説明

ポリオレフィン系樹脂押出発泡シート並びに該発泡シートからなるガラス基板用間紙およびガラス基板用包装材

【課題】本発明は、高い帯電防止性能を有すると共に、被包装物の表面を汚染することがなく緩衝性に優れており、特にガラス基板包装用シート又は間紙として使用した場合に、ガラス基板表面に付着した異物を除去する際に優れた洗浄性を発現させることができる帯電防止性ポリオレフィン系樹脂押出発泡シートを提供することを目的とする。
【解決手段】界面活性剤を含有する親水性重合体からなる高分子型帯電防止剤がポリオレフィン系樹脂100重量部に対して5〜30重量部添加されたポリオレフィン系樹脂押出発泡シートであって、該発泡シートの坪量(g/m)と該発泡シートの飽和電圧(kV)との積が75kV・g/m以下であり、該発泡シートのエタノール水溶液を用いた超音波洗浄後の表面抵抗率が1×10〜1×1014(Ω)であるポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性に優れたポリオレフィン系樹脂押出発泡シートに関し、特にガラス基板の包装用シートや間紙として好適なポリオレフィン系樹脂押出発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリオレフィン系樹脂押出発泡シートは、柔軟性があり緩衝性に富み、被包装物を傷付け難いことから好適な包装材料や緩衝材料として広く使用されてきている。しかしポリオレフィン系樹脂押出発泡シートのような発泡体は静電気の作用により帯電し易い性質が高く、埃や塵が付着し易いことから、帯電防止剤を用いて帯電防止性能を付与したポリオレフィン系樹脂押出発泡シートが知られている。
【0003】
帯電防止剤としては所謂界面活性剤タイプの帯電防止剤が安価で入手し易いことから汎用されてきている。界面活性剤タイプのものは帯電防止剤が樹脂中から表面にブリードアウトし空気中の水分を吸着することにより帯電防止性能が発現されるので、比較的湿度の高い雰囲気の条件下では帯電防止性を発現し易く、湿度が高く温度が比較的高い雰囲気下、例えば夏季は帯電防止効果が容易に発現するものの、ブリードアウト物が被包装物の表面に付着し表面を汚染したり、表面が白化したりする現象が見られる。一方、湿度が低い乾燥した雰囲気下、例えば冬季などは帯電防止効果が得られ難い等々の種々の問題がある。
【0004】
上記の界面活性剤タイプの帯電防止剤の欠点である被包装物の表面の汚染等を招くことなく帯電防止性能を付与する高分子型帯電防止剤を使用した発泡体が知られており、例えば、特許文献1には、高分子型帯電防止剤とポリオレフィン系樹脂と発泡剤とを混練し押出発泡させた、持続性を有する帯電防止性ポリオレフィン系樹脂発泡体が開示されている。
【0005】
各種の画像表示機器用のディスプレー用ガラス基板は薄く割れ易いことからその包装や梱包は厳重に行われる。この種のガラス基板の包装、梱包に際しては外部からの塵や埃などがガラス基板に付着することによるガラス表面の汚染を防止することが必要である。ガラス基板の包装梱包方法としては、複数枚のガラス基板を、梱包用収容箱中に、一定間隔を設けて縦置きに並列配置して収納、保管したり、ガラス基板間に間紙を介在させるなどして重ね合わせて梱包用収容箱や梱包用枠等に収納、保管したり、またそのような包装梱包状態で外部からの塵や埃等の異物が進入しないようにして搬送される。例えば、特許文献2ではガラス基板間に介在させる間紙としてポリプロピレンシートまたはポリエチレンシートを使用することが開示されている。特許文献3、4にはクッション性を有する発泡樹脂シートを使用して包装梱包する方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−142042号公報
【特許文献2】特開2003−226354号公報
【特許文献3】特開2005−239242号公報
【特許文献4】特開2005−231657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の各種画像表示用機器のディスプレーに使用されるガラス基板は、表面には塵や埃、その他の異物が存在しないことが要求されるためにガラス基板は間紙や包装用シート等の包装材料の除去後加工に際して、ガラス基板表面へ包装材料や間紙に含有された帯電防止剤等の付着や転写によるガラス表面の汚染、また空気中の塵や埃のガラス表面への付着等によるガラス表面に存在する異物除去のために洗浄に供される。前記特許文献4に示された10〜1012Ω/□の表面固有抵抗値を有する発泡樹脂シートをガラス基板間の間紙や包装用シートとして使用した場合でもガラス基板表面の異物を洗浄するためには洗浄操作を行う必要があり、厳しく要求される高い洗浄度を十分に満足できる程度に繰り返し洗浄しなければならず作業効率の点で課題を有する。
したがって、ガラス表面への異物の付着を抑制してガラス基板表面に付着してしまった異物の洗浄除去が速やかに行われ、要求される高い洗浄度を満足させ得る包装材料を提供することは有意義なことである。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑み、高い帯電防止性能を有すると共に、被包装物の表面を汚染することがなく緩衝性に優れており、特にガラス基板包装用シート又は間紙として使用した場合に、ガラス基板表面から包装材料また間紙を取り除く際に静電気の発生が少なく帯電減衰性に優れており、またガラス基板表面に付着した異物を除去する際に優れた洗浄性を発現させることができる帯電防止性ポリオレフィン系樹脂押出発泡シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、帯電防止性を付与するための帯電防止剤として界面活性剤を含有する親水性重合体からなる特定の高分子型帯電防止剤を使用したポリオレフィン系樹脂押出発泡シートが高い帯電防止性能を有すると共に、該発泡シートにて覆われていたガラス基板は、ガラス表面を洗浄した場合に驚くべき優れた洗浄性能を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)界面活性剤を含有する親水性重合体からなる高分子型帯電防止剤がポリオレフィン系樹脂100重量部に対して5〜30重量部添加されたポリオレフィン系樹脂押出発泡シートであって、該発泡シートの坪量(g/m)と該発泡シートの飽和電圧(kV)との積が75kV・g/m以下であり、該発泡シートのエタノール水溶液を用いた超音波洗浄後の表面抵抗率が1×10〜1×1014(Ω)であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。
【0011】
(2)前記押出発泡シートの基材樹脂が、190℃における溶融張力が3〜40cNのポリエチレン系樹脂であることを特徴とする上記(1)に記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。
【0012】
(3)前記高分子型帯電防止剤において、界面活性剤がアニオン系界面活性剤であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。
【0013】
(4)前記押出発泡シートの表面におけるアニオン系界面活性剤の存在量が2〜20ng/cmであることを特徴とする上記(3)に記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。
【0014】
(5)前記高分子型帯電防止剤における親水性重合体がポリエチレンオキサイドまたはポリエチレンオキサイドを含むブロック共重合体であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。
【0015】
(6)前記押出発泡シートの幅が1200mm以上、見かけ密度が15〜180g/Lであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。
【0016】
(7)前記高分子型帯電防止剤が、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し8重量部超20重量部以下添加されていることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シートに係る。
【0017】
更に本発明は、(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シートからなり、厚みが0.3mm以上1.0mm未満、見かけ密度が40〜180g/L、該発泡シートの幅方向に1cm間隔で測定される厚み(A)〔mm〕に基づき算出される該発泡シートの幅方向の10cm間隔の平均厚みが、該発泡シートの全幅の平均厚み(B)〔mm〕を基準にして(平均厚み(B)×0.8)〜(平均厚み(B)×1.2)の範囲内であり、かつ該発泡シートを幅方向に5等分した各部分の前記厚み(A)の各々の最大厚みにおける最大値と最小値との差が0.08mm以下であることを特徴とするガラス基板用間紙に係る。
【0018】
また本発明は(9)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シートからなり、見かけ密度が15〜180g/L、平均気泡径が下記(1)、(2)及び(3)式を満足することを特徴とするガラス基板用包装材に係る。
(数2)
0.2 ≦Z/X≦ 0.6・・・(1)
0.2 ≦Z/Y≦ 0.6・・・(2)
0.1 ≦ Z ≦ 0.5 ・・・(3)
(但し、X、Y及びZは、押出方向の平均気泡径:X(mm)、幅方向の平均気泡径:Y(mm)及び厚み方向の平均気泡径:Z(mm)とする。)
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る帯電防止性を有するポリオレフィン系樹脂押出発泡シートは、帯電防止剤として界面活性剤を含有する親水性重合体からなる高分子型帯電防止剤を含有するので、帯電防止性にすぐれており、静電気に伴う空気中の塵や埃の付着を防止すると共に、エタノール水溶液による超音波洗浄後の表面抵抗率が1×10〜1×1014(Ω)であるため、湿度の影響を大きく受けることなく持続性に優れた帯電防止効果を発現する。
【0020】
本発明の帯電防止性を有するポリオレフィン系樹脂押出発泡シートは、飽和電圧が小さく帯電減衰性に優れており、被包装物から包装材料を取去る際に、包装材料が被包装物に纏わり付くことがなく取り扱い易い。また被包装物を包装した場合被包装物表面に多量に帯電防止剤が移行したりすることが抑制される。
【0021】
本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡シートをガラス基板の包装用の間紙や包装材として使用した場合、該発泡シートに覆われたガラス基板は、ガラス基板表面に付着した異物の洗浄性にすぐれており、洗浄後のガラス基板表面の異物の存在が極めて少ない洗浄度合いに優れた効果を奏する。
【0022】
また本発明の帯電防止性を有するポリオレフィン系樹脂押出発泡シートは、特定の見かけ密度、厚みの均一性、平均気泡径等の構成を有することにより、特に取扱い性や緩衝性に優れたものとなり、ガラス基板の包装用の間紙や包装材として好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の帯電防止性を有するポリオレフィン系樹脂押出発泡シートについて詳細に説明する。
本発明の帯電防止性を有するポリオレフィン系樹脂押出発泡シート(以下、単に「押出発泡シート」と記すことがある。)は、界面活性剤を含有する親水性重合体からなる高分子型帯電防止剤(以下、単に「高分子型帯電防止剤」と記すことがある。)が、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して5〜30重量部の範囲で添加されており、前記押出発泡シートの坪量(g/m)と押出発泡シートの飽和電圧(kV)との積が75kV・g/m以下であり、エタノールによる超音波洗浄後の表面抵抗率が1×10〜1×1014(Ω)の値を示すものである。
【0024】
本発明の押出発泡シートの帯電防止機能を示す飽和電圧(kV)は小さく、押出発泡シートの坪量(g/m)と押出発泡シートの飽和電圧(kV)との積が75kV・g/m以下である。ここで、飽和電圧(kV)は、高分子型帯電防止剤を含有するポリオレフィン系樹脂押出発泡シートの厚みや坪量が大きければ飽和電圧は小さくなり、一方、厚みや坪量が小さければ飽和電圧は大きくなる。したがって、飽和電圧を小さくするには坪量や厚みを大きくすればよい。本発明においては押出発泡シートの厚みは小さく(薄く)、坪量(g/m)が大きくないのにも拘わらず、飽和電圧が小さい値を示す。本発明の押出発泡シートにおいて帯電圧減衰性能の指標として、押出発泡シート坪量(g/cm)と押出発泡シートの飽和電圧(kV)の積を採用することができ、この値が小さいことは帯電減衰性に優れており被包装物の帯電性が小さいことを意味するもので、被包装物に押出発泡シートが纏わりつく現象が抑えられ、優れた帯電防止性能を示すものといえる。
【0025】
本発明において、押出発泡シートの飽和電圧(kV)の測定方法は、株式会社宍戸商会製のスタティック・オネストメーターTYPE S−5109装置を使用して、JIS L1094(1988)に基づいて測定される。具体的には、縦45mm、横45mmの正方形の試験片を測定面が上になるように測定装置上の試験片取付枠に取付け、印加部の針電極の先端から試験片上面までの距離を20mm、受電部の電極から試験片までの距離を15mmに各々調整する。次に、ターンテーブルを回転させながら(+)10kVの電圧を印加し、最大帯電圧に達し安定した電圧の値を当該飽和電圧とする。なお、測定は5回以上行いその平均値を採用する。
【0026】
本発明の押出発泡シートの飽和電圧が小さい値を示すことは、おそらく基材樹脂と高分子型帯電防止剤との混練溶融物に発泡剤を混練した発泡剤を含有する溶融樹脂の押出発泡に際して、ポリオレフィン系樹脂中に高分子型帯電防止剤の分散状態が良好なネットワークを形成していることによるものと推測される。
【0027】
本発明において、前記坪量(g/m)は、縦25mm×横25mm×押出発泡シートの厚みの試験片を切り出し、試験片の重量(g)を測定した後、その重量を1600倍することで得られる。また、押出発泡シートの見かけ密度は押出発泡シートの坪量(g/m)を後述する押出発泡シートの全幅の平均厚み(B)で除した値を単位換算し、発泡シートの見かけ密度(g/L)とする。
【0028】
本発明の押出発泡シートは、被包装物の包装、梱包に使用される包装材料として用いられるものであることから緩衝性、柔軟性、生産性等から厚みは0.2mm〜5.0mm、好ましくは0.3〜3mmであり、特にガラス基板用の包装用シートまたは間紙として使用される場合にはシート厚みは0.3mm〜1.0mmのものが好ましい。なお、押出発泡シートの厚みは、後述する押出発泡シートの全幅の平均厚み(B)と同じであり、押出発泡シートの全幅に亘って幅方向に1cm間隔で測定される押出発泡シートの厚み(mm)の算術平均値である。
【0029】
本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡シートの見かけ密度は、緩衝性、表面保護性、取扱作業性などの理由から10〜230g/Lであり、好ましくは15〜180g/Lであり、更に好ましくは40〜180g/Lである。例えば、ガラス基板包装用シートやガラス基板間に介在させる間紙として使用する場合、特にガラス基板が1000×1200mmの寸法以上の大寸法のガラス基板の包装材や間紙に使用する押出発泡シート幅が1200mm以上のものの場合は、15〜180g/L、特に40〜180g/Lのものが好ましい。
【0030】
本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡シートは、押出発泡シート厚みが0.3mm以上1.0mm未満で、見かけ密度が40〜180g/Lである押出発泡シートにおいて、押出発泡シートの幅方向に1cm間隔で測定される押出発泡シートの厚み(A)〔mm〕に基づき算出される10cm間隔の平均厚みが、前記押出発泡シートの厚み(A)に基づき算出される全幅の平均厚み(B)〔mm〕を基準にして(平均厚み(B)×0.8)〜(平均厚み(B)×1.2)の範囲内であり、かつ押出発泡シートを幅方向に5等分した各部分の前記押出発泡シートの厚み(A)の各々の最大厚みにおける最大値と最小値(5つの最大厚みの内の最大値と最小値)との差が0.08mm以下のものであることが好ましく、これらの条件を満足する押出発泡シートは、表面が平坦で凹凸がなく肉厚のバラツキの小さい平滑性にすぐれた外観が良好なガラス基板用間紙として優れた押出発泡シートであることを示す。
【0031】
上記押出発泡シートの厚みは、株式会社山文電気製オフライン厚み測定機TOF−4Rを使用し測定することができる。まず押出発泡シート全幅について、1cm間隔で厚みの測定を行う。この1cm間隔で測定される押出発泡シート厚み(A)を基に、10cm間隔の平均厚み、全幅の平均厚み(B)、押出発泡シートを幅方向に5等分した各部分の最大厚みを求める。更に押出発泡シート厚み測定について詳しく説明すると、10cm間隔の平均厚みの測定は、幅方向において、押出発泡シートの一方の端部から1cmの部分、2cmの部分、3cmの部分、・・・・10cmの部分の計10箇所の押出発泡シートの厚み(A)の算術平均値を最初の10cm間隔の平均厚みとし、押出発泡シートの一方の端部から11cmの部分、12cmの部分、13cmの部分、・・・・20cmの部分の計10箇所の押出発泡シートの厚み(A)の算術平均値を2番目の10cm間隔の平均厚みとし、以降同様にして、3番目、4番目・・・・n番目の10cm間隔の平均厚みを求める。また、押出発泡シートの他方の端部が最後の10cm間隔の平均厚みを求めるための10箇所目の押出発泡シート厚み(A)の測定箇所とならない場合、即ち最後に10cmに満たない測定部分が存在する場合、その部分については10cm間隔の平均厚み測定対象から除外する。また、全幅の平均厚み(B)は、幅方向において、押出発泡シートの一方の端部から他方の端部へ1cm間隔で測定される押出発泡シート厚み(A)の全ての算術平均値とする。また、押出発泡シートを幅方向に5等分した各部分の該発泡シートの厚み(A)の各々の最大厚みにおける最大値と最小値との差とは、押出発泡シートを幅方向に5等分した各部分において、前記方法にて求められた押出発泡シートの厚み(A)の内、該5等分した各部分に対応する範囲のデータの最大値を各部分の最大厚みとし、各部分の計5つの最大厚みの内で最大の値と最小の値に着目し、それらの値の差(最大の値−最小の値)として求められる値である。尚、上記の測定に使用する押出発泡シートは、温度23±5℃、相対湿度50%の条件下で24時間以上状態調整したものを用いる。
【0032】
また、本発明の押出発泡シートは、好ましくは見かけ密度が15〜180g/L、更に好ましくは40〜180g/Lである押出発泡シートにおいて、平均気泡径が下記(1)、(2)及び(3)式を満足することがガラス基板用包装材として特に好ましい。
(数3)
0.2 ≦Z/X≦ 0.6・・・(1)
0.2 ≦Z/Y≦ 0.6・・・(2)
0.1 ≦ Z ≦ 0.5 ・・・(3)
(但し、X、Y及びZは、押出方向の平均気泡径:X(mm)、幅方向の平均気泡径:Y(mm)及び厚み方向の平均気泡径:Z(mm)とする。)
【0033】
なお、上記の式において、押出方向の平均気泡径:X(mm)、幅方向の平均気泡径:Y(mm)及び厚み方向の平均気泡径:Z(mm)は下記により測定される。
〔押出方向の平均気泡径:X(mm)〕
押出発泡シートの幅方向中心部を、押出方向に沿って垂直に切断し、その断面の中央部付近に押出方向に長さ30mmの線分を引き、この線分と交差する気泡の数nを測定し、線分の長さを(気泡数n−1)で割った値を押出方向の平均気泡径:X(mm)として採用する。
〔幅方向の平均気泡径:Y(mm)〕
押出発泡シートの押出方向に対して直交する垂直断面の中央部付近に幅方向に長さ30mmの線分を引き、この線分と交差する気泡の数nを測定し、線分の長さを(気泡数n−1)で割った値を幅方向の平均気泡径:Y(mm)として採用する。
〔厚み方向の平均気泡径:Z(mm)〕
押出発泡シートの幅方向中心部を、押出方向に沿って垂直に切断し、その断面の中央部付近に押出発泡シートの全厚みに亘る線分を引き、この線分と交差する気泡の数を測定し、線分の長さを気泡数で割った値を厚み方向の平均気泡径:Z(mm)として採用する。
なお、上記の式は、押出発泡シートの厚み方向の平均気泡径が、押出方向および幅方向の平均気泡径に比べ小さく気泡形状が偏平状なものであることを意味する。
【0034】
上記の押出発泡シートの平均気泡径の調整方法としては、用いるポリオレフィン系樹脂にもよるが例えば、ダイスの圧力を上げることによって平均気泡径を小さくする方法や気泡調整剤の量で調整することができる。また、Z/X、Z/Yの気泡形状の調整方法としては、用いるポリオレフィン系樹脂にもよるが、例えば、押出方向に気泡を偏平状にする場合には吐出量を減少させる、引き取り速度を上げる等の方法で調整できる。幅方向に気泡を偏平状にする場合には、発泡体が幅方向に広がるように押出する方法で調整でき、環状ダイスを用いる場合は、環状ダイスの吐出口径と円柱状の冷却装置であるマンドレルの直径との比(マンドレルの直径/環状ダイスの吐出口径)を大きくする方法で調整できる。一方、気泡を球状にする場合には、吐出量を増加させる、引き取り速度を下げる、発泡体が幅方向に広がらないように押出する方法で調整でき、環状ダイスを用いる場合は、環状ダイスの吐出口径と円柱状の冷却装置であるマンドレルの直径との比を小さくする方法で調整できる。Z/X、Z/Yの調整は、これらの方法を適宜組み合わせて調整することができる。
【0035】
本発明の押出発泡シートの気泡形状がこのような扁平状の気泡形状であることにより、押出発泡シートは剛性を示しコシがあり、例えば、縦置きに配置されたガラス基板の間紙として使用した場合にシートの垂れ下がりや腰折れが抑えられるので、特に大寸法のガラス基板の包装用シートまたは間紙として好適である。押出発泡シートの剛性が高いことは大寸法のガラス基板の間紙としてガラス基板間に介在させた押出発泡シートをガラス基板表面から、例えば吸引除去する際の作業性をよくすることができる。
【0036】
本発明の押出発泡シートにおいて、厚み方向の平均気泡径:Z(mm)が上記(3)式で示す範囲であれば、押出発泡シートの柔軟性と剛性とのバランス、表面平滑性、表面保護性に優れ、外観が特に良好なものとなる。なお、Zの範囲は、下限が0.2mmであることが好ましく、0.3mmであることがより好ましく、上限が0.4mmであることが好ましい。
【0037】
本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡シートはエタノール水溶液による超音波洗浄後の表面抵抗率が1×10〜1×1014(Ω)の値を示す。本発明の押出発泡シートがエタノール水溶液による超音波洗浄後の表面抵抗率が上記の値を示すということは、使用環境によって帯電防止機能が容易に失われず長期間に亘って相応の帯電防止効果を発現するものであることを示すものである。
【0038】
押出発泡シートのエタノール水溶液による超音波洗浄後の表面抵抗率は、下記の試験片の状態調整を行ったのち、JIS K6271(2001)に準拠して測定される。すなわち、測定対象物である押出発泡シートから縦100mm×横100mm(厚さは押出発泡シートの厚み)の大きさに切り出した試験片を23℃のエタノール40重量%水溶液中に沈めて超音波洗浄を24時間行った後、試験片を乾燥(温度30℃、相対湿度30%の雰囲気下に36時間放置する)することにより試験片の状態調整を行って、JIS K6271(2001)に準拠して印加電圧500Vの条件で表面抵抗率を求める。
【0039】
本発明の押出発泡シートが帯電防止性能を十分に発現し所期の目的を達成するためには、界面活性剤を含有する親水性重合体からなる高分子型帯電防止剤が、押出発泡シートの基材樹脂であるポリオレフィン系樹脂100重量部に対して5〜30重量部添加されている必要がある。該高分子型帯電防止剤の添加量が5重量部未満の場合には満足すべき十分な帯電防止性能が発現されず帯電防止効果が得られ難い。一方30重量部を超える添加量の場合には発泡性に影響し低密度の見かけ密度を有し気泡形状が均一な押出発泡シートを得られない虞がある。したがって、上記の理由から、前記高分子型帯電防止剤の添加量は8重量部超が好ましく、10重量部以上がより好ましく、一方、25重量部以下が好ましく、20重量部以下より好ましい。
【0040】
本発明に用いられる前記高分子型帯電防止剤は、界面活性剤を含有する親水性重合体からなり、該高分子型帯電防止剤は数平均分子量2000以上であることが好ましく、より好ましくは2000〜300000、更に好ましくは5000〜200000、特に好ましくは8000〜50000であり、通常の界面活性剤タイプの帯電防止剤とは区別されるものである。尚、該高分子型帯電防止剤の数平均分子量の上限は概ね1000000である。
【0041】
なお、前記数平均分子量は、高温ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて求められる。例えば、高分子型帯電防止剤がポリエーテルエステルアミドやポリエーテルを主成分とする親水性樹脂の場合にはオルトジクロロベンゼンを溶媒として試料濃度3mg/mlとし、ポリスチレンを基準物質としてカラム温度135℃の条件にて測定される値である。なお、溶媒の種類、カラム温度は、高分子型帯電防止剤の種類に応じて適宜変更する。
【0042】
本発明において使用される高分子型帯電防止剤は、親水性重合体中に界面活性剤を含有するものである。該親水性重合体としては、ポリエチレンオキサイド、ポリエーテル部分がポリエチレンオキサイドであるポリエーテルアミド,ポリエーテルエステル,およびポリエーテルエステルアミド、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドとのブロック共重合体、ポリエチレンオキサイドとポリカプロラクトンとのブロック共重合体、ポリエチレンオキサイドとポリオレフィンとのブロック共重合体などが挙げられる。なお、上記ポリエチレンオキサイドは、分子末端にメトキシ構造を有するものであっても良い。
【0043】
また、前記の親水性重合体のうち、ポリエチレンオキサイドを含むブロック共重合体が好ましく、特に、ポリエチレンオキサイドとポリオレフィンとのブロック共重合体が好ましい。また、ポリエチレンオキサイドを含むブロック共重合体中のポリエチレンオキサイドの含有量は、十分な帯電防止機能を発現させる上で、50重量%以上、更に75重量%以上、特に90重量%以上であることが好ましい。
【0044】
本発明において前記高分子型帯電防止剤として好ましく用いられるポリエチレンオキサイドとポリオレフィンとのブロック共重合体(A)のポリオレフィン(a)のブロックとしては、カルボニル基、好ましくは、カルボキシル基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a1)、水酸基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a2)、アミノ基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a3)が使用できる。さらに、カルボニル基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a4)、水酸基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a5)、アミノ基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a6)が使用できる。これらのうち、変性のし易さからカルボニル基を有するポリオレフィン(a1)及び(a4)が好ましい。
【0045】
本発明において前記の高分子型帯電防止剤はそれぞれ単独で使用することができるが、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0046】
本発明において使用される前記高分子型帯電防止剤において、親水性重合体中に含有する界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤に大別されるが、いずれの界面活性剤を含有するものも使用することができる。
【0047】
上記の界面活性剤は具体的には、脂肪酸ナトリウム,脂肪酸カリウムなどのカルボン酸塩、α−スルホ脂肪酸エステルナトリウムなどのカルボン酸エステル塩、アルコール硫酸エステルナトリウムなどの硫酸エステル塩、パラフィンスルホン酸ナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩、ヘキサフルオロ燐酸リチウムなどのリン酸塩、アルコール燐酸エステルナトリウムなどのリン酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、第四級アンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤;アルキルアミノ脂肪酸ナトリウムなどのアミノ酸型のもの、アルキルベタインなどのベタイン型のもの、アルキルアミンオキシドなどのアミンオキシド型のものなどの両性界面活性剤;アルキルグリコシド、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物などのポリエチレングリコール型のもの、脂肪酸アルカノールアミド、ポリビニルアルコールなどの多価アルコール型のもの、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン脂肪酸エステル型のもの、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのノニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0048】
本発明において使用される高分子型帯電防止剤は、前記の界面活性剤のうち、高いイオン伝導性を示すことからアニオン系界面活性剤を含有する親水性重合体からなるものであることが好ましく、中でもスルホン酸塩のアニオン系界面活性剤を含有するものが特に好ましい。
【0049】
本発明に用いられる高分子型帯電防止剤の融点は、好ましくは70〜270℃、より好ましくは80〜230℃、特に好ましくは80〜200℃であることが、帯電防止機能発現性の観点から望ましい。
【0050】
高分子型帯電防止剤の融点は、JIS K7121(1987)に準拠する方法により測定することができる。即ちJIS K7121(1987)における試験片の状態調節(2)の条件(但し、冷却速度は10℃/分)により前処理を行い、10℃/分にて昇温することにより融解ピークを得る。そして得られた融解ピークの頂点の温度を融点とする。尚、融解ピークが2つ以上現れる場合は、主融解ピーク(最も面積の大きいピーク)の頂点の温度とする。尚、最も大きな面積を有するピークのピーク面積に対して80%以上のピーク面積を有するピークが他に存在する場合は、該ピークの頂点温度と最も面積の大きいピークの頂点の温度との相加平均値を融点として採用する。
【0051】
本発明において前記界面活性剤の高分子型帯電防止剤中の含有量は、0.001〜30重量%、好ましくは0.005〜10重量%、更に好ましくは0.01〜5重量%である。界面活性剤の含有量が少なすぎる場合には、帯電防止性能向上効果が不十分となる虞があり、一方、界面活性剤の含有量が多すぎる場合には、含有量に見合う帯電防止性能向上効果が期待できないことと、高分子型帯電防止剤の含有量にもよるが、得られる帯電防止性ポリオレフィン系樹脂押出発泡シートによる、被包装物の表面の白化、べたつき等の要因となる被包装物の表面汚染を引き起こす虞がある。
【0052】
本発明において界面活性剤を含有する高分子型帯電防止剤を使用することにより、界面活性剤は親水性重合体と固溶体を形成してポリオレフィン系樹脂押出発泡シート中に存在し押出発泡シート表面には、高分子型帯電防止剤中の界面活性剤が微量存在することになる。本発明において特に界面活性剤としてアニオン系界面活性剤を含有する高分子型帯電防止剤を使用する場合、押出発泡シート表面の該界面活性剤の存在量が2〜20ng/cmであることが好ましい。このことにより被包装物の表面を汚染する危険性は小さく、押出発泡シートを、ガラス基板の包装用シートまたは間紙に用いた場合、ガラス基板の洗浄工程においてガラス基板表面の異物を除去する際の洗浄性が極めて高いという効果を奏する。これは定かではないが本発明の押出発泡シートにおける界面活性剤が前記の量で押出発泡シートの表面に存在していることにより該発泡シートにて覆われた被包装物への該物質の移行作用などにより、後工程にて被包装物に付着した異物を洗浄除去する際、洗浄性が高まる作用を発現するものと推察される。
【0053】
上記の押出発泡シート表面のアニオン系界面活性剤の存在量の測定は、以下の通り行うことができる。
押出発泡シートから縦15cm×横20cm(表面積は両面で600cmとなる)の試料を切り出し、該試料を細切れにして蒸留水中に浸漬させ、10分間撹拌してアニオン系界面活性剤を水相中に抽出する。
次にメスフラスコに水相50mlを取り、ポナールキット−ABS(商品名)の発色試薬錠1錠を加えて溶解した後、ベンゼン5mlを加えて溶媒抽出して以下の装置、測定手段、定量手段にて該存在量が測定される。
装置: 紫外可視分光光度計UV−2200 (株)島津製作所製。
測定手法: ベンゼン相に抽出されアニオン系界面活性剤と試薬との錯体の吸光度を波長560nmにて測定。
定量手段:特定されたドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの標準物質を用いて作成した検量線により、ベンゼン相に抽出されたアニオン系界面活性剤量を算出する。なお、このため測定値はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム換算の値となる。
なお、上記のポナールキット−ABS は(株)同仁化学研究所製水質分析用簡易キット(販売は和光純薬工業(株))。主に河川、湖沼水中の陰イオン界面活性剤を比色定量するために用いるものであり、
Bis[2-(5-chloro-2-pyridylazo)-5-diethylaminophenolato]cobalt(III)chloride(略称Co(III)-5-Cl-PADAP)という発色試薬を使用している。
また、押出発泡シート中のアニオン系界面活性剤の種類の特定は以下の通り行うことができる。
押出発泡シートから切り出した試料約1gを細切りにして平底フラスコに取り、エタノール100mLを加えてエタノール中に浸漬する。次いで平底フラスコに冷却管を取り付けてマントルヒーターに設置し、1時間沸騰加熱して試料中のアニオン系界面活性剤をエタノール中に抽出する。アニオン系界面活性剤を抽出したエタノール相を濃縮し乾固し、得られた抽出物を試料としKBr粉末と混合して希釈し、拡散反射法にて試料の赤外吸収スペクトルをフーリエ変換赤外分光光度計(日本分光(株)製FT/IR−610など)を用いて測定する。得られた赤外吸収スペクトルを既知のアニオン系界面活性剤の赤外吸収スペクトルと比較し、アニオン系界面活性剤の種類を特定する。
【0054】
本発明の押出発泡シートの基材樹脂として用いられるポリオレフィン系樹脂は、オレフィン成分単位が50重量%以上含有するものである。このようなポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。
【0055】
該ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレン成分単位が50重量%以上の樹脂が挙げられ、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体と高密度ポリエチレン樹脂の混合物、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体等、さらにそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0056】
これらのポリエチレン系樹脂の中でも、密度が935g/L以下のポリエチレン系樹脂を主成分とするものが好ましい。具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等を用いることが好ましく、発泡性が良好な低密度ポリエチレンがより好ましい。
尚、密度が935g/L以下のポリエチレン系樹脂を「主成分」とするとは、該ポリエチレン樹脂の含有量が押出発泡シートの全重量の50重量%以上であることをいう。また、ポリエチレン系樹脂の密度の下限は概ね890g/Lである。
【0057】
また、前記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと共重合可能な他のオレフィンとの共重合体等が挙げられる。プロピレンと共重合可能な他のオレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセンなどの炭素数2〜10のα−オレフィンが例示される。また上記共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよく、さらに二元共重合体のみならず三元共重合体であってもよい。なお、上記共重合体中のプロピレンと共重合可能な他のオレフィンは、25重量%以下、特に15重量%以下の割合で含有されていることが好ましく、下限値としては0.3重量%であることが好ましい。また、これらのポリプロピレン系樹脂は、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0058】
上記の押出発泡シートを構成する基材樹脂として使用されるポリプロピレン系樹脂の中でも押出発泡に好適な樹脂としては、一般のポリプロピレン系樹脂と比較して溶融張力が高いポリプロピレン系樹脂が好ましい。具体的には、特開平7−53797号公報に記載されているような、(1)1未満の枝分かれ指数と著しい歪み硬化伸び粘度とを有するポリプロピレンや、(2)(a)Z平均分子量(Mz)が1.0×10以上であるか、またはZ平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比(Mz/Mw)が3.0以上であり、(b)かつ平衡コンプライアンスJが1.2×10−3Pa−1以上であるか、または単位応力当たりの剪断歪み回復Sr/Sが毎秒5m/N以上であるポリプロピレンを含むポリプロピレン系樹脂が好ましい。また、本発明においては、(3)スチレン等のラジカル重合性単量体およびラジカル重合開始剤や添加剤などを含む配合物を、ポリプロピレン系樹脂が溶融し、かつラジカル重合開始剤の分解温度において溶融混練することによって改質されたポリプロピレン系樹脂、あるいは(4)ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤とを溶融混練して得られる改質ポリプロピレン系樹脂であってもよい。
【0059】
本発明においてポリオレフィン系樹脂としては、本発明の押出発泡シートが主に包装材料として使用されることから、柔軟性、緩衝性により富んでいる押出発泡シートを得ることができるポリエチレン系樹脂が好ましく使用される。
【0060】
本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡シートの好ましい基材樹脂であるポリエチレン系樹脂は、190℃における溶融張力が3〜40cNであることが望ましい。この溶融張力が3cN未満の場合は、良好な気泡構造を有する低密度の押出発泡シートを得ることができないおそれがあり、強度のある押出発泡シートを得ることが難しくなる虞がある。一方溶融張力が40cNを超える場合には、樹脂の溶融粘度が高く押出発泡の際の負荷が大きくなり好ましくなく、また良好な表面状態を有し均一な気泡径を有する低密度の押出発泡シートを得ることが難しくなる虞がある。
【0061】
上記の点から、良好な押出発泡シートを得るにはポリエチレン系樹脂の溶融張力は3cN以上であることが好ましく、さらに好ましくは4cN以上である。一方、該溶融張力は40cN以下であることが好ましく、更には30cN以下であることがより好ましい。
【0062】
上記溶融張力は、株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dによって測定できる。具体的には、シリンダー径9.55mm、長さ350mmのシリンダーと、ノズル径2.095mm、長さ8.0mmのオリフィスを用い、シリンダー及びオリフィスの設定温度をポリプロピレン系樹脂においては230℃、ポリエチレン系樹脂においては190℃とし、ポリオレフィン系樹脂試料の必要量を該シリンダー内に入れ、4分間放置してから、ピストン速度を10mm/分として溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出して、この紐状物を直径45mmの張力検出用プーリーに掛け、4分で引き取り速度が0m/分から200m/分に達するように一定の増速で引取り速度を増加させながら引取りローラーで紐状物を引取って紐状物が破断した際の直前の張力の極大値を得る。ここで、引取り速度が0m/分から200m/分に達するまでの時間を4分とした理由は、樹脂の熱劣化を抑えるとともに得られる値の再現性を高めるためである。上記操作を異なる試料を使用し、計10回の測定を行い、10回で得られた極大値の最も大きな値から順に3つの値と、極大値の最も小さな値から順に3つの値を除き、残った中間の4つの極大値を相加平均して得られた値を本発明方法における溶融張力(cN)とする。
【0063】
但し、上記した方法で溶融張力の測定を行い、引取り速度が200m/分に達しても紐状物が切れない場合には、引取り速度を200m/分の一定速度にして得られる溶融張力(cN)の値を採用する。詳しくは、上記測定と同様にして、溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出して、この紐状物を張力検出用プーリーに掛け、4分間で0m/分から200m/分に達するように一定の増速で引取り速度を増加させながら引取りローラーを回転させ、回転速度が200m/分になるまで待つ。回転速度が200m/分に到達してから溶融張力のデータの取り込みを開始し、30秒後にデータの取り込みを終了する。この30秒の間に得られたテンション荷重曲線から得られたテンション最大値(Tmax)とテンション最小値(Tmin)の平均値(Tave)を本発明方法における溶融張力とする。ここで、上記Tmaxとは、上記テンション荷重曲線において、検出されたピーク(山)値の合計値を検出された個数で除した値であり、上記Tminとは、上記テンション荷重曲線において、検出されたディップ(谷)値の合計値を検出された個数で除した値である。
尚、当然のことながら上記測定において溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出す際には該紐状物に、できるだけ気泡が入らないようにする。
【0064】
次に、本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡シートの製造方法について説明する。本発明の押出発泡シートは従来公知のポリオレフィン系樹脂の押出発泡方法により製造される。すなわち、ポリオレフィン系樹脂押出発泡シートの基材樹脂と高分子型帯電防止剤を混練押出機に供給し、加熱下に溶融混練し、該溶融混練物に発泡剤を注入して混練した発泡性溶融樹脂を、押出機の出口に付設した円環状ダイスから押出発泡し円柱状の冷却装置の側面上を通過させた後切り開いて押出発泡シートとする。
【0065】
また、本発明において特にシート幅方向の厚み精度の良好なシートを得るには、ダイスリップ部の温度管理が重要になる。具体的には、環状ダイスの周囲方向の温度制御を分割制御とすることにより、得られる押出発泡シートの厚み精度を向上させることが出来る。従来、円周方向で一つの温度調節しか行なわれていなかったが、本発明においては円周方向に4分割、好ましくは8〜16分割して温度調節を行う。しかし、ダイスを必要以上に細かく分割して温度調整しても、個々の制御が押出発泡シートの厚みに十分に反映されない為、16分割を超えての温度調整は制御を煩雑にするわりには、十分な厚み精度向上効果が得られない。
【0066】
上記発泡剤としては以下に示す物理発泡剤が挙げられる。該物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、塩化メチル、塩化エチル等の塩素化炭化水素、1,1,1,2−テトラフロロエタン、1,1−ジフロロエタン等のフッ素化炭化水素、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル類、その他、ジメチルカーボネート、メタノール、エタノール等の有機系物理発泡剤、酸素、窒素、二酸化炭素、空気、水等の無機系物理発泡剤が挙げられる。これらの物理発泡剤は、2種以上を混合して使用することが可能である。これらのうち、ポリオレフィン系樹脂との相溶性、発泡性の観点から有機系物理発泡剤が好ましく、中でもノルマルブタン、イソブタン、又はこれらの混合物を主成分とするものが好適である。また、物理発泡剤ではないがアゾジカルボンアミド等の分解型発泡剤も使用することができる。
【0067】
上記発泡剤の添加量は、発泡剤の種類、目的とする見かけ密度に応じて調整する。本発明では気泡膜の形成による延伸効果が帯電防止性に関連があるため発泡剤の注入量は、発泡剤としてイソブタン30重量%とノルマルブタン70重量%とのブタン混合物に代表される脂肪族炭化水素等の物理発泡剤を用いた場合、ポリオレフィン系樹脂100重量部当たり4〜35重量部、好ましくは5〜30重量部、より好ましくは6〜25重量部である。
【0068】
また、押出発泡シートを製造する際には、前記押出機に供給される基材樹脂中には、通常、気泡調整剤が添加される。気泡調整剤としては有機系のもの、無機系のもののいずれも使用することができる。無機系気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。また、有機系気泡調整剤としては、リン酸−2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。また、クエン酸と重炭酸ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩と重炭酸ナトリウム等を組み合わせたもの等も気泡調整剤として用いることができる。これらの気泡調整剤は2種以上を混合して用いることができる。
【0069】
上記気泡調整剤の添加量は、主として目的とする気泡径に応じて調節するが、本発明においては通常、樹脂100重量部当たり、0.2〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは1〜3重量部である。
【0070】
また、その他所望により、ポリオレフィン系樹脂押出発泡シートの製造には、着色剤、紫外線防止剤、酸化防止剤など一般に使用される種々の添加剤を配合することもできる。
【0071】
本発明の押出発泡シートは、上記の通りガラス基板用の間紙、包装材用途に好適なものである。なお、本明細書におけるガラス基板とは、ディスプレー用ガラスパネルを裁断するための大型の素板ガラス基板や、裁断された素板ガラス基板に限らず、公知の様々なガラス基板が含まれ、例えば、素板ガラス基板をはじめ、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示体用ガラス基板、サーマルヘッド用ガラス基板、カラーフィルタ等の各種ガラス基板、又はこれらのガラス基板を用いて製造したTFT(薄膜トランジスタ)形成済ガラス基板や液晶セルと呼ばれる完成パネル等のガラス基板が含まれる。
【実施例】
【0072】
次に本発明を実施例により具体的に説明する。
なお実施例1〜5、比較例1〜3で用いた気泡調整剤としては、低密度ポリエチレンにタルクを20重量%配合してなるマスターバッチを用いた。
ポリオレフィン系樹脂として、以下に示すものを用いた。
PE1:住友化学工業株式会社製低密度ポリエチレン「F102」(結晶化温度:97.8℃、密度:922g/L、 MFR:0.3g/10分)
PE2:日本ユニカー株式会社製低密度ポリエチレン「NUC8321」(結晶化温度:96.9℃、密度:922g/L、MFR:2.4g/10分)
【0073】
実施例1、5、比較例1
押出発泡シート製造用の押出機として、直径150mmの押出機の出口に環状ダイスが取付けられたシングル押出機を使用し押出発泡シートを得た。
【0074】
ポリエチレン系樹脂としてPE1及びPE2を用い、このポリエチレン系樹脂100重量部に対して、表1に示す割合にて高分子型帯電防止剤を配合し、直径150mmの押出機の原料投入口に供給し、加熱混練し、約200℃に調整された樹脂溶融物とした。該樹脂溶融物に物理発泡剤としてノルマルブタン70重量%とイソブタン30重量%の混合ブタンを圧入し、次いで冷却して発泡性樹脂溶融物とし、該発泡性樹脂溶融物を環状ダイスから押出して筒状発泡シートを形成した。押出された筒状発泡シートを冷却された円柱に沿わせて引き取りながら切開いて、目的の押出発泡シートを得た。
【0075】
実施例2、比較例2
直径115mmと直径180mmの2台の押出機からなるタンデム押出機を使用し、表1に示す割合にて高分子型帯電防止剤を配合した以外は、実施例1と同様に押出発泡シートを得た。
【0076】
実施例3
直径115mmと直径180mmの2台の押出機からなるタンデム押出機を使用し、ポリエチレン系樹脂としてPE2のみを用い、表1に示す割合にて高分子型帯電防止剤を配合した以外は、実施例1と同様に押出発泡シートを得た。
【0077】
実施例4
押出機として直径115mmのシングル押出機を使用し、表1に示す割合にて高分子型帯電防止剤を配合した以外は、実施例1と同様に押出発泡シートを得た。
【0078】
比較例3
押出機として直径115mmのシングル押出機を使用し、ポリエチレン系樹脂としてPE2のみを用い、表1に示す割合にて高分子型帯電防止剤を配合した以外は、実施例1と同様に押出発泡シートを得た。
【0079】
実施例1〜5、比較例1〜3における高分子型帯電防止剤を構成している、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム成分と、無水マレイン酸変性ポリプロピレンとポリエチレングリコールとのブロック共重合体成分の夫々の添加量、基材樹脂の溶融張力、押出発泡シートの坪量、飽和電圧、坪量×飽和電圧、エタノール洗浄後の表面抵抗率を表1にまとめて示し、押出発泡シートの見かけ密度、幅、平均気泡径をまとめて表2に示した。また得られた押出発泡シートの厚みに関する値等をまとめて表3に示した。
【0080】
なお、表3の洗浄性評価方法は以下の通りである。
表面脱脂済みのスライドガラス(サイズ:縦26mm×横76mm)をポリオレフィン系樹脂発泡体で挟み、上から42g/cmの荷重をかけ、60℃、90%RHの雰囲気に24時間放置する。その後、スライドガラスを純水中に沈めて5分間超音波洗浄を行う。洗浄後のスライドガラスの表面が乾いた後、呼気を拭きかけ曇り具合(汚れ具合)を目視にて観察する。観察の結果により洗浄性を以下の基準にて評価した。
○:曇りが無い
△:僅かな曇りが点在する
×:曇りが多数存在する
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤を含有する親水性重合体からなる高分子型帯電防止剤がポリオレフィン系樹脂100重量部に対して5〜30重量部添加されたポリオレフィン系樹脂押出発泡シートであって、該発泡シートの坪量(g/m)と該発泡シートの飽和電圧(kV)との積が75kV・g/m以下であり、該発泡シートのエタノール水溶液を用いた超音波洗浄後の表面抵抗率が1×10〜1×1014(Ω)であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。
【請求項2】
前記押出発泡シートの基材樹脂が、190℃における溶融張力が3〜40cNのポリエチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。
【請求項3】
前記高分子型帯電防止剤において、界面活性剤がアニオン系界面活性剤であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。
【請求項4】
前記押出発泡シートの表面におけるアニオン系界面活性剤の存在量が2〜20ng/cmであることを特徴とする請求項3に記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。
【請求項5】
前記高分子型帯電防止剤における親水性重合体がポリエチレンオキサイドまたはポリエチレンオキサイドを含むブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。
【請求項6】
前記押出発泡シートの幅が1200mm以上、見かけ密度が15〜180g/Lであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。
【請求項7】
前記高分子型帯電防止剤が、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し8重量部超20重量部以下添加されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シートからなり、厚みが0.3mm以上1.0mm未満、見かけ密度が40〜180g/L、該発泡シートの幅方向に1cm間隔で測定される厚み(A)〔mm〕に基づき算出される該発泡シートの幅方向の10cm間隔の平均厚みが、該発泡シートの全幅の平均厚み(B)〔mm〕を基準にして(平均厚み(B)×0.8)〜(平均厚み(B)×1.2)の範囲内であり、かつ該発泡シートを幅方向に5等分した各部分の前記厚み(A)の各々の最大厚みにおける最大値と最小値との差が0.08mm以下であることを特徴とするガラス基板用間紙。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シートからなり、見かけ密度が15〜180g/L、平均気泡径が下記(1)、(2)及び(3)式を満足することを特徴とするガラス基板用包装材。
(数1)
0.2 ≦Z/X≦ 0.6・・・(1)
0.2 ≦Z/Y≦ 0.6・・・(2)
0.1 ≦ Z ≦ 0.5 ・・・(3)
(但し、X、Y及びZは、押出方向の平均気泡径:X(mm)、幅方向の平均気泡径:Y(mm)及び厚み方向の平均気泡径:Z(mm)とする。)

【公開番号】特開2008−303298(P2008−303298A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151682(P2007−151682)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】