説明

ポンプ及びプラント冷却系海水システム

【課題】取水槽の設計最高水位を超える高さに海水が侵入しても、海水供給機能を保持できるポンプを提供すること。
【解決手段】海水が取り込まれた取水槽13内に設置されたケーシング21と、ケーシング21内に収納されたインペラ23と、インペラ23のシャフト25と連結され、インペラ23を回転駆動して取水槽13内の海水を熱交換器14に搬送するためのモータ24とを備える。モータ24は、取水槽13の設計最低水位より下方に設置されているものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラント冷却系に用いられるポンプ及び当該ポンプを備えるプラント冷却系海水ポンプシステムに関する
【背景技術】
【0002】
海岸付近に建設され、冷熱源として海水を利用するプラントの1つに原子力プラントがある。原子力プラントには、主に原子炉建屋内の補機(各種ポンプ軸受、熱交換器等)を冷却するための冷却水(純水)を循環するシステムとして原子炉補機冷却系(Reactor Building Closed Cooling Water System(以下、RCWと称することがある))と、当該RCWの冷却水を海水で冷却するシステムとして原子炉補機冷却海水系(Reactor Sea Water System(以下、RSWと称することがある))を備えているものがある(特許文献1等参照)。
【0003】
RSWは、海洋から取水槽に取り込んだ海水を海水ポンプ(ターボ形ポンプ)で汲み上げ、その汲み上げた海水とRCW冷却水を熱交換器で熱交換することでRCW冷却水を冷却している。RCW冷却水と熱交換して温水となった海水は再度海洋へ放流される。RSWにおける海水ポンプは、モータでインペラ(羽根車)を回転駆動することで取水槽から海水を汲み上げているが、当該モータは取水槽の設計最高水位よりも上方(すなわち、大気中)に設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−242092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、海水ポンプを設計最高水位よりも上方に設置していても、隣接する設備(例えば、復水器の冷却水として海水を供給する配管)が損傷等することで海水が侵入し、海水ポンプが水没してポンプ機能が喪失するおそれがある。また、このような隣接設備からの浸水対策を充分講じても、設計最高水位を超える大津波が発生した場合には海水が建屋に侵入して海水ポンプが水没するおそれがある。この場合、海水ポンプへの海水侵入リスクはポンプ設置位置を高くすればするほど理論上は低減するが、これに係る付帯設備の設計や建設費用等を考慮すると現実的な解決策とはならない。
【0006】
本発明の目的は、取水槽の設計最高水位を超える高さに海水が侵入しても、海水供給機能を保持できるポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、取水槽内に設置されたケーシングと、当該ケーシング内に収納されたインペラと、当該インペラを回転駆動して前記取水槽内の水を搬送するための原動機とを備え、前記原動機は、前記取水槽の設計最低水位より下方に設置されているものとする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、取水槽の設計最高水位を超える高さに海水が侵入しても、ポンプの海水供給機能を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の各実施の形態に係る原子力プラントにおけるRSW及びRCWの概略系統図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る海水ポンプ付近の概略構成図。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る海水ポンプ付近の概略構成図。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る海水ポンプ付近の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0011】
図1は本発明の各実施の形態に係る原子力プラントにおけるRSW100及びRCW300の概略系統図である。この図に示すRSW(原子炉補機冷却海水系)100は、海洋に開口された取水口11と、取水口11に接続された取水通路12と、取水通路12を介して海水が取り込まれる取水槽13と、取水槽13内の海水をプラント内部に搬送するためのターボ形海水ポンプ20と、海水ポンプ20によって搬送された海水とRCW冷却水(純水)とを熱交換することでRCW冷却水を冷却するための熱交換器14を備えている。熱交換器14においてRCW冷却水との熱交換で加熱された海水(温水)は放水路(図示せず)等を介して最終的に海洋へ放出される。
【0012】
RCW(原子炉補機冷却系)300は、冷却水ポンプ32を備えており、熱交換器14で冷却されたRCW冷却水を冷却対象補機31に循環供給することで原子炉建屋内の補機31の冷却を行っている。ここで、冷却対象補機31としては、例えば、残留熱除去系(RHR)、燃料プール冷却浄化系(FPC)及び原子炉冷却材浄化系(CUW)等に設置された熱交換器や、各系統に設置されたポンプ軸受等がある。なお、図1では簡略化のためRCW300の冷却対象補機31は1つだけ表示しているが、複数の冷却対象補機31を設置することでこれらの冷却を行っても良い。
【0013】
図2は本発明の第1の実施の形態に係る海水ポンプ付近の概略構成図である。なお、先の図と同じ部分には同じ符号を付して説明は省略する(後の各図も同様とする)。この図に示す海水ポンプ20は、ケーシング21と、インペラ23と、インペラ23を回転駆動するための原動機としてのモータ(電動機)24と、パージ水供給系統40を備えている。
【0014】
ケーシング21は、取水槽13内に設置されており、取水槽13における底面13aの近傍に開口した吸い込み口(ベルマウス)21aを有している。ケーシング21は、熱交換器14に接続された海水供給管22に連結されている。なお、図に示すケーシング21は、略鉛直方向に延設されているが、その他の方向(例えば、略水平方向等)に延設しても良い。また、図2の海水ポンプ20は、吸い込み口21aを備える斜流ポンプとしているが、これに代えて軸流ポンプや遠心ポンプとしても良い。
【0015】
インペラ(羽根車)23は、ケーシング21内に収納されており、回転軸となるシャフト25に連結されている。インペラ23は、取水槽13内の海水を恒常的に汲み上げる観点から、取水槽13の設計最低水位90よりも下方に設置することが好ましい。なお、取水槽13の設計最低水位90は、干潮や津波等による海水面の低下等を考慮して設定することが好ましい。
【0016】
取水槽13の底面13aには、モータ24を収納するための収納室26と取水槽13とを連通する貫通孔13bが設けられている。貫通孔13bには、シャフト25が挿入されており、シャフト25は収納室26内のモータ24の出力軸に連結されている。
【0017】
モータ24は、恒常的に液体中に設置されることを目的として設計されたウェットモータであり、取水槽13の設計最低水位90より下方に設置されている。モータ24を駆動すると、インペラ23が回転駆動され、取水槽13内の海水はケーシング21及び海水供給管22を介して熱交換器14に搬送される(図2中の白抜き矢印参照)。なお、本実施の形態では、モータ24は、取水槽13の底面13aの下方に設けられた収納室26内に収納されており、取水槽13の底面13aよりも下方に設置されている。これにより取水槽13内に海水が存在する場合には、モータ24は常に水中(液体中)に存在することになる。
【0018】
パージ水供給系統40は、淡水貯蔵手段としての濾過水タンク41と、給水ポンプ42を備えている。濾過水タンク41内の淡水は、給水ポンプ42によって昇圧されて収納室26内にパージ水として供給される。収納室26内に供給されたパージ水は、貫通孔13bを介して収納室26から取水槽13内に放出される。このようにパージ水を供給すると、取水槽13から収納室26への海水の侵入を抑制できるので、海水によってモータ24が腐食することを抑制できる。さらに、モータ24をパージ水で常に冷却できるので、モータ24の温度上昇を抑制することもできる。
【0019】
上記のように海水ポンプ20を構成すると、モータ24を常に水中で駆動させることができるので、取水槽13の水位が変化したり、取水槽13の設計最高水位を超える高さに海水が侵入したりしても、海水供給機能を保持することができる。すなわち、本実施の形態によれば、RSWの信頼性を向上させることができる。
【0020】
図3は本発明の第2の実施の形態に係る海水ポンプ付近の概略構成図である。この図に示す海水ポンプ20Aは、モータ24Aの出力軸とインペラ23のシャフト25とをマグネットカップリング50によって磁気的に結合している点において先の実施の形態のものと異なっている。
【0021】
モータ24Aは、取水槽13の設計最低水位90より下方に設置されている。図3に示したモータ24Aは、非磁性体で形成された隔壁51を介して、取水槽13の外側に取水槽13と隣接して形成された収納室26A内に設置されている。すなわち、本実施の形態におけるモータ24Aは、第1の実施の形態と同様に、取水槽13の底面13aよりも下方に設置されている。収納室26Aはモータ24Aを収納するための空間である。
【0022】
隔壁51は、取水槽13と収納室26Aを区画するためのもので、取水槽13の底面13aに設けた貫通孔を塞ぐように形成されている。また、隔壁51の底部には略円柱状の凹部が形成されており、当該凹部には、インペラ23のシャフト25の端部に取り付けられたインナマグネット50aが収納されている。
【0023】
インナマグネット50aの外周には、隔壁51を介してアウタマグネット50bが配置されている。アウタマグネット50bは収納室26A内に収納されたモータ24Aの出力軸に連結されている。アウタマグネット50bとインナマグネット50aの間には隔壁51が介在しているため両者は非接触となっているものの、両者は互いに磁気的に結合することでマグネットカップリング50を形成している。
【0024】
上記のように構成した海水ポンプ20Aにおいて、モータ24Aの駆動力によってアウタマグネット50bを回転駆動すると、アウタマグネット50bとともにインナマグネット50a及びシャフト25が回転駆動されインペラ23によって海水が搬送される。すなわち、このように海水ポンプ20Aを構成すると、取水槽13内の海水の水位に関わらずモータ24Aを常に駆動させることができるので、取水槽13の水位が変化したり、取水槽13の設計最高水位を超える高さに海水が侵入したりしても、海水供給機能を保持することができる。したがって本実施の形態によってもRSWの信頼性を向上させることができる。
【0025】
なお、本実施の形態では、収納室26Aと取水槽13は隔壁51によって区切られているため、収納室26A内は取水槽13内と異なる雰囲気としても良い。したがって、モータ24Aは、第1の実施の形態のように液体中での使用を前提としたウェットタイプのものを利用しても良いし、陸上での使用を前提とした一般的なものを利用しても良い。
【0026】
図4は本発明の第3の実施の形態に係る海水ポンプ付近の概略構成図である。この図に示す海水ポンプ20Bは、貫通孔13bに取り付けられたメカニカルシーリング71と、排水系統60を備えている点において第1の実施の形態のものと主に異なっている。
【0027】
この図に示すモータ24Bは、取水槽13における底面13aの下方に形成された収納室26B内に設置されている。取水槽13から収納室26Bに貫通する貫通孔13bには、インペラ23のシャフト25が挿入されている。貫通孔13b内におけるシャフト25の外周部分には、取水槽13から収納室26Bへの海水漏洩を抑制するためのメカニカルシーリング71が取り付けられている。
【0028】
排水系統60は、海水サンプ61と、排水ポンプ62を備えている。海水サンプ61は、メカニカルシーリング71を介して収納室26Bに漏洩する海水(ドレン)を貯留するためのもので、収納室26B内における貫通孔13bの下方(図4では収納室26Bの底面)に設けられている。海水サンプ61内の海水は排水ポンプ62によって汲み上げられて収納室26B外(例えば、取水槽13)に排出される。これによりメカニカルシーリング71を介して漏洩した海水を収納室26Bの外部に排出することができる。
【0029】
上記のように構成した海水ポンプ20Bにおいても、取水槽13内の海水の水位に関わらずモータ24Bを常に駆動させることができるので、取水槽13の水位が変化したり、取水槽13の設計最高水位を超える高さに海水が侵入したりしても、海水供給機能を保持することができる。したがって本実施の形態によってもRSWの信頼性を向上させることができる。
【0030】
なお、以上の各実施の形態の説明では原子炉の構造について触れなかったが、沸騰水型(BWR)及び加圧水型(PWR)のいずれの原子炉を備える原子力プラントにも本発明は適用可能である。さらに、本発明は、原子力プラントに限らず、海水を冷熱源として利用する種々のプラントで適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
13 取水槽
13a 取水槽底面
13b 貫通孔
14 熱交換器
20 海水ポンプ
21 ケーシング
23 インペラ
24 モータ
90 設計最低水位
25 シャフト
26 収納室
40 パージ水供給系統
42 給水ポンプ
50 マグネットカップリング
51 隔壁
60 排水系統
61 海水サンプ
62 排水ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取水槽内に設置されたケーシングと、
当該ケーシング内に収納されたインペラと、
当該インペラを回転駆動して前記取水槽内の水を搬送するための原動機とを備え、
前記原動機は、前記取水槽の設計最低水位より下方に設置されていることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプにおいて、
前記原動機は、液体中に設置されたウェットモータであることを特徴とするポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載のポンプにおいて、
前記原動機は前記取水槽の外側に設置されており、
前記原動機の出力軸と前記インペラの回転軸はマグネットカップリングによって磁気的に結合されていることを特徴とするポンプ。
【請求項4】
請求項1に記載のポンプにおいて、
前記原動機は収納室内に設置されており、
前記インペラの回転軸が前記取水槽から前記収納室内に貫通する部分に取り付けられたメカニカルシーリングをさらに備えることを特徴とするポンプ。
【請求項5】
海水が取り込まれる取水槽と、
前記取水槽内に設置されたケーシング、当該ケーシング内に収納されたインペラ、及び、当該インペラを回転駆動して前記取水槽内の海水を搬送するための原動機を有するポンプと、
当該ポンプから搬送された海水と冷却水とを熱交換することで当該冷却水を冷却するための熱交換手段を備え、
前記原動機は、前記取水槽の設計最低水位より下方に設置されていることを特徴とするプラント冷却系海水システム。
【請求項6】
請求項5に記載のプラント冷却系海水システムにおいて、
前記原動機は、水中に設置されたウェットモータであり、
前記モータにパージ水を供給するためのパージ水供給手段をさらに備えることを特徴とするプラント冷却系海水システム。
【請求項7】
請求項5に記載のプラント冷却系海水システムにおいて、
非磁性体の隔壁を介して前記取水槽と隣接して形成され、前記原動機を収納するための収納室をさらに備え、
前記原動機の出力軸と前記インペラの回転軸は前記隔壁を介してマグネットカップリングによって磁気的に結合されていることを特徴とするプラント冷却系海水システム。
【請求項8】
請求項5に記載のプラント冷却系海水システムにおいて、
前記原動機を収納するための収納室と、
前記インペラの回転軸が前記取水槽から前記収納室内に貫通する部分に取り付けられたメカニカルシーリングと、
前記メカニカルシーリングを介して前記収納室に漏洩する海水を貯留するための海水サンプと、
当該海水サンプから海水を排出するための排水ポンプとをさらに備えることを特徴とするプラント冷却系海水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−229681(P2012−229681A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99734(P2011−99734)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】