説明

ポリシロキサン物質を含有する生物吸収性および/または生物活性物品を製造するための無毒性ポリシロキサン物質、その製造ならびに用途

本発明は、1以上の異なるポリシロキサン物質を使用して形成された無毒性ポリシロキサン物質および熟成ポリシロキサン物質に関する。そのような熟成ポリシロキサン物質を本発明に従い例えば紡糸して生物吸収性および/または生物活性繊維を得、ついで更に加工して不織布を形成させることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無毒性ポリシロキサン物質(PSN物質)、場合によっては、好ましくは幾つかの異なるポリシロキサン物質(PSN物質)の1つとして形成された熟成ポリシロキサン物質(rPSN物質)に関する。本発明においては、そのようなrPSN(rは熟成を表す)は、例えば、PSN物質の1つとしての生物吸収性および/または生物活性繊維へと紡糸され、ついで他のPSN物質としての繊維性不織ウェブに更に加工されうる。本発明は更に、場合によっては熟成されたPSN物質、生物吸収性および/または生物活性PSN物質の製造方法、ならびにこれらの物質の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト用医薬および医用工学、そしてまた、他の技術分野、例えば濾過技術、バイオテクノロジーまたは絶縁体産業における種々の用途のための生物吸収性物質を開発するために、多種多様な試みがなされている。さらに、これらの分野においては、特に該物質の生物活性および毒性に関して課せられる要件が益々増大している。
【0003】
吸収性Si重合体は先行技術において公知である。DE 196 09 551 C1は生分解性および生物吸収性繊維構造体を記載している。これらの繊維は、紡糸液から繊維を紡ぎ取り必要に応じてそれらを乾燥させることにより、ゾル−ゲル過程において得られうる。該紡糸液は、部分的または完全に加水分解的に縮合した1以上のケイ素化合物であり、これは加水分解縮合により一般式SiXの単量体から誘導される。該繊維は、紡糸されたままの状態で分解されると細胞毒性試験において良好な結果を示さず、更に場合によっては細胞毒性物質として分類されなければならないという欠点を有する。そのような毒性は、特にヒト用医薬、医用工学、濾過技術、バイオテクノロジーまたは絶縁体産業、特に創傷治癒、または体液からの細胞の濾過の分野における使用には非常に望ましくない。
【0004】
さらに、DE 196 09 551 C1の繊維の製造方法は、溶媒の除去後に得られる混合物が固体を含み、したがって濾過に付されなければならないという欠点を有する。毒性でありうる他の液体Si重合体は濾過によっては全く除去できない。さらに、可紡性ゾルの大部分は、とりわけ、固相の形成および必須の濾過段階により失われる。また、DE 196 09 551 C1の方法は、熟成中に、高縮合Si化合物のゲル状相をかなりの比率で形成させる。これもまた、可紡性ゾルドープの比率を減少させる。
【0005】
本発明の目的は、無毒性の生物吸収性および/または生物活性物質、この物質を含有する物質、ならびにそのような無毒性物質の製造方法を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE 196 09 551 C1
【発明の概要】
【0007】
本発明においては、生物活性は、一方においては物質と他方においては組織(例えば、創傷組織)との間の正の相互作用、およびそれに伴う該組織の分化、およびその結果としての、物質/(レシピエント)組織の間の境界に沿った、組織の結合または接着を意味する。
【0008】
該目的は請求項1記載のゾルまたはコロイド溶液により達成され、これは本発明においてはPSN物質とも称される。そのようなコロイド溶液は、
(a)水溶性溶媒の存在下、0℃から80℃の温度で1から192時間にわたって0から7以下の初期pHで酸触媒される、式(I):
SiX (I)
[式中、基Xは、同一または異なって、ヒドロキシ、水素、ハロゲン、アミノ、アルコキシ、アシルオキシ、アルキルカルボニルおよび/またはアルコキシカルボニルであり、アルキル基から誘導される(該アルキル基は、1から20個の炭素原子、好ましくは1から10個の炭素原子を有する置換されていてもよい直鎖状、分枝状または環状基であり、酸素もしくは硫黄原子またはアミノ基が介在しうる)]の1以上の異なるSi化合物の多くとも1つの基Xの第1加水分解−縮合反応(HCR)を行い、
(b)密閉装置内での蒸発により該溶媒を同時に除去しながら、段階(a)で得られた物質の第2HCRを行い[この場合、該物質の十分な混合を行い、該蒸発は、1から1013mbarの真空中、場合によっては、化学的に不活性なエントレインメント気流を連続的に導入することにより行い、ここで、プロセスパラメーターである圧力、エントレインメント気流および/または温度の少なくとも1つを時間変動可能な様態で調節し、該蒸発の温度は30から90℃であり、該段階は0.5から2Pa・s(4℃で10L/sの場合)で行う]、
(c)このPSN物質を密閉装置内で数分から数時間にわたって冷却し、
(d)(c)から得られたPSN物質を第3HCRにより熟成ポリシロキサン物質(rPSN)物質へと変換することにより得られる。
【0009】
本発明の(無毒性、生物吸収性および/または生物活性)PSNまたはrPSN物質は、1以上の濾過段階を含む又は含む必要のある製造方法を伴うことなく製造されうることが、尚も強調されるべきである。これは、DE 1 96 09 551 C1から公知の方法との顕著な相違である。所望により、段階(d)の後、以下の段階(e1)から(e4)の1つとしての第4HCRを行い、この場合、段階(d)で得られたrPSN物質を使用して、例えば繊維(e1)、粉末(e2)、モノリス(e3)またはコーティング(e4)のようなPSN物質の1つを製造することが可能である。したがって、これらの段階は、以下の手段:
(e1)該PSN物質を生物吸収性および/または生物活性繊維に紡糸すること、
(e2)得られたrPSN物質を乾燥操作、特に凍結乾燥に付し、該乾燥PSN物質を粉末へと微粉砕(粉砕)することにより、段階(d)からの物質を粉末に加工すること、
(e3)段階(d)からのrPSN物質を鋳型内に注ぎ、乾燥させること、
(e4)段階(d)からのrPSN物質を、コーティングすべき物品に塗布し、または後者を該rPSN物質中に浸漬することを含む。
【0010】
それは、該rPSN物質が、使用中に、5から6、特に6以上のpHを有していて、それが、許容される(生理的)適合性を有する場合に特に好ましい。pH5未満では、該物質は、その酸性特性だけのために、不適合性である。段階(b)は、低い含水量まで蒸発させることを含むため、実質的に無水の系における酸強度は特定のpHにおいて定義できない。むしろ、(e)の後で最終的に得られるrPSNまたはそれから成型されるPSN物質が、水の供給に際して、5から7、特に6以上のpHを有するよう、(b)における随意的緩衝化(すなわち、適当なバッファーまたはアルカリの添加)または酸強度の低下(例えば、NOまたはNOの除去/蒸発による硝酸の場合)をもたらすべきである。
【0011】
これを達成するために、段階(b)における酸強度を低下させること、または酸の効果を緩衝化することが好ましい。しかし、これが段階(b)において未だ行われていない又は好ましいレベルまでは行われていない場合には、後に段階(c)または(e)において、あるいは該PSNの適用(例えば、皮膚または創傷への適用)の直前になって初めて、それを行うことが可能である。しかし、本発明においては、段階(b)における適切な酸強度または効果の確立が明らかに好ましい。
【0012】
段階(b)、(c)もしくは(e)の1つ又は該PSN物質の水供給における酸効果の低下は、特に、Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)を遊離塩基または塩の形態(例えば、Trisアセタート、Trisホスファート)で使用することによりもたらされうる。
【0013】
前記反応の個々の段階を以下に、より詳しく説明する。
【0014】
段階(a)
段階(a)においては、式(I):
SiX (I)
[式中、基Xは、同一または異なって、ヒドロキシ、水素、ハロゲン、アミノ、アルコキシ、アシルオキシ、アルキルカルボニルおよび/またはアルコキシカルボニルであり、アルキル基から誘導される(該アルキル基は、1から20個の炭素原子、好ましくは1から10個の炭素原子を有する置換されていてもよい直鎖状、分枝状または環状基であり、酸素もしくは硫黄原子またはアミノ基が介在しうる)]の1以上の異なるSi化合物の基Xを用いる。
【0015】
本発明の1つの好ましい実施形態においては、式(I)におけるXは、1から20個の炭素原子、好ましくは1から10個の炭素原子を有する置換されていてもよい直鎖状、分枝状および/または環状アルコキシ基である。特に好ましくは、式(I)におけるXは、置換されていてもよい直鎖状および/または分枝状C−Cアルコキシ基である。さらに特に好ましいものとしては、置換された、しかし好ましくは置換されていない、直鎖状および/または分枝状C−Cアルコキシ基、例えばエトキシ、N−プロポキシおよび/またはイソプロポキシが挙げられる。
【0016】
本発明における(第1)HCRにおける式(I)の唯一のSi化合物としてテトラエトキシシラン(TEOS)を使用することが、本発明では非常に特に好ましい。
【0017】
0から7以下、好ましくは2から3.5の初期pHは、例えば、希硝酸(例えば、1N、好ましくは0.01N HNO)を使用することにより確立される。しかし、原理的には、NOまたはNOをインシトゥで生成させるのに適した全ての酸混合物および溶液が適している。これらはまた、例えば、後に身体によりNOへと迅速に変換される一酸化窒素(NO)を、分子酸素を伴う生理的環境中で酵素的に(ニトロキシドシンターゼNOSにより)生成する酸混合物および溶液であることが可能であり、あるいは、有機ニトラートレダクターゼの補助によりNOを生成する有機ニトラートまたは硝酸エステル(いわゆるNO供与体)、例えば硝酸エチルであることが可能である。NOのこの酵素的遊離はチオール基(システイン)を要する。
【0018】
したがって、本発明においては、希硝酸の他に、NOSの基質としての少なくとも1つの必須アミノ酸(例えば、L−アルギニン、特に好ましくはL−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−フェニルアラニン、L−チロキシン、L−メチオニン、L−リシンまたはL−トリプトファン)または非必須アミノ酸(例えば、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グリシン、L−アラニン、L−プロリン、L−ヒスチジン、L−チロシン)および生理的に許容される酸(例えば、クエン酸、コハク酸、酒石酸、酢酸またはアスコルビン酸)の水性またはアルコール性(特に好ましくは、水性的に希釈されたエタノール性)溶液も、弱から中等度の強度の酸性範囲の所望に値にpHを調節するのに適している。
【0019】
該pHを確立するために希硝酸(例えば、0.01N)が使用される場合、それは、110:1から90:1、より特に好ましくは100:1の、式(I)のSi化合物/硝酸のモル比で使用される。硝酸は、有利には、式(I)のSi化合物(例えば、TEOS)/HNOのモル比が約100:1となるよう使用される。
【0020】
本発明の段階(a)において好ましく使用される水溶性溶媒は、式(I)のSi化合物を溶解する又は少なくとも乳化する機能を有するエタノールまたはエタノール/水混合物である。式(I)のSi化合物がTEOSである場合、水は式(I)の該Si化合物を溶解/乳化せず、したがってそれは好ましくは可溶化剤としてのEtOHと混合される。EtOHの好ましい量はTEOSに対して1から1.5mol/molであり、1つの特に好ましい実施形態においては、TEOSに対して1.26mol/molである。
【0021】
本発明においては、非常に特に好ましい反応バッチは、以下に特定されている質量比および/またはモル比で行われる。まず、反応容器に1molのTEOSを仕込み、ついでそれに1.26molのEtOHを加える。該EtOHが該TEOSを溶解するよう、この混合物を攪拌する。それとは別に、27.81gの1N HNO(1.75gのHNOに対応する)を60.38gのHOで希釈する(したがって該希硝酸の全質量は88.19gであり、そのうちの86.44gは、4.8molに相当するHOであり、1.75gは、0.028molに相当するHNOであり、HO/HNOモル比は4.8/0.028=172である)。ついで33.07gの該希硝酸を該エタノール性TEOS溶液に加える(したがって、TEOSの1mol当たり1.8mlのHOおよび0.01molのHNOが使用される)。
【0022】
第1HCRは発熱的に進行する。本発明においては、第1HCRは、TEOSの具体例を用いて例示されているとおり、各場合における1分子のTEOS中の1つのEtO基が各場合において加水分解され、生じたOH基が、連続的な攪拌下、二量体化および水の脱離を伴って縮合することを意味する。すなわち、それらの2つの溶液(例えば、希硝酸およびEtOH中のTEOS)を室温(RT)で一緒にする。この場合、各場合においてXSi−O−Si−X(例えば、(EtO)−Si−O−Si−(EtO))を生成するための1つのEtO基の加水分解および縮合による2つのSiX(すなわち、例えば2つのTEOS)の反応中の温度は断熱法の場合で約40℃上昇する。ここでは第1HCR中の初期温度は重要ではない(なぜなら、いずれの場合の反応も発熱的に進行するからである)。それはRTでありうるが、個々のRTより高い又は低い温度、例えば5、10、15、20、35、45、60または70℃であることも可能である。それは単に、第1HCRを進行させるのに十分な程度に高くなければならない。
【0023】
本発明においては、特に好ましくは、TEOS1分子当たり1つを超えるEtO基の加水分解は回避される。したがって、経済的および実用的理由から、RT(約20℃、適当な場合には18から25℃)が好ましい。0から80℃の範囲、好ましくは10℃から70℃の範囲または20℃から60℃の範囲のRTから逸脱した温度も同様に適しており、ここで、標準状態で沸点を超える場合には、加圧下の反応が要求される。該温度は、もちろん、化学における通常の関係に依存しており、したがって、より低い温度は、より長い反応時間を要し、その逆も当てはまる。本発明の1つの実施形態においては、この第1HCRは、1から192時間(h)、より好ましくは、2から24時間にわたって行われる。あるいは8から17時間が好ましい。
【0024】
第1HCRは、好ましくは、攪拌容器内で断続的に行われる。好ましくは、式(I)のSi化合物(例えば、TEOS)および溶媒(例えば、エタノール)が初期仕込み物として仕込まれる。この後、酸、好ましくは、0.01N HNO(例えば、TEOS1mol当たり0.01molのHNO)の形態の酸の急速添加が行われる。該反応混合物中の酸強度に基づき、第1HCRは迅速に進行し、(外界温度への冷却および加熱手段の温度の結果として)尚も反応時間中に(したがって段階(a)において)温度が低下し始める前に該容器内の内容物は約30℃から40℃に温度上昇する。
【0025】
段階(b)
十分な混合が可能な密閉装置(例えば、ロータリーエバポレーター、攪拌タンク)内での蒸発により水溶性溶媒(例えば、水、エタノール)を同時に除去しながら、段階(a)において得られた物質の第2HCRを行う。この場合、該蒸発は、1から1013mbar、好ましくは600mbar未満の圧力の真空中、場合によっては、(揮発性成分の分圧を低下させるために)化学的に不活性なエントレインメント気流を連続的に導入することにより行い、ここで、プロセスパラメーターである圧力、エントレインメント気流および/または温度の少なくとも1つを時間変動可能な様態で調節し、該混合物の粘度が0.5から2Pa・s(4℃で10L/秒の場合)、好ましくは約1Pa・s(4℃、せん断速度10s−1での測定)になるまで、好ましくは該反応系を穏やかに十分に混合しながら、約30から90℃、好ましくは、約60℃から90℃、特に好ましくは、約60から70℃の反応温度で該蒸発を行う。
【0026】
反応/重合の進行(粘度の増加から明らかである)の結果として、蒸気相内の溶媒の対応平衡圧が益々低くなるよう、相平衡が移動する。該平衡圧が該気相内の全圧まで低下すると、該蒸発は停止する。
【0027】
したがって、溶媒を更に気化させるためには、該圧力を低下させること、エントレインメント気流を、変動可能な様態で調節すること、および/または該温度を上昇させることが必要である。
【0028】
本発明の1つの実施形態においては、段階(b)における蒸発は、一定温度および時間変動可能な圧力で行う。
【0029】
段階(b)は、疑いなく、水の除去を伴うことなく進行するはずであり、その結果、更なる加水分解は生じ得ない。HNOの濃縮(それを行わなければ、HNOは残存溶媒中で有意に増加する)の場合に、HNOからNOへの還元反応を優勢にするためには、60℃を超える温度が特に好ましい。この非常に易揮発性の気体(標準状態での沸点は約−150℃)は、空気との接触に際して液相から逸出した後で酸化されて、容易に沸騰するNO(沸点約21℃)を与え、これは廃気および/またはガスの気流で該系から除去される。このようにして、PSN物質中の酸濃度が抑制または軽減される。
【0030】
本発明においては、「エントレインメント気流」は、該反応系の液相を経由して気体体積内に導入される気流を意味する。反応容器内の等圧比を遵守するためには、「エントレインメント気体」および蒸発されるべき成分の両方よりなる気流を排出させなければならない。生じる分圧低下、すなわち、気相内の蒸発されるべき成分または成分混合物の比率の減少は液体表面における溶媒の蒸発の原動力を増強する。
【0031】
1つの特に好ましい実施形態においては、「エントレインメント気流」は、該装置の気体空間内に適切に配置された気体分配器により分配され、それにより、直接対流様態で液体表面に向かう流動を伴うことなく液体表面の直ぐ上での適度なエントレインメント気体交換が確保される。極端な場合には、後者は、望ましくない局所的ゲル化を引き起こしうる。この実施形態が実施されうる気体分配器は当業者に公知である。
【0032】
本発明の1つの好ましい実施形態においては、分圧を低下させるために用いられる化学的に不活性なエントレインメント気流は窒素および/または空気である。
【0033】
本発明の1つの好ましい実施形態においては、該水溶性溶媒は真空とエントレインメント気流との組合せを用いて除去される。本発明のこの実施形態においては、全圧およびエントレインメント気流は、互いに独立して、一定様態で又は時間変動可能な様態で調節されうる。したがって、例えば総合様態で、所望の蒸発度のための或る反応時間を達成すること、および/または蒸発速度を反応速度論に調節することが可能である。
【0034】
本発明の1つの好ましい実施形態においては、段階b)における蒸発は一定温度および時間変動可能な圧力で行われ、この場合、第2HCRの終了へと向かう圧力は、大気圧または若干減圧された圧力から開始されて、600mbar未満、好ましくは500mbar未満、特に好ましくは100mbar未満に軽減される。
【0035】
この組合せ法(真空およびエントレインメント気流)においては、600mbar未満の一定圧力または変動可能な減圧された圧力が好ましい。
【0036】
粘度が約1Pa・sへと上昇し、それにより、後続の段階(c)を行うのに必要なゾル特性が生じるまで、いわゆる反応性蒸発の段階である段階(b)を進行させることが、特に好ましい。該粘度が低すぎると(未熟終結)、段階(c)における速度論は非常に遅いものとなる。該粘度が高すぎると、更なる加工に悪影響を及ぼす望ましくないゲルが形成される。
【0037】
好ましくは、段階(b)は、温度を10℃未満に冷却することにより、そして好ましくは、大気圧(約1013mbar)に到達させることにより、終結される。
【0038】
一方においては溶媒の蒸発により該ゾルの大部分を濃縮するのに適した、そして他方においては、HNOを使用する場合に酸強度の低下を優勢にし、さらに、反応速度論の観点からは、後続のプロセス段階に要求される(前)構造体を与える(部分)圧力および温度比において、該反応性蒸発は生じる。約70℃の温度が好ましい。
【0039】
段階(a)において希硝酸を酸として使用する場合、段階(b)における酸強度の考えられうる好ましい低下は、NOおよび水を、あるいは酸素の存在下ではNOおよび水を生成する反応性蒸発中の酸分解により生じる。ついでNOまたはNOの形態のNは(かなりの程度)追い出され、(非常に僅かな)部分がゾル/コロイド溶液中に残存する。しかし、該系が硝酸の代わりに有機酸/アルギニンを使用する場合には、所望により、(該酸、例えば酢酸が追い出されえない場合)例えばTris溶液を使用して、pHを上昇させ、または酸強度を低下させる。
【0040】
驚くべきことに、前記の段階(a)および(b)に関して記載されている条件を遵守したところ、段階(b)における溶媒の除去後に、段階(d)における熟成の前にいずれの濾過をももはや要しないコロイド溶液が得られる(すなわち、それは、問題となる固体を全く含有しない)ことが、本発明において確認された。
【0041】
段階(c)
この段階は冷却操作であり、段階(b)において得られたコロイド溶液を迅速に、すなわち、数分以内(好ましくは2から5分以内)から数時間以内、好ましくは0.2から5時間以内、特に好ましくは30分以内に、密閉容器(好ましくは、気体が拡散しない容器)に移し、段階(d)が行われる温度まで冷却する点で、分別よく特徴づけられる。
【0042】
したがって、冷却が好ましく行われる目標温度は−20℃から10℃、好ましくは2℃から4℃、特に好ましくは4℃である。湿気、例えば大気中の湿気または容器に付着している水分としての湿気の侵入は、どんなことがあっても避けなければならない。適当な場合には、この段階は、物品に適用される後続の物質のpHがpH5から7、好ましくはpH>6となるよう、該物質に施される調節をも含む。
【0043】
段階(d)
速度論的に制御された熟成は本発明の方法の構成要素であり、それを行わなければ、段階(c)の後で得られた反応混合物(PSN物質)は、加工、例えば紡糸またはコーティングされることが全く不可能となるであろう。この段階(d)は第3HCRを含み、ここで、該反応混合物の粘度は、連続的重合の結果として、さらに増加する。
【0044】
本発明においては、段階(d)は、密閉容器(好ましくは、気体が拡散しない容器)、例えば、いわゆる、熟成ビーカー、好ましくは、段階(c)で既に使用された容器において行われる。湿気または他の気体(COを含む)の侵入は、どんなことがあっても避けなければならない。本発明においては、段階(d)を行うための好ましい態様は、−20℃から10℃以上の温度で1日間から8週間、好ましくは、2℃から4℃で3から18日間にわたるものである。特に好ましくは、該熟成は、4℃で10から14日間にわたって行われ、特に、密閉容器(好ましくは、気体が拡散しない容器)内で該反応混合物を無振動状態で貯蔵することにより行われる。しかし、該熟成は、−20℃から10℃以上の範囲の任意の温度で好ましく行われうる。
【0045】
温度および反応時間は、好ましくは、段階(d)において得られるrPSN物質が、段階(e1)から(e4)の1つの実施にそれを適したものにし該実施に備える粘性率(動的粘度)を示すよう、互いに対して調節される互いに独立した2つの変数である、と当業者は認識している。該物質が段階(e1)において繊維に紡糸される場合には、(d)の終了時の粘性率は、2から5、好ましくは2.5から3.5の損失係数(4℃、10L/s、1%変形)(該損失係数は、該粘性率の粘性および弾性率から得られる商である)で約30から100Pa・s、好ましくは、45から60Pa・s(せん断速度10s−1、4℃)となるべきである。これとは対照的に、該物質が段階(e2)において粉末に加工される場合には、(d)の終了時の粘性率は約60Pa・s(せん断速度10s−1、4℃)となるべきである。該物質がモノリスに加工される場合(段階e3)には、(d)の終了時の粘性率は、好ましくは、70Pa・s(せん断速度10s−1、4℃)以上である。該物質が段階(e4)において物品または表面のコーティングに使用される場合には、該粘性率は、所望の被膜厚みに応じて、10Pa・s(せん断速度10s−1、4℃)以下である。
【0046】
過剰に高い損失係数は該物質の過剰に高い弾性を意味し、これは、例えば、紡糸中の安定なフィラメントの形成の障害(フィラメントのゲル化、破断)となる。損失係数が低すぎる場合には、該物質は流動性になり過ぎて、安定なフィラメントの形成は不可能である(滴下)。
【0047】
熟成ビーカー内の熟成の最終産物は、特定のレオロジー特性、とりわけ、構造粘性を有するゾル(rPSN物質)である。構造粘性は、高いせん断力においては、より低い粘度を流体が示す傾向であり、流体に作用するせん断が大きくなればなるほど、該流体の粘度は低くなる。粘度の低下は、ゾルにおける重合体に対する力の作用の結果として生じ、これは、該重合体が整列し従って互いに滑りやすくなることを保証するものであり、これらに関する更なる情報、特に、可紡性を構成する構造体のサイズおよび形状に関しては、Sakka,Sol−Gel Technology for Thin Films,Fibers,Preforms,Electronics and Specialty Shapes,L.C.Klein編,Neyer,Park Ridge,N.Y.,1988,p.144および図2.7を参照されたい。
【0048】
したがって、本発明においては、三次元重合体ゲル網目構造の競合的形成が、有利に(ほとんど)抑制され、したがって、段階(d)の後の本発明の方法の最終産物は、有利には、(ほとんど)水を含有しないゲル含量を伴わないエトキシ基を有する疎水性ゾルである。
【0049】
速度論的に制御された熟成、すなわち、段階(d)は、−20℃未満において非常に遅く進行するに過ぎないため、段階(c)の後のPSN物質は−60℃未満の温度で「凍結」されうる。該PSN物質(段階(d)の前)が段階(d)の後のrPSN物質と全く同様に貯蔵され輸送されうる限り、これは好ましい変法である。
【0050】
段階(e1)
該ゾルを繊維へと加工するための紡糸方法は、例えばDE 196 09 551 C1およびDE 10 2004 063 599 A1に記載されている通常の条件下で行われる。該方法においては、250個までのダイを有するダイヘッドを通して加圧容器を介して(該容器内の圧力 1から100bar、有利には20bar)、該rPSNが吹き出される。(低温)ダイから出たゾルは、(高温)紡糸シャフトを通り抜ける際に、さらなる(第4)HCRに付され、これにより、該ダイから出た物質が(分子的)架橋により反応して(安定な)繊維を与える。該紡糸シャフトは、通常、1から5m、有利には2mの長さを有する。該紡糸シャフト内の温度および湿度は制御され(20℃から30℃の温度、および−5から10℃の露点が好ましい)、所望により、この場合に他の反応物質(例えば、硝酸エチル)で雰囲気を調節することも可能である。
【0051】
該紡糸シャフトを通り抜けた後、該繊維は、例えばトラバース台上に配置される。このようにして形成された繊維性不織ウェブのメシュサイズは、とりわけ、トラバース速度により制御される。これは数cm/sのオーダーである。例えば、双車軸攪拌は狭いメッシュの繊維性不織ウェブを与え、この場合、Si含有出発化合物としてのTEOSに基づき、通例、尚もエトキシ基の30%以上が存在する。
【0052】
段階(e1)において本発明に従い製造された繊維は、尚も存在するエトキシ基のため、ある程度の疎水性を示す。それらは更に、溶媒(水、エタノール)を(ほとんど)含有しない。実際には、本発明の1つの好ましい実施形態は、段階(e1)において繊維または繊維性不織ウェブ、あるいは段階(e2)、(e3)および(e4)において粉末、モノリスおよびコーティングされた物品/表面を製造し、本発明のこれらの実施形態を貯蔵し、輸送し、分配することよりなる。
【0053】
段階(a)において希硝酸を酸として使用する場合、段階(e1)、(e2)、(e3)および(e4)における酸強度の考えられうる好ましい低下は、HNOの残存含有部分を、好ましくは30℃で空気中で排気させることによりNOまたはNOとして逸出させることにより生じる。しかし、該系が硝酸の代わりに有機酸/アルギニンを使用する場合には、所望により、(該酸、例えば酢酸が追い出されえない場合)例えばTris溶液を使用して、水性Tris溶液中での洗浄により、適用の直前に、pHの上昇または酸強度の低下がもたらされる。
【0054】
段階(e2)
乾燥の前または途中に、段階(d)からのrPSN物質(これは、その生物活性のため、有効成分とみなされうる)は、いずれかの所望の(他の)有効成分、例えば、医薬的に活性な物質と混合され、あるいは更なる第4HCRで共有結合されうる(しかし以下においては、「有効成分」なる語は、一般には、段階(d)からのrPSN物質ではなく、そのような他の有効成分を意味する)。これは、好ましくは、均一混合物を生成させることにより行われるべきである。熱感受性有効成分を混合する場合には特に、第4HCRの後のPSN物質と有効成分との混合物は、穏やかな乾燥、例えば噴霧乾燥または凍結乾燥に付される。該有効成分が熱感受性でない場合または有効成分が全く添加されていない場合にも、(相当に)高い温度で乾燥が行われうる。この方法においては、生物吸収性および/または生物活性マトリックスが該有効成分の周囲に好ましく形成される。このマトリックスは特に、液体有効成分の封入に適している。液体は、長期安定性を伴って該マトリックス内に封入され、制御された様態で再び放出されうる。封入は、該有効成分の機械的および化学的安定化、そのような液体有効成分および医薬の取り扱い性の改善をもたらし、該有効成分の無制御揮発を防ぐのを助ける。もちろん、個々の用途に適した他の物質および/または補助物質が最終製剤(粉末)中に存在することが可能である。追加的な有効成分を伴わない用途としては、例えばhttp://www.photolagen.comに記載されている例えば皮膚クリーム用添加剤が挙げられる。
【0055】
該粉末は微粉末および/またはナノ粉末でありうる。本発明の微粉末の粒子は、好ましくは、0.01μmから100μm、特に、0.1μmから20μmのサイズ(平均直径)を有する。該ナノ粉末粒子は、一般に、100nm以下のサイズ(平均直径)を有する。
【0056】
段階(e3)
もう1つの実施形態においては、段階(d)からのrPSN物質(この場合も乾燥の前または途中)が(他の)有効成分、例えば医薬的に活性な物質と混合され、あるいは第4HCRにより共有結合されうる。(他の)有効成分の存在には無関係に、この後、ある形状へのrPSN物質の成形が行われる。このようにして、乾燥後、モノリスが得られうる。そのようなモノリスは、例えば、ドラッグデリバリー系としての大塊状インプラントの形態で使用されうる。それらは、例えば、避妊用デポー剤として使用されることが可能であり、該有効成分を長期にわたって放出しうる。本発明のそのようなインプラントは良好な生体適合性を有する。該モノリスは、好ましくは、0.5mm以上の直径を有しうる。あるいはまた、該モノリスは細かく砕かれ、粉末へと粉砕されうる。
【0057】
段階(e4)
一方、段階(d)からの熟成物質はコーティング剤(塗料)にも加工されうる。このためには、rPSN物質中への浸漬、rPSN物質の注入、またはrPSN物質の薄コーティングもしくは噴霧により、コーティングされるべき物品がコーティングされる。好ましいコーティングはコーティング錠またはカプセル上のコーティングであり、そのためには、圧縮粉末医薬混合物にrPSN物質の生物吸収性および/または生物活性コーティングが施される。これは、モニターおよび/または制御されるべき製剤における(例えば、層の厚さ、および/または層の配列による)(他の)有効成分の放出を可能にする。一方、そのようなコーティングは身体の一部分としてのインプラントにも適用可能であり、これは該インプラントの(生体)適合性を改善し、例えば、拒絶反応が軽減または予防される。
【0058】
本発明のもう1つの実施形態においては、高粘性ゾル、特にヒドロゲルが、本発明のrPSN物質により補足または置換されうる。該高粘性ゾルおよび該ヒドロゲルは有効成分または医薬担体として医薬および化粧品において使用される。一般に、ヒドロゲルは広範囲の創傷のケア(創傷治療および創傷治癒)において広く使用される。有利には、rPSN物質の添加は、生体適合性、ひいては創傷治癒を改善しうる。本発明のヒドロゲルは、この点において、医薬、特にヒト用医薬または医学技術における生物吸収性および/または生物活性製品として有利に使用されうる。
【0059】
該繊維の更なる加工および使用
段階(a)から(d)および(e1)を含む本発明において好ましい方法の1つの最終産物としての繊維は繊維または繊維性不織ウェブとして使用されうる。PSNおよびrPSN物質のようなこれらのPSN物質は優れた生物吸収性および/または生物活性を有する。
【0060】
例えば、ヒト用医薬または医学的技術における生物吸収性および/または生物活性物質として(例えば、創傷治療、創傷治癒のために、外科的縫合として、または強化繊維として:以下の次段落も参照されたい)PSN物質を使用する前、好ましくは、それらを使用する直前に、該PSN物質(繊維、粉末、モノリス、コーティング溶液)は、好ましくは、水供給され、特に好ましくは、弱い外部圧力下で水供給される。水供給は、尚も存在する残存エトキシ基を完全に加水分解して、該物質をより親水性にするよう働く。前記で既に説明したとおり、この水供給は、前段階においてpHが未だ上昇されていない場合には特に、pH上昇条件下(例えば、リン酸バッファーHPO/HPO2−中)で行われうる。この方法において、第6および最終HCRが進行し、その途中で、尚も残存する未加水分解エトキシ基が該PSN物質から除去される。
【0061】
もう1つの利点は、本発明により製造されるPSNまたはrPSNおよびそれらよりなる物質が、DE 196 09 551 C1の方法により得られる繊維および繊維物質と比べて相当に改善された値を細胞毒性試験において示すことである。この改善はL929マウス繊維芽細胞の存在下の試験において実証されている。したがって、段階(e1)から(e4)から本発明により得られる物質は、特に優れた生体適合性に関して顕著である。
【0062】
したがって、本発明により製造される繊維または繊維性ウェブは、ヒト用医薬、医学的技術、濾過技術、バイオテクノロジーまたは絶縁体産業における生物吸収性および/または生物活性物質として有利に使用されうる。特に、本発明により製造される物質は創傷治療および創傷治癒の分野において有利に使用されうる。繊維は、例えば、外科的縫合物質として、または強化繊維として使用されうる。繊維性不織ウェブは、表在性創傷のケア、体液(例えば、血液)の濾過、または培養補助としてのバイオリアクターの分野において、特に有利に使用されうる。
【0063】
生物活性物質が加えられうる(すなわち、該生物活性Si重合体に加えて、他の有効成分を含有しうる)(e1)、(e2)、(e3)および(e4)からの本発明のPSN物質はこれらを急性作用部位へ輸送し、および/または作用部位における該有効成分の放出に影響を及ぼしうる。これらの物質は、以下においては、ドラッグデリバリー系と称される。本発明の熟成PSN物質および本発明のPSN物質の使用は、それらが共に、多種多様な様態で、種々の(他の)有効成分と共に加工され、使用され、組合されうるという利点を有する。本発明のrPSN物質が、該方法において、(他の)有効成分との反応産物を形成しない場合に、特に好ましい。本発明のPSN物質は生物吸収性および/または生物活性であり、改善された細胞毒性値を示し、これは該物質の生体適合性の改善に寄与し、これは、特に医学および医学的技術の分野において必要である。
【0064】
つぎに、以下の実施例により、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0065】
示されている粘度は全て、せん断速度10s−1で4℃でPhysikaのMCR 300粘度計を使用して測定された。
【0066】
実施例
実施例1
生物吸収性および/または生物活性rPSN物質(ゾル)ならびに繊維および繊維性不織ウェブへのその加工
加水分解縮合反応のための出発物質として、2.7molのTEOS(テトラエトキシシラン)(562.4g)を、まず、反応容器内に導入した。3.4(2.7×1.26)molのEtOH(156.8g)を溶媒として加えた。該混合物を攪拌した。それとは別に、1N HNO(27.81g)をHO(60.38g)で希釈し、該TEOS−エタノール混合物に加えた。得られた反応混合物はTEOS 1mol当たり1.8molのHOおよび0.01molのHNOを含む。該混合物を18時間攪拌した。
【0067】
段階(a)の後で得られた混合物を次いで、遅い攪拌下(20rpm)、500から200mbarの真空状態の段階的適用を伴う70℃でのロータリーエバポレーターにおける蒸発により(段階b)、実質的に水非含有かつエタノール非含有状態にした。該高温の結果として、該HNOは、還元型のNOにおいて、著しく減少した。該ゾルは約1Pa・s(せん断速度10s−1、4℃)の粘度を有し、酸強度は著しく減少した。段階(c)において、密閉されたポリプロピレンビーカー(熟成ビーカー)内で該溶液を30分にわたって4℃に冷却し、段階(d)において該熟成ビーカー内でのこの温度で8日間の熟成に付した。約40Pa・s(せん断速度10s−1、4℃)の粘度を有する均一な単相ゾルドープを得た。該ゾルは、認識可能な固相を伴うことなく存在していた。
【0068】
該ゾルは、段階(c1)において繊維へと紡糸されることが可能であった。それは、紡糸液およびrPSNとも称される。該繊維を通常の紡糸系において製造した。このためには、該紡糸液を、20barの圧力で加圧された−15℃に冷却された加圧シリンダー内に満たした。それから生じた力は該紡糸液をダイ中に押し進めた。生じた紡糸フィラメントは、該紡糸液の局所温度ひいては粘度に応じて、30から70μmの直径を有していた。流動可能な蜂蜜状物質は、それ自身の重量で、該加圧シリンダーの下に位置する2mの長さを有する紡糸シャフト内に落下し、そこにおいて、それは大気湿気と反応し、その結果、該フィラメントの流動性は低下した。該紡糸シャフトにおいては、温度および湿度が制御された。該温度は25℃であり、大気湿度は35%であった。
【0069】
トラバース台上に着地した際に、該フィラメントはそれらの実質的に円筒状の形状を保有していたが、それらがそれらの接触領域において互いに付着して繊維性不織ウェブを形成するのに十分な程度に尚も流動性であった。ついで該繊維性不織ウェブを約30℃の乾燥室内で風にあて、それにより、酸含量が更に低下した。該方法において、酸強度は、生理的に許容されるレベルまで低下した。
【0070】
実施例1において製造された繊維性不織ウェブを、ISO 10993−5(1999);EN 30993−5(1994)に従い、細胞毒性試験に付した。測定された細胞毒性は、対照に関して決定された値と比較して、本発明により製造された繊維性不織ウェブが細胞毒性特性を有さないことを示した。
【0071】
比較例
出発物質TEOS(テトラエトキシシラン)、EtOH、HOおよびHNOを1:1.26:X:0.01(ここで、X=1.6、1.7、1.8、1.9および2.0)のモル比で混合し、室温で5時間、激しく攪拌した。得られた溶液を、70℃に加熱された水浴内の開口容器内に懸濁させ、そこで、一定の重量減少が生じるまで維持した。ついで該反応混合物を冷却し、1mm×1mmのメッシュサイズを有するステンレス鋼網で濾過した。該濾液を、3℃の温度の密閉容器内で、重量減少に応じて6時間から6ヶ月間の熟成時間に付した。得られた紡糸液は、かなり長期にわたって、非常に均一であり、安定であり、可紡性であった。該繊維を乾燥−紡糸系において製造した。このためには、該紡糸液を、−15℃に冷却された紡糸ヘッド内に満たし、10から15barの圧力で、まず、80×80μmのメッシュサイズを有するステンレス鋼網に通し、ついで、100μmの直径を有するダイに通した。1mの乾燥区画の後、得られた連続的フィラメントを回転シリンダー上に巻いた。得られた繊維は、バッチ(すなわち、水の添加量)に応じて5μmから30μmの直径を有する円形、楕円形またはダンベル形の横断面形状を示した。横断面の面積は100μmから400μmである。
【0072】
該繊維表面は滑らかであり、いずれの場合においても、波状のプロファイルを示さなかった。該繊維上の引張強さの測定は100MPaから800MPaの値を示した。該繊維物質から得られたIRスペクトルは950cm−1におけるSi−OHバンドおよび3000cm−1におけるC−Hシグナルを示している。したがって、部分的に加水分解された及び部分的に縮合したエトキシ−シラノール繊維が存在する。室温で2ヶ月間の貯蔵の後、該IRスペクトルは、もはや、いずれのC−H振動バンドをも示さない。該繊維は、数ヶ月にわたって安定な部分的に縮合したシラノール繊維に変換されている。
【0073】
このようにして製造された繊維を使用して、細胞毒性の測定を行った。それから製造された繊維物質に関して、ISO 10993−5(1999);EN 30993−5(1994)に従う細胞毒性試験において、細胞毒性効果が確認された。
【0074】
また、全反応バッチの僅か50%が紡糸できたに過ぎなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水溶性溶媒の存在下、0℃から80℃の温度で1から192時間にわたって0から7以下の初期pHで酸触媒される、式(I):
SiX (I)
[式中、基Xは、同一または異なって、ヒドロキシ、水素、ハロゲン、アミノ、アルコキシ、アシルオキシ、アルキルカルボニルおよび/またはアルコキシカルボニルであり、アルキル基から誘導される(該アルキル基は、1から20個の炭素原子、好ましくは1から10個の炭素原子を有する置換されていてもよい直鎖状、分枝状または環状基であり、酸素もしくは硫黄原子またはアミノ基が介在しうる)]の1以上の異なるSi化合物の多くとも1つの基Xの第1加水分解−縮合反応(HCR)を行い、
(b)密閉装置内での蒸発により該溶媒を同時に除去しながら、段階(a)で得られた物質の第2HCRを行い[この場合、該物質の十分な混合を行い、該蒸発は、1から1013mbarの真空中、場合によっては、化学的に不活性なエントレインメント気流を連続的に導入することにより行い、ここで、プロセスパラメーターである圧力、エントレインメント気流および/または温度の少なくとも1つを時間変動可能な様態で調節し、該蒸発の温度は30から90℃であり、該段階は0.5から2Pa・s(4℃で10L/sの場合)で行う]、
(c)このPSN物質を密閉装置内で数分から数時間にわたって冷却し、
(d)(c)から得られたPSN物質を第3HCRにより熟成ポリシロキサン物質(rPSN)物質へと変換することにより得られるポリシロキサン(PSN)物質。
【請求項2】
段階b)における蒸発を一定温度および時間変動可能な圧力で行う、請求項1記載の物質。
【請求項3】
段階b)における蒸発を更に、化学的に不活性なエントレインメント気流の補助により行う、請求項1または2記載の物質。
【請求項4】
該エントレインメント気流が、該装置の気体空間内に適切に配置された気体分配器により分配され、それにより、直接対流様態で液体表面に向かう流動を伴うことなく液体表面の直ぐ上での適度なエントレインメント気体交換が確保される、請求項3記載の物質。
【請求項5】
該水溶性溶媒がエタノールまたはエタノール/水混合物である、請求項1から4のいずれか一項記載の物質。
【請求項6】
段階(a)における0から7以下のpHが、希硝酸で、または(i)クエン酸、コハク酸、酒石酸、酢酸またはアスコルビン酸のような生理的に許容される酸と、(ii)アルギニンのようなニトロキシドシンターゼ(NOS)の基質との酸性混合物もしくは溶液で確立される、請求項1から5のいずれか一項記載の物質。
【請求項7】
90:1から110:1、好ましくは100:1の式(I)のSi化合物:硝酸のモル比で希硝酸を使用する、請求項6記載の物質。
【請求項8】
段階a)を20℃から60℃の温度で8から24時間にわたって行う、前記請求項のいずれか一項記載の物質。
【請求項9】
使用するエントレインメント気流が窒素および/または空気である、前記請求項のいずれか一項記載の物質。
【請求項10】
段階b)における蒸発を600mbar未満の変動可能な減圧圧力で行う、前記請求項のいずれか一項記載の物質。
【請求項11】
段階b)において、該蒸発の温度が約60から90℃である、前記請求項のいずれか一項記載の物質。
【請求項12】
段階(c)におけるゾルを−20℃から+10℃に冷却し、好ましくは、大気圧に調節する、前記請求項のいずれか一項記載の物質。
【請求項13】
段階(c1)において、該熟成PSN物質を生物吸収性および/または生物活性繊維へと紡糸する、前記請求項のいずれか一項記載の物質。
【請求項14】
該熟成PSN物質を、もう1つの段階(e2)、(e3)または(e4)において加工して、生物吸収性および/または生物活性粉末、モノリスまたはコーティングを得る、請求項1から11のいずれか一項記載の物質。
【請求項15】
段階(d)における熟成を20℃から10℃の温度で行う、前記請求項のいずれか一項記載の物質。
【請求項16】
段階(d)を、2から5、好ましくは2.5から3.5の損失係数(4℃、10L/s、15変形において)で30から100Pa・s、好ましくは、45から60Pa・s(せん断速度10s−1、4℃)の該物質の粘度まで行う、請求項1から13および/または15のいずれか一項記載の物質。
【請求項17】
段階(a)において使用するSi化合物がテトラエトキシシラン(TEOS)である、前記請求項のいずれか一項記載の物質。
【請求項18】
生物吸収性および/または生物活性PSN物質を製造するための、前記請求項のいずれか一項記載の物質の使用。
【請求項19】
該PSN物質が繊維、繊維性不織ウェブ、粉末、モノリスまたはコーティングである、請求項18記載の使用。

【公表番号】特表2011−509314(P2011−509314A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538408(P2010−538408)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010412
【国際公開番号】WO2009/077104
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(507051259)バイエル・イノベーシヨン・ゲー・エム・ベー・ハー (5)
【Fターム(参考)】