説明

ポリプロピレン系改質樹脂の製造方法、ポリプロピレン系改質樹脂、ならびに発泡成形品の製造方法

【課題】高い溶融張力を有するポリプロピレン系改質樹脂を効率よく製造し得る方法、ならびに、高い溶融張力を有しながらも簡便に製造することが可能なポリプロピレン系改質樹脂を提供し、ひいては、発泡状態の良好な発泡成形品を提供すること。
【解決手段】メルトマスフローレイトが異なる複数のポリプロピレン系樹脂とパーオキシジカーボネートとを、ポリプロピレン系樹脂の合計量100質量部に対するパーオキシジカーボネートの割合が0.3質量部以上3.0質量部以下となるように押出し機に供給し、該押し出し機で溶融混練して前記ポリプロピレン系樹脂が前記パーオキシジカーボネートで架橋されてなるポリプロピレン系改質樹脂を製造するポリプロピレン系改質樹脂の製造方法であって、前記複数のポリプロピレン系樹脂の内の一つのポリプロピレン系樹脂のメルトマスフローレイトが0.2g/10min以上3.0g/10min以下であり、他のポリプロピレン系樹脂が3.0g/10minを超えるメルトマスフローレイトを有しており、これらのポリプロピレン系樹脂が混合された混合樹脂で前記溶融混練前に樹脂粒子を作製し、該樹脂粒子と前記パーオキシジカーボネートとを前記溶融混練して前記架橋を実施することを特徴とするポリプロピレン系改質樹脂の製造方法などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂が架橋されてなるポリプロピレン系改質樹脂とその製造方法、ならびに、発泡成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリプロピレン系樹脂は、機械的性質や耐薬品性などに優れることから種々の成形品の原材料として利用されている。
このポリプロピレン系樹脂を用いて成形品を作製する場合には、一般的には押出し成形、ブロー成形、発泡成形などが行われているが、一般的にポリプロピレン系樹脂は、結晶性を有することから溶融時の粘度や溶融張力が低く、上記のような成形を行う際に高精度の条件設定を行っても所望の性状の成形品を得ることができない場合がある。
例えば、発泡シートなどの発泡成形品を作製すべく押出し発泡をさせた際には、気泡膜の張力不足による破泡が押出し発泡時に生じてしまう結果、緻密な発泡状態を有する発泡成形品を得ることが困難になる場合がある。
また、緩衝材などの発泡成形品を形成すべくビーズ発泡させた際に、発泡が不十分になって外観が損なわれたり、発泡成形品に十分な強度が発揮されなかったりする場合がある。
【0003】
このような問題の解決を図るべくポリプロピレン系樹脂を改質して溶融張力を向上させる試みがなされており、種々のポリプロピレン系改質樹脂に関する検討が行われている。
例えば、下記特許文献1においては、特定の酸素濃度に調節したガス雰囲気下にてポリプロピレン系樹脂を放射線架橋することによって、放射線照射前のポリプロピレン系樹脂よりも溶融時の粘度および張力の高い改質樹脂を作製する方法が記載されている。
しかし、特許文献1に記載の発明では、放射線を利用するために設備が大掛かりとなって、ポリプロピレン系改質樹脂を簡便に得ることが難しいという問題を有する。
【0004】
一方で、有機過酸化物による化学架橋についても種々の検討がなされており、下記特許文献2においては、所定のメルトマスフローレイトの値を有するポリプロピレン系樹脂と特定の有機過酸化物とを溶融混練してポリプロピレン系改質樹脂を作製することが記載されている。
さらに、下記特許文献3には、異なるメルトマスフローレイトを有する複数のポリプロピレン系樹脂とパーオキシジカーボネートとを溶融混練してポリプロピレン系改質樹脂を作製することが記載されている。
これらの特許文献に記載の発明では、ポリプロピレン系改質樹脂が溶融混練によって作製されるため、放射線を利用する方法に比べて簡便な製造方法であるといえる。
しかし、この特許文献2、3記載の発明のように、単にポリプロピレン系樹脂と有機過酸化物とを溶融混練するだけでは、前記有機過酸化物の添加量に見合う溶融張力の向上効果が得られないおそれを有する。
【0005】
すなわち、従来、有機過酸化物によるポリプロピレン系樹脂の架橋を溶融張力の向上に有効に作用させることが困難で、高い溶融張力を有するポリプロピレン系改質樹脂を効率よく得ることが困難となっている。
また、このことから、高い溶融張力を有しながらも簡便に製造することが可能な、例えば、発泡成形品の製造に適したポリプロピレン系改質樹脂を得ることが困難であるという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−121704号公報
【特許文献2】特許第4267187号公報
【特許文献3】特許第3808843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような問題点に鑑み、本発明は、高い溶融張力を有するポリプロピレン系改質樹脂を効率よく製造し得る方法、ならびに、高い溶融張力を有しながらも簡便に製造することが可能なポリプロピレン系改質樹脂を提供し、ひいては、発泡状態の良好な発泡成形品を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、ポリプロピレン系改質樹脂の製造方法に係る本発明は、メルトマスフローレイトが異なる複数のポリプロピレン系樹脂とパーオキシジカーボネートとを、ポリプロピレン系樹脂の合計量100質量部に対するパーオキシジカーボネートの割合が0.3質量部以上3.0質量部以下となるように押出し機に供給し、該押し出し機で溶融混練して前記ポリプロピレン系樹脂が前記パーオキシジカーボネートで架橋されてなるポリプロピレン系改質樹脂を製造するポリプロピレン系改質樹脂の製造方法であって、前記複数のポリプロピレン系樹脂の内の一つのポリプロピレン系樹脂のメルトマスフローレイトが0.2g/10min以上3.0g/10min以下であり、他のポリプロピレン系樹脂が3.0g/10minを超えるメルトマスフローレイトを有しており、これらのポリプロピレン系樹脂が混合された混合樹脂で前記溶融混練前に樹脂粒子を作製し、該樹脂粒子と前記パーオキシジカーボネートとを前記溶融混練して前記架橋を実施することを特徴としている。
【0009】
また、ポリプロピレン系改質樹脂に係る本発明は、メルトマスフローレイトが異なる複数のポリプロピレン系樹脂とパーオキシジカーボネートとが、ポリプロピレン系樹脂の合計量100質量部に対するパーオキシジカーボネートの割合が0.3質量部以上3.0質量部以下となるように押出し機に供給され、該押出し機で溶融混練されることによって前記ポリプロピレン系樹脂が前記パーオキシジカーボネートで架橋されてなるポリプロピレン系改質樹脂であって、前記複数のポリプロピレン系樹脂の内の一つのポリプロピレン系樹脂のメルトマスフローレイトが0.2g/10min以上3.0g/10min以下であり、他のポリプロピレン系樹脂が3.0g/10minを超えるメルトマスフローレイトを有しており、これらのポリプロピレン系樹脂が混合された混合樹脂で前記溶融混練前に樹脂粒子が作製され、該樹脂粒子と前記パーオキシジカーボネートとが前記溶融混練されて前記架橋がされていることを特徴としている。
【0010】
さらに、発泡成形品の製造方法に係る本発明は、上記のようなポリプロピレン系改質樹脂を発泡させて発泡成形品を作製することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るポリプロピレン系改質樹脂の製造方法においては、ポリプロピレン系樹脂と有機過酸化物とを溶融混練して架橋するのに際して、前記有機過酸化物としてパーオキシジカーボネートを採用し、該パーオキシジカーボネートと前記ポリプロピレン系樹脂とを所定の割合で溶融混合させることから高い溶融張力を有するポリプロピレン系改質樹脂が作製され得る。
なお、溶融張力を向上させるためには、より嵩高い分子を架橋することが有効になる。
すなわち、メルトマスフローレイトの値の低いポリプロピレン系樹脂に対して架橋剤がより一層作用し易い状況を押出し機内に形成させることで溶融張力の向上効果に寄与する架橋反応をより多く発生させることができる。
【0012】
このことに関し、メルトマスフローレイトの低いポリプロピレン系樹脂(以下「低フローPP」ともいう)を該ポリプロピレン系樹脂よりもメルトマスフローレイトの高いポリプロピレン系樹脂(以下、「高フローPP」ともいう)ともに押出し機で溶融混練することによって前記低フローPPの押出し機内での分散性を高め、該低フローPPと架橋剤とが反応する機会を増大させることがポリプロピレン系改質樹脂の溶融張力を向上させるための有効な手段となりうる。
【0013】
しかし、低フローPPと高フローPPとを一度に押出し機に供給したのでは、通常、押出し機内において高フローPPが先に流動を始めるために低フローPPにスクリューによるせん断力が加わり難くなり高フローPPが溶融してから低フローPPが均一に分散するまでにタイムラグを生じさせるおそれが有る。
一方で、パーオキシジカーボネートは、樹脂温がある程度の温度域に達した時点で盛んに開裂してラジカルを発生させることになるが、この時点では低フローPPが均一に分散されていないおそれを有する。
【0014】
ここで、本発明に係るポリプロピレン系改質樹脂の製造方法においては、低フローPPと高フローPPとが混合された混合樹脂で樹脂粒子を作製した後に、該樹脂粒子とパーオキシジカーボネートとを押出し機で溶融混練することからパーオキシジカーボネートによってラジカルが発生する時点においては既に低フローPPが十分に分散された状態となる。
したがって、低フローPPが架橋される機会が増えて同じパーオキシジカーボネートの添加量であっても従来のものよりも高い溶融張力を有するポリプロピレン系改質樹脂を得ることができる。
すなわち、高い溶融張力のポリプロピレン系改質樹脂を効率よく得ることができる。
さらには、このような高い溶融張力のポリプロピレン系改質樹脂を発泡させて発泡成形品を作製することで緻密な発泡状態の高い発泡度の成形品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について説明する。
本発明のポリプロピレン系改質樹脂を製造するのにあたっては、その出発物質として、a)ポリプロピレン系樹脂粒子、b)パーオキシジカーボネートを用いる。
また、本発明のポリプロピレン系改質樹脂には、上記の成分以外の各種のc)添加剤を適宜含有させることができる。
【0016】
そして、本発明に係るポリプロピレン系改質樹脂の製造方法は、上記のような出発物質を押出し機に供給して溶融混練を実施し、該溶融混練において前記パーオキシジカーボネートでポリプロピレン系樹脂粒子に架橋反応を生じさせ、架橋前のポリプロピレン系樹脂粒子よりも溶融張力が高くなるように樹脂改質を行うものである。
まず、本発明のポリプロピレン系改質樹脂を構成させる出発物質について説明する。
【0017】
a)ポリプロピレン系樹脂
前記ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されることなく、ホモポリプロピレン、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体などが挙げられ、本実施形態のポリプロピレン系改質樹脂を構成するための成分としては、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体が好ましい。
このプロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、ランダム共重合体又はブロック共重合体の何れであってもよいが、耐熱性に優れていることから、ブロック共重合体が好ましい。
なお、プロピレンとともに共重合体を構成する他のオレフィンとしては、例えば、エチレンの他に、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどの炭素数が4〜10のα−オレフィンが挙げられる。
【0018】
本実施形態においては、JIS K7210:1999のB法に準拠して試験温度230℃、荷重21.18Nで試験した際のメルトマスフローレイト(MFR)が異なる複数のポリプロピレン系樹脂を併用することが重要であり、その内の一つのポリプロピレン系樹脂がMFRが0.2g/10min以上3g/10min以下の低フローのポリプロピレン系樹脂(低フローPP)であり、他のポリプロピレン系樹脂が3.0g/10minを超えるMFRを有する高フローのポリプロピレン系樹脂(高フローPP)であることが重要である。
【0019】
なお、前記低フローPPのMFRが0.2g/10min以上3.0g/10min以下の範囲に規定されているのは、0.2g/10minよりもMFRの低い低フローPPを採用すると後述する高フローPPとの混合における分散性が悪くなったり、低フローPPと高フローPPとの合計に占める低フローPPの割合が高くなった場合に、押出し機での溶融混練において過大な負荷を与えたりするおそれを有するためである。
また、低フローPPのMFRの上限値が3.0g/10minとされているのは、3.0g/10minを超えるMFRのポリプロピレン系樹脂では、溶融張力の高いポリプロピレン系改質樹脂を得ることが難しくなるためである。
このようなことから低フローPPのMFRは、0.3g/10min以上2.0g/10min以下であることが好ましい。
【0020】
また、前記高フローPPのMFRの下限値が3.0g/10minとされているのは、3.0g/10min以下のMFRのポリプロピレン系樹脂を採用すると、該ポリプロピレン系樹脂よりもMFRの低い低フローPPとの混合樹脂をパーオキシジカーボネートとともに溶融混練する際に押出し機に過大な負荷を与えるおそれを有するためである。
なお、上限値が特に定められるものではないが、一般に市販されているポリプロピレン系樹脂において最大のMFRが50g/10min程度であることから当該高フローPPを容易に入手し得る点においてそのMFRは50g/10min以下であることが好ましい。
さらに、入手容易な材料で、溶融混練の工程を簡便に実施させうる点において高フローPPのMFRは、5.0g/10min以上20g/10min以下であることが好ましい。
【0021】
なお、本実施形態に係るポリプロピレン系改質樹脂の出発物質には、前記低フローPPと前記高フローPPとをそれぞれ一種のみとする必要はなく、例えば、MFRが0.2g/10min以上3.0g/10min以下の範囲の低フローPPを複数採用することも可能であり、MFRが3.0g/10minを超える高フローPPを複数採用することも可能である。
さらには、低フローPPと高フローPPの両方ともを複数採用することも可能である。
【0022】
本実施形態に係るポリプロピレン系改質樹脂の出発物質における低フローPPと高フローPPとの含有量については、全ポリプロピレン系樹脂に占める低フローPPの割合が10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、残部(10質量%以上90質量%以下)が高フローPPであることが好ましい。
【0023】
b)パーオキシジカーボネート
前記パーオキシジカーボネートは、有機過酸化物であり、ポリプロピレン系樹脂に対して架橋剤として作用するものである。
具体的には、ジエチルパーオキシジカーボネート、ジプロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジn−ブチルパーオキシジカーボネート、ビスメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ビス2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジオクチルパーオキシジカーボネート、ビスt−ブチルシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネートなどが挙げられ、中でもビスt−ブチルシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネートは自己促進分解温度(SADT)が高く、貯蔵時の熱的安定性や取り扱い性に優れることから好ましい。
【0024】
なお、このパーオキシジカーボネートと、前記ポリプロピレン系樹脂との配合量は、前記ポリプロピレン系樹脂(合計量)100質量部に対して0.3質量部以上3.0質量部以下の割合とされる。
パーオキシジカーボネートの記合量が上記のような範囲とされるのは、上記下限値未満では、ポリプロピレン系改質樹脂に十分な溶融張力を付与することが難しくなるためであり、上記の上限値を超えて配合しても配合量に見合う溶融張力向上の効果が得られないばかりでなく、分解したパーオキシジカーボネートによって臭気や発煙の問題が生じたり、過度の反応によってゲル化が生じたりするおそれを有するためである。
【0025】
また、パーオキシジカーボネート系のもの以外の有機過酸化物を用いた場合、溶融混練時におけるポリプロピレン系樹脂の分解を引き起こしやすく、溶融張力の向上に有効となる架橋構造を形成させることが困難である。
なお、有機過酸化物による架橋は、当該有機過酸化物が熱分解して生成したラジカルがポリマーからプロトンを引き抜く反応を起こすことによって生じるので、有機過酸化物による生成ラジカルが再結合してラジカルが消失したり、生成ラジカルがポリプロピレン系樹脂の分子鎖を切断し分子量低下を引き起こしたりすることがある。
また、意図していない他の物質と反応すれば、架橋効率が極度に低下し、良好な架橋構造をポリプロピレン系改質樹脂に付与することができなくなるおそれを有する。
したがって、生成ラジカルが再結合反応等を起こすよりも速く架橋剤などと反応し生成ラジカルを安定化させ架橋効率を高めることが重要である。
【0026】
このような点において、本実施形態に係るポリプロピレン系改質樹脂の製造方法では、嵩高い分子構造を有する低フローPPが、押出し機内において流動しやすい高フローPPに混合されて該高フローPPに低フローPPが分散された樹脂粒子が予め作製される。
そして、この樹脂粒子とパーオキシジカーボネートとが押出し機で溶融混練されることから、嵩高いポリプロピレン系樹脂の分散が不十分な状況でパーオキシジカーボネート系有機過酸化物によるラジカルが発生して高フローPPの架橋に多くのパーオキシジカーボネートが消費されてしまうことを抑制させ得る。
すなわち、低フローPPの分散性が向上されることでその架橋効率が向上され、例えば、発泡成形品の形成材料などとして好適な3cN程度、あるいはそれ以上の高い溶融張力を有するポリプロピレン系改質樹脂が効率よく作製されうる。
【0027】
c)添加剤
なお、本実施形態に係るポリプロピレン系改質樹脂の出発物質としては、a)、b)の成分以外に、各種添加剤を含有させることができる。
なお、この添加剤は、a)、b)の成分を溶融混練する際に加えても良く、a)、b)の成分を一旦溶融混練した後に改めて混合するようにしてもよい。
さらには、a)の低フローPPと高フローPPとを混合して樹脂粒子を作製する際にこれらに当該添加剤を混合させるようにしてもよい。
この添加剤の限定されない具体例としては、耐候性安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤、顔料、染料、滑剤、すべり性付与及びアンチブロッキング性の付与を目的とした界面活性剤、無機充填材やその分散性の向上を目的とした高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル又は高級脂肪酸アミドなどが挙げられる。
また、例えば、ポリエチレン樹脂などのポリプロピレン系樹脂に相溶性の高いポリオレフィン系樹脂など他の樹脂成分を方発明の効果が著しく損なわれない範囲において添加剤として含有させてもよい。
【0028】
次いで、これらの成分を用いてポリプロピレン系改質樹脂を製造するポリプロピレン系改質樹脂の製造方法について説明する。
【0029】
本実施形態に係るポリプロピレン系改質樹脂の製造方法においては、前記ポリプロピレン系樹脂(低フローPP、高フローPP)を混合して、混合樹脂で樹脂粒子を作製する工程を実施した後に、該樹脂粒子と前記パーオキシジカーボネートとを押出し機に供給して、該押出し機で溶融混練する工程を実施する。
【0030】
前記低フローPPと前記高フローPPとの混合樹脂によって樹脂粒子を作製する方法としては、これらの樹脂を可溶な溶剤に溶解させてポリプロピレン系樹脂溶液を作製し、このポリプロピレン系樹脂溶液を噴霧乾燥して樹脂粒子を得る方法、押出し機などで低フローPPと高フローPPとを溶融混練してストランド状に押出し、ペレタイザーでカットする方法、或いは、押出し機から押出した樹脂をホットカット設備で造粒する方法が挙げられる
【0031】
なお、得られた樹脂粒子をその後パーオキシジカーボネートとともに押出し機に供給して架橋反応を生じさせるのに際して、より効率の高い架橋反応を生じさせうる点において、前記樹脂粒子は、0.1mm以上2.0mm以下の平均粒子径となるように形成されることが好ましい。
【0032】
このことについて、より詳細に説明するとポリプロピレン系樹脂は通常3〜5mm程度の直径を有するペレット状の粒子形状で一般的に市販されているがこのような大きさの樹脂ペレットを押出し機などに供給して溶融混練する際には、一粒一粒の熱容量が大きいためペレットの一部が溶融していても残部が溶け残った状態が押出し機の中である程度の時間継続することになる。
一方でパーオキシジカーボネートは、樹脂温がある程度上昇した時点で開裂してラジカルを発生させるため、一般的に市販されている大きさのポリプロピレン系樹脂のペレットとパーオキシジカーボネートとを単に溶融混練するだけでは、ペレットの一部が溶け残った状態でラジカルが発生されやすい状態になってしまい、架橋効率が十分なものとならないおそれを有する。
【0033】
これに対して、上記のように樹脂粒子の平均粒子径を0.1mm以上2.0mm以下とすることで押出し機内において全体を均一な温度とさせやすく、樹脂粒子に溶融ムラが解消される以前にパーオキシジカーボネートの活性が高まってしまい発生したラジカルを架橋反応に有効に作用させられなくなるという問題を防止しうる。
したがって、低フローPPの分散効果との相乗効果を期待することができ、高い溶融張力のポリプロピレン系改質樹脂がより効率良く作製され得る。
なお、要すれば、一旦混合樹脂で通常のペレットと同様の3〜5mm程度の直径を有する樹脂粒子を作製して、その後、これを粉砕機などによって機械的に粉砕して平均粒子径を0.1mm以上2.0mm以下とすることも可能である。
【0034】
なお、溶剤などに樹脂を溶かして溶解させたのちに噴霧乾燥する方法は、気化した溶剤の回収・再生といった手間が必要になるものの多孔質な樹脂粒子が得られやすくパーオキシジカーボネートが液剤や粉末の形態で押出し機に供給されるような場合においてこれらを表面に付着(吸着)させやすくなる。
すなわち、後述する溶融混練においてパーオキシジカーボネートの押出し機内での偏在を抑制させることができる。
また、押出し機を利用する方法は、ポリプロピレン系樹脂に熱とせん断によるストレスを与えることになるものの大きさの整った樹脂粒子を得られやすく、溶剤を利用する場合のような手間が発生しない点において優れているともいえる。
【0035】
さらに、先述のような粉砕を行う場合には、粉砕のための手間を発生させ得るものの得られる樹脂粒子の形状が不定形状となり比表面積の大きな粒子が得られやすくパーオキシジカーボネートの付着(吸着)に有利となる。
【0036】
なお、平均粒子径が0.1mm以上2.0mm以下の範囲の内のいずれかであることが好ましいのは、平均粒子径が2mmより大きい場合、押出し機での溶けムラが生じてパーオキシジカーボネートの分解速度とのバランスを保つことが難しくなるためである。
また、0.1mm未満の平均粒子径とすると、パーオキシジカーボネートの分解速度とのバランスの観点からは問題を生じるおそれは低いものの嵩密度が小さくなるために押出し機への投入量が減少しポリプロピレン系改質樹脂の生産性を低下させるおそれを生じる。
【0037】
なお、樹脂粒子の平均粒子径は例えば下記の要領で測定することができる。
目開き4.00mm、目開き3.35mm、目開き2.80mm、目開き2.36mm、目開き2.00mm、目開き1.70mm、日開き1.40mm、目開き1.18mm、目開き1.00mm、目開き0.85mm、目開き0.71mm、目開き0.60mm、目開き0.50mm、目開き0.425mm、目開き0.355mm、目開き0.300mm、目開き0.250mm、目開き0.212mm、目開き0.180mmのJIS標準篩をロータップ型篩振とう機(飯田製作所社製)にセットして試料約50gを10分間かけて分級し、篩網上の試料重量を測定する。
次いで、各篩の目開きとこの網の次に大きな目開きを有する網の目開きとの相加平均値を求めその網の粒径値とする。
なお、目開きが4.00mmの篩の場合には、この篩の次に大きな目開きを有するJIS規定の篩の目開きが4.75mmであるので、この網の目開き4.75mmと目開き4.00mmとの相加平均値4.375mmをその粒径値とする。
篩上に残った樹脂粒子の粒径値を上述のようにして篩毎に決定すると共に、篩上に残った樹脂粒子の質量を篩毎に算出し、各篩に残った樹脂粒子の質量を測定試料全体質量で除して質量百分率を算出する。
そして、各篩の目開きよりも小さな目開きを有する全ての篩上に残った樹脂粒子の質量百分率を合計し、この値を累積質量百分率とする。
次に、横軸を粒径値とし、縦軸を累積質量百分率としたグラフを作製し、篩毎に決定した粒径値及び累積質量百分率を一組のデータとしてこのグラフにプロットし、これらプロットどうしを結んだ近似曲線を作成する。
そして、近似曲線上において、累積質量百分率が50質量%となる粒子径(メディアン径)を平均粒子径とする。
【0038】
なお、このような平均粒子径を有する樹脂粒子は、次いで、前記パーオキシジカーボネートとともに押出し機に供給し、該押出し機で溶融混練を実施する。
このとき、先述のように、ポリプロピレン系樹脂(合計量)100質量部に対して前記パーオキシジカーボネートが0.3質量部以上3.0質量部以下となる割合に調整して樹脂粒子とパーオキシジカーボネートとを押出し機に供給する。
【0039】
前記押出し機としては、単軸押出し機、二軸押出し機などを挙げることができ、これらは、単独、又は複数連結したタンデム型のものとしてポリプロピレン系改質樹脂の製造に利用することができる。
特に、ベース樹脂であるポリプロピレン系樹脂に対するその他の配合剤の分散性や反応性の観点から、二軸押出し機が好適である。
【0040】
この押出し機には、まず、常温の状態で樹脂粒子とパーオキシジカーボネートとが導入され、その後、押出し機の内部をスクリューで攪拌されつつ進行するにしたがってシリンダー内壁等からの伝熱により加熱されることになる。
【0041】
このとき、低フローPPと高フローPPとを予め混合することなく押出し機に導入させた場合には、流動性の高い高フローPPが先に溶融してしまい、該高フローPPによる溶融樹脂に低フローPPが溶融し切らない状態で分散されることになる。
先にも述べたように、溶融張力を向上させるには、嵩高い分子を架橋することが有効になるが、この場合、嵩高い分子構造を有する低フローPPよりも高フローPPの方が架橋反応を起こしやすい状態になっているためパーオキシジカーボネートによる架橋の効果が十分に溶融張力の向上効果に反映されないおそれを有する。
【0042】
一方で本実施形態に係るポリプロピレン系改質樹脂の製造方法においては、低フローPPと高フローPPとの混合樹脂によって予め樹脂粒子を形成させた後にパーオキシジカーボネートとともに押出し機で溶融混練させることから押出し機内における低フローPPの分散性が良好なものとなって、嵩高い分子構造を有する低フローPPに架橋反応を起させる機会がより多くもたらされることになる。
すなわち、本発明によれば少ないパーオキシジカーボネートの添加量で高い溶融張力を有するポリプロピレン系改質樹脂が作製され得る。
【0043】
特に、低フローPPと高フローPPとの混合樹脂によって作製する樹脂粒子の平均粒子径を0.1mm以上2.0mm以下とすることで高い溶融張力を有するポリプロピレン系改質樹脂をより効率よく得ることができる。
すなわち樹脂粒子の粒径が大きいと、一粒一粒の熱容量が大きいために粒子の一部が溶融した状態になっても、残部が十分に軟化されていない状態になるおそれを有する。
そうすると、高温の溶融樹脂中に、完全に溶け切っていない樹脂(以下「未溶融分」ともいう)が分散する状態になる。
そうして、パーオキシジカーボネートは、この溶融樹脂の樹脂温の上昇に伴って盛んにラジカルを発生させることになるため溶融樹脂と未溶融分とが混在する状態においてラジカルを発生させる結果となる。
【0044】
このような形でラジカルを発生させると架橋反応を生じさせやすい状態にある溶融樹脂に対して過剰なラジカルの供給がなされるため溶融樹脂量に対して適正なラジカル発生量となっている場合に比べてラジカルの再結合等が生じやすくなる。
また、この時点で、溶融樹脂は架橋反応によって溶融張力の向上に有効な状態とされるが、その後、架橋がされなかった未溶融分によって架橋されたポリプロピレン系樹脂が希釈されることになる。
すなわち、ラジカルの発生ピークにおいて架橋反応できる状態にないポリプロピレン樹脂を存在させやすいこと、及び、そのことによって有機過酸化物の架橋効率が十分なものとならないことなどによって溶融張力の向上効果が十分に発揮されない可能性がある。
【0045】
一方で、上記のように平均粒子径が0.1mm以上2.0mm以下となる状態に調整した樹脂粒子を押出し機に供給することで、全体が均一な温度となりやすく、ラジカルの発生ピークにおいて架橋反応できる状態にない未溶融分が形成されるおそれを低減させうる。
【0046】
なお、ここでは詳述しないが、押出し機の温度設定や、押出し機内における平均滞留時間は、用いるスクリューのタイプや回転速度といった押出し条件は、適宜調整が可能であり、これらの条件を調整することによって得られるポリプロピレン系改質樹脂の溶融張力を、例えば、3cN以上(於230℃)となるように調整することができる。
このポリプロピレン系改質樹脂を、発泡成形品の原材料などに用いる際には、前記溶融張力は3cN以上とすることが好ましく5cN以上とすることが特に好ましい。
なお、上限値については特に限定されるものではないが、本実施形態に係るポリプロピレン系改質樹脂の溶融張力は、通常、30cN以下であり、20cN以下とすることが好ましい。
【0047】
このように本発明によれば、押出し機による溶融混練という簡便な手段によって、発泡成形品の形成に適した高溶融張力のポリプロピレン系改質樹脂を得ることができる。
【0048】
本実施形態において得られるポリプロピレン系改質樹脂は、優れた溶融張力を有することから発泡シートを初めとして、該発泡シートを二次成形して得られるトレーなどの容器、ビーズ発泡品といった各種の発泡成形品の形成材料として好適なものとなる。
本発明のポリプロピレン系改質樹脂を用いることで、例えば、発泡シートであれば、外観が美麗で高い発泡倍率を有するシートを容易に作製することができる。
【0049】
このような発泡シートを作製するための方法としては、上記ポリプロピレン系改質樹脂に発泡のための成分を混合して押出し機で押出し発泡する方法が挙げられる。
この発泡のための成分としては、例えば、ポリプロピレン系改質樹脂の軟化する温度域において気体状態となるガス成分や、該ガス成分によって気泡を形成させる際の核となる核剤や、これらの両方の機能を発揮する熱分解型発泡剤などが挙げられる。
【0050】
前記ガス成分としては、プロパン、ブタン、ペンタンなどの脂肪族炭化水素;1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(HCFC−142b)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)などのフロン系ガス成分;窒素、二酸化炭素、アルゴン、水などが挙げられる。
なお、これらのガス成分は単独で使用されても複数併用されてもよい。
【0051】
前記核剤としては、例えば、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズなどの無機化合物粒子、ポリテトラフルオロエチレン、などの有機化合物粒子などが挙げられる。
【0052】
さらに、加熱分解型の発泡剤としては、少なくとも樹脂粒子が軟化する温度域において熱分解を生じて基体を発生させる一般的な加熱分解型発泡剤を採用することができ、具体的には、アゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の混合物などが挙げられる。
【0053】
このような形成材料を用いて、発泡シートを作製するには、発泡シートの製造設備として一般的な押出し機を用いた押出し発泡を実施する方法が挙げられる。
例えば、タンデム押出し機の上流側の押出し機にベースポリマーとなるポリプロピレン系改質樹脂と加熱分解型の発泡剤とを導入し、この押出し機中で、例えば、前記ガス成分の溶解に有利な温度条件で前記ポリプロピレン系改質樹脂の溶融混練を行った後、この押出し機の途中箇所において、例えば、ブタンなどのガス成分を注入してさらに混練を行って、該ガス成分を含む樹脂組成物を下流側の押出し機で押出しに適した温度条件に調整してフラットダイやサーキュラーダイから押出し発泡させて発泡シートを作製する方法などを採用することができる。
【0054】
本実施形態に係るポリプロピレン系改質樹脂は、高い溶融張力を有することから発泡シートを高発泡倍率としつつも外観美麗なものとし得る。
なお、本発明は、ポリプロピレン系改質樹脂の用途を上記のような発泡シートに限定するものではなく、当該ポリプロピレン系改質樹脂は、ビーズ発泡成形品の形成材料として用いられる場合などにおいてもその特性が好適に発揮され得る。
また、本発明のポリプロピレン系改質樹脂は、発泡成形品にその用途が限定されるものでもない。
【実施例】
【0055】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
低フローのポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、ホモポリプロピレン樹脂、商品名「E111G」、MFR=0.5/10min)と高フローのポリプロピレン系樹脂(サンアロマー社製、ホモポリプロピレン樹脂、商品名「PL500A」、MFR=3.3/10min)を質量比率で30/70の割合で配合し、これらの樹脂粒子をリボンブレンダーにて攪拌混合した後、口径30mmの二軸押出機(L/D=47)に供給し、樹脂温度200℃、回転数100rpmにて二軸押出機中で溶融混錬させ、先端に取り付けた口径4mm、ランド5mm、孔数2個のダイスから10kg/hの吐出量でストランド状に押し出した。
次いで、このストランド状の混合樹脂を30℃の水を収容した長さ2mの冷却水槽中を通過させて冷却しペレタイザーでカットして混合樹脂からなる樹脂粒子を作製した。
なお、この樹脂粒子の平均粒子径は0.7mmであった。
【0057】
次いで、この平均粒子径0.7mmのポリプロピレン系樹脂粒子100質量部に対して、ジセチルパーオキシジカーボネートが1.5質量部となる割合で該ジセチルパーオキシジカーボネートと前記樹脂粒子とをリボンブレンダーにて攪拌混合したものを口径が30mmの二軸押出機(L/D=47)に供給し、樹脂温度200℃、回転数150rpmにて二軸押出機中で溶融混錬させ、先端に取り付けた口径4mm、ランド5mm、孔数2個のダイスから5kg/hの吐出量でストランド状にポリプロピレン系改質樹脂を押し出した。
このストランド状のポリプロピレン系改質樹脂についても30℃の水を収容した長さ2mの冷却水槽中を通過させて冷却しペレタイザーでカットしてポリプロピレン系改質樹脂からなるペレットを得た。
このペレットを用いて、溶融張力を測定した結果を、表1に示す。
なお、溶融張力の測定は、下記のようにして実施した。
【0058】
(溶融張力の測定)
チアスト社製ツインボアキャピラリーレオメーター(Rheologic5000T)の垂直方向に配された内径15mmのシリンダー内に試料となるポリプロピレン系改質樹脂を収容させて、230℃の温度で5分間加熱して溶融させた後に、シリンダーの上部からピストンを挿入して、該ピストンで押出速度が0.0773/sの一定速度となるようにしてシリンダーの下端に設けたキャピラリー(ダイ径:2.095mm、ダイ長さ:8mm、流入角度:90度(コニカル))から溶融樹脂を紐状に押し出させた後、巻き取りロールを用いて巻き取らせた。
このときの巻き取り始めの初速を4mm/sとし、その後の加速を12mm/s2として徐々に巻き取り速度を速め、張力検出プーリーによって観察される張力が急激に低下した時の巻き取り速度を破断点速度とし、この破断点速度が観察されるまでの最大張力を溶融張力として測定した。
【0059】
(実施例2)
高フローのポリプロピレン系樹脂をサンアロマー社製の商品名「PL500A」に代えてサンアロマー社製の商品名「PM600A」(ホモポリプロピレン樹脂、MFR=7.5g/10分)としたこと、ジセチルパーオキシジカーボネートの配合量を1.5質量部に代えて2.0質量部としたこと以外は実施例1と同様にポリプロピレン系改質樹脂を作製し、得られたポリプロピレン系改質樹脂の溶融張力の測定を行った。結果を、表1に示す。
【0060】
(実施例3)
高フローのポリプロピレン系樹脂をサンアロマー社製の商品名「PL500A」に代えてサンアロマー社製の商品名「PM600A」に変更するとともに低フローのポリプロピレン系樹脂(商品名「E111G」)と高フローのポリプロピレン系樹脂(商品名「PM600A」)との質量比率を50/50としたこと以外は実施例1と同様にポリプロピレン系改質樹脂を作製し、得られたポリプロピレン系改質樹脂の溶融張力の測定を行った。
結果を、表1に示す。
【0061】
(実施例4)
高フローのポリプロピレン系樹脂をサンアロマー社の商品名「PM600A」(MFR=7.5/10min)に代えて、同じくサンアロマー社の商品名「PM802A」(ホモポリプロピレン、MFR=20/10min)としたこと、ジセチルパーオキシジカーボネートの配合量を1.5質量部に代えて2.0質量部としたこと以外は実施例3と同様にポリプロピレン系改質樹脂を作製し、得られたポリプロピレン系改質樹脂の溶融張力の測定を行った。結果を、表1に示す。
【0062】
(比較例1〜4)
低フローのポリプロピレン系樹脂と高フローのポリプロピレン系樹脂とを予め混合することなく直接ジセチルパーオキシジカーボネートとともに二軸押出し機で溶融混練したこと以外は実施例1〜4とそれぞれ同様にポリプロピレン系改質樹脂を作製し、得られたポリプロピレン系改質樹脂の溶融張力の測定を行った。
なお、低フローのポリプロピレン系樹脂と高フローのポリプロピレン系樹脂とは、それぞれ平均粒子径が実施例1〜4と同じ0.7mmとなるように粒度調整を行った上で二軸押出し機に供給した。
得られたポリプロピレン系改質樹脂の溶融張力の測定結果を、表1に示す。
【0063】
(実施例5)
ジセチルパーオキシジカーボネートに代えてジミリスチルパーオキシジカーボネートを用いたこと以外は実施例3と同様にポリプロピレン系改質樹脂を作製し、得られたポリプロピレン系改質樹脂の溶融張力の測定を行った。結果を、表1に示す。
【0064】
(実施例6、7)
低フローPP(商品名「E111G」)と高フローPP(商品名「PM600A」)との混合樹脂による樹脂粒子の大きさを変更し、平均粒子径がそれぞれ1.1mm、1.5mmとなるようにしたこと以外は実施例3と同様にポリプロピレン系改質樹脂を作製し、得られたポリプロピレン系改質樹脂の溶融張力の測定を行った。結果を、表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
この表からもわかるように有機過酸化物の使用量が同じであっても本発明の製造方法を採用することで高い溶融張力のポリプロピレン系改質樹脂が得られることがわかる。
【0067】
(実施例8、比較例5)
混合樹脂による樹脂粒子の平均粒子径を0.7mmに代えて2.4mmにするとともにジセチルパーオキシジカーボネートの量を2.0質量部から1.5質量部へと減量したこと以外は実施例2と同様にして実施例8のポリプロピレン系改質樹脂を作製した。
また、低フローのポリプロピレン系樹脂と高フローのポリプロピレン系樹脂とを予め混合することなく直接ジセチルパーオキシジカーボネートとともに二軸押出し機で溶融混練したこと以外は実施例8と同様に比較例5のポリプロピレン系改質樹脂を作製した。
これらのポリプロピレン系改質樹脂の溶融張力をこれまでの実施例と同様に測定した結果を、表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
なお、この実施例8は、ジセチルパーオキシジカーボネートの量が実施例2よりも少なく、実施例7とは樹脂種が異なるために、単純比較はできないものの平均粒子径が2.0mmを超える2.4mmとなっているため溶融張力の値が他の実施例に比べて低下していると認められる。
このことからも、樹脂粒子の平均粒子径が0.1mm以上2.0mm以下とすることで溶融張力に対してより優れた効果が発揮されることがわかる。
【0070】
(比較例6、7)
ジセチルパーオキシジカーボネートの量を0.2質量部としたこと以外は、実施例2と同様に比較例6のポリプロピレン系改質樹脂を作製した。
また、ジセチルパーオキシジカーボネートに代えてジクミルパーオキサイド(0.3質量部)を用いたこと以外は、実施例2と同様に比較例7のポリプロピレン系改質樹脂を作製した。
これらのポリプロピレン系改質樹脂の溶融張力をこれまでの実施例と同様に測定した結果を、表3に示す。
なお、比較例7のポリプロピレン系改質樹脂は、溶融張力が低過ぎて測定不能であった。
【0071】
【表3】

【0072】
この表3からも、有機過酸化物としてパーオキシジカーボネートを採用することが重要であること、ならびに、その配合量がポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.3質量部以上であることが重要であることが確認できる。
【0073】
(発泡シート製造事例)
口径が50mmの第一押出し機の先端に口径が65mmの第二押出し機を接続してなるタンデム型押出し機を用いて発泡押出しを実施し発泡シートを作製した。
発泡シートの作製には、実施例2のポリプロピレン系改質樹脂100質量部に対して0.2質量部となる重曹−クエン酸系発泡剤(大日精化社製マスターバッチ、商品名「ファインセルマスターPO410K」)を含むポリマー組成物を用いた。
該ポリマー組成物を、第一押出し機に供給して溶融混錬し、ポリプロピレン系改質樹脂100質量部に対する割合が1.5質量部となるように第一押出し機の途中からガス成分であるブタン(イソブタン/ノルマルブタン=35/65質量%)を圧入し、混練した。
この溶融状態のポリマー組成物とガス成分とを均一に混合、混練した上で第二押出し機に連続的に供給して溶融混練を継続しつつ発泡に適した樹脂温度に冷却した後、第二押出し機の先端に取り付けたサーキュラーダイ(口径φ70mm、ダイスリット間隔0.3mm(樹脂出口部の断面積:0.660cm2)から吐出量20kg/h(吐出速度:V=30kg/(cm2・h))で発泡押出し、得られた筒状の発泡体を冷却されているマンドレル上に添わせるとともに、その外面をエアリングからのエアーの吹き付けによって冷却し、マンドレル上の一点で、カッターにより円筒状の発泡体を切開して発泡シートを作製した。
得られた発泡シートの発泡倍率は、2.3倍で外観美麗なものであった。
【0074】
また、実施例3のポリプロピレン系改質樹脂を用いて同様に発泡シートを作製したところ発泡倍率が2.5倍で外観美麗なものが得られた。
一方で、これらのポリプロピレン系改質樹脂に代えてサンアロマー社製、ホモポリプロピレン樹脂、商品名「PL500A」を用いて同様に発泡シートを作製したところ外観美麗な発泡シートが得られたものの発泡倍率が1.8倍と低い状態であった。
さらに、日本ポリプロ社製の高溶融張力ポリプロピレン系樹脂、商品名「ニューフォーマーFB3312」を用いたところ、3.0倍もの高い発泡倍率が観測されたものの、押出し方向に沿って縞状の模様が見られ外観美麗な発泡シートが得られなかった。
このことからも本発明のポリプロピレン系改質樹脂が発泡成形品の形成材料として適していることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトマスフローレイトが異なる複数のポリプロピレン系樹脂とパーオキシジカーボネートとを、ポリプロピレン系樹脂の合計量100質量部に対するパーオキシジカーボネートの割合が0.3質量部以上3.0質量部以下となるように押出し機に供給し、該押し出し機で溶融混練して前記ポリプロピレン系樹脂が前記パーオキシジカーボネートで架橋されてなるポリプロピレン系改質樹脂を製造するポリプロピレン系改質樹脂の製造方法であって、
前記複数のポリプロピレン系樹脂の内の一つのポリプロピレン系樹脂のメルトマスフローレイトが0.2g/10min以上3.0g/10min以下であり、他のポリプロピレン系樹脂が3.0g/10minを超えるメルトマスフローレイトを有しており、これらのポリプロピレン系樹脂が混合された混合樹脂で前記溶融混練前に樹脂粒子を作製し、該樹脂粒子と前記パーオキシジカーボネートとを前記溶融混練して前記架橋を実施することを特徴とするポリプロピレン系改質樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記複数のポリプロピレン系樹脂の内の0.2g/10min以上3.0g/10min以下のメルトマスフローレイトを有するポリプロピレン系樹脂の割合が10質量%以上90質量%以下であり、残部が3.0g/10minを超えるメルトマスフローレイトを有するポリプロピレン系樹脂である請求項1記載のポリプロピレン系改質樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂粒子の平均粒子径が0.1mm以上2.0mm以下である請求項1又は2記載のポリプロピレン系改質樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記パーオキシジカーボネートが、ジセチルパーオキシジカーボネートである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリプロピレン系改質樹脂の製造方法。
【請求項5】
メルトマスフローレイトが異なる複数のポリプロピレン系樹脂とパーオキシジカーボネートとが、ポリプロピレン系樹脂の合計量100質量部に対するパーオキシジカーボネートの割合が0.3質量部以上3.0質量部以下となるように押出し機に供給され、該押出し機で溶融混練されることによって前記ポリプロピレン系樹脂が前記パーオキシジカーボネートで架橋されてなるポリプロピレン系改質樹脂であって、
前記複数のポリプロピレン系樹脂の内の一つのポリプロピレン系樹脂のメルトマスフローレイトが0.2g/10min以上3.0g/10min以下であり、他のポリプロピレン系樹脂が3.0g/10minを超えるメルトマスフローレイトを有しており、これらのポリプロピレン系樹脂が混合された混合樹脂で前記溶融混練前に樹脂粒子が作製され、該樹脂粒子と前記パーオキシジカーボネートとが前記溶融混練されて前記架橋がされていることを特徴とするポリプロピレン系改質樹脂。
【請求項6】
請求項5記載のポリプロピレン系改質樹脂を発泡させて発泡成形品を作製することを特徴とする発泡成形品の製造方法。

【公開番号】特開2011−201956(P2011−201956A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68351(P2010−68351)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】