説明

ポリヌクレオチドを送達する方法、及び送達用組成物

【課題】ポリヌクレオチドを送達する方法、及び送達用組成物を提供する。
【解決手段】非核性細胞小器官への標的シグナルに機能的にリンクされたタンパク質導入領域を含む、組み換え高移動性タンパク質、又はその断片であって:該組み換え高移動性タンパク質がポリヌクレオチドと会合し、該ポリヌクレオチドを非核性細胞小器官への送達のためにパッケージングする、前記タンパク質、又はその断片。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この出願は、2003年10月24日に出願された米国特許仮出願第60/513,983号、及び2004年
5月5日に出願された米国特許仮出願第60/568,436号の利益、及び優先権を主張する。許容
される場合には、この両者の内容は、その全体が、引用により取り込まれるものとする。
【0002】
(連邦政府委託研究、又は開発に関する記載)
下記開示の態様は、部分的にNIH-NIA SBIR助成第AG022780号により助成された。それゆ
え、米国は、本開示における一定の権利を有する。
【0003】
(引用による取り込み)
この出願に、添付コンピュータ可読媒体上の配列リスト、ファイル名120701-2030.txt
その全体が、引用により取り込まれるものとする。該ファイルは、2004年10月14日、又は
その前後に作製され、約696 Kbである。
【0004】
(背景)
(1.技術分野)
本開示は、一般にポリヌクレオチドの送達のための組成物、及び方法、さらに具体的に
は、細胞小器官のトランスフェクションなどの、トランスフェクションの組成物、及び方
法に関するものである。
【背景技術】
【0005】
(2.関連する技術)
ミトコンドリアDNA (mtDNA)における単一同質細胞質の突然変異から生じる、多くのミ
トコンドリア疾患が記載されてきている。通常、これらの疾患は、非分裂組織(脳、網膜
、筋肉)に影響を及ぼし、様々な表現型を示し、弧発的に現れ、かつ治療不可能である。
判明しつつある証拠から、パーキンソン病、及びII型糖尿病などの疾患におけるmtDNA異
常の関与が示されているが、これらの状態の具体的な原因となる突然変異は、依然として
明らかにされていない。mtDNA 遺伝子型-表現型の関係を理解すること、及びmtDNA基盤の
疾患に対する具体的な治療を開発することは、該ミトコンドリアゲノムを操作できないた
めに妨げられている。
【0006】
進化の過程で、多くの生物は、生細胞にマクロ分子を導入する課題に対応した。細胞特
異的な、通常、受容体介在型、又は能動的取り込み機構は別にして、多くの系統で個別に
生じた一般的な解決策は、脂質二重層膜に相互に作用し、かつ挿入するために特に進化し
たペプチドに依存する。従って、細菌のコリシン、ヒトポリン、及び様々な種由来のタン
パク質導入領域(PTD)は、高頻度に両親媒性構造を有する、正に荷電されたアルファへリ
ックスのモチーフを共有し、それは、脂質膜に挿入すること、及びより大きな積荷を細胞
内に送達することができる。最近の研究報告から、血液脳関門、及び胎盤などの生物境界
を越えるそれらの送達に関して、タンパク質に融合されたPTDの成功した使用が確認され
る。
【0007】
生物内のマクロ分子の送達における別の大変重要な課題は、細胞外空間を越える間に、
それらをタンパク質分解、核酸分解、及び免疫分解、及び除去から防御する必要性である
。よく用いられるアプローチは、DNAを、標的までの過酷な旅を乗り切ることができるタ
ンパク質でコーティングすることである。ウイルスのカプシドタンパク質はかなり成功し
ているが、ヒトにおけるDNA送達の目的では、それらは、重大な難点-免疫原性、遺伝子治
療の有効性を非常に低下させる強い免疫反応を生じさせる能力がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、細胞の内部へのポリヌクレオチド送達に関して、改良された組成物、及び方法
の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(要約)
非ウイルスポリヌクレオチド送達媒体、及びその使用方法を提供する。一般に、本開示
は、例えば、非核性細胞小器官標的シグナルなどの、標的シグナルに機能的にリンクされ
たタンパク質導入領域を含む、改質されたポリヌクレオチド結合タンパク質を提供する。
一態様は、少なくとも1種のHMG ボックス領域、より一般的には、少なくとも2種のHMG
ボックス領域、及び少なくとも1種のタンパク質導入領域を含む、ポリペプチドを提供す
る。該ポリペプチドは、ポリヌクレオチドと会合し、該ポリヌクレオチドを凝縮させるこ
とができる。また、該ポリペプチドは、該ポリヌクレオチドをコーティングできる。該ポ
リヌクレオチドをコーティングすること、及び/或いは凝縮することは、該ポリヌクレオ
チドの分解から保護する上で役立つ。該タンパク質導入領域は、該ポリペプチド-ポリヌ
クレオチド複合体が膜を通過し、細胞の内部、又は細胞小器官に進入するのに役立つ。該
標的シグナルは、該複合体を対象の部位へ導くのに役立ち、それにより該ポリヌクレオチ
ドを送達する。
【0010】
該開示された組成物を用い、ポリヌクレオチドを細胞内の特定の位置に送達することが
でき、それらには、ミトコンドリア、及び葉緑体があるが、それらに限定されるものでは
ない。いくつかの態様において、該ポリヌクレオチドは、治療用タンパク質、又は機能し
ないタンパク質、又はタンパク質の非存在を代償するタンパク質をコードする。従って、
ミトコンドリア、又は葉緑体に関連した疾患などの、疾患を治療する方法を提供する態様
もある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1. 定義)
本開示された主題を記載、及び請求する際に、下記の専門用語を以下に示す定義に従っ
て用いる。
"ポリペプチド"という用語は、タンパク質、及びその断片を含む。ポリペプチドを、ア
ミノ酸残基配列として本明細書中で開示する。それらの配列を、アミノ末端からカルボキ
シ末端の方向に、左から右へ書く。標準命名法に従って、アミノ酸残基配列を、下記のと
おり、3文字、又は1文字のいずれかで表示する: アラニン (Ala、A)、アルギニン (Arg
、R)、アスパラギン (Asn、N)、アスパラギン酸 (Asp、D)、システイン (Cys、C)、グル
タミン (Gln、Q)、グルタミン酸 (Glu、E)、グリシン (Gly、G)、ヒスチジン (His、H)、
イソロイシン (Ile、I)、ロイシン (Leu、L)、(Lys、K)、メチオニン (Met、M)、フェニ
ルアラニン (Phe、F)、プロリン (Pro、P)、セリン (Ser、S)、トレオニン (Thr、T)、ト
リプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)、及びバリン(Val、V)である。
【0012】
"変異型"は、標準ポリペプチド、又はポリヌクレオチドから異なるが、本質的な特性を
保持するポリペプチド、又はポリヌクレオチドのことを言う。ポリペプチドの典型的な変
異体は、別の、標準ポリペプチドとはアミノ酸配列が異なる。一般に、相違は限定され、
標準ポリペプチドと変異型の配列は、全体的に極めて類似し、かつ多くの領域では同一で
ある。変異型と標準ポリペプチドは、1種以上の改質(例えば、置換、付加、及び/又は
欠失)によりアミノ酸配列が異なり得る。置換、又は挿入されたアミノ酸残基が、遺伝暗
号によりコードされるかどうかはわからない。ポリペプチドの変異型は、対立遺伝子多型
などの自然発生であり得るか、或いは自然発生することが知られていない変異型であり得
る。
【0013】
開示のポリペプチドの構造において改質、及び変更を行うことができ、それでも該ポリ
ペプチドと同様の特性を有する分子が得られる(例えば、保存的なアミノ酸置換)。例え
ば、特定のアミノ酸を、感知できるほどの活性の喪失なしに酸配列内の他のアミノ酸に置
換できる。ポリペプチドの生物機能的活性を決めるのは、ポリペプチドの相互作用の能力
、及び性質であるので、ポリペプチド配列において特定のアミノ酸配列置換を行うことが
でき、それでもなお、同等の特性を有するペプチドが得られる。
【0014】
そのような変更を行う際に、アミノ酸の疎水性指標を考慮することができる。一般に、
ポリペプチドに相互的な生物機能を付与する際の疎水性アミノ酸指標の重要性は、当技術
分野において理解されている。特定のアミノ酸を、同様の疎水性指標、又はスコアを有す
る他のアミノ酸に置換でき、それでも同様の生物活性を有するポリペプチドをもたらすこ
とが知られている。各アミノ酸には、その疎水性、及び電荷特性に基づいて疎水性指標が
与えられている。それらの指標は:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン (+3.8
);フェニルアラン(+2.8);システイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン (+1.8);グ
リシン (-0.4);トレオニン (-0.7);セリン (-0.8)トリプトファン (-0.9); チロシン (
-1.3);プロリン (-1.6);ヒスチジン (-3.2);グルタミン酸 (-3.5);グルタミン (-3.5
);アスパラギン酸 (-3.5); アスパラギン (-3.5);リシン (-3.9)、及びアルギニン (-
4.5)である。
【0015】
アミノ酸の相対疎水特性が、その得られるポリペプチドの二次構造を決定し、順に、酵
素、基質、受容体、抗体、抗原、及びそのような他の分子とのポリペプチドの相互作用を
決めると考えられている。アミノ酸を同様の疎水性指標を有する別のアミノ酸で置換でき
、それでも機能的に同等のポリペプチドが得られることは、当技術分野で知られている。
そのような変更において、疎水性指標が± 2以内のアミノ酸の置換が好ましく、± 1以内
のものが特に好ましく、± 0.5以内のものはさらに特に好ましい。
【0016】
また、同等のアミノ酸の置換を、親水性に基づいて行うことができ、特に、それにより
作製された生物機能的に同等なポリペプチド、又はペプチドは、免疫学的な実施態様にお
ける使用を目的とする場合である。アミノ酸残基に、下記の親水性値が与えられている:
アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0 ± 1);グルタミン酸(+3.0 ±
1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);プロリン(-0
.5 ± 1);トレオニン(-0.4);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);
メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.
3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)である。アミノ酸を、同様の親水性
値を有する別のアミノ酸で置換でき、それでも生物学的に同等の、特に免疫学的に同等の
ポリペプチドが得られることは、理解されている。そのような変更において、親水性値が
± 2以内のアミノ酸の置換が好ましく、± 1以内のものが特に好ましく、かつ± 0.5以内
のものはさらに特に好ましい。
【0017】
先に概説したとおり、一般に、アミノ酸置換は、アミノ酸側鎖置換基の相対的な類似に
基づいており、例を挙げるとその疎水性、親水性、電荷、大きさ、及びそのようなものが
ある。様々な先の特性を考慮に入れる典型的な置換は、当業者によく知られており、下記
(原型の残基:典型的な置換)を含む:(Ala: Gly, Ser)、(Arg: Lys)、(Asn: Gln, His)
、(Asp: Glu, Cys, Ser)、(Gln: Asn)、(Glu: Asp)、(Gly: Ala)、(His: Asn, Gln)、(Il
e: Leu, Val)、(Leu: Ile, Val)、(Lys: Arg)、(Met: Leu, Tyr)、(Ser: Thr)、(Thr: Se
r)、(Tip: Tyr)、(Tyr: Trp, Phe)、及び(Val: Ile, Leu)である。従って、この開示の実
施態様では、先に記載のとおり、ポリペプチドの機能的な、又は生物学的相当物が検討さ
れる。特に、該ポリペプチドの実施態様は、対象のポリペプチドに約50%、60%、70%、
80%、90%、及び95%配列同一性を有する変異型を含むことができる。
【0018】
当技術分野で公知のとおり、"同一性"は、2種以上のポリペプチド配列間の、該配列を
比較することにより決定される関係である。当技術分野において、また、"同一性"は、そ
のような配列の文字列間の一致により決定される、ポリペプチド間の配列関連性の程度を
意味する。"同一性"、及び"類似性"を、公知の方法で容易に計算することができる。例を
挙げると、Lesk, A. M.編集「計算分子生物学」Oxford University Press, New York, 19
88;Smith, D. W.編集「バイオ計算:情報科学、及びゲノムプロジェクト」Academic Pre
ss, New York, 1993;Griffin, A. M.、及び Griffin, H. G.編集「配列データのコンピ
ュータ分析、パートI」Humana Press, New Jersey, 1994;von Heinje, G.編集「分子生
物学における配列分析」Academic Press, 1987;及びGribskov, M.、及びDevereux, J.編
集「配列分析プライマー」M Stockton Press, New York, 1991;及びCarillo, H.、及びL
ipman, D.の論文、SIAM J Applied Math., 48: 1073 (1988)に記載されている方法が、そ
れらに限定しない。
【0019】
同一性を決定する好ましい方法は、調べられた配列間で最大の一致を生じさせるように
設計されている。同一性、及び類似性を決定する方法は、公的に利用できるコンピュータ
プログラム内に体系化されている。2種の配列間のパーセント同一性を、ニードルマン-
ヴンシュ(J. Mol. Biol., 48: 443-453, 1970)アルゴリズムを取り込んだ分析ソフトウェ
ア(例えば、遺伝学コンピュータグループの配列分析ソフトウェアパッケージ)を用いて
決定できる(例えば、NBLAST、及びXBLAST)。初期設定パラメータを用い、本開示のポリ
ペプチドの同一性を決定する。
【0020】
一例として、ポリペプチド配列は、標準配列と同一、すなわち100%同一であり得るか
、或いは、該%同一性が100%以下である、標準配列と比べて特定の整数のアミノ酸改変
まで含むことができる。そのような改変は、少なくとも1種のアミノ酸欠失、保存的、及
び非保存的置換などの置換、又は挿入から選択され、該改変は、該標準ポリペプチド配列
のアミノ、又はカルボキシ末端部位、又はそれらの末端間のどこかで、該標準配列のアミ
ノ酸中に個別、又は該標準配列内の1種以上の隣接する群に組み入れられて生じ得る。特
定の%同一性のアミノ酸改変の数を、該標準ポリペプチドのアミノ酸総数に(100で割ら
れた)個別のパーセント同一性の数値パーセントを掛け、その後その積を、該標準ポリペ
プチド中の該アミノ酸総数から引くことにより決定する。
【0021】
本明細書中で使われる"低ストリンジェンシー"という用語は、ポリヌクレオチド、又は
ポリペプチドが、配列特異性のほとんど、又は全くない別の基質に結合することことを可
能にする条件のことを言う。
【0022】
本明細書で使われる"精製された"という用語、及びそのような用語は、分子、又は化合
物の単離に関し、通常、自然環境で、該分子、又は化合物と会合している他の構成要素か
ら実質上遊離した(少なくとも60%遊離した、好ましくは75%遊離した、さらに好ましく
は90%遊離した)形態である。
【0023】
本明細書で使われる"医薬として許容し得る担体"は、任意の標準的な医薬上の担体を含
み、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、油/水、又は水/油乳濁液などの乳濁液、及び様々
な種類の湿潤剤がある。
【0024】
本明細書で使われる"治療する"という用語は、特定の疾患、又は状態に関連した症状を
軽減すること、及び/或いは該症状を予防、又は解消することを含む。
【0025】
"機能的にリンクされた"とは、構成要素の通常の機能が発揮されるように、該構成要素
を配置する、並置のことを言う。例えば、コード配列に機能的にリンクされた制御配列、
又はプロモーターは、該コード配列の発現をもたらすことができ、タンパク質に機能的に
リンクされた細胞小器官局在化配列は、該リンクされたタンパク質を導き、該特定の細胞
小器官で局在化させる。
【0026】
"局在化シグナル、又は配列、又は領域"、又は"標的シグナル、又は配列、又は領域"は
同義的に用いられ、分子を特定の細胞、組織、細胞小器官、又は細胞内の領域へ導くシグ
ナルのことを言う。該シグナルは、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、又は炭水化物部分
であり得るか、或いは結合された分子を所望される位置に導くのに十分な有機、又は無機
化合物であり得る。典型的な細胞内局在化シグナルは、当技術分野で公知の核局在化シグ
ナル、及び表1、及び2に示されたり、下記に記載されるような、当技術分野で公知の細
胞小器官局在化シグナルを含む。Emanuelsonらの論文、「タンパク質のN末端アミノ酸配
列に基づく、タンパク質の細胞内局在化の予測」Journal of Molecular Biology. 300(4)
:1005-16, 2000 Jul 21、及びCline、及びHenryの論文、「核でコードされた葉緑体タン
パク質の輸入、及び経路」Annual Review of Cell & Developmental Biology. 12:1-26,
1996があり、その開示は、その全体が、引用により本明細書に取り込まれるものとする。
当然のことながら、表1、及び2に記載された全配列を含める必要はなく、これらの配列
のトランケーションなどの改質は、リンクされた分子を特定の細胞小器官へ導くために機
能する配列が提供される、本開示の範囲内である。本開示の細胞小器官局在化シグナルは
、表1、及び2の配列に80〜100%の相同性を有することができる。適切な細胞小器官局
在化シグナルの一分類は、受容体:リガンド機構で該標的細胞小器官と相互作用しないも
のを含む。例えば、細胞小器官局在化シグナルは、正電荷などの正味の電荷を有する、又
は付与するシグナルを含む。正に荷電されたシグナルを用い、ミトコンドリアなどの負に
荷電された細胞小器官を標的することができる。負に荷電されたシグナルを用い、正に荷
電された細胞小器官を標的にすることができる。
【0027】
"タンパク質導入領域"、又はPTDは、脂質二層膜、ミセル、細胞膜、細胞小器官膜、又
は小胞膜を横断するのを促進する、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、又は有
機、又は無機化合物のことを言う。別の分子に付加されたPTDは、細胞外空間から細胞内
空間、又は細胞質から細胞小器官内へ行くなどの、該分子が膜を通過することを促進する
。典型的なPTDは、HIV TAT YGRKKRRQRRR (配列番号 1)、又はRKKRRQRRR (配列番号 2);1
1 アルギニン残基、又は8〜15残基、好ましくは9〜11残基を有する、正に荷電されたポリ
ペプチド、又はポリヌクレオチドを含むが、それらに限定しない。
【0028】
本明細書で使われる"外来のDNA"、又は"外来の核酸配列"、又は"外来のポリヌクレオチ
ド"は、外部起源から、細胞、又は細胞小器官へ導入された核酸のことを言う。通常、該
導入された外来の配列は、組み換え配列である。
【0029】
本明細書で使われる"トランスフェクション"という用語は、核酸配列の、生細胞の膜で
囲まれた空間の内部への導入のことを言う。例を挙げると、細胞の細胞質と同様に、ミト
コンドリア、核、又は葉緑体の内部空間への、核酸配列の導入がある。該核酸は、裸のDN
A、又はRNA、様々なタンパク質と会合した形態であり得るか、或いは、該核酸をベクター
に取り込むことができる。
【0030】
本明細書で使われる"ベクター"という用語は、細胞に核酸配列を導入するために用いら
れる媒体に関して用いる。ウイルスベクターは、組み換えDNA配列が、宿主細胞、又は細
胞の細胞小器官へ導入されるよう改質されているウイルスである。
【0031】
本明細書で使われる"細胞小器官"という用語は、葉緑体、ミトコンドリア、及び核など
の、細胞膜に結合した構造のことを言う。"細胞小器官"という用語は、天然、及び合成細
胞小器官を含む。
【0032】
本明細書で使われる"非核性細胞小器官"という用語は、核以外の、細胞に存在する任意
の細胞膜に結合した構造のことを言う。
【0033】
通常、本明細書で使われる"ポリヌクレオチド"という用語は、任意のポリリボヌクレオ
チド、又はポリデオキシリボヌクレオチドのことを言い、改質されていないRNA、又はDNA
、或いは改質されたRNA、又はDNAであり得る。従って、例えば、本明細書で使われる"ポ
リヌクレオチド"は、特に、一本、及び二本鎖DNA、一本、及び二本鎖領域の混合物である
DNA、一本、及び二本鎖RNA、及び一本、及び二本鎖領域の混合物であるRNA;一本鎖か、
より一般的には、二本鎖、又は一本、及び二本鎖領域の混合物であり得るDNA、及びRNAを
含む、ハイブリッド分子のことを言う。また、"核酸"、又は"核酸配列"という用語は、先
に定義したとおり、ポリヌクレオチドを含む。
【0034】
その上、本明細書で使われるポリヌクレオチドは、RNA、又はDNA、又はRNAとDNAの両者
を含む、三本鎖領域のことを言う。そのような領域の鎖は、同一分子由来か、或いは異な
る分子由来であり得る。該領域は、1種以上の該分子の全てを含むことができるが、より
一般的には、一部の該分子の領域だけが関与する。三重らせん領域の分子の1種は、多く
の場合オリゴヌクレオチドである。
【0035】
本明細書で使われる"ポリヌクレオチド"という用語は、1種以上の改質された塩基を含
む、先に記載のDNA、又はRNAを含む。従って、安定性のため、又は他の理由のために改質
された骨格をもつDNA、又はRNAは、その用語が本明細書で意図される、"ポリヌクレオチ
ド"である。さらに、イノシンなどの特殊な塩基、又はトリチウム化された塩基などの修
飾された塩基を含むDNA、又はRNAは、2例だけであるが、該用語が本明細書で使われる、
ポリヌクレオチドである。
【0036】
当然のことながら、当業者に公知の多くの有用な目的を果たす、多種多様の改質がDNA
、及びRNAに行われている。本明細書で使用されるポリヌクレオチドという用語は、その
ような化学的、酵素的、又は代謝的に改質されたポリヌクレオチドの形態と同様に、ウイ
ルス、及び単純細胞、及び特に複雑細胞などの細胞に特徴的な、DNA、及びRNAの化学的形
態を含む。
【0037】
"オリゴヌクレオチド"は、比較的短いポリヌクレオチドのことを言う。多くの場合、該
用語は、一本鎖デオキシリボヌクレオチドのことを言うが、同様に、一本、又は二本鎖リ
ボヌクレオチド、RNA:DNAハイブリッド、及び特に二本鎖DNAのことを言うことができる。
【0038】
(2. 改質されたポリヌクレオチド結合ポリペプチド、又はポリヌクレオチドをパッケー
ジングするポリペプチド)
(A. ポリヌクレオチド結合領域)
本明細書中で提供するポリヌクレオチドの送達のための組成物、及び方法は、ポリヌク
レオチド結合ポリペプチド、又はPTD、及び任意に標的シグナル、又は領域を有する、ポ
リヌクレオチドをパッケージングするポリペプチドを含む。該改質された、又は組み換え
ポリペプチドは、ポリヌクレオチドと結合、又はパッケージングすることが公知の、任意
のポリペプチドであり得る。該組み換えポリペプチドは、単独、又はポリヌクレオチドと
組合せてのいずれかで、治療薬として用いることができる。一実施態様において、該ポリ
ヌクレオチド結合ポリペプチドは、少なくとも高移動性グループ(HMG)のタンパク質の一
員の一部分、特に少なくとも1種のHMGボックス領域を含む。一般に、該HMG領域は、2種
の疎水性コアによる“L 型"構造で安定化された、広範囲の三重らせんの折り畳みを含む
。高移動性グループ染色体タンパク質HMG1、又はHMG2は、全ての真核生物で共通であり、
DNAに非特異的に結合し、例えば、クロマチン機能、及び遺伝子調節を促進する。それら
は、ヌクレオソームと直接相互作用することができ、クロマチン構造のモジュレーターで
あると考えられている。また、それらは、そのDNAに対する親和性を増大させることによ
り、p53、Hox転写因子、及びステロイドホルモン受容体などの、様々な遺伝子発現調節因
子を活性化する上で重要である。HMGタンパク質は、HMG-1/2、HMG-I(Y)、及びHMG-14/17
を含む。
【0039】
さらに、HMG-1/2ボックスタンパク質を、該タンパク質に存在するHMG領域の数、配列認
識の仕様、及びその進化的関係に従って、3種のサブファミリーに分類することができる
。第一の群は、DNAに配列特異性なしに結合される染色体タンパク質を含む(クラス I、H
MG1、及びHMG2)。第二は、リボソーム、及びミトコンドリア転写因子で、DNAと結合する
ときに、別の関連因子の存在下で配列特異性を示す(クラス II、酵母ARS結合タンパク質
ABF-2、UBF、及びミトコンドリア転写因子mtTF-1)。そして、第三は、遺伝子特異的転写
因子で、配列特異的なDNA結合を示す(クラスIII、リンパ球エンハンサー結合因子LEF-1
、及びTCF-1;哺乳類性決定因子SRY、及び密接に関連するSOXタンパク質;及び菌類調節
タンパク質Mat-MC、 Mat-a1、Ste11、及びRox1)。該HMG1/2ボックスDNA結合領域は、約7
5アミノ酸であり、高度に保存されたプロリン、芳香族、及び塩基性残基を含む。HMG領域
タンパク質の共通の特性は、DNAらせんの小さな溝との相互作用、異常なDNA構造への結合
、及び曲げによるDNA構造を調整する能力を含む。
【0040】
SOX (SRY型HMGボックス)タンパク質は、様々な発達過程で重大な機能をもち、例を挙げ
ると、性決定、骨格形成、前B、及びT 細胞発生、及び神経誘導がある。SOX9は、結合し
、Col2a1遺伝子の軟骨特異的エンハンサーを活性化することにより、軟骨形成中に直接影
響を及ぼす。SOX9遺伝子機能の喪失は、屈曲肢異形成症(CD)、極度の骨格奇形を特徴とす
る小人症の形態として公知の遺伝的状態をもたらし、かつその中で4分の3のXY個体が、
間性であるか、或いはオスからメスへの性転換を示す。SOXファミリーには、20以上のク
ローニングされたメンバーがある。その全てが、HMG領域を含み、二本鎖DNAモチーフに特
異的に結合でき、SRY、ヒト精巣決定因子のHMG領域と>50%同一性をもつ。SOX9の好まし
いDNA結合部位は、AGAACAATGGであると定義されており、それは、SOXコア結合因子(SCBE)
、AACAATを含み、5' AG、及び3' GGヌクレオチドを隣接し、SOX9による結合を増大する。
【0041】
一実施態様において、該組み換えポリヌクレオチドは、少なくとも1種HMGボックス領域
、一般に少なくとも2種、さらに特別に2〜5種のHMGボックス領域を有する。HMGボックス
領域は、例えば、該タンパク質のくぼんだ面の広い表面を用いて、ATが豊富な配列に結合
し、該DNAの小さな溝に結合することができる。この結合は、接触の部位を避けて、DNAら
せん軸を曲げる。第一、及び第二へリックスは、該DNAに接触し、そのN末端が該小さな溝
に合う一方、ヘリックス3は主として溶媒に晒されている。ヘリックス2内の脂肪族、及び
芳香族残基の部分的なインターカレーションは、該小さな溝で生じる。
【0042】
他の実施態様において、該ポリヌクレオチド結合ポリペプチドは、少なくとも1種のポ
リヌクレオチド結合領域、一般に2種以上のポリヌクレオチド結合領域を有することがで
きる。当技術分野で公知の典型的なポリヌクレオチド結合領域は、ホメオドメイン、及び
POU領域を含むヘリックス-ターン-へリックスモチーフ;C2H2、及びC2C2などのジンクフ
ィンガー領域;ロイシンジッパー、及びへリックス-ループ-へリックス領域などの両親媒
性らせん領域、及びヒストンの折り畳みを含むが、それらに限定しない。該ポリヌクレオ
チド結合領域は、特定のポリヌクレオチド配列に特異的であり得るか、或いは好ましくは
、ポリヌクレオチドに非特異的に結合する。代わりとして、該ポリヌクレオチド結合領域
は、1種以上のポリヌクレオチド結合領域を有することができる。
【0043】
特定の実施態様は、ヘリックス-ターン-へリックスモチーフ、又は少なくともヘリック
ス-ターン-へリックスタンパク質のポリヌクレオチド結合領域を有する、改質されたポリ
ヌクレオチド結合ポリペプチドを提供する。ヘリックス-ターン-へリックスタンパク質は
、l抑制因子、及びcroタンパク質、lac抑制因子などの細菌の調節タンパク質に同様の構
造を有し、それらは二量体として結合し、その結合部位は、回文式である。それらは、短
いターンで分離された3種のαへリックスの領域含み、それがヘリックス-ターン-へリッ
クスタンパク質と呼ばれる理由である。二量体の各サブユニットにおける1種のタンパク
質へリックス(ヘリックス3)は、DNAらせんの2種の連続するターンの大きな溝を占める
。従って、別の実施態様において、該開示されたポリヌクレオチド結合ポリペプチドは、
二量体、又は他の複数の構成要素の複合体を形成することができ、1〜3種のヘリックスを
有する。
【0044】
また別の実施態様において、該改質されたポリヌクレオチド結合ポリペプチド は、ホ
メオドメイン、又はホメオドメインタンパク質の一部を含む。ホメオドメインタンパク質
は、ホメオティック遺伝子と呼ばれる遺伝子の群で最初に同定された180 塩基対の配列に
結合する。それにより、該配列はホメオボックスと呼ばれた。該180 bpは、その相当する
タンパク質における60アミノ酸に相当する。このタンパク質領域は、ホメオドメインと呼
ばれている。それ以来、ホメオドメイン含有タンパク質は、脊椎動物、及び植物などの広
範囲の生物で同定されている。該ホメオドメインは、高度の配列保存性を示す。該ホメオ
ドメインは、4種のαへリックス領域を含む。ヘリックスII、及びIIIは、ターンを含む3
アミノ酸で結合されている。この領域は、細菌のDNA 結合タンパク質のヘリックスII、及
びIII と極めて類似する構造を有する。
【0045】
また別の実施態様は、ジンクフィンガー領域、又はジンクフィンガータンパク質の少な
くとも一部分を有する、改質されたポリヌクレオチド結合ポリペプチドを提供する。ジン
クフィンガータンパク質は、下記の一般的な構造をもつ領域を有する: Phe (時々 Tyr)
- Cys - 2〜4アミノ酸 - Cys - 3アミノ酸 - Phe (時々 Tyr) - 5アミノ酸 - Leu 2アミ
ノ酸 - His - 3アミノ酸 - Hisである。不変の位置に現れるフェニルアラニン、又はチロ
シン残基は、DNA結合に必須である。同様の配列が、フィンガーの数は異なるが、一連の
他のDNA結合タンパク質で見い出されている。例えば、様々な遺伝子のプロモーター近位
領域で見い出された、GC ボックスに結合するSP1転写因子は、3つのフィンガーを有する
。2システイン、及び2ヒスチジンを有する、この種のジンクフィンガーは、C2H2ジンクフ
ィンガーと呼ばれている。
【0046】
2対のシステイン間の亜鉛に結合する別の種のジンクフィンガーは、一連のDNA結合タン
パク質で見い出されている。この種のジンクフィンガーの一般的な構造は:Cys - 2アミ
ノ酸 - Cys - 13アミノ酸 - Cys - 2アミノ酸 - Cysである。これはC2C2ジンクフィンガ
ーと呼ばれる。それは、ステロイド受容体スーパーファミリーとして公知の一群のタンパ
ク質で見い出され、その各々が、2つのC2C2 ジンクフィンガーを有する。
【0047】
別の実施態様は、ロイシンジッパー、又は少なくともロイシンジッパータンパク質の一
部分を有する、改質されたポリヌクレオチド結合ポリペプチドを提供する。最初のロイシ
ンジッパータンパク質は、肝細胞の抽出物から同定され、エンハンサー結合タンパク質で
あるので、C/EBPと呼ばれていた。当初、それは、CAATプロモーター近接配列に結合する
と考えられていた。C/EBPは二量体としてDNAに結合するだけである。2種のモノマーが一
緒になりダイマーを作る、該タンパク質の該領域は二量体化領域と呼ばれる。これは、該
タンパク質のC末端のほうに位置する。アミノ酸配列を調べたところ、ロイシン残基が7
アミノ酸残基ごとに一続きの35アミノ酸にわたって現れることが見い出された。もし、こ
の領域がヘリックスを形成するのであれば、これらのロイシンの全てが、ヘリックスの一
面に一列に並ぶであろう。
【0048】
ロイシンは疎水性側鎖を有するので、該ヘリックスの一面は非常に疎水性である。反対
の面は、親水性である荷電された側鎖をもつ、アミノ酸を有する。疎水性、及び親水性特
性の組合せは、該分子に両親媒性の俗称を生じさせる。ロイシンジッパー領域に隣接して
、20〜30アミノ酸の領域があり、塩基性(正に荷電された)アミノ酸、リシン、及びアル
ギニンが豊富である。それが、そのDNA結合領域で−−多くの場合bZIP領域と言われてい
る−−ロイシンジッパーの塩基性領域である。C/EBPは、該DNAへリックスに巻きついてい
るこれらのbZIP領域で、DNAと結合すると考えられている。
【0049】
該ロイシンジッパーbZIP構造は、jun、及びfos癌遺伝子の産物などの、一連の他のタン
パク質で見い出されてきている。C/EBPが同一サブユニットのホモ二量体としてDNAに結合
する一方、fosは全く二量体を形成できず、jun/junホモ二量体は不安定でありがちである
。しかしながら、fos/junヘテロ二量体は、さらにより安定である。これらのfos/junヘテ
ロ二量体は、様々なプロモーター、及びエンハンサーに結合し、転写を活性化させる、AP
1と呼ばれる一般的な転写因子に相当する。合意のAP1結合部位は、TGACTCA (配列番号: 3
)であり、回文性である。
【0050】
別の実施態様は、へリックス-ループ-へリックス領域、又はへリックス-ループ-へリッ
クスタンパク質のポリヌクレオチド結合部分を有する、改質されたポリヌクレオチド結合
ポリペプチドを提供する。へリックス-ループ-へリックスタンパク質は、それらが両親媒
性へリックスでダイマーを形成するという点で、ロイシンジッパーと同様である。それら
は、最初は、E47、及びE12と呼ばれる2種のエンハンサー結合タンパク質間で、類似の領
域が注目されたときに、タンパク質のクラスとして発見された。この保存された領域は、
ループで分離された2種の両親媒性、従ってへリックス-ループ-へリックスを形成する可
能性がある。二量体化領域に隣接して、DNA結合領域があり、この場合も塩基性アミノ酸
が豊富で、bHLH領域と言われている。また、これらの構造は、ショウジョウバエ神経系-
アチャエテ-スキュテ(Achaete-scute)複合体の発達に必須な多くの遺伝子、及び哺乳類
の筋肉分化に必須であるMyoDと呼ばれるタンパク質で見い出されている。
【0051】
また別の実施態様において、改質されたポリヌクレオチド結合ポリペプチドは、ヒスト
ンポリペプチド、ヒストンポリペプチドの断片、又は少なくともヒストンの折り畳みを含
む。ヒストンの折り畳みは、二量体に会合されたヒストンポリペプチドモノマーに存在す
る。ヒストンポリペプチドは、H2A、H2B、H3、及びH4であり、それらはヘテロ二量体H2A-
2B、及びH3-H4を形成することもできる。当然のことながら、ヒストン様ポリペプチドを
、該開示された組成物、及び方法の中で用いることができる。ヒストン様ポリペプチドは
、例を挙げると、メタノテルムス フェルヴィダス(Methanothermous fervidus、メタン
菌)由来のHMf、又はヒストン、当技術分野で公知の他の古細菌のヒストン、及びMJ1647
、CBF、TAFII、又は転写因子IIDなどのポリペプチドを含むヒストンの折り畳み、SPT3、
及びDr1-DRAPがあるが、それらに限定されない(Sanderman, K.らの論文、(1998) CMLS. C
ell. Mol. Life Sci. 54:1350-1364、その全体が引用により取り込まれるものとする)。
【0052】
特に、一実施態様は、改質されたミトコンドリア転写因子A (TFAM)ポリペプチドを提供
する。TFAMは、2種のHMGボックス領域をもつ高移動性グループ(HMG) のタンパク質のメ
ンバーである。TFAMは、他のHMGタンパク質と同様に、DNAと結合し、包み、曲げ、かつ巻
き戻す。従って、本開示の実施態様は、該ポリペプチドが該ポリヌクレオチドと結合、又
は会合するようになるときに、該ポリヌクレオチドにおける構造変化を誘導する、ポリペ
プチドを含む。該ポリヌクレオチドにおける構造変化を誘導することにより、該ポリペプ
チドは、該ポリヌクレオチドをパッケージングする。TFAMはミトコンドリアDNAと900:1の
割合で結合することが、報告されている(Alam, T. I.らの論文、(2003) Nucleic Acid Re
s. 31(6):1640-1645)。 当然のことながら、本明細書中で開示される組成物、又は方法で
用いられるポリヌクレオチド結合ポリペプチドの量は、送達されるべきポリヌクレオチド
のサイズ、及び量に依存して変わり得る。送達されるべきポリヌクレオチドの塩基対に対
するポリヌクレオチド結合ポリペプチドの適切な割合は、例えば、約1:1〜1:1,000;より
好ましくは1:100;さらにより好ましくは1: 送達されるべきポリヌクレオチドの約10〜約
20塩基対であるが、それらに限定しない。また、当然のことながら、TFAM、別のポリヌク
レオチド結合ポリペプチド、又は2種以上のポリヌクレオチド結合ポリペプチドの組合せ
を、ポリヌクレオチドに加え、該ポリヌクレオチドを包むか、或いは覆うことができ、そ
れにより、該ポリヌクレオチドをパッケージングし、分解から保護した。
【0053】
TFAMを改質し、PTD、及び任意に標的シグナルを含むことができる。該標的シグナルは
、モノマーの配列を含み、該分子の特定の組織、細胞、又は細胞小器官への該分子局在化
を促進する。該モノマーは、アミノ酸、ヌクレオチド、又はヌクレオシド塩基、又は炭水
化物標的シグナルを形成する、グルコース、ガラクトース、及びそのような糖類であり得
る。
【0054】
(B. タンパク質導入領域)
該ポリヌクレオチド結合ポリペプチドを改質し、細胞貫通ペプチド(CPPS)としても知ら
れている、タンパク質導入領域(PTD)を含むことができる。PTDは、当技術分野で知られて
おり、例えば、受容体非依存な機構で細胞膜を通過できるタンパク質の小さな領域である
が、それらに限定しない(Kabouridis, Pらの論文、(2003) Trends in Biotechnology (1
1):498-503)。PTDのいくつかは、実証されているが、2種の最もよく使用されるPTDは、H
IVのTAT (Frankel and Pabo, 1988) タンパク質、及びショウジョウバエからののアンテ
ナペディア転写因子に由来し、後者のPTDはペネトラチンとして知られている (Derossiら
の論文、(1994) J Biol Chem. 269(14):10444-50)。
【0055】
該アンテナペディアホメオドメインは、68アミノ酸残基鎖長で、4つのアルファへリッ
クスを含む(配列番号 4)。ペネトラチンはこのタンパク質の活性領域であり、アンテナ
ペディアの第三ヘリックス由来の16アミノ酸からなる(Fentonらの論文、1998)。TATタン
パク質 (配列番号 5)は、86アミノ酸からなり、HIV-1の複製に関与する。該TAT PTDは、
取り込みに重要であると思われる親タンパク質の11アミノ酸配列領域(第47〜57残基;YG
RKKRRQRRR (配列番号 1))からなる(Vivesらの論文、1997)。その上、その塩基領域Tat(49
-57)、又はRKKRRQRRR (配列番号 2) (Wenderらの論文、2000)がPTDであることが示されて
いる。最新文献では、TATが細胞輸入の対象のタンパク質への融合には好まれている。グ
ルタミンのアラニンへの置換、すなわちQ→Aなどの、TATへのいくつかの改質から、哺乳
動物細胞における90%(Wenderらの論文、2000)から33倍までの間の細胞の取り込みの増加
が示された(Hoらの論文、(2001) Cancer Res. 61(2):474-7)。改質されたタンパク質の最
も有効な取り込みは、TAT-PTD突然変異誘発実験により明らかにされ、11 アルギニン伸長
が、細胞内送達媒体として数桁さらに有効であることが示された。従って、いくつかの実
施態様は、カチオン性、又は両親媒性であるPTDを含む。さらに典型的なPTDは、ポリArg
−RRRRRRR (配列番号: 6); PTD-5−RRQRRTSKLMKR (配列番号: 7); トランスポータン GWT
LNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL (配列番号: 8); KALA−WEAKLAKALAKALAKHLAKALAKALKCEA (配
列番号: 9); 及びRQIKIWFQNRRMKWKK (配列番号: 207)などがあるが、それらに限定されな
い。
【0056】
(C. 標的シグナル、又は領域)
さらに他の実施態様において、該改質されたポリヌクレオチド結合ポリペプチドを、任
意に改質し、標的シグナル、又は領域を含む。該標的シグナル、又は配列は、組織、器官
、細胞、細胞小器官、非核性細胞小器官、又は細胞内コンパートメントに特異的であり得
る。例えば、本明細書中で開示される組成物を、ガラクトシル末端マクロ分子で改質し、
該組成物を肝臓、又は肝細胞へ標的とすることができる。該改質された組成物は、該担体
ガラクトース残基の、肝細胞上にのみ大量に、かつ高アフィ二ティーで存在するアシアロ
糖タンパク質受容体との相互作用の後、肝細胞に選択的に進入する。さらに、本明細書中
で開示される組成物を、特定の細胞内領域、コンパートメント、又は細胞小器官へ標的と
することができる。
【0057】
本開示のさらなる実施態様は、特にポリヌクレオチドを細胞内コンパートメント、又は
細胞小器官に送達することを対象にする。該ポリヌクレオチドは、ポリペプチドをコード
すること、或いは異なるポリヌクレオチドの発現を妨げることができる。真核細胞は、膜
結合構造、又は細胞小器官を含む。細胞小器官は、単層、又は多重膜を有することができ
、植物、及び動物細胞に存在する。該細胞小器官の機能に応じて、該細胞小器官は、タン
パク質、及び補助因子などの特定の構成要素からなり得る。該細胞小器官に送達される該
ポリヌクレオチドは、該細胞小器官の機能を増進するか、或いはそれに役立つポリペプチ
ドをコードすることができる。ミトコンドリア、及び葉緑体などのいくつかの細胞小器官
は、それ自身のゲノムを含む。これらの細胞小器官の中で、核酸が複製され、転写され、
かつ翻訳される。タンパク質は輸入され、代謝産物は輸出される。従って、細胞小器官の
膜を越える物質の交換がある。いくつかの態様において、ミトコンドリアポリペプチドを
コードするポリヌクレオチドを、特にミトコンドリアに送達する。
【0058】
典型的な細胞小器官は、核、ミトコンドリア、葉緑体、リソゾーム、ペルオキシソーム
、ゴルジ体、小胞体、及び核小体を含む。合成細胞小器官を脂質から形成することができ
、該脂質膜の中に特定のタンパク質を含むことができる。その上、合成細胞小器官の内容
物を操作し、核酸の翻訳のための構成成分を含むことができる。
【0059】
(1. 核局在化シグナル)
本明細書中で開示される組成物は、1種以上の核局在化シグナルを含むことができる。
核局在化シグナル(NLS)、又は領域は、当技術分野で知られており、SV 40 T抗原、又はそ
の断片などを含み、例を挙げるとPKKKRKV (配列番号: 10)がある。該NLSは、約4〜約8ア
ミノ酸の単純なカチオン性配列であり得るか、或いは約10〜12アミノ酸の突然変異耐性リ
ンカー領域により分離された、2種の相互依存的な正に荷電されたクラスターを有する、
二連構造であり得る。さらなる典型的なNLSは、例えば、GKKRSKV (配列番号: 11);KSRKR
KL (配列番号: 12);KRPAATKKAGQAKKKKLDK (配列番号: 13);RKKRKTEEESPLKDKAKKSK (配
列番号: 14);KDCVMNKHHRNRCQYCRLQR (配列番号: 15);PAAKRVKLD (配列番号: 16);及び
KKYENVVIKRSPRKRGRPRK (配列番号: 17)があるが、それらに限定されない。
【0060】
(2. ミトコンドリア標的)
本開示の他の実施態様は、特にポリヌクレオチドをミトコンドリアへ送達する、改質さ
れたポリヌクレオチド結合ポリペプチドを開示する。ミトコンドリアは、グルコースの分
解からアデノシン三リン酸(ATP)へのエネルギー変換のための、分子機構を含む。その後
、ATPの高エネルギーリン酸結合に蓄えられたエネルギーは、細胞機能に動力を供給する
。ミトコンドリアはほとんどタンパク質であるが、いくつかの脂質、DNA、及びRNAが存在
する。これらの通常球状の細胞小器官は、酸化的リン酸反応、及び電子伝達系酵素の足場
に折り込まれている(クリステ)内膜を囲む外膜を有する。多くのミトコンドリアは、棚
状のクリステを有するが、ステロイド分泌細胞のミトコンドリアは、管状のクリステを有
する。ミトコンドリアマトリックスは、クエン酸回路の酵素、脂肪酸酸化、及びミトコン
ドリアの核酸を含む。
【0061】
ミトコンドリアDNAは、二本鎖、かつ環状である。ミトコンドリアRNAは、三種の標準的
な種類;リボソーム、メッセンジャー、及び転写の形式があるが、それぞれがミトコンド
リアに特異的である。タンパク質合成の中には、ミトコンドリアで、細胞質ミトコンドリ
アと異なるミトコンドリアリボゾーム上で起こるものがある。他のミトコンドリアタンパ
ク質は、細胞質リボソーム上で、それらをミトコンドリアへと導くシグナルペプチドと作
られる。細胞の代謝活性は、クリステの数、及び細胞内のミトコンドリアの数に関係して
いる。心筋などの高代謝活性がある細胞は、多くのよく発達したミトコンドリアを有する
。新しいミトコンドリアは、既存のミトコンドリアが成長し分裂するときに、それらから
形成される。
【0062】
ミトコンドリアの内膜は、様々な代謝物を膜を越えて輸送する関連配列、及び構造のタ
ンパク質ファミリーを含む。それらのアミノ酸配列は、約100アミノ酸鎖長の3種の関連
配列で構成されている、三連の構造を有する。一担体の繰り返しは、他の担体に存在する
繰り返しに関連しており、いくつかの特徴的な配列特性は、該ファミリーを通じて保存さ
れている。
【0063】
特定なポリヌクレオチドを細胞小器官へ標的することを達成することは、該開示された
組成物を、特定な細胞小器官標的シグナルを発現することにより改質し、達成することが
できる。これらの配列は、特定の細胞小器官を標的とするが、いくつかの実施態様におい
て、標的シグナルの細胞小器官との相互作用は、従来の受容体:リガンド相互作用を介さ
ず生じる。真核細胞は、様々な分離した膜結合コンパートメント、又は細胞小器官を含む
。各細胞小器官の構造、及び機能は、大体は構成ポリペプチドのその独特の補体によって
決定される。しかしながら、これらのポリペプチドの大部分は、細胞質でその合成が始ま
る。従って、細胞小器官生合成、及び維持管理には、新しく合成されたタンパク質を、そ
の適切なコンパートメントへ標的できることが必要である。これは、多くの場合、アミノ
末端シグナル配列と同様に、翻訳後修飾、及び二次構造により達成される。ミトコンドリ
アに関して、いくつかのアミノ末端標的シグナルが推定されてきており、部分的に表1に
含める。
【0064】
一実施態様において、細胞小器官標的シグナルは,少なくとも2種の、好ましくは5〜1
5、最も好ましくは約11の荷電された官能基を含むことができ、それにより、該標的シグ
ナルが、正味反対の電荷を有する細胞小器官に引き寄せられる。別の実施態様において、
該標的シグナルは、一連の荷電された官能基を含むことができ、それにより該標的シグナ
ルを、電磁ポテンシャル勾配に逆って、或いは従ってのいずれかで、細胞小器官に輸送さ
れる。適切な荷電された官能基は、細胞内条件下で荷電される官能基であり、例を挙げる
と、荷電された官能基をもつアミノ酸、アミノ基、核酸、及びその相当物がある。通常、
ミトコンドリア局在化/標的シグナルは、極めて正に荷電されたアミノ酸のリーダー配列
からなる。これは、該タンパク質が極めて負に荷電されたミトコンドリアへ標的されるこ
とを可能にする。受容体:リガンドアプローチが、該リガンドの確率的なブラウン運動に
依存し、該リガンドが該受容体に接近するのとは異なり、いくつかの実施態様のミトコン
ドリア局在化シグナルは、電荷のためにミトコンドリアに引き寄せられる。
【0065】
ミトコンドリアに進入するために、通常、タンパク質は、Tim、及びTom複合体(ミトコ
ンドリア内/外膜のトランスロカーゼ)からなる、ミトコンドリア輸入機構と相互作用し
なければならない。該ミトコンドリア標的シグナルに関して、該正の荷電は該リンクされ
たタンパク質を該複合体に引き寄せ、該タンパク質をミトコンドリアに引き寄せ続ける。
該Tim、及びTom複合体は、該タンパク質が該膜を通過することを可能にする。それにより
、本開示の一実施態様は、正に荷電された標的シグナル、及びミトコンドリア輸入機構を
使用して、本開示の組成物をミトコンドリア内部空間へ送達する。別の実施態様において
、ミトコンドリア局在化シグナルを含有する、PTDがリンクされたポリペプチドは、該ミ
トコンドリアマトリックスへの進入に該TOM/TIM複合体を使用しないように思われる。Del
Gaizoらの論文 (2003) Mol Genet Metab. 80(1-2):170-80を参照されたい。
【0066】
ヒトの疾患、細胞増殖、細胞死、及び老化におけるミトコンドリアの重要性を考え、本
開示の実施態様は、また、ミトコンドリアのゲノムの操作を含み、その手段を提供する。
それにより、ミトコンドリア疾患(LHON、MELASなど)、及び推定上のミトコンドリア疾
患(老化、アルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病、心臓病)を治療することができ
る。
【0067】
(3. 葉緑体標的)
別の実施態様において、特に、本明細書中で開示された改質された組成物は、葉緑体局
在化シグナル、又は領域を含むことにより、ポリヌクレオチドを葉緑体へ送達する。葉緑
体に関して、いくつかのアミノ末端標的シグナルが推定されてきており、部分的に表2に
含める。該葉緑体は、二重に囲まれた膜を有する、真核生物における光合成の細胞小器官
である。該二重膜の内部の液体は、ストロマと呼ばれる。該葉緑体は核様体領域を有し、
その環状の裸のDNAを内蔵する。また、該ストロマは、カルビン回路の部位である。該カ
ルビン回路は、一連の酵素触媒される化学反応で、二酸化炭素から炭水化物、及び他の化
合物を合成する。
【0068】
ストロマ内部に、チラコイドと呼ばれる小さな膜嚢がある。該嚢は、群で積み重なって
いる。各群をグラナと呼ばれる。各葉緑体には、多くのグラナがある。該チラコイド膜は
、光合成の光反応の部位である。チラコイド膜は、内在性、及び外来性タンパク質を有し
、特別な補欠分子団をもつものあり、電子がタンパク質複合体からタンパク質複合体へ移
動することを可能にする。これらのタンパク質は、Zスキームとして知られていることも
ある電子伝達系を構成する。
【0069】
2種の重要な膜タンパク質(P680、及びP700)の補欠分子団は、クロロフィルa色素分
子である。これらのクロロフィル結合タンパク質は、チラコイドを真緑色にする。葉緑体
の多くのチラコイドは、葉緑体を緑色にする。葉肉細胞の多くの葉緑体は、その細胞を緑
色にする。葉の中の多くの葉肉細胞は、葉を緑色にする。該クロロフィル分子が、光エネ
ルギーを吸収し、マグネシウムイオンを取り囲む共鳴化学構造における電子雲の内部で電
子を励起する。この励起された電子は、該膜中の取り囲んでいる電子伝達タンパク質によ
り取り除かれる。これらの電子の動き、及び付随するプロトンは、結局のところ、ATP内
のリン酸結合でのエネルギーの捕集をもたらす。従って、チラコイドは、光吸収、及びAT
P合成の場所である。ストロマは、該ATPを用い、炭水化物の炭素-炭素結合に捕集された
エネルギーを蓄える。いくつかの葉緑素から、澱粉粒の発達が見られる。これらは、長期
貯蔵のための複合体ポリマーを意味する。
【0070】
葉緑体の生体エネルギー機能を考えると、外来性遺伝子を導入できることは、不利にな
りかねない環境での生存率の増加、及び光合成効率が上昇した植物をもたらすことができ
る。さらに、葉緑体内の外来性遺伝子の発現は、細胞の核へ導入される外来性遺伝子の発
現に比べて、葉緑体内で有意により効果的であると考えられている。従って、他の実施態
様は、市販の化合物のより効果的な生合成戦略として、葉緑体のトランスフェクションを
対象にする。
【0071】
(3. 改質されたポリヌクレオチド結合ポリペプチド:ポリヌクレオチド複合体)
タンパク質導入領域、及び任意に標的シグナルを有する、改質されたポリヌクレオチド
結合ポリペプチドを、対象のポリヌクレオチドと組合せ、ポリペプチド-ポリヌクレオチ
ド複合体を形成することができる。例えば、該改質されたポリペプチドは、該対象のポリ
ヌクレオチドを可逆的に結合する。該改質されたポリペプチドと該対象のポリヌクレオチ
ドの間の結合、又は相互作用は、十分強く、該ポリヌクレオチドを分解から保護するが、
可逆的であり、該ポリヌクレオチドは、細胞、又は細胞小器官に送達された時点で、その
生物活性を保持する。該ポリヌクレオチドの生物活性は、該ポリヌクレオチドによりコー
ドされる該ポリペプチドを発現すること、或いはそれがリボザイム、又はDNAザイムであ
れば、該ポリヌクレオチドの酵素活性を含むことができる。
【0072】
別の実施態様は、下記による非核性細胞小器官をトランスフェクトする方法を提供する
。TFAMなどのポリヌクレオチド結合ポリペプチドを、送達されるべきポリヌクレオチド、
及びある量の脂質、及び/又はポリアミンを組合せて、複合体を形成し、哺乳動物細胞な
どの細胞を、該複合体で接触させることである。任意に、該ポリヌクレオチド結合タンパ
ク質は、PTD、及び任意に標的シグナルを含む。該脂質、及び/又はポリアミンは、分岐
型、又は非分岐型、飽和型、又は不飽和型であり得て、通常約6〜約50炭素原子、より典
型的には約10〜約30炭素原子、さらにより典型的には約15〜約20炭素原子の炭素鎖長を有
する。また、ヌクレアーゼを該非核性細胞小器官へ送達することができる。ここで、該ヌ
クレアーゼを、内在性核酸を切断するが、非核性細胞小器官へ導入された異種の核酸を切
断しないように、選択することができる。代わりとして、ミトコンドリアなどのトランス
フェクトされた該非核性細胞小器官は、それに送達されたヌクレアーゼを有することがで
きる。ここで、該ヌクレアーゼは、該非核性細胞小器官で、トランスフェクトされた核酸
、又は異種の核酸を切断するように、選択される。
【0073】
一実施態様において、 対象のポリヌクレオチドを、プロモーター、又は当技術分野で
公知の他の調節因子に機能的にリンクする。従って、該ポリヌクレオチドは、発現ベクタ
ーなどのベクターであり得る。原核生物、又は真核生物の系での発現のためのポリヌクレ
オチド工学を、組み換え発現の業者に一般に公知の技術で行うことができる。実質上、任
意の発現システムを、該開示された核、及びアミノ配列の発現において使用することがで
きると考えられている。
【0074】
一般に、発現ベクターは、1種以上のプロモーターのコントロール下で、該開示された
組成物の1種を含む。プロモーターの"コントロール下での"コード配列を提示するために
、その読み枠の翻訳開始部位の5'末端を、該選択されたプロモーターの通常約1〜50ヌク
レオチド"下流"(すなわち3')に置く。"上流の"プロモーターは、該挿入されたDNAの転
写を刺激促進し、該コードされた組み換えタンパク質の発現を促進する。これが、本明細
書中で使われる文脈での"組み換え発現"の意味である。
【0075】
適切な核酸、及び転写/翻訳制御配列を含有する発現ベクターを構築する、多くの標準
技術が利用可能であり、様々な宿主-発現系におけるタンパク質、又はペプチド発現を達
成する。発現に利用可能な細胞の種類は、例えば、組み換えファージDNA、プラスミドDNA
、又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換された大腸菌、及び枯草菌などの細菌がある
が、それらに限定しない。当然のことながら、任意のこれらのベクターを、1種以上の該
開示されたポリヌクレオチドをパッケージングするポリペプチドを用いて、パッケージン
グ、及び送達することができる。
【0076】
通常、哺乳動物細胞で用いる発現ベクターは、(必要に応じて)複製開始点、発現され
るべき該遺伝子の前に位置するプロモーターを、任意の必須のリボソーム結合部位、RNA
スプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写終結配列と共に含む。該複製開始点を、
SV40、又は他のウイルス(例えば、ポリオーマ、アデノ、VSV、BPV)源に由来し得る、外
来の開始点を含むベクターの構築で提供することができるか、或いは宿主細胞の染色体複
製機構で提供することができる。該ベクターが該宿主細胞染色体に取り込まれる場合は、
多くの場合後者で十分である。
【0077】
該プロモーターは、哺乳動物細胞のゲノム由来(例えば、メタロチオネインプロモータ
ー)、又は哺乳動物ウイルス由来(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニ
アウイルス7.5 Kプロモーター)であり得る。さらに、そのような制御配列が該宿主細胞
系に適合するとすれば、通常該所望される遺伝子配列と関連するプロモーター、又は制御
配列を使用することも可能であり、かつ所望され得る。
【0078】
様々なウイルスを基にした発現系を使用することができ、例えば、一般的に用いられる
プロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、及びシミアン
ウイルス40(SV40)である。SV40ウイルスの初期、及び後期プロモーターが有用であると
いうのは、両者が、該SV40ウイルスの複製開始点も含む断片として、該ウイルスから容易
に得られるためである。また、ウイルス複製開始点に位置する、HindIII部位からBglI部
位へ伸長している約250 bp配列を含むのであれば、より小さい、又はより大きいSV40断片
を用いることができる。
【0079】
アデノウイルスを、発現ベクターとして用いる場合は、該コード配列を、その後期プロ
モーター、及び三連のリーダー配列などの、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体に結合
することができる。その後、このキメラ遺伝子を、インビトロ、又はインビボ組み換えに
より、アデノウイルスゲノムに挿入することができる。該ウイルスゲノムの不必要な領域
(例えば、E1、又はE3領域)の挿入は組み換えウイルスをもたらし、それは、生存に適し
、かつ感染した宿主でタンパク質を発現できる。
【0080】
また、特定の開始シグナルは、該開示された組成物の効率的な翻訳に必須であり得る。
これらの配列は、ATG開始コドン、及び隣接配列を含む。その上、ATG 開始コドンなどの
、外来性の翻訳制御シグナルが提供される必要があり得る。当業者は、容易にこの必要性
を判断し、その必要なシグナルを提供することができる。全挿入部分の翻訳を確実にする
ために、該開始コドンが、所望されるコード配列の読み枠と同枠内(又は同相内)になけ
ればならないことは、よく知られている。これらの、外来性の翻訳制御シグナル、及び開
始コドンは、様々な起源、天然、及び合成の両者であり得る。発現の効率を、適切な転写
エンハンサー因子、又は転写ターミネーターを含むことにより強化することができる。
【0081】
また、真核生物の発現において、適切なポリアデニル部位が本来のクローニングした小
片内に含まれていない場合は、一般に、それを該転写単位に取り込むことが望まれる。一
般に、該ポリA付加部位は、転写終結の前の位置で、該タンパク質の終結部位の約30〜200
0ヌクレオチド"下流"に位置する。
【0082】
組み換えタンパク質の長期間の高収率の製造には、恒常的な発現が好まれる。例えば、
タンパク質をコードするコンストラクトを恒常的に発現する細胞株を設計することができ
る。ウイルスの複製開始点を含む発現ベクターを使うよりむしろ、宿主細胞を、適切な発
現制御因子(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリア
デニル化部位など)、及び選択可能なマーカーでコントロールされるベクターで形質転換
することができる。外来のDNAの導入に続き、設計された細胞を、栄養強化された培地で1
〜2日間増殖させ、その後、選択培地に取り替える。該組み換えプラスミドの選択マーカ
ーは、該選択に対する耐性を与え、細胞に恒常的に該プラスミドその染色体に取り込ませ
、フォーカスを形成させ、それを順にクローンニングし、細胞株に発展させることができ
る。
【0083】
一実施態様は、少なくとも1種のPTD、及び任意に、核局在化シグナル、又はミトコン
ドリア局在化シグナルなどの、少なくとも1種の標的シグナルを有する、改質されたTFAM
を提供する。改質されたTFAMは、対象のポリヌクレオチドと会合することができる。該会
合を、インビトロ、又はインビボで達成することができる。TFAMを、対象のポリヌクレオ
チドを包むか、又は結合するのに十分な量で混合することができる。一般に、1分子のTF
AMは、約15塩基対の標的ポリヌクレオチドを包む。十分な改質されたTFAMを対象のポリヌ
クレオチドに加え、該ポリヌクレオチドの外面を完全にコーティングし、かつ/或いは該
ポリヌクレオチドを凝縮することができる。該ポリヌクレオチドはパッケージングされる
ので、該PTD、及び該任意の標的シグナル が、該パッケージングされたポリヌクレオチド
の表面に提示される。当然のことながら、1種以上のポリヌクレオチドを、1種以上の改
質されたポリヌクレオチド結合、又はパッケージンするグポリペプチドを用いて、単一の
複合体へパッケージングすることができる。
【0084】
一般に、該ポリヌクレオチドは、機能ポリペプチド、アンチセンスポリヌクレオチド、
又は阻害RNAをコードし、該改質されたポリヌクレオチド結合ポリペプチドでパッケージ
ングされる。少なくとも1個の細胞を、インビトロ、又はインビボのいずれかで、その得
られた複合体で接触する。該タンパク質導入領域は、細胞の外膜を通過することを促進し
、該ポリヌクレオチドを該細胞の内側へ送達する。細胞質に入った時点で、任意の標的シ
グナル、又は領域が、該対象のポリヌクレオチドの、ミトコンドリア、又は核などの対象
の領域への局在化を促進する。該対象のポリヌクレオチドがその目的地に送達された時点
で、それが転写され、最終的に翻訳されることができる。代わりとして、該対象のポリヌ
クレオチドが、アンチセンスポリヌクレオチド、又は酵素的ポリヌクレオチドの場合, 該
対象のポリヌクレオチドは、細胞質内、又は細胞小器官内などの該送達部位、又はその付
近で作用することができる。
【0085】
阻害ポリヌクレオチドがインビボで不安定であることが報告されてきており、その理由
の一つは、内在性酵素、及び免疫反応が、小型抑制RNA(siRNA)などの抑制ポリヌクレオ
チドを、積極的に分解するためである。siRNA技術は、当技術分野で知られており、一本
鎖、又は多重鎖siRNAなどの任意のsiRNAを、本開示と用いることができる。従って、本開
示の一実施態様は、siRNAなどの未改質の阻害RNAを、細胞、組織、又は対象の器官へ送達
する組成物、及び方法を提供する。siRNAを、タンパク質導入領域、及び任意に標的シグ
ナルを有するポリヌクレオチド結合ポリペプチドと組合せ、複合体を形成することができ
る。該改質されたポリヌクレオチド結合ポリペプチドは、該siRNAと会合し、該siRNAを該
改質されたポリペプチドで包む、覆う、凝縮する、或いは結合することができ、それによ
り、該siRNAを酵素的分解から保護する。該会合は、可逆的であり、該siRNAが送達が所望
される目的地に送達され次第、該siRNAは機能し、その標的ポリヌクレオチドの転写、又
は翻訳を阻害することができる。
【0086】
別の典型的な実施態様は、宿主、宿主の細胞、又は核、ミトコンドリア、葉緑体などの
宿主の細胞の細胞小器官をトランスフェクトする方法を提供する。それは、宿主の細胞を
、少なくとも1種のPTD、及び任意に少なくとも1種の標的シグナルを有する、改質され
たポリヌクレオチド結合ポリペプチドを対象のポリヌクレオチドと組合せて含む複合体で
接触する工程を含む。一実施態様において、該ポリヌクレオチドポリペプチド複合体は、
非ウイルスベクターとして作用する。1種の宿主由来の細胞をトランスフェクトし、第二
の宿主に投与することができる。或いは、宿主の細胞をトランスフェクトし、該宿主に投
与することができる。該トランスフェクションは、インビボ、又はインビトロで起こり得
る。
【0087】
トランスフェクションに適した細胞は、真核生物、又は原核生物の細胞などの、トラン
スフェクトできる細胞を含む。該細胞は、体細胞、休止期細胞、胚細胞、有糸分裂細胞、
幹細胞、前駆細胞、生殖系列細胞、多能性細胞、全能性細胞、胚幹細胞、異種細胞、未分
化、部分分化、内胚葉、中胚葉、外胚葉、不死化、又は初代培養であり得る。本開示の細
胞小器官標的シグナルは、正味正の電荷を有するポリペプチド、NLS、及び表1、及び2に
記載されたものを含む。適切なPTDは、例えば、HIV TAT YGRKKRRQRRR (配列番号 1)、又
はRKKRRQRRR (配列番号 2);11 アルギニン残基、又は正に荷電されたポリペプチド、又
は8〜15残基、好ましくは9〜11残基を有するポリヌクレオチドであるが、それらに限定し
ない。非核性細胞小器官という用語には、核以外の全ての細胞小器官が含まれるものとす
る。当然のことながら、該開示された組成物は、細胞小器官標的シグナルなどの、標的シ
グナルを含み、該複合体を該細胞小器官と会合させる。通常、正味負の電荷を有する細胞
小器官、又は負の電荷を有する領域に対してである。一実施態様において、該標的シグナ
ルの該細胞小器官との会合は、受容体:リガンド相互作用を介さず生じる。該細胞小器官
と複合体の該会合は、イオン性、非共有、共有、可逆的、又は不可逆的であり得る。典型
的な複合体:細胞小器官会合は、例えば、タンパク質-タンパク質、タンパク質-炭水化物
、タンパク質-核酸、核酸-核酸、タンパク質-脂質、脂質-炭水化物、抗体-抗原、又はア
ビジン-ビオチンがあるが、それらに限定しない。該複合体の細胞小器官標的シグナルは
、タンパク質、抗体、抗体断片、脂質、炭水化物、ビオチン、アビジン、ストレプトアビ
ジン、化学官能基、又は該細胞小器官と複合体の間に特異的な会合をもたらす、他のリガ
ンドであり得る。好ましくは、反対に荷電された部分間のような電磁会合である。
【0088】
該導入された複合体と、特定の種類の細胞、又は細胞小器官などのその標的の間の特異
的な相互作用を、少なくとも2種の方法で達成することができる。一典型的な方法では、
組み換え非ウイルスベクター複合体は、標的シグナルを発現させる組み換えポリペプチド
を含み、該標的とされた細胞小器官と相互作用する。好ましくは、該複合体は、該標的細
胞小器官に特異的である、外側のポリペプチドを発現させる。別の方法では、該複合体を
改質し、細胞小器官が結合する外来性標的タンパク質を取り込む。代わりとして、例えば
、特定の細胞、又は細胞小器官と相互作用するアミノ酸配列を発現させることにより、複
合体は、所望される細胞、組織、器官、又は細胞小器官と特異的に相互作用する、改質さ
れた組み換えポリペプチドを含むことができる。当然のことながら、当業者により、該複
合体を化学的に修飾し、修飾薬剤に応じて、正味正、又は負の荷電を得ることができる。
例えば、該複合体を、ポリリシン、又は第一級アミノ基を含有する他の薬剤でコーティン
グすることができる。その上、アミノ基を該複合体にリンクできる。或いは、アミノ基を
含む化合物を該複合体にリンクできる。その結びつきは、可逆的、又は非可逆的、共有、
又は非共有であり得る。他の、化合物に電荷を与える荷電された官能基は、当技術分野で
知られており、該複合体の中に取り込むことができる。
【0089】
核酸を、細胞、又は宿主細胞の細胞小器官へ、特に、細胞、又は核、ミトコンドリア、
又は葉緑体などの、核酸からタンパク質への転写、及び/又は翻訳ができる細胞小器官へ
導入することができる。ここで、該核酸は、ポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ペプ
チド核酸、天然、又は合成核酸、化学修飾された塩基をもつ核酸、RNA、DNA、RNA-DNAハ
イブリッド、リボザイム、及びDNAザイムなどの酵素的核酸、本来の/内在性遺伝子、本
来でない/外来性遺伝子、及び断片、又はその組合せを含むが、それらに限定されない。
本開示の一実施態様において、ミトコンドリア、又は葉緑体ゲノムの全て、又は一部を細
胞小器官へ導入することができる。該複合体が、タンパク質導入領域を介して該細胞小器
官膜を通過する場合は、該核酸を、該複合体と、該細胞小器官へ導入することができる。
【0090】
別の実施態様は、真核細胞の細胞小器官などの、細胞の細胞小器官をトランスフェクト
する方法を提供する。該細胞を、ポリヌクレオチド結合ポリペプチドをポリヌクレオチド
と組合せて含む複合体で接触させることによる。ここで、該ポリヌクレオチド結合ポリペ
プチドは、PTD、及び任意に標的シグナル、又は領域を含む。該標的シグナルはポリペプ
チドで、改質、又は未改質され、該複合体の表面に提示され得る。それにより、該複合体
が、該標的細胞、又は細胞小器官と特異的に会合できる。典型的な標的シグナルは、核局
在化シグナル、表1に示された標的シグナルなどのミトコンドリア標的シグナル、及び他
の正味正の電荷を有するシグナルを含む。細胞を該複合体で接触させることは、ある意味
では、該複合体、又は該ポリヌクレオチドを該細胞の細胞質に導入することである。さら
に、該複合体は、その特異的な標的細胞小器官、又は該細胞の細胞内領域と会合し、該ポ
リヌクレオチドを該細胞小器官に導入することができる。該ポリヌクレオチドの該細胞小
器官への導入は、該複合体の表面で発現するタンパク質導入領域を介して、該ポリヌクレ
オチドを細胞小器官膜を越えて導入することで達成できる。
【0091】
ポリヌクレオチドの真核細胞の細胞質への導入を、本来の機能型で、達成することがで
きる。それは、当業者に公知の標準的な技術を用いて、或いはタンパク質導入領域を有す
る組み換えポリヌクレオチド結合ポリペプチドの改質を介して達成することができる。そ
のようなトランスフェクションの手法は、例を挙げると、マイクロインジェクション、電
気穿孔法、塩化カルシウム浸透法、ポリエチレングルコール浸透法、原形質融合、又はカ
チオン性脂質浸透法があるが、それらに限定しない。一実施態様において、ポリヌクレオ
チド結合ポリペプチドを改質し、タンパク質導入領域を含み、それによって、ポリヌクレ
オチドに結合された該ポリペプチドを、細胞膜、細胞小器官膜、又は原形質膜などの脂質
二重層を越えて導入することができる。適切なPTDは、11 アルギニン PTD、又はTat-PTD
(配列番号 3、又は4)、及びポリArg−RRRRRRR (配列番号 6); PTD-5−RRQRRTSKLMKR (配
列番号 7); トランスポータン GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL (配列番号 8);及び KALA−
WEAKLAKALAKALAKHLAKALAKALKCEA (配列番号 9)を含むが、それらに限定されない。
【0092】
一実施態様に従って、外来の核酸配列を、哺乳動物細胞のミトコンドリアへ導入する方
法を提供する。いかなるミトコンドリアトランスフェクション技術も、核酸が3種の膜(
原形質膜、及びミトコンドリア外、及び内膜)を通過すること、多コピーのmtDNAに向か
うこと、及び最小の、環状ミトコンドリアレプリコンを利用することを確実にすべきであ
る。本開示の一実施態様において、組み換えポリヌクレオチド結合ポリペプチドを、核酸
配列をミトコンドリアなどの細胞小器官へ導入する送達媒体として用いる。該組み換えポ
リペプチドは、該ポリヌクレオチドをパッケージングし、分解から保護し、かつ送達のた
めに、該ポリヌクレオチドを凝縮する。ポリヌクレオチドの濃縮は、濃縮された条件下で
のポリヌクレオチドの整った構造を含む。
【0093】
別の実施態様に従って、PTD、及びミトコンドリア標的シグナルを有する組み換えポリ
ヌクレオチド結合ポリペプチドを、ミトコンドリアトランスフェクションに用いる。この
アプローチは、mtDNAの直接の操作、及び高コピー数での環状ゲノムの導入を可能にする
。一実施態様において、この方法を用い、mtDNA を操作、又は置換する。別の実施態様に
おいて、全ヒトミトコンドリアゲノム(配列番号 218)を、導入された配列で置換すること
ができる。例えば、最初にRho0
細胞を作製し、内在性mtDNAを除去することができ、次いでミトコンドリアトランスフェ
クションを行い、細胞の全ミトコンドリアゲノムが置換されることになる。代わりとして
、Rho0細胞の作製を伴う最初の手順なしに、ミトコンドリアをトランスフェクトすること
ができる。この場合、該導入された核酸が、既存の内在性mtDNA配列に取り込まれ(組み
換えられ)、該mtDNA配列の操作をもたらされる。どちらの方法を用いても、損傷された
ミトコンドリアに対して完全な機能を回復させることができる。
【0094】
別の実施態様は、ミトコンドリアなどの非核性細胞小器官のゲノムを改質する方法を提
供する。この方法は、非核性細胞小器官を、非核性細胞小器官のゲノムを特異的に切断す
るが、該ポリヌクレオチドは切断しない、酵素をコードするポリヌクレオチドでトランス
フェクトすることを含む。典型的な酵素は、BamH1などのヌクレアーゼを含むが、それに
限定しない。当然のことながら、異種の核酸を切断せずに、非核性細胞小器官に内在性の
核酸を選択的に切断する、任意の酵素を用いることができる。異種の核酸は、別の生物か
ら、又はミトコンドリア、又は該ミトコンドリアの宿主生物以外の起源から導入された核
酸のことを言う。該酵素をコードするポリヌクレオチドを、本明細書に記載された方法を
用いて、単独で、又は第二のポリヌクレオチドと組合せて送達することができる。第二の
ポリヌクレオチドは、第二のポリペプチドをコードすることができ、例えば、それは該非
核性細胞小器官の内側、又は外側で機能する。第二のポリペプチドは、核内で機能するこ
とができ、転写因子、遺伝子活性化、又は転写のエンハンサー、又は抑制因子、転写因子
のサブユニット、DNA結合ポリペプチドなどであり得る。該第二のポリペプチドは、1種
以上の遺伝子、又は核酸配列に、特異的、又は非特異的に作用できる。該非核性細胞小器
官で発現する第二のポリペプチドを、該非核性細胞小器官の外側に送達することができる
。第二のポリペプチドは、少なくとも1種のPTD、及び任意に標的シグナルを含むことが
でき、該第二ポリペプチドの、核、細胞質、原形質膜などの、所望される細胞内、又は細
胞外位置への転移を容易にする。当然のことながら、該第二のポリペプチドは、分泌ポリ
ペプチド、細胞内ポリペプチド、膜貫通ポリペプチド、又は細胞膜の外表面に少なくとも
部分的に提示されるポリペプチドをコードすることができる。分泌ポリペプチドは、成長
因子、サイトカイン、キモカイン、神経伝達物質、インスリン、又はその組合せを含むが
、それらに限定されない。
【0095】
代わりとして、該酵素をコードする該ポリヌクレオチドをポリヌクレオチド結合ポリペ
プチドでパッケージングし、非核性細胞小器官への送達のために、脂質、及び/又はポリ
アミンベクターと組合せることができる。典型的な脂質、及び/又はポリアミンベクター
は、LIPOFECTAMINE(商標)を含むが、それに限定されない。該脂質、及び/又はポリア
ミンベクターを改質し、標的シグナルを外面に提示し、該ポリヌクレオチドの該非核性細
胞小器官への送達を補助することができる。
【0096】
また、いくつかの実施態様において、該酵素ポリヌクレオチドをコードする該ポリヌク
レオチドは、少なくとも第二のポリペプチドをコードする。例えば、非核性細胞小器官の
ゲノムにおける突然変異を代償するペプチドがある。該第二のポリペプチドは、非核性細
胞小器官のゲノムにおける、ヌル変異、欠失、逆位、置換、又は転位を代償することがで
きる。代わりとして、該第二のポリペプチドは、機能的なポリペプチドをコードし、それ
は、核などの、非核性細胞小器官の外側の位置に送達され得る。
【0097】
また別の実施態様は、非核性細胞小器官のゲノムを改質する方法形態を提供する。これ
は、非核性細胞小器官を、異種の核酸を特異的に切断するが、該酵素をコードする該ポリ
ヌクレオチド、又は該非核性細胞小器官の内在性核酸は切断しない、酵素をコードするポ
リヌクレオチドでトランスフェクトすることを含む。
【0098】
また別の実施態様は、非核性細胞小器官のゲノムを改質する方法を提供する。この方法
は、細胞を、酵素ポリペプチドで接触することを含み、該酵素ポリペプチドはPTD、及び
該酵素ポリペプチドに機能的にリンクされた標的シグナルを含む。該酵素ポリペプチドは
、ヌクレアーゼ、又は該非非核性細胞小器官のゲノムにある制限酵素切断部位に特異的な
制限酵素であり得る。代わりとして、該酵素ポリペプチドは、異種の核酸にあるが該非核
性細胞小器官に内在性の核酸にない、部位で核酸を切断することができる。酵素ポリペプ
チドを単独で、又はポリヌクレオチドと組合せて送達することができる。
【0099】
適切なミトコンドリア局在化配列は、当業者に知られており(表1参照)、ヒトチトク
ロム酸化酵素のサブユニットVIIIのミトコンドリア局在化シグナル、酵母菌チトクロムc
酸化酵素サブユニットIVプレ配列、及びラットオルニチントランスカルバミラーゼのアミ
ノ末端リーダーペプチドを含む。一実施態様において、該導入された配列をウイルスカプ
シドヘッド上で発現する。
【0100】
細胞小器官局在化シグナルは、当業者に知られており、任意のこれらのシグナルを用い
て、該複合体が該標的細胞小器官を標的とすることができる。本開示における使用に適し
た局在化配列は、下記に記載されている。Emanuelsonらの論文「そのN末端アミノ酸配列
に基づく、タンパク質の細胞内局在の予測」Journal of Molecular Biology. 300(4):100
5-16, 2000 Jul 21、及びCline、及びHenryの論文、「核にコードされた葉緑体タンパク
質の輸入、及び経路」Annual Review of Cell & Developmental Biology. 12:1-26, 1996
であり、その開示は、その全体が、引用により本明細書に取り込まれるものとする。より
具体的に、リンクされたタンパク質、又は核酸に、ミトコンドリアを標的とさせる、ミト
コンドリア局在シグナルの一覧表を表1に示す。リンクされたタンパク質、又は核酸に、
葉緑体を標的とさせる、葉緑体局在シグナルの一覧表を表2に示す。一実施態様において
、該ミトコンドリア、又は葉緑体局在化シグナルを、ウイルス表面タンパク質に機能的に
リンクする。当然のことながら、表1、及び2に示された配列の一部、または全体を、細
胞小器官標的シグナルとして用いることができる。
【0101】
【表1】







【0102】
【表2】

【0103】
リンクされたタンパク質の、葉緑体、又はミトコンドリアへの転移に必要な特定の配列
の同定を、当業者に公知の予測ソフトウェアを用いて決定することができる。例を挙げる
と、http://www.mips.biochem.mpg.de/cgi-bin/proj/medgen/mitofilter に位置するツー
ルがある。
【0104】
(4. 植物のトランスフェクション)
別の実施態様は、ポリヌクレオチドの葉緑体への送達などの、植物のトラスフェクショ
ンのための方法、及び組成物を提供する。植物のトランスフェクションの技術は、当技術
分野において知られている。例えば、アグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobact
erium tumefaciens)、及びアグロバクテリウム リゾネゲス(Agrobacterium rhizogene
s)の両者は、そのDNAを植物のゲノムに転移することができ、それらを用いて植物細胞を
トランスフェクトすることができる。それらがDNAを転移する機構は同一であるが、得ら
れる表現型の相違は、アグロバクテリウム ツメファシエンスにおけるTi プラスミド、
及びアグロバクテリウム リゾネゲスにおけるRi プラスミドの存在によるものである。
該TiプラスミドDNAが、宿主植物に腫瘍塊を生育させる一方、該Ri プラスミドDNAは、根
の大量増殖をもたらす。アグロバクテリウム ツメファシエンスが、ほとんど全ての植物
を感染できる一方、アグロバクテリウム リゾネゲスは、根だけを感染するしかない。
【0105】
アグロバクテリウム(癌腫菌)の該Tiプラスミドは、およそ200 kbの大型、環状二本鎖
DNA分子(T-DNA)であり、自己複製単位として存在する。該プラスミドを細菌内に保持し
、特定の領域(T領域)およそ20 kbだけを該細菌から該宿主に転移できる。この転移を行
うために、該Tiプラスミドは、それ自身の増殖、該プラスミドからの切除、該宿主細胞へ
の転移、該宿主ゲノムへの取り込み、及び腫瘍形成の誘導をコードする一連の遺伝子を含
む。
【0106】
アグロバクテリウムは、傷ついた植物から漏出する化学シグナルの検出を介して、傷つ
いた植物細胞を検出し、そこに移動することができる。この検出プロセスを、走化性と言
う。アグロバクテリウムは、アセトシリンゴン、シナピン酸、コニフェリルアルコール、
コーヒー酸、及びメチルシリンガ酸などの、植物化合物を認識でき、該細菌の毒性を誘導
する。感染プロセスを開始するために、アグロバクテリウムは、それ自身を該宿主細胞に
結合しなければならない。該結合は、該細菌の染色体内に位置する一群の遺伝子で達成さ
れる。該細菌は、セルロース線維の産生により、傷害の部位にとどまることができる。該
線維は、該植物宿主の細胞表面に付着し、該細胞表面上での他の細菌のクラスター化を促
進する。このクラスター化が、T-DNAの転移の成功に役立つと考えられている。該宿主に
結合した時点で、該細菌は該プロセス、及びT 領域の転移を自由に開始できる。本開示の
一実施態様は、アグロバクテリウムで植物細胞をトランスフェクトすることを開示する。
該アグロバクテリウムは、改質されていて、葉緑体などの植物細胞小器官に結合する。さ
らにアグロバクテリウムを改質し、該細胞小器官における発現のために、対象の核酸をコ
ードすることができる。該細胞小器官へ結合した時点で、該アグロバクテリウムは、該標
的核酸を該要葉緑体に送達できる。
【0107】
該TiプラスミドのT領域を、宿主細胞の細胞小器官への転移するために、該T領域は、そ
れが該プラスミドから切除され、該細胞小器官へ導かれるようプロセスされなければなら
ない。該T領域は、該Tiプラスミドから切除され、該宿主細胞、又は細胞小器官へ導かれ
る。適切にパッケージングされた時点で、T 複合体転移は、数種のタンパク質で介在され
、細菌の接合と同様であると考えられている。該植物細胞、又は細胞小器官の内部に入っ
た時点で、T 複合体は該膜を通して取り込まれる。
【0108】
(5. 典型的な細胞、及び細胞株)
別の実施態様において、該トランスフェクション複合体は、タンパク質導入領域、及び
細胞小器官局在化シグナルを有する組み換えポリペプチドを、ポリヌクレオチドと組合せ
て含む。該複合体を細胞株由来の細胞の細胞小器官へ導入することができる。該細胞株は
、細胞培養で永久に維持できる形質転換された細胞株であり得るか、或いは該細胞株は、
初期培養であり得る。植物細胞株などの典型的な細胞株は、米国微生物系統保存機関から
入手可能なものであり、それらは引用により、本明細書に取り込まれるものとする。該核
酸は、該トランスフェクトされた細胞株の細胞の核内で、複製、及び転写され得る。該標
的シグナルは、必要に応じて酵素的に切断され、該複合体は該標的細胞小器官に自由にと
どまることができる。
【0109】
任意の真核細胞をトランスフェクトし、代謝遺伝子などの特定の核酸を発現する細胞小
器官を産生することができる。該真核細胞は、確立された細胞株と同様に初代培養細胞を
含む。適切な種類の細胞は、例を挙げると、幹細胞、全能性細胞、多能性細胞、胚幹細胞
、内部細胞塊、成人幹細胞、骨髄細胞、臍帯血由来の細胞、及び内胚葉、中胚葉、又は外
胚葉に由来する細胞などの、未分化型細胞、又は部分分化型細胞があるが、それらに限定
しない。適切な分化細胞は、体細胞、神経細胞、骨格筋、平滑筋、膵臓細胞、肝細胞、及
び心臓細胞を含む。適切な植物細胞を、単子葉植物、及び双子葉植物から選択することが
でき、トウモロコシ、大豆、マメ、草、並びにコメ及び小麦などの穀類を含む。
【0110】
標的とされるべき細胞小器官が葉緑体である場合は、宿主細胞を公知の真核光合成細胞
から選択することができる。トランスフェクトされるべき細胞小器官がミトコンドリアで
ある場合は、哺乳動物細胞などの任意の真核細胞を用いることができ、例えばヒト細胞が
ある。該細胞をトランスフェクトし、一時的、又は恒常的に外来の核酸を発現する。一実
施態様において、リポーター遺伝子をコードするDNAコンストラクトを、細胞のミトコン
ドリアのゲノムに取り込ませ、該所望されるリポーター遺伝子を発現する細胞小器官を含
む、安定したトランスジェニック細胞株を産生する。
【0111】
別の実施態様において、(mtDNA関連タンパク質を対象にするsiRNA、アンチセンスポリ
ヌクレオチドなどの)siRNA、又はアンチセンスポリヌクレオチドを、本明細書中に記載
の組成物を用いて、細胞小器官へトランスフェクトすることができる。
【0112】
(6. 研究ツール)
一実施態様において、本開示をツールとして用いて、細胞の遺伝子発現の因果関係を調
べる。例えば、mtDNA 発現、ヘテロプラスミーの機構、mtDNA 複製、及び継承と同様に、
閾値効果がある。変異型マウスを、このアプローチを用いて作製することができ、研究者
が、天然にない核、及びmtDNA の変異型を研究することを可能にする。特に、本明細書中
で開示された方法、及び組成物を用いて、同一の遺伝子型、又は様々な程度のヘテロプラ
スミーを有するミトコンドリアを含む、細胞を作製することができる。同種形成の細胞を
製造するために、最初にRNA干渉(RNAi)を用いて、(mtDNAを欠いている)Rho0 細胞を作
製する。例えば、Rho0細胞を、ヒトミトコンドリアDNA ポリメラーゼに対するRNAi を用
いながら、作製することができる。典型的なRho0細胞株を、mtDNA管理に関与するミトコ
ンドリアタンパク質に対するRNAiで作製する。これらのRho0細胞を、ピルビン酸含有支持
培地上で維持、及び増殖させ、その後、機能的なミトコンドリアゲノムでトランスフェク
トする。支持培地からピルビン酸を除くことによる、代謝的選択の後に、うまくトランス
フェクトされたミトコンドリアを含有する細胞だけが、生き残る。従って、全てが同一の
ミトコンドリアゲノムを有する細胞の集団をもたらす。
【0113】
その後、様々な程度のヘテロプラスミーを有する細胞株を、2種以上のホモプラスミー
細胞株を融合することによるコントロールされた方法で作製し、細胞質雑種を作製するこ
とができる。細胞質雑種を、任意の、公知の細胞小器官を受容細胞に導入する方法を用い
て作製することができ、例を挙げると、ポリエチレングリコール(PEG)介在細胞膜融合
、細胞膜透過、細胞-細胞質体融合、ウイルス介在膜融合、リポソーム介在融合、マイク
ロインジェクション、又は他の当技術分野で公知の方法などがあるが、それらに限定され
ない。
【0114】
(ヒト以外のトランスジェニック動物)
本開示に記載された技術を用い、ヒト以外のトランスジェニック動物を作成することが
できる。具体的には、受精卵マイクロインジェクション、核移植、割球の電気融合、及び
胚幹(ES)細胞細胞質雑種の胚盤胞注入は、各々、トランスフェクトされた細胞株(すなわ
ち、トランスフェクトされたミトコンドリアを含有する細胞)由来のmtDNAを含有するヘ
テロ、及びホモプラスミーなマウスを作製する実行可能なストラテジーを提供している。
一実施態様において、キメラマウスを作製する手段として、胚幹(ES)細胞をトランスフェ
クトし、哺乳動物胚の胚盤胞中へ注入する。別の実施態様において、最初に、(トランス
フェクトされた細胞、及びES細胞rhosから、又は2種の個別にトランスフェクトされた細
胞から)胚幹(ES)細胞細胞質雑種を作成し、次いで胚への胚盤胞の注入をする。特定の対
象のmtDNAをもつ細胞の使用により、該トランスフェクトされたDNAにヘテロプラスミー、
又はホモプラスミーである、ミトコンドリア導入マウスの作製ができる。理論的には、こ
の技術は、トランスフェクトされた培養細胞から得られる任意の変異型mtDNAを、生物全
体のモデルに移行する可能性を提供する。例えば、この開示された方法、及び組成物を用
いて、ヒトmtDNA疾患のマウスモデルを作製することができる。
【0115】
該開示されたmtDNA のトランスフェクションの組成物、及び方法を用いることにより、
論題を調べることが可能になる。例を挙げると、老化とともに蓄積する5000 bp"共通欠失
"の様々な割合の効果、糖尿病、及び神経変性疾患にある遺伝子多型、及びmtDNA相補性の
動態などがある。また、このアプローチの潜在的な治療上の使用がある。正常なミトコン
ドリアゲノムの標的導入は、典型的なmtDNA 基盤疾患、及びmtDNA基盤のミトコンドリア
機能障害に関連している、神経変性の脳の状態、及び成人発症糖尿病などの老化の疾患の
両者の治療を提供する。
【0116】
本開示の別の実施態様は、ヒト以外のトランスフェクトされた生物、及びそれらを作成
、及び使用する方法を提供する。単細胞、又は多細胞のヒト以外の生物、好ましくはヒト
以外の哺乳動物、さらに好ましくはマウスを、本明細書中に記載された組成物でトランス
フェクトすることができる。それは、本開示の該組成物を該ヒト以外の生物に投与するこ
とによる。一実施態様において、該ポリヌクレオチドはエピソームのままとどまり、該宿
主生物のゲノムの中へ恒常的に取り込まれない。別の実施態様において、該ポリヌクレオ
チドは、対象の遺伝子の発現を抑制する。従って、該宿主における該ポリヌクレオチドの
発現を、該宿主に投与されるポリヌクレオチドの量でコントロールすることができる。
【0117】
該開示された該ヒト以外のトランスフェクトされた生物は、従来のトランスジェニック
生物より様々な利点を有する。例えば、本明細書に開示されたトランスフェクトされた生
物は、有性生殖なしに、従来のトランスジェニック生物より短い時間で産生できる。さら
に、該宿主における該対象のポリヌクレオチドの発現を、該宿主に投与される対象のポリ
ヌクレオチドの量で、直接調整できる。対象のポリヌクレオチドの発現がコントロールさ
れた投与量は、該トランスフェクトされた動物で観察された表現型、及び変化と相関があ
り得る。その上、誘導性発現、及び/又は複製制御因子を該対象のポリヌクレオチドを含
め、誘導性、かつ投与量依存性発現、及び/又は複製を提供する。適切な誘導性発現、及
び/又は複製制御因子は、当技術分野で知られている。
【0118】
(8. キット)
また、本開示は、真核、又は原核生物のトランスフェクション、特に細胞小器官のトラ
ンスフェクションを行うのに必要な成分を供給するキット、又はセットを対象にする。一
実施態様に従って、タンパク質導入領域、及び任意に、標的シグナル、及び領域を含む、
DNA結合タンパク質コンストラクトを含むキットを提供する。該タンパク質コンストラク
トをポリヌクレオチドを組合せ、複合体を形成することができ、それを用いて宿主、又は
宿主細胞をトランスフェクトすることができる。別の実施態様において、該キットと提供
される該タンパク質コンストラクトは、核、ミトコンドリア、又は葉緑体局在化シグナル
を含む。該シグナルは、細胞小器官を標的とすることが知られているものから選択し、表
I 、及びIIに部分的に示す。別の実施態様において、該タンパク質コントラストは、11ア
ルギニン残基伸長、又はHIV- Tatアミノ酸配列をコードする配列、次いで任意に、標的シ
グナルに機能的にリンクされた、TFAMの局在化シグナルなどの、ミトコンドリア局在化シ
グナルを含む。
【0119】
一実施態様に従って、該タンパク質コントラストを発現する細胞を含む、キットを提供
する。該細胞を培養し、大量の該タンパク質コントラストを産生し、それを採取、精製、
かつ濃縮することができる。該キットの個別の構成要素を、バイアル、チューブ、マイク
ロタイターウェルプレート、瓶、及びそのような、様々な容器に詰めることができる。他
の試薬を別の容器に含め、該キットと共に提供することができる;例えば、ポジティブコ
ントロール試料、ネガティブコントロール試料、緩衝液、細胞培養培地などがある。好ま
しくは、該キットは使用説明書を含む。
【0120】
いくつかの実施態様において、該キットは、所定の核酸配列とハイブリダイズするか、
或いは結合する、ポリヌクレオチド結合領域を有する、コンストラクトを含む。別の実施
態様において、キットは、対象のポリヌクレオチドと非特異的にハイブリダイズするか、
或いは結合する、ポリヌクレオチド結合ポリペプチドを含む。
【0121】
(9. 遺伝子疾患、又は症候群)
本開示の実施態様は、遺伝子治療プロトコル、及び遺伝子関連疾患、又は障害の治療に
適用できる組成物、及び方法を提供する。本明細書中で開示された組成物で治療できる適
切な遺伝子基盤疾患は、癌;カナバン病;アルツハイマー病;パーキンソン病;高コレス
テロール血症;嚢胞性線維症;貧血;動脈硬化症;筋ジストロフィー;AIDS;喘息;糖尿
病;関節炎;アデノシンデアミナーゼ欠損症;ゴーシェ病;鎌状赤血球貧血、及びセラサ
ミアなどの異常ヘモグロビン症;及び自己免疫疾患を含むが、それらに限定しない。
【0122】
細胞小器官の機能障害は、ヒト宿主、又は植物宿主などの、宿主に疾患をもたし得る。
具体的に、ミトコンドリア、又は葉緑体の不具合は、疾患をもたらし得る。ミトコンドリ
ア疾患は、赤血球以外の、身体のどの細胞にも存在する特殊化したコンパートメントであ
る、ミトコンドリアの障害に起因する。細胞傷害、及び細胞死ですら、ミトコンドリア障
害に起因する。このプロセスが体中で繰り返された場合、全体の系は機能しなくなり始め
、これが起こっている人の生命は、深刻に脅かされる。該疾患は、18歳未満の、一般には
12歳未満の個体である子供に、又は18歳以上の個体である大人にあり得る。従って、本開
示の実施態様は、細胞小器官関連疾患、具体的にミトコンドリア疾患と診断された宿主を
治療することを対象にする。これは、ベクターを宿主細胞に導入することにより、該ベク
ターは、特異的に該細胞小器官に結合し、かつミトコンドリアタンパク質、又はペプチド
をコードする核酸を含む。本開示は、哺乳動物細胞のミトコンドリアゲノムの一部分を、
操作すること、増強すること、又は置換することを含み、ミトコンドリアの遺伝的欠損、
又は異常に起因する疾患を治療する。
【0123】
典型的なミトコンドリア疾患は、アルパース病;バース症候群;β酸化欠損症;カルニ
チン-アシル-カルニチン欠損症;カルニチン欠損症;補酵素Q10欠損症;複合体I欠損症;
複合体II欠損症;複合体III欠損症;複合体IV欠損症;複合体V欠損症;チトクロムc酸化
酵素 (COX)欠損症;慢性進行性外眼筋麻痺症候群(CPEO);CPT I欠損症;CPT II欠損症;
グルタル酸尿症II型;乳酸アシドーシス;長鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症(LCAD);LCHA
D;ミトコンドリア細胞症;ミトコンドリアDNA欠乏症;ミトコンドリア脳症;ミトコンド
リアミオパチー;乳酸アシドーシス、及び脳卒中様症状を伴うミトコンドリア脳筋症(MEL
AS);赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん症候群(MERRF);母性遺伝型ライ症候群
(MILS);筋胃腸性脳筋症(MNGIE);神経障害、運動失調症、及び網膜色素変性症(NARP);
レーバー遺伝子視神経萎縮(LHON);進行性外眼筋麻痺(PEO);ピアソン症候群;キーンズ-
セイアー症候群(KSS);ライ症候群;間欠自律神経障害;ピルビン酸カルボキシラーゼ欠
損症;ピルビン酸脱水素酵素欠損症;呼吸鎖突然変異、及び欠失;短鎖アシル-CoA 脱水
素酵素欠損症(SCAD);SCHAD;及び超長鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症(VLCAD)を含むが、
それらに限定しない。
【0124】
いくつかのミトコンドリア疾患は、ミトコンドリア内の呼吸鎖における不具合の結果で
ある。該呼吸鎖は、4種の大型タンパク質複合体:I、II、III、及びIV (チトクロムc酸
化酵素、又はCOX)、ATP合成酵素、及び電子を連れ回す2種小型分子、補酵素Q10、及びチ
トクロムcからなる。該呼吸鎖は、ATPのほとんどが産生されるミトコンドリア内の、エネ
ルギー生成プロセスにおける最終工程である。1種以上の特定の呼吸鎖複合体における欠
損に起因し得るミトコンドリア脳筋症は、MELAS、MERFF、ライ症候群、KSS、ピアソン、P
EO、NARP、MILS、及びMNGIEを含む。
【0125】
該ミトコンドリア呼吸鎖は、核、及びmtDNAの両者に由来するタンパク質からなる。大
体100種の呼吸鎖タンパク質のうち13種だけが該mtDNA に由来するが、これら13種のタン
パク質は、複合体II 以外の全ての部分に貢献してあり、24種の他のミトコンドリア遺伝
子は、それら13種のタンパク質の製造のためだけに必要である。従って、1核遺伝子、又
は37種のミトコンドリア遺伝子のうちの1種のいずれかの欠損が、該呼吸鎖に機能停止を
もたらし得る。当然のことながら、本開示の範囲は、ミトコンドリアを、ミトコンドリア
の機能に関わる一遺伝子のうち少なくとも1種、又は一部、具体的には、37種のミトコン
ドリア遺伝子のうち少なくとも1種、又は一部でトランスフェクトし、該呼吸鎖の機能を
回復、又は増大させることを含む。ヒトミトコンドリアゲノム 配列番号218などの、任
意の、又は一部のミトコンドリアゲノムを、本明細書に記載された方法を用いて、宿主ミ
トコンドリアに導入することができる。
【0126】
該ミトコンドリアの疾患は、脳、心臓、肝臓、骨格筋、腎臓、及び内分泌、及び呼吸器
系の細胞に、最も大きい損傷をもたらすようである。従って、特定の核酸でのこれらの細
胞、及び組織のミトコンドリアのトランスフェクションは、本開示の範囲内である。具体
的には、核でコードされたタンパク質でなく、ミトコンドリアでコードされたタンパク質
をコードする核酸での、ミトコンドリアのトランスフェクションである。当然のことなが
ら、ミトコンドリアをトランスフェクトし、ミトコンドリアに天然に存在しているかどう
か、又は天然にmtDNA か核DNAでコードされているかに関わらず、任意のタンパク質を発
現することができる。影響を受ける細胞に応じて、症状は、運動制御の喪失、筋力低下、
及び痛み、胃腸疾患、及び嚥下障害、低成長、心疾患、肝疾患、糖尿病、呼吸合併症、痙
攣、視覚/聴覚障害、乳酸アシドーシス、発育遅延、及び感染しやすいことを含むことが
できる。
【0127】
本開示で取り組むことができる典型的なmtDNA突然変異は、下記を含むが、それらに限
定しない: tRNAleu- A3243G、A3251G、A3303G、T3250C、T3271C、及びT3394C;tRNALys-
A8344G、G11778A、G8363A、T8356C; ND1- G3460A;ND4- A10750G、G14459A;ND6-T14484
A;12S rRNA-A1555G;MTTS2-C12258A;ATPアーゼ6-T8993G、T8993C;tRNASer(UCN)-T7511
C;11778、及び14484、LHON突然変異と同様に、ND2、ND3、ND5、チトクロムb、チトクロ
ム酸化酵素I〜III、及びATPアーゼ8における突然変異、又は欠失である。
【0128】
本開示の一実施態様は、宿主細胞における呼吸鎖機能を回復、又は向上させる方法を提
供する。それは、該宿主細胞に、ポリヌクレオチド結合ポリペプチド-ポリヌクレオチド
複合体を導入することを含み、該複合体は、ミトコンドリアに特異的に結合し、かつ呼吸
鎖タンパク質、又はペプチドをコードする核酸を含む。該複合体がミトコンドリアを標的
にするときは、該複合体の該核酸を、注入するか、そうでなければ、ミトコンドリアの内
部に送達することができる。
【0129】
本開示の別の実施態様は、宿主細胞におけるチトクロム酸化酵素活性を回復、又は増加
させる方法を提供する。これは、骨格筋細胞などの、細胞のミトコンドリアをトランスフ
ェクトすることを含み、該複合体は、チトクロム酸化酵素、又はその機能要素をコードす
る核酸を含む。機能要素は、単独で、又は別のタンパク質、断片、又はサブユニットと組
合せて、生物学的機能を果たす、タンパク質、又はタンパク質複合体、又はサブユニット
の一部、又は断片を意味する。
【0130】
本開示のさらに別の実施態様は、宿主におけるβ酸化を増加、又は回復させる方法を提
供する。これは、宿主由来の細胞を採取すること、該宿主由来の細胞内の細胞小器官をト
ランスフェクトすること、β酸化らせん、及びカルニチン輸送に関与するタンパク質をコ
ードする核酸を含む複合体を導入すること、ここで該ベクターは該細胞小器官に特異的に
結合する;及び該宿主のトランスフェクトされた細胞を、該宿主に戻し導入することを含
む。
【0131】
本開示の他の実施態様は、点突然変異、又は欠失の結果として、喪失、又は低下された
ミトコンドリアの機能を回復させる方法を対象にする。例えば、KSS、PEO、及びピアソン
は、欠失と呼ばれるmtDNA突然変異の種類(該DNAの特定の部分が欠落している)、又はmt
DNA欠失(mtDNAの一般的な欠乏)に起因する3種の疾患である。従って、KSS、PEO、Pear
son、又は同様の疾患と診断された宿主由来の細胞は、組み換えウイルスベクターでトラ
ンスフェクトされた、自身のミトコンドリアを有することができる。該疾患状態をもたら
す該mtDNAの欠失に相当する、核酸を含む複合体を、該細胞に導入することができる。該
複合体は、該細胞小器官と結合し、該核酸をミトコンドリアの内部に送達することができ
、そこで該核酸が発現する。その後、該発現産物は該ミトコンドリアに合体し、ミトコン
ドリアの機能を向上、又は回復させることができる。該トランスフェクトされた細胞を該
宿主の再導入できる。当然のことながら、該宿主の細胞、又は他の細胞を本明細書に記載
のとおりトランスフェクトし、機能障害の細胞小器官、具体的にミトコンドリアを有する
宿主に導入できる。
【0132】
当業者にとって当然のことながら、本開示は、個別に、又は組合せて、本来mtDNA、又
は核DNAによりコードされる核酸を、ミトコンドリアへ送達することを含む。
また、本開示は、トランスフェクトされた、及びトランスフェクトされていないミトコ
ンドリアを有する細胞を作製することにより、ミトコンドリア疾患の症状を緩和すること
を意図する。代わりとして、細胞のミトコンドリアのすべてを、トランスフェクト、又は
置換することができる。
【0133】
一実施態様は、宿主におけるmtDNA突然変異を代償する方法を提供する。該方法は、mtD
NA突然変異を有する宿主を同定すること、該宿主から該mtDNA突然変異を含む細胞を採取
すること、該宿主細胞のミトコンドリアをトランスフェクトすること、該細胞小器官に特
異的に結合する複合体を、該宿主細胞に導入すること、ここで、該複合体は、該mtDNA突
然変異に相当する機能的な産物をコードするアミノ酸を含む;該トランスフェクトされた
細胞を該宿主に導入することを含む。該mtDNA突然変異に相当する機能的な産物をコード
するアミノ酸は、該相当する突然変異のないタンパク質を産生する配列を意味する。例え
ば、宿主細胞が、ND4- A10750G突然変異を有する場合、トランスフェクトされた核酸は、
ND4遺伝子の野生型産物をコードし得る。該非ベクター複合体を、宿主に、例えば、静脈
内に導入できる。
【0134】
(10. 投与)
本明細書中で提供された組成物を、宿主に生理学的に許容し得る担体の中で投与するこ
とができる。好ましい投与方法は、全身性、又は細胞への直接投与である。該組成物を、
遺伝子治療適用の技術において一般的に公知のとおり、細胞、又は患者に投与することが
できる。遺伝子治療適用において、該組成物を細胞に導入し、細胞小器官をトランスフェ
クトする。"遺伝子療法"は、継続効果が単一の治療で達成される従来の遺伝子治療と、治
療上効果的なDNA、又はRNAの1回、又は反復投与を伴う、遺伝子治療薬剤の投与を含む。
【0135】
該改質された複合体組成物を、医薬として許容し得る担体を含む混合剤に混合すること
ができる。保存のための治療製剤を、所望される純度を有する有効成分を、任意の生理学
的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤(Osol, A.編集『レミングトンの医薬科学(Rem
ington's Pharmaceutical Sciences)』第16版、(1980))と混合することにより、凍結乾
燥製剤、又は水溶液の形態で製造する。許容し得る担体、賦形剤、又は安定剤は、使用さ
れる投与量、及び濃度が服用者に無毒性であり、下記を含む:リン酸、クエン酸、及び他
の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸などの抗酸化剤;(約10残基以下の)低分子量ポリ
ペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニ
ルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン
、又はリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンなどの、単糖
類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マニトール、又はソルビトール
などの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/又はTween、Pluronics、
又はPEGなどの非イオン性界面活性剤である。
【0136】
本開示の組成物を、非経口的に投与することができる。本明細書で使われる"非経口投
与"は、医薬組成物を、個体の組織の物理的な穴を経て投与することを特徴とする。非経
口投与は、注入により、外科的切開を経て、或いは組織貫通性の非外科的創傷を経て、及
びそのように投与することを含む。具体的には、非経口投与は、皮下、腹腔内、静脈内、
動脈内、筋肉内、胸骨内注射、及び腎臓透析注入技術がある。
【0137】
非経口製剤は、活性成分を、無菌水、又は無菌等張食塩水などの医薬として許容し得る
担体と組合せた含むことができる。そのような製剤を、ボーラス投与、又は継続投与に適
した形態で、調製、包装、或いは販売することができる。注射製剤を、アンプル入り、又
は防腐剤を含有する多数回分の容器入りなどの単位投与量の形態で、調製、包装、或いは
販売することができる。非経口投与製剤は、懸濁液、溶液、油性、又は水性媒体における
乳濁液、ペースト、溶解可能な乾燥(すなわち、粉末状、又は顆粒状)製剤、及び埋め込
み型持続放出性、又は生分解性製剤を含む。また、そのような製剤は、懸濁化剤、安定化
剤、又は分散剤を含有しながら、1種以上の有効成分を含むことができる。非経口製剤を
、無菌注射用水性、又は油性懸濁液、又は溶液の形態で、調製、包装、或いは販売するこ
とができる。また、非経口製剤は、本明細書に記載された分散剤、湿潤剤、又は懸濁化剤
を含むことができる。これらの種類の製剤を調製する方法は、知られている。無菌注射用
製剤を、無毒性の非経口的に許容し得る希釈剤、又は溶媒を用いて調製することができ、
例を挙げると、水、1,3-ブタンジオール、リンガー溶液、等張塩化ナトリウム溶液、及び
合成モノグリセリド、又はジグリセリドなどの非揮発性油がある。他の非経口投与製剤は
、微結晶性形態、リポソーム製剤、及び生分解性ポリマー系を含む。持続放出、又は埋め
込みのための組成物は、医薬として許容し得るポリマー、又は疎水性物質を含むことがで
き、例を挙げると、乳濁液、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、及び難溶性塩がある。
【0138】
医薬組成物を、口腔内製剤として、調製、包装、或いは販売することができる。そのよ
うな製剤は、公知の方法を用いて製造された錠剤、粉末、エアロゾル、噴霧溶液、懸濁液
、又はトローチ剤の形態であり得る。約0.1%から約20%(w/w)までの活性成分を、経口溶
解性、又は分解性組成物、及び/又は本明細書に記載の1種以上の追加成分を含有する、
製剤の差し引きと含むことができる。好ましくは、粉末化、又はアエロゾル化製剤は、分
散するときに、約0.1ナノメーターから約200ナノメーターの範囲の平均粒子、又は液滴を
有する。
【0139】
本明細書中で使われる"追加成分" は、1種以上の下記組成物を含む:賦形剤、界面活性
剤、分散剤、不活性希釈剤、造粒剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、甘味料、着香料、着色料
、保存料、生理学的に分解可能な組成物(例えば、ゼラチン)、水性媒体、水性溶媒、油
性媒体、及び油性溶媒、懸濁化剤、分散剤、湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、緩衝剤、塩、増粘
剤、充填剤、抗酸化剤、抗生物質、抗真菌剤、安定化剤、及び医薬として許容し得るポリ
マー、又は疎水性物質である。医薬組成物に含むことができる、他の"追加成分"は、知ら
れている。適切な追加成分は、Genaro編集「レミングトンの医薬科学」(Mack Publishin
g Co., Easton, Pa. (1985))に記載されている。
【0140】
本開示の医薬組成物の中で、本明細書中に開示された改質されたベクターの投与量、又
は所望される濃度は、想定される特定の使用に応じて変化し得る。適切な投与量、又は投
与経路の決定は、十分に一般医師の技量の範囲内である。動物実験は、ヒトの治療に効果
的な投与量の決定に確かな指針を提供する。効果的な投与量の種間スケーリングは、Yaco
biら編集「トキシコキネティクス、及び新薬開発」Pergamon Press, New York 1989内のM
ordenti, J.、及びChappell, W.の著書「トキシコキネティクスにおける種間スケーリン
グの使用」pp. 42-96にある原則に従い、行うことができる。
【実施例】
【0141】
(実施例1)組み換えコンストラクト
HIV Tatタンパク質の11アミノ酸タンパク質導入領域 (PTD)を、ヒトミトコンドリア転
写因子A (TFAM)のミトコンドリア局在化シグナル(MLS)の上流で、フレーム内にクローニ
ングした。核のトランスフェクションでは、該MLSをSV40ウイルスT抗原の9アミノ酸核局
在化シグナルで置換した。組み換えタンパク質を細菌内で発現させ、ニッケルキレートカ
ラム上で、エンテロキナーゼ部位のすぐ下流のC末端で発現された6X ヒスチジンタグを用
いて単離した。該精製されたタンパク質を、エンテロキナーゼとインキュベートし、さら
に、フロースルーを集めたニッケルカラム上で精製した。該タンパク質を、33%リン酸緩
衝生理食塩水を含有する生理食塩水に対して、4℃で一晩透析した。精製されたタンパク
質を濃縮し、タンパク質濃度をブラッドフォード測定法(Biorad社)で決定した。精製さ
れたタンパク質は、SDS-Pageで分析し、純度を確認した。
【0142】
簡潔に述べると、完全長のヒトミトコンドリアゲノムを、ヒト神経芽腫細胞株、SH-SY5
Y由来のミトコンドリア調整物から単離した。1 μgの該DNAをAlexa 488蛍光プローブ(Mo
lecular Probes社)で標識した。該Alexa標識されたミトコンドリアゲノムを、PTD-MLS-T
fam組み換えタンパク質と、室温で30分間インキュベートした。複合体化されたAlexa標識
されたDNA、及び組み換えタンパク質を、MitoTracker Red色素(Molecular Probes社)を
含む、SY5Y細胞培養に導入した。複合体化されたDNA-タンパク質混合物の導入後30分の間
に、共焦点画像を撮った。赤色が、ミトコンドリアを示し、緑色は、Alexa標識されたDNA
である。該画像の重ね合わせは、黄色を生じ、共局在化を示唆する(図1A)。
【0143】
(実施例2)ミトコンドリアのGFP発現
GFP(緑色蛍光タンパク質)cDNAを270番目のヌクレオチドで突然変異させ、次のコドン
変化を起こした(UGG→UGA)。UGAが、ミトコンドリア翻訳機構によりトリプトファンと
して解読される一方、核翻訳機構は、それを終止コドンとして解読する。核機構により翻
訳された場合は、非蛍光の短縮されたGFPが生じるが、ミトコンドリアで翻訳された場合
は、全長蛍光生成物である。得られたミトコンドリアでコードされたGFP cDNAを先に記載
のとおりPTD-MLS-Tfamと複合体化し、MitoTracker Redで予め染色されたSY5Y細胞培養に
導入した。該細胞を、トランスフェクション時間後、共焦点顕微鏡で観察した。GFPシグ
ナル(緑色)が、Mitotracker Red(赤色)と共局在していることが観察され、重ね合わ
せると、黄色の蛍光を生じた(図1B、及び1C)。
【0144】
該組み換えタンパク質が細胞をトランスフェクトできることをさらに確認するために、
野生型ミトコンドリアゲノムを含有するSY5Yから作成したRho細胞を、LHON(レーベル遺
伝性視神経症)細胞質雑種由来の突然変異ミトコンドリアゲノムでトランスフェクトした
。該LHON突然変異は、該ミトコンドリアゲノムの第11778番目のヌクレオチドでのG→A転
位である。この突然変異は、SfaNI制限酵素切断部位を除去する。従って、該制限酵素切
断部位に隣接するプライマーで産生された500 bp PCRの、SfaNIでの消化は、野生型状態
では、2種のより小型の産物を産生する(300、及び200 bp)。LHON突然変異ゲノムから産
生されたPCR産物は、消化されることができず、500 bp産物として残る。図2において、
一番左のレーン(レーン1)は、LHON細胞から産生されたPCR産物であり、従って、制限消
化されない。レーン2は、裸のLHONミトコンドリアDNAだけを受け入れているRho細胞から
である。レーン3は、組み換えPTD-MLS-Tfamだけを受け入れているRho細胞からである。レ
ーン4は、組み換えPTD-MLS-Tfamと複合体化されたLHON mtDNAを受け入れているRho細胞か
らである。レーン5は、コントロールRho細胞だけである。レーン4から、突然変異DNAと複
合体化された組み換えタンパク質が、突然変異ミトコンドリアゲノムをRho細胞に導入す
ることができることが示される。
【0145】
(実施例3)コンストラクト配列データ
【0146】
【数1】

【0147】
【数2】

【0148】
【数3】

【0149】
【数4】

【0150】
【数5】

【0151】
【表3】

【0152】
本明細書中で言及された配列の配列データは、GenBankなどの、当技術分野で知られて
おり、その全体が、引用により本明細書に取り込まれるものとする。
【0153】
(実施例4):核トランスフェクションの画像データ
組み換えPTD-NLS-TFAMを、Alexa 488色素(Molecular Probes社)で標識し、ミトトラ
クカーレッド(MitoTracker Red)色素(Molecular Probes社)で予めインキュベートさ
れたSy5y細胞上で、共焦点顕微鏡を用いて視覚化した。緑色蛍光は、該Alexa 488標識さ
れた組み換えPTD-NLS-TFAMを示し、赤色蛍光はミトコンドリアを示し、核の境界の分析の
ための、核周辺の分布を提供する。該標識された組み換えタンパク質を細胞培地に導入後
5、10、及び20分でのいくつかの画像を、共焦点顕微鏡を用いて撮った。該組み換えコン
ストラクトが、核内にある場合、より強い局在化(20分の画像記録)をもたらすことに注
目されたい。これから、DNAの存在下での凝縮が示唆される。
【0154】
(実施例5):遺伝子送達ベクター
図1に描かれた遺伝子送達ベクター分子を用い、DNAを送達した。このベクターは、先
に記載した遺伝子送達の3種の要素を組合せ、初めて、全長ミトコンドリアゲノム、及び
mtDNAにクローニングされた外来遺伝子の、分裂細胞、及び非分裂細胞の両者におけるミ
トコンドリアのマトリックスコンパートメントへの導入を可能にする。
【0155】
TFAM結合DNAの速やかな細胞取り込みを可能にするために、PTD配列、具体的に、ポリア
ルギニン伸長を該ベクター分子のN末端に加えた。該PTDの(+)電荷が、(-)に荷電された生
細胞の表面と同等に役立ち、さらにその両親媒性の性質が、細胞膜へ侵入をもたらす。DN
Aのミトコンドリアコンパートメントへの具体的な標的は、リンゴ酸脱水素酵素のアミノ
末端ミトコンドリア標的シグナル(MLS)をPTDとTFAMの間の該ベクターへ加えることにより
達成した。さらに、PTDとMLSの組合せは、ミトコンドリア標的領域(MTD)と言われる。
図2から、アレクサ488(Alexa 488)色素で標識され、PTD-MLS-TFAMと複合体化されて
いる野生型mtDNAは、15分以内に、SY5Y細胞のミトコンドリアに速やかに進入することが
示される。
【0156】
図3から、該開示された方法による野生型mtDNAの導入の後に、mtDNAの複製と生体エネ
ルギー機能の速やかな回復が示される。一番上の画像(A)は、ミトトラクカーレッド(Mit
oTracker Red) (MTRed)で染色し、その△ψM機能としてミトコンドリアを特定し、次い
でBrdU と12時間インキュベートし、FITCでBrdUを免疫染色した、rho0細胞である。低△
ψMを反映する低レベルのMTRed蓄積を検出し、BrdU染色は見られなかった。(B)部分は、
正常SY5Y細胞であり、(C)部分は、野生型mtDNAと複合体化されたPTD-MLS-TFAでのトラン
スフェクション16時間後のrho0を示す。MTRedの取り込み、及びBrdU染色に著しい増加が
ある。
【0157】
(実施例6):トランスフェクトされたDNAの機能性
トランスフェクトされたDNAの機能性を、rho0表現型の救済により確認した。Rho0細胞
は、エチジウムブロマイドと長期間インキュベートすることにより、内在性のmtDNAを消
失された培養細胞である。そのような細胞は、ウリジン、及びピルビン酸を補充された培
地でのみ生存し、サブユニットが部分的に該ミトコンドリアゲノムでコードされている、
電子伝達系の測定可能な活性をもたない。LHON mtDNAと複合体化されたMTD-TFAMを、Sy5y
細胞から作製されたrho0細胞の培地に加えた。図4から、成功したrho0細胞への導入、及
びrho0細胞におけるLHON mtDNAの複製が示される。該LHON 11778A突然変異は、野生型mtD
NAに存在するSfaNI部位の喪失をもたらす。rho0細胞において、類似の野生型様偽遺伝子
を増幅し、SfaN1により切断する。LHON mtDNAのrho0へのトランスフェクション、及び代
謝選択での継代の後に、主に、SfaNI部位のない該導入されたLHON mtDNAが見い出される

【0158】
(実施例7):EGFPのトランスフェクション
DNAのミトコンドリアへの送達のさらなる確認は、緑色蛍光タンパク質、EGFPの遺伝子
の導入により達成した。ミトコンドリア翻訳表は、核のコーディングとは異なる。従って
、核の翻訳が、蛍光活性のない短縮型タンパク質をもたらし得る一方、ミトコンドリアは
全長蛍光タンパク質を翻訳し得る(mtEGFPの第173番目のヌクレオチドでの、UGGから→UG
Aのコドン変更の)ように、EGFPのcDNAを設計した。該突然変異ミトコンドリアEGFP(mtEG
FP)を、2箇所の部位(mtEGFPに融合しているND6を産生するBamHI 部位、及びCOX3遺伝子
とATP遺伝子の結合部)の1つでミトコンドリアゲノムにクローニングした。これにより、
ミトコンドリア遺伝子産物の複製、及び転写が影響を受けないこと、かつ該ミトコンドリ
アの複製、及び転写機構のみがリポーター遺伝子-mtDNAコンストラクトを維持できること
が確実になる。両者の場合において、該ミトコンドリアゲノムの転写のため、共通のプロ
モーターからのポリシストロニックな転写物として、該導入されたmtEGFP配列は、ミトソ
ームの内在性ミトコンドリア遺伝子と同時に転写され、機能的な蛍光産物に翻訳された。
一方、核にトランスフェクトされたmtEGFPは、全く蛍光を産生しなかった(図5)。ミト
コンドリアによるmtEGFPの発現をさらに確認するために、mtDNAポリメラーゼ、ポリメラ
ーゼガンマ(PolG)に対するRNA干渉を用いた。3種のsiRNAの組合せを用いて、PolGレベル
は、3日以内に検出不能になり、mtDNAの急激な喪失をもたらした。同様に、mtEGFPは、Po
lGに対するRNAiを用いると検出不能である(図6)が、EGFPに対するコントロールsiRNA
ではそうでないことを見い出した。
【0159】
(実施例8):外来のDNAによりコードされたタンパク質の転移
さらに、遺伝子送達をミトコンドリアに導き、mtDNA、及びクローニングされた遺伝子
を発現させる、本開示された組成物、及び方法の一般的な実用性を拡大し、ミトコンドリ
アで発現された遺伝子を他の細胞内コンパートメントに導かせる可能性を調べた。この可
能性を調べるために、mtEGFPを、PTD、及びSv40大型T抗原由来の核局在化シグナル(NLS)
の組合せをコードする配列と融合し、該COX3-ATP6部位にクローニングした。得られたタ
ンパク質は、EGFP、及びNLS+PTD(ミトコンドリア逃避領域、MED)の融合である。該MEDは
、該融合タンパク質がミトコンドリアから離れ、かつ核を標的とすることを可能にする。
図7に示すとおり、該MED-NLS-EGFPは、有意な程度に核に集中し、ミトコンドリアでは検
出可能である。該プロセスはかなり効果的であり、10%以上の細胞が、ミトコンドリアで
翻訳されたタンパク質の着実な核での蓄積を示す。
【0160】
(実施例9):内在性DNAの消化
多くのグループが、突然変異mtDNAの、野生型のものに対する選択優位性を報告してい
る。該導入されたmtDNA に、突然変異体であるかないかにかかわらず、内在性mtDNA制圧
させるために、クローニングされたmtDNAのND6内のBamHI部位を無効にした。該突然変異
誘発は、アミノ酸変化をもたらさない。BamHI制限エンドヌクレアーゼを該COX3-ATP6部位
内にクローニングした。該BamHI部位を無効にし、該BamHI制限エンドヌクレアーゼを該ク
ローニングされたmtDNAの一部分として含むことにより、該BamHI酵素は、全ての内在性mt
DNAを制限消化し、該導入されたmtDNAを消化することはできない。Sy5y細胞にトランスフ
ェクション後24時間で、PCRを用いて内在性mtDNAは検出不能である(図8A)。さらに、
ミトコンドリア溶解液から、有意なBamHI活性が示された(図8B )。
【0161】
送達された時点で、DNAはその治療上の可能性を喪失するにもかかわらず、該ゲノムに
永久的に取り込まれる。この制限を打開するために、該BglII制限酵素切断部位をmtEGFP
を発現している該クローンニングされたmtDNAに導入した。アミノ末端にMTDを含む、組み
換え BglII制限酵素を作製した。培養下で数回継代後、mtEGFP発現は正常であった。該組
み換えMTD-BglIIをmtEGFPを発現しているSy5y細胞に加え、EGFP発現の急激な降下、及び
検出可能なレベルの該クローニングされたmtDNAを確認した。これにより、非永久的な遺
伝子改質の可能性を可能にした(図9)。
【0162】
本開示の先に記載された実施態様、特に、任意の"好ましい"実施態様は、単に本開示の
原理を明確な理解のために示された、実施の可能性のある例にすぎないことは強調される
べきである。本開示の精神、及び原理から実質上離れることなく、本開示の先に記載され
た実施態様への多くの変更、及び改良を行うことができる。全てのそのような改良、及び
変更は、本明細書中のこの開示と本開示の範囲内に含まれるものとし、次の請求項により
保護される。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】図1は、PTD領域、続いてMLSを有するTFAMに関する、一典型的なプラスミド設計(左)、及び典型的なタンパク質構造(右)の図解である。
【図2】図2は、Sy5y細胞に加えられた、PTD-MLS-TFAMと複合体化されたAlexa488標識mtDNA (緑色)の経時変化を示す、蛍光顕微鏡写真のパネルである。赤色=MitoTracker Red。
【図3】図3A〜Cは、rho0 (A)、正常なSY5Y (B)、及び PTD-MLS-TFAMと複合体化されたmtDNAでのトランスフェクション16時間後のrho0細胞 (C)のMtRed、及びBrdU (FITC)染色を示す蛍光顕微鏡写真である。
【図4】図4は、SfaN1後のLHON 11778A突然変異付近の領域を増幅している、PCR産物のアガロースゲルである。レーン1-LHON 細胞質雑種; レーン2-Sy5y; レーン3-Rho0;レーン4- LHON mtDNA でトランスフェクトされたRho0;レーン5-トランスフェクトされた Rho0 DNAなし。
【図5】図5Aは、ND6との融合遺伝子としてmtDNAのBamHI部位へクローニングされたmtDNA-MtEGFPでのトランスフェクション24時間後で、かつMitoTracker Redで共染色された正常SY5Y細胞を示す、蛍光顕微鏡写真である。図5Bは、JL-8 (Clontech社)抗体を用いたEGFPに対するイムノブロットであり、ND6とEGFP間の45 kDaタンパク質融合産物 (上の矢印)と同様に、33 kDa EGFP (下の矢印)を示す。
【0164】
【図6】図6は、PolGに対するsiRNAで5日間ノックダウンした時点でのmtEGFPのイムノブロットである。最終レーンから、同様の時間枠でEGFP siRNAはノックダウンを達成できないことが示される。
【図7】図7Aは、新規の制限酵素切断部位、BglII、及びNotIを含有するmtDNAへクローニングされた、核局在化シグナル(NLS)、及びPTDを含有する、mtEGFPの典型的な概略図である。図7B〜Cは、ミトコンドリア、及び核に局在化するNLS-mtEGFP-PTDを発現しているSy5y細胞を示す蛍光顕微鏡写真である。(C)細胞をMitoTracker Redで対比染色する。
【図8】図8Aは、mtDNA内で無効にされるBamHI部位、及びmtDNAにクローニングされたBamHI cDNAの、典型的な概略図である。図8Bは、トランスフェクション24時間後のゲルであり、細胞由来mtDNAのPCR断片をBamHIで消化したことを示す。レーン1を切断することはできず、レーン2コントロールmtDNAを消化した。図8Cは、BamHI部位を含有するDNAとインキュベートされた、細胞由来のミトコンドリア溶解物を示すゲルである。コントロール細胞(レーン1)はBamHI活性を示さないのに対して、トランスフェクトされた細胞(レーン2)はBamHI活性を有する。
【図9】ミトコンドリアへ標的された組み換えPTD-BglIIが、5日間にわたって、mtDNA-mtEGFPをもちながら、BglII制限酵素切断部位から、発現されている細胞でmtEGFPタンパク質の速やかな除去をもたらしたことを示す、ゲルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非核性細胞小器官への標的シグナルに機能的にリンクされたタンパク質導入領域を含む
、組み換え高移動性タンパク質、又はその断片であって:該組み換え高移動性タンパク質
がポリヌクレオチドと会合し、該ポリヌクレオチドを非核性細胞小器官への送達のために
パッケージングする、前記タンパク質、又はその断片。
【請求項2】
組み換えポリヌクレオチドをパッケージングするポリペプチドを含む組成物であって:
該ポリペプチドが、少なくとも1種のHMGボックス領域、及び該組み換えポリヌクレオチ
ドをパッケージングするポリペプチドを細胞小器官に導く標的シグナルに、機能的にリン
クされたタンパク質導入領域を含み、該組み換えポリヌクレオチドをパッケージングする
ポリペプチドが、約10〜約100ヌクレオチドの、標的とされた細胞小器官に送達されるべ
きポリヌクレオチドと会合し、それにより、該標的とされた細胞小器官への送達のために
該ポリヌクレオチドをパッケージングする、前記組成物。
【請求項3】
配列番号209〜210、又はポリヌクレオチドを結合するのに十分なその断片を含む、組み
換えポリペプチド。
【請求項4】
非核性細胞小器官への標的シグナルに機能的にリンクされたタンパク質導入領域を含む
、組み換え高移動性タンパク質、又はその断片であって:該組み換え高移動性タンパク質
が、低ストリンジェンシー条件下で、ポリヌクレオチドに会合し、該非核性細胞小器官へ
の送達のために該ポリヌクレオチドをパッケージングする、前記タンパク質、又はその断
片。
【請求項5】
該組み換えポリヌクレオチドをパッケージングするポリペプチドが、少なくとも1種の
HMGボックスを含む、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
さらに、該組み換えポリヌクレオチドをパッケージングするポリペプチドと物理的に結
合されたポリヌクレオチドを含む、請求項1〜5記載の組成物。
【請求項7】
該物理的結合が、該ポリヌクレオチドを分解から保護する、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
ポリヌクレオチドをパッケージするポリペプチドが、ポリヌクレオチドの領域に可逆的
に結合する、請求項6記載の組成物。
【請求項9】
該組み換えポリヌクレオチドをパッケージングするポリペプチドが、TFAMのポリヌクレ
オチド結合領域、又はヒストンを含む、請求項6記載の組成物。
【請求項10】
さらに、細胞標的シグナルを含む、請求項6の組成物。
【請求項11】
該標的シグナルが、ミトコンドリア局在化シグナル、又は葉緑体局在化シグナルを含む
、請求項6の組成物。
【請求項12】
該ミトコンドリア局在化シグナルが、下記の群から選択されるミトコンドリア局在化シ
グナルに80〜100%相同性を有する配列を含む、請求項11記載の組成物であって:該群
が、へキソキナーゼI、アミンオキシダーゼ(フラビン含有)A、へキソキナーゼ IV、膵
臓ベータ細胞型、末梢型ベンゾジアゼピン受容体関連タンパク質、メタキシン2、推定ミ
トコンドリア外膜タンパク質輸入受容体(hTOM)、グルタチオントランスフェラーゼ、電位
依存性アニオンチャンネル2 (ミトコンドリア外膜タンパク質ポリン)、へキソキナーゼIV
、チトクロム b5、末梢ベンゾジアゼピン受容体、生殖細胞キナーゼアンカーS-AKAP84、A
キナーゼアンカータンパク質、カルニチンO-パルミトイルトランスフェラーゼ I 前駆体
、へキソキナーゼ II、アミンオキシダーゼ(フラビン含有)B、長鎖脂肪酸-CoA リガー
ゼ 2、長鎖脂肪酸-CoA リガーゼ 1 (パルミトイル-CoA リガーゼ)、電位依存性アニオン
チャンネル1、 メタキシン 1、ヒト推定ミトコンドリア外膜34 kDa トランスロカーゼ hT
OM34、電位依存性アニオンチャンネル 4 (ミトコンドリア外膜タンパク質ポリン)、チト
クロムb5 還元酵素、電位依存性アニオンチャンネル3 (ミトコンドリア外膜タンパク質ポ
リン)、ミトコンドリア輸入受容体サブユニットTOM20ホモログ(ミトコンドリア20 kd 外
膜タンパク質)(ミトコンドリア外膜受容体TOM20)、腫瘍性成虫原基ホモログ前駆体 (HTI
D-1)、及び配列番号 18〜188からなる、前記組成物。
【請求項13】
該葉緑体局在化シグナルが、下記の群から選択される葉緑体局在化シグナルに80〜100
%相同性を有する配列を含む、請求項11記載の組成物であって:該群が、アピコブラス
ト(apicoblast)リボソームタンパク質S9の通過ペプチド領域、マメグルタチオン還元酵
素(GR)シグナルペプチド、推定グアノシン 3',5'-ビスピロリン酸(ppGpp)合成酵素-分解
酵素をコードするCr-RSHのNH2末端、14-3-3タンパク質、cpSRP54、cpSRP43サブユニット
、又はその断片などの葉緑体シグナル認識小片、膜貫通領域(TMD)、及びそのC-末端隣接
7アミノ酸領域などの葉緑体通過ペプチド AtOEP7、THI1 N末端葉緑体通過ペプチド、及
び配列番号189〜205からなる、前記組成物。
【請求項14】
該標的シグナルが核標的シグナルを含む、請求項2の組成物。
【請求項15】
該核標的シグナルが、SV40ウイルスT抗原の核局在化シグナル(NLS)を含む、請求項14
記載の組成物。
【請求項16】
該核局在化シグナルが、該SV40ウイルスT抗原の核局在化シグナルの少なくとも9アミ
ノ酸を含む、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
該タンパク質導入領域が、生理的条件下で正味の正電荷を有する複数のアミノ酸残基を
含む、請求項1〜16記載の組成物。
【請求項18】
該タンパク質導入領域が8〜15アミノ酸残基を含む、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
該タンパク質導入領域が11アルギニン残基を含む、請求項1〜16記載の組成物。
【請求項20】
該タンパク質導入領域が下記の群から選択される、請求項1〜16記載の組成物であっ
て:該群がYGRKKRRQRRR (配列番号: 1)、RKKRRQRRR (配列番号: 2)、HIV-1 TATタンパク
質のアミノ酸48-60、アンテナペディアホメオドメインの第3へリックス、RQIKIWFQNRRMK
WKK (配列番号: 207)、ポリアルギニン領域、約7アルギニン残基、RRQRRTSKLMKR (配列番
号: 7)、GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL (配列番号: 8)、WEAKLAKALAKALAKHLAKALAKALKACE
A (配列番号: 9)、その断片、又はその組合せからなる、前記組成物。
【請求項21】
該タンパク質導入領域が膜を通過することを促進する、請求項1〜16記載の組成物。
【請求項22】
該膜が、細胞膜、原形質膜、細胞小器官膜、ミセル膜、二重層膜、単層膜、小胞膜、核
膜、又はミトコンドリア膜である、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
該ポリヌクレオチドが、ポリペプチド、siRNA、又はアンチセンスポリヌクレオチドを
コードする核酸配列に機能的にリンクされた、プロモーターを含む, 請求項1〜22記載
の組成物。
【請求項24】
該ポリヌクレオチドがRNA、DNA、又はその組合せを含む、請求項1〜23記載の組成物

【請求項25】
該ポリヌクレオチドが酵素領域を含む、請求項1〜24記載の組成物。
【請求項26】
該ポリヌクレオチドが酵素RNA、又は酵素DNAを含む、請求項1〜24記載の組成物。
【請求項27】
該ポリヌクレオチドが一本鎖である、請求項1〜26記載の組成物。
【請求項28】
該ポリヌクレオチドが多重鎖である、請求項1〜26記載の組成物。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか1項の組成物を含む細胞。
【請求項30】
組み換えポリヌクレオチドに結合するポリペプチドを含む細胞であって:該ポリペプチ
ドが、標的シグナルに機能的にリンクされたタンパク質導入領域、及び2種以上のHMGボ
ックス領域を含む、前記細胞。
【請求項31】
該細胞が、真核細胞、植物細胞、哺乳動物細胞、又は原核細胞である、請求項29、又
は30記載の細胞。
【請求項32】
キットであって:2種以上のHMGボックス領域、及びポリヌクレオチドをパッケージン
グするポリペプチドに機能的にリンクされたタンパク質導入領域を含む、ポリヌクレオチ
ドをパッケージングするポリペプチド;及び標的核酸をポリヌクレオチドパッケージング
ポリペプチドでパッケージングする取扱説明書を含む前記キット。
【請求項33】
該ポリヌクレオチド結合領域が、所定の標的核酸に相補的である、請求項32記載のキ
ット。
【請求項34】
該ポリヌクレオチド結合ポリペプチドが、さらに標的シグナルを含む、請求項32記載
のキット。
【請求項35】
ポリヌクレオチドをパッケージングする方法であって:ポリヌクレオチドを該ポリヌク
レオチドをパッケージングするのに十分な組み換えポリペプチドと組合せること含み、そ
の中で該組み換えポリペプチドが2種以上のHMGボックス領域、及び細胞小器官標的シグ
ナルに機能的にリンクされたタンパク質導入領域を含み、該タンパク質導入領域、及び該
標的シグナルがパッケージングされたポリヌクレオチドの外面に示される、前記方法。
【請求項36】
該組み換えポリペプチドが、該ポリヌクレオチドと可逆的に会合する、請求項35記載
の方法。
【請求項37】
該組み換えポリペプチドが、該ポリヌクレオチドをコーティングする、請求項35記載
の方法。
【請求項38】
該組み換えポリペプチドの該ポリヌクレオチドとの該結合が、該ポリヌクレオチドの立
体構造変化を誘導する、請求項35記載の方法。
【請求項39】
前記ポリヌクレオチド結合領域が、配列特異的様式で該ポリヌクレオチドと会合してい
る、請求項35記載の方法。
【請求項40】
該ポリヌクレオチド結合領域が、該ポリヌクレオチドと非特異的に会合する、請求項3
5記載の方法。
【請求項41】
該組合せ工程がインビトロで生じる、請求項35記載の方法。
【請求項42】
ポリヌクレオチドを細胞の細胞小器官に送達する方法であって:前記方法が、該細胞に
ポリヌクレオチド-ポリペプチド複合体を接触させる工程を含み:該ポリヌクレオチド-ポ
リペプチド複合体が、該ポリヌクレオチドをパッケージングするのに十分な組み換えポリ
ペプチド、少なくとも2種のHMGボックス領域、及び該細胞小器官への標的シグナルに機
能的にリンクされたタンパク質導入領域を含む、組み換えポリペプチド;及びポリヌクレ
オチドを含む、前記方法。
【請求項43】
該組み換えポリペプチドを、ポリヌクレオチドと物理的に会合させる、請求項42記載
の方法。
【請求項44】
該ポリヌクレオチド結合領域が、所定の核酸配列に特異的である、請求項42記載の方
法。
【請求項45】
宿主を治療する方法であって:少なくとも1種の該宿主の細胞を、治療用ポリペプチド
をコードするポリヌクレオチドをパッケージングするのに効果的な量の組み換えポリペプ
チドを含む複合体と接触させることを含み、該組み換えポリペプチドが、少なくとも2種
のHMGボックス領域、及び細胞小器官標的シグナルに機能的にリンクされたタンパク質導
入領域を含み、かつ該ポリヌクレオチドが該宿主の細胞小器官で発現される、前記方法。
【請求項46】
該ポリヌクレオチドを含有する該細胞が、該宿主内で増殖する、請求項45記載の方法

【請求項47】
該ポリヌクレオチドの発現、及び/又は複製を、誘導性コントロール因子によりコント
ロールする、請求項45記載の方法。
【請求項48】
該細胞が、幹細胞、骨髄細胞、全能性細胞、多能性細胞、未分化細胞、臍帯血細胞、成
人幹細胞、胚幹細胞、又は生殖系列細胞である、請求項45記載の方法。
【請求項49】
該細胞が、少なくとも1種の他の細胞型に分化できる、請求項45記載の方法。
【請求項50】
請求項1〜25のいずれか1項の組成物を含む、請求項45記載の方法。
【請求項51】
ポリヌクレオチドをパッケージングする方法であって:該ポリヌクレオチドを、請求項
1〜5のいずれか1項の組成物と組合せて、複合体を形成する、前記の方法。
【請求項52】
第一の酵素的ポリペプチド、又は酵素的核酸、及び少なくとも第2のポリペプチドをコ
ードするポリヌクレオチドを含む組成物であって:該ポリヌクレオチドが、少なくも2種
のHMGボックス領域、及び細胞小器官標的シグナルに機能的にリンクされたタンパク質導
入領域を含むポリペプチドでパッケージングされる、前記組成物。
【請求項53】
該標的シグナルが、非核性細胞小器官標的シグナルである、請求項52記載の組成物。
【請求項54】
該第一の酵素的ポリペプチドが、エンドヌクレアーゼ、又はヌクレアーゼである、請求
項52記載の組成物。
【請求項55】
該エンドヌクレアーゼが、内在性ポリヌクレオチドを切断するが、該ポリヌクレオチド
を切断しない、請求項52記載の組成物。
【請求項56】
該酵素的核酸が、DNA、RNA、又はその組合せを含む、請求項52記載の組成物。
【請求項57】
該ポリヌクレオチドが、1種以上のミトコンドリアのポリペプチドをコードする、請求
項52記載の組成物。
【請求項58】
該細胞が真核性である、請求項52記載の組成物。
【請求項59】
該細胞が動物、又は植物細胞である、請求項52記載の組成物。
【請求項60】
該非核性細胞小器官が遺伝子突然変異を含み、病変、または病変の症状をもたらす、請
求項52記載の組成物。
【請求項61】
該ポリペプチドが1種以上のポリヌクレオチド結合領域を含む、請求項52記載の組成
物。
【請求項62】
該ポリペプチドがTFAM、又はその断片を含む、請求項52記載の組成物。
【請求項63】
該ポリヌクレオチド結合領域が、HMG領域、ロイシンジッパー、POU領域、ジンクフィン
ガー、へリックス-ループ-へリックス領域、又はヒストンの折り畳みを含む、請求項52
記載の組成物。
【請求項64】
(a)少なくとも1種以上のミトコンドリア、又は葉緑体局在化配列に機能的にリンクさ
れたタンパク質導入領域、及び少なくとも1種のポリヌクレオチド結合領域を含むポリペ
プチド、(b)核転写因子をコードするポリヌクレオチド、を含む組成物であって:該ポリ
ヌクレオチドが該ポリペプチドと会合し、複合体を形成し、かつ該ポリヌクレオチドがミ
トコンドリア、又は葉緑体で発現し、該核転写因子が細胞の核へ転写する、前記組成物。
【請求項65】
該細胞が遺伝子突然変異を含み、病変、又は病変の症状をもたらす、請求項64記載の
組成物。
【請求項66】
該ポリヌクレオチド結合領域がTFAM、又はその断片を含む、請求項64記載の組成物。
【請求項67】
該ポリヌクレオチド結合領域が、HMG領域、ロイシンジッパー、POU領域、ジンクフィン
ガー、へリックス-ループ-へリックス領域、又はヒストンの折り畳みを含む、請求項64
記載の組成物。
【請求項68】
ミトコンドリア、又は葉緑体局在化シグナル、又はその断片、及び任意に、タンパク質
導入領域を含む、組み換えヌクレアーゼであって、該ヌクレアーゼが、非核性細胞小器官
内の内在性核酸に存在する切断部位に特異的であるが、該非核性細胞小器官内に存在する
異種の核酸に存在しない、前記組み換えヌクレアーゼ。
【請求項69】
該ミトコンドリア局在化シグナルが、下記の群から選択される、請求項68記載の組み
換えヌクレアーゼであって:該群が、へキソキナーゼI、アミンオキシダーゼ(フラビン
含有)A、へキソキナーゼ IV、膵臓ベータ細胞型、末梢型ベンゾジアゼピン受容体関連タ
ンパク質、メタキシン2、推定ミトコンドリア外膜タンパク質輸入受容体(hTOM)、グルタ
チオントランスフェラーゼ、電位依存性アニオンチャンネル2 (ミトコンドリア外膜タン
パク質ポリン)、へキソキナーゼIV、チトクロム b5、末梢ベンゾジアゼピン受容体、生殖
細胞キナーゼアンカーS-AKAP84、A キナーゼアンカータンパク質、カルニチンO-パルミト
イルトランスフェラーゼ I 前駆体、へキソキナーゼ II、アミンオキシダーゼ(フラビン
含有)B、長鎖脂肪酸-CoA リガーゼ 2、長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ 1 (パルミトイル-CoA
リガーゼ)、電位依存性アニオンチャンネル1、 メタキシン 1、ヒト推定ミトコンドリア
外膜34 kDa トランスロカーゼ hTOM34、電位依存性アニオンチャンネル 4 (ミトコンドリ
ア外膜タンパク質ポリン)、チトクロムb5 還元酵素、電位依存性アニオンチャンネル3 (
ミトコンドリア外膜タンパク質ポリン)、ミトコンドリア輸入受容体サブユニットTOM20ホ
モログ(ミトコンドリア20 kd 外膜タンパク質)(ミトコンドリア外膜受容体TOM20)、腫
瘍性成虫原基ホモログ前駆体 (HTID-1)、及び配列番号 18〜188からなる、前記組み換え
ヌクレアーゼ。
【請求項70】
該葉緑体局在化シグナルが、下記の群から選択される、請求項68記載の組み換えヌク
レアーゼであって:該群が、へキソキナーゼI、アミンオキシダーゼ(フラビン含有)A、
へキソキナーゼ IV、膵臓ベータ細胞型、末梢型ベンゾジアゼピン受容体関連タンパク質
、メタキシン2、推定ミトコンドリア外膜タンパク質輸入受容体(hTOM)、グルタチオント
ランスフェラーゼ、電位依存性アニオンチャンネル2 (ミトコンドリア外膜タンパク質ポ
リン)、へキソキナーゼIV、チトクロム b5、末梢ベンゾジアゼピン受容体、生殖細胞キナ
ーゼアンカーS-AKAP84、A キナーゼアンカータンパク質、カルニチンO-パルミトイルトラ
ンスフェラーゼ I 前駆体、へキソキナーゼ II、アミンオキシダーゼ(フラビン含有)B
、長鎖脂肪酸-CoA リガーゼ 2、長鎖脂肪酸-CoA リガーゼ 1 (パルミトイル-CoA リガー
ゼ)、電位依存性アニオンチャンネル1、 メタキシン 1、ヒト推定ミトコンドリア外膜34
kDa トランスロカーゼ hTOM34、電位依存性アニオンチャンネル 4 (ミトコンドリア外膜
タンパク質ポリン)、チトクロムb5 還元酵素、電位依存性アニオンチャンネル3 (ミトコ
ンドリア外膜タンパク質ポリン)、ミトコンドリア輸入受容体サブユニットTOM20ホモログ
(ミトコンドリア20 kd 外膜タンパク質)(ミトコンドリア外膜受容体TOM20)、腫瘍性成
虫原基ホモログ前駆体 (HTID-1)、及び配列番号 189〜205からなる、前記組み換えヌクレ
アーゼ。
【請求項71】
非核性細胞小器官を、タンパク質導入領域、及び標的シグナルを含むポリペプチドをコ
ードするポリヌクレオチドでトランスフェクトすることを含む、方法であって:該ポリヌ
クレオチドが該非核性細胞小器官で発現し、該ポリペプチドを産生し、かつ該タンパク質
導入領域が、該ポリペプチドの該非核性細胞小器官膜の通過を可能にし、該標的シグナル
が、該ポリペプチドを非核性細胞小器官の外側の所定の位置に導く、前記方法。
【請求項72】
該タンパク質導入領域が、非核性細胞小器官膜を越えるポリペプチドの転移に十分な、
生理条件下の正味の正電荷を含む、請求項71記載の方法。
【請求項73】
該タンパク質導入領域が、HIV TAT YGRKKRRQRRR(配列番号 1)、RKKRRQRRR(配列番号
2)、11アルギニン残基、正に荷電されたポリペプチド、又は8〜15残基を有するポリヌ
クレオチド、RRRRRRR(配列番号 3); PTD-5−RRQRRTSKLMKR(配列番号4);トランスポ
ータンGWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL(配列番号 5); KALA−WEAKLAKALAKALAKHLAKALAKA
LKCEA(配列番号 6);及び RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号 7)からなる群より選択される
、請求項71記載の方法。
【請求項74】
該ポリペプチドが、少なくとも1種のポリヌクレオチド結合領域、タンパク質結合領域
、酵素的領域、又はリガンド結合領域、又はその組合せを含む、請求項71記載の方法。
【請求項75】
該ポリペプチドが核転写を促進、又は阻害する、請求項71記載の方法。
【請求項76】
該標的シグナルが核局在化シグナルを含む、請求項71記載の方法。
【請求項77】
該核局在化シグナルが、GKKRSKV(配列番号 9) KSRKRKL(配列番号 10);KRPAATKKAGQAKK
KKLDK(配列番号 11);RKKRKTEEESPLKDKAKKSK(配列番号 12);KDCVMNKHHRNRCQYCRLQR
(配列番号 13);PAAKRVKLD(配列番号 14);及び KKYENVVIKRSPRKRGRPRK(配列番号 1
5)からなる群から選択される、請求項76記載の方法。
【請求項78】
該非核性細胞小器官がミトコンドリア、又は葉緑体である、請求項1の方法。
【請求項79】
タンパク質導入領域に機能的にリンクされたポリヌクレオチド結合領域、及び該非核性
細胞小器官に特異的な標的シグナルを含む、組み換えポリペプチドが、該ポリヌクレオチ
ドを非核性細胞小器官に送達する、請求項1記載の方法。
【請求項80】
非核性細胞小器官をトランスフェクトする方法であって:(a)細胞をポリヌクレオチド-
ポリペプチド複合体で接触させること、該ポリヌクレオチド-ポリペプチド複合体は、(1)
非核性細胞小器官標的シグナルに機能的にリンクされたタンパク質導入領域、及びポリヌ
クレオチド結合領域、及び(2)第一の酵素的ポリペプチド、又は酵素的核酸、及び少なく
とも第二ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む;及び(b)非核性細胞小器官
で該ポリヌクレオチドを発現させることを含み、該第一の酵素的ポリペプチドが、非核性
細胞小器官に内在性の核酸を切断し、該ポリヌクレオチドは切断しない前記方法。
【請求項81】
非核性細胞小器官がミトコンドリアである、請求項80記載の方法。
【請求項82】
第一の酵素ポリペプチドがエンドヌクレアーゼ、又はヌクレアーゼである、請求項80
の方法。
【請求項83】
該酵素的核酸が、DNA、RNA、又はその組合せを含む、請求項80の方法。
【請求項84】
該ポリヌクレオチドが、1種以上のミトコンドリアポリペプチドをコードする、請求項
83記載の方法。
【請求項85】
該細胞が動物、又は植物細胞である、請求項83記載の方法。
【請求項86】
該非核性細胞小器官が遺伝子突然変異を含み、病変、又は病変の症状をもたらす、請求
項83記載の方法。
【請求項87】
体細胞培養で一時的な遺伝子発現、又は恒常的な遺伝子発現を標的にする方法であって
:発現ベクターを、該発現ベクターとポリペプチドとの間に形成された複合体を用いて、
体細胞培養に外部から投与し、該ポリペプチドが、非核性細胞小器官標的シグナルに機能
的にリンクされたタンパク質導入領域、及びポリヌクレオチド結合領域を含み、前記発現
ベクターが生体で発現する、前記方法。
【請求項88】
前記体細胞培養が、生体の皮膚、筋肉、脂肪、及び乳腺組織からなる群から選択される
、請求項87記載の方法。
【請求項89】
少なくとも部分的に遺伝子突然変異によって生じる病変を治療する方法であって:その
ような治療の必要な宿主に、非核性細胞小器官標的シグナルに機能的にリンクされたタン
パク質導入領域、及びポリヌクレオチド結合領域、及び遺伝子突然変異を補完するポリペ
プチドをコードするポリヌクレオチドを含む、ポリヌクレオチド-ポリペプチド複合体を
投与し、該ポリペプチドが該非核性細胞小器官で発現する、前記方法。
【請求項90】
該ポリヌクレオチド-ポリペプチド複合体を、該ポリヌクレオチドでコードされる生物
学的な機能をもつポリペプチドが、該病変を治療するのに十分な量、該宿主で発現する条
件下で、該宿主に投与する、請求項89記載の方法。
【請求項91】
宿主内の遺伝子発現を調整する方法であって:該宿主のミトコンドリアをトランスフェ
クトし、タンパク質導入領域、及び核局在化シグナルを含む、ミトコンドリア以外のタン
パク質を発現させることを含み、該ミトコンドリア以外のタンパク質を該宿主核に転移し
、該核内の遺伝子発現を調整する、前記方法。
【請求項92】
該宿主が霊長類である、請求項90記載の方法。
【請求項93】
該ミトコンドリアをインビボ、又はインビトロでトランスフェクトする、請求項90記
載の方法。
【請求項94】
該ミトコンドリア以外のタンパク質が転写因子、又は遺伝子抑制因子である、請求項9
0記載の方法。
【請求項95】
細胞機能を調整する方法であって:細胞を、(1)ミトコンドリア標的シグナルに機能的
にリンクされたタンパク質導入領域、及びポリヌクレオチド結合領域、及び(2)タンパク
質導入領域、及び該ミトコンドリア以外のタンパク質を所定の細胞内位置に標的する局在
化シグナルを含むミトコンドリア以外のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、を
含むポリヌクレオチド-ポリペプチド複合体に、該宿主のミトコンドリアをトランスフェ
クトするのに十分な量で接触させ、該ミトコンドリア以外のタンパク質を発現させること
を含み、該非ミトコンドリアタンパク質を該所定の細胞部位へ転移し、かつ細胞機能を調
整する、前記方法。
【請求項96】
非核性細胞小器官における外来ポリヌクレオチドの発現を調整する方法であって:(a)
該非核性細胞小器官を、切断部位を含有するポリヌクレオチドでトランスフェクトするこ
と;(b)該トランスフェクトされた非核性細胞小器官を含有する細胞を、該非核性細胞小
器官を標的とする局在化配列、及び該ポリヌクレオチドを該切断部位で切断する酵素的領
域を含むポリペプチドで接触させることを含む、前記方法。
【請求項97】
ミトコンドリアのゲノムを置換する方法であって:(a)エンドヌクレアーゼ、又はヌク
レアーゼを含む、ミトコンドリアの調整されたゲノムをコードするポリヌクレオチドを、
タンパク質導入領域に機能的にリンクされたミトコンドリア局在化シグナル、及び少なく
とも1種以上のポリヌクレオチド結合領域を含むポリペプチドと組合せて、ポリヌクレオ
チド-ポリペプチド複合体を形成すること、及び (b)該ミトコンドリアを、該ポリヌクレ
オチド-ポリペプチド複合体を用いてトランスフェクトすることを含み、該エンドヌクレ
アーゼ、又はヌクレアーゼが、該トランスフェクトされたミトコンドリアで発現し、該ト
ランスフェクトされたミトコンドリアの内在性ポリヌクレオチドを切断し、該調整された
ゲノムをコードする該ポリヌクレオチドは切断しない、前記方法。
【請求項98】
ミトコンドリア、又は葉緑体標的シグナルに機能的にリンクされたタンパク質導入領域
を含む、ポリヌクレオチドを結合するポリペプチドであって:該ポリヌクレオチドを結合
するポリペプチドが、送達されるべきポリヌクレオチドをコンパクト化し、ポリペプチド
-ポリヌクレオチド複合体を形成する、前記ポリペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−137001(P2011−137001A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3814(P2011−3814)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【分割の表示】特願2006−536845(P2006−536845)の分割
【原出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(506135051)ゲンシア コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】