説明

ポリ(エチレングリコール)及びポリ(ラクチド−グリコリド)のブロックコポリマーを含む埋込型医療機器及びそのためのコーティング物

本発明は、薬物の放出を制御するように埋込型機器上にコーティングするためのブロックコポリマー、及び同機器を作製し、また使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化学、ポリマー化学、材料科学、及び医療機器の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の議論は、本明細書に記載する発明の理解に役立つように背景情報としてのみ提示することが意図されている。本セクションのいずれも、本発明の先行技術として意図されるものではなく、またそのようにみなされるものでもない。
【0003】
1980年代半ばまで、アテローム性動脈硬化症、すなわち冠動脈(複数可)の狭窄のための許容された治療法は、冠動脈バイパス術であった。かかる侵襲的手技は、有効性が認められ、また比較的高い安全性を有するまでに進化したものの、バイパス術は、なおも深刻な合併症に関連する可能性があり、また最良の場合であっても回復期間が長い。
【0004】
経皮経管冠動脈形成術(PTCA)が1977年に登場すると、状況は劇的に変化した。当初は心臓の調査用として開発されたカテーテル技術を用いて、拡張性バルーンが動脈内の閉塞領域を再開通するのに採用された。当該手技は比較的非侵襲的であり、バイパス術と比較して非常に短時間で済み、及び回復時間は最低限に抑えられた。しかし、PTCAは別の問題、すなわち実現したことの多くが無効となり得る、伸長した動脈壁の弾性反跳をもたらし、更にPTCAは、別の問題である再狭窄、すなわち治療済みの動脈の再閉塞を十分に改善することができなかった。
【0005】
1980年代半ばに進展した次の進歩は、PTCA後に、管腔壁を開通した状態に保つためのステントの使用であった。弾性反跳については大筋で決着がついたが、再狭窄の問題を完全には解決しなかった。すなわち、ステントが導入される以前では、再狭窄がPTCAを受けた患者の30〜50%で生じた。ステント留置により、再狭窄は約15〜30%まで低減し、かなり改善したものの、なおも望ましい割合よりも高い。
【0006】
2003年に、薬剤溶出ステント(DES)が導入された。DESで当初採用された薬物は、再狭窄の一因となる細胞増殖を抑制する化合物である細胞増殖抑制剤であった。その結果、再狭窄は比較的許容可能な数値である約5〜7%まで低減した。今日、DESはアテローム性動脈硬化症の治療の既定業界標準であり、また冠動脈以外の血管の狭窄の治療、例えば大腿動脈の末梢血管形成術等で急速に受け入れられている。
【0007】
DESの主要な問題の1つは、コーティング物からの薬物の放出速度の制御である。当技術分野において「バースト放出」として公知の、薬物の大半が移植後に速やかに放出されてしまうと、長期送達のもくろみは水泡に帰する。更に、バースト放出は、有毒となる局所的な薬物の濃縮を引き起こす可能性がある。一方、薬物送達放出速度があまりに遅いと、局所的濃度を意図した治療効果を有するように十分に高くすることができない可能性がある。薬物の放出制御は、コーティング物の機械的完全性が、特に滅菌処理後で、許容されるように維持されることと、バランスがとられていなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
薬物の制御放出、及び良好な機械特性の両方を有するDES用のコーティング物が必要とされている。本発明はかかるコーティング物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、埋込型医療機器及びその上のコーティング物、並びにかかる機器を使用して治療する方法に関する。
【0010】
従って、1つの態様では、本発明は、
機器本体と、
前記機器本体の外面の少なくとも一部分の上に配置されるコーティング物であって、前記コーティング物が、
半結晶性のA−Bブロックコポリマー、及び半結晶性のA−B−Aブロックコポリマーからなる群より選択されるポリマーであり、
Bが、約1000〜約30000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ(エチレングリコール)ブロックであり、かつAが、グリコリドを含むモノマー、並びにL−ラクチド、D−ラクチド、メソラクチド、及びこれらを組み合わせたものからなる群より選択される1つ又は複数のモノマーから形成され、
前記ポリマー中のエチレングリコールのモル濃度が、約1%〜約20%であり、かつ前記Aブロック中のL−ラクチド、D−ラクチド、及びメソラクチドを合計したモル濃度が、約70%〜約95%であり、かつ
前記ポリマーの重量平均分子量が、50,000ダルトン以上1,000,000ダルトン以下である、
前記ポリマーと、
薬物と、
を含む、前記コーティング物と
を含む、埋込型医療機器である。
【0011】
本発明の1つの態様では、ポリマーに対する薬物の質量比は約1又は1未満である。
【0012】
本発明の1つの態様では、コーティング物の少なくとも1つの層は、
半結晶性のA−Bブロックコポリマー、及び半結晶性のA−B−Aブロックコポリマーからなる群より選択されるポリマーであって、
Bが、約1000〜約30000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ(エチレングリコール)ブロックであり、かつAが、グリコリドを含むモノマー、並びにL−ラクチド、D−ラクチド、メソラクチド、及びこれらを組み合わせたものからなる群より選択される1つ又は複数のモノマーから形成され、
前記ポリマー内のエチレングリコールのモル濃度が、約1%〜約20%であり、かつ前記Aブロック内のL−ラクチド、D−ラクチド、及びメソラクチドを合計したモル濃度が、約70%〜約95%であり、かつ、
前記ポリマーの重量平均分子量が、50,000ダルトン以上1,000,000ダルトン以下である、
前記ポリマーと、
ポリマーに対する薬物の質量比が約1又は1未満である薬物と、を含む。
【0013】
本発明1つの態様では、A−Bブロックコポリマー又はA−B−AブロックコポリマーのBブロックは、約1000〜約20000ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0014】
本発明の1つの態様では、A−Bブロックコポリマー又はA−B−AブロックコポリマーのBブロックは、約1000〜約10000ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0015】
本発明の1つの態様では、エチレングリコールのモル濃度は、A−Bブロックコポリマー又はA−B−Aブロックコポリマー中において、約1%〜約10%である。
【0016】
本発明の1つの態様では、Aブロック中のL−ラクチド、D−ラクチド、及びメソラクチドを合計したモル濃度は、約80%〜約95%である。
【0017】
本発明の1つの態様では、Aブロック中のL−ラクチド、D−ラクチド、及びメソラクチドを合計したモル濃度は、約82%〜約95%である。
【0018】
本発明の1つの態様では、機器はステントである。
【0019】
本発明の1つの態様では、ステントは、生分解性、再吸収性、又はこれらの組み合わせである。
【0020】
本発明の1つの態様では、ステント本体はポリ(L−ラクチド)を含む。
【0021】
本発明の1つの態様では、薬物は、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、17−β−エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、ラパマイシン(シロリムス)、バイオリムスA9(Biosensors International、Singapore)、デフォロリムス、AP23572(Ariad Pharmaceuticals)、タクロリムス、テムシロリムス、ピメクロリムス、ノボリムス、ゾタロリムス(ABT−578)、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシプロピル)、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾリルラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン、デキサメタゾン、デキサメタゾン酢酸塩、デキサメタゾン誘導体、γ−ヒリダン、クロベタゾール、ピメクロリムス、イマチニブメシル酸塩、ミドスタウリン、フェノフィブラート、及びこれらを任意に組み合わせたものからなる群より選択される。
【0022】
本発明の1つの態様では、薬物は、ラパマイシン(シロリムス)、バイオリムスA9(Biosensors International、Singapore)、デフォロリムス、AP23572(Ariad Pharmaceuticals)、タクロリムス、テムシロリムス、ピメクロリムス、ノボリムス、ゾタロリムス(ABT−578)、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシプロピル)、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾリルラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン、デキサメタゾン、デキサメタゾン酢酸塩、デキサメタゾン誘導体、及びこれらを任意に組み合わせたものからなる群より選択される。
【0023】
本発明の1つの態様では、薬物は、エベロリムス、ゾタロリムス、又はこれらを組み合わせたものである。
【0024】
本発明の1つの態様では、ポリマーは、A−Bブロックコポリマーである。
【0025】
本発明の1つの態様では、ポリマーは、A−B−Aブロックコポリマーである。
【0026】
本発明の1つの態様では、ポリマーは、
Aブロック内にL−ラクチド、D−ラクチド、又はこれらを組み合わせたものを約85モル%で有するポリマーであって、前記L−ラクチド及び/又はD−ラクチドは、前記Aブロックを形成する際に用いられる複数のモノマーのメンバーに属し、及び前記ポリマー中には約1モル%のエチレングリコールを含み、Bブロックは、約6000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである、当該ポリマーと、
Aブロック内にL−ラクチド、D−ラクチド、又はこれらを組み合わせたものを約85モル%で有するポリマーであって、前記L−ラクチド及び/又はD−ラクチドは、前記Aブロックを形成する際に用いられる複数のモノマーのメンバーに属し、及び前記ポリマー中には約4モル%のエチレングリコールを含み、Bブロックは、約6000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである、当該ポリマーと、
Aブロック内にL−ラクチド、D−ラクチド、又はこれらを組み合わせたものを約85モル%で有するポリマーであって、前記L−ラクチド及び/又はD−ラクチドは、前記Aブロックを形成する際に用いられる複数のモノマーのメンバーに属し、及び前記ポリマー中には約5モル%のエチレングリコールを含み、Bブロックは、約5000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである、当該ポリマーと、からなる群より選択される。
【0027】
本発明の1つの態様では、ポリマーは、
ポリマー内にL−ラクチド、D−ラクチド、又はこれらを組み合わせたものを約85モル%で有する前記ポリマーであって、前記L−ラクチド及び/又はD−ラクチドは、前記Aブロックを形成する際に用いられる複数のモノマーのメンバーに属し、及び前記ポリマー中には約1モル%のエチレングリコールを含み、Bブロックは、約6000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである、当該ポリマーと、
ポリマー内にL−ラクチド、D−ラクチド、又はこれらを組み合わせたものを約85モル%で有する前記ポリマーであって、前記L−ラクチド及び/又はD−ラクチドは、前記Aブロックを形成する際に用いられる複数のモノマーのメンバーに属し、及び前記ポリマー中には約4モル%のエチレングリコールを含み、Bブロックは、約6000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである、当該ポリマーと、
ポリマー内にL−ラクチド、D−ラクチド、又はこれらを組み合わせたものを約85モル%で有する前記ポリマーであって、前記L−ラクチド及び/又はD−ラクチドは、前記Aブロックを形成する際に用いられる複数のモノマーのメンバーに属し、また前記ポリマー中には約5モル%のエチレングリコールを含み、Bブロックは、約5000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである、当該ポリマーと、からなる群より選択される。
【0028】
本発明の1つの態様では、ポリマーに対する薬物の比は、約0.75又は0.75未満である。
【0029】
本発明の1つの態様では、ポリマーに対する薬物の比は、約0.5又は0.5未満である。
【0030】
本発明の1つの態様では、機器はステントであり、ポリマーに対する薬物の比は、約0.5又は0.5未満であり、及び薬物はエベロリムス又はゾタロリムスである。
【0031】
本発明の1つの態様では、機器は、60%以下の24時間の累積薬物放出量を示す。
【0032】
本発明の1つの態様では、機器は、90%以下の72時間の累積薬物放出量を示す。
【0033】
本発明の1つの態様では、機器は、75%以下の72時間の累積薬物放出量を示す。
【0034】
従って、本発明の別の態様は、
機器本体と、
前記機器本体外面の少なくとも一部分の上に、1つ又は複数のコーティング溶液を配置するステップであって、少なくとも1つのコーティング物溶液は、
半結晶性のA−Bブロックコポリマー及び半結晶性のA−B−Aブロックコポリマーからなる群より選択されるポリマーであり、
Bは、約1000〜約30000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ(エチレングリコール)ブロックであり、かつAは、グリコリドを含むモノマー、並びにL−ラクチド、D−ラクチド、メソラクチド、及びこれらを組み合わせたものからなる群より選択される1つ又は複数のモノマーから形成され、かつ
前記ポリマー内のエチレングリコールのモル濃度が、約1%〜約20%であり、かつ前記Aブロック中のL−ラクチド、D−ラクチド、及びメソラクチドを合計したモル濃度が、約70%〜約95%であり、かつ前記ポリマーの重量平均分子量が、50,000ダルトン以上1,000,000ダルトン以下である、
前記ポリマーと、
薬物と、
溶媒と、を含み、
前記コーティング溶液中のポリマーに対する薬物の質量比が約1以下である、
前記ステップと、
溶媒を除去するステップと、
により形成されるコーティング物と
を含む、埋込型医療機器に関する。
【0035】
本発明の1つの態様では、機器はステントであり、
ポリマーは、
Aブロック内にL−ラクチド、D−ラクチド、又はこれらを組み合わせたものを約85モル%で有するポリマーであって、前記L−ラクチド及び/又はD−ラクチドは、前記Aブロックを形成する際に用いられる複数のモノマーのメンバーに属し、及び前記ポリマー中には約1モル%のエチレングリコールを含み、Bブロックは、約6000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである、前記ポリマーと、
Aブロック内にL−ラクチド、D−ラクチド、又はこれらを組み合わせたものを約85モル%で有するポリマーであって、前記L−ラクチド及び/又はD−ラクチドは、前記Aブロックを形成する際に用いられる複数のモノマーのメンバーに属し、及び前記ポリマー中には約4モル%のエチレングリコールを含み、Bブロックは、約6000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである、前記ポリマーと、
Aブロック内にL−ラクチド、D−ラクチド、又はこれらを組み合わせたものを約85モル%で有するポリマーであって、前記L−ラクチド及び/又はD−ラクチドは、前記Aブロックを形成する際に用いられる複数のモノマーのメンバーに属し、及び前記ポリマー中には約5モル%のエチレングリコールを含み、Bブロックは、約5000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである、前記ポリマーと、
からなる群より選択され、
薬物は、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、17−β−エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、ラパマイシン(シロリムス)、バイオリムスA9(Biosensors International、Singapore)、デフォロリムス、AP23572(Ariad Pharmaceuticals)、タクロリムス、テムシロリムス、ピメクロリムス、ノボリムス、ゾタロリムス(ABT−578)、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシプロピル)、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾリルラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン、デキサメタゾン、デキサメタゾン酢酸塩、デキサメタゾン誘導体、γ−ヒリダン、クロベタゾール、ピメクロリムス、イマチニブメシル酸塩、ミドスタウリン、フェノフィブラート、及びこれらを任意に組み合わせたものからなる群より選択され、かつ
ポリマーに対する薬物の比は約2:3〜約1:3である。
【0036】
本発明の1つの態様では、疾患又は病態を治療する方法は、上記埋込型医療機器を、これを必要とする患者に移植するステップを含む。
【0037】
本発明の1つの態様では、疾患又は病態は、冠動脈疾患(CAD)、末梢血管疾患(PVD)、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、血栓症、出血、血管剥離又は穿孔、動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、吻合部増殖(血管及び人工グラフトに関する)、胆管閉塞、尿道閉塞、腫瘍性閉塞、及びこれらを組み合わせたものからなる群より選択される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本明細書で単数形を使用する場合、別途明記しない限り複数形が含まれ、またその逆も同様である。すなわち、「一つの(a)」、及び「当該(the)」とは、当該単語が修飾するあらゆる単語の1つ又は複数を意味する。例えば、「1つの薬物(a drug)」、は1つの薬物、2つの薬物等を意味し得る。同様に、「当該ポリマー(the polymer)」、は1つのポリマー、複数のポリマーを意味し得る。同様の理由から、例えば、非限定的に、単語「薬物(drugs)」及び「ポリマー(polymers)」は、そのようなことを意図していないことが明記されない、又は文脈から明白でない限り、1つの薬物、又はポリマー、並びに複数形の薬物、又はポリマーを意味する。
【0039】
本明細書において使用する場合、別途規定しない限り、任意の近似の単語、例えば、非限定的に、「約(about)」、「本質的に(essentially)」、「実質的に(substantially)」等は、そのように修飾された要素が、正確に記載された通りである必要はなく、本発明の範囲を逸脱せずに、±15%程度記載内容から変動し得ることを意味する。
【0040】
本明細書において使用する場合、任意の提示範囲は最終点を含む。例えば、「10℃〜30℃の間の温度」又は「10℃〜30℃の温度」には、10℃及び30℃、並びに中間の任意の温度が含まれる。
【0041】
本明細書において使用する場合、本発明の態様を修飾するために、「好ましい(preferred)」、「好ましくは(preferably)」、「より好ましい(more preferred)」等を使用することは、選好物を、本特許出願申請時においてそれが存在した通りに意味する。
【0042】
「生理学的条件」とは、インプラントが、動物(例えば、ヒト)の身体内で暴露される条件を意味する。生理学的条件には、当該動物種にとって「正常な」体温(ヒトの場合、約37℃)、及び生理的イオン強度、pH、及び酵素類からなる水性環境が含まれるが、但し、これらに限定されない。場合によっては特定の動物の体温は、当該動物種にとって「正常な」体温と考えられる温度よりも高い、又は低い場合がある。例えば、ヒトの体温は、ヒトが罹患している病気に応じて、ある場合には約37℃よりも高い、又は低い可能性がある。本発明の範囲には、動物の生理的条件(例えば、体温)として「正常」とはみなされないような場合も含まれる。
【0043】
本明細書において使用する場合、「ポリマー」とは、「構成単位」の繰り返しからなる分子を意味する。構成単位は、モノマーの反応から得られる。非限定的な例として、エチレン(CH=CH)は、重合化してポリエチレン、CHCH(CHCHCHCH、を形成することができるモノマーであり、構成単位は、重合反応の結果、二重結合を失ったエチレン(−CHCH−)である。ポリマーはいくつかの異なるモノマーの重合から得られる場合もあり、従っていくつかの異なる構成単位を含み得る。かかるポリマーは、「コポリマー」と呼ばれる。構成単位それ自身は、その他の化合物の反応生成物であり得る。当技術分野の熟練者は、特定のポリマーを考える場合、容易に当該ポリマーの構成単位を認識し、また構成単位の元となるモノマーの構造を、同様に容易に認識するであろう。ポリマーは、直鎖又は分岐鎖、星状、又は樹状であり得、又は1つのポリマーが、別のポリマーに連結(接合)することもできる。ポリマーは、鎖に沿って、ランダムに配置された構成単位を有することができ、当該構成単位は独立したブロックとして存在することが可能であり、又は構成単位は、ポリマー鎖に沿って、濃度勾配を形成するように配置可能である。ポリマーはネットワークを形成するように架橋することも可能である。
【0044】
本明細書において使用する場合、「ブロックコポリマー」とは、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布する異なるいくつかの種類の構成単位ではなく、構成単位が分離した「ブロック」又は「セグメント」として配置しているコポリマーを意味する。ブロックコポリマーは、規則的又はランダムなブロックコポリマーであり得る。規則的なブロックコポリマーは、非限定的な例として、一般的な構造:…x−x−x−y−y−y−z−z−z−x−x−x…を有し、一方、ランダムブロックポリマーは、非限定的な例として、一般的な構造:…x−x−x−z−z−x−x−y−y−y−y−z−z−z−x−x−z−z−z−…を有する。ブロックは、ホモポリマー、すなわち1種類の構成単位からなるブロックであってもよく、またブロックは2種類以上の構成単位を含んでもよい。ブロック内の構成単位の配置も、ランダムであってもまた規則的であってもよい。
【0045】
本明細書において使用する場合、「ポリマーセグメント」又は「ポリマーブロック」とは、より大きなポリマーの部分を形成するポリマー種を意味する。本発明の目的に照らせば、ポリマーセグメント又はブロックもまたいくつかのポリマーである。従って、これらは本明細書において、「ポリマーセグメント」、「ポリマーブロック」、又は単に「セグメント」又は「ブロック」と呼ばれる場合もある。これらの用語は交換可能に使用される。
【0046】
本明細書において使用する場合、特定のモノマーをXモル%有するポリマーと引用するときは、それはポリマーを形成するために用いられるモノマーのモルパーセントを意味する。
【0047】
本明細書において使用する場合、用語「半結晶性」とは、結晶性のドメイン(複数可)/領域(複数可)及び非結晶性ドメイン(複数可)/領域(複数可)を有するポリマーを意味する。
【0048】
本明細書において使用する場合、「生体適合性」とは、ポリマー又はその他の材料のいずれも、そのままでは、すなわち、合成されたままの状態、及びその分解した状態、すなわちその分解生成物は、生体組織にとって毒性を有さない、又は少なくとも最低限度で毒性を有する;生体組織に傷害を与えない、又は少なくとも最低限度で、及び回復可能に傷害を与える;及び/又は、生体組織において、免疫反応を引き起こさない、又は少なくとも最低限度で、及び/又は制御可能に免疫反応を引き起こすような、ポリマー又はその他の材料を意味する。
【0049】
本明細書において使用する場合、用語「生分解性の(biodegradable)」、「生体浸食性(bioerodable)」、「分解性の(degraded)」及び「浸食性の(eroded)」は、交換可能に用いられ、並びにポリマー、コーティング物、コーティング層、及びその他の材料を意味し、これらは、生理条件に暴露されたときに、時間経過に伴い完全に、又は実質的に完全に、化学的に、又は生化学的に分解され、及び動物の腎臓の膜を通過可能な断片に分解可能である。より小さな断片は再吸収可能である。
【0050】
本明細書において使用する場合、用語「再吸収性の(resorbable)」とは、非限定的に例えば、ポリマー、コーティング物、及びコーティング層等の材料を意味し、これらは、生理条件に暴露されたときに、時間経過に伴い完全に、又は実質的に完全に、溶解され、及び/又は吸収され、そしてその後身体により排除され得る。再吸収されない材料は、生理学的条件に暴露されたとき、化学的又は生化学的に、より小さな断片に分解されない。
【0051】
埋込型医療機器上のコーティング物、又はかかるコーティング物を形成するポリマーに関して、分解プロセス又は再吸収プロセスが完了した、又は実質的に完了した後には、機器はコーティング物又はポリマーを全く、又は実質的に有さないと理解される。いくつかの実施形態では、無視し得るほどの残留物が残る場合がある。
【0052】
反対に、「生物学的に安定」とは、生分解性、又は再吸収性ではない材料を意味する。
【0053】
本明細書において使用する場合、「埋込型医療機器」は、患者の身体内に、外科的又は内科的手段により、又は医学的介入により自然開口部内に全体的又は部分的に導入される任意の種類の装具を意味し、そしてこれは手技後その場に留置されるように意図されている。移植の期間は、実質的に永久であり得、すなわち、患者の余命の期間、その場に留置されるように意図され得るが、また機器が生分解するまでの期間、又はこれが物理的に除去されるまでの期間であり得る。埋込型医療機器の例として、非限定的に、移植可能な心臓ペースメーカー及び除細動器;リード線及び前者用の電極;移植可能な器官刺激装置、例えば神経、膀胱、括約筋、及び横隔膜の刺激装置、渦巻き管インプラント;人工器官、血管グラフト、自己拡張型ステント、バルーン拡張式ステント、ステント−グラフト、グラフト、人工心臓弁、卵円孔閉鎖デバイス、髄液シャント、及び子宮内デバイスが挙げられる。薬物を局所的に送達するために特別に設計された、及びそれ専用に用いられることが意図された埋込型医療機器は、本発明の範囲内である。埋込型医療機器は、事実上、任意の材料から作製可能で、当該材料として金属、及び/又はポリマーが挙げられ、ポリマーには、生物学的に安定なポリマー、生分解性のポリマー、吸収性ポリマー、及びこれらの種類のポリマーの任意の組み合わせが含まれる。
【0054】
埋込型医療機器の1つの形態は「ステント」である。ステントとは、患者の身体内の所定の場所に組織を保持するのに一般的に用いられる任意の機器を意味する。しかし、特に有用なステントは、腫瘍(例えば、胆管、食道、気管/気管支等における)、良性の膵臓疾患、非限定的に例えばアテローム性動脈硬化症等の冠動脈疾患、頸動脈疾患、末梢動脈疾患、再狭窄及び不安定プラークを含む、但しこれらに限定されない、疾患又は障害により、血管が狭窄又は閉塞した時に、患者身体内の管腔の開通性を維持するために用いられるものである。
【0055】
ステントに関しては、「送達」とは、身体の管腔を経由して、治療を必要とする管腔内の病変部等の領域にステントを導入すること、及び搬送することを意味する。「留置」とは、管腔内において治療領域の箇所でステントを拡張させることに関連する。ステントの送達及び留置は、一般的にカテーテルの1つの末端部にステントを配置すること、身体の管腔内にカテーテルを挿入すること、所望の治療部位までカテーテルを前進させること、治療部位でステントを拡張させること、及びカテーテルを管腔から除去することにより達成される。
【0056】
本明細書において用いる場合、埋込型医療機器の「機器本体」とは、完全に形成された実用的な状態にある機器であって、その外面にはコーティング物は何も塗布されていない、又は機器自身が製造された材料とは異なる材料の層が塗布されていない機器を意味する。「外面」とは、任意の表面を意味するが、但し、身体の組織又は体液と接触するように空間的に配向している。「機器本体」の一般的な例としてBMS、すなわち、ベアメタルステントが挙げられるが、名前が示す通り、身体の組織又は体液と接触するあらゆる表面上には、ステントが作製された金属とは異なる任意の材料の層でコーティングされていない完全に形成された利用可能なステントである。もちろん、機器本体は、BMSだけではなく、何でできているかに関係なく、コーティングされていない任意の機器も意味する。
【0057】
本明細書において使用する場合、示された基材の「上に配置された」層、フィルム、又はコーティング物として記載される材料とは、基材表面の少なくとも一部分の上に、材料を直接又は間接的に配置されたものを意味する。「直接的に配置される」とは、材料が、基材表面上に直接塗布されることを意味する。「間接的に配置される」とは、材料が、基材上に直接又は間接的に配置された中間層に塗布されることを意味する。用語「層」及び「コーティング層」は、交換可能に用いられ、また本パラグラフに記載するように層又はフィルムを意味する。コーティング物は、1つ又は複数の層を含み得る。文脈が別途明白に表示しない限り、コーティング物、層、又はコーティング層と呼ぶ場合、直接又は間接的に配置されているかどうかを問わず、表面の全部、又は実質的に全部を被覆する材料の層を意味する。
【0058】
本明細書において使用する場合、「溶媒」は、選択された温度及び圧力において、撹拌の有無に関係なく、1つ又は複数の物質を溶解し、部分的に溶解し、分散し、又は懸濁して均一な分散物及び/又は溶液を形成することができる液状物として定義される。当該液状物は、液体状態、気体状態、又は超臨界状態となり得る。本明細書の溶媒は、2種類以上のかかる液状物の混合物であり得る。本明細書において使用する場合、「有機溶媒」とは、化学組成に炭素原子(複数可)が含まれる液状物である。
【0059】
本明細書において使用する場合、「コーティング溶液」とは組成物を意味し、基材上に物質を配置するためのスプレー法、又はディッピング法等の通常の技術により、埋込型医療機器等の基材上に配置可能な溶媒と組み合わされた、一般的に1つ又は複数の物質を意味する。物質は、溶媒中に溶解、分散、又は懸濁され得る。
【0060】
本明細書において使用する場合、「コーティング形成物」とは、基材上に配置される物質、又は物質の混合物を意味する。コーティング溶液が基材上に配置されるが、溶媒が除去される場合には、配置された層に残留溶媒が含まれ得るにしても、当該溶媒は「コーティング形成物」の一部とはならない。
【0061】
本明細書において使用する場合、「プライマー層」とは、例えば、非限定的に基材を製造する原料となる材料に対して良好な接着特性を、また当該基材上にコーティングされるあらゆるその他の材料に対しても良好な接着特性を示すポリマー等の材料から構成されるコーティング物を意味する。従って、プライマー層は、基材と基材により坦持される材料との間に位置する接着性の中間層としての機能を果たし、従って、基材に直接塗布される。好ましい基材は医療機器本体である。
【0062】
本明細書において使用する場合、「薬物」とは、疾患又は病態に罹患した患者に治療上有効な量を投与した時に、患者の健康及び福祉に対して治療上有益な効果を有する任意の物質を意味する。患者の健康及び福祉に対する治療上有益な効果には、(1)疾患又は病態の治癒、(2)疾患又は病態の進行の遅延、(3)疾患又は病態を退化させること、又は(4)疾患又は病態の1つ又は複数の症状の緩和が含まれるが、但し、これらに限定されない。
【0063】
本明細書において使用する場合、薬物には、ある疾患に特に罹患しやすいことが既知の、又は疑われる患者に対して、予防上有効な量で投与した時に、患者の健康及び福祉に対して予防上有益な効果を有する任意の物質も含まれる。患者の健康及び福祉に対する予防上有益な効果には、(1)まず最初に、疾患又は病態の発症を予防する、又は遅延させること、(2)予防上有効な量で用いられる物質と同一であっても、また相違してもよい治療上有効な量の物質により、疾患又は病態が退化したレベルに至ったら、そのようなレベルに維持すること、又は、(3)予防上有効な量で用いられる物質と同一であっても、また相違してもよい、治療上有効な量の物質を用いた治療のコースが完了した後に、疾患又は病態の再発を予防すること又は遅延することが含まれるが、但し、これらに限定されない。
【0064】
本明細書において使用する場合、「薬物」とは、本明細書において具体的に記載された薬物の、薬学的に許容される、薬理学的に活性な誘導体も意味し、これには、塩、エステル、アミド等が含まれるが、但し、これらに限定されない。診断に有用な物質も、本明細書において使用される用語「薬物」に含まれる。
【0065】
用語「薬物」、「生物活性薬」、「生物学的に活性な薬剤」、「生物学的薬剤」、「活性成分」、及び「治療薬」は、本明細書において交換可能に用いられる。
【0066】
「治癒促進性(prohealing)」とは、血管組織の治癒を促進するように、動脈の再内皮化を促進又は強化する薬物又は薬剤を意味する。
【0067】
本明細書において使用する場合、「コドラッグ」は、特定の薬理学的効果を実現するために、別の薬物と同時に、又はそれに続いて投与される薬物である。効果は一般的な場合もあれば、また特異的な場合もある。コドラッグは、もう一方の薬物の効果とは異なる効果を発揮し得る、又はもう一方の薬物の効果を促進、強化、又は高めることができる。
【0068】
本明細書において使用する場合、用語「プロドラッグ」とは、化学的又は生物学的部分により活性が抑えられた薬剤を意味し、これは代謝され、又はin vivoで加水分解を受けて、プロドラッグ由来の薬物又は活性成分を形成する。用語「プロドラッグ」は、用語、例えば「プロエージェント(proagent)」、「潜在化薬物(latentiated drug)」、及び「生可逆的誘導体」等の用語と交換可能に使用可能である。プロドラッグは、治療上、予防上、又は診断上の効果を発揮する活性な、又はより活性な薬物分子に、in vivoで酵素的又は非酵素的に変換可能な、薬理学的に活性がより低い化学誘導体として一般的に定義され得る。
【0069】
本明細書において使用する場合、「放出速度」とは、単位時間当たりの薬物送達システムから放出される薬物の放出スピード、例えば、非限定的に1時間当たり0.1mg(0.1mg/時)、又は1日当たり100mgを意味する。
【0070】
本明細書において使用する場合、薬物の「放出を制御する」コーティング物、コーティング層、又は機器とは、薬物の累積放出量が24時間で90%未満であるが、少なくとも72時間で5%であるものを意味する。
【0071】
本明細書において使用する場合、「累積的薬物放出量」とは、所定の時点、例えば、非限定的に24時間までに薬物送達システムから放出される総薬物量を意味する。「累積的薬物放出量」は、薬物送達システムの総薬物含有量に占める割合(%)として通常、表される。かかる計算では、分母として用いられる総薬物含有量は、分析法によって求められる薬物の割合(%)に基づき、実際の測定から得ることができる。
【0072】
本明細書において使用する場合、「放出期間」とは、薬物送達システム又は製剤から治療上有効な量で薬物が放出される全時間を意味する。従って、例えば、非限定的に薬物の放出範囲を、例えば、1時間〜72時間とした場合、これは、治療上有効な量の薬物がその期間にわたり放出されることを意味する。
【0073】
本明細書において使用する場合、薬物放出に関するあらゆる測定、例えば、非限定的に放出速度、又は放出期間とは、米国薬局方のタイプVIIの用具を用い、37℃の温度でブタ血清を使用し、及び任意選択的にアジ化ナトリウムを添加して(例えば、非限定的に約0.1%w/v)in−vitroで行われる測定を意味する。
【0074】
本発明は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)ブロック、及び少なくとも1つのポリエステルブロックを含むブロックコポリマーを提供する。ブロックコポリマーは、埋込型医療機器上のコーティング物として、又は埋込型医療機器を製造するのに有用である。ポリエステルブロックは疎水的で、ブロックコポリマーに疎水性を付与し、またPEGブロックは親水的で、ブロックコポリマーに親水性を付与する。ブロックコポリマーは、約50,000ダルトン以上、好ましくは約60,000ダルトン以上、及びより好ましくは、約100,000ダルトン以上の重量平均分子量(M)を一般的に有する。また、ブロックコポリマーのMは、約1,000,000ダルトン以下、及び好ましくは600,000ダルトン以下である。
【0075】
ポリエステルブロックは、エステル結合を形成することができる任意のモノマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリエステルブロックは、モノマー、例えば、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート(TMC)、又はこれらを組み合わせたものから形成可能である。ポリエステルブロックは、それらの任意のモノマーについて様々なモル濃度を有し得る。例えば、ポリエステルブロックは、少なくとも60%、又は少なくとも80%のモル濃度でラクチドを有し得る。いくつかの実施形態では、ポリエステルブロックは、約10%〜約75%の間のモル濃度でグリコリドを有し得る。
【0076】
ポリエステルブロックに異なるモノマーを選択すれば、薬物/ポリマー相互作用が最適化されて、より良好な薬物放出制御が実現し得るように、ブロックの分子構造設計が可能になる。例えば、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)、及び/又はポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)を含む、ポリエステルから形成されるコーティング物から、エベロリムスが制御された状態で放出されるように、ポリエステルブロックは、カプロラクトンユニット等の疎水性ユニットを含むように設計され得る。PLLA又はPLGAは、エベロリムスよりも親水的であるが、ポリマーがより疎水的となり、薬物とより混合しやすくなるように、カプロラクトンからなるより疎水的なブロックを有するのが望ましい。
【0077】
いくつかの実施形態では、ブロックコポリマーは、グリコリドを含む少なくとも1つのポリエステルブロック、及びPEGブロックを含む。グリコリドは、ブロックコポリマーの分解を加速、増強させる。例えば、ブロックコポリマーは、ラクチド及びグリコリドに由来するポリエステルブロック、及びPEGブロックを含むことができ、当該グリコリドモノマーはポリマーの分解を強化し、また当該ラクチドモノマーはブロックコポリマーに機械強度を付与する。
【0078】
ラクチド/PEGブロックコポリマー中のラクチドは、D,L−ラクチド、D−ラクチド、L−ラクチド、メソラクチド、又はこれらを組み合わせたものであり得る。かかるブロックコポリマーは、半結晶の形態を有するコーティング物を形成することが可能であり、その場合、L−ラクチドのモル濃度は、ポリエステルブロックの少なくとも60%、例えば、ポリエステルブロックの80%より高い割合を占め得る。
【0079】
PEGブロックは、ブロックコポリマーに生物学的に有益な特性も付与する。本明細書において使用する場合、用語「生物学的に有益な」とは、非閉塞性及び抗炎症性であるという特性を意味する。
【0080】
ラクチド/PEGブロックコポリマーでは、PEGブロックのMは、一般的に、約1Kダルトン〜約30Kダルトンの範囲であり得る。しかし、好ましくは、PEGブロックの分子量は、ブロックコポリマーが腎臓の膜を通過できる断片にまで分解可能であるほどに、十分小さく(例えば、約25,000ダルトン未満)なければならない。
【0081】
ブロックコポリマーのいくつかの非限定的な例として、PLGA−PEG−PLGA、P(LA−GA−CL)−PEG−P(LA−GA−CL)、P(TMC−GA)−PEG−P(TMC−GA)、PLA−PEG−PLA、P(TMC−GA)−PEG−P(TMC−GA)、及びこれらを組み合わせたものが挙げられる。本明細書において使用する場合、「LA」はラクチド、「GA」はグリコリド、「LGA」はラクチド−co−グリコリド、「CL」はカプロラクトン、及びTMCはトリメチレンカーボネートである。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態は、トリブロックポリマーであり、これは、ラクチド、グリコリド、及び、ガラス転移温度が低いブロックを形成する第3のモノマー、例えば非限定的に、カプロラクトン、及びトリメチレンカーボネート等から形成される。いくつかの実施形態では、本発明のトリブロックコポリマーのうちの1つのブロックは、約60℃未満のTを有し得る。ラクチド、グリコリドの比、及び低Tモノマーは変化してもよく、その場合、異なる特性を有するトリブロックコポリマーが形成され、例えば、異なる分解速度、当該トリブロックコポリマーから形成されたコーティング物からの異なる薬物放出速度、異なる薬物透過性、異なる可撓性又は機械特性を有する。上記の通り、一般的に、グリコリドは分解を加速又は増強させ、及びラクチドモノマーは機械強度を付与する。第3の低Tモノマーは、より高い可撓性及び伸展性を付与し、及びトリブロックコポリマーから形成されるコーティング物の機械特性を改善しつつ、薬物透過性、水透過性を強化し、及びポリマーの分解速度を高めることができる。
【0083】
モノマー、例えばD−ラクチド、L−ラクチド、グリコリド、及びジオキサノン等は、ポリマー中に高濃度で存在する場合には結晶化し得る。しかし、これらの任意のモノマーから形成されたブロックにおける結晶化は、ポリマー中のそれぞれの濃度が80重量%未満であれば、最低限に抑制可能、又は防止可能である。非結晶性、又は実質的に非結晶性のトリブロックポリマーである本発明の実施形態では、約10〜80重量%でD−ラクチド又はL−ラクチドが、約5〜80重量%でグリコリドのユニットが、及び約5〜60重量%で第3の低Tモノマーに由来するユニットが含まれる。
【0084】
用語「結晶性」とは、ブロックコポリマー内に5%を超えた結晶化度を有することを意味する。いくつかの実施形態では、用語「結晶性」は、ブロックコポリマー中に、約10%を超えた、約20%を超えた、約30%を超えた、約40%を超えた、約50%を超えた、又は約60%を超えた結晶化度を有することを意味し得る。
【0085】
本発明のブロックコポリマーの好ましい部分集合は、半結晶性のジブロック及びトリブロックコポリマーである。当該ジブロック及びトリブロックコポリマーは以下の一般式を有する:
A−B ジブロック
A−B−A トリブロック
【0086】
上記ポリマーでは、式Aは、グリコリドと少なくとも1種類のラクチドモノマーから形成され、及びその他のモノマーを含み得るポリエステルブロック又はセグメントを表す。半結晶性ポリマーでは、ラクチドはD−ラクチド、又はL−ラクチドであり得る。好ましくは、ポリマーを構成するAブロック内のこれらのラクチドモノマーのモル濃度は、約80%〜約100%、及びより好ましくは82%〜95%である。Aブロックのモル%という場合、ポリマーが2つ以上のAブロックを有する場合には、Aブロック全部に占めるモル%を意味する。Bブロックはポリ(エチレングリコール)である。好ましくは、コポリマー中のエチレングリコールモノマーのモル濃度は1%〜20%であり、より好ましくは1%〜10%である。
【0087】
Bブロックは、1000ダルトン〜30,000ダルトン、好ましくは1000ダルトン〜20,000ダルトン、及びより好ましくは約1000ダルトン〜約10,000ダルトンの範囲の重量平均分子量(M)を有し得る。ジブロック又はトリブロックポリマー全体のMは、約50,000ダルトン以上、好ましくは、約60,000ダルトン以上、及びより好ましくは、約100,000ダルトン以上である。全体的なMは、約1,000,000ダルトン以下、及び好ましくは約600,000ダルトン以下でありうる。
【0088】
好ましい部分集合を含め、本明細書において開示されるブロックコポリマーは、様々な吸収速度を有することができる。いくつかの実施形態では、ブロックコポリマーは、生理的環境において、約1日〜約90日の期間内に、当該ブロックコポリマーの質量の約80%が失われるような吸収速度を有し得る。いくつかの実施形態では、ブロックコポリマーは、生理的環境において、その質量の80%を、約1週間〜約1年、好ましくは約2週間〜約9カ月、及びより好ましくは約4週間〜約6カ月の期間に失う。質量の喪失は、再吸収、及び/又は生分解による。
【0089】
本明細書に記載するブロックコポリマーの調製は、確立されたポリマー合成法により容易に実現可能である。例えば、PLGA−PEG−PLGAは、触媒として第一スズオクトアートが存在する中で、D,L−ラクチド、及びグリコリドの開環重合用の開始剤としてPEGを用いることにより合成可能である。
【0090】
本明細書に記載するブロックコポリマーは、埋込型医療機器上のコーティング物として有用であり、又は機器本体の製造において利用可能である。以下の議論では、典型的な埋込型医療機器としてステントが用いられるが、但し、本発明の実施形態はそのように限定されたものではない。機器は、生分解性、及び/又は再吸収性であり、又は生物学的に安定であり得る。いくつかの実施形態では、埋込型機器は生分解性、及び/又は再吸収性のステントである。
【0091】
埋込型機器上に配置されるコーティング物は、コーティング物中の1つ又は複数の層の中に、本明細書に記載するブロックコポリマーを含み得る。当該コーティング物は多層構造であり得る。いくつかの実施形態では、コーティング物は、少なくとも1つの薬物リザーバー層を含み、及び下記のいずれか、又はこれらを任意に組み合わせたものを含み得る:
(1)プライマー層、
(2)リザーバー層、これは少なくとも1つのポリマー層(薬物−ポリマー層)を含む薬物−ポリマー層、あるいはポリマーを含まない薬物層であり得る、
(3)トップコート層、これは放出速度制限層であり得る、
(4)仕上げ層。
【0092】
本発明の実施形態には、機器外面の少なくとも一部分の上に1つ又は複数のコーティング形成物を配置すること、例えば、非限定的に、機器外面上に1つ又は複数のコーティング溶液を配置し、その後溶媒を除去すること等により形成されるコーティング物も含まれる。当該コーティング形成物は、上記した層のうちの任意の1層に関連し得る。1つ又は複数の層からなるコーティング物を取り上げる様々な実施形態には、機器外面の少なくとも一部分の上に、1つ又は複数の層のそれぞれに関連するコーティング形成物を配置することにより形成されるコーティング物も含まれる。
【0093】
コーティング物は、任意のいくつかの方法により機器の表面上に配置可能であり、同方法には、静電コーティング法、プラズマ蒸着法、ディッピング法、ブラッシング法、又はスプレー法が含まれ、但し、これらに限定されない。好ましい実施形態では、コーティング溶液は機器上にスプレーされる。コーティング形成物は、溶媒中で溶解、分散、及び/又は懸濁されてコーティング溶液を形成する。スプレー法は、スプレーノズルの下で機器を回転及び移動させ、その次に空気又は窒素等の気流下で回転及び移動させながら、溶液を霧状にし、そしてそれを機器表面上にスプレーすることにより実施されるが、同法は約20℃〜25℃の室温よりも高い温度に加熱され得る。所望の層の厚さを得るために、スプレーノズル及びガスの下を多数回通過させることが必要となる場合がある。従って、一般的に、コーティング層は、機器が残留溶媒の除去操作を受ける前に、又は異なるコーティング溶液を塗布する前に、1プロセスにおいて複数回の通過を適用した結果である。しかし、いくつかの実施形態では、コーティング形成物内のある物質、例えば薬物等の濃度は層中で変化し得る。非限定的な例として、他の物質に対する薬物の比が、全ての通過において同一でない、複数回の通過を適用することにより、層全体を通じて変化を持たせることができる。1つの層に由来する材料は、偶発的に別の層内に拡散又は移動する場合があり、又は後続の層を塗布している間に溶媒により抽出される場合もある。
【0094】
コーティング物の全ての層が機器上に配置された後、又は特定の1層若しくは複数の層が機器上に配置された後に、当該コーティング物は、所望であれば、ポリマーコーティング物の結晶化を可能にするように、またコーティング物の熱力学的安定性を向上させるように、約40℃〜約150℃の間、例えば80℃の温度で、約5分〜約60分の間の時間、任意選択的にアニーリングすることができる。
【0095】
任意選択的なプライマー層は、リザーバー層のステントに対する接着性を改善するために、ステント本体の外面上、及びリザーバー層の下に配置可能である。任意選択的なトップコート層は、少なくともリザーバー層の一部分の上に配置可能であり、また薬物放出速度の制御に役立つ速度制限膜として機能し得る。トップコート層が用いられる場合には、任意選択的な仕上げコート層が、薬物放出速度を更に制御し、またコーティング物の生体適合性を向上させるために少なくともトップコート層の一部分の上に配置可能である。トップコート層がない場合には、仕上げ層がリザーバー層の上に直接配置され得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、コーティング物は、任意のその他の層を有さない薬物リザーバー層を有し得る。その他の実施形態では、コーティング物は、薬物リザーバー層の他にプライマー層又はトップコート層、又はその両方を有し得る。なおも別の実施形態では、コーティング物は、上記した全ての層を含み得る。いくつかの実施形態では、本発明のコーティング物は、2つ以上の薬物リザーバー層を含むことができ、そのそれぞれには、同一であっても、また異なってもよい薬物が含まれる。上記で具体的に記載しなかった追加のコーティング層も含むことができる。
【0097】
コーティング物は、非結晶性又は半結晶性の形態を含み得る。いくつかの実施形態では、コーティング物は半結晶性の形態を含み、そのブロックコポリマーは、少なくとも80%のモル濃度でラクチドを有するポリエステルブロックを含む。
【0098】
本明細書に記載するブロックコポリマーは、コーティング物の任意の1層又は複数の層内で、任意の量で利用可能であり、また任意選択的に、別の生分解性、再吸収性、及び/又は生体適合性のポリマーと共に混合され得る。かかるポリマーの非限定的な例は、2008年4月18日に申請された米国特許出願第12/106,212号に記載されており、同号を本明細書により参考として援用する。
【0099】
コーティング物又はコーティング層は、少なくとも機器本体外面の一部分の上に、直接的又は間接的に配置され得る。いくつかの実施形態では、コーティング物又はコーティング層は、機器本体外面の全体、又は実質的に全体の上に配置され得る。コーティング物に複数の層が含まれる場合には、異なる各層は、必ずしも全表面上に配置される必要はなく、また全表面上に配置されない場合には、必ずしも外面の同一部分に配置される必要はない。異なる種類の複数のポリマー及び/又はその組み合わせが、異なる層で使用可能である。好ましい実施形態では、特定の層内に含まれる生分解性及び/又は再吸収性のポリマーは、当該層又は下層に含まれる生分解性及び/又は吸収性のポリマーと類似した速度で、又はそれより速い速度で分解する又は吸収される。薬物リザーバー層は、2種類以上の薬物を含むことができる。好ましくは、コーティング層は、機器表面、又は下層のいずれとも化学的に結合していない。
【0100】
好ましい実施形態では、ブロックコポリマーは、コーティング物からの薬物の放出を制御するのに用いられる。ブロックコポリマーは、薬物リザーバー層を形成するように、機器上に配置されるコーティング形成物内の薬物と組み合わせることができる。上記のA−Bジブロック及び/又はA−B−Aトリブロックコポリマーを含む実施形態の場合、ポリマーに対する薬物の質量比は、好ましくは1未満、より好ましくは約0.75以下、及び最も好ましくは約0.5以下である。
【0101】
本明細書に記載するブロックコポリマーを含むコーティング物は、薬物の放出を制御するのに特に有用である。上記A−Bジブロック及び/又はA−B−Aトリブロックコポリマーを含む本発明の実施形態には、24時間における累積的薬物放出量が60%以下、好ましくは50%以下、及びより好ましくは35%以下であるコーティング物、及び/又は72時間における累積的薬物放出量が90%以下、好ましくは75%以下、及びより好ましくは55%以下であるコーティング物が含まれる。いくつかの実施形態では、コーティング物は、24時間における累積的薬物放出量が25%以下、及び/又は72時間において45%以下の場合もある。
【0102】
コーティング物に含まれ得るいくつかの好ましい薬物の例として、非限定的に、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、17−β−エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、ラパマイシン(シロリムス)、バイオリムスA9(Biosensors International、Singapore)、デフォロリムス、AP23572(Ariad Pharmaceuticals)、タクロリムス、テムシロリムス、ピメクロリムス、ノボリムス、ゾタロリムス(ABT−578、ケミカルアブストラクツサービス登録番号221877−54−9)、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシプロピル)、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾリルラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン、デキサメタゾン、デキサメタゾン酢酸塩、γ−ヒリダン、クロベタゾール、ピメクロリムス、イマチニブメシル酸塩、ミドスタウリン、フェノフィブラート、それらのプロドラッグ、それらのコドラッグ、及びこれらを組み合わせたものが挙げられる。
【0103】
その他の好ましい生物活性薬として、非限定的に、siRNA及び/又は内皮細胞の移動を阻害するその他のオリゴヌクレオチドが挙げられる。生物活性薬のいくつかの更なる例として、リゾホスファチジン酸(LPA)又はスフィンゴシン−1−リン酸(S1P)も該当し得る。LPAは、多種多様な正常及び悪性の細胞型内で増殖因子様活性を生み出すことができる「生物活性な」リン脂質である。LPAは、創傷治癒等の正常な生理学的プロセスにおいて、及び血管緊張、血管の完全性、又は再生において重要な役割を演じている。
【0104】
その他の好ましい薬物として、デキサメタゾンの誘導体が挙げられる。本明細書において使用する場合、用語「デキサメタゾン誘導体」には、非限定的に下記の具体的な化合物が含まれる:デキサメタゾン酢酸塩、デキサメタゾンパルミテート(リメタゾン)、デキサメタゾンジエチルアミノアセテート(SOLU−FORTE−CORTIN)、デキサメタゾンイソニコチネート、デキサメタゾンテトラヒドロフタレート、及びデキサメタゾンtert−ブチルアセテートが含まれる。
【0105】
本明細書において具体的に記載された好ましい薬物及び生物活性薬に加えて、埋込型医療機器及び/又はそのコーティング物には、2008年4月18日に申請された米国特許出願第12/106,212号で、「生物学的に活性な薬剤」と題して掲載されている薬物又は生物活性薬の全てが含まれ得るが、同号を本明細書において参考として援用する。
【0106】
上記薬物は例示目的で掲載されており、限定するつもりはない。現在入手可能な、又は将来開発される可能性のあるその他の生物学的に活性な薬剤も、等しく適用可能である。
【0107】
本明細書に記載するブロックコポリマーを含むコーティング物は、特に滅菌処理後に良好な機械的完全性を示す。コーティングされた医療機器の滅菌処理は、微小病原体を不活性化するプロセスに一般的に関係する。かかるプロセスは、当技術分野において周知されている。数例として、電子ビーム(e−ビーム)、エチレンオキサイド(ETO)滅菌処理、及びγ線照射が挙げられる。これらのプロセスの多くは、温度上昇に関連する。例えば、コーティングされたステントのETO滅菌処理は、数時間から最長24時間、湿度レベルが最高100%に達する条件で、50℃を超えて加熱するステップに関係し得る。電子ビーム等の照射暴露は、温度の上昇を引き起こし得る。
【0108】
上記の通り、本明細書に記載するブロックコポリマーは、埋込型医療機器の一部として、及び特に、埋込型医療機器用のコーティング物の一部として用いられる時に特に有用である。これらのブロックコポリマーを含むコーティング物は、薬物の放出制御を支援するのに有用である。更に、コーティング物に含まれるこれらのブロックコポリマーを使用すれば、後期段階の血栓症を低減し得ると考えられている。後期段階の血栓症の発生率は、ベアメタルステントと比較して薬剤溶出ステントでは高めであり得る。考えられる原因は、治癒を抑制し又は遅延させる可能性のある抗増殖薬、及び/又はコーティング物中のポリマーに対する慢性炎症反応若しくは過敏性の存在にあるとする仮説がある。コーティング物中のポリマーに対する過敏性又は炎症反応の可能性に対処するための1つの手段は、コーティング物に生分解性ポリマーを使用することである。しかし、生分解プロセスは、あまりに急速である場合、それ自身が炎症を引き起こす可能性がある。従って、1年以内に、及び好ましくは6カ月以内に分解する生分解性コーティング物を使用するのが最良であると考えられている。本明細書に記載するブロックコポリマーの多くは、かかるコーティング物として有用である。
【0109】
更なる利点として、本明細書に記載するブロックコポリマーには、ポリ(エチレングリコール)からなる再吸収性のブロック、及び少なくとも1つの生分解性のブロックが含まれることが挙げられる。コポリマーの一部は再吸収性なので、かかるポリマーからなるコーティング物は、溶解機構により血流に吸収され、これにより管腔壁において炎症又はその他の副作用を引き起こすおそれのある、小分子の分解副生成物により引き起こされる副作用の可能性は緩和される、と考えられている。
【0110】
本明細書に記載するA−Bジブロック及びA−B−Aトリブロックコポリマーの部分集合は、特に有用である。これらのブロックコポリマーは薬物の放出を制御するだけでなく、滅菌処理後であっても許容され得る機械的完全性も示す。更に、Aブロック又はセグメントは、生分解性であるように設計される。Bブロックは再吸収性であるように設計される。上記の通り、かかる組み合わせは、管腔壁に炎症が生ずる可能性を低減し得る、と考えられている。
【0111】
埋込型機器の製造方法
本発明のその他の実施形態は、埋込型機器の製造方法に関する。1つの実施形態では、当該方法は、必ずしも限定的ではないが、任意選択的に1つ又は複数のその他の生分解性、再吸収性、又は生物学的に安定なポリマー若しくはコポリマー、又はこれらを任意に組み合わせたものを有する本明細書に記載するブロックコポリマーを含む材料からなる埋込型機器を形成するステップを含む。かかるポリマーの非限定的な例は、2008年4月18日に申請された米国特許出願第12/106,212号に記載されており、同号を本明細書により参考として援用する。
【0112】
別の実施形態では、必ずしも限定的ではないが、本明細書に記載するブロックコポリマーを含むコーティング物は、機器本体外面に配置され得るが、その結果、約30ミクロン(マイクロメーター)以下、又は約20ミクロン以下、又は約10ミクロン以下、又は約5ミクロン以下の厚さを有するコーティング物が得られる。
【0113】
いくつかの実施形態では、任意選択的に少なくとも1つの薬物を含む本発明のコポリマーは、ポリマー構築物、又はプリフォームに形成可能であり、例えば、管、又は丸められ、接合されて管等の構築物を形成し得るシート等が挙げられる。次に、ステントは、レーザーマシン又はいくつかのその他の方法により、管にパターンを刻み込むことにより管から作製され得る。別の実施形態では、ポリマー構築物は、射出成型装置を用いて本発明のポリマー材料から形成可能である。
【0114】
治療方法
本明細書に記載するブロックコポリマーを含む埋込型医療機器、例えばコーティングされたステント、又はポリマーステントは、医学的状態、例えば、非限定的に、血管疾患等を治療するために、又は治癒促進効果をもたらすために、患者内に移植され得る。
【0115】
治療可能な医学的状態には、非限定的に、冠動脈疾患(CAD)又は末梢血管疾患(PVD)等の血管障害が含まれる。血管疾患のいくつかの例として、再狭窄及びアテローム性動脈硬化症が挙げられる。末梢血管疾患の治療には、浅大腿動脈の治療が含まれ得る。治療可能なその他の非限定的な障害として、血栓症、出血、血管剥離、血管穿孔、動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、吻合部増殖(血管及び人工グラフトに関する)、動静脈吻合、卵円孔開存、胆管閉塞、尿道閉塞、及び腫瘍性閉塞が挙げられる。上記障害のいかなる合併症であっても、本明細書に記載するブロックコポリマーを含む埋込型医療機器を用いれば治療可能である。特定の実施形態では、病態又は障害は、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄又は不安定プラークである。
【実施例】
【0116】
本発明の実施形態は下記の実施例により説明されるが、その実施例はいかなる方法によっても本発明の範囲を限定するものとしてはみなされない。
【0117】
実施例1−コーティングされたステントからの放出速度
下記のそれぞれの例は、3mm×12mmのビジョン(VISION)(Abbott Cardiovascular Systems Inc.)ステントのコーティング物に関し、これは、0.5556cmのコーティング可能な表面積を有する。全てのステントはイソプロピルアルコール中で超音波処理を受けて洗浄され、その後、アルゴンプラズマ処理された。プライマー層はステントに適用されなかった。ステント上へのコーティング層の塗布は、エベロリムスの1%アセトン溶液を用いてステントにスプレーすることにより実施された:ブロックコポリマーは、ポリマーに対する薬物の比(D:P)が1:1又は1:2の質量比である。
【0118】
スプレー操作は、スプレーノズル、乾燥ノズル、及びノズルの下でステントを回転させ、移動させる手段を備えた特別注文のスプレーコーターを用いて実施されたが、その処理パラメータを表1に概説する。コーティングした後、全てのステントは、強制空気対流式オーブン内で、50℃において60分間、熱処理された。ステント上に目標重量のコーティング層を得るのに、スプレーノズルの下を2回以上通過させる必要があった。コーティング物を加熱処理した後、当該ステントは3.0×12mmのザイエンス(XIENCE)(登録商標)Vカテーテルに取り付けられ、カテーテルを保護するために、コイルアセンブリ内に配置され、次いでアルゴン充填フォイルパウチ内に密閉された。これらのステントは、電子ビーム又はエチレンオキサイドのいずれかを用いた滅菌処理法により滅菌された。
【0119】
【表1】

【0120】
下記のPLGA−PEGブロックコポリマーは、Boehringer Ingelheimより市販されており、コーティング形成物内で用いられた:
A)LGPt8516は、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)からなるAブロック、及びポリ(エチレングリコール)からなるBブロックを有するA−B−Aトリブロックコポリマーで、当該コポリマーは、1モル%のエチレングリコールを有し、及び当該コポリマーのAブロックは85モル%のL−ラクチドを有し、及びポリ(エチレン)のBブロックは、約6000のMを有する。
B)LGPt8546は、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)からなるAブロック、及びポリ(エチレングリコール)からなるBブロックを有するA−B−Aトリブロックコポリマーで、当該コポリマーは、4モル%のエチレングリコールを有し、及び当該コポリマーのAブロックは85モル%のL−ラクチドを有し、及びポリ(エチレン)のBブロックは、約6000のMを有する。
C)LGPt8555は、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)からなるAブロック、及びポリ(エチレングリコール)からなるBブロックを有するA−B−Aトリブロックコポリマーで、当該コポリマーは、5モル%のエチレングリコールを有し、及び当該コポリマーのAブロックは85モル%のL−ラクチドを有し、及びポリ(エチレン)のBブロックは、約5000のMを有する。
【0121】
下記のコーティング形成物は、ステント外面上に配置された:
【0122】
【表2】

【0123】
3日間のエベロリムスの累積放出量を、米国薬局方タイプVII用具(熱循環コントローラーを備えたバンケルBIO−DIS(Vankel BIO−DIS)(登録商標))を用いて測定した。各時点において、5個のステントが取り出され、薬物抽出及び薬物含量分析用として保管された。ブタ血清溶液からなる放出試験媒体は廃棄された。下記のパラメータが用いられた:
撹拌:40dpm(ディップ/分)
温度:37℃
放出媒体:0.1%(w/v)アジ化ナトリウムを含むブタ血清
時点:1日目、3日目
媒体量:10ml
残留エベロリムスは、試験対象ステントから抽出され、HPLCにより分析された。
【0124】
表3では、上記特定製造ロットについて測定された、ブタ血清中における1日及び3日後の累積放出量が、平均総薬物含有量に占める割合(%)として要約されている。累積放出量(%)は、実際の総薬物含有量の結果に基づき計算された。各ステントに関する実際の総薬物含有量は、上記ロットについて総含有量分析で求めた平均薬物回収率(%)に、ステントのコーティング物重量に基づく1ステント当たりの薬物載荷量を掛算することに基づき計算された。
【0125】
【表3】

【0126】
実施例2−総含有量分析
実施例1に由来するいくつかのコーティングされたステントも、総薬物含有量について分析された。表4では、ポリマーPGPt8516、及び100μgエベロリムス/cmのエベロリムスでコーティングされたステントに関する累積放出量の結果(N=5ステント)と共に、総薬物含有量分析(N=5ステント)の結果が要約されている。
【0127】
【表4】

【0128】
上記表4に示す通り、上記スプレー条件及び溶媒を用いて得られたコーティング物において、ポリマーに対する薬物の比が1:1の場合、1日目の累積放出量は、ステント内の薬物の実質的に全部である。
【0129】
実施例3−SEM画像
滅菌処理された実施例1のコーティングされたステントの一部も、模擬的使用試験の対象とされた。模擬的使用試験には、ポリ(ビニルアルコール)で作製された模擬的病変において、16気圧に加圧されたカテーテルバルーンを用いて、取り付けられたステントを拡張するステップが含まれる。カテーテルバルーン圧力は、16気圧で1分間保持され、その後、当該バルーンは収縮し、当該バルーンを取り出すために、当該カテーテルは撤収された。37℃の脱イオン水が、流速50ml/時で1時間、拡張したステントを経由してポンプ輸送される。模擬的使用プロトコールに続いて、ステント上のコーティング物は、走査型電子顕微鏡(SEM)により分析された。SEM写真は、コーティング物が、模擬的使用試験後にも許容可能な外観を呈していることを明らかにしたが、これは許容可能な機械的完全性を示している。
【0130】
本発明の特定の実施形態が提示、及び記載されてきたが、本発明から逸脱することなく、本発明のより広い態様において変更及び修正が可能であることは、当技術分野の熟練者にとって明白であろう。本発明の範囲には、異なる種に由来する態様又は本明細書に開示する実施形態、並びに部分組立品、組立品、及びその方法の任意の組み合わせが含まれる。従って、特許請求の範囲には、本発明の真の精神及び範囲内にある限り、それらの範囲内の全てのかかる変更及び修正が含まれることとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体と、
前記機器本体の外面の少なくとも一部分の上に配置されるコーティング物であって、前記コーティング物の少なくとも1層が、
半結晶性のA−Bブロックコポリマー及び半結晶性のA−B−Aブロックコポリマーからなる群より選択されるポリマーであって、
Bが、約1000〜約30000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ(エチレングリコール)ブロックであり、かつAが、グリコリドを含むモノマー、並びにL−ラクチド、D−ラクチド、メソラクチド、及びこれらを組み合わせたものからなる群より選択される1つ又は複数のモノマーから形成され、
前記ポリマー中のエチレングリコールのモル濃度が、約1%〜約20%であり、かつ前記Aブロック中のL−ラクチド、D−ラクチド、及びメソラクチドを合計したモル濃度が、約70%〜約95%であり、
前記ポリマーの重量平均分子量が、50,000ダルトン以上1,000,000ダルトン以下である、
前記ポリマーと、
ポリマーに対する薬物の質量比が約1又は1未満である薬物と、
を含む、前記コーティング物と
を含む、埋込型医療機器。
【請求項2】
前記A−Bブロックコポリマー又はA−B−Aブロックコポリマーの前記Bブロックが、約1000〜約20000ダルトンの重量平均分子量を有する、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記A−Bブロックコポリマー又はA−B−Aブロックコポリマーの前記Bブロックが、約1000〜約10000ダルトンの重量平均分子量を有する、請求項2に記載の機器。
【請求項4】
前記A−Bブロックコポリマー又は前記A−B−Aブロックコポリマー内のエチレングリコールのモル濃度が、約1%〜約10%である、請求項1に記載の機器。
【請求項5】
前記Aブロック内のL−ラクチド、D−ラクチド、及びメソラクチドを合計したモル濃度が、約80%〜約95%である、請求項1に記載の機器。
【請求項6】
前記Aブロック内のL−ラクチド、D−ラクチド、及びメソラクチドを合計したモル濃度が、約82%〜約95%である、請求項1に記載の機器。
【請求項7】
ステントである、請求項1に記載の機器。
【請求項8】
前記ステントが生分解性、再吸収性、又はこれらの組み合わせである、請求項7に記載の機器。
【請求項9】
前記ステント本体が、ポリ(L−ラクチド)を含む、請求項8に記載の機器。
【請求項10】
前記薬物が、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、17−β−エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、ラパマイシン(シロリムス)、バイオリムスA9、デフォロリムス、AP23572、タクロリムス、テムシロリムス、ピメクロリムス、ノボリムス、ゾタロリムス(ABT−578)、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシプロピル)、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾリルラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン、デキサメタゾン、デキサメタゾン酢酸塩、デキサメタゾン誘導体、γ−ヒリダン、クロベタゾール、ピメクロリムス、イマチニブメシル酸塩、ミドスタウリン、フェノフィブラート、及びこれらを任意に組み合わせたものからなる群より選択される、請求項1に記載の機器。
【請求項11】
前記薬物が、ラパマイシン(シロリムス)、バイオリムスA9、デフォロリムス、AP23572、タクロリムス、テムシロリムス、ピメクロリムス、ノボリムス、ゾタロリムス(ABT−578)、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシプロピル)、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾリルラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン、デキサメタゾン、デキサメタゾン酢酸塩、デキサメタゾン誘導体、及びこれらを任意に組み合わせたものからなる群より選択される、請求項10に記載の機器。
【請求項12】
前記薬物がエベロリムス、ゾタロリムス、又はこれらを組み合わせたものである、請求項11に記載の機器。
【請求項13】
前記ポリマーがA−Bブロックコポリマーである、請求項1に記載の機器。
【請求項14】
前記ポリマーがA−B−Aブロックコポリマーである、請求項1に記載の機器。
【請求項15】
前記ポリマーが、
前記Aブロック内に、L−ラクチド、D−ラクチド、又はこれらを組み合わせたものを約85モル%で有するポリマーであって、前記L−ラクチド及び/又はD−ラクチドは、前記Aブロックを形成する際に用いられる複数のモノマーのメンバーに属し、及び当該ポリマー中には約1モル%のエチレングリコールを含み、前記Bブロックは、約6000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである、当該ポリマーと、
前記Aブロック内に、L−ラクチド、D−ラクチド、又はこれらを組み合わせたものを約85モル%で有するポリマーであって、前記L−ラクチド及び/又はD−ラクチドは、前記Aブロックを形成する際に用いられる複数のモノマーのメンバーに属し、及び当該ポリマー中には約4モル%のエチレングリコールを含み、前記Bブロックは、約6000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである、当該ポリマーと、
前記Aブロック内に、L−ラクチド、D−ラクチド、又はこれらを組み合わせたものを約85モル%で有するポリマーであって、前記L−ラクチド及び/又はD−ラクチドは、前記Aブロックを形成する際に用いられる複数のモノマーのメンバーに属し、及び当該ポリマー中には約5モル%のエチレングリコールを含み、前記Bブロックは、約5000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである、当該ポリマーと、
からなる群より選択される、請求項14に記載の機器。
【請求項16】
ポリマーに対する薬物の比が約0.75又は0.75未満である、請求項1に記載の機器。
【請求項17】
ポリマーに対する薬物の比が約0.5又は0.5未満である、請求項1に記載の機器。
【請求項18】
ステントであり、ポリマーに対する薬物の比が約0.5又は0.5未満、及び前記薬物がエベロリムス又はゾタロリムスである、請求項15に記載の機器。
【請求項19】
60%以下の24時間の累積的薬物放出を示す、請求項1に記載の機器。
【請求項20】
90%以下の72時間の累積的薬物放出を示す、請求項1に記載の機器。
【請求項21】
75%以下の72時間の累積的薬物放出を示す、請求項1に記載の機器。
【請求項22】
機器本体と、
前記機器本体の外面の少なくとも一部分の上に、1つ又は複数のコーティング溶液を配置するステップであって、少なくとも1つのコーティング溶液は、
半結晶性のA−Bブロックコポリマー、及び半結晶性のA−B−Aブロックコポリマーからなる群より選択されるポリマーであり、
Bは、約1000〜約30000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ(エチレングリコール)ブロックであり、かつAは、グリコリドを含むモノマー、並びにL−ラクチド、D−ラクチド、メソラクチド、及びこれらを組み合わせたものからなる群より選択される1つ又は複数のモノマーから形成され、
前記ポリマー内のエチレングリコールのモル濃度が、約1%〜約20%であり、かつL−ラクチド、D−ラクチド、及びメソラクチドを合計したモル濃度が、約70%〜約95%であり、かつ
前記ポリマーの重量平均分子量が、50,000ダルトン以上1,000,000ダルトン以下である、
前記ポリマーと、
薬物と、
溶媒と、を含み、
前記コーティング溶液中のポリマーに対する薬物の質量比が約1未満である、
前記ステップと、
溶媒を除去するステップと、
により形成されるコーティング物と
を含む、埋込型医療機器。
【請求項23】
前記機器が、ステントであり、
前記ポリマーが、
前記Aブロック内に、L−ラクチド、D−ラクチド、又はこれらを組み合わせたものを約85モル%で有するポリマーであって、前記L−ラクチド及び/又はD−ラクチドは、前記Aブロックを形成する際に用いられる複数のモノマーのメンバーに属し、及び当該ポリマー中には約1モル%のエチレングリコールを含み、前記Bブロックは、約6000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである、当該ポリマーと、
前記Aブロック内に、L−ラクチド、D−ラクチド、又はこれらを組み合わせたものを約85モル%で有するポリマーであって、前記L−ラクチド及び/又はD−ラクチドは、前記Aブロックを形成する際に用いられる複数のモノマーのメンバーに属し、及び当該ポリマー中には約4モル%のエチレングリコールを含み、前記Bブロックは、約6000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである、当該ポリマーと、
前記Aブロック内に、L−ラクチド、D−ラクチド、又はこれらを組み合わせたものを約85モル%で有するポリマーであって、前記L−ラクチド及び/又はD−ラクチドは、前記Aブロックを形成する際に用いられる複数のモノマーのメンバーに属し、及び当該ポリマー中には約5モル%のエチレングリコールを含み、前記Bブロックは、約5000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである、当該ポリマーと、
からなる群より選択され、
前記薬物が、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、17−β−エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、ラパマイシン(シロリムス)、バイオリムスA9、デフォロリムス、AP23572、タクロリムス、テムシロリムス、ピメクロリムス、ノボリムス、ゾタロリムス(ABT−578)、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシプロピル)、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾリルラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン、デキサメタゾン、デキサメタゾン酢酸塩、デキサメタゾン誘導体、γ−ヒリダン、クロベタゾール、ピメクロリムス、イマチニブメシル酸塩、ミドスタウリン、フェノフィブラート、及びこれらを任意に組み合わせたものからなる群より選択され、かつ
ポリマーに対する薬物の比が約2:3〜約1:3である、請求項20に記載の機器。
【請求項24】
請求項1に記載の埋込型医療機器を、これを必要とする患者に移植するステップを含む、疾患又は病態を治療する方法。
【請求項25】
前記疾患又は病態が、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、血栓症、出血、血管剥離又は穿孔、動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、吻合部増殖(血管及び人工グラフトに関する)、胆管閉塞、尿道閉塞、腫瘍性閉塞、冠動脈疾患(CAD)、末梢血管疾患(PVD)、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項24に記載の方法。

【公表番号】特表2012−529922(P2012−529922A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514933(P2012−514933)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/054533
【国際公開番号】WO2010/147603
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(507135788)アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド (92)
【Fターム(参考)】