説明

ポリマー性対イオンと活性成分との塩

本発明は、pH2〜13で水溶性であるアニオン性ポリマーとカチオン性の難溶性医薬を含む、水に難溶性の医薬の水溶性ポリマー塩に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー性対イオンと活性成分との固体塩に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの医薬は水に対して溶解度が非常に低く、それ故、胃腸管により吸収されない場合がある。その結果、生物学的利用能は非常に低いものとなる。塩基性又は酸性の基を有する医薬の場合、それに対応する塩は、酸又はアルカリとの反応により生成することができ、その塩はより良好な溶解度を有することがある。この目的には、低分子量の酸又はアルカリが通常使用される。最も汎用される酸は、塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、リン酸である。使用される塩基は、NaOH、KOH、L−リシン、L−アルギニン、トリエタノールアミン又はジエチルアミンである。しかし、多くの医薬において、これらの低分子量化合物との塩も水に難溶性である。また、医薬である酸又は塩基の溶解度と、特定の化合物との塩の溶解度がほとんど相違しない場合が多い。この不良な溶解度の原因は通常、塩が、エネルギー的に好ましい状態である非常に安定な結晶格子を形成し、その結果、溶解傾向が低下するからである。また、水和によるエネルギー利得が低い場合、溶解度はさらに低下する。
【0003】
ポリマー性の酸又は塩基と医薬との塩は、原理的には、これまで既に製造されているが、ポリマーとしては、広いpH範囲では溶解しないもの、特に生理学的に適当な範囲であるpH2〜8では溶解しないものが用いられるか、あるいは酸、塩基もしくは塩としての溶液中で高粘度を有するものが用いられていた。胃液に耐性のあるポリマーのように、酸性pH値で不溶性であるポリマーが用いられる場合、医薬の溶解は起こらないが、ポリマーは沈殿する。その結果、医薬の放出は妨げられるか、少なくとも大幅に遅延する。このことは、胃液に耐性を有し、そのため生物学的利用能が低下した製剤が得られる。なぜなら、一方では、胃で吸収されず、他方では、製剤が中性pH値の小腸のみで溶解しなければならず、結果として、放出は相対的に遅延し、小腸の表面全体はもはや吸収に利用できなくなるからである。
【0004】
ポリマーが水溶液中で高粘度を有する場合、錠剤等の固体投与形態からの活性成分の放出は同様に遅延する。塩が溶解する際、ゲル又は高粘度溶液が錠剤表面及びその空洞に生成することで、錠剤コアへの水のさらなる浸透が妨げられ、崩壊が遅延する。その影響によって、また、高粘度を有する領域を通る医薬分子の拡散係数が小さいため、医薬の放出が遅延する。この遅延放出の選択は、高粘度のポリマー、例えば、アルギン酸塩、キサンタン、メチルヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン等を用いてマトリックス徐放性形態を製造する際に利用される。しかし、これらのポリマーは、難溶性医薬が速やかに溶解し、吸収のため胃表面及び小腸表面全体に提供される速放性形態を製造するのには全く適していない。
【0005】
欧州特許第0211268号明細書には、徐放性を有し、皮膚投与に使用される、ポリマー性ポリアニオンとのミノキシジル塩が記載されている。ミノキシジルは、塩形成可能な4つの基を含む医薬であり、対応するポリマー塩はその塩酸塩よりも溶解性が低い。塩形成可能なその多くの基によって、塩の解離は非常に減少し、その塩酸塩と比べて溶解度は改善されない。経口用途については記載されていない。
【0006】
米国特許第4997643号明細書には、カルボキシ基を有する成分とのポリマー塩を含む、局所用の生体適合性皮膜形成性送達システムが記載されている。使用される医薬は同様にミノキシジルであり、上記の特性を有する。経口投与については記載されていない。
【0007】
米国特許第4248855号明細書では、塩基性医薬と水不溶性ポリマーとの塩を含み、徐放効果を有する液体製剤が特許請求されている。水不溶性ポリマーを使用することによって、製剤は速やかに放出されず、あるいは広範なpH範囲で高い溶解性を示さない。
【0008】
米国特許第5736127号明細書には、塩基性医薬とカルボキシル−アミジン−カルボキシルトライアドを有するポリマーにより塩を形成できることが開示されている。ポリマーは高分子量のためにゲル形成性であり、その結果、活性成分の放出は遅延する。速放性錠剤に対する適切性については記載されていない。
【0009】
米国特許第4205060号明細書には、コアにカルボキシル基含有ポリマーと塩基性医薬との塩を含み、水不溶性ポリマーで覆われている、徐放性マイクロカプセルが記載されている。カルボキシ基含有ポリマーは、使用する可溶性医薬の放出を減少させる。
【0010】
欧州特許第0721785号明細書には、ポリカルボン酸とラニチジンとの塩が記載されている。ポリカルボン酸はラニチジンに結合し、その苦味を減少させるとされている。しかし、ラニチジンの低分子量塩は容易に溶解し、このことは、ポリカルボン酸によってラニチジンの移動度及び拡散が単に制限されることを意味し、また、このことは、苦味受容体を速やかには通過しないことを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第0211268号明細書
【特許文献2】米国特許第4997643号明細書
【特許文献3】米国特許第4248855号明細書
【特許文献4】米国特許第5736127号明細書
【特許文献5】米国特許第4205060号明細書
【特許文献6】欧州特許第0721785号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、経口剤形への加工後、対応する塩酸塩と比較して活性成分をより速やかに放出することができる活性成分の塩を見出すことであった。また、所望の活性成分塩は、pHに関らず溶解すべきである。さらに、活性成分を良好に錠剤化することができるそれらの塩を見出すことであった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのために、ポリマー性対イオンと医薬との水溶性塩は、pH値2〜13で水溶性であるアニオン性ポリマー及び水に難溶性であるカチオン性の医薬からなり、使用するアニオン性ポリマーは、その少なくとも40重量%がカルボキシル基を有するモノマーである。
【0014】
さらに、その水溶性塩の製造方法及び固体投与形態への加工方法を見出した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
使用するアニオン性ポリマーは非ゲル形成性ポリマーである。
【0016】
アニオン性ポリマーは、少なくとも50重量%がアクリル酸及び/又はメタクリル酸を有することが好ましい。
【0017】
本発明において、活性成分の塩基を、カチオン性活性成分と表す。カチオン性活性成分は少なくとも1つ、多くて2つの塩形成可能な基を有するものが好ましい。
【0018】
各ポリマー性対イオンは、医薬のポリマー塩が医薬及びその対応する塩酸塩よりも水溶性高くなるように選択される。
【0019】
上記塩形成によって、医薬の中性形態又はその対応する低分子量塩のいずれも水溶性ではない医薬を溶解させることもできる。これらの医薬は、胃腸管で溶解するのが非常に遅いことから、その吸収は制限される。その結果、生物学的利用能が低くなる場合が多い(the Biopharmaceutical Classification System: active ingredients of class II(Amidon et al.,Pharm. Res. 12, 413-420)を参照)。本発明は特に、非荷電形態で又は塩酸塩として、水、人工腸液又は人工胃液中で0.1%(m/m)未満の溶解性を有する医薬に適用することができる。
【0020】
広範なpH範囲に亘って溶解性が顕著に増加するための必要条件は、使用するポリマーも同様に広範なpH範囲に亘って水溶性であることである。pHが変化してもポリマーが沈殿しないのはこの場合のみである。また、ポリマーはゲルを形成すべきではない。
【0021】
ポリマー塩から活性成分が溶解するのを妨げないためには、使用するポリマーが低粘度であるべきである。5重量%(% strength by weight)溶液で粘度が100mPas未満、好ましくは75mPas未満、特に好ましくは50mPas未満であるポリマーが有効であることが明らかとなっている。低粘度にするためには一般に、低分子量であることが必要とされる。非架橋ポリマーの使用が好ましい。実用的な理由から、分子量の代わりにK値が測定される場合が多い。本発明では、ポリマーはK値が150、好ましくは90未満、特に好ましくは50未満、とりわけ40未満を有する(1重量%の水中で測定した場合)。
【0022】
ポリマー塩から錠剤に容易に成形でき、多少昇温した温度における安定性試験で変化が生じないように、ポリマーのガラス転移温度は60℃より高くなるべきである。
【0023】
アニオン性ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、櫛型コポリマー又は星型コポリマーでありうる。
【0024】
アニオン性ポリマーを製造するためには、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基又はホスホン酸基等の酸性基を有するモノマー(以下、「酸性モノマー」ともいう)を使用することができる。
【0025】
酸性モノマーの割合は、好ましくは80重量%よりも多く、特に好ましくは90重量%よりも多く、とりわけ98重量%よりも多い。本発明では、全モノマーの合計量のうちカルボキシル基を有するモノマーの割合が、少なくとも40重量%であり、そのうち少なくとも50重量%がアクリル酸及び/又はメタクリル酸であることが好ましい。
【0026】
原則として上記の基を有する好適なモノマーは、以下の通りである:
スルホン酸基を含むモノマー、例えばビニルスルホン酸、メチルアリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタクリル酸2−スルホエチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸3−スルホエチルプロピル又はアリルスルホン酸、
ホスホン酸基又はリン酸基を有するモノマー、例えばビニルホスホン酸、ビニルジホスホン酸、2−(メタクリロイルオキシ)エチルリン酸、2−(アクリロイルオキシ)エチルリン酸、
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、4−オキソ−2−ペンテン酸、モノビニル1,6−ヘキサン−ジカルボキシレート、ヒドロキシ[(1−オキソ−2−プロペニル)アミノ]酢酸、モノ[2−[(2−メチル−1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]エチル]1,4−ブタンジカルボキシレート、アクリル酸2−カルボキシエチル、モノビニル1,4−ブタンジカルボキシレート、6−[(2−メチル−1−オキソ−2−プロペニル)アミノ]ヘキサン酸、メタクリル酸2−カルボキシプロピル、2−メチル−3−[(2−メチル−1−オキソ−2−プロペニル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸、2−メチル−2−ペンテン酸等のカルボキシル基を有するモノマー。
【0027】
2以上の酸性モノマーを、互いに組み合わせることもできる。
【0028】
スルホン酸モノマーは、メタクリル酸2−スルホエチルメタクリレート、アクリル酸3−スルホプロピル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びアリルスルホン酸が好ましい。カルボキシル基を有するモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又は無水マレイン酸が特に好ましい。
【0029】
アクリル酸のホモポリマーの他に、アクリル酸とマレイン酸とのコポリマー、またアクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、又はアクリル酸もしくはメタクリル酸とイタコン酸とのコポリマーが特に好ましい。本発明では、イタコン酸はモノマー全量に対して1〜20重量%、好ましくは3〜15重量%の量で共重合することができる。
【0030】
アクリル酸又はメタクリル酸とスルホン酸モノマーとのコポリマーは特に好ましく、特に、アクリル酸又はメタクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はメタクリル酸2−スルホエチルとのコポリマーが好ましい。このようなコポリマーは、1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%、特に好ましくは5〜10重量%のスルホン酸モノマーを含むことができる。
【0031】
この酸性モノマーは、中性コモノマーと重合することができる。中性モノマーは水溶性又は水不溶性であってもよい。水不溶性の場合、モノマーの割合は、ポリマーがある時点で不溶性となることから制限される。
【0032】
中性コモノマーは、エチレン、プロピレン、ブチレン、スチレン、メチルビニルエーテル、C1−C20アルコールのアクリル酸エステル、C1−C20アルコールのメタクリル酸エステル、C1−C20カルボン酸のビニルエステルが適している。
【0033】
さらに、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、5〜50個のエチレンオキシド単位を有する(メタ)アクリレート、特に、末端がキャップされている対応する化合物(例えばメチル末端基)が適している。
【0034】
中性モノマーとして、置換アミド基、例えばN,N−ジメチルビニルホルムアミド、N,N−ジメチルビニルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、ジエチルメタクリルアミドを有するモノマーを含む中性モノマーと酸性モノマーとのコポリマーが特に好ましい。置換アミド基を有するコモノマーは、N−ビニルアミド、例えば、N−ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、アクリルアミド、メタクリルアミド、特に、アクリルアミドが非常に適している。
【0035】
中性モノマーの割合は、モノマー全量に対して1〜60重量%、好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは3〜15重量%となりうる。
【0036】
2種の酸性モノマーとさらに中性モノマーとのコポリマー、特に、アクリル酸又はメタクリル酸とスルホン酸モノマーとN−ビニルアミドモノマーとのコポリマーが特に好ましい。
【0037】
本発明のポリマーは、フリーラジカル重合等の慣用の方法で調製することができる。その重合は水中での溶液重合が好ましい。このような方法は当業者に周知である。開始剤は、例えば、硫酸鉄(II)、ペルオキソ二硫酸ナトリウム又は過酸化水素が適している。
【0038】
次亜リン酸ナトリウム等の調整剤の存在下で重合することも望ましい場合がある。
【0039】
重合は、連続的に又はバッチプロセスで行うことができ、フィードプロセスによってポリマーを得ることが好ましい。
【0040】
ポリマー溶液から固体形態への変換は、噴霧乾燥、凍結乾燥又はドラム乾燥等の慣用の方法で同様に行うことができる。
【0041】
好ましくは、本発明のポリマーの製造中に、そのポリマーが、活性成分との難溶性塩を生じさせる塩化物、硫酸塩等の低分子量アニオンを有さないことが保証される。
【0042】
しかし、場合により、活性成分の難溶性低分子量塩との混合物、あるいは対応する部分的に中性化したポリマー塩との混合物中で本発明のポリマー塩を使用するのが望ましい場合もある。
【0043】
原則として、塩形成に適した塩基性度を有する全ての医薬活性成分、栄養補助食品、食品補助剤及び作物保護活性成分が適している。従って、非常に弱い塩基性の活性成分については、スルホン酸等のより強い酸が適しており、中程度から強い塩基性の活性成分については、カルボン酸又はホスホン酸を使用することもできる。酸性ポリマーのpKa値は、塩基性活性成分のpKa値と同等であるか、それよりも小さくなければならない。そうでない場合には、その塩は加水分解に対して不安定となる。ポリマーと活性成分のpKa値の差が少なくとも2単位ある場合は特に有利となる。
【0044】
本発明の塩は原則として、乾燥処理、溶融処理又は沈殿処理によって製造することができる。
【0045】
水溶液又は有機溶液の乾燥
活性成分及びポリマーを水又は有機溶媒に溶解させ、溶液を乾燥する。溶解は、圧力下で温度を上昇させて(30〜200℃)行うこともできる。原則として、どのような種類の乾燥方法も可能であり、例えば、噴霧乾燥、流動床乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、ベルト乾燥、ローラー乾燥、キャリアーガス乾燥、蒸発等を行うことができる。
【0046】
溶融処理
活性成分をポリマーと混合する。温度を50〜250℃に加熱することによって、ポリマー塩が生成する。その際、ポリマーのガラス転移温度又は活性成分の融点よりも高い温度が有利である。例えば、水、有機溶媒、慣用の有機軟化剤等の軟化補助剤を添加することにより、処理温度をそれに応じて低減することができる。その際、例えば沸点が180℃未満、好ましくは150℃未満を有するような、後に蒸発によって再除去することが非常に容易な助剤が特に有利である。この種の製造は押出機で行うことができ、好ましい。
【0047】
押出機は、同期型二軸押出機(synchronous twin-screw extruder)が好ましい。スクリューの形態は、製品に応じて程度の差はあるが、せん断型にすることができる。特に、溶融ゾーンで混練エレメントを使用するのが望ましい。これに関連して、逆回転混練エレメント(reverse kneading element)を使用することもできる。溶融ゾーンの後に脱気ゾーンが続いており、これは大気圧下で操作することが有利であるが、所望ならば減圧下で操作することもできる。
【0048】
製品の排出は1〜5mm、好ましくは2〜3mmの直径を有する丸ダイスによって行うことができる。押出機はダイプレートを備えることもできる。比較的大きな材料のスループットを特に所望するならば、スリットダイ等の他のダイ形状を同様に使用することができる。
【0049】
押出機は通常、加熱可能なシリンダーを備える。しかし、得られる製品の温度は、使用するスクリューエレメントのせん断の度合いによって異なり、設定したシリンダー温度よりも20〜30℃高い場合もありうる。
【0050】
通常、25D〜40Dの長さを有する押出機が適している。
【0051】
原則として、複数の活性成分塩基を押出機中でポリマーと反応させることで、その塩を得ることもできる。
【0052】
押出機から押出されたストランドは、細断技術(chopping technique)等の周知の方法で粉砕することができる。
【0053】
得られたストランドを造粒機により加工することで、顆粒が得られ、その顆粒はさらに粉砕(磨砕)することで、粉末が得られる。顆粒又は粉末をカプセルに詰めるか、あるいは慣用の錠剤化補助剤を用いて圧縮することで、錠剤が得られる。
【0054】
押出しの具体的な一実施形態では、初めにポリマーを押出機に供給し、溶融することができる。続いて、活性成分塩基を第二の投入口に添加する。別の活性成分塩基は、さらに別の投入口で計量して投入することができる。
【0055】
さらに、活性成分塩基と酸性ポリマーとの反応速度を増加させるために、押出し中に、水、有機溶媒、緩衝物質又は可塑剤を用いることができる。特に、水又は揮発性アルコールはこの目的に適している。この処理によって、比較的低温で反応させることが可能となる。その溶媒及び/又は可塑剤の量は通常、押出し可能な質量の0〜30%である。水又溶媒は、大気圧下において押出機中で脱気口を通して、又は真空下で単に除去することができる。あるいは、これらの成分は、その押出物が押出機を出て圧力が大気圧に低下する際に蒸発する。揮発させることがより困難な成分の場合、押出物を必要に応じて後から乾燥することができる。
【0056】
別の2つの実施形態では、溶媒に活性成分を溶解させ、それを押出機中のポリマーに供給するか、あるいは、溶媒にポリマーを溶解させ、それを活性成分に供給する。
【0057】
製造方法の一実施形態では、押出後直接、熱可塑性体をカレンダー加工することで、錠剤様の圧縮物が得られ、これが最終的な投与形態となる。この別の変形では、別の構成成分、例えば、ガラス転移温度や溶融粘度を調節するポリマー、崩壊剤、可溶化剤、可塑剤、放出調節補助剤、遅延剤、胃液耐性ポリマー、着色剤、香味剤、甘味剤及び別の添加剤を、押出前又は押出中に添加すると有効となる場合がある。原則として、これらの物質はまた、押出物をまず粉砕し、続いて圧縮することにより錠剤を得るときいつでも使用することができる。
【0058】
押出品の水分含有量は一般に、5重量%未満である。
【0059】
pH3〜11におけるアニオン性ポリマーの水に対する溶解度は、10%(m/m)よりも大きい。
【0060】
ポリ酢酸ビニルホモポリマー等の熱可塑遅延剤(thermoplastic retarder)又はそのポリ酢酸ビニルホモポリマーの組成物、さらにアクリレートをベースとする、リターダーポリマー(retarder polymer)として知られるEudragit(登録商標)グレードRS、RLもしくはNEもしくはNMを添加することによって、放出を遅延させることができる。このようにして、信頼性のある方法で放出される、難溶性医薬の徐放形態を製造することができる。
【0061】
原則として、塩形成に用いられる反応は、混合機中で溶融造粒として、又は湿式造粒として水もしくは溶媒で湿潤することによって行うこともできる。より広範に使用可能な顆粒剤は、湿式押出しを行い、続いて球形化することによって製造することもできる。得られたペレットは、複合剤形(multiple dosage form)として硬質カプセルに詰めることができる。
【0062】
沈殿処理
活性成分及びポリマーを水又は有機溶媒に溶解させ温度を急激に下げるか、あるいは水又は前記有機溶媒と混和性の非溶媒を添加する。これにより、ポリマー塩の沈殿が生じ、これをろ過又は遠心により分離し、乾燥する。非溶媒は例えば、アセトン、イソプロパノール又はn−ブタノールが適している。
【0063】
上記のポリマー塩は常に非晶質である。つまり、低分子量塩の場合のように非晶質状態が外部の影響を受けてあるいは貯蔵中に熱力学的に安定な結晶質状態に変換しうるという問題が避けられる。即ち、本発明の塩の非晶質状態は、このような物質のより低いエネルギー状態がないため、熱力学的に安定な状態である。従って、ポリマー塩は原則として低分子量塩と異なる。
【0064】
さらに、低分子量塩では、結晶化しづらい及び/又は低融点で形成されるという問題が生じる場合が多い。上記のポリマー塩はこの問題を避けられる。
【0065】
ポリマーアニオン成分と塩基性カチオン成分である活性成分との、本発明に係るポリマー塩は、投与形態への優れた加工性を有し、特に錠剤化の点で優れている。従って、直径が10mmで、重さが300mgであり、200Nを超える破壊耐性を有する錠剤を製造することができる。このために、ポリマーアニオンは結合剤として同時に作用し、錠剤製剤化で大きな可塑性を得ることができる。一方、低分子量塩は非常に脆く、錠剤形成性が不良である場合が多い。
【0066】
本発明のポリマー塩は、水にやや溶けにくいか、難溶性(溶けにくい、本明細書では単に難溶性ともいう)であるか、あるいは不溶性であり、ポリマー成分の酸性基と塩を形成しうる全ての活性成分の溶解性を改善するのに適している。DAB9(ドイツ薬局方)によると、医薬活性成分の溶解度の分類は以下の通りである;やや溶けにくい(30〜100部の溶媒に溶ける);難溶性(100〜1000部の溶媒に溶ける);ほとんど不溶性(10,000部より多い溶媒に可溶)。本発明では、活性成分はいかなる適用疾患領域でもありうる。
【0067】
本発明では例として、降圧剤、ビタミン、細胞増殖抑制剤、特に、タキソール、麻酔剤(anesthetics)、神経弛緩剤、抗うつ剤、抗生物質、抗真菌剤、殺真菌剤、化学療法剤、泌尿器科薬、血小板凝集抑制剤、スルホンアミド類、鎮痙薬、ホルモン、免疫グロブリン、血清、甲状腺治療薬、向精神薬、抗パーキンソン病薬その他の抗運動亢進症薬、眼科用薬、神経障害製剤、カルシウム代謝調節薬、筋弛緩剤、麻酔剤(narcotics)、脂質降下剤、肝治療薬、冠動脈剤、強心剤、免疫治療剤、調節ペプチド及びそれらの抑制剤、催眠剤、鎮静剤、婦人病薬、痛風治療薬、線維素溶解剤、酵素製剤、及び輸送タンパク質、酵素抑制剤、催吐剤、痩身薬、血流促進薬、利尿剤、診断薬、コルチコイド、コリン作動薬、胆管治療薬、抗喘息薬、気管支拡張剤、ベータ受容体阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、ACE抑制剤、動脈硬化症薬、消炎剤、抗凝固薬、抗低血圧薬、抗低血糖薬、抗高血圧薬、抗線維素溶解薬、抗てんかん薬、制吐剤、解毒剤、抗糖尿病薬、抗不整脈剤、抗貧血薬、抗アレルギー薬、駆虫剤、鎮痛剤、蘇生薬、アルドステロンアンタゴニスト又は抗ウイルス活性成分又はHIV感染症及びAID症候群の治療用の活性成分が挙げられる。
【0068】
本発明の固体剤形の調製中に、慣用の医薬助剤を適宜一緒に加工することができる。その医薬助剤は、賦形剤、可塑剤、溶解促進剤、結合剤、ケイ酸塩及びまた崩壊剤及び吸着剤、潤滑剤、フロー剤、色素、酸化防止剤等の保存剤、湿潤剤、防腐剤、離型剤、香料又は甘味料、好ましくは賦形剤、可塑剤及び溶解促進剤の種類の物質である。
【0069】
添加可能な賦形剤(充填剤)は、無機賦形剤、例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、炭酸チタンもしくは炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはリン酸マグネシウム又は有機賦形剤、例えば、ラクトース、スクロース、ソルビトール、マンニトールが挙げられる。
【0070】
可塑剤は、例えば、トリアセチン、クエン酸トリエチル、モノステアリン酸グリセロール、低分子量ポリエチレングリコール又はポロクサマーが適している。
【0071】
溶解促進剤は、HLB値(親水親油バランス)が11より大きい界面活性剤が適しており、例えば、40個のエチレンオキシド単位でエトキシ化されている水素化ヒマシ油(Cremophor(登録商標)RH 40)、35個のエチレンオキシド単位でエトキシ化されているヒマシ油(Cremophor eL)、Polysorbate 80、ポロクサマー又はラウリル硫酸ナトリウムである。
【0072】
使用できる潤滑剤は、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸スズ、及びまた、ケイ酸マグネシウム、シリコーン等である。
【0073】
使用できるフロー剤は、例えば、タルク又はコロイド状二酸化ケイ素である。
【0074】
結合剤は、例えば、微結晶性セルロースが適している。
【0075】
崩壊剤は、架橋型ポリビニルピロリドン又は架橋型カルボキシメチルスターチナトリウムであってもよい。保存剤は、アスコルビン酸又はトコフェロールであってもよい。
【0076】
色素は、例えば、酸化鉄、二酸化チタン、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、キノリン色素、インディゴスズ色素、カロテノイドにより投与形態に着色することができ、二酸化チタン又はタルク等の不透明化剤(opaquing agent)により光透過性を増加させて色素を削減することができる。
【0077】
本発明の活性成分のポリマー塩を優れた方法で造粒し、圧縮することで、水性媒体に対して高溶解度のため極めて速やかに活性成分が放出される錠剤を得ることができる。また、改善した溶解性によって、生物学的利用能が顕著に改善する。溶解度は通常、0.05〜5%(水の重量部に対する医薬の重量部)である。さらに、生物学的利用能は非常に再現性がよく、即ち、個体差間の変動が比較的小さい。
【0078】
本発明の塩を製剤化することで、多種の投与形態、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末剤、薬物送達システム、溶液剤、坐剤、経皮システム、クリーム剤、ゲル剤、ローション、注射液、ドロップ剤、ジュース、シロップ剤を得ることができる。
【実施例】
【0079】
ポリマーA
ポリアクリル酸(MW4000、K値11)
ポリマーB
マレイン酸−アクリル酸(重量比50/50)コポリマー(MW3000、K値10)
ポリマーC
メタクリル酸−アクリル酸(重量比70/30)コポリマー(MW20,000、K値12)
ポリマーD
ポリアクリル酸(MW100,000、K値38.6)
ポリマーE
アクリル酸/2−スルホエチルメタクリレート(重量比90/10、K値82)
ポリマーF
アクリル酸/イタコン酸(重量比90/10、K値55)
ポリマーG
アクリル酸/2−アクリルアミド−2−メチルプロパン酸/アクリルアミド(重量比80/10/10、K値74)
ポリマーH
アクリル酸/2−アクリルアミド−2−メチルプロパン酸(重量比98.2/10.8、K値82)。
【0080】
全てのK値は、1重量%水溶液で測定した。
【0081】
錠剤の崩壊は、Erweka崩壊試験機を使用して行った。その放出は、Pharm.Eur. 6.0に従って測定した。
【0082】
クロスポビドンは、平均粒径30μmのKollidon CL‐F(BASF AG)を使用した。
【0083】
押出物を調製するのに使用した二軸押出機は、スクリュー直径が16mmであり、長さが25DのZSK25型押出機(Werner & Pfleiderer社製)である。加熱調整可能なシリンダーの温度は、製品によって異なる冷却流入口を有するシリンダーを用いる場合以外、一定に設定した。使用したダイは、直径が2又は3mmであった。
【0084】
押出物の水分含有量は、3重量%未満であった。
【0085】
非晶質状態の測定は、偏光顕微鏡を用いて行った。
【0086】
ポリマーE〜Gの調製手順に関する総説
重合は、アンカー型攪拌機(anchor stirrer)を備えた2L反応器中で行った。得られたポリマー溶液を凍結乾燥により粉末にした。
【0087】
ポリマーEの調製
90重量%のアクリル酸と10重量%の2−スルホエチルメタクリレートとのコポリマー
モノマー量:240.0g、バッチサイズ:802.8g
開始投与全量:320.0g
320.0g 脱塩水
フィード1 全量:276.0g
36.0g 脱塩水
24.0g 2−スルホエチルメタクリレート
216.0g アクリル酸
フィード2 全量:124.4g
122.0g 脱塩水
2.4g 次亜リン酸ナトリウム一水和物
フィード3 全量:82.4g
2.4g ペルオキソ二硫酸ナトリウム
80.0g 脱塩水。
【0088】
開始投与物を120rpmで攪拌しながら、窒素雰囲気下にて内部温度を90℃に加熱した。内部温度が90℃に達したら、フィード1及び2を計量しながら4時間に亘り投入し、また、フィード3を計量しながら4時間15分に亘り投入した。フィード3が終了したら、90℃で1時間さらに重合させるために混合液を放置した。その後、混合液を室温に冷却した。その結果、固形含有量が29.9重量%であり、K値が46である、微粘性の黄色透明溶液を得た。
【0089】
ポリマーFの調製
90重量%のアクリル酸と10重量%のイタコン酸とのコポリマー
モノマー量:560.0g、バッチサイズ:1651.2g
配分量 投与物
開始投与物 全量:682.4g
56.0g イタコン酸
0.6g 硫酸鉄(II)七水和物、水中1.0%(% strength)
611.8g 脱塩水
14.0g フィード2
フィード1 全量:702.8g
504.0g アクリル酸
196.0g 脱塩水
2.8g 次亜リン酸ナトリウム一水和物
フィード2 全量:280.0g
56.0g 過酸化水素 30.0%
224.0g 脱塩水。
【0090】
開始投与物を120rpmで攪拌しながら、窒素雰囲気下にて内部温度を95℃に加熱した。内部温度が95℃に達したら、フィード1を計量しながら5時間に亘り投入し、また、フィード3を計量しながら6時間に亘って投入した。フィード2が終了したら、混合物を95℃で2時間さらに重合した。その後、混合液を室温に冷却した。その結果、固形含有量が35.0重量%であり、K値が55である、微粘性の無色透明溶液を得た。
【0091】
ポリマーGの調製
80重量%のアクリル酸と10重量%の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸と10重量%のアクリルアミドとのコポリマー
モノマー量:240.0g、バッチサイズ:800.4g
投与量 投与物
開始投与物 全量:296.0g
296.0g 脱塩水
フィード1 全量:240.0g
192.0g アクリル酸
24.0g 2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸
24.0g 脱塩水
フィード2 全量:182.0g
158.0g 脱塩水
24.0g アクリルアミド
フィード3 全量:82.4g
2.4g ペルオキソ二硫酸ナトリウム
80.0g 脱塩水。
【0092】
開始投与物を120rpmで攪拌しながら、窒素雰囲気下にて内部温度を90℃に加熱した。内部温度が90℃に達したら、フィード1及び2を計量しながら4時間に亘り投入し、また、フィード3を計量しながら4時間15分に亘って投入した。フィード3が終了したら、90℃で1時間さらに重合させるために混合液を放置した。その後、混合液を室温に冷却した。その結果、固形含有量が30.8重量%であり、K値が74である、粘性透明溶液を得た。
【0093】
ポリマーHの調製
89.2重量%のアクリル酸と10.8重量%の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とのコポリマー
モノマー量:242.1g、バッチサイズ:802.5g
投与量 投与物質
開始投与物 全量:320.0g
320.0g 脱塩水
フィード1 全量:400.1g
158.0g 脱塩水
26.1g 2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸
216.0g アクリル酸
フィード2 全量:82.4g
2.4g ペルオキソ二硫酸ナトリウム
80.0g 脱塩水。
【0094】
開始投与物を120rpmで攪拌しながら、窒素雰囲気下にて内部温度を90℃に加熱した。内部温度が90℃に達したら、フィード1を計量しながら4時間に亘り投入し、また、フィード2を計量しながら4時間15分に亘って投入した。フィード2が終了したら、90℃で1時間さらに重合させるために混合液を放置した。その後、混合液を室温に冷却した。その結果、固形含有量が32.2重量%であり、K値が82である、粘性のある無色透明溶液を得た。
【0095】
ポリマー塩の調製
実施例1
ロペラミドのポリマー水溶液に対する溶解性
1.0gのロペラミド(遊離塩基)を100.0mLのポリマー水溶液に添加し、72時間攪拌した。この間に、ポリマー塩が水に対するその飽和溶解度になるまで生成した。溶解しなかったロペラミドをろ過にて分離した。ろ過物中のロペラミドの含有量をHPLCで測定した。比較するために、ロペラミドの飽和溶解度を脱塩水及び塩酸で測定した。塩酸の場合、対応するロペラミド塩酸塩が形成される。
【表1】

【0096】
ロペラミドのポリマーAの20%溶液に対する溶解度は、水と比較して少なくとも447倍、また、10重量%の塩酸水溶液と比較すると510倍の割合で改善されている。
【0097】
実施例2
ハロペリドールのポリマー水溶液に対する溶解性
1.0gのハロペリドール(遊離塩基)を100.0mLのポリマー水溶液に添加し、72時間攪拌した。この間に、ポリマー塩は水に対して飽和溶解度になるまで形成した。溶解しなかったハロペリドールをろ過にて分離した。ろ過物中のハロペリドールの含有量をHPLCで測定した。比較するために、ハロペリドールの飽和溶解度を脱塩水及び塩酸で測定した。塩酸の場合、対応するハロペリドール塩酸塩が形成される。
【0098】
溶解性の改善が実際に塩形成に基づいており、可溶化効果に基づいていないことを実証するために、ポリマーAの20%溶液をNaOHでpH10に調節して、飽和溶解度を測定した。
【表2】

【0099】
ハロペリドールの20%ポリマーA溶液に対する溶解度は、水と比較して少なくとも579倍、また、10重量%の塩酸水溶液と比較すると644倍の割合で改善されている。
【0100】
実施例3
シンナリジンのポリマー水溶液に対する溶解性
1.0gのシンナリジン(遊離塩基)を100.0mLのポリマー水溶液に添加し、72時間攪拌した。この間に、ポリマー塩は水に対して飽和溶解度になるまで形成した。溶解しなかったシンナリジンをろ過にて分離した。ろ過物中のシンナリジンの含有量をHPLCで測定した。比較するために、シンナリジンの飽和溶解度を脱塩水及び塩酸で測定した。塩酸の場合、対応するシンナリジン塩酸塩が形成される。
【表3】

【0101】
シンナリジンの20%ポリマーA溶液に対する溶解度は、水と比較して少なくとも480倍、また、10重量%の塩酸水溶液と比較すると13倍の割合で改善されている。
【0102】
実施例4
噴霧乾燥によるロペラミドとポリマーAとの塩の調製
36gのロペラミドを1464gの20%ポリマーA溶液に、2時間攪拌しながら分散させた。この間に、いくらかの活性成分は既に溶液になった。噴霧乾燥の直前に、この分散液を90℃に一時的に加熱し、この間にロペラミドは完全に溶解した。その後直接、以下の条件で噴霧乾燥を行った:
入口ガス温度:200℃
出口ガス温度:103℃
噴霧速度:9.5g/min
乾燥粉末が得られた。
【0103】
製品特性
残留水分:2.1%(g/g)
溶解したロペラミドとして測定した、ロペラミドポリマー塩の水に対する溶解度:17.0mg/mL。
【0104】
実施例5
噴霧乾燥によるロペラミドとポリマーBとの塩の調製
36gのロペラミドを1464gの20%ポリマーB水溶液に、2時間攪拌しながら分散させた。この間に、いくらかの活性成分は既に溶液になった。噴霧乾燥の直前に、この分散液を90℃に一時的に加熱し、この間にロペラミドは完全に溶解した。その後直接、以下の条件で噴霧乾燥を行った:
入口ガス温度:168℃
出口ガス温度:77℃
噴霧速度:9.5g/min
乾燥粉末が得られた。
【0105】
製品特性
残留水分:6.1%(g/g)
溶解したロペラミドとして測定した、ロペラミドポリマー塩の水に対する溶解度:13.3mg/mL。
【0106】
実施例6
噴霧乾燥によるハロペリドールとポリマーAとの塩の調製
54gのハロペリドールを1576gの20%ポリマーA水溶液に、2時間攪拌しながら分散させた。この間に、いくらかの活性成分は既に溶液になった。噴霧乾燥の直前に、この分散液を90℃に一時的に加熱し、この間にハロペリドールは完全に溶解した。その後直接、以下の条件で噴霧乾燥を行った:
入口ガス温度:193℃
出口ガス温度:85℃
噴霧速度:12.5g/min
乾燥粉末が得られた。
【0107】
製品特性
残留水分:2.0%(g/g)
溶解したハロペリドールとして測定した、ハロペリドールポリマー塩の水に対する溶解度:34.1mg/mL。
【0108】
実施例7
噴霧乾燥によるハロペリドール及びポリマーB溶液との塩の調製
58gのハロペリドールを1692gの20%ポリマーB水溶液に、2時間攪拌しながら分散させた。この間に、いくらかの活性成分は既に溶液になった。噴霧乾燥の直前に、この分散液を90℃に一時的に加熱し、この間にハロペリドールは完全に溶解した。その後直接、以下の条件で噴霧乾燥を行った:
入口ガス温度:173℃
出口ガス温度:91℃
噴霧速度:8.7g/min
乾燥粉末が得られた。
【0109】
製品特性
残留水分:5.7%(g/g)
溶解したハロペリドールとして測定した、ハロペリドールポリマー塩の水に対する溶解度:17.3mg/mL。
【0110】
実施例8
噴霧乾燥によるシンナリジンとポリマーAとの塩の調製
24.5gのシンナリジンを1725.5gの20%ポリマーA水溶液に、2時間攪拌しながら分散させた。この間に、いくらかの活性成分は既に溶液になった。噴霧乾燥の直前に、この分散液を90℃に一時的に加熱し、この間にシンナリジンは完全に溶解した。その後直接、以下の条件で噴霧乾燥を行った:
入口ガス温度:177℃
出口ガス温度:95℃
噴霧速度:17.6g/min
乾燥粉末が得られた。
【0111】
製品特性
残留水分:2.1%(g/g)
溶解したシンナリジンとして測定した、シンナリジンポリマー塩の水に対する溶解度:7.9mg/mL。
【0112】
実施例9
有機溶媒に溶解させ、蒸発することによるロペラミドとポリマーAとの塩の調製
5gのロペラミドをエタノール中の30%ポリマーA溶液150gに2時間攪拌しながら溶解させた。この溶液をロータリーエバポレーターにより乾燥するまで蒸発した。得られた固体を磨砕することで、粉末が得られた。
【0113】
製品特性
残留水分:1.4%(g/g)
溶解したロペラミドとして測定した、ロペラミドポリマー塩の水に対する溶解度:15.9mg/mL。
【0114】
実施例10
有機溶媒に溶解させ、蒸発することによるハロペリドールとポリマーAとの塩の調製
10gのハロペリドールをエタノール中の30%ポリマーA溶液150gに2時間攪拌しながら溶解させた。この溶液を80℃のロータリーエバポレーターにより乾燥するまで蒸発した。得られた固体を磨砕することで、粉末が得られた。
【0115】
製品特性
残留水分:1.6%(g/g)
溶解したハロペリドールとして測定した、ハロペリドールポリマー塩の水に対する溶解度:25.4mg/mL。
【0116】
実施例11
押出しによるロペラミドとポリマーAとの塩の調製
初めに、500gのロペラミド及び4500gのポリマーAを混合器中で均一に混合し、続いて二軸押出機にて130℃で押出した。滞留時間は3.5分であった。得られた2mmの厚さのストランドを磨砕することで、粉末が得られた。
【0117】
製品特性
残留水分:1.4%(g/g)
溶解したロペラミドとして測定した、ロペラミドポリマー塩の水に対する溶解度:16.2mg/mL。
【0118】
実施例12
押出しによるシンナリジンとポリマーAとの塩の調製
初めに、700gのシンナリジン及び4500gのポリマーAを混合器中で均一に混合し、続いて二軸押出機にて135℃で押出した。滞留時間は3.5分であった。得られた2mmの厚さのストランドを磨砕することで、粉末が得られた。
【0119】
製品特性
残留水分:1.6%(g/g)
溶解したシンナリジンとして測定した、シンナリジンポリマー塩の水に対する溶解度:7.2mg/mL。
【0120】
実施例13
押出しによるファモチジンとポリマーGとの塩の調製
初めに、500gのファモチジン、3500gのポリマー3及び800gのポロクサマー188を混合器中で均一に混合し、続いて二軸押出機にて140℃で押出した。滞留時間は4分であった。得られた3mmの厚さのストランドを磨砕することで、粉末が得られた。
【0121】
製品特性
残留水分:0.5%(g/g)
磨砕した粉末は非晶質であった。溶解したファモチジンとして測定した、ファモチジンポリマー塩の水に対する溶解度:45.3mg/mL。
【0122】
実施例14
押出しによるファモチジンとポリマーFとの塩の調製
初めに、500gのファモチジン及び4500gのポリマーFを混合器中で均一に混合し、続いて二軸押出機にて130℃で押出した。750gの水を第二の計量投入点で供給した。滞留時間は2分であった。得られた3mmの厚さのストランドを造粒し、乾燥した後、磨砕することで、粉末が得られた。
【0123】
製品特性
残留水分:2.5%(g/g)
磨砕した粉末は非晶質であった。溶解したファモチジンとして測定した、ファモチジンポリマー塩の水に対する溶解度:22.5mg/mL。
【0124】
実施例15
押出しによるシンナリジンとポリマーHとの塩の調製
初めに、700gのシンナリジン、3000gのポリマーH及び1000gのPEG1500を混合器中で均一に混合し、続いて二軸押出機にて140℃で押出した。滞留時間は2分であった。得られた2mmの厚さのストランドを磨砕することで、粉末が得られた。
【0125】
製品特性
残留水分:0.5%(g/g)
磨砕した粉末は非晶質であった。溶解したシンナリジンとして測定した、シンナリジンポリマー塩の水に対する溶解度:9.3mg/mL。
【0126】
実施例16
押出しによるシンナリジンとポリマーEとの塩の調製
600gのシンナリジン及び4500gのポリマーEを2つの粉末計量器(powder metering)により1:10の割合で計量して二軸押出機に同時に入れた。650gのエタノールを別の投入点で供給した。押出しは125℃で行い、その間の滞留時間は2分であった。得られた2mmの厚さのストランドを磨砕することで、粉末が得られた。
【0127】
製品特性
残留水分:1.7%(g/g)
磨砕した粉末は非晶質であった。溶解したシンナリジンとして測定した、シンナリジンポリマー塩の水に対する溶解度:5.7mg/mL。
【0128】
実施例17
押出しによるシンナリジンとポリマーEとの塩の調製
初めに、600gのシンナリジン及び4000gのポリマーEを混合器中で均一に混合し、二軸押出機に供給した。800gのプロピレングリコールを別の投入点で供給した。押出しは115℃で行い、その間の滞留時間は2分であった。得られた厚さ2mmのストランドを磨砕することで、粉末が得られた。
【0129】
製品特性
残留水分:1.4%(g/g)
磨砕した粉末は非晶質であった。溶解したシンナリジンとして測定した、シンナリジンポリマー塩の水に対する溶解度:8.0mg/mL。
【0130】
実施例18
ロペラミドとポリマーAのポリマー塩による錠剤の調製
実施例11で得られたロペラミドポリマー塩17gを、150gの微結晶性セルロース、118gのリン酸二カルシウム、12gのクロスポビドン及び3gのステアリン酸マグネシウムと混合し、偏心型錠剤圧縮器で圧縮成形することで、以下の特性の錠剤を得た。
直径:10mm
重量:300mg
破壊抵抗:60N
崩壊時間:33秒
水への活性成分放出:15分後で99%。
【0131】
実施例19
ハロペリドールとポリマーAのポリマー塩による錠剤の調製
実施例4で得られたハロペリドールポリマー塩65gを、110gの微結晶性セルロース、110gのリン酸二カルシウム、12gのクロスポビドン及び3gのステアリン酸マグネシウムと混合し、回転型打錠機で圧縮成形することで、以下の特性の錠剤を得た。
直径:10mm
重量:300mg
破壊抵抗:80N
崩壊時間:68秒
水への活性成分放出:15分後で99%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH2〜13で水溶性であるアニオン性ポリマー及びカチオン性の難溶性医薬からなる、水に難溶性の医薬の水溶性ポリマー塩。
【請求項2】
アニオン性ポリマーが、少なくとも40重量%がカルボキシル基を有するモノマーである、請求項1に記載のポリマー塩。
【請求項3】
アニオン性ポリマーが非ゲル形成性である、請求項1又は2に記載のポリマー塩。
【請求項4】
医薬が少なくとも1つ、多くて2つの塩形成可能な基を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリマー塩。
【請求項5】
医薬のポリマー塩が、該医薬及び対応する該医薬の塩酸塩よりも水に対して高い溶解性を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマー塩。
【請求項6】
1重量%水溶液中のアニオン性ポリマーが150未満のFikentscherのK値を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリマー塩。
【請求項7】
1重量%水溶液中のアニオン性ポリマーが90未満のFikentscherのK値を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリマー塩。
【請求項8】
1重量%水溶液中のアニオン性ポリマーが50未満のFikentscherのK値を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリマー塩。
【請求項9】
アニオン性ポリマーが、カルボキシル基の他にリン酸基もしくはスルホン酸基又はそれらの組み合わせを含みうる、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリマー塩。
【請求項10】
アニオン性ポリマーが、カルボキシル基を有するモノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸もしくはマレイン酸又はそれらの混合物を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリマー塩。
【請求項11】
カルボキシル基を有するモノマーとして、イタコン酸とアクリル酸、メタクリル酸又はマレイン酸との組み合わせを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリマー塩。
【請求項12】
1〜20重量%の、スルホン酸基を有するモノマーを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリマー塩。
【請求項13】
1〜20重量%の中性コモノマーを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリマー塩。
【請求項14】
使用するポリマーの1重量%水溶液のK値が90未満である、請求項1〜13のいずれか1項に記載のポリマー塩。
【請求項15】
使用するポリマーの1重量%水溶液のK値が50未満である、請求項1〜14のいずれか1項に記載のポリマー塩。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のポリマー塩を含む固体投与形態。
【請求項17】
圧縮成形によって製造する、請求項16に記載の固体投与形態。
【請求項18】
pH2〜13で水溶性であるアニオン性ポリマー及びカチオン性の難溶性医薬を溶媒に溶解させ、該医薬のポリマー塩を溶液から分離する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の医薬の水溶性ポリマー塩の製造方法。
【請求項19】
溶液を乾燥することによって医薬のポリマー塩を分離する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
冷却又は非溶媒の添加で沈殿させることによって溶液から医薬のポリマー塩を得る、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
アニオン性ポリマー及び活性成分を押出機中で合わせて加工することにより調製する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の医薬の水溶性ポリマー塩の製造方法。

【公表番号】特表2011−506395(P2011−506395A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537435(P2010−537435)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067228
【国際公開番号】WO2009/074609
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】