説明

ポリエチレンを製造するための触媒系およびプロセス

本発明は、触媒系において、I.(a)(1)有機酸素含有マグネシウム化合物、(2)有機酸素含有チタン化合物、および(3)ジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する少なくとも1種類の化合物を含む炭化水素溶液と、(b)Xがハロゲンであり、Meが化学元素のメンデレーエフの周期表のIII族の金属であり、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0<n<3である式MeRn3-nを有する金属化合物、および0<m≦2、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式RmSiCl4-mを有するケイ素化合物の混合物との反応により得られる固体反応生成物であって、(b)からの金属:(a)からのチタンのモル比が1:1未満である固体反応生成物、およびII.Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式AlR3を有する有機アルミニウム化合物、を含む触媒系に関する。この触媒は、エチレンの重合中、好ましくは超高分子量ポリエチレンの重合中に適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒系およびこの触媒系の存在下でポリエチレンを製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンの触媒による製造は当該技術分野において非常によく知られている。非常に特殊な部類のポリエチレンに、約1000000から6000000グラム/モルを大幅に超える非常に大きい平均分子量を有する超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)があり、一方で、高密度ポリエチレン(HDPE)は典型的に約50000と300000g/モルの間のモル質量を有する。したがって、これらの直鎖状ポリマーは、直鎖状高密度ポリエチレンのものよりもずっと大きい平均分子量を有する。UHMWPEを得るためのポリマー合成法が非特許文献1に開示されている。分子量がより大きいために、UHMWPEに特徴の独特な組合せが与えられ、分子量がより小さいグレードのものが失敗する用途にUHMWPEが適したものとなる。このポリエチレンの非常に大きい分子量により、優れた性質、例えば、非常に高い耐磨耗性、非常に高い耐衝撃性、非常に大きい溶融粘度および低い動摩擦係数がもたらされる。大きい分子量および大きい溶融粘度のために、圧縮成形およびラム押出のような特別な加工方法が適用される。UHMWPEは、分子量が大きいために、溶融されたときの流動性が不十分であり、そのためペレット形態に成形することが難しく、生成物は、粉末形態で供給しなければならず、さらに重要なことには、UHMWPEは粉末から加工しなければならない。その結果、製造プロセス並びに転化プロセスは、粉末の性質により決まってしまう。例えば、この粉末は、貯蔵し、輸送しなければならず、その結果、UHMWPE粉末の嵩密度は非常に重要である。嵩密度が大きいと、輸送時の目詰まりが減少し、単位体積当たりの貯蔵可能な量を増加させることができる。嵩密度を増加させることによって、重合容器中に存在する単位体積当たりのUHMWPEの質量を増加させることができ、重合容器中のUHMWPE粉末の濃度を高めることができる。同様に、UHMWPEの加工において、大きい嵩密度が要求される。両方の方法は原則的に、粉末粒子の焼成を含む(非特許文献2)。この焼結を効果的にするために、高分子粉末の緻密な充填が達成されることが非常に重要であり、これは、大きい嵩密度に置き換えられる。UHMWPEの嵩密度は、300kg/m3超、さらにより好ましくは350kg/m3超であるべきである。さらに、UHMWPE粉末の平均粒径が重要な特徴である。平均粒径(D50)は、好ましくは250マイクロメートル未満、より好ましくは200マイクロメートル未満である。その上、(D90−D10)/D50と定義される、「スパン」として一般に知られている粒径分布は、低い、好ましくは2未満、さらにより好ましくは1.5未満であるべきである。
【0003】
ポリマーの粉末粒子の形状は、触媒粒子の形状から移し換えられ、これは複製現象としても知られている。一般に、この複製が行われたときに、ポリマーの平均粒径は、触媒収量の立方根、すなわち、触媒1グラム当たりに製造されるポリマーのグラムに比例する。例えば、非特許文献3を参照のこと。この比例のために、より小さいなポリマー粒子は、触媒の収量を減少させることによって製造されるであろうが、これにより、ポリマー中の触媒残留物が多くなり、また、ポリマーを製造するのに必要な触媒コストが高くなってしまう。このために、250μm未満、好ましくは200μm未満のポリマー粒径と組み合わされて、高い触媒活性が要求されるので、触媒に厳しい要件が負わされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Journal of Macromolecular Science Part C Polymer Reviews, Vol. C42, No 3, pp 355-371, 2002
【非特許文献2】Stein in Engineered Materials Handbook, Volume 2: Engineering Plastics, ASM International 1999 page 167-171
【非特許文献3】Dall’Occo et al, in “Transition Metals and Organometallics as Catalysts for Olefin Polymerization” (Kaminsky, W.; Sinn, H., Eds.) Springer, 1988, page 209-222
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
触媒は、経済効率的な様式で、モル質量が十分に大きいUHMWPEを製造できなければならない。ポリオレフィンを製造するプロセスにおいて、重合熱の除去が重大であり、その結果、単位時間当たりの反応装置の出力を最大にし、熱除去に関連するエネルギーコストを減少させるために、増加した温度で重合が行われる。したがって、できるだけ高い重合温度を適用することが望ましい。しかしながら、増加した重合温度では、チーグラー触媒は、より小さいモル質量の高分子を製造する傾向にある。そのため、適用できる最高の可能な温度は、特定のチーグラー触媒が製造できる最高のモル質量の影響を受ける。そのため、高い重合温度で非常に高いモル質量のポリエチレンを製造できる触媒が必要とされている。
【0006】
本発明の課題は、大きいモル質量、大きい粉末嵩密度、狭いスパンおよび250μm未満の平均粒径を示すUHMWPEを生成する、それゆえ、高い触媒活性を示す触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による触媒は、その触媒系が、
I.固体反応生成物であって、
(a)(1)有機酸素含有マグネシウム化合物、
(2)有機酸素含有チタン化合物、および
(3)ジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する少なくとも1種類の化合物、
を含む炭化水素溶液と、
(b)Xがハロゲンであり、Meが化学元素のメンデレーエフの周期表のIII族の金属であり、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n<3である式MeRn3-nを有する金属化合物、および0≦m≦2、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式RmSiCl4-mを有するケイ素化合物の混合物と、
の反応により得られる固体反応生成物であり、(b)からの金属:(a)からのチタンのモル比が1:1未満である固体反応生成物、および
II.Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式AlR3を有する有機アルミニウム化合物、
を含むという点で特徴付けられる。
【0008】
化学元素のメンデレーエフの周期表のIII族の好ましい金属は、アルミニウムおよびホウ素である。
【0009】
ハロゲンがClであることが好ましい。
【0010】
前記有機酸素含有マグネシウム化合物、前記有機酸素含有チタン化合物、および前記ジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する化合物を含む炭化水素溶液と、前記金属化合物および前記ケイ素化合物を含む特別な混合物との組合せにより、大きいモル質量、大きい粉末嵩密度、狭いスパンおよび250μm未満の平均粒径を示すUHMWPEを提供し、さらに高い触媒活性を示す触媒が得られる。
【0011】
混合物(b)の成分が、別々にまたは連続的に使用される代わりに、炭化水素溶液(a)との反応において混合物として使用されることが必須である。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態によれば、ジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する化合物は、有機酸素含有ジルコニウムおよび/またはハフニウム化合物の群から選択される。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態によれば、式MeRn3-nを有する(b)からの金属化合物は、Xがハロゲンであり、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n<3である式AlRn3-nを有するアルミニウム化合物である。
【0014】
(b)からのアルミニウム:(a)からのチタンのモル比が1:1未満であることが好ましい。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態によれば、I(a)(2)からのチタン対I(a)(3)からの有機酸素含有化合物のモル比が、1:20から10:1の範囲にある。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態によれば、前記触媒系は、
I.固体反応生成物であって、
(a)(1)有機酸素含有マグネシウム化合物、
(2)有機酸素含有チタン化合物、および
(3)ジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する少なくとも1種類の化合物、
を含む炭化水素溶液と、
(b)Xがハロゲンであり、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n<3である式MeRn3-nを有する金属化合物、および0≦m≦2、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式RmSiCl4-mを有するケイ素化合物の混合物と、
の反応により得られる固体反応生成物であり、(b)からの金属:(a)からのチタンのモル比が1:1未満である固体反応生成物であり、
(c)得られた固体反応生成物の、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n<3である式AlRnCl3-nを有するアルミニウム化合物による後処理、
が施された固体反応生成物、および
II.Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式AlR3を有する有機アルミニウム化合物、
を含む。
【0017】
この触媒により、大きい粉末嵩密度、狭いスパンおよび250μm未満の平均粒径を有する高分子が得られる。さらに、この触媒は高い触媒活性を有する。
【0018】
有機酸素含有マグネシウム化合物は、マグネシウム−炭素結合を含まない。
【0019】
適切な有機酸素含有マグネシウム化合物としては、例えば、マグネシウムメチレート、マグネシウムエチレートおよびマグネシウムイソプロポキシレートなどのアルコキシドおよびアルキルアルコキシド、例えば、マグネシウムエチルエチレートが挙げられる。
【0020】
有機酸素含有マグネシウム化合物がマグネシウムアルコキシドであることが好ましい。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施の形態によれば、マグネシウムアルコキシドがマグネシウムエトキシドである。
【0022】
適切な有機酸素含有チタン化合物およびジルコニウムまたはハフニウム含有化合物は、一般式[MtOx(OR)4-2xnにより表してよく、ここで、Mtは、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムからなる群より選択され、Rは有機ラジカルを表し、xは0と1の間に及び、nは1と6の間に及ぶ。
【0023】
式[TiOx(OR)4-2xnを有する有機酸素含有チタン化合物、式[ZrOx(OR)4-2xnを有するジルコニウム化合物、および式[HfOx(OR)4-2xnを有するハフニウム化合物の適切な例としては、アルコキシド、フェノキシド、オキシアルコキシド、縮合アルコキシド、カルボキシレートおよびエノレートが挙げられる。
【0024】
適切なジルコニウムおよびハフニウム含有化合物としては、式(OR)yZrCl4-yおよび(OR)yHfCl4-yを有する混合アルコキシ金属塩化物が挙げられ、ここで、1≦y≦3である。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態によれば、有機酸素含有チタン化合物はチタンアルコキシドである。
【0026】
本発明の好ましい実施の形態によれば、有機酸素含有ジルコニウム化合物はジルコニウムアルコキシドである。
【0027】
本発明の好ましい実施の形態によれば、有機酸素含有ハフニウム化合物はハフニウムアルコキシドである。
【0028】
適切なアルコキシドの例としては、Ti(OC254、Ti(OC374、Ti(OC494、Ti(OC8174、Zr(OC374、Zr(OC494、Zr(OC8174、Hf(OC374、Hf(OC494、およびHf(OC8174が挙げられる。
【0029】
本発明のさらに好ましい実施の形態によれば、チタンアルコキシドはTi(OC494である。
【0030】
好ましい実施の形態によれば、式MeRn3-nを有する金属化合物は、式AlRn3-nを有するアルミニウム化合物である。
【0031】
式AlRn3-nを有するアルミニウム化合物の適切な例としては、三塩化アルミニウム、二臭化エチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、二塩化プロピルアルミニウム、二塩化−n−ブチルアルミニウム、二塩化イソブチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムおよびトリ−n−ヘキシルアルミニウムが挙げられる。
【0032】
好ましい実施の形態によれば、I(b)の混合物における有機アルミニウムハロゲン化物は有機アルミニウム塩化物、より好ましくは二塩化エチルアルミニウムである。
【0033】
式AlR3の有機アルミニウム化合物の適切な例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウムおよびトリオクチルアルミニウムが挙げられる。
【0034】
有機酸素含有マグネシウム化合物および有機酸素含有チタン化合物、ジルコニウムおよびハフニウム化合物の炭化水素溶液は、例えば、米国特許第4178300号および欧州特許公開第876318号の各明細書に開示されている手法にしたがって調製することができる。これらの溶液は、一般に透明な液体である。固体粒子が含まれている場合、これらは、触媒合成にその溶液を使用する前に、濾過により除去することができる。
【0035】
一般に、炭化水素はC4〜C12飽和炭化水素である。炭化水素がC5〜C7飽和炭化水素であることが好ましい。
【0036】
アルミニウム化合物、特に塩化アルキルアルミニウムは、ポリオレフィンのための触媒の調製によく使用されるが、意外なことに、(b)におけるアルミニウム化合物の量は、予期せぬほど少ない、典型的に、1未満の、(b)からのアルミニウム対(a)からのチタンのモル比より低いべきであることが分かった。
【0037】
本発明の好ましい実施の形態によれば、(b)からのアルミニウム対(a)からのチタンのモル比は1:1未満である。
【0038】
この比が0.8:1未満であることが好ましく、この比が0.6:1未満であることがより好ましい。
【0039】
本発明の好ましい実施の形態によれば、RmSiCl4-mからの塩素:炭化水素溶液(a)中に存在する酸素のモル比は、3:1未満、より好ましくは2:1未満である。
【0040】
好ましい実施の形態において、マグネシウム:チタンのモル比は3:1未満である。
【0041】
マグネシウム:チタンのモル比が0.2:1と3:1の間に及ぶことが好ましい。
【0042】
一般に、(b+c)におけるアルミニウム化合物からのAl:Tiのモル比は0.05:1と1:1の間に及ぶ。
【0043】
本発明の好ましい実施の形態によれば、(b+c)におけるアルミニウム化合物からのAl:Tiのモル比は0.05:1と0.8:1の間に及ぶ。
【0044】
一般に、触媒の平均粒径は3μmと30μmの間に及ぶ。この平均粒径が3μmと10μmの間に及ぶことが好ましい。
【0045】
一般に、粒径分布のスパンは3未満である。
【0046】
本発明の触媒は、有機酸素含有マグネシウム化合物、有機酸素含有チタン化合物および有機酸素ハフニウムおよび/またはジルコニウム含有化合物の間の第1の反応、その後の炭化水素溶媒による希釈で可溶性錯体が得られ、その後、この錯体の炭化水素溶液と、式MeRn3-nを有する金属化合物および式RmSiCl4-mを有するケイ素化合物を含む混合物との反応が行われることによって、得られるであろう。
【0047】
本発明の好ましい実施の形態によれば、触媒は、マグネシウムアルコキシド、チタンアルコキシドおよびジルコニウムアルコキシドおよび/またはハフニウムアルコキシドの間の第1の反応、その後の炭化水素溶媒による希釈で、マグネシウム、チタンおよびジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する混合アルコキシドからなる可溶性錯体が得られ、その後、この錯体の炭化水素溶液と、式AlRn3-nを有するアルミニウム化合物および式RmSiCl4-mを有するケイ素化合物を含む混合物との反応が行われることによって、得られる。
【0048】
式AlRn3-nを有するアルミニウム化合物および式RmSiCl4-mを有するケイ素化合物を含む混合物が、炭化水素溶液として使用されることが好ましい。
【0049】
アルキルアルミニウムまたはハロゲン化アルキルアルミニウムの存在下でのその後の後処理工程が可能である。
【0050】
添加の順序は、有機酸素含有マグネシウム化合物と有機酸素含有チタン化合物を含有する炭化水素溶液を、式AlRn3-nを有するアルミニウム化合物と式RmSiCl4-mを有するケイ素化合物を含む混合物に添加するもの、またはその逆であっても差し支えない。
【0051】
有機酸素含有マグネシウム化合物と有機酸素含有チタン化合物を含有する炭化水素溶液を、式AlRn3-nを有するアルミニウム化合物と式RmSiCl4-mを有するケイ素化合物を含む、撹拌されている混合物に添加することが好ましい。
【0052】
この反応の温度は、使用する炭化水素の沸点未満のどの温度であっても差し支えない。しかしながら、60℃未満、好ましくは50℃未満の温度を使用することが有益である。一般に、添加の期間は、10分より長いことが好ましく、30分より長いことがより好ましい。
【0053】
マグネシウム化合物、好ましくは有機酸素含有マグネシウム化合物、および有機酸素含有チタン、ジルコニウムまたはハフニウム化合物を含む炭化水素溶液の、ハロゲン含有ケイ素化合物およびアルミニウム化合物の混合物との反応において、固体が沈殿し、この沈殿反応後に得られた混合物を加熱して、反応を完了する。この反応後、沈殿物を濾過し、炭化水素で洗浄する。例えば、何回ものデカンテーション工程などの、希釈液から固体を分離する他の手段およびその後の洗浄を適用しても差し支えない。全ての工程は、窒素または別の適切な不活性ガスの不活性雰囲気中で行うべきである。アルミニウム化合物による後処理は、濾過と洗浄工程の前、またはこの手法の後のいずれに行っても差し支えない。
【0054】
本発明による触媒の利点は、触媒の生産性が高く、その結果、高分子中の触媒残留物が非常に少ないことである。この触媒の追加の利点は、触媒を製造するための合成が、容易に入手でき比較的取扱いが容易な化合物に基づいて、比較的単純であり、安価であることである。
【0055】
本発明の別の実施の形態によれば、触媒系は、
I.固体反応生成物であって、
(a)(1)有機酸素含有マグネシウム化合物、および
(2)有機酸素含有チタン化合物、
を含む炭化水素溶液と、
(b)Xがハロゲンであり、Meが化学元素のメンデレーエフの周期表のIII族の金属であり、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n<3である式MeRn3-nを有する金属化合物、および0≦m≦2、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式RmSiCl4-mを有するケイ素化合物の混合物と、
(c)ジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する化合物と、
の反応により得られる固体反応生成物であり、(b)からの金属:(a)からのチタンのモル比が1:1未満である固体反応生成物、および
II.Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式AlR3を有する有機アルミニウム化合物、
を含む。
【0056】
本発明の好ましい実施の形態によれば、この触媒は、エチレンの重合のためのプロセスに使用される。
【0057】
本発明は、ポリエチレンを製造するためのプロセスであって、重合が、
I.固体反応生成物であって、
(a)(1)有機酸素含有マグネシウム化合物、
(2)有機酸素含有チタン化合物、および
(3)ジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する少なくとも1種類の化合物、
を含む炭化水素溶液と、
(b)Xがハロゲンであり、Meが化学元素のメンデレーエフの周期表のIII族の金属であり、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n<3である式MeRn3-nを有する金属化合物、および0≦m≦2、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式RmSiCl4-mを有するケイ素化合物の混合物と、
の反応により得られる固体反応生成物であり、(b)からの金属:(a)からのチタンのモル比が1:1未満である固体反応生成物、および
II.Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式AlR3を有する有機アルミニウム化合物、
を含む触媒系の存在下で行われることを特徴とするプロセスにも関する。
【0058】
ジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する化合物が、有機酸素含有ジルコニウムおよび/またはハフニウム化合物の群から選択される化合物であることが好ましい。
【0059】
好ましい実施の形態によれば、金属化合物が、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n<3である式AlRn3-nを有するアルミニウム化合物である。
【0060】
本発明のさらに好ましい実施の形態によれば、前記プロセスは、
I.固体反応生成物であって、
(a)(1)有機酸素含有マグネシウム化合物、
(2)有機酸素含有チタン化合物、および
(3)有機酸素含有ジルコニウムおよび/またはハフニウム化合物の群から選択される少なくとも1種類の化合物、
を含む炭化水素溶液と、
(b)Xがハロゲンであり、Meが化学元素のメンデレーエフの周期表のIII族の金属であり、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n<3である式MeRn3-nを有する金属化合物、および0≦m≦2、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式RmSiCl4-mを有するケイ素化合物の混合物と、
の反応により得られる固体反応生成物であり、(b)からの金属:(a)からのチタンのモル比が1:1未満である固体反応生成物であり、
(c)得られた固体反応生成物の、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0<n≦3である式AlRnCl3-nを有するアルミニウム化合物による後処理、
が施された固体反応生成物、および
II.Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式AlR3を有する有機アルミニウム化合物、
を含む触媒系の存在下で行われる。好ましい実施の形態によれば、(b)からの金属化合物は、Xがハロゲンであり、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n≦3である式AlRn3-nを有するアルミニウム化合物である。
【0061】
このプロセスにより、要求される特性および高い嵩密度を有するポリエチレンが得られる。このプロセスは、UHMWPEの製造に非常に適している。
【0062】
UHMWPE以外にも、本発明による触媒により、高密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが製造されるであろう。得られる粒子形態は優れており、このことは、全ての粒子形成重合プロセスにとって有益であろう。
【0063】
本発明の好ましい実施の形態によれば、本発明による触媒によりポリエチレンを製造するためのプロセスは、UHMWPEの製造に関する。
【0064】
一般に、UHMWPE粉末の嵩密度は、350kg/m3と600kg/m3の間に及び、好ましくは350kg/m3と550kg/m3の間に及ぶ。
【0065】
UHMWPEポリマー粉末の疎充填嵩密度は、ASTM D1895/Aに概説された手法にしたがってポリマー粉末の嵩密度を測定することによって決定される。
【0066】
本発明による触媒により得られた超高分子量エチレンホモポリマーおよび/またはコポリマーは、以下の特徴:
・ 280000g/モル超かつ10000000g/モル未満の平均分子量
・ 50マイクロメートルと250マイクロメートルの間の範囲にある平均粒径(D50)、および
・ 350と600kg/m3の間の範囲にある嵩密度
を有する粉末である。
【0067】
重合反応は、有機溶媒の不在下での気相またはバルク相で行っても、もしくは有機希釈剤の存在下で液体スラリー中で行ってもよい。重合は、バッチ式にまたは連続様式で行っても差し支えない。これらの反応は、酸素、水、または触媒毒として働くかもしれない任意の他の化合物の不在下で行われる。適切な溶媒の例としては、例えば、プロパン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン、およびメチルシクロヘキサンなどのアルカンおよびシクロアルカン、並びに例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、エチルトルエン、n−プロピルベンゼンおよびジエチルベンゼンなどのアルキル芳香族化合物が挙げられる。重合温度は、20℃と200℃の間、好ましくは20℃と120℃の間に及んでよい。重合中のモノマーの圧力は、適切に大気圧、より好ましくは2〜40バール(1バール=100000Pa)である。
【0068】
重合は、所望であれば、触媒性能をさらに修正するために、外部ドナーの存在下で行ってもよい。適切な外部ドナーの例には、触媒成分またはアルキルアルミニウムへの配位に利用できる少なくとも1つの孤立電子対を有するヘテロ原子を含有する有機化合物がある。適切な外部ドナーの例としては、アルコール、エーテル、エステル、シランおよびアミンが挙げられる。重合は、例えば、反応装置の内容物の合計量に対して1ppmと500ppmの間に及ぶ量の静電防止剤または防汚剤の存在下で行っても差し支えない。
【0069】
ポリマーの分子量は、例えば、重合温度の調節または水素やアルキル亜鉛などの分子量調節剤の添加などの、当該技術分野で公知のどのような手段により調節しても差し支えない。UHMWPEの分子量は非常に大きいために、そのモル質量を、例えば、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)やサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、分析することは難しい。それゆえ、例えば、135℃のデカリン中で、UHMWPEの希釈溶液の粘度を測定することが一般的である。この粘度値は、その後、分子量値に変換できる。
【0070】
UHMWPEは、優れた衝撃強さおよび耐磨耗性が要求される非常に様々な分野において適用できる。医療用途において、UHMWPEは、膝関節、肩関節および股関節のインプラントに使用されており、UHMWPEから製造された高強度線維が、防弾織物、釣り糸と網および鉱業に見られる。UHMWPEは、ホッパーまたはバンカー・ライナーとして使用してもよい。
【0071】
欧州特許出願公開第86481A号明細書には、ケイ素化合物と、IVa、VaおよびVIa族の遷移金属の化合物とを反応させて、反応混合物を形成し、得られた反応混合物を、マグネシウム−炭素結合を有するハロゲン含有有機マグネシウム化合物と反応させて、中間生成物を生成し、この中間生成物を有機アルミニウムハロゲン化物と接触させて、炭化水素不溶性生成物を形成することにより得られる炭化水素不溶性生成物を含むオレフィン重合のための触媒が開示されている。欧州特許出願公開第86481A号明細書には、式MeRn3-nを有する金属化合物およびケイ素化合物を含む混合物は開示されていない。欧州特許出願公開第86481A号明細書には、超高分子量ポリエチレンの製造も開示されていない。
【0072】
米国特許第4226964号明細書には、マグネシウム化合物、チタン化合物およびジルコニウム化合物を含有する炭化水素溶液をアルミニウムハロゲン化物で処理することによって調製された炭化水素不溶性固体触媒成分を有機アルミニウム化合物と組み合わせた触媒系の存在下でのオレフィンを重合させるプロセスが開示されている。これらのチタン化合物とジルコニウム化合物は、ハロゲン含有化合物である。米国特許第4226964号明細書には、式MeRn3-nを有する金属化合物およびケイ素化合物を含む混合物は開示されていない。米国特許第4226964号明細書には、超高分子量ポリエチレンの製造も開示されていない。
【0073】
本発明を以下の非限定的実施例によって説明する。
【実施例】
【0074】
全ての実施例は、窒素雰囲気下で行った。
【0075】
・ 触媒懸濁液中の固体含有量を、10mlの触媒懸濁液を、窒素を流しながら乾燥させ、その後、1時間に亘り排気し、続いて、得られた乾燥触媒の量を秤量することによって、三重に決定した。
【0076】
・ 触媒の平均粒径(D50)を、Malvern Mastersizer装置を使用して、ヘキサン希釈液中でいわゆるレーザ光散乱法によって決定した。
【0077】
・ ポリマー粉末の平均粒径および粒径分布(「スパン」)を、DIN53477にしたがって篩分析によって決定した。
【0078】
・ あるいは、いわゆる伸び応力をDIN53493にしたがって決定しても差し支えない。「フロー値(flow value)」と称されることもあるこの伸び応力は、その後、例えば、にJ. Berzen et al. in The British Polymer Journal, Vol. 10, December 1978, pp 281 - 287より開示されているように、分子量に変換することができる。
【0079】
実施例I
有機酸素含有マグネシウム化合物、有機酸素含有チタン化合物および有機酸素含有ジルコニウム化合物を含む炭化水素溶液の調製
還流冷却器および撹拌機を備えた、1リットルの丸底フラスコに、40グラムの粒状Mg(OC252、60ミリリットルのTi(OC494および76ミリリットルのZr(OC494を入れた。穏やかに撹拌しながら、この混合物を180℃に加熱し、その後、2.5時間に亘り撹拌した。この間に、透明な液体が得られた。この混合物を120℃まで冷却し、その後、593mlのヘキサンで希釈した。ヘキサンを添加する際に、混合物は67℃までさらに冷めた。この混合物をその後室温まで冷却した。結果として得られた透明な溶液を、窒素雰囲気下で貯蔵し、得られた状態で使用した。
【0080】
実施例II
触媒の調製
冷却器、撹拌機および滴下漏斗を備えた丸底フラスコに、400mlのヘキサンを加えた。これに、1.73mlのヘキサン中50%二塩化エチルアルミニウム(EADC)(8.8ミリモルのAl)を加え、その後、12.9mlのSiCl4を加えた。この混合物を0℃に冷却し、撹拌機を2000rpmで始動させた。実施例Iからの溶液100mlを、滴下漏斗を通じて、2時間の期間に亘り加えた。その後、わずかに着色した懸濁液を2時間に亘り還流し、その際に、混合物はオレンジ色に変わった。続いて、この懸濁液を、周囲温度まで冷却し、濾過し、ヘキサンで3回洗浄した。最後に、固体をヘキサン中に採取し、窒素雰囲気下で貯蔵した。
【0081】
触媒粒径は7.4マイクロメートルであった。
【0082】
実施例III
実施例IIによる触媒の存在下での重合
希釈剤としての5リットルの精製ヘキサンを使用して、10リットルのオートクレーブ内で重合を行った。この5リットルの精製ヘキサンに8ミリモルのトリ−イソブチルアルミニウムを加えた。この混合物を75℃に加熱し、エチレンで加圧した。その後、実施例IIによる触媒を所定の量だけ含有するスラリーを添加した。温度を75℃に維持し、エチレンを供給することによって、圧力を4バール(0.4MPa)で一定に維持した。この反応装置に1000グラムのエチレンを供給したときに反応を停止した。この停止操作は、反応装置を減圧し、冷却することによって行った。反応装置の内容物をフィルタに通した。湿ったポリマー粉末を収集し、その後、乾燥させ、秤量し、分析した。
【0083】
触媒収量は、触媒1グラム当たり24.1キログラムのポリエチレンであった。触媒活性は、1バール当たり、1時間当たり、触媒1グラム当たりで3.9キログラムのポリエチレンであった。
【0084】
嵩密度は379kg/m3であった。
【0085】
50は172マイクロメートルであった。
【0086】
スパンは1.1であった。
【0087】
分子量を示す伸び応力は、0.457MPaであった。
【0088】
比較例A
有機酸素含有マグネシウム化合物および有機酸素含有チタン化合物を含む炭化水素溶液の調製
還流冷却器および撹拌機を備えた、2リットルの丸底フラスコに、100グラムの粒状Mg(OC252および150ミリリットルのTi(OC494を入れた。穏やかに撹拌しながら、この混合物を180℃に加熱し、その後、1.5時間に亘り撹拌した。この間に、透明な液体が得られた。この混合物を120℃まで冷却し、その後、1480mlのヘキサンで希釈した。ヘキサンを添加する際に、混合物は67℃までさらに冷めた。この混合物を2時間に亘りこの温度に維持し、その後室温まで冷却した。結果として得られた透明な溶液を、窒素雰囲気下で貯蔵し、得られた状態で使用した。
【0089】
比較例B
ジルコニウム化合物を含まない触媒の調製
冷却器、撹拌機および滴下漏斗を備えた丸底フラスコに、300mlのヘキサンを加えた。これに、4.4mlのヘキサン中二塩化エチルアルミニウム(EADC)を加え、その後、4.7mlのSiCl4(40ミリモル)を加えた。撹拌機を750rpmで始動させた。比較例Aで得られた溶液75mlを、滴下漏斗を通じて、2時間の期間に亘り加えた。その後、うすくピンク色に着色した懸濁液を2時間に亘り還流し、その際に、混合物は赤色に変わった。続いて、この懸濁液を、周囲温度まで冷却し、濾過し、ヘキサンで3回洗浄した。最後に、固体をヘキサン中に採取し、窒素雰囲気下で貯蔵した。
【0090】
比較例C
比較例Bにおいて調製した触媒による重合
重合を、実施例IIIに記載した手法にしたがって行った。得られたポリマーは、0.395MPaの伸び応力を有し、これは、本発明による触媒で得られた値と比べて、著しく低い。このことは、ジルコニウム化合物を含まずに得られた超高分子量ポリマーの分子量は著しく小さいことを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒系において、
I.固体反応生成物であって、
(a)(1)有機酸素含有マグネシウム化合物、
(2)有機酸素含有チタン化合物、および
(3)ジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する少なくとも1種類の化合物、
を含む炭化水素溶液と、
(b)Xがハロゲンであり、Meが化学元素のメンデレーエフの周期表のIII族の金属であり、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n<3である式MeRn3-nを有する金属化合物、および0≦m≦2、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式RmSiCl4-mを有するケイ素化合物の混合物と、
の反応により得られる固体反応生成物であり、(b)からの金属:(a)からのチタンのモル比が1:1未満である固体反応生成物、および
II.Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式AlR3を有する有機アルミニウム化合物、
を含む触媒系。
【請求項2】
前記ジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する化合物が、有機酸素含有ジルコニウムおよび/またはハフニウム化合物の群から選択されることを特徴とする請求項1記載の触媒系。
【請求項3】
前記触媒系が、
I.固体反応生成物であって、
(a)(1)有機酸素含有マグネシウム化合物、
(2)有機酸素含有チタン化合物、および
(3)ジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する少なくとも1種類の化合物、
を含む炭化水素溶液と、
(b)Xがハロゲンであり、Meが化学元素のメンデレーエフの周期表のIII族の金属であり、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n<3である式MeRn3-nを有する金属化合物、および0≦m≦2、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式RmSiCl4-mを有するケイ素化合物の混合物と、
の反応により得られる固体反応生成物であり、(b)からの金属:(a)からのチタンのモル比が1:1未満である固体反応生成物であり、
(c)得られた固体反応生成物の、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n<3である式AlRnCl3-nを有するアルミニウム化合物による後処理、
が施された固体反応生成物、および
II.Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式AlR3を有する有機アルミニウム化合物、
を含むことを特徴とする請求項1または2記載の触媒系。
【請求項4】
式MeRn3-nを有する前記金属化合物が、Xがハロゲンであり、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである、式AlRn3-nを有するアルミニウム化合物であることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の触媒系。
【請求項5】
前記有機酸素含有マグネシウム化合物がマグネシウムアルコキシドであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の触媒系。
【請求項6】
前記マグネシウムアルコキシドがマグネシウムエトキシドであることを特徴とする請求項5記載の触媒系。
【請求項7】
前記有機酸素含有チタン化合物がチタンアルコキシドであることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の触媒系。
【請求項8】
前記ジルコニウム化合物がジルコニウムアルコキシドであることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の触媒系。
【請求項9】
前記ハフニウム化合物がハフニウムアルコキシドであることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の触媒系。
【請求項10】
触媒系において、
I.固体反応生成物であって、
(a)(1)有機酸素含有マグネシウム化合物、および
(2)有機酸素含有チタン化合物、
を含む炭化水素溶液と、
(b)Xがハロゲンであり、Meが化学元素のメンデレーエフの周期表のIII族の金属であり、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n<3である式MeRn3-nを有する金属化合物、および0≦m≦2、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式RmSiCl4-mを有するケイ素化合物の混合物と、
(c)ジルコニウムまたはハフニウムを含有する化合物と、
の反応により得られる固体反応生成物であり、(b)からの金属:(a)からのチタンのモル比が1:1未満である固体反応生成物、および
II.Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式AlR3を有する有機アルミニウム化合物、
を含む。
【請求項11】
請求項1から10いずれか1項記載の触媒を製造するためのプロセスであって、有機酸素含有マグネシウム化合物、有機酸素含有チタン化合物および有機酸素ジルコニウムおよび/またはハフニウム含有化合物の間の第1の反応、その後の炭化水素溶媒による希釈で可溶性錯体が得られ、その後、該錯体の炭化水素溶液と、式MeRnCl3-nを有する金属化合物および式RmSiCl4-mを有するケイ素化合物を含む混合物との反応が行われることを特徴とするプロセス。
【請求項12】
マグネシウムアルコキシド、チタンアルコキシドおよびジルコニウムアルコキシドおよび/またはハフニウムアルコキシドの間の第1の反応、その後の炭化水素溶媒による希釈で可溶性錯体が得られ、その後、該錯体の炭化水素溶液と、式AlRnCl3-nを有するアルミニウム化合物および式RmSiCl4-mを有するケイ素化合物を含む混合物との反応が行われることを特徴とする請求項11記載のプロセス。
【請求項13】
ポリエチレンの重合のためのプロセスであって、重合が、請求項1から10いずれか1項記載の触媒の存在下または請求項11または12記載のプロセスにより得られる触媒の存在下で行われることを特徴とするプロセス。
【請求項14】
前記ポリエチレンが超高分子量ポリエチレンであることを特徴とする請求項13記載のプロセス。

【公表番号】特表2013−501830(P2013−501830A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524155(P2012−524155)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004979
【国際公開番号】WO2011/018237
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(502132128)サウディ ベーシック インダストリーズ コーポレイション (109)
【Fターム(参考)】