説明

ポリエステル布帛用難燃性付与剤及びそれを用いて加工された難燃性ポリエステル布帛

【課題】色鮮明性に優れ、高い難燃性、高い堅牢性を有し、かつ経時的な難燃剤のブリードによる白化が抑制できるポリエステル布帛用難燃性付与剤及びそれを用いて加工された難燃性ポリエステル布帛を提供する。
【解決手段】ビスフェノールA系臭素化合物(A)、ビスフェノールS系臭素化合物(B)及びイソシアヌレート系臭素化合物(C)からなる群から選ばれる2種以上の難燃剤を含有することを特徴とするポリエステル布帛用難燃性付与剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色鮮明性に優れ、高い難燃性、高い堅牢性を有し、かつ経時的な難燃剤のブリードによる白化が抑制できるポリエステル布帛用難燃性付与剤及びそれを用いて加工された難燃性ポリエステル布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、商品やイベント等を宣伝する広告媒体として用いられる幟や幕は、さまざまな場所で広く用いられている。例えば、ガソリンスタンド、コンビニエンスストア、商店街等がある。この幟や幕については通常、基材はポリエステル布帛を用いて必要な情報を文字や図形、さらには4色分解による写真柄をスクリーン印刷方式でプリントしている。この幟や幕は機能上、屋外に設置される場合が多いため、近年増加している放火事件の対象となりやすく、難燃性を付与したポリエステル布帛が強く求められている。現在でもポリエステル布帛に難燃性を付与する技術は存在するが、幟や幕はよりアピール性を高くするために複雑な図柄のデザインが求められることもあり、このアピール性と難燃性又は耐久性の両立可能な技術としては、満足できるレベルにないのが現状である。
【0003】
難燃性を付与したポリエステル布帛として、着色捺染剤で図柄をプリントしたポリエステル布帛を、難燃剤として臭素含有化合物、又は必要に応じて酸化アンチモン等を含有する水分散液に浸漬し乾燥することで、ポリエステル布帛に難燃剤を付着させて難燃性を付与したポリエステル布帛が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、このポリエステル布帛は、布帛へのプリント工程と難燃剤の付着工程の大きく2つの工程が必要であり、難燃剤の付着率が一定せずに布帛の場所によって難燃性に差が発生し、難燃性の付与が十分でない問題もあった。また、この浸漬によるポリエステル布帛は、プリントされている図柄の上にも難燃剤が付着するため、デカブロモジフェニルエーテル、三酸化アンチモンのような隠蔽性のある難燃剤を用いた場合、図柄の色を難燃剤が遮蔽することによりパステル調色となって色鮮明性が低下する問題があった。特に、網点プリントによる写真柄のようなデザイン的に複雑なプリントの場合、この色鮮明性の低下は顕著であった。さらに、難燃剤がポリエステル布帛表面に十分に担持されていないため、屋外で使用した場合、難燃剤が雨水により洗い流されて難燃性が低下するという問題もあった。
【0004】
一方、さらに難燃性を高めるため、難燃剤を配合した着色捺染剤で図柄をプリントして乾燥した後、その図柄の上にさらに難燃剤を配合した防炎加工液を塗布して、ポリエステル布帛全体の難燃剤の含有量を増加させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この方法では、着色捺染剤に難燃剤を配合することによる色鮮明性の低下があり、さらに、図柄をプリントして乾燥した後に塗布する防炎加工液中の難燃剤が図柄の色を遮蔽し、色鮮明性が低下する問題があった。また、後から塗布する防炎加工液中の難燃剤が経時的にポリエステル布帛表面にブリードして白化し色鮮明性が低下する問題もあった。
【特許文献1】特開平10−226959号公報
【特許文献2】特開平11−1871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、色鮮明性に優れ、高い難燃性、高い堅牢性を有し、かつ経時的な難燃剤のブリードによる白化が抑制できるポリエステル布帛用難燃性付与剤及びそれを用いて加工された難燃性ポリエステル布帛を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ビスフェノールA系臭素化合物、ビスフェノールS系臭素化合物及びイソシアヌレート系臭素化合物の難燃剤の中から2種以上の難燃剤を併用したポリエステル布帛用難燃性付与剤は、難燃剤による色鮮明性の低下がなく、高い難燃性、高い堅牢性が得られ、かつ経時的な難燃剤のブリードが抑制できることを見出した。特に、経時的な難燃剤のブリードは、前記の難燃剤を単独で用いた場合には抑制できず、2種以上の難燃剤を併用することにより抑制できることを見出したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、ビスフェノールA系臭素化合物(A)、ビスフェノールS系臭素化合物(B)及びイソシアヌレート系臭素化合物(C)からなる群から選ばれる2種以上の難燃剤を含有することを特徴とするポリエステル布帛用難燃性付与剤及びそれを用いて加工された難燃性ポリエステル布帛を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリエステル布帛用難燃性付与剤を用いることで、難燃剤による色鮮明性の低下がなく、色鮮明性に優れ、高い難燃性、高い堅牢性を有し、かつ経時的な難燃剤のブリードによる白化が抑制された難燃性ポリエステル布帛を得ることができる。したがって、本発明のポリエステル布帛用難燃性付与剤を用いた難燃性ポリエステル布帛は、ベタ刷りプリントのみならず、4色分解の網点プリントによる写真柄においても、難燃剤による白化を生じず鮮明性に優れた色相が得られるため、宣伝用の幟や幕等に好適である。また、堅牢性が高いことから、特に屋外で使用される宣伝用の旗やのぼりに用いても難燃剤が雨水により洗い流されることがないので、高い難燃性を維持することができる。
【0009】
また、本発明のポリエステル布帛用難燃性付与剤は、着色剤を含有させることにより、着色捺染剤としても用いることができる。したがって、この着色捺染剤をプリントした上に、さらに着色剤を含有しない本発明のポリエステル布帛用難燃性付与剤をプリントすることで、ポリエステル布帛上の難燃剤の含有量を増やすことができ、非常に高い難燃性をポリエステル布帛に付与することもできる。
【0010】
本発明のポリエステル布帛用難燃性付与剤は、ポリエステル布帛上に捺染、つまりスクリーン印刷方式で塗布することによって、難燃性等に優れたポリエステル布帛を得ることができるが、スクリーン印刷方式だけでなく他の各種コーティング法により塗布することでも同様に難燃性等に優れたポリエステル布帛を得ることができる。
【0011】
また、先述の特許文献の記載と同様に、本発明のポリエステル布帛用難燃性付与剤にポリエステル布帛を浸漬する方法でも、同様に難燃性等に優れたポリエステル布帛を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のポリエステル布帛用難燃性付与剤においては、バインダー樹脂を配合することが好ましい。バインダー樹脂を配合することで、後述する難燃剤、顔料等の有効成分をポリエステル布帛に十分に担持することができる。このバインダー樹脂としては、水性アクリル系樹脂を用いることが好ましい。この水性アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体等が挙げられる。これらの水性アクリル系樹脂は、通常、原料モノマーとして、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルを用いて、乳化重合により合成することができ、水中に樹脂を分散させたエマルジョンの形態で用いることが好ましい。また、水性アクリル系樹脂の他に、水性ウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂を用いることもできる。
【0013】
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いることも、2種類以上を併用することもできる。
【0014】
本発明に用いるビスフェノールA系臭素化合物(A)としては、分子中にビスフェノールA構造を有する臭素化合物であれば特に限定されないが、中でも2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモプロピル)−3,5−ジブロモフェニル]プロパンは、難燃性が高いので好ましい。
【0015】
本発明に用いるビスフェノールS系臭素化合物(B)としては、分子中にビスフェノールS構造を有する臭素化合物であれば特に限定されないが、中でもビス[4−(2,3−ジブロモプロピル)−3,5−ジブロモフェニル]スルホンは、難燃性が高いので好ましい。
【0016】
本発明に用いるイソシアヌレート系臭素化合物(C)としては、分子中にイソシアヌレート構造を有する臭素化合物であれば特に限定されないが、中でもトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートは、難燃性が高いので好ましい。
【0017】
本発明のポリエステル布帛用難燃性付与剤においては、前記ビスフェノールA系臭素化合物(A)、ビスフェノールS系臭素化合物(B)及びイソシアヌレート系臭素化合物(C)の中から2種以上の難燃剤を用いることで、経時的な難燃剤のブリードによる白化を抑制できる。
【0018】
前記ビスフェノールA系臭素化合物(A)、ビスフェノールS系臭素化合物(B)及びイソシアヌレート系臭素化合物(C)の中から2種の難燃剤を併用する場合、各々の難燃剤の質量基準での配合比率は、20:80〜80:20の範囲が好ましく、30:70〜70:30の範囲がより好ましい。2種の難燃剤の配合比率がこの範囲であれば、難燃性が向上し、経時的な難燃剤のブリードによる白化の抑制効果も高くなる。
【0019】
前記ビスフェノールA系臭素化合物(A)、ビスフェノールS系臭素化合物(B)及びイソシアヌレート系臭素化合物(C)のすべてを併用する場合、各々の難燃剤の質量基準での配合比率は、(A):(B):(C)=10〜80:10〜80:10〜80の範囲が好ましく、(A):(B):(C)=15〜70:15〜70:15〜70の範囲がより好ましい。これらの難燃剤の配合比率がこの範囲であれば、高い難燃性を保持し、経時的な難燃剤のブリードによる白化の抑制効果が高くなる。
【0020】
また、前記ビスフェノールA系臭素化合物(A)、ビスフェノールS系臭素化合物(B)及びイソシアヌレート系臭素化合物(C)の難燃剤の合計配合量は、ポリエステル布帛用難燃性付与剤中に10〜90質量部の範囲が好ましく、20〜50質量部の範囲がより好ましい。難燃剤の合計配合量がこの範囲であれば、高い難燃性及び堅牢性を保持し、経時的な難燃剤のブリードによる白化の抑制効果が高くなる。また、これらの難燃剤をポリエステル布帛用難燃性付与剤中に配合する際には、事前に難燃剤を水中で湿潤剤、分散剤等を用いて分散して、分散液としてから配合することが好ましい。
【0021】
本発明のポリエステル布帛用難燃性付与剤は、着色剤を含有させることで着色捺染剤としても用いることができる。着色捺染剤として用いる場合には、着色剤として顔料を配合する。この顔料としては、有機顔料、無機顔料に問わず、特に限定なしに用いることができる。有機顔料としては、例えば、アゾ顔料(レーキレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン、カルシウムレーキ、ナフトールASレッド、ベンズイミダゾロンイエロー、ジスアゾイエローHR、ビラゾロンレッド、縮合アゾイエロー、縮合アゾレッド、縮合アゾブラウン、ニッケルアゾイエロー等)、銅フタロシアニン(銅フタロシアニンブルー、塩素化銅フタロシアニングリーン、臭素化銅フタロシアニングリーン等)、縮合多環顔料(アンスラキノンイエロー、ジアンスラキノリルレッド、インダンスレンブルー、チオインジゴボルドー、ペリノンオレンジ、ペリレンスカーレット、ペリレンレッド、ペリレンマルーン、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンスカーレット、ジオキサジンバイオレット、イソインドリノンイエロー、キノフタロンイエロー、イソインドリンイエロー、ジケトピロロピロールレッド等)が挙げられる。
【0022】
また、無機顔料としては、例えば、酸化物系(亜鉛華、酸化チタン、弁柄、鉄黒、酸化クロム等)、複合酸化物系(チタンイエロー、亜鉛−鉄ブラウン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロムブラック、銅−鉄ブラック等)、クロム酸系(黄鉛、モリブテートオレンジ等)、フェロシアン系(紺青等)、硫化物系(カドミウムイエロー、カドミウムレッド、硫化亜鉛等)、硫化バリウム、群青、炭酸カルシウム、コバルトバイオレット、黄色酸化鉄、カーボンブラック等が挙げられる。これらの有機顔料及び無機顔料は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0023】
前記顔料の配合量は、所望とする色相によって異なるが、通常は、着色捺染剤中に0.05〜5.0質量%の範囲が好ましい。また、顔料を配合する際には、事前に水中で顔料分散剤等を用いて分散して、顔料分散液としてから配合することが好ましい。
【0024】
本発明のポリエステル布帛用難燃性付与剤には、必要に応じて、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、プロピオキシセルロース、アルギン酸エステル等の糊剤、アンモニア水等のpH調整剤、ミネラルスピリット等の石油系溶剤、増粘剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、撥水剤、レベリング剤、消泡剤などの添加剤を配合することができる。これらの添加剤の中でも、撥水剤を配合すると、本発明のポリエステル布帛用難燃性付与剤で加工したポリエステル布帛を屋外で使用する際、難燃剤が雨水により洗い流されることによる難燃性の低下をさらに抑制できるため好ましい。
【0025】
本発明のポリエステル布帛用難燃性付与剤で加工するポリエステル布帛は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂繊維からなる布帛である。これらの中でもポリエチレンテレフタレート製繊維からなる布帛が好ましい。また、幟、幕等の用途に用いられているポリエステル布帛には比較的薄手のポンジーと比較的厚手のトロピカル、トロピカルマット、ツイール等があるが、いずれのものも用いることができる。
【0026】
本発明のポリエステル布帛用難燃性付与剤の使用方法は、着色剤を含有する着色捺染剤と、着色剤を含有しない難燃性付与剤(以下、「無色難燃性付与剤」という。)とで異なる。着色捺染剤は、ポリエステル布帛にプリントすることで、文字、図形、写真等の図柄をプリントすると同時に難燃性を付与することができる。一方、無色難燃性付与剤は、ポリエステル布帛に前記着色捺染剤を用いて図柄をプリントした後、無色難燃性付与剤をポリエステル布帛全面にプリントすることで、より高い難燃性を付与できる。また、前記着色捺染剤がプリントされていないポリエステル布帛の生地の部分にだけ、無色難燃性付与剤をプリントすることで、ポリエステル布帛全面の難燃性を均一にすることができる。さらに、難燃剤を含有しない通常の着色捺染剤でプリントされたポリエステル布帛全面に無色難燃性付与剤をプリントすることで、ポリエステル布帛に難燃性を付与することもできる。
【0027】
本発明のポリエステル布帛用難燃性付与剤をポリエステル布帛にプリントする方法としては、通常、フラットスクリーン、ロータリースクリーンなどを使用してゴム、ウレタン樹脂等のスキージでスクリーン印刷方式によりプリントする。スクリーンは、60〜300メッシュを使用する。プリント後は、130〜150℃で1〜3分の乾燥・熱処理工程を行う。
【0028】
また、ポリエステル布帛に前記着色捺染剤を用いて図柄をプリントした後、前記無色難燃性付与剤をプリントする場合は、着色捺染剤で図柄をプリントした後、一度乾燥して無色難燃性付与剤をプリントする方法(ウェット・オン・ドライ方式)でも、着色捺染剤で図柄をプリントした後、乾燥せずに無色難燃性付与剤をプリントする方法(ウェット・オン・ウェット方式)でも加工することができる。
【0029】
本発明のポリエステル布帛用難燃性付与剤をポリエステル布帛にプリントする方法として、上記のスクリーン印刷方式以外に、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、ワイヤーバーコート、フローコート等の各種コーティング法も用いることができる。さらに、本発明のポリエステル布帛用難燃性付与剤を浸漬によって、ポリエステル布帛に塗布することもできる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0031】
(調製例1:バインダー樹脂溶液の調製)
水性アクリル系樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製「DEXCEL CLEAR CONC F−10」、樹脂分28質量%)30質量部、水性アクリル系樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製「DEXCEL CLEAR CONC L−202」、樹脂分42質量%)5質量部、アンモニア水(25質量%)1質量部、ミネラルスピリット(エクソンモービル社製「ペガソールAN45」)15質量部、増粘剤(大日本インキ化学工業株式会社製「DEXCEL AGENT 7V」)1質量部及びイオン交換水48質量部を分散撹拌機を用いて均一に乳化・混合してバインダー樹脂溶液を得た。
【0032】
(調製例2:難燃剤分散液(1)の調製)
2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモプロピル)−3,5−ジブロモフェニル]プロパン60質量部、湿潤剤(エチレングリコール)5質量部、分散剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)2質量部及びイオン交換水33質量部をビーズミルを用いて分散して、難燃剤分散液(1)を得た。
【0033】
(調製例3:難燃剤分散液(2)の調製)
調製例2で用いた2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモプロピル)−3,5−ジブロモフェニル]プロパンに代え、ビス[4−(2,3−ジブロモプロピル)−3,5−ジブロモフェニル]スルホンを用いた以外は調製例2と同様にして、難燃剤分散液(2)を得た。
【0034】
(調製例4:難燃剤分散液(3)の調製)
調製例2で用いた2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモプロピル)−3,5−ジブロモフェニル]プロパンに代え、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを用いた以外は調製例2と同様にして、難燃剤分散液(3)を得た。
【0035】
(調製例5:難燃剤分散液(4)の調製)
デカブロモジフェニルエーテル(アルベマール社製「サイテックス 102E」)50質量部、三酸化アンチモン(山中産業株式会社製、MSAグレード)20質量部、湿潤剤(エチレングリコール)5質量部、分散剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)2質量部及びイオン交換水23質量部を、ビーズミルを用いて分散して難燃剤分散液(4)を得た。
【0036】
(実施例1)
[着色捺染剤の調製]
上記で得られたバインダー樹脂溶液52質量部、難燃剤分散液(1)28質量部、難燃剤分散液(2)12質量部、架橋剤(大日本インキ化学工業株式会社製「DEXCEL AGENT GK CONC」)3質量部及び青色顔料分散液(大日本インキ化学工業株式会社製「DEXCEL BLUE HR」、顔料分20質量%)5質量部を、分散撹拌機を用いて均一に混合して着色捺染剤(1)を得た。
【0037】
[無色難燃性付与剤の調製]
上記で得られたバインダー樹脂溶液57質量部、難燃剤分散液(1)28質量部、難燃剤分散液(2)12質量部及び架橋剤(大日本インキ化学工業株式会社製「DEXCEL AGENT GK CONC」)3質量部を、分散撹拌機を用いて均一に混合して無色難燃性付与剤(1)を得た。
【0038】
(実施例2)
[着色捺染剤の調製]
実施例1の着色捺染剤(1)の調製で用いた難燃剤分散液(1)を20質量部、難燃剤分散液(2)を20質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、着色捺染剤(2)を得た。
【0039】
[無色難燃性付与剤の調製]
実施例1の無色難燃性付与剤(1)の調製で用いた難燃剤分散液(1)を20質量部、難燃剤分散液(2)を20質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、無色難燃性付与剤(2)を得た。
【0040】
(実施例3)
[着色捺染剤の調製]
実施例1の着色捺染剤(1)の調製で用いた難燃剤分散液(1)を12質量部、難燃剤分散液(2)を28質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、着色捺染剤(3)を得た。
【0041】
[無色難燃性付与剤の調製]
実施例1の無色難燃性付与剤(1)の調製で用いた難燃剤分散液(1)を12質量部、難燃剤分散液(2)を28質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、無色難燃性付与剤(3)を得た。
【0042】
(実施例4)
[着色捺染剤の調製]
上記で得られたバインダー樹脂溶液52質量部、難燃剤分散液(1)28質量部、難燃剤分散液(3)12質量部、架橋剤(大日本インキ化学工業株式会社製「DEXCEL AGENT GK CONC」)3質量部及び青色顔料分散液(大日本インキ化学工業株式会社製「DEXCEL BLUE HR」、顔料分20質量%)5質量部を、分散撹拌機を用いて均一に混合して着色捺染剤(4)を得た。
【0043】
[無色難燃性付与剤の調製]
上記で得られたバインダー樹脂溶液57質量部、難燃剤分散液(1)28質量部、難燃剤分散液(3)12質量部及び架橋剤(大日本インキ化学工業株式会社製「DEXCEL AGENT GK CONC」)3質量部を、分散撹拌機を用いて均一に混合して無色難燃性付与剤(4)を得た。
【0044】
(実施例5)
[着色捺染剤の調製]
実施例4の着色捺染剤(1)の調製で用いた難燃剤分散液(1)を20質量部、難燃剤分散液(3)を20質量部に変更した以外は実施例4と同様にして、着色捺染剤(5)を得た。
【0045】
[無色難燃性付与剤の調製]
実施例4の無色難燃性付与剤(1)の調製で用いた難燃剤分散液(1)を20質量部、難燃剤分散液(3)を20質量部に変更した以外は実施例4と同様にして、無色難燃性付与剤(5)を得た。
【0046】
(実施例6)
[着色捺染剤の調製]
実施例4の着色捺染剤(1)の調製で用いた難燃剤分散液(1)を12質量部、難燃剤分散液(3)を28質量部に変更した以外は実施例4と同様にして、着色捺染剤(6)を得た。
【0047】
[無色難燃性付与剤の調製]
実施例4の無色難燃性付与剤(1)の調製で用いた難燃剤分散液(1)を12質量部、難燃剤分散液(3)を28質量部に変更した以外は実施例4と同様にして、無色難燃性付与剤(6)を得た。
【0048】
(実施例7)
[着色捺染剤の調製]
上記で得られたバインダー樹脂溶液52質量部、難燃剤分散液(2)28質量部、難燃剤分散液(3)12質量部、架橋剤(大日本インキ化学工業株式会社製「DEXCEL AGENT GK CONC」)3質量部及び青色顔料分散液(大日本インキ化学工業株式会社製「DEXCEL BLUE HR」、顔料分20質量%)5質量部を、分散撹拌機を用いて均一に混合して着色捺染剤(7)を得た。
【0049】
[無色難燃性付与剤の調製]
上記で得られたバインダー樹脂溶液57質量部、難燃剤分散液(2)28質量部、難燃剤分散液(3)12質量部及び架橋剤(大日本インキ化学工業株式会社製「DEXCEL AGENT GK CONC」)3質量部を、分散撹拌機を用いて均一に混合して無色難燃性付与剤(7)を得た。
【0050】
(実施例8)
[着色捺染剤の調製]
実施例7の着色捺染剤(1)の調製で用いた難燃剤分散液(2)を20質量部、難燃剤分散液(3)を20質量部に変更した以外は実施例7と同様にして、着色捺染剤(8)を得た。
【0051】
[無色難燃性付与剤の調製]
実施例7の無色難燃性付与剤(1)の調製で用いた難燃剤分散液(2)を20質量部、難燃剤分散液(3)を20質量部に変更した以外は実施例7と同様にして、無色難燃性付与剤(8)を得た。
【0052】
(実施例9)
[着色捺染剤の調製]
実施例7の着色捺染剤(1)の調製で用いた難燃剤分散液(2)を12質量部、難燃剤分散液(3)を28質量部に変更した以外は実施例7と同様にして、着色捺染剤(9)を得た。
【0053】
[無色難燃性付与剤の調製]
実施例7の無色難燃性付与剤(1)の調製で用いた難燃剤分散液(2)を12質量部、難燃剤分散液(3)を28質量部に変更した以外は実施例7と同様にして、無色難燃性付与剤(9)を得た。
【0054】
(実施例10)
[着色捺染剤の調製]
上記で得られたバインダー樹脂溶液52質量部、難燃剤分散液(1)13.3質量部、難燃剤分散液(2)13.3質量部、難燃剤分散液(3)13.3質量部、架橋剤(大日本インキ化学工業株式会社製「DEXCEL AGENT GK CONC」)3質量部及び青色顔料分散液(大日本インキ化学工業株式会社製「DEXCEL BLUE HR」、顔料分20質量%)5質量部を、分散撹拌機を用いて均一に混合して着色捺染剤(10)を得た。
【0055】
[無色難燃性付与剤の調製]
上記で得られたバインダー樹脂溶液57質量部、難燃剤分散液(1)13.3質量部、難燃剤分散液(2)13.3質量部、難燃剤分散液(3)13.3質量部及び架橋剤(大日本インキ化学工業株式会社製「DEXCEL AGENT GK CONC」)3質量部を、分散撹拌機を用いて均一に混合して無色難燃性付与剤(10)を得た。
【0056】
(比較例1)
[着色捺染剤の調製]
上記で得られたバインダー樹脂溶液52質量部、難燃剤分散液(4)40質量部、架橋剤(大日本インキ化学工業株式会社製「DEXCEL AGENT GK CONC」)3質量部及び青色顔料分散液(大日本インキ化学工業株式会社製「DEXCEL BLUE HR」、顔料分20質量%)5質量部を、分散撹拌機を用いて均一に混合して着色捺染剤(C1)を得た。
【0057】
[無色難燃性付与剤の調製]
上記で得られたバインダー樹脂溶液57質量部、難燃剤分散液(1)40質量部及び架橋剤(大日本インキ化学工業株式会社製「DEXCEL AGENT GK CONC」)3質量部を、分散撹拌機を用いて均一に混合して無色難燃性付与剤(C1)を得た。
【0058】
(比較例2)
[着色捺染剤の調製]
比較例1の着色捺染剤(C1)の調製で用いた難燃剤分散液(1)を難燃剤分散液(2)に変更した以外は比較例1と同様にして、着色捺染剤(C2)を得た。
【0059】
[無色難燃性付与剤の調製]
比較例1の無色難燃性付与剤(1)の調製で用いた難燃剤分散液(1)を難燃剤分散液(2)に変更した以外は実施例1と同様にして、無色難燃性付与剤(C2)を得た。
【0060】
(比較例3)
[着色捺染剤の調製]
比較例1の着色捺染剤(C1)の調製で用いた難燃剤分散液(1)を難燃剤分散液(3)に変更した以外は比較例1と同様にして、着色捺染剤(C3)を得た。
【0061】
[無色難燃性付与剤の調製]
比較例1の無色難燃性付与剤(1)の調製で用いた難燃剤分散液(1)を難燃剤分散液(3)に変更した以外は実施例1と同様にして、無色難燃性付与剤(C3)を得た。
【0062】
(比較例4)
[着色捺染剤の調製]
比較例1の着色捺染剤(C1)の調製で用いた難燃剤分散液(1)を難燃剤分散液(4)に変更した以外は比較例1と同様にして、着色捺染剤(C4)を得た。
【0063】
[無色難燃性付与剤の調製]
比較例1の無色難燃性付与剤(1)の調製で用いた難燃剤分散液(1)を難燃剤分散液(4)に変更した以外は実施例1と同様にして、無色難燃性付与剤(C4)を得た。
【0064】
(評価用ポリエステル布帛の作製)
上記の実施例及び比較例で得られた着色捺染剤、無色難燃性付与剤を用いて、下記の方法により、ポリエステル布帛表面にプリントして、各評価用ポリエステル布帛を得た。
【0065】
(色鮮明性評価用ポリエステル布帛の作製)
オートスクリーン捺染機(辻井染機工業株式会社製)を使用して、135メッシュのストライプ柄のスクリーンにて、B4サイズのポリエステルポンジー上に、上記で調製した着色捺染剤を塗布した後、パッドドライヤー(辻井染機工業株式会社製)で150℃、2分の乾燥・熱処理をして、色鮮明性評価用ポリエステル布帛を得た。
【0066】
(難燃性評価用ポリエステル布帛の作製)
使用するスクリーンを全面ベタ柄に変更した以外は、色鮮明性評価用ポリエステル布帛の作製と同様の方法で、難燃性評価用ポリエステル布帛を得た。
【0067】
(耐白化性評価用ポリエステル布帛の作製)
上記で得られた色鮮明性評価用ポリエステル布帛について、着色捺染剤を塗布したストライプ柄の面積1/2に、135メッシュのストライプ柄のスクリーンにて無色難燃性付与剤を重ねて塗布し、150℃、2分の乾燥・熱処理をして、耐白化性評価用ポリエステル布帛を得た。なお、無色難燃性付与剤は、着色捺染剤と同じ実施例又は比較例で調製したものを用いた。
【0068】
(耐洗濯性・耐摩擦性評価用ポリエステル布帛の作製)
使用するスクリーンを長方形柄に変更した以外は、色鮮明性評価用ポリエステル布帛の作製と同様の方法で、耐洗濯性・耐摩擦性評価用ポリエステル布帛を得た。
【0069】
(ポリエステル布帛の評価)
上記で得られた各評価用ポリエステル布帛について、下記の評価方法により、色鮮明性、難燃性、耐白化性、耐洗濯性及び耐摩擦性を評価した。
【0070】
(色鮮明性の評価)
上記で得られた評価用ポリエステル布帛を1日室温で放置した後、着色部分を目視で確認し、以下の基準によって色鮮明性を評価した。
○:難燃剤による色の遮蔽がなく、着色濃度が高い。
△:難燃剤による色の遮蔽がややあり、着色濃度がやや低い。
×:難燃剤による色の遮蔽があり、着色濃度が低い。
【0071】
(難燃性の評価)
上記で得られた評価用ポリエステル布帛について、財団法人日本防炎協会の燃焼試験規格45°ミクロバーナー法に基づいた方法で燃焼試験した。燃焼試験器(スガ試験機株式会社製「45°燃焼性試験器 FL−45MC」)を使用して、評価用ポリエステル布帛の表面(着色捺染剤を塗布した面)とその裏面それぞれ2箇所に対して着炎後3秒加熱と1分加熱を試験し、炭化面積30cm以下、残炎時間3秒以下、残じん時間5秒以下の3つの試験規格について満足するか否かを確認し、以下の基準によって難燃性を評価した。
○:すべての試験規格を満足する。
×:1つの項目でも試験規格を満たさない。
【0072】
(耐白化性の評価)
上記で得られた評価用ポリエステル布帛を3週間室温で放置した後、着色部分表面の難燃剤のブリード状態を目視で確認し、以下の基準によって耐白化性を評価した。
○:難燃剤がブリードせず、着色部分が白化していない。
△:難燃剤がややブリードし、着色部分がやや白化している。
×:難燃剤がブリードし、着色部分が白化している。
【0073】
(耐洗濯性の評価)
JIS L 0844:2005のA−4法に準拠して、試験を繰り返し30回行った後、JIS L 0801:2004の変退色用グレースケールを用いた視感法の判定基準にしたがって、1級〜5級で等級を判定した。なお、等級は、1級が最も退色が大きく、5級に近づくほど退色が少ない。
【0074】
(耐摩擦性の評価)
JIS L 0849:2004に準拠して、学振型摩擦堅牢度試験機を使用して、乾式及び湿式の試験を行った後、JIS L 0801:2004の変退色用グレースケールを用いた視感法の判定基準にしたがって、1級〜5級で等級を判定した。なお、等級は、1級が最も退色が大きく、5級に近づくほど退色が少ない。
【0075】
各着色捺染剤及び無色難燃性付与剤中の難燃剤の配合比率(難燃剤全量を100質量%とした場合)と評価で得られた結果について、表1〜3に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
表1及び2の結果から、実施例1〜10の本発明のポリエステル布帛用難燃性付与剤で加工されたポリエステル布帛は、十分な色鮮明性、難燃性、耐白化性耐洗濯性及び耐摩擦性を有していることが分かった。
【0080】
表3の結果から、比較例1〜3は本発明に用いる難燃剤を併用せず、単独で用いた例であるが、このポリエステル布帛は、耐白化性が不十分であり、耐洗濯性及び耐摩擦性についてもやや不十分であることが分かった。また、比較例4は、デカブロモジフェニルエーテルと三酸化アンチモンとを併用した例であるが、色鮮明性、耐洗濯性及び耐摩擦性が大幅に劣っていることが分かった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノールA系臭素化合物(A)、ビスフェノールS系臭素化合物(B)及びイソシアヌレート系臭素化合物(C)からなる群から選ばれる2種以上の難燃剤を含有することを特徴とするポリエステル布帛用難燃性付与剤。
【請求項2】
前記ビスフェノールA系臭素化合物(A)が、2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモプロピル)−3,5−ジブロモフェニル]プロパンであり、前記ビスフェノールS系臭素化合物(B)が、ビス[4−(2,3−ジブロモプロピル)−3,5−ジブロモフェニル]スルホンであり、前記イソシアヌレート系臭素化合物(C)が、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートである請求項1記載のポリエステル布帛用難燃性付与剤。
【請求項3】
前記ビスフェノールA系臭素化合物、ビスフェノールS系臭素化合物及びイソシアヌレート系臭素化合物の中から2種の難燃剤を配合し、各々の難燃剤の質量基準での配合比率が、20:80〜80:20である請求項1又は2記載のポリエステル布帛用難燃性付与剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエステル布帛用難燃性付与剤に着色剤を含有させたことを特徴とする着色捺染剤。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエステル布帛用難燃性付与剤で加工したことを特徴とする難燃性ポリエステル布帛。

【公開番号】特開2007−284830(P2007−284830A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114398(P2006−114398)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】