説明

ポリウレタン被膜を有する耐磨性ゴムロールカバー

【課題】耐摩耗性、紙離れ性、靭性の良好なゴムカバーロールの提供。
【解決手段】産業用ロール10は、実質的に円筒形の金属コア10と、該コアの上で円周方向に重なって接着されているゴムの基層18と、該基層の上で円周方向に重なっているゴムの上紙料側層22と、該上紙料側層の上で円周方向に重なっているポリウレタン被膜とを備えている。この構成では、ロールは、ゴムカバーを有するロールと比較して改善された耐磨性、紙離れ特性及び/又は靭性を提供することが可能であるが、典型的なポリウレタンカバーよりも軟質のカバーにおいてこれらの特性をもたらしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的には産業用ロールに関し、特に、産業用ロールのカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
円筒形もしくは円柱形のロールは、多くの産業上の適用例、特に製紙に関する適用例において利用されている。かかるロールは、過酷な環境で用いられるのが一般的であって、当該環境において、高い動荷重及び高い温度や、攻撃性又は腐食性の化学薬品にさらされる可能性がある。一例として、典型的な製紙工場において、ロールは、繊維質のウェブを処理ステーション間に搬送するだけでなく、プレス部のロール及びカレンダーロールの場合、ウェブ自体を処理して紙にするためにも使用されている。
【0003】
一般的に、抄紙機内の異なる位置にあるロールは、異なる機能を果すことが必要であるので、製紙に使用されるロールは抄紙機内における位置を念頭に入れて構成されている。製紙用ロールには多くの様々な特性要求があるので、また、金属製ロール全体を交換することは全く不経済であるので、多くの製紙用ロールは、典型的には金属製であるコアの周面を取り囲むポリマーカバーを備えている。カバーの設計者は、カバーに用いられているポリマー又はエラストマーを変えることにより、ロールに、製紙適用例の要求としての異なる動作特性を与えることができる。また、金属製ロールを覆うカバーの修理、再研磨又は交換は、金属製ロール全体の交換よりも相当に廉価になり得る。
【0004】
多くの場合、ロールカバーは、少なくとも2つの別個の層、即ち、コアの上に覆い被さって(重なって)それに結合材を提供する基層と、該基層の上に覆い被さって接合されると共に、ロールの外側表面の役を果す上紙料側層とを備えている(ロールの中には基層と上紙料側層との間に挟まれる介在“連結”層を含むこともある)。これらの材料の層は、カバーに作動のための一組の所定の物理的特性を与えるように選択されているのが一般的である。これらの特性は、製紙環境に耐えるため、必要強度、弾性率、並びに高温、水及び刺激の強い化学薬品に対する耐性を含めることができる。更に、カバーは、それらが行うプロセスに適する所定の表面硬度を有するよう設計されているのが一般的であり、また、それらはウェブに損傷を与えることなく、ウェブがカバーから“離れる”ことを必要とするのが一般的である。また、経済的にするために、カバーは耐摩擦性及び耐摩耗性でなければならない。
【0005】
クーチロール、ランプブレーカーロール、形成ロール及びプレスロールのようなゴムロールは、上述したように抄紙機の各部で使用されている(例えば、代表的な抄紙機におけるこれらロールの位置について論じるための、編集者:マイケル・ジェイ・コキュレック(Michael J. Kocurek)及びベンジャミン・エイ・ソープ(Benjamin A. Thorpe)の「抄紙機工程(Paper Machine Operations)」(1991年、第7巻)における「紙パルプ製造(Pulp and Paper Manufacture)」を参照のこと)。ゴムロールは、一般的に、優れた化学的、機械的、物理的特性及び良好な耐磨性を有している。また、軟質ゴムコンパウンド(即ち、ピュージー及びジョーンズ(P&J)の基準によると約200〜300)は、動的なニップ条件下で優れた動的特性を一般的に有している。ポリウレタン(PU)もまた抄紙機の各部用のロールを被覆するために使用されている。このPUカバーは、通常、特に4〜70P&Jの硬度範囲において、ゴムと比較して優れた耐磨性、紙離れ及び靭性を有している。しかしながら、PUは高価になりがちであり、また、より軟質のPU(約70〜200P&J)は、ゴムと比較して化学的耐性が劣るのが一般的である。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、産業用ロールに向けられており、該産業用ロールが備えるカバーは、ロールに追加的な組合せの特性を与えることが可能である。第1の形態として、本発明の実施形態は、実質的に円筒形の金属コアと、該コアの上で円周方向に重なって接着されているゴムの基層と、該基層の上で円周方向に重なっているゴムの上紙料側層と、該上紙料側層の上で円周方向に重なっているポリウレタン被膜とを備えている産業用ロールに向けられている。この構成では、ロールは、ゴムカバーを有するロールと比較して改善された耐磨性、紙離れ特性及び/又は靭性を提供できるが、典型的なポリウレタンカバーよりも軟質のカバーにおいてこれらの特性をもたらしている。
【0007】
第2の形態として、本発明の実施形態は、実質的に円筒形の金属コアと、該コアの上で円周方向に重なって接着されているゴムの基層と、該基層の上で円周方向に重なっているゴムの上紙料側層と、該上紙料側層の上で円周方向に重なっているポリウレタン被膜とを備えており、該被膜は約0.05〜0.25inの厚さ及び約3〜70P&Jの硬度を有している、産業用ロールに向けられている。
【0008】
第3の形態として、本発明の実施形態は、実質的に円筒形の金属コアと、該コアの上で円周方向に重なって接着されているゴムの基層と、該基層の上で円周方向に重なっていると共に、約30〜300P&Jの硬度を有しているゴムの上紙料側層と、該上紙料側層の上で円周方向に重なっているポリウレタン被膜とを備えており、該被膜は約0.05〜0.25inの厚さ及び約3〜70P&Jの硬度を有している、産業用ロールに向けられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、添付図面を参照して、以下に特に詳細に説明することとする。本発明は、例示した実施形態に限定すると考えられるのではなく、むしろ、これらの実施形態は、当業者に本発明を徹底的にかつ完全に開示するものと考えられる。図面において、同様の数字は全体にわたり同様の要素に言及している。特定の構成要素の厚さ及び寸法は明瞭にするため誇張して示すことがある。既知の機能もしくは構成については、簡略及び/又は明瞭にするため、詳細に説明しないことがあり得る。
【0010】
また、「下」、「下方」、「下側」、「上」、「上方」、「上側」等のような空間に関する相対的用語は、1つの要素を説明する記載或いは図面に例示したような別の要素もしくは特徴に対する関係を説明する記載を容易にするために、ここで使用されることがある。これらの空間に関する相対的用語は、図面に示された指向方向に加えて、使用中又は作動中の装置の種々の指向方向を含むものと理解されたい。例えば、図面に記載の装置がひっくり返されれば、他の要素もしくは特徴の「下」又は「真下」にあると記載された要素は他の要素もしくは特徴の「上」に方向付けられることになろう。従って、具体例としての用語「下」は、上及び下の双方の指向方向を含むことになる。装置は違ったふうに方向付けられてもよく(90度又は他の方向に回転される)、ここで使用される空間に関する相対的記載は、それに応じて解釈されることになる。
【0011】
ここで使用されている用語は、特定の実施形態を説明するためのみであり、本発明を限定することを企図しているのではない。ここで使用されている用語は、文脈が明らかに複数形を指していなければ、単数形及び複数形の双方を含むものと考えられる。更に、「構成する」及び/又は「構成される」という用語は、この明細書で使用される場合、記載された特徴、ユニット、ステップ、作動、素子、及び/又は構成要素の存在を規定しており、1つ以上の他の特徴、ユニット、ステップ、作動、素子、構成要素及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではないことが分かるであろう。ここで使用されている表現「及び/又は」は、1つ以上の関連記載アイテムの任意の又は全ての組合せを含んでいる。
【0012】
特に定義されていなければ、ここで使用されている全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野に習熟する者により普通に理解されるのと同じ意味を有している。更に、普通に使用される諸辞典に定義されているような用語は、関連技術の状況下のそれらの意味に一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、また、ここに明確に定義されていなければ理想化され又は非常に形式的な意味で解釈されることはないであろう。
【0013】
次に図を参照すると、符号10で大ざっぱに表されたロールが図1及び図2に例示されている。このロール10は、コア12(例えば金属製)と、接着剤層14と、カバー16とを重なり合う関係で有している。これら要素の各々について、以下に詳細に記載する。
【0014】
コア12は、鋼から、何か別の金属から、又は複合材料からでも形成されるのが典型的である実質的に円筒形の中空構造である。コア12は、一般的には、長さが約1.5〜400in(約4.8〜1000cm)、直径が1〜70in(約2.5〜178cm)であり、製紙用としては長さが100〜400in(250〜1000cm)、直径は20〜70in(50〜178cm)であるのが普通である。長さ及び直径がこれらの最も一般的な範囲にある場合、コア12は厚さ1〜5in(約2.5〜13cm)の壁を有するのが普通である。ジャーナル及び軸受(図示せず)のような諸要素は、抄紙機におけるコア12の装着及び回転を容易にするため、コア12に設けられるのが一般的である。コア12の表面は、接着剤層14への接合のために、該表面の下処理をすべく、ブラスチング、サンダー仕上げ、サンドブラスト等により処理することが可能である。
【0015】
再び図1及び図2を参照すると、接着剤層14は、コア12をカバー16に付着させることができる接着剤(代表的にはエポキシ接着剤)から構成されている。もちろん、接着剤層14を構成する接着剤は、コア12やカバー16の基層18の材料と両立可能に選択されていなければならない(即ち、接着剤はどの材料にも過度な害を与えることなくこれら要素間に高品質の接合を提供すべきである)。この接合は、約1200〜5000psiの引張り接合強度を有していることが好ましい。接着剤は、硬化を容易にすると共に物理的特性に役立つ硬化剤のような添加剤を有していてもよい。接着剤の例には、ノースカロライナ州ローリー所在のロード(Lord)・コーポレイションから入手し得るエポキシ接着剤であるケムロック(Chemlok)220X及びケムロック205がある。
【0016】
接着剤層14は、薄い材料の層を付着させるのに適当であると当業者に知られている任意の方法でコア12に付着させることが可能である。適用技術の例には、吹付け、ブラッシ仕上げ、浸漬、きさげ仕上げ等がある。好ましいのは、溶液型接着剤が使用されるのであれば、硬化プロセス中に「吹出し」を生じさせうる溶媒閉じ込めの発生を減じるため、カバー16の取付け前に溶媒が蒸発できるように接着剤層14が付着されるのが好ましい。当業者は、接着剤層14が異なる接着剤から構成される複数の接着剤被膜層とし得ることが分かるであろう。例えば、若干異なる特性を有する2つの異なるエポキシ接着剤が用いられてもよい。また、特定の実施形態において、カバー16がコア12に直接に接合されるように、接着剤層を完全に省略してもよいことに留意しなければならない。
【0017】
更に図1及び図2を参照すると、カバー16は、基層18と、上紙料側層22と、被膜24とを重なり合う関係で備えている。例示した実施形態において、基層18は接着剤層14に接着されている。基層18は、代表的にはフィラー及びその他の添加剤を含むゴムコンパウンドから構成されている。ゴムコンパウンドの例には、天然ゴムや、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリル−ブタジエンゴム(HNBR)、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)から形成されるエチレン−プロピレン−ターポリマー、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレン(CR)並びにそれらの混合物及びコポリマーのような合成ゴムが含まれている。
【0018】
フィラーは、コンパウンドの物理的特性を変更するため及び/又はそのコストを低減するために、基層18に添加されるのが一般的である。フィラー材料の例としては、酸化アルミニウム(Al23)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)及び二酸化チタン(TiO2)のような無機酸化物;カーボンブラック(ファーネスブラックとしても知られている);クレイ、タルク、ウォラストナイト(CaSiO3)、珪酸マグネシウム(MgSiO3)、ガラクトース、珪酸アルミニウム及び長石(KAlSi38)のような珪酸エステル;硫酸バリウム及び硫酸カルシウムのような硫酸エステル;アルミニウム、鉄、銅、ステンレス鋼又はニッケルのような金属粉末;炭酸カルシウム(CaCO3)及び炭酸マグネシウム(MgCO3)のような炭酸エステル;マイカ;シリカ(天然、ヒュームド、水化物、無水物又は沈殿物);並びに炭化ケイ素(SiC)及び窒化アルミニウム(AlN)のような窒化物及び炭化物が含まれている。これらのフィラーは、粉末、ペレット、繊維又は球のような事実上どんな形で存在していてもよい。
【0019】
また、基層18は、随意であり、重合開始剤、活性剤・促進剤、硬化もしくは加硫剤、可塑剤、熱安定剤、抗酸化剤・オゾン劣化防止剤、表面処理剤、ピグメント等のような、処理を容易にすると共に物理的特性を向上させるその他の添加剤を含んでいてもよい。これらの成分は、基層18を接着剤層14に付着させか又はコア12に付着させる時点の前にポリマー中に混合されるのが普通である。当業者には分かるように、基層におけるこれら諸剤の素性及び量並びにそれらの使用法は、一般的に知られており、ここで詳細に記載される必要はない。
【0020】
基層18は、ポリマーを下側の表面上に付着させるのに適するとして当業者に知られているどんな方法によっても付着させることが可能である。特定の実施形態において、基層18は、該基層18の複数のストリップを押出ダイから押し出し、次いで引き続き温めながら、まだ幾分か粘着性があるうちに接着剤層14の上に重ね合わせる押出法を通じて付着される。基層のストリップは、厚さが約0.030〜0.125in(約0.076〜0.318cm)であると共に、重ね合わせ式に付着されることが好ましく、その結果、基層18の総ストリップ厚さは代表的には約0.0625〜0.25in(約0.1588〜0.64cm)である。当業者には明らかであるように、特定の実施形態において、上紙料側層22が接着剤層14に付着されるか、又は接着剤層のない場合、コア12に付着されるように、基層18を省略してもよい。
【0021】
再び図1及び図2を参照すると、例示した実施形態において、上紙料側層22は、基層18の上に周方向に重ね合わされていると共に、後述するように1つ以上の連結層が含まれていなければ、基層18に接着されている。上紙料側層22は、NBR、HNBR、EPDM、CSMのようなゴムコンパウンドか天然ゴムであり、フィラー及びその他の添加剤を含んでいるのが普通である。
【0022】
フィラーの例としては、基層18に関連して上述したものはもちろんのこと、二酸化ケイ素、カーボンブラック、クレイ及び二酸化チタン(TiO2)が含まれている。代表的には、フィラーには上紙料側層22の重量の約3〜70%の量が含まれている。フィラーは、粉末、ペレット、ビード、繊維、球等のような事実上どんな形で存在していてもよい。
【0023】
添加剤の例としては、処理を容易にすると共に物理的特性を向上させることのできる、重合開始剤、活性剤・促進剤、硬化もしくは加硫剤、可塑剤、熱安定剤、抗酸化剤・オゾン劣化防止剤、表面処理剤、ピグメント等が含まれている。当業者には、上紙料側層22に含まれるのに適当な添加剤の種類及び濃度が分かるから、それらについてここで詳しく論じる必要はない。
【0024】
上紙料側層22は、弾性材料を円筒形表面上に付着させるのに適するものとして当業者に知られている技術により、基層18上に付着されている。好ましいのは、上紙料側層22の各成分が個別に調合され、ミル内で混合されることである。混合された材料は、ミルから押出成形機に移され、そこでトップ側原料材料の供給ストリップを基層18上に押し出している。或いは、基層18及び上紙料側層22の一方又は双方は、カレンダー仕上げしたシート材料の重ね合わせにより付着されてもよい。
【0025】
特定の実施形態において、上紙料側層22は、その厚さが約1〜1.5in(もっと厚い厚さでは、材料の複数回の通過が必要とされるかも知れない)であるように付着されている。また、上紙料側層22の厚さは、総カバー厚さ(即ち、結合された基層18、上紙料側層22及び被膜24の総厚さ)の約50〜90%が適切である。基層18及び上紙料側層22のゴムコンパウンドは、基層18が上紙料側層22よりも大きな硬度値を有するように選択することが可能である。例えば、基層18は、約1〜100P&J(特定の実施形態において、3〜100P&J、他の実施形態において、3〜20P&J)の硬度を有しており、上紙料側層22は、約30〜300P&J(特定の実施形態において、3〜250P&J)の硬度を有している。累進的硬度の概念により、カバー構造における種々の層の弾性特性(例えば、弾性係数及びポアソン比)の不適合に由来して生じ得るボンドライン剪断応力を低減させることができる。境界面のこの剪断応力の低減は、カバーの健全性を保つ上で重要である。
【0026】
また、当業者にとって明らかであるように、ロール10は、基層18と上紙料側層22との間に挟持された連結層を備えて構成されていてもよいので、連結層が上紙料側層22の直ぐ下に位置することになる。連結層の一般的な特性は当業者に知られており、ここで詳細に述べる必要はない。
【0027】
上紙料側層22を付着させた後、カバー16のこれらの層は、適当な期間(通常、約16〜30時間)にわたり硬化、一般的にはオートクレーブ内で硬化されることになる。硬化後、発生した硬い皮を上紙料側層22の表面からかき取り、上紙料側層22を寸法正確性のために研削するのが好ましい。
【0028】
もう一度図1及び図2を参照すると、被膜24は、上紙料側層22を覆い付着されている。被膜24は、ポリウレタン化合物から構成されており、抄紙機用ロールに使用するのに適するとして当業者に知られている任意の数のポリウレタン化合物とすることが可能である。ポリウレタン化合物の例には流し込み法及びリボン流動(ribbon flow)法から形成されたものがある。特定の実施形態において、ポリウレタン被膜24は厚さが約0.050〜0.200inである。特定の実施形態において、ポリウレタン被膜は、約3〜70P&Jの硬度を有しており、ある実施形態では、約3〜30P&Jの硬度としてもよい。
【0029】
ポリウレタン被膜24は、その物理的特性及び製造上の特徴を変更もしくは促進し得る、基層18及び上紙料側層22のゴムコンパウンドに関連して上述した種類のフィラー及び添加剤を有していてもよい。材料、フィラー及び添加剤の例はロマンスキ(Romanski)に対する米国特許第4224372号明細書、クレンケル(Krenkel)等に対する米国特許第4859396号明細書及びクローニン(Cronin)等に対する米国特許第4978428号明細書に記載されており、各明細書の開示内容の全体はここに組み込まれている。
【0030】
ポリウレタン被膜24は、ポリウレタンの付着に適するとして当業者に知られている押出成形、鋳造、吹付け等を含む任意の方法で上紙料側層22に付着させることが可能である。特定の実施形態において、上紙料側層22上への被膜の押出成形が特に適している。特定の場合、接着剤層は、被膜24の付着前に上紙料側層22に付着させてもよい。
【0031】
被膜24の付着後、ロール10を硬化させ(例えば、熱の付与により)、この技術に習熟した者に知られている方法で研削し及び/又は仕上げしてもよい。
【0032】
基層及び上紙料側層上にポリウレタン被膜で形成されたロールカバーは、双方のポリマーの有利な特性を享受しており、それによりロールカバーに向上した性能特性を与えている。例えば、上述したカバーをもつロールは、ゴムカバーを有するロールと比較して改善された耐磨性、紙離れ特性及び/又は靭性を有しているが、典型的なポリウレタンカバーよりも軟質のカバーにおいてこれらの特性をもたらしてもよい。このようなわけで、長網式抄紙機3内で、これらのロールは、ランプブレーカーロール32において又は他の形成ロール34(図3参照)において特に適しているであろう。円網抄紙機40においては、本発明の実施形態によるロールは、円筒形のクーチロール42(図4参照)に使用するのに適している。抄紙機のプレス部50は、本発明の実施形態によるプレスロール52を利用可能である(図5)。
【0033】
或いは、ポリウレタン被膜は、「非常に硬い(bone-hard)」ゴムロールと共に利用して、紙離れ及び/又は紙との摩擦接触を促進しうる軟質の表面を提供してもよい。例えば、抄紙機30のワイヤ駆動ロール36(図3)は、本発明の実施形態に基づいて構成されていてもよい。
【0034】
また、本発明の実施形態に基づいて製作されたロールは、リールドラム(図6のリール60におけるドラム62参照)、ワインダードラム(図7におけるワインダー70のドラム72参照)、並びに製紙に利用される他のロール及びドラムに採用されている。
【0035】
抄紙機における異なるロール位置についての材料、厚さ及び硬度の例示的な組合せが下記の表1に記載されている。
【0036】
【表1】

【0037】
当業者には分かるように、特定の抄紙機の環境や該抄紙機内のロールの位置に応じて厚さ及び硬度のその他の組合せを上述したどの層についても採用されてもよい。
【0038】
また、当業者は、本発明のロールがスリーブ、紙運搬ロール等を含め抄紙機以外の環境においても採用されてもよいことが分かるであろう。
【0039】
上述したことは、本発明を例証するものであって、本発明を限定する意味に取られるべきではない。本発明の例示的実施形態について記載してきたが、当業者には即座に明らかであるように、本発明の新規な教示事項及び利点から著しく逸脱することなく、該例示的実施形態において多くの変更が可能である。従って、かかる変更の全ては、特許請求の範囲に明示された本発明の範囲内に含まれるものと考えられる。本発明は、添付の特許請求の範囲により規定されており、同特許請求の範囲と同等のことはそこに含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態による産業用ロールの斜視図である。
【図2】図1の線2−2に沿ってそのロールを大きく拡大した部分断面図である。
【図3】長網式抄紙機の地合形成部とそこに採用された本発明の実施形態によるロールとの概略図である。
【図4】円網抄紙機に採用された本発明の実施形態による円筒形クーチロールの概略図である。
【図5】抄紙機のプレス部と、そこに採用された本発明の実施形態によるロールとの概略図である。
【図6】製紙工程のリールと、そこに採用された本発明の実施形態に従ってそれと共に用いられるリールドラムとの概略図である。
【図7】製紙工程のワインダーと、そこに採用された本発明の実施形態に従ってそれと共に用いられるワインダードラムとの概略図である。
【符号の説明】
【0041】
10 ロール
12 コア
14 接着剤層
16 カバー
18 基層
22 上紙料側層
24 ポリウレタン被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に円筒形の金属コアと、
該コアの上で円周方向に重なって接着されているゴムの基層と、
該基層の上で円周方向に重なっているゴムの上紙料側層と、
該上紙料側層の上で円周方向に重なっているポリウレタン被膜と、
を備えている産業用ロール。
【請求項2】
前記基層のゴムは、NBR、HNBR、EPDM、CR、SBR及びCSMからなるグループから選択されている、請求項1に記載の産業用ロール。
【請求項3】
前記基層の厚さは、約0.0625〜0.25inである、請求項1に記載の産業用ロール。
【請求項4】
前記基層は、3〜20P&Jの硬度を有している、請求項1に記載の産業用ロール。
【請求項5】
前記基層と前記上紙料側層との間にゴム連結層を更に備えている、請求項1に記載の産業用ロール。
【請求項6】
前記上紙料側層の厚さは約1〜2.5inである、請求項1に記載の産業用ロール。
【請求項7】
前記上紙料側層は約30〜300P&Jの硬度を有している、請求項1に記載の産業用ロール。
【請求項8】
前記被膜の厚さは、約0.05〜0.25inである、請求項1に記載の産業用ロール。
【請求項9】
前記被膜は約3〜70P&Jの硬度を有している、請求項1に記載の産業用ロール。
【請求項10】
前記被膜は、約3〜30P&Jの硬度を有している、請求項1に記載の産業用ロール。
【請求項11】
抄紙機においてクーチロールの位置に配置されている、請求項1に記載の産業用ロール。
【請求項12】
抄紙機においてプレスロールの位置に配置されている、請求項1に記載の産業用ロール。
【請求項13】
抄紙機において地合形成ロールの位置に配置されている、請求項1に記載の産業用ロール。
【請求項14】
抄紙機においてクーチロールの位置に配置されている、請求項1に記載の産業用ロール。
【請求項15】
抄紙機においてランプブレーカーロールの位置に配置されている、請求項1に記載の産業用ロール。
【請求項16】
実質的に円筒形の金属コアと、
該コアの上で円周方向に重なって接着されているゴムの基層と、
該基層の上で円周方向に重なっているゴムの上紙料側層と、
該上紙料側層の上で円周方向に重なっているポリウレタン被膜と、
を備えており、該被膜は、約0.05〜0.25inの厚さ及び約3〜70P&Jの硬度を有している、産業用ロール。
【請求項17】
実質的に円筒形の金属コアと、
該コアの上で円周方向に重なって接着されているゴムの基層と、
該基層の上で円周方向に重なっていると共に、約30〜300P&Jの硬度を有しているゴムの上紙料側層と、
該上紙料側層の上で円周方向に重なっているポリウレタン被膜と、
を備えており、該被膜は、約0.05〜0.25inの厚さ及び約3〜70P&Jの硬度を有している、産業用ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−186839(P2007−186839A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−301245(P2006−301245)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(506152933)ストウ・ウッドワード,リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (3)
【Fターム(参考)】