説明

ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体及びそれを含有する潤滑組成物

本発明は、式(III):[Y−CO[O−A−CO]−Z−RpXq−(式中、Yは、水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基であり、Aは、二価の任意に置換されたヒドロカルビル基であり、nは1〜100、好ましくは1〜10であり、mは1〜4であり、qは1〜4であり、pは、pq=mであるような整数であり、Zは、窒素原子を介してカルボニル基に結合している、任意に置換された二価の架橋基であり、Rはアンモニウム基であり、Xq−は、硫黄を含有しないアニオンである)を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を提供する。更に、本発明は、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を含有する潤滑組成物及び燃料組成物並びに流体のリン揮発度を低下させるためのポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体、並びにそれを含有する潤滑組成物及び燃料組成物に関する。
【0002】
更に詳しくは、本発明は、内燃機関での使用のための潤滑組成物及び燃料組成物に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
流体の、好ましくは潤滑組成物のリン揮発度(特にT.W.Selby,R.J.Bosch and D.C.Fee,「Continued Studies of the Causes of Engine Oil,Phosphorus Volatility−Part 2」SAE 2007−01−1073に記載されているような)を低下させることが本発明の目的である。
【0004】
特に内燃機関での使用のための、代替潤滑組成物を提供することが本発明の別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
幾つかの実施形態では、本発明は、式(III):
[Y−CO[O−A−CO]−Z−RpXq− (III)
(式中、Yは、水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基であり、Aは、二価の任意に置換されたヒドロカルビル基であり、nは1〜100、好ましくは1〜10であり、mは1〜4であり、qは1〜4であり、pは、pq=mであるような整数であり、Zは、窒素原子を介してカルボニル基に結合している、任意に置換された二価の架橋基であり、Rはアンモニウム基であり、Xq−は、硫黄を含有しないアニオンである)
を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を含む。アニオンXq−は、OH、フェノキシド基、サリチレート基、オレエート基、アセテート基及びそれらの組み合わせよりなる群から選択されてよく、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、30mg.KOH/g未満、好ましくは20mg.KOH/g未満の全塩基価を有してよい。
【発明を実施するための形態】
【0006】
上記の又は他の目的の1つ以上は、式(III):
[Y−CO[O−A−CO]−Z−RpXq− (III)
【0007】
(式中、Yは、水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基であり、Aは、二価の任意に置換されたヒドロカルビル基であり、nは1〜100、好ましくは1〜10であり、mは1〜4であり、qは1〜4であり、pは、pq=mであるような整数であり、Zは、窒素原子を介してカルボニル基に結合している、任意に置換された二価の架橋基であり、Rはアンモニウム基であり、Xq−は、硫黄を含有しないアニオンである)
を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を提供することにより本発明によって達成できる。
【0008】
本発明によるポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の使用は改善されたリン揮発度特性をもたらすことが本発明により意外にも見いだされた。
【0009】
この点において国際公開第2007/128740号パンフレットが同じ式(III)のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を開示していることが指摘される。しかしながら、国際公開第2007/128740号パンフレットは、アニオンXq−が硫黄を含有しないポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を文字通り開示していない。更に、国際公開第2007/128740号パンフレットは、リン揮発度特性の改善に関係していない。
【0010】
本発明による式(III)において、Rは第一級、第二級、第三級又は第四級アンモニウム基であってよい。Rは好ましくは第四級アンモニウム基である。
【0011】
式(III)において、Aは好ましくは、式(I)及び(II)について本明細書で以下に記載されるように二価の直鎖又は分岐のヒドロカルビル基である。
【0012】
即ち、式(III)において、Aは好ましくは、任意に置換された芳香族、脂肪族又は脂環式の直鎖又は分岐の二価ヒドロカルビル基である。更に好ましくは、Aは、アリーレン、アルキレン又はアルケニレン基、特に4〜25個の範囲の炭素原子、更に好ましくは12〜20個の範囲の炭素原子を含有するアリーレン、アルキレン又はアルケニレン基である。
【0013】
好ましくは、式(III)の前記化合物において、カルボニル基とヒドロキシル基に由来する酸素原子との間に直接連結された少なくとも4個の炭素原子、更に好ましくは8〜14個の範囲の炭素原子が存在する。
【0014】
式(III)の化合物において、基A中の任意の置換基は、ヒドロキシ、ハロもしくはアルコキシ基、特にC1〜4アルコキシ基から好ましくは選択される。
【0015】
式(III)において、Yは好ましくは、式(I)について本明細書で以下に記載されるように任意に置換されたヒドロカルビル基である。
【0016】
即ち、式(III)中の任意に置換されたヒドロカルビル基Yは好ましくは、50個以下の炭素原子、更に好ましくは7〜25個の範囲の炭素原子を含有するアリール、アルキル又はアルケニルである。例えば、任意に置換されたヒドロカルビル基Yは、ヘプチル、オクチル、ウンデシル、ラウリル、ヘプタデシル、ヘプタデニル、ヘプタデカジエニル、ステアリル、オレイル及びリノレイルから好都合に選択できる。
【0017】
本明細書での式(III)中の前記任意に置換されたヒドロカルビル基Yの他の例には、シクロヘキシルなどのC4〜8シクロアルキル、アビエチン酸などの天然起源の酸に由来する多環式テルペニル基などのポリシクロアルキル、フェニルなどのアリール、ベンジルなどのアラルキル、並びにナフチル、ビフェニル、スチベニル及びフェニルメチルフェニルなどのポリアリールが挙げられる。
【0018】
本発明では、式(III)中の任意に置換されたヒドロカルビル基Yは、カルボニル、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、アミノ、好ましくは第三級アミノ(N−H結合なし)、オキシ、シアノ、スルホニル及びスルホキシルなどの1つ以上の官能基を含有してよい。置換ヒドロカルビル基中の、水素以外の原子の大部分は一般に炭素であり、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素及び硫黄)は、存在する全非水素原子の一般に少部分、約33%以下を表すにすぎない。
【0019】
置換ヒドロカルビル基Y中のヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、ニトロ及びシアノなどの官能基はヒドロカルビルの水素原子の1つと置き換わるが、置換ヒドロカルビル基中のカルボニル、カルボキシル、第三級アミノ(−N−)、オキシ、スルホニル及びスルホキシルなどの官能基はヒドロカルビルの−CH−又はCH−部分と置き換わることを当業者は十分理解するであろう。
【0020】
更に好ましくは、式(III)中のヒドロカルビル基Yは、非置換であるか又は、ヒドロキシ、ハロもしくはアルコキシ基から選択される基、なお更に好ましくはC1〜4アルコキシで置換されている。
【0021】
最も好ましくは、式(III)中の任意に置換されたヒドロカルビル基Yは、ステアリル基、12−ヒドロキシステアリル基、オレイル基又は12−ヒドロキシオレイル基、及びトール油脂肪酸などの天然起源の油に由来するものである。
【0022】
式(III)において、Zは好ましくは式(IV)
【化1】


(式中、Rは、水素又はヒドロカルビル基であり、Bは、任意に置換されたアルキレン基である)
で表される任意に置換された二価の架橋基である。
【0023】
を表してよいヒドロカルビル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル及びオクタデシルが挙げられる。
【0024】
Bを表してよい任意に置換されたアルキレン基の例には、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン及びヘキサメチレンが挙げられる。
【0025】
式(III)中の好ましいZ部分の例には、−NHCHCH−、−NHCHC(CHCH−及びNH(CH−が挙げられる。
【0026】
好ましくは、Rは、式(V)
【化2】


(式中、R、R及びRは、水素及びメチルなどのアルキル基から選択できる)
で表されてよい。
【0027】
式(III)の化合物のアニオンXq−は、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミドカチオンの正電荷と釣り合うために好適な任意の硫黄を含有しないアニオン(又はアニオンの混合物)であることができる。
【0028】
アニオンXq−は、硫黄を含有しない有機アニオン又は硫黄を含有しない無機アニオンなどの硫黄を含有しないアニオンであってよい。
【0029】
好適なアニオンの非限定的な例は、OH、CH、NH、HCO、HCOO、CHCOO、H、BO3−、CO2−、C、HCO2−、C2−、HC、NO、NO、N3−、NH、O2−、O2−、BeF、F、Na、[Al(HO)(OH)、SiO2−、SiF2−、HPO、P3−、PO3−、HPO2−、Cl、ClO、ClO、ClO、KO、SbOH、SnCl2−、[SnTe4−、CrO2−、Cr2−、MnO、NiCl2−、[Cu(CO(OH)4−、AsO3−、Br、BrO、IO、I、CN、OCNなどである。
【0030】
好適なアニオンにはまた、カルボン酸基を含有する化合物に由来するアニオン(例えば、カルボキシレートアニオン)、ヒドロキル基を含有する化合物に由来するアニオン(例えば、アルコキシド、フェノキシド又はエノレートアニオン)、硝酸アニオン及び亜硝酸アニオンなどの窒素ベースのアニオン、ホスフェート及びホスホネートなどのリンベースのアニオン、又はそれらの混合物が含まれてよい。
【0031】
カルボン酸基を含有する化合物に由来する好適なアニオンの非限定的な例には、アセテート、オレエート、サリチレートアニオン、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0032】
ヒドロキシル基を含有する化合物に由来する好適なアニオンの非限定的な例には、フェノキシドアニオン、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0033】
好ましくは、アニオンXq−は、OH、フェノキシド基、サリチレート基、オレエート基及びアセテート基よりなる群から選択される。最も好ましくは、アニオンXq−はOHである。
【0034】
1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、アミン及び式(I)
Y−CO[O−A−CO]−OH (I)
(式中、Yは、水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基であり、Aは、二価の任意に置換されたヒドロカルビル基であり、nは1〜100、好ましくは1〜10である)
のポリ(ヒドロキシカルボン酸)と、酸又は四級化剤との反応によって得られる。
【0035】
本明細書で用いるところでは、用語「ヒドロカルビル」は、炭化水素の炭素原子(より多くの水素原子が除去される場合には必ずしも同じ炭素原子ではない)からの1つ以上の水素原子の除去によって形成されるラジカルを表す。
【0036】
ヒドロカルビル基は、芳香族、脂肪族、非環式又は環式基であってよい。好ましくは、ヒドロカルビル基は、アリール、シクロアルキル、アルキル又はアルケニルであり、その場合それらは直鎖又は分岐鎖基であってよい。
【0037】
代表的なヒドロカルビル基には、フェニル、ナフチル、メチル、エチル、ブチル、ペンチル、メチルペンチル、ヘキセニル、ジメチルヘキシル、オクテニル、シクロオクテニル、メチルシクロオクテニル、ジメチルシクロオクチル、エチルヘキシル、オクチル、イソオクチル、ドデシル、ヘキサデセニル、エイコシル、ヘキサコシル、トリアコンチル及びフェニルエチルが含まれる。
【0038】
本発明では、語句「任意に置換されたヒドロカルビル」は、1つ以上の「不活性な」ヘテロ原子含有官能基を任意に含有するヒドロカルビル基を記載するために用いられる。「不活性な」とは、官能基がいかなる実質的な程度にも化合物の機能を妨げないことを意味する。
【0039】
式(I)中の任意に置換されたヒドロカルビル基Yは、本明細書では好ましくは、50個以下の炭素原子、更に好ましくは7〜25個の範囲の炭素原子を含有するアリール、アルキル又はアルケニルである。例えば、任意に置換されたヒドロカルビル基Yは、ヘプチル、オクチル、ウンデシル、ラウリル、ヘプタデシル、ヘプタデニル、ヘプタデカジエニル、ステアリル、オレイル及びリノレイルから好都合に選択できる。
【0040】
本明細書での式(I)中の前記任意に置換されたヒドロカルビル基Yの他の例には、シクロヘキシルなどのC4〜8シクロアルキル、アビエチン酸などの天然起源の酸に由来する多環式テルペニル基などのポリシクロアルキル、フェニルなどのアリール、ベンジルなどのアラルキル、並びにナフチル、ビフェニル、スチベニル及びフェニルメチルフェニルなどのポリアリールが挙げられる。
【0041】
本発明では、任意に置換されたヒドロカルビル基Yは、カルボニル、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、第三級アミノ(N−H結合なし)、オキシ、シアノ、スルホニル及びスルホキシルなどの1つ以上の官能基を含有してよい。置換ヒドロカルビル基中の、水素以外の原子の大部分は、一般に炭素で、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素及び硫黄)は、存在する全非水素原子の一般に少部分、約33%以下を表すにすぎない。
【0042】
置換ヒドロカルビル基Y中のヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、ニトロ及びシアノなどの官能基はヒドロカルビルの水素原子の1つと置き換わるが、置換ヒドロカルビル基中のカルボニル、カルボキシル、第三級アミノ(−N−)、オキシ、スルホニル及びスルホキシルなどの官能基はヒドロカルビルの−CH−又はCH−部分と置き換わることを当業者は十分理解するであろう。
【0043】
式(I)中のヒドロカルビル基Yは更に好ましくは、非置換であるか又は、ヒドロキシ、ハロもしくはアルコキシ基から選択される基、なお更に好ましくはC1〜4アルコキシで置換されている。
【0044】
最も好ましくは、式(I)中の任意に置換されたヒドロカルビル基は、ステアリル基、12−ヒドロキシステアリル基、オレイル基、12−ヒドロキシオレイル基又はトール油脂肪酸などの天然起源の油に由来する基である。
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、硫黄含有ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体である。
【0046】
更に好ましくは、前記1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、前記ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の総重量を基準として、ICP−AESで測定されるように、0.1〜2.0重量%の範囲の、なお更に好ましくは0.6〜1.2重量%硫黄の範囲の硫黄含有率を有する。
【0047】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)及びそのアミド又は他の誘導体の製造は公知であり、例えば、欧州特許0 164 817号明細書、国際公開第95/17473号パンフレット、国際公開第96/07689号パンフレット、米国特許第5 536 445号明細書、英国特許第2 001 083号明細書、英国特許第1 342 746号明細書、英国特許第1 373 660号明細書、米国特許第5 000 792号明細書及び米国特許第4 349 389号明細書に記載されている。
【0048】
式(I)のポリ(ヒドロキシカルボン酸)の製造は、周知の方法に従って任意に触媒の存在下に、式(II)
HO−A−COOH (II)
(式中、Aは、二価の任意に置換されたヒドロカルビル基である)
の1つ以上のヒドロキシカルボン酸のエステル交換によって行われてよい。かかる方法は、例えば、米国特許第3 996 059号明細書、英国特許第1 373 660号明細書及び英国特許第1 342 746号明細書に記載されている。
【0049】
前記エステル交換における連鎖停止剤は、非ヒドロキシカルボン酸であってよい。
【0050】
ヒドロキシカルボン酸中のヒドロキシル基及びヒドロキシカルボン酸又は非ヒドロキシカルボン酸中のカルボン酸基は、特性が第一級、第二級又は第三級であってよい。
【0051】
ヒドロキシカルボン酸及び非ヒドロキシカルボン酸連鎖停止剤のエステル交換は、任意にトルエン又はキシレンなどの好適な炭化水素溶媒中で、出発原料を加熱すること、及び形成された水を共沸除去することによって達成されてよい。反応は、−250℃以下の温度で、好都合には溶媒の還流温度で実施できる。
【0052】
ヒドロキシカルボン酸中のヒドロキシル基が第二級又は第三級である場合、用いられる温度は、酸分子の脱水をもたらすほどに高いものであるべきではない。
【0053】
p−トルエンスルホン酸、酢酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム又はチタン酸テトラブチルなどの、エステル交換用の触媒が、所与の温度で反応の速度を上げる又は所与の反応速度のために必要とされる温度を下げるのどちらかの目的で、含有されてよい。
【0054】
式(I)及び(II)の化合物において、Aは好ましくは、任意に置換された芳香族、脂肪族又は脂環式の直鎖又は分岐の二価ヒドロカルビル基である。好ましくは、Aは、アリーレン、アルキレン又はアルケニレン基、特に4〜25個の範囲の炭素原子、更に好ましくは12〜20個の範囲の炭素原子を含有するアリーレン、アルキレン又はアルケニレン基である。
【0055】
好ましくは、式(I)及び(II)の前記化合物において、カルボニル基とヒドロキシル基に由来する酸素原子との間に直接連結された少なくとも4個の炭素原子、更に好ましくは8〜14個の範囲の炭素原子が存在する。
【0056】
式(I)及び(II)の化合物において、基A中の任意の置換基は好ましくは、ヒドロキシ、ハロもしくはアルコキシ基、更に好ましくはC1〜4アルコキシ基から選択される。
【0057】
式(II)のヒドロキシカルボン酸中のヒドロキシル基は好ましくは第二級ヒドロキシル基である。
【0058】
好適なヒドロキシカルボン酸の例は、9−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシ−9−オレイン酸(リシノール酸)、6−ヒドロキシカプロン酸、好ましくは12−ヒドロキシステアリン酸である。市販の12−ヒドロキシステアリン酸(水素化ヒマシ油脂肪酸)は通常、不純物として15重量%以下のステアリン酸及び他の非ヒドロキシカルボン酸を含有し、分子量約1000〜2000のポリマーを製造するためにさらなる混合なしに好都合に使用することができる。
【0059】
非ヒドロキシカルボン酸が反応器に別々に導入される場合、所与の分子量のポリマー又はオリゴマーを製造するために必要とされる割合は、当業者による簡単な実験によって、又は計算によってのどちらかで決定することができる。
【0060】
式(I)及び(II)の化合物中の基(−O−A−CO−)は好ましくは12オキシステアリル基、12−オキシオレイル基又は6−オキシカプロイル基である。
【0061】
アミンとの反応のための式(I)の好ましいポリ(ヒドロキシカルボン酸)には、ポリ(ヒドロキシステアリン酸)及びポリ(ヒドロキシオレイン酸)が含まれる。
【0062】
式(I)のポリ(ヒドロキシカルボン酸)と反応してポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド中間体を形成するアミンには、国際公開第97/41092号パンフレットに定義されるものが含まれてよい。
【0063】
例えば、様々なアミン及びそれらの製法は、米国特許第3 275 554号明細書、米国特許第3 438 757号明細書、米国特許第3 454 555号明細書、米国特許第3 565 804号明細書、米国特許第3 755 433号明細書及び米国特許第3 822 209号明細書に記載されている。
【0064】
アミン反応剤は好ましくはジアミン、トリアミン又はポリアミンである。
【0065】
好ましいアミン反応剤は、エチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンから選択されるジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン及びトリス(2−アミノエチル)アミンから選択されるトリアミン及びポリアミンである。
【0066】
アミン反応剤と式(I)のポリ(ヒドロキシカルボン酸)との間のアミド化は、任意にトルエン又はキシレンなどの好適な炭化水素溶媒中で、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)をアミン反応剤と加熱すること、及び形成された水を共沸除去することによって、当業者に公知の方法に従って実施できる。前記反応は、p−トルエンスルホン酸、酢酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム又はチタン酸テトラブチルなどの触媒の存在下に実施できる。
【0067】
アミンと式(I)のポリ(ヒドロキシカルボン酸)との反応から形成されたポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド中間体は、周知の方法に従って、塩誘導体を形成するために酸又は四級化剤と反応させてよい。
【0068】
塩誘導体を形成するために使用してよい酸は、有機又は無機酸から選択できる。前記酸は好ましくは硫黄含有有機又は無機酸である。好ましくは、前記酸は、硫酸、メタンスルホン酸及びベンゼンスルホン酸から選択される。
【0069】
塩誘導体を形成するために使用してよい四級化剤は、ジメチル硫酸、1〜4個の炭素原子を有するジアルキルスルフェート、塩化メチル、臭化メチルなどのハロゲン化アルキル、塩化ベンジルなどのハロゲン化アリールから選択できる。
【0070】
好ましい実施形態では、四級化剤は、硫黄含有四級化剤、特にジメチル硫酸又は1〜4個の炭素原子を有するジアルキルスルフェートである。四級化剤は好ましくはジメチルスルフェートである。
【0071】
四級化は当該技術分野で周知の方法である。例えば、ジメチルスルフェートを使用する四級化は、米国特許第3 996 059号明細書、米国特許第4 349 389号明細書及び英国特許第1 373 660号明細書に記載されている。
【0072】
当業者は、所望のアニオンの溶液での洗浄及び/又はイオン交換カラムを含むイオン交換技法の使用を含む通常の方法を用いて1つのXq−を別のもので置き換える方法を容易に理解するであろう。或いはまた、所望のアニオンを四級化反応中に挿入することができる。
【0073】
本発明で好ましいポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、ASTM D 4739によって測定されるように、30mg.KOH/g未満、好ましくは20未満のTBN(全塩基価)値をそれぞれ有するものである。好ましくは、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を含有する本発明による調合された潤滑組成物のTBN値は、ASTM D 4739によって測定されるように、10mg.KOH/g未満である。
【0074】
商業的に入手可能なポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の例には、商品名「SOLSPERSE 17000」でLubrizolから入手可能なもの(ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)とN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン及びジメチルスルフェートとの反応生成物)並びにShanghai Sanzheng Polymer Companyから商品名「CH−5」及び「CH−7」で入手可能なものが挙げられる。「CH−5」製品は、ASTM D 4739によって測定されるように、約2.0mg.KOH/gのTBN値を有する。更に、「CH−5」製品は、ICP−AESによって測定されるように、約0.86重量%の硫黄含有率を有する。これらの商業的に入手可能な製品は、必要なら、アニオンXq−の適切な置換によって本発明によるポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を製造するために使用することができる。
【0075】
別の態様では、本発明は、
− 基油と、
− 本発明で定義されるようなポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体と、
を含む潤滑組成物に関する。
【0076】
一般には、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、潤滑組成物の総重量を基準として、0.1〜10.0重量%の範囲の量で、更に好ましくは0.1〜5.0重量%の範囲の量で本発明の潤滑組成物中に存在する。本発明の特に好ましい実施形態によれば、組成物は、潤滑組成物の総重量を基準として、5.0重量%未満、好ましくは2.0重量%未満のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を含む。
【0077】
一般には、本発明による潤滑組成物は、0.12重量%未満などの比較的低いリン含有率(ASTM D 5185による)を有する。好ましくは、組成物は、0.08重量%未満のリン含有率を有する。好ましくは、組成物は、0.06重量%を超えるリン含有率を有する。
【0078】
また、組成物は0.6重量%未満の硫黄含有率(ASTM D 5185による)を有することが好ましい。
【0079】
更に、組成物は200ppm未満の塩素含有率(ASTM D 808による)を有することが好ましい。
【0080】
特に好ましい実施形態によれば、組成物は、2.0重量%未満の硫酸塩灰分含有率(ASTM D 874による)を有する。
【0081】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、組成物は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)化合物を含む。一般には、存在する場合、ZDDP化合物は、0.01〜1.5重量%、好ましくは0.4〜1.0重量%の量で存在する。ZDDP化合物は、好ましくは12個未満の炭素原子を含有する、第一級、第二級、第三級アルコール又はそれらの混合物から製造されたものであってよい。
【0082】
本発明による潤滑組成物に使用される基油に関して特別な制限は全くなく、様々な通常の鉱油、合成油並びに植物油などの天然由来エステルが好都合に使用できる。
【0083】
本発明で使用される基油は、1つ以上の鉱油及び/又は1つ以上の合成油の混合物を好都合に含んでもよく、従って、本発明によれば、用語「基油」は、2つ以上の基油を含有する混合物を意味してよい。鉱油には、水素化仕上げ及び/又は脱ロウによって更に精製されてよい液体石油並びに、パラフィン系、ナフテン系、又は混合パラフィン系/ナフテン系タイプの溶剤処理又は酸処理鉱物潤滑油が含まれる。
【0084】
本発明の潤滑油組成物での使用のための好適な基油は、グループI〜III鉱物基油、グループIVポリ−アルファオレフィン(PAO)、グループII〜IIIフィッシャー−トロプシュ由来基油及びそれらの混合物である。
【0085】
本発明での「グループI」、「グループII」、「グループIII」及び「グループIV」基油とは、カテゴリーI〜IVについてのAmerican Petroleum Instutute(米国石油協会)(API)の定義に従った潤滑油基油を意味する。これらのAPIカテゴリーは、API Publication 1509、第16版、Appendix E、2007年4月に定義されている。
【0086】
フィッシャー−トロプシュ由来基油は当該技術分野で公知である。用語「フィッシャー−トロプシュ由来」とは、基油がフィッシャー−トロプシュ法の合成生成物であるか、又はそれに由来することを意味する。フィッシャー−トロプシュ由来基油はまた、GTL(Gas−To−Liquids)基油とも言われてよい。本発明の潤滑組成物中の基油として好都合に使用できる好適なフィッシャー−トロプシュ由来基油は、例えば欧州特許0 776 959号明細書、欧州特許0 668 342号明細書、国際公開第97/21788号パンフレット、国際公開第00/15736号パンフレット、国際公開第00/14188号パンフレット、国際公開00/14187号パンフレット、国際公開第00/14183号パンフレット、国際公開第00/14179号パンフレット、国際公開第00/08115号パンフレット、国際公開第99/41332号パンフレット、欧州特許1 029 029号明細書、国際公開第01/18156号パンフレット及び国際公開第01/57166号パンフレットに開示されているものである。
【0087】
合成油には、オレフィンオリゴマー(ポリアルファオレフィン基油、PAOを含む)などの炭化水素油、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール(PAG)、アルキルナフタレン及び脱ロウしたワックス質異性化体が含まれる。呼称「Shell XHVI」(商標)でShell Groupによって販売されている合成炭化水素基油が好都合に使用できる。
【0088】
ポリ−アルファオレフィン基油(PAO)及びそれらの製造は当該技術分野では周知である。本発明の潤滑組成物に使用できる好ましいポリ−アルファオレフィン基油は、線状のC2〜C32、好ましくはC6〜C16アルファオレフィンから誘導されてよい。前記ポリ−アルファオレフィン用の特に好ましい原料は、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン及び1−テトラデセンである。
【0089】
本発明の潤滑組成物に組み込まれる基油の総量は、潤滑組成物の総重量に関して、好ましくは60〜99重量%の範囲の量で、更に好ましくは65〜98重量%の範囲の量で、最も好ましくは70〜95重量%の範囲の量で存在する。
【0090】
好ましくは、完成潤滑組成物は、100℃で2〜80mm/秒の範囲の、更に好ましくは3〜70mm/秒の範囲の、最も好ましくは4〜50mm/秒の範囲の動粘度を有する。
【0091】
本発明の潤滑組成物は、摩耗防止添加剤、酸化防止剤、分散剤、洗剤、摩擦改良剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、腐食防止剤、消泡剤及び密封固定剤又は密封相溶化剤などの追加の添加剤を更に含んでもよい。
【0092】
当業者は上記の及び他の添加剤に精通しているので、これらは、詳細に本明細書では更に議論されない。かかる添加剤の具体的な例は、例えばKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第3版、第14巻、477−526ページに記載されている。
【0093】
好ましくは洗剤は、存在する場合、フェノキシド型及びスルホネート型洗剤から選択され、従って、好ましくはサリチレート型洗剤は全く存在しない。
【0094】
本発明の潤滑組成物は、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体、及び、任意に、例えば本明細書で前に記載されたような、潤滑組成物中に通常存在する任意のさらなる添加剤を、鉱物及び/又は合成基油と混ぜ合わせることによって好都合に調製されてよい。
【0095】
別の態様では、本発明は、
− 内燃機関での使用に好適なベース流体と、
− 本発明で定義されるようなポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体と、
を含む燃料組成物に関する。
【0096】
ベース流体は、内燃機関での燃料として使用されることになる機能性流体としての使用に好適である任意の流体であってよい。好適なベース流体には、ガソリン及びディーゼル燃料などの、燃料が含まれる。
【0097】
ベース流体の本質は決定的に重要であるわけでなく、例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、1990年、第A16巻、719ページ以下のページ、及びKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、1994年、第12巻、341−388ページに記載されているように、ガソリン及びディーゼル燃料などの、当該技術分野で公知の任意のかかる流体であることができる。
【0098】
ベース流体がガソリンである場合、それを含有する燃料はガソリン組成物であり、ベース流体がディーゼル燃料である場合、それを含有する燃料はディーゼル燃料組成物である。
【0099】
典型的な特性、添加剤の量などの、燃料組成物に関するさらなる情報については、その教示が特定の参照により本明細書によって援用される、国際公開第2009/050287号パンフレット(特に6ページ、13行から20ページ、4行)が言及される。
【0100】
一般には、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、燃料組成物の総重量を基準として、0.1〜10.0重量%の範囲の量で、更に好ましくは0.1〜5.0重量%の範囲の量で本発明の燃料組成物中に存在する。
【0101】
別の態様では、本発明は、流体の、好ましくは潤滑組成物のリン揮発度を低下させるために、本発明で定義されるようなポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体、又はそれを含有する潤滑組成物もしくは燃料組成物の使用を提供する。勿論、エンジンオイルなどの潤滑組成物のリン揮発度を低下させるために、これは、内燃機関に使用されることになる潤滑組成物に又は燃料にポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を加えることによって達成されてよい。後者の場合には、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、内燃機関の使用の間に潤滑組成物中で終わって(end up)もよい。
【0102】
当業者は、本発明による潤滑組成物が更に、特にリン揮発度が役割を果たす、内燃機関以外の他の用途向けに好適に使用できることを容易に理解するであろう。
【0103】
本発明は、本発明の範囲を決して限定することを意図されない、以下の実施例に関して以下に記載される。
【実施例】
【0104】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の製造
実施例A
商品名「CH−5」でShanghai Sanzheng Polymer Companyから商業的に入手可能な8グラムのポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を140mlのジクロロメタン(DCM)に撹拌しながら溶解させた。得られた混合物を110mlのDCMで更に希釈し、250mlの1M KOH溶液を含有する分液漏斗に加えた。
【0105】
分液漏斗を振盪し、2層間のきれいな分離があるまで放置した。有機最下層を集め、分離漏斗中の250mlの新鮮な1M KOHに加えた。再び、有機最下層を集め、MgSO上で乾燥させ、真空で濃縮した。アニオンXq−がOHである約6グラムのポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体が得られた。
【0106】
得られたポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、17.0mg.KOH/gのTBN分(content)(ASTM D 4739による)を有した。
【0107】
実施例B
「CH−5」製品(実施例Aを参照されたい)を、1:3のMeOH:CHClを溶出液として使用しながら、イオン交換カラムでサリチル酸ナトリウム(Sigma−Aldrich Chemical Company,(Gillingham,United Kingdom)から入手可能)とイオン交換させた。
【0108】
この目的のために、カラムは、1リットルの脱イオン水で洗浄した500グラムのDowex 1×8イオン交換樹脂(200〜400メッシュ、強塩基性Cl形、CAS登録番号[69011−19−4])を使用して準備した。洗浄したDowex樹脂を次に、1リットルの1:1MeOH:脱イオン水を使用してカラムに懸濁液として装入した。樹脂を次に4床容量の1:1メタノール/脱イオン水で洗浄し、少量のMeOH中のサリチル酸ナトリウム塩の30重量%溶液を装入した。
【0109】
樹脂のその後の極性変化を以下の順で行った:2×4床容量の1:1MeOH/脱イオン水、1×4床容量のMeOH、4床容量の3:1、次に1:1、次に1:3のMeOH:クロロホルム。
【0110】
220グラムの「CH−5」製品を最小量の溶出液(1:3MeOH:クロロホルム)に溶解させ、カラムに装入した。カラムを、適切な染色技法を用いる薄層クロマトグラフィーを用いて溶出を追跡しながら、溶出した。溶出液を集め、乾固まで真空で濃縮してアニオンXq−がサリチレートである、約200グラムのポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を得た。
【0111】
得られたポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、13.3mg.KOH/gのTBN分(ASTM D 4739による)を有した。
【0112】
実施例C
実施例Bと同様に、アニオンXq−がフェノキシドである、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を得た。この目的のためにナトリウムフェノキシド(Sigma−Aldrich Chemical Company,(Gillingham,United Kingdom)から入手可能)を使用した。
【0113】
得られたポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、14.5mg.KOH/gのTBN分(ASTM D 4739による)を有した。
【0114】
実施例D
実施例Bと同様に、アニオンXq−がオレエートである、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を得た。この目的のためにオレイン酸ナトリウム(Sigma−Aldrich Chemical Company,(Gillingham,United Kingdom)から入手可能)を使用した。
【0115】
得られたポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、12.8mg.KOH/gのTBN分(ASTM D 4739による)を有した。
【0116】
実施例E
実施例Bと同様に、アニオンXq−がアセテートである、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を得た。この目的のために酢酸ナトリウム(Sigma−Aldrich Chemical Company,(Gillingham,United Kingdom)から入手可能)を使用した。
【0117】
得られたポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、14.0mg.KOH/gのTBN分(ASTM D 4739による)を有した。
【0118】
潤滑油組成物
内燃機関での使用のための様々な潤滑組成物を調合した。
【0119】
表1は、試験された潤滑組成物の組成を示し、成分の量は、組成物の総重量を基準とする、重量%単位で示す。全ての試験された組成物は、いわゆるmid−SAPS組成物、即ち、0.8重量%未満の硫酸塩灰分含有率(ASTM D 874による)、0.08重量%未満のリン含有率(ASTM D 5185による)及び0.6重量%未満の硫黄含有率(ASTM D 5185による)を含有した。組成物は、200ppm未満の塩素含有率(ASTM D 808による)を有した。
【0120】
全ての試験されるエンジンオイル調合物は、基油、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体及び添加剤パッケージの組み合わせを含有し、その添加剤パッケージは全ての試験される組成物で同じものであった。
【0121】
「基油」は、約5.2cSt(mm−1)の100℃での動粘度(ASTM D445)を有する、商業的に入手可能なAPIグループIII基油であった、この基油は、商品名「XHVI 5.2」でShell Global Lubiricants,(United Kingdam)から商業的に入手可能である。
【0122】
添加剤パッケージはいわゆる「mid−SAPS」(硫酸塩灰分、リン及び硫黄)調合物であった。この添加剤パッケージは、フェノール系及びアミン系酸化防止剤、金属の及び無灰の摩擦改良剤混合物、ZDDP摩耗防止添加剤、分散剤、過塩基化(overbased)洗剤混合物及び約10ppmの消泡剤を含む添加剤の組み合わせを含有した。
【0123】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体として、実施例A〜Eの生成物を使用し、比較として実施例Aで述べられたような商業的に入手可能な「CH−5」製品(国際公開第2007/128740号パンフレットの15ページ、7行に言及された)を使用した。「CH−5」製品は、アニオンXq−としてメチルスルフェート(MeOSO)を含有する。
【0124】
実施例1〜5及び比較例1の組成物は、通常の潤滑油ブレンディング手順を用いて基油を他の成分と混合することによって得られた。





















【表1】



【0125】
リン揮発度試験
本発明のリン揮発度特性を明らかにするために、測定を、「Selby−Noack PEI試験」としても知られる、リン排出指数(PEI)試験に従って行った。この試験は、その教示が特定の参照により本明細書によって援用される、T.W.Selby,R.J.Bosch and D.C.Fee,「Continued Studies of the Causes of Engine Oil,Phosphorus Volatility−Part 2」SAE 2007−01−1073に記載されたものである。「Selby−Noack PEI試験」は、ASTM D 5800、手順Cに記載されているような「Noack手順」に似ているが、継続期間(Noack手順についての60分の代わりに16時間)及び温度(Noack手順については250℃)の点で外れる。
【0126】
測定されたリン揮発度値(PEI 165として測定される、Selby−Noack装置がNoack手順について250℃での代わりに165℃で操作するときに得られるリン排出指数(Phosphorus Emission Index))を下の表2に示す。PEIは流体の1kgから得られるリンの量(mg)の近似値であるので、それは単位を持たない。
【表2】

【0127】
考察
表2に明示されるように、本発明による組成物についてのリン揮発度特性は、比較例1と比較したときに著しく改善された。この点において低いPEI 165値は良好なリン揮発度値を示すことが指摘される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0128】
【特許文献1】国際公開第2007/128740号
【特許文献2】欧州特許0 164 817号、
【特許文献3】国際公開第95/17473号
【特許文献4】国際公開第96/07689号
【特許文献5】米国特許第5 536 445号
【特許文献6】英国特許第2 001 083号
【特許文献7】英国特許第1 342 746号
【特許文献8】英国特許第1 373 660号
【特許文献9】米国特許第5 000 792号
【特許文献10】米国特許第4 349 389号
【特許文献11】米国特許第3 996 059号
【特許文献12】米国特許第3 275 554号
【特許文献13】米国特許第3 438 757号
【特許文献14】米国特許第3 454 555号
【特許文献15】米国特許第3 565 804号
【特許文献16】米国特許第3 755 433号
【特許文献17】米国特許第3 822 209号
【特許文献18】欧州特許0 776 959号
【特許文献19】欧州特許0 668 342号
【特許文献20】国際公開第97/21788号
【特許文献21】国際公開第00/15736号
【特許文献22】国際公開第00/14188号
【特許文献23】国際公開00/14187号
【特許文献24】国際公開第00/14183号
【特許文献25】国際公開第00/14179号
【特許文献26】国際公開第00/08115号
【特許文献27】国際公開第99/41332号
【特許文献28】欧州特許1 029 029号
【特許文献29】国際公開第01/18156号
【特許文献30】国際公開第01/57166号
【特許文献31】国際公開第2009/050287号
【非特許文献】
【0129】
【非特許文献1】Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第3版、第14巻、477−526ページ
【非特許文献2】Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、1990年、第A16巻、719ページ以下のページ
【非特許文献3】Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、1994年、第12巻、341−388ページ
【非特許文献4】T.W.Selby,R.J.Bosch and D.C.Fee,「Continued Studies of the Causes of Engine Oil,Phosphorus Volatility−Part 2」SAE 2007−01−1073

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III):
[Y−CO[O−A−CO]−Z−RpXq− (III)
(式中、Yは水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基であり、Aは二価の任意に置換されたヒドロカルビル基であり、nは1〜100、好ましくは1〜10であり、mは1〜4であり、qは1〜4であり、pはpq=mであるような整数であり、Zは、窒素原子を介してカルボニル基に結合している、任意に置換された二価の架橋基であり、Rはアンモニウム基であり、Xq−は、硫黄を含有しないアニオンである)
を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体。
【請求項2】
前記アニオンXq−が、OH、フェノキシド基、サリチレート基、オレエート基、アセテート基及びそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項1に記載のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体。
【請求項3】
前記アニオンXq−がOHである、請求項1に記載のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体。
【請求項4】
30mg.KOH/g未満、好ましくは20mg.KOH/g未満のTBN(全塩基価)値を有する、請求項1に記載のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体。
【請求項5】
− 基油と、
− 請求項1に記載のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体と、
を含む潤滑組成物。
【請求項6】
前記潤滑組成物の総重量を基準として、5.0重量%未満のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を含む、請求項5に記載の潤滑組成物。
【請求項7】
0.08重量%未満のリン含有率を有する、請求項5に記載の潤滑組成物。
【請求項8】
0.6重量%未満の硫黄含有率を有する、請求項5に記載の潤滑組成物。
【請求項9】
200ppm未満の塩素含有率を有する、請求項5に記載の潤滑組成物。
【請求項10】
2.0重量%未満の硫酸塩灰分含有率(ASTM D 874による)を有する、請求項5に記載の潤滑組成物。
【請求項11】
ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)化合物を含む、請求項5に記載の潤滑組成物。
【請求項12】
− 内燃機関での使用に好適なベース流体と、
− 請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体と、
を含む燃料組成物。
【請求項13】
潤滑組成物のリン揮発度を低下させるための請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の使用。

【公表番号】特表2013−500237(P2013−500237A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521270(P2011−521270)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/052063
【国際公開番号】WO2010/014678
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】