ポリマー製品の製造方法
【課題】良好な機械的特性を有するポリマー製品を低い圧着温度で製造する簡易で実用的な方法の提供。
【解決手段】ポリマー製品を製造するため方法であって、次の各工程:(a)配向化ポリマー材料のストランドで構成された第1の層、ポリマー材料の第2の層、配向化ポリマー材料のストランドで構成された第3の層であって、該第2の層が該第1および第3の層のピーク融解温度よりも低いピーク融解温度を持つ連続層を有する合着層を形成すること、(b)該第1の層の一部を融解させ、該第2の層を融解させ、且つ第3の層の一部分を融解させ、そして、該合着層を圧着させるのに十分な時間、温度および圧力の条件に該合着層を供すること、及び(c)該圧着化合着層を冷却すること;を含む方法による。
【解決手段】ポリマー製品を製造するため方法であって、次の各工程:(a)配向化ポリマー材料のストランドで構成された第1の層、ポリマー材料の第2の層、配向化ポリマー材料のストランドで構成された第3の層であって、該第2の層が該第1および第3の層のピーク融解温度よりも低いピーク融解温度を持つ連続層を有する合着層を形成すること、(b)該第1の層の一部を融解させ、該第2の層を融解させ、且つ第3の層の一部分を融解させ、そして、該合着層を圧着させるのに十分な時間、温度および圧力の条件に該合着層を供すること、及び(c)該圧着化合着層を冷却すること;を含む方法による。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、配向化ポリマーストランドから作られたポリマー製品に関し、特にそのような製品を作るための改善された方法に関する。
【0002】
近年、堅くて強いシートを作るためにポリマーストランドを圧着する方法が開発されている。一例がGB 2253420Aに開示されており、そこでは配向化ポリマーのストランドのア
ッセンブリが2段階工程において熱圧着され、良好な機械特性を有するシートが形成される。その方法は、ストランドを、接触状態に維持するのに十分な圧力をかけながら圧着温度にしてこの温度で保持し、その後、高圧(40-50Mpa)(圧着圧力)で数秒間圧着させる初期段階を伴う。この方法において、ストランドの表面の一部分は融解し、その後冷却すると再結晶化する。この再結晶化相はストランドを互いに結合させ、良好な機械特性の最終シートを生じさせる。GB 2253420Aにおいて、その方法はポリエステルおよびPEEK(ポ
リエーテルエーテルケトン)を含む多くのタイプの配向化ポリマーに適用可能であるが、好ましいポリマーは配向化ポリオレフィン類であるとされる。
【0003】
GB 2253420Aに記載されている方法の欠点の一つは、融解が起こる温度スパンが非常に
狭いことである。したがって、ストランドの外側域の部分的融解を所望の程度達成することは難しい。ストランドの不充分な融解は、貧弱な機械的特性をもたらす。ストランドの過剰な融解は配向性の喪失をもたらし、機械的特性を損なう。製品が“不十分な融解”も“過度な融解”もされないようにするには、厳密な工程制御が必要とされる。
【0004】
WO 98/15397において、関連する方法が開示されている。その方法では、融解して成形
されたポリオレフィンストランドのアッセンブリを完全に接触させて、10MPa以下の圧着
圧力に供しながら、ストランドの部分を融解させるのに十分な高温にて維持する。望ましいならば、それらストランドを前架橋法、好ましくは、アルキンまたはジエン化合物を含有する不活性雰囲気において電離放射線でストランドを照射し、次いでアルキンまたはジエン化合物を含有する不活性雰囲気においてその被照射ポリマーを高温でアニールすることを含むアニーリング工程を行うことを含む、放射線架橋法に供してもよい。前架橋により圧着温度はあまり重要でなくなり、機械的特性、特に高温での破壊強度は改良されると言われている。
【0005】
ポリエチレンフィルムをポリエチレン繊維層の間に挟み込み、その合着層を熱圧着に供した製品の使用に関する発行された研究がある。
Maraisらは、Composites Science and Technology, 45, 1992, pp.247-255において、
フィルムの融点より高いが、繊維層の融点より低い温度にて圧着させるという方法を開示している。その結果得られた製品は適度な機械的特性を有する。
【0006】
Ogawaらは、Journal of Applied Polymer Science, 68, 1998, pp.1431-1439において
、超高分子量ポリエチレン繊維(融点 145-152℃)層と低密度ポリエチレンフィルム(融点 118℃)層とで作られた製品を開示している。その成形温度は繊維の融点と介在層(マトリックス)の融点との間であるとされる。その繊維の体積率は0.69または0.74であるとされる。しかしながら、それら製品は、おそらく繊維とマトリックス(融解したフィルム)との間の弱い接着のために驚くほど貧弱な特性を有するとされる。別の製品はポリエチレン繊維単独で作られており、その方法条件は部分的融解を誘起して貧弱な特性を招いた。
【0007】
熱圧着方法における圧着温度の臨界点を低下させることができる簡易かつ実用的な手段
についての必要性が存在する。加えて、得られる製品における機械的特性の改良についての必要性も引き続き存在する。本発明の目的は、これら必要性のいずれかまたは両方を満足させる態様を少なくとも幾分実用的なやり方で達成することである。
【0008】
したがって、本発明の第1の側面においては、ポリマー製品を製造するための方法であって、次の各工程:
(a) 連続層、即ち
(i) 配向化したポリマー材料のストランドで構成された第1の層;
(ii) ポリマー材料の第2の層;
(iii) 配向化したポリマー材料のストランドで構成された第3の層;
であって、該第2の層が、該第1および第3の層のピーク融解温度よりも低いピーク融解温度を持つ連続層を有する合着層を形成すること;
(b) 該第1の層の一部分を融解させ、該第2の層を完全に融解させ、且つ第3の層の一
部分を融解させ、そして該合着層を圧着させるのに十分な時間、温度および圧力の条件に該合着層を供すること;および
(c) 該圧着化合着層を冷却すること;
を含む方法が提供される。
【0009】
第1および第2の側面において“冷却すること”には、圧着化合着層を自然に冷まさせること;強制的通風冷却;急冷;その他のあらゆるタイプの加速冷却;および遅延冷却が含まれうる。
【0010】
“ストランド”という用語は、本発明に有用なすべてのポリマー材料の配向化伸長エレメントを意味するものとして本明細書中で使用する。それらは、繊維の形態でもフィラメントの形態でもよい。それらは、例えば、融解成形したフィルムのスリット切断によるかまたは押出しより成形されるバンド、リボン、またはテープの形態でありうる。それらが如何なる形態であろうがそれらストランドは、本発明の方法のために不織ウェブ(non-woven web)にしておいてもよい。別のやり方では、それらは、複数のフィラメントまたは繊維が含まれる糸に成形してもよいし、モノフィラメント糸の形態で使用してもよい。ストランドは、通常、織るか編むことにより織物(fabric)に形成される。場合により、ストランドをWO 98/15397に記載されているような架橋法に供してもよい。織物は、好ましくはテープ、繊維糸、またはフィラメント糸で作られ、またそれらは、繊維またはフィラメント糸とテープとの混合物を含んでもよい。前記第1および第3の層に使用するのに最も好ましいものは、平面テープから織られた織物である。この幾何学的配置は、その配向化した相の特性を最終圧着化シートの特性へ最も良く変換するものであると考えられるからである。
【0011】
ストランドは、任意の適切な方法により、例えば、溶液、ゲルまたは融解成形、好ましくは融解成形により作ることができる。
好ましくは第1の層の各々の少なくとも1%、好ましくは3%、より好ましくは少なくとも5%が融解する。特に好ましい態様では、第1の層の少なくとも10%(第1の層の体積に対する体積%)が融解する。
【0012】
好ましくは第1の層の30%以下、より好ましくは25%以下が融解する。特に好ましい態様では、第1の層の20%以下、特に15%以下(第1の層の体積に対する体積%)が融解する。
【0013】
好ましくは第3の層の各々の少なくとも1%、好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも5%が融解する。特に好ましい態様では、第3の層の少なくとも10%(第3の層の体積に対する体積%)が融解する。
【0014】
好ましくは第3の層の30%以下、より好ましくは25%以下が融解する。特に好ましい態様では、第3の層の20%以下、特に15%以下(第3の層の体積に対する体積%)が融解する。
【0015】
好ましくは合着層の少なくとも1%、好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも5%、最も好ましくは少なくとも10%(合着層全体の体積に対する体積%)が融解する。
好ましくは合着層の35%以下、より好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、最も好ましくは15%以下(合着層全体の体積に対する体積%)が融解する。
【0016】
好ましくは、合着層は、上記で第2の層として定義したタイプの層を複数、例えば、2〜40、好ましくは4〜30含み、そのような層の各々が、上記で第1および第3の層として定義したタイプの層の間に挟み込まれる。
【0017】
本発明のある態様において、第1および第3の層の配向化ポリマー材料のストランドは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、またはポリエステル(いずれもホモポリマー、コポリマー、またはターポリマーが含まれる)を含んでもよく、好ましくはそれらから成るものであってもよい。ポリマーブレンド物および充填ポリマーは一定の態様に使用できるであろう。特に好ましい態様において、それらストランドはホモポリマー材料、最も好ましくはポリプロピレンまたはポリエチレンホモポリマーのものである。
【0018】
本発明のある態様において、第2の層(1つならばその層であり、複数であれば各々の層である(以下同様))には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、またはポリエステル(いずれもホモポリマー、コポリマー、またはターポリマーとして含ま
れる)が含まれもよく、好ましくはそれらから成るものであってもよい。ポリマーブレン
ド物および充填ポリマーは一定の態様に使用できるであろう。特に好ましい態様において、第2の層はホモポリマー材料、最も好ましくはポリプロピレンまたはポリエチレンホモポリマーのものである。
【0019】
好ましくは、第1および第3の層は、同じタイプのポリマー材料(例えば、両者がポリプロピレン)のものである。好ましくは、第2の層は、同じタイプのポリマー材料のものである。最も好ましくは、第2の層は、それが好ましく低配向性のもの(従って、第1および第3の層よりも低い温度で融解する)である場合を除き、同じ化学組成およびグレードのものである。
【0020】
繊維を圧着すべき最低限の温度は、好ましくは、ゼロに外挿される固定ポリマー繊維の吸熱量(示差走査熱量測定(DSC)により測定される)の先端がその温度軸を横切る温度
である。好ましくは、繊維を圧着させる温度は、周囲環境の圧着圧力で融解するという制約ピーク温度以下、すなわち、その吸熱量が最高点に達する温度である。
【0021】
第2の層は、第1または第3の層上にその場で形成してもよく、例えば、第1または第3の層のそれぞれに、第2の層のポリマー材料を微粒子形態で、例えばスプレーすることにより形成してもよい。別のやり方では、好ましくは、第2の層を予め成形し、第1および第3の層上に敷く。第2の層はポリマー材料のストランドから予め成形してもよい。それらストランドは、不織ウェブにしておくこともできるであろう。それらは、複数のフィラメントまたは繊維を含む糸に形成してもよいし、モノフィラメント糸の形態で使用してもよい。ストランド、例えば、フィラメント糸、繊維糸またはテープは、織るか編むことにより織物に形成してもよい。しかし、最も好ましくは、第2の層は、フィルムを含むものであり、好ましくはフィルムから成るものである。そのフィルムは、典型的には、その形成から生じる一軸または二軸配向性を有するが、その配向性の程度は典型的には第1お
よび第3の層を成しているストランドよりもかなり小さくなる。第2の層は、複数のフィルム、例えば、2〜5のフィルムで作りうるが、好ましくは、単一フィルムにより構成される。
【0022】
好ましくは、第2の層(ただし、構成されたもの)は、100μmを越えず、より好ましくは40μmを越えず、最も好ましくは20μmを越えない厚さである(合着層中に圧着されている状態であって、それの融点未満の温度でのそれの厚さによる)。
【0023】
好ましくは、第2の層(ただし、構成されたもの)は、少なくとも5μm、より好ましくは少なくとも10μmの厚さである(合着層中に圧着されている状態であって、それの融点未満の温度でのそれの厚さによる)。
【0024】
好ましくは、第1および第3の層の各々の厚さは、第2の層の厚さより大きい。好ましくは、それら各々の厚さは、第2の層の厚さの少なくとも5倍である。
好ましくは、第1および第3の層の各々の厚さは、50μmを超え、より好ましくは100μmを超える。
【0025】
好ましくは、第1および第3の層の各々の厚さは、1mmを超えず、好ましくは400μmを超えない。
好ましくは、第2の層は、第1および第3の層のピーク融解温度よりも少なくとも5℃低い、より好ましくは少なくとも10℃低い、さらに好ましくは少なくとも20℃低いピーク融解温度を有する。
【0026】
本発明の熱圧着工程は、10MPaを超えない圧着圧力を使用することが好ましい。また、熱圧着工程の全体を通して単一圧力を使用することが好ましい。最も好ましい圧力は、1〜7MPa、特に2〜5MPaである。熱圧着圧力は冷却の間、維持されることが好ましい。
【0027】
好ましくは、それらポリマー材料は、圧着前に例えば、WO 98/15397に記載されている
タイプの架橋処理を受けてないものである。本発明は、架橋を必要とすることなく、“温度帯(temperature window)”の見地からの有益性を与えることが見出されたのである。
【0028】
好ましくは、それらポリマー材料は、圧着前に事前のコロナ放電処理を受けていないものである。より好ましくは、それらポリマー材料は、圧着前に表面処理を受けていないものである。
【0029】
ポリマー材料の圧着は、オートクレーブ中で行ってもよいし、ダブルベルトプレスまたは他の装置においてそのアッセンブリを所望の高温および圧力にかけられる圧着帯域に送り込むとしてもよい。このようにして、本法は連続的または半連続的な工程として操作しうる。冷却は、好ましくは圧着網体を、例えば、一軸上または二軸上で適用しうる伸張下に維持することによって、あるいは圧着圧力下に維持することによって、寸法変化に対する抑制を行いながら実施する。その抑制は、配向相の良好な特性の維持に役立ちうる。
【0030】
本製品は、本工程の間に製造された介在層または結合相で構成されたポリマー複合体とみなすことができ、これは、第2の層の完全な融解、第1および第33層の部分的な融解
、並びに第1および第3の層の融解していない大部分の繊維である配向化相から誘導されたものである。
【0031】
本発明によれば、融解した第2の層を採用しない従来の方法を使用して得られる特性を凌ぐ一定の機械的特性を持つ製品を作ることができる。特に、剥離強度および破損強度を
有意に改善することができ、引張弾性率は良好なレベルで維持されている。
【0032】
本発明の第2の側面によると、第1の側面の方法により作られる製品が提供される。
本発明の方法により作られた製品は、圧着(成形後)の後に行われる工程によって成形品に成形するのに適している。
【0033】
本発明の第3の側面によると、本発明の第3の側面の製品への熱と成形力の適用により成形品を成形する方法が提供される。適切には、第3の側面の製品は平面シートであることができ、その成形品は、例えば、湾曲状、曲面状、ドーム状またはそれ以外の非平面的なものでありうる。
【0034】
本発明の第4の側面によると、第3の側面の方法により成形された製品が提供される。
本発明の第5の側面によると、第1の側面の工程(b)および(c)の実施以前の第1の側面の工程(a)に規定される合着層が提供される。
【0035】
本発明は、下記のセットで記載した実施例を参照して更に具体的に示される。
これらの実施例では標準的な試験方法が使用されている。
引張弾性率および引張強度は、ASTM D638のプロトコルに従って測定した。曲げ強度は
、ASTM D790のプロトコルに従って測定した。
【0036】
剥離強度は、T-Peel test, ASTM D1876のプロトコルにより測定された。試験のための
試料は、10mm幅および100mm長さとし、100mm/minのクロスへッド速度を使用して試験した。そのテストは縦方向に平行に行った。
【0037】
すべての場合に3つの試料を試験し、それらの平均値をとった。
融解した材料のパーセンテージは、10℃/inの加熱速度で行われる示差走査熱量測定(DSC)により測定した。
【0038】
実施例セットA
織物層は、CERTRAN、つまり、Hoechest Celaneseから入手可能な配向化ホモポリマーポリエチレンの紡ぎフィラメント融解物で250デニールのマルチフィラメント糸から平面織りで織った。その特性は下記の通りである。
【0039】
【表1】
【0040】
織布の2つの層を使用して、2段階加圧法を使用するホットプレスで試料を加工した。アッセンブリが圧着温度に至る間に、0.7MPa(100psi)の初期圧力をかけた。この温度で2分間の滞留時間の後、2.8MPa(400psi)の高圧を1分間かけ、その間にアッセンブリを1分毎に約20℃の速度で100℃まで冷ました。試料は3つの条件で作製した。第1に、138℃の温度での標準的圧着とした。第2に、LDPEフィルムの層を織布の2つの層の間に配置してから126℃(そのフィルムの融点より高いが、その配向化繊維の融点より低い)で加工した。最後に、織布の2つの層の間にLDPEフィルムの層を1つ介在させ、136℃の温度で処理することにより試料を作製した。
【0041】
これらの試験の結果を下記の表に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
フィルムなしでの標準圧着技術については、138℃の圧着温度は、良好な係数とそれなりのレベルの層間結合性(剥離強度)を与えるのに最適であることがわかった。この最適化温度は、主要な結晶融解が起こる139℃に非常に近い。介在させるフィルムを使用し、その介在層フィルムを完全に融解するのにちょうど足りるが、繊維の表面を融解しない126℃で加工すると、良好な層間接着を生じるが、引張弾性率は低い。おそらくは、融解材料が繊維束に浸透することが難しいので繊維間の結合が乏しいことに起因すると考えられる。結局、介在層フィルムを使用するが136℃で加工され、配向化繊維の選択的融解を引き起こして作られた試料が、最も高い剥離強度および良好な引張弾性率を示す。加えて、それらの特性は、フィルムなしの圧着に必要とされる温度よりも2℃低い温度で得られ、139℃の温度での過剰融解という危険が少ないので加工帯(processing window)が拡がる。
【0044】
実施例セットB
これらの実施例では、米国のSynthetic Industries社により製造されたTENSYLON、配向化ポリエチレンテープを使用して、部分的に融解したモノリシック製品を製造した。それは次の特性を有する。
引張強度 1.5GPa
引張弾性率 88GPa
デニール 720
【0045】
これを織って織物にした。介在層のためにかなり類似したタイプのポリエチレンを入手した。それはデンマークのBorealis A/S社からのFL5580フィルムグレードで、融点130℃のものである。これを、標準的フィルム押出し機とフィルムダイを使用して約10〜15μmの厚さのフィルムに押出し成形した。
【0046】
圧着実験は、そのフィルムの融点(約130℃)とこの材料の通常の圧着範囲(148〜156℃)を含むところまでの温度との間にわたる温度範囲で行った。その織布は薄いので(面密度83g/m2)、圧着の間にそのアッセンブリ全体にわたり均一な圧力が得られるようにゴムシートを圧着用の正規金属板の内側に使用し、ゴムシートと圧着される合着層との間に軟性アルミニウム箔を敷いた。滞留時間は5分とした。冷却は20℃/minとした。
【0047】
最初の一連の試験において、試料は148〜156℃の温度範囲で、介在層を使用したもの、および介在層を使用しないものを圧着させた。図1、図2および図3は、これら試料の引張弾性率、剥離強度、および引張強度を示す。
【0048】
図1から、介在層を使用する場合、その引張弾性率は温度に伴う単調な低下を示し、通常の圧着で見られるピークとは対照的であることがわかる。その介在層は、低い圧着温度
での高いレベルの結合を生じさせ、それによりその特性が融解を生じる材料の量に左右されなくなると推察される。
【0049】
介在フィルム試料の剥離強度(図2)は、温度範囲の全体にわたり、通常の圧着と比較して高い。
引張強度(図3)は、それら2つの試料について類似しており、この特性が介在層の使用により低下するかも知れないという懸念は解消された。
【0050】
我々は、圧着シート特性の最適な組合せを見定めることを企図して、性能指数(PI)を導いた。引張弾性率E、引張強度σ、および剥離強度Peelを考慮し、これら各特性が等し
く重要であると仮定すると、これは次式のように定義される。
【0051】
【数1】
【0052】
この式中、下付き文字Tは特定の圧着温度を示し、下付き文字maxは測定したすべての試料に関する最大値を示す。性能指数の値は図4に示される。図4から、介在層試料は、特性の組合せの変動性が小さく、特に低い圧着温度で、対応する介在層のない試料よりも良い特性を有することがわかる。このことは、介在層を使用する場合は低い圧着温度を使用することができ、加工上の利点が得られるとの見解を確認するものである。
【0053】
実施例セットC
本実施例の試験では、実施例セットBと同じ材料、装置および技術を使用した。本実施例は、3つの温度で作られた圧着化シート:つまり、154℃の標準的な最適温度で作られた通常の圧着化試料、152℃で作られた介在層試料、および135℃(介在層を融解するのに十分であるが、TENSYLONテープのいかなる部分も融解しない)で作られた比較用介在層試料の特性の比較を提示する。結果を下記に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
介在層の融点をちょうど上回るが配向化テープの融解温度範囲を下回る温度(135℃)
での圧着は、適度な機械的特性を与える。152℃で介在層と共に作られた試料は、154℃で作られた通常の圧着化試料に対して匹敵する値の引張弾性率、引張強度、および剥離強度を示す。したがって、フィルムを使用することは、圧着温度を2℃下げることが見込まれ
、加工帯の幅を増加させる。
【0056】
実施例セットD
ポリプロピレン(PP)フィルムの介在層をPP織物テープの通常の層との組合せで使用す
ることの影響を調べるために試験を行った。本試験のPPフィルムは、延伸して織ったテープに使用されるものと同じポリマーグレードとした。そのポリマーはグレード100GA02で
あり、イギリスのBP Chemicals, Grangemouthから入手した。
【0057】
そのフィルムは下記の特性を有するものであった。
Mw=78,100
Mn=360,000
密度=910Kg/m3
【0058】
フィルムは、Brabenderシングルスクリュー押出し機および260℃に設定した標準フ
ィルムダイを使用して押出し成形した。押出しスクリューおよび巻き込み速度(8rpmおよび4.6m/min)を選択して、約15μmのフィルム厚を得られるようにした。
【0059】
本実験の次の段階では、介在層としてフィルムを使用するものと、それを使用しないもの(比較例)の一連の試料を製造し、介在層の圧着化シート特性への影響を評価した。10℃/minの加熱速度で行ったDSC試験では、フィルムのピーク融点が162℃であり
、他方、配向化テープのピーク融点は194℃であることが示された。したがって、圧着化試料は、フィルムを完全に融解するのに十分に高いが、配向化相に何らかの融解を引き起こすほど高くはない175℃の温度で製造した。
【0060】
使用された材料は織物テープであり、これはスリットフィルムから、延伸比を通常10:1として成形し、6060スタイルに織ったものとした。5分間の滞留時間での単一加圧処理(4.6MPa)を使用した。試料は、180、187、189、191、193、195、197および200℃でも圧着させた。冷却速度は50℃/minとし、加熱盤に冷水を流して行った。
【0061】
最初の一連の試験において、4つの試料に“T”剥離試験を使用して、層間結合強度の
測定を行った。結果を図5に示す。
すべての圧着温度で、剥離強度が介在層を使用する場合に高くなることがわかる。
次の段階では、様々な材料の応力−歪み挙動を測定し、これらがどのようにして低減したのかを見た。
結果を図6および図7に示す。
【0062】
図6に示されるように、実験上の散らばり範囲において2つの試料グループの初期引張弾性率の間に有意な差異はなかった。引張弾性率は、191℃から197℃までに双方の試料セットに比較的一定性が見られた。このように、この試料セットにおいて織物層の間への薄いフィルム材料の導入は、圧着化試料引張弾性率への効果が認められない。
【0063】
図7に示される引張強度の結果には、2つの試料セットの間に明白な相違があった。ここでフィルムと共に作られた試料は、通常とおりに圧着された試料よりも高い引張強度を示した。この違いは、配向化テープの表面がほとんど融解しない場合の低い温度で最大となる。しかしながら、“最適な”圧着範囲においてさえも、フィルム試料は僅かながら高い引張強度を示す。
【0064】
下記の表は、引張および剥離強度試験(上記したASTMプロトコル)から得られた結果のまとめを示し、剥離強度、引張弾性率、引張強度、および破壊歪みに関する。
上記の4つのパラメータの最適な組合せを見定めて介在フィルムの影響力を評価することに役立てるため、下記の性能指数(PI)を導き出した。試験した特性の各々が等しく重要であると仮定すると、これは下式のようになる。
【0065】
【数2】
【0066】
この式中、下付き文字Tは特定の圧着温度を示し、下付き文字maxは測定したすべての試料に関する最大値を示す。性能指数の値は、下記の表および図8にも示す。介在層試料は、このやり方で分析すると、通常の試料と比較してバランスの良い特性を有することがわかるが、剥離強度が最も顕著な改善を示す。
【0067】
介在層としてフィルムを使用して本発明により作製された試料のPI値は、所定の各圧着温度で、対応する“フィルムなし”での値を上回った。最大の性能は、織物に幾らかの融解が生じるとき、とりわけ189〜197℃付近の圧着温度で達成された。PI値は“介在層”試料において高かった。
【0068】
【表4】
【0069】
ポリプロピレン剥離片表面のSEM画像
175℃、191℃および193℃で圧着させた試料を、剥離試験後にそれらの剥離片表面のSEM撮影のために選択した。それら試料は下表の通りである。
【0070】
【表5】
【0071】
これらの試料について測定された剥離強度は、下表に示す通りである。
【0072】
【表6】
【0073】
関連するSEM顕微鏡写真は図9〜18である。これら顕微鏡写真についての考察を以下
に示す。
175℃−フィルムなし
【0074】
図9:
この図は低倍率顕微鏡写真(×50)であり、試料の端部および破片表面を示す。重要な点は、175℃の圧着温度ではテープおよび層の結合が非常に弱いということである。
【0075】
図10:
この電子顕微鏡写真(×30)は、175℃でフィルムなしで作られた試料についての剥離片表面を示す。表面破損はほとんどない。後述の電子顕微鏡写真からわかるが、表面破損の量は剥離強度と非常に良い相関関係にあり、表面を分離するのに要求されるエネルギー量の痕跡でもある。織物層の結合が乏しいならば、それら層間に破壊が進み、破損をほとんど引き起こさずに低い剥離荷重の原因となる。それら層の結合が強いならば、その破壊道は配向化テープまたはフィルム層に進入せざるをえず、それが剥離荷重を上昇させ、その時に試料はかなり粗い表面外観を示すことになる。
175℃−フィルムあり
【0076】
図11:
この図は試料端部の低倍率電子顕微鏡写真(×50)である。やはりこの温度では、層およびテープの結合は全般的に弱いことがわかる。
【0077】
図12:
この顕微鏡写真(×30)は、フィルムが位置する層間に関連して、かなりの表面破損があることを示す。それは測定された剥離強度と相関関係にある。しかし、テープそれら自体が下側のテープ(すなわち、フィルムの無いところ)とうまく結合していないことも
示される。
175℃の結果のまとめ
・フィルムを使用して、フィルム融点より高いが、配向化テープが融解する温度より低い温度で処理することは、フィルムが存在する部分でうまく結合するが、ほかの部分では結合の弱い構造を与える。明らかに、フィルムが織物テープ層の全体に浸透することが難しかったのであろう。
・フィルムを使用せずに、配向化テープの融点よりかなり低い温度で処理することは、構造全体にわたって弱い結合を与える。
191℃−フィルムなし
【0078】
図13:
この図は低倍率電子顕微鏡写真(×50)であり、試料の端部および剥離片表面を示す。重要な点は、配向化テープの表面がまさに融解し始めるというこの191℃の圧着温度では、層は非常にうまく結合し、その圧着化シートはより均質であるということである。その圧着化シートの個々のテープは175℃で圧着したもの(図10)よりも外観がわかりにくい。
【0079】
図14:
この図は低倍率電子顕微鏡写真(×30)であり、191℃でフィルムなしで作られた試料についての剥離片表面を示す。予期していた通り、175℃で作られた試料と比較して表面破損が増加している。ほとんどの従来の圧着化試料(すなわち、フィルム不使用のもの)のように、表面破損がパッチ状であり、幾らかの領域で破損が顕著であるが、他の領域はそうでもない。
191℃−フィルムあり
【0080】
図15:
この図は、試料端部の低倍率電子顕微鏡写真(×50)である。この温度で層はうまく結合し、その構造は、まさにこの通り均質であることがわかる。
【0081】
図16:
この電子顕微鏡写真(×30)は、191℃でフィルムを使用して作られた試料は剥離して多量の表面破損を生じており、これは当該試料について測定された高い剥離力を反映したものである。その破損は、まさにこの通り試料表面に一様に広がっているのが見える。おそらくは、フィルムの介在層での導入は、2つの織物層が互いに適合するようにして、いかなる局所的段差であってもこれを均すことができるのである。
191℃の結果のまとめ
・フィルムを使用して、配向化テープが融解し始める温度で処理することは、全体的に均質である構造と介在層領域(その構造内の弱い部分)との組合せを作り出す。それらは非常にうまく結合している。
・破損のレベル(すなわち、結合性)は、介在フィルムを使用する場合に表面全体にかけて一様である。
・175℃でフィルムを使用して作られた試料についての破損のレベルは、191℃でフィルムを使用せずに作られた試料についての破損のレベルに類似している。これは、剥離荷重値の類似性を反映したものである。
193℃−フィルムなし
【0082】
図17:
この図(×30)は、193℃でフィルムを使用せずに作られた剥離片表面を示す。その剥離片表面は、その破損の量が191℃でフィルムを使用せずに作られた試料の剥離片表面(図14)と同様であるが、191℃でフィルムを使用して作られた試料の剥離片表
面上ほどではないことを示す。その表面破損の量は、測定された剥離荷重と良く相関する。191℃でフィルムを使用して作られた試料のように、その領域上にわたって見られる破損はパッチ状である。
193℃−フィルムあり
【0083】
図18:
この顕微鏡写真(×30)は、フィルム内の粘着破壊(cohesive failure)である領域、およびフィルム/テープ界面で接着破壊(adhesive failure)の領域を示す。これは、破壊がこれら2つの様式の組合せでありうることを示唆している。
193℃の結果のまとめ
・フィルムを使用して、配向化テープが融解し始める温度で処理することは、全体にわたり均質である構造およびうまく結合した介在層領域との組合せを生じさせる。
・破損のレベル(すなわち、結合性)は、介在フィルムを使用した場合に表面全体にわたって一様である。介在フィルムは、織物層が一緒にプレスされるときに存在していたかも知れない如何なるギャップも容易に埋合せることができると示唆される。
・193℃で圧着させた試料の剥離片表面上に見られる破損のレベルは、対応する191℃の表面上の破損のレベル(図15、16)よりも高い。それは、関連する剥離強度の増加を反映したものである。
【0084】
実施例セットE
本実施例のセットにおいて、異なる温度で、介在層を使用したものおよびそれを使用しないものを圧着させた試料の曲げ特性を試験した。
試料調製は既に述べた通りである。上記したASTMテスト法を使用した。
【0085】
図19は、曲げ弾性率および曲げ強度の両方についての結果を示す。配向化テープの表面の選択的融解が始まるより温度より下では(〜187℃)、介在フィルム試料の曲げ特性は、従来のように圧着させた試料よりも優れている。この温度よりも上では、2つの試料セットの曲げ特性は非常に類似している。両方の試料セットについて、195℃の圧着温度での曲げ特性ピーク
【0086】
実施例セットF
本実施例のセットにおいて、実施例セットDに使用したのと同じ方法およびポリプロピレン材料を使用して、介在層厚さの効果を調べた。上記の実施例のように、厚さ10〜15μmのフィルムを介在層として使用し、そのようなフィルムを0〜3枚使用し、複数のフィルムを一緒に積み重ねた。
【0087】
応力−歪み挙動および剥離強度についての平均値を下記の表に示す。
【0088】
【表7】
【0089】
それらの結果から、引張弾性率はフィルム厚さが増加するに従い落ちること;引張強度は単一層フィルム厚でピークとなるが、やはり厚さが増加するに従い落ちること;および、剥離強度はすべてのフィルム厚さの層で類似するが、いずれも介在層が無い比較用試料よりも高いということが示された。
【0090】
それらの結果を総合すると、単一層が最適であり、引張弾性率の最小限の喪失で剥離強度の最大限の増加、および引張強度における維持または若干の改善を伴う。
【0091】
実施例セットG
本実施例セットにおいて、SEM顕微鏡写真を使用して、実施例セットBに記載したのと
同じ材料および工程であるが、複数の介在層を有するものを用いた剥離片表面を調べた。その加工温度は193℃としたので、実施例セットDである図17(フィルムなし)および図18(一層のフィルム)との比較になる。図20および図21は、対応する剥離試験品であるが、それぞれ2つおよび3つの100GA02ポリマーフィルムの層を有するものの写
真である。比較のために説明すると、実施例セットDの図18の単一層試料では、下側の配向化テープの上にフィルム層Fを見ることができる。図20では、フィルムの2つの層で作られた試料の端部は、その試料内に位置するフィルム層Fおよび剥離面そのものの上にあるフィルム層をはっきりと示している。破壊はこの場所で優先的にフィルム層を通じて進行したことが明らかである。この顕微鏡写真から、破損帯域がフィルム層内に位置していることがわかる。図21は、この通り3つのフィルム層F で構成された厚いフィルム層を示す表面の領域を示す。その破損帯域は、全体のフィルム厚よりもかなり薄いことがわかる。
【0092】
実施例セットH
本実施例セットにおいて、使用されるフィルムタイプの重要性を検査した。幾つかの試験において介在層は、配向化テープを作るのに使用したのと同じポリマー(上記したPP 100GA 02材料)から作られた。他の試験において、2つの別の介在層フィルムを調べた。
すなわち、次のものである。
1) ICI社から入手した融点163℃の(30μm厚さの)ポリプロピレンフィルム;
2) 社内調達のPEフィルム:これには、Brabenderシングルスクリュー押出し機および上
記のPPフィルムを作るために用いたのと同じフィルムダイを使用した。これにはBOREALIS
PE(フィルムグレードFL5580)を使用し、最終押出しフィルムは10〜15μm厚とし
た。
【0093】
比較実験は、上記したのと同じPP織布(10:1延伸テープ、6060スタイル、100GA 02
ポリマー)を使用して行った。実験は2つの温度:つまり、比較のために各フィルムを融解するのに十分であるが、配向化材料の表面を融解するには不十分である175℃、および通常の熱圧着に最適な値である193℃で行った。
【0094】
結果を下表に示す。
【0095】
【表8】
【0096】
それらの結果から、最良の試料は適合性PPフィルムで作られた試料であることが示唆される。
【0097】
実施例セットI
本実施例において、ポリエステル(PET)材料への本発明の適用の評価を行った。
PET織物、および同一化学組成のポリマーは、KOSA, GmbH and Co. KGにより供給されたものである。
【0098】
そのポリマーおよび織物の詳細は下記の通りである。
ポリマー タイプT51-IV〜0.85, Mn〜22,500
織物重量 200g/m2
配向型 マルチフィラメント束
1100デシテックス
織り方 平織り
9/9 スレッド/cm
ピーク融点 250℃
【0099】
PETフィルム(〜15μm厚)を、標準押出し機およびフィルムダイを使用してポリマ
ーから成形した。その織布とは異なる化学組成の第2のPETフィルムもこれらの試験に使
用した。このフィルムを僅かに二軸配向化させた。
本実験は、介在フィルム使用と不使用の双方でPET織物材料への本発明の適用性を見た
ものである。両フィルムを使用して試料を作製した。
【0100】
下記の表は、同じ組成のフィルムを使用するもの、およびそれを使用しないもので、257℃、258℃、および259/260℃で作製した試料の応力−歪み挙動と剥離強度
との間の比較を示す。明らかなように、フィルムを使用して作製したすべての試料は、フ
ィルムなしで所定の温度で作製した試料を超える引張弾性率、引張強度、および剥離強度の増加を示した。
【0101】
【表9】
【0102】
別の実験として、257℃の圧着温度で、フィルムを使用しない試料および両PET フィルムを使用する試料を作製し、上述のやり方で試験した。それらの結果は次の通りである。
【0103】
【表10】
【0104】
本実験では、いずれかのフィルムの存在により機械的特性が有意に押し上げられること;および、それらフィルムは異なる機械的特性に増強を与えることがわかる。すなわち、引張強度および剥離強度は同一フィルムで高くなるが、異なるフィルムでの試料の引張弾性率は、同一フィルムでの試料よりも高くなる。
【0105】
重要な発見は、これら機械的特性が257℃の圧着温度を使用して達成されたということである。先行技術の方法(フィルムなし)による圧着PETのための最適温度は260℃
とみなされている。PETでの加工帯は狭く、これはPETに適用される熱圧着工程の商業化を妨げかねない。257℃への圧着温度の低下は、それでもなお良好な機械的特性を達成すると共に、有意な実益を示唆するものである。
【0106】
実施例セットJ
ポリエチレン剥離片表面のSEM画像
実施例セットBに記載したようにして、TENSYLON 10:1 PE織物テープ(6060スタイル)を使用して剥離試験試料を作製した。試料は、介在層を使用したもの、およびそれを使用しないもので作った。これらの試験では、配向化テープと同じグレードのフィルムを入手できなかったので、類似グレードであるBorealis FL5580材料を調達した。
【0107】
8つの試料を実験した。それらは135℃、148℃、152℃、および154℃で、介在層フィルムを使用するもの、およびそれを使用しないもので圧着させ、そして剥離試
験にかけた。
【0108】
【表11】
【0109】
関連のSEM顕微鏡写真を図22〜図37に示す。これら顕微鏡写真についての考察は以
下の通りである。
【0110】
図22〜25:
これらの図は、フィルムを使用せずにそれぞれ135、148、152、および154℃で作られた試料からの典型的な剥離片表面の低倍率顕微鏡写真を示す。圧着温度が上昇するに従い、表面破損のレベルも増加する。PEテープの表面が融解しない最低の温度では、それらテープが結合しない。テープの表面がちょうど融解し始める148℃では、それらテープは剥離表面に破損がないが、よく結合しているように見える。
152℃では表面破損が増加しており、これは測定された剥離加重の増加を反映したものである。PP実験の場合のように、フィルムを使用しないと、表面破損の領域は変動的である。
154℃では、破損はさらに増加する。
【0111】
図26〜29:
これら4つの顕微鏡写真は、フィルムを使用してそれぞれ135、148、152、および148℃で作られた試料を示す。それらすべては、同じ温度で作られた同等の試料と比較して表面破損の増加を示す。PP実験の場合と同じにように、幾つかの剥離片表面上に、特に135℃でフィルムをまだ見ることができる。圧着温度が上昇するに従い、破損の量が増加する。154℃でのみ、配向化テープ内に実質的な破損が見える(すなわち、テープの表面が実質的に融解する温度である)。
他の温度では、その破壊様式はフィルム/織布表面で起ったものらしく、すなわち、少なくとも部分的な接着破壊のようである。したがって、最高のパフォーマンスは、フィルム融解とテープ外表面の融解の組合せであることが確認される。
【0112】
図30:
135℃ フィルムなし: 別のテープの下側にそれに対し90度で入り込む一つのテープが示されており、この温度ではテープ間の結合を確認できない。
【0113】
図31:
135℃ フィルムあり: この高倍率顕微鏡写真は、破損し引き裂かれた介在層を示すが、幾つかの場合にフィルムと織物層との間で破壊が起こっていた。
【0114】
図32:
148℃ フィルムなし: この顕微鏡写真はテープ間の接合を示し、それらテープ間はかなり良い結合であることを示す。しかしながら、表面破損は最小限にとどまり、これは表面が相当容易に分離したこと(すなわち、低い剥離強度)を示唆する。
【0115】
図33:
148℃ フィルムあり: 表面破損の増加が示されるが、まだ接着破壊である。
【0116】
図34:
152℃ フィルムなし: この試料上は、フィルムなしで行われたより低い温度と比較して、表面破損が増加している。
【0117】
図35:
152℃ フィルムあり: 接着破壊が示される。
【0118】
図36:
154℃ フィルムなし: フィルムなしでの最適温度である:剥離の際に配向化テープの実質的な破損が生じている。
【0119】
図37:
154℃ フィルムあり: この試料は粗い剥離表面が見受けられ、これは測定された最大剥離荷重と相関している。この圧着温度では、破壊が明らかに粘着破壊である。左側のフィルム片は、他の表面上の隣接するテープから剥離した材料の痕跡を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、介在フィルム試料の引張弾性率を示す図である。
【図2】図2は、介在フィルム試料の剥離強度を示す図である。
【図3】図3は、介在フィルム試料の引張強度を示す図である。
【図4】図4は、性能指数を示す図である。
【図5】図5は、実施例セットDの剥離試験の結果を示す図である。
【図6】図6は、実施例セットDの応力−歪み挙動の測定結果を示す図である。
【図7】図7は、実施例セットDの応力−歪み挙動の測定結果を示す図である。
【図8】図8は、性能指数を示す図である。
【図9】図9は、剥離片表面(175℃−フィルムなし)のSEM顕微鏡写真(×50)を示す図である。
【図10】図10は、剥離片表面(175℃−フィルムなし)のSEM顕微鏡写真(×30)を示す図である。
【図11】図11は、剥離片表面(175℃−フィルムあり)のSEM顕微鏡写真(×50)を示す図である。
【図12】図12は、剥離片表面(175℃−フィルムあり)のSEM顕微鏡写真(×30)を示す図である。
【図13】図13は、剥離片表面(191℃−フィルムなし)のSEM顕微鏡写真(×50)を示す図である。
【図14】図14は、剥離片表面(191℃−フィルムなし)のSEM顕微鏡写真(×30)を示す図である。
【図15】図15は、剥離片表面(191℃−フィルムあり)のSEM顕微鏡写真(×50)を示す図である。
【図16】図16は、剥離片表面(191℃−フィルムあり)のSEM顕微鏡写真(×30)を示す図である。
【図17】図17は、剥離片表面(193℃−フィルムなし)のSEM顕微鏡写真(×30)を示す図である。
【図18】図18は、剥離片表面(193℃−フィルムあり)のSEM顕微鏡写真(×30)を示す図である。
【図19】図19は、実施例セットEの曲げ弾性率および曲げ強度の両方についての結果を示す。
【図20】図20は、2つの100GA02ポリマーフィルムの層を有する剥離試験品のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図21】図21は、3つの100GA02ポリマーフィルムの層を有する剥離試験品のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図22】図22は、135℃で作られた試料からの剥離片表面のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図23】図23は、148℃で作られた試料からの剥離片表面のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図24】図24は、152℃で作られた試料からの剥離片表面のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図25】図25は、154℃で作られた試料からの剥離片表面のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図26】図26は、135℃で作られた試料からの剥離片表面のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図27】図27は、148℃で作られた試料からの剥離片表面のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図28】図28は、152℃で作られた試料からの剥離片表面のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図29】図29は、148℃で作られた試料からの剥離片表面のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図30】図30は、(135℃ フィルムなし)のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図31】図31は、(135℃ フィルムあり)のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図32】図32は、(148℃ フィルムなし)のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図33】図33は、(148℃ フィルムあり)のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図34】図34は、(152℃ フィルムなし)のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図35】図35は、(152℃ フィルムあり)のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図36】図36は、(154℃ フィルムなし)のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図37】図37は、(154℃ フィルムあり)のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【発明の開示】
【0001】
本発明は、配向化ポリマーストランドから作られたポリマー製品に関し、特にそのような製品を作るための改善された方法に関する。
【0002】
近年、堅くて強いシートを作るためにポリマーストランドを圧着する方法が開発されている。一例がGB 2253420Aに開示されており、そこでは配向化ポリマーのストランドのア
ッセンブリが2段階工程において熱圧着され、良好な機械特性を有するシートが形成される。その方法は、ストランドを、接触状態に維持するのに十分な圧力をかけながら圧着温度にしてこの温度で保持し、その後、高圧(40-50Mpa)(圧着圧力)で数秒間圧着させる初期段階を伴う。この方法において、ストランドの表面の一部分は融解し、その後冷却すると再結晶化する。この再結晶化相はストランドを互いに結合させ、良好な機械特性の最終シートを生じさせる。GB 2253420Aにおいて、その方法はポリエステルおよびPEEK(ポ
リエーテルエーテルケトン)を含む多くのタイプの配向化ポリマーに適用可能であるが、好ましいポリマーは配向化ポリオレフィン類であるとされる。
【0003】
GB 2253420Aに記載されている方法の欠点の一つは、融解が起こる温度スパンが非常に
狭いことである。したがって、ストランドの外側域の部分的融解を所望の程度達成することは難しい。ストランドの不充分な融解は、貧弱な機械的特性をもたらす。ストランドの過剰な融解は配向性の喪失をもたらし、機械的特性を損なう。製品が“不十分な融解”も“過度な融解”もされないようにするには、厳密な工程制御が必要とされる。
【0004】
WO 98/15397において、関連する方法が開示されている。その方法では、融解して成形
されたポリオレフィンストランドのアッセンブリを完全に接触させて、10MPa以下の圧着
圧力に供しながら、ストランドの部分を融解させるのに十分な高温にて維持する。望ましいならば、それらストランドを前架橋法、好ましくは、アルキンまたはジエン化合物を含有する不活性雰囲気において電離放射線でストランドを照射し、次いでアルキンまたはジエン化合物を含有する不活性雰囲気においてその被照射ポリマーを高温でアニールすることを含むアニーリング工程を行うことを含む、放射線架橋法に供してもよい。前架橋により圧着温度はあまり重要でなくなり、機械的特性、特に高温での破壊強度は改良されると言われている。
【0005】
ポリエチレンフィルムをポリエチレン繊維層の間に挟み込み、その合着層を熱圧着に供した製品の使用に関する発行された研究がある。
Maraisらは、Composites Science and Technology, 45, 1992, pp.247-255において、
フィルムの融点より高いが、繊維層の融点より低い温度にて圧着させるという方法を開示している。その結果得られた製品は適度な機械的特性を有する。
【0006】
Ogawaらは、Journal of Applied Polymer Science, 68, 1998, pp.1431-1439において
、超高分子量ポリエチレン繊維(融点 145-152℃)層と低密度ポリエチレンフィルム(融点 118℃)層とで作られた製品を開示している。その成形温度は繊維の融点と介在層(マトリックス)の融点との間であるとされる。その繊維の体積率は0.69または0.74であるとされる。しかしながら、それら製品は、おそらく繊維とマトリックス(融解したフィルム)との間の弱い接着のために驚くほど貧弱な特性を有するとされる。別の製品はポリエチレン繊維単独で作られており、その方法条件は部分的融解を誘起して貧弱な特性を招いた。
【0007】
熱圧着方法における圧着温度の臨界点を低下させることができる簡易かつ実用的な手段
についての必要性が存在する。加えて、得られる製品における機械的特性の改良についての必要性も引き続き存在する。本発明の目的は、これら必要性のいずれかまたは両方を満足させる態様を少なくとも幾分実用的なやり方で達成することである。
【0008】
したがって、本発明の第1の側面においては、ポリマー製品を製造するための方法であって、次の各工程:
(a) 連続層、即ち
(i) 配向化したポリマー材料のストランドで構成された第1の層;
(ii) ポリマー材料の第2の層;
(iii) 配向化したポリマー材料のストランドで構成された第3の層;
であって、該第2の層が、該第1および第3の層のピーク融解温度よりも低いピーク融解温度を持つ連続層を有する合着層を形成すること;
(b) 該第1の層の一部分を融解させ、該第2の層を完全に融解させ、且つ第3の層の一
部分を融解させ、そして該合着層を圧着させるのに十分な時間、温度および圧力の条件に該合着層を供すること;および
(c) 該圧着化合着層を冷却すること;
を含む方法が提供される。
【0009】
第1および第2の側面において“冷却すること”には、圧着化合着層を自然に冷まさせること;強制的通風冷却;急冷;その他のあらゆるタイプの加速冷却;および遅延冷却が含まれうる。
【0010】
“ストランド”という用語は、本発明に有用なすべてのポリマー材料の配向化伸長エレメントを意味するものとして本明細書中で使用する。それらは、繊維の形態でもフィラメントの形態でもよい。それらは、例えば、融解成形したフィルムのスリット切断によるかまたは押出しより成形されるバンド、リボン、またはテープの形態でありうる。それらが如何なる形態であろうがそれらストランドは、本発明の方法のために不織ウェブ(non-woven web)にしておいてもよい。別のやり方では、それらは、複数のフィラメントまたは繊維が含まれる糸に成形してもよいし、モノフィラメント糸の形態で使用してもよい。ストランドは、通常、織るか編むことにより織物(fabric)に形成される。場合により、ストランドをWO 98/15397に記載されているような架橋法に供してもよい。織物は、好ましくはテープ、繊維糸、またはフィラメント糸で作られ、またそれらは、繊維またはフィラメント糸とテープとの混合物を含んでもよい。前記第1および第3の層に使用するのに最も好ましいものは、平面テープから織られた織物である。この幾何学的配置は、その配向化した相の特性を最終圧着化シートの特性へ最も良く変換するものであると考えられるからである。
【0011】
ストランドは、任意の適切な方法により、例えば、溶液、ゲルまたは融解成形、好ましくは融解成形により作ることができる。
好ましくは第1の層の各々の少なくとも1%、好ましくは3%、より好ましくは少なくとも5%が融解する。特に好ましい態様では、第1の層の少なくとも10%(第1の層の体積に対する体積%)が融解する。
【0012】
好ましくは第1の層の30%以下、より好ましくは25%以下が融解する。特に好ましい態様では、第1の層の20%以下、特に15%以下(第1の層の体積に対する体積%)が融解する。
【0013】
好ましくは第3の層の各々の少なくとも1%、好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも5%が融解する。特に好ましい態様では、第3の層の少なくとも10%(第3の層の体積に対する体積%)が融解する。
【0014】
好ましくは第3の層の30%以下、より好ましくは25%以下が融解する。特に好ましい態様では、第3の層の20%以下、特に15%以下(第3の層の体積に対する体積%)が融解する。
【0015】
好ましくは合着層の少なくとも1%、好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも5%、最も好ましくは少なくとも10%(合着層全体の体積に対する体積%)が融解する。
好ましくは合着層の35%以下、より好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、最も好ましくは15%以下(合着層全体の体積に対する体積%)が融解する。
【0016】
好ましくは、合着層は、上記で第2の層として定義したタイプの層を複数、例えば、2〜40、好ましくは4〜30含み、そのような層の各々が、上記で第1および第3の層として定義したタイプの層の間に挟み込まれる。
【0017】
本発明のある態様において、第1および第3の層の配向化ポリマー材料のストランドは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、またはポリエステル(いずれもホモポリマー、コポリマー、またはターポリマーが含まれる)を含んでもよく、好ましくはそれらから成るものであってもよい。ポリマーブレンド物および充填ポリマーは一定の態様に使用できるであろう。特に好ましい態様において、それらストランドはホモポリマー材料、最も好ましくはポリプロピレンまたはポリエチレンホモポリマーのものである。
【0018】
本発明のある態様において、第2の層(1つならばその層であり、複数であれば各々の層である(以下同様))には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、またはポリエステル(いずれもホモポリマー、コポリマー、またはターポリマーとして含ま
れる)が含まれもよく、好ましくはそれらから成るものであってもよい。ポリマーブレン
ド物および充填ポリマーは一定の態様に使用できるであろう。特に好ましい態様において、第2の層はホモポリマー材料、最も好ましくはポリプロピレンまたはポリエチレンホモポリマーのものである。
【0019】
好ましくは、第1および第3の層は、同じタイプのポリマー材料(例えば、両者がポリプロピレン)のものである。好ましくは、第2の層は、同じタイプのポリマー材料のものである。最も好ましくは、第2の層は、それが好ましく低配向性のもの(従って、第1および第3の層よりも低い温度で融解する)である場合を除き、同じ化学組成およびグレードのものである。
【0020】
繊維を圧着すべき最低限の温度は、好ましくは、ゼロに外挿される固定ポリマー繊維の吸熱量(示差走査熱量測定(DSC)により測定される)の先端がその温度軸を横切る温度
である。好ましくは、繊維を圧着させる温度は、周囲環境の圧着圧力で融解するという制約ピーク温度以下、すなわち、その吸熱量が最高点に達する温度である。
【0021】
第2の層は、第1または第3の層上にその場で形成してもよく、例えば、第1または第3の層のそれぞれに、第2の層のポリマー材料を微粒子形態で、例えばスプレーすることにより形成してもよい。別のやり方では、好ましくは、第2の層を予め成形し、第1および第3の層上に敷く。第2の層はポリマー材料のストランドから予め成形してもよい。それらストランドは、不織ウェブにしておくこともできるであろう。それらは、複数のフィラメントまたは繊維を含む糸に形成してもよいし、モノフィラメント糸の形態で使用してもよい。ストランド、例えば、フィラメント糸、繊維糸またはテープは、織るか編むことにより織物に形成してもよい。しかし、最も好ましくは、第2の層は、フィルムを含むものであり、好ましくはフィルムから成るものである。そのフィルムは、典型的には、その形成から生じる一軸または二軸配向性を有するが、その配向性の程度は典型的には第1お
よび第3の層を成しているストランドよりもかなり小さくなる。第2の層は、複数のフィルム、例えば、2〜5のフィルムで作りうるが、好ましくは、単一フィルムにより構成される。
【0022】
好ましくは、第2の層(ただし、構成されたもの)は、100μmを越えず、より好ましくは40μmを越えず、最も好ましくは20μmを越えない厚さである(合着層中に圧着されている状態であって、それの融点未満の温度でのそれの厚さによる)。
【0023】
好ましくは、第2の層(ただし、構成されたもの)は、少なくとも5μm、より好ましくは少なくとも10μmの厚さである(合着層中に圧着されている状態であって、それの融点未満の温度でのそれの厚さによる)。
【0024】
好ましくは、第1および第3の層の各々の厚さは、第2の層の厚さより大きい。好ましくは、それら各々の厚さは、第2の層の厚さの少なくとも5倍である。
好ましくは、第1および第3の層の各々の厚さは、50μmを超え、より好ましくは100μmを超える。
【0025】
好ましくは、第1および第3の層の各々の厚さは、1mmを超えず、好ましくは400μmを超えない。
好ましくは、第2の層は、第1および第3の層のピーク融解温度よりも少なくとも5℃低い、より好ましくは少なくとも10℃低い、さらに好ましくは少なくとも20℃低いピーク融解温度を有する。
【0026】
本発明の熱圧着工程は、10MPaを超えない圧着圧力を使用することが好ましい。また、熱圧着工程の全体を通して単一圧力を使用することが好ましい。最も好ましい圧力は、1〜7MPa、特に2〜5MPaである。熱圧着圧力は冷却の間、維持されることが好ましい。
【0027】
好ましくは、それらポリマー材料は、圧着前に例えば、WO 98/15397に記載されている
タイプの架橋処理を受けてないものである。本発明は、架橋を必要とすることなく、“温度帯(temperature window)”の見地からの有益性を与えることが見出されたのである。
【0028】
好ましくは、それらポリマー材料は、圧着前に事前のコロナ放電処理を受けていないものである。より好ましくは、それらポリマー材料は、圧着前に表面処理を受けていないものである。
【0029】
ポリマー材料の圧着は、オートクレーブ中で行ってもよいし、ダブルベルトプレスまたは他の装置においてそのアッセンブリを所望の高温および圧力にかけられる圧着帯域に送り込むとしてもよい。このようにして、本法は連続的または半連続的な工程として操作しうる。冷却は、好ましくは圧着網体を、例えば、一軸上または二軸上で適用しうる伸張下に維持することによって、あるいは圧着圧力下に維持することによって、寸法変化に対する抑制を行いながら実施する。その抑制は、配向相の良好な特性の維持に役立ちうる。
【0030】
本製品は、本工程の間に製造された介在層または結合相で構成されたポリマー複合体とみなすことができ、これは、第2の層の完全な融解、第1および第33層の部分的な融解
、並びに第1および第3の層の融解していない大部分の繊維である配向化相から誘導されたものである。
【0031】
本発明によれば、融解した第2の層を採用しない従来の方法を使用して得られる特性を凌ぐ一定の機械的特性を持つ製品を作ることができる。特に、剥離強度および破損強度を
有意に改善することができ、引張弾性率は良好なレベルで維持されている。
【0032】
本発明の第2の側面によると、第1の側面の方法により作られる製品が提供される。
本発明の方法により作られた製品は、圧着(成形後)の後に行われる工程によって成形品に成形するのに適している。
【0033】
本発明の第3の側面によると、本発明の第3の側面の製品への熱と成形力の適用により成形品を成形する方法が提供される。適切には、第3の側面の製品は平面シートであることができ、その成形品は、例えば、湾曲状、曲面状、ドーム状またはそれ以外の非平面的なものでありうる。
【0034】
本発明の第4の側面によると、第3の側面の方法により成形された製品が提供される。
本発明の第5の側面によると、第1の側面の工程(b)および(c)の実施以前の第1の側面の工程(a)に規定される合着層が提供される。
【0035】
本発明は、下記のセットで記載した実施例を参照して更に具体的に示される。
これらの実施例では標準的な試験方法が使用されている。
引張弾性率および引張強度は、ASTM D638のプロトコルに従って測定した。曲げ強度は
、ASTM D790のプロトコルに従って測定した。
【0036】
剥離強度は、T-Peel test, ASTM D1876のプロトコルにより測定された。試験のための
試料は、10mm幅および100mm長さとし、100mm/minのクロスへッド速度を使用して試験した。そのテストは縦方向に平行に行った。
【0037】
すべての場合に3つの試料を試験し、それらの平均値をとった。
融解した材料のパーセンテージは、10℃/inの加熱速度で行われる示差走査熱量測定(DSC)により測定した。
【0038】
実施例セットA
織物層は、CERTRAN、つまり、Hoechest Celaneseから入手可能な配向化ホモポリマーポリエチレンの紡ぎフィラメント融解物で250デニールのマルチフィラメント糸から平面織りで織った。その特性は下記の通りである。
【0039】
【表1】
【0040】
織布の2つの層を使用して、2段階加圧法を使用するホットプレスで試料を加工した。アッセンブリが圧着温度に至る間に、0.7MPa(100psi)の初期圧力をかけた。この温度で2分間の滞留時間の後、2.8MPa(400psi)の高圧を1分間かけ、その間にアッセンブリを1分毎に約20℃の速度で100℃まで冷ました。試料は3つの条件で作製した。第1に、138℃の温度での標準的圧着とした。第2に、LDPEフィルムの層を織布の2つの層の間に配置してから126℃(そのフィルムの融点より高いが、その配向化繊維の融点より低い)で加工した。最後に、織布の2つの層の間にLDPEフィルムの層を1つ介在させ、136℃の温度で処理することにより試料を作製した。
【0041】
これらの試験の結果を下記の表に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
フィルムなしでの標準圧着技術については、138℃の圧着温度は、良好な係数とそれなりのレベルの層間結合性(剥離強度)を与えるのに最適であることがわかった。この最適化温度は、主要な結晶融解が起こる139℃に非常に近い。介在させるフィルムを使用し、その介在層フィルムを完全に融解するのにちょうど足りるが、繊維の表面を融解しない126℃で加工すると、良好な層間接着を生じるが、引張弾性率は低い。おそらくは、融解材料が繊維束に浸透することが難しいので繊維間の結合が乏しいことに起因すると考えられる。結局、介在層フィルムを使用するが136℃で加工され、配向化繊維の選択的融解を引き起こして作られた試料が、最も高い剥離強度および良好な引張弾性率を示す。加えて、それらの特性は、フィルムなしの圧着に必要とされる温度よりも2℃低い温度で得られ、139℃の温度での過剰融解という危険が少ないので加工帯(processing window)が拡がる。
【0044】
実施例セットB
これらの実施例では、米国のSynthetic Industries社により製造されたTENSYLON、配向化ポリエチレンテープを使用して、部分的に融解したモノリシック製品を製造した。それは次の特性を有する。
引張強度 1.5GPa
引張弾性率 88GPa
デニール 720
【0045】
これを織って織物にした。介在層のためにかなり類似したタイプのポリエチレンを入手した。それはデンマークのBorealis A/S社からのFL5580フィルムグレードで、融点130℃のものである。これを、標準的フィルム押出し機とフィルムダイを使用して約10〜15μmの厚さのフィルムに押出し成形した。
【0046】
圧着実験は、そのフィルムの融点(約130℃)とこの材料の通常の圧着範囲(148〜156℃)を含むところまでの温度との間にわたる温度範囲で行った。その織布は薄いので(面密度83g/m2)、圧着の間にそのアッセンブリ全体にわたり均一な圧力が得られるようにゴムシートを圧着用の正規金属板の内側に使用し、ゴムシートと圧着される合着層との間に軟性アルミニウム箔を敷いた。滞留時間は5分とした。冷却は20℃/minとした。
【0047】
最初の一連の試験において、試料は148〜156℃の温度範囲で、介在層を使用したもの、および介在層を使用しないものを圧着させた。図1、図2および図3は、これら試料の引張弾性率、剥離強度、および引張強度を示す。
【0048】
図1から、介在層を使用する場合、その引張弾性率は温度に伴う単調な低下を示し、通常の圧着で見られるピークとは対照的であることがわかる。その介在層は、低い圧着温度
での高いレベルの結合を生じさせ、それによりその特性が融解を生じる材料の量に左右されなくなると推察される。
【0049】
介在フィルム試料の剥離強度(図2)は、温度範囲の全体にわたり、通常の圧着と比較して高い。
引張強度(図3)は、それら2つの試料について類似しており、この特性が介在層の使用により低下するかも知れないという懸念は解消された。
【0050】
我々は、圧着シート特性の最適な組合せを見定めることを企図して、性能指数(PI)を導いた。引張弾性率E、引張強度σ、および剥離強度Peelを考慮し、これら各特性が等し
く重要であると仮定すると、これは次式のように定義される。
【0051】
【数1】
【0052】
この式中、下付き文字Tは特定の圧着温度を示し、下付き文字maxは測定したすべての試料に関する最大値を示す。性能指数の値は図4に示される。図4から、介在層試料は、特性の組合せの変動性が小さく、特に低い圧着温度で、対応する介在層のない試料よりも良い特性を有することがわかる。このことは、介在層を使用する場合は低い圧着温度を使用することができ、加工上の利点が得られるとの見解を確認するものである。
【0053】
実施例セットC
本実施例の試験では、実施例セットBと同じ材料、装置および技術を使用した。本実施例は、3つの温度で作られた圧着化シート:つまり、154℃の標準的な最適温度で作られた通常の圧着化試料、152℃で作られた介在層試料、および135℃(介在層を融解するのに十分であるが、TENSYLONテープのいかなる部分も融解しない)で作られた比較用介在層試料の特性の比較を提示する。結果を下記に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
介在層の融点をちょうど上回るが配向化テープの融解温度範囲を下回る温度(135℃)
での圧着は、適度な機械的特性を与える。152℃で介在層と共に作られた試料は、154℃で作られた通常の圧着化試料に対して匹敵する値の引張弾性率、引張強度、および剥離強度を示す。したがって、フィルムを使用することは、圧着温度を2℃下げることが見込まれ
、加工帯の幅を増加させる。
【0056】
実施例セットD
ポリプロピレン(PP)フィルムの介在層をPP織物テープの通常の層との組合せで使用す
ることの影響を調べるために試験を行った。本試験のPPフィルムは、延伸して織ったテープに使用されるものと同じポリマーグレードとした。そのポリマーはグレード100GA02で
あり、イギリスのBP Chemicals, Grangemouthから入手した。
【0057】
そのフィルムは下記の特性を有するものであった。
Mw=78,100
Mn=360,000
密度=910Kg/m3
【0058】
フィルムは、Brabenderシングルスクリュー押出し機および260℃に設定した標準フ
ィルムダイを使用して押出し成形した。押出しスクリューおよび巻き込み速度(8rpmおよび4.6m/min)を選択して、約15μmのフィルム厚を得られるようにした。
【0059】
本実験の次の段階では、介在層としてフィルムを使用するものと、それを使用しないもの(比較例)の一連の試料を製造し、介在層の圧着化シート特性への影響を評価した。10℃/minの加熱速度で行ったDSC試験では、フィルムのピーク融点が162℃であり
、他方、配向化テープのピーク融点は194℃であることが示された。したがって、圧着化試料は、フィルムを完全に融解するのに十分に高いが、配向化相に何らかの融解を引き起こすほど高くはない175℃の温度で製造した。
【0060】
使用された材料は織物テープであり、これはスリットフィルムから、延伸比を通常10:1として成形し、6060スタイルに織ったものとした。5分間の滞留時間での単一加圧処理(4.6MPa)を使用した。試料は、180、187、189、191、193、195、197および200℃でも圧着させた。冷却速度は50℃/minとし、加熱盤に冷水を流して行った。
【0061】
最初の一連の試験において、4つの試料に“T”剥離試験を使用して、層間結合強度の
測定を行った。結果を図5に示す。
すべての圧着温度で、剥離強度が介在層を使用する場合に高くなることがわかる。
次の段階では、様々な材料の応力−歪み挙動を測定し、これらがどのようにして低減したのかを見た。
結果を図6および図7に示す。
【0062】
図6に示されるように、実験上の散らばり範囲において2つの試料グループの初期引張弾性率の間に有意な差異はなかった。引張弾性率は、191℃から197℃までに双方の試料セットに比較的一定性が見られた。このように、この試料セットにおいて織物層の間への薄いフィルム材料の導入は、圧着化試料引張弾性率への効果が認められない。
【0063】
図7に示される引張強度の結果には、2つの試料セットの間に明白な相違があった。ここでフィルムと共に作られた試料は、通常とおりに圧着された試料よりも高い引張強度を示した。この違いは、配向化テープの表面がほとんど融解しない場合の低い温度で最大となる。しかしながら、“最適な”圧着範囲においてさえも、フィルム試料は僅かながら高い引張強度を示す。
【0064】
下記の表は、引張および剥離強度試験(上記したASTMプロトコル)から得られた結果のまとめを示し、剥離強度、引張弾性率、引張強度、および破壊歪みに関する。
上記の4つのパラメータの最適な組合せを見定めて介在フィルムの影響力を評価することに役立てるため、下記の性能指数(PI)を導き出した。試験した特性の各々が等しく重要であると仮定すると、これは下式のようになる。
【0065】
【数2】
【0066】
この式中、下付き文字Tは特定の圧着温度を示し、下付き文字maxは測定したすべての試料に関する最大値を示す。性能指数の値は、下記の表および図8にも示す。介在層試料は、このやり方で分析すると、通常の試料と比較してバランスの良い特性を有することがわかるが、剥離強度が最も顕著な改善を示す。
【0067】
介在層としてフィルムを使用して本発明により作製された試料のPI値は、所定の各圧着温度で、対応する“フィルムなし”での値を上回った。最大の性能は、織物に幾らかの融解が生じるとき、とりわけ189〜197℃付近の圧着温度で達成された。PI値は“介在層”試料において高かった。
【0068】
【表4】
【0069】
ポリプロピレン剥離片表面のSEM画像
175℃、191℃および193℃で圧着させた試料を、剥離試験後にそれらの剥離片表面のSEM撮影のために選択した。それら試料は下表の通りである。
【0070】
【表5】
【0071】
これらの試料について測定された剥離強度は、下表に示す通りである。
【0072】
【表6】
【0073】
関連するSEM顕微鏡写真は図9〜18である。これら顕微鏡写真についての考察を以下
に示す。
175℃−フィルムなし
【0074】
図9:
この図は低倍率顕微鏡写真(×50)であり、試料の端部および破片表面を示す。重要な点は、175℃の圧着温度ではテープおよび層の結合が非常に弱いということである。
【0075】
図10:
この電子顕微鏡写真(×30)は、175℃でフィルムなしで作られた試料についての剥離片表面を示す。表面破損はほとんどない。後述の電子顕微鏡写真からわかるが、表面破損の量は剥離強度と非常に良い相関関係にあり、表面を分離するのに要求されるエネルギー量の痕跡でもある。織物層の結合が乏しいならば、それら層間に破壊が進み、破損をほとんど引き起こさずに低い剥離荷重の原因となる。それら層の結合が強いならば、その破壊道は配向化テープまたはフィルム層に進入せざるをえず、それが剥離荷重を上昇させ、その時に試料はかなり粗い表面外観を示すことになる。
175℃−フィルムあり
【0076】
図11:
この図は試料端部の低倍率電子顕微鏡写真(×50)である。やはりこの温度では、層およびテープの結合は全般的に弱いことがわかる。
【0077】
図12:
この顕微鏡写真(×30)は、フィルムが位置する層間に関連して、かなりの表面破損があることを示す。それは測定された剥離強度と相関関係にある。しかし、テープそれら自体が下側のテープ(すなわち、フィルムの無いところ)とうまく結合していないことも
示される。
175℃の結果のまとめ
・フィルムを使用して、フィルム融点より高いが、配向化テープが融解する温度より低い温度で処理することは、フィルムが存在する部分でうまく結合するが、ほかの部分では結合の弱い構造を与える。明らかに、フィルムが織物テープ層の全体に浸透することが難しかったのであろう。
・フィルムを使用せずに、配向化テープの融点よりかなり低い温度で処理することは、構造全体にわたって弱い結合を与える。
191℃−フィルムなし
【0078】
図13:
この図は低倍率電子顕微鏡写真(×50)であり、試料の端部および剥離片表面を示す。重要な点は、配向化テープの表面がまさに融解し始めるというこの191℃の圧着温度では、層は非常にうまく結合し、その圧着化シートはより均質であるということである。その圧着化シートの個々のテープは175℃で圧着したもの(図10)よりも外観がわかりにくい。
【0079】
図14:
この図は低倍率電子顕微鏡写真(×30)であり、191℃でフィルムなしで作られた試料についての剥離片表面を示す。予期していた通り、175℃で作られた試料と比較して表面破損が増加している。ほとんどの従来の圧着化試料(すなわち、フィルム不使用のもの)のように、表面破損がパッチ状であり、幾らかの領域で破損が顕著であるが、他の領域はそうでもない。
191℃−フィルムあり
【0080】
図15:
この図は、試料端部の低倍率電子顕微鏡写真(×50)である。この温度で層はうまく結合し、その構造は、まさにこの通り均質であることがわかる。
【0081】
図16:
この電子顕微鏡写真(×30)は、191℃でフィルムを使用して作られた試料は剥離して多量の表面破損を生じており、これは当該試料について測定された高い剥離力を反映したものである。その破損は、まさにこの通り試料表面に一様に広がっているのが見える。おそらくは、フィルムの介在層での導入は、2つの織物層が互いに適合するようにして、いかなる局所的段差であってもこれを均すことができるのである。
191℃の結果のまとめ
・フィルムを使用して、配向化テープが融解し始める温度で処理することは、全体的に均質である構造と介在層領域(その構造内の弱い部分)との組合せを作り出す。それらは非常にうまく結合している。
・破損のレベル(すなわち、結合性)は、介在フィルムを使用する場合に表面全体にかけて一様である。
・175℃でフィルムを使用して作られた試料についての破損のレベルは、191℃でフィルムを使用せずに作られた試料についての破損のレベルに類似している。これは、剥離荷重値の類似性を反映したものである。
193℃−フィルムなし
【0082】
図17:
この図(×30)は、193℃でフィルムを使用せずに作られた剥離片表面を示す。その剥離片表面は、その破損の量が191℃でフィルムを使用せずに作られた試料の剥離片表面(図14)と同様であるが、191℃でフィルムを使用して作られた試料の剥離片表
面上ほどではないことを示す。その表面破損の量は、測定された剥離荷重と良く相関する。191℃でフィルムを使用して作られた試料のように、その領域上にわたって見られる破損はパッチ状である。
193℃−フィルムあり
【0083】
図18:
この顕微鏡写真(×30)は、フィルム内の粘着破壊(cohesive failure)である領域、およびフィルム/テープ界面で接着破壊(adhesive failure)の領域を示す。これは、破壊がこれら2つの様式の組合せでありうることを示唆している。
193℃の結果のまとめ
・フィルムを使用して、配向化テープが融解し始める温度で処理することは、全体にわたり均質である構造およびうまく結合した介在層領域との組合せを生じさせる。
・破損のレベル(すなわち、結合性)は、介在フィルムを使用した場合に表面全体にわたって一様である。介在フィルムは、織物層が一緒にプレスされるときに存在していたかも知れない如何なるギャップも容易に埋合せることができると示唆される。
・193℃で圧着させた試料の剥離片表面上に見られる破損のレベルは、対応する191℃の表面上の破損のレベル(図15、16)よりも高い。それは、関連する剥離強度の増加を反映したものである。
【0084】
実施例セットE
本実施例のセットにおいて、異なる温度で、介在層を使用したものおよびそれを使用しないものを圧着させた試料の曲げ特性を試験した。
試料調製は既に述べた通りである。上記したASTMテスト法を使用した。
【0085】
図19は、曲げ弾性率および曲げ強度の両方についての結果を示す。配向化テープの表面の選択的融解が始まるより温度より下では(〜187℃)、介在フィルム試料の曲げ特性は、従来のように圧着させた試料よりも優れている。この温度よりも上では、2つの試料セットの曲げ特性は非常に類似している。両方の試料セットについて、195℃の圧着温度での曲げ特性ピーク
【0086】
実施例セットF
本実施例のセットにおいて、実施例セットDに使用したのと同じ方法およびポリプロピレン材料を使用して、介在層厚さの効果を調べた。上記の実施例のように、厚さ10〜15μmのフィルムを介在層として使用し、そのようなフィルムを0〜3枚使用し、複数のフィルムを一緒に積み重ねた。
【0087】
応力−歪み挙動および剥離強度についての平均値を下記の表に示す。
【0088】
【表7】
【0089】
それらの結果から、引張弾性率はフィルム厚さが増加するに従い落ちること;引張強度は単一層フィルム厚でピークとなるが、やはり厚さが増加するに従い落ちること;および、剥離強度はすべてのフィルム厚さの層で類似するが、いずれも介在層が無い比較用試料よりも高いということが示された。
【0090】
それらの結果を総合すると、単一層が最適であり、引張弾性率の最小限の喪失で剥離強度の最大限の増加、および引張強度における維持または若干の改善を伴う。
【0091】
実施例セットG
本実施例セットにおいて、SEM顕微鏡写真を使用して、実施例セットBに記載したのと
同じ材料および工程であるが、複数の介在層を有するものを用いた剥離片表面を調べた。その加工温度は193℃としたので、実施例セットDである図17(フィルムなし)および図18(一層のフィルム)との比較になる。図20および図21は、対応する剥離試験品であるが、それぞれ2つおよび3つの100GA02ポリマーフィルムの層を有するものの写
真である。比較のために説明すると、実施例セットDの図18の単一層試料では、下側の配向化テープの上にフィルム層Fを見ることができる。図20では、フィルムの2つの層で作られた試料の端部は、その試料内に位置するフィルム層Fおよび剥離面そのものの上にあるフィルム層をはっきりと示している。破壊はこの場所で優先的にフィルム層を通じて進行したことが明らかである。この顕微鏡写真から、破損帯域がフィルム層内に位置していることがわかる。図21は、この通り3つのフィルム層F で構成された厚いフィルム層を示す表面の領域を示す。その破損帯域は、全体のフィルム厚よりもかなり薄いことがわかる。
【0092】
実施例セットH
本実施例セットにおいて、使用されるフィルムタイプの重要性を検査した。幾つかの試験において介在層は、配向化テープを作るのに使用したのと同じポリマー(上記したPP 100GA 02材料)から作られた。他の試験において、2つの別の介在層フィルムを調べた。
すなわち、次のものである。
1) ICI社から入手した融点163℃の(30μm厚さの)ポリプロピレンフィルム;
2) 社内調達のPEフィルム:これには、Brabenderシングルスクリュー押出し機および上
記のPPフィルムを作るために用いたのと同じフィルムダイを使用した。これにはBOREALIS
PE(フィルムグレードFL5580)を使用し、最終押出しフィルムは10〜15μm厚とし
た。
【0093】
比較実験は、上記したのと同じPP織布(10:1延伸テープ、6060スタイル、100GA 02
ポリマー)を使用して行った。実験は2つの温度:つまり、比較のために各フィルムを融解するのに十分であるが、配向化材料の表面を融解するには不十分である175℃、および通常の熱圧着に最適な値である193℃で行った。
【0094】
結果を下表に示す。
【0095】
【表8】
【0096】
それらの結果から、最良の試料は適合性PPフィルムで作られた試料であることが示唆される。
【0097】
実施例セットI
本実施例において、ポリエステル(PET)材料への本発明の適用の評価を行った。
PET織物、および同一化学組成のポリマーは、KOSA, GmbH and Co. KGにより供給されたものである。
【0098】
そのポリマーおよび織物の詳細は下記の通りである。
ポリマー タイプT51-IV〜0.85, Mn〜22,500
織物重量 200g/m2
配向型 マルチフィラメント束
1100デシテックス
織り方 平織り
9/9 スレッド/cm
ピーク融点 250℃
【0099】
PETフィルム(〜15μm厚)を、標準押出し機およびフィルムダイを使用してポリマ
ーから成形した。その織布とは異なる化学組成の第2のPETフィルムもこれらの試験に使
用した。このフィルムを僅かに二軸配向化させた。
本実験は、介在フィルム使用と不使用の双方でPET織物材料への本発明の適用性を見た
ものである。両フィルムを使用して試料を作製した。
【0100】
下記の表は、同じ組成のフィルムを使用するもの、およびそれを使用しないもので、257℃、258℃、および259/260℃で作製した試料の応力−歪み挙動と剥離強度
との間の比較を示す。明らかなように、フィルムを使用して作製したすべての試料は、フ
ィルムなしで所定の温度で作製した試料を超える引張弾性率、引張強度、および剥離強度の増加を示した。
【0101】
【表9】
【0102】
別の実験として、257℃の圧着温度で、フィルムを使用しない試料および両PET フィルムを使用する試料を作製し、上述のやり方で試験した。それらの結果は次の通りである。
【0103】
【表10】
【0104】
本実験では、いずれかのフィルムの存在により機械的特性が有意に押し上げられること;および、それらフィルムは異なる機械的特性に増強を与えることがわかる。すなわち、引張強度および剥離強度は同一フィルムで高くなるが、異なるフィルムでの試料の引張弾性率は、同一フィルムでの試料よりも高くなる。
【0105】
重要な発見は、これら機械的特性が257℃の圧着温度を使用して達成されたということである。先行技術の方法(フィルムなし)による圧着PETのための最適温度は260℃
とみなされている。PETでの加工帯は狭く、これはPETに適用される熱圧着工程の商業化を妨げかねない。257℃への圧着温度の低下は、それでもなお良好な機械的特性を達成すると共に、有意な実益を示唆するものである。
【0106】
実施例セットJ
ポリエチレン剥離片表面のSEM画像
実施例セットBに記載したようにして、TENSYLON 10:1 PE織物テープ(6060スタイル)を使用して剥離試験試料を作製した。試料は、介在層を使用したもの、およびそれを使用しないもので作った。これらの試験では、配向化テープと同じグレードのフィルムを入手できなかったので、類似グレードであるBorealis FL5580材料を調達した。
【0107】
8つの試料を実験した。それらは135℃、148℃、152℃、および154℃で、介在層フィルムを使用するもの、およびそれを使用しないもので圧着させ、そして剥離試
験にかけた。
【0108】
【表11】
【0109】
関連のSEM顕微鏡写真を図22〜図37に示す。これら顕微鏡写真についての考察は以
下の通りである。
【0110】
図22〜25:
これらの図は、フィルムを使用せずにそれぞれ135、148、152、および154℃で作られた試料からの典型的な剥離片表面の低倍率顕微鏡写真を示す。圧着温度が上昇するに従い、表面破損のレベルも増加する。PEテープの表面が融解しない最低の温度では、それらテープが結合しない。テープの表面がちょうど融解し始める148℃では、それらテープは剥離表面に破損がないが、よく結合しているように見える。
152℃では表面破損が増加しており、これは測定された剥離加重の増加を反映したものである。PP実験の場合のように、フィルムを使用しないと、表面破損の領域は変動的である。
154℃では、破損はさらに増加する。
【0111】
図26〜29:
これら4つの顕微鏡写真は、フィルムを使用してそれぞれ135、148、152、および148℃で作られた試料を示す。それらすべては、同じ温度で作られた同等の試料と比較して表面破損の増加を示す。PP実験の場合と同じにように、幾つかの剥離片表面上に、特に135℃でフィルムをまだ見ることができる。圧着温度が上昇するに従い、破損の量が増加する。154℃でのみ、配向化テープ内に実質的な破損が見える(すなわち、テープの表面が実質的に融解する温度である)。
他の温度では、その破壊様式はフィルム/織布表面で起ったものらしく、すなわち、少なくとも部分的な接着破壊のようである。したがって、最高のパフォーマンスは、フィルム融解とテープ外表面の融解の組合せであることが確認される。
【0112】
図30:
135℃ フィルムなし: 別のテープの下側にそれに対し90度で入り込む一つのテープが示されており、この温度ではテープ間の結合を確認できない。
【0113】
図31:
135℃ フィルムあり: この高倍率顕微鏡写真は、破損し引き裂かれた介在層を示すが、幾つかの場合にフィルムと織物層との間で破壊が起こっていた。
【0114】
図32:
148℃ フィルムなし: この顕微鏡写真はテープ間の接合を示し、それらテープ間はかなり良い結合であることを示す。しかしながら、表面破損は最小限にとどまり、これは表面が相当容易に分離したこと(すなわち、低い剥離強度)を示唆する。
【0115】
図33:
148℃ フィルムあり: 表面破損の増加が示されるが、まだ接着破壊である。
【0116】
図34:
152℃ フィルムなし: この試料上は、フィルムなしで行われたより低い温度と比較して、表面破損が増加している。
【0117】
図35:
152℃ フィルムあり: 接着破壊が示される。
【0118】
図36:
154℃ フィルムなし: フィルムなしでの最適温度である:剥離の際に配向化テープの実質的な破損が生じている。
【0119】
図37:
154℃ フィルムあり: この試料は粗い剥離表面が見受けられ、これは測定された最大剥離荷重と相関している。この圧着温度では、破壊が明らかに粘着破壊である。左側のフィルム片は、他の表面上の隣接するテープから剥離した材料の痕跡を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、介在フィルム試料の引張弾性率を示す図である。
【図2】図2は、介在フィルム試料の剥離強度を示す図である。
【図3】図3は、介在フィルム試料の引張強度を示す図である。
【図4】図4は、性能指数を示す図である。
【図5】図5は、実施例セットDの剥離試験の結果を示す図である。
【図6】図6は、実施例セットDの応力−歪み挙動の測定結果を示す図である。
【図7】図7は、実施例セットDの応力−歪み挙動の測定結果を示す図である。
【図8】図8は、性能指数を示す図である。
【図9】図9は、剥離片表面(175℃−フィルムなし)のSEM顕微鏡写真(×50)を示す図である。
【図10】図10は、剥離片表面(175℃−フィルムなし)のSEM顕微鏡写真(×30)を示す図である。
【図11】図11は、剥離片表面(175℃−フィルムあり)のSEM顕微鏡写真(×50)を示す図である。
【図12】図12は、剥離片表面(175℃−フィルムあり)のSEM顕微鏡写真(×30)を示す図である。
【図13】図13は、剥離片表面(191℃−フィルムなし)のSEM顕微鏡写真(×50)を示す図である。
【図14】図14は、剥離片表面(191℃−フィルムなし)のSEM顕微鏡写真(×30)を示す図である。
【図15】図15は、剥離片表面(191℃−フィルムあり)のSEM顕微鏡写真(×50)を示す図である。
【図16】図16は、剥離片表面(191℃−フィルムあり)のSEM顕微鏡写真(×30)を示す図である。
【図17】図17は、剥離片表面(193℃−フィルムなし)のSEM顕微鏡写真(×30)を示す図である。
【図18】図18は、剥離片表面(193℃−フィルムあり)のSEM顕微鏡写真(×30)を示す図である。
【図19】図19は、実施例セットEの曲げ弾性率および曲げ強度の両方についての結果を示す。
【図20】図20は、2つの100GA02ポリマーフィルムの層を有する剥離試験品のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図21】図21は、3つの100GA02ポリマーフィルムの層を有する剥離試験品のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図22】図22は、135℃で作られた試料からの剥離片表面のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図23】図23は、148℃で作られた試料からの剥離片表面のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図24】図24は、152℃で作られた試料からの剥離片表面のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図25】図25は、154℃で作られた試料からの剥離片表面のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図26】図26は、135℃で作られた試料からの剥離片表面のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図27】図27は、148℃で作られた試料からの剥離片表面のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図28】図28は、152℃で作られた試料からの剥離片表面のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図29】図29は、148℃で作られた試料からの剥離片表面のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図30】図30は、(135℃ フィルムなし)のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図31】図31は、(135℃ フィルムあり)のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図32】図32は、(148℃ フィルムなし)のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図33】図33は、(148℃ フィルムあり)のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図34】図34は、(152℃ フィルムなし)のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図35】図35は、(152℃ フィルムあり)のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図36】図36は、(154℃ フィルムなし)のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図37】図37は、(154℃ フィルムあり)のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー製品の製造方法であって、次の各工程:
(a) 連続層、すなわち、
(i) 配向化ポリマー材料のストランドで作られた第1の層;
(ii) ポリマー材料の第2の層;
(iii) 配向化ポリマー材料のストランドで作られた第3の層;
であって、該第2の層が、該第1および第3の層のピーク融解温度よりも低いピーク融解温度を持つ連続層を有する合着層を形成すること;
(b) 該第1の層の一部分を融解させ、該第2の層を融解させ、且つ該第3の層の一部分を融解させ、そして該合着層を圧着させるのに十分な時間、温度および圧力の条件に該合着層を供すること;および
(c) 該圧着化合着層を冷却すること;
を含み、
DSCにより測定したときに、該第1の層の10〜30体積%が融解し、該第3の層の10〜30体積%が融解し、そして該第2の層が完全に融解することを特徴とし、
該第1、第2および第3の層が、同じタイプのポリマー材料のものである、前記製造方法。
【請求項1】
ポリマー製品の製造方法であって、次の各工程:
(a) 連続層、すなわち、
(i) 配向化ポリマー材料のストランドで作られた第1の層;
(ii) ポリマー材料の第2の層;
(iii) 配向化ポリマー材料のストランドで作られた第3の層;
であって、該第2の層が、該第1および第3の層のピーク融解温度よりも低いピーク融解温度を持つ連続層を有する合着層を形成すること;
(b) 該第1の層の一部分を融解させ、該第2の層を融解させ、且つ該第3の層の一部分を融解させ、そして該合着層を圧着させるのに十分な時間、温度および圧力の条件に該合着層を供すること;および
(c) 該圧着化合着層を冷却すること;
を含み、
DSCにより測定したときに、該第1の層の10〜30体積%が融解し、該第3の層の10〜30体積%が融解し、そして該第2の層が完全に融解することを特徴とし、
該第1、第2および第3の層が、同じタイプのポリマー材料のものである、前記製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図19】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図19】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公開番号】特開2012−228883(P2012−228883A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−136159(P2012−136159)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【分割の表示】特願2006−530522(P2006−530522)の分割
【原出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(311010785)プロペックス オペレーティング カンパニー エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【分割の表示】特願2006−530522(P2006−530522)の分割
【原出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(311010785)プロペックス オペレーティング カンパニー エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
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