説明

ポリエステル系ガスバリア樹脂およびそのプロセス

【課題】ポリマー系ガスバリア樹脂を提供する。
【解決手段】樹脂に対し50:5000ppmの割合で含まれる、粒子サイズが10〜100 nmで、懸濁培地に超音波分散されるナノクレイの懸濁液をPET樹脂に供給し、プリフォーム樹脂を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー系ガスバリア樹脂の分野を対象とする。
【0002】
具体的に、本発明は前述の樹脂組成物の作製プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
ポリマー容器のバリア特性は、気体が壁の厚さを通り抜ける速度を遅らせ得るあるいは遮断させ得ることである。バリア特性は、ポリマーの透過性、すなわち一連の任意の条件下で任意の気体がポリマーを通過する速度を測定することによって定量化されることが最も多い。透過性は、拡散係数もしくは拡散率定数Dと呼ばれる材料特性により定量化される。この定数は、気体がどれほど材料を通過しやすいかを数値化したものである。低透過性とはガスが物質を通過するのが困難であることを意味し、一般的には長時間かかり、時には高圧下および/または高温下で通過しにくい。低透過性のポリマーは、包装産業ではバリア材料と呼ばれる。このような材料は、COやNがポリマー容器から漏るのを防ぎ、風味を保持し、Oの侵入を最小限にするのに役立つ。
【0004】
炭酸清涼飲料(CSD)、特に500 ml未満等、少量のCSDは、通常はガラス瓶またはアルミニウム缶に充填される。
【0005】
PETボトルを使用してCSDを少量で貯蔵する場合、容量に対して表面積が大きいと、比較的高いCOバリア性への改善が必要になる。これは第1には、小型容器は製品の任意の量あたりの表面積が大型容器より大きく、また、暑い天候条件では大型容器よりもCOを容易に失うという事実による。バリア性の強化として、壁の厚さを強化することは経済的に実現可能性が低いと考えられる。結果として、バリア特性を強化し、単層の小容量容器の表面積比が大きいことによるロスを相殺する必要がある。
【0006】
大容量容器では、バリア特性の強化により製品の品質保持期間について妥協することなく壁の厚さや重量を低減できるようになる。
【0007】
PETボトルにCOバリアを組み込むための基本的な3つの方法の1つは、コア層またはバリア強化材料を含む層の周囲にPET構造層を挟む多層構造を設計することである。しかし、ボトルに対する多層押出技術は単層押出よりも複雑であり、バリア中間層として非ポリエステル材料を使用していることから、再利用性の問題も生じている。
【0008】
特許文献1は、酸素バリア性の高い多層フィルムについて開示している。多層フィルムは、PETの内層と、CoPETの外層と、ポリ(m‐キシレン‐アジポアミド)の中間層とを有する。
【特許文献1】米国特許出願第2006286349号明細書
【0009】
同様に、特許文献2にもガスバリア特性が改善されたポリエステル多層シートについて記載されている。多層は、ポリエチレンテレフタレートおよびポリトリメチレンナフタレートの1つ以上の層により形成される。
【特許文献2】特開200296593号明細書
【0010】
表面コーティング技術により、超薄バリアが単層PETボトルの外面に塗布される。これにはさらなるコーティング装置がさらに関与する。特許文献3には、ポリエステル系質上にガスバリアコーティング組成物を有するフィルムについて記載されている。このコーティング組成物はポリビニルアルコールと、アミノ基と、グリシジルエーテルと、ファイバーとを含む。このタイプのバリアコーティングは輸送時にダメージを受け得るため、性能が一貫しない。
【特許文献3】韓国特許出願第20010062265号明細書
【0011】
ガスバリアフィルムについて、上述の両技術を組み合わせた例が特許文献4で報告されている。内層はポリエステル、ポリ(m‐キシレン‐アジポアミド)、およびバリアコーティングから作られ、バリア層はマレイン酸とアクリル酸の共重合体ブレンド物から作られている。
【特許文献4】韓国特許出願第20040067972号明細書
【0012】
バリアPETボトルへの「理想的な」道筋は、バリア性が改善されたホモポリエステルまたはコポリエステルか合金/適切なポリエステルブレンド物のいずれかを有する単層ポリエステル構造である。また、コーティング設備は必要ではなく、ボトルの設計の自由度は束縛されないままである。
【0013】
特許文献5には、PETとナノ酸化物とを混合してPET複合材料を作製し、単層構造のバリア特性を増強することについて記載されている。同様に、特許文献6は、優れたガススクリーニング特性および透過性を有するフィルムを生成する方法を取り上げている。このフィルムは、分散媒においてクレイを混合・分散させて得られるガススクリーニング層をPET、ナイロンのようなポリマーフィルムの表面上に形成することにより生成される。特許文献7は、とりわけナノクレイ、好ましくはモンモリロナイトがinsitu重合時に添加されるPETを含む樹脂組成物について開示している。このナノコンポジットポリマー樹脂から成形される容器において、様々なガスの透過性が減少している。
【特許文献5】中国特許出願第1786043号明細書
【特許文献6】韓国特許出願第20020078719号明細書
【特許文献7】米国特許出願第5972448号明細書
【0014】
クレイ系ナノコンポジットは、「受動‐能動」バリアシステムとしての役割を果たす。これらのナノ添加物を用いて、機械的特性、フレーバー保持性、ガスバリア性、および熱安定性等、ポリマーの特性を強化する。粒子サイズがナノメートル単位であるため、ナノコンポジット樹脂から作られる吹込容器の透明度は、元のポリエステル樹脂と同程度優れている。先行技術におけるナノ添加物は、insitu重合によりポリエステル樹脂へ組み込まれている。組成物中のナノ粒子は、容器の最終成形までに3段階で熱衝撃を受ける。1回目はinsitu重合時、2回目は樹脂を容器のプリフォームへ転換するとき、そして3回目はボトル製造段階で、容器へ転換するための延伸ブロー成形時である。これはナノ粒子の効果を低減させ、ガスバリア特性を提供し、最終容器の透過性にも影響を及ぼす。プリフォームの成形段階に、ナノコンポジットが凝集し得ることも示唆している。
〔発明の目的〕
【0015】
本発明の第1の目的は、バリア特性を強化したガスバリアポリエステル樹脂を基材とするプリフォーム組成物を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、ポリエステル系ガスバリア樹脂製プリフォーム組成物を作製するためのプロセスを提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、通常の射出延伸ブロー成形(ISBM)機において、加熱硬化または低温硬化によるブロー条件により、容量が少なくても(200〜330 mL)炭酸清涼飲料(CSD)の容器に適するポリエステル系ガスバリア樹脂組成物を提供することである。
【0018】
ポリエステル系ガスバリア樹脂組成物を提供し、二酸化炭素、酸素、窒素、および水蒸気等のガスに対するポリエステル樹脂のバリア特性ならびにフレーバー保持性を強化することも本発明の目的である。
【0019】
本発明の別の目的は、ポリマーをプリフォームまたは容器へ転換する有利な段階に、バリア特性を改善する添加物を導入することである。
【0020】
本発明の別の目的は、改善されたプリフォームを成形し、それから作られる容器にガスバリア特性を付与することである。
【発明の開示】
【0021】
本発明は、DMF等の懸濁剤に超音波分散させたナノクレイ添加物懸濁液を充填装置に投入し、樹脂マトリックスにその懸濁液を混合することによって容器のプリフォーム成形時に樹脂組成物にナノクレイ添加物を分散させることが、プリフォームから最終成形される容器のガスバリア特性を著明に改善する驚くべき効果について開示する。本アプローチの利点は、ナノ添加物を高温にさらす時間がごくわずかであることと、ナノ添加物の量が正確にコントロールされることと、分散物が優れていることである。
【0022】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート(PET)と、ナノ添加物を含む懸濁液とを含むポリエステル系ガスバリア樹脂組成物を提供することである。
【0023】
本発明は、射出成形によるプリフォーム成形時のナノ添加物の樹脂への導入を含むプロセスも提供する。PETは合金あるいは粒子サイズが20〜100 nmのクレイのナノ粒子等ナノ添加物と混合した乾燥物であり、樹脂の質量に対し50対5000 ppmの割合でプリフォームが得られる。プリフォームは、望ましいガスバリア特性を有する容器へさらにブローされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
したがって、本発明は、ポリエステル系ガスバリア樹脂組成物であるポリエチレンテレフタレート(PET)と、超音波分散された、粒子サイズが20〜100 nmの範囲であるナノクレイ粒子を添加物として樹脂の重量に対し50 ppm:5000 ppmの割合で含む懸濁液とを提供する。
【0025】
PET樹脂は、単独使用または成核剤と併用され得る。本発明のナノ添加物は、プリフォーム成形時にポリエステルに有利に添加される。
【0026】
本発明は、PET合金樹脂系と、完全に分散されたナノ添加物を含む懸濁液とを有するPET樹脂プリフォームを作製するプロセスを提供する。そのプロセスでは懸濁液を超音波処理し、射出成形機におけるプリフォーム成形時に充填システムを用いてその懸濁液が添加される。
【0027】
重合時に同じ添加物を添加すること、すなわちinsitu法ではなく、プリフォーム成形時にナノ添加物を導入することが有利な点は、ナノ添加物を溶媒に分散させる点である。スラリー充填後にプリフォームを射出成形する方法は、以下の通りである。
【0028】
使用するナノクレイは、スメクタイトクレイの有機誘導体である。白〜明るいクリーム色の粉末で、比重は1.5〜1.9の範囲である。99%以上が200メッシュを通過する。サイズは20 nm〜100 nmである。
【0029】
ナノクレイは140°C、2時間で乾燥させる。適量の乾燥添加物にN,N‐ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒を混ぜて重くし、ガラス瓶でよく混ぜる(ナノ添加物の濃度を1.5%で維持する)。すべての瓶を〜50°Cに保った超音波浴に60分間保存する。
【0030】
20”x12”x12”の寸法のステンレス鋼製超音波浴は、一般的に周波数33KHzで動作し、要求される温度まで浴水を加熱するヒーターと、超音波を発生させる圧電セラミックス製トランスデューサーとを備える。
【0031】
プリフォーム成形にはナノクレイのナノ懸濁液を使用する。
【0032】
ポリエステルは、逐次重縮合反応によりジカルボン酸およびグリコールから作製する。これらの反応は、一般的に280または290°Cの温度で120〜150分間実行し、非晶チップを得る。さらに、これらの非晶チップを約130°Cの温度に30分間曝露することによって予備結晶化させ、他着するのを防ぎ、最終I.V.の要件に基づき、最終的には180〜240°Cの範囲で10分以上固相重縮合(SSP)を実行する。ナノクレイ等ナノ添加物のほとんどは、そのような長時間の高温曝露には耐えられない。このようなナノクレイは、熱安定性が低く、300°Cの空気中で、重量の約12%を失うと報告されている(非特許文献1)。これは、ナノクレイ中の長鎖の脂肪族炭化水素部分の存在が原因である。したがって、市販されているナノクレイの多くは、ポリエステル重合時に導入されるのに適さない。この制限を克服するため、Krishnanらによりポリイミドにおけるナノクレイ系複素環の使用が報告されている(非特許文献2)。この場合、水およびN‐メチルピロリドン(NMP)溶媒の除去処理時に同様の高温が必要になる。代替として、プリフォーム成形時に、充填ユニットを用いてこれらのナノ添加物を供給し得る。このアプローチでは、これらの添加物をより高温に、より短時間曝露させる。供給量は、適用する電圧の変化により異なり得る。添加物の供給量は、以下に記載した通りである。
【0033】
供給量の計算:
空の容器の重量:Wgm
空の容器+10回で供給されるナノ添加物の量:W gm
10回で計量分配されるナノ添加物の量:(W−W)gm
1回に計量分配されるナノ添加物の量:(W−W)/10 gm
成形におけるキャビティ数:N
1プリフォームの重量:Wp gm
1回に消費される樹脂の総量:(NxWp)g
供給されるナノ添加物(ppm):(W−W)x10/(NxWp)等、(W−W)x10/10(NxWp)
【非特許文献1】D.M.Delozier,R.A.Orwoll,J.F.Cahoon,n.J.Johnston,j.G.Smith Jr.,and J.W.Connell,Polymer,43,813(2002)
【非特許文献2】P.S.G.Krishnan,M.Joshi,P.Bhargava,S.Valiyaveettil and C.He,J.Nanosci.Nanotech.,5,1148(2005)
【0034】
添加されるナノ添加物の量に基づいて、適切な電圧を選択する。
【0035】
本発明のナノ添加物を含むPETの合金または混合物は、通常の射出延伸ブロー成形(ISBM)機において、加熱硬化または低温硬化によるブロー条件によって、小容量(200〜330 mL)のCSDボトルを含む様々な製品に成形され得る。本発明のプリフォーム組成物においてナノ添加物を有する改善された樹脂は、特に二酸化炭素、酸素、窒素、および水蒸気等のガスに対するバリア特性ならびにフレーバー保持性の改善を著しく強化する。
【0036】
本発明の任意の実施形態に従って、一般的にPET組成物は成核剤を用いて改良するが、酢酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、ソルビトールナトリウムに制限するものではない。特に微粉化された成核剤は、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、およびタルクからなる群から選択される。
【0037】
本発明のプロセスにおいて、選択した添加物またはモノマーを純粋なテレフタル酸(PTA)とモノエチレングリコール(MEG)のペーストに約70:30の割合で添加し、そのペーストをエステル化反応器に投入する。ペーストは、重縮合触媒、好ましくはアンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、およびチタン(Ti)系の触媒と、炭素のような即効性の適切な再加熱(FRH)用添加物または鉄の酸化物、遷移金属の酸化物および炭化物のような透明な即効性再加熱(CFRH)用添加物も含む。
【0038】
ペーストは、酢酸コバルトのような着色剤および8,9,10,11‐テトラクロロ‐12H‐フタロペリン‐12‐オン(レッドトナー)および1,4‐ビス(メシチルアミノ)アントラキノン(ブルートナー)のような有機トナーも含む。エステル化プロセス後、生成物を予備重合反応器において予備重合し、重縮合反応器へ移す。移す前に、亜リン酸、リン酸またはホスホノ酢酸トリエチルのような熱安定剤を融解したプレポリマーに添加する。要求される固有粘度(I.V.)に到達後、溶解した溶融ポリマーを押出して非晶PETチップにし、固相重合(SSP)化してIVを増加させる。SSP樹脂を用いてプリフォームを射出成形し、次に加熱硬化の有無によらず延伸ブロー成形し、CSDボトルを作製する。次にこれらのボトルを、透明度、結晶度、ガスバリア特性等について特徴化する。
【0039】
本発明の1つの実施形態において、ナノクレイの形態のナノ添加物は、最大5000 ppmまで使用する。ナノ添加物は、ナノ添加物懸濁液のマスター・バッチとしてプリフォーム成形時に導入する。
【0040】
本発明の別の実施形態において、成核剤を有するPET樹脂組成物、ナノ粒子、超微粉粒子、および着色剤を混合する。
【0041】
本発明の別の実施形態においても、PET樹脂における成核剤は、ステアリン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、安息香酸カリウム、シリカスラリー、ソルビトール系化合物、微粉化された安息香酸およびステアリン酸ナトリウムまたはカリウム、ならびにタルクから選択される。
【0042】
本発明のさらに別の実施形態において、PET樹脂は即効性の再加熱(FRH)用添加物を含み、透明な即効性再加熱(CFRH)用添加物はカーボンブラック、鉄の酸化物、遷移金属の酸化物および炭化物から選択される。
【0043】
本発明のさらなる実施形態において、PET樹脂はI.V.が0.70〜0.90 dL/gの範囲である。
【0044】
本発明は、以下の実施例の形態でさらに説明される。しかし、これらの実施例は、本発明の適用範囲を制限するものではない。
【実施例1】
【0045】
純粋なテレフタル酸10.38 kgとモノエチレングリコール4.46 kgを、モル比1:1.4でエステル化容器に入れる。これに成核剤安息香酸ナトリウム50 ppm(0.6 g)を添加する。Sb(3.44 g)として重合触媒三酸化アンチモン240 ppm、Co(1.01 g)として着色剤酢酸コバルト20 ppm、レッドトナー1.5 ppm(0.018 g)およびブルートナー1.2 ppm(0.014 g)を上記混合物にさらに添加する。240〜265°Cの温度で190分間エステル化反応を実行する。エステル化したプレポリマーを重縮合反応器へ移す。
【0046】
重合開始前に、P(TEPA、4.34 g)としてホスホノ酢酸トリエチル50 ppmおよびCFRH添加物、すなわち遷移金属の酸化物10 ppm(0.12 g)を添加する。265〜290°Cの温度にて5〜15 mbar下で180分間重合化を実行する。融解したポリマーを20分間撹拌し続け、融解した非晶合金ポリエステルを押出する。要求されるトルクに達したら、溶融非晶ポリマーを窒素圧下で押出し、ペレットとして採取する。結果として生じるI.V.が〜0.6 dL/gの非晶ポリマーをI.V.〜>0.7 dL/gまで固相重合化し、射出成形によってプリフォームに成形し、その特徴を分析する。
【実施例2】
【0047】
本実施例においては、樹脂組成物およびプロセス条件は、実施例1で述べた通りである。さらにDMF中の懸濁液において、プリフォーム成形時にナノ添加物として50 ppmのナノクレイを樹脂に組み込んだ。懸濁液は、20°Cのときに粘度が0.92 cPのDMF100 ml中に粒子サイズ20〜100 nmのナノクレイ1.5 gを懸濁して作製した。ナノクレイ粒子が懸濁液に完全に分散するまで、超音波処理器によって周波数33 KHzにて60分間懸濁液を超音波処理した。この懸濁液を射出成形装置の充填ユニットに導入し、供給量を設定してPETに対するナノクレイの割合を50 ppmとした。
【実施例3】
【0048】
実施例3の樹脂組成物は実施例2とほぼ同じであるが、ナノ添加物の量は増加(500 ppm)した。
【実施例4】
【0049】
本実施例の樹脂組成物は、プリフォーム成形時にナノ添加物を供給する代わりに、ナノ粒子添加物と他の添加物(insitu重合等によって)とを樹脂に組み込むことを除けば、実施例3とほぼ同じである。
【実施例5】
【0050】
実施例5の樹脂組成物は実施例2とほぼ同じであるが、ナノ添加物の量は増加(1000 ppm)した。
【実施例6】
【0051】
実施例6の樹脂組成物は実施例2とほぼ同じであるが、ナノ添加物の量は増加(3000 ppm)した。
【実施例7】
【0052】
実施例7の樹脂組成物は実施例2とほぼ同じであるが、ナノ添加物の量は増加(5000 ppm)した。
【実施例8】
【0053】
本実施例の樹脂組成物は、プリフォーム成形時にナノ添加物を供給する代わりに、ナノ粒子添加物と他の添加物(insitu重合等によって)とを樹脂に組み込むことを除けば、実施例5とほぼ同じである。
【実施例9】
【0054】
本実施例の樹脂組成物は、プリフォーム成形時にナノ添加物を供給する代わりに、ナノ粒子添加物と他の添加物(insitu重合等によって)とを樹脂に組み込むことを除けば、実施例6とほぼ同じである。
【実施例10】
【0055】
本実施例の樹脂組成物は、プリフォーム成形時にナノ添加物を供給する代わりに、ナノ粒子添加物と他の添加物(insitu重合等によって)とを樹脂に組み込むことを除けば、実施例7とほぼ同じである。
【実施例11】
【0056】
本実施例の樹脂組成物は、成核剤を添加しないことを除けば、実施例8とほぼ同じである。
【0057】
実施例1〜実施例11における様々な試験結果を表1および表2に要約する。
【0058】
[表1]

【0059】
[表2]

【0060】
実施例1〜実施例11における様々なパラメータに関して得られた数値から以下が推測される。
【0061】
CIE測色値、すなわち基材であるPET樹脂のL*およびb*は優れており、実施例4および実施例8〜11にみられる通り、insituで添加された場合、ナノ添加物濃度の変化に影響を受ける。
【0062】
プリフォームの厚さによりL*が減少しb*が増加すること以外は、プリフォーム成形時にナノ粒子を添加することは、色にさほど影響を及ぼさない。
【0063】
これはプリフォームの透明性が優れていることを示す低いヘイズ値にも反映されている。
【0064】
プリフォーム成形時にナノ粒子を組み込まれると、樹脂およびプリフォームの特性ならびにブロー成形ボトルの結晶度は同等以上になる。
【0065】
供給量が5000 ppm未満のとき、最適なヘイズ値は9.9〜12.6である。ブロー後、これらのプリフォームにより透明なボトルが生成された。供給量が5000 ppmを上回るとき、生成されたプリフォームは不透明になった。これらのプリフォームをブローしたとき、ボトルがパール光をもつことが判明すると、包装用途には不適切とされる。
【0066】
上述の知見に基づき、ナノ添加物を好適には500〜2500 ppmの範囲に保ち、ブロー成形ボトルのバリア特性について試験する。
【0067】
プリフォームは、250 mL CSDボトルへさらにブローされる。これらのボトルの二酸化炭素に対するバリア抵抗性を評価するため、ガス量(GV)を測定する。これらのボトルに水250 mL(一杯量280 mL)を充填し、必要量のクエン酸および炭酸水素ナトリウムを溶解し、28 mm PCOキャップ(プラスチック製クロージャー)で閉じた。容器中にCOが発生した。Zahm and Nagel, NewYork, USAが提供したZahm New Style Air Tester, series 7000を用いて、PCOキャップに穴を開けてヘッドスペースのガス量を測定した。これを初期値とした。これらのボトルを温度23°C、湿度50%で貯蔵した。GVについてボトル6本を毎週試験した。6本の平均値を表3に示す。
【0068】
[表3]

【0069】
PETボトル中の炭酸清涼飲料(CSD)では、品質保持期間は貯蔵中のCOロス(%)および週数によって決まり、COロス(%)<17は優れているとして許容される。品質保持期間は、一般的には500 mL容量で約6週間である。しかし、能動的バリア樹脂やナノ添加物を含まない250〜330 mLのようなより小さいサイズのボトルの場合、COの17%のロスは約2〜3週間で生じ、その結果品質保持期間が影響を受ける。
【0070】
表3は、ナノ添加物をもたない樹脂(実施例1)はCOを保持できず、特に低温硬化したボトルでは3週間以内に>17%ロスすることを明確に示している。実施例1の加熱硬化させたボトルでは、実施例1で低温硬化させたボトルより性能は優れているが、実施例2、3、および4で低温硬化させたボトルには劣る。ナノ添加物を含む実施例2、3、および4の樹脂から作られる低温硬化させたボトルは、最初の数週間の貯蔵においてはCOロスが最小限であるという極めて好ましい傾向を示し、実施例3および4にみられる通り、ナノ添加物の量が多くなるほど好ましい傾向が強くなる。予想通り、実施例2、3、および4の樹脂から作られる加熱硬化させたボトルは、低温硬化させたボトルと比較してバリア効果が改善されている。実施例2、3、および4を比較すると、ナノ添加物を同量含んでいる実施例3のバリア性の結果は実施例4より優れているが、実施例3ではナノ添加物はプリフォーム成形時に供給される。
【0071】
ナノ添加物を含む樹脂から作られるボトルは、ナノ添加物をもたない樹脂から作製されるボトルよりも性能が優れている。同様に、加熱硬化によるブロー成形により作られるボトルは、低温硬化させたボトルよりも性能が優れている。ナノ添加物量約500 ppm(実施例3および4)のときに、低温硬化および加熱硬化させた250 mLボトルは、ロス17%未満でのCO保持性を最大約10〜14週間示す。
【0072】
プリフォーム成形時に組み込まれるあるいは供給されるナノ添加物を有するバリアPETポリエステルを、圧縮成形によってキャストフィルムへ転換した。次にCOおよびOの透過性について、これらのフィルムを評価した。Gas Permeability Tester Lab BTY‐B1Modelを用いて、CO透過性を試験した。Proportion様式を用いて、標準PET(ナノ粒子なし)とバリアPETフィルムの両方についてISO 2556により温度28°C、湿度75%のときに試験した。表4に記載した通り、ガス透過度(GTR)およびガス透過係数(GPC)の値を測定する。
【0073】
[表4]

【0074】
再度言うが、プリフォーム成形時にナノ添加物を供給する実施例3においては、バリア改善因子(BIF)がより優れている。
【0075】
ASTM D 1434‐98に従って、O透過度(OTR)についてもフィルムサンプルを試験した。結果は表5に示す。プリフォーム成形時にナノ添加物を供給することが、insitu添加よりも優れているという同じ傾向が示されている。
【0076】
[表5]

【0077】
プリフォームを射出成形後、250 mLボトルへ延伸ブロー成形することによって、実施例1〜4のバリアPET樹脂をボトルへ転換する。これらのボトルについて、ボトル内の初期圧を4または5バールで維持し、温度28°Cまた38°C、湿度50%を維持するGMS Applied Films装置を用いて、経時的なCOロスおよびOの侵入を測定する。結果を表6に示す。溶存酸素として測定されるこれらのボトルへの酸素の侵入については、表7に示す。
【0078】
ボトルで測定した通り、図1は実施例4および実施例3のバリア樹脂に関するガス量(GV)と貯蔵時間(週)のグラフである。
【0079】
[表6]

【0080】
[表7]

【0081】
利点:
【0082】
本発明のポリエステルは、通常の射出延伸ブロー成形(ISBM)機において、加熱硬化または低温硬化によるブロー成形および押出による高バリア性フィルムにより、小容量(200〜350 mL)のCSDボトルを含む様々な製品に成形され得る。
【0083】
本発明の改善された樹脂組成物は、特に二酸化炭素、酸素、窒素、および水蒸気等のガスに対するバリア特性ならびにフレーバー保持性の改善を著明に強化する。
【0084】
プリフォーム成形時にナノ粒子を添加すると、ポリマー作製時にinsitu添加するのに対し、ガスに対するバリア性能が改善される。
【0085】
改善された樹脂は、単層の高バリアPETボトルおよび包装用途のフィルムに適している。
【0086】
本明細書では特定の樹脂組成物および好適な実施形態によりこれを作製するプロセスに関して相当強調しているが、様々な変更を行ってよく、好適な実施形態において本発明の原理から逸脱せずに多くの変更形態を作製してもよいと理解される。本発明の好適な実施形態および他の実施形態におけるこれらもしくは別の変更は、本明細書での開示により当業者には明らかであり、これによって上述の記述内容が本発明の単なる例示であり、制限ではないと解釈されることが明確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施例4および実施例3のバリア樹脂に関するガス量(GV)と貯蔵時間(週)のグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PET樹脂と、DMF等の懸濁培地に超音波分散され、樹脂に対し50:5000 ppmの割合で含まれる、粒子サイズが20〜100 nmの範囲であるナノクレイの懸濁液とを含む、プリフォーム樹脂組成物。
【請求項2】
PET樹脂が、成核剤、微粉化された成核剤、着色剤および即効性再加熱用添加物を含む添加物の群から選択される、少なくとも1種類の添加物を含むことを特徴とする、請求項1に記載のプリフォーム樹脂。
【請求項3】
成核剤が、酢酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、およびソルビトールナトリウムからなる試剤群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載のプリフォーム樹脂。
【請求項4】
微粉化された成核剤が、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、およびタルクからなる試剤群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載のプリフォーム樹脂。
【請求項5】
即効性再加熱剤が、鉄の酸化物、遷移金属の酸化物および炭化物からなる試剤群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載のプリフォーム樹脂。
【請求項6】
PET樹脂のI.V.が0.70〜0.90 dL/gであることを特徴とする、前述の請求項のいずれか1つに記載のプリフォーム樹脂。
【請求項7】
既定量のナノクレイ粒子をDMFに導入し、
DMFに前記粒子を超音波分散させて懸濁液として作製するステップ
あるいはナノ粒子ibNEGの懸濁液を選択するステップと、
プリフォーム成形時に射出成形装置においていずれかの懸濁液をPET樹脂に供給し、前記PET樹脂におけるナノクレイ粒子の前記濃度を50〜5000 ppmにするステップとを含む、プリフォーム樹脂を作製する、
方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の樹脂組成物を用いて作製される、プリフォーム。
【請求項9】
請求項7に記載の方法によって作製される、プリフォーム。
【請求項10】
請求項8のプリフォームから作られる、容器。

【図1】
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【公開番号】特開2009−24159(P2009−24159A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−99731(P2008−99731)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(506215179)フツラ ポリエステルズ リミテッド (3)
【出願人】(508106035)
【出願人】(508106046)
【出願人】(508106057)
【出願人】(508106068)
【出願人】(508106079)
【出願人】(508106080)
【Fターム(参考)】