求項32に記載のポリマー電解質。
【請求項34】
ポリマーマトリクス電解質(PME)を形成する方法であって、
ポリイミドを少なくとも1つの溶媒に溶解する工程、
前記ポリイミドおよび前記溶媒に、前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩を加える工程、前記ポリイミド、前記塩および前記溶媒が混合状態となり、
PMEを形成するために膜を成形する工程を含み、前記PME実質的に光学的に透明であるPMEを形成する方法。
【請求項35】
(1)溶液をつくるためポリマー、溶媒およびリチウム塩を混合する工程、および(2)溶液から膜を成形する工程を含む、請求項34のポリマーマトリクス電解質(PME)を形成する方法。
【請求項1】
ポリマーマトリクス電解質(PME)であって、
ポリイミド、前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの溶媒、すべてが混合され、前記PMEが実質的に光学的に透明であるPME。
【請求項2】
前記PMEが540nmで前記PMEの規格化した1mil膜を通して少なくとも95%の光学的透明性を与える、請求項1に記載のPME。
【請求項3】
前記PMEが540nmで前記PMEの規格化した1mil膜を通して少なくとも99%の光学的透明性を与える、請求項1に記載のPME。
【請求項4】
前記リチウム塩が、LiCl、LiBr、LiI、LiBOB、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2およびリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSi)からなる群から選択される、請求項1に記載のPME。
【請求項5】
前記ポリイミドのイミド環当たり繰り返し単位の重量が350以下である、請求項1に記載のPME。
【請求項6】
前記ポリイミドのイミド環当たり繰り返し単位の重量が300以下である、請求項1に記載のPME。
【請求項7】
前記ポリイミドのイミド環当たり繰り返し単位の重量が250以下である、請求項1に記載のPME。
【請求項8】
前記ポリイミドがN−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)およびジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒に25℃で溶解する、請求項1に記載のPME。
【請求項9】
前記PMEのイオン導電率が25℃で少なくとも1×10-4S/cmである、請求項1に記載のPME。
【請求項10】
前記PMEのイオン導電率が25℃で少なくとも3×10-4S/cmである、請求項1に記載のPME。
【請求項11】
前記リチウム塩の濃度が前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり0.5から2.0モルLiである、請求項1に記載のPME。
【請求項12】
前記リチウム塩の濃度が前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり1.2から2.0モルLiである、請求項1に記載のPME。
【請求項13】
前記塩が1630と1690cm-1の間にいかなる吸収ピークを与えず、前記ポリイミドが1630と1690cm-1の間にいかなる吸収ピークを与えず、しかし、前記PMEは約1630と1690cm-1の間に少なくとも1つの吸収ピークを与える、請求項1に記載のPME。
【請求項14】
前記PMEが540nmで前記PMEの規格化した1mil膜を通して少なくとも95%の光学的透明性を与え、前記ポリイミドが、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)およびジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒に25℃で溶解する、請求項1に記載のPME。
【請求項15】
前記PMEのイオン導電率が25℃で少なくとも1×10-4S/cmであり、および前記塩が1630と1690cm-1の間にいかなる吸収ピークを与えず、前記ポリイミドが1630と1690cm-1の間にいかなる吸収ピークを与えず、前記PMEは約1630と1690cm-1の間に少なくとも1つの吸収ピークを与える、請求項14に記載のPME。
【請求項16】
前記ポリイミドのイミド環当たり繰り返し単位の重量が350以下であり、前記リチウム塩の濃度が前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり1.2から2.0モルLiである、請求項1に記載のPME。
【請求項17】
前記リチウムi塩が、LiCl、LiBr、LiI、LiBOB、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2およびリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSi)からなる群から選択され、前記PMEが540nmで前記PMEの規格化した1mil膜を通して少なくとも95%の光学的透明性を与える、請求項16に記載のPME。
【請求項18】
前記PMEが540nmで前記PMEの規格化した1mil膜を通して少なくとも99%の光学的透明性を与え、前記ポリイミドが、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)およびジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒に25℃で溶解する、請求項1に記載のPME。
【請求項19】
前記PMEのイオン導電率が25℃で少なくとも1×10-4S/cmである、請求項18に記載のPME。
【請求項20】
ポリマーマトリクス電解質(PME)であって、
リチウム塩と錯体をつくりイオン導電性に機能することができる官能基をもつ高い極性基を含むポリマー、少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの溶媒、すべてが混合され、前記PMEが実質的に光学的に透明であるPME。
【請求項21】
ポリマーが200℃〜400℃のガラス転移温度を有する、請求項20に記載のPME。
【請求項22】
ポリマーマトリクス電解質(PME)であって、
ポリイミドおよび前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩を含み、前記PMEが実質的に光学的に透明であるPME。
【請求項23】
前記PMEがさらに、リチウム金属の還元電位まで安定である溶媒を含む、請求項22に記載のPME。
【請求項24】
ポリマーマトリクス電解質(PME)であって、
リチウム塩と錯体をつくりイオン導電性に機能することができる官能基をもつ高い極性基を含むポリマーおよび少なくとも1つのリチウム塩を含み、前記PMEが実質的に光学的に透明であるPME。
【請求項25】
ポリマーが200℃〜400℃のガラス転移温度を有し、前記PMEがさらに、リチウム金属の還元電位まで安定である溶媒を含む、請求項24に記載のPME。
【請求項26】
ポリマーマトリクス電解質(PME)であって、
ポリイミド、前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの溶媒、すべてが混合され、前記PMEが540nmで前記PMEの規格化した1mil膜を通して少なくとも90%の光学的透明性を与えるPME。
【請求項27】
ポリマーマトリクス電解質(PME)であって、
ポリイミド、前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩を含み、前記PMEが540nmで前記PMEの規格化した1mil膜を通して少なくとも90%の光学的透明性を与えるPME。
【請求項28】
ポリマーマトリクス電解質(PME)であって、
ポリイミド、前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの溶媒、溶媒の重量が溶媒/ポリイミド比率を基に約1から約2で、前記ポリイミド、リチウム塩および塩がすべて混合され、前記PMEが実質的に光学的に透明であり、前記PMEのイオン導電率が25℃で少なくとも1×10-4S/cmであるPME。
【請求項29】
ポリマーマトリクス電解質(PME)であって、
ポリイミド、前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの溶媒、すべてが混合され、前記PMEが実質的に光学的に透明であり、50A解像力のSEM写真に基づいて細孔がない膜を膜形成してなるPME。
【請求項30】
電解質膜であって、
ポリイミド、前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの溶媒、すべてが混合され、前記膜が実質的に光学的に透明である電解質膜。
【請求項31】
電解質膜であって、
ポリイミド、前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの溶媒、すべてが混合され、前記膜が実質的に光学的に透明で結晶性を有しない電解質膜。
【請求項32】
ポリマー電解質膜であって、
ポリイミド、前記ポリイミドがN−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)およびジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒に25℃で溶解する、および
前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも1.2モルのリチウム濃度である少なくとも1つの混合されたリチウム塩を含み、
前記膜が540nmで規格化した1mil膜を通して少なくとも99%の光学的透明性を与え、前記PMEのイオン導電率が25℃で少なくとも1×10-4S/cmである、および
前記塩が1630と1690cm-1の間にいかなる吸収ピークを与えず、前記ポリイミドが1630と1690cm-1の間にいかなる吸収ピークを与えず、前記ポリマー電解質は約1630と1690cm-1の間に少なくとも1つの吸収ピークを与えるポリマー電解質膜。
【請求項33】
さらに溶媒を含む、請求項32に記載のポリマー電解質。
【請求項34】
ポリマーマトリクス電解質(PME)を形成する方法であって、
ポリイミドを少なくとも1つの溶媒に溶解する工程、
前記ポリイミドおよび前記溶媒に、前記ポリイミドによってもたらされたイミド環のモル当たり少なくとも0.5モルのリチウム濃度である少なくとも1つのリチウム塩を加える工程、前記ポリイミド、前記塩および前記溶媒が混合状態となり、
PMEを形成するために膜を成形する工程を含み、前記PME実質的に光学的に透明であるPMEを形成する方法。
【請求項35】
(1)溶液をつくるためポリマー、溶媒およびリチウム塩を混合する工程、および(2)溶液から膜を成形する工程を含む、請求項34のポリマーマトリクス電解質(PME)を形成する方法。
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6】
【図7】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2007−514272(P2007−514272A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532506(P2006−532506)
【出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/013296
【国際公開番号】WO2004/102705
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(505418180)ソリコア インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】SOLICORE,Incorporated
【住所又は居所原語表記】2700 Interstate Drive,Lakeland,FL 33805,U.S.A.
【出願人】(503431644)アヴェスター リミティッド パートナーシップ (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/013296
【国際公開番号】WO2004/102705
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(505418180)ソリコア インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】SOLICORE,Incorporated
【住所又は居所原語表記】2700 Interstate Drive,Lakeland,FL 33805,U.S.A.
【出願人】(503431644)アヴェスター リミティッド パートナーシップ (12)
【Fターム(参考)】
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