説明

ポリウレタン尿素系

ある実施態様においては、ポリウレタン尿素用のパートAおよびパートB反応成分を含むポリウレタン尿素系を開示する;典型的な実施態様は、55〜75質量%のオリゴマーポリオール、3〜7質量%の芳香族ジアミン連鎖延長剤、および0.1〜1.5質量%の反応性触媒を含むパートAを提供する;パートBは、1〜15質量%の短鎖芳香族ジイソシアネート、および5〜35質量%の、短鎖芳香族ジイソシアネートとジオールとの反応生成物である芳香族ジイソシアネートプレポリマーを含む。該ポリウレタン尿素系は、第2の短鎖芳香族ジイソシアネートと第2の芳香族ジイソシアネートプレポリマーとを含むエラストマー表面活性化剤をさらに含み、第2ジイソシアネートの少なくとも1つは、パートBのジイソシアネートの少なくとも1つと同じであり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ポリウレタン尿素系に関し、さらに詳細には、エラストマー、とりわけ、架橋ゴムを含むエラストマーを結合させ、充填するのに有用なポリウレタン尿素系に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン接着剤製品のような種々の接着剤製品は、シーラントとして使用するのに或いは、例えば、天然ゴム、合成ゴム、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリクロロプレン等のような高分子エラストマー材料をパッチ加工するのに商業的に入手可能である。
ポリウレタンは、典型的には、ポリイソシアネート、ポリグリコール類および連鎖延長剤から合成される。連鎖延長剤は、典型的に、低分子量ジオール、ジアミン、アミノアルコールまたは水から選ばれる。連鎖延長剤がジオールである場合、形成されるポリウレタンは、全くのウレタン結合からなる。しかしながら、例えば、連鎖延長剤が水、アミノアルコールまたはジアミンである場合、ウレタン結合および尿素結合の双方が存在し、得られる組成物は、いわゆるポリウレタン尿素またはPUUである。従って、ウレタン結合および尿素結合の双方を有するポリウレタンタイプの組成物は、ポリウレタン尿素と称し得る。
【発明の概要】
【0003】
本発明の特定の実施態様は、エラストマーを結合および/または修理するのに有用であるポリウレタン尿素系を含む。この系は、反応してポリウレタン尿素を形成する反応成分を含み、該反応成分は、パートAおよびパートBを含む。これらのパートは、パートAおよびパートB反応成分の総質量を基準とする反応成分各々の質量画分でもって以下のような混合物を含む:パートAは、約55〜約75質量%の約1000よりも高い平均分子量を有するオリゴマーポリオール(ある実施態様においては第一級ポリオール)、約3〜7質量%の芳香族ジアミン連鎖延長剤、および約0.1〜約1.5%の反応性触媒を含む混合物であり;パートBは、約1〜約15質量%の短鎖芳香族ジイソシアネート、および約5〜約35質量%の、短鎖芳香族ジイソシアネートとジオールとの反応生成物である芳香族ジイソシアネートプレポリマーを含む混合物である。上記ポリウレタン尿素系の特定の実施態様においては、パートAおよびパートBの混合物中のイソシアネート官能価対アミンおよびヒドロキシル官能価の総数の比が約0.8〜約2であることを条件とする。また、特定の実施態様においては、上記比は、約1〜約1.07であることを条件とする。
上記ポリウレタン尿素系は、第2の短鎖芳香族ジイソシアネートと第2の芳香族ジイソシアネートプレポリマーとを含むエラストマー表面活性化剤をさらに含み得、第2ジイソシアネートの少なくとも1つは、パートBのジイソシアネートの少なくとも1つと同じであり得る。
【0004】
本発明の特定の実施態様は、さらに、上記のポリウレタン尿素系の各反応成分を反応させる工程を含む方法を提供する。上記方法は、上記ポリウレタン尿素を架橋ゴム物品の表面に適用する工程;および、上記架橋ゴム物品の表面を基体に結合させる工程をさらに含み得る。上記方法の特定の実施態様は、エラストマー表面活性化剤を上記架橋ゴム物品の表面に適用する工程をさらに含み得、上記エラストマー表面活性化剤は、第2の短鎖芳香族ジイソシアネートと第2の芳香族ジイソシアネートプレポリマーを含む。必要に応じて、上記方法は、上記架橋ゴム物品の表面を溶媒中トリクロロイソシアヌル酸溶液によってプライマー処理する工程をさらに含む。
【0005】
本発明の特定の実施態様は、さらに、上記物品に上述のポリウレタン尿素系によって結合させたコンポーネントを含む物品を含む。
本発明の特定の実施態様は、上記エラストマー表面活性化剤をトレッドバンドの結合用表面に適用する工程;上記ポリウレタン尿素材料を上記トレッドバンドの結合用表面に適用する工程;および、上記ポリウレタン尿素材料を結合用表面上に有する上記トレッドバンドの結合用表面をタイヤカーカスの外部結合用表面上に取付ける工程を含む、タイヤの再トレッド形成方法を提供する。
本発明の特定の実施態様は、さらに、エラストマー物品の損傷表面を上記エラストマー表面活性化剤でコーティーングする工程(上記損傷表面は、上記物品中の孔、断裂、削溝、開裂、切断部または裂傷の露出表面である);および、上記物品中の孔、断裂、削溝、開裂、切断部または裂傷を上記ポリウレタン尿素で充填する工程を含むエラストマー物品の修理方法を提供する。
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は、同じ参照番号が同じ本発明の1部を示している添付図面において例示しているような、本発明の好ましい実施態様についての以下のより具体的な説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】種々のゴム組成物および本発明に従う典型的なポリウレタン尿素材料の伸びとモジュラスをプロットしたグラフである。
【図2】種々のゴム組成物および本発明に従う典型的なポリウレタン尿素材料の歪みと真の応力をプロットしたグラフである。
【図3】種々のゴム組成物および本発明に従う典型的なポリウレタン尿素材料の伸びとヒステリシスをプロットしたグラフである。
【図4】本発明に従う典型的なポリウレタン尿素系によって結合させた数種のゴム組成物の破壊応力と破壊歪みをプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、ポリウレタン尿素系、その製造方法、およびその使用方法を包含する。上記ポリウレタン尿素系は、エラストマー物品のような、さらに、架橋(硬化)ゴムコンパウンドを含むエラストマー物品のような種々の物品用の接着剤としておよび/または修理材料として有用である。上記ポリウレタン尿素系は、エラストマー材料のような本来の材料の損害をもたらし、修理すべきである孔、断裂、削溝、開裂、切断部、裂傷および/または他の損傷を充填するための修理材料として有用である。本発明は、さらに、上記ポリウレタン尿素を接着剤および/または修理材料として含む物品も包含する。
特定の実施態様の上記ポリウレタン尿素系は、パートAおよびパートB反応成分の反応から得られるポリウレタン尿素生成物を提供する。パートAは、オリゴマーポリオールおよび芳香族ジアミン連鎖延長剤を含む反応成分の混合物を含み得;一方、パートBは、短鎖芳香族ジイソシアネートおよび芳香族ジイソシアネートプレポリマーを含む反応成分の混合物を含む得、上記プレポリマーは、短鎖芳香族ジイソシアネートとジオールとの反応生成物である。有利には、特定の実施態様は、パートAおよびパートB混合物中に溶媒および/または充填剤を含まない。
パートAおよびパートB反応成分の混合物は、ある実施態様においては、混合物中のイソシアネート官能価対アミンおよびヒドロキシル官能価の総数の比が約0.9〜約2であるものとして特徴付けし得る。他の実施態様は、約1〜約1.7のそのような比を有し、一方、他の実施態様は、約1〜約1.07または約1〜約1.03の比を有する。
【0008】
特定の実施態様のポリウレタン尿素系を調製するのに使用するパートA混合物は、オリゴマーポリオールおよび芳香族ジアミン連鎖延長剤を含む。オリゴマーポリオールは、反応してポリウレタン尿素組成物中にウレタン結合を形成する。特定の実施態様は、約1000よりも高いまたは約1000〜4000の平均分子量を有するオリゴマーポリオールを含み、また、他の実施態様は、約1500〜4000または約2000〜約4000の平均分子量を有するポリオールを含む。分子量は、特に断らない限り、全体を通して質量平均分子量として表す。
特定の実施態様のオリゴマーポリオール反応成分は、約1000未満、または約900未満、または約800未満の分子量を有するオリゴマーポリオールを含まないものとして特徴付けし得る。また、特定の実施態様においては、オリゴマーポリオールは、約5質量%よりも多くない或いは約10質量%、15質量%または約25質量%よりも多くない、それぞれ約1000未満、約900未満または約800未満の分子量を有するオリゴマーポリオールを含み得る。
【0009】
特定の実施態様のオリゴマーポリオール反応成分は、さらに、主として第一級オリゴマーポリオールであるとして特徴付けし得る。例えば、ある実施態様は、100質量%が第一級オリゴマーポリオールまたは少なくとも95質量%が第一級オリゴマーポリオールまたは少なくとも75質量%が第一級オリゴマーポリオールであるようなオリゴマーポリオールを含み得る。特定の実施態様は、約2のOH官能価を有するオリゴマーポリオール反応成分を含む。
適切な第一級オリゴマーポリオールの非限定的な例としては、ポリエーテルポリオール、アミン末端ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、多環式ポリオールおよびポリカーボネートポリオールがある。ポリエーテルポリオールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)がある。アミン末端ポリオールは、第一級または第二級アミノ官能基により置換した末端ヒドロキシル基を有しているポリエーテルグリコールをベースとする。ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリエチレングリコールアジペート、ポリカプロラクトンジオールおよびポリカプロラクトン-ポリアジペートコポリマージオールがあり得る。
【0010】
第一級だけでないオリゴマーポリオールを含む実施態様においては、例えば、第二級ポリオールを、特定の実施態様における反応成分として含ませ得る。そのような第二級オリゴマーポリオールとしては、例えば、ポリブチレンオキサイドグリコール(PBO)、ポリプロピレンオキサイドグリコール(PPO)およびヒマシ油があり得る。
必要に応じて、オリゴマーポリオール反応成分は、上述したオリゴマーポリオール類からおよび/または当業者にとって既知であるような他のオリゴマーポリオール類から選択したオリゴマーポリオールの混合物を含み得る。
特定の実施態様は、総質量の約50質量%〜約80質量%または約55質量%〜約75質量%または約60質量%〜約72質量%であるような量のオリゴマーポリオール反応成分(パートAおよびパートBの反応物成分の総質量の質量%として表す)を含む。
【0011】
パートA混合物中に含ませ得るもう1つの反応成分は、芳香族ジアミン連鎖延長剤である。芳香族ジアミン連鎖延長剤は、反応してポリウレタン尿素反応生成物中の尿素結合を形成する。芳香族ジアミン連鎖延長剤は、例えば、第一級および/または第二級芳香族ジアミンであり得る。特定の実施態様は、第一級芳香族ジアミンのみを含み、或いは芳香族ジアミン反応成分は、例えば、少なくとも75質量%または少なくとも95質量%の第一級芳香族ジアミンを含み得る。
芳香族ジアミン連鎖延長剤反応成分の非限定的な例としては、DETDA (ジエチルトルエンジアミン)の2,4および2,6 異性体、メチレンビス(N,N-ジブチルジアニリン)、IPDA(イソホロンジアミン)、または3,5-ジメチルチオ-2,4-トルエンジアミン、3,5-ジメチルチオ-2,6-トルエンジアミンの各異性体、或いはこれらの混合物がある。他の例としては、メチレンジアニリン(MDA)、4,4'-メチレン-ビス-3-(クロロ-2,6-ジエチルベンゼンアミン) (MCDEA);4,4'-メチレン-ビス-(2-エチル-6-メチルアニリン) (MMEA);4,4'-ビス-(2,6-ジエチルアニリン) (MDEA);4,4'-メチレン-ビス-(2-イソプロピル-6-メチルアニリン)(MMIPA);4,4'-ビス(sec-ブチルアミノ)ジフェニルメタン;フェニレンジアミン;メチレン-ビス-オルソクロロアニリン(MBOCA);4,4'-メチレン-ビス-(2-メチルアニリン) (MMA);4,4'-メチレン-ビス-(2-クロロ-6-エチルアニリン) (MCEA);1,2-ビス(2-アミノ-フェニルチオ)エタン;N,N'-ジ-アルキル-p-フェニレンジアミン;4,4'-メチレン-ビス-(2,6-ジイソプロピルアニリン)(MDIPA);ジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)またはこれらの混合物がある。
【0012】
必要に応じて、芳香族ジアミン連鎖延長剤反応成分は、上述した芳香族ジアミン連鎖延長剤からおよび/または当業者にとって既知であるような他の芳香族ジアミン連鎖延長剤から選ばれた芳香族ジアミン連鎖延長剤の混合物を含み得る。
特定の実施態様は、総質量の約0質量%〜約10質量%または約5質量%〜約7質量%または約3.5質量%〜約5質量%であるような量の芳香族ジアミン連鎖延長剤反応成分(パートAおよびパートBの反応物成分の総質量の質量%として表す)を含む。
【0013】
特定の実施態様のポリウレタン尿素系を調製するのに使用するパートB混合物は、短鎖芳香族ジイソシアネートおよびプレポリマーを含む。プレポリマーは、短鎖芳香族ジイソシアネートとジオールから調製し得る。短鎖芳香族ジイソシアネートは、典型的には重合させていない成分である。
特定の実施態様において含ませる短鎖芳香族ジイソシアネート反応成分は、取扱いを簡単にするための室温で低粘度の液体であるとして特徴付けし得る;例えば、短鎖芳香族ジイソシアネートは、25℃で約20〜約30cpsの粘度を有する。短鎖芳香族ジイソシアネート反応成分は、典型的には約500未満である分子量を有し、特定の実施態様は、160〜150または160〜300の分子量を有する。特定の実施態様においては、短鎖芳香族ジイソシアネート反応成分は、2または約1.8〜2.2または約1.9〜約2.1のイソシアネート官能価を有し得る。
【0014】
適切な短鎖芳香族ジイソシアネートの非限定的な例としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、p-およびm-フェニレンジイソシアネート;トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、2,4および/または2,6 トルエンジイソシアネート(TDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート;カルボジイミド変性メチレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)および必要に応じてのそのより高級ホモログ(高分子MDI)、変性MDI化合物、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、個々の芳香族ジイソシアネートの異性体混合物、またはこれらの組合せがある。短鎖芳香族ジイソシアネートとして有用である変性MDIの例は、Dow Chemical Company社からISONATE 143Lとして入手し得るようなポリカルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートである。
特定の実施態様は、総質量の約0質量%〜約25質量%または約1質量%〜約15質量%または約1質量%〜約13質量%であるような量の短鎖芳香族ジイソシアネート反応成分(パートAおよびパートBの反応物成分の総質量の質量%として表す)を含む。
【0015】
上記ポリウレタン尿素系のパートB混合物の芳香族ジイソシアネートプレポリマー反応成分は、特定の実施態様においては、上述したような短鎖芳香族ジイソシアネート
とジオールとの反応生成物として特徴付けし得る。この芳香族ジイソシアネートプレポリマーは、さらに、2または約1.8〜2.2または約1.9〜約2.1のイソシアネート官能価を有するものとして特徴付けし得る。
特定の実施態様においては、上記芳香族ジイソシアネートプレポリマーを調製するために反応させるジオールは、第一級ジオールである。特定の実施態様においては、上記プレポリマーを調製するのに使用するジオールは、100質量%第一級ジオールであり得、約95質量%よりも多くが第一級ジオールであり得、約75質量%よりも多くが第一級ジオールであり得、或いは約50質量%よりも多くが第一級ジオールであり得る。特定の実施態様は、約250〜約3000または約400〜約2000の分子量を有するジオールを含む。
典型的には、適切なプレポリマーは、500よりも高い或いは約500〜約4000である分子量を有し得る。他の実施態様は、約800〜約3000または約850〜約1500である分子量を有するプレポリマーを含む。
【0016】
特定の実施態様における反応成分としての有用なプレポリマーは、短鎖芳香族ジイソシアネートとポリエーテルまたはポリエステル系第一級ジオールの反応生成物であり得る。有用なポリエーテル系芳香族ジイソシアネートプレポリマーの例は、Chemtura社からVIBRATHANE B836として入手し得るようなポリエーテル系ジフェニルメタンジイソシアネート末端プレポリマーである。このポリマーは、ポリエーテルとジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)との反応生成物である。
特定の実施態様は、総質量の約0質量%〜約50質量%または約5質量%〜約45質量%または約10質量%〜約35質量%であるような量の芳香族ジイソシアネートプレポリマー反応成分(パートAおよびパートBの反応物成分の総質量の質量%として表す)を含む。
【0017】
拡散するには粘稠になり過ぎる前の上記ポリウレタン尿素接着剤/修理材料のポットライフまたは使用期限は、各反応成分(パートAおよびパートB)を一緒に混合した後において、40℃で約1.5〜約4分であり得る。従って、上記ポリウレタン尿素系の特定の実施態様は、反応成分として、当業者にとって既知であるようなポットライフを調整するのに有用である反応性触媒を含み得る。典型的な反応性触媒は、トリエチレンジアミンのような脂環式第三級アミンである。
反応性触媒は、典型的には、反応成分に総反応成分(パートAおよびパートB)の約0.1〜約1.5質量%で添加し得る。他の実施態様においては、反応性触媒は、反応成分に約0〜約15質量%、約0.05〜約9質量%または約0.4〜約1質量%で添加し得る。
特定の実施態様においては、上記触媒を省くことは、上記触媒を添加したときに生じた他の実施態様の材料と比較した場合、はるかに硬質で全く不透明であるポリウレタン尿素材料しか得られないことが判明した。上記反応性触媒を含む特定の実施態様は、有利なことに、結合させるおよび/または修理するゴム弾性材料と物理的性質、例えば、剛性、破壊時伸びおよびヒステリシスにおいて典型的に同等であるポリウレタン尿素材料を提供する。
【0018】
また、保護剤を反応成分に添加して環境災害に対する保護を提供することもできる。そのような保護剤としては、例えば、酸化防止剤、UV吸収剤、光安定剤およびこれらの組合せがある。また、反応性高分子着色剤を反応成分として添加してポリウレタン尿素材料に彩色を施すこともできる。例えば、タイヤを修理する場合、黒色着色剤を使用して、修理材料がタイヤの色と一致するようにすることができる。
【0019】
上記ポリウレタン尿素系の特定の実施態様は、さらに、パートAおよびパートB混合物を適用する前に、結合させるおよび/または修理する材料の表面をコーティーングするのに使用するエラストマー表面活性化剤を含み得る。特定の実施態様のポリウレタン尿素系によって結合させるおよび/または修理する材料は、エラストマー材料および/または架橋ゴム材料であり得る。エラストマー表面活性化剤の使用により、特定の実施態様においては、パートAおよびパートB混合物から形成されたポリウレタン尿素の結合させるまたは修理する表面に対する改良された結合性が得られる。
特定の実施態様のエラストマー表面活性化剤は、短鎖芳香族ジイソシアネート(上述したような)およびプレポリマーを含み得る。プレポリマーは、例えば、上述したような短鎖芳香族ジイソシアネートとジオールとの反応生成物であり得る。特定の実施態様においては、上記エラストマー表面活性化剤の短鎖芳香族ジイソシアネートは、パートB混合物の反応成分として選択する短鎖芳香族ジイソシアネートと同一でもよく;或いは、上記エラストマー表面活性化剤の短鎖芳香族ジイソシアネートは、パートB混合物の反応成分として選択する短鎖芳香族ジイソシアネートと異なっていてもよい。特定の実施態様は、短鎖芳香族ジイソシアネートとプレポリマーのみを含み溶媒を含まないエラストマー表面活性化剤を含み、一方、他の実施態様は溶媒を含む。
エラストマー表面活性化剤中に溶媒を含む実施態様においては、溶媒含有量は、典型的には、エラストマー表面活性化剤の総質量基準で約35〜約65質量%である。適切な溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)またはこれらの混合物がある。エラストマー表面活性化剤の特定の実施態様は、エラストマー表面活性化剤中のジイソシアネートの総質量基準で約0〜約90質量%または約0〜約80質量%または約5〜約80質量%の量の短鎖芳香族ジイソシアネートを含み、残りはプレポリマーである。特定の実施態様は、上記活性化剤中に、例えば、短鎖芳香族ジイソシアネート対芳香族ジイソシアネートプレポリマーの約50:50質量%混合物を含み、或いは短鎖芳香族ジイソシアネート対芳香族ジイソシアネートプレポリマーの約5:95質量%比を有する。
【0020】
また、本発明の特定の実施態様は、ポリウレタン尿素接着剤/修理材料の製造方法も含む。1つの特定の実施態様は、パートA混合物をパートB混合物と反応させる工程を含む。1つの実施態様においては、下記の量(反応物成分の総質量の質量%として表す)を反応させる:
パートA
a) 約55〜約75%の、1000よりも高い平均分子量を有するオリゴマーポリオール;
b) 約3〜約7%の芳香族ジアミン連鎖延長剤;および、
c) 0.1〜1.5%の反応性触媒。
パートB
d) 約1〜約15%の短鎖芳香族ジイソシアネート;および、
e) 約5〜約35%の上記プレポリマー。
上記ポリウレタン尿素材料の剛性をパートA混合物中の芳香族ジアミン連鎖延長剤対ポリオールの比を変えることによって調整することができることは注目し得る。芳香族アミンの量を増大させることにより、剛性は、得られるポリウレタン尿素材料中で典型的に上昇する。
必要に応じて、約0〜約5質量%の保護剤および/または着色剤を反応混合物に添加し得る。特定の実施態様は、約0.5〜約2質量%のこれらの物質を含む。典型的には、これらの物質は、反応物成分のパートA混合物に添加し得る。特定の実施態様においては、これらの成分の数種または全部を反応物成分のパートBに添加し得る。
【0021】
上記ポリウレタン尿素組成物の製造方法の特定の実施態様は、2液型反応混合物を接着剤ディスペンサーにより、さらにまた、静的ミキサーを有し得るディスペンサーにより分配する工程を含む。静的ミキサーは、典型的には使い捨てであり、パートA混合物とパートB混合物を分配工程中に良好に混合するのを確実にする。接着剤ディスペンサーは、手動により、空気圧により或いは電気的に操作し得る。接着剤ディスペンサーは、パートA混合物とパートB混合物を手動で配分し混合する代替装置として使用し得る。
そのようなディスペンサーおよびその使用は、当業者にとって周知であり、例えば、ニューハンプシャー州に事業所を置くConProTec社から商品名MIXPAC Systemsとして入手可能である。接着剤ディスペンサーのカートリッジ容積比は、接着剤調製物と適合し得なければならない。例えば、MIXPAC Systemsは、1:1、2:1、4:1または10:1の2液系混合比の混合接着剤を提供するモデルにおいて利用可能である。
【0022】
上記ポリウレタン尿素系の特定の実施態様を使用してのエラストマー表面の結合および/または修理は、結合および/または修理すべき表面の上記エラストマー表面活性化剤による処理を含む。上記方法の特定の実施態様においては、結合および/または修理すべき少なくとも1つの表面はエラストマー表面を含み、それらの表面の幾つかは、架橋ゴム組成物を含むエラストマーを含み得る。必要に応じて(必須ではないが)、エラストマー表面は、クリーニングし、プライマーで処理して、エラストマー表面活性化剤および/またはポリウレタン尿素反応成分を適用する前に、結合および/または修理すべき表面の接着性および湿潤性を改良することができる。そのようなプライマーによる処理は、汚染層または接着性の乏しい層を典型的に排除する。典型的なプライマーは、例えば、溶媒中のトリクロロイソシアヌル酸(TIC)の溶液、例えば、酢酸エチル中2〜6%TICである。
プライマーを使用する場合、そのプライマーをエラストマー表面上にブラシ塗りし、表面上に約15分間残存させ得る。その後、表面を酢酸エチルのような溶媒で洗浄して、あり得る過剰のTICを除去し得る。これらの工程は、表面が清浄で且つエラストマー表面活性化剤および/またはポリウレタン尿素反応成分に対して整えるまで繰返し得る。
【0023】
エラストマー表面活性化剤は、結合および/または修理すべき表面上に、ブラシ、スパチュラ、スプレーまたは当業者にとって既知の他の手段を使用して適用し得る。エラストマー表面活性化剤の1以上の層を適用して所望厚を得ることができる。特定の実施態様は、約0.5mmまでまたは約0.05〜約0.25mmの厚さのエラストマー表面活性化剤を適用することを含む。ポリウレタン尿素材料の接着性は、2液型ポリウレタン尿素反応成分を適用する前に、エラストマー表面活性化剤の使用によって典型的に改良される。
上記ポリウレタン尿素系によって物品を修理するおよび/または表面を結合させる特定の実施態様は、有利には、周囲温度、即ち、約20℃〜約40℃で実施し得る。相対表面を一緒に結合させる場合、例えば約0.03バール〜約5バールの圧力を結合片に適用し得、適用時間は、低めの圧力において典型的に比例的に長い。
本発明において使用するポリウレタン尿素系の熟成時間は、材料を結合させるおよび/または修理するときに使用し得る。この熟成時間は、典型的には、周囲温度で約48時間或いは60℃〜100℃の温度で数時間であり得る。有利には、上述したような第一級ジオールから主として調製したポリウレタン尿素系は、その結合/修理状態を、少なくとも130℃の温度に供したときでさえも維持しており、この温度は、トレッドをタイヤカーカスに結合させるためのクッションゴム材料を使用してのタイヤ再トレッド形成過程における典型的な硬化温度である。
【0024】
有利には、上記ポリウレタン尿素系の特定の実施態様は、タイヤにおいて使用する各種架橋ゴムエラストマーの剛性およびヒステリシスと全く適合し得る剛性およびヒステリシス特性を有する材料を提供する。上記ポリウレタン尿素材料のこの特性は、この材料をタイヤ用の接着剤および/または修理材料として極めて有用なものとしている。
本発明の特定の実施態様は、本明細書において開示するポリウレタン尿素系を使用する結合表面および/または修理箇所を有する物品を含む。例えば、本発明の特定の実施態様に従う物品は、相対面において開示したポリウレタン尿素系によって一緒に結合させている部分を含み、相対表面の少なくとも1つは、架橋ゴム組成物を含む。上記ポリウレタン尿素反応成分を混合した後、上記ポリウレタン尿素反応成分を、典型的には、例えば、スプレーガン、ブラシまたは2液接着剤ガンを使用して、各部品の相対表面に適用する。特定の実施態様においては、エラストマー表面活性化剤を、混合ポリウレタン尿素反応成分を適用する前に、相対面の両表面に適用する。
【0025】
本発明の特定の実施態様は、本明細書において開示するポリウレタン尿素系によって結合させたエラストマーパッチを有するタイヤを含む。上記エラストマーパッチは、無線周波数識別(RFID)技術を含み、このパッチは、タイヤの内部または外部表面に結合させ得る。
他の実施態様は、タイヤのようなもう1つの物品の表面への結合用物品を含む。タイヤのようなもう1つの物品の表面に結合させ得るそのような物品としては、例えば、エラストマー材料製または金属もしくは繊維製の文字がある。他の物品としては、タイヤのような他の物品の表面に直接結合させることのできる電子コンポーネントまたは装置があり得る(電子コンポーネントまたは装置をパッチ内に取付けまたは封入することはなく)。そのような装置の非限定的な例としては、例えば、RFIDチップ、表面音響波(SAW)センサー、圧力および/または温度センサーがあり得る。そのような装置は、タイヤの内表面上またはタイヤの外表面上に取付け得る。そのような実施態様は、以下の工程のいずれかまたは全部を含み得る:タイヤのような物品の表面をクリーニングする工程;プライマー(溶媒中TIC溶液のような)を表面に適用する工程(上述したようにして);エラストマー表面活性化剤を表面に適用する工程(上述したようにして);電子コンポーネントまたは装置をタイヤ表面上に置く工程;混合パートAおよびパートB反応成分を電子コンポーネントまたは装置の少なくとも1部上に直接適用し、それによって電子コンポーネントまたは装置を表面に直接結合させる工程。前述したように、物品をタイヤ表面に結合させる工程を含む実施態様においては、物品(電子コンポーネントまたは装置のような)は、タイヤの外または内表面に結合させ得る。
必要に応じて、例えば、RFID装置またはSAWセンサーのようなコンポーネントは、当業者にとって既知であるような転写フィルムを使用して適用し得る。転写フィルムは、可撓性のプラスチックシートであり得る。装置を転写フィルム上に置き、次いで、上記ポリウレタン尿素成分(パートAおよびパートB混合物)で少なくとも部分的に被覆し得る。その後、上記のタグを有するフィルムを所望の位置、例えば、タイヤの表面に置く;フィルムは、外側に面する。その後、フィルムをはがして、表面に結合させたコンポーネントを残す。
【0026】
エラストマー表面を含むタイヤまたは他の物品は、物品中の孔、切断部、断裂、削溝または他の開口を本明細書において開示するポリウレタン尿素系で充填することによって修理することができる。乗用車タイヤ、トラックタイヤ、オートバイタイヤ、オフロードタイヤおよび他のタイプのタイヤは、本発明のポリウレタン尿素系を使用して修理またはパッチ加工し得る。上記材料は、タイヤ側壁内の断裂、孔または削溝を修理するのにとりわけ有用である。特定の実施態様においては、上記物品は、エラストマー表面活性化剤を、次いで、パートAおよびパートB混合物を適用することによって修理する。
従って、本発明の特定の実施態様は、上記ポリウレタン尿素系によって結合および/または修理すべきエラストマー表面を有するタイヤまたは他の物品を含む。切断部、亀裂、孔または削溝を有するタイヤの場合、修理すべき領域を、ゆるやかな表面物質を除去し、損傷領域内または周辺の表面をクリーニングすることによって整える。準備は、削溝、切断部または亀裂内の表面の通常の任意の装置または処理によるバフ研磨を含み得る。
【0027】
タイヤ内のコードが損傷している場合、損傷コードを除去し、補強パッチを、当業者にとって既知にようにして、タイヤの内表面に適用することができる。そのようなコードは、ポリエステル、ナイロン、スチール、レーヨン等から製造し得る。補強パッチは、本明細書において開示するポリウレタン尿素系を使用してタイヤの内表面に結合させ得る。同様に、損傷が側壁を貫いた孔を生じている場合、パッチをタイヤの内表面に修理部品として同様に適用し得る。
その後、削溝、亀裂および/または孔の内面を、必要に応じて、上述したようなエラストマー表面活性化剤でコーティーングし得る。その後、損傷領域を、パートAとパートB材料を混合し混合物を上記亀裂または削溝内に適用することによって、上記ポリウレタン尿素材料で充填する。その後、上記材料を、周囲温度、即ち、約20℃〜40℃で硬化せしめる。上記材料は、タイヤへの他の修理が加熱および加圧下での硬化を必要とする場合、当業者にとって知られている通りにオートクレーブ内に置き得る。
上記ポリウレタン尿素材料の硬化は周囲温度で生じるので、本発明のポリウレタン尿素系は、オフロードタイヤ、コンベアベルト等のような大きい品目の現場修理においてとりわけ有用である。上記ポリウレタン尿素系は、現場において、特別なオートクレーブ、蒸気室または加硫性タイヤ修理装置を必要としないで使用することができる。
【0028】
本発明の特定の実施態様は、さらに、トレッドバンドをタイヤカーカスに結合させる工程を含む;タイヤカーカスは、新品または中古である。トレッドバンドを中古タイヤカーカスへの結合は、タイヤの再トレッド形成として知られている。本発明の実施態様は、さらに、本発明のポリウレタン尿素系によって結合させたトレッドを有するタイヤを含む。
本発明の再トレッド形成方法は、老朽トレッドをタイヤカーカスから取外す工程、タイヤカーカスをエラストマー表面活性化剤で処理する或いはトレッドバンドをエラストマー表面活性化剤で処理する或いは双方をエラストマー表面活性化剤で処理する工程を含む。この方法は、混合ポリウレタン尿素反応物をトレッドバンドまたはタイヤカーカスまたはその双方の露出表面に適用する工程;および、その後の、トレッドバンドをタイヤカーカスの表面上に置く工程をさらに含む。
【0029】
本発明の特定の実施態様は、エラストマー表面を有する物品、とりわけ、架橋ゴム組成物を含む少なくとも1つの表面を有する物品を結合させるまたは修理する工程を含む。特定の実施態様は、少なくとも1種のジエンエラストマーを主として含む架橋ゴム組成物を含む少なくとも1つの表面を有する。
用語“ジエンエラストマー”とは、ジエンモノマー(2個の共役または非共役炭素-炭素二重結合を担持するモノマー)に少なくとも1部由来するエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)、とりわけ、下記を意味する:
4〜12個の炭素原子を含有する共役ジエンモノマーの重合によって得られる任意のホモポリマー;
1種以上の共役ジエンの相互または8〜20個の炭素原子を含有する1種以上のビニル芳香族化合物との共重合によって得られる任意のコポリマー;
エチレンまたは3〜6個の炭素原子を含有するアルファ-オレフィンと6〜12個の炭素原子を含有する非共役ジエンモノマーとの共重合によって得られる3成分コポリマー、例えば、エチレンまたはプロピレンと上記タイプの非共役ジエンモノマー、とりわけ、1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボメン(ethylidenenorbomene)またはジシクロペンタジエンとから得られるエラストマー;または、
イソブテンとイソプレンとのコポリマー(ブチルゴムまたはIIR)、さらにまた、このタイプのコポリマーのハロゲン、とりわけ、クロロまたはブロモ形。
とりわけ好ましいジエンエラストマーは、ポリブタジエン(BR);ポリイソプレン(IR)または天然ゴム(NR);スチレン-ブタジエンコポリマー(SBR);エチレン、プロピレンおよびジエンのターポリマー(EPDM)、ブチルゴムおよびクロロプレンからなる群から選ばれる。
【0030】
本発明のさらなる実施態様においては、上記ポリウレタン尿素系接着剤によって一緒に結合させて上記の物品を得るための部品表面の1つは、架橋ゴム組成物を含み、一方、他の表面は、スチールのような鉄鋼材料または鉄系合金を含む。
本発明のさらなる実施態様によれば、表面の1つは、架橋ゴム組成物を含み、一方、他の表面は、ツーウェイ伸縮性ニットタイプの生地のような合成繊維を含んで登録商標“LYCRA”として販売されている繊維を含有する形状の膜を形成する。
本発明のさらなる局面によれば、表面の1つは、架橋ゴム組成物を含み、一方、他の表面は、熱硬化性ポリウレタンのような硬質プラスチック(例えば、タイヤカバーへの装飾用途)を含む。
本発明を、以下の実施例によってさらに具体的に説明するが、これらの実施例は、単なる例示とみなすべきであり、本発明を如何なる形においても限定するものではない。
【実施例1】
【0031】
複数バッチのポリウレタン尿素系を、下記の表1に示す反応物成分を使用して調製した。2液型接着剤/修理材料を、パートA成分をパートB成分と混合することによって調製した。その後、これらのポリウレタン尿素材料を使用し、2枚のエラストマー片を、2枚のエラストマー片間の間隙に上記ポリウレタン尿素系を充填することによって一緒に結合させた。その後、得られた結合強度を測定した。

表1:ポリウレタン尿素反応成分

【0032】
ETHACURE 300は、Albemarle Corporation社から入手し得る短鎖芳香族ジアミン連鎖延長剤である。この製品は、主として、芳香族ジアミンの3,5-ジメチルチオ-2,4 (および2,6)-トルエンジアミン(DMTDA)である。TERATHANE 2900は、DuPont社から入手し得るオリゴマーポリオールである。この製品は、2900の平均分子量を有するポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)である。REACTINT BLACK X95ABは、Milliken Chemical社から入手し得るポリオール結合着色剤である。TINUVIN B75は、Ciba Specialty Chemicals社から入手し得る保護剤系である。ISONATE 143Lは、Dow Chemical社から入手し得るポリカルボジイミド系芳香族ジイソシアネートである。この変性MDI製品は、ポリカルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートである。VIBRATHANE B836は、Chemtura社から入手し得るポリエーテル系芳香族ジイソシアネートである。この製品は、MDI末端ポリエーテル(PTMEG主鎖)ジイソシアネートである。DABCO 33-LVは、Air Products社から入手し得る反応性触媒のトリエチレンジアミンである。
【0033】
パートA各物質を一緒に混合し、パートB各物質を一緒に混合し、その後、各々を、2液接着剤ディスペンサーガンの各カートリッジ中に取込ませた。各カートリッジを、2液カートリッジ型接着剤ディスペンサーガン中に挿入した。ガンディスペンサーがパートAとパートBを静的ミキサーに給送した比率は、4:1であった;即ち、ディスペンサーは、A1およびA2においては、パートBの4倍ほど多い容量のパートAを給送し、A3においては2:1であった。パートAとパートBの反応成分を取付けた使い捨て静的ミキサーにより接着剤ディスペンサーによって混合した。
また、エラストマー表面活性化剤も調製した。エラストマー表面活性化剤は、表1に示す量のジイソシアネートを溶媒と混合することによって調製した。表1に示すジイソシアネート各々の質量%は、ジイソシアネートの総質量基準である。各ジイソシアネートを溶媒中で混合して、溶媒としての50質量%(溶液の総質量基準)の酢酸エチルまたはトルエンおよび50質量%のジイソシアネートから構成されるエラストマー表面活性化剤を調製した。
【実施例2】
【0034】
3種の異なるゴムエラストマー材料を、当業者にとって周知の方法を使用して製造した。3種の材料は、天然ゴムとシス-ポリブタジエンゴムを含む側壁タイプ(SW)のゴム組成物、ブチルゴムを含む内部ライナータイプ(IL)のゴム、および天然ゴムを含むトレッドタイプ(T)のゴムであった。これらの材料は、当業者にとって周知であるような加硫剤等もさらに含んでいた。
各組成物を2.5mmの厚さにカレンダー加工し、15×15cm四方に切断した。これらの四角片を15×15cmモールド内で硬化させた。約1.25cmのストリップを各硬化四角片から切取り、各四角片の残りの部分の各々が約1.25cm離れるようにした。その後、ストリップを切離すことによって生じた2つの部分間の容積に、実施例1において調製したポリウレタン尿素材料を充填した。表面の幾つかを実施例1において調製したエラストマー表面活性化剤で処理した。パートA成分を40℃に加熱してその流動特性を改良したことに留意すべきである。40℃に加熱後、材料を室温に冷却しても、良好な流動特性は、その後数時間(4〜8時間)保持されているであろう。
ポリウレタン尿素材料が上記両半分間の間隙を充たしたのち、各サンプルをモールド内で硬化させた。モールド上部は、サンプル上に、その硬化時に約1.5バールの圧力を与えていた。硬化は、モールド内で、以下の手順を使用して生じていた:上部を定位置にセットした後、モールドを20分間加熱して温度を室温から130℃に上昇させた;温度を130℃に100分間保った。冷却後、四角片を取出し、各々を6本のストリップに切断して試験用の6本のサンプルを作成した。
【実施例3】
【0035】
実施例2において作成した試験片を試験して、その破壊時伸び特性を測定した。伸び特性を、破壊時伸び(%)として、ASTM Standard D412に従い、ASTM C試験片において23℃で測定するようにして測定した。破壊時伸び(%)および破壊歪み(MPa)の双方を記録した。結果を、側壁ゴム(SW)組成物を含む試験片については下記の表2において、内部ライナー(IL)組成物を含む試験片については下記の表3において、そして、トレッド(T)組成物を含む試験片については下記の表4において示している。
下記の3つの表の各々に示す試験片 No.1は、ゴム立会い試験(witness test)であった。ゴム立会い試験についての試験結果は、本発明のポリウレタン尿素系によって結合させていないゴム組成物自体の破壊時伸び物理特性を示している。
表2、3および4に示しているように、試験片の結合表面の幾つかは、溶媒中トリクロロイソシアヌル酸(TIC)溶液を使用してプライマー処理した。各表は、どの試験片をプライマー処理したか、使用溶媒、および溶液を適用した時間数を示している。例えば、表2に示す試験片NO.3は、酢酸エチル溶液中のTIC5質量%の3回コーティーング(ブラシ塗り)によってプライマー処理した。サンプルは、プライマー処理後、室温で30分間乾燥させ、乾燥後酢酸エチルで洗浄した。
同様に、各表は、どの試験片を実施例1の表1に示す成分を含むエラストマー表面活性化剤で処理したかを示している。また、エラストマー表面活性化剤溶液並びに試験片を、PUU調製物を表面に付加させる前に、如何に長く乾燥させたかについても各表に示している。
【0036】
表2:側壁ゴム(SW)組成物における試験結果

【0037】
表3:内部ライナー(IL)組成物における試験結果

【0038】
表4:トレッドゴム(T)組成物における試験結果

表2〜5に示す結果を図4にプロットしている。図4における選択サークル領域は、各種ゴム組成物の各々における最適接着条件を明確にしている。
【実施例4】
【0039】
A2材料のサンプルを作成し、シートとして硬化せしめた。実施例2において製造したゴム組成物(T、SW、IL)の各々並びにA2材料のASTM C試験片を作成した。
その後、引張弾性率を、各試験片において、ASTM C試験片でのASTM D412 (1998年)に従い、10%、50%、100%、200%および300%において26℃の温度で測定した。これらは、MPaでの真の割線モジュラス、即ち、所定の伸びにおける試験片の実際の断面に対して減じて算出した割線モジュラスである。また、ヒステリシスも試験片の各々において測定した。試験手順を、INSTRON, Model 5500R試験装置において実行した。
これらの試験の結果は、図1〜3に示している。これらの図面から理解し得るように、A2ポリウレタン尿素材料は、各種ゴム組成物の剛性および弾性測定値と良好に合致している。図1および2は、A2材料が低変形においてより剛性であることを例証している。図3は、低変形での該材料の低ヒステリシスを例証している。図2において明白には示されていないものの、高変形、例えば、300%歪みよりも上では、A2材料は、TおよびSW材料よりも軟質であることが示されている。
【0040】
特許請求の範囲および明細書において使用するときの用語“含む(comprising)”、“含む(including)”および“有する(having)”は、明示されていない他の要素を含み得る開示群を示すものとみなすべきである。特許請求の範囲および明細書において使用するときの用語“から本質的になる”は、明示されていない他の要素が特許請求する発明の基本的且つ新規な特徴を実質的に変更しない限りにおいて、明示されていない他の要素を含み得る部分的開示群を示すものとみなすべきである。用語“a”“an”および単数形の単語は、複数形の同じ単語を含み、これらの用語が1以上の何かを示すこと意味するものと解釈すべきである。用語“少なくとも1つ”および“1以上”は、互換的に使用する。用語“1つ”または“単一”は、1つまたは1つのみの何かを意図することを示すように使用すべきである。同様に、“2”のような他の特定の整数値は、特定数の事物を意図するときに使用する。用語“必要に応じて”、“し得る”および同様な用語は、言及する事項、条件または工程が発明の選択的(必須でない)特徴であることを示すのに使用する。X〜yのような2点間にあるように表現する範囲は、その範囲にxおよびyを含む。
【0041】
上記の説明からは、種々の修正および変更を、本発明の真の精神から逸脱することなく、本発明の好ましい実施態様においてなし得ることを理解すべきである。上記の説明は、単に例示目的で提示しており、限定の意味で解釈すべきではない。特許請求の範囲の表現のみによって、本発明の範囲を限定すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応成分が反応してポリウレタン尿素を形成するポリウレタン尿素系であって、前記反応成分が下記を含むことを特徴とする前記ポリウレタン尿素系:
パートA (パートAは、約55〜約75質量%の約1000よりも高い平均分子量を有するオリゴマーポリオール、約3〜7質量%の芳香族ジアミン連鎖延長剤、および約0.1〜約1.5質量%の反応性触媒を含む混合物である);および、
パートB (パートBは、約1〜約15質量%の短鎖芳香族ジイソシアネート、および約5〜約35質量%の、短鎖芳香族ジイソシアネートとジオールとの反応生成物である芳香族ジイソシアネートプレポリマーを含む混合物である);
(前記反応成分の各々の質量画分は、パートAおよびパートB反応成分の総質量を基準とする)。
【請求項2】
前記オリゴマーポリオールが、50質量%よりも多い第一級オリゴマーポリオールを含む、請求項1記載のポリウレタン尿素系。
【請求項3】
前記オリゴマーポリオールが、約95質量%よりも多い第一級オリゴマーポリオールを含む、請求項1記載のポリウレタン尿素系。
【請求項4】
第2の短鎖芳香族ジイソシアネートと第2の芳香族ジイソシアネートプレポリマーとを含むエラストマー表面活性化剤をさらに含む、請求項1記載のポリウレタン尿素系。
【請求項5】
請求項2記載の第2ジイソシアネートの少なくとも1つが、請求項1記載のジイソシアネートの少なくとも1つと同じである、請求項4記載のポリウレタン尿素系。
【請求項6】
前記エラストマー表面活性化剤が、溶媒をさらに含む、請求項4記載のポリウレタン尿素系。
【請求項7】
前記エラストマー表面活性化剤が、0〜90質量%の前記短鎖芳香族ジイソシアネートを含み;その質量画分が、前記エラストマー表面活性化剤中のジイソシアネートの総質量を基準とする、請求項4記載のポリウレタン尿素系。
【請求項8】
前記エラストマー表面活性化剤が、5〜80質量%の前記短鎖芳香族ジイソシアネートを含む、請求項7記載のポリウレタン尿素系。
【請求項9】
2質量%までの、酸化防止剤、UV吸収剤、光安定剤またはこれらの組合せから選ばれる保護剤をさらに含む、請求項1記載のポリウレタン尿素系。
【請求項10】
反応性高分子着色剤をさらに含む、請求項1記載のポリウレタン尿素系。
【請求項11】
前記短鎖芳香族ジイソシアネートが、ポリカルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートである、請求項1記載のポリウレタン尿素系。
【請求項12】
前記短鎖芳香族ジイソシアネートが、2,4および/または2,6 トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4'-ジフェニル-メタンジイソシアネート(MDI)、高分子MDI、変性MDI化合物、ナフタレンジイソシアネート(NDI)またはこれらの組合せから選ばれる、請求項1記載のポリウレタン尿素系。
【請求項13】
前記芳香族ジイソシアネートプレポリマーが、MDI末端ポリエーテルジイソシアネートである、請求項1記載のポリウレタン尿素系。
【請求項14】
前記芳香族ジイソシアネートプレポリマーが、ポリエーテル系ジオール、ポリエステル系ジオールまたはこれらの組合せから選ばれるジオールの反応生成物である、請求項1記載のポリウレタン尿素系。
【請求項15】
前記オリゴマーポリオールが、約1500〜約4000の平均分子量を有するポリテトラメチレングリコールである、請求項1記載のポリウレタン尿素系。
【請求項16】
前記芳香族ジアミン連鎖延長剤が、ジメチルチオトルエンジアミンの2,4および2,6 異性体の混合物である、請求項1記載のポリウレタン尿素系。
【請求項17】
パートAおよびパートBの混合物中のイソシアネート官能価対アミンおよびヒドロキシル官能価の総数の比が、0.8〜2である、請求項1記載のポリウレタン尿素系。
【請求項18】
パートAおよびパートBの混合物中のイソシアネート官能価対アミンおよびヒドロキシル官能価の総数の比が、1.0〜1.07である、請求項17記載のポリウレタン尿素系。
【請求項19】
下記の反応成分を反応物の総質量に対する質量画分で反応させてポリウレタン尿素修理材料を調製する工程を含むことを特徴とする方法:
パートA (パートAは、55〜75質量%の1000よりも高い平均分子量を有するオリゴマーポリオール、3〜7質量%の芳香族ジアミン連鎖延長剤、および0.1〜1.5質量%の反応性触媒を含む混合物である);および、
パートB (パートBは、1〜15質量%の短鎖芳香族ジイソシアネート、および5〜35質量%の、短鎖芳香族ジイソシアネートとジオールとの反応生成物である芳香族ジイソシアネートプレポリマーを含む混合物である)。
【請求項20】
下記の工程をさらに含む、請求項19記載の方法:
前記ポリウレタン尿素を架橋ゴム物品の表面に適用する工程;および、
前記架橋ゴム物品の表面を基体に結合させる工程。
【請求項21】
エラストマー表面活性化剤を前記架橋ゴム物品の表面に適用する工程をさらに含み;前記エラストマー表面活性化剤が、第2の短鎖芳香族ジイソシアネートと第2の芳香族ジイソシアネートプレポリマーを含む、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記架橋ゴム物品の表面を、溶媒中トリクロロイソシアヌル酸溶液によってプライマー処理する工程をさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記基体が、架橋ゴム物品の表面である、請求項19記載の方法。
【請求項24】
請求項4記載のポリウレタン尿素系によって結合させたコンポーネントを含む物品。
【請求項25】
前記コンポーネントと前記物品間の結合面が、架橋ゴム組成物を含む、請求項24記載の物品。
【請求項26】
前記物品が、タイヤである、請求項25記載の物品。
【請求項27】
前記コンポーネントが、トレッドバンドである、請求項26記載の物品。
【請求項28】
前記コンポーネントが、パッチである、請求項26記載の物品。
【請求項29】
前記コンポーネントと前記物品間の結合面の少なくとも1つが、架橋ゴム組成物である、請求項26記載の物品。
【請求項30】
前記コンポーネントの表面が、合成繊維、熱硬化性ポリマー、鉄鋼材料、鉄系合金またはこれらの組合せを含む、請求項29記載の物品。
【請求項31】
前記物品の表面が、合成繊維、熱硬化性ポリマー、鉄鋼材料、鉄系合金またはこれらの組合せを含む、請求項29記載の物品。
【請求項32】
前記コンポーネントが、電子装置である、請求項26記載の物品。
【請求項33】
前記コンポーネントが、RFIDチップを含む、請求項32記載の物品。
【請求項34】
前記物品が、SAWセンサーを含む、請求項32記載の物品。
【請求項35】
下記の工程を含むことを特徴とする、タイヤの再トレッド形成方法:
請求項2記載のエラストマー表面活性化剤をトレッドバンドの結合用表面に適用する工程;
請求項1記載のポリウレタン尿素材料を前記トレッドバンドの結合用表面に適用する工程;
前記ポリウレタン尿素材料を結合用表面上に有する前記トレッドバンドの結合用表面を、タイヤカーカスの外部結合用表面上に取付ける工程。
【請求項36】
下記の工程をさらに含む、請求項35記載の方法:
請求項2記載のエラストマー表面活性化剤を前記タイヤカーカスの外部結合用表面に適用する工程。
請求項1記載のポリウレタン尿素材料を前記タイヤカーカスの外部結合用表面に適用する工程。
【請求項37】
下記の工程を含むことを特徴とする、エラストマー物品の修理方法:
エラストマー物品の損傷表面を請求項2記載のエラストマー表面活性化剤でコーティーングする工程、ここで前記損傷表面は、前記物品中の孔、断裂、削溝、開裂、切断部または裂傷の露出表面である;
前記孔、断裂、削溝、開裂、切断部または裂傷を請求項1記載のポリウレタン尿素で充填する工程。
【請求項38】
前記物品が、タイヤである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記孔、断裂、削溝、開裂、切断部または裂傷が、タイヤの側壁内に存在する、請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記孔、断裂、削溝、開裂、切断部または裂傷が、タイヤの内表面に存在する、請求項37記載の方法。
【請求項41】
請求項37記載の方法によって修理した物品。
【請求項42】
前記物品が、タイヤである、請求項41記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−508417(P2010−508417A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535152(P2009−535152)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004648
【国際公開番号】WO2008/149180
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】