説明

ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド組成物

組成物は、2種以上の耐衝撃性改良剤及びポリ(アリーレンエーテル)と脂肪族−芳香族ポリアミドとの相溶化ブレンドを含有する。上記ポリアミドは、テレフタル酸単位を60〜100モル%含有するジカルボン酸単位と1,9−ノナンジアミン単位及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を60〜100モル%含有するジアミン単位からなる。上記ポリアミドは、45マイクロモル/gポリアミドを超えるアミン末端基含量を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(アリーレンエーテル)/脂肪族ポリアミド組成物は多くの用途に用いられている。汎用されているものの、脂肪族ポリアミドを用いた組成物には、寸法安定性が低く、吸湿性が高いなどの短所がある。芳香族成分を含むようにポリアミド構造を改質することによって物性プロファイルを改良する試みがなされている。こうした脂肪族−芳香族ポリアミドは様々な属性を有するが、ポリ(アリーレンエーテル)とのブレンドは分解を起こさずに成形できたとしても、望ましい特性のバランスが得られない。望ましい特性としては、高い寸法安定性、低い吸湿性、高温及び低温での高い衝撃強さ及び加工性などが挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、上述の諸特性の好適な組合せを併せもつポリ(アリーレンエーテル)/脂肪族−芳香族ポリアミド組成物に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
かかるニーズに対応すべく、本発明の組成物は、
アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとのブロック共重合体、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロック共重合体又はこれらの組合せを含む第一の耐衝撃性改良剤、
官能化ポリオレフィンエラストマーを含む第二の耐衝撃性改良剤、及び
ポリ(アリーレンエーテル)と脂肪族−芳香族ポリアミドとの相溶化ブレンド
を含んでなる。上記ポリアミドは、テレフタル酸単位を60〜100モル%含有するジカルボン酸単位と1,9−ノナンジアミン単位及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を60〜100モル%含有するジアミン単位からなる。上記ポリアミドは、45マイクロモル/gポリアミドを超えるアミン末端基含量を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明の組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)と脂肪族−芳香族ポリアミドとの相溶化ブレンド及び2種以上の耐衝撃性改良剤を含有する。ポリアミドはジカルボン酸単位とジアミン単位を含有する。ジカルボン酸単位の60モル%以上はテレフタル酸単位であり、ジアミン単位の60モル%以上は1,9−ノナンジアミン単位及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位である。芳香族単位と炭素数9の脂肪族単位との組合せによって、溶融温度、低い吸水性及び寸法安定性の特異な組合せを有するポリアミドとなり、これをポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミドブレンドに使用すると、優れた寸法安定性及び吸水性を有する組成物となる。
【0006】
特筆すべき事項として、2種類の耐衝撃性改良剤の組合せによって衝撃強さが改良されることが判明した。対照的に、ポリ(アリーレンエーテル)/脂肪族ポリアミドブレンドでは、同じ組合せの耐衝撃性改良剤を用いても、ブロック共重合体を耐衝撃性改良剤として含有する組成物に比して衝撃強さの向上をもたらさない。つまり、本発明で説明する相溶化ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミドブレンドは、低い吸水性で実証される良好な寸法安定性と低温でも高い耐衝撃性を始めとする物性を望ましい組合せで併せもつ。
【0007】
一実施形態では、ASTM D570で測定した本組成物の吸水値は、24時間後に0.3以下、さらに具体的には24時間後に0.25以下、特に24時間後に0.2以下である。
【0008】
耐衝撃性は、ASTM D256に準拠したノッチ付アイゾッド(NI)衝撃試験を用いて測定できる。一実施形態では、組成物の23℃でのNI値は200J/m以上、さらに具体的には220J/m以上、特に240J/m以上である。さらに、組成物の−30℃でのNI値は150J/m以上、さらに具体的には160J/m以上、特に170J/m以上とし得る。
【0009】
本発明で用いる「ポリ(アリーレンエーテル)」とは、次式(I)で表される構造単位を複数含むものをいう。
【0010】
【化1】

式中、各構造単位について、各Qは独立にハロゲン、第一又は第二低級アルキル(例えば炭素原子数1〜7のアルキル)、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、炭化水素オキシ、及びハロゲン原子と酸素原子の間に2以上の炭素原子が介在するハロ炭化水素オキシ基であり、各Qは独立に水素、ハロゲン、第一又は第二低級アルキル、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、炭化水素オキシ、及びハロゲン原子と酸素原子の間に2以上の炭素原子が介在するハロ炭化水素オキシ基である。ある実施形態では、各Qは独立にアルキル又はフェニル、例えばC1−4アルキル基であり、各Qは独立に水素又はメチルである。ポリ(アリーレンエーテル)は、アミノアルキル含有末端基を1個以上含む分子を含んでいてもよく、アミノアルキル含有末端基は通例ヒドロキシ基に対してオルト位に位置する。また、4−ヒドロキシビフェニル末端基も存在していることが多く、これらは、通例、副生物のジフェノキノンが存在する反応混合物から得られる。
【0011】
ポリ(アリーレンエーテル)は、単独重合体、共重合体、グラフト共重合体、アイオノマー、ブロック共重合体(例えばアリーレンエーテル単位とアルケニル芳香族化合物由来のブロックを含むもの)、並びにこれらの1以上を含む組合せのいずれの形態であってもよい。ポリ(アリーレンエーテル)には、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位を適宜2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と共に含むポリフェニレンエーテルがある。
【0012】
ポリ(アリーレンエーテル)は2,6−キシレノール及び/又は2,3,6−トリメチルフェノールのような1種以上のモノヒドロキシ芳香族化合物の酸化カップリングで製造し得る。かかるカップリング反応には一般に触媒系が使用され、触媒系は、銅、マンガン又はコバルト化合物のような1種以上の重金属化合物を通常は他の様々な物質(例えば第二アミン、第三アミン、ハロゲン化物又はこれらの2種以上の組合せ)と共に含んでいる。
【0013】
ポリ(アリーレンエーテル)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定して、3000〜40000原子質量単位(amu)の数平均分子量及び5000〜80000amuの重量平均分子量を有する。ポリ(アリーレンエーテル)は、クロロホルム中25℃で測定して、0.10〜0.60dl/g、さらに具体的には0.29〜0.48dl/gの固有粘度を有する。固有粘度の高いポリ(アリーレンエーテル)と固有粘度の低いポリ(アリーレンエーテル)の組合せを用いることもできる。2種類の固有粘度を用いるときの正確な比率の決定は、使用するポリ(アリーレンエーテル)の正確な固有粘度及び所望の最終的物性にある程度依存する。
【0014】
本組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)とポリアミドと耐衝撃性改良剤の合計重量を基準にして、10重量%〜70重量%のポリ(アリーレンエーテル)を含有し得る。この範囲内で、ポリ(アリーレンエーテル)の量は15重量%以上、さらに具体的には20重量%以上とすることができる。同じくこの範囲内で、ポリ(アリーレンエーテル)の量は65重量%以下、さらに具体的には60重量%以下とすることができる。
【0015】
脂肪族−芳香族ポリアミドは、1種以上のジカルボン酸から誘導された単位と、1種以上のジアミンから誘導された単位とを含む。ジカルボン酸単位の60〜100モル%(ジカルボン酸単位の全モル数を基準)はテレフタル酸から誘導される。この範囲内で、テレフタル酸単位の量は75モル%以上、さらに具体的には90モル%以上とすることができる。
【0016】
テレフタル酸単位と共に使用できる他のジカルボン酸単位の例としては、脂肪族ジカルボン酸、例えばマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸及びスベリン酸;脂環式ジカルボン酸、例えば1,3−シクロペンタンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸;並びに芳香族ジカルボン酸、例えばイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシ二酢酸、1,3−フェニレンジオキシ二酢酸、ジフェン酸、4,4′−オキシ二安息香酸、ジフェニルメタン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4′−ジカルボン酸及び4,4′−ビフェニルジカルボン酸から誘導された単位が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上の組合せで用いてもよい。実施形態によっては、芳香族ジカルボン酸から誘導された単位が望ましい。一実施形態では、ジカルボン酸単位中の他のジカルボン酸単位の含量は、25モル%以下、さらに具体的には10モル%以下である。多官能性カルボン酸、例えばトリメリト酸、トリメシン酸及びピロメリト酸から誘導された単位も、溶融成形が可能な範囲であれば、導入し得る。
【0017】
脂肪族−芳香族ポリアミドは、1種以上のジアミンから誘導された単位を含む。ジアミン単位の60〜100モル%(ジアミン単位の全モル数を基準)は1,9−ノナンジアミン単位及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位から誘導される。この範囲内で、1,9−ノナンジアミン単位及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の量は75モル%以上、さらに具体的には90モル%以上とすることができる。
【0018】
1,9−ノナンジアミン単位/2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比は、100:0〜20:80、さらに具体的には100:0〜50:50、特に100:0〜50:40とすることができる。これをN/I比という。
【0019】
1,9−ノナンジアミン単位及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位と共に使用できる他のジアミン単位の例としては、線状脂肪族ジアミン、例えば1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン及び1,12−ドデカンジアミン;枝分れ脂肪族ジアミン、例えば2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン及び5−メチル−1,9−ノナンジアミン;脂環式ジアミン、例えばシクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルナンジメチルアミン及びトリシクロデカンジメチルアミン;並びに芳香族ジアミン、例えばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン及び4,4′−ジアミノジフェニルエーテルから誘導された単位が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上の組合せで用いてもよい。一実施形態では、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン及び/又は1,12−ドデカンジアミンから誘導された単位を1,9−ノナンジアミン単位及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位と組み合わせる。
【0020】
脂肪族−芳香族ポリアミドは、結晶性ポリアミドの公知の製造方法で製造できる。例えば、酸塩化物とジアミンを原料として使用する溶液重合又は界面重合、或いはジカルボン酸とジアミンを原料として使用する溶融重合、固相重合又は溶融押出重合で製造することができる。
【0021】
脂肪族−芳香族ポリアミドの固有粘度は、濃硫酸中30℃で測定して、0.4〜3.0dl/g、さらに具体的には0.5〜2.0dl/g、特に0.6〜1.8dl/gとすることができる。
【0022】
脂肪族−芳香族ポリアミドの溶融粘度は、キャピラリー粘度測定法で測定して、剪断速度1000s−1及び温度330℃で300〜3500ポアズとすることができる。この範囲内で、溶融粘度は325ポアズ以上、特に350ポアズ以上とすることができる。同じくこの範囲内で、溶融粘度は3300ポアズ以下、特に3100ポアズ以下とすることができる。
【0023】
脂肪族−芳香族ポリアミドは、45マイクロモル/gポリアミド以上、さらに具体的には50マイクロモル/gポリアミド以上、特に55マイクロモル/gポリアミド以上のアミン末端基含量を有する。アミン末端基含量の測定には、適宜加熱しながら、ポリアミドを適当な溶剤に溶解する。ポリアミド溶液を、適当な指示法を用いて、0.01N塩酸(HCl)溶液で滴定する。サンプルに添加したHCl溶液の体積、ブランクで使用したHClの体積、HCl溶液のモル濃度及びポリアミドサンプルの重量に基づいて、アミン末端基の量を算出することができる。
【0024】
相溶化ブレンドは、さらに、脂肪族ポリアミド、例えばナイロン6、6/6、6/69、6/10、6/12、11、12、4/6、6/3、7、8、6T、変性6T、ポリフタルアミド(PPA)、及びこれら2種以上の組合せを含んでいてもよい。
【0025】
本組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)とポリアミドと耐衝撃性改良剤の合計重量を基準にして、5重量%〜80重量%の脂肪族−芳香族ポリアミドを含有し得る。この範囲内で、脂肪族−芳香族ポリアミドの量は10重量%以上、特に15重量%以上とすることができる。同じくこの範囲内で、脂肪族−芳香族ポリアミドの量は70重量%以下、特に60重量%以下とすることができる。
【0026】
相溶化ポリ(アリーレンエーテル)/脂肪族−芳香族ポリアミドブレンドは、相溶化剤を用いて形成される。本明細書で用いる「相溶化剤」という用語はポリ(アリーレンエーテル)とポリアミド樹脂のいずれか又は双方と相互作用する多官能性化合物をいう。この相互作用は化学的なもの(例えばグラフト化)であっても、物理的なもの(例えば分散相の表面特性への影響)であってもよい。いずれの場合も、得られる相溶化ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド組成物は、特に衝撃強さ、成形ニットライン強さ及び/又は伸びの向上に認められるような相溶性の向上を示す。本明細書で用いる「相溶化ポリ(アリーレンエーテル)/脂肪族−芳香族ポリアミドブレンド」という用語は、相溶化剤で物理的及び/又は化学的に相溶化した組成物をいう。
【0027】
相溶化剤は、次の2種類のいずれかの多官能性化合物を含む。第一のタイプは分子中に(a)炭素−炭素二重結合と(b)1個以上のカルボン酸、無水物、エポキシ、イミド、アミド、エステル基又はその官能性等価物とを併せもつ。かかる多官能性化合物の具体例には、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、マレイン酸ヒドラジド、ジクロロマレイン酸無水物、及び不飽和ジカルボン酸(例えばアクリル酸、ブテン酸、メタクリル酸、t−エチルアクリル酸、ペンテン酸)がある。一実施形態では、相溶化剤は無水マレイン酸及び/又はフマル酸を含有する。
【0028】
第二のタイプの多官能性相溶化剤化合物は、(a)式OR(式中、Rは水素又はアルキル、アリール、アシルもしくはカルボニルジオキシ基である。)で表される基と(b)カルボン酸、酸ハライド、無水物、酸ハライド無水物、エステル、オルトエステル、アミド、イミド、アミノ及びそれらの塩から選択される同一又は異なる2個以上の基とを併せもつことを特徴とする。このタイプの相溶化剤の典型例は、次式で表される脂肪族ポリカルボン酸、酸エステル及び酸アミドである。
【0029】
(RO)R(COORII(CONRIIIIV
式中、Rは炭素原子数2〜20、特に炭素原子数2〜10の直鎖又は枝分れ鎖飽和脂肪族炭化水素基であり、Rは水素又は炭素原子数1〜10、さらに具体的には炭素原子数1〜6、特に炭素原子数1〜4のアルキル、アリール、アシルもしくはカルボニルジオキシ基であり、各RIIは独立に水素又は炭素原子数1〜20、特に炭素原子数1〜10のアルキルもしくはアリール基であり、RIII及びRIVは各々独立に水素又は炭素原子数1〜10、さらに具体的には炭素原子数1〜6、特に炭素原子数1〜4のアルキルもしくはアリール基であり、mは1に等しく、(n+s)は2以上、特に2又は3に等しく、n及びsは各々0以上であり、(OR)はカルボニル基に対してα又はβ位にあり、2以上のカルボニル基の間に2〜6個の炭素原子が介在する。当然ながら、各置換基の炭素原子数が6未満のときはR、RII、RIII及びRIVはアリールとはなり得ない。
【0030】
適当なポリカルボン酸の例には、例えば無水物及び水和酸のような様々な市販形態のものを含めて、クエン酸、リンゴ酸、アガリシン酸など、さらにはこれらの1種以上を含む組合せがある。一実施形態では、相溶化剤はクエン酸を含有する。本発明で有用なエステルの具体例には、例えばクエン酸アセチル及びクエン酸モノ及び/又はジ−ステアリルなどがある。本発明で有用なアミドには、例えばN,N′−ジエチルクエン酸アミド、N−フェニルクエン酸アミド、N−ドデシルクエン酸アミド;N,N′−ジドデシルクエン酸アミド及びN−ドデシルリンゴ酸などがある。誘導体には、上記のものの塩、具体的にはアミンとの塩やアルカリ金属及びアルカリ土類金属塩がある。適当な塩の例には、リンゴ酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リンゴ酸カリウム及びクエン酸カリウムがある。
【0031】
上記相溶化剤は、溶融ブレンドに直接添加してもよいし、ポリ(アリーレンエーテル)とポリアミドのいずれか又は双方と予備反応させてもよい。一実施形態では、相溶化剤の少なくとも一部を、メルト又は適当な溶剤溶液中でポリ(アリーレンエーテル)の全部又は一部と予め反応させる。かかる予備反応は相溶化剤とポリマーとの反応を引き起こし、ポリ(アリーレンエーテル)を官能化すると考えられる。例えば、ポリ(アリーレンエーテル)を無水マレイン酸、フマル酸及び/又はクエン酸と予め反応させれば無水物及び/又は酸官能化ポリフェニレンエーテルを形成することができ、この官能化ポリフェニレンエーテルは、非官能化ポリフェニレンエーテルよりもポリアミドとの相溶性に優れている。
【0032】
相溶化剤の使用量は、選択に係る特定の相溶化剤及び相溶化剤を添加すべい特定のポリマー系に依存する。
【0033】
一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)と脂肪族−芳香族ポリアミドと耐衝撃性改良剤の合計重量を基準にして、0.05〜2.0重量%の相溶化剤を使用する。この範囲内で、相溶化剤の量は0.1重量%以上、特に0.2重量%以上とすることができる。同じくこの範囲内で、相溶化剤の量は1.75重量%以下、特に1.5重量%以下とすることができる。
【0034】
本発明の組成物はさらに2種以上の耐衝撃性改良剤を含有する。第一のタイプの耐衝撃性改良剤には、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとのブロック共重合体、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロック共重合体、及びこれら2種以上の組合せがある。
【0035】
ブロック共重合体は、(A)アルケニル芳香族化合物から誘導された1以上のブロックと(B)共役ジエンから誘導された1以上のブロックを含む共重合体である。水素添加ブロック共重合体は、ブロック(B)中の脂肪族不飽和基含量を水素添加によって低減した共重合体である。ブロック(A)及び(B)の配列には、直鎖構造のものと、枝分れ鎖を有する所謂ラジアルテレブロック構造のものがある。
【0036】
構造の例としては、ジブロック(A−Bブロック)、トリブロック(A−B−Aブロック又はB−A−Bブロック)、テトラブロック(A−B−A−Bブロック)及びペンタブロック(A−B−A−B−Aブロック又はB−A−B−A−Bブロック)構造を含む線状構造並びにAとBを合計6ブロック以上含有する線状構造がある。実施形態によっては、線状構造はジブロック、トリブロック及びテトラブロック構造を含む。
【0037】
ブロック(A)を与えるアルケニル芳香族化合物は次式で表される。
【0038】
【化2】

式中、R及びRは各々独立に水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基などを表し、R及びRは各々独立に水素原子、C−Cアルキル基、塩素原子、臭素原子などを表し、R〜Rは各々独立に水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基などを表し、或いはRとRが中央の芳香環と共にナフチル基を形成してもよいし、RとRが中央の芳香環と共にナフチル基を形成してもよい。
【0039】
アルケニル芳香族化合物の具体例には、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルキシレン類、ビニルトルエン類、ビニルナフタレン類、ジビニルベンゼン類、ブロモスチレン類、クロロスチレン類など、さらにこれらのアルケニル芳香族化合物の1種以上を含む組合せがある。一実施形態では、アルケニル芳香族化合物は、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン類及びビニルキシレン類から選択される。別の実施形態では、アルケニル芳香族化合物はスチレンである。
【0040】
共役ジエンの具体例には、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどがある。
【0041】
共役ジエンに加えて、水素添加ブロック共重合体は、少量の低級オレフィン炭化水素、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、ジシクロペンタジエン、非共役ジエンなどを含んでいてもよい。
【0042】
ブロック共重合体中のアルケニル芳香族化合物から誘導される繰り返し単位の含量に特に制限はない。適当なアルケニル芳香族含量は、ブロック共重合体の全重量を基準にして10〜90重量%とすることができる。この範囲内で、アルケニル芳香族含量は40重量%以上、さらに具体的には50重量%以上、特に55重量%以上とすることができる。同じくこの範囲内で、アルケニル芳香族含量は85重量%以下、特に75重量%以下とすることができる。
【0043】
水素添加ブロック共重合体主鎖中での共役ジエンの結合様式には特に制限はない。例えば、共役ジエンが1,3−ブタジエンである場合、約1〜約99%が1,2−結合で、残りが1,4−結合で結合していてもよい。
【0044】
水素添加ブロック共重合体の水素添加は、共役ジエンから誘導された脂肪族鎖部分中の不飽和結合の50%未満、さらに具体的には20%未満、特に10%未満が非還元状態で残るような程度とすることができる。アルケニル芳香族化合物から誘導された芳香族不飽和結合の水素添加度を25%以下とすることができる。
【0045】
水素添加ブロック共重合体は、共役ジエン由来の脂肪族鎖部分の不飽和結合の50%未満、具体的には20%未満、特に10%未満が還元されずに残る程度に水素添加する。アルケニル芳香族化合物由来の芳香族不飽和結合は約25%まで水素化し得る。
【0046】
水素添加ブロック共重合体は、GPCでポリスチレン標準を用いて測定して、5000〜500000AMUの数平均分子量を有する。この範囲内で、数平均分子量は10000AMU以上、さらに具体的には30000AMU以上、特に45000AMU以上とすることができる。同じくこの範囲内で、数平均分子量は300000AMU以下、さらに具体的には200000AMU以下、特に150000AMU以下とすることができる。
【0047】
水素添加ブロック共重合体のGPCで測定した分子量分布には、特に制限はない。共重合体の重量平均分子量/数平均分子量の比はどのような値でもよい。
【0048】
水素添加ブロック共重合体の例には、スチレン−ブタジエン及びスチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体の水素添加で得られるスチレン−(エチレン−ブチレン)ジブロック及びスチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレントリブロック共重合体がある。
【0049】
適当な水素添加ブロック共重合体としては、市販品、例えばKraton Polymers社(以前はShell Chemical社の一事業部)から市販のKRATON(登録商標)G1650、G1651及びG1652、並びに旭化成(株)から市販のTUFTEC(登録商標)H1041、H1043、H1052、H1062、H1141及びH1272などがある。
【0050】
非水素添加ブロック共重合体の例には、ポリスチレン−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)、ポリスチレン−ポリイソプレン、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン及びポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)並びにこれらの組合せがある。
【0051】
適当な非水素添加ブロック共重合体としては、多数の供給元から市販されており、例えばPhillips Petroleum社から市販のSOLPRENE(商標)、Shell Chemical社から市販のKRATON(登録商標)、Dexco社から市販のVECTOR(登録商標)、並びにクラレ(株)から市販のSEPTON(登録商標)などがある。
【0052】
第二のタイプの耐衝撃性改良剤には官能化ポリオレフィンエラストマーがある。官能化ポリオレフィンエラストマーは、カルボン酸基、エステル、酸無水物、エポキシ基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、イソシアネート基、シラノール基、カルボキシレート、及びこれらの2種以上の官能基の組合せからなる群から選択される1個以上の官能基を含有する。ポリオレフィンエラストマーはポリアミドと混和性のポリオレフィンであり、線状ランダム共重合体、線状ブロック共重合体、並びにシェルがポリアミドと混和性でポリアミドと反応性の官能基を含むコア/シェル型共重合体が挙げられる。ポリオレフィンエラストマーの具体例としては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元重合体及びこれらの組合せが挙げられる。官能基を有する単量体をポリオレフィンとグラフト重合しても、ポリオレフィン単量体と共重合してもよい。一実施形態では、ポリオレフィンエラストマーの構造単位は、エチレンと1種以上のC3−8オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン及び1−オクテンとから誘導される。
【0053】
適当な官能化ポリオレフィンエラストマーは、例えばDuPont社からELVALOYという登録商標で市販されているものを始めとして多数の供給元から入手できる。
【0054】
本組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)とポリアミドと耐衝撃性改良剤の合計重量を基準にして1〜15重量%の第一の耐衝撃性改良剤を含有し得る。この範囲内で、第一の耐衝撃性改良剤の量は1.5重量%以上、特に2重量%以上とすることができる。同じくこの範囲内で、第一の耐衝撃性改良剤の量は13重量%以下、特に10重量%以下とすることができる。
【0055】
同様に、本組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)とポリアミドと耐衝撃性改良剤の合計重量を基準にして1〜15重量%の第二の耐衝撃性改良剤を含有し得る。この範囲内で、第二の耐衝撃性改良剤の量は1.5重量%以上、特に2重量%以上とすることができる。同じくこの範囲内で、第二の耐衝撃性改良剤の量は13重量%以下、特に10重量%以下とすることができる。
【0056】
一実施形態では、第一の耐衝撃性改良剤の量(重量%)と第二の耐衝撃性改良剤の量(重量%)との比は、3:1〜1:3、さらに具体的には2:1〜1:2、特に1.5:1〜1:1.5とすることができる。
【0057】
本組成物は、溶融混合又はドライブレンドと溶融混合の組合せによって製造できる。溶融混合は単軸又は二軸押出機、或いは成分に剪断力を加えることができる同様の混合装置で実施できる。
【0058】
最初にすべての成分を加工装置に加えてもよい。一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)を、適宜他の成分、例えば第一の耐衝撃性改良剤及び適宜第二の耐衝撃性改良剤及びポリアミドの一部と共に、相溶化剤と予備コンパウンディングしてもよい。ポリアミドを2つの部分に分けて添加する場合、ポリアミドの残りの部分及び適宜第二の耐衝撃性改良剤は最初の成分を混合した後で加える。押出機を使用する場合、ポリアミドの第二の部分は下流の供給口から供給してもよい。加工処理に複数の別個の押出機を使用してもよいが、各種成分の添加に適した複数の供給口を長手方向に有する単一の押出機で調製するとプロセスが簡単になる。組成物中の揮発性不純物を除去するため押出機の1以上のベント口を介してメルトを真空に引くのが往々にして有利である。
【0059】
本組成物はさらに、酸化防止剤、難燃剤、ドリップ防止剤、染料、顔料、着色剤、安定剤、無機小粒子(例えばクレー、マイカ、タルク)、強化剤(例えばガラス長繊維、チョップトガラス繊維)、導電性充填材、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、発泡剤及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の添加剤を有効量含んでいてもよい。これらの添加剤は当技術分野において公知であり、その有効量及び配合方法も同様に公知である。添加剤の有効量は広範囲にわたるが、通常は組成物全体の重量を基準にして50重量%以下又はそれ以上の量で存在する。ヒンダードフェノール、チオ化合物及び各種脂肪酸由来のアミドのようなある種の添加剤は一般に組成物の総重量を基準にして合計で2重量%の量で存在する。
【0060】
難燃剤の例としては、ハロゲン化難燃剤、環状ホスフェートを始めとする有機ホスフェート、塩化窒化リンやリンエステルアミドのようなリン−窒素結合を含有する化合物、リン酸アミド、ホスホン酸アミド、ホスフィン酸アミド、トリス(アジリジニル)ホスフィンオキシド、塩化テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム、モノ−、ジ−及びポリ−ホスフイン酸エステル/塩、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、赤リン、メラミンポリホスフェート、メレムホスフェート、メラムホスフェート、メラミンピロホスフェート、メラミン、メラミンシアヌレート、ホウ酸亜鉛のような亜鉛化合物、並びにこれらの1種以上を含む組合せがある。難燃剤は通例、「Tests for Flammability of Plastic Materials,UL94」と題するUnderwriter′s Laboratory Bulletin 94のような所定の難燃性規格に合格するのに十分な難燃性を組成物を与えるのに十分な量で使用される。適切な難燃性規格は最終用途に応じて決定し得る。
【0061】
導電性充填材の例には、導電性カーボンブラック、炭素繊維、炭素フィブリル、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ及びこれら2種以上の組合せがある。
【0062】
上述の組成物は、フィルム及びシート押出、射出成形、ガスアシスト射出成形、押出成形、圧縮成形及びブロー成形のような慣用の熱可塑性樹脂加工プロセスを用いて、製品に二次加工できる。フィルム及びシート押出法としてはメルトキャスティング、インフレートフィルム押出及びカレンダリングを挙げることができるが、これらに限定されない。共押出及び積層法を用いて複合多層フィルム又はシートを形成することもできる。この単層又は多層基材にさらに単層又は多層のコーティングを設けて、耐擦過性、耐紫外光性、美観などの追加の性質を付与することもできる。コーティングはロール塗り、スプレー塗工、浸漬、刷毛塗り又はフローコーティングのような通常の塗工技術で塗工し得る。本発明のフィルム及びシートは、組成物を適当な溶媒に溶解した溶液又は懸濁液を基材、ベルト又はロール上にキャストしてから溶媒を除去することによって製造することもできる。
【0063】
配向フィルムは、インフレーション法によって、或いはキャスト又はカレンダーフィルムを慣用の延伸技術を用いて熱変形温度付近で延伸することによって製造できる。例えば、多軸同時延伸にはラジアル延伸パントグラフを使用することができるし、x−y方向延伸パントグラフを用いて平面x−y方向で同時又は逐次延伸することもできる。また、逐次一軸延伸セクションを有する装置、例えば縦方向に延伸するため速度の異なるロールセクションと横断方向に延伸するためのテンターセクションとを備えた機械を用いて一軸及び二軸延伸を達成することもできる。
【0064】
本組成物は第一のシートと第二のシートを有する多層シートにしてもよく、第一のシートは第一面と第二面をもつ熱可塑性ポリマーからなり、第一のシートの第一面を複数のリブの第一面上に配置し、第二のシートは第一面と第二面を有する熱可塑性ポリマーからなり、第二のシートの第一面を上記複数のリブの第一面とは反対側の第二面上に配置する。
【0065】
上述のフィルム及びシートはさらに、特に限定されないが、熱成形、真空成形、加圧成形、射出成形及び圧縮成形を始めとする賦形及び二次成形プロセスによって成形品に熱可塑加工し得る。また、以下に述べる通り、単層又は多層フィルム又はシート基材上に熱可塑性樹脂を射出成形することによって多層成形品を成形することもできる。
・例えばスクリーン印刷又はトランスファー染料を用いて適宜1以上の色を表面に付した単層又は多層熱可塑性基材を準備する。
・例えば基材を三次元形状に賦形及びトリミングし、基材の三次元形状と合致する表面をもつ金型に嵌め込むことなどによって、基材を金型の立体形状に合致させる。
・基材背後の金型キャビティー内に熱可塑性樹脂を射出して、(i)永久接合した一体三次元製品を製造するか、或いは(ii)印刷基材から模様又は美的効果を射出成形樹脂に転写し、印刷基材を取り出し、美的効果を成形樹脂に付与する。
【0066】
当業者には自明であろうが、上記物品にさらに、特に限定されないが、熱硬化、テクスチャー化、エンボス加工、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理及び真空蒸着を始めとする一般的な硬化及び表面修飾処理を施して表面外観を変更し物品に追加の機能を付与してもよい。
【0067】
従って、本発明の別の実施形態は上記組成物から製造した物品、シート及びフィルムに関する。
【0068】
本明細書に記載した様々な実施形態を以下の非限定的な実施例でさらに例証する。
【実施例】
【0069】
以下の例は、表Iに記載の材料を用いて製造した。また、これらの例は1重量%未満の安定剤及び酸化防止剤も含有する。表II及び表IIIに示す量は重量%である。以下の例で使用する重量%は組成物の総重量を基準にして求めたものである。
【0070】
以下の例は、表1に示す材料を用いて製造した。これらの例は1重量%未満の安定剤及び酸化防止剤も含有する。例で用いた重量%は組成物の全重量を基準にして計算した。
【0071】
【表1】

これらの例の衝撃強さをASTM D256(ノッチ付アイゾッド=NI)によって23℃及び−30℃で試験した。ノッチ付アイゾッド衝撃値はJ/mで表示する。PA9Tの溶融粘度はキャピラリー粘度計で測定した。
【0072】
例1〜7
表2に示すようにポリ(アリーレンエーテル)、耐衝撃性改良剤及びクエン酸、フマル酸又は無水マレイン酸を、30mmWerner−Pfleider二軸押出機の供給スロートに添加し、スクリュー速度350rpm、供給速度13.6kg/時、温度305℃で溶融混合した。ポリアミドは下流で添加した。材料をペレット化し、ペレットを射出成形して成形し、ノッチ付アイゾッド衝撃強さについて試験した。配合及び結果を表2に示す。
【0073】
【表2】

例1を他の例との対比すると、アミン末端基含量の低い脂肪族−芳香族ポリアミドを用いて調製した組成物は物性に劣ることが分かる。この組成物を射出成形で成形すると層間剥離を起こした。
【0074】
脂肪族ポリアミドを用いた組成物(例2〜4)のノッチ付アイゾッド衝撃値を対比すると、2種類の耐衝撃性改良剤の組合せを用いても衝撃強さが向上しないことが分かる。対照的に、脂肪族−芳香族ポリアミドを用いた組成物(例5〜7)のノッチ付アイゾッド衝撃値を対比すると、2種類の耐衝撃性改良剤の組合せを用いと衝撃強さが大幅に向上することが分かる。
【0075】
以上、様々な実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の技術的範囲内で様々な変更をなすことができ、本発明の要素を均等物で置換できることは当業者には明らかであろう。さらに、特定の状況又は材料を本発明の開示内容に適合させるため、本発明の本質的な技術的範囲内で数多くの修正を施すことができる。本発明は、本明細書において本発明を実施するための最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に属するあらゆる実施形態を包含する。
【0076】
引用した特許は全て援用によって本明細書の内容の一部をなす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとのブロック共重合体、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロック共重合体又はこれらの組合せを含む第一の耐衝撃性改良剤、
官能化ポリオレフィンエラストマーを含む第二の耐衝撃性改良剤、及び
ポリ(アリーレンエーテル)と脂肪族−芳香族ポリアミドとの相溶化ブレンドを含有する組成物であって、
上記ポリアミドが、テレフタル酸単位を60〜100モル%含有するジカルボン酸単位と1,9−ノナンジアミン単位及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を60〜100モル%含有するジアミン単位からなるとともに45マイクロモル/gポリアミドを超えるアミン末端基含量を有する、組成物。
【請求項2】
ポリ(アリーレンエーテル)と脂肪族−芳香族ポリアミドと耐衝撃性改良剤の合計重量を基準にして、ポリ(アリーレンエーテル)が10〜70重量%、脂肪族−芳香族ポリアミドが5〜80重量%、第一の耐衝撃性改良剤が1〜15重量%、第二の耐衝撃性改良剤が1〜15重量%存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アミン末端基含量が50マイクロモル以上である、請求項1又は請求項2記載の組成物。
【請求項4】
ポリ(アリーレンエーテル)と脂肪族−芳香族ポリアミドとの相溶化ブレンドがさらに脂肪族ポリアミドを含有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
ポリ(アリーレンエーテル)と脂肪族−芳香族ポリアミドとの相溶化ブレンドが、ポリ(アリーレンエーテル)と脂肪族−芳香族ポリアミドと相溶化剤の反応生成物であり、上記相溶化剤が、炭素−炭素二重結合と1個以上のカルボン酸、無水物、エポキシ、イミド、アミド又はエステル基とを併せもつ多官能性化合物、式OR(式中、Rは水素又はアルキル、アリール、アシルもしくはカルボニルジオキシ基である)で表される基とカルボン酸、酸ハライド、無水物、酸ハライド無水物、エステル、オルトエステル、アミド、イミド、アミノ及びそれらの塩から選択される2個以上の基とを併せもつ多官能性化合物、及びこれらの多官能性化合物の2種以上の組合せから選択される、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
前記相溶化剤がクエン酸、フマル酸、無水マレイン酸又はこれら2種以上の組合せを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
第一の耐衝撃性改良剤と第二の耐衝撃性改良剤との比が1:3〜3:1である、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
前記官能化ポリオレフィンエラストマーが、カルボン酸基、エステル、酸無水物、エポキシ基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、イソシアネート基、シラノール基、カルボキシレート及びこれらの2種以上の官能基の組合せからなる群から選択される1個以上の官能基を含有し、エチレン及び1種以上のC3−8オレフィンから誘導された構造単位を含有する、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
さらに、酸化防止剤、難燃剤、ドリップ防止剤、染料、顔料、着色剤、安定剤、無機小粒子、強化剤、導電性充填材、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、発泡剤又はこれら2種以上を含む混合物を含有する、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとのブロック共重合体、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロック共重合体、又はこれらの組合せを含む第一の耐衝撃性改良剤、
官能化ポリオレフィンエラストマーを含む第二の耐衝撃性改良剤、
ポリ(アリーレンエーテル)、
テレフタル酸単位を60〜100モル%含有するジカルボン酸単位と1,9−ノナンジアミン単位及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を60〜100モル%含有するジアミン単位からなるとともに45マイクロモル/gポリアミドを超えるアミン末端基含量を有する脂肪族−芳香族ポリアミド、及び
炭素−炭素二重結合と1個以上のカルボン酸、無水物、エポキシ、イミド、アミド又はエステル基とを併せもつ多官能性化合物、式OR(式中、Rは水素又はアルキル、アリール、アシルもしくはカルボニルジオキシ基である)で表される基とカルボン酸、酸ハライド、無水物、酸ハライド無水物、エステル、オルトエステル、アミド、イミド、アミノ及びそれらの塩から選択される2個以上の基とを併せもつ多官能性化合物、及びこれらの多官能性化合物2種以上の組合せから選択される相溶化剤
の反応生成物を含有する組成物。

【公表番号】特表2007−517917(P2007−517917A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523967(P2006−523967)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/026580
【国際公開番号】WO2005/017039
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】