説明

ポリエチレン樹脂組成物

【課題】本発明の課題は、特に射出成型および押出し成型分野において、成型加工時に変色がし難く、なおかつ熱安定性に優れたポリエチレン樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】下記の要件を満たすことを特徴とする、ポリエチレン樹脂組成物。
(A)MFRが1.0以上50以下である。
(B)密度が940kg/m以上967kg/m以下である。
(C)Mw/Mnが5.0以上7.0以下である。
(D)ポリエチレン樹脂組成物のチタン含有量が1.0重量ppm以上6.0重量ppm以下である。
(E)ポリエチレン樹脂組成物の塩素含有量が5.0重量ppm以上25.0重量ppm以下である。
(F)末端ビニル含有量が0.02個/1000C以上0.15個/1000C以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン樹脂組成物に関する。詳細には、成型時の変色が少なく、熱安定性に優れ、なおかつ射出時、延伸時および押出し時の成型加工製性に優れたポリエチレン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からエチレンの重合体または共重合体を製造するための触媒として、チタン化合物と有機アルミニウム化合物とからなる、いわゆるチーグラー触媒が知られている。この触媒は吹き込み成型、フィルム成型、射出成型、押出し成型、等の様々な分野で使用されている。
このチーグラー触媒は、その構成成分として典型金属のハロゲン化物と遷移金属のハロゲン化物、特に塩化マグネシウム成分と塩化チタン成分とを含むことが一般的である。また、この触媒によって製造されたポリエチレンは、この触媒残渣を含まれたまま製品として出荷されている。
近年、成型サイクルを向上させて成型加工効率を高める目的で、成型加工温度を高める場合が多くなってきており、特に射出成型や押出し成型においてこの傾向が顕著である。しかし、この成型加工時に、従来は変色しなかったポリエチレンが変色する、という課題が新たに発生してきた。
【0003】
この変色には塩素の濃度が影響していることが特許文献1〜4に報告されている。しかし、これらの特許文献においては、容器の耐薬品性試験における変色を評価したが、成型加工時の変色は評価されていなかった。また、仮に評価されていたとしても、成型加工はブロー成型であるため、成型加工温度は射出成型、押出し成型、および延伸成型に比較して成型加工温度が低いため、変色に対する影響は確認できていなかったと考えられる。
一方、近年ではメタロセン触媒を用いたポリエチレンも開発されており、市場への投入が試みられている。このポリエチレンは力学特性にはきわめて優れているが、成型加工性が悪かった。特に延伸成型および押出し成型においては、上述のチーグラー触媒を用いて得られたポリエチレンよりも溶融張力が低いため、成型加工性が極めて悪かった。なお、この溶融張力に関しては、ポリエチレンの分子量分布により制御が可能であり、分子量分布が広いほうが溶融張力が高いことが一般に知られている。
【0004】
一方、省資源化の観点から、近年ではポリエチレン成型物の薄肉化が進んでいる。このため、薄肉化した際にも成型品の強度、特に落下した際の破壊を防ぐため、耐衝撃性に優れた成型品を製造できるポリオレフィンが求められていた。なお、この耐衝撃性に関しては、分子量分布が狭いほうが耐衝撃性が高いことが知られている。
上記のような背景から、成型時の変色を抑制し、成型加工性に優れ、なおかつ耐衝撃性の高いポリエチレン樹脂が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3743787号
【特許文献2】特許第3743788号
【特許文献3】特開平11−80259号
【特許文献4】特開平11−166081号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、成型時の変色を抑制し、成型加工性に優れ、なおかつ耐衝撃性の高いポリエチレン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、このような現状に鑑みて鋭意検討した結果、特定の性状を有するポリエチレン樹脂組成物を使用することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。即ち、本発明は、以下のとおりである。
1)下記の要件を満たすことを特徴とする、ポリエチレン樹脂組成物。
(A)MFRが1.0以上50以下である。
(B)密度が940kg/m以上967kg/m以下である。
(C)Mw/Mnが5.0以上7.0以下である。
(D)ポリエチレン樹脂組成物のチタン含有量が1.0重量ppm以上6.0重量ppm以下である。
(E)ポリエチレン樹脂組成物の塩素含有量が5.0重量ppm以上25.0重量ppm以下である。
(F)末端ビニル含有量が0.02個/1000C以上0.15個/1000C以下である。
【0008】
2)下記の(a)の要件を満たすことを特徴とする、1)に記載のポリエチレン樹脂組成物の製造方法。
(a)α−オレフィンを単段重合してポリオレフィンを製造する方法であり、この重合に使用される触媒が固体触媒[A]と有機金属化合物[B]からなり、固体触媒[A]が、下記一般式1で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物(a−1)と下記一般式2で表される塩素化剤(a−2)との反応により調製された担体(A−1)に、アルコール(A−2)を反応させ、次に下記一般式3で表される有機金属化合物(A−3)を反応させ、次に下記一般式4で表されるチタン化合物(A−4)を担持することにより調製されたものであり、有機金属化合物[B]が下記一般式5で示される有機アルミニウム化合物および下記一般式6で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物からなる群に属することを特徴とする、ポリオレフィンの製造方法、
(Mα(Mg)β(R(R(OR・・・・・式1
(式中、Mは周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子であり、R、RおよびRはそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、α、β、a、bおよびcは次の関係を満たす実数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0<c、0<a+b、0<c/(α+β)≦2、kα+2β=a+b+c(ただし、kはMの原子価))
【0009】
SiCl(4−(d+e))・・・・・式2
(式中、Rは炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、dとeは次の関係を満たす数である。1≦d、1≦e、2≦d+e≦4)
(h−f) ・・・式3
(式中Mは周期律表第I〜III族に属する金属原子、Rは炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、QはOR、OSiR、NR1011、SR12およびハロゲンからなる群に属する基を表し、R、R、R、R、R10、R11、R12は水素原子または炭化水素基であり、fは0より大きな実数であり、hはMの原子価である)
Ti(OR13(4−i)・・・・・式4
(式中、iは0以上4以下の実数であり、R13は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
【0010】
14(3−j)AlQ’ ・・・式5
(式中、R14は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、Q’は水素原子、ハロゲン原子、およびOR15からなる群に属する基であり、R15は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、jは0以上2以下の実数である)
(Mγ(Mg)δ(R15(R16・・・・・式6
(式中、Mは周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子であり、R15およびR16はそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、γ、δ、mおよびnは次の関係を満たす実数である。0≦γ、0<δ、0≦k、0≦m、pγ+2δ=m+n(ただし、pはMの原子価))
【発明の効果】
【0011】
本発明により、成型時の変色を抑制し、成型加工性に優れ、なおかつ耐衝撃性の高いポリエチレン樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明におけるポリエチレン樹脂組成物とは、モノマーとしてエチレン単独あるいはエチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとを共重合することにより得られる樹脂を成分とした組成物である。なお、本発明における炭素数3以上のα−オレフィンとは、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、等が挙げられ、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンが好ましい。また、このうちのいくつかを組み合わせて、エチレンと共重合することもできる。
【0013】
本発明において、ポリエチレン樹脂組成物のMFRが1.0g/10min以上50g/10min以下であることが必要であり、1.0g/10min以上30g/10min以下であることが好ましく、1.5g/10min以上20g/10min以下であることがさらに好ましい。このMFRが1.0g/10min以上であれば、ポリエチレンの粘度が高すぎて射出成型、シート成型、および延伸成型時の成型加工性が悪化する懸念が回避される。また、50g/10min以下であれば、成型加工時の溶融張力も十分であり、ポリエチレン樹脂組成物の耐衝撃性等の物性も十分高い。なお、本発明において、MFRとはポリマーのメルトフローレートのことであり、JIS K7120に従い、温度190℃、荷重2.16kgで測定される値である。このMFRは、ポリエチレン樹脂組成物を製造する際の重合器内の気相での水素濃度により調節することが可能であり、この水素濃度を高くすることによりMFRを低下させることが可能である。なお、本発明における重合器内の水素濃度とは、重合器内の気相部分をガスクロマトグラフィーを用いて分析することにより得られた水素濃度(単位はモル/リットル)とエチレン濃度(単位はモル/リットル)とを用いて、下記の数式(1)に従って算出された値のことであり、単位はモル%である。
水素濃度(モル%)=100×水素濃度(モル/リットル)/{水素濃度(モル/リットル)+エチレン濃度(モル/リットル)} ・・・数式(1)
【0014】
本発明において、ポリエチレン樹脂組成物の密度は940kg/m以上967kg/m以下であることが必要であり、945kg/m以上965kg/m以下であることが好ましく、950kg/m以上963kg/m以下であることがさらに好ましい。この密度が940kg/m以上であれば成型品の剛性が不足する懸念が回避され、967kg/m以下であれば成型品の耐衝撃性が足りない懸念が回避される。なお本発明においては、密度はJIS K7112の密度勾配管法により測定される。この密度は、ポリエチレン樹脂組成物を製造する際の重合器内の気相でのα−オレフィン濃度により調節することが可能であり、このα−オレフィン濃度を高くすることにより密度を低下させることが可能である。なお、本発明における重合器内のα−オレフィン濃度とは、重合器内の気相部分をガスクロマトグラフィーを用いて分析することにより得られたエチレン濃度(単位はモル/リットル)とα−オレフィン濃度(単位はモル/リットル)とを用いて、下記の数式(2)に従って算出された値のことであり、単位はモル%である。
α−オレフィン濃度(モル%)=100×α−オレフィン濃度(モル/リットル)/{α−オレフィン濃度(モル/リットル)+エチレン濃度(モル/リットル)} ・・・数式(2)
【0015】
本発明において、ポリエチレン樹脂組成物のMw/Mnは5.0以上7.0以下であることが必要であり、5.0以上6.5以下であることが好ましく、5.0以上6.0以下であることがさらに好ましい。このMw/Mnが5.0以上であれば、溶融張力が低すぎることにより成型加工性が悪化する懸念が回避される。また、Mw/Mnが7.0以下であれば、耐衝撃性が低下する懸念が回避される。本発明において、このMw/Mnとは分子量分布の尺度であり、分子量分布が狭いポリエチレン樹脂組成物のMw/Mnの値は小さく、分子量分布が広いポリエチレン樹脂組成物のMw/Mnの値は大きい。なお、本発明において、ポリエチレン樹脂組成物のMw/Mnはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。このGPCは、一般的にポリオレフィンの分子量および分子量分布の尺度として一般に使用されているMw/Mnの測定に広く使用されているものである。本発明においては、Mw/Mnの測定は、新版 高分子分析ハンドブック(社団法人高分子分析化学会、高分子分析研究懇談会編、1995年初版)P.45の方法に従い測定される。このMw/Mnは使用する固体触媒の種類および重合条件により制御することが可能である。この重合条件については、Mw/Mnは重合温度により制御することが可能であり、重合温度を高めることにより、Mw/Mnを低下させることが可能である。
【0016】
本発明において、ポリエチレン樹脂組成物のチタン含有量が1.0重量ppm以上6.0重量ppm以下であることが必要であり、1.0重量ppm以上5.0重量ppmであることが好ましく、1.0重量ppm以上4.0重量ppmであることがさらに好ましい。このチタン含有量が1.0重量ppm以上であれば溶融張力が低すぎることによる成型加工性が悪化する懸念が回避される。この理由については明確ではないが、所定量のチタンが含有することにより、成型加工時にポリエチレン樹脂組成物がわずかに反応して極微量の架橋構造をとるためと思われる。また、このチタン含有量が6.0重量ppm以下であれば、成型加工時にポリエチレン樹脂組成物の劣化が進行して変色する懸念が回避される。このポリエチレン樹脂組成物のチタン含有量については、固体触媒の種類および重合条件により制御することが可能である。この重合条件については、ポリエチレン樹脂組成物のチタン含有量はエチレン分圧および重合温度により制御することが可能であり、エチレン分圧および重合温度を高めることにより、ポリエチレン樹脂組成物のチタン含有量を低下させることが可能である。なお、本発明のポリエチレン樹脂組成物のチタン含有量はICP(イオンカップリングプラズマ)によって定量することができる。
【0017】
本発明において、ポリエチレン樹脂組成物の塩素含有量が5.0重量ppm以上25.0重量ppm以下であることが必要であり、5.0重量ppm以上20.0重量ppm以下であることが好ましく、5.0重量ppm以上15.0重量ppm以下であることがさらに好ましい。この塩素含有量が5.0重量ppm以上であれば溶融張力が低すぎることによる成型加工性が悪化する懸念が回避される。この理由については明確ではないが、所定量の塩素が含有することにより、成型加工時にポリエチレン樹脂組成物がわずかに反応して極微量の架橋構造をとるためと思われる。また、この塩素含有量が25.0重量ppm以下であれば、成型加工時にポリエチレン樹脂組成物の劣化が進行して変色する懸念が回避される。このポリエチレン樹脂組成物の塩素含有量については、固体触媒の種類および重合条件により制御することが可能である。この重合条件については、ポリエチレン樹脂組成物の塩素含有量はエチレン分圧および重合温度により制御することが可能であり、エチレン分圧および重合温度を高めることにより、ポリエチレン樹脂組成物の塩素含有量を低下させることが可能である。なお、本発明におけるポリエチレン樹脂組成物の塩素含有量はICPによって定量することができる。
【0018】
本発明において、ポリエチレン樹脂組成物の末端ビニル含有量は0.02個/1000C以上0.15個/1000C以下であることが必要であり、0.03個/1000C以上0.12個/1000C以下であることが好ましく、0.04個/1000C以上0.1個/1000C以下であることがさらに好ましい。この末端ビニル基含有量が0.02個/1000C以上であれば、末端ビニル基の反応により適度に分岐が生成することにより、成型加工性が悪化する懸念が回避され、0.15個/1000C以下であれば末端ビニル基の反応によりポリエチレン主鎖の切断反応が併起することにより、ポリエチレン樹脂の劣化反応が進行する懸念が回避される。なお、本発明の末端ビニル基含有量は、新版 高分子分析ハンドブック(社団法人高分子分析化学会、高分子分析研究懇談会編、1995年初版)P.594の方法に従い、ビニル基は910cm−1のピークの吸光度、重合体の密度、およびフィルムの厚みから、下記の数式(3)を用いて算出される値である。この末端ビニル含有量は重合時に使用する触媒により調整することが可能であり、クロム触媒、いわゆるフィリップス触媒を用いた場合には顕著に増大し、ジルコニウム系メタロセン触媒を用いた場合には顕著に増大し、チタン系メタロセン触媒を用いた場合には顕著に低下する。また、この末端ビニル基含有量は、ポリエチレン樹脂組成物を製造する際の重合温度により調整することが可能であり、重合温度を高めることにより末端ビニル基含有量は増大する。
末端ビニル基含量(個/100C)=0.114×ΔA/(t×d/1000)
{ただし、dは重合体の密度(kg/m)、ΔAはピークの吸光度、tはフィルムの厚み(mm)} ・・・数式(3)
【0019】
次に、本発明におけるポリエチレン系樹脂組成物の添加剤について説明する。
本発明におけるポリエチレン樹脂組成物の添加剤として、酸化防止剤と金属不活性化剤とを使用することが好ましい。本発明における酸化防止剤については、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤とイオウ系酸化防止剤とを併用することが好ましい。なお、本発明におけるフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤とイオウ系酸化防止剤は“高分子添加剤の新展開”(日本化学会・高分子学会編、1998年)P.42、P.63、P.65に示されている。本発明におけるフェノール系酸化防止剤はラジカル補足剤としての効果があり、具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス{メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコールビス{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)}プロピオネート、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、等が挙げられる。
【0020】
本発明におけるリン系酸化防止剤は過酸化物、すなわちROOH(ヒドロペルオキシド)と反応してアルコールにする効果がある。本発明におけるイオウ系酸化防止剤は、リン系酸化防止剤と同様に、過酸化物と反応してアルコールにする効果がある。本発明における金属不活性化剤は“高分子添加剤の新展開”(日本化学会・高分子学会編、1998年)P.76に示されている。本発明の金属不活性化剤はポリエチレン系樹脂組成物に含まれる金属塩の安定化する効果があり、例えばステアリン酸金属塩やハイドロタルサイト類が挙げられる。なお、本発明において、ポリエチレン系樹脂組成物に添加剤を添加する方法については、ポリエチレン樹脂組成物のパウダーにあらかじめ混合して所定量に調整した添加剤を混合してペレット化する方法、ポリエチレン樹脂組成物のパウダーに所定量の添加剤をそれぞれ別々に混合してペレット化する方法、ポリエチレン樹脂組成物のパウダーにあらかじめ所定量になるように調整したマスターバッチを添加する方法、等が挙げられる。また、これらの方法において、ポリエチレン樹脂組成物のパウダーの代わりにポリエチレン樹脂組成物のペレットを使用しても差し支えない。
【0021】
次に、本発明におけるポリエチレン樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明におけるポリエチレン樹脂組成物の製造方法とは、α−オレフィンを単段重合してポリオレフィンを製造する方法であり、この重合に使用される触媒が固体触媒[A]と有機金属化合物[B]からなり、固体触媒[A]が、下記一般式1で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物(a−1)と下記一般式2で表される塩素化剤(a−2)との反応により調製された担体(A−1)に、アルコール(A−2)を反応させ、次に下記一般式3で表される有機金属化合物(A−3)を反応させ、次に下記一般式4で表されるチタン化合物(A−4)を担持することにより調製されたものであり、有機金属化合物[B]が下記一般式5で示される有機アルミニウム化合物および下記一般式6で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物からなる群に属することを特徴とする、ポリオレフィンの製造方法、である。
【0022】
(Mα(Mg)β(R(R(OR・・・・・式1
(式中、Mは周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子であり、R、RおよびRはそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、α、β、a、bおよびcは次の関係を満たす実数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0<c、0<a+b、0<c/(α+β)≦2、kα+2β=a+b+c(ただし、kはMの原子価))
SiCl(4−(d+e))・・・・・式2
(式中、Rは炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、dとeは次の関係を満たす数である。1≦d、1≦e、2≦d+e≦4)
(h−f) ・・・式3
(式中Mは周期律表第I〜III族に属する金属原子、Rは炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、QはOR、OSiR、NR1011、SR12およびハロゲンからなる群に属する基を表し、R、R、R、R、R10、R11、R12は水素原子または炭化水素基であり、fは0より大きな実数であり、hはMの原子価である)
【0023】
Ti(OR13(4−i)・・・・・式4
(式中、iは0以上4以下の実数であり、R13は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
14(3−j)AlQ’ ・・・式5
(式中、R14は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、Q’は水素原子、ハロゲン原子、およびOR15からなる群に属する基であり、R15は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、jは0以上2以下の実数である)
(Mγ(Mg)δ(R15(R16・・・・・式6
(式中、Mは周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子であり、R15およびR16はそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、γ、δ、mおよびnは次の関係を満たす実数である。0≦γ、0<δ、0≦k、0≦m、pγ+2δ=m+n(ただし、pはMの原子価))
【0024】
次に、本発明における固体触媒[A]について説明する。
本発明においては、固体触媒[A]が、下記一般式1で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物(a−1)と下記一般式2で表される塩素化剤(a−2)との反応により調製された担体(A−1)に、アルコール(A−2)を反応させ、次に下記一般式3で表される有機アルミニウム化合物(A−3)を反応させ、次に下記一般式4で表されるチタン化合物(A−4)を担持することにより調製される。
(Mα(Mg)β(R(R(OR・・・・・式1
(式中、Mは周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子であり、R、RおよびRはそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、α、β、a、bおよびcは次の関係を満たす実数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0<c、0<a+b、0<c/(α+β)≦2、kα+2β=a+b+c(ただし、kはMの原子価))
【0025】
SiCl(4−(d+e))・・・・・式2
(式中、Rは炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、dとeは次の関係を満たす数である。1≦d、1≦e、2≦d+e≦4)
(h−f) ・・・式3
(式中Mは周期律表第I〜III族に属する金属原子、Rは炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、QはOR、OSiR、NR1011、SR12およびハロゲンからなる群に属する基を表し、R、R、R、R、R10、R11、R12は水素原子または炭化水素基であり、fは0より大きな実数であり、hはMの原子価である)
Ti(OR13(4−i)・・・・・式4
(式中、iは0以上4以下の実数であり、R13は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
【0026】
次に、本発明における不活性炭化水素溶媒について説明する。本発明における不活性炭化水素溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素化合物ないしシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物のことであり、脂肪族炭化水素であることが好ましい。
次に、本発明における上記一般式1で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物について説明する。この有機マグネシウム化合物は、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、ジヒドロカルビルマグネシウム化合物およびこの化合物と他の金属化合物との錯体のすべてを包含するものである。記号α、β、a、b、cの関係式kα+2β=a+b+cは金属原子の原子価と置換基との化学量論性を示している。
【0027】
上記一般式1において、RないしRで表される炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、プロピル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられ、好ましくはRないしRはアルキル基である。α>0の場合、金属原子Mとしては、周期律表第I族ないし第III族に属する金属元素が使用でき、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウム等が挙げられるが、アルミニウム、ホウ素、ベリリウム、亜鉛が特に好ましい。
【0028】
金属原子Mに対するマグネシウムの比β/αは、任意に設定可能であるが、好ましくは0.1〜30、特に0.5〜10の範囲が好ましい。また、α=0である或る種の有機マグネシウム化合物を用いる場合、例えば、Rが1−メチルプロピル等の場合には不活性炭化水素溶媒に可溶であり、このような化合物も本発明に好ましい結果を与える。一般式(Mα(Mg)β(R(R(ORにおいて、α=0の場合のR、Rは次に示す三つの群(1)、(2)、(3)のうちのいずれか一つの基であることが推奨される。
(1)R、Rの少なくとも一方が炭素原子数4〜6である二級または三級のアルキル基であること、好ましくはR、Rがともに炭素原子数4〜6であり、少なくとも一方が二級または三級のアルキル基であること。
(2)RとRとが炭素原子数の互いに相異なるアルキル基であること、好ましくはRが炭素原子数2または3のアルキル基であり、Rが炭素原子数4以上のアルキル基であること。
(3)R、Rの少なくとも一方が炭素原子数6以上の炭化水素基であること、好ましくはR、Rに含まれる炭素原子数を加算すると12以上になるアルキル基であること。
【0029】
以下これらの基を具体的に示す。(1)において炭素原子数4〜6である二級または三級のアルキル基としては、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、2−メチルブチル、2−エチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2−メチル−2−エチルプロピル基等が用いられ、1−メチルプロピル基が特に好ましい。次に(2)において炭素原子数2または3のアルキル基としてはエチル、1−メチルエチル、プロピル基等が挙げられ、エチル基が特に好ましい。また炭素原子数4以上のアルキル基としては、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル基等が挙げられ、ブチル、ヘキシル基が特に好ましい。
【0030】
さらに、(3)において炭素原子数6以上の炭化水素基としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、フェニル、2−ナフチル基等が挙げられる。炭化水素基の中ではアルキル基が好ましく、アルキル基の中でもヘキシル、オクチル基が特に好ましい。一般に、アルキル基に含まれる炭素原子数が増えると不活性炭化水素溶媒に溶けやすくなるが、溶液の粘度が高くなるために必要以上に長鎖のアルキル基を用いることは取り扱い上好ましくない。なお、上記有機マグネシウム化合物は不活性炭化水素溶液として使用されるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のルイス塩基性化合物が含有され、あるいは残存していても差し支えなく使用できる。
【0031】
次にアルコキシ基(OR)について説明する。Rで表される炭化水素基としては、炭素原子数1以上12以下のアルキル基またはアリール基が好ましく、3以上10以下のアルキル基またはアリール基が特に好ましい。具体的には、たとえば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、ヘキシル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−エチル−4−メチルペンチル、2−プロピルヘプチル、2−エチル−5−メチルオクチル、オクチル、ノニル、デシル、フェニル、ナフチル基等が挙げられ、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルペンチルおよび2−エチルヘキシル基が特に好ましい。
【0032】
これらの有機マグネシウム化合物は、一般式RMgXおよびRMg(Rは前述の意味であり、Xはハロゲンである)からなる群に属する有機マグネシウム化合物と、一般式MおよびM(k−1)H(M、R、kは前述の意味である)からなる群に属する有機金属化合物とを不活性炭化水素溶媒中、室温〜150℃の間で反応させ、必要な場合には続いてRで表される炭化水素基を有するアルコールまたは不活性炭化水素溶媒に可溶な上記Rで表される炭化水素基を有するアルコキシマグネシウム化合物、等と反応させる方法により合成される。
このうち、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とアルコールとを反応させる場合、反応の順序については、有機マグネシウム化合物中にアルコールを加えていく方法、アルコール中に有機マグネシウム化合物を加えていく方法、または両者を同時に加えていく方法のいずれの方法も用いることができる。本発明において不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とアルコールとの反応比率については特に制限はないが、反応の結果、得られるアルコキシ基含有有機マグネシウム化合物における、全金属原子に対するアルコキシ基のモル組成比c/(α+β)の範囲は0≦c/(α+β)≦2であり、0≦c/(α+β)<1が特に好ましい。
【0033】
次に、本発明における塩素化剤について説明する。
本発明において、(A−1)を合成する際に使用される塩素化剤が下記の一般式2で示される、少なくとも一つはSi−H結合を有する塩化珪素化合物である。
SiCl(4−(d+e)) ・・・式2
(式中、Rは炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、dとeは次の関係を満たす数である。1≦d、1≦e、2≦d+e≦4)
上記の式2において、Rで表される炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基であり、たとえば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられ、炭素数1以上10以下のアルキル基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル基等の炭素数1〜3のアルキル基が特に好ましい。また、dおよびeは2≦d+e≦4の関係を満たす1以上の実数であり、eが2以上であることが特に好ましい。
【0034】
これらの化合物としては、HSiCl、HSiClCH、HSiCl、HSiCl、HSiCl(1−CH)、HSiCl、HSiCl、HSiCl(4−Cl−C)、HSiClCH=CH、HSiClCH、HSiCl(1−C10)、HSiClCHCH=CH、HSiClCH、HSiClC、HSiCl(CH、HSiCl(C、HSiClCH(1−CH)、HSiClCH(C)、HSiCl(C等が挙げられ、これらの化合物またはこれらの化合物から選ばれた二種類以上の混合物からなる塩化珪素化合物が使用される。塩化珪素化合物としては、トリクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、エチルジクロロシランが好ましく、トリクロロシラン、モノメチルジクロロシランが特に好ましい。
【0035】
次に、本発明における有機マグネシウム化合物と塩素化剤との反応について説明する。 本発明においては、有機マグネシウム化合物と塩素化剤との反応に際しては塩素化剤を予め反応溶媒体、たとえば、不活性炭化水素溶媒、1,2−ジクロルエタン、o−ジクロルベンゼン、ジクロルメタン等の塩素化炭化水素、もしくはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系媒体、あるいはこれらの混合媒体を用いて希釈した後利用することが好ましい。特に、触媒の性能上、不活性炭化水素溶媒が好ましい。本発明においては、反応の温度については特に制限はないが、反応の進行上、好ましくは塩素化剤として使用する塩化珪素化合物の沸点以上もしくは40℃以上で実施される。有機マグネシウム化合物と塩化珪素化合物との反応比率にも特に制限はないが、通常有機マグネシウム化合物1モルに対し、塩化珪素化合物0.01〜100モルであり、好ましくは有機マグネシウム化合物1モルに対し、塩化珪素化合物0.1〜10モルの範囲である。
【0036】
本発明における反応方法については、有機マグネシウム化合物と塩化珪素化合物とを同時に反応器に導入しつつ反応させる同時添加の方法、塩化珪素化合物を事前に反応器に仕込んだ後に有機マグネシウム化合物を反応器に導入させる方法、もしくは有機マグネシウム化合物を事前に反応器に仕込んだ後に塩化珪素化合物を反応器に導入させる方法等があるが、塩化珪素化合物を事前に反応器に仕込んだ後に有機マグネシウム化合物を反応器に導入させる方法が好ましい。上記反応により得られる固体成分はろ過あるいはデカンテーション法により分離した後、不活性炭化水素溶媒を用いて充分に洗浄し、未反応物あるいは副生成物等を除去することが好ましい。
【0037】
本発明においては、有機マグネシウム化合物と塩化珪素化合物との反応を固体の存在下に行うこともできる。この固体は無機固体、有機固体のいずれでもよいが、無機固体を用いるほうが好ましい。無機固体として、下記のものが挙げられる。
(i)無機酸化物
(ii)無機炭酸塩、珪酸塩、硫酸塩
(iii)無機水酸化物
(iv)無機ハロゲン化物
(v)(i)〜(iv)なる複塩、固溶体ないし混合物
【0038】
無機固体の具体例としては、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、水和アルミナ、マグネシア、トリア、チタニア、ジルコニア、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、珪酸マグネシウム、マグネシウム・カルシウム、アルミニウムシリケート[(Mg・Ca)O・Al・5SiO・nHO]、珪酸カリウム・アルミニウム[KO・3Al・6SiO・2HO]、珪酸マグネシウム鉄[(Mg・Fe)SiO]、珪酸アルミニウム[Al・SiO]、炭酸カルシウム、塩化マグネシウム、よう化マグネシウム等が挙げられるが、特に好ましくは、シリカ、シリカ・アルミナないし塩化マグネシウムが好ましい。無機固体の比表面積は、好ましくは20m/g以上特に好ましくは90m/g以上である。
【0039】
次に、本発明におけるアルコール(A−2)について説明する。本発明においては、アルコール(A−2)として、炭素数1以上20以下の飽和又は不飽和のアルコールが好ましい。このようなアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、フェノール、クレゾール等が挙げられ、炭素数3〜8の直鎖アルコールが特に好ましい。これらのアルコールを混合して使用することも可能である。
【0040】
本発明においては、アルコール(A−2)の使用量には特に制限はないが、担体(A−1)中に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.05より大きく10以下であることが好ましく、0.1以上1以下がさらに好ましく、0.2以上0.5以下がさらに好ましい。アルコール(A−2)の使用量が、担体(A−1)中に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.05より大きい場合には、触媒担体に含まれるSiを含む成分を効率的に除去することができるために触媒特性が向上するために好ましい。また、アルコール(A−2)の使用量が、担体(A−1)中に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で10以下である場合には、過剰なアルコールが触媒に残存することにより触媒特性を低下させる現象を抑制できるために好ましい。さらには、アルコール(A−2)の使用量が、担体(A−1)中に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.2以上0.5以下である場合には、触媒特性を向上させるために必要なアルコールが適当量触媒に残存するために好ましい。担体(A−1)とアルコール(A−2)との反応は、不活性炭化水素溶媒の存在下または非存在下において行うことができる。反応時の温度には特に制限はないが、25℃以上200℃以下の範囲で実施されることが好ましい。
【0041】
次に、本発明における有機金属化合物(A−3)について説明する。
本発明においては、この有機金属化合物(A−3)は下記の一般式3で表される。
(h−f) ・・・式3
(式中Mは周期律表第I〜III族に属する金属原子、Rは炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、QはOR、OSiR、NR1011、SR12およびハロゲンからなる群に属する基を表し、R、R、R、R、R10、R11、R12は水素原子または炭化水素基であり、fは0より大きな実数であり、hはMの原子価である)
【0042】
本発明においては、Mは周期律表第I〜III族に属する金属原子であり、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、マグネシウム、ホウ素、アルミニウム等が挙げられるが、マグネシウム、ホウ素、アルミニウムが特に好ましい。Rで表される炭化水素基はアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基である。
QはOR、OSiR、NR1011、SR12およびハロゲンからなる群に属する基を表し、R、R、R、R、R10、R11、R12は水素原子または炭化水素基であり、Qがハロゲンであることが特に好ましい。
【0043】
本発明における有機金属化合物(A−3)の例としては、メチルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムアイオダイド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムアイオダイド、ブチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムアイオダイド、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、トリエチルホウ素、トリメチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムメトキシド、メチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリ(2−メチルプロピル)アルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等が挙げられ、有機アルミニウム化合物が特に好ましい。これらの化合物を混合して使用することも可能である。
【0044】
本発明においては、有機金属化合物(A−3)の使用量には特に制限はないが、アルコール(A−2)に対するモル比で、0.01倍以上20倍以下であることが好ましく、0.1倍以上10以下であることがさらに好ましく、0.5倍以上2.5倍以下であることがさらに好ましい。有機金属化合物(A−3)の使用量が、アルコール(A−2)に対するモル比で0.01倍以上であれば、過剰なアルコールを効率的に除去することが可能であり、また、有機金属化合物(A−3)の使用量が、アルコール(A−2)に対するモル比で20倍以下であれば、有機金属化合物(A−3)が触媒製造工程における有機金属化合物(A−3)反応の後の工程に悪影響をおよぼさない。さらには、有機金属化合物(A−3)の使用量が、アルコール(A−2)に対するモル比で0.5倍以上2.5倍以下であれば、触媒特性を改善するために必要なアルコールを触媒に残すことが可能である。また、本発明においては、担体(A−1)に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.01倍以上20倍以下であることが好ましく、0.1倍以上10倍以下であることがさらに好ましい。反応の温度については特に制限はないが、25℃以上200℃以下であり、かつ反応媒体の沸点未満の範囲が好ましい。
【0045】
次に、本発明におけるチタン化合物(A−4)について説明する。
本発明においては、チタン化合物(A−4)として下記の一般式4で表されるチタン化合物が使用される。
Ti(OR13(4−i)・・・・・式4
(式中、iは0以上4以下の実数であり、R13は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
13で表される炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、アリル基等の脂肪族炭化水素基、シクロヘキシル、2−メチルシクロヘキシル、シクロペンチル基等の脂環式炭化水素基、フェニル、ナフチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられるが、脂肪族炭化水素基が好ましい。Xで表されるハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられるが、塩素が好ましい。具体的には、四塩化チタンが好ましい。上記から選ばれたチタン化合物(A−4)を、2種以上混合して使用することが可能である。
【0046】
本発明においては、チタン化合物(A−4)の使用量には特に制限はないが、担体(A−1)に対する担持量については、担体(A−1)に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.01以上20以下が好ましく、0.05以上10以下が特に好ましい。チタン化合物(A−4)の担体(A−1)に対する担持量は、少なすぎれば触媒あたりの重合活性が低く、多すぎればチタンあたりの重合活性が低くなる傾向にある。チタン化合物(A−4)の担体(A−1)に対する担持量が、担体(A−1)に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.01以上であれば、触媒あたりの重合活性が充分に高く、20以下であればチタンあたりの重合活性が充分に高い。本発明においては、担持の際の反応温度については特に制限はないが、25℃以上150℃以下の範囲で行うことが好ましい。
【0047】
本発明においては、チタン化合物(A−4)を担持する際、チタン化合物(A−4)と有機金属化合物(A−5)とを反応させることにより担持することが好ましい。この有機金属化合物(A−5)は前述の一般式3で表される化合物であり、前述の有機金属化合物(A−3)と同一であっても良く、異なっていても良い。
(h−f) ・・・式3
(式中Mは周期律表第I〜III族に属する金属原子、Rは炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、QはOR、OSiR、NR1011、SR12およびハロゲンからなる群に属する基を表し、R、R、R、R、R10、R11、R12は水素原子または炭化水素基であり、fは0より大きな実数であり、hはMの原子価である)
【0048】
本発明においては、Mは周期律表第I〜III族に属する金属原子であり、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、マグネシウム、ホウ素、アルミニウム等が挙げられるが、マグネシウム、ホウ素、アルミニウムが特に好ましい。Rで表される炭化水素基はアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基である。
QはOR、OSiR、NR1011、SR12およびハロゲンからなる群に属する基を表し、R、R、R、R、R10、R11、R12は水素原子または炭化水素基であり、Qがハロゲンであることが特に好ましい。
【0049】
本発明における有機金属化合物(A−3)の例としては、メチルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムアイオダイド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムアイオダイド、ブチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムアイオダイド、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、トリエチルホウ素、トリメチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムメトキシド、メチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリ(2−メチルプロピル)アルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等が挙げられ、有機アルミニウム化合物が特に好ましい。これらの化合物を混合して使用することも可能である。
【0050】
(A−4)と(A−5)との反応の順序には特に制限は無く、(A−4)に続いて(A−5)を加える、(A−5)に続いて(A−4)を加える、(A−4)と(A−5)とを同時に添加するのいずれの方法も可能であり、(A−4)に続いて(A−5)を加えることが好ましい。(A−4)に対する(A−5)のモル比は、好ましくは0.1〜10、特に好ましくは0.5〜5である。(A−2)と(A−5)との反応は不活性炭化水素溶媒中で行われるが、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒を用いることが好ましい。反応の温度については特に制限はないが、25℃以上200℃以下であり、かつ反応媒体の沸点未満の範囲が好ましい。
【0051】
次に、本発明における有機アルミニウム化合物[B]について説明する。
本発明における有機アルミニウム化合物は下記の一般式5で表される。
14(3−j)AlQ’ ・・・式5
(式中、R14は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、Q’は水素原子、ハロゲン原子、およびOR15からなる群に属する基であり、R15は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、jは0以上2以下の実数である)
14の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−メチルプロピル基、ペンチル基、3−メチルブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、トリル基等が挙げられ、中でもエチル基、2−メチルプロピル基が特に好ましい。これらの炭化水素基は二種類以上含まれていても良い。hは0.05以上1.5以下であることが好ましく、0.1以上1.2以下であることが特に好ましい。
【0052】
次に、本発明における有機マグネシウム化合物は下記の一般式6で表される。
(Mγ(Mg)δ(R15(R16・・・・・式6
(式中、Mは周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子であり、R15およびR216はそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、γ、δ、mおよびnは次の関係を満たす実数である。0≦γ、0<δ、0≦k、0≦m、pγ+2δ=m+n(ただし、pはMの原子価))
この有機マグネシウム化合物は、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、ジヒドロカルビルマグネシウム化合物およびこの化合物と他の金属化合物との錯体のすべてを包含するものである。記号γ、δ、m、nの関係pγ+2δ=m+nは金属原子の原子価と置換基との化学量論性を示している。
【0053】
上記一般式6において、R15およびR16で表される炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、プロピル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられ、好ましくはR15およびR16はアルキル基である。γ>0の場合、金属原子Mとしては、周期律表第I族ないし第III族に属する金属元素が使用でき、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウム等が挙げられるが、アルミニウム、ホウ素、ベリリウム、亜鉛が特に好ましい。
【0054】
本発明においては、金属原子Mに対するマグネシウムの比δ/γには特に制限はないが、0.1以上30以下であることが好ましく、0.5以上10以下であることがさらに好ましい。また、γ=0である有機マグネシウム化合物を用いる場合、例えば、R15が1−メチルプロピル等の場合には不活性炭化水素溶媒に可溶であり、このような化合物も本発明に好ましい結果を与える。上記一般式6において、γ=0の場合のR15、R16は次に示す三つの群(1)、(2)、(3)のうちのいずれか一つの基であることが推奨される。
(1)R15、R16の少なくとも一方が炭素原子数4以上6以下である二級または三級のアルキル基であること、好ましくはR15、R16がともに炭素原子数4以上6以下であり、少なくとも一方が二級または三級のアルキル基であること。
(2)R15とR16とが炭素原子数の互いに相異なるアルキル基であること、好ましくはR15が炭素原子数2または3のアルキル基であり、R16が炭素原子数4以上のアルキル基であること。
(3)R15、R16の少なくとも一方が炭素原子数6以上の炭化水素基であること、好ましくはR15、R16に含まれる炭素原子数を加算すると12以上になるアルキル基であること。
【0055】
以下これらの基を具体的に示す。(1)において炭素原子数4以上6以下である二級または三級のアルキル基としては、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、2−メチルブチル、2−エチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2−メチル−2−エチルプロピル基等が用いられ、1−メチルプロピル基が特に好ましい。
次に、(2)において炭素原子数2または3のアルキル基としてはエチル、1−メチルエチル、プロピル基等が挙げられ、エチル基が特に好ましい。また炭素原子数4以上のアルキル基としては、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル基等が挙げられ、ブチル、ヘキシル基が特に好ましい。
さらに、(3)において炭素原子数6以上の炭化水素基としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、フェニル、2−ナフチル基等が挙げられる。炭化水素基の中ではアルキル基が好ましく、アルキル基の中でもヘキシル、オクチル基が特に好ましい。一般に、アルキル基に含まれる炭素原子数が増えると不活性炭化水素溶媒に溶けやすくなるが、溶液の粘度が高くなるために必要以上に長鎖のアルキル基を用いることは取り扱い上好ましくない。なお、上記有機マグネシウム化合物は不活性炭化水素溶液として使用されるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のルイス塩基性化合物が含有され、あるいは残存していても差し支えなく使用できる。
【0056】
これらの有機マグネシウム化合物は、一般式R15MgXおよびR15Mg(R15は前述の意味であり、Xはハロゲンである)からなる群に属する有機マグネシウム化合物と、一般式M16およびM16(k−1)H(M、R16、kは前述の意味である)からなる群に属する有機金属化合物とを不活性炭化水素溶媒中、25℃以上150℃以下の間で反応させる方法により合成される。
かくして得られた触媒は、特にエチレンの重合およびエチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとの共重合に対して、チタン当たりの活性が高く、かつ触媒当たりの活性が非常に高い特徴を有する。
重合溶媒としては、スラリー重合に通常使用される不活性炭化水素溶媒が用いられる。重合温度は室温以上120℃以下であり、50℃以上100℃以下であることが好ましい。重合圧力は常圧以上10MPa以下の範囲で実施される。得られる重合体の分子量は、重合系に存在させる水素の濃度を変化させるか、重合温度を変化させか、あるいは有機金属化合物[B]の濃度を変化させることによって調節することができる。
【0057】
本発明において、ポリオレフィンの製造プロセスに特に制限はなく、一般に用いられている溶液法、高圧法、高圧バルク法、ガス法、スラリー法のいずれの製造方法にも適用できる。例えば、重合圧力はゲージ圧として0.1MPa以上200MPa以下であり、重合温度は25℃以上250℃以下であり、溶媒としてプロパン、ブタン、イソブタン、ヘキサン、シクロヘキサン等を用いるものも含まれる。
次に、実施例などに基づき、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0058】
実施例中の重合器内の水素濃度とは、重合器内の気相部分をガスクロマトグラフィーを用いて分析することにより得られた水素濃度(単位はモル/リットル)とエチレン濃度(単位はモル/リットル)とを用いて、下記の数式(1)に従って算出された値のことであり、単位はモル%である。
水素濃度(モル%)=100×水素濃度(モル/リットル)/{水素濃度(モル/リットル)+エチレン濃度(モル/リットル)} ・・・数式(1)
実施例中の重合器内のプロピレン濃度とは、重合器内の気相部分をガスクロマトグラフィーを用いて分析することにより得られたエチレン濃度(単位はモル/リットル)とプロピレン濃度(単位はモル/リットル)とを用いて、下記の数式(2)に従って算出された値のことであり、単位はモル%である。
プロピレン濃度(モル%)=100×プロピレン濃度(モル/リットル)/{プロピレン濃度(モル/リットル)+エチレン濃度(モル/リットル)} ・・・数式(2)
【0059】
実施例中のポリマーのメルトフローレート(MFR)は、JIS K7120に従い、東洋精機製メルトインデクサ−を用いて温度190℃、荷重2.16kgで測定した。
実施例中のポリマーの密度は、JIS K7112の密度勾配管法により測定した。
実施例中のポリマーのMw/Mnは、ウォーターズ社製GPCV2000型を用い、溶媒として140℃の1,2,4−トリクロロベンゼンを使用し、流速1.0ml/分、試料濃度20mg/15ml、注入量413μl、試料溶解温度140℃、試料溶解時間2時間の条件で測定した。カラムは昭和電工社製Shodex UT−807を1本、東ソー社製TSK−GEL GMHHR−H(S) HTを2本直列につないで使用した。
実施例中のチタン含有量および塩素含有量は、重合体を適当量採取し、硝酸を添加し分解させた。この分解物に純粋を加えて測定試料を調製した。市販されている原子吸光分析用標準液を硝酸水溶液で希釈し、標準液として用いた。ICP測定を理学製JY138の装置を用いて測定した。
【0060】
実施例中の末端ビニル基含有量は、下記の方法により測定した。
1gの重合体を0.2mmのアルミ板上に載せた縦×横×厚みが5cm×5cm×0.5mmの金型に入れ、アルミ板を載せて180℃でプレスしてフィルムを作成した。 このフィルムの赤外吸収スペクトルを日本分光製FT−IR5300Aを用いて測定した。ビニル基は910cm−1のピークの吸光度、重合体の密度、およびフィルムの厚みから、次式を用いて算出した。
末端ビニル基含量(個/100C)=0.114×ΔA/(t×d/1000)
{ただし、dは重合体の密度(kg/m)、ΔAはピークの吸光度、tはフィルムの厚み(mm)}
実施例中の変色は、IS−150EN射出成型機(東芝機械株式会社製)を用いて、250℃の成型温度で、100mm×100mm×2mmの金型を用いて製造した試験片の色目を目視にて確認することにより評価した。試験片が着色していなければ○、着色していた場合には×とした。
実施例中の触媒活性とは、固体触媒1gあたり、一時間あたりのポリマー生成量(g)を表し、単位はg/g/hである。
実施例中の化合物および容器等は全て十分に脱水し脱酸素した後に使用した。
【0061】
[実施例1]
(1)固体触媒[A−1]の調製
(1−1)不活性炭化水素溶媒に可溶な錯体の合成
ジブチルマグネシウム175gとトリエチルアルミニウム30gとを、ヘキサン1リットルと共に容量4リットルのステンレス製反応器にいれ、85℃で2時間撹拌しながら反応させることにより、組成AlMg(C(C10の錯体を合成した。
(1−2)担体の調製
充分に窒素置換された15リットルの反応器に、トリクロルシラン(HSiCl3 )を2モル/リットルのn−ヘプタン溶液として2740ミリリットル仕込み、攪拌しながら50℃に保ち、組成式AlMg6 (C2 5 3 (n−C4 9 10.8(On−C4 9 1.2 で示される有機マグネシウム成分のn−ヘプタン溶液7リットル(マグネシウム換算で5モル)を1時間かけて加え、更に50℃にて1時間攪拌下反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、n−ヘキサン7リットルで4回洗浄を行い、固体物質スラリーを得た。この固体を分離・乾燥して分析した結果、固体1グラム当たり、Mg8.62ミリモル、Cl17.1ミリモル、n−ブトキシ基(On−C4 9 )0.84ミリモルを含有していた。
【0062】
(1−3)固体触媒の調製
上記固体500gを含有するスラリーを、n−ブチルアルコール1モル/リットルのn−ヘキサン溶液2160ミリリットルとともに、攪拌下50℃で1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのn−ヘキサンで1回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1モル/リットルのn−ヘキサン溶液970ミリリットルを攪拌下加えて1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのn−ヘキサンで2回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1モル/リットルのn−ヘキサン溶液270ミリリットルおよび四塩化チタン1モル/リットルのn−ヘキサン溶液270ミリリットルを加えて、2時間反応した。反応終了後上澄みを除去し、内温を50℃に保った状態で、7リットルのn−ヘキサンで4回洗浄して、固体触媒成分をヘキサンスラリー溶液として得た。この固体触媒を分離・乾燥して分析した結果、固体触媒1グラムあたりチタン0.52ミリモルを含有していた。
【0063】
(2)重合
触媒として、固体触媒[A−1]とトリイソブチルアルミニウムを組み合わせて使用した。
重合には反応容積300リットルのステンレス製重合器を用いた。γ線を使用した液面計により測定された重合器内の溶媒の体積とポリエチレンの体積との和は170Lであり、重合器から溶媒とポリエチレンとが定常的に抜き取られる体積あたりの速度は51リットル/hであった。従って、平均滞留時間は1.1時間であった。重合器1からポリマーは10kg/hの速度で抜き取られた。重合温度86℃、重合圧力0.6MPaの条件で、触媒は上記の固体触媒[A−1]を0.5g/h、上記の有機アルミニウム化合物[B−1]をAl原子換算で20ミリモル/h、またヘキサンは40リットル/hの速度で導入した。分子量調整剤としては水素を用い、エチレンと水素とプロピレンを、水素の気相濃度が43モル%、プロピレンの気相濃度が2.4モル%、エチレンの供給量が10kg/hになるように重合器に供給し重合を行った。重合器における触媒活性は20000g/g/hであった。
上記重合により、パウダー状のポリエチレンを製造した。
【0064】
(3)物性測定
上記重合により得られたパウダーを乾燥し、DLTPヨシトミ(株式会社エーピーアイコーポレーション製)1000重量ppm、ステアリン酸カルシウム(日油株式会社製)2400重量ppm、イルガフォス168(チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)1200重量ppm、イルガノックス1076(チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)2000重量ppmを添加して造粒することによりポリエチレン樹脂組成物のペレットを得た。このペレットを用いて物性測定を行った。その結果を表1に示す。
【0065】
[比較例1]
(1)固体触媒[A−2]の調製
(1−1)不活性炭化水素溶媒に可溶な錯体の合成
ジブチルマグネシウム138gとトリエチルアルミニウム28.5gとを、ヘキサン1リットルと共に容量4リットルのステンレス製反応器にいれ、85℃で2時間撹拌しながら反応させることにより、組成AlMg(C(Cの錯体を合成した。続いて、この溶液を10℃に冷却し、1−オクタノール0.5モルを含有するヘキサン溶液0.5リットルを撹拌しながら、溶液の温度は10℃に保つように冷却しながら添加することにより、アルコキシ基含有有機アルミニウム−マグネシウム錯体を合成した。この溶液の一部を分取して加水分解した後に金属およびアルコールを定量することにより、上記錯体の組成はAlMg(O−C17(C2.7(C6.7であることが確認された。
(1−2)固体成分の合成
容量8リットルのステンレス製反応器にヘキサン1.6リットルを添加し、これを−20℃に冷却した。この後、(1−1)で合成した錯体1リットルと0.5モル/リットルの四塩化チタンヘキサン溶液1リットルとを、同時に1時間かけて添加した。添加後、さらに−20℃で3時間反応させた。生成したスラリーを1時間沈降させた後、2リットルの上澄み液を除去し、2リットルのヘキサンを添加した、この操作を2回繰り返した。この反応により、118gの固体触媒[A−2]を調製した。
【0066】
(2)エチレンの重合
上記触媒を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、パウダー状のポリエチレンを製造した。
(3)物性測定
上記重合により得られたパウダーを乾燥し、実施例1と同様の添加剤を添加して造粒することにより、ポリエチレン樹脂組成物のペレットを得た。このペレットを用いて物性測定を行った。その結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のポリエチレン樹脂組成物は、射出成型、押出し成型および延伸成型に好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の要件を満たすことを特徴とする、ポリエチレン樹脂組成物。
(A)MFRが1.0以上50以下である。
(B)密度が940kg/m以上967kg/m以下である。
(C)Mw/Mnが5.0以上7.0以下である。
(D)ポリエチレン樹脂組成物のチタン含有量が1.0重量ppm以上6.0重量ppm以下である。
(E)ポリエチレン樹脂組成物の塩素含有量が5.0重量ppm以上25.0重量ppm以下である。
(F)末端ビニル含有量が0.02個/1000C以上0.15個/1000C以下である。
【請求項2】
下記の(a)の要件を満たすことを特徴とする、請求項1に記載のポリエチレン樹脂組成物の製造方法。
(a)α−オレフィンを単段重合してポリオレフィンを製造する方法であり、この重合に使用される触媒が固体触媒[A]と有機金属化合物[B]からなり、固体触媒[A]が、下記一般式1で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物(a−1)と下記一般式2で表される塩素化剤(a−2)との反応により調製された担体(A−1)に、アルコール(A−2)を反応させ、次に下記一般式3で表される有機金属化合物(A−3)を反応させ、次に下記一般式4で表されるチタン化合物(A−4)を担持することにより調製されたものであり、有機金属化合物[B]が下記一般式5で示される有機アルミニウム化合物および下記一般式6で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物からなる群に属することを特徴とする、ポリオレフィンの製造方法、
(Mα(Mg)β(R(R(OR・・・・・式1
(式中、Mは周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子であり、R、RおよびRはそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、α、β、a、bおよびcは次の関係を満たす実数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0<c、0<a+b、0<c/(α+β)≦2、kα+2β=a+b+c(ただし、kはMの原子価))
SiCl(4−(d+e))・・・・・式2
(式中、Rは炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、dとeは次の関係を満たす数である。1≦d、1≦e、2≦d+e≦4)
(h−f) ・・・式3
(式中Mは周期律表第I〜III族に属する金属原子、Rは炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、QはOR、OSiR、NR1011、SR12およびハロゲンからなる群に属する基を表し、R、R、R、R、R10、R11、R12は水素原子または炭化水素基であり、fは0より大きな実数であり、hはMの原子価である)
Ti(OR13(4−i)・・・・・式4
(式中、iは0以上4以下の実数であり、R13は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
14(3−j)AlQ’ ・・・式5
(式中、R14は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、Q’は水素原子、ハロゲン原子、およびOR15からなる群に属する基であり、R15は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、jは0以上2以下の実数である)
(Mγ(Mg)δ(R15(R16・・・・・式6
(式中、Mは周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子であり、R15およびR16はそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、γ、δ、mおよびnは次の関係を満たす実数である。0≦γ、0<δ、0≦k、0≦m、pγ+2δ=m+n(ただし、pはMの原子価))

【公開番号】特開2011−46890(P2011−46890A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198834(P2009−198834)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】