説明

ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル製不織布−シートおよびボード積層体の製造方法

【課題】 無延伸PET(A−PET)の透明性シートおよびボードは、表面が柔らかいので細かい傷が付き易く(耐スクラッチ性が低い)、埃で汚れ易く、付加価値がひくいという欠点を持つ。特に、付加価値の高いインテリヤ資材、照明用具および建築資材などの市場開拓が必要とされる。
【解決手段】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル(a)を、押出機中でその融点以上の温度で溶融させるとともに、キャスト法にて無定形シートおよびボード(b)に成形しつつ、目付け量50〜250g/mである同材料の不織布(c)に熔融接着することによって、不織布−シートおよびボード積層体およびその加熱加工成形体を製造する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル製不織布と同材料のシートおよびボードから成る積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の環境適合性と軽量化等の課題から、その内装材がポリ塩化ビニール(PVCと略称す。以下同じ。)からポリプロピレン(PP)およびABS樹脂(ABS)等へ転換されて来た。その理由は、PVCが重く(比重1.35)、可塑剤が環境ホルモンの疑いがあり、焼却処分で発癌性ダイオキシンの発生を免れないが、一方PPおよびABS樹脂は軽く(比重約0.9)、可塑剤を含まず、焼却処分で有毒ガスを発生せず、回収と再利用も出来るからである。他方、ポリエチレンテレフタレート(以下にPET、またはペットと略称する)は、PPやABSの様な油系疎水性樹脂とは異なって、保水性および環境適合性の親水性樹脂であるので、自動車の内装材に、特に不織布として使用されて来た。
【0003】
最近、省資源および環境保全の観点から、工場生産工程や一般消費市場から回収された使用済みプラスチック製品の再利用の必要性が世界的に認識され、特に、使用済みのPETボトル、フィルム、シート等は、大量の回収再利用が積極的に進められつつあり、汎用樹脂の一般的な価格の半値という安価にて入手が可能となった。従って、本発明者および出願人は、既に回収PETボトル・フレークからマルチフィラメント法によりPET繊維とPET綿を開発・製造し、PET不織布の素材として供給して来た。更に、本発明者および出願人は、最近回収PETボトル・フレークから無延伸PET(Amorphous−PET、A−PET)の透明性シートおよびボードを開発および製造している。
【0004】
自動車の内装材、特に天井材の表皮、フロア−材の表皮、トランクルーム内張り材などにPET不織布、織編物などが使用されている。例えば、トランクルーム内張り材では、従来異質素材のPPシートが使用されて来たが、更なる回収利用のためには同一素材のPET不織布・PETシートがより一層好ましい。一方、PETーPPの異質素材を積層するために接着剤が必要であるが、安価な接着剤の実用化は困難である。他方、無延伸A−PETの透明性シートおよびボードは、マネキン・ボデー、小売店間仕切板、ネームプレート、看板材、建築資材、建屋インテリヤ材、高速道路の透明性仕切板などに市場が拡大して来た。ポリカーボネートの透明性ボードに比べると耐衝撃性に劣るが、極めて安価であるので一層の拡大が期待されている。
【発明の開示】

【本発明が解決しようとする課題】
【0005】
無延伸PET(A−PET)の透明性シートおよびボード(以下に総称して、板と言う)は、安価で成形加工が容易であるという利点をもつが、一方、表面が柔らかいので細かい傷が付き易く(耐スクラッチ性が低い)、埃で汚れ易いという欠点を持つ。透明性シートおよびボードのみでは、誰でも容易に製造できるので、付加価値の高い特徴のある新製品の市場開拓に限界がある。特に、付加価値の高いインテリヤ資材、照明用具および建築資材などの市場開拓が、必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル製不織布と同材料のシートおよびボード(板)とから成る積層体の製造方法を提供することを目的とする。本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、それらの課題を劇的に改善することに成功し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記の発明事項を提供するものである。
【0007】
本発明は、第1に、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル(a)の乾燥樹脂を、押出機中でその融点以上の温度で溶融させるとともに、キャスト法にて無定形シートおよびボード(b)に成形しつつ、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル(a)の不織布(c)に熔融接着することを特徴とするポリエチレンテレフタレート系ポリエステル製不織布−シートおよびボード積層体の製造方法を提供するものである。
【0008】
本発明は、第2に、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル(a)の未乾燥樹脂を、押出機中でその融点以上の温度で溶融させるとともに、13.3×103Pa以下の減圧下にて脱気脱水しながら、キャスト法にて無定形シートおよびボード(b)に成形しつつ、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル(a)の不織布(c)に熔融接着することを特徴とするポリエチレンテレフタレート系ポリエステル製不織布−シートおよびボード積層体の製造方法を提供するものである。
【0009】
本発明は、第3に、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル(a)が、固有粘度0.55〜0.80dl/gのPET系芳香族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル成形品再循環物からなる群から選ばれる少なくとも1種類以上を含有することを特徴とするポリエチレンテレフタレート系ポリエステル製不織布−シートおよびボード積層体の製造方法を提供するものである。
【0010】
本発明は、第4に、不織布(c)が目付け量50〜250g/mであることを特徴とするポリエチレンテレフタレート系ポリエステル製不織布−シートおよびボード積層体の製造方法を提供するものである。
【0011】
本発明は、第5に、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル製不織布−シートおよびボード積層体を真空成形法、圧空成形法または真空圧空成形法によって加熱加工して成るマネキン成形体、照明用成形体、成形加工体の製造方法を提供するものである。
【0012】
なお、本発明において、フィルム、シートおよびボードの用語は、便宜的にそれらの厚みをそれぞれ0.254m以下、0.254〜1mmおよび1mm以上によって区別される。また、シートおよびボードを、板と総称する。
【発明の効果】
【0013】
不織布の積層によって、無延伸PETの透明性シートおよびボードの耐スクラッチ性が低くて傷が付き易い欠点が無くなる。また、インテリヤ資材および建築資材、特に照明器具では、不織布によるソフト化が可能となる。他方、マネキン用途では、不織布の染色が自由なので、肌色、白色、黒色などが実現し、また、衣類の仮止めが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において、無延伸PETの透明性シートおよびボードまたは不織布の原料樹脂として使用するポリエチレンテレフタレート(PET)系ポリエステル(a)は、PET系ポリエステルとして世界的に大量生産されているPETおよびその共重合体が挙げられ、特に大量生産樹脂で安価なPETが好ましい。該PET系ポリエステル(a)は、1,1,2,2−テトラクロロエタン/フェノール(1:1)混合溶媒に溶解して25℃にて測定した固有粘度(IV値)が、0.50dl/g以上(これは、JIS法:温度280℃、荷重2.16KgによるMFR約210g/10分以下に相当する。以下同じ。)であれば使用できる。
固有粘度が0.50dl/g未満であると、得られるPET系ポリエステル重合体が、必ずしも優れた成形加工性および物性を与えることができない恐れがある。従って、固有粘度が、0.55dl/g以上(MFRが約160g/10分以下)が、使用できるが、これら低分子量のPET系ポリエステルは不織布に適する。重縮合法で得られる繊維グレードおよび二軸延伸フィルムグレードのPETは、固有粘度が0.60〜0.65dl/g(MFRが約130〜100g/10分)であり、比較的に安価で大量に入手が可能なので、実用上好ましい。
固有粘度の上限は、特に制限されないが、通常0.90dl/g(MFRが約25g/10分)の高分子量の特殊グレード、好ましくは0.80dl/g(MFRが約45g/10分)のボトルグレードおよびシートグレードである。これらは、いずれのグレードも重縮合法の繊維グレードPETを固相重合法により数時間ないし十数時間かけて高分子量化するので、固有粘度の値の増加とともに高価格となる。
【0015】
現実的には、大量に収集・回収されるPET系ポリエステルである回収PETボトルのフレークまたはペレットをベース樹脂(a)として使用することが好ましい。通常は、PETボトルが有している固有粘度が比較的高いので回収PETボトルの固有粘度も高く、一般には0.60〜0.80dl/g(MFRが130〜45g/10分)、特に0.65〜0.75dl/g(MFRが100〜55g/10分)である。一般に、回収PETボトルのフレークは、20kg入り紙袋品または600kg入りフレコン(flexible container)品で供給されるが、通常、含有水分率は3,000〜6,000ppm(0.3〜0.6重量%)程度ある。勿論、真空圧空成形工場から大量に回収されるA−PETシートのスケルトン・フレーク(成形工程での使用部分の残りマージン部分のフレーク)も、本発明のシートおよびボード用原料として好適である。
また、食品用途としては、重縮合法による繊維グレードおよび二軸延伸フィルム用のPET(固有粘度:一般に0.60〜0.65dl/g)が安価で安定供給なので、特に好ましい。但し、これらの回収品の固有粘度は、約0.55dl/gとなるが、不織布の原料として充分使用できる。
【0016】
本発明の不織布は、PET系ポリエステルで製造が可能な不織布、例えば湿式不織布のサーマルボンド、スパンレース(高圧水流絡合体)、乾式不織布のサーマルボンド、スパンレース(高圧水流絡合体)、ニードルパンチ、メルトブロー不織布などを使用することができる。ニードルパンチは、安価であるが、目が粗いので、高級感のあるスパンレース(高圧水流絡合体)が好ましい。
本発明の不織布/透明板を平面体として使用する場合には、不織布の目付け量として25〜250g/mを使用することが出来る。一方、真空圧空成形法により深絞り成形体に加工する場合には、不織布の目付け量として50〜150g/mを使用することが好ましい。更に、スパンボンドの様に、伸縮性の大きい不織布を使用することがより一層好ましい。
【0017】
本発明におけるPET系ポリエステルの無延伸PETの透明性シートおよびボードを製造する装置としては、PET樹脂のシートおよびボード成形装置を使用することが出来る。単軸押出機には原料の乾燥機および脱気と脱水用の真空ライン、二軸押出機には脱気と脱水用の真空ラインが必要である。生産ラインとしては、その他にギャーポンプ、T型ダイス、シートおよびボードの冷却ロール、引取り機、スリッター、切断機等から構成される。更に、積層体の製造のために、不織布の繰出し装置が必要である。
PETは、再結晶化し易い樹脂であるので、厚み3mm以上のボードを製造する場合にボードの中心部分が再結晶化により白色不透明化し易い。従って、透明厚手ボードを製造するには、結晶化しないPETG樹脂(イーストマン社製、エスケーケミカル社製など)を併用することが出来る。PETに対するPETGの割合は、例えば、厚み3mmボードで0〜20%、4mmボードで20〜30%、5mmボードで30〜40%、5mmボードで40〜60%とすることが出来る。
【0018】
一般に、回収PETボトルフレークまたは新品のPET樹脂は、約3,000〜6,000ppm(0.3〜0.6重量%)の水分を含んでいる。従って、予め110〜140℃で熱風乾燥して水分量を100〜200ppmに下げたものが好ましいが、また除湿空気で乾燥して水分量を50ppm以下に下げたものを使用することが更に好ましい。
一方、未乾燥のままで原料として使用する場合には、二軸押出機の真空ラインを油封式、好ましくは乾式とし、第1ベント〜第2ベントの真空度を13.3×103Pa(100mmHg)以下、好ましくは2.6×103Pa(20mmHg)以下、更に好ましくは0.66×103Pa(5mmHg)以下に下げて、ポリエステル樹脂が溶融した直後および溶融混合中に水分を真空脱気して除去することによって、本発明を好適に達成することができる。
【0019】
本発明のPET系ポリエステルを使用したA−PET透明シートおよびボードと不織布との積層体の製造方法は、例えばT型ダイスからPET系ポリエステルの融体を約260〜270℃で押出し、約30〜60℃のタッチロールおよびチルロールの間で冷却することにより透明性シートおよびボードに成形するが、その際に不織布を透明性シートおよびボードとタッチロールとの間に挿入することによって、実施することができる。
【実施例】
【0020】
次に本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
【0021】
PET系ポリエステルについて、固有粘度(IV値)、MFR、機械的物性などを評価した。これらの評価方法は以下の通りである。
(1)固有粘度(IV値):PET系ポリエステルについて、1,1,2,2−テトラクロロエタンとフェノールとの等重量の混合溶媒を使用し、キャノンフェンスケ粘度計で25℃にて測定した。
(2)MFR:JIS K7210の条件20に従い、温度280℃、荷重2.16kgの条件で測定した6分後の数値である。
(3)機械的物性の測定:引張試験はJIS K7161に従い、厚さ約0.2〜3mmのシートおよびボード(板)を1B型ダンベルで打ち抜き、島津製作所のオートグラフDSS2000を使用し、引張速度50mm/分で行った(弾性率 1mm/分)。曲げ試験は、JIS K7171に従い、速度1mm/分、支点間距離40mmで行った。アイゾット衝撃試験はJIS K7110に従い、試験片2Aについて行なった。デュロメーター硬さは、JIS K7215に従い、タイプDについて行なった。
【実施例1〜2】
【0022】
[実施例1:透明ボードB1/白色水流絡合法不織布W1の積層体P1の製造例]
東京ペットボトルリサイクル(株)のPETクリアフレークの除湿空気式乾燥機による乾燥品(水分30ppm以下、PETボトルの回収品、固有粘度0.73dl/g、MFR48g/10分、PET99.9%)を、ドイツ・ライフェンファウザー製の単軸型押出機(スクリュー径120mmΦ、L/D=32、1ベント式)を使用し、シリンダーおよびダイスの設定温度を270〜280℃、フレーク混合物の供給速度250Kg/h、スクリュー回転数45rpm、真空度0.095MPa以下、巾1,400mmで280〜290℃のTダイから斜め45度下向きにボードを押出し、30〜60℃の冷却ロールおよびタッチロールでA−PET透明ボード(板厚約2.3mm)に成形すると同時に、目付け量100g/mの水流絡合法白色PET不織布W1(日本バイリーン製、厚み約0.2mm)を冷却ロールとタッチロール間に挿入し、総厚み約2.5mm、スリット巾910mmの透明ボードB1/水流絡合法白色不織布W1の積層体P1を約100m製造し、長さ1.8mに切断して収納した(3×6定尺板)。
なお、透明ボードB1(板厚約2.3mm)の物性値は、下記の通りであった。
引張強度:60.7MPa(縦)、60.5(横)、引張伸び:43%(縦)、43%(横)、引張弾性率:2,030MPa(縦)、2,040(横)、曲げ強さ:88.4MPa(縦)、86.8(横)、曲げ弾性率:2,450MPa(縦)、2,470(横)、アイゾット衝撃値:2.7kJ/m(縦)、1.2kJ/m(横)、デュロメーター硬さ:76HDD。
【0023】
[実施例2:透明ボードB1/白色ニードルパンチ法不織布W2の積層体P2の製造例]
実施例1と同様にして、A−PET透明ボード(板厚約2.3mm)に成形すると同時に、目付け量100g/mの白色PET不織布W2(日本バイリーン製、厚み約0.2mm)を冷却ロールとタッチロール間に挿入し、総厚み約2.5mm、スリット巾910mmの透明ボードB1/白色不織布W2の積層体P2を約100m製造し、長さ1.8mに切断して収納した(3×6定尺板)。
【実施例3】
【0024】
[白色ボードB2/黒色ニードルパンチ法不織布W3の積層体P3の製造例]
実施例1と同様にして、チタン白を加えた白色ボード(板厚約1.5mm)に、目付け量200g/mのニードルパンチ法黒色PET不織布W3(日本バイリーン製、厚み約0.5mm)を冷却ロールとタッチロール間に挿入し、総厚み2.0mm、スリット巾910mmの白色ボードB2/黒色不織布W3の積層体P3を約100m製造し、長さ1.8mに切断して収納した(3×6定尺板)。
【実施例4】
【0025】
[透明ボードB3/白色スパンボンド法不織布W4の積層体P4の製造例]
実施例1と同様にして、透明PETボードB3(板厚約2.1mm)に、目付け量200g/mの白色スパンボンド法PET不織布W4(旭化成製の商品名スマッシュ:、厚み約0.4mm)を冷却ロールとタッチロール間に挿入し、総厚み約2.5mm、スリット巾910mmの白色ボードB3/黒色不織布W4の積層体P4を約100m製造し、長さ1.8mに切断して収納した(3×6定尺板)。
【実施例5】
【0026】
[透明ボードB3/茶色ニードルパンチ法不織布W5の積層体P5の製造例]
実施例1と同様にして、透明PETボードB3(板厚約2.1mm)に、目付け量200〜250g/mのニードルパンチ法茶色PET不織布W5(ダイニック製、厚み約0.4mm、)を冷却ロールとタッチロール間に挿入し、総厚み約2.5mm、スリット巾910mmの透明ボードB3/茶色不織布W5の積層体P5を約100m製造し、長さ1.8mに切断して収納した(3×6定尺板)。
【実施例6】
【0027】
[透明シートS1/白色スパンボンド法不織布W4の積層体P6の製造例]
ユニチカ製PET樹脂ベレットの未乾燥品(新品、水分6,500ppm、固有粘度0.80dl/g、MFR45g/10分)を、(株)池貝製の同方向二軸型押出機(スクリュー径80mmΦ、L/D=36、2ベント式)を使用し、シリンダーおよびダイスの設定温度を265〜270℃、PET樹脂の供給速度250Kg/h、スクリュー回転数150rpm、真空度0.095MPa以下にて、巾1,400mmで270〜280℃のTダイから垂直下向きにシートを押出した。次いで、30〜60℃の冷却ロールおよびタッチロールでA−PETシートS1(厚み約0.50mm)に成形すると同時に、目付け量100g/mの白色水流絡合法PET不織布W1(日本バイリーン製、厚み約0.2mm)を冷却ロールとタッチロール間に挿入し、総厚み0.70mm、スリット巾910mmの透明シートS1/白色水流絡合不織布W1の積層体P6を約100m製造した。
【実施例7〜9】
【0028】
[ボードB1〜B2/不織布W1〜W3の積層体P1〜P3の真空圧空成形例]
本発明の実施例1〜3による厚み1.7〜2.5mmの積層体P1〜P3を、40cm角に切断し、(株)浅野研究所製のFKC式真空圧空成形機にて、ヘルメット型照明容器(概略寸法:巾150×長さ240×高さ70mm)に、真空圧空成形をした。
実施例7:実施例1の透明ボードB1/白色水流絡合法不織布W1の積層体P1(厚み2.5mm)を、上側ヒーター温度400℃、下側ヒーター450℃に設定し、高速加熱方式にてシート表面温度を40秒で145℃にした。ボード面の真空引き雌型金型の温度を約75℃、不織布面の圧空圧力を3気圧および型締め10秒/ショットとして、順調に成形できた。本照明容器は、内部に電球を配して点灯すると、不織布の効果により和風の穏やかな光源となり、インテリヤ性が効果的であった。
実施例8:実施例7と同様にして、実施例2の透明ボードB1/白色ニードルパンチ法不織布W2の積層体P2(厚み2.5mm)を、上側ヒーター温度400℃、下側ヒーター450℃に設定し、高速加熱方式にてシート表面温度を37秒で140℃にした。ボード面の真空引き雌型金型の温度を約75℃、不織布面の圧空圧力を3気圧および型締め10秒/ショットとして、順調に成形できた。
実施例9:実施例7と同様にして、実施例3の白色ボードB2/黒色ニードルパンチ法不織布W3の積層体P3(厚み2.0mm)を、上側ヒーター温度400℃、下側ヒーター450℃に設定し、高速加熱方式にてシート表面温度を62秒で140℃にした。ボード面の真空引き雌型金型の温度を約75℃、不織布面の圧空圧力を3気圧および型締め10秒/ショットとして、順調に成形できた。
これらの真空圧空成形体は、例えば、内部に光源をいれた照明器具として和風で高級感を持つ用途が一例であった。
【実施例10】
【0029】
子供用マネキンの真空圧空成形製造装置を使用し、実施例2の透明ボードB1/白色ニードルパンチ法不織布W2の積層体P2(厚み2.5mm)について、上側ヒーター温度450℃、下側ヒーター500℃に設定し、シート上側18〜23秒、シート下側18〜26秒で高速加熱し、ボード面の真空引き雄型金型の温度を約113℃にして、順調に成形することが出来た。
【実施例11】
【0030】
子供用マネキンの真空圧空成形製造装置を使用し、実施例4の透明ボードB3/白色スパンボンド法不織布W4の積層体P4の製造例(厚み2.5mm)について、上側ヒーター温度450℃、下側ヒーター500℃に設定し、シート上側18秒、シート下側24〜26秒で高速加熱し、ボード面の真空引き雄型金型の温度を約113℃にして、順調に成形することが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0031】
大量に発生する回収PETボトルを再生原料として、透明性PETシートおよびボード並びにPET不織布に有効に利用でき、更に付加価値の高いマネキン体や照明容器などの新規商品の市場開拓ができるので、社会的に有益である。また、これらを使用後に焼却処理したとしてもポリエチレンやポリプロピレンと比較して燃焼発熱量が低いので焼却炉を損傷することが少なく、また有毒ガスを発生しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル(a)の乾燥樹脂を押出機中でその融点以上の温度で溶融させてキャスト法にて無定形シートおよびボード(b)に成形しつつ、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル系ポリエステル(a)の不織布(c)に熔融密着することを特徴とするポリエチレンテレフタレート系ポリエステル製不織布−シートおよびボード積層体の製造方法。
【請求項2】
ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル(a)の未乾燥樹脂を押出機中でその融点以上の温度で溶融させて13.3×103Pa以下の減圧下にて脱気脱水しながら、キャスト法にて無定形シートおよびボード(b)に成形しつつ、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル(a)の不織布(c)に熔融接着することを特徴とするポリエチレンテレフタレート系ポリエステル製不織布−シートおよびボード積層体の製造方法。
【請求項3】
ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル(a)が、固有粘度0.55〜0.80dl/gのポリエチレンテレフタレート系ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル成形品の再循環物からなる群から選ばれる少なくとも1種類以上を含有することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のポリエチレンテレフタレート系ポリエステル製不織布−シートおよびボード積層体の製造方法。
【請求項4】
不織布(c)が、目付け量50〜250g/mであることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のポリエチレンテレフタレート系ポリエステル製不織布−シートおよびボード積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項1および4項に記載のポリエチレンテレフタレート系ポリエステル製不織布−シートおよびボード積層体を真空成形法、圧空成形法または真空圧空成形法によって加熱加工して成るマネキン成形体、照明用成形体、成形加工体の製造方法。

【公開番号】特開2006−272945(P2006−272945A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122885(P2005−122885)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(593200205)小山化学株式会社 (3)
【Fターム(参考)】