説明

ポリエン抗生物質、該抗生物質を含有する組成物、それを取得するために用いられる方法および微生物ならびにその用途

本発明は、式(I)(式中、R1はアルキルC〜Cを示し、R2はCH−またはCONH−(メチル−または第一級アミド−)から選択される官能基を示す)で表される新規のポリエンに関する。上記ポリエンは、エルゴステロールを有する細胞膜を含む生物、例えば真菌または寄生虫に対して殺生物作用を有する。該化合物は、その生成を可能にする条件下での生成微生物の培養にある方法を用いて取得可能である。さらに、本発明は、ATP/Mg++およびアミド基供与体化合物(好ましくはグルタミン)の存在下でのカルボキシル化ポリエンのその産生株の無細胞抽出液(またはタンパク性画分)とのインキュベーションを含める、アミド化ポリエンのインビトロ生成における機構にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のアミド化およびメチル化ポリエン、それらを取得するための方法、生物活性の特徴づけ、ならびに治療、農業およびアグロアリメンタリー(agro−alimentary)を例とする用途に関する。本発明は、(a)他のポリエンのメチル化誘導体であり、それら各々の生成生物において同様に得られるもの、(b)アミド化ポリエンの組換え生成微生物、ならびに(c)該微生物を取得するのに有用なベクター、ならびに(d)アミド化ポリエンマクロライドの産生株から得られる無細胞抽出液またはタンパク性画分を用いてアミド化ポリエンを取得するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真菌感染における感染症全体の中で占める位置はほとんど重要視されなかった。しかし、ここ20年にわたりその展望が変化してきた。免疫低下患者の増加、骨髄移植および固形臓器の移植、癌患者数の増加、化学療法治療、自然防御機構を変化させる免疫抑制剤および広域スペクトルの抗菌剤と他の薬剤との併用、ならびにエイズ禍のすべてがこの変化に関与している。真菌種に起因する院内感染が、これまでになく一層深刻なものになっており、かつ慢性真菌症に関連した真菌種も激増している。
【0003】
抗真菌剤を服用する必要性があるにもかかわらず、全身性感染の治療を目的とする市販されているこれら医薬品の数は危険なまでに少ない。アンフォテリシンBを包含する、アゾールおよびポリエンなどのそれらの大部分が構造的に完全な真菌膜に標的化されるが、近年では細胞壁に特異的な成分に標的化される抗真菌剤(エチノカンジン)が開発されている。
【0004】
ポリエンは、その抗真菌活性故に極めて興味深いポリケトンマクロライドの群である。これらの化合物は、紫外/可視領域内に特性スペクトルを有する発色団を形成する、極めて多数のコンジュゲーションされた二重結合を有するマクロラクトン環を有し、これらの特性はそれらの物理および化学特性(光の高吸収、光不安定性(photolability)および低レベルの水への溶解度)に関与している。アンフォテリシンBなどのそれらの一部が抗真菌剤として重要であるにもかかわらず、それらの正確な作用機序まだ十分に理解されていないが、抗真菌活性はポリエン分子とステロールを含有する膜との相互作用に起因するようである。この相互作用はイオンのチャネルをもたらし、膜が浸透可能になり、電気化学的勾配の破壊と必然的な細胞死が誘発される。これらの化合物は、コレステロールを含有する膜(哺乳類の細胞)よりもエルゴステロール(トリパノソーマ(Trypanosoma)およびリーシュマニア(Leishmania)などの真菌および寄生虫の膜内に存在する主要ステロール)を含有する膜に対して有意に高い親和性を示す。にもかかわらず、ポリエンとコレステロールを含有する膜との間の相互作用はささいなことではなく、副作用を引き起こし、それは低い溶解度とともに、化合物が全身性真菌感染の治療にとって全体的に十分ではないことを意味する。アンフォテリシンBにおけるこれらの望ましくない特性および有毒な副作用に反して、この古い薬剤は40年を超えて使用されており、大部分の全身性感染の治療における好ましい抗真菌剤であり続けており、事実、新生真菌感染との闘いに利用できるより優れた選択肢がないことは認められている。リポソーム製剤中に薬剤を放出することによって一部の望ましくない作用が最小化でき、これにより、アンフォテリシンBの毒性が低減され、その細胞壁がエルゴステロールを含有する生物についての抗真菌剤(真菌症)および抗寄生虫剤(例えば、他の寄生虫の中でもリーシュマニア症およびトリパノソーマ症を対象)としての全身適用が可能になっている(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。
【0005】
この理由のため、新規抗真菌剤の発見または既存の抗真菌剤の薬理学的特性の改善は刺激的な課題である。これを目的とし、分子モデルの有理近似を用い、アンフォテリシンBの数種の半合成誘導体が生成され、かつ有効な抗真菌剤として試験されている。構造的修飾を行うため、特に側鎖のカルボキシル基と糖内のアミノ基という2つの主な標的が検討されている。これらの半合成誘導体には依然として同じ毒性を示したものもあったが、抗真菌活性の向上、水への溶解度の向上、エルゴステロールを含有する膜に対する特異性の向上および溶血活性の低下といった、アンフォテリシンBの分子と比べて改善された薬理学的特性を示すものもあり、それはエルゴステロールを含有する膜に対して特異性が高まることを示唆した。抗真菌活性の向上によりこれらの化合物についてのいくつかの利点が付与されるが、意外なことに、これらの構造的改良は微生物から単離される天然ポリエン内部に共通に現れるものではない。事実、改善された薬剤が半合成誘導体である限り、記載のすべてのポリエンは、バイオトランスフォーメーションではなく有機合成によって生成される。
【非特許文献1】バーマン(Berman)ら、1992年、Antimicrob.Agents Chemother 36:1978−1980頁
【非特許文献2】ハーウォルト(Herwaldt)(1999年)、The Lancet.354:1191−1199頁
【非特許文献3】ヤードリー(Yardley)ら、1999年、Am.J.Trop.Med.Hyg.61:163−197頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
様々な非ポリエン抗真菌剤が使用可能であるが、これらの薬剤の使用は、将来的にこれらの化合物の抗真菌剤治療に対する効率を危うくしうる、それらに耐性を示す株の選択および開発を促進する。したがって、新規抗真菌剤に対する探索および既存の抗真菌剤における薬理学的特性の改善において幅広い関心が認められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、ポリエンマクロライド系抗生物質リモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)の産生株であるストレプトマイセス・ディアスタティカス(Streptomyces diastaticus)変種108(ペレス−ズニガ(Perez−Zuniga)ら(2004年)、J.Antibiot.(東京(Tokyo))57:197−204頁)ならびに2種の天然ポリエンの遺伝子操作により、新規のポリエンマクロライドも組換え株の発酵培養物中で得られることを見出しており、それらは化学的に特徴づけられた後、カルボキシル酸のアミド、すなわちポリエンのリモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)(それらは各々、リモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)に由来)、ならびに式(III)のメチル、すなわちリモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)(これら全部が式(I)に含められる)であることが判明した。インビトロでの生物活性試験および一部の毒性試験では、新規化合物中に存在する化学修飾物が、それらの由来となる生成物によって示される生物学的特性と比べて改善された生物学的特性をもたらすことが示された(実施例1および実施例2を参照)。
【0008】
より詳細には、本発明の発明者らは、ポリエンマクロライド系抗生物質リモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)の産生株であるストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108の遺伝子操作(ペレス−ズニガ(Perez−Zuniga)ら(2004年)、J.Antibiot.(東京(Tokyo))57:197−204頁)および好ましくはエリスロマイシン耐性遺伝子(ermE)を有するSCP2に由来するベクター(ウチヤマ(Uchiyama)ら、(1985年)、Gene38:103−110頁)ならびに2種の天然ポリエンを用いた形質転換により、新規のポリエンマクロライドも組換え株の発酵培養物中で得られることを見出しており、それらは化学的に特徴づけられた後、カルボキシル酸のアミド、すなわちポリエンのリモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)(それらは各々、リモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)に由来)であることが判明した。インビトロでの生物活性試験および一部の毒性試験では、新規化合物(カルボキシル酸の代わりにアミド)中に存在する化学修飾物が、それらの由来となる生成物によって示される生物学的特性と比べて改善された生物学的特性をもたらすことが示された(表2、実施例1)。
【0009】
さらに本発明では、上記のこれらのアミド化ポリエンのリモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)の形成についての生合成機構が解明され、2種のポリエンマクロライド系抗生物質のリモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)の生合成に関与するクラスタの遺伝子操作により(セコ(Seco)ら、2004年、Chem.Biol.11:357−366頁)、2種の新規ポリエンのリモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)(メチル化ポリエン、実施例2)を取得する方法に関する記載がなされる。新規のメチル化ポリエンは、アミド化ポリエンと同様、薬理学的特性において天然テトラエンに対して明らかな改善を示す。
【0010】
天然テトラエンのリモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)の生合成において提案されたモデル(セコ(Seco)ら、2004年、Chem.Biol.11:357−366頁)に基づき、ポリケチドシンテターゼ(PKS)のモジュール7は伸長単位としてメチルマロナミル−CoAを取り込み、それは大環状環内のメチル基の存在を担い、それは後に部位特異的なPKS後修飾(post−PKS modification)により、酸化に至ることでリモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)にて存在する遊離カルボキシル基がもたらされるであろう。チトクロムP450モノオキシゲナーゼがこの酸化に関与し、かつ上記ポリエンの生合成クラスタにてコードされることが記載されている(アパリシオ(Aparicio)ら、2003年、Appl Microbiol Biotechnol 61:179−188頁)。リモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)の生合成の場合、その配列の類似性および生合成モデルにおいて単一のチトクロムP450モノオキシゲナーゼのみが必要とされるという事実のため、RimGがカルボキシル基をもたらすためのメチル基の酸化に関与するチトクロムP450モノオキシゲナーゼであることが提示された(セコ(Seco)ら、2004年、Chem.Biol.11:357−366頁)。
【0011】
アミド化ポリエンのリモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)内に存在するアミド基の形成においては、2つの考えられる機構が理論として最初に提示された:(a)リモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)の形成において提示されたメチルマロニル−CoA単位に加えて、ポリケトン鎖の構築の中でのマロナミル−CoA単位の取り込み、または(b)一旦大環状環の側鎖メチル基がカルボキシル基に酸化されると作用するアミドトランスフェラーゼ活性である。
【0012】
本発明は、本明細書中で後にリモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)として同定される2種のアミド化ポリエン、および後にリモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)として同定される2種のメチル化ポリエンに関し、それらの取得方法および用途は本発明のさらなる態様を構成する。
【0013】
該化合物は、一般に、エルゴステロールを含有する細胞膜を有する生物、すなわち真菌または寄生虫に対してより選択的な殺生物活性を有する。殺生物組成物、例えば、該アミド化またはメチル化ポリエンを含有する農業またはアグロアリメンタリー用途の医薬組成物および/または抗真菌組成物は、本発明のさらなる態様を構成する。ヒトまたは動物用途のサニタリー分野での医薬組成物中および/あるいは農業またはアグロアリメンタリー用途の抗真菌組成物中での、アミド化またはメチル化されるかかるポリエンの使用は本発明の別の態様を構成する。
【0014】
別の態様では、本発明は、ピマリシン(IVa)の対応するアミドであるポリエンAB−400(IVb)の用途に関し(カネド L.M.(Canedo L.M.)ら、2000年、J.,Antibiot.(東京(Tokyo))53:623−626頁)、それは、ストレプトマイセス属(Streptomyces sp.)RGU5.3から単離され、かつ本発明で強調されるこの化合物の試験の結果に基づくものである。
【0015】
別の態様では、本発明は、さらに下文で同定されるpSM784またはpSM743Bなどのエリスロマイシン耐性遺伝子(ermE)を少なくとも有するSCP2由来のベクターの使用に関する。遊離カルボキシル基を有するポリエンマクロライドの生成微生物をはじめ、カルボキシル基の代わりにアミド基を有するポリエンマクロライドの組換え生成微生物を生成するための該ベクターの使用は、本発明の別の態様を構成する。
【0016】
本発明は、別の態様では、該化合物の組換え生成微生物を該ポリエンの生成を可能にする条件下で培養してそれらをアミド化またはメチル化し、かつ必要に応じてそれら化合物を単離および精製するステップからなる、該アミド化ポリエンを生成するための方法に関する。かかる組換え微生物の具体例として、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743Bおよびストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−500/743Bが挙げられ(実施例を参照)、それらは、該アミド化ポリエンの取得、および場合によりカルボキシル基を有するポリエンを含有するこれらの混合物の取得における、それらまたは類似の組換え微生物の使用を伴う本発明のさらなる態様を構成する。
【0017】
別の態様では、本発明は、アミド化ポリエンのアミド基を形成するための機構の解明に関し、ここではカルボキシル基の形成の遮断を目的とした遺伝子rimGの中断または欠失が重要であった。一旦カルボキシル基の形成が遮断され、もしそこでポリケトン鎖の構築の間にアミド基の形成が生じるならば、破壊株をアミド化テトラエンの生合成の誘導プラスミドで形質転換する場合、後者は発酵培養物中で検出されるはずである。陰性の場合であれば、一旦後者が形成されていると、アミド基の形成が遊離カルボキシル基上のアミドトランスフェラーゼ活性により生じると結論づけられることになる。
【0018】
遺伝子rimGに変異を生じさせるための代替案として、不活性化遺伝子の破壊が選択された。しかし、この初期条件では、想定外に、上記のように行われた遺伝子rimGにおける破壊により、ポリエンを生成できない組換え体が生成される。これは、破壊に用いたプロモーターがおそらくは挿入点の後に位置する遺伝子rimA上での極性効果を阻止できないことを意味するものと解釈された。その後、アミド化テトラエンの形成の誘発に加え、染色体内の下流に位置する遺伝子rimAにおける極性効果を補完できるプラスミドpSM743Bが存在する場合、株内の染色体内のこの遺伝子rimGにおける中断により、リモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)と称されている2種の新規のメチル化ポリエンの単離が可能になった。これは遺伝子rimGの中断の結果としての遊離カルボキシル基とメチル基との置換を示す。生成された株(ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743B)(寄託番号DSM17482)の発酵培養物中でのアミド化テトラエンの非存在下では、ポリケトン鎖の伸長の間ではなく一旦大環状環および遊離側鎖カルボキシル基が形成されていると、部位特異的なPKS後修飾により、リモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)の中でアミド基の形成が生じ、かつそれがおそらくはアミドトランスフェラーゼによる「装飾(adornment)」活性に起因すると結論づけることが可能であった。
【0019】
さらに、インビトロでの、真菌(ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、アスペルギルス・ニガー(Asperlillus niger)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans))の様々な株に対する生物活性の試験および一部の毒性試験では、新規化合物中に存在する化学修飾物がそれらの由来の天然ポリエンに対して明らかな薬理学的利点をもたらすことが示される(表2、実施例2)。
【0020】
したがって、本発明は、式(III)のメチル化ポリエンすなわち抗真菌剤および抗寄生虫剤ならびに該ポリエンの特定対象として有用な下記の本発明の化合物にも関し、以下のメチル化ポリエンは、本明細書にてリモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)としてさらに下記で同定され記載される。
【0021】
本発明は、別の態様では、それら化合物の破壊生成微生物を該メチル化ポリエンの生成を可能にする条件下で培養し、かつ必要に応じてそれら化合物を単離および精製するステップを含む、式IIIの該メチル化ポリエンを生成するための方法に関する。特に、それはストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743B)(寄託番号DSM17482、発明微生物)、リモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)の産生株を含み、該メチル化ポリエンの取得におけるそれらまたは類似する破壊微生物の使用を伴う本発明のさらなる態様を構成する。
【0022】
別の態様では、本発明は、ポリエンの他の生合成クラスタ内のRimGに対して提示されたものと同じ化学修飾物に関与する遺伝子(それらの一部は既に記載されている)の中断についての、対応するメチル化誘導体を生成することを目的とした利用にも関する。
【0023】
本発明のメチル化ポリエンのリモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)における薬理学的利点は、ヒト細胞膜に対してよりも真菌または寄生虫におけるエルゴステロールを有する膜に対して向上した選択毒性に基づいており、それによりその毒性が著しく低下する。それらメチル化ポリエンを含有する殺生物組成物、例えば、サニタリー、農業またはアグロアリメンタリー用途の医薬組成物および/または抗真菌組成物は、本発明のさらなる態様を構成する。
【0024】
本発明の別のさらなる態様は、ヒトおよび動物の健康、農業および栄養の分野における感染症の処置を目的とする本発明の殺生物組成物の使用である。
【0025】
さらに、アミド化ポリエンの産生株(ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743B、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784)の無細胞抽出液ならびに基質としてリモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)を用いるインビトロでのアミド化試験により、アミド基の形成がアミド基供与体としてグルタミンを使用可能なATP/Mg++依存性のアミドトランスフェラーゼ活性によると結論づけられた(実施例2、項目Bを参照)。ストレプトマイセス属RGU5.3の無細胞抽出液を用いて実施される同じ試験により、ピマリシン(IVa)のアミドであるポリエンAB−400(IVb)が、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108の場合に酷似するアミドトランスフェラーゼ活性によって生じ、それがATP/Mg++依存性である反応においてピマリシンの遊離カルボキシル基をアミド基に変換するために、同遊離カルボキシル基に作用することが確認できた。
【0026】
さらに、遺伝子組換え体のストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108の無細胞抽出液中に存在するアミドトランスフェラーゼ活性が、天然基質のリモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)をそれらの対応するアミドのリモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)に変更可能であるだけでなく、ピマリシン(IVa)などの異種基質も認識可能である、基質に対する緩やかな特異性を示すと結論づけることがでた。これはストレプトマイセス属RGU5.3のアミドトランスフェラーゼ活性に対して生じたものではなく、試験条件下で基質としてピマリシン(IVa)を認識できるにすぎなかった。
【0027】
遊離カルボキシル基は、アンフォテリシンB、ナイスタチン、ピマリシン、カンジシジンなどの大部分の典型的なポリエン内でかなり良好に保存される。これらのカルボキシル基とアミド基との置換を仮定すると、おそらくは改善された薬理学的特性を有するアミド化ポリエンが生成されることになる。したがって、この態様では、本発明は、酵素的方法、すなわち、産生株の無細胞抽出液あるいは、直接的に選択されるかまたは基質をはじめとする固定化された系に関する分野の技術に従って適切な支持体上で固定化される化合物を用いて、特定の培養条件下でカルボキシル化ポリエンを対応するアミド化ポリエンに変換するための下記の本発明の酵素的方法を提供する。
【0028】
別の態様では、本発明は、「インビトロ」でのカルボキシル化ポリエンを、本発明の酵素的方法を開始するのに必要なそれに対応するアミドに変換できるアミドトランスフェラーゼ活性の担体である、アミド化ポリエンの産生株の無細胞抽出液に関する。
【0029】
別の特定の態様では、本発明は、リモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)ならびに他の異種基質を、それらの対応するアミドに変換するための能力を有するアミドトランスフェラーゼ活性の担体である、微生物のストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743B、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784(それら双方はアミド化ポリエンのCE−108B(I−1b)およびリモシジンB(I−1a)の産生株)の無細胞抽出液、ならびに試験条件下で少なくともピマリシン(IVa)をその対応するアミド化ポリエンAB−400(IVb)に変換可能な、アミド化ポリエンAB−400(IVb)の産生株である微生物ストレプトマイセス属RGU5.3の無細胞抽出液に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、式(I)
【化1】

(式中、R1はアルキルC〜Cであり、R2はCH−またはCONH−(メチル−または第一級アミド−)の中から選択される官能基である)によって特徴づけられる新規ポリエンマクロライド化合物、その異性体、塩、プロドラッグあるいは溶媒和物について記載する。
【0031】
上記の式(I)で示される本発明の化合物は、キラル中心の存在に依存する光学または鏡像異性体を含む、複数の結合(例えばZ、E)の存在に依存する異性体を含みうる。個々の異性体、すなわち鏡像異性体またはジアステレオ異性体およびそれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。個々の鏡像異性体またはジアステレオ異性体およびそれらの混合物は、従来の技術によって分離されうる。
【0032】
本明細書で用いられる「塩」という用語は、医薬的に許容できる塩、つまり薬剤の調製において使用可能な式(I)の化合物の塩、ならびに医薬的に許容できない塩の両方を含み、これは、これらが医薬的に許容できる塩の調製において使用可能であるためである。医薬的に許容できる塩の性質は、それが医薬的に許容できるという条件下では、常に重要なことではない。式(I)の化合物の医薬的に許容できる塩の中から、まず有機酸または無機酸から取得可能な酸付加塩が、当業者には周知の従来の方法を用いて化学量的に適切な量にて適切な酸と式(I)の化合物とを反応させることにより、見出される。該酸付加塩を取得するのに使用可能な酸の具体例として、有機酸では、例えば、酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸など、または無機酸では、例えば、臭化水素酸、塩酸、リン酸、硝酸、硫黄酸などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0033】
同様に、本発明の範囲内で式(I)の化合物のプロドラッグが見出される。本明細書で用いられる「プロドラッグ」という用語は、式(I)の化合物由来の任意の化合物、例えば、カルボキシル酸エステル、アミノ酸エステル、リン酸塩エステル、金属塩のスルホン酸塩エステルなどを含むエステル、カルバメート、アミドなどを含み、それは個体に投与される場合、式(I)の該化合物を直接的または間接的に該個体に送達可能である。有利には、該誘導体は、生物区画内での式(I)の化合物のバイオアベイラビリティを高める化合物である。該誘導体の性質は、それが個体に投与可能でありかつ式(I)の化合物を個体の生物区画内に送達するという条件では常に重要なことではない。該プロドラッグの調製を当業者に既知の従来の方法によって行ってもよい。
【0034】
本発明の化合物は、遊離化合物または溶媒和物として結晶形態であってもよく、両形態が本発明の範囲内で生じることを意図している。これに関連して、本明細書で用いられる「溶媒和物」という用語は、医薬的に許容できる溶媒和物、つまり薬剤の調製において使用可能な式(I)の化合物の溶媒和物、ならびに医薬的に許容できない溶媒和物の両方を含み、これは、これらが医薬的に許容できる溶媒和物または塩の調製において使用可能であるためである。医薬的に許容できる溶媒和物の性質は、それが医薬的に許容できるという条件では常に重要なことではない。特定の実施形態では、溶媒和物は水和物である。溶媒和物を当業者に周知の従来の方法によって取得することができる。
【0035】
治療でのそれらの用途においては、式(I)の化合物、その異性体、塩、プロドラッグまたは溶媒和物は、好ましくは、換言すれば、希釈剤および担体などの通常の医薬添加剤を除いて医薬的に許容できるレベルの純度を有しかつ通常の用量レベルで有毒と考えられる物質を含まない、医薬的に許容できるまたは実質的に純粋な形態である。活性成分における純度のレベルは、好ましくは50%より高く、より好ましくは70%より高く、より好ましくは90%より高い。好ましい実施形態では、該レベルは、式(I)の化合物、またはその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグの95%より高い。
【0036】
他に規定されない限り、本発明の化合物は、1つ以上の同位体標識原子の存在下でのみ異なる化合物も含む。例えば、水素と重水素または三重水素との置換あるいは炭素と13Cもしくは14Cに富む炭素または15Nに富む窒素との置換を例外としてその構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。
【0037】
別の態様では、本発明は、式(I−1)の化合物、式(I)
【化2】

(式中、RはNHであり、R1はアルキルC〜Cである)
の本発明のポリエンのアミド化誘導体、またはその異性体、塩、プロドラッグまたは溶媒和物に関する。
【0038】
特定の実施形態では、前記式(I−1)の化合物は、本明細書にて式(I−1a)の「リモシジンB」および式(I−1b)の「CE−108B」として同定される化合物、それらの異性体、塩、プロドラッグまたは溶媒和物からなる群から選択される。
【化3】

【0039】
したがって、これら2種の新規のアミド化ポリエンは、天然化合物リモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)に対応するアミドであることから、リモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)と称されている。
【化4】

【0040】
これらの化合物の化学構造は、様々な技術(例えば、分光測定、NMR、耐性記録、溶血活性など)を用いてそれらの生物活性を有するものとして特徴づけられている。リモシジンおよびCE−108のマクロラクトン環内に存在する遊離カルボキシル基とアミド基との置換により、コレステロールを有する膜(動物細胞内に存在)に対してよりもエルゴステロールを有する膜(真菌ならびに寄生虫のトリパノソーマおよびリーシュマニアのような他の生物の親和性など)に対して高い親和性が得られるようである。この化学修飾は、これらのポリエンの真菌に対する選択毒性を高めることから、それらの臨床用途に関しては明らかな利点となる。事実、殺真菌剤活性試験(図2)および動物細胞(赤血球)に対する毒性試験(表2、実施例1)は、それらの生物活性における極めて有意な向上というよりも動物細胞に対する酷似した毒性値を示し、親テトラエンのリモシジンおよびCE−108の場合よりも真菌に対する選択毒性の向上が生じる。類似の特異性は、寄生虫のリーシュマニアおよびトリパノソーマなど、それらの膜内にエルゴステロールを有する他の生物に適用可能である。両方のアミド化テトラエンは、それらに対応する親化合物よりも可溶性を示すことも判明した。AB−400の場合も類似の試験が実施され(カネド L.M.(Canedo L.M.)ら、2000年、J.,Antibiot.(東京(Tokyo))53:623−626頁)(図3)、その溶解度の増加に加え、その非アミド化相同体(ピマリシン)に関してその薬理学的特性における改善が示されたことから、全身性感染の治療のための抗真菌剤/抗寄生虫剤としてそれを使用することも可能である。
【0041】
別の主題として、本発明は、式(III)の化合物、すなわち式(I)
【化5】

(式中、RはアルキルC〜Cである)
における本発明のポリエンのメチル化誘導体、またはその異性体、塩、プロドラッグまたは溶媒和物にも関する。
【0042】
特定の実施形態では、式(III)の該化合物は、本明細書にて式(IIIa)の「リモシジンC」および式(IIIb)の「CE−108」として同定された化合物からなる群から選択される。
【化6】

【0043】
この2種の新規メチル化ポリエンは、カルボキシル側鎖基がメチル基と置換される場合、天然化合物のリモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)に由来するメチル化ポリエンであることからリモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)と称されている。
【0044】
これらの化合物の化学構造は、様々な技術(例えば、分光測定、NMR、耐性記録、溶血活性など)を用いてそれらの生物活性を有するものとして特徴づけられている。アミド化ポリエンの場合と異なり、親化合物リモシジンおよびCE−108に対して抗真菌活性が増強しないにもかかわらず、実際には溶血期間内での平均毒性は化合物リモシジンおよびCE−108の活性よりも確かに低く、これは同様に、天然ポリエンに対して真菌膜に対する選択毒性が向上することを示唆している(実施例2)。
【0045】
新規のアミド化およびメチル化ポリエンの用途
式(I)の化合物、およびそれらの中の式(I−1)および(III)の化合物は、一般に殺生物活性および特にエルゴステロールを含有する細胞膜を有する生物に対する殺生物活性を有することから、殺生物剤として有用な可能性を持つものである。本明細書で用いられる「殺生物」は、成長を停止させるかまたは様々なタイプの生物を殺す化学物質である。
【0046】
同様に、「エルゴステロールを含有する細胞膜を有する生物」という表現は、エルゴステロールを含有する細胞膜を包含する任意の生物、例えば真菌、寄生虫などを含む。かかる生物の具体例として、特にフサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)(植物病原体)、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・クルゼイ(Candida cruzei)、アスペルギルス・ニガー、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(ヒト病原体)などの真菌とともに寄生虫のトリパノソーマ、リーシュマニアなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0047】
したがって、式(I)の該化合物、ならびにそれらの中の式(I−1)および(III)の化合物、特に化合物リモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)、リモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)は、エルゴステロールを含有する細胞膜を有する該生物に対する殺生物剤として有用な可能性を持つ。特定の実施形態では、該化合物は、抗寄生虫剤または抗真菌剤として対応する非アミド化ポリエンよりも有用である。「抗真菌剤」という用語は、殺真菌剤と静真菌剤の双方を含む。
【0048】
結果として、別の態様では、本発明は、式(I)の化合物、ならびにその中の式(I−1)および(III)の化合物を不活性媒体とともに含有する殺生物組成物に関する。特定の実施形態では、式(I)の該化合物は、式(I−1)ならびに好ましくはリモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)およびそれらの混合物の群から選択され、別の実施形態では、式(III)の該化合物は、式(III)ならびに好ましくはリモシジンC(IIIa)、CE−108C(IIIb)およびそれらの混合物の群から選択される。該殺生物組成物は、エルゴステロールを含有する細胞膜を有する生物に対して特に有用である。特定の実施形態では、該殺生物組成物は、場合により1つ以上の不活性媒体とともに、化合物リモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)、リモシジンC(IIIa)、CE−108C(IIIb)およびそれらの混合物の中から選択される化合物などの式(I)の化合物を含有する抗真菌組成物である。
【0049】
本明細書で用いられる「不活性」という用語は、該ビヒクルが全く有意な殺生物活性を有しないことを意味する。
【0050】
必要に応じて、該組成物は、他の天然殺生物、組み換えられた殺生物または合成殺生物をさらに含有することも可能であり、そうであれば式(I)の該化合物、例えば化合物のリモシジンB(I−1a)および/またはCE−108B(I−1b)、リモシジンC(IIIa)、CE−108C(IIIb)およびそれらの混合物の殺生物作用が増強されるか、または活性のスペクトルが高まる可能性がある。
【0051】
1.治療用途
式(I)の化合物、特に化合物リモシジンB、CE−108B、リモシジンCおよびCE−108Cの用途が見出される重要な分野は、ヒトおよび動物の健康における分野である。したがって特定の実施形態では、本発明は、場合により1つ以上の医薬的に許容できる賦形剤とともに式(I)の化合物、なかでも式(I−1)もしくは(III)の化合物またはこれらの混合物を含有する医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、式(I)の該化合物は、化合物のリモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)およびそれらの混合物から選択され、さらに式(III)の化合物は、リモシジンC(IIIa)、CE−108C(IIIb)およびそれらの混合物の中から選択される。
【0052】
本明細書で用いられる意味では、「医薬的に許容できる賦形剤」という表現は、投与剤形の調製の際に用いられる医薬品業界では既知であり、かつアジュバント、固体または液体、溶媒、界面活性剤などを含む物質または物質の組み合わせ物を示す。
【0053】
必要に応じて、該医薬組成物は、式(I)の該化合物、例えば、化合物のリモシジンBおよび/またはCE−108B、リモシジンC、CE−108Cおよびそれらの混合物の治療作用を増強するか、またはそれらの作用スペクトルを高める可能性がある1つ以上の治療薬をさらに有しうる。
【0054】
該医薬組成物は、エルゴステロールを含有する細胞膜を有するヒトまたは動物の病原体、例えばヒトまたは動物の病原体である寄生虫および真菌によって誘発される感染を予防および/または処置するために使用されうる。
【0055】
したがって、特定の実施形態では、該医薬組成物は、抗寄生虫組成物であり、かつエルゴステロールを含有する細胞膜を有するヒトまたは動物の病原体、例えばトリパノソーマ、リーシュマニアなどによって誘発される感染の予防および/または処置において使用されうる。必要に応じて、該抗寄生虫組成物は、式(I)の該化合物、例えば、リモシジンB、CE−108B、リモシジンC、CE−108Cの化合物の治療作用を増強する可能性があるかまたはそれらの作用スペクトルを高める1つ以上の抗寄生虫剤をさらに含有しうる。
【0056】
別の特定の実施形態では、該医薬組成物は、抗真菌組成物であり、かつ真菌(その細胞膜がエルゴステロールを有する)によって誘発される感染の予防および/または処置において使用されうる。該抗真菌組成物は、必要に応じて、式(I)の該化合物、例えば、リモシジンB、CE−108B、リモシジンC、CE−108Cの治療作用を増強する可能性があるかまたはそれらの作用スペクトルを高める1つ以上の抗真菌剤をさらに含有し得る。該抗真菌剤の具体例として、アンフォテリシンB、ナイスタチン、AB−400、アリルアミン(例えば、テルビナフィン、ナフチフィンなど)、アモロルフィン、トルナフテートなどのポリエン、クロトリマゾール、ミコナゾール、ケトコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾールなどのアゾール、ベンゾフラン、例えばグリセオフルビンなど、ピリミジン、例えばフルオシトシンなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0057】
式(I)の化合物、中でも式(I−1)および(III)の化合物は、治療有効量で換言すればその治療効果を発揮するのに適する量で医薬組成物中に存在する。特定の実施形態では、本発明により提供される医薬組成物は、化合物のリモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)、リモシジンC(IIIa)、CE−108C(IIIb)およびそれらの混合物の中から選択される化合物などの式(I)の化合物を0.01重量%〜99.99重量%含有し、かつ例えば、経口、非経口または局所といった選択される投与経路によって任意の投与に適切な剤形で存在しうる。薬剤の投与の異なる剤形およびそれらの調製方法に関するレビューが、例えばTratado de Farmacia Galenica、C.Fauli i Trillo、第1版、1993年、Luzan 5、S.A.de Edicionesにて見出されうる。
【0058】
したがって、本発明は、細胞膜がエルゴステロールを含有するヒトまたは動物の病原性真菌、例えばヒトまたは動物の寄生虫あるいはヒトまたは動物の病原性真菌によって誘発される感染の予防および/または処置を目的とした薬剤の調製における式(I)および/または(III)の化合物の使用にも関する。特定の実施形態では、式(I)および/または(III)の該化合物は、リモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)、リモシジンC(IIIa)、CE−108C(IIIb)およびそれらの混合物の中から選択される。
【0059】
同様に、別の態様では、本発明は、治療を必要としている動物またはヒトに本発明によって提供される医薬組成物の治療有効量を投与する段階を含む、エルゴステロールを含有する細胞膜を有する、ヒトまたは動物の病原体、例えばヒトまたは動物の病原体である寄生虫および真菌によって誘発される感染を予防および/または処置するための方法も提供する。
【0060】
2.農業用途
式(I)の化合物、中でも式(I−1)または(III)の化合物において見出される用途として重要な別の分野は農業分野である。これに関連して、本発明は、細胞膜がエルゴステロールを含有する様々な真菌によって誘発される、アグロアリメンタリー生成物の貯蔵条件下での真菌感染(収穫後の感染)を予防または制御するための、場合により1つ以上の農業的に許容できる不活性媒体とともに、化合物のリモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)、リモシジンC(IIIa)、CE−108C(IIIb)およびそれらの混合物の中から選択される化合物などの式(I)および/または(III)の化合物を含有する、細胞膜がエルゴステロールを含有する植物病原性真菌(特にボトリティス・シネレア、フサリウム・オキシスポラム、リゾクトニア・ソラナ(Rhizoctonia solana)、リゾクトニア・メロニ(Rhizoctonia meloni)、ウスチラゴ・メイジス(Ustilago maydis)など)によって誘発される感染を制御するのに有用な抗真菌組成物を提供する。
【0061】
本明細書で用いられる「制御」という用語は、該真菌の除去または真菌によって誘発される損傷の低減をもたらしうる胞子の発芽および/または真菌の菌糸体の成長に関する阻害、低下もしくは停止を含む。
【0062】
本明細書で用いられる「農業的に許容できる不活性媒体」という表現は、目的化合物を媒体化するために用いられかつアジュバント、固体または液体、溶媒、界面活性剤などを含む、農業分野において既知の物質または物質の組み合わせを示す。
【0063】
特定の実施形態では、該抗真菌組成物は、式(I)または(III)の該化合物に加え、リモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)、リモシジンC(IIIa)、CE−108C(IIIb)およびそれらの混合物の中から選択される化合物、抗真菌活性を有する1つ以上の化合物、例えば真菌の細胞膜を変更する1つ以上の化合物、または上記化合物などのエルゴステロールの合成を阻害する1つ以上の化合物、または細胞壁の修飾もしくは分解に必要な酵素的活性を有する1つ以上の化合物、例えばセルロース分解性、マンナン分解性、キチン分解性またはタンパク質分解性を有する酵素などの真菌の細胞壁を修飾または分解可能な1つ以上の溶菌酵素(例えば、セルラーゼ、α−(1,3)−グルカナーゼ、β−(1,6)−グルカナーゼ、β−(1,3)−グルカナーゼ、マンナナーゼ、エンド−もしくはエキソ−キチナーゼ、キトサナーゼ、プロテアーゼ、α−もしくはβ−マノシダーゼなど)を含む。
【0064】
式(I)および/または式(III)の化合物は有効な抗真菌量、換言すれば植物病原性真菌によって誘発される感染を制御するのに適する量で抗真菌組成物中に存在するべきである。特定の実施形態では、本発明によって提供される有用な抗真菌組成物は、式(I)および/または(III)の該化合物を、例えば該化合物のリモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)、リモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)の0.01重量%〜100重量%を含有する。該組成物は、従来の方法によって調製可能であり、かつ液体または固体形態、例えば顆粒形態で存在しうる。さらに該組成物は、添加剤、例えばその保存性および安定性を延長させる保存剤および安定剤を含有しうる。
【0065】
該抗真菌組成物を、例えば植物内および/または果物内の植物病原性真菌によって誘発される感染を制御するために使用できる。したがって、本発明は、植物病原性真菌を制御するために、該組成物を該植物またはそれを取り巻く媒体に適用するステップを含む、植物内の植物病原性真菌、特に細胞膜がエルゴステロールを含有する植物病原性真菌によって誘発される感染を制御するための方法を提供する。特定の実施形態では、該方法は、植物病原性真菌によって誘発される真菌感染の予防および/または処置を目的として、該組成物を適量で植物の地上部に適用するステップを含む。
【0066】
本発明は、植物病原性真菌を制御するために、該組成物を該果物に適用することを含む、果物内の植物病原性真菌、特に細胞膜がエルゴステロールを含有する植物病原性真菌によって誘発される感染を制御するための方法も提供する。特定の実施形態では、該組成物の適量での果物への適用がその採取に先立って(収穫前)なされる一方、別の実施形態では、既に採取され回収された果物(収穫後)に対して組成物の適用がなされる。
【0067】
3.アグロアリメンタリーの用途
式(I)および/または(III)の化合物、および特にリモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)、リモシジンC(IIIa)、CE−108C(IIIb)は、アグロアリメンタリー分野にも適用される。これに関連して、本発明は、特にリポソーム懸濁液、水中懸濁液など、アグロアリメンタリーの観点から、場合により1つ以上の許容できる不活性媒体とともに、式(I)の化合物、例えば化合物リモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)、リモシジンC(IIIa)、CE−108C(IIIb)およびそれらの混合物の中から選択される化合物を含有する加工食品、例えばチーズなどを例とする乳製品などの加工食品の表面上で発生する可能性がありうる真菌を制御するのに有用な抗真菌組成物を提供する。
【0068】
「制御」という用語は、真菌によって誘発される損傷の顕著な低減をもたらしうる胞子の発芽および/または真菌の菌糸体の成長の阻害、低下もしくは停止を含み、このようにして、真菌の成長によって誘発される食品の腐敗が防止または処理されうる。
【0069】
「アグロアリメンタリーの観点から許容できる不活性媒体」という用語は、目的化合物を媒体化するために使用されかつアジュバント、固体または液体、溶媒、界面活性剤などを含む、アグロアリメンタリー分野にて既知の物質または物質の組み合わせを示す。
【0070】
特定の実施形態では、該抗真菌組成物は、式(I)の該化合物に加え、リモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)、リモシジンC(IIIa)、CE−108C(IIIb)およびそれらの混合物の中から選択される化合物、抗真菌活性を有する1つ以上の化合物、例えば真菌の細胞膜を変更する1つ以上の化合物、または上記化合物などのエルゴステロールの合成を阻害する1つ以上の化合物、または細胞壁の修飾もしくは分解にとって必要な酵素的活性を有する1つ以上の化合物、例えばセルロース分解性、マンナン分解性、キチン分解性またはタンパク質分解性を有する酵素(例えば、セルラーゼ、α−(1,3)−グルカナーゼ、β−(1,6)−グルカナーゼ、β−(1,3)−グルカナーゼ、マンナナーゼ、エンド−もしくはエキソ−キチナーゼ、キトサナーゼ、プロテアーゼ、α−もしくはβ−マノシダーゼなど)などの真菌の細胞壁を修飾または分解可能な1つ以上の溶菌酵素を含む。
【0071】
式(I)の化合物は、有効な抗真菌量、換言すれば加工食品上で成長する傾向がある真菌によって誘発される感染を制御するのに適する量で抗真菌組成物中に存在するべきである。特定の実施形態では、本発明によって提供される、加工食品上で発達する傾向がある真菌によって誘発される感染を制御するのに有用な該抗真菌組成物は、式(I)の該化合物、例えば該化合物のリモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)、リモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)の0.01重量%〜100重量%を含有する。該組成物は、従来の方法によって調製可能であり、かつ液体または固体形態、例えば顆粒形態で存在しうる。さらに該組成物は、添加剤、例えばその保存性および安定性を延長させる保存剤および安定剤を含有しうる。
【0072】
例えば、該抗真菌組成物を、加工食品、例えば加工食品の表面上で成長する傾向がある真菌を制御するために使用できる。したがって、本発明は、加工食品上で発達する傾向がある真菌を制御するための方法を提供するものであって、特に該抗真菌組成物を該加工食品またはそれを取りまく媒体に適用するステップを含む、加工食品上で成長する傾向がある真菌によって誘発される感染を制御する、特に細胞膜がエルゴステロールを含有する加工食品上で成長する傾向がある真菌によって誘発される感染を制御するための方法も提供する。特定の実施形態では、該方法は、真菌の成長により誘発される食品の腐敗の防止および/または処理を目的とした、該組成物を加工食品の表面上に適用するステップを含む。該抗真菌組成物は、加工食品の表面に外部から適用される。
【0073】
新規アミド化ポリエンを取得するための方法
式(I)の化合物およびそれらの中でも式(I−1)の化合物ならびにより詳細には化合物のリモシジンB(I−1a)および/またはCE−108B(I−1b)は、本明細書中でpSM743BおよびpSM784として同定されるプラスミドとともに、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108の形質転換により得られる、本明細書中でストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743Bおよびストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784として同定される組換え微生物(ペレス−ズニガ F.J.(Perez−Zuniga F.J.)ら(2004年)、J.Antibiot.(東京(Tokyo))57:197−204頁)、あるいは本明細書に添付の実施例1に記載されかつ表1中に含められるpSM743Bとして同定されるプラスミドとともに、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/PM1−500の形質転換によって得られる、本明細書中でストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−500/743Bとして同定される組換え微生物(セコ E.M.(Seco E.M.)ら、2004年、Chem.Biol.11:357−366頁)の発酵培養物中に存在する。該化合物は、それらの発酵培養物から直接的に取得され、かつ比較的単純な従来の方法を用い、例えばイオン交換カラムおよび/または疎水性相互作用または逆相カラムの使用によって容易に精製されうる。
【0074】
プラスミドpSM743B(表1、実施例1)(図1A)は、プラスミドpIJ922に由来し、かつ遺伝子rimAおよびエリスロマイシン耐性遺伝子(ermE)を含む。プラスミドpSM784(表1、実施例1)(図1B)は、プラスミドpIJ941に由来し、かつエリスロマイシン耐性遺伝子(ermE)を有する。
【0075】
該プラスミドpIJ922およびpIJ941(リディエート D.J.(Lydiate D.J.)ら、1985年、Gene 35:223−235頁)は、レプリコンSCP2由来のベクター、すなわちストレプトマイセス・コエリコロル(Streptomyces coelicolor)に由来する少数の複製物を有するプラスミドである。
【0076】
したがって、別の態様では、本発明は、式(I−1)の化合物を生成するための方法であって、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743B、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−500/743B、およびそれらの組み合わせの中から選択される微生物を式(I)の化合物の生成を可能にする条件下で培養し、かつ必要に応じてそれら化合物を単離および精製するステップを含む、方法に関する。特定の実施形態では、式(I)の化合物は、リモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)およびそれらの混合物の中から選択される。
【0077】
上述したように、ポリエン中でのアミド基の形成は、アミドトランスフェラーゼによる「装飾」活性に起因する。アミド化ポリエンの産生株の無細胞抽出液および基質としてリモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)を用いるインビトロでのアミド化試験により、アミド基の形成が実はATP/Mg++依存性のアミドトランスフェラーゼ活性に起因し、かつグルタミンをアミド基の供与体として使用可能であると結論づけることができた(実施例2、項目Bを参照)。ストレプトマイセス属RGU5.3の無細胞抽出液を用いて実施される同じ試験により、AB−400(IVb)すなわちピマリシン(IVa)のアミドがストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108の場合と酷似するアミドトランスフェラーゼ活性によって生じ、それがATP/Mg++依存性も示す反応にてピマリシンの遊離カルボキシル基をアミド基に変換するために該遊離カルボキシル基に作用することが確認できた。
【0078】
さらに、遺伝子組換え体のストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108の無細胞抽出液中に存在するアミドトランスフェラーゼ活性は、天然基質のリモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)をそれらの対応するアミドのリモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)に変更可能であるだけでなく、ピマリシン(IVa)などの異種基質も認識可能である、基質に対する緩やかな特異性を示すと結論づけることもさらに可能であった。これはストレプトマイセス属RGU5.3のアミドトランスフェラーゼ活性において生じるものではなく、それは試験条件下で基質としてピマリシン(IVa)を認識できるにすぎなかった。
【0079】
遊離カルボキシル基は、アンフォテリシンB、ナイスタチン、ピマリシン(IVa)、カンジシジンなどの大部分の典型的なポリエン内でかなり良好に保存される。これらのカルボキシル基とアミド基との置換により、おそらくは水への溶解度の増加、抗真菌活性の向上、および溶血活性の低下などの改善された薬理学的特性を有するアミド化ポリエンを生じるであろう。つまり該化合物は、真菌に対する選択毒性の向上を示す。
【0080】
したがって、本態様では、本発明は、酵素的方法、すなわち、
a)精製または未精製の、遊離カルボキシル化基を有するポリエンからなる基質を有する混合物またはそれらの数種の混合物、およびアミド化ポリエンの1つまたは複数の産生株に由来するタンパク質抽出物の調整、
b)ATP/Mg++依存性でかつグルタミンをアミド基の供与体として使用可能な条件下でa)の混合物の反応、および
c)アミド化ポリエンの精製
といった段階による、アミド化ポリエンの産生株の無細胞抽出液を用いてマクロラクトン環内に遊離カルボキシル化基を有するポリエンからアミド化ポリエンを取得するための本発明の酵素的方法を提供する。
【0081】
本発明の特定の目的は、得られるべきアミド化ポリエンがCE−108B(I−1b)、リモシジンB(I−1a)またはこれらの混合物であり、a)の基質ポリエンが精製または未精製のCE−108(IIb)、リモシジン(IIa)またはこれらの混合物であり、かつa)の抽出物がストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784およびストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743Bといった株から得られるという本発明の酵素的方法からなる。
【0082】
本発明の別の特定の目的は、得られるべきアミド化ポリエンがAB−400(IVb)であり、a)の基質ポリエンが精製または未精製のピマリシン(IVa)であり、かつa)の抽出物がストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784およびストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743Bといった株から得られるという本発明の酵素的方法からなる。
【0083】
本発明の別の特定の目的は、得られるべきアミド化ポリエンがAB−400(IVb)であり、a)の基質ポリエンが精製または未精製のピマリシン(IVa)であり、かつa)の抽出物がストレプトマイセス属RGU5.3株から得られるという本発明の酵素的方法からなる。
【0084】
別の態様では、本発明は、「インビトロ」でカルボキシル化ポリエンを、本発明の酵素的方法を開始するのに必要なそれに対応するアミドに変換可能な、アミドトランスフェラーゼ活性の担体であるアミド化ポリエンの産生株の無細胞抽出液、に関する。
【0085】
無細胞抽出液が、懸濁液中もしくは溶液中に大部分の細胞成分を含有する精製生成物とするために、様々な機械的方法(慣例的にタンパク質処理の分野にて適用される)による細胞の均一化、その後の濾過または分画遠心による分画により得られる抽出物であると理解されている。
【0086】

【0087】
あるいは、本発明の酵素的方法を、固体支持体上に固定化した無細胞酵素系(本発明の無細胞抽出液)に関する従来の方法を用いて実施してもよく、この分野における当業者に既知の固定化系の分野の技術に従うことで、対応する移動相との反応成分の流れが生じる。
【0088】
新規メチル化ポリエンを取得するための方法
式(III)の化合物、特に化合物リモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)は、組換えファージPM1−768との相同組換えによる遺伝子rimGの破壊(表1、実施例2を参照)および表1、実施例1に含まれるように株ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743BからのコンジュゲーションによるプラスミドpSM743Bの転移によって得られるストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743Bとして本明細書中で同定される組換え微生物の発酵培養物中に存在する。遺伝子rimGの破壊をもたらすための断片と極性効果を回避するための完全遺伝子rimA内に含まれる断片の双方は、デオキシリボ核酸(DNA)の増幅に関する従来の技術を用いて当業者によって容易に取得されうる。対応する増幅のために、ドイチェ・サムルング・フォン・ミクロオーガニズメン・ウント・ツェルクルトゥーレン(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)(DSMS)、ブラウンシュヴァイク(Braunschweig)、ドイツに寄託された株(寄託番号DSM17187)を使用してもよい。従来の技術(形質転換、形質移入、コンジュゲーションなど)を用い、対応するベクターを上記の株DSM17187に導入してもよい。
【0089】
本発明では、組換えファージPM1−768はファージPM1から得られたものであり、下流に位置する遺伝子に対する極性効果を回避するために、ここで断片が遺伝子rimG内部にクローニングされ、かつプロモーターermEが導入された[遺伝子発現を目的としたストレプトマイセスの処理において広範に用いられるプロモーター:キーザー(Kieser)ら、2000年、Practical Streptomyces genetics、ザ・ジョン・イネス・ファウンデーション(The John Innes Foundation)、ノーウィッチ(Norwich)、英国]。一方、最終構築体に至るまでの中間体クローンについては実施例2の表1に記載されており、上記のようにストレプトマイセスを扱う当業者から容易に入手できる。
【0090】
該化合物リモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)は、微生物ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743Bの発酵培養物から直接的に取得され、かつ比較的単純な従来の方法、例えば疎水性相互作用または逆相カラムの使用によって容易に精製されうる。
【0091】
したがって、別の態様では、本発明は、
−式(III)の化合物の生成が可能な条件下での微生物ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743Bを培養すること、
−発酵培養物の取得すること、および必要に応じて
−式(III)の化合物の単離および精製すること、
を含む、式(III)の化合物を生成するための方法に関する。
【0092】
特定の実施形態では、該方法はリモシジンC(IIIa)、CE−108C(IIIb)およびそれらの混合物の中から選択される式(III)の化合物を取得するために実施される。
【0093】
その組換え微生物用培養培地は、一般に、水性培地に溶解された、1つ以上の炭素源、1つ以上の窒素源、微生物によって吸収可能な1つ以上の無機塩、および必要であればビタミンおよびアミノ酸などの1つ以上の栄養素からなる。該培地は、適切な条件(通気/攪拌、温度および発酵時間、段階など)と同様、当業者に既知である。これらの組換え微生物を成長させるための培地および条件の具体例が本発明の実施例2(「実験方法」の項)に記載されるがそれらに限定されない。
【0094】
該組換え微生物のストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743Bまたはその機能的等価物の発酵培養物は、式(III)の化合物、例えばリモシジンC(IIIa)、CE−108C(IIIb)およびそれらの混合物の中から選択される化合物を含有し、それをそのまま使用するか、または目的化合物を分離するために引き続き処理し、従来の方法によって単離してもよい。例として、特定の実施形態では、上清と細胞抽出物を分離するために細胞培養物を遠心分離し、かつ単離するために上清を使用し、必要に応じて、アミド化されたまたはアミド化されていない、目的のポリエンを精製する。当業者は、それら化合物の物理化学的特性付けの研究により、それらを上清から精製するための方法を設計できる。
【0095】
組換え微生物および用途
1.アミド化ポリエンの取得および用途に関する組換え微生物
組換え微生物のストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743B、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784およびストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−500/743Bは本発明の一部を形成する。したがって、別の態様では、本発明は、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743B、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784およびストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−500/743Bの中から選択される微生物に関連し、かつストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743B、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−500/743Bおよびそれらの組み合わせの中から選択される微生物の培養物を提供する。
【0096】
同様に、本発明は、式(I)の化合物、好ましくは式(I−1)の化合物を得る際にストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743B、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−500/743Bおよびそれらの組み合わせの中から選択される微生物、またはストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743B、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−500/743Bおよびそれらの組み合わせの中から選択される微生物の該培養物の使用に関する。特定の実施形態では、式(I−1)の該化合物は、リモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)およびそれらの混合物の中から選択される。
【0097】
さらに、発明者らによって実施された試験により、該組換え微生物のストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743B、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784およびストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−500/743Bの発酵培養物が、アミド化ポリエンのリモシジンB(I−1a)および/またはCE−108B(I−1b)に加え、遊離カルボキシル基を有する非アミド化ポリエンのリモシジン(IIa)および/またはCE−108(IIb)も含有することが示された。
【0098】
したがって、別の態様では、本発明は、式(I)の化合物、リモシジン(IIa)、CE−108(IIb)およびそれらの混合物の中から選択される化合物を生成するための方法であって、式(I)の化合物、リモシジン(IIa)、CE−108(IIb)およびそれらの混合物の中から選択される化合物の生成を可能にする条件下で、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743B、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−500/743Bおよびそれらの組み合わせの中から選択される微生物を培養し、かつ必要に応じて該化合物を単離および精製することからなる方法に関する。特定の実施形態では、式(I)の化合物は、リモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)およびそれらの混合物の中から選択される。
【0099】
ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743B、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−500/743Bおよびそれらの組み合わせの中から選択される微生物の発酵培養物は、式(I)の化合物、リモシジン(IIa)、CE−108(IIb)およびそれらの混合物の中から選択される化合物からなるもので、殺生物剤として有用な可能性を持つ可能性があり、本発明のさらなる態様を構成する。特定の実施形態では、式(I)の化合物は、リモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)およびそれらの混合物の中から選択される。
【0100】
該組換え微生物の培地は、一般に、水性培地に溶解された、1つ以上の炭素源、1つ以上の窒素源、微生物によって吸収可能な1つ以上の無機塩、および必要であればビタミンおよびアミノ酸などの1つ以上の栄養素からなる。該培地は、適切な条件(通気/攪拌、温度および発酵時間、株など)と同様、当業者に既知である。これらの組換え微生物を成長させるための培地および条件の具体例が実施例(「実験方法」の項)に記載されるがそれらに限定されない。ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743B、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−500/743Bおよびそれらの組み合わせの中から選択される該組換え微生物の発酵培養物は、式(I)の化合物、例えばリモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)、リモシジン(IIa)、CE−108(IIb)およびそれらの混合物の中から選択される化合物を含有し、かつそのまま使用されうるか、またはそれに続いてそれらは目的化合物を分離するために処理され、従来の方法により単離されうる。例として、特定の実施形態では、上清と細胞抽出物を分離するために細胞培養物を遠心分離し、かつ単離するために上清を使用して、必要に応じて、アミド化されたまたはアミド化されていない、目的のポリエンを精製する。当業者は、それら化合物の物理化学的特性の研究により、それらを上清から精製するための方法を設計できる。
【0101】
2.メチル化ポリエンの取得および用途に関与する組換え微生物
微生物のストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743Bまたは任意の他の機能的等価物は、本発明の一部を形成する。したがって、別の態様では、本発明は、式(III)の化合物を取得しかつそれら微生物の培養物を提供するための方法を実施するのに有用な微生物のストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743Bまたは機能的等価物に関する。本発明の特定の実施形態は、メチル化ポリエンのリモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)の産生株である微生物ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743B(寄託番号:DSM17482)からなる。
【0102】
本発明で用いられる「機能的等価物」という用語は、異なる既存の選択肢を用いてその分野の当業者によって開発可能であり、かつ言及されている本来の構成因子と同一または相同な特性を有する因子(それは場合に応じ、微生物、ベクター、遺伝子構築体、または遺伝子断片、遺伝子の破壊や細胞もしくは微生物の遺伝子形質転換に関する方法)を示す。
【0103】
したがって、これに関連しかつ例として、「機能的等価物」は、不活化挿入(inactivating insertion)ではなくまたは任意の他の技術により、遺伝子rimGの染色体欠失によって取得されうる組換え微生物であると理解されており、該欠失は、熱感受性複製物中に起点を有する非複製プラスミドまたは複製可能なプラスミドという従来のベクターの使用により容易に実施可能である。これらの欠失または挿入は、その分野である程度の経験を有する技術者により実施可能である。
【0104】
同様に、本発明は、式(III)の化合物を取得するための微生物のストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743Bまたはその機能的等価物の使用に関する。特定の実施形態では、式(III)の化合物は、リモシジンC(IIIa)、CE−108C(IIIb)およびそれらの混合物の中から選択される。
【0105】
特定の用途においては、このように本発明の方法を用いて得られる発酵培養物を特定の殺生物溶液の調製のために直接使用してもよく、この場合には本発明の化合物を精製する必要性は全くない。したがって、式(III)の化合物を含有する、上記の微生物のストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743Bまたはその機能的等価物の発酵培養物は、潜在的に殺生物剤として有用である可能性があり、本発明のさらなる態様を構成する。
【0106】
ベクターおよび用途
1.アミド化ポリエンの誘導に関与するベクターおよび用途
ベクターpIJ941(ベクター上にエリスロマイシン耐性遺伝子がクローニングされている)由来のプラスミドpSM784がストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108に導入される場合、それは新規アミド化ポリエンのリモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)ならびにリモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)の産生株である株(ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784)を生成する。
【0107】
ベクターSCP2由来のプラスミドpSM743Bさらには遺伝子ermEおよび内因性または外因性プロモーター、例えばストレプトマイセス・ハルステディ(Streptomyces halstedii)JM8のキシラナーゼの遺伝子のプロモーターxysA(xysAp)(ルイス−アリバス A.(Ruiz−Arribas A.)ら、1997年、Appl.Environ.Microbiol、63:2983:2988頁)などの下で発現される(遺伝子rimAを有する)クラスタrimの断片の、担体が、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108またはストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−500に導入された場合、アミド化ポリエン[リモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)]と非アミド化ポリエン[リモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)]の双方の生成全体において増加が観察される。この事実から、該ポリエンの他の生成生物内でのカルボキシル基および/またはアミド化ポリエンを有するポリエンの生成全体を増加させるために利用可能であろう。
【0108】
したがって、別の態様では、本発明は、
a)SCP2の複製起点およびエリスロマイシン耐性遺伝子ermEを含有する該ベクターSCP2由来のベクターまたはその断片、
b)(i)該ベクターSCP2の複製起点、(ii)該遺伝子ermE、および(iii)該ベクターSCP2の断片を有するベクター、
c)(i)SCP2の複製起点と異なる複製起点、(ii)該遺伝子ermE、および(iii)該ベクターSCP2の断片を有するベクター、
d)複製起点が欠けており、かつ遺伝子ermEおよびベクターSCP2の断片を有するベクター、
e)(i)複製起点、(ii)遺伝子ermE、および(iii)ポリエンの該生合成クラスタ全体または該クラスタの断片を有する、該ベクターSCP2由来のベクター、
f)(i)該複製ベクターSCP2の複製起点と等しいかまたは異なる複製起点、(ii)該遺伝子ermE、(iii)該ベクターSCP2の断片、および(iv)ポリエンの該生合成クラスタ全体または該クラスタの断片を有する、該ベクターSCP2由来のベクター、
g)複製起点が欠けており、かつ該遺伝子ermE、およびポリエンの該生合成クラスタ全体または該クラスタの断片を有するベクター、ならびに
h)複製起点が欠けており、かつ(i)該遺伝子ermE、(ii)該ベクターSCP2の断片、および(iii)ポリエンの該生合成クラスタ全体または該クラスタの断片を有するベクター
の中から選択されるベクターに関する。
【0109】
実際には、ベクターSCP2由来の任意のベクター、例えばpIJ922、pIJ941などを用いてもよい。遺伝子ermEは既知の遺伝子である(ウチヤマ(Uchiyama)ら、(1985年) Gene 38:103−110頁)。本明細書で用いられる「ベクターSCP2の断片」という表現は、アミド化ポリエンの形成を誘発するのに十分なSCP2の1つ以上の断片からなる核酸を示す。発明者らによって行われた試験では、遺伝子ermEとともにベクターSCP2の1つ以上の断片からなる核酸は、アミド化ポリエンが組換え微生物内で生成可能である程度必要でありかつ十分であることが示された。
【0110】
特定の実施形態では、本発明のベクターは、SCP2の複製起点を有するSCP2由来の複製ベクターであり、かつ遺伝子ermE、例えばpSM784の担体でもある。該プラスミドを、従来の方法(例えば、形質転換、エレクトロポレーション、コンジュゲーションなど)により、遊離カルボキシル基を有するポリエンマクロライド(例えば、アンフォテリシンB、ナイスタチン、ピマリシン、カンジシジンなど)の生成微生物に、対応するアミド化ポリエンの生成を目的として導入してもよい。かかる微生物の具体例として、ストレプトマイセス・ノウルセイ(S.noursei)、ストレプトマイセス・アルビダス(S.albidus)、ストレプトマイセス・リモサス(S.rimosus)、ストレプトマイセス・ノドサス(S.nodosus)、ストレプトマイセス・ナタレンシス(S.natalensis)、ストレプトマイセス・チャッタノオゲンシス(S.chattanoogensis)、ストレプトマイセス・グリセウス(S.griseus)などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0111】
別の特定の実施形態では、本発明のベクターは、SCP2の複製起点、遺伝子ermE、およびベクターSCP2の断片を有する複製ベクターである。
【0112】
別の特定の実施形態では、本発明のベクターは、SCP2の複製起点と異なる複製起点、遺伝子ermE、およびベクターSCP2の断片を有する複製ベクターである。
【0113】
別の特定の実施形態では、本発明のベクターは、統合ベクターまたは複製起点が欠けている非複製ベクターであり、かつ遺伝子ermEおよびベクターSCP2の断片を有する。
【0114】
別の特定の実施形態では、本発明のベクターは、SCP2の複製起点に等しいかまたはそれと異なる複製起点、遺伝子ermE、およびポリエンの生合成クラスタ全体または該クラスタの断片を有する複製ベクターである。
【0115】
別の特定の実施形態では、本発明のベクターは、SCP2の複製起点、遺伝子ermE、ベクターSCP2の断片、およびポリエンの生合成クラスタ全体または該クラスタの断片を有する複製ベクターである。
【0116】
別の特定の実施形態では、本発明のベクターは、複製起点が欠けており、かつ遺伝子ermEおよびポリエンの生合成クラスタ全体または該クラスタの断片を有する統合ベクターまたは非複製ベクターである。
【0117】
別の特定の実施形態では、本発明のベクターは、統合ベクターまたは複製起点が欠けている非複製ベクターであり、かつ遺伝子ermE、ベクターSCP2の断片およびポリエンの生合成クラスタ全体または該クラスタの断片を有する。
【0118】
遊離カルボキシル基を有するポリエンの生成微生物を形質転換するために、ポリエンの生合成クラスタ全体またはその断片を有する本発明のベクターが用いられる場合、アミド化ポリエンの生成および/またはアミド化ポリエンと非アミド化ポリエンの双方の生成全体における増加が観察され、それ故、該ベクターを、ポリエンの生成生物内での遊離カルボキシル基を有するポリエンおよび/またはアミド化ポリエンの生成全体を増加させるのに用いることができる。
【0119】
実際には、任意の生合成クラスタまたはその断片は、本発明のベクター内に存在しうるが、それに反して特定の実施形態では、該ベクターはリモシジンの生合成クラスタrim全体を含みうる(セコ E.M.(Seco E.M.)ら、2004年、Chem.Biol.11:357−366頁)。クラスタrimの任意の断片が使用可能であるが、特定の実施形態では、クラスタrimの該断片はクラスタrimの遺伝子rimAを含む。
【0120】
ポリエンの該生合成クラスタまたはその断片は、場合によりプロモーターの制御下で見られうる(換言すれば、該プロモーターが制御する遺伝子の発現をそれが指示するような方法で該プロモーターに作動可能に連結されうる)。該プロモーターは内因性または外因性でありうる。実際には、後にベクターで形質転換するべき微生物内で機能的な任意の外因性プロモーターを使用できるが、特定の実施形態では、該外因性プロモーターは、ストレプトマイセス属、例えばストレプトマイセス・ハルステディJM8のキシラナーゼの遺伝子のプロモーターxysA(zysAp)などである(ルイス−アリバス A.(Ruiz−Arribas A.)ら、1997年、Appl.Environ.Microbiol、63:2983−2988頁)内で機能的なプロモーターである。プラスミドpSM743Bは、本発明のベクターのこのタイプの具体例である。
【0121】
本発明のベクターを当業者に既知の従来の方法によって取得してもよい(サンブルック(Sambrook)ら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク州、1989年)。
【0122】
本発明のベクターを、遊離カルボキシル基を有するベクターの生成微生物内でアミド化または非アミド化ポリエンを生成するために使用してもよい。同様に、一方で(i)クラスタrimまたはその断片などのポリエンの生合成クラスタを含むベクター、他方で(ii)遺伝子ermEを含むSCP2由来のベクター、またはSCP2の複製起点とは異なる複製起点、遺伝子ermE、およびベクターSCP2の断片を含むベクターを有するベクターの組み合わせ物をポリエンマクロライドの生成微生物に、該微生物内でアミド化または非アミド化ポリエンを生成するために導入してもよい。
【0123】
したがって、別の態様では、本発明は、従来の方法により、遊離カルボキシル基を有するポリエンマクロライド(例えば、アンフォテリシンB、ナイスタチン、リモシジン、ピマリシン、カンジシジンなど)への導入のための本発明のベクターの使用に関し、対応する結果として得られた組換え微生物から対応するアミド化ポリエンの生成を目的とした使用に関する。本発明のベクターの宿主としての使用に適する微生物は、アンフォテリシンBの天然産生株であるストレプトマイセス・ノドサス(Streptomyces nodosus)、リモシジンの産生株であるストレプトマイセス・リモサス(Streptomyces rimosus)、カンジシジンの産生株であるストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)、ピマリシンの産生株であるストレプトマイセス・ナタレンシス(Streptomyces natalensis)、ナイスタチンの産生株であるストレプトマイセス・ノウルセイ(Streptomyces noursei)など、遊離カルボキシル基を提示するポリエンの生成微生物であると判る。
【0124】
別の態様では、本発明は、本発明のベクターを、遊離カルボキシル基を有するポリエンマクロライドの生成微生物に導入するステップからなるアミド基を有するポリエンマクロライドの組換え生成微生物を取得するための方法に関する。あるいは、アミド基を有するポリエンマクロライドの該組換え生成微生物を、遊離カルボキシル基を有するポリエンマクロライドの生成微生物に、一方で(i)クラスタrimまたはその断片などのポリエンの生合成クラスタを含むベクター、および他方で(ii)遺伝子ermEを含むSCP2由来のベクターまたはSCP2の複製起点と異なる複製起点、遺伝子ermE、およびベクターSCP2の断片を含むベクターの組み合わせ物を導入することによって取得するかまたは、遊離カルボキシル基を有するポリエンマクロライドの生成微生物に、該微生物内でアミド化または非アミド化ポリエンを生成するために導入してもよい。該本発明のベクターまたはベクターの組み合わせの該微生物への導入を当業者に既知の従来の技術、例えば形質転換、エレクトロポレーション、コンジュゲーションなどにより実施してもよい。遊離カルボキシル基を有するポリエンマクロライドの生成微生物の具体例として、ストレプトマイセス、例えば、ストレプトマイセス・ノウルセイ、ストレプトマイセス・リモサス、ストレプトマイセス・ノドサス、ストレプトマイセス・ナタレンシス、ストレプトマイセス・グリセウスなどの様々な種が挙げられるがこれらに限定されない。
【0125】
上記のように取得した組換え微生物すなわち下記の本発明の組換え微生物は、本発明の一部を形成し、そのさらなる態様を構成する。
【0126】
別の態様では、本発明は、ポリエンマクロライドを生成するための方法であって、本発明の組換え微生物を該ポリエンマクロライドの生成を可能にする条件下で培養し、かつ必要に応じてその化合物を単離および精製するステップを含む方法に関する。特定の実施形態では、該ポリエンマクロライドは、遊離カルボキシル基を有するポリエンマクロライド、アミド基を有するポリエンマクロライドおよびそれらの混合物の中から選択される。アミド基を有する該ポリエンマクロライドの中で、化合物AB−400(IVb)および式(I−1)の化合物、例えば化合物のリモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)ならびにこれらの混合物を見出される。上記の方法によって取得可能なポリエンマクロライドの具体例として、式(I)の化合物、例えば、ピマリシン(IVa)、AB−400(IVb)、リモシジン(IIa)、リモシジンB(I−1a)、CE−108(IIb)、CE−108B(I−1b)およびそれらの混合物の中から選択される化合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0127】
該組換え微生物は、それらの微生物の発酵を意図して任意の適切な培地で培養され、培地は一般に、水性培地中に溶解される、1つ以上の炭素源、1つ以上の窒素源、微生物によって取込み可能な1つ以上の無機塩、および必要に応じてビタミンおよびアミノ酸などの1つ以上の栄養素を有し、として微生物の成長およびポリエンマクロライドの生成に適する条件(通気/攪拌、温度および発酵時間、段階など)が適用される。得られるポリエンマクロライドは培地中に有利に分泌され、そこからポリエンマクロライドを、場合によっては細胞抽出物の回収前に、従来の技術、例えばクロマトグラフィー法を使用して回収できる。目的のポリエンマクロライドを、その物理化学的特性に基づいて分離でき、発酵プロセス後の培養培地からそれを精製するための方法を設計できる。
【0128】
2.メチル化ポリエンの誘導に関与するベクターおよび用途
本発明は、アクチノファージPM1(マルパーティダ(Malpartida)およびホップウッド(Hopwood)(1986年)Mol.Gen.Genet.205:66−73頁)由来の組換えファージPM1−768Bの使用にも関し、そこで遺伝子rimG内部のDNA断片がプロモーターermEとともにクローニングされており、遺伝子内部の断片の前にあるプロモーターは、挿入点の次に位置する遺伝子に対して起こり得る極性効果を回避する。あるいは、ストレプトマイセスにおいて機能的な別のプロモーター活性を有するDNAの断片であれば使用し、それをリモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)の産生株の染色体DNAの増幅によって得られる遺伝子rimG内部の任意の断片の前にクローニング可能である;得られる構築体は、その分野で使用されかつその熟練した任意のオペレーターが利用しやすい方法に従い、ベクターPM1またはストレプトマイセス内で複製されない別のベクター(または、それは複製型であるが、熱感受性複製起点のプラスミドなど、ベクターが複製しない場合の培養条件に従う)に関係なくクローニングされうる。組換え株(不活化された挿入がリモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)におけるシンテターゼのポリケチドのモジュール7によって導入されるメチル側鎖基の酸化を完了させるという組換え体の能力に作用するにすぎないことから、組換え株(ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/PM1−768)(または上記の方法によって生成可能な別の機能的等価物)は、リモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)における生合成経路の中間化合物の産生株であるに違いない(セコ(Seco)ら、2004年、Chem.Biol、先に引用)。にもかかわらず、これらの初期条件下でかつ想定されない方法で、生じる遺伝子rimGの破壊により、ポリエンを生成できない組換え体が生成された。これは、破壊に用いたプロモーターがおそらくは挿入点の下流に位置する遺伝子rimAでの極性効果を阻止できないという意味で解される。この理由から、遺伝子rimAでの極性効果の不在を保証するため、破壊物質(disruptant)は、染色体内での遺伝子rimAの破壊を補完できるプラスミドpSM743Bまたは他の機能的に等価なベクターで補完される必要がある。したがって、遺伝子組換え体が得られるならば、それは遺伝子rimGの破壊の下流に位置する染色体に加え、プラスミドpSM743B(または他の機能的に等価なベクター)内に遺伝子rimAの追加の複製物を有する。挿入の結果として遺伝子rimAの染色体の複製物に対する任意の極性効果が、pSM743B(または他の機能的に等価なベクター)内にクローニングされた染色体外の複製物によって補完され、それにより遺伝子rimG内で排他的な作用(マクロラクトン環の側鎖メチル基の酸化)を受ける組換え体が生じる。プラスミドpSM743B(または上記のような他の機能的に等価なベクター)は、ストレプトマイセスの処理において常に利用可能な任意の他の技術(プロトプラストの形質転換、感染、コンジュゲーションなど)を用いて転移されうる。生成された株(上記のようなストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743Bまたは他の機能的等価物)の発酵培養物のHPLC分析により、構築体が確認された上で、親テトラエンのリモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)ではなくリモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)の生成が確認された。場合により、遺伝子rimGの変異は、ストレプトマイセスの処理において用いた従来の技術に従い、遺伝子rimG内部の断片の欠失によって行われうる。
【0129】
したがって、本発明は、得られた株が遺伝子rimGの発現において排他的な作用を受け、かつ、下記段階
a)ポリエンを生成できない、該遺伝子の破壊または欠失による微生物ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108またはその機能的等価物の遺伝子rimGにおける変異体の取得、
b)その後の、該変異体内の染色体内での遺伝子rimAの破壊を補完できるベクター、好ましくはプラスミドによる形質転換
を含む、メチル化ポリエンにおける本発明の産生株であるストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743Bまたはその等価物を取得するための方法に関する。
【0130】
より詳細には、本発明は、ステップa)の変異体が株ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108の遺伝子rimGの破壊または欠失をもたらすために機能的等価物である組換えファージPM1−768または任意の他の不活性化系の使用により得られ、かつステップb)が、組換え体の染色体内で遺伝子rimAの起こり得る極性効果を補うためにプラスミドpSM743B(上記のような機能的に等価なベクター)を用いて実施されるという本発明の微生物を取得するための方法に関する。
【0131】
本発明は、上記の特定の実施形態に加え、別の態様では、任意の従来の方法により、かつ任意の適切なベクターを用いた、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108の染色体内での遺伝子rimGの中断に関する。該中断は、極性効果を回避するための強力なプロモーター、例を挙げるならばプロモーターermE(キーザー(Kieser)ら(2000年) Practical Streptomyces Genetics、ザ・ジョン・イネス・ファウンデーション(The John Innes Foundation)、ノーウィッチ(Norwich)、英国)を用いて実施可能であり、それは破壊株内でのメチル化ポリエンのリモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)の直接的な生成に関与するかまたはツールとして任意のベクターを用いる外因性プロモーターの制御下での遺伝子rimAの発現により該遺伝子rimA上の極性効果を補完に関与する。
【0132】
さらに、別の態様では、本発明は、それらのメチル化誘導体を取得することを目的とした、この同じ酸化(対応するポリエンのメチル基からのカルボキシル基の形成)に関与するチトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードする遺伝子のポリエンの他の産生株内での破壊に関する。チトクロムP450モノオキシゲナーゼがこの酸化に関与しかつ上記のポリエンの生合成クラスタ内にコードされることが記載されている(アパリシオ(Aparicio)ら、2003年、Appl Microbiol Biotechnol 61:179−188頁)。この酸化に関与する一部の遺伝子について記載がされており、かつ遺伝子pimG(アパリシオ(Aparicio)ら、2000年、Chem.Biol.7:895−905頁)、amphN(キャフリー(Caffrey)ら、2001年、Chem.Biol.8:713−723頁)、nysN(ブラウタセット(Brautaset)ら、2000年、Chem.Biol.7:395−403頁)およびcanC(キャムペロ(Campelo)ら、2000年、Microbiology 148:51−59頁)を、それぞれピマリシン、アンフォテリシン、ナイスタチンおよびカンジシジンの生合成について挙げられる。これら化合物のメチル化誘導体であれば、本発明のリモシジンCおよびCE−108Cに記載のメチル化化合物の改善された機能、換言すれば毒性の低下および真菌および寄生虫に対する特異性の向上を示すことになる。
【0133】
したがって、別の態様では、本発明は、メチル化ポリエンマクロライドの生成微生物を取得するための方法に関し、その目的のために任意の従来の方法(形質転換、コンジュゲーション、エレクトロポレーション、感染など)を用い、遊離カルボキシル基を有するポリエンマクロライドの生成微生物内で、遊離カルボキシル基の形成に関与するチトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードする遺伝子、すなわち他の株内の本発明のrimGにおいて記載した遺伝子と相同性を示す遺伝子を中断するステップからなる、方法に関する。
【0134】
さらに、別の態様では、本発明は、例としてかつ本発明の範囲を限定することなく、特にアンフォテリシンB、ナイスタチン、リモシジン、ピマリシンおよびカンジシジンからなる群に属し、対応するメチル化ポリエンの生成を目的とする、遊離カルボキシル基を有するポリエンマクロライドの生成微生物内での遊離カルボキシル基の形成に関与するチトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードする遺伝子の破壊を行うための任意のベクターの使用に関する。発明者らは、例としてかつ本発明の範囲を限定することなく、メチル基からカルボキシル基への酸化に関与するチトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードする遺伝子の中断の結果としてのメチル化ポリエンを生成するための使用に適する微生物の中で、アンフォテリシンBの天然産生株であるストレプトマイセス・ノドサス、リモシジンの産生株であるストレプトマイセス・リモサス、カンジシジンの産生株であるストレプトマイセス・グリセウス、ピマリシンの産生株であるストレプトマイセス・ナタレンシス、ナイスタチンの産生株であるストレプトマイセス・ノウルセイを利用する。
【0135】
さらに、本発明は、対応する遺伝子の破壊を行う場合に、極性効果による作用を受けているかもしれない遺伝子の適切な発現に関し、それには媒体として任意のベクター(複製プラスミド、統合プラスミド、アクチノファージなど)が用いられ、かつ導入は従来の方法(形質転換、コンジュゲーション、エレクトロポレーション、感染など)のいずれかによる。遊離カルボキシル基を有するポリエンマクロライドの生成微生物の具体例として、ストレプトマイセスの種、例えばストレプトマイセス・ノウルセイ、ストレプトマイセス・リモサス、ストレプトマイセス・ノドサス、ストレプトマイセス・ナタレンシスおよびストレプトマイセス・グリセウスが挙げられるがこれらに限定されない。
【0136】
上記のような遺伝子組換え微生物、すなわち本発明のメチル化ポリエンマクロライドに関する以下の遺伝子組換えされた相同な生成微生物は、本発明の一部を形成し、かつそのさらなる態様を構成する。
【0137】
別の態様では、本発明は、メチル化ポリエンマクロライドを生成するための方法であって、本発明の遺伝子組換え微生物を、該メチル化ポリエンの生成を可能にする条件下で培養し、かつ必要に応じて該化合物を単離および精製するステップを含む方法に関し、該化合物は、例としてかつ本発明の範囲を限定することなく、メチル化アンフォテリシンB、メチル化ナイスタチン、メチル化ピマリシンおよびメチル化カンジシジンからなる群に属する。本発明の別の目的は、これらの新規メチル化ポリエン、メチル化アンフォテリシンB、メチル化ナイスタチン、メチル化ピマリシン、およびメチル化カンジシジンのいずれかからなり、それらをリモシジンCおよびCE−108Cの場合と同様、殺生物および薬理学的組成物の調製において使用できる。
【0138】
該遺伝子組換え微生物は、それらの微生物の発酵に適する任意の培地内で培養され、かつ一般に、水性培地に溶解された、1つ以上の炭素源、1つ以上の窒素源、微生物によって吸収可能な1つ以上の無機塩、および必要であればビタミンおよびアミノ酸などの1つ以上の栄養素を有し、かつ適切な条件(通気/攪拌、温度および発酵時間、段階など)が微生物の成長およびポリエンマクロライドの生成において適用される。得られるポリエンマクロライドは培地に有利に分泌され、場合により細胞抽出物の回収の前に、マクロライドを従来の技術、例えばクロマトグラフィー法の使用によって回収できる。目的のポリエンマクロライドをその物理化学的特性に基づいて分離でき、それにより発酵プロセス後に、培地からポリエンマクロライドを精製するための方法が設計可能である。
【0139】
化合物AB−400(IVb)
ピマリシン(IVa)に対応するアミドである化合物AB−400(IVb)は、ストレプトマイセス・コスタエ(Streptomyces costae)に由来する既知の天然生成物である(カネド L.M.(Canedo L.M.)ら、2000年、J.,Antibiot.(東京(Tokyo))53:623−626頁)。
【0140】
発明者らがAB−400(IVb)およびピマリシン(IVa)を用いて実施した試験により、ヒト赤血球に対する溶血活性が生じないでAB−400が殺真菌活性における実質的な増強を示し、それはエルゴステロールを含有する膜に対し、その非アミド化相同体ピマリシン(IVa)よりも顕著な選択毒性を示すことが言えることを明らかにした。
【0141】
発明者らが実施した他の試験では、アミド化ポリエンがその非アミド化相同体よりも有意に水への可溶性が高いことが示されている。この特性は、上記の薬理学的特性とともにこの化合物が臨床使用すなわち真菌症または寄生虫症の局所または全身治療に加え、アグロアリメンタリー産業においても適節であることを意味する。
【0142】
したがって、別の態様では、本発明は、場合により1つ以上の医薬的に許容できる賦形剤とともに化合物AB−400(IVb)を含有する医薬組成物に関する。該医薬組成物は、必要に応じて、該化合物AB−400(IVb)の治療作用を増強するかまたはその作用スペクトルを高める可能性がある1つ以上の治療薬をさらに含有しうる。
【0143】
該医薬組成物を、エルゴステロールを含有する細胞膜を有するヒトまたは動物の病原体、例えばヒトまたは動物における寄生虫および病原性真菌によって誘発される感染の予防および/または処置において使用してもよい。
【0144】
したがって、別の特定の実施形態では、該医薬組成物は抗寄生虫組成物であって、細胞膜がエルゴステロールを含有する寄生虫、例えばトリパノソーマ、リーシュマニアなどによって誘発される感染の予防および/または処置において使用してもよく、該抗寄生虫組成物は、必要に応じて、該化合物AB−400(IVb)の治療作用を増強するかまたはその作用スペクトルを高める可能性がある1つ以上の抗寄生虫剤をさらに含有しうる。
【0145】
別の特定の実施形態では、該医薬組成物は抗真菌組成物であり、かつそれを真菌(その細胞膜はエルゴステロールを含有する)によって誘発される感染の予防および/または処置において使用してもよい。該抗真菌組成物は、必要に応じて、該化合物AB−400(IVb)の治療作用を増強するかまたはその作用スペクトルを高める可能性がある1つ以上の抗真菌剤をさらに含有しうる。該抗真菌剤の具体例として、アンフォテリシンB、ナイスタチン、AB−400(IVb)、アリルアミン(例えば、テルビナフィン、ナフチフィンなど)、アモロルフィン、トルナフテートなどのポリエン、クロトリマゾール、ミコナゾール、ケトコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾールなどのアゾール、ベンゾフラン、例えばグリセオフルビンなど、ピリミジン、例えばフルオシトシンなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0146】
化合物AB−400(IVb)は、治療有効量つまりその治療効果を発揮するのに適する量で該医薬組成物中に存在するべきである。特定の実施形態では、本発明によって提供される医薬組成物は、AB−400(IVb)の化合物を0.01重量%〜99.99重量%含有し、例えば経口、非経口または局所といった選択される投与経路に依存して任意の適切な投与剤形中に存在しうる。薬剤の異なる投与剤形およびそれらの調製方法に関するレビューが、例えば、Tratado de Farmacia Galenica、C.Fauli i Trillo、第1版、1993年、Luzan 5、S.A.de Edicionesにて見出されうる。
【0147】
したがって本発明は、細胞膜がエルゴステロールを含有する、ヒトまたは動物の病原性真菌、例えばヒトまたは動物の寄生虫またはヒトまたは動物の病原性真菌によって誘発される感染の予防および/または処置を目的とした薬剤の調製におけるAB−400(IVb)の使用にも関する。
【0148】
同様に、別の態様では、本発明は、治療を必要とする動物またはヒトに、本発明によって提供される化合物AB−400(IVb)を含有する医薬組成物の治療有効量を投与する段階を含む、エルゴステロールを含有する細胞膜を有するヒトまたは動物の病原体、例えばヒトまたは動物の病原体である寄生虫および真菌によって誘発される感染を予防および/または処置するための方法も提供する。
【化7】


【0149】
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、その範囲を限定するものとして解釈してはならない。
【実施例】
【0150】
実施形態の例示
実施例1.リモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)の生成および特徴づけ
I.実験方法
細菌株および成長条件
細菌株およびプラスミドを表1に示す。
【0151】
遺伝子組換えによるストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108およびその誘導体を、テトラエンの生成の分析において液体および固体培地SYM2(アトラス R.M.(Atlas R.M.)、Microbiological Media.CRC Press、ボカラトン(Boca Raton)、フロリダ州)内、ならびにプラスミドおよび全DNAの抽出のために液体培地TSB(Oxoid)中で通常の方法により成長させた。
【0152】
取扱い説明書(キーザー T(Kieser T)ら、2000年、Practical Streptomyces Genetics、Norwich)に記載のように、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)TK21をクローニング用の汎用宿主として使用し、固体培地R5中および液体培地YEME中で成長させた。
【0153】
大腸菌(E.coli)株を、専門文献(マニアティス T.(Maniatis T.)ら、1982年、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、コールド・スプリング・ハーバー・プレス(Cold Spring Harbor Press)、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク州)に記載のように、ルリア・ベルターニ(Luria−Bertani)(LB)寒天中またはLB培養物中で成長させた。
【0154】
抗真菌活性の試験用に用いられるペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)、カンジダ・クルセイ(C.krusei)、アスペルギルス・ニガー(A.niger)、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)およびクリプトコッカス・ネオフォルマンス(C.neoformans)といった真菌をMPDA培地(組成物:2%麦芽抽出物、2%グルコース、0.1%バクトペプトン)中で成長させた。
【0155】
表1:本発明で用いられる細菌株およびプラスミド
【表1−1】


【表1−2】

【0156】
遺伝的方法
マニアティス(Maniatis)ら(1982年)に記載のように、大腸菌の株を成長させ、形質転換した。上記(キーザー T.(Kieser T.)ら、2000年、先に引用)のようにストレプトマイセスの株を処理した。選択なしに固体培地R5中で供与株および受容株を一緒に成長させ、その後にプラスミドの抗生物質および遺伝マーカーに対応する耐性に基づいて選択時に種内コンジュゲーション(intraspecific conjugation)を行った。上記(マニアティス T.(Maniatis T.)ら、(1982年)、先に引用)のようにDNAの処理を行った。
【0157】
テトラエンの生成における試験
上記のように、培養物のアリコート全てをメタノールで抽出することにより、テトラエンの生成について分析した(セコ E.M.(Seco E.M.)ら、2004年、先に引用)。抽出物を濾過し、ウォーターズ(Waters) 996 PDAを装備したウォーターズ(Waters) 600S Controller機器を用いてHPLC分析を行った。定量およびクロマトグラフィーの条件は上記と同じであった(ペレス−ズニガ F.J.(Perez−Zuniga F.J.)ら、2004年、先に引用)。
【0158】
HPLC−MS試験
質量スペクトルを、四重極検出器のアギレント・テクノロジー・ディテクター(Agilent Technology Detector)に接続された1100MSD HPLC機器で、起源として電子スプレーおよび正のイオン化モードを用いて測定した。クロマトグラフィー条件は上記と同様であった(ペレス−ズニガ F.J.(Perez−Zuniga F.J.)ら、2004年、先に引用)。
【0159】
新規化合物の精製
アミド化ポリエンを生成できる構築体(先に述べてきたように)で改良されうるストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784または微生物を、固体または液体培地SYM2(ペレス−ズニガ F.J.(Perez−Zuniga F.J.)ら、2004年、先に引用)中で培養した。6日後、微生物を培養した完全固体培地を剪断により断片化し、50mLの注射器に通して、断片化した固体培地を、25mMのギ酸で予め酸性化した4容量のメタノールで抽出した。液体培地から得られる培養物をメタノールで同様の抽出を行う前に凍結乾燥させた。懸濁液中の固体粒子を除去するため、水性懸濁液を1時間撹拌し、5,000gで20分間遠心分離した。透明な上清を、304ナノメートル(nm)の波長で測定したマイクロリットル(μL)当たり10〜20×10単位で回転蒸発させることにより濃縮した。次いで、試料を使用するまで80%メタノール/水中に保存した。液体細胞培養物(200mL)、または培養物を予め5容量のメタノールで抽出したプレート(24×24cm)は、40mgまでのアミド化テトラエンの混合物を生成させた。沈降物質を除去するため、メタノールで抽出した試料を、水を含有する20%メタノールに移して濾過した。濾液を、予め同溶液で平衡したSPセファローズ、ファスト・フロー(Phast Flow)(ファルマシア(Pharmacia))などのイオン交換樹脂を予め充填したオムニフィット(Omnifit)カラム(250×25mm、スペルコ(Supelco)カタログ番号56010)にゆっくりと重層した。これらの条件下でリモシジンおよびCE−108を、培養物から得られる色素とともに、充填カラムに付着されていないフロントとともに溶出させる一方、対応するアミド化ポリエンのリモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)を完全に保持させた。充填SPセファローズと相互作用しなかった化合物を除去するため、固相で保持された目的化合物を含有するカラムを同じ溶液で徹底的に洗浄した。カラムとの相互作用によって保持されたアミド化ポリエンのリモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)を、定期的に回収される画分と共に20%メタノール中のpH5の300mM酢酸アンモニウムを用いて溶出した。溶出画分については目的のアミドの混合物を含有するものを選択し、これらをまとめて脱塩の物理的プロセスを施し、このためにSep−Pakカートリッジ(ウォーターズ(Waters))を使用した。最後に、脱塩画分を20%メタノールに溶解した。脱塩したアミド化ポリエン(15mg)の混合物を含有する画分を(アミド化ポリエンを分離する目的で)最終的にHPLCにより分画し、このために半分取カラムを使用した(スペルコシル(Supelcosil)製PLC−8,250×21.2mm)。自動勾配コントローラー(automated gradient controller)(ウォーターズ(Waters)製Automated Gradient Controller)で制御したクロマトグラフィーのパラメータおよび移動相は、100%のB(20mM酢酸アンモニウム pH5、20%エタノール)で12分、50%までのA(メタノール)および50%のBの2重勾配において43分(ウォーターズ(Waters)製クロマトグラフィー用コントローラーにおいて規定された曲線6)、100%までのA(曲線8、上で規定と同じコントローラー)の2進勾配において35分、ならびに5mL/分の一定流量であった。画分を定期的に回収し(1画分当たり5mL)、上記のように精製単離した化合物を含有する画分にさらなる脱塩段階を施し、最後に2回凍結乾燥した。上記のようにストレプトマイセス属RGU5.3の液体培養物からAB−400も精製した(カネド L.M.(Canedo L.M.)ら、2000年、J.,Antibiot.(東京(Tokyo))53:623−626頁)。
【0160】
溶血活性の試験
試験を、ゴメス−ゴメス(Gomez−Gomez)らによる方法(ゴメス−ゴメス J.M.(Gomez−Gomez J.M.)ら、1996年、Mol.Microbiol.19:909−910頁)に従って実施した。ポリエンの試料をまず乾燥し、次いで10〜30mg/mLの推定濃度でDMSO中に溶解した。様々なポリエンの増加量分を、最終容量100μLのDMSOに移し、軽く攪拌させてヒト血液、ひいてはウマ血液を2.5%含有するPBS緩衝液500μLと混合した(ゴメス−ゴメス J.M.(Gomez−Gomez J.M.)ら、1996年、先に引用)。攪拌せずに37℃で30分間インキュベートした後、細胞を遠心分離により沈降させ、545nmで吸収を測定して溶血の度合いを評価した。溶血全体に対応する値を、蒸留水中の2.5%のウマ血液の懸濁液を用いて評価した。ヒト血液(基本的に赤血球)を地域の血液バンク(オスピタル・ラモン・イ・カハル(Hospital Ramon y Cajal)、マドリード(Madrid))、ウマ血液をオクソイド(Oxoid)(脱線維血)から入手した。アンフォテリシンBおよびナイスタチンをシグマ(Sigma)(各々、カタログ番号A−4888およびN−3503)から、ピマリシンをカルバイオケム(Calbiochem)(527962)から入手した。これらのポリエン全部を、さらなる精製を全く行わずに市販の試料から直接試験した。
【0161】
II.結果
組換え遺伝子rimAの生成
ポリシストロニックmRNA内にコードされた遺伝子rimA(セコ E.M.(Seco E.M.)ら、2004年、Chem.Biol.11:357−366頁)を、ストレプトマイセス・ハルステディJM8のキシラナーゼの遺伝子のプロモーターxysA(xysAp)の制御下でクローニングした(ルイス−アリバス A.(Ruiz−Arribas A.)、1997年、Appl.Environ.Microbiol、63:2983−2988頁)。これを行うため、プロモーターxysApの上流に位置するメチレノマイシン耐性遺伝子(T1:アダム S.A.(Adham S.A.)ら、2001年、Arch.Microbiol.177:91−97頁)のターミネーターをさらに担持する547塩基対からなるBgII/Smal断片としてpHis1からプロモーターxysApを取り出した(レスキュー)。表1に記載の様々な段階を経た後、DNAクローニングにおける通常の手順に従い、遺伝子rimAおよび3’末端に遺伝子rimlを有するDNAの断片(図1に示されるように登録番号AY442225下でジェンバンク(GeneBank)中に寄託された配列から始まる9336〜15445塩基対の位置;セコ E.M.(Seco E.M.)ら、2004年、先に引用)を、プロモーターxysAp下でのrimAの発現を可能にする適切な方向でxysApと融合した(組換え遺伝子rimA)。最後に、pNAe−1の遺伝子ermE(表1)を隣接する酵素による消化により切り取り(rescue)、中間段階で得られたDNA断片をクローニングした。最終作成において、プロモーターxysApの制御下での遺伝子rimA、切断された遺伝子rimIの断片および最後に完全な遺伝子ermEを左から右に含有するDNAの断片(図1A参照)を生成するため、得られたDNA断片を「組換えrimA」遺伝子の後にクローニングした。分子生物学での通常の技術に従い、得られたDNA断片を、ストレプトマイセスのベクターpIJ922のチオストレプトン耐性遺伝子内に位置する固有の制限部位EcoRVで平滑末端を介してクローニングした。得られたプラスミド(pSM743B、図1A)に、チオストレプトンではなくエリスロマイシンに対する耐性を、対応するチオストレプトン耐性遺伝子を上記DNA断片の挿入によって中断することによって付与する。
【0162】
上記のように、pSM743B内でクローニングした組換え遺伝子rimAの正確な機能性を、予め天然遺伝子rimAの破壊により生成した変異体、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108(セコ E.M.(Seco E.M.)ら、2004年(先に引用)として記載のストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/PM1−500)へのプラスミドpSM743Bの導入によって検証した。得られた遺伝子組換え体(予め中断した遺伝子rimAを有するストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108の変異体へのプラスミドpSM743Bの導入によって生成した)は、天然マクロライドポリエン(リモシジンおよびCE−108)ならびに新規のマクロライドポリエン(リモシジンBおよびCE−108B)を生成できる。同様に、野生株内に導入したプラスミドpSM743Bは4種の(アミド化およびカルボキシル化)テトラエンの生成も誘発したが、ここでポリエンのあらゆる生成が増加したのはおそらくクラスタrimの生合成遺伝子の発現によるものであろう。これと並行してプラスミドpSM784を作成した。これを行うため、遺伝子ermEを、分子生物学での通常の技術に従い、かつ後続する段階で、平滑末端を有するDNA断片として取り出されうる(rescue)完全遺伝子ermEを取得するのに適する大腸菌(Escherichia coli)のベクターにクローニングした。最後に、平滑末端を有するDNA断片内に遺伝子ermEを有するDNA断片を、ベクターpIJ941に特有の制限部位EcoRVにクローニングした。得られたベクターはエリスロマイシンおよびハイグロマイシンBに対して耐性を付与するが、それはそれに対応する耐性遺伝子における遺伝子ermEの断片の不活化挿入による中断によってチオストレプトンに感受性を示す(図1Bを参照)。プラスミドpSM784が野生株ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108に導入される場合、得られた組換え微生物は、新規のアミド化ポリエンのリモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)ならびにリモシジンB(IIa)およびCE−108B(IIb)を生成可能である。
【0163】
したがって、ベクターpSM743BまたはベクターpSM784を有するストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108における遺伝的改変により、元のポリエン(リモシジンおよびCE−108)と新規のアミド化ポリエン(CE−108BおよびリモシジンB)の双方が生成され、それらは図1Cに示すようにHPLCでの分析によると類似したクロマトグラフィー特性を有する。質的に両方の遺伝子組換え体が同じポリエンを生成するという事実にも拘わらず、それらの生成は、遺伝子rimAおよびエリスロマイシン遺伝子(プラスミドpSM743B)を有する組換え体でかなり顕著であった。
【0164】
プラスミドpSM743Bを導入する場合、中断された遺伝子rimAを有するストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108変異体内で両テトラエン(リモシジンおよびCE−108)の生成が回復し、これは組換え遺伝子rimAが機能性を有することを示している。それに反し、この補完された変異体ではポリエンの生成は、同じプラスミドpSM743Bの野生担体株の場合よりも有意に低い(表1)、グルコースまたはキシランを培地に添加しても、この生成低下は有意に変化しなかった。これらの結果は、rimAの発現がポリエンの生成での制限する段階となることを示唆するように思われ、この制限段階は遺伝子用量の増加によって明らかに克服される。
【0165】
これらの結果は、SCP2由来のベクター内の遺伝子ermEが新規ポリエンの生成において基本的な役割を果たすことを明示している。pHJL401などの他のベクターにクローニングされるエリスロマイシン耐性遺伝子(ermE)(ラルソン J.L.(Larson J.L.)ら、(1986年)Plasmid 15.199−209頁)、SCP2由来のベクターのいずれもが単独では新規の構造体を生成するのに十分でないことは強調される必要がある。
【0166】
新規ポリエンの特徴づけ
HPLC−MS分析
ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743Bおよびストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−500/743Bの発酵培養物の質量分析と組み合わせてHPLC分析を行い、2種の新規テトラエンの推定質量は、保持時間の最小および最大においてそれぞれ738および766であった。いずれの場合においても、新規ポリエンの質量は、最も近い保持時間を有するポリエンであるCE−108(739)およびリモシジン(767)の質量よりも小さい単位である。その質量差およびクロマトグラフィーの移動度の両者とも、新規ポリエンが天然マクロライドに由来するという考えを裏付けている。
【0167】
化学構造の解明
化学構造を解明するため、新規ポリエンを、その精製のための方法を開発する目的をもって予備的に特徴づけを行った。両化合物はC8およびC18のように逆相でシリカゲルだけでなくSP−セファローズのようなイオン交換樹脂と相互作用し、これらの化合物が接近可能な正電荷を有することが判明した。この一次的な特徴づけにより、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/pSM743Bまたはストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784の発酵培養物をはじめとして一様に単純な精製方法を設計することができた(実験方法に関する項を参照)。
【0168】
化合物CE−108B(I−1b)は、CE−108(IIb)のそれに類似のテトラエンに特有の可視スペクトル(λmax=317、302、289nm)を有する粉末として得た(F.J.(Perez−Zuniga F.J.)ら、2004年、J.Antibiot.(Tokyo))57:197−204頁)。δ6.25(dd、14.9、10.9Hz)でsp範囲内の3つのシグナル、δ6.00〜6.15で多重線およびδ5.87(15.2、8.4Hz)での二重線の二重線を有するH−NMRのスペクトルは、CE−108のスペクトルと類似していた。2個の交換可能な陽子が、幅広い一重線としてδ7.30および6.83で見られた。δ1.40〜2.50の脂肪族範囲では、スペクトルは複雑な多重線パターンを示し、3つのメチル−三重線および二重線のシグナルはそれぞれδ1.17、1.15および0.83で見られた。質量スペクトル(+)−ESI MSでは、高分解能([M+H]においては観察値739.40110、計算値739.401715)を用い、分子式C378N13に対応する、m/zが739([M+H])および761([M+Na])での偽分子イオンの存在が示された。磁気共鳴スペクトル13C−NMRにより、分子式に定められるように、CE−108と同様、37炭素シグナルが示された。CE−108およびCE−108Bについての13C−NMRに関するデータには密接な関連があることから、CE−108およびCE−108Bがアミノ糖を含む同じ炭素骨格を有すると結論づけることができた。これらのデータによると、第2の窒素がアミド機能に帰属する必要があり、それによりCE−108B(I−1b)がCE−108(IIb)のアミドと同定される。
【0169】
リモシジンB(I−1a)粉末をDMSO中に溶解させた。質量スペクトル(+)−ESI MSでは、リモシジンB(I−1a)の分子量が766であり、それは高分解能によると分子式C392N13に対応することが判定された([M+N]において観察値767.43254、計算値767.43301)。H−NMRのスペクトルは、CE−108B(I−1b)のそれに類似し、δ7.30および6.83での2個の交換可能な陽子のH/D、δ6.40〜5.80の間隔内での2つの二重線の二重線および多重線を示した。脂肪族領域は、分解能がより低いことから極めて複雑であったが、δ1.83および1.16での三重線および二重線はメチル−シグナルにより容易に同定された。スペクトル13C−NMRでは、39炭素のシグナルの存在が示された。CE−108B(I−1b)との比較により、136.7〜128.3の間隔内での8炭素原子のspシグナルに加え、208.8、174.1および172.1での3つのカルボニルシグナルならびに2つのアセタル基の存在が示された。最終的に、CE−108B(I−1b)との近似性により、この化合物がリモシジンのアミドとして同定され、本明細書ではリモシジンB(I−1a)として同定された。
【0170】
新規のアミド化ポリエン化合物の生物活性
抗真菌活性試験
新規のアミド化テトラエン[リモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)]の抗真菌活性を、ペニシリウム・クリソゲナム、カンジダ・アルビカンス、アスペルギルス・ニガー、カンジダ・クルセイおよびクリプトコッカス・ネオフォルマンスといった様々な真菌に対して試験した。メタノールに溶解した様々なテトラエンの増加量分をペーパーディスク(直径9mm)に適用し、適用後、ディスクを乾燥させ、対応する試験真菌が予め拡散されているバイオアッセイプレート上に置いた。これらのアミド化テトラエンの活性をその分子の元の分子[リモシジンB(IIa)およびCE−108B(IIb)]の活性と比較したところ、それはすべての試験真菌中でアミド化ポリエンの生物活性がそれらの誘導されたテトラエンの生物活性よりも実質的に大きいことを示した(図2)。あらゆる場合において、遊離カルボキシル基とアミド基との置換により、抗真菌活性が約4倍に増大した。
【0171】
毒性試験
上記実験では、遺伝子組換え体ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108によって生成される新規アミド化ポリエンの修飾により、高い抗真菌活性を有する化合物が生成されることは明らかである。毒性もまた増加するか否かを判定するため、新規のアミド化ポリエンの溶血活性について、野生株によって生成される化合物と比較することで判定した。この試験における細胞モデルとして、ヒト赤血球を用いた(シブルスカ B.(Cybulska B.)ら、2000年、Acta Biochim.Pol.47:121−131頁;ゴメス−ゴメス J.M.(Gomez−Gomez J.M.)ら、1996年、Mol.Microbiol.19:909−910頁)。新規化合物の溶血活性をリモシジンおよびCE−108に対し(実験方法に関する項を参照)、アンフォテリシンBおよびナイスタチンAについても含めて評価した。表2に示すように、アミド化テトラエン[リモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)]の溶血活性と誘導源に対応するテトラエンの溶血活性との違いが有意でないが、一方でそれらの抗真菌活性は明らかに向上した。CE−108(IIb)およびCE−108B(I−1b)にて観察される毒性とリモシジン(IIa)およびリモシジンB(I−1a)の場合との差異を強調することは意義があり、後者の2種のポリエンにおいて40〜60ナノモルで50%の溶血が得られる一方、同程度の溶血を得るのにCE−108の濃度がアミドの6もしくは7倍高いことが必要とされる。したがって、アミド化ポリエンCE−108Bの薬理学的特性が有意に改善されている、すなわち、CE−108が低い抗真菌活性を示す一方、その対応するアミド化誘導体(CE−108B)はリモシジンのレベルとほぼ同程度の高レベルに向上した抗真菌活性を有するが、その溶血活性は6もしくは7倍低い。これらの試験をウマ血液でも実施し、それらは類似の結果を示した(データは示さず)。
【0172】
ピマリシン(IVa)とそのアミド化誘導体AB−400(IVb)を比較して同じ結果を得た。実験方法に関する項に示されるように、両化合物を、まず単離した株のストレプトマイセス属RGU5.3から精製した。株をグルコースと酢酸ナトリウムの双方を補充した培地内で培養し、酢酸ナトリウムを培養物に添加する場合にアミド化誘導体の生成が顕著に増大することを見出した。酢酸ナトリウムではなくグルコースを炭素源として含有する発酵培養物を用いるとこの方法では、ピマリシン/AB−400のバランスは70/30であり、同じ培地に酢酸ナトリウムを補充する場合には生成特性は逆転し、主なポリエン化合物としてAB−400(IVb)が生成される(図3)。遺伝子組換え株ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108により生成される、アミド化ポリエンの生成においては、この効果は観察されなかった。アミド化ポリエンをまずこの培地から精製し、抗真菌活性と溶血活性の双方について試験した。図3Cにまとめた結果は、予め遺伝子組換え体ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108から得られるアミド化ポリエンで観察された結果に一致しており、試験濃度のピマリシン(IVa)では抗真菌活性が全く観察されない一方、同量のAB−400(IVb)は高活性を示し、ペニシリウム・クリソゲナムが使用される場合、活性においてほぼ一桁の差異が観察された。それに反し、AB−400(IVb)および市販のピマリシンを用いて行った溶血活性の試験では、2種のポリエン間に有意な差異が示されなかった。このデータを全体的に考慮すると、ピマリシンのアミド化誘導体がカルボキシル化ピマリシンより優れた薬理学的な利点をもたらすと結論づけられる。
【0173】
表2:様々なポリエンの溶血活性比較。各ポリエンにおいて試験された値はナノモルで(左列)かつ対応する溶血活性は溶血の総百分率として示される(実験方法を参照)。
【表2】

【0174】
III.考察
天然生成生物(produce organism)の遺伝子操作によって生成される大部分アミド化されていない2種のポリエン、リモシジンおよびCE−108のカルボキシル基における変化を有する2種の新規アミド化ポリエンに関する生合成について記載する。
【0175】
2種の天然テトラエン(リモシジンおよびCE−108)の産生株であるストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108は、もしそれが遺伝子操作により適切に改変される場合、対応するアミド(リモシジンBおよびCE−108B)を天然にかつ主な化合物として生成する能力を得る。遊離カルボキシル基のアミド基への変換は、他の半合成ポリエン誘導体と同様、その薬理学的特性の一部における明らかな改善(溶血活性ではなく抗真菌活性における大幅な向上)を包含することから、天然テトラエンの場合と比べて抗真菌剤としての著しい利点をもたらす。両誘導体におけるこの化学的改変は、組成物がエルゴステロールを有する生物の膜における選択毒性の向上を包含する。発明者らは、ピマリシン(IVa)およびAB−400(IVb)の場合に類似の結果が得られることを強調しており、それは、それらポリエンにおけるカルボキシル基のアミド基との置換が他のポリエンの相対的毒性も向上させることになるという考えを裏付ける。
【0176】
これらの新規のアミド化ポリエンの生合成においては、(a)アミドがアグリコンのポリケトン鎖の構築後の、本発明に記載の実験条件下で活性化されうるアミドトランスフェラーゼ活性の結果であり(「装飾」活性またはPKS後修飾)、または(b)CE−108およびリモシジンの生成における生合成モデルにおいて提示されるように、マロナミル−CoAトランスフェラーゼ活性が、対応するPKSの縮合モジュール7により(セコ E.M.(Seco E.M.)ら、2004年、Chem.Biol.11:357−366頁)、メチルマロニル−CoAではないマロナミル−CoAを取り込むという少なくとも2つの有望な機構を仮定してもよい。この後者の場合、クレイセン(Claysen)型の脱炭酸縮合が、生合成チオラーゼ内で生じる場合(ヒース(Heath)およびロック(Rock)、2002年、Nat.Prod.Rep.19:581−596頁)、ポリケトン鎖内でのマロナミドの取り込みに必要となり:この場合であれば、縮合単位としてのマロナミドのインビボでの利用可能性が成長するポリケトン鎖内での良好な取り込みにとって重要となる。生産株がオキシテトラサイクリンも生合成し、ポリケトン鎖におけるその仮定された「スターター(starter)」単位がマロナミドであることは強調するに値する。したがってこの株内であれば、この代謝産物は他の二次代謝物質ならびにオキシテトラサイクリンの生成のために容易に使用可能なものとなる。
【0177】
CE−108BおよびリモシジンBの生成をもたらす遺伝的機構は未知であるが、それには少なくともSCP2由来のプラスミド(pIJ922またはpIJ941など)と遺伝子ermEが必要であることは明らかであろう。最近、抑制濃度以下のエリスロマイシンが細菌の転写を調節可能であるという記載がなされている(ゴー(Goh)ら、Proc.Nat..Acad、Sci.USA 99:17025−17030頁)。それに反し、エリスロマイシンが全く添加されていない培養物中でアミドも検出されたことから、エリスロマイシンがポリエンの生成生物内でアミド化段階を可能にする有望な転写調節物質の発現を調節できるという可能性は失われる可能性がある。これにより、遺伝子ermE(メチラーゼ)の産物がSCP2由来のプラスミド(pIJ922またはpIJ941)のDNA内部でコードされる別の中間遺伝子上で作用しうるという可能性が開かれ、その結果として、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108の天然ポリエン(リモシジンおよびCE−108)のアミド化を担う染色体遺伝子の活性化が仮定される。本発明は、遺伝子組換え株による生体内変換を用いて新規のアミド化ポリエンを生成するための系を提供する。このプロセスは、市販のポリエンの生合成経路に十分に適用されると、改善された医薬化合物を生成するための簡易なプロセスとなることは疑いない。本発明が関係するポリエン構造が複雑であると仮定すると、アミド化ポリエン化合物を生成するための本発明において提示される生体内変換は、一部の半合成構造を生成するための有機合成により、これまで記載されたものよりも明らかに効率の良いプロセスの構成要素となる。
【0178】
実施例2−リモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)の生成および特徴づけ
I.実験方法
細菌株、クローニングベクターおよび成長条件
細菌株およびプラスミドを表1に示す。
【0179】
ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108およびその誘導体をSYM2培地(アトラス R.M.(Atlas R.M.)、Microbiological Media.CRC Press、ボカラトン(Boca Raton)、フロリダ州)内で培養した。ストレプトマイセス・リビダンスTK21をファージの増殖においてかつ宿主株として使用し、現場取扱い説明書(キーザー T.(Kieser T.)ら、2000年、Practical Streptomyces Genetics、ノーウィッチ(Norwich))に記載のように固体培地R5内および液体培地YEME内で成長させた。
【0180】
専門文献(マニアティス T.(Maniatis T.)ら、1982年、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、コールド・スプリング・ハーバー・プレス(Cold Spring Harbor Press)、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク州)に記載のように、大腸菌JM101株をルリア−ベルターニ(LB)寒天またはLB培養物内で成長させた。
【0181】
ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chysogenum)ATCC10003を、抗真菌活性の試験に使用し、MPDA培地(組成物:2%麦芽抽出物、2%グルコース、0.1%バクトペプトン)内で成長させた。
【0182】
表1:本発明で用いられる細菌株およびプラスミド
【表3−1】

【表3−2】


【0183】
遺伝的方法
上記プロトコルを用い、大腸菌株JM101を成長させて形質転換した(マニアティス(Maniatis)ら、1982年、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、コールド・スプリング・ハーバー・プレス(Cold Spring Harbor Press)、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク州)。上記のように、ストレプトマイセスの株を処理した(キーザー T.(Kieser T.)ら、2000年、先に引用)。実施例1に記載してきたように種内コンジュゲーションを行った。マニアティス(Maniatis)ら、1982年(先に引用)により、上記のようにDNAの処理を行った。
【0184】
テトラエンの生成についての試験
実施例1に記載のように、テトラエンの生成について分析した。上記と同様の条件下でHPLC分析を行った(ペレス−ズニガ F.J.(Perez−Zuniga F.J.)ら、2004年、先に引用)。
【0185】
HPLC−MS試験
質量スペクトルを、ソースとしてエレクトロスプレーおよび正のイオン化モードを使用した四重極検出器アジレント・テクノロジー・ディテクター(Agilent Technology Detector)に接続した1100MSD HPLC機器を用いて測定した。クロマトグラフィー条件は、上記と同様であった(ペレス−ズニガ F.J.(Perez−Zuniga F.J.)ら、2004年、先に引用)。
【0186】
NMR分析
NMRスペクトルをバリアン・イノバ(Varian Inova)600分光計(5999.740MHz)で測定した。ESI質量スペクトルを、レオス(Rheos)4000の第四ポンプ(フラックス・インスツルメント(Flux Instrument))を具備するフィニガン(Finnigan)製LCQ機器上に記録した。HR ESI質量スペクトルをブルカー(Bruker)製FTICR4.7 T分光計で測定した。
【0187】
新規化合物の精製
染色体内でのPMl−768相の挿入の正確な選択およびプラスミドpSM743Bの存在について、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743Bをチオストレプトン(50μg/ml)およびエリスロマイシン(25μg/ml)を補充した固体培地SYM2(ペレス−ズニガ F.J.(Perez−Zuniga F.J.)ら、2004年、先に引用)内で培養した。6日後、実施例1で前述したように、微生物が培養される完全な固体培地を断片化した。CE−108C(IIIb)およびリモシジンC(IIIa)を、半分取カラム(スペルコシル(Supelcosil)製PLC−8、250×21.2mm)を用いたHPLCにより精製し、適用される勾配は分析的分画(前述)において前述のものに類似しており、それを自動勾配コントローラー(ウォーターズ(Waters)製Automated Gradient)で制御した。ポリエンを含有する画分を互いに結合させ、それにSep−Pakカートリッジ(ウォーターズ(Waters))を用いた脱塩段階を施し、最終的に2回凍結乾燥した。任意のメチル化ポリエンを対応する遺伝子組換え微生物の培養物から精製するのにこの方法を用いることができる。
【0188】
溶血活性の試験
実施例1で前述のように、赤血球内に豊富なヒト血液に関して試験を行った。
【0189】
無細胞抽出液の調製および「インビトロ」アミド化試験
無細胞抽出液を調製するため、アミド化ポリエンの産生株である遺伝子組換え体のストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784およびストレプトマイセス属RGU5.3を、50mLの培地SYM2(アトラス(Atlas)ら、Microbiological Media.CRC Press、ボカラトン(Boca Raton)、フロリダ州)内で3日間成長させた。菌糸体を5,000g、4℃で10分間の遠心分離により回収し、20%グリセロールの溶液で洗浄し、グリセロールの20%溶液15mlで再懸濁した。500μLの一定分量を使用するまで−20℃で保存した。使用時、上記のように細胞を遠心分離により回収し、50mMトリス−HCl、pH7.5、0.5mM EDTA、5%グリセロール、50mM NaCl、0.5mM PMSFおよび1mMのβ−メルカプトエタノールの緩衝液(TEPM緩衝液)で再懸濁した。再懸濁した細胞に超音波による破壊を施し、8,000g、4℃で15分間の遠心分離を2回行うことにより、ホモジネートを清澄化した。無細胞ホモジネートを汚染するポリエンを、上清をSep−PakカートリッジC18(ウォーターズ(Waters))に通過させることにより部分的に除去した。これらの画分に硫酸アンモニウムによる分画を施し、これらを順次、45%および60%の飽和状態にした。60%の飽和から得た沈殿物を、元に対して4倍の濃度で溶解し、アミドトランスフェラーゼの評価用に用いた。上記溶液の100μLを含有する200μLについてアミドトランスフェラーゼ試験を行い、異なるポリエン、2.5mMのグルタミン、25mMのNaCl、10mMのMgCl、4mMのATPおよび125mMのTES緩衝液、pH7.2を含有する溶液について、4×10単位の光学密度を340nmで測定した。反応物を30℃で60分間インキュベートし、1容量のメタノールの添加により停止し、ペレス−ズニガ(Perez−Zuniga)ら、2004年(先に引用)に記載のように、4,000gでの遠心分離により沈殿物を除去し、HPLCにより分析した。
【0190】
II.結果
a)新規のメチル化ポリエン
a.1.ポリエンアミドの生合成機構に関する判定
リモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)の生合成に関し、(a)リモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)の形成について示されたメチルマロニル−CoA単位の代わりのモジュール7内のマロナミル−CoA伸長単位の縮合、および(b)リモシジン(IIa)および/またはCE−108(IIb)の側鎖カルボキシル基からアミドを生じさせる「装飾」活性(アミドトランスフェラーゼなど)という2つの有望な別の機構が以前から示唆されている。一方および他方の機構間について判断する上で、遺伝子rimGの役割が重大である可能性がある、すなわち、もし機構が(a)であるかまたは可能性(b)の場合においてこの実施ができない場合、遺伝子rimGの破壊により、アミド化テトラエンの形成の誘発に関与するプラスミドの担体であることから、対応するアミドを生成可能な変異体がもたらされると考えられた。
【0191】
したがって、ベクターとしてアクチノファージPM1を用い、遺伝子rimGにおける破壊によって変異体を生成した(マルパーティダ(Malpartida)ら、1986年、先に引用)。rimGの下流に位置する遺伝子上での考えられる極性効果を阻止するため(図4参照)、(ジェンバンク(GeneBank) AY442225内に蓄積された配列8267〜8849を調整する)rimG内部の0.6kpbのSacII断片を遺伝子ermEのプロモーターを含む断片、およびファージPM1内の構築物の後にクローニングした。組換えアクチノファージPM1−768Bを、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768のリソジーン(lysogenes)を生成するストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108の胞子への感染用に使用した。これらのリソジーンはポリエンを全く生成せず、これは天然プロモーターと比較してプロモーターermEの発現が低下することを示唆した。ermEなどのより強力なプロモーターを用いて遺伝子rimGを中断する試み(キーザー(Kieser)ら、2000年、先に引用)は十分ではなかった。rimHおよびrimAという挿入点の下流に2種の遺伝子が位置している。rimHがRimGに必要とされている電子輸送を仲介するという提示されている役割を有するフェロドキシンをコードすると仮定すると(セコ(Seco)ら、2004年、先に引用)、遺伝子rimAの適切な発現がおそらくはポリエンの生成を回復するための重要なパラメータであると考えることは理にかなっている。この理由のため、rimAの破壊を補完しかつアミド化ポリエンの形成を誘発する能力があるプラスミドpSM743B(先に言及)を、種内コンジュゲーションにより、野生株ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743Bからストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768のリソジーンに移し、ここで得られた組換え体はストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743Bであった。一旦対応する遺伝子型が確認されると、発酵培養物におけるポリエンの生成について分析した。発酵培養物中で大部分検出された化合物が2種存在し、HPLCおよび質量スペクトル分析により、それらが709および737質量単位である(それぞれCE−108(IIb)およびリモシジン(IIa)の質量単位よりも30単位小さい)と判定された。データは、それらがマクロラクトン環の側鎖カルボキシル基がrimGの破壊の結果としてメチル基と置換された場合のCE−108(IIb)およびリモシジン(IIa)に由来するテトラエンであることを示唆した。該化合物は、リモシジンC(IIIIa)およびCE−108C(IIIb)と称されている。これらの条件下でのアミド化ポリエンのCE108B(I−1b)およびリモシジンB(I−1a)の生成が明らかに誘発される場合におけるそれらの非存在は、アミド化誘導体の形成には予め側鎖カルボキシル基の形成が必要であり、かつアミド基の形成がポリケチドシンターゼのモジュール7内でのマロナミル−CoA単位の縮合の代わりの「装飾」活性に起因することを示唆している。この「装飾」活性は、おそらくはアミドトランスフェラーゼに起因する。
【0192】
a.2.リモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)の化学構造の解明
新規テトラエンのリモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)を解明することを目的として、逆相シリカC8カラムを使用し(実験方法を参照)、それら双方をストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743Bの発酵培養物から精製した。
【0193】
化合物リモシジンC(IIIa)を、高分解能([M+H]において観察値738.442217、計算値738.442300)を用い、分子式C3963NO12に対応するm/z738([M+H])および760([M+Na])で疑似分子イオンの存在を示す黄色粉末として得た。この化合物は、リモシジン(IIa)(C3961NO14)と比較し、酸素の2個の原子の欠損およびリモシジンC(IIIa)への2個の陽子の付加に対応し、これは正式には炭素C−14内のカルボキシル基とメチル基残留物質との置換として解釈されうる。
【0194】
H−NMRのスペクトルは、リモシジン(IIa)のスペクトルと酷似し、spの範囲内の3つのシグナル、すなわちδ6.30で二重線二重線(dd)、δ6.05〜6.18で多重線、およびδ5.90で第2のddを示した(表2)。糖の陽子がδ3.25〜4.62の範囲内で見られた。スペクトルH−NMRの脂肪族領域はまた、特にδ1.30〜2.50の範囲内の5つの複雑な多重線パターンに関し、リモシジン(IIa)のそれとの類似性を示した。リモシジン(IIa)などの3つではなく4つのメチル基が、2つの三重線および2つの二重線としてそれぞれδ0.90、0.95および1.26、1.00で見られた。リモシジン(IIa)とリモシジンC(IIIa)の間の最大の差異はメチル−二重線δ1.00の存在であった。それはHと記されたδ1.22(δ43.8)で14−Hを有するCOSYスペクトル内のHクロスを示す。
【0195】
スペクトル13C−NMRでは、分子式で規定されるように、リモシジン(IIa)などで39炭素シグナルが示された。これと陽子スペクトルの類似性により、リモシジン(IIa)およびリモシジンC(IIIa)が糖マイコサミンを含む場合と同じ炭素骨格を有し、リモシジン(IIa)内の3つではなく2つのカルボニル基の存在が唯一の差異であると結論づけることができた。シグナルδ211.6および174.5はそれぞれケトン基およびラクトンのカルボニル基に起因していた。174.5でのカルボニルに対するδ5.03(C−27)での陽子の共役HMBCJではラクトンが確認され、それ故にリモシジンC(IIIa)は14−デカルボキシ−14−メチル−リモシジン(I−1a)である必要がある。
【0196】
CE−108C(IIIb)の黄色粉末はメタノールに容易に溶解できた。このいずれの場合でも、H−NMRのスペクトルはリモシジンC(IIIa)およびCE−108(IIb)のスペクトルとの類似性を示した。脂肪族領域は、CE−108(IIb)などで、3つのメチル−シグナルではなく、δ1.25、1.23および0.99で3つの二重線および0.90で三重線を伴う4つのメチル基のシグナルを示した。質量スペクトル(+)−ESI NSでは、CE−108C(IIIb)の分子量がm/z709であり、それは高分解能([M+H]において観察値710.410905、計算値710.411000)を用いると分子式C3759NO12に対応すると判定された。磁気共鳴スペクトル13C−NMRでは、分子式で規定されるように、CE−108(IIb)などで37炭素シグナルの存在が確認された。CE−108B(I−1b)における磁気共鳴スペクトル13C−NMRとの比較により、δ211.3および174.3で2通りのみのカルボニルのシグナルの存在が示され、これらは再びケトン基およびラクトンのカルボニル基に起因していた。この場合における最大の差異は、CE−108C(IIIb)においてδ179.3でのカルボニル酸の非存在、およびH−NMRのスペクトルにおけるδ0.99でのメチル−二重線に属する13.7での追加のメチル−シグナルの存在であった。CE−108(IIb)およびCE−108C(IIIb)に関するデータを注意深く比較することで、このテトラエンにおいても、CE−108(IIb)のC−14のカルボキシル基がメチル基と置換されることが明示された。それによりCE−108C(IIIb)が誘導体14−デカルボキシ−メチル−CE−108であると同定される。
【0197】
新規のアミド化ポリエン化合物の生物活性
ペニシリウム・クリソゲナム、カンジダ・アルビカンス、アスペルギルス・ニガー、カンジダ・クルセイおよびクリプトコッカス・ネオフォルマンスに対する新規のカルボキシル化されていないテトラエンのリモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)の抗真菌活性を測定し、天然テトラエンのリモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)の抗真菌活性と比較した。実施例1に記載のように測定される2種の中間物のリモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)の抗真菌活性は、最終産物のリモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)のそれとは有意に異なることはない。
【0198】
新規テトラエンの他の薬理学的特性が異なるか否かを測定するため、溶血活性試験を行い、親化合物の場合と比較した。これらの試験では、ヒト赤血球を用いた。結果を表4に示す。リモシジン(IIa)とリモシジンC(IIIa)の抗真菌活性は類似していたが、(溶血活性の観点で測定した)それらの毒性はリモシジンC(IIIa)ではリモシジン(IIa)の場合よりも2.5〜5倍低かったことを指摘することができる。溶血試験においては600nモルのCE−108C(IIIb)に至るまで増加量分を用い、検出した溶血は20%未満であり、これはカルボキシル化していないテトラエンCE−108C(IIIb)の毒性が他のテトラエンのいずれの場合よりも低かったことを示唆している。これは薬理学的特性において興味深い改善があったことを示唆する。
【0199】
表2:リモシジン (IIa)、リモシジン C (IIIa)、CE-108 (IIb)およびCE-108C (IIIb)の溶血活性比較。各テトラエンへの適用量はナノモルで記載される(左列)。対応する溶血活性の値は溶血全体に対する百分率で記載される。
【表4】

【0200】
b)アミドトランスフェラーゼ活性の基質に関する判定
b.1.遺伝子rimEの破壊
「装飾」活性の基質または推定されるアミドトランスフェラーゼが何であるかを判定することを目的として、糖マイコサミンのマクロラクトン環への取り込みを担うグリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子rimEの破壊を進めた。
【0201】
遺伝子rimEが遺伝子rimF、rimG、rimHおよびrimAも収容する約9kbのポリシストロン内で転写されるという事実があるため(セコ E.M.(Seco E.M.)ら、2004年、Chem.Biol.11:357−366頁)(図4A)、染色体内の下流に位置する遺伝子上の極性効果を阻止する必要があった。破壊をもたらすため、強力なプロモーターermE(キーザー(Kieser)ら、2000年、先に引用)を、残りの伝令RNAの転写を可能にするための正確な方向で、(ジェンバンク(GeneBank)AY442225内に寄託された配列5629〜6484を調整する)遺伝子rimE内部の0.8kpb SalIの断片の前にクローニングした。得られた構築体を、表1に記載の様々なステップでファージPM1にクローニングした。得られた組換え相(PM1−702B)を、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108の胞子を感染させ、リソジーンのストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−702Bの単離を可能にするために用いた。染色体への正確な統合をサザン・ブロッティングにより確認した。HPLCおよび質量スペクトル分析による発酵培養物の分析により、CE−108およびリモシジンのアグリコン、さらにリモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)のアグリコンに対応する4種の主要化合物の存在を判定した(図5参照)。アミドのリモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)を野生型ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108内への形成を誘発可能なプラスミドpSM743Bがコンジュゲーションによりこのリソジーンに導入される場合、アミド化アグリコンの形成が全く認められなかった。データは、まるで有望なアミドトランスフェラーゼ活性の基質が実際にはリモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)であってそれらのアグリコンではないかのように解釈される。
【0202】
2.リモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)の「インビトロ」アミド化試験
上に提示したあらゆるデータによると、リモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)のそれらの対応するアミドへの変換が、基質として十分に形成されたテトラエンのリモシジン(IIa)とCE−108(IIb)の双方を用いるアミドトランスフェラーゼの「装飾」活性によって行われるようである。この活性の存在を判定するため、基質としてHPLCで精製したCE−108(IIb)およびリモシジン(IIa)を用いてアミドトランスフェラーゼ活性試験を行った。試験実施を目的として、無細胞抽出液を得るため、実験方法に記載のように、実施例1に引用したストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784株を液体培地SYM2内で3日間成長させた。基質、酵素共同因子、アミド基の供与体、反応における最適pHといった異なるパラメータを初期に試験した。反応生成物をHPLCにより分析し、酵素試験において硫酸アンモニウムを有する様々な画分の沈殿物を用いて評価を最適化し、その分野での生化学研究における標準使用条件に従って評価を行った。最後に、アミドトランスフェラーゼ活性の評価において見出されたほとんどの最適条件が実験方法に関する項にて記載されている。CE−108(IIb)およびリモシジン(IIa)がそれぞれ、それらの対応するアミドのリモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)に明らかに変換されたことが観察された(図6Aおよび6Bを参照)。観察された化合物の正体を質量スペクトル分析により判定した。データにより、「装飾」活性が実際にはアミド基の供与体としてグルタミンを用いるATP依存性のアミドトランスフェラーゼ活性であると判定できた。活性は、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784[リモシジン(IIa)、リモシジンB(I−1a)、CE−108(IIb)およびCE−108B(I−1b)の産生株]の抽出物中だけでなくストレプトマイセス属RGU5.3[ピマリシン(IVa)およびAB−400(IVb)の産生株]の抽出物中に検出可能であると考えられ、ここでのアミドトランスフェラーゼ活性はストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784の活性に類似することが判明した。
【0203】
アミドトランスフェラーゼ活性における基質特異性を判定するため、アンフォテリシンBおよびピマリシン(IVa)などの異種基質に対し、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784の無細胞抽出液もまた試験したが、満足すべき結果は基質としてピマリシン(IVa)を用いた場合のみであった。図6Cに示すように、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784の無細胞抽出液は、ピマリシン(IVa)をその対応するアミドAB−400(IVb)に変換する能力を有した。にもかかわらず、基質としてリモシジン(IIa)、CE−108(IIb)またはアンフォテリシンBを用い、ストレプトマイセス属RGU5.3の無細胞抽出液のアミドトランスフェラーゼ活性を検出することができず、アミド化可能な唯一の化合物はピマリシン(IVa)であった(図7)。データにより、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784のアミドトランスフェラーゼ活性がストレプトマイセス属RGU5.3よりも広範囲の基質認識を有すると考えることが可能である。
【0204】
生体物質の寄託
プラスミドpSM784が導入されている野生株ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108に対応する微生物ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784の培養物を、ドイチェ・サムルング・フォン・ミクロオーガニズメン・ウント・ツェルクルトゥーレン(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)(DSMZ)、ブラウンシュヴァイク(Braunschweig)、ドイツ、2005年3月14日に寄託した。その登録番号はDSM17187である。株は、リモシジン(IIa)およびCE−108(IIb)を生成するための完全な経路を含み、かつ対応するアミド化物のリモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)をさらに生成可能である。
【0205】
微生物ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743Bの培養物を、ドイチェ・サムルング・フォン・ミクロオーガニズメン・ウント・ツェルクルトゥーレン(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)、ブラウンシュヴァイク(Braunschweig)、ドイツ、2005年7月18日に寄託した。その登録番号はDSM17482である。この株は、メチル化ポリエンのリモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)の産生株である。
【0206】
ストレプトマイセス属の遺伝的処理のための慣習的に使用した技術およびそれらの公的なアクセスのための遺伝子/プロモーターの寄託により、本発明に記載の構築体または他の機能的等価物の生成できる。用いられるベクターは公用であり、ストレプトマイセスを用いる研究が常になされている研究所で通常用いられる。
【0207】
本発明に記載の遺伝子をコードしているDNAの配列は、寄託されており、登録番号AY442225下のジェンバンク(GeneBank)データベースにおいて公にアクセス可能である。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1】組換えプラスミドpSM743B(pIJ922内に導入される遺伝子rimA)[図1A]およびpSM784(pIJ941内に導入される遺伝子ermE)[図1B]の物理地図を図示したものを示す。これらの図1Aおよび1Bでは、xysAp:プロモーターzysA;rimA:CE−108およびリモシジンの生合成経路に関与するPKS Type I;Ti:メチレノマイシン耐性遺伝子のターミネーター;ermE、tsrおよびhyg:それぞれエリスロマイシン、チオストレプトンおよびハイグロマイシンに対する耐性遺伝子;rimI:そのN−末端が切断されたrimI。図1Cは、遺伝子組換え株ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743Bの発酵培養物のクロマトグラフィー特性(HPLC)を示す。該図1Cでは、番号1〜4は、1:CE−108B(I−1b);2:CE−108(IIb);3:リモシジンB(I−1a)および4:リモシジン(IIa)を示す。
【図2】ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743Bによって生成される4種のテトラエンの抗真菌活性を示す。該図では、A:リモシジン(IIa)、B:リモシジンB(I−1a)、C:CE−108(IIb)、D:CE−108B(I−1b)。各耐性記録上に見られる番号は、ナノモルで表現される各ポリエンの適用量を示す。標的生物はペニシリウム・クリソゲナム、カンジダ・クルセイ、アスペルギルス・ニガー、カンジダ・アルビカンスおよびクリプトコッカス・ネオフォルマンスであった(表1、実施例1を参照)。
【図3】ストレプトマイセス属RGU5.3から単離されたポリエンのピマリシン(IVa)およびAB−400(IVb)の生物活性を示す。それは、炭素源として酢酸塩(図3A)またはグルコース(図3B)を有する培地内で成長したストレプトマイセス属RGU5.3に由来する発酵培養物のHPLC分析(クロマトグラム)を示す。図3Cは、ペニシリウム・クリソゲナムに対するピマリシン(IVa)およびAB−400(IVb)の抗真菌活性を図示し、適用されたポリエンの試料は、(1)市販のピマリシン(カルバイオケム(Calbiochem)5279962);(2)グルコース培地内で成長したストレプトマイセス属RGU5.3の発酵培養物の全抽出物;(3)ストレプトマイセス属RGU5.3に由来する精製されたAB−400;および(4)ストレプトマイセス属RGU5.3に由来するピマリシンであり、各試験において全部で200ngが添加された。図3Dは、ピマリシン(カルバイオケム(Calbiochem)527962、純度98.8%)およびAB−400(実験方法にて示される、HPLCによる精製)における溶血活性を示し、各ポリエンの値はナノモルで表され(左列)、対応する溶血活性は溶血全体の百分率として示される(実験方法における文章を参照)。
【図4】パネルAではDNAの異なる断片を用いて行われるエンドヌクレアーゼS1に関する保護アッセイによって推定された、染色体のこの特異的領域内での遺伝子転写について図示する(セコ(Seco)ら、2004年、Chem.Biol.11:357−366頁)。転写産物は、遺伝子rimE、rimF、rimG、rimHおよびrimAのポリシストロンに対応する、途切れた矢印によって示される。遺伝子rimGおよびrimEの不活化挿入について推定された転写産物は、灰色の線で示され、括弧内の数字は登録番号AY442225下に寄託されたDNA配列に対応する。この図のパネルBは、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743Bの発酵培養物に対応するクロマトグラムを示し、ここでaおよびbはそれぞれCE−108C(IIIb)およびリモシジンC(IIIa)に対応する。
【図5】左側パネルではストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−702B/743Bの発酵培養物のクロマトグラムを示す。クロマトグラムの右側は、クロマトグラフにおいて検出された化合物から制定された化学構造である。化学構造は質量分光分析に基づいて推定された。
【図6】ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784の無細胞抽出液を用いて行われた、インビトロでのアミドトランスフェラーゼ試験のHPLC分析を示す。左列および右列のクロマトグラムは、それぞれ0分および60分のインキュベーション時間に対する反応を示す。ピークは、a.CE−108B;b.CE−108;c.リモシジンB;d.リモシジン;e.ピマリシン;f.AB−400である。 A.CE−108(IIb)のそのアミドのCE−108B(I−1b)への酵素変換。ピークaおよびアスターリスクを付記したピークはそれぞれCE−108B(I−1b)およびリモシジンB(I−1a)に対応し、ここでは無細胞抽出液から完全に除去できていない。 B.リモシジン(IIa)のそのアミドのリモシジンB(I−1a)への酵素変換。ピークcおよびアスターリスクを付記したピークはそれぞれリモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)に対応し、それらは無細胞抽出液中に存在する。 C.ピマリシン(IVa)のそのアミドAB−400(IVb)への酵素変換。アスターリスクを付記したピークは無細胞抽出液中に存在するリモシジンB(I−1a)に対応する。異種基質(ピマリシン)をその対応するアミド(AB−400)に変換可能な、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784の無細胞抽出液中に存在するアミドトランスフェラーゼによる基質認識に対する緩やかな特異性に留意されたい。
【図7】ストレプトマイセス属RGU5.3の無細胞抽出液を用いて行われた、ピマリシン(IVa)についてのインビトロでのアミド化試験のHPLC分析を示す。左列および右列のクロマトグラムは、それぞれ0分および60分のインキュベーション時間に対する反応を示す。時間ゼロで示されるピークaは、ストレプトマイセス属RGU5.3の無細胞抽出液中に存在するAB−400(IVb)に対応し、ここでは完全に除去できていない。ピマリシン(IVa)(ピークa)のその対応するアミドAB−400(IVb)(ピークb)への変換が明白であることに留意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、R1はアルキルC〜Cであり、R2はCH−またはCONH−(メチル−または第一級アミド−)の中から選択される官能基である]
によって特徴づけられるポリエンマクロライド化合物、その異性体、塩、プロドラッグあるいは溶媒和物。
【請求項2】
式(I−1)
【化2】

(式中、RはNHであり、R1はアルキルC〜Cである)
によって特徴づけられる、請求項1に記載の化合物、その異性体、塩、プロドラッグまたは溶媒和物。
【請求項3】
リモシジンB(I−1a)およびCE−108B(I−1b)
【化3】

として同定された、式Iに属するアミド化化合物の中から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
式(III)
【化4】

(式中、R1はアルキルC〜Cである)
によって特徴づけられる、請求項1に記載の化合物、その異性体、塩、プロドラッグまたは溶媒和物。
【請求項5】
リモシジンC(IIIa)およびCE−108C(IIIb)
【化5】


として同定された、式IIIに属する前記化合物の中から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
不活性媒体とともに請求項1に記載の式(I)の化合物を含むことを特徴とする殺生物組成物。
【請求項7】
式(I)の前記化合物が請求項2に記載の式(I−1)の化合物中から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の殺生物組成物。
【請求項8】
式(I−1)の前記化合物がリモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)およびそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の殺生物組成物。
【請求項9】
式(I)の前記化合物が請求項4に記載の式(III)の化合物中から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の殺生物組成物。
【請求項10】
式(III)の前記化合物がリモシジンC(IIIa)、CE−108C(IIIb)およびそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の殺生物組成物。
【請求項11】
場合により1つ以上の医薬的に許容できる賦形剤とともに請求項1に記載の式(I)の化合物を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項12】
式(I)の前記化合物が請求項2に記載の式(I−1)の化合物の中から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
式(I−1)の前記化合物がリモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)およびそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
式(I)の前記化合物が請求項2に記載の式(III)の化合物の中から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
式(III)の前記化合物がリモシジンC(IIIa)、CE−108C(IIIb)およびそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項16】
1つ以上の治療薬をさらに含む、請求項11〜15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
細胞膜がエルゴステロールを含有するかまたはそれを含有しないポリエンマクロライドに感受性を示す病原体により誘発されるヒトまたは動物の感染の予防および/または処置を目的とした薬剤の調製における請求項1に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項18】
式(I)の前記化合物が請求項2に記載の式(I−1)の化合物の中から選択されることを特徴とする、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
式(I−1)の前記化合物がリモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)およびそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
式(I)の前記化合物が請求項4に記載の式(III)の化合物の中から選択されることを特徴とする、請求項17に記載の使用。
【請求項21】
式(III)の前記化合物がリモシジンC(IIIa)、CE−108C(IIIb)およびそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
場合により1つ以上の不活性媒体とともに請求項1に記載の式(I)の化合物を含むことを特徴とする、抗真菌組成物。
【請求項23】
式(I)の前記化合物が請求項2に記載の式(I−1)の化合物の中から選択されることを特徴とする、請求項22に記載の抗真菌組成物。
【請求項24】
式(I−1)の前記化合物がリモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)およびそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項23に記載の抗真菌組成物。
【請求項25】
式(I)の前記化合物が請求項4に記載の式(III)の化合物の中から選択されることを特徴とする、請求項22に記載の抗真菌組成物。
【請求項26】
式(III)の前記化合物がリモシジンC(IIIa)、CE−108C(IIIb)およびそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項25に記載の抗真菌組成物。
【請求項27】
1つ以上の抗真菌剤をさらに含む請求項22〜26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
植物内の植物病原性真菌によって誘発される感染を制御するための方法であって、前記植物またはそれをとりまく媒体に請求項22〜27のいずれか一項に記載の抗真菌組成物を適用するステップを含む、方法。
【請求項29】
果物内の植物病原性真菌によって誘発される感染を制御するための方法であって、前記果物に請求項22〜27のいずれか一項に記載の抗真菌組成物を適用するステップを含む、方法。
【請求項30】
調製された食物内で発生可能な真菌によって誘発される感染を制御するための方法であって、前記調製された食物に請求項22〜27のいずれか一項に記載の抗真菌組成物を適用するステップを含む、方法。
【請求項31】
請求項2に記載の式(I−1)の化合物を生成するための方法であって、
ストレプトマイセス・ディアスタティカス(Streptomyces diastaticus)変種108/743B、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−500/743Bおよびそれらの組み合わせの中から選択される微生物を式(I−1)の前記化合物の生成を可能にする条件下で培養し、かつ必要に応じてこの前記化合物を単離および精製するステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項32】
生成されるべき式(I−1)の前記化合物がリモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)およびそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
式(I−1)の前記ポリエンマクロライド、好ましくはリモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)またはそれらの混合物とともに、前記出発物質のポリエンのリモシジン(IIa)、CE−108(IIb)またはそれらの混合物が同時に生成されることを特徴とする、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
請求項4に記載の式(III)の化合物を生成するための方法であって、
−前記微生物ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743Bの、式(III)の化合物の生成を可能にする条件下での培養
−前記発酵培養物の取得および、必要に応じて
−式(III)の化合物の単離および精製
の段階を含むことを特徴とする、方法。
【請求項35】
式(III)の前記化合物がリモシジンC(IIIa)、CE−108C(IIIb)およびそれらの混合物からなる群に属することを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743B、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784(DSM17187)およびストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−500/743Bの中から選択されることを特徴とする、請求項31〜33に記載の方法を実施するのに必要な組換え微生物。
【請求項37】
請求項4に記載の式(III)の前記化合物を生成し、かつ前記遺伝子rimGまたは相同遺伝子の発現に排他的に作用することを特徴とする、請求項34または35に記載の方法を実施するのに必要な組換え微生物。
【請求項38】
微生物ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743B(寄託番号:DSM17482)であり、かつ一般的式(III)の前記メチル化ポリエン、リモシジンC、CE−108Cおよびそれらの混合物の産生株であることを特徴とする、請求項37に記載の微生物。
【請求項39】
前記微生物ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743B(寄託番号:DSM17482)に機能的に等価な微生物であることを特徴とする、請求項38に記載の微生物。
【請求項40】
ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743B、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−500/743B、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108:::PM1−768B/743Bおよびそれらの組み合わせの中から選択されることを特徴とする微生物の培養物。
【請求項41】
請求項1に記載の式(I)の化合物を取得するための請求項36〜39のいずれかに記載の微生物または請求項40に記載の微生物の培養物の使用。
【請求項42】
式(I−1)および(III)の前記化合物が、それぞれリモシジンB(I−1a)またはCE−108B(I−1b)の中、リモシジンC(IIIa)またはCE−108C(IIIb)の中、あるいはそれら化合物の混合物の中から選択されることを特徴とする請求項41に記載の微生物の使用。
【請求項43】
式(I)の化合物を含むことを特徴とする、請求項36〜39のいずれかに記載の微生物の発酵培養物。
【請求項44】
前記微生物がストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743B、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−500/743Bおよびそれらの組み合わせからなる群に属し、かつ、リモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)およびそれらの混合物からなる群に属する請求項2に記載の式(I−1)の化合物を含むことを特徴とする、請求項43に記載の発酵培養物。
【請求項45】
前記微生物がストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108:::PM1−768B/743Bであり、かつリモシジンC(IIIa)、CE−108C(IIIb)およびそれらの混合物からなる群に属する請求項4に記載の式(III)の化合物を含むことを特徴とする、請求項43に記載の発酵培養物。
【請求項46】
請求項36に記載のアミド基を有するポリエンマクロライドの微生物を生成する組換え体を取得するための方法であって、
遊離カルボキシル基を有するポリエンマクロライドの微生物を生成する発現ベクターを導入するステップ、あるいは、遊離カルボキシル基を有するポリエンマクロライドの微生物の生成において、一方で
(i)ポリエンの生合成クラスタを含むベクターまたはその断片と、他方で
(ii)前記遺伝子ermEを含むSCP2由来のベクターまたはSCP2の複製起点と異なる複製起点、前記遺伝子ermE、および前記ベクターSCP2の断片を含むベクターの組み合わせを導入するステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項47】
前記生成された株が前記遺伝子rimGの発現において排他的に作用を受け、以下の段階:
a)ポリエンを生成できない、前記遺伝子の破壊または欠失による前記微生物ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108の遺伝子rimGにおける変異体またはその等価物の取得、
b)その後の、前記変異体内の染色体内での前記遺伝子rimAの破壊を補完できるベクター、好ましくはプラスミドによる形質転換
を含むことを特徴とする、請求項37〜39のいずれか一項に記載の微生物を取得するための方法。
【請求項48】
前記生成された株が前記株ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108::PM1−768/743Bであることを特徴とする、請求項46に記載の微生物を取得するための方法。
【請求項49】
前記生成された株が前記相同遺伝子rimGの発現において排他的に作用を受け、以下の段階:
a)ポリエンを生成できない、前記遺伝子の破壊または欠失による前記元の微生物の相同遺伝子における変異体の取得、
b)その後、前記変異体内の染色体内での前記遺伝子rimAの破壊を補完できるベクター、好ましくはプラスミドによる形質転換
を含むことを特徴とする、請求項37に記載の微生物を取得するための方法。
【請求項50】
前記遺伝子rimGの相同遺伝子がpimG、amphN、nysN、canC)といった遺伝子に属するチトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有する遺伝子であることを特徴とする、請求項49に記載の微生物を取得するための方法。
【請求項51】
前記元の微生物が放線菌(Actinomycete)であることを特徴とする、請求項46または50に記載の微生物を取得するための方法。
【請求項52】
前記放線菌がストレプトマイセス属(Streptomyces sp.)であることを特徴とする、請求項51に記載の微生物を取得するための方法。
【請求項53】
前記ストレプトマイセス属が、ストレプトマイセス・ノウルセイ(Streptomyces noursei)、ストレプトマイセス・アルビダス(Streptomyces albidus)、ストレプトマイセス・リモサス(Streptomyces rimosus)、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108、ストレプトマイセス・ノドサス(Streptomyces nodosus)、ストレプトマイセス・ナタレンシス(Streptomyces natalensis)、ストレプトマイセス・チャッタノオゲンシス(Streptomyces chattanoogensis)およびストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)からなる群に属することを特徴とする、請求項52に記載の微生物を取得するための方法。
【請求項54】
請求項46〜53のいずれか一項に記載の方法によって取得可能な組換え微生物。
【請求項55】
a)SCP2の複製起点および前記エリスロマイシン耐性遺伝子ermE)を有する前記ベクターSCP2由来のベクターまたはその断片、
b)(i)前記ベクターSCP2の複製起点、(ii)前記遺伝子ermE、および(iii)前記ベクターSCP2の断片を有するベクター、
c)(i)SCP2の複製起点と異なる複製起点、(ii)前記遺伝子ermE、および(iii)前記ベクターSCP2の断片を有するベクター、
d)複製起点が欠けており、かつ前記遺伝子ermEおよび前記ベクターSCP2の断片を有するベクター、
e)(i)複製起点、(ii)前記遺伝子ermE、および(iii)ポリエンの前記生合成クラスタ全体または前記クラスタの断片を有する、前記ベクターSCP2由来のベクター、
f)(i)前記複製ベクターSCP2の複製起点と等しいかまたは異なる複製起点、(ii)前記遺伝子ermE、(iii)前記ベクターSCP2の断片、および(iv)ポリエンの前記生合成クラスタ全体または前記クラスタの断片を有する、前記ベクターSCP2由来のベクター、
g)複製起点が欠けており、かつ前記遺伝子ermE、およびポリエンの前記生合成クラスタ全体または前記クラスタの断片を有するベクター、ならびに
h)複製起点が欠けており、かつ(i)前記遺伝子ermE、(ii)前記ベクターSCP2の断片、および(iii)ポリエンの前記生合成クラスタ全体または前記クラスタの断片を有するベクター
の中から選択されることを特徴とする、請求項46に記載の発現ベクター。
【請求項56】
ベクターSCP2および前記エリスロマイシン耐性遺伝子(ermE)の担体に由来することを特徴とする、請求項55に記載の発現ベクター。
【請求項57】
前記プラスミドpSM784であることを特徴とする、請求項56に記載の発現ベクター。
【請求項58】
SCP2の複製起点、前記エリスロマイシン耐性遺伝子(ermE)および前記ベクターSCP2の断片を含むことを特徴とする、請求項55に記載の発現ベクター。
【請求項59】
SCP2の複製起点と異なる複製起点、前記エリスロマイシン耐性遺伝子(ermE)および前記ベクターSCP2の断片を含むことを特徴とする、請求項54に記載の発現ベクター。
【請求項60】
前記遺伝子ermEおよびポリエンの前記生合成クラスタ全体または前記クラスタの断片をプロモーターの制御下で含むSCP2の誘導体であることを特徴とする、請求項55に記載の発現ベクター。
【請求項61】
前記クラスタrim全体または前記クラスタの断片をさらに含むことを特徴とする、請求項57〜59のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項62】
前記プラスミドpSM743Bであることを特徴とする、請求項61に記載の発現ベクター。
【請求項63】
マクロラクトン環内に遊離カルボキシル化基を有するポリエンからアミド化ポリエンを取得するための酵素的方法であって、
アミド化ポリエンの産生株の無細胞抽出液を用い、以下の段階:
a)精製または未精製の、遊離カルボキシル化基を有するポリエンからなる基質を有する混合物またはそれらの数種の混合物、およびアミド化ポリエンの1つまたは複数の産生株に由来するタンパク質抽出物の調整、
b)ATP/Mg++およびグルタミンまたはそれ以外でアミド基の供与体が存在する条件下でのa)の前記混合物の反応、ならびに
c)アミド化ポリエンの精製
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項64】
取得するべき前記アミド化ポリエンがCE−108B(I−1b)、リモシジンB(I−1a)またはそれらの混合物であり、a)の前記基質ポリエンが、精製または未精製の、CE−108(IIb)、リモシジン(IIa)またはそれらの混合物であり、かつa)の前記抽出物がストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784およびストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743Bからなる株から取得されることを特徴とする、請求項63に記載の酵素的方法。
【請求項65】
取得するべき前記アミド化ポリエンがAB−400(IVb)であり、a)の前記基質ポリエンが精製または未精製のピマリシン(IVa)であり、かつa)の前記抽出物がストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784およびストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743Bからなる株から取得されることを特徴とする、請求項63に記載の酵素的方法。
【請求項66】
取得するべき前記アミド化ポリエンがAB−400(IVb)であり、a)の前記基質ポリエンが精製または未精製のピマリシン(IVa)であり、かつa)の前記抽出物がストレプトマイセス属RGU5.3の株から取得されることを特徴とする、請求項63に記載の酵素的方法。
【請求項67】
カルボキシル化ポリエンをそれに対応するアミドに「インビトロ」で変換可能なアミドトランスフェラーゼ活性を包含し、かつアミド化ポリエンの産生株由来であることを特徴とする、アミド化ポリエンの産生株を対象とした請求項63〜67のいずれか一項に記載の酵素的方法を開始させるのに必要な無細胞抽出液。
【請求項68】
ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/743B、ストレプトマイセス・ディアスタティカス変種108/784(DSM17187)および/またはストレプトマイセス属RGU5.3といった微生物が得られることを特徴とする、請求項67に記載の無細胞抽出液。
【請求項69】
メチル化アンフォテリシンB、メチル化ナイスタチン、メチル化ピマリシンおよびメチル化カンジシジンからなる群に属することを特徴とするメチル化ポリエン化合物。
【請求項70】
殺生物および薬理学的組成物の調製を目的とする請求項69に記載のメチル化ポリエンの使用。
【請求項71】
請求項54に記載の組換え微生物を、前記化合物の生成を可能にする条件下で培養し、かつ必要に応じて前記化合物を単離および精製するステップを含むことを特徴とするポリエンマクロライドを生成するための方法。
【請求項72】
前記ポリエンマクロライドが、遊離カルボキシル基を有するポリエンマクロライド、遊離アミド基を有するポリエンマクロライドおよびそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
遊離カルボキシル基を有する前記ポリエンマクロライドが、アンフォテリシンB、ナイスタチン、リモシジン、ピマリシン、カンジシジンおよびそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
アミド基を有する前記ポリエンマクロライドが前記化合物AB−400(IVb)および請求項1に記載の式(I)の化合物の中から選択されることを特徴とする、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
式(I)の前記化合物がリモシジンB(I−1a)、CE−108B(I−1b)およびそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記ポリエンマクロライドがピマリシン(IVa)、AB−400(IVb)、リモシジン(IIa)、リモシジンB(I−1a)、CE−108(IIb)、CE−108B(I−1b)およびそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項72に記載の方法。
【請求項77】
場合により1つ以上の医薬的に許容できる賦形剤とともに前記化合物AB−400(IVb)を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項78】
細胞膜がエルゴステロールを有する病原体によって生じるヒトまたは動物の感染の予防および/または処置を目的とした薬剤の調製における前記化合物AB−400(IVb)の使用。
【請求項79】
細胞膜がエルゴステロールを有する前記ヒトまたは動物の病原体が寄生虫および真菌の中から選択されることを特徴とする、請求項78に記載の使用。
【請求項80】
細胞膜がエルゴステロールを有する病原体によって生じるヒトまたは動物の全身性感染の治療を目的とした、請求項78または79に記載の薬剤の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−538895(P2008−538895A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502429(P2008−502429)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際出願番号】PCT/ES2006/000142
【国際公開番号】WO2006/100330
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(593005895)コンセホ・スペリオール・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス (67)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS
【Fターム(参考)】