説明

ポリオキシメチレン樹脂成形品

【課題】 摺動相手材がポリオキシメチレン樹脂或いはポリブチレンテレフタレート樹脂からなる成形品であり、且つ高面圧力・高線速度の領域においても、摩擦磨耗特性が優れたポリオキシメチレン樹脂成形品を提供する。
【解決手段】 ポリオキシメチレン樹脂に(a)粒径が100μm以下のメラミン樹脂0.01〜1.0重量%(組成物中)を添加配合してなるポリオキシメチレン樹脂組成物からなる成形品であって、下記(1)又は(2)の摺動条件での摺動部品に使用されるポリオキシメチレン樹脂成形品。
(1)摺動相手がポリオキシメチレン樹脂からなる成形品であり、PV値(面圧力×線速度)が1.0MPa・cm/s以上での摺動
(2)摺動相手がポリブチレンテレフタレート樹脂からなる成形品であり、PV値(面圧力×線速度)が2.0MPa・cm/s以上での摺動

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高面圧・高線速度の摺動条件下において優れた摩擦磨耗特性を有するポリオキシメチレン樹脂成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシメチレン樹脂は、優れた機械的強度、摩擦磨耗特性等を有するエンジニアリングプラスチックの一つであり、電気電子機器部品、自動車部品等の様々な分野において使用されている。しかし、斯かる分野における要求特性は次第に高度化しつつあり、その一例として、摺動特性と成形品外観や機械的強度との高度な両立が望まれている。特に、摺動特性に関しては、摺動部の接触面積が小さく(すなわち、該摺動部の面圧が高く)、且つ、摺動面の線速度が大きい摺動条件下での摺動特性の改善が望まれている
このような摺動特性を改善する目的で、ポリオキシメチレン樹脂にフッ素樹脂やポリオレフィン系樹脂を添加したり、脂肪酸エステル、シリコーンオイル等の潤滑油を添加することが行われている。
【0003】
また、特許文献1には、ポリオキシメチレン樹脂に特定のグラフト共重合体、更には、潤滑剤、無機粉末を併用添加することにより摩擦磨耗特性、及び、成形品表面の剥離などが改善されることが開示されている。
【特許文献1】特開平3−111446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フッ素樹脂やポリオレフィン系樹脂の添加は摺動特性の改善のためには有効であるが、これらの樹脂はポリオキシメチレン樹脂との相溶性に乏しいため、成形品表面に剥離を生じさせたり、機械的物性を低下させたりする。
【0005】
また、脂肪酸エステル、シリコーンオイル等の潤滑油は、ポリオキシメチレン樹脂の摺動特性を改善するためには相応量の添加が必要であり、得られる樹脂組成物の機械的物性が低下したり、使用時に該潤滑油が染み出す等の難点がある。
【0006】
また、ポリオキシメチレン樹脂に特定のグラフト共重合体、更には、潤滑剤、無機粉末を併用添加する方法でも、成形品表面の剥離や、機械的物性の低下等が完全には解決されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の如き問題点を解決すべく、摺動特性について詳細な検討を行った結果、ポリオキシメチレン樹脂に特定のメラミン樹脂を添加することにより、特に高面圧力・高線速度の領域において摩擦磨耗特性が優れ、且つ、成形品の表面剥離がなく、機械的特性の諸特性についてもバランスの取れた性能を有するポリオキシメチレン樹脂成形品が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明は、ポリオキシメチレン樹脂に(a)粒径が100μm以下のメラミン樹脂0.01〜1.0重量%(組成物中)を添加配合してなるポリオキシメチレン樹脂組成物からなる成形品であって、下記(1)又は(2)の摺動条件での摺動部品に使用されるポリオキシメチレン樹脂成形品である。
【0009】
(1)摺動相手がポリオキシメチレン樹脂からなる成形品であり、PV値(面圧力×線速度)が1.0MPa・cm/s以上での摺動
(2)摺動相手がポリブチレンテレフタレート樹脂からなる成形品であり、PV値(面圧力×線速度)が2.0MPa・cm/s以上での摺動
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリオキシメチレン樹脂成形品は、特に高面圧力・高線速度の領域における摩擦磨耗特性が大幅に改善された、非常に好ましい成形品である
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明についての詳細な説明を行う。本発明は、前述した如く、ポリオキシメチレン樹脂に(a)粒径が100μm以下のメラミン樹脂0.01〜1.0重量%を配合した樹脂組成物からなる成形品であって、かかる成形品は、特定の限定された摺動条件で使用されることを特徴とする。
【0012】
この特定の限定された摺動条件とは、摺動相手がポリオキシメチレン樹脂材料からなる成形品又はポリブチレンテレフタレート樹脂材料からなる成形品であり、摺動相手がポリオキシメチレン樹脂材料からなる成形品の場合はPV値(面圧力×線速度)が1.0MPa・cm/s以上、摺動相手がポリブチレンテレフタレート樹脂材料からなる成形品の場合はPV値が2.0MPa・cm/s以上である。
【0013】
このように特定の摺動相手材との高PV値での摺動に対して、本発明の樹脂組成からなる成形品は極めて顕著な摺動特性を示す。摺動相手の樹脂材によって適用し得るPV値が異なるのは、樹脂の特性(例えば融点、軟化温度、摺動発熱による温度上昇に伴う樹脂の粘弾性・接着性等の変化)によるものと考えられる。
【0014】
次に、本発明に用いるポリオキシメチレン樹脂とは、オキシメチレン基(-CH2O-)を主たる構成単位とする高分子化合物で、ポリオキシメチレンホモポリマー、オキシメチレン基以外に他の構成単位を少量含有するコポリマー、ターポリマー、ブロックコポリマーの何れにてもよく、又、分子が線状のみならず分岐、架橋構造を有するものであってもよい。又、その重合度等に関しても特に制限はない。
【0015】
本発明で用いる(a)メラミン樹脂は、基本的にはメラミンとホルムアルデヒドの重縮合物であり、水に可溶でも不溶でもよく、その構造として網状化していてもよい。また、メラミンの50モル%未満を他の縮合可能な物質、例えば、ジシアンジアミド、ベンゾグアナミンなどで置換されていてもよい。好ましくは、温水に不溶でその平均重合度が2以上のものである。
【0016】
本発明に用いられる斯かるメラミン樹脂は、公知の方法で製造することができる。例えば、pH8〜9に調整されたホルムアルデヒド水溶液にメラミンを添加し、温度を60〜90℃に保持して、撹拌しながら溶解、反応させ、反応が進み溶液が白濁してきたら、適当な時間で冷却し縮合反応を停止させ、これを噴霧乾燥などの方法で乾燥し、さらに、必要に応じて粉砕、篩い分け等の処理を行うことにより、所望の粒径のメラミン樹脂(メラミン−ホルムアルデヒド重縮合物)を得ることができる。
【0017】
本発明で用いる斯かるメラミン樹脂は、粒径が100μm以下であることが必須である。100μmを超える粒径のメラミン樹脂を使用すると、機械的物性の低下、成形品表面の外観悪化を生じ好ましくない。
【0018】
本発明において添加配合される(a)メラミン樹脂の量は、ポリオキシメチレン樹脂組成物中の割合として0.01〜1.0重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%である。この添加量が、過少の場合は充分な効果が得られず、又、過大の場合には、機械的物性の低下、成形品表面の外観悪化を生じ好ましくない。
【0019】
本発明で使用する組成物には、熱安定性を改善する目的で、更に、(b)立体障害性フェノール系酸化防止剤を添加することが好ましい。(b)立体障害性フェノール系酸化防止剤としては、2,2'−メチレンビス(4メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6 −ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス−〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5 −トリメチル−2,4,6 −トリス(3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル)ベンゼン、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5' −ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、4,4'−メチレンビス(2,6 −ジ−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデン−ビス−(6−t−ブチル−3−メチル−フェノール)、ジ−ステアリル−3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)等が挙げられる。本発明において添加配合される(b)立体障害性フェノール系酸化防止剤の量は、ポリオキシメチレン樹脂組成物中の割合として0.01〜3.0重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%である。この添加量が、過少の場合は充分な効果が得られず、又、過大の場合には、熱安定性の効果が飽和に達し、むしろ変色傾向が生じ好ましくない。
【0020】
本発明で使用する組成物には、更に、(c)脂肪酸アミド、脂肪酸エステルの中から選ばれた1種類以上の潤滑剤、(d)ホルムアルデヒドと反応性を有する窒素含有化合物、(e)金属含有化合物のいずれか1種以上を配合することが好ましい。
本発明において使用される(c)脂肪酸アミドとしては、好ましくは10以上の炭素原子を含有する少なくとも一種の飽和、または、不飽和脂肪酸とアミンあるいはジアミンとから誘導されたものである。(c)脂肪酸エステルとしては、好ましくは10以上の炭素原子を含有する少なくとも一種の飽和、または、不飽和脂肪酸とアルコールから誘導されたものである。斯かる脂肪酸アミドと脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、オレイン酸等が挙げられ、脂肪酸エステルを構成するアルコールの例としては、プロピル、ブチル、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール、プロピル、ブチル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、ベヘニル等の一価アルコールが挙げられる。特に好ましい(c)脂肪酸アミド、脂肪酸エステルとしては、エチレンビスステアリルアミド、グリセリンモノステアレートが挙げられる。本発明において添加配合される(c)脂肪酸アミド、脂肪酸エステルの量は、ポリオキシメチレン樹脂組成物中の割合として0.01〜10.0重量%、好ましくは0.1〜5.0重量%である。
【0021】
(d)ホルムアルデヒドと反応性を有する窒素含有化合物としては、グアナミン化合物(例えば、メラミン、ベンゾグアナミン、シアノグアニジン、CTUグアナミン)、ヒドラジド化合物(例えば、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ナフタレン酸ヒドラジド)、ポリアミド(例えば、ナイロン3、ナイロン12、ナイロン6・10、ナイロン6・66・610、ナイロン6.66.610・612の如き単独、または、共重合ポリアミド、メチロール基等を有する置換ポリアミド、ナイロン塩、カプロラクタムとから合成、または、カプロラクトン、カプロラクタムとの組み合わせから合成されるポリエステルアミド等のポリアミド類)、ポリアミノトリアゾール、ジカルボン酸ヒドラジド、尿素から加熱により合成される加熱縮合体、尿素及びジアミン類とから合成される窒素含有縮合重合体、尿素を加熱して合成される尿素加熱縮合体、シアノグアニジン類とホルムアルデヒドとの重縮合物等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。本発明において添加配合される(d)ホルムアルデヒドと反応性を有する窒素含有化合物の量は、ポリオキシメチレン樹脂組成物中の割合として0.01〜1.0重量%である。
【0022】
(e)金属含有化合物としては、アルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリまたはアルカリ土類金属のカルボン酸塩、アルカリまたはアルカリ土類金属の酸化物、アルカリまたはアルカリ土類金属の炭酸塩が挙げられ、具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウム、12ヒドロキシステアリン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムであるが、何らこれらに限定されるものではない。本発明において添加配合される(e)金属含有化合物の量は、ポリオキシメチレン樹脂組成物中の割合として0.01〜1.0重量%である。
【0023】
本発明で使用するポリオキシメチレン樹脂組成物には、更にその目的に応じ所望の特性を付与するために、公知の各種添加剤を1種類以上配合し得る。例えば、各種の着色剤、離型剤、核剤、帯電防止剤、耐候(光)安定剤、その他の界面活性剤、各種ポリマー等である。更に、本発明の目的を大きく損なわない範囲であるならば、公知の無機、有機、金属等の繊維状、板状、粉粒状等の充填剤を1種または2種以上複合させて配合することも可能である。このような無機充填剤の例としては、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、ガラスビーズ、タルク、マイカ、白マイカ、ウォラストナイト等が挙げられるが、何等これらに限定されるものではない。
【0024】
本発明で使用のポリオキシメチレン樹脂組成物の調製は、従来の樹脂組成物調製法として一般に用いられる公知の方法により容易に調製される。例えば、各成分を混合後、一軸または、二軸の押出機により、練り込み押出してペレットを調製する方法、一旦組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを所定量混合(希釈)して成形に供し、成形後に目的組成の成形品を得る方法、成形機に各成分の1または2以上を直接仕込む方法等、何れも使用できる。又、かかる組成物の調製において、基体であるポリオキシメチレン樹脂樹脂の一部または全部を粉砕し、これをその他の成分を混合した後、押出等を行うことは、添加物の分散性を良くする上で好ましい方法である。
【0025】
本発明において、摺動相手材はポリオキシメチレン樹脂材料からなる成形品又はポリブチレンテレフタレート樹脂材料からなる成形品である。ここで、摺動相手としてのポリオキシメチレン樹脂材料は、本願で規定する組成と同一でも異なっていてもよい。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂材料としても特に限定はなく、一般的に広く用いられる各種ポリブチレンテレフタレート樹脂およびそ組成物が何れも使用できる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、以下の例に示した評価の方法は次の通りである。
・比磨耗量
鈴木式摩擦・磨耗試験機を用い、雰囲気温度23℃で、表1のPV(面圧・線速度)条件下での比磨耗量を測定した。相手材は、同材、及び、一般のポリブチレンテレフタレート樹脂(ポリプラスチックス(株)製、商品名ジュラネックス2002)である。
【0027】
【表1】

【0028】
・成形品表面状態
50mm×50mm×2mmtのセンターピンゲート方式の平板試験片を、シリンダー温度190℃、射出圧力74MPa、射出速度3m/minの成形条件にて成形してその表面状態(剥離・ジェッティング・表面あれ)を目視で観察し、以下のようなランク付けをした。
(良)5−4−3−2−1(不良)
実施例1〜9
ポリオキシメチレン樹脂共重合体(ポリプラスチックス(株)製、ジュラコン(登録商標)M270)に、(a)平均粒径が100μm以下のメラミン樹脂、(b)立体障害性フェノール系酸化防止剤、(c)脂肪酸アミドまたは脂肪酸エステル、(d)ホルムアルデヒドと反応性を有する窒素含有化合物、(e)金属含有化合物
を表2に示した割合で添加混合し、二軸押出機にて200℃の樹脂温度で押出しを行ない、ペレット状の組成物を得て上記評価を行った。結果を表2に示す。
比較例1〜5
比較のため、表3に示すように、本願で規定する(a)メラミン樹脂を配合しない場合等について、上記実施例と同様にしてペレット状の組成物を調製し、上記評価を行った。結果を表3に示す。尚、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルを添加しない場合についても同様に組成物を調製したが、成形時の離型性が劣り成形が困難であり、芳しくないものであった。
【0029】
尚、実施例及び比較例において使用した(a)メラミン樹脂、(b) 立体障害性フェノール系酸化防止剤、(c)脂肪酸アミド及び脂肪酸エステル、(d)ホルムアルデヒドと反応性を有する窒素含有化合物、(e)金属含有化合物、並びに比較例として用いたその他化合物は以下の通りである。
(本発明で規定する特定のメラミン樹脂)
・粒径100μm以下のメラミン樹脂
メラミン1モルに対してホルムアルデヒド1.2モルを用い、水溶液中、pH8、温度70℃で反応させ、反応系を白濁させることなく水溶性初期縮合体のメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を生成させた。次いで、攪拌しながら反応系をpH6.5に調整して、攪拌を継続し、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を析出させ、乾燥により粗製メラミン−ホルムアルデヒド樹脂の粉粒体を得た。この粉粒体を60℃の温水で30分間洗浄し、濾過した後、残渣をアセトンで洗浄し、これを乾燥することにより白色粉末の精製メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を得た。更に、これを篩い分けすることにより粒径が100μm以下(平均粒径14μm)のメラミン樹脂を得た。
・粒径120μm以上のメラミン樹脂
メラミン1モルに対してホルムアルデヒド1.2モルを用い、水溶液中、pH8、温度70℃で反応させ、反応系を白濁させることなく水溶性初期縮合体のメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を生成させた。次いで、攪拌しながら反応系をpH6.5に調整して、攪拌を継続し、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を析出させ、乾燥により粗製メラミン−ホルムアルデヒド樹脂の粉粒体を得た。この粉粒体を60℃の温水で30分間洗浄し、濾過した後、残渣をアセトンで洗浄し、これを乾燥することにより白色粉末の精製メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を得た。更に、これを篩い分けすることにより粒径が120μm以上であるメラミン樹脂を得た。
(b)立体障害性フェノール系酸化防止剤
b−1;ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート〕
b−2;トリエチレングリコール−ビス−〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕
(c)脂肪酸アミド、及び、脂肪酸エステル
c−1;グリセリンモノステアレート
c−2;エチレンビスステアリン酸アミド
c−3;グリセリンモノベヘネート
(d)ホルムアルデヒドと反応性を有する窒素含有化合物
d−1;ベンゾグアナミン
d−2;セバシン酸ジヒドラジド
(e)金属含有化合物
e−1;12ヒドロキシステアリン酸カルシウム
その他添加剤
・メラミン;粒径100μm以下99%以上
・タルク;粒径100μm以下99%以上 平均粒径3μm
・PE-g-AN/S;ポリエチレンにアクリルニトリル−スチレン共重合体をグラフト共重合させたもの
【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
表2、表3の結果から明らかなように、摺動相手がポリオキシメチレン樹脂からなる成形品であり、PV値が1.0MPa・cm/s未満での摺動の場合、あるいは摺動相手がポリブチレンテレフタレート樹脂からなる成形品であり、PV値が2.0MPa・cm/s未満での摺動の場合においては、比較例の成形品でも比磨耗量が少ない(実施例と同等)ことがあるが、それぞれのPV値が一定値以上になると比較例の成形品では比磨耗量が顕著に増大し、実用性に欠けるものとなるのに対し、本発明の成形品は、このような高面圧力・高線速度の領域においても、摩擦磨耗特性が優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシメチレン樹脂に(a)粒径が100μm以下のメラミン樹脂0.01〜1.0重量%(組成物中)を添加配合してなるポリオキシメチレン樹脂組成物からなる成形品であって、下記(1)の摺動条件での摺動部品に使用されるポリオキシメチレン樹脂成形品。
(1)摺動相手がポリオキシメチレン樹脂からなる成形品であり、PV値(面圧力×線速度)が1.0MPa・cm/s以上での摺動
【請求項2】
ポリオキシメチレン樹脂に(a)粒径が100μm以下のメラミン樹脂0.01〜1.0重量%(組成物中)を添加配合してなるポリオキシメチレン樹脂組成物からなる成形品であって、下記(2)の摺動条件での摺動部品に使用されるポリオキシメチレン樹脂成形品。
(2)摺動相手がポリブチレンテレフタレート樹脂からなる成形品であり、PV値(面圧力×線速度)が2.0MPa・cm/s以上での摺動
【請求項3】
ポリオキシメチレン樹脂組成物が、さらに(b)立体障害性フェノール系酸化防止剤0.01〜3.0重量%(組成物中)を添加配合されたものである請求項1又は2記載のポリオキシメチレン樹脂成形品。
【請求項4】
ポリオキシメチレン樹脂組成物が、さらに(c)脂肪酸アミド、脂肪酸エステルの中から選ばれた潤滑剤0.05〜10.0重量%、(d)ホルムアルデヒドと反応性を有する窒素含有化合物0.01〜1.0重量%及び(e)金属含有化合物0.01〜1.0重量%(それぞれ組成物中)から選ばれたいずれか1つ以上を添加配合されたものである請求項1〜3の何れか1項記載のポリオキシメチレン樹脂成形品。

【公開番号】特開2006−143869(P2006−143869A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335353(P2004−335353)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】