説明

ポリトリメチレンテレフタレートの製造装置及び製造方法並びにアクロレイン除去装置

【課題】1,3−プロパンジオールを高純度で回収し、原料として再利用し、アクロレインを合理的かつ安全に処理できるポリトリメチレンテレフタレートの製造装置、製造方法、原料の熱劣化物の除去装置の提供。
【解決手段】エステル化槽6、初期重合槽7、中間重合器8を備えるポリトリメチレンテレフタレート製造装置において、脱揮により排出されたガスに1,3−プロパンジオールを噴霧することによりガスの一部を湿式凝縮器12,16,20,24において凝縮させて凝縮液を回収し、蒸留装置29において蒸留して、蒸留装置の頂部から水・アクロレインを含むガスを排出し、蒸留装置の底部から1,3−プロパンジオールの凝縮液を排出し、排出した1,3−プロパンジオールの凝縮液を各工程の原料として用い、排出した水・アクロレインを含むガスを凝縮器30において凝縮させ、酸化処理によりアクロレインをアクリル酸に変換して系外に放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレートの製造装置及び製造方法並びにアクロレイン除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリトリメチレンテレフタレートは、二塩基酸の一種である純テレフタル酸とグリコールの一種である1,3−プロパンジオールを主原料として製造される高級繊維用のポリエステルである。近年、脱石油化の観点から、ポリプロピレン、ポリエチレン等の石油由来物質から製造される汎用プラスチックの代替材料としてバイオマス由来のポリエステルが注目されている。ポリトリメチレンテレフタレートについても、近年は1,3−プロパンジオールをバイオマス由来原料から合成されることが多く、ポリトリメチレンテレフタレートはバイオマス由来のプラスチックとしての側面も有している。
【0003】
ポリトリメチレンテレフタレートは、以下の(式1)及び(式2)に示すように、グリコールである1,3−プロパンジオールと二塩基酸である純テレフタル酸とのエステル化反応、及びこれにより生じたオリゴマーのエステル交換反応による縮重合により合成される。
【0004】
【化1】

【0005】
エステル化反応は、窒素等の不活性ガス雰囲気下、常圧又は弱負圧で起こる、二塩基酸のカルボキシル基と1,3−プロパンジオールのOH基の結合反応であり、副生成物として水が生成する(式1)。また縮重合反応は、エステル化反応により生成したオリゴマー同士において、減圧環境下及び重合触媒の存在下、末端グリコールが外れた一方のオリゴマーがもう一方のオリゴマーの末端グリコールと結合するものであり、副生成物として1,3−プロパンジオールが生成する(式2)。ここで、主要な用途である繊維に関して必要な重合度は、数平均分子量で、一般に1.8万〜2.2万程度であるとされている(例えば非特許文献1)。また、ポリトリメチレンテレフタレート重合の反応条件は、例えば特許文献1〜4に開示されている。
【0006】
ポリトリメチレンテレフタレートの製造においては、(式1)及び(式2)中の1,3−プロパンジオールの熱劣化により、アクロレインが生成しやすい(式3)。
【0007】
【化2】

【0008】
このことは、原料収率の低下を引き起こすだけでなく、アクロレインの混入により生成したポリマーが着色され、また、アクロレインの製造設備外部への排出により環境への悪影響が生じるという点で問題となる。よって、アクロレインの生成を可能なかぎり抑制すること、さらには、生成したアクロレインを反応系から除去し、無害化することが望まれる。ポリトリメチレンテレフタレートは主に繊維用途の素材であるため、アクロレインによる着色は特に問題であり、可能なかぎりポリマーからアクロレインを除去することが望まれる。
【0009】
例えば特許文献3には、エステル化工程と縮重合工程とで異なる触媒を使用することによりアクロレインの生成を抑制する技術が開示されている。しかし、本方法によりアクロレインの生成を完全に抑制することは困難であり、よってアクロレインの混入によるポリマーの着色を防ぎ切れないという問題がある。
【0010】
また、特許文献5には、繊維用途を有するポリエチレンテレフタレートの製造において、ポリマー着色の原因となるグリコール熱劣化物(ジエチレングリコール)のポリマーへの混入を抑制する技術が開示されている(図1)。本技術は、エステル化工程と縮重合工程により構成されるポリエチレンテレフタレートの製造方法において、各工程で排出されるガスを凝縮後に蒸留分離した後、蒸留装置の頂部から水を主成分とするガスを排出し、蒸留装置の中央部からエチレングリコールを主成分とする凝縮液を排出して回収すると共に、蒸留装置の底部から熱劣化物ジエチレングリコールを含む液体を排出するものである。
【0011】
上記蒸留装置における各排出物の排出位置は各物質の沸点で決定され、水<エチレングリコール<ジエチレングリコールの沸点の順番に従って高くなる。本技術においては、エチレングリコールは回収されて、ポリエチレンテレフタレートの原料、湿式凝縮器の噴霧液、重合器中の真空環境を作るためのエジェクターの作動流体として用いられる。また、本技術によれば、水はそのまま系外に放出することが可能であり、ジエチレングリコールは、その生成量が少なく、かつ水分を含まない液体として回収されるため、一般的にそのまま焼却炉に移送して焼却処理することができ、廃棄物の処理を適性に行うことが可能である。そして、エステル化工程及び縮重合工程において溶融ポリマーからの脱揮に伴いガス相に移行するジエチレングリコールをプラント全体から除去することが可能となるため、純度の高いエチレングリコールを原料として使用することが可能であり、ジエチレングリコール含有量が抑制された着色の少ないポリエチレンテレフタレートを製造することが可能である。
【0012】
しかしながら、本技術をポリトリメチレンテレフタレートの製造装置に適用する場合、熱劣化物アクロレインは、その沸点の違いから、ジエチレングリコールのように蒸留装置の底部から水と分離されて抜き出されるのではなく、水と一緒に頂部から排出されるため、排出液としてアクロレインをそのまま焼却処理することができないという問題があった。また、アクロレインは低沸点であるため、仮に焼却処理した場合、気化して焼却設備の外へ系外排出され、その毒性により周辺環境に悪影響を与えるという問題があった。以上のような理由から、ポリエチレンテレフタレート製造装置におけるエチレングリコール回収、ジエチレングリコール処理の技術をポリトリメチレンテレフタレート製造装置に適用することは困難であった。
【0013】
また、特許文献6には、ポリトリメチレンテレフタレートの類似ポリマーであるポリブチレンテレフタレートの製造におけるグリコール熱劣化物(テトラヒドロフラン)の処理が開示されている(図2)。しかしながら、本技術は、1,4−ブタンジオールの熱劣化物テトラヒドロフランの混入によるポリマーの着色の防止を目的とするものではなく、エステル化工程で生成するテトラヒドロフランの回収、精製工程に関するものである。その理由としては、ポリブチレンテレフタレートの用途は自動車や半導体部品が中心で、繊維としては用いられることがないこと、テトラヒドロフランは主にエステル化工程で発生すること、1,4−ブタンジオールがテトラヒドロフランに熱劣化する割合が極めて大きい(10%オーダー)ために、回収しないと原料収率が著しく低下すること、テトラヒドロフランはポリテトラメチレングリコール等の別のポリマーの原料として有効活用される一方、ポリテトラメチレングリコールはウレタンへの添加が主用途であるために、着色を抑制することが重要となるため、テトラヒドロフランの純度を向上する必要があることが挙げられる。各成分の沸点がテトラヒドロフラン<水<1,4−ブタンジオールの順に高く、またテトラヒドロフランと水は、沸点が近く、相溶性があるため、ポリブチレンテレフタレート製造装置では、エステル化工程から排出されるガスを凝縮後に蒸留分離し、共沸する水とテトラヒドロフランのガスを頂部から、1,4−ブタンジオールを底部から排出する。そして、底部から排出された1,4−ブタンジオールは回収されて、ポリブチレンテレフタレートの原料、湿式凝縮器の噴霧液、重合器中の真空環境を作るためのエジェクターの作動流体として用いられる。頂部から排出された水とテトラヒドロフランのガスについても、凝縮後に分離され、テトラヒドロフランは高純度で回収される。その他不純物を含む水溶液は廃液として系外排出される。
【0014】
さらに、特許文献7には、テトラヒドロフランと水の分離を、陽イオン交換樹脂を触媒として用いた水和、貴金属を担持した触媒を用いた水素添加、及び蒸留装置を組み合わせた複雑なシステムを用いて実施することが開示されている。ポリブチレンテレフタレート製造装置において、縮重合工程からの排出ガスは、凝縮後にそのまま回収され、精製することなくポリブチレンテレフタレートの原料、湿式凝縮器の噴霧液、重合器中の真空環境を作るためのエジェクターの作動流体として用いられる。これは、ポリブチレンテレフタレートが着色に厳しい繊維用途のポリマーではないこと、及びエステル化工程と比較して、縮重合でのテトラヒドロフラン生成量は極めて少なく、回収対象にならないためである。以上の技術により、大量発生する熱劣化物であるテトラヒドロフランを回収し別用途に利用することで、原料収率の高いポリブチレンテレフタレート製造装置が実現できる。
【0015】
しかしながら、本技術をポリトリメチレンテレフタレート製造装置に適用する場合、縮重合工程から排出される1,3−プロパンジオールを精製することなくポリマー原料に再利用することになるため、その熱劣化物アクロレインがポリマー中に混入する割合が高くなり、重合したポリマーが着色するという問題がある。また、アクロレインは蒸留後、テトラヒドロフランと同様に水と一緒に蒸留装置の頂部から排出することが可能であるが、テトラヒドロフランのように大量に生成しないため、後段にアクロレインと水の分離精製装置を設置してアクロレインを回収しても、その経済性が見出せないという問題がある。また、仮に精製処理を行った場合、アクロレインは毒性を有するため、その純物質の取り扱いが難しいという問題がある。このことから、ポリブチレンテレフタレート製造装置における1,4−ブタンジオール回収、テトラヒドロフラン処理の技術をポリトリメチレンテレフタレート製造装置に適用することは困難であった。
【0016】
以上のように、ポリトリメチレンテレフタレートの製造に関する技術においては、1,3−プロパンジオールを高純度で回収し、原料として再利用すると共に、ポリトリメチレンテレフタレートの着色を抑制する目的で、その熱劣化物であるアクロレインを合理的かつ安全に処理することを可能にする製造技術が必要とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開昭第51−140992号公報
【特許文献2】特許第3109053号公報
【特許文献3】米国特許第5798433号公報
【特許文献4】米国特許第5599900号公報
【特許文献5】特許第3365442号公報
【特許文献6】特開昭62-195017号公報
【特許文献7】特公平6-29280号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】B. Duh, Solid-State Polymerizaion of Poly(trimethylene terephthalate), J. Appl. Poly. Sci., Vol. 89, p3188-3200 (2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレートの製造において、1,3−プロパンジオールを高純度で回収し、原料として再利用すると共に、その熱劣化物であるアクロレインを合理的かつ安全に処理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明者らは新規なポリトリメチレンテレフタレートの製造装置及び製造方法並びにアクロレイン除去装置を見出した。本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)純テレフタル酸と1,3−プロパンジオールとのエステル化反応を行い、生成した水を脱揮させるためのエステル化槽、
生成したオリゴマー同士の縮重合反応を行い、生成した1,3−プロパンジオール及びアクロレインを脱揮させるための初期重合槽、及び
生成したプレポリマー同士の縮重合反応を行い、生成した1,3−プロパンジオール及びアクロレインを脱揮させるための中間重合器
を備えるポリトリメチレンテレフタレート製造装置であって、
エステル化槽、初期重合槽及び中間重合器に、それぞれ湿式凝縮器が接続され、さらに各湿式凝縮器にそれぞれグリコール供給タンクが接続され、
各湿式凝縮器に凝縮液受けタンクが接続され、
凝縮液受けタンクに、蒸留装置、凝縮器及び酸化反応槽を備えるアクロレイン除去装置が接続され、
凝縮液受けタンクに、凝縮液を分離するための蒸留装置が接続され、
蒸留装置にグリコール保持タンクが接続され、
蒸留装置に、水及びアクロレインを含むガスを凝縮させるための凝縮器が接続され、
凝縮器に、酸化処理によりアクロレインをアクリル酸に変換して系外に放出するための酸化反応槽が接続されていること
を特徴とする、上記装置。
(2)中間重合器の後段に、生成したポリトリメチレンテレフタレートをペレット化するためのペレット化装置が接続されている、上記(1)に記載のポリトリメチレンテレフタレート製造装置。
(3)中間重合器の後段に、さらに縮重合反応を行い、生成した1,3−プロパンジオール及びアクロレインを脱揮させるための最終重合器が接続されている、上記(1)に記載のポリトリメチレンテレフタレート製造装置。
(4)最終重合器が二軸撹拌機を有する横型重合器である、上記(3)に記載のポリトリメチレンテレフタレート製造装置。
(5)最終重合器の後段に、生成したポリトリメチレンテレフタレートをペレット化するためのペレット化装置が接続されている、上記(3)又は(4)に記載のポリトリメチレンテレフタレート製造装置。
(6)湿式凝縮器に、グリコール供給タンク及びエジェクターからなる1,3−プロパンジオールの循環系が接続されている、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレート製造装置。
(7)純テレフタル酸と1,3−プロパンジオールとのエステル化反応を行い、生成した水を脱揮させるエステル化工程、
生成したオリゴマー同士の縮重合反応を行い、生成した1,3−プロパンジオール及びアクロレインを脱揮させる初期重合工程、及び
生成したプレポリマー同士の縮重合反応を行い、生成した1,3−プロパンジオール及びアクロレインを脱揮させる中間重合工程、
を含むポリトリメチレンテレフタレートの製造方法であって、
脱揮により排出されたガスに1,3−プロパンジオールを噴霧することによりガスの一部を湿式凝縮器において凝縮させて凝縮液を回収し、
凝縮液を蒸留装置において蒸留して、蒸留装置の頂部から水及びアクロレインを含むガスを排出し、蒸留装置の底部から1,3−プロパンジオールの凝縮液を排出し、
排出した1,3−プロパンジオールの凝縮液を各工程の原料として用い、
排出した水及びアクロレインを含むガスを凝縮器において凝縮させ、酸化処理によりアクロレインをアクリル酸に変換して系外に放出すること
を特徴とする、上記方法。
(8)中間重合工程の後段において、生成したポリトリメチレンテレフタレートをペレット化する、上記(7)に記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
(9)中間重合工程の後段において、さらに縮重合反応を行い、生成した1,3−プロパンジオール及びアクロレインを脱揮させる最終重合工程を行う、上記(7)に記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
(10)最終重合工程の後段において、生成したポリトリメチレンテレフタレートをペレット化する、上記(9)に記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
(11)湿式凝縮器において凝縮液が除去されたガスを1,3−プロパンジオールと共に、湿式凝縮器に接続された、グリコール供給タンク及びエジェクターからなる1,3−プロパンジオールの循環系において循環させることにより、各工程の陰圧を調節する、上記(7)〜(10)のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
(12)1,3−プロパンジオール、水及びアクロレインを含む凝縮液を分離するための蒸留装置、凝縮器及び酸化反応槽を備えるアクロレイン除去装置であって、
蒸留装置に、水及びアクロレインを含むガスを凝縮させるための凝縮器が接続され、
凝縮器に、酸化処理によりアクロレインをアクリル酸に変換して系外に放出するための酸化反応槽が接続されていること
を特徴とする、上記装置。
(13)酸化処理が、酸化性ガスへの曝気、酸化性ガスの溶解、又は紫外線処理である、上記(12)に記載のアクロレイン除去装置。
(14)頂部に水及びアクロレインを含むガスの排出口を備え、底部に1,3−プロパンジオールの凝縮液の排出口を備える、1,3−プロパンジオール、水及びアクロレインを含む凝縮液を分離するための蒸留装置。
(15)10〜25の理論段数を有する、上記(14)に記載の蒸留装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明のポリトリメチレンテレフタレートの製造装置及び製造方法によれば、1,3−プロパンジオールを高純度で回収し、原料として再利用すると共に、その熱劣化物であるアクロレインを合理的かつ安全に処理することができる。また、本発明のアクロレイン除去装置によれば、1,3−プロパンジオールの熱劣化物であるアクロレインを合理的かつ安全に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ポリエチレンテレフタレートの製造及び熱劣化物の除去を行うための製造装置を示す図である。
【図2】ポリブチレンテレフタレートの製造及び熱劣化物の除去を行うための製造装置を示す図である。
【図3】本発明のポリトリメチレンテレフタレートの製造及び熱劣化物アクロレインの除去を行うための製造装置の一例を示す図である。
【図4】本発明の熱劣化物アクロレインの除去装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート製造装置は、直列に接続された、エステル化工程を行うエステル化槽及び縮重合工程を行う2個又は3個の重合器並びにアクロレイン除去装置を備える。
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照してさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0025】
図3は、本発明のポリトリメチレンテレフタレート製造装置の一例を表したものである。また、本発明のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法は、図3に示したような装置を用いて実施することができる。しかし本発明の製造方法はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の装置によっても行うことが可能である。
【0026】
一実施形態において本発明のポリトリメチレンテレフタレート製造装置は、二塩基酸供給タンク1、グリコール供給タンク2、11、13、15、17、19、21、23及び25、触媒供給槽3、原料調合槽4、スラリー供給槽5、エステル化槽6、初期重合槽7、中間重合器8、最終重合器9、ペレット化装置10、湿式凝縮器12、16、20及び24、エジェクター14、18、22及び26、グリコール保持タンク27、凝縮液受けタンク28、蒸留装置29、凝縮器30、酸化反応槽31を備える。
【0027】
二塩基酸供給タンク1は、粉体の純テレフタル酸の供給速度を制御することを可能にするために、これを供給する手段として槽排出口にスクリューフィーダー等を備えることが好ましい。
【0028】
グリコール供給タンク2は、0.1Pa・s程度のやや粘性を有する液体である1,3−プロパンジオールを供給する手段として、キャンドポンプ、プランジャーポンプ等の各種ポンプを備える。
【0029】
ここで、純テレフタル酸及び1,3−プロパンジオールの供給速度は原料調合槽4内で純テレフタル酸及び1,3−プロパンジオールが所定のモル比となるように決定される。1,3−プロパンジオール/純テレフタル酸のモル比は、所望の平均重合度に応じて、適宜調節することができ、通常1〜2.5、好ましくは1.3〜2.0である。これは後段のエステル化工程にて非重合反応性の環状オリゴマー、特にその3量体の生成を抑制するためである。
【0030】
原料調合槽4では、二塩基酸供給タンク1から供給された純テレフタル酸及びグリコール供給タンク2から供給された1,3−プロパンジオールを混合してスラリー化する。その後スラリーはスラリー供給槽5に供給される。原料調合槽4を省略し、1,3−プロパンジオールと純テレフタル酸を直接スラリー供給槽5に供給することも可能である。この場合、スラリー供給槽5は、1,3−プロパンジオール及び純テレフタル酸を混合してスラリー化する機能も併せ持つ。
【0031】
触媒供給槽3から供給される触媒としては、固体触媒又は液体触媒のいずれも適用可能である。固体触媒としては、チタン、ゲルマニウム、アンチモン等の酸化物の粉体を挙げることができ、反応性の観点から二酸化チタンが好ましい。液体触媒としては、チタン、アルミ、亜鉛等の有機金属触媒を挙げることができ、反応性の観点からチタンテトラブトキシドが好ましい。上記(式3)で示される1,3−プロパンジオールの熱劣化反応に対する影響が少ないという点で、固体触媒である二酸化チタンが特に好ましい。触媒供給槽3は、固体触媒を用いる場合、供給速度の制御を可能にするために、これを供給する手段として槽排出口にスクリューフィーダー等を備えることが好ましい。触媒供給槽3は、液体触媒を用いる場合、供給速度の制御を可能にするために、これを供給する手段として槽排出口に定量送液ポンプ等を備えることが好ましい。触媒添加量は、スラリーに対して、金属原子換算で100〜1000ppm、好ましくは300〜500ppmである。
【0032】
スラリー供給槽5では、供給されたスラリーと触媒供給槽3から供給される触媒を混合し、スラリーと触媒の混合液(以下、スラリーという)をエステル化槽6へ連続的に排出する。スラリー供給槽5は、スラリーを排出する手段として、キャンドポンプ及びプランジャーポンプ等の各種ポンプを備える。必要に応じてスラリーを循環させながら、上記混合及び排出を行う。スラリーの循環は、主にスラリー中において固液分離がおきることを抑制するために行うものであり、省略することも可能である。
【0033】
エステル化槽6では、スラリー供給槽5から供給されたスラリーを窒素等の不活性雰囲気下で撹拌混合しつつ、所定の温度に加熱し、(式1)のエステル化反応を行う。エステル化工程においては、末端に水酸基を有するオリゴマーが生成する。
【0034】
エステル化槽6における加熱手段としては、槽内部若しくは外部の熱交換器、ヒーターによる加熱又はその併用等、各種方式が適用可能である。商用プラントにおいては内部熱交換器を用いることが好ましく、この場合、所定の温度に加熱、制御された熱媒を送液、循環する。エステル化槽6は温度計測器を備えており、スラリー温度をモニターしながら、熱媒の加熱温度の設定を制御することができる。
【0035】
エステル化槽6におけるエステル化工程の条件は、圧力0.5〜2.0気圧、好ましくは0.9〜1.1気圧、温度180〜250℃、好ましくは200〜230℃、スラリーの滞留時間1〜5h、好ましくは2.5〜4hである。
【0036】
エステル化槽6において(式1)の反応により生成した溶融オリゴマー(以下、オリゴマーという)は初期重合槽7に送液される。ここで、オリゴマーはスラリーではなく液体であるため固液分離しない。エステル化槽6では、スラリー供給、オリゴマー排出を連続的に行う。エステル化槽6は、キャンドポンプ、プランジャーポンプ等の他、より粘度の高い液体に用いられるギアポンプを含む適切な各種ポンプを備える。
【0037】
エステル化槽6はタンク式の撹拌槽であることが好ましく、(式1)のエステル化反応において生成した副生成物、すなわち水は、スラリー液中で気化し、気泡生成して脱揮される。これによりエステル化反応は促進される。脱揮された水蒸気は一部1,3−プロパンジオールや揮発性の低分子量オリゴマーを同伴しつつ、湿式凝縮器12に送られる。
【0038】
湿式凝縮器12では、グリコール供給タンク11から供給される1,3−プロパンジオールをエステル化槽6から排出されたガスに噴霧し、ガスの一部を凝縮させる。凝縮液を除去されたガスはエジェクター14に供給され、グリコール供給タンク13から供給される1,3−プロパンジオールの流速による陰圧によりグリコール供給タンク13に引き込まれ、循環する。その際の陰圧はエステル化槽6での反応条件に応じて、1,3−プロパンジオールの流速の調節により設定する。陰圧を必要としない場合には、エジェクター14、グリコール供給タンク13は省略可能であり、この場合ガスは系外に放出される。
【0039】
初期重合槽7では、不活性雰囲気下及びエジェクター18により作り出される減圧雰囲気下、オリゴマーを撹拌混合しつつ、所定の温度に加熱し、(式2)の縮重合反応を行う。初期重合工程においては、数平均重合度20〜30程度のプレポリマーが生成する。
【0040】
エステル化工程における触媒失活等により縮重合反応に悪影響がある場合には、必要に応じて、触媒を追加供給することもできる。触媒失活等の影響が小さく、触媒が縮重合反応に十分作用する場合には、この触媒追加添加は必ずしも必要ではない。触媒を追加供給する場合、触媒としては、固体触媒又は液体触媒のいずれも適用可能であるが、反応性の観点から液体触媒が好ましい。固体触媒としては、チタン、ゲルマニウム、アンチモン等の酸化物の粉体を挙げることができ、反応性の観点から二酸化チタンが好ましい。液体触媒としては、チタン、アルミ、亜鉛等の有機金属触媒を挙げることができ、反応性の観点からチタンテトラブトキシドが好ましい。初期重合槽7は、固体触媒を用いる場合、供給速度の制御を可能にするために、これを供給する手段として槽排出口にスクリューフィーダー等を備えることが好ましい。初期重合槽7は、液体触媒を用いる場合、供給速度の制御を可能にするために、これを供給する手段として槽排出口に定量送液ポンプ等を備えることが好ましい。触媒添加量は、スラリーに対して、金属原子換算で100〜1000ppm、好ましくは300〜500ppmである。
【0041】
初期重合槽7における加熱手段としては、槽内部若しくは外部の熱交換器、ヒーターによる加熱又はその併用等、各種方式が適用可能である。商用プラントにおいては内部熱交換器を用いることが好ましく、この場合、所定の温度に加熱、制御された熱媒を送液、循環する。初期重合槽7は温度計測器を備えており、スラリー温度をモニターしながら、熱媒の加熱温度の設定を制御することができる。
【0042】
初期重合槽7における縮重合工程の条件について、真空度は、5〜100torr、好ましくは10〜20torrである。真空度を高くしすぎると、1,3−プロパンジオールの脱揮が速く進行し、必要以上に1,3−プロパンジオールを系外除去してしまう可能性がある。この場合、反応平衡により生成する一部カルボキシル末端基がエステル化される機会を低減させることになり、酸価等の最終ポリマーの品質の観点から望ましくない。初期重合槽7は、真空度を所定値に制御するために、真空計を備えており、計測した真空度の値をエジェクター18での1,3−プロパンジオールの循環流速にフィードバックすることで、真空度を制御する。また、初期重合槽7におけるオリゴマーの滞留時間、すなわち初期重合における重合時間は、1〜4h、好ましくは2〜3hである。初期重合における重合時間は、全体の10〜40%であることが好ましく、20〜30%であることが特に好ましい。オリゴマーの重合温度は、180〜250℃、好ましくは240〜250℃である。
【0043】
初期重合槽7において(式2)の反応により生成したプレポリマーは、中間重合器8に送液される。初期重合槽7では、オリゴマー供給及びプレポリマー排出を連続的に行う。初期重合槽7は、キャンドポンプ、プランジャーポンプ及びギアポンプを含む適切な各種ポンプを備える。
【0044】
初期重合槽7はタンク式の撹拌槽であることが好ましく、(式2)の縮重合反応において生成した副生成物、すなわち1,3−プロパンジオールは、オリゴマー中で気化、気泡生成して脱揮される。これにより反応が促進され、重合度が増大する。脱揮された1,3−プロパンジオールは揮発性の低分子量オリゴマーや熱劣化物であるアクロレインを同伴しつつ湿式凝縮器16に送られる。湿式凝縮器16ではグリコール供給タンク15から供給される1,3−プロパンジオールを初期重合槽7から排出されたガスに噴霧し、ガスの一部を凝縮させる。凝縮液を除去されたガスはエジェクター18に供給され、グリコール供給タンク17から供給される1,3−プロパンジオールの流速による陰圧によりグリコール供給タンク17に引き込まれ、循環する。その際の陰圧は、初期重合槽7での反応条件に応じて、1,3−プロパンジオールの流速の調節により設定する。陰圧を必要としない場合には、エジェクター18、グリコール供給タンク17は省略可能であり、この場合ガスは系外に放出される。
【0045】
中間重合器8では、プレポリマーを不活性かつエジェクター22により作り出される減圧雰囲気下、撹拌混合しつつ、所定の温度に加熱し、(式2)の縮重合反応を行う。中間重合工程においては、数平均重合度40〜60程度のプレポリマーが生成する。
【0046】
中間重合器8における加熱手段としては、槽内部若しくは外部の熱交換器、ヒーターによる加熱又はその併用等、各種方式が適用可能である。商用プラントにおいては内部熱交換器を用いることが好ましく、この場合、所定の温度に加熱、制御された熱媒を送液、循環する。中間重合器8は温度計測器を備えており、プレポリマー温度をモニターしながら、熱媒の加熱温度の設定を制御することができる。
【0047】
中間重合器8における縮重合工程の条件について、真空度は、1〜20torr、好ましくは2〜5torrである。中間重合器8は、真空度を所定値に制御するために、真空計を備えており、計測した真空度の値をエジェクター22での1,3−プロパンジオールの循環流速にフィードバックすることで、真空度を制御する。また、中間重合器8におけるプレポリマーの滞留時間、すなわち中間重合における重合時間は、1〜4h、好ましくは2〜3hである。中間重合における重合時間は、全体の10〜40%であることが好ましく、20〜30%であることが特に好ましい。プレポリマーの重合温度は、230〜250℃、好ましくは240〜250℃である。
【0048】
ここで、縮重合工程においては、溶融プレポリマー中での1,3−プロパンジオール濃度の低減による1,3−プロパンジオールの脱揮効率の低下を防ぎ、縮重合反応を促進する目的で、後段の縮重合工程ほど真空度の設定値を高くすることが好ましい。また、1,3−プロパンジオールの脱揮を促進するために、十分な撹拌を行うことが好ましい。また、縮重合工程においては、縮重合反応の進展に伴い、重合温度を上昇させることが好ましい。これは、プレポリマーの反応末端基濃度が低下して反応量自体が低下するのを、温度上昇に伴う反応速度増大、副生成物である1,3−プロパンジオールの分圧上昇、粘度低減による表面更新効果の改善により補償するために行う。
【0049】
中間重合器8において(式2)の反応により生成したプレポリマーは、最終重合器9に送液される。中間重合器8では、プレポリマー供給及び排出を連続的に行う。中間重合器8は、プレポリマーを排出するために、高粘度流体に対応できるギアポンプを備えることが好ましい。
【0050】
中間重合器8は、一軸撹拌機を有する横型重合器であってもよく、また、オリゴマーの滞留時間が短い場合は、タンク式撹拌機であってもよい。横型重合器を使用する場合、反応液をディスク型の撹拌翼で持ち上げ重力落下させる際の液膜生成と表面更新効果により蒸発面を増大させつつ混合を行うことにより、副生成物の脱揮を促進することができる。反応液が低粘度である場合、プラグフロー性を改善する目的で、堰を備えた重合器反応槽を使用することが好ましい。また、反応液が高粘度である場合、耐用粘度をより高くする目的で、特定の形状を有する撹拌翼を重合器に設置することが好ましい。
【0051】
中間重合工程において(式2)の縮重合反応により生成した副生成物、すなわち1,3−プロパンジオールは、プレポリマー中で気化、気泡生成して脱揮される。これにより反応が促進され、重合度が増大する。脱揮された1,3−プロパンジオールは揮発性の低分子量オリゴマーや熱劣化物であるアクロレインを同伴しつつ湿式凝縮器20に送られる。湿式凝縮器20では、グリコール供給タンク19から供給される1,3−プロパンジオールを中間重合器8から排出されたガスに噴霧し、ガスの一部を凝縮させる。凝縮液を除去されたガスはエジェクター22に供給され、グリコール供給タンク21から供給される1,3−プロパンジオールの流速による陰圧によりグリコール供給タンク21に引き込まれ、循環する。その際の陰圧は中間重合器8での反応条件に応じて、1,3−プロパンジオールの流速の調節により設定する。陰圧を必要としない場合には、エジェクター22、グリコール供給タンク21は省略可能であり、この場合ガスは系外に放出される。
【0052】
最終重合器9では、不活性雰囲気下及びエジェクター26により作り出される減圧雰囲気下、プレポリマーを撹拌混合しつつ、所定の温度に加熱し、(式2)の縮重合反応を行う。最終重合工程においては、数平均重合度80〜110程度のポリマーが生成する。所望の数平均重合度に応じて、最終重合工程を省略することもできる。
【0053】
最終重合器9における加熱手段としては、槽内部若しくは外部の熱交換器、ヒーターによる加熱又はその併用等、各種方式が適用可能である。商用プラントにおいては内部熱交換器を用いることが好ましく、この場合、所定の温度に加熱、制御された熱媒を送液、循環する。最終重合器9は温度計測器を備えており、プレポリマー温度をモニターしながら、熱媒の加熱温度の設定を制御することができる。
【0054】
最終重合器9における縮重合工程の条件について、真空度は、2torr以下、好ましくは1torr以下である。最終重合器9は、真空度を所定値に制御するために、真空計を備えており、計測した真空度の値をエジェクター26での1,3−プロパンジオールの循環流速にフィードバックすることで、真空度を制御する。また、最終重合器9におけるプレポリマーの滞留時間、すなわち最終重合における重合時間は、4〜8h、好ましくは5〜6hである。最終重合における重合時間は、全体の50%以上であることが好ましい。プレポリマーの重合温度は、230〜250℃、好ましくは240〜250℃である。
【0055】
最終重合器9ではプレポリマー供給、及び(式2)の反応により成長したポリマー排出を連続的に行い、排出されたポリマーはペレット化装置10に送液される。ペレット化装置10は、実質的にポリマーストランドの冷却槽と冷却物のチップカッターから構成される。ペレット化装置10から排出されたポリトリメチレンテレフタレートペレットが製品ポリマーとなる。最終重合器9は、ポリマーを排出するために、高粘度流体に対応できるギアポンプを備えることが好ましい。
【0056】
最終重合器9としては、ポリマーの最終的な粘度が1kPa・sに接近する、又はこれを超える場合、高粘度重合器を用いることが好ましい。高粘度重合器としては、高粘度のプレポリマーに対応できる二軸撹拌機を有する横型重合器が挙げられ、例えば日立プラントテクノロジー社のメガネ翼重合器が挙げられる。ここで、二軸撹拌機を有する横型重合器においては、各撹拌軸が互いに反対方向に回転し、撹拌翼に持ち上げられた溶融ポリマーが引き伸ばされる形で運転される。これにより、脱揮界面の面積を増大させると共に、引き伸ばしと折りたたみの繰り返し効果により高粘度液の混合が進行する。その際、互いの撹拌軸に設置された撹拌翼が反対側の撹拌軸に付着する溶融ポリマーに接触し、これを引き剥がすことにより、溶融ポリマーの過剰な重合器内滞留とそれに伴う熱分解の影響を低減する。
【0057】
最終重合工程において(式2)の縮重合反応により生成した副生成物、すなわち1,3−プロパンジオールは、プレポリマー中で気化、気泡生成して脱揮される。これにより反応が促進され、重合度が増大する。脱揮された1,3−プロパンジオールは揮発性の低分子量オリゴマーや熱劣化物であるアクロレインを同伴しつつ湿式凝縮器24に送られる。湿式凝縮器24ではグリコール供給タンク23から供給される1,3−プロパンジオールを最終重合器9から排出されたガスに噴霧し、ガスの一部を凝縮させる。凝縮液を除去されたガスはエジェクター26に供給され、グリコール供給タンク25から供給される1,3−プロパンジオールの流速による陰圧によりグリコール供給タンク25に引き込まれ、循環する。その際の陰圧は最終重合器9での反応条件に応じて、1,3−プロパンジオールの流速の調節により設定する。陰圧を必要としない場合には、エジェクター26、グリコール供給タンク25は省略可能であり、この場合ガスは系外に放出される。
【0058】
凝縮液受けタンク28では、湿式凝縮器12、16、20、24にて噴霧された1,3−プロパンジオールと、エステル化槽6、初期重合槽7、中間重合器8、最終重合器9から排出されたガス中に含まれていた凝縮物が集められる。凝縮液はその後、蒸留装置29に送られる。
【0059】
図4は、本発明のアクロレイン除去装置の一例を表したものである。一実施形態において本発明のアクロレイン除去装置は、蒸留装置29、凝縮器30及び酸化反応槽31を備える。
【0060】
蒸留装置29では、上記凝縮液が、水及びアクロレインを含むガスと1,3−プロパンジオールの凝縮液に分離され、水及びアクロレインを含むガスは蒸留装置29の頂部から排出され、1,3−プロパンジオールの凝縮液は蒸留装置29の底部から排出される。
【0061】
蒸留装置29の理論段数は、10〜25であることが好ましく、15〜20であることが特に好ましい。蒸留による、水及びアクロレインを含むガスと1,3−プロパンジオールの凝縮液の分離は、20〜50torrで行うことが好ましく、30〜40torrで行うことが特に好ましい。蒸留による、水及びアクロレインを含むガスと1,3−プロパンジオールの凝縮液の分離は、40〜60℃で行うことが好ましく、45〜55℃で行うことが特に好ましい。
【0062】
蒸留装置29から排出された1,3−プロパンジオールの凝縮液は、グリコール保持タンク27に回収される。一方、蒸留装置29から排出された水及びアクロレインを含むガスは、凝縮器30にて凝縮されたあと、酸化反応槽31に送液される。
【0063】
酸化反応槽31では、アクロレインの酸化処理を行うことにより、アクロレインを毒性の低いアクリル酸に転換する。酸化処理としては、空気、酸素、オゾン等の酸化性ガスへの曝気、酸化性ガスの溶解、及びこれらと紫外線処理の併用等が挙げられる。経済性の観点から、空気への曝気による酸化処理が好ましい。酸化反応槽31からの排水は、必要に応じて生物処理や活性炭処理等を行い、有機物濃度を低減した後、系外に放出することにより行う。また、一部の揮発性ガスは酸化反応槽31から排気される。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0065】
実施例及び比較例1、2で得られたポリマーの色は、色差計(スガ試験機社製、SMカラーコンピュータ型式SM−T45)を用いてb値を測定することにより評価した。
【0066】
[実施例]
図3に示したポリトリメチレンテレフタレート製造装置を用いてポリトリメチレンテレフタレートを合成した。
【0067】
原料調合槽4において、1,3−プロパンジオール/純テレフタル酸のモル比2.0でこれらを混合し、スラリー供給槽5に供給した。スラリー供給槽5において、触媒としてチタンテトラブトキシドをチタン原子換算で423ppmスラリーに添加し、混合した後、エステル化槽6に送液した。エステル化槽6において、圧力1.0気圧、温度210℃、スラリー滞留時間3hでエステル化を実施した。その結果、エステル化率96.2%でオリゴマーが得られた。
【0068】
得られたオリゴマーを初期重合槽7に供給した。初期重合槽7において、触媒としてチタンテトラブトキシドをチタン原子換算で565ppmオリゴマーに追加添加し、真空度20torr、温度250℃、オリゴマー滞留時間2hで重合を行った。
【0069】
得られたプレポリマーを中間重合器8に供給した。中間重合器8において、真空度3torr、温度249℃、オリゴマー滞留時間3hで重合を行った。この結果、数平均分子量1.1万、酸価14eq/tのプレポリマーが得られた。
【0070】
得られたプレポリマーを最終重合器9に供給した。最終重合器9において、真空度1torr、温度248℃、プレポリマー滞留時間5hで重合を行った。最終重合器として、横型の二軸メガネ翼重合器を使用した。
【0071】
得られたポリマーをペレット化装置10でペレット化し、各種分析を行った。数平均分子量2.1万、酸価24eq/tのポリマーが得られた。また、得られたポリマーの色はb値で3であり、着色が抑制されていることが確認された。
【0072】
[比較例1]
図1に示したポリエチレンテレフタレートの製造装置においてポリトリメチレンテレフタレートを製造する。湿式凝縮器12、16、20、24にて噴霧された1,3−プロパンジオールと、エステル化槽6、初期重合槽7、中間重合器8、最終重合器9から排出されたガス中に含まれていた凝縮物は、凝縮液受けタンク28に集められる。凝縮液はその後、蒸留装置29に送られ、頂部からは水及びアクロレインを含むガスが排出され、底部からは1,3−プロパンジオールの凝縮液が排出される。水及びアクロレインを含むガスは凝縮器30により凝縮され、アクロレイン水溶液が回収される。底部から排出される1,3−プロパンジオールの凝縮液は焼却装置32にて焼却処理される。このように、ポリエチレンテレフタレートの場合にエチレングリコールが回収される蒸留装置29の中央部分から回収物は発生しない。従って、1,3−プロパンジオールの凝縮液はグリコール保持タンク27に回収されない。よって、1,3−プロパンジオールの原料収率が低下する。
【0073】
[比較例2]
図2に示したポリブチレンテレフタレートの製造装置においてポリトリメチレンテレフタレートを製造する。湿式凝縮器16、20、24にて噴霧された1,3−プロパンジオールと、初期重合槽7、中間重合器8、最終重合器9から排出されたガス中に含まれていた凝縮物は、凝縮液受けタンク28に集められる。凝縮液はその後、直接グリコール保持タンク27に回収される。その際、縮重合の各工程で生成したアクロレインも保持タンク27に回収される。このように、原料にアクロレインが混入するため、結果としてポリトリメチレンテレフタレートポリマーにアクロレインが混入し着色が起こる。湿式凝縮器12にて噴霧された1,3−プロパンジオールとエステル化槽6から排出されたガス中に含まれていた凝縮物はエステル化工程凝縮液受けタンク33に集められる。集められた凝縮液は蒸留装置29に送られ、頂部から水及びアクロレインを含むガスが排出され、底部から1,3−プロパンジオールの凝縮液が排出される。底部から排出される1,3−プロパンジオールの凝縮液はグリコール保持タンク27に回収される。よって、1,3−プロパンジオールの原料収率は実施例と同程度となる。一方、頂部から排出される水及びアクロレインを含むガスは、水和反応装置34、蒸留装置35、水素添加装置36、蒸留装置37を経由することにより、その凝縮液から不純物が除去され、アクロレインは1,3−プロパンジオールに変換され、蒸留装置38の底部からごく少量の高純度1,3−プロパンジオールが回収される。得られたポリマーの色は、原料中へのアクロレイン混入に伴い、b値で8であり実施例と比べて悪化した。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、繊維としての特性、成型加工性を維持するうえで必要な着色抑制がなされたポリトリメチレンテレフタレートを合理的に生産することができる。また、原料の熱劣化に伴い生成するアクロレインを安全に酸化処理できることから、環境負荷低減、排ガス処理設備の軽微化・コスト低減を行うことができる。
【符号の説明】
【0075】
二塩基酸供給タンク1
グリコール供給タンク2、11、13、15、17、19、21、23、25
触媒供給槽3
原料調合槽4
スラリー供給槽5
エステル化槽6
初期重合槽7
中間重合器8
最終重合器9
ペレット化装置10
湿式凝縮器12、16、20、24
エジェクター14、18、22、26
グリコール保持タンク27
凝縮液受けタンク28
蒸留装置29、35、37、38
凝縮器30
酸化反応槽31
焼却装置32
エステル化工程凝縮液受けタンク33
水和反応装置34
水素添加装置36

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純テレフタル酸と1,3−プロパンジオールとのエステル化反応を行い、生成した水を脱揮させるためのエステル化槽、
生成したオリゴマー同士の縮重合反応を行い、生成した1,3−プロパンジオール及びアクロレインを脱揮させるための初期重合槽、及び
生成したプレポリマー同士の縮重合反応を行い、生成した1,3−プロパンジオール及びアクロレインを脱揮させるための中間重合器
を備えるポリトリメチレンテレフタレート製造装置であって、
エステル化槽、初期重合槽及び中間重合器に、それぞれ湿式凝縮器が接続され、さらに各湿式凝縮器にそれぞれグリコール供給タンクが接続され、
各湿式凝縮器に凝縮液受けタンクが接続され、
凝縮液受けタンクに、蒸留装置、凝縮器及び酸化反応槽を備えるアクロレイン除去装置が接続され、
凝縮液受けタンクに、凝縮液を分離するための蒸留装置が接続され、
蒸留装置にグリコール保持タンクが接続され、
蒸留装置に、水及びアクロレインを含むガスを凝縮させるための凝縮器が接続され、
凝縮器に、酸化処理によりアクロレインをアクリル酸に変換して系外に放出するための酸化反応槽が接続されていること
を特徴とする、上記装置。
【請求項2】
中間重合器の後段に、生成したポリトリメチレンテレフタレートをペレット化するためのペレット化装置が接続されている、請求項1に記載のポリトリメチレンテレフタレート製造装置。
【請求項3】
中間重合器の後段に、さらに縮重合反応を行い、生成した1,3−プロパンジオール及びアクロレインを脱揮させるための最終重合器が接続されている、請求項1に記載のポリトリメチレンテレフタレート製造装置。
【請求項4】
最終重合器が二軸撹拌機を有する横型重合器である、請求項3に記載のポリトリメチレンテレフタレート製造装置。
【請求項5】
最終重合器の後段に、生成したポリトリメチレンテレフタレートをペレット化するためのペレット化装置が接続されている、請求項3又は4に記載のポリトリメチレンテレフタレート製造装置。
【請求項6】
湿式凝縮器に、グリコール供給タンク及びエジェクターからなる1,3−プロパンジオールの循環系が接続されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリトリメチレンテレフタレート製造装置。
【請求項7】
純テレフタル酸と1,3−プロパンジオールとのエステル化反応を行い、生成した水を脱揮させるエステル化工程、
生成したオリゴマー同士の縮重合反応を行い、生成した1,3−プロパンジオール及びアクロレインを脱揮させる初期重合工程、及び
生成したプレポリマー同士の縮重合反応を行い、生成した1,3−プロパンジオール及びアクロレインを脱揮させる中間重合工程、
を含むポリトリメチレンテレフタレートの製造方法であって、
脱揮により排出されたガスに1,3−プロパンジオールを噴霧することによりガスの一部を湿式凝縮器において凝縮させて凝縮液を回収し、
凝縮液を蒸留装置において蒸留して、蒸留装置の頂部から水及びアクロレインを含むガスを排出し、蒸留装置の底部から1,3−プロパンジオールの凝縮液を排出し、
排出した1,3−プロパンジオールの凝縮液を各工程の原料として用い、
排出した水及びアクロレインを含むガスを凝縮器において凝縮させ、酸化処理によりアクロレインをアクリル酸に変換して系外に放出すること
を特徴とする、上記方法。
【請求項8】
中間重合工程の後段において、生成したポリトリメチレンテレフタレートをペレット化する、請求項7に記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
【請求項9】
中間重合工程の後段において、さらに縮重合反応を行い、生成した1,3−プロパンジオール及びアクロレインを脱揮させる最終重合工程を行う、請求項7に記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
【請求項10】
最終重合工程の後段において、生成したポリトリメチレンテレフタレートをペレット化する、請求項9に記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
【請求項11】
湿式凝縮器において凝縮液が除去されたガスを1,3−プロパンジオールと共に、湿式凝縮器に接続された、グリコール供給タンク及びエジェクターからなる1,3−プロパンジオールの循環系において循環させることにより、各工程の陰圧を調節する、請求項7〜10のいずれか1項に記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
【請求項12】
1,3−プロパンジオール、水及びアクロレインを含む凝縮液を分離するための蒸留装置、凝縮器及び酸化反応槽を備えるアクロレイン除去装置であって、
蒸留装置に、水及びアクロレインを含むガスを凝縮させるための凝縮器が接続され、
凝縮器に、酸化処理によりアクロレインをアクリル酸に変換して系外に放出するための酸化反応槽が接続されていること
を特徴とする、上記装置。
【請求項13】
酸化処理が、酸化性ガスへの曝気、酸化性ガスの溶解、又は紫外線処理である、請求項12に記載のアクロレイン除去装置。
【請求項14】
頂部に水及びアクロレインを含むガスの排出口を備え、底部に1,3−プロパンジオールの凝縮液の排出口を備える、1,3−プロパンジオール、水及びアクロレインを含む凝縮液を分離するための蒸留装置。
【請求項15】
10〜25の理論段数を有する、請求項14に記載の蒸留装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−87237(P2012−87237A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236254(P2010−236254)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】