説明

ポンプ

【課題】樹脂製ケーシングを用いることを可能にし、高耐水圧で、小型、軽量化及び低価格化か可能なポンプを提供する。
【解決手段】本ポンプは、内部に羽根車が配されたポンプ室を形成すると共に、羽根車に連設する回転子が収容される合成樹脂製のケーシングと、回転子の外周部に配される固定子をモールド樹脂内に設けて成形された円環状の樹脂成形体を備え、ケーシングと樹脂成形体を組み合わせてモータを構成するポンプであって、ケーシングの一側と樹脂成形体の一側を各々金属製カバーで覆うと共に、ケーシングと樹脂成形体を挟持するように両カバーを固定具により連結して固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプに係り、特に合成樹脂製ケーシングを備えたポンプの強度を高めたポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、給湯装置等の使用機器の小型化、軽量化及び低価格化に伴い、使用機器に組み込まれるポンプにも、小型、軽量化及び低価格化が要求されている。
【0003】
図6に示すように、このようなポンプ40として、合成樹脂製の前部及び後部ケーシング5、6間の空間部に回転子10を配し、この回転子10の外周に沿ってリング状の固定子14が配設されてポンプのモータを構成したキャンドタイプが用いられている。
【0004】
前部及び後部ケーシング5、6はパッキン8を挟みポンプ40の内部を密閉し、一側の空間部にポンプ室5cを設け、このポンプ室5cを連通する流体の吸水口5aと吐出口5bが前部ケーシング5から突出している。
【0005】
回転子10は、ケーシング内部のポンプ中心に固定された固定軸11に、回転軸12を介して、さらにスラストワッシャー13を配して回転自在に軸支されている。
【0006】
この回転子10は、回転軸12に回転子基部10bを接続し、この回転子基部10bに羽根車9を連設し、回転軸12の周囲にマグネット10aを固定している。マグネット10aは後部ケーシング6のカップ状空間部内に配されている。
【0007】
固定子14は、リング状の積層鉄心14aと巻線14bとからなり、プリント基板15と共にモールド樹脂内にモールド成形され円環状の樹脂成形体7を形成している。
【0008】
樹脂成形体7は、第2ケーシング6の外側であってマグネット10aの外周部に配されて後部ケーシング6に固定され、ブラシレスDCモータを構成し、羽根車9を回転して、吸水口5aからポンプ室5c内に吸引した流体を羽根車9により加圧して吐出口5bより吐出させる。
【0009】
前部及び後部ケーシング5、6、樹脂成形体7は長ねじ17によって一体化されている。
【0010】
このような従来のポンプ40では、樹脂成形体7が後部ケーシング6との接触部において、ポンプ内部の圧力を後部ケーシング6を通じて受けるようになり、ポンプ内圧が高くなるとプリント基板15との間の樹脂層の薄い接触部において樹脂成形体7にクラック等の損傷を生じ、最終的には樹脂成形体7が後部ケーシング6から脱落することがある。
【0011】
また、ポンプ40では、後部ケーシング6に固定された樹脂成形体7の内周部と後部ケーシング6の外周部との間に最大で0.4mm程度の隙間Sが生じ、この隙間Sで樹脂成形体が変形したり、後部ケーシング6がポンプ内圧を受ける度に後部ケーシング6が隙間S分の膨張を繰り返すようになる。この変形や膨張の繰り返しにより、樹脂にクラックが発生したり、強度の弱い後部ケーシング6のウェルドラインにクラックを発生し易くし、ポンプ40の水漏れの原因になるという問題がある。
【0012】
このような樹脂製ケーシングを用いることによる問題点を解決するため、水圧による樹脂製ケーシングの変位を抑えてポンプの耐水圧性を向上させるためには、樹脂製ケーシングに比べて強度の高い金属製ケーシングを使用することが行われている。
【0013】
しかし、金属製ケーシングの場合、金属製カバーを立体的なケーシング形状にプレス加工や溶接により形成するのが容易でなく加工コストが高くなるという難点があり、またポンプの重量増や耐腐食性に対する対策も必要になる。
【0014】
なお、回転子をケーシング内部に密閉し、回転子を駆動する固定子をケーシングの外側に設けてブラシレスDCモータを構成し、回転子に接続された羽根車がポンプ室に配置されたキャンドタイプのポンプに関する提案がなされている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−317486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、樹脂製ケーシングを用いることを可能にし、高耐水圧で、小型、軽量化及び低価格化が可能なポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した目的を達成するため、本発明に係るポンプは、外面にポンプの吸水口と吐出口が設けられ、内部に羽根車が配されたポンプ室を形成すると共に、前記羽根車に連設する回転子が収容される合成樹脂製のケーシングと、前記回転子の外周部に配される固定子をモールド樹脂内に設けて成形された円環状の樹脂成形体を備え、前記ケーシングと前記樹脂成形体を組み合わせてモータを構成するポンプにおいて、前記ケーシングの一側と前記樹脂成形体の一側を各々金属製カバーで覆うとともに、前記ケーシングと前記樹脂成形体を挟持するように前記両カバーを固定具により連結して固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るポンプによれば、樹脂製ケーシングを用いることを可能にし、高耐水圧で、小型、軽量化及び低価格化が可能なポンプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係るポンプの一実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1は本発明の一実施形態に係るポンプの斜視図、図2は本発明の一実施形態に係るポンプの一部を縦断面で示す側面図、図3は図2のA部の拡大図、図4、図5は本発明の一実施形態に係るポンプの分解斜視図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態に係るポンプ1は、キャンド型であり、合成樹脂製のポンプ本体2の両側面から金属製の前面カバー3及び金属製の後面カバー4で挟持してなり、ポンプ本体2は、前部ケーシング5と、この前部ケーシング5の後面側に水密的に接合する後部ケーシング6と、この後部ケーシング6の後面側に配され、この後部ケーシング6の後面側突出部分を囲うように嵌合される樹脂成形体7から構成している。
【0021】
前部ケーシング5は外形輪郭形状が略八角形状をなし、外面に吸水口5a、この吸水口5aと直交するように吐出口5bを設け、内部にポンプ室5cを設け、このポンプ室5cには羽根車9を配する。
【0022】
後部ケーシング6は前部ケーシング5と同様の外形輪郭形状をなし、中央部に後方へ延出するカップ状の空間部6aを形成するように後側に膨出する有底、薄肉の膨出部6bが設けられ、さらに、この膨出部6bの周囲には、前部ケーシング5に設けたリング状の係合凸部5dがリング状パッキング8を介して水密的に嵌合するリング状の係合凹部6cが設けられ、この係合によりケーシングを形成し、空間部6aには羽根車9が連設する回転子10を収容する。
【0023】
この回転子10はマグネット10aを備え、空間部6aの中心に前部、後部ケーシング5、6間で固定される固定軸11に、回転子基部10b、回転軸12を介して軸支され、回転軸12の両端は固定軸11に設けたスラストワッシャー13によって支持される。
【0024】
樹脂成形体7は前部ケーシング5と同様の外形輪郭形状で環状をなし、中央部に円筒状凹部7aが設けられ、この円筒状凹部7aを囲う周囲部には固定子14がモールド成形により一体に収容され、固定子14を回転子10の外周に沿って配するため、膨出部6bに円筒状凹部7aが外嵌する。固定子14はリング状の積層鉄心14aと巻線14bとからなり、制御回路を持つプリント基板15と共に樹脂成形体7内にモールド成形される。
【0025】
樹脂成形体7が後部ケーシング6の膨出部6bに外嵌することで、回転子10のマグネット10aの外周部に固定子14が配されてポンプ1のモータを形成する。
【0026】
このモータはブラシレスDCモータを構成するもので、プリント基板15より固定子14に通電されると、固定子14に回転磁界が発生し回転子10が回転する。回転子10の回転に伴って羽根車9も回転し、吸水口5aから流体をポンプ室5c内に吸引し、羽根車9により加圧された流体を吐出口5bより吐出させるものである。
【0027】
図3に示すように、嵌合する固定子14と回転子10間には、充填部材16を介在させる。
【0028】
樹脂成形体7の円筒状凹部7aは後部ケーシング6の膨出部6bに外嵌されるが、膨出部6bが薄肉であるため、円筒状凹部7aと膨出部6b間には、最大0.4mm程度の僅かな隙間Sが生じる。
【0029】
そこで、この隙間Sに充填部材16が充填される。充填部材16の充填は、樹脂成形体7の後部ケーシング6への嵌合時、樹脂成形体7の内周面と後部ケーシング6の外周面とのいずれか一方の面、あるいは両面に充填部材16を設けることで容易に充填できる。この充填部材16としては、後部ケーシング6の外周面に隙間Sと同等の厚みをもつテープを巻回するなどの手段を用いる。充填部材は、例えばナイロン、ポリエチレン、塩化ビニルなどの合成樹脂製フィルムやゴム材料をリボン状に裁断したテープが密着性や取り扱い性、耐久性、価格等の点で好ましい。なお、このテープは片面に粘着剤を塗布したものでもよい。
【0030】
充填用テープは、隙間Sを埋める厚みに後部ケーシング6の膨出部6bに予め巻き付けておき、樹脂成形体7を外嵌させることで、容易に隙間Sにテープを充填させることができる。
【0031】
このように、隙間Sにテープなどの充填部材16を充填することで隙間Sを0.1mm以下にすることが可能になり、樹脂成形体7の変形量を減少させ、また隙間Sに生じる内圧時の後部ケーシング6の膨張を抑制して耐水圧性を向上させ、この変形や膨張の繰り返しによる後部ケーシング6の損傷を防止し、ポンプ1の耐久性を向上させることができる。すなわち、後部ケーシング6がポンプ内圧より膨張するのを抑制して、後部ケーシング6が隙間S内での膨張の繰り返しを防止して、後部ケーシング6のウェルドラインからのクラック発生を防ぐことができる。
【0032】
なお、本実施形態では充填部材にテープを用いる例で説明したが、薄板リング形状のものを介設するなど如何なる形状のものでもよく、テープに限定されるものではない。
【0033】
図4に示すように、ポンプ本体2を挟持する前面及び後面カバー3、4は、前部、後部ケーシング5、6及び樹脂成形体7と略同様の外形輪郭形状をなし、ステンレス鋼板あるいはアルミニウム合金板等をプレス加工で打ち抜くことで製造される。このためその製造が容易である。
【0034】
前面及び後面カバー3、4の少なくとも外形輪郭の形状が同一のものを用いることで、さらに、製造コストと打抜型のコストの低減を図ることができる。
【0035】
さらに、前面及び後面カバー3、4の外形輪郭形状をポンプ本体2の外形輪郭形状に合わせることで、金属製カバーのポンプ断面からのはみ出し部分を最小限にしてポンプ1の重量増を抑え、組立性も良好にすることができ好ましい。
【0036】
また、前面及び後面カバー3、4の打ち抜き時、吸水口5a用の開口3a、樹脂成形体7用の開口4a、上記各開口3a、4aを中心とした周囲方向に形成する各4箇所のねじ孔3e、3f、4e、4f及び下端縁近傍の左右に形成する2箇所のねじ孔3g,4gを同時に打ち抜くのが好ましい。
【0037】
ポンプ1の組立は次のようにして行われる。
【0038】
図4及び図5に示すように、前面カバー3、図2に示した羽根車9が連設された回転子10を前部ケーシング5内にセットした状態で、回転子10を後部ケーシング6の空間部6aに収容し、4本の長ねじ17を用いて、この長ねじ17を前面カバー3の開口3aより十字の方向の周縁部付近4箇所に形成する各ねじ孔3eに夫々貫通させ、前部ケーシング5及び後部ケーシング6の中心より十字方向の周縁部付近4箇所に形成する各ねじ孔5e、6eに螺合して、前面カバー3、前部ケーシング5及び後部ケーシング6を一体的に組み立て、さらに、2本の短ねじ18を用いて、この短ねじ18を前部カバー3の下側近傍左右に設けた2箇所のねじ孔3gに夫々貫通させ、金属製ポンプベース19の上方折り返し片19aに設けた2箇所のねじ孔19gに螺合して、前面カバー3を金属製ポンプベース19に固定する。
【0039】
また、4本の総組立用の長ねじ20を用いて、この長ねじ20を後面カバー4の開口4aよりX字方向の周縁部付近4箇所に形成する各ねじ孔4fを貫通させ、総組立用長ねじ20に挿入された間隔保持用のカラー21を介して樹脂成形体7の中心よりX字方向の周縁部付近4箇所に形成するねじ孔7fを貫通させ、さらに、後部ケーシング6及び前部ケーシング5の中心よりX字方向の周縁部付近4箇所に形成するねじ孔6f、5fを貫通させ、総組立用長ねじ20先端部を前面カバー3の開口3aよりX字方向の周縁部付近4箇所に形成するねじ孔3fに螺合させ前面カバー3と後面カバー4とを、間に前部ケーシング5と後部ケーシング6及び樹脂成形体7を結合挟持した状態で連結固定する。さらに、2本の短ねじ18を用いて、この短ねじ18を後部カバー4の下側近傍左右に設けた2箇所のねじ孔4gに夫々貫通させ、金属製ポンプベース19の上方折り返し片19bに設けた2箇所のねじ孔19gに螺合して、後面カバー3を金属製ポンプベース19に固定することで、ポンプ1を組み立てる。
【0040】
このようにして組み立てられたポンプ1は、総組立用の長ねじ20がポンプ本体2を貫通して前面及び後面カバー3、4同士を両側から固定して一体化し、前面カバー3と後面カバー4とが連結して挟持する状態になるため、作動時のポンプ内の圧力による樹脂成形体の前後方向への変形膨張を抑え、高耐水圧に耐える構造となる。
【0041】
このポンプの組立時、後部ケーシング6の膨出部6bに樹脂成形体7の円筒状凹部7aを嵌合させる際、充填用テープを予め膨出部6bの外周に巻き付けておき両者を嵌合させ組み立てることで、樹脂成形体7と後部ケーシング6との隙間Sを充填部材16で充填することができる。
【0042】
また、ポンプ1は、前面及び後面カバー3、4の各々の下部に螺着された金属製ポンプベース19を介して取付部材に固定される。これにより、ポンプの給湯装置への取り付け性や安定性が向上する。
【0043】
さらに、前面及び後面カバー3、4に金属製ポンプベース19を取り付けることで、取り付け性及び安定性が向上する。
【0044】
本実施形態に係るポンプによれば、羽根車と回転子が収容される前部、後部ケーシング、固定子が一体にモールドされる樹脂成形体を合成樹脂製にするとともに、これらを前面、後面カバーで挟持し、固定具で一体化することで、従来の金属ケーシングを用いるもの、あるいは合成樹脂製ケーシングを用い金属製カバーを用いないものとは異なり、樹脂製ケーシングを用いることを可能にし、高耐水圧で、小型、軽量化及び低価格化が可能なポンプが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係るポンプの斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に係るポンプの一部を縦断面で示す側面図。
【図3】図2のA部の拡大図。
【図4】本発明の一実施形態に係るポンプの組立時の斜視図。
【図5】本発明の一実施形態に係るポンプの組立時の斜視図。
【図6】従来ポンプの一部を縦断面で示す側面図。
【符号の説明】
【0046】
1…ポンプ、2…ポンプ本体、3…金属製前面カバー、4…金属製後面カバー、5…前部ケーシング、5a…吸水口、5b…吐出口、5c…ポンプ室、6…後部ケーシング、6a…空間部、6b…膨出部、6c…係合凹部、7…樹脂成形体、7a…円筒状凹部、8…パッキング、9…羽根車、10…回転子、11…固定軸、12…回転軸、14…固定子、14a…積層鉄心、14b…巻線、15…プリント基板、16…充填部材、19…金属製ポンプベース、20…総組立用長ねじ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面にポンプの吸水口と吐出口が設けられ、内部に羽根車が配されたポンプ室を形成するとともに、前記羽根車に連設する回転子が収容される合成樹脂製のケーシングと、
前記回転子の外周部に配される固定子をモールド樹脂内に設けて成形された円環状の樹脂成形体を備え、
前記ケーシングと前記樹脂成形体を組み合わせてモータを構成するポンプにおいて、
前記ケーシングの一側と前記樹脂成形体の一側を各々金属製カバーで覆うとともに、前記ケーシングと前記樹脂成形体を挟持するように前記両カバーを固定具により連結して固定することを特徴とするポンプ。
【請求項2】
前記両金属製カバーを同一外形輪郭形状の板金部品で形成するとともに、この両金属製カバーのそれぞれの下部に金属製ポンプベースが取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記樹脂成形体と前記ケーシングの接合部分の隙間に充填部材を充填することを特徴とする請求項1または2に記載のポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−297971(P2007−297971A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126433(P2006−126433)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(399023877)東芝キヤリア株式会社 (320)
【Fターム(参考)】