説明

ポリカーボネート樹脂積層体

【課題】耐摩耗性が良好で、且つ成形性に優れた透明ポリカーボネート樹脂積層体を提供する。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂シートの少なくとも一面に、(A)熱硬化性樹脂100重量部に対して、(B)50〜99モル%のアルキル(メタ)アクリレート単位(B−1単位)、0〜35モル%のシクロアルキル(メタ)アクリレート単位(B−2単位)及び1〜35モル%のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート単位(B−3単位)を含有するアクリル共重合体であって、該アクリル共重合体の全繰り返し単位100モル%中、(B−1)〜(B−3)単位の合計が少なくとも70モル%であるアクリル共重合体を1〜100重量部含む熱硬化性樹脂組成物を熱硬化した硬化皮膜を積層してなることを特徴とする透明ポリカーボネート樹脂積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明ポリカーボネート樹脂積層体に関する。更に詳しくは熱硬化性樹脂を主に、特定の構造を有するアクリル共重合体を配合した硬化皮膜をポリカーボネート樹脂シートに積層した、耐摩耗性が良好で、且つ成形性に優れた透明ポリカーボネート樹脂積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は透明性、耐熱性、耐湿熱性、加工性及び機械的強度等に優れており電気部品、建材部品、自動車部品等に広く利用されているが、反面、表面が軟らかく傷が付きやすいため、その解決方法として一般的にポリカーボネート樹脂シートの表面に透明な硬化皮膜層を施す方法が用いられている。かかる透明な硬化皮膜層を有するポリカーボネート樹脂シートは硬化皮膜層にメラミン系樹脂を用いた場合、液晶テレビやプロジェクションテレビ、携帯電話、カーナビ等のディスプレイ保護板、ヘルメットシールド、オートバイやスクーター等二輪車の風防用途に使用されている。また、硬化皮膜層にシリコン系樹脂を用いた場合、車両や建設機械等の窓用途、道路側壁板や建物のフェンス等多くの用途に使用されている。
【0003】
従来より、表面に透明な硬化皮膜層を有するポリカーボネート樹脂シートのかかる特徴を活かした用途として、熱曲げ加工等の二次成形加工を施して最終製品として使用することは公知である。しかしながら、硬化皮膜の耐摩耗性と熱成形加工性は相反する特性が要求されるため、優れた耐摩耗性を有する硬化皮膜は硬質であり、その伸び率が極めて低く脆いことから、熱成形時にポリカーボネート樹脂シートの変形に硬化皮膜が追従することができず、クラックが発生する場合があった。この問題を解消するために、予め熱成形したシートや、射出成形した成形品に塗布する方法があるが、成形品表面に付着した異物を除去するため塗布前に成形品を洗浄しなければならず手間がかかるという問題が生じる。また、特許文献1では硬化皮膜に特定の(メタ)アクリレート単量体の光硬化物を、特許文献2では特定の2官能ウレタンアクリレートオリゴマーの紫外線硬化物を用いることで上記問題点を解消することが提案されているが、何れも硬化皮膜に光(紫外線)硬化性樹脂を用いているため、熱硬化性樹脂を用いた場合と比較して得られた成形品の耐摩耗性は劣るという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平10−036540号公報
【特許文献2】特開平11−343460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、耐摩耗性が良好で、且つ成形性に優れた透明ポリカーボネート樹脂積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、硬化皮膜を有するポリカーボネート樹脂シートの熱成形時における前記問題点を解決すべく、鋭意検討した結果、特定の構造を有するアクリル共重合体を配合した熱硬化性樹脂を主剤とする熱硬化性樹脂組成物をポリカーボネート樹脂シート表面に塗布し、熱硬化することで、充分な耐摩耗性を有した上で、成形性に優れた透明ポリカーボネート樹脂積層体が得られることを見出し本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、
1.ポリカーボネート樹脂シートの少なくとも一面に、(A)熱硬化性樹脂100重量部に対して、(B)50〜99モル%の下記式(1)で示される繰返し単位(B−1単位)、
【化1】

(但し、式中Xは水素原子もしくはメチル基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基である。)
0〜35モル%の下記式(2)で示される繰返し単位(B−2単位)、
【化2】

(但し、式中Yは水素原子もしくはメチル基であり、Rは炭素数6〜20のシクロアルキル基である。)
および1〜35モル%の下記式(3)で示される繰返し単位(B−3単位)
【化3】

(但し、式中Zは水素原子もしくはメチル基であり、Rは炭素数2〜5のアルキレン基である。)
を含有するアクリル共重合体であって、該アクリル共重合体の全繰り返し単位100モル%中、(B−1)〜(B−3)単位の合計が少なくとも70モル%であるアクリル共重合体を1〜100重量部含む熱硬化性樹脂組成物を熱硬化した硬化皮膜を積層してなることを特徴とする表面を保護された透明ポリカーボネート樹脂積層体、
2.熱硬化性樹脂が、メラミン樹脂またはシリコン樹脂である前項1記載の透明ポリカーボネート樹脂積層体、
3.硬化皮膜の伸び率が、熱硬化性樹脂にメラミン樹脂を用いた場合は4.4%以上の伸び率であり、熱硬化性樹脂にシリコン樹脂を用いた場合は1.5%以上の伸び率である前項2記載の透明ポリカーボネート樹脂積層体、
4.硬化皮膜の厚さが1〜10μmである前項1記載の透明ポリカーボネート樹脂積層体、
5.テーバー試験機を用いて、摩耗輪CS−10F、荷重500g/輪、回転速度70rpmにて測定した100回転前後のΔヘーズ値が10%以下である前項1記載の透明ポリカーボネート樹脂積層体、および
6.ポリカーボネート樹脂シートの厚さが0.4〜8.0mmである前項1記載の透明ポリカーボネート樹脂積層体、
が提供される。
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
[ポリカーボネート樹脂シートについて]
本発明において、透明ポリカーボネート樹脂シートが用いられる。ポリカーボネート樹脂シートの厚さは特に制限されないが、0.4〜8.0mmの範囲が好ましく、0.5〜5.0mmの範囲がより好ましい。また、透明ポリカーボネート樹脂シートのヘーズ値は10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、1%以下が特に好ましい。本発明で使用するポリカーボネート樹脂シートは、下記ポリカーボネート樹脂を用い任意の方法で製造されるが、溶融押出法で容易に製造することができる。
【0009】
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、一例として二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られる芳香族ポリカーボネート樹脂である。ここで使用する二価フェノールの代表的な例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α´−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられ、なかでもビスフェノールAが好ましい。これらの二価フェノールは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0010】
カーボネート前駆体としては例えばホスゲン、ジフェニルカーボネート、上記二価フェノール類のビスクロロホーメート等があげられ、中でもホスゲン及びジフェニルカーボネートが特に好ましい。
【0011】
かかるポリカーボネート樹脂を製造するには、任意の方法が採用されるが、例えばカーボネート前駆体としてホスゲンを使用する溶液法又はカーボネート前駆体としてジフェニルカーボネートを用いる溶融法が好ましく採用される。
【0012】
ホスゲンを使用する溶液法即ちホスゲン法は、酸結合剤及び有機溶媒の存在下で反応させる。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物又はピリジン等のアミン化合物が用いられ、溶媒としては例えば塩化メチレンやクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることもできる。反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。
【0013】
また、ジフェニルカーボネートを用いる溶融法即ちエステル交換法は、不活性ガス雰囲気下所定割合の二価フェノール成分をジフェニルカーボネートと加熱しながら攪拌して、生成するアルコール又はフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコール又はフェノール類の沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコール又はフェノール類を留出させながら完結させる。また反応を促進するために通常のエステル交換反応用触媒を使用することもできる。
【0014】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量(M)で10,000〜50,000が好ましく、15,000〜35,000がより好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂は、十分な強度が得られ、また、成形時の溶融流動性も良好であり好ましい。本発明でいう粘度平均分子量は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
【0015】
かかるポリカーボネート樹脂には、必要に応じて亜燐酸エステル、燐酸エステル、ホスホン酸エステル等の安定剤、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールAの低分子量ポリカーボネート、デカブロオジフェノール等の難燃剤、着色剤、滑剤等を添加することができる。
【0016】
[熱硬化性樹脂について]
本発明において、ポリカーボネート樹脂シートに積層される硬化皮膜として(A)熱硬化性樹脂が使用される。熱硬化性樹脂としてはメラミン樹脂、シリコン樹脂およびエポキシ樹脂等が挙げられ、なかでもメラミン樹脂、シリコン樹脂が好ましく使用され、特にメラミン樹脂が好ましく使用される。
【0017】
メラミン樹脂とは、メチル化メチロールメラミン、プロピル化メチロールメラミン、ブチル化メチロールメラミン、イソブチル化メチロールメラミン等が挙げられる。また、シリコン樹脂とは、コロイダルシリカおよびアルコキシシランの加水分解縮合物からなるオルガノシロキサン樹脂等が挙げられる。また、エポキシ樹脂とは、ビスフェノールA{(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)型エポキシ樹脂、ビスフェノールF{ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン}型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD{1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン}型エポキシ樹脂、ビスフェノールS(4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン)型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0018】
[アクリル共重合体について]
本発明において、ポリカーボネート樹脂シートに積層される硬化皮膜のための熱硬化性樹脂組成物には(A)熱硬化性樹脂と共に(B)アクリル共重合体が使用される。
【0019】
アクリル共重合体は、50〜99モル%の下記式(1)で示される繰返し単位(B−1単位)、
【化4】

(但し、式中Xは水素原子もしくはメチル基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基である。)
0〜35モル%の下記式(2)で示される繰返し単位(B−2単位)、
【化5】

(但し、式中Yは水素原子もしくはメチル基であり、Rは炭素数6〜20のシクロアルキル基である。)
および1〜35モル%の下記式(3)で示される繰返し単位(B−3単位)
【化6】

(但し、式中Zは水素原子もしくはメチル基であり、Rは炭素数2〜5のアルキレン基である。)
を含有するアクリル共重合体であって、該アクリル共重合体の全繰り返し単位100モル%中、(B−1)〜(B−3)単位の合計が少なくとも70モル%、好ましくは少なくとも80モル%、より好ましくは少なくとも90モル%であるアクリル共重合体である。
【0020】
B−1単位に対応するアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチルメタクリレートまたはエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートなどが挙げられ、単独でまたは両者を混合して使用できる。なかでもエチルメタクリレートが好ましく採用される。
【0021】
B−2単位に対応する炭素数6〜20のシクロアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレートモノマーとしては、分子内に少なくとも1つの炭素数6〜20のシクロアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレートであれば特に制限はない。
【0022】
具体例としては、シクロヘキシルアクリレート、4−メチルシクロヘキシルアクリレート、2,4−ジメチルシクロヘキシルアクリレート、2,4,6−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメチルアクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチルアクリレート、2,4−ジメチルシクロヘキシルメチルアクリレート、2,4,6−トリメチルシクロヘキシルメチルアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルメチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、4−メチルシクロヘキシルメタクリレート、2,4−ジメチルシクロヘキシルメタクリレート、2,4,6−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメチルメタクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、2,4−ジメチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、2,4,6−トリメチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルメチルメタクリレートなどの化合物が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。なかでもシクロヘキシルメタクリレートが好ましく採用される。
【0023】
B−3単位に対応するヒドロキシ基を有するアクリレートまたはメタクリレートモノマーとしては、具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。なかでも2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましく採用される。
【0024】
該アクリル共重合体の全繰り返し単位100モル%中、B−1単位の割合は、50〜99モル%であり、好ましくは60〜99モル%、より好ましくは70〜99モル%である。B−2単位の割合は、0〜35モル%であり、好ましくは1〜35モル%であり、より好ましくは5〜30モル%である。B−3単位の割合は、1〜35モル%であり、好ましくは3〜25モル%であり、より好ましくは5〜15モル%である。
【0025】
B−1単位の割合が50モル%より少ないと、白化などの外観不具合を招くため好ましくない。B−2単位の割合が35モル%を超えると、硬化皮膜と基材との密着性及び耐摩耗性が低下するため好ましくない。B−3単位の割合が35モル%を超えると、硬化皮膜の耐摩耗性が低下するため好ましくなく、1モル%未満ではヒドロキシ基が不足するためアクリル共重合体が主剤である熱硬化性樹脂と充分に反応が進まず、塗膜耐久性が得られないため好ましくない。
【0026】
さらに本発明におけるアクリル共重合体は、機能性付与等のため他の繰返し単位を含んでいてもよい。他の繰返し単位は(B)成分のアクリル共重合体の全繰り返し単位100モル%に対して好ましくは30モル%以下の範囲、より好ましくは20モル%以下の範囲、特に好ましくは10モル%以下の範囲である。これらの他の繰返し単位としてはアクリレートまたはメタクリレートモノマーと共重合可能なビニル系モノマーを共重合することで導入できる。
【0027】
例えば、耐候性を付与させる目的で、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロキシエチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロキシエトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロキシプロピルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロキシプロポキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロキシエチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−アクリロキシエチル−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−アクリロキシエチル−5’−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(アクリロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロイルオキシエチル)ベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシプロピルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシプロポキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロキシエチル−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロキシエチル−5’−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(メタクリロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエチル)ベンゾフェノン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、1,2,2,6、6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、1−エチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、1−t−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、1−シクロヘキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、1−(4−メチルシクロヘキシル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、1−t−オクチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、1−デシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、1−ドデシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、1−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、1−プロポキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、1−t−ブトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、1−(4−メチルシクロヘキシロキシ)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、1−t−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、1−デシロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト、1−ドデシロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレ−ト等を共重合してもよい。これらは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0028】
また、他のビニル系モノマーとしては、接着性あるいは耐久性を向上させる目的で、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、2―エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート等を共重合してもよい。これらは単独または2種以上を混合して使用できる。また、アクリル共重合体は単一組成のものを単独で使用する必要はなく、アクリル共重合体を2種以上混合して使用してもよい。
【0029】
上記アクリル共重合体(B)の分子量は、重量平均分子量で20,000以上が好ましく、50,000以上がより好ましく、また、重量平均分子量で1千万以下のものが好ましく使用される。
【0030】
[熱硬化性樹脂組成物について]
本発明においては、ポリカーボネート樹脂シートの少なくとも一面に、(A)熱硬化性樹脂100重量部に対して、(B)アクリル共重合体を1〜100重量部、好ましくは3〜90重量部、より好ましくは5〜70重量部含む熱硬化性樹脂組成物を塗布し、熱硬化させる。熱硬化性樹脂組成物の塗布は、例えば該熱硬化性樹脂組成物を含有する塗料を調整し、それを塗布することにより行うことができる。
【0031】
熱硬化樹脂としてメラミン樹脂を使用する場合の熱硬化樹脂組成物を含有する塗料の調製方法は、主剤のメラミン樹脂に、架橋剤、硬化剤、溶剤およびアクリル共重合体を加えることにより調整される。また、必要に応じて種々の添加剤を配合することも可能である。例えば紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤等である。
【0032】
架橋剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。架橋剤の配合量は、メラミン樹脂の官能基および架橋剤の官能基が等モル量になることが目安とされ、メラミン樹脂100重量部に対し好ましくは10〜200重量部、より好ましくは20〜150重量部である。
【0033】
硬化剤としては、例えばp−トルエンスルホン酸、シュウ酸、マレイン酸、硝酸等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。硬化剤の配合量は、メラミン樹脂100重量部に対し好ましくは1〜15重量部、より好ましくは2〜12重量部である。
【0034】
溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等の低級アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のセロソルブ類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。溶剤の配合量は、固形成分の濃度が好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜30重量%の範囲となるような量が望ましい。
【0035】
熱硬化性樹脂としてシリコン樹脂を使用する場合の熱硬化樹脂組成物を含有する塗料の調製方法は、コロイダルシリカとアルコキシシランの加水分解縮合物とからなるオルガノシロキサン樹脂成分(固形分)、酸、硬化触媒、溶媒およびアクリル共重合体を加えることにより調整される。また、必要に応じて種々の添加剤を配合することも可能である。例えば紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤等である。
【0036】
コロイダルシリカとして、好ましくは直径5〜200nm、より好ましくは直径5〜40nmのシリカ微粒子が、水または有機溶媒中にコロイド状に分散されたものである。
かかるコロイダルシリカとして、具体的には、酸性水溶液中で分散させた商品として日産化学工業(株)のスノーテックスO、触媒化成工業(株)のカタロイドSN−30、塩基性水溶液中で分散させた商品として日産化学工業(株)のスノーテックス30、スノーテックス40、触媒化成工業(株)のカタロイドS30、カタロイドS40、有機溶剤に分散させた商品として日産化学工業(株)のMA−ST、IPA−ST、NBA−ST、IBA−ST、EG−ST、XBA−ST、NPC−ST、DMAC−ST等が挙げられる。
【0037】
アルコキシシランとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられ、なかでもアルキルトリアルコキシシランが好ましく、特にメチルトリメトキシシランおよびメチルトリエトキシシランが好ましい。これらは単独もしくは混合しても使用できる。
【0038】
アルコキシシランの加水分解縮合物は、該アルコキシシランの一部または全部が加水分解したものおよび該加水分解物の一部または全部が縮合反応した縮合物等の混合物であり、これらはゾルゲル反応をさせることにより得られるものである。
【0039】
アルコキシシランの加水分解反応に必要な水は水分散型のコロイダルシリカ分散液を使用した場合はこの分散液から供給され、必要であればさらに水を加えてもよい。アルコキシシラン1当量に対して通常1〜10当量、好ましくは1.5〜7当量の水が用いられる。
【0040】
アルコキシシランの加水分解縮合反応は、酸性条件下で行う必要があり、かかる条件で加水分解を行うために一般的には加水分解剤として酸が使用される。かかる酸は、予めアルコキシシランまたはコロイダルシリカ分散液に添加するか、両者を混合後に添加してもよい。また、該添加は1回或いは2回以上に分けることもできる。かかる酸としては塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜硝酸、過塩素酸、スルファミン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられ、pHのコントロールの容易さの観点からギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸等の有機カルボン酸が好ましく、酢酸が特に好ましい。
【0041】
かかる酸として無機酸を使用する場合は通常0.0001〜2規定、好ましくは0.001〜0.1規定の濃度で使用し、有機酸を使用する場合はアルコキシシラン100重量部に対して通常0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部の範囲で使用される。
【0042】
アルコキシシランの加水分解、縮合反応の条件は使用するアルコキシシランの種類、系中に共存するコロイダルシリカの種類、量によって変化するので一概には云えないが、通常、系の温度が20〜70℃、反応時間が1時間〜数日間である。
【0043】
オルガノシロキサン樹脂成分中のコロイダルシリカおよびアルコキシシランの加水分解縮合物の混合割合はオルガノシロキサン樹脂成分の安定性、得られる硬化膜の透明性、耐摩耗性、密着性の点から決められ、コロイダルシリカとアルコキシシランの加水分解縮合物との合計100重量%としたとき、この2成分の好ましい混合割合はコロイダルシリカが10〜60重量%、アルコキシシランの加水分解縮合物がRSiO(4−m−n)/2に換算して40〜90重量%であり、より好ましくはコロイダルシリカが10〜40重量%、アルコキシシランの加水分解縮合物がRSiO(4−m−n)/2に換算して60〜90重量%である。
【0044】
硬化触媒としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、酒石酸、コハク酸等の脂肪族カルボン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、コリン塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩が挙げられ、具体的には酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸コリン、酢酸ベンジルトリメチルアンモニウムが好ましく使用される。硬化触媒はコロイダルシリカとアルコキシシランの加水分解縮合物との合計100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲で使用される。
【0045】
溶剤としては、前記オルガノシロキサン樹脂成分が安定に溶解することが必要であり、そのためには少なくとも20重量%以上、好ましくは50重量%以上がアルコールである溶媒を用いることが望ましい。
【0046】
かかるアルコールとしては、具体的にはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−エトキシエタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−ブトキシエタノール等が挙げられ、なかでも炭素数1〜4の低沸点アルコールが好ましく、特に溶解性、安定性及び塗工性の点で2−プロパノールが好ましい。溶剤の配合量は、固形成分の濃度が好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜30重量%の範囲となるような量が望ましい。
【0047】
なお、シリコン樹脂を含有する塗料をポリカーボネート樹脂シートに積層する場合、プライマー層としてアクリル樹脂層を使用することも好ましく採用される。
【0048】
[硬化皮膜の形成方法について]
熱硬化性樹脂組成物を含有する塗料を使用して、ポリカーボネート樹脂シートに硬化皮膜を形成する塗装手段としては、噴霧コート法、フローコート法、ディッピング法、ローラーコート法、バーコート法等の任意の方法を用いればよく、塗料性状の観点から、噴霧コート法、フローコート法、ディッピング法がより好ましい。また、硬化皮膜の形成は、用途に応じて片面のみに形成しても両面に形成してもよい。
【0049】
加熱処理の手段としては、熱風乾燥や赤外線乾燥等を用い、通常90〜140℃の雰囲気下で10〜90分間加熱処理することが好ましく、更には110〜130℃の雰囲気下で30〜75分加熱処理することがより好ましい。加熱処理温度が90℃より低いと、架橋反応が十分促進されないため、得られた硬化皮膜は、耐摩耗性や密着性などが不足する可能性があるため適さない。また、140℃を超える高温で加熱処理すると、ポリカーボネート樹脂シートに熱反りなどの変形が生じる可能性があるため適さない。
【0050】
得られる硬化皮膜の厚さは1〜10μmの範囲が好ましい。硬化皮膜の厚さが1μmより薄くなると十分な耐摩耗性が得られない。10μmより厚くなると最早効果が飽和し、それ以上の膜厚は必要としない。また硬化皮膜を形成するに当り、硬化皮膜とポリカーボネート樹脂シートとの密着性をより強くするために種々の前処理をすることも可能である。例えばポリカーボネート樹脂板表面をコロナ放電、紫外線照射等の処理やモノエタノールアミンとイソブタノールの混合溶液を塗布した後90〜120℃で数分間加熱乾燥する等の方法やプライマー層としてアクリル層を設ける等の方法で硬化皮膜とポリカーボネート樹脂シートとの密着性を高めることも可能である。
【0051】
[透明ポリカーボネート樹脂積層体について]
本発明で得られた透明ポリカーボネート樹脂積層体は、耐摩耗性が良好で、且つ成形性に優れた積層体である。本発明において、摩耗性はJIS K 6735に従って、テーバー試験機を用いて、摩耗輪CS−10F、荷重500g/輪、回転速度70rpmにて測定したものであり、耐摩耗性としては100回転後のヘーズ値から初期のヘーズ値を引いた値(Δヘーズ値)で評価される。本発明で得られた透明ポリカーボネート樹脂積層体の耐摩耗性は好ましくは10%以下であり、より好ましくは7%以下であり。特に好ましくは5%以下である。
【0052】
また、熱硬化性樹脂にメラミン樹脂を用いた場合、170℃における硬化皮膜の伸び率が、好ましくは4.4%以上の伸び率であり、熱成形性に優れる。一方、熱硬化性樹脂にシリコン樹脂を用いた場合、常温(23℃)における硬化皮膜の伸び率が、好ましくは1.5%以上の伸び率であり、冷間成形性に優れる。伸び率の上限としては、10%以下で充分な効果を有する。
【0053】
本発明で得られた透明ポリカーボネート樹脂積層体は、複雑な曲げ形状が要求されるヘルメットシールドやオートバイやスクーター等二輪車の風防、建設車両の窓用途等に有用である。
【発明の効果】
【0054】
本発明により得られたポリカーボネート樹脂積層体は、透明性、耐摩耗性を有し、且つ、硬化皮膜形成後でも成形加工性に優れるため、立体成形を必要とするヘルメットシールドやオートバイやスクーター等二輪車の風防、建設車両の窓等に特に有用である。
【実施例】
【0055】
以下に実施例をあげて本発明を更に説明する。なお、実施例中の部は重量部であり、評価は以下の方法で行った。
(1)硬化皮膜の伸び性
[熱硬化性樹脂にメラミン樹脂を用いた場合]
板厚4.0mmで寸法60×200mmに切断した2枚の試料を、170℃に設定した熱風循環乾燥機中に15分間放置した後、曲率が異なる木型に、硬化皮膜を外側にして、1枚ずつあて、木型に沿って熱曲げ成形を行い、そのまま室温まで放冷し、硬化皮膜表面のクラックや剥がれなどを目視チェックした。クラックや剥がれが観察されない場合は、その曲率の木型に対応する硬化皮膜の伸び率を有するものと判断した。
木型の曲率(R)は、50mm、240mmの2種類を用いた。これら木型を用いた際の硬化皮膜の伸び率は下式(イ)からそれぞれ4.4%、1.0%となる。
硬化皮膜の伸び性の判断は、硬化皮膜の伸び率が4.4%以上の場合:○、1.0%以上4.4%未満の場合:△、1.0%未満の場合:×で示した。
【0056】
【数1】

t:ポリカーボネート樹脂板の厚み(mm)
γ:ポアソン比
R:木型の曲率(mm)
【0057】
[熱硬化性樹脂にシリコン樹脂を用いた場合]
板厚1.0mmで寸法60×200mmに切断した2枚の試料を、常温(23℃)にて曲率が異なる木型に、硬化皮膜を外側にして、1枚ずつあて、木型に沿って曲げ成形を行い、硬化皮膜表面のクラックや剥れなどを目視チェックした。クラックや剥がれが観察されない場合は、その曲率の木型に対応する硬化皮膜の伸び率を有するものと判断した。
木型の曲率(R)は、40mm、60mmの2種類を用いた。これら木型を用いた際の硬化皮膜の伸び率は上式(イ)からそれぞれ1.5%、1.0%となる。
硬化皮膜の伸び性の判断は、硬化皮膜の伸び率が1.5%以上の場合:○、1.0%以上1.5%未満の場合:△、1.0%未満の場合:×で示した。
【0058】
(2)硬化被膜のヘーズ
積分球式ヘーズメーターを用いてJIS K 6735に従い測定した。
【0059】
(3)硬化皮膜の耐摩耗性
テーバー試験機を用いてJIS K 6735に従って測定した。摩耗輪にはCS−10Fを使用し、荷重500g/輪、回転速度70rpmにて測定した。測定値は100回転後のヘーズ値から初期のヘーズ値を引いた値とした。
【0060】
(4)硬化皮膜の膜厚
光干渉式膜厚計[大塚電子(株)製MCPD−1000]を用いて主成分にメラミン樹脂を用いた場合、塗膜屈折率1.55で、主成分にシリコン樹脂を用いた場合、塗膜屈折率1.48で膜厚を測定した。
【0061】
(5)硬化皮膜の密着性
硬化皮膜にカッターで1mm間隔に縦横に各11本の切れ目を入れて100個のマス目を作り、この目にセロテープ(登録商標)(ニチバン(株)製粘着テープ)を貼り付けた後、90°の方向に一気に剥した。硬化皮膜が剥離せず、残ったマス目の数を数えた。
(アクリル樹脂溶液(B−i)〜(B−iv)の合成)
【0062】
[参考例1]
還流冷却器及び撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にエチルメタクリレート(以下EMAと省略する)79.9部(0.7モル)、シクロヘキシルメタクリレート(以下CHMAと省略する)33.6部(0.2モル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下HEMAと省略する)13.0部(0.1モル)、メチルイソブチルケトン126.6部(以下MIBKと省略する)および2−ブタノール(以下2−BuOHと省略する)63.3部を添加混合した。混合物に窒素ガスを15分間通気して脱酸素した後、窒素ガス気流下にて70℃に昇温し、アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNと省略する)0.33部を加え、窒素ガス気流中、70℃で5時間攪拌下に反応させた。さらにAIBN0.08部を加えて80℃に昇温し3時間反応させ、不揮発分濃度が39.6%のアクリル樹脂溶液(B−i)を得た。アクリル樹脂の重量平均分子量はGPCの測定(カラム;Shodex GPCA−804、溶離液;THF)からポリスチレン換算で125000であった。
【0063】
[参考例2]
還流冷却器及び撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にEMA 102.7部(0.9モル)、HEMA 13.0部(0.1モル)、MIBK 115.7部および2−BuOH 57.9部を添加混合した。混合物に窒素ガスを15分間通気して脱酸素した後、窒素ガス気流下にて70℃に昇温し、AIBN0.33部を加え、窒素ガス気流中、70℃で5時間攪拌下に反応させた。さらにAIBN0.08部を加えて80℃に昇温し3時間反応させ、不揮発分濃度が39.6%のアクリル樹脂溶液(B−ii)を得た。アクリル樹脂の重量平均分子量はGPCの測定(カラム;Shodex GPCA−804、溶離液;THF)からポリスチレン換算で130000であった。
【0064】
[参考例3]
還流冷却器及び撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にブチルメタクリレート 99.5部(0.7モル)、CHMA 33.7部(0.2モル)、HEMA 13.0部(0.1モル)、MIBK 146.2部および2−BuOH 73.1部を添加混合した。混合物に窒素ガスを15分間通気して脱酸素した後、窒素ガス気流下にて70℃に昇温し、AIBN0.33部を加え、窒素ガス気流中、70℃で5時間攪拌下に反応させた。さらにAIBN0.08部を加えて80℃に昇温し3時間反応させ、不揮発分濃度が39.6%のアクリル樹脂溶液(B−iii)を得た。アクリル樹脂の重量平均分子量はGPCの測定(カラム;Shodex GPCA−804、溶離液;THF)からポリスチレン換算で130000であった。
【0065】
[参考例4]
還流冷却器及び撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にメチルメタクリレート 100.1部MIBK 100.1部および2−BuOH 50.1部を添加混合した。混合物に窒素ガスを15分間通気して脱酸素した後、窒素ガス気流下にて70℃に昇温し、AIBN0.33部を加え、窒素ガス気流中、70℃で5時間攪拌下に反応させた。さらにAIBN0.08部を加えて80℃に昇温し3時間反応させ、不揮発分濃度が39.8%のアクリル樹脂溶液(B−iv)を得た。アクリル樹脂の重量平均分子量はGPCの測定(カラム;Shodex GPCA−804、溶離液;THF)からポリスチレン換算で135000であった。
【0066】
[実施例1]
(i)メラミン樹脂塗料の調製
メチル化メチロールメラミン
[日本サイテックインダストリーズ(株)製 サイメル301] 100部
マレイン酸 5部
1,6−ヘキサンジオール 60部
イソプロピルアルコール 300部
イソブチルアルコール 554部
エチレングリコールモノブチルエーテル 47部
を混合して、更にこの溶液に参考例1で得られたアクリル樹脂溶液(B−i)62.5部
を配合してメラミン樹脂塗料を得た。
【0067】
(ii)ポリカーボネート樹脂積層体の製造
厚さ4.0mm、幅200mm、長さ300mmの粘度平均分子量23,900のポリカーボネート樹脂シート[帝人化成(株)パンライトシートPC−1111]の表面に上記(i)で得たメラミン樹脂塗料をフローコート法で塗布し、10分間室温に放置した後120℃の熱風循環乾燥機中で60分間加熱乾燥して膜厚3.0μmの硬化皮膜を有した透明ポリカーボネート樹脂積層体を得た。得られたポリカーボネート樹脂積層体の硬化皮膜の伸び性、ヘーズ、耐摩耗性および密着性の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0068】
[実施例2〜4、比較例1]
表1記載のアクリル樹脂溶液を表1記載の量用いる以外は実施例1(i)と同様の方法でメラミン樹脂塗料を調製し、実施例1(ii)と同様の方法でメラミン樹脂塗料をポリカーボネート樹脂シートに塗布し、表1記載の膜厚の硬化皮膜を有した透明ポリカーボネート樹脂積層体を得た。得られたポリカーボネート樹脂積層体の硬化皮膜の伸び性、ヘーズ、耐摩耗性および密着性の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0069】
[比較例2]
アクリル樹脂溶液を使用しない以外は実施例1と同様の方法で、透明ポリカーボネート樹脂積層体を得た。得られたポリカーボネート樹脂積層体の硬化皮膜の伸び性、ヘーズ、耐摩耗性および密着性の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0070】
【表1】

【0071】
[実施例5]
(i)シリコン樹脂塗料の調製
(アクリル樹脂プライマー塗料の調製)
参考例2で得られたアクリル樹脂溶液(B−ii)100部に、MIBK40部、2−BuOH 20部、1−メトキシ−2−プロパノール150部を加えて混合し、VESTANAT B1358/100(ブロック化されたポリイソシアネート化合物、デグサジャパン製) 11.6部を添加し、さらにn−ブチルトリス(2−エチルヘキサノエート)錫 0.051部、APZ−6633 9.66部を加えて25℃で1時間攪拌し、シリコン系樹脂塗料用プライマー塗料を得た。
【0072】
(シリコン樹脂塗料の調製)
水分散型コロイダルシリカ分散液(触媒化成工業(株)製 カタロイドSN−30、固形分濃度30重量%)133部に1Mの塩酸1.3部を加えよく攪拌した。この分散液を10℃まで冷却し、氷水浴で冷却下メチルトリメトキシシラン162部を滴下して加えた。メチルトリメトキシシランの滴下直後から反応熱で混合液の温度は上昇を開始し、滴下開始から5分後に60℃まで温度上昇した後、冷却の効果で徐々に混合液温度が低下した。混合液の温度が30℃になった段階でこの温度を維持するようにして30℃で10時間攪拌し、これに、硬化触媒としてコリン濃度45重量%のメタノール溶液0.8部、pH調整剤として酢酸5部、希釈溶剤としてイソプロピルアルコール200部を混合した。さらに、参考例1で得られたアクリル樹脂溶液(B−i)18.0部を加え(コロイダルシリカとメチルトリメトキシシラン(CHSiO3/2に換算)との合計量100重量部に対しアクリル樹脂が6重量部である)、シリコン系樹脂塗料溶液を得た。
【0073】
(ii)ポリカーボネート樹脂積層体の製造
厚さ1.0mm、幅200mm、長さ300mmの粘度平均分子量23,900のポリカーボネート樹脂シート[帝人化成(株)パンライトシートPC−1151]の表面に上記(i)で得たシリコン系樹脂塗料用プライマー塗料をフローコート法で塗布し、10分間室温に放置した後130℃の熱風循環乾燥機中で60分間加熱乾燥して膜厚3.0μmの硬化皮膜を形成した後、さらに該硬化皮膜上にシリコン系樹脂塗料をフローコート法で塗布し、10分間室温に放置した後120℃の熱風循環乾燥機中で60分間加熱して、膜厚4.0μmの硬化被膜を形成させ、透明ポリカーボネート樹脂積層体を得た。得られたポリカーボネート樹脂積層体の硬化皮膜の伸び性、ヘーズ、耐摩耗性および密着性の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0074】
[比較例3]
アクリル樹脂溶液(B−i)を使用しない以外は、実施例5と同様の方法で、透明ポリカーボネート樹脂積層体を得た。得られたポリカーボネート樹脂積層体の硬化皮膜の伸び性、ヘーズ、耐摩耗性および密着性の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0075】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂シートの少なくとも一面に、(A)熱硬化性樹脂100重量部に対して、(B)50〜99モル%の下記式(1)で示される繰返し単位(B−1単位)、
【化1】

(但し、式中Xは水素原子もしくはメチル基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基である。)
0〜35モル%の下記式(2)で示される繰返し単位(B−2単位)、
【化2】

(但し、式中Yは水素原子もしくはメチル基であり、Rは炭素数6〜20のシクロアルキル基である。)
および1〜35モル%の下記式(3)で示される繰返し単位(B−3単位)
【化3】

(但し、式中Zは水素原子もしくはメチル基であり、Rは炭素数2〜5のアルキレン基である。)
を含有するアクリル共重合体であって、該アクリル共重合体の全繰り返し単位100モル%中、(B−1)〜(B−3)単位の合計が少なくとも70モル%であるアクリル共重合体を1〜100重量部含む熱硬化性樹脂組成物を熱硬化した硬化皮膜を積層してなることを特徴とする透明ポリカーボネート樹脂積層体。
【請求項2】
熱硬化性樹脂が、メラミン樹脂またはシリコン樹脂である請求項1記載の透明ポリカーボネート樹脂積層体。
【請求項3】
硬化皮膜の伸び率が、熱硬化性樹脂にメラミン樹脂を用いた場合は4.4%以上の伸び率であり、熱硬化性樹脂にシリコン樹脂を用いた場合は1.5%以上の伸び率である請求項2記載の透明ポリカーボネート樹脂積層体。
【請求項4】
硬化皮膜の厚さが1〜10μmである請求項1記載の透明ポリカーボネート樹脂積層体。
【請求項5】
テーバー試験機を用いて、摩耗輪CS−10F、荷重500g/輪、回転速度70rpmにて測定した100回転前後のΔヘーズ値が10%以下である請求項1記載の透明ポリカーボネート樹脂積層体。
【請求項6】
ポリカーボネート樹脂シートの厚さが0.4〜8.0mmである請求項1記載の透明ポリカーボネート樹脂積層体。

【公開番号】特開2007−112862(P2007−112862A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304162(P2005−304162)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】