説明

ポリイミド無端ベルト及びその製造方法、並びに、画像形成装置

【課題】ポリイミド無端ベルト製造方法において、化学イミド化剤を気相にて作用させることで、焼成温度低減、・焼成時間短縮を実現すること。また、従来の高温での焼成のため発生するベルト表面のボイドなどの表面欠陥を低減しつつ、十分な強度などの特性を備える無端ベルトを得ること。また、ポリアミック酸溶液中に直接化学イミド化剤を添加しないことで、ポリアミック酸溶液の安定性を高め、工程信頼性の向上を図ること。
【解決手段】ポリイミド無端ベルト製造において、その前駆体であるポリアミック酸を円筒状基材上に塗布して、乾燥処理を行った後に、化学イミド化剤を気体にて作用させて焼成処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、これらの複合装置といった電子写真装置に用いるポリイミド無端ベルト及びその製造方法、並びに、それを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置は、導電性材料からなる感光体上に一様に電荷を形成し、変調した画像信号をレーザー光などで静電潜像を形成した後、帯電したトナーにより静電潜像を現像してトナー像とする。次いでこのトナー像を直接又は中間転写体を介して紙などの記録媒体に転写することにより画像を得る装置である。
【0003】
ここで、感光体上のトナー像を中間転写体に一次転写し、次いで中間転写体上のトナー像を紙などの記録媒体へ二次転写する方法、いわゆる中間転写方式を採用した画像形成装置に用いられる中間転写ベルトは、例えばポリフッ化ビニリデン(例えば、特許文献1)、ポリカーボネート(例えば、特許文献2)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体とポリカーボネートとのブレンド(例えば、特許文献3)などの熱可塑性樹脂にカーボンブラック等の導電剤を分散させた導電性無端ベルトが提案されている。
【0004】
さらに近年、この中間転写体を加熱することで記録媒体上のトナー像を定着せしめる方法、即ち中間転写及び定着方式が開示されている(例えば、特許文献4)。中間転写・定着方式は、トナー像を記録媒体へ中間転写体を介して二次転写せしめた後、この中間転写体を直接又は間接的に加熱することで、この中間転写体に接触している記録媒体上のトナー像を定着する方式であり、中間転写機構と定着機構が離別していた従来装置と比較して、装置の小型化、低コスト化が可能であるという利点を有する。
【0005】
ここで、中間転写及び定着方式に用いられるベルト材料には、駆動時の応力に耐える機械強度を有すると同時に、定着時に与えられる200℃近い熱に耐え得ることが要求される。この要請から、中間転写及び定着ベルトに用いられる材料には、高い機械強度と耐熱性を併有するポリイミド樹脂が適している。
【0006】
ポリイミド樹脂は、一般に不溶であるためにその前駆体であるポリアミック酸の溶液を塗布し、乾燥後に加熱してアミック酸基の脱水イミド化反応を行い、ポリイミドとして使用している。イミド化反応においては一般に300〜400℃の高い温度を必要とするため、エネルギー消費の点より問題があった。また、ポリアミック酸の脱水に伴い、塗膜表面ならびに塗膜中のボイドの発生や、脱水反応に伴う体積収縮により発生する応力により膜厚の均一性がとれないことや、抵抗値のばらつきが生じるなど、膜品質の上でも問題があった。
【0007】
この問題に対しては、一般に溶媒可溶性のポリイミド材料の使用が提案されている。可溶性ポリイミドは、分子中に屈曲性を持った構造や大きな分子構造からなる側鎖置換基を導入することで、剛直なイミド構造を有するにもかかわらず溶媒への溶解性を付与している。そのため、可溶性ポリイミド材料は、基材に溶液を塗工して溶媒を乾燥させるだけで、ポリイミド膜を形成することができるため、上記問題点を解決できる。
【0008】
しかしながら、可溶性ポリイミドはその分子構造に起因し、一般には力学強度が小さいため、伸び、破断などを起こしやく、ベルトとして使用するに不適なものであった。
【0009】
また、ポリアミック酸のイミド化を促進させるため、ポリアミック酸組成物中に3級アミン等を共存させて加熱する方法が開示されている(例えば特許文献5〜7)。
【0010】
しかしながら、一般にポリアミック酸を溶解させるための溶媒には、N−メチル−2−ピロリドンなどに代表される高極性・高沸点の溶媒が使用されている。そのため、組成物の塗布後の乾燥処理では、ポリアミック酸組成物に含まれている溶媒を乾燥させるために、高い温度で処理する必要があった。ポリイミド製造に使用される3級アミンの沸点は一般に溶媒の沸点より低いため、溶媒の乾燥処理において、添加した3級アミンが急激に揮発してしまい、成形品表面にボイドなどの欠陥を生じてしまうことがあった。また、添加した3級アミンが揮発してしまうために十分なイミド化促進効果を発現しにくいと言う問題があった。乾燥処理に続き行われる焼成処理でも、揮発する溶媒、脱水反応によって生成した水蒸気等によりボイドが生じることがあった。このような成形品を、例えば電子写真装置の転写部材に用いた場合、成形品表面のボイドが転写欠陥の原因となり、画質の点で問題となることがあった。
【0011】
また、3級アミン等の化学イミド化剤の添加により、ポリアミック酸が一部イミド化反応を起こしてゲル状物質を発生してしまう、イミド化反応により生じたポリイミドが溶液中に析出してしまうなど、溶液の安定性を悪化させる問題もあった。
【特許文献1】特開平5−200904号公報
【特許文献2】特開平6−228335号公報
【特許文献3】特開平6−149083号公報
【特許文献4】特開平6−258960号公報
【特許文献5】特開平6−207014号公報
【特許文献6】特開2002−127165号公報
【特許文献7】特開2002−283366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記従来技術における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、ポリイミド無端ベルト製造方法において、化学イミド化剤を気相にて作用させることで、焼成温度低減、焼成時間短縮を実現することを目的とする。
また、従来の高温での焼成により発生するベルト表面のボイドなどの表面欠陥を低減しつつ、十分な強度などの特性を備えるポリイミド無端ベルトを得ることを目的とする。
また、ポリアミック酸溶液中に直接化学イミド化剤を添加しないことで、ポリアミック酸溶液の安定性を高め、工程信頼性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、円筒状基材上にポリアミック酸組成物を塗布して、乾燥・焼成処理を行うポリイミド無端ベルトの製造方法において、ポリアミック酸組成物の塗布後に、ポリアミック酸組成物に対して化学イミド化剤を気相にて作用させることで、焼成温度低減・焼成時間短縮が図れ、かつ、従来のイミド化反応によるボイド発生等の膜品質の低下を防ぎ、十分な強度などの特性を備えるポリイミド無端ベルトが得られることを見出し本発明の完成に至った。
【0014】
また、ポリアミック酸組成物中に化学イミド化剤を添加しないため、ポリアミック酸組成物の安定性が高く、製造にかかる時間による品質のばらつきを低減することができる。
【0015】
そして、本発明の製造方法は、従来のポリイミド無端ベルトの製造方法とは全く異なり、膜品質、機械的特性、電気的特性をすべて両立し得る優れた製造方法である。すなわち、前記課題は以下により達成された。
【0016】
<1> 少なくともポリアミック酸と溶媒とを含有するポリアミック酸組成物を円筒状基材上に塗工処理した後に、沸点が250℃以下の化学イミド化剤を気化させた気化物を前記ポリアミック酸組成物に作用させる化学イミド化処理工程を有するポリイミド無端ベルトの製造方法。
【0017】
<2> 前記化学イミド化処理工程が、内部が減圧可能な容器中に前記ポリアミック酸組成物と化学イミド化剤とを共存させた状態で、前記容器内部を1.01×105Pa以下の圧力に減圧して前記化学イミド化剤を気化させ、前記ポリアミック酸組成物に作用させる工程である<1>にかかるポリイミド無端ベルトの製造方法。
【0018】
<3> 前記化学イミド化処理工程が、内部が減圧可能な容器中に前記ポリアミック酸組成物を設置して前記容器内部を1.01×105Pa以下の圧力に減圧し、化学イミド化剤を気化させた気化物を前記容器内部に導入することで、前記ポリアミック酸組成物に作用させる工程である<1>にかかるポリイミド無端ベルトの製造方法。
【0019】
<4> 前記化学イミド化処理工程が、円筒状基材上にポリアミック酸組成物を塗工処理した後、さらに乾燥処理を行った後に行う<1>から<3>のいずれか1つにかかるポリイミド無端ベルトの製造方法。
【0020】
<5> 前記化学イミド化剤が、脱水剤、3級アミン、脱水剤と3級アミンとの組合せのいずれかである<1>から<4>のいずれか1つにかかるポリイミド無端ベルトの製造方法。
【0021】
<6> 前記脱水剤が無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ブタン酸、無水トリフルオロ酢酸から選ばれる1種又は2種以上である<5>にかかるポリイミド無端ベルトの製造方法。
【0022】
<7> 前記3級アミンがピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン、トリエチルアミンから選ばれる1種又は2種以上である<5>にかかるポリイミド無端ベルトの製造方法。
【0023】
<8>少なくともポリアミック酸と溶媒とを含有するポリアミック酸組成物を円筒状基材上に塗工処理した後に、沸点が250℃以下の化学イミド化剤を気化させた気化物を前記ポリアミック酸組成物に作用させる化学イミド化処理工程を経て形成されてなるポリイミド無端ベルト。
【0024】
<9> 前記化学イミド化処理工程が、内部が減圧可能な容器中に前記ポリアミック酸組成物と化学イミド化剤とを共存させた状態で、前記容器内部を1.01×105Pa以下の圧力に減圧して前記化学イミド化剤を気化させ前記ポリアミック酸組成物に作用させる工程である<8>にかかるポリイミド無端ベルト。
【0025】
<10> 前記化学イミド化処理工程が、内部が減圧可能な容器中に前記ポリアミック酸組成物を設置して前記容器内部を1.01×105Pa以下の圧力に減圧し、化学イミド化剤を気化させた気化物を前記容器内部に導入することで、前記ポリアミック酸組成物に作用させる工程である<8>にかかるポリイミド無端ベルト。
【0026】
<11> 前記化学イミド化処理工程が、円筒状基材上にポリアミック酸組成物を塗工処理した後、さらに乾燥処理を行った後に行う<8>から<10>のいずれか1つにかかるポリイミド無端ベルト。
【0027】
<12> 前記化学イミド化剤が、脱水剤、3級アミン、脱水剤と3級アミンとの組合せのいずれかである<8>から<11>のいずれか1つにかかるポリイミド無端ベルト。
【0028】
<13> 前記脱水剤が無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ブタン酸、無水トリフルオロ酢酸から選ばれる1種又は2種以上である<12>にかかるポリイミド無端ベルト。
【0029】
<14> 前記3級アミンがピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン、トリエチルアミンから選ばれる1種又は2種以上である<12>にかかるポリイミド無端ベルト。
【0030】
<15><8>〜<14>のいずれか1つにかかるポリイミド無端ベルトを備える画像形成装置。
【0031】
<16>電子写真用中間転写ベルトとして前記ポリイミド無端ベルトを備える<15>にかかる画像形成装置。
【0032】
<17>電子写真用定着ベルトとして前記ポリイミド無端ベルトを備える<15>にかかる画像形成装置。
【発明の効果】
【0033】
本発明にかかる製造法により、従来の熱イミド化処理によるポリイミド成形品製造に比べ、塗膜中のボイドの発生、体積収縮による膜厚の不均一性、及び抵抗値の面内不均一性などの膜品質を改善した良好なポリイミド無端べルトの成形品が、低温で製造し得る。また、従来の化学イミド化法に比べて、気相で反応を行うことより、触媒等の揮発によるボイドの欠陥のないポリイミド無端ベルトの成形品が簡便に製造することができる。また、得られたポリイミド無端ベルトは、力学強度、電気性能等に優れることから、電子写真方式の画像形成装置にて定着ベルト、中間転写ベルトとして好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下各構成等について、詳細に説明する。
[ポリアミック酸組成物]
ポリアミック酸組成物は、少なくとも、ポリアミック酸と溶媒とを含有して構成されている。また、必要に応じて導電剤などの添加物を含むこともできる。
【0035】
(ポリアミック酸)
前述のポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを実質的に等モル量を有機極性溶媒中で重合反応させることで得られ、下記一般式(1)で表される。
【0036】
【化1】

【0037】
また、ポリアミック酸は、下記一般式(2)で表されるポリイミドを含む構造であってもよい。すなわち、ポリアミック酸は、その一部がイミド化されて、ポリイミド−ポリアミック酸共重合体となっていてもよい。ポリアミック酸重合後、部分的にイミド化しておくことで、イミド化の反応速度をより大きくし、そのエネルギーのさらなる低減を図ることができる。
【0038】
【化2】

【0039】
(1)テトラカルボン酸二無水物
【0040】
ポリアミック酸の製造に用いられ得るテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系のいずれの化合物も使用できる。
【0041】
芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げることができる。
【0042】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
【0043】
本発明に使用されるテトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物が好ましく、さらに、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、が最適に使用される。
【0044】
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
(2)ジアミン化合物
次にポリアミック酸の製造に用いられ得るジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
【0046】
例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等を挙げることができる。
【0047】
本発明に使用されるジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン等が好ましい。
これらのジアミン化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
(3)テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との組み合わせ
ポリアミック酸としては、好ましくは、成型体の強度の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族系ジアミンとの重合からなるものが好ましい。
【0049】
(4)合成溶媒(有機極性溶媒)
このポリアミック酸の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミック酸及びポリアミック酸−ポリイミド共重合体を溶解するものであれば特に限定されない。
【0050】
(5)ポリアミック酸重合時の固形分濃度
かかるポリアミック酸溶液の固形分濃度は特に規定されるものではないが、5〜50質量%が好ましく。さらに、特に10〜30質量%が好適である。固形分濃度が5質量%未満であるとポリアミック酸の重合度が低く、最終的に得られる成型体の強度が低下しやすい。また、重合時の固形分濃度が、50質量%より高いと原料モノマーの不溶部が生じ反応が進行しにくくなる。
【0051】
(6)ポリアミック酸重合温度
ポリアミック酸重合時の反応温度としては、0℃〜80℃の範囲が好ましい。反応温度が0℃以下であると、溶液の粘度が高くなり、反応系の攪拌が不十分になりやすい。また、反応温度が80℃より高くなると、ポリアミック酸の重合と平行して、一部イミド化反応が起こるため、反応制御が困難となりやすい。
【0052】
(溶媒)
ポリアミック酸組成物に用いられる溶媒は、前述の合成溶媒に示したような、ポリアミック酸及びポリアミック酸−ポリイミド共重合体を溶解するものであれば特に限定されない。
【0053】
(導電剤)
導電剤としては、導電性もしくは半導電性の微粉末が使用でき、所望の電気抵抗を安定して得ることができれば、特に制限はないが、ケッチエンブラック、アセチレンブラック、表面が酸化処理されたカーボンブラック等のカーボンブラック、アルミニウムやニッケル等の金属、酸化イットリウム、酸化錫等の酸化金属化合物、チタン酸カリウム、LiCl等のイオン導電性物質やポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレンなどの導電性高分子材料等が例示できる。これらの導電剤は単独での使用はもちろん、併用して使用してもよい。
【0054】
これら導電剤はその使用目的により適宜選択される。例えば、樹脂中への分散性がよいので、良好な分散安定性が得られ、ポリイミド無端ベルトの抵抗バラツキを小さくすることができるとともに、電界依存性も小さくなり、転写電圧による電界集中がおきずらくなる電気抵抗の経時での安定性より、pH5以下の酸化処理カーボンブラックを添加することが好ましい。また、ポリイミドベルトへの電気的耐久性付与の観点からは、高分子導電剤(例えばポリアニリン等)を添加することが好ましい。
【0055】
−導電剤の添加量−
前述した導電剤の添加量に関しては、ポリアミック酸又はポリアミック酸−ポリアミドイミド共重合体100質量部に対して、カーボンブラックであれば10〜40質量部、金属であれば1〜10質量部、金属酸化物であれば5〜20質量部、イオン導電性物質であれば5〜40質量部、導電性高分子材料であれば5〜30質量部含有させることが好ましい。この含有量が上記範囲未満であると電気抵抗の均一性が低下し、表面抵抗率の面内ムラや電界依存性が大きくなる場合がある。一方、上記範囲を超えると所望の抵抗値が得られ難くなる。また、ポリイミド無端ベルトの強度が下がり、かつ靭性が劣りやすい。
【0056】
以上、本発明にかかるポリアミック酸組成物について説明したが,本発明はこれらの実施の態様のみについて限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で,当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
【0057】
[ポリイミド無端ベルトの製造方法]
(ポリイミド無端ベルト)
本発明のポリイミド無端ベルトは、ポリイミド成形体を主体とするものである。このポリイミド成形体は、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸組成物を無端ベルト状に形成し、ついでイミド化して形成される。
【0058】
本発明のポリイミド無端ベルトは、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、これらの複合装置などの電子写真装置に用いることができる。具体的には、本発明のポリイミド無端ベルトは、その転写方式が中間転写ベルト方式であり、かつ/又はベルトを直接的若しくは間接的に加熱する機構を有すれば、組み込まれる装置は特に限定されない。例えば、装置内に単色(通常は黒色)のみを有するモノカラー電子写真装置や、感光体上に担持されたトナー像を中間転写ベルトに順次一次転写を繰り返すカラー電子写真装置や、各色毎の現像器を備えた複数の潜像担持体を中間転写ベルト上に直列に配列した、タンデム型カラー電子写真装置のいずれであってもよい。従って、本発明のポリイミド無端ベルトは、中間転写ベルト、定着ベルトとして用いられるのみならず、中間転写及び定着ベルトとして用いることも可能である。この「中間転写及び定着ベルト」とは、同一ベルト上において中間転写工程と定着工程を行うベルトである。
【0059】
(ポリイミド無端ベルト及びその製造方法)
次に、ポリイミド無端ベルトを成形する具体的方法について一例を示す。
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を有機溶媒中で重合反応させて得られたポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸を含む溶液をメタノールなどの貧溶媒中に添加してポリアミック酸を析出させ再沈殿精製する。析出したポリアミック酸をろ別した後、後述する塗工溶媒に再溶解させ、目的に応じて前述した導電剤等の添加剤を添加して、塗工に用いるポリアミック酸組成物(以下、「塗工液」ということがある)を得る。
【0060】
また、この塗工液に1種又は2種類以上の無機粉体をポリアミック酸の乾燥質量100質量部に対して合計5〜60質量部含有する場合がある。無機粉体の例としては、シリカ、マイカ、タルク、ウィスカー、硫酸バリウムのような絶縁性化合物等が挙げられる。これらの無機粉体は補強材として機能し、得られるポリイミド無端ベルトの力学的強度を高めることができる。
【0061】
無機粉体を分散させ、その凝集体を壊砕する方法としては、ミキサーや攪拌子による攪拌、平行ロール、超音波分散などの物理的手法、さらには分散剤の導入などの化学的手法が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
ポリイミド無端ベルトの製造は、塗工液を円筒状基材に塗工処理した後、乾燥処理によって溶媒を除去して、その後、焼成処理を経て行われる。そして、本発明では、塗工処理した後、又はさらに乾燥処理した後に化学イミド化処理処理が施される。得られたポリイミド無端ベルトは、高い機械的強度を持ち、クリープ変形を生じ難く、さらに表面平滑性に優れるためベルト材として好適に使用し得る。
【0063】
(1)塗工溶媒
塗工溶媒としては、先に示したようなポリアミック酸及びポリアミック酸−ポリイミド共重合体を溶解するものであれば特に限定されない。また、塗工時のレベリング性向上や乾燥速度の調整のために、ポリアミック酸及びポリアミック酸−ポリイミド共重合体に対して貧溶媒であるメタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、あるいはブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒を、前述の溶媒に混合して用いることができる。これらの貧溶媒を混合することで、円筒状基材に対するポリアミック酸組成物の接触角を下げることができるため、平滑な塗工膜が得られ、また基材の微孔を埋める穴埋め効果を奏することもできる。
【0064】
塗工溶媒は、先のポリアミック酸合成時に用いた溶媒をそのまま使用しても、ポリアミック酸重合後に所定の溶媒に置換してもよい。溶媒の置換には、ポリアミック酸溶液に所定量の溶剤を添加して希釈する方法、ポリマーを再沈殿した後に所定溶媒中に再溶解させる方法、溶剤を徐々に留去しながら所定溶媒を添加して組成を調整する方法のいずれであってもよい。
【0065】
この塗工溶媒に、精製したポリアミック酸や導電剤、さらに、必要に応じて分散剤、補強剤、消泡剤、滑剤などの加工助剤を溶解させ、塗工液を作製する。
【0066】
(2)塗工処理
次に、前述の塗工液を円筒状基材の内面もしくは外面に塗布する。円筒状基材としては、円筒状金型が好ましく、金型の代わりに、樹脂製、ガラス製、セラミック製など、従来既知の様々な素材の成形型が、本発明に係る円筒状基材として好適に使用できる。円筒状基材の表面にガラスコートやセラミックコートなどを設けること、また、シリコーン系やフッ素系の剥離剤を使用することも適宜選択されうる。更に、円筒状金型に対するクリアランス調整がなされた膜厚制御用金型を、円筒状金型に通し平行移動させることで、余分な塗工液を排除し円筒状金型上の塗工液の厚みを均一にすることができる。円筒状金型上への塗工液塗布の段階で、溶液の均一な厚み制御がなされていれば、特に膜厚制御用金型を用いなくてもよい。
【0067】
(3)乾燥処理
次に、塗工液を塗布した円筒状金型を加熱環境に置き、含有溶媒の30質量%以上好ましくは50質量%以上を揮発させるための乾燥処理を行う。この際、溶媒は膜中に残留していても構わず、塗膜表面が乾燥し、傾けても流動しない状態であれば問題ない。乾燥処理は、50℃〜200℃の温度範囲にて行われる。
【0068】
塗工直後のポリアミック酸溶液は流動性を持っているために、液タレ、ゴミの付着などの結果を生じさせないよう、塗工後速やかに乾燥処理を行うことが好ましい。また、本発明において、乾燥処理は化学イミド化処理前に行うのが好ましい。
【0069】
(4)化学イミド化処理
塗工処理又は乾燥処理を施した塗工液には、次いで化学イミド化処理が施される。本発明において、化学イミド化処理は気相で行われる。つまり、化学イミド化剤の気化物を塗工液(ポリイミド組成物)に作用させる。具体的に化学イミド化処理は、塗工処理又は乾燥処理を施した塗工液を、内部が減圧可能な容器中に設置し、好適には以下のいずれかの方法で行われる。
【0070】
すなわち、内部が減圧可能な容器中にポリアミック酸組成物と化学イミド化剤を共存させた状態で、常温で、又は加熱しながら容器内部を1.01×105Pa以下の圧力に減圧して化学イミド化剤を気化させ、ポリアミック酸組成物に作用させる方法、
又は、容器内部を1.01×105Pa以下の圧力に減圧し、常温で、又は加熱しながら化学イミド化剤を気化させた気化物を容器内に導入することで、容器内部雰囲気を化学イミド化剤の気化物雰囲気に置換してポリアミック酸組成物に作用させる方法である。
容器内部の圧力は、後述するように使用する化学イミド化剤の種類によっても異なるが、容器内の温度において、1.01×105Pa以下の圧力であって、化学イミド化剤が気化物として存在できる程度にまで減圧すればよい。
【0071】
化学イミド化処理は、後述する脱水剤や3級アミン等の化学イミド化剤を気化させた気化物がポリアミック酸組成物に接触していれば良く、作用効率を上げるために化学イミド化剤を気化させた気化物をポリアミック酸組成物に吹き付けながら行っても良い。
【0072】
化学イミド化剤は、容器内部の温度における化学イミド化剤の蒸気圧よりも容器内部の圧力を低く設定すれば気化する。容器内部の温度における化学イミド化剤の蒸気圧は化学イミド化剤の種類によって異なるが、後述する種類の化学イミド化剤を用いる場合、容器内の温度が50℃ならば2.7×103Pa、100℃ならば2.7×104Paの圧力まで減圧しておけば気化物とすることができる。
【0073】
化学イミド化剤をポリアミック酸組成物中に共存させる従来のポリイミド成形品の製造法では、化学イミド化剤の分散ムラにより、ポリイミド成形品表面にイミド化反応の不均一化が生じてしまう場合があった。しかし、上記の方法により気相で化学イミド化剤を作用させることで、化学イミド化剤の分散ムラは解消され、乾燥処理を施した塗工液表面に均一にイミド化処理を行うことができる。また、ポリアミック酸組成物中に化学イミド化剤を共存させる従来のポリイミド成形品の製造法では、高温での焼成処理による溶媒の揮発、脱水反応によって生成した水蒸気により成形品表面にボイドなどの欠陥を生じることがあったが、上記方法により気相で反応させることでこれら欠陥を生じることもない。
【0074】
(5)化学イミド化処理剤
本発明では、化学イミド化処理剤として、脱水剤、3級アミン、又はこれらの混合物を用いることがよい。また、塗工処理又は乾燥処理を施した塗工液と気相にて反応を行うために、イミド化処理剤は常圧下における沸点が250℃以下(好ましくは200℃以下)のものを使用する。
【0075】
脱水剤に使用し得る化合物としては無水カルボン酸が好適に使用される。具体的な化合物とその常圧下における沸点の例としては、無水酢酸(140℃)、無水プロピオン酸(167〜170℃)、無水ブタン酸(198℃)、無水トリフルオロ酢酸(39.1℃)、無水クロロジフルオロ酢酸(96〜97℃)などが用いられる。これらの中でも、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ブタン酸、無水トリフルオロ酢酸が好適である。これら脱水剤は単独で用いても、2種類以上を混合して用いても良い。
【0076】
一方、具体的な3級アミンとその常圧下における沸点の例としては、ピリジン(115〜116℃)、ピコリン(144℃)、コリジン(167〜182℃)、ルチジン(144〜170℃)、キノリン(238℃)、イソキノリン(243℃)、トリエチルアミン(89.4℃)などの3級アミンを用いることができる。これらの中でも、ピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン、トリエチルアミンが好適である。これら3級アミンは単独で用いても、2種類以上を混合して用いても良い。
【0077】
(6)焼成処理
前述の乾燥処理又は化学イミド化処理の後に、必要に応じて円筒金型を150℃〜250℃で加熱し、イミド転化反応を十分に進行させる。イミド化の温度は、原料のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類、又は使用する化学イミド化処理剤の種類によってそれぞれ異なるが、イミド化が完結する温度に設定しなければならない。イミド化が不充分であると、機械的特性及び電気的特性に劣るものとなる。
【0078】
本発明において焼成処理は、前述の化学イミド化処理の後に前記容器内部を常温常圧に戻してから再び減圧下にして行うことができ、また、前述の化学イミド化処理に引き続き減圧下で行うこともできる。本発明での焼成処理は、常圧での焼成時間に比べてより短時間でイミド化を完結することができる。
焼成処理後、円筒状金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルトを得る。
【0079】
(ポリイミド無端ベルトの厚み)
ポリイミド無端ベルトの最大厚みと最小厚みの差は、大きすぎるとシワ寄りの原因となる。ポリイミド無端ベルトのシワ寄りは、転写や定着を行った際に画質の低下を誘起するため、可能な限り低減する必要がある。この点から、ポリイミド無端ベルトの最大厚みと最小厚みの差は、ポリイミド無端ベルトの平均厚みの20%以下であることが望ましい。なお、「ベルトの厚み」とは、ベルトと5mm2以上の面積で接触した平板間の距離を測定する厚み計で測定できる厚みのことであり、ベルト表面に特異的に存在する幅50μm以下の突起物の高さを無視したものである。
【0080】
また、ポリイミド無端ベルトの厚みは、厚すぎると熱伝導度や抵抗値等の観点から好ましくなく、薄すぎるとその靭性が小さすぎるため好ましくない。従って、ポリイミド無端ベルトの用途を考慮すると、ベルトの厚みは10μm以上1000μm以下、好ましくは30μm以上150μm以下であることが望ましい。
【0081】
(ポリイミド無端ベルトの抵抗特性)
導電剤を含むポリイミド無端ベルトの場合、体積抵抗率は、106Ω・cm以上1012Ω・cm以下であることが好ましい。より好ましくは、109Ω・cm以上1012Ω・cm以下である。この体積抵抗率が1×106ΩCm未満である場合には、像担持体から中間転写体に転写された未定着トナー像の電荷を保持する静電的な力が働きにくくなるため、トナー同士の静電的反発力や画像エッジ付近のフリンジ電界の力によって、画像の周囲にトナーが飛散してしまい(ブラー)、ノイズの大きい画像が形成されることがある。一方、体積抵抗率が1×1012Ωcmより高い場合には、電荷の保持力が大きいために、1次転写での転写電界で中間転写体表面が帯電するために除電機構が必要となることがある。従って、前記体積抵抗率を、上記範囲とすることで、トナーの飛散や、除電機構を必要とする問題を解消することができる。
【0082】
以上、本発明にかかるポリイミド無端ベルトの製造方法について説明したが、本発明はこれらの実施の態様のみに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
【0083】
[本発明の画像形成装置]
本発明の画像形成装置は、前記本発明のポリイミド無端ベルトを備える、電子写真方式などの画像形成装置である。
【0084】
本発明の画像形成装置としては、例えば、像担持体、像担持体表面を帯電する帯電手段、像担持体表面を露光し静電潜像を形成する露光手段、像担持体表面に形成された潜像を現像剤にて現像し、トナー像を形成する現像手段、被転写材上のトナー像を転写する転写手段、被転写材上のトナー像を定着する定着手段、像担持体に付着したトナーやゴミ等を除去するクリーニング手段、像担持体表面に残留している静電潜像を除去する除電手段、など必要に応じて公知の方法で任意に備えた画像形成装置が挙げられる。このような構成の画像形成装置において、中間転写ベルトを利用した2次転写方式の転写手段や、定着ベルトを利用したベルト方式の定着手段のベルトとして、上記本発明のポリイミド無端ベルトが適用される。
【0085】
このような本発明の画像形成装置の具体例について以下に図面を用いて説明する。図1に、既述の本発明の樹脂製無端ベルトを中間転写体として用いた本発明の画像形成装置の一例であるカラー電子写真複写機100の概略構成図を示す。本例では、既述の本発明のポリイミド無端ベルトを中間転写体として具備している。
【0086】
カラー電子写真複写機100には主要な部材のみを示す。このカラー電子写真複写機100において、101BK、101Y、101M、101Cは感光体ドラム(像担持体)であり、矢線A方向への回転に伴いその表面には周知の電子写真プロセス(図示せず)によって画情報に応じた静電潜像が形成される。
【0087】
また、この感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cの周囲にはそれぞれブラック(BK)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色に対応した現像器105〜108が配設されており、感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cに形成された静電潜像をそれぞれの現像器105〜108で現像してトナー像Tを形成するようになっている。従って、例えば、感光体ドラム101Yに書き込まれた静電潜像はイエローの画情報に対応したものであり、この静電潜像はイエロー(Y)のトナーを内包する現像器106で現像され、感光体ドラム101Y上にはイエローのトナー像が形成される。
【0088】
また、102は感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cの表面に当接されるように配置されたベルト状の中間転写体であり、複数のロール117〜120に張架されて矢線B方向へ回動する。
【0089】
感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cに形成された未定着トナー像は、感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cと上記中間転写体102とが接するそれぞれの1次転写位置で、順次感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cから中間転写体102の表面に各色が重ね合わされて転写される。この1次転写位置において、中間転写体102の裏面側には転写バッフル121〜124により転写プレニップへの帯電を防止したコロナ放電器109〜112が配設されており、このコロナ放電器109〜112にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加することで、感光体ドラム101BK、101Y、101M、101C上の未定着トナー像は中間転写体102に静電吸引される。この1次転写手段は、静電力を利用したものであれば、コロナ放電器に限らず電圧が印加された導電性ロールや導電性ブラシなどでも良い。このような静電力を利用する理由は、熱や圧力によるトナーの粘着力を1次転写に利用すると、感光体を損傷させやすいからである。
【0090】
このようにして中間転写体102に1次転写された未定着トナー像は、中間転写体102の回動に伴って記録媒体103の搬送経路に面した2次転写位置へと搬送される。2次転写位置ではセラミックヒーターやハロゲンランプなどの加熱源を内蔵した加熱転写ロール120が中間転写体102の裏面側に接している。また、2次転写位置において上記加熱転写ロール120に対向してプレッシャーロール125が配設されている。プレッシャーロール125は、その表面にフッ素樹脂をコーティングしたものが好ましく、また、加熱転写ロール120と同様に加熱源を内蔵しても良い。フィードローラ126によって所定のタイミングでトレイ113から搬出された記録媒体103はこのプレッシャーロール125と中間転写体102との間に挿通される。この時、上記加熱転写ロール120とプレッシャーロール125の間に電圧を印加しても良い。中間転写体102に担持された未定着トナー像は上記2次転写位置において記録媒体103に熱溶融転写される。加熱、圧力手段によりトナー像を溶融して転写しているので、中間転写体102として電荷減衰がないものを使用しても、中間転写体102と記録媒体103間で放電を発生しトナー飛散が生じて画質欠陥を起こすという問題が生じない。
【0091】
そして、未定着トナー像が転写された記録媒体103は剥離爪114によって中間転写体102から剥がされ、搬送ベルト115によって定着器(図示せず)に送り込まれて未定着トナー像の定着処理がなされる。このとき、前記2次転写装置(加熱転写ロール120及びプレッシャーロール125)により定着を兼ねてもよいが、十分なカラー定着性を得るためには、上記のように定着工程を独立させることが好ましい。一方、記録媒体103が剥離された中間転写体102は、クリーニング装置116によりクリーニングされる。
【0092】
尚、上記プレッシャーロール125、剥離爪114及びクリーニング装置116は中間転写体102と接離自在に配設されており、2次転写される迄、これら部材は中間転写体102から離間している。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0094】
[実施例]
(合成例1) ポリアミック酸溶液の調整
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコ中に、五酸化リンによって乾燥した窒素ガスを通じ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物29.42g(0.1モル)とN−メチル−2−ピロリドン117.68gを注入した。十分攪拌・溶解した後、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル20.02g(0.1モル)をN−メチル−2−ピロリドン80.08gに溶解させた溶液を10℃に保持したフラスコ内に徐々に滴下した。ジアミン溶液滴下後10〜15℃にて攪拌・重合を行った。反応溶液を大量のメタノール中に注ぎ、再沈殿精製を行った。析出した白色ポリマーをろ別・乾燥した後、N−メチル−2−ピロリドンに再溶解させて20質量%ポリアミック酸溶液を得た。
【0095】
(調整例1) ポリアミック酸組成物(A)の調整
合成例1で調整したポリアミック酸溶液を20μm孔のフロロポアろ紙にてろ過して、不溶部を除去して、ポリアミック酸組成物(A)を得た。
【0096】
(調整例2) カーボンブラック分散ポリアミック酸組成物(a)の調整
合成例1で調整したポリアミック酸溶液200g中に、乾燥した酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%)8.0gを添加して、ボールミルにて6時間で処理した。その後、20μm孔のフロロポアろ紙にてろ過して、凝集物を除去して、カーボンブラック分散ポリアミック酸組成物(a)を得た。
【0097】
−ポリアミック酸溶液の安定性−
調整例1及び2で得られた組成物を1ヵ月間室温にて放置した。1ヵ月後の組成物中にはゲル状の物質もポリマーの析出も見られなかった。
【0098】
(製造例1)
ポリアミック酸組成物(A)を、内径90mm、長さ450mmの円筒状SUS製金型表面に均一に塗布した。なお、この円筒状金型には、表面にフッ素系の離型剤を予め塗布することで、ポリイミド無端ベルト成形後の剥離性を向上させた。次に、円筒状金型を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥処理を行った。乾燥後、ポリアミック酸成型品の一部を切り出し、下記の方法でイミド化率を測定したところ、10%以下でありほぼポリアミック酸樹脂のままであった。
【0099】
乾燥処理後、ポリアミック酸成型品が形成された円筒状金型を減圧加熱炉中に設置した。脱水剤として、無水酢酸500mlを平型シャーレに入れて円筒状金型の下に置いた。加熱減圧炉内を加熱して、温度を50℃としたところで、真空ポンプにて加熱減圧炉内を減圧状態にした。加熱減圧炉内の圧力が減少し始めると共に、無水酢酸が気化しはじめた。加熱減圧炉内の圧力が2.7×103Paに達したところで、真空ポンプと加熱減圧炉間の排気ラインを閉じ、減圧状態を保持した。加熱減圧炉内の温度を50℃に保ちながら、10分間化学イミド化処理を行った。
【0100】
化学イミド化処理を終えたら、加熱減圧炉内を常温常圧に戻し、円筒状金型を取り出した。円筒状金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルトを得た。
【0101】
得られたポリイミド無端ベルトのイミド化率、厚み測定及び体積抵抗値測定、引張り強度等の機械的特性を以下のように評価した。
【0102】
−イミド化率−
得られたポリイミド無端ベルトから試験片を切り出し、FT−IR(堀場製作所製顕微FT−IR分光器FT−530)により測定を行った。400℃焼成品をイミド化率100%として、1776cm-1のイミド基に由来するカルボニル基の伸縮ピークと1500cm-1の芳香環の振動ピークとの比により求めた。
【0103】
−ベルト厚み測定−
得られたポリイミド無端ベルトから10cm四方の試験片をランダムに10箇所切りだし、フィルム厚み計(TECLOCK CORPORATION製:定圧厚さ測定器PG−02)を用いて、各試料について中央と四隅の5点の厚みを測定し、それらの平均厚みからのバラツキを評価した。
【0104】
−ヤング率、引張り強度及び伸び率−
ヤング率、引張り強度は、引張り試験機(アイコーエンジニアリング株式会社製1605N)にて測定した。打ち抜き成型機を使用して、長さ100mm、幅5mmの試験片を作製し、40mm長で引張り試験を行った。伸び率は、試験片元々の長さと引っ張り破断時の長さとを比較することで算出した。
【0105】
−ベルト外観−
得られたポリイミド無端ベルト表面の外観を目視観察した。表面のうねり、折れ、表面グロスムラ等のポリイミド無端ベルト表面内での均一性を以下のように評価した。
「○」:まったく欠陥の発生が見られず、膜の均一性に優れる。
「○〜△」:欠陥の発生がやや見られるが、実用には問題ない。
「△」:欠陥の発生が見られ、実用にはやや支障がある。
「×」:欠陥が多発し、実用できない。
【0106】
−ボイド数−
得られたポリイミド無端ベルトから10cm四方の試験片をランダムに5箇所切りだし、ボイドの発生を目視にて観察した。試験片中に発生している1mm以上及び3mm以上のボイド数を評価した。
【0107】
−体積抵抗値−
ポリイミド無端ベルトから10×10cm2の試験片を切りだし、アドバンテック社製の超高抵抗測定装置(デジタル超高抵抗/微小電流計R8340A)でその体積抵抗値を測定した。
【0108】
その結果、このポリイミド無端ベルトのイミド化率はおよそ70%で、厚みは70±5μmであり、イミド化反応進行に見られるフィルムの膜厚ムラも抑えられ均一であった。得られたポリイミド無端ベルトの特性等は表1に示す。
【0109】
【表1】

【0110】
(製造例2)
製造例1で得られたポリイミド無端ベルトは、膜厚の均一も高く表面にボイドのような結果もなく良好な品質であるものの、イミド化反応が完全に終了していないため、やや強度に劣る点があった。そこで、製造例1において、化学イミド化処理を終えた後、引き続き2.7×103Paの減圧下、150℃で10分間加熱処理を行った。その結果、イミド化率も100%となり、強度も向上した。表面状態も良好で、膜厚の均一性も高く、中間転写ベルト、定着ベルトとして好適な特性を示していた。得られたポリイミド無端ベルトの特性等を表1に示す。
【0111】
(製造例3)
製造例1と同様にして乾燥処理まで行い、ポリアミック酸成型品が形成された円筒状金型を減圧加熱炉中に設置した。加熱減圧炉内を加熱して温度を100℃としたところで真空ポンプにて加熱減圧炉内を減圧状態にした。加熱減圧炉内の圧力が2.7×103Paに達したら、真空ポンプと加熱減圧炉間の排気ラインを閉じ、減圧状態を保持した。前記減圧加熱炉とは別の容器に、脱水剤として無水酢酸500mlを入れ、容器内を真空ポンプにて減圧状態にした。容器内の圧力が減少し始めると共に、無水酢酸が気化しはじめた。容器内の圧力が2.7×103Paに達したところで真空ポンプと容器間の排気ラインを閉じた。次いで、この容器と前記加熱減圧炉とを接続し、気化した無水酢酸を減圧加熱炉内に導入してポリアミック酸成形品に作用させた。加熱減圧炉内の温度を100℃に保ちながら、10分間化学イミド化処理を行った。
【0112】
化学イミド化処理を終えたら、加熱減圧炉内を常温常圧に戻し、円筒状金型を取り出した。円筒状金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルトを得た。得られたポリイミド無端ベルトの特性等は表1に示す。
【0113】
(製造例4)
製造例3において、化学イミド化処理を終えた後、引き続き2.7×103Paの減圧下、150℃で10分間加熱処理してポリイミド無端ベルトを製造した。得られたポリイミド無端ベルトの特性等は表1に示す。
【0114】
(製造例5)
化学イミド化処理時に、触媒としてピリジン500mlを別に平型シャーレに入れて円筒状金型の下に置いた以外は、製造例1と同様にしてポリイミド無端ベルトを製造した。得られたポリイミド無端ベルトの特性等は表1に示す。
【0115】
(製造例6)
製造例5において、化学イミド化処理を終えた後、引き続き2.7×103Paの減圧下、150℃で10分間加熱処理してポリイミド無端ベルトを製造した。得られたポリイミド無端ベルトの特性等は表1に示す。
【0116】
(製造例7)
調整例2で調整したカーボンブラック分散ポリアミック酸組成物(a)を用いて、表1に示した条件で乾燥処理、化学イミド化処理、焼成処理を行い、製造例1と同様にしてカーボンブラックを含むポリイミド無端ベルトを製造した。
【0117】
得られたポリイミド無端ベルトについて、製造条件とベルト特性を表1に、電子写真装置搭載試験の結果を表2に示す。本条件で得られたポリイミド無端ベルトは、力学特性、電気特性に優れ電子写真装置に搭載した際に中間転写ベルト、定着ベルトとして好適な特性を備えていることが確認された。
【0118】
−電子写真装置搭載試験−
ポリイミド無端ベルトを、富士ゼロックス社製電子写真装置DocuCenterColor400CPの中間転写ベルトして組み込み、初期複写画質の評価を行った。複写画質の評価項目として、印字ズレの有無、印字濃度ムラの有無、ゴーストの有無等を評価した。また、50000枚通紙テスト後の画質を同様に評価した。通紙テスト中の紙詰まりや用紙の複数枚送りなどの装置トラブルについての評価も行った。さらに通紙試験の前後でのポリイミド無端ベルト長さを測定し、実機使用でのベルト耐久性を評価比較した。なお、ベルト長の通紙後と通紙前との比(通紙後/通紙前)は、1.000±0.008の範囲にあれば、実用上好ましいとされる。
【0119】
(製造例8〜12)
調整例2で作製したカーボンブラック分散ポリアミック酸組成物(a)を用いて、それぞれ表1に示す製造条件でポリイミド無端ベルトを作製した。
【0120】
得られたポリイミド無端ベルトについて、製造条件とベルト特性を表1に、電子写真装置搭載試験の結果を表2に示す。本条件で得られたポリイミド無端ベルトは、力学特性、電気特性に優れ電子写真装置に搭載した際に中間転写ベルトとして好適な特性を備えていることが確認された。
【0121】
【表2】

【0122】
[比較例]
(製造例13)
調整例1で得られたポリアミック酸組成物(A)を用い、製造例1に倣って円筒状金型上に塗工、乾燥処理を行い、ポリイミド無端ベルトを製造した。各種特性を測定した結果、イミド化反応がほとんど進行しておらず、ベルト強度も低いため、電子写真装置用中間転写ベルト、定着ベルトとしては、使用できないものであった。得られたポリイミド無端ベルトについて、製造条件とベルト特性を表3に示す。
【0123】
【表3】

【0124】
(製造例14)
製造例13で得たポリイミド無端ベルトを、常圧下、150℃で2時間焼成処理することでポリイミド無端ベルトを得た。得られたポリイミド無端ベルトは、製造例13で得られたポリイミド無端ベルトに比べ、イミド化率、強度は共に高いものの、電子写真装置用中間転写ベルト、定着ベルトとしては使用できないものであった。得られたポリイミド無端ベルトについて、製造条件とベルト特性を表3に示す。
【0125】
(調整例3) ポリアミック酸組成物(B)の調整
合成例1で調整したポリアミック酸溶液200g中に、無水酢酸4.0g(ポリアミック酸に対して10質量部)を加えて溶解させた後、ポリアミック酸組成物(B)を得た。
【0126】
(調整例4) カーボンブラック分散ポリアミック酸組成物(b)の調整
合成例1で調整したポリアミック酸溶液200g中に、無水酢酸4.0g(ポリアミック酸に対して10質量部)を加えて溶解させた後、乾燥した酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%)8.0gを添加して、ボールミルにて6時間で処理して、カーボンブラック分散ポリアミック酸組成物(b)を得た。
【0127】
(調整例5) ポリアミック酸組成物(C)の調整
合成例1で調整したポリアミック酸溶液200g中に、ピリジン4.0g(ポリアミック酸に対して10質量%)と、無水酢酸4.0g(ポリアミック酸に対して10質量部)を加えて溶解させた後、ポリアミック酸組成物(C)を得た。
【0128】
(調整例6) カーボンブラック分散ポリアミック酸組成物(c)の調整
合成例1で調整したポリアミック酸溶液200g中に、ピリジン4.0g(ポリアミック酸に対して10質量%)と、無水酢酸4.0g(ポリアミック酸に対して10質量部)を加えて溶解させた後、乾燥した酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%)8.0gを添加して、ボールミルにて6時間で処理して、カーボンブラック分散ポリアミック酸組成物(c)を得た。
【0129】
−ポリアミック酸組成物の安定性−
調整例3〜6で得られた組成物を室温で放置したところ、およそ1週間で組成物のゲル化が発生した。
【0130】
(製造例15)
ポリアミック酸組成物(B)を使用した以外は、製造例13と同様にしてポリイミド無端ベルトを得た。得られたポリイミド無端ベルトについて、製造条件とベルト特性を表3に示す。
【0131】
(製造例16)
ポリアミック酸組成物(B)を使用した以外は、製造例14と同様にしてポリイミド無端ベルトを得た。得られたポリイミド無端ベルトについて、製造条件とベルト特性を表3に示す。
【0132】
(製造例17)
ポリアミック酸組成物(C)を使用した以外は、製造例13と同様にしてポリイミド無端ベルトを得た。得られたポリイミド無端ベルトについて、製造条件とベルト特性を表3に示す。
【0133】
(製造例18)
ポリアミック酸組成物(C)を使用した以外は、製造例14と同様にしてポリイミド無端ベルトを得た。得られたポリイミド無端ベルトについて、製造条件とベルト特性を表3に示す。
【0134】
(製造例19〜24)
表3に従ってポリアミック酸組成物にカーボンブラック分散ポリアミック酸組成物(a)、(b)、(c)を用いた以外は、それぞれ製造例13〜14と同様にしてポリイミド無端ベルトを得た。
【0135】
得られたポリイミド無端ベルトについて、製造条件とベルト特性を表3に、電子写真機搭載試験の結果を表4に示す。本条件で得られたポリイミド無端ベルトは、力学特性、電気特性の点で先の実施例で製造したポリイミド無端ベルトより劣り、電子写真装置に搭載した際に中間転写ベルトとして好適に使用できないことが確認された。
【0136】
【表4】

【0137】
上記の結果より、力学的特性、電気的特性を良化しつつ、膜品質をも向上させたポリイミド無端ベルトは、本発明にかかるもののみであり、本発明にかかる製造方法により、乾燥・焼成処理に必要なエネルギーを大きく低減させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の画像形成装置の一例であるカラー電子写真複写機を示す概略図である。
【符号の説明】
【0139】
100:カラー電子写真複写機
101:感光体
102:中間転写体
103:記録媒体
105〜108:現像器
109〜112:転写コロトロン
116:クリーニング装置
117、118:冷却ロール
120:加熱転写ロール
121〜124:転写バッフル
125:バックアップロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリアミック酸と溶媒とを含有するポリアミック酸組成物を円筒状基材上に塗工処理した後に、沸点が250℃以下の化学イミド化剤を気化させた気化物を前記ポリアミック酸組成物に作用させる化学イミド化処理工程を有することを特徴とするポリイミド無端ベルトの製造方法。
【請求項2】
少なくともポリアミック酸と溶媒とを含有するポリアミック酸組成物を円筒状基材上に塗工処理した後に、沸点が250℃以下の化学イミド化剤を気化させた気化物を前記ポリアミック酸組成物に作用させる化学イミド化処理工程を経て形成されてなるベルトであることを特徴とするポリイミド無端ベルト。
【請求項3】
請求項2に記載のポリイミド無端ベルトを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−213024(P2006−213024A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30609(P2005−30609)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】