説明

ポリオキシアルキレン付加物の製造方法

【課題】簡便で且つ品質の良いポリオキシアルキレン付加物が得られる製造方法を提供する。
【解決手段】特定のアルコールに、アルカリ触媒の存在下、プロピレンオキシドを付加して、プロピレンオキシド付加物を得る工程(I)、工程(I)で得られたプロピレンオキシド付加物に対して、アルカリ触媒の存在下、エチレンオキシドを付加して、ポリオキシアルキレン付加物を含む反応生成物を得る工程(II)、及び工程(II)で得られた反応生成物中のアルカリ触媒を乳酸で中和する工程(III)を含むポリオキシアルキレン付加物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシアルキレン付加物及びその硫酸化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのようなポリオキシアルキレン付加物は、アルカリ金属水酸化物触媒等の存在下、活性水素含有化合物にアルキレンオキサイドを付加して得られる。一般には、アルカリ金属水酸化物触媒として水酸化カリウムを用い、重合開始剤の活性水素化合物を仕込んだ反応容器にアルキレンオキサイドを連続的に導入しながら、反応温度60〜200℃、反応最大圧力0.01〜1.0MPaの条件で所定の分子量が得られるまで反応させ、粗ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを得る。次いで、粗ポリオキシアルキレンアルキルエーテル中の触媒は吸着剤による吸着ろ過、あるいは、鉱酸、有機酸等による中和により失活させることもある。
【0003】
一般的な中和酸として酢酸が使用されているが、酢酸臭がすることが知られている。また、長期保管時における品質の安定性についても改善が望まれている。
【0004】
従来の技術として、特許文献1には、アルキレンオキシド付加物のカルボニル価、酸価、pH、色相および臭気について経時変化が極めて少ないアルキレンオキシド付加物の製造法が提案されている。これはアルコール類のエチレンオキシドおよび炭素数3〜4のアルキレンオキシドとを反応させて得られるアルキレンオキシド付加物の品質の経時変化が極めて少ない安定化したアルキレンオキシド付加物に関するものである。
【特許文献1】特開昭61−197536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、三フッ化ホウ素のような酸触媒の存在下での付加反応と、水酸化カリウムのようなアルカリ触媒の存在下での付加反応の二段階の反応を行っており、この場合、2種類の触媒を用いる必要があり、煩雑である。しかも、酸触媒を用いることで製品中のカルボニル価が上昇し、製品及びそれを配合した時の色が課題となり好ましくなかった。
【0006】
こうした背景から、簡便で且つ品質の良いポリオキシアルキレン付加物が得られる製造方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の工程(I)〜(III)を含むポリオキシアルキレン付加物の製造方法に関する。
工程(I):下記一般式(1)で表されるアルコールに、アルカリ触媒の存在下、プロピレンオキシドを付加して、下記一般式(2)で表されるプロピレンオキシド付加物を得る工程
R−OH (1)
(式中、Rは炭素数が6〜22である炭化水素基を示す。)
R−O−(PO)m−H (2)
(式中、Rは前記と同じ。POはプロピレンオキシ基、mは0超5以下の平均付加モル数を表す。)
工程(II):工程(I)で得られたプロピレンオキシド付加物に対して、アルカリ触媒の存在下、エチレンオキシドを付加して、一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン付加物を含む反応生成物を得る工程
R−O−(PO)m−(EO)n−H (3)
(式中、R、PO、mは前記と同じ。EOはエチレンオキシ基、nは1から20の平均付加モル数を表す)
工程(III):工程(II)で得られた反応生成物中のアルカリ触媒を乳酸で中和する工程。
【0008】
また、本発明は、以下の工程(I)〜(IV)を含む硫酸化物の製造方法に関する。
工程(I):下記一般式(1)で表されるアルコール〔以下、アルコール(1)という〕に、アルカリ触媒の存在下、プロピレンオキシドを付加して、下記一般式(2)で表されるプロピレンオキシド付加物を得る工程
R−OH (1)
(式中、Rは炭素数が6〜22である炭化水素基を示す。)
R−O−(PO)m−H (2)
(式中、Rは前記と同じ。POはプロピレンオキシ基、mは0超5以下の平均付加モル数を表す。)
工程(II):工程(I)で得られたプロピレンオキシド付加物(以下、PO付加物という)に対して、アルカリ触媒の存在下、エチレンオキシドを付加して、一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン付加物を含む反応生成物を得る工程
R−O−(PO)m−(EO)n−H (3)
(式中、R、PO、mは前記と同じ。EOはエチレンオキシ基、nは1から20の平均付加モル数を表す)
工程(III):工程(II)で得られた反応生成物中のアルカリ触媒を乳酸で中和する工程。
工程(IV):工程(III)で得られた中和後の反応生成物中のポリオキシアルキレン付加物を硫酸化した後、中和して、下記一般式(4)で表される化合物を得る工程
R−O−(PO)m−(EO)n−SO3M (4)
(式中、R、PO、EO、m、nは前記と同じ。Mは陽イオンである。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、保存時に色相が良い、保存時にカルボニル価が上昇しない、匂いの問題がない、といった品質の良いポリオキシアルキレン付加物が得られる。本発明の製造方法により得られたポリオキシアルキレン付加物は、その硫酸化物などの各種誘導体の原料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<工程(I)>
工程(I)では、上記一般式(1)で表されるアルコール(1)が使用される。一般式(1)中のRは、アルキル基が好ましく、直鎖または分岐鎖のアルキル基、更に直鎖アルキル基が好ましい。Rの炭素数は6〜22であるが、好ましくは炭素数10〜18、より好ましくは炭素数12〜14である。
【0011】
工程(I)では、アルコール(1)に、アルカリ触媒の存在下、プロピレンオキシドを付加する。工程(I)で用いられるアルカリ触媒の使用量(割合)は、アルコール(1)の活性水素1モルあたり0モル%超5モル%以下であることが好ましい。この触媒のモル比は、より好ましくは0.1モル%3モル%以下、更に好ましくは0.3モル%2モル%以下である。
【0012】
本発明の製造法に用いるアルカリ触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物等を用いることができる。好ましくは水酸化カリウムである。
【0013】
水酸化ナトリウムや水酸化カリウムは、使用にあたり乾燥された状態で使用しても、水溶液の形態で使用してもよく、その形態を問わない。また、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムは、工業的に入手可能な製品を使用することができ、一般的な工業グレードの製品をそのまま使用できる。
【0014】
工程(I)では、プロピレンオキシドはアルコール(1)の活性水素1モルあたり、平均で0モル超5モル以下、好ましくは0モル超3モル以下、より好ましくは0モル超1モル以下用いられる。つまり、一般式(2)中のmは0超5以下であり、好ましくは0モル超3モル以下、より好ましくは0モル超1モル以下、特に好ましくは0.2モル以上0.8モル以下である。
【0015】
工程(I)でのプロピレンオキシドの付加反応では、反応温度は100〜200℃が好ましく、130〜170℃が更に好ましく、130〜160℃がより好ましい。この反応温度でアルコール(1)とプロピレンオキシドとの付加反応を行うことにより、反応速度が速くなり生産性が向上する。
【0016】
<工程(II)>
工程(II)では、工程(I)で得られたPO付加物に対して、アルカリ触媒の存在下、以下EOを付加して、一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン付加物を含む反応生成物を得る。
R−O−(PO)m−(EO)n−H (3)
【0017】
工程(II)で用いるアルカリ触媒は、工程(I)で説明したものが使用できる。本発明では、工程(I)で使用したアルカリ触媒を、工程(II)のアルカリ触媒として、即ち、そのまま工程(II)のアルカリ触媒として使用することができる。すなわち、アルカリ触媒の除去といった操作をすることなく、工程(I)と工程(II)を連続して行うことができる。また、状況に応じて、例えば、触媒の活性を維持する為に、別途アルカリ触媒を添加しても良い。
【0018】
工程(II)では、エチレンオキシドはアルコール(1)の活性水素1モルあたり、平均で1〜20モル、好ましくは1〜10モル、より好ましくは1〜5モル、より好ましくは1〜3モル、特に好ましくは1〜2モル用いられる。
【0019】
工程(II)でのエチレンオキシドの付加反応では、反応温度は100〜200℃が好ましく、130〜170℃が更に好ましく、130〜160℃がより好ましい。この反応温度でPO付加物とエチレンオキシドとの付加反応を行うことにより、反応速度が速くなり生産性が向上する。
【0020】
一般に、工業的なポリオキシアルキレン付加物の製造には、所謂バッチ式の反応装置が用いられ、本発明の工程(I)及び/又は工程(II)も、そのようなバッチ式の反応装置を用いて実施することができる。例えば、大型特殊翼を備えた高効率撹拌槽(マックスブレンド等)、循環式反応装置などを使用できる。
【0021】
なお、工程(I)及び/又は工程(II)は、無溶媒あるいは反応溶媒の存在下で行うことができるが、反応溶媒を用いる場合、活性水素を持たない溶媒(アセトン、ヘキサン等)が好適である。
【0022】
一般式(3)中のmが小さい、具体的にはmが0超1未満のポリオキシアルキレン付加物は、直鎖アルコールを原料とした場合でも、いわゆる合成アルコールのように直鎖アルコールと分岐鎖アルコールを含む混合物から得たポリオキシアルキレン付加物のように、低融点、低凝固点で、低温安定性に優れるといった特徴を有する。一方、天然アルコールの一種である油脂原料由来のアルコールから誘導された各種の非イオン性界面活性剤や陰イオン性界面活性剤は、合成アルコールからの誘導体に比べて、高起泡性、低cmc、高曇点、高乳化力といった特徴を有することが知られている。一般式(3)中のmが上記範囲のポリオキシアルキレン付加物は、直鎖アルコールを多く含むいわゆる天然アルコールから製造された界面活性剤の特性を維持しつつ、前記のような合成系の特徴を兼ね備えることから、ポリオキシアルキレン付加物の物性改質に有効である。
【0023】
<工程(III)>
工程(III)は、工程(II)で得られた一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン付加物を含む反応生成物中のアルカリ触媒を乳酸で中和する工程である。乳酸はアルカリ触媒と同等の当量数で用いることが好ましく、アルカリ触媒がアルカリ金属水酸化物の場合、該触媒の仕込みモル数に対して0.9〜1.1モル、更に等モルの割合で用いることが好ましい。中和の完了は、反応生成物の1〜5質量%水溶液のpHが中性近傍、例えば5.0〜8.0になることにより確認することができる。なお、中和度は50〜150%、更に80〜120%とすることができる。
【0024】
本発明は、上記工程(I)〜(III)に、更に下記工程(IV)を有するポリオキシアルキレン付加物の硫酸化物の製造方法に関する。硫酸化物の製造方法において、工程(I)〜(III)の好適な態様はそれぞれ前述したものと同じである。
工程(IV):工程(III)で得られた中和後の反応生成物中のポリオキシアルキレン付加物を硫酸化した後、中和して、下記一般式(4)で表される化合物を得る工程
R−O−(PO)m−(EO)n−SO3M (4)
(式中、R、PO、EO、m、nは前記と同じ。Mは陽イオンである。)
【0025】
一般式(4)中のMはアルカリ金属イオンが好ましく、アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられ、これらの中ではナトリウム及びカリウムが好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
【0026】
ポリオキシアルキレン付加物の硫酸化は該付加物に硫酸化剤を反応させることで行われる。硫酸化剤としては、三酸化硫黄ガス、クロロスルホン酸等が挙げられる。一般式(4)で表される化合物中の塩化物量を少なくする観点から、三酸化硫黄ガスを用いることが好ましい。
【0027】
硫酸化の方法には特に制限はなく、常法により行うことができる。例えば、薄膜式連続反応装置を用いて、空気や窒素等の不活性ガスで希釈した、好ましくは濃度1〜30容量%、より好ましくは1〜20容量%の三酸化硫黄ガスで、ポリオキシアルキレン付加物の硫酸化を行うことができる。三酸化硫黄の濃度が1〜30容量%の範囲であればガス容積が大きすぎることなく、また過剰反応を抑制することができる。
【0028】
三酸化硫黄の使用量は、通常、化学量論量×(0.95〜1.05)の範囲、好ましくは、化学量論量×(0.97〜1.01)の範囲である。三酸化硫黄の使用量を上記範囲とすれば、未反応物の量を少なくでき、かつ副生物である着色成分や有臭成分(例えば低級アルデヒド、低級ケトン、環状エーテル等)の生成を抑制することができる。
【0029】
硫酸化反応を行う装置は特に限定されないが、例えば槽型反応装置や薄膜式反応装置等を用いることができる。薄膜式反応装置としては、例えば流下薄膜式反応装置、上昇薄膜式反応装置及び管型気液混合相流反応装置等を用いることができる。薄膜式反応装置を用いた場合の反応時間は10〜300秒程度である。
【0030】
硫酸化温度は、好ましくは15〜70℃、より好ましくは15〜50℃である。15℃以上であれば流動性低下による局部的な過剰反応を抑制することができ、また70℃以下にあれば生成物の分解を抑制することができる。
【0031】
上記のようにして得られた硫酸化物はついで中和反応されて一般式(4)で表される化合物が得られる。中和反応にはアルカリ金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ土類金属酸化物及び水酸化物(例えば酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウム等)、アルカリ金属の炭酸塩及び炭酸水素塩、アンモニア、アルキル鎖の炭素数が2〜4の、モノ−、ジ−及びトリ−アルカノールアミン、並びにアルキル鎖の炭素数が2〜4の、1級、2級又は3級アルキルアミン等が挙げられる。コスト及び入手の容易さから、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア、トリエタノールアミンが好ましい。また二種類以上の上記アルカリを組み合わせても良い。なお、中和剤の添加量は通常硫酸化物に対して当量以上添加することが好ましく、得られる硫酸化物の中和物のpHが5〜13になる量がより好ましい。一般式(4)で表される化合物は、濃度が10〜70質量%の水溶液として取り扱うことが好ましく、中和剤の水溶液を用いてこの濃度となるように中和処理することが好ましい。
【0032】
一般式(4)で表される化合物は、陰イオン界面活性剤として使用できる。
【実施例】
【0033】
実施例1
攪拌装置、温度制御装置、自動導入装置を備えた11L容オートクレーブにヤシ組成アルコール4790g(24.6モル)、触媒として48%水酸化カリウム水溶液14.5g〔水酸化カリウムとしてヤシ組成ドデシルアルコールの活性水素1個あたり0.005モル(0.5モル%)〕を投入し、混合系内を窒素で置換した後、減圧下(1.3kPa)、110℃にて0.5時間脱水を行った。ついでプロピレンオキシド575g(ヤシ組成ドデシルアルコールの活性水素1個あたり0.4モル)を155℃にて圧力0.1〜0.4MPaとなるように導入しながら反応を行った。プロピレンオキシド導入後155℃で1時間反応させた。ついでエチレンオキシド1625g(ヤシ組成ドデシルアルコールの活性水素1個あたり1.5モル)を155℃にて圧力0.1〜0.4MPaとなるように導入しながら反応を行った。エチレンオキシド導入後155℃で1時間反応させた。エチレンオキシド付加反応の終了後、未反応のエチレンオキシドを減圧下で除去した。
【0034】
反応終了混合物に対して90質量%乳酸水溶液12.4g(水酸化カリウムに対して1.0モル)を添加し、80℃、1時間で中和処理(熟成)を行い、ドデシルアルコールのプロピレンオキシド平均0.4モル、エチレンオキシド1.5モル付加物を得た。
【0035】
得られたドデシルアルコールのプロピレンオキシド平均0.4モル、エチレンオキシド平均1.5モル付加物について色相、カルボニル価を測定した。結果を表1に示す。なお、色相は、APHAをJIS K 0071-1により、カルボニル価は、ASTM E411により測定した。
【0036】
比較例1
特開昭61−197536号の実施例2を参考にして、アルコールのプロピレンオキシド平均0.4モル、エチレンオキシド平均1.5モル付加物を製造した。
【0037】
攪拌装置、温度制御装置、自動導入装置を備えた6L容オートクレーブにヤシ組成アルコール2667g、三フッ化ホウ素エーテル錯体15.3gを酸触媒として仕込み窒素でオートクレーブ内を充分置換した後50℃に加熱しプロピレンオキシド320gを挿入し、プロポキシ化を行った。この反応液について三フッ化ホウ素の4倍モルの水酸化ナトリウム水溶液で加熱洗浄し、更に水洗を2回行い触媒を除去した。減圧条件下で脱水後、ヤシ組成アルコールのプロピレンオキシド平均0.4モル付加物を得た。
【0038】
次いで、このプロピレンオキシド付加物1916gと水酸化カリウム1.3gを前記プロポキシ化反応で用いたものと同様のオートクレーブに仕込み窒素でオートクレーブ内を充分置換した後155℃に加熱し584gエチレンオキシドを反応させた。ついで90質量%乳酸水溶液2.4gで中和しプロピレンオキシド平均0.4モル及びエチレンオキシド平均1.5モル付加物を得た。得られたアルキレンオキシド付加物の色相、カルボニル価を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0039】
比較例2
実施例1において、90質量%乳酸水溶液12.4gに代えて、99質量%酢酸水溶液7.5gを用いて中和処理した以外は同様にして、ドデシルアルコールのプロピレンオキシド平均0.4モル、エチレンオキシド1.5モル付加物を得た。得られたアルキレンオキシド付加物の色相、カルボニル価を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例2(硫酸化物)
工程(I)〜(IV)を有する硫酸化物の製造を、実施例1の付加物を工程(IV)の原料として用いて行った。すなわち、薄膜式硫酸化反応器により実施例1で得られたドデシルアルコールのプロピレンオキシド平均0.4モル、エチレンオキシド平均1.5モル付加物を、乾燥空気で希釈した三酸化硫黄ガスで硫酸化し、エタノールを含有する水酸化ナトリウム溶液で、硫酸化物の塩の濃度が68〜72質量%、水の濃度が25〜29質量%の水溶液になるように中和した。得られた硫酸化物の塩の色相(クレット、pH7、420nmの吸光度×1000)を評価した。結果を表2に示す。
【0042】
比較例3〜4(硫酸化物)
実施例2において、実施例1で得られたドデシルアルコールのプロピレンオキシド平均0.4モル、エチレンオキシド平均1.5モル付加物の代わりに比較例2〜3で得られたドデシルアルコールのプロピレンオキシド平均0.4モル、エチレンオキシド平均1.5モル付加物を用いる以外は実施例2と同様の操作を行った。得られた硫酸化物の塩の色相(クレット)を実施例2と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0043】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(I)〜(III)を含むポリオキシアルキレン付加物の製造方法。
工程(I):下記一般式(1)で表されるアルコールに、アルカリ触媒の存在下、プロピレンオキシドを付加して、下記一般式(2)で表されるプロピレンオキシド付加物を得る工程
R−OH (1)
(式中、Rは炭素数が6〜22である炭化水素基を示す。)
R−O−(PO)m−H (2)
(式中、Rは前記と同じ。POはプロピレンオキシ基、mは0超5以下の平均付加モル数を表す。)
工程(II):工程(I)で得られたプロピレンオキシド付加物に対して、アルカリ触媒の存在下、エチレンオキシドを付加して、一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン付加物を含む反応生成物を得る工程
R−O−(PO)m−(EO)n−H (3)
(式中、R、PO、mは前記と同じ。EOはエチレンオキシ基、nは1から20の平均付加モル数を表す)
工程(III):工程(II)で得られた反応生成物中のアルカリ触媒を乳酸で中和する工程。
【請求項2】
工程(I)で使用したアルカリ触媒を、工程(II)のアルカリ触媒として使用する、請求項1記載のポリオキシアルキレン付加物の製造方法。
【請求項3】
以下の工程(I)〜(IV)を含む硫酸化物の製造方法。
工程(I):下記一般式(1)で表されるアルコールに、アルカリ触媒の存在下、プロピレンオキシドを付加して、下記一般式(2)で表されるプロピレンオキシド付加物を得る工程
R−OH (1)
(式中、Rは炭素数が6〜22である炭化水素基を示す。)
R−O−(PO)m−H (2)
(式中、Rは前記と同じ。POはプロピレンオキシ基、mは0超5以下の平均付加モル数を表す。)
工程(II):工程(I)で得られたプロピレンオキシド付加物に対して、アルカリ触媒の存在下、エチレンオキシドを付加して、一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン付加物を含む反応生成物を得る工程
R−O−(PO)m−(EO)n−H (3)
(式中、R、PO、mは前記と同じ。EOはエチレンオキシ基、nは1から20の平均付加モル数を表す)
工程(III):工程(II)で得られた反応生成物中のアルカリ触媒を乳酸で中和する工程。
工程(IV):工程(III)で得られた中和後の反応生成物中のポリオキシアルキレン付加物を硫酸化した後、中和して、下記一般式(4)で表される化合物を得る工程
R−O−(PO)m−(EO)n−SO3M (4)
(式中、R、PO、EO、m、nは前記と同じ。Mは陽イオンである。)
【請求項4】
工程(I)で使用したアルカリ触媒を、工程(II)のアルカリ触媒として使用する、請求項3記載の硫酸化物の製造方法。

【公開番号】特開2010−126465(P2010−126465A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301241(P2008−301241)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】