説明

ポリプロピレン系樹脂組成物

【課題】ポリアミド系樹脂を多量で含有していても耐衝撃性、剛性および耐熱性に優れたポリプロピレン系樹脂組成物および前記ポリプロピレン系樹脂組成物からなる自動車用材料を提供すること。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂とガラス転位温度が80℃以上であるポリアミド系樹脂とを混合してなり、ポリプロピレン系樹脂とポリアミド系樹脂との重量比(ポリプロピレン系樹脂/ポリアミド系樹脂)が10/90〜99/1であり、さらにポリプロピレン系樹脂とポリアミド系樹脂との合計量100重量部あたりカルボキシル基または酸無水物基を含有する不飽和化合物、水酸基含有不飽和化合物およびエポキシ基含有不飽和化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の不飽和化合物0.01〜20重量部およびラジカル発生剤0.01〜5重量部を配合してなるポリプロピレン系樹脂組成物および該ポリプロピレン系樹脂組成物からなる自動車用材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、例えば、自動車用部品などに好適に使用することができるポリプロピレン系樹脂組成物、該ポリプロピレン系樹脂組成物からなる自動車用材料に関する。自動車用材料としては、例えば、インストルメントパネル、シート、ドアトリムなどの自動車用内装材、フード、フェンダー、ボディなどの自動車用外装材、エンジン周りの部品などが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは、機械的強度、熱的性質、化学的性質、電気的性質などに優れていることから、自動車用部品、電気・電子関係部品、工業用部品などに用いられている。ポリアミドの耐衝撃性を改善したものとして、ポリアミドと芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体とからなる樹脂と、ガラス繊維とを含有するポリアミド樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このポリアミド樹脂組成物は、確かに耐衝撃性が改善されているが、機械的強度、剛性および耐熱性に劣るという欠点がある。
【0003】
また、自動車用部品への塗膜の付着性を向上させる観点から、ポリアミド9Tなどのポリアミドとカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂とからなる樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この樹脂組成物には、耐衝撃性などの機械的性質を向上させるためにポリアミドの含有量を増加させるとポリアミドが均一に分散しがたくなることから機械的強度が却って低下し、ポリアミドの分散性を向上させるためにポリアミドの含有量を低減させると機械的強度が必然的に低下するという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−238360号公報
【特許文献2】特開2008−106166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、ポリアミド系樹脂を多量で含有している場合であっても、耐衝撃性、剛性および耐熱性に優れたポリプロピレン系樹脂組成物およびその製造方法、ならびに前記ポリプロピレン系樹脂組成物からなる自動車用材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1)ポリプロピレン系樹脂とガラス転位温度が80℃以上であるポリアミド系樹脂とを混合してなり、ポリプロピレン系樹脂とポリアミド系樹脂との重量比(ポリプロピレン系樹脂/ポリアミド系樹脂)が10/90〜99/1であり、さらにポリプロピレン系樹脂とポリアミド系樹脂との合計量100重量部あたり、カルボキシル基または酸無水物基を含有する不飽和化合物、水酸基含有不飽和化合物およびエポキシ基含有不飽和化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の不飽和化合物0.01〜20重量部およびラジカル発生剤0.01〜5重量部を配合したことを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物、
(2)ポリアミド系樹脂の融点が300℃以下である前記(1)に記載のポリプロピレン系樹脂組成物、
(3)ポリアミド系樹脂が、ポリアミド9T、ポリアミド6Tまたはポリアミド46である前記(1)または(2)に記載のポリプロピレン系樹脂組成物、
(4)不飽和化合物がカルボキシル基または酸無水物基を含有する不飽和化合物である前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物、
(5)カルボキシル基または酸無水物基を含有する不飽和化合物がマレイン酸または無水マレイン酸である前記(4)に記載のポリプロピレン系樹脂組成物、
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる自動車用材料、ならびに
(7)カルボキシル基または酸無水物基を含有する不飽和化合物、水酸基含有不飽和化合物およびエポキシ基含有不飽和化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の不飽和化合物およびラジカル発生剤の存在下で、ポリプロピレン系樹脂とガラス転位温度が80℃以上であるポリアミド系樹脂とをポリプロピレン系樹脂とポリアミド系樹脂との重量比(ポリプロピレン系樹脂/ポリアミド系樹脂)が10/90〜99/1となるように混合し、ポリプロピレン系樹脂とポリアミド系樹脂との合計量100重量部あたりの不飽和化合物の量を0.01〜20重量部に調整し、ラジカル発生剤の量を0.01〜5重量部に調整することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリアミド系樹脂を多量で含有している場合であっても、耐衝撃性、剛性および耐熱性に優れている。本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法によれば、ポリアミド系樹脂を多量で含有している場合であっても、耐衝撃性、剛性および耐熱性に優れたポリプロピレン系樹脂組成物が得られる。本発明の自動車用材料は、前記ポリプロピレン系樹脂組成物からなるので、ポリアミド系樹脂を多量で含有している場合であっても、耐衝撃性、剛性および耐熱性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例5で得られたポリプロピレン系樹脂組成物における9Tナイロンの含有率と貯蔵弾性率との関係を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例1で得られたポリプロピレン系樹脂組成物からなるシートの破断面の光学顕微鏡写真である。
【図3】比較例1で得られたポリプロピレン系樹脂組成物からなるシートの破断面の光学顕微鏡写真である。
【図4】本発明の実施例25および実施例26ならびに比較例7で得られたシートの変位の経時変化を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例27および実施例28で得られたポリプロピレン系樹脂組成物の圧縮歪の温度変化を示すグラフである。
【図6】参考例で用いた9Tナイロンの貯蔵弾性率およびtanδの温度変化を示すグラフある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂とガラス転位温度が80℃以上であるポリアミド系樹脂とを混合したものであり、ポリプロピレン系樹脂とポリアミド系樹脂との重量比(ポリプロピレン系樹脂/ポリアミド系樹脂)が10/90〜99/1であり、さらにポリプロピレン系樹脂とポリアミド系樹脂との合計量100重量部あたり、カルボキシル基または酸無水物基を含有する不飽和化合物、水酸基含有不飽和化合物およびエポキシ基含有不飽和化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の不飽和化合物0.01〜20重量部およびラジカル発生剤0.01〜5重量部を配合したことを特徴とする。
【0010】
本明細書にいうポリプロピレン系樹脂とは、その樹脂中に構成成分としてプロピレンが用いられている樹脂を意味する。
【0011】
ポリプロピレン系樹脂のなかでは、構成成分としてプロピレンを主成分とするポリプロピレン系樹脂が好ましく、構成成分としてプロピレンを50重量%以上含有するポリプロピレン系樹脂がより好ましい。
【0012】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、1−ブテン−プロピレン共重合体、1−ペンテン−プロピレン共重合体、1−ヘキセン−プロピレン共重合体、1−ヘプテン−プロピレン共重合体、1−オクテン−プロピレン共重合体、4−メチル−1−ペンテン−プロピレン共重合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、耐衝撃性の観点から、エチレン−プロピレン共重合体およびポリプロピレンが好ましく、エチレン−プロピレンブロック共重合体およびポリプロピレンがより好ましい。
【0013】
ポリアミド系樹脂として、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の耐熱性を高める観点から、ガラス転移点が80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上であるポリアミド系樹脂が用いられる。なお、本明細書にいうガラス転移点とは、動的粘弾性測定装置(DMA)で測定したときの動的損失弾性率E”と動的貯蔵弾性率E’との比(動的損失弾性率E”/動的貯蔵弾性率E’)の値(以下、tanδという)におけるピーク温度を意味する。
【0014】
ポリアミド系樹脂の融点は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の耐熱性を高める観点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、さらに好ましくは270℃以下である。
【0015】
好適なポリアミド系樹脂としては、耐熱性、寸法安定性および低吸水性の観点から、例えば、1,9−ノナンジアミンとテレフタル酸との縮重合体(ポリアミド9T)、ポリアミド6T、ポリアミド46などが挙げられる。ポリアミド系樹脂は、商業的に容易に入手することができる。例えば、ポリアミド9Tは、(株)クラレ製、商品名:ジェネスタ(登録商標)などとして商業的に容易に入手することができる。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂とポリアミド系樹脂との重量比(ポリプロピレン系樹脂/ポリアミド系樹脂)は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の流動性および生産性を高める観点から、10/90以上、好ましくは20/80以上、より好ましくは30/70以上、さらに好ましくは40/60以上であり、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の耐熱性および寸法安定性を高める観点から、99/1以下、好ましくは95/5以下、より好ましくは93/7以下である。
【0017】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、カルボキシル基または酸無水物基を含有する不飽和化合物、水酸基含有不飽和化合物およびエポキシ基含有不飽和化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の不飽和化合物が配合される。
【0018】
本発明においては、前記不飽和化合物が用いられている点に、1つの特徴がある。前記不飽和化合物は、後述するラジカル発生剤とポリプロピレン系樹脂との反応によって生成するポリプロピレンラジカルに付加し、ポリプロピレン系樹脂の主鎖に化学的に結合するものと考えられる。ポリプロピレン系樹脂の主鎖に結合した前記不飽和化合物が有するカルボキシル基、酸無水物基、水酸基またはエポキシ基は、ポリアミド系樹脂が有するアミノ基またはカルボキシル基と化学的に結合し、結果的にポリプロピレン系樹脂とポリアミド系樹脂とが前記不飽和化合物を介して化学的に結合すると考えられる。このことから、ポリプロピレン系樹脂とポリアミド系樹脂とは、前記不飽和化合物を介して優れた親和性を有することから、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物におけるポリアミド系樹脂の量が多くなったとしても相分離構造が生じ難くなり、ポリアミド系樹脂が本発明のポリプロピレン系樹脂組成物中で均一に分散するので、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、耐衝撃性、剛性および耐熱性に優れるものと考えられる。
【0019】
不飽和化合物として、前記したように、カルボキシル基または酸無水物基を含有する不飽和化合物、水酸基含有不飽和化合物およびエポキシ基含有不飽和化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種が用いられる。これらのなかでは、ポリプロピレン系樹脂とポリアミド系樹脂との親和性を高める観点から、カルボキシル基または酸無水物基を含有する不飽和化合物が好ましい。
【0020】
カルボキシル基または酸無水物基を含有する不飽和化合物としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ソルビン酸、アクリル酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシル基または酸無水物基を含有する不飽和化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
水酸基含有不飽和化合物としては、例えば、クロトンアルコール、メチルビニルカルビノール、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブテン、2−ブテン−1,4−ジオールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水酸基含有不飽和化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
エポキシ基含有不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエポキシ基含有不飽和化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
前記不飽和化合物のなかでは、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の生産性の観点から、マレイン酸および無水マレイン酸が好ましい。
【0024】
前記不飽和化合物の量は、ポリプロピレン系樹脂とポリアミド系樹脂との合計量100重量部あたり、ポリプロピレン系樹脂とポリアミド系樹脂との親和性を高める観点から、0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、さらに好ましくは0.3重量部以上であり、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の粘度が低下するのを抑制する観点から、20重量部以下、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。
【0025】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、ラジカル発生剤が用いられる。ラジカル発生剤としては、例えば、ケトンオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのラジカル発生剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
ラジカル発生剤の具体例としては、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジtert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ヘキシルパーオキシ)ヘキサン、ジ(2−tert−ブチルパーオキシイソプロピルヘキシル)ベンゼン、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジtert−ヘキシルパーオキサイド、ジtert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、アセチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのラジカル発生剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
ラジカル発生剤の量は、ポリプロピレン系樹脂とポリアミド系樹脂との合計量100重量部あたり、ポリプロピレン系樹脂との反応によって効率よくポリプロピレンラジカルを生成させた後、前記不飽和化合物との反応を促進させる観点から、0.01重量部以上、好ましくは0.05重量部以上であり、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の生産性を高める観点から、5重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。
【0028】
なお、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、機械的強度を高める観点から、例えば、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維、グラファイト繊維など無機繊維、アラミド繊維などの有機繊維、マイカ粉末、タルク、セラミックス粉末などの粉粒体などの補強材を含有させることが好ましい。これらの補強材は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
前記補強材のなかでは、耐熱性の観点から、無機繊維が好ましい。無機繊維の繊維長は、特に限定されないが、通常、曲げ強度や疲労強度などの機械的強度を高める観点から、100μm以上であることが好ましく、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物が用いられた成形体の外観を良好にする観点から1000μm以下であることが好ましい。また、無機繊維の繊維径は、特に限定されないが、通常、無機繊維が折れないようにする観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物における無機繊維の分散性を高める観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。
【0030】
無機繊維の表面には、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物との親和性を高める観点から、カップリング剤を付着させることが好ましい。カップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤、γ−アミノプロピルトリメトキシシランカップリング剤、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランカップリング剤などのシランカップリング剤などが挙げられる。無機繊維の表面に付着されるカップリング剤の量は、無機繊維の種類、繊維径、繊維長などによって異なるので一概には決定することができないことから、これらを考慮して無機繊維の表面にカップリング剤が均一に付着するように調整することが好ましい。
【0031】
補強材の量は、その種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の機械的強度および可撓性を高める観点から、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物100重量部あたり、好ましくは3〜30重量部、より好ましくは5〜25重量部である。
【0032】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲内で、軟化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤などの耐候性向上剤、帯電防止剤、老化防止剤、難燃剤、加工助剤、着色剤などを含有させてもよい。
【0033】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、不飽和化合物および必要により他の成分を混合することによって調製することができる。これらの成分を混合する際には、各成分を均一に分散させるために、必要により、加熱してもよい。
【0034】
本発明においては、ポリアミド系樹脂を高含有量で含有する樹脂組成物をあらかじめ調製しておき、この樹脂組成物をいわゆるマスターバッチとして用い、成形時に他の成分と混合することにより、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を調製してもよい。このようにマスターバッチを用いた場合には、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を用いて効率よく所望形状を有する成形体を製造することができるので、生産性を向上させることができる。
【0035】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(温度:210℃、負荷:21.06N)は、耐衝撃性、剛性および耐熱性を高める観点から、50g/10min以下であること好ましい。メルトフローレートは、ポリプロピレン系樹脂の粘度、不飽和化合物およびラジカル発生剤の量、補強材の量などを調整することによって容易に制御することができる。一般に、メルトフローレートと機械的強度とは相対的に相反する関係にあり、例えば、メルトフローレートが大きくなると機械的強度が低下する。メルトフローレートが50g/10minを超えると、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を用いて成形された成形体の機械的強度が低下する。
【0036】
以上のようにしてポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、不飽和化合物および必要により他の成分を混合することにより、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物が得られる。本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリアミド系樹脂を多量で含有している場合であっても、耐衝撃性、剛性および耐熱性に優れている。
【0037】
前記耐衝撃性は、例えば、アイゾット衝撃試験、シャルピー衝撃試験、落球(錘)衝撃試験などによって評価することができる。
【0038】
前記剛性は、材料自体が有する弾性率とその形状によって決定される。形状は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を用いて成形された成形体の形状によって異なる。弾性率は、動的粘弾性による貯蔵弾性率で評価することができる。したがって、前記剛性は、評価対象の試料の形状を一定にしておき、動的粘弾性による貯蔵弾性率で評価することができる。本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の100℃における動的粘弾性による貯蔵弾性率は、高温下での機械的強度および剛性を高める観点から、950MPa以上であることが好ましい。動的粘弾性による貯蔵弾性率は、ポリアミド系樹脂の量、不飽和化合物の量、ラジカル発生剤の量などを調整することによって容易に制御することができる。
【0039】
前記耐熱性は、熱変形温度、ビカット軟化点などによって評価することができる。長期間にわたる耐熱性を評価する場合には、クリープ試験によって耐熱性を評価することができる。
【0040】
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の熱機械分析を行なったとき、100℃での歪率は、高温下での機械的強度および剛性を高める観点から、5%以下であることが好ましい。前記歪率は、ポリアミド系樹脂の量、不飽和化合物の量、ラジカル発生剤の量などを調整することによって容易に制御することができ、熱機械分析装置によって測定することができる。
【0041】
以上のようにして得られた本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、耐衝撃性、剛性および耐熱性に優れているので、例えば、インストルメントパネル、シート、ドアトリムなどの自動車用内装材、フード、フェンダー、ボディなどの自動車用外装材、エンジン周りの部品などの自動車用部品、電気・電子関係部品、工業用部品などに好適に使用することができる。
【実施例】
【0042】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0043】
実施例1
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕50重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕50重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸0.25重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.125重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0044】
二軸押出機〔(株)テクノベル製、品番:KZW15TW-45HG、スクリュー径:15mm、長さ(L)とスクリュー径(D)との比(L/D):45、同方向回転〕を用い、この二軸押出機のC1におけるバレル温度を100℃に、C2におけるバレル温度を280℃に、C3におけるバレル温度を280℃に、C4におけるバレル温度を280℃に、C5におけるバレル温度を210℃に、C6におけるバレル温度を200℃に、Dにおけるバレル温度を80℃に調整した。
【0045】
前記で得られた混合物をこの二軸押出機のホッパーに投入し、主軸回転数200rpmで運転し、吐出したストランドを冷却水槽に導き、ペレタイザーでカットし、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。
【0046】
得られたペレットを雰囲気温度が120℃の乾燥機〔エスペック(株)製、品番:PR−2KPH〕内で3時間乾燥させた後、200℃に加熱された卓上プレス機〔テクノサプライ(株)製、小型プレスG−12型〕で溶融プレスし、水冷板に挟み込んだ後、冷却することにより、フイルムを得た。得られたフイルムの厚さは、約300μmであった。
【0047】
得られたフイルムの貯蔵弾性率を動的粘弾性測定装置〔ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製、品番:DMA2980〕を用いて1Hzの周波数で室温から150℃までの温度範囲で測定した。その結果を表1に示す。
【0048】
実施例2
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕80重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕20重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸0.25重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.125重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0049】
得られた混合物を用いて実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットおよび厚さが約300μmのフイルムを調製し、得られたフイルムの貯蔵弾性率を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【0050】
実施例3
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕90重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕10重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸0.25重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.125重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0051】
得られた混合物を用いて実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットおよび厚さが約300μmのフイルムを調製し、得られたフイルムの貯蔵弾性率を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【0052】
実施例4
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕95重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕5重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸0.25重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.125重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0053】
得られた混合物を用いて実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットおよび厚さが約300μmのフイルムを調製し、得られたフイルムの貯蔵弾性率を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【0054】
比較例1
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕50重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕50重量部を、無水マレイン酸およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)を用いずに混合し、得られた混合物を用いて実施例1と同様にして二軸押出機のホッパーに投入し、主軸回転数200rpmで運転し、ストランドを吐出させようとしたところ、ストランドを吐出させる際に1〜2.3MPaの大きな吐出圧力を要し、異常流動が生じたため、それ以降の操作を中止した。
【0055】
上記の結果から、無水マレイン酸およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)を用いずにポリプロピレン系樹脂組成物を調製した場合、二軸押出機を用いてストランドを製造することが困難であることがわかる。
【0056】
比較例2
実施例2において、過酸化物および無水マレイン酸を使用しなかったこと以外は、実施例2と同様にして二軸押出機のホッパーに投入し、主軸回転数200rpmで運転し、ストランドを吐出させたところ、得られたストランドの表面がサメ肌であることから、ポリプロピレンと9Tナイロンとが均一に分散していないことが確認されたため、それ以降の操作を中止した。
【0057】
比較例3
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕90重量部および6ナイロン〔宇部興産(株)製、商品名:UBE1013NW8、ガラス転移点:50℃〕10重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸0.25重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.125重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0058】
得られた混合物を用いて実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットおよび厚さが約300μmのフイルムを調製し、得られたフイルムの貯蔵弾性率を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【0059】
なお、以下の各表に記載の略号は、以下のことを意味する。
PP:ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕
9Tナイロン:(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD
DCP:ジクミルパーオキサイド
【0060】
【表1】

【0061】
表1に示された結果から、各実施例で得られたポリプロピレン系樹脂組成物は、いずれも、貯蔵弾性率が高いことから、剛性に優れていることがわかる。また、実施例3と比較例3との対比から、6ナイロンの代わりに9Tナイロンを用いた場合には(実施例3)、50℃での貯蔵弾性率が約43%向上していることから、耐熱性が求められる用途や荷重が加わりやすい用途、例えば、自動車用材料などに好適に使用することができることがわかる。
【0062】
実施例5
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕と9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕とを種々の割合に変更して混合し、これにポリプロピレンおよび9Tナイロンの合計量100重量部あたり無水マレイン酸0.25重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.125重量部を添加し、充分に混合することにより、混合物を得た。
【0063】
得られた混合物を用いて実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットおよび厚さが約300μmのフイルムを調製し、得られたフイルムの貯蔵弾性率を実施例1と同様にして測定した。その結果を図1に示す。
【0064】
図1は、ポリプロピレン系樹脂組成物における9Tナイロンの含有率と貯蔵弾性率との関係を示す。なお、横軸の「9Tナイロン比率」は、式:
〔9Tナイロン比率〕
=〔(9Tナイロンの量)÷(ポリプロピレンと9Tナイロンとの合計量)〕×100
で求められ、ポリプロピレンと9Tナイロンとの合計量に対する9Tナイロンの量の比率(重量%)を示す。
【0065】
図1中、Aは50℃におけるフイルムの貯蔵弾性率、Bは100℃におけるフイルムの貯蔵弾性率を示す。
【0066】
図1に示された結果から、50℃におけるフイルムの貯蔵弾性率Aおよび100℃におけるフイルムの貯蔵弾性率Bは、それぞれ、9Tナイロン比率が0質量%であるフイルムの貯蔵弾性率と9Tナイロン比率が100質量%であるフイルムの貯蔵弾性率とを結ぶ直線よりも上に凸であることから、ポリプロピレンと9Tナイロンとを併用することにより、両者併用による相乗効果によって貯蔵弾性率が向上することがわかる。
【0067】
実験例1
実施例1および比較例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを調製した。得られたペレットを雰囲気温度が120℃の乾燥機〔エスペック(株)製、品番:PR−2KPH〕内で3時間乾燥させた後、200℃に加熱された卓上プレス機〔テクノサプライ(株)製、小型プレスG−12型〕で溶融プレスし、水冷板に挟み込んだ後、冷却することにより、縦約40mm、横約40mm、厚さ約300μmのシートを得た。
【0068】
得られたシートを−50℃に冷却した後、衝撃を加えて破断し、破断面を光学顕微鏡〔(株)キーエンス製、商品名:デジタルマイクロスコープVHX−100F、倍率:150倍〕で観察した。
【0069】
実施例1におけるシートの破断面の光学顕微鏡写真を図2に、比較例1におけるシートの破断面の顕微鏡写真を図3に示す。
【0070】
図2および図3に示された結果から、実施例1では、無水マレイン酸およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)が用いられていることから、ポリプロピレン系樹脂に9Tナイロンが均一に微分散しているのに対し(図2)、比較例1では、無水マレイン酸およびラジカル発生剤が用いられていないため、ポリプロピレン系樹脂に9Tナイロンが均一に分散せずに粗粒子として存在していることがわかる(図3)。
【0071】
実施例6
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕50重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕50重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸0.125重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.0625重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0072】
得られた混合物を用いて実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットおよび厚さが約300μmのフイルムを調製し、得られたフイルムの貯蔵弾性率を実施例1と同様にして測定した。その結果を表2に示す。
【0073】
実施例7
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕50重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕50重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸0.25重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.125重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0074】
得られた混合物を用いて実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットおよび厚さが約300μmのフイルムを調製し、得られたフイルムの貯蔵弾性率を実施例1と同様にして測定した。その結果を表2に示す。
【0075】
実施例8
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕50重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕50重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸0.5重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.25重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0076】
得られた混合物を用いて実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットおよび厚さが約300μmのフイルムを調製し、得られたフイルムの貯蔵弾性率を実施例1と同様にして測定した。その結果を表2に示す。
【0077】
実施例9
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕50重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕50重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸1重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.5重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0078】
得られた混合物を用いて実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットおよび厚さが約300μmのフイルムを調製し、得られたフイルムの貯蔵弾性率を実施例1と同様にして測定した。その結果を表2に示す。
【0079】
実施例10
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕50重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕50重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸2重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)1重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0080】
得られた混合物を用いて実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットおよび厚さが約300μmのフイルムを調製し、得られたフイルムの貯蔵弾性率を実施例1と同様にして測定した。その結果を表2に示す。
【0081】
実施例11
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕50重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕50重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸4重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)2重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0082】
得られた混合物を用いて実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットおよび厚さが約300μmのフイルムを調製し、得られたフイルムの貯蔵弾性率を実施例1と同様にして測定した。その結果を表2に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
表2に示された結果から、各実施例で得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いた場合には、いずれも、貯蔵弾性率が高いことから、剛性に優れていることがわかる。
【0085】
また、無水マレイン酸の量が0.25重量部である場合(実施例7)、貯蔵弾性率が最も大きくなることがわかる。無水マレイン酸の量が4重量部である場合(実施例11)、貯蔵弾性率が低いが、実用上満足しうる剛性を有するものである。
【0086】
これに対して、比較例1で得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いた場合には、貯蔵弾性率が極端に低いため、剛性に劣ることがわかる。
【0087】
実施例12
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕90重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕10重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸0.25重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.125重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0088】
二軸押出機〔(株)テクノベル製、品番:KZW15TW-45HG、スクリュー径:15mm、長さ(L)とスクリュー径(D)との比(L/D):45、同方向回転〕を用い、この二軸押出機のC1におけるバレル温度を100℃に、C2におけるバレル温度を280℃に、C3におけるバレル温度を280℃に、C4におけるバレル温度を280℃に、C5におけるバレル温度を210℃に、C6におけるバレル温度を200℃に、Dにおけるバレル温度を80℃に調整した。
【0089】
この二軸押出機のホッパーに前記で得られた混合物を投入し、主軸回転数200rpmで運転し、吐出したストランドを冷却水槽に導き、ペレタイザーでカットし、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。
【0090】
得られたペレットのメルトフローレートをJIS K7210に準拠して、(株)東洋精機製作所の商品名:メルトフローインデクサーF−F01(温度:210℃、負荷:21.06N)を用いて測定した。その結果、前記ペレットのメルトフローレートは、36g/10minであった。
【0091】
実施例13
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕90重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕10重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸0.5重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.25重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0092】
二軸押出機〔(株)テクノベル製、品番:KZW15TW-45HG、スクリュー径:15mm、長さ(L)とスクリュー径(D)との比(L/D):45、同方向回転〕を用い、この二軸押出機のC1におけるバレル温度を100℃に、C2におけるバレル温度を280℃に、C3におけるバレル温度を280℃に、C4におけるバレル温度を280℃に、C5におけるバレル温度を210℃に、C6におけるバレル温度を200℃に、Dにおけるバレル温度を80℃に調整した。
【0093】
この二軸押出機のホッパーに前記で得られた混合物を投入し、主軸回転数200rpmで運転し、吐出したストランドを冷却水槽に導き、ペレタイザーでカットし、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。
【0094】
得られたペレットのメルトフローレートをJIS K7210に準拠して、(株)東洋精機製作所の商品名:メルトフローインデクサーF−F01(温度:210℃、負荷:21.06N)を用いて測定した。その結果、前記ペレットのメルトフローレートは、37g/10minであった。
【0095】
実施例12および実施例13の結果から、実施例12および実施例13で得られたポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートは、いずれも、50g/10min以下であることから、耐衝撃性、剛性および耐熱性を高めることができ、射出成形に適していることがわかる。
【0096】
実施例14
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕95重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕5重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸0.5重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.125重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0097】
得られた混合物を用いて実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットおよび厚さが約300μmのフイルムを調製し、得られたフイルムの貯蔵弾性率を実施例1と同様にして測定した。その結果を表3に示す。
【0098】
実施例15
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕95重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕5重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸0.5重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.25重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0099】
得られた混合物を用いて実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットおよび厚さが約300μmのフイルムを調製し、得られたフイルムの貯蔵弾性率を実施例1と同様にして測定した。その結果を表3に示す。
【0100】
【表3】

【0101】
表3に示された結果から、ポリプロピレン系樹脂組成物に使用されるジクミルパーオキサイドの量が多くなるにしたがって、貯蔵弾性率が低くなることがわかる。
【0102】
実施例16〜18
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕50重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕50重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸0.125重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.0625重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0103】
得られた混合物を用いて実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを調製し、乾燥機中で120℃の温度で3時間乾燥した。
【0104】
このペレット20重量部とポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕80重量部とをそれぞれ計量し、ブレンダーで30分間混合することにより、非強化ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。得られた非強化ポリプロピレン系樹脂組成物におけるポリプロピレンと9Tナイロンとの重量比(ポリプロピレン/9Tナイロン)は90/10であった。
【0105】
次に、射出成形機〔東芝機械(株)製、品番:ED650W〕にシート状成形体の成形用金型を取付け、型締め力650トンに調節した後、射出成形機のノズルヘッドの成形温度250℃、射出圧力170MPa、射出時間15秒間、冷却時間30秒間の成形条件で、前記で得られた非強化ポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形し、縦約400mm、横約400mm、厚さ約3mmのシートを得た。
【0106】
なお、成形用金型として、2種類の成形用金型を使用した。そのうちの1つは、成形されるシートの一辺にサイドゲートが形成されている成形用金型であり、もう1つは、シートの中央部にセンターゲートが形成されている成形用金型である。使用した成形用金型の種類を表4に示す。
【0107】
得られたシートの物性として、耐衝撃性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表4に示す。
【0108】
〔耐衝撃性の試験方法〕
恒温恒湿槽〔エスペック(株)製、商品名:プラチナルシファーRL−4SPH〕の内温を−30℃に設定し、前記で得られたシートを槽内に入れ、2時間静置した。
【0109】
次に、恒温恒湿槽内からシートを速やかに取り出し、その4隅をM5ネジで治具に固定し、表4に示す高さから質量6.8kgの球状の樹脂製の錘をシートの中央部に落下させた後、錘を落下させた部位におけるシートを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0110】
〔評価基準〕
◎:異状が認められず。
○:ほとんど異状が認められず。
△:錘の落下点付近の白化が認められる。
×:クラックの発生が認められる。
【0111】
実施例19〜21
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕50重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕50重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸0.125重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.0625重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0112】
得られた混合物を用いて実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを調製し、乾燥機中で120℃の温度で3時間乾燥した。
【0113】
このペレット17重量部とポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕33重量部とガラス繊維強化ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロE7000、ガラス繊維の含有率:30重量%〕50重量部をそれぞれ計量し、ブレンダーで30分間混合することにより、強化ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。得られた非強化ポリプロピレン系樹脂組成物におけるポリプロピレンと9Tナイロンとの重量比(ポリプロピレン/9Tナイロン)は90/10であった。
【0114】
次に、この強化ポリプロピレン系樹脂組成物を用いて、実施例16〜18と同様にしてシートを作製し、得られたシートの物性として、耐衝撃性を調べた。その結果を表4に示す。
【0115】
比較例4〜6
実施例16〜18において、これらの実施例で用いられた混合物の代わりに、ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕を用いたことを除き、実施例16〜18と同様にしてシートを作製し、得られたシートの物性として、耐衝撃性を調べた。その結果を表4に示す。
【0116】
【表4】

【0117】
表4に示された結果から、各実施例で得られたポリプロピレン系樹脂組成物は、いずれも、耐衝撃性に優れていることがわかる。特に、実施例19〜21でポリプロピレン系樹脂組成物は、充填剤が用いられているので、成形用金型のゲート位置に関係なく、耐衝撃性に優れていることがわかる。
【0118】
この耐衝撃性は、−10℃の低温での耐衝撃性である。−10℃という温度は、ポリプロピレンのガラス転移点とほぼ同一であるが、各実施例で得られたポリプロピレン系樹脂組成物は、いずれも、ポリプロピレン(比較例4〜6)よりも耐衝撃性が改善されていることがわかる。
【0119】
実施例22
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕50重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕50重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸0.125重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.0625重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0120】
得られた混合物を用いて実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを調製し、乾燥機中で120℃の温度で3時間乾燥した。
【0121】
このペレット20重量部とポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕80重量部とをそれぞれ計量し、ブレンダーで30分間混合することにより、非強化ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。得られた非強化ポリプロピレン系樹脂組成物におけるポリプロピレンと9Tナイロンとの重量比(ポリプロピレン/9Tナイロン)は90/10であった。
【0122】
次に、射出成形機〔東芝機械(株)製、品番:ED650W〕にシャルピー衝撃試験片用金型を取付け、成形用金型型締め力650トンに調節した後、射出成形機のノズルヘッドの成形温度250℃、射出圧力170MPa、射出時間15秒間、冷却時間30秒間の成形条件で、前記で得られた非強化ポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形し、ノッチ付きシャルピー衝撃試験片を得た。
【0123】
得られたノッチ付きシャルピー試験片の25℃または−30℃での耐衝撃性を、衝撃試験機〔(株)安田精機製作所製、低温槽付き衝撃試験機、品番:No.258−L−PC〕を用いて調べた。その結果を表5に示す。
【0124】
実施例23
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕50重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕50重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸0.125重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.0625重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0125】
得られた混合物を用いて実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを調製し、乾燥機中で120℃の温度で3時間乾燥した。
【0126】
このペレット17重量部とポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕33重量部とガラス繊維強化ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロE7000、ガラス繊維の含有率:30重量%〕50重量部をそれぞれ計量し、ブレンダーで30分間混合することにより、強化ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。得られた非強化ポリプロピレン系樹脂組成物におけるポリプロピレンと9Tナイロンとの重量比(ポリプロピレン/9Tナイロン)は90/10であった。
【0127】
次に、この強化ポリプロピレン系樹脂組成物を用いて、実施例22と同様にしてノッチ付きシャルピー試験片を作製し、その25℃または−30℃での耐衝撃性を調べた。その結果を表5に示す。
【0128】
実施例24
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕50重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕50重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸0.125重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.0625重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0129】
得られた混合物を用いて実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを調製し、乾燥機中で120℃の温度で3時間乾燥した。
【0130】
このペレット20重量部とポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕80重量部とをそれぞれ計量し、ブレンダーで30分間混合することにより、非強化ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。得られた非強化ポリプロピレン系樹脂組成物におけるポリプロピレンと9Tナイロンとの重量比(ポリプロピレン/9Tナイロン)は90/10であった。
【0131】
このペレットとポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕とを、ポリプロピレンと9Tナイロンとの重量比(ポリプロピレン/9Tナイロン)が90/10となるようにブレンダーで30分間混合することにより、非強化ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0132】
次に、この非強化ポリプロピレン系樹脂組成物を用いて、実施例22と同様にしてノッチ付きシャルピー試験片を作製し、その25℃または−30℃での耐衝撃性を調べた。その結果を表5に示す。
【0133】
【表5】

【0134】
表5に示された結果から、各実施例で得られたポリプロピレン系樹脂組成物は、いずれも、−30℃の低温であっても十分な耐衝撃性を有することがわかる。実施例22と実施例23とを対比して、充填剤を使用することにより(実施例23)、耐衝撃性が向上することがわかる。また、実施例22と実施例24とを対比して、9Tナイロンの量が多いほうが(実施例24)、耐衝撃性が向上することがわかる。
【0135】
実施例25
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕50重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕50重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸0.125重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.0625重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0136】
得られた混合物を用いて実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを調製し、乾燥機中で120℃の温度で3時間乾燥した。
【0137】
このペレット17重量部とポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕33重量部とガラス繊維強化ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロE7000、ガラス繊維の含有率:30重量%〕50重量部をそれぞれ計量し、ブレンダーで30分間混合することにより、強化ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。得られた非強化ポリプロピレン系樹脂組成物におけるポリプロピレンと9Tナイロンとの重量比(ポリプロピレン/9Tナイロン)は90/10であった。
【0138】
次に、射出成形機〔東芝機械(株)製、品番:ED650W〕にシート状成形体の成形用金型を取付け、型締め力650トンに調節した後、射出成形機のノズルヘッドの成形温度250℃、射出圧力170MPa、射出時間15秒間、冷却時間30秒間の成形条件で、前記で得られた強化ポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形し、縦約400mm、横約400mm、厚さ約3mmのシートを得た。
【0139】
得られたシートの4隅を治具で固定した後、このシートを槽内の温度が80℃に調整された恒温恒湿槽〔エスペック(株)製、商品名:プラチナルシファーRL−4SPH〕内に入れ、200mm×250mm×100mmの鉄製ブロックをシートの中央部に載せ、382Nの荷重をかけた。
【0140】
このシートの中央部に差動変圧器〔新光電機(株)製、商品名:ディスプレースメント・メーターLT2−060R〕のコアを取り付け、この差動変圧器をX−tペンレコーダーに接続し、上下方向におけるシートの変位の経時変化を調べた。その測定結果を図4のPに示す。
【0141】
実施例26
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕50重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕50重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸0.125重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.0625重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0142】
得られた混合物を用いて実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを調製し、乾燥機中で120℃の温度で3時間乾燥した。
【0143】
このペレット20重量部とポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕80重量部とをそれぞれ計量し、ブレンダーで30分間混合することにより、非強化ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。得られた非強化ポリプロピレン系樹脂組成物におけるポリプロピレンと9Tナイロンとの重量比(ポリプロピレン/9Tナイロン)は90/10であった。
【0144】
次に、射出成形機〔東芝機械(株)製、品番:ED650W〕にシート状成形体の成形用金型を取付け、型締め力650トンに調節した後、射出成形機のノズルヘッドの成形温度250℃、射出圧力170MPa、射出時間15秒間、冷却時間30秒間の成形条件で、前記で得られた強化ポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形し、縦約400mm、横約400mm、厚さ約3mmのシートを得た。
【0145】
得られたシートの4隅を治具で固定した後、このシートを槽内の温度が80℃に調整された恒温恒湿槽〔エスペック(株)製、商品名:プラチナルシファーRL−4SPH〕内に入れ、200mm×250mm×100mmの鉄製ブロックをシートの中央部に載せ、382Nの荷重をかけた。
【0146】
このシートの中央部に差動変圧器〔新光電機(株)製、商品名:ディスプレースメント・メーターLT2−060R〕のコアを取り付け、この差動変圧器をX−tペンレコーダーに接続し、上下方向におけるシートの変位の経時変化を調べた。その測定結果を図4のQに示す。
【0147】
比較例7
実施例25において、実施例25で得られた混合物の代わりに、ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕を用いたことを除き、実施例25と同様にしてシートを作製し、上下方向におけるシートの変位の経時変化を調べた。その測定結果を図4のRに示す。
【0148】
図4に示された結果から実施例25で得られたポリプロピレン系樹脂組成物は、補強材としてガラス繊維強化ポリプロピレンが使用されているので、曲線Pに示されるように、変異が約2.7mmと非常に小さく、永久変形量が非常に少ないことがわかる。また、実施例26で得られたポリプロピレン系樹脂組成物は、補強材としてガラス繊維強化ポリプロピレンが使用されていないが、曲線Qに示されるように、変異が約10mmと小さく、永久変形量が少ないことがわかる。
【0149】
これに対して、比較例7の結果から、ポリプロピレンは、曲線Rに示されるように、変異が約28mmと非常に大きく、永久変形量が多いことがわかる。
【0150】
以上のことから、実施例25および実施例26で得られたポリプロピレン系樹脂組成物は、いずれも、剛性に優れていることがわかる。
【0151】
実施例27
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕80重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕20重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸1重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.25重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0152】
二軸押出機〔(株)テクノベル製、品番:KZW15TW-45HG、スクリュー径:15mm、長さ(L)とスクリュー径(D)との比(L/D):45、同方向回転〕を用い、この二軸押出機のC1におけるバレル温度を100℃に、C2におけるバレル温度を280℃に、C3におけるバレル温度を280℃に、C4におけるバレル温度を280℃に、C5におけるバレル温度を210℃に、C6におけるバレル温度を200℃に、Dにおけるバレル温度を80℃に調整した。
【0153】
前記で得られた混合物をこの二軸押出機のホッパーに投入し、主軸回転数200rpmで運転し、吐出したストランドを冷却水槽に導き、ペレタイザーでカットし、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。
【0154】
得られたペレットを雰囲気温度が120℃の乾燥機〔エスペック(株)製、品番:PR−2KPH〕内で3時間乾燥させた後、200℃に加熱された卓上プレス機〔テクノサプライ(株)製、小型プレスG−12型〕で溶融プレスし、水冷板に挟み込んだ後、冷却することにより、フイルムを得た。得られたフイルムを裁断し、縦2mm、横2mm、厚さ約500μmの試料を作製した。
【0155】
熱機械測定装置〔理学電機工業(株)製、商品名:THERMO Pluss2システム〕を用い、常温から150℃までの温度範囲で10℃/minの昇温速度で0.49Nの荷重を印荷したときの試料の圧縮歪の温度変化を窒素雰囲気中で測定した。その結果を図5のSに示す。
【0156】
なお、図5において、縦軸のDt−Dt’/Doは、圧縮歪(単位なし)を示す。
【0157】
実施例28
ポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製、商品名:ポリプロ750HP〕90重量部および9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕10重量部をそれぞれ電子天秤〔(株)チョウ製、JL−200型〕で秤量した。これらの成分、無水マレイン酸1重量部およびラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.25重量部を充分に混合することにより、混合物を得た。
【0158】
二軸押出機〔(株)テクノベル製、品番:KZW15TW-45HG、スクリュー径:15mm、長さ(L)とスクリュー径(D)との比(L/D):45、同方向回転〕を用い、この二軸押出機のC1におけるバレル温度を100℃に、C2におけるバレル温度を280℃に、C3におけるバレル温度を280℃に、C4におけるバレル温度を280℃に、C5におけるバレル温度を210℃に、C6におけるバレル温度を200℃に、Dにおけるバレル温度を80℃に調整した。
【0159】
前記で得られた混合物をこの二軸押出機のホッパーに投入し、主軸回転数200rpmで運転し、吐出したストランドを冷却水槽に導き、ペレタイザーでカットし、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。
【0160】
得られたペレットを雰囲気温度が120℃の乾燥機〔エスペック(株)製、品番:PR−2KPH〕内で3時間乾燥させた後、200℃に加熱された卓上プレス機〔テクノサプライ(株)製、小型プレスG−12型〕で溶融プレスし、水冷板に挟み込んだ後、冷却することにより、フイルムを得た。得られたフイルムを裁断し、縦2mm、横2mm、厚さ約500μmの試料を作製した。
【0161】
熱機械測定装置〔理学電機工業(株)製、商品名:THERMO Pluss2システム〕を用い、常温から150℃までの温度範囲で10℃/minの昇温速度で0.49Nの荷重を印荷したときの試料の圧縮歪の温度変化を窒素雰囲気中で測定した。その結果を図5のTに示す。
【0162】
図5に示された結果から、実施例27および実施例28で得られたポリプロピレン系樹脂組成物は、いずれも、常温から高温までの温度領域において圧縮歪が小さいことから、剛性および耐熱性に優れていることがわかる。
【0163】
参考例
二軸押出機〔(株)テクノベル製、品番:KZW15TW-45HG、スクリュー径:15mm、長さ(L)とスクリュー径(D)との比(L/D):45、同方向回転〕を用い、この二軸押出機のC1におけるバレル温度を100℃に、C2におけるバレル温度を280℃に、C3におけるバレル温度を280℃に、C4におけるバレル温度を280℃に、C5におけるバレル温度を210℃に、C6におけるバレル温度を200℃に、Dにおけるバレル温度を80℃に調整した。
【0164】
9Tナイロン〔(株)クラレ製、商品名:9Tナイロン・ジェネスタ・シリーズD〕をこの二軸押出機のホッパーに投入し、主軸回転数200rpmで運転し、吐出したストランドを冷却水槽に導き、ペレタイザーでカットし、ペレットを得た。
【0165】
得られたペレットを雰囲気温度が120℃の乾燥機〔エスペック(株)製、品番:PR−2KPH〕内で3時間乾燥させた後、200℃に加熱された卓上プレス機〔テクノサプライ(株)製、小型プレスG−12型〕で溶融プレスし、水冷板に挟み込んだ後、冷却することにより、厚さ約300μmのシートを得た。
【0166】
動的粘弾性測定装置〔ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製、品番:DMA2980〕を用いて前記シートの貯蔵弾性率およびtanδ(動的損失弾性率E”/動的貯蔵弾性率E’の値)を1Hzの周波数で室温から150℃までの温度範囲で測定した。その結果を図6に示す。図6において、Xは貯蔵弾性率の測定結果、Yはtanδの測定結果を示す。
【0167】
図6に示された貯蔵弾性率の測定結果Xから、9Tナイロンは、約100℃以下の温度領域で熱による影響をほとんど受けないことがわかる。また、tanδの測定結果Yから、9Tナイロンのガラス転移点は、約134℃であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、耐衝撃性、剛性および耐熱性に優れているので、例えば、インストルメントパネル、シート、ドアトリムなどの自動車用内装材、フード、フェンダー、ボディなどの自動車用外装材、エンジン周りの部品などの自動車用部品、電気・電子関係部品、工業用部品などに好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂とガラス転位温度が80℃以上であるポリアミド系樹脂とを混合してなり、ポリプロピレン系樹脂とポリアミド系樹脂との重量比(ポリプロピレン系樹脂/ポリアミド系樹脂)が10/90〜99/1であり、さらにポリプロピレン系樹脂とポリアミド系樹脂との合計量100重量部あたりカルボキシル基または酸無水物基を含有する不飽和化合物、水酸基含有不飽和化合物およびエポキシ基含有不飽和化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の不飽和化合物0.01〜20重量部およびラジカル発生剤0.01〜5重量部を配合したことを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項2】
ポリアミド系樹脂の融点が300℃以下である請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
ポリアミド系樹脂が、ポリアミド9T、ポリアミド6Tまたはポリアミド46である請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
不飽和化合物がカルボキシル基または酸無水物基を含有する不飽和化合物である請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項5】
カルボキシル基または酸無水物基を含有する不飽和化合物がマレイン酸または無水マレイン酸である請求項4に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる自動車用材料。
【請求項7】
カルボキシル基または酸無水物基を含有する不飽和化合物、水酸基含有不飽和化合物およびエポキシ基含有不飽和化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の不飽和化合物およびラジカル発生剤の存在下で、ポリプロピレン系樹脂とガラス転位温度が80℃以上であるポリアミド系樹脂とをポリプロピレン系樹脂とポリアミド系樹脂との重量比(ポリプロピレン系樹脂/ポリアミド系樹脂)が10/90〜99/1となるように混合し、ポリプロピレン系樹脂とポリアミド系樹脂との合計量100重量部あたりの不飽和化合物の量を0.01〜20重量部に調整し、ラジカル発生剤の量を0.01〜5重量部に調整することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−265344(P2010−265344A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115883(P2009−115883)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(391048049)滋賀県 (81)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【出願人】(302004263)角一化成株式会社 (12)
【Fターム(参考)】