説明

ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法

【課題】耐衝撃性改良剤としてエラストマー等を使用することなく、ガラス繊維で強化されたポリブチレンテレフタレート樹脂の機械的強度を維持しつつ、耐衝撃性を向上させる
【解決手段】(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B) ノボラックエポキシ樹脂により表面処理されたガラス繊維および(C) カルボジイミド化合物を含むポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法であって、2つ以上の原料供給口を有する二軸押出機の押出方向上流側の原料供給口から(A) 成分を供給し、さらに下流の原料供給口から(B) 成分と(C) 成分を同時に供給するか、あるいは(B) 成分の後に(C) 成分を供給して溶融混練する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法に関する。更に詳しくは、耐衝撃性および機械的特性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法および該製造方法により得られた組成物を用いた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、機械的性質、物理的・化学的特性に優れ、且つ射出成形、押出成形等の加工特性が良好であるがゆえに、エンジニアリングプラスチックとして、自動車部品、電気・電子部品、その他精密機械、建材、雑貨などの種々の用途に広く利用されている。ポリブチレンテレフタレート樹脂には、一般的に強度を発現させるためにガラス繊維を添加することが行われている。さらに昨今の用途の拡大、多様化に伴い、より高度な性能が求められることが多い。このような性質の一つに耐衝撃性の向上が挙げられており、強度保持のためにガラス繊維を併用しつつ耐衝撃性を向上させる手法が求められている。かかる目的達成のため、従来、各種の手法が提案されている。
【0003】
特許文献1には、熱可塑性樹脂にMBS樹脂やアクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体などのエラストマーを添加し、押出し溶融混練工程を経ずに、直接、射出成形機を用いて成形される材料が記載されている。
【0004】
特許文献2では、エポキシド化合物および触媒とブタジエン系ポリマーを添加することで耐衝撃性を発現させている。
【0005】
特許文献3には、耐衝撃性付与剤として熱可塑性エラストマーあるいはコアシェルポリマーを用い、さらに芳香族多価カルボン酸エステルを添加することが示されている。
【0006】
これらはいずれもエラストマーやコアシェルポリマーを併用することで耐衝撃性を発現させているものであり、エラストマーやコアシェルポリマーの特性により機械的強度がエラストマー未添加の場合より低下し、必要な強度が達成されない場合があった。
【0007】
一方、特許文献4には、エポキシ樹脂またはポリカルボジイミドを配合したポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物について記載されている。本手法を用いることにより耐熱水性は向上するが、耐衝撃性を向上させ、さらに一定の機械的強度を発現するには不十分であった。
【特許文献1】特開平6−32912号公報
【特許文献2】特公平6−99621号公報
【特許文献3】特開2000−336258号公報
【特許文献4】特開昭60−210659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、耐衝撃性改良剤としてエラストマーやコアシェルポリマーを使用することなく、ガラス繊維で強化されたポリブチレンテレフタレート樹脂の機械的強度を維持しつつ、耐衝撃性を向上させる手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B) ノボラックエポキシ樹脂により表面処理されたガラス繊維および(C) ポリカルボジイミド化合物を含むポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を、特定の手法により溶融混練することにより、機械的強度の低下を伴うことなしに耐衝撃性を向上したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B) ノボラックエポキシ樹脂により表面処理されたガラス繊維および(C) カルボジイミド化合物を含むポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法であって、2つ以上の原料供給口を有する二軸押出機の押出方向上流側の原料供給口から(A) 成分を供給し、さらに下流の原料供給口から(B) 成分と(C) 成分を同時に供給するか、あるいは二軸押出機の押出方向上流側の原料供給口から(A) 成分を供給し、それより下流の原料供給口から(B) 成分を供給し、さらにそれより下流の原料供給口から(C) 成分を供給して溶融混練することを特徴とするポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法により製造されたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、耐衝撃性、機械的物性に優れるため、自動車分野やOA分野にて使用される電気・電子部品用成形品、特に、コネクター、スイッチ、各種センサー類、基板収納ボックスおよびその周辺部品、ハウジング等の射出成形品に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明は、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B) ノボラックエポキシ樹脂により表面処理されたガラス繊維および(C) ポリカルボジイミド化合物を材料とし、2つ以上の原料供給口を有する二軸押出機を用いて溶融混練し、目的の組成物を製造する。二軸のスクリューの回転方向は同方向でも異方向でもよく、これらは任意に選ぶことができる。しかし、本発明においては、押出機内で化学的反応又は化学的相互作用を行わせる必要があるため、一定の反応又は相互作用のための時間が必要である。そのため、本発明で用いられる押出機は少なくとも20秒間の滞留時間を有することが好ましい。本発明の製造方法においては、異なる原料供給口(開口部)から原料成分をそれぞれ供給するが、その供給方法は特に限定されるものではない。各成分をそれぞれ別個に計量しつつ定量的に供給してもよいし、必要に応じて構成成分の一部を予め混合しておき、これを定量供給してもよい。
【0013】
本発明の製造方法において、必要に応じて行う脱気は実質的にガス成分が押出機の系外に排出されればよく、大気中に自然に放散させてもよいが、好ましくは減圧して行ったほうがよい。減圧する場合には、未反応の揮発性化合物成分やその他の揮発成分が効果的に系外に排出される。また、脱気には特別の開口部を設置するのが好ましいが、原料供給口(開口部)からもガス成分の排出を行うことが可能である。
【0014】
本発明の製造方法においては、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂を供給した後、(C) カルボジイミド化合物が(B) ノボラックエポキシ樹脂により表面処理されたガラス繊維と同時か、あるいはそれ以降となるようなタイミングで供給される限り、組成物は一般に用いられる公知の設備と方法により調製される。即ち、2つ以上の原料供給口を有する二軸押出機の押出方向上流側の原料供給口から(A) 成分を供給し、さらに下流の原料供給口から(B) 成分と(C) 成分を同時に供給するか、あるいは二軸押出機の押出方向上流側の原料供給口から(A) 成分を供給し、それより下流の原料供給口から(B) 成分を供給し、さらにそれより下流の原料供給口から(C) 成分を供給して溶融混練するのが必須である。このうち、前者の手法では原料供給口は最低2つ、後者の手法では原料供給口は最低3つが必要となる。
【0015】
本発明は、(C) 成分を、(B) 成分と同時か、(B) 成分より後に添加供給することに特徴を有する。(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂のカルボキシル末端は、(C) カルボジイミド化合物と反応性が非常に高いため、(B) ガラス繊維より先に(C) カルボジイミド化合物が(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂と接触し加熱溶融された場合、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B) ガラス繊維の密着性が不十分となり、目的とする強度が得られないことがある。
【0016】
具体的には、例えば、二軸押出機の上流側の原料供給口から(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂を投入し溶融させておき、下流側の供給口からサイドフィーダー等で(B) ノボラックエポキシ樹脂により表面処理されたガラス繊維と(C) カルボジイミド化合物を同時に添加することにより押出してペレットを調製し後に成形する方法、あるいは二軸押出機の上流側の原料供給口から(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂を投入し溶融させておき、下流側の供給口から(B) ノボラックエポキシ樹脂により表面処理されたガラス繊維を投入し、さらに下流側の供給口から(C) カルボジイミド化合物を投入しペレット化した後に成形する方法が好適である。
【0017】
本発明に使用される(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂は、主成分としてジカルボン酸にテレフタル酸またはテレフタル酸ジメチル、ジヒドロキシ化合物に1,4−ブタンジオールを使用してなる縮合重合体である。
【0018】
主成分以外にジカルボン酸として、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸の如き公知のジカルボン酸及びこれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体等を含んでいてもかまわない。また、ジヒドロキシ化合物には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシフェニル、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、シクロヘキサンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ジエトキシ化ビスフェノールAの如きジヒドロキシ化合物、またポリオキシアルキレングリコール及びこれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体等を含んでいてもよく、一種又は二種以上を混合使用することができる。
【0019】
また、その他にもオキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ジフェニレンオキシカルボン酸等のオキシカルボン酸及びこれらのエステル形成可能な誘導体も使用できる。更に、これらの他に三官能性モノマー、即ちトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等を少量併用した分岐又は架橋構造を有するポリエステルであっても良い。また、ジブロモテレフタル酸、テトラブロモテレフタル酸、テトラクロロテレフタル酸、1,4−ジメチロールテトラブロモベンゼン、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAのエチレンまたはプロピレンオキサイド付加物のような芳香族核にハロゲン化合物を置換基として有し、かつエステル形成基を有する化合物を用いたハロゲンを有するポリエステルコポリマーも含まれる。更に、高融点ハードセグメントと低融点ハードセグメントのブロック共重合体を構成するポリエステル系エラストマーも使用することができる。本発明で用いられるポリブチレンテレフタレート樹脂は、溶剤としてo−クロロフェノールを用い30℃で測定した固有粘度が0.55dl/g以上のものが好ましく、更には0.55〜1.2dl/g、特に0.55〜1.0dl/gのものが好ましい。
【0020】
本発明の(B) ガラス繊維としてはチョップドストランドが用いられる。(B) 成分のガラス繊維は、ポリブチレンテレフタレート樹脂マトリックスとの密着性を保持するために多官能のノボラックエポキシ樹脂により表面処理されていることが必須である。さらに、集束剤として、シランカップリング剤を含有させることができ、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−N’−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリロプロピルトリメトキシシランのようなアミノシラン類、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランのようなエポキシシラン類、γ−クロロプロピルトリメトキシシランのようなクロロシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプトシラン類、ビニルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランのようなビニルシラン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランのようなアクリルシラン類等の中から選ばれた1つ以上が使用される。
【0021】
(B) 成分において、ノボラックエポキシ樹脂による表面処理量は特に制限されず、一般的な処理が施された市販品は全て本発明に使用できる。通常、付着量はガラス繊維全重量中の0.1〜3%の範囲である。また、ノボラックエポキシ樹脂の他、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などの他成分を併用して表面処理されたものでもよい。
【0022】
本発明において、(B) ガラス繊維は、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して5〜80重量部、好ましくは10〜60重量部用いられる。5重量部未満では十分な補強効果が見られず、また80重量部を超えると樹脂流動性に劣り、成形性を悪化させる場合がある。
【0023】
本発明に用いる(C) カルボジイミド化合物は、分子中に(−N=C=N−)なるカルボジイミド基を有する化合物である。具体的には、ジイソプロピルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジ−o−トリイルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジオクチルデシルカルボジイミド、ジ−2,6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、ジ−p−トリイルカルボジイミド、ジ−p−メトキシフェニルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−o−トリイルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジフェニルカルボジイミド等のモノ又はジカルボジイミド化合物、及びポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(トリカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1−メチル−3,5−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等のポリカルボジイミド化合物が挙げられる。これらは2種以上併用することもできる。これらの中でも特にジシクロヘキシルカルボジイミド、ジ−2,6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、ジ−o−トリイルカルボジイミド、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(トリカルボジイミド)、ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)の使用が好適である。
【0024】
本発明において、(C) カルボジイミド化合物は、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部用いられる。0.1重量部未満では効果が十分でなく、また5重量部を超えると流動性の低下や、コンパウンド時あるいは成形加工時にゲル成分、炭化物の生成が起こりやすくなり好ましくない。
【0025】
また、(C) カルボジイミド化合物は、樹脂をマトリックス樹脂とするマスターバッチとして配合することも可能であり、マスターバッチを使用することが実際の取り扱いの面からは容易である。ポリブチレンテレフタレート樹脂によるマスターバッチが好適に用いられるが、他の樹脂によりマスターバッチとして調製されたものを使用しても構わない。ポリブチレンテレフタレート樹脂によるマスターバッチの場合、上記配合量の範囲内になるように、主成分としての(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂を上流側の原料供給口から投入し、マスターバッチとした残りのポリブチレンテレフタレート樹脂を含む(C) カルボジイミド化合物を(B) ガラス繊維と同時か、その後に投入することになる。
【0026】
本発明の製造方法により製造された樹脂組成物は、成形加工性が良好である。そのため、本発明では、例えば、該樹脂組成物を溶融混練し、押出成形や射出成形などの慣用の成形方法により容易に成形でき、効率よく成形品を得ることができる。特に射出成形が好ましい。
【0027】
尚、本発明の製造方法により製造されたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、必要に応じ他の熱可塑性樹脂、添加剤、有機充填剤、無機充填剤等の1種又は2種以上を重合中、又は重合後に補助的に添加配合した組成物として使用することもできる。ここで、熱可塑性樹脂としては本発明のポリブチレンテレフタレート以外のポリエステル樹脂及びポリエステルエラストマー、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアリーレンオキシド、ポリアリーレンサルファイド、フッ素樹脂等が例示される。
【0028】
また、添加剤としては、従来公知の紫外線吸収剤や抗酸化剤等の安定剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤、可塑剤、滑剤、離型剤、結晶核剤等が例示される。
【0029】
また、無機充填剤としては、本発明以外のガラス繊維、ミルドガラスファイバー、ガラスビーズ、ガラスフレーク、シリカ、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、カーボン繊維、カーボンブラック、黒鉛、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー等の珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化アンチモン、アルミナ等の金属酸化物、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等の金属の炭酸塩や硫酸塩、さらに炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素等が例示され、有機充填剤としては高融点の芳香族ポリエステル繊維、液晶性ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維、ポリイミド繊維等が例示される。
【0030】
尚、電気・電子部品あるいは自動車部品等に成形品として使用する場合は、その使用環境により難燃性を要求される場合が数多くあり、難燃剤、難燃助剤の配合が必須となることが多い。難燃剤としては臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ化合物、臭素化ジフェニル、臭素化ジフェニルエーテル等の公知のハロゲン含有化合物系難燃剤が使用でき、難燃助剤としては三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ハロゲン化アンチモン等のアンチモン化合物の他、亜鉛、ビスマスを含む金属化合物、水酸化マグネシウムの如き粘土質珪酸塩等が使用できる。さらには昨今の環境への配慮から非ハロゲン系難燃剤を使用することも可能である。
【0031】
本発明において、樹脂成分の一部を細かい粉体として、これ以外の成分と混合して添加する方法は、これらの成分の均一配合を図る上で好ましい方法である。また、上述した充填剤等は、任意の時期に添加し、所望の組成物を得ることができる。
【0032】
本発明の製造方法により製造されたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、耐衝撃性、機械的物性に優れるため、自動車分野やOA分野にて使用される電気・電子部品用成形品に適している。特に、コネクター、スイッチ、各種センサー類、基板収納ボックスおよびその周辺部品、ハウジング等の射出成形品に好適である。
【実施例】
【0033】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〜7
表1に示す原料組成にて、各成分を30mmφ2軸押出機を用いて250℃で溶融混練後ペレット化し、試験片を作製し、各評価を行った。
【0034】
2軸押出機には3箇所の原料供給口を設置し(押出方向上流側から下流側へX、Y、Zと呼ぶ)、ポリブチレンテレフタレートと酸化防止剤は全て原料供給口Xから投入し、カルボジイミドはガラス繊維と同じ供給口Yか、またはYより下流の供給口Zから投入した。尚、XY間、YZ間はそれぞれ50cm、20cmである。
比較例1〜9
表2に示す原料組成にて、上記実施例と同様にして試験片を作製し、各評価を行った。
【0035】
比較例1はカルボジイミドを添加しない場合の例である。
【0036】
また、比較例2、3、7は、カルボジイミドをポリブチレンテレフタレートと同時に原料供給口Xから投入した例である。
【0037】
また、比較例4、5、6は、ガラス繊維としてノボラックエポキシ処理ではなくビスフェノールAエポキシ処理されたものを使用した例である。
【0038】
更に、比較例8、9はカルボジイミドに代えてエチレン・エチルアクリレートエラストマーを使用した例である。
【0039】
これらの結果を表1〜2に示す。
【0040】
また、使用した成分の詳細、物性評価の測定法は以下の通りである。
(A) ポリブチレンテレフタレート
;ウィンテックポリマー(株)製500FP
(B) ガラス繊維
(B-1) ノボラックエポキシ処理されたガラス繊維;13mmφ、強熱減量1.2%
(B'-1) ビスフェノールAエポキシ処理されたガラス繊維;13mmφ、強熱減量0.7%
(C) カルボジイミド化合物
(C-1) ポリカルボジイミド;ラインケミージャパン(株)製スタバックゾールP
(C-2) ポリカルボジイミドのポリブチレンテレフタレートマスターバッチ;ラインケミージャパン(株)製スタバックゾールPの割合20重量%
(D) エチレン・エチルアクリレートエラストマー;日本ユニカー(株)製NUC6570
・酸化防止剤;日本チバガイギー(株)製イルガノックス1010
<シャルピー衝撃値、引張強さ、引張伸び>
得られたペレットを140℃で3時間乾燥後、成形温度260℃、金型温度80℃で射出成形した。射出成形により得たシャルピー衝撃試験片、引張試験片について、ISO527および179に定められている評価基準に従い評価した。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
表1に示すように、本発明品は、シャルピー衝撃値、引張強さ、引張伸びの全てで良好な結果を得た。
【0044】
これに対し、カルボジイミドをポリブチレンテレフタレートと同時に投入したのでは、優れた物性は得られない(比較例2、3、7)。
【0045】
また、ガラス繊維としてビスフェノールAエポキシ処理されたものを使用した場合は、本発明の手法によっても優れた物性は得られない(比較例4、5、6)。
【0046】
更に、カルボジイミドに代えてエチレン・エチルアクリレートエラストマーを使用した場合は、添加時期の相違にかかわらず、優れた物性は得られない(比較例8、9)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B) ノボラックエポキシ樹脂により表面処理されたガラス繊維および(C) カルボジイミド化合物を含むポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法であって、2つ以上の原料供給口を有する二軸押出機の押出方向上流側の原料供給口から(A) 成分を供給し、さらに下流の原料供給口から(B) 成分と(C) 成分を同時に供給するか、あるいは二軸押出機の押出方向上流側の原料供給口から(A) 成分を供給し、それより下流の原料供給口から(B) 成分を供給し、さらにそれより下流の原料供給口から(C) 成分を供給して溶融混練することを特徴とするポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
(C) カルボジイミド化合物が、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂をマトリックス樹脂とするマスターバッチとして供給される請求項1記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
(A) 、(B) 、(C) 成分の使用量が、(A) /(B) /(C) の重量比で100/(5〜80)/(0.1〜5)である請求項1又は2記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載の製造方法により製造されたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形してなる電気・電子部品用成形品。
【請求項6】
コネクター、スイッチ、各種センサー類、基板収納ボックスおよびその周辺部品、またはハウジングである請求項5記載の電気・電子部品用成形品。

【公開番号】特開2007−112858(P2007−112858A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303933(P2005−303933)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(501183161)ウィンテックポリマー株式会社 (54)
【Fターム(参考)】