説明

ポーラ変調送信装置及び変調方法

【課題】変調精度の劣化を低減すること。
【解決手段】極座標変換部110は、同相成分信号と直交成分信号とを入力し、振幅成分rと位相成分Δθとに変換する。位相変換部120は、90<|Δθ|≦180の場合、(Δθ−180)[deg]を位相成分Δθ1とするとともに、180[deg]シフトを示すディジタル信号を生成し、0≦|Δθ|≦90の場合、位相成分Δθを位相成分Δθ1とし、0[deg]シフトを示すディジタル信号を生成し、BPSK変調部150は、ディジタル信号に応じてBPSK変調を施す。パワーアンプ160は、振幅成分rに応じた電源電圧値と、BPSK変調部150から出力された高周波位相変調信号とを掛け合わせた信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にPLL(Phase Locked Loop :位相同期ループ)を用いて周波数変調を行うポーラ変調送信装置及び変調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベースバンドの変調信号によりキャリア信号を変調して送信信号を形成する(すなわち、ベースバンド変調信号を無線周波数にアップコンバートする)にあたって、PLLを用いた位相変調装置が広く用いられている。この種の位相変調装置においては、一般的に、低コスト、低消費電力、良好なノイズ特性、並びに高い送信特性、例えば変調精度が求められている。このPLLを用いた位相変調装置の構成としては、分周器に変調信号を入力する構成や、VCOに変調信号を入力する構成などさまざまな構成がある。また、位相変調方式の1つとして、PLL帯域内の変調とPLL帯域外の変調の2箇所で行う2点変調方式なども提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
上述したような2点変調技術を用いると、PLL帯域幅を変調帯域幅よりも狭く設定しても、PLL帯域外まで及ぶ広帯域なRF変調信号を出力することが可能となる。この結果、PLLによるノイズ特性の劣化を抑制できるようになる。
【特許文献1】特開2000−115264号公報
【特許文献2】特表2002−530917号公報
【特許文献3】特開2003−101599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、2点変調の場合、IQ信号の振幅、位相(位相変化:瞬時周波数)が変化し、IQ平面上の原点を通過の際、大きな位相変化(約180度)が生じる。図13及び図14を用いて説明する。図13Aに、IQ平面上におけるIQコンスタレーションの推移の一例を示し、図13Bに、図13AのようにIQコンスタレーションが推移した場合の位相変化を示す。
【0005】
図13A及び図13Bから、IQ信号の振幅、位相が原点付近を通過して変化する場合に(図13A(a)参照)、大きな位相変化(約180度)が生じることがわかる(図13B(a)参照)。
【0006】
図14は、2点変調を行った場合に、IQ信号の位相成分の変化の様子をシミュレーションにより計算した例である。図14から分かるように、2点変調の場合、瞬時的に位相が変化、つまり、急激な周波数変動が起こる。
【0007】
このように、ポーラ変調において、VCO/PLLを用いた2点変調を用いる場合、変調波がIQ座標上で原点付近を通過する場合、急激な位相変化が生じてしまい、変調が困難となる。
【0008】
特に、変調波の帯域が広帯域になるほど、また、変調波のピークファクタが大きいほど、急激な位相変化が生じる傾向にあるため、CDMAや多値QAMやOFDMに2点変調を用いたポーラ変調を適用する際、位相成分が急激に変化するため、変調精度の劣化が生じる。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、変調精度の劣化を低減することができるポーラ無線送信装置及び変調方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明のポーラ変調送信装置の一つの態様は、入力信号の振幅成分r及び前記入力信号の位相成分Δθを形成する極座標変換手段と、前記位相成分Δθを所定の位相だけシフトして位相成分Δθ1に変換するとともに、シフトした位相に関する情報を示すディジタル信号を生成する位相変換手段と、前記位相成分Δθ1に基づいて、搬送波を周波数変調することにより変調波を得る周波数変調手段と、前記ディジタル信号に基づいて、前記変調波にディジタル位相変調を施すディジタル位相変調手段と、前記振幅成分rによってディジタル位相変調後の前記変調波が振幅変調されたベクトル変調波を形成するパワーアンプと、を具備する構成を採る。
【0011】
本発明のポーラ変調送信装置の一つの態様は、前記ディジタル位相変調手段は、N値の多相(N相)ディジタル変調を施し、前記位相変換手段は、前記位相成分Δθ1の絶対値が、π/N[rad]以下になるように、前記位相成分Δθを2π×i/N[rad](i=0,…,(N−1))シフトする、構成を採る。
【0012】
本発明のポーラ変調送信装置の一つの態様は、前記ディジタル位相変調手段の位相状態の位相差が、(2π×i/N+Δp)[rad]の場合、前記位相変換手段は、前記位相成分Δθを(2π×i/N+Δp)[rad]シフトする、構成を採る。
【0013】
本発明の変調方法の一つの態様は、入力信号の振幅成分r及び前記入力信号の位相成分Δθを形成するステップと、前記位相成分Δθを所定の位相だけシフトして位相成分Δθ1に変換するとともに、シフトした位相に関する情報を示すディジタル信号を生成するステップと、前記位相成分Δθ1に基づいて、搬送波を周波数変調することにより変調波を得るステップと、前記ディジタル信号に基づいて、前記変調波にディジタル位相変調を施すステップと、前記振幅成分rによってディジタル位相変調後の前記変調波が振幅変調されたベクトル変調波を形成するステップと、を有するようにした。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、変調精度の劣化を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1に係るポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図である。図1において、ポーラ変調送信装置100は、極座標変換部110、位相変換部120と、VCO/PLL(Voltage Controlled Oscillator/Phase Locked Loop)回路130と、遅延調整部140と、BPSK変調部150と、パワーアンプ160とを備えて構成される。
【0017】
極座標変換部110は、同相成分信号と直交成分信号とを入力し、振幅成分rと位相成分Δθとに変換する。極座標変換部110は、振幅成分rをパワーアンプ160の電源電圧に入力するとともに、位相成分Δθを位相変換部120に出力する。
【0018】
位相変換部120は、位相成分Δθに応じて、位相成分Δθを位相成分Δθ1に変換するとともに、変換位相に関する情報を示すディジタル信号(本実施の形態では、BPSK信号)を生成する。位相成分Δθから位相成分Δθ1への変換の対応関係について、図2を用いて説明する。
【0019】
図2は、位相変換部120における、位相成分Δθと、変換後の位相成分Δθ1及びディジタル信号(BPSK信号)との対応関係を示す。
【0020】
同図に示すように、0[deg]≦|Δθ|≦90[deg]の場合、位相変換部120は、位相成分Δθ1として、ΔθをVCO/PLL回路130に出力する。また、0[deg]≦|Δθ|≦90[deg]の場合、位相変換部120はBPSK信号として、0(L)を遅延調整部140に出力する。
【0021】
一方、90[deg]<|Δθ|≦180[deg]の場合、位相変換部120は、位相成分Δθ1として、(Δθ−180)[deg]をVCO/PLL回路130に出力する。また、90[deg]<|Δθ|≦180[deg]の場合、位相変換部120は、BPSK信号として、1(H)を遅延調整部140に出力する。このようにすることで、位相変換部120からVCO/PLL回路130に、|Δθ1|≦90[deg]を満たすΔθ1が出力される。
【0022】
図1に戻り、VCO/PLL回路130は、位相変換部120から出力される位相成分Δθ1に対し、周波数変換を施し、PM変調波を生成する。VCO/PLL回路130は、VCO/PLL回路130の周波数制御端子に、位相成分Δθ1を重畳して位相変調を実現する。
【0023】
遅延調整部140は、後段のBPSK変調部150において、位相変換部120から出力されるディジタル信号(本実施の形態では、BPSK信号)とPM変調波とが同期するように、ディジタル信号を遅延する。このようにすることで、位相変換部120からBPSK変調部150までの振幅成分の経路と、位相成分の経路との遅延差が補償されるようになる。
【0024】
図3に、遅延調整部140の構成例を示す。遅延調整部140は、信号遅延器141を備え、信号遅延器141は、振幅成分の経路と位相成分の経路との差を示す遅延差情報に基づいて、ディジタル信号を遅延させる。遅延は、主にVCO/PLL回路130における周波数変調処理によるものであるので、遅延量を固定値としてもよいし、VCO/PLL回路130のPLLのループフィルタの帯域幅に応じて遅延時間が変わるような場合には、ループ帯域幅に応じて遅延差情報を変えるようにしてもよい。図4を用いて補足説明する。
【0025】
図4(a)は位相変調信号を示し、図4(b)はPM変調波を示し、位相変調信号とPM変調波との遅延差が遅延時間Tdの場合の例である。このとき、遅延調整部140は、ディジタル信号を遅延時間Tdだけ遅延させる。図4(c),図4(d)に、遅延調整前のディジタル信号及び遅延調整後のディジタル信号を示す。このようにすることで、PM変調波と遅延調整後のディジタル信号との遅延差をなくし同期することができる。
【0026】
BPSK変調部150は、PM変調波に対し、BPSK信号に応じて、BPSK変調を施し、BPSK変調後の高周波位相変調信号をパワーアンプ160に出力する。
【0027】
図5に、BPSK変調部150の構成例を示す。VCO/PLL回路130から出力されるPM変調波は2分岐され、一方はセレクタ152に入力され、他方はインバータ(NOT回路)151に出力される。インバータ151によって、PM変調波の180位相反転信号が生成される。セレクタ152には、0(L)又は1(H)のBPSK信号が入力され、BPSK信号に応じて、PM変調波又はPM変調波の180位相反転信号が、LPF(Low Pass Filter)153に出力される。LPF153は、BPSK変調によって生じるスプリアスを低減する。したがって、スプリアスが問題にならない程度であれば、LPF153を必ずしも設ける必要はない。
【0028】
図1に戻り、パワーアンプ160は、振幅成分rに応じた電源電圧値と、BPSK変調部150から出力された高周波位相変調信号とを掛け合わせた信号を出力する。
【0029】
以下、上述のように構成されたポーラ変調送信装置100の動作及び特性について説明する。
【0030】
先ず、極座標変換部110によって、同相成分信号及び直交成分信号が、振幅成分r及び位相成分Δθに変換される。
【0031】
位相変換部120によって、位相成分Δθに応じて、位相成分Δθが位相成分Δθ1に変換され、VCO/PLL回路130によって、位相成分Δθ1に対し、周波数変換が施され、PM変調波が生成される。また、位相変換部120からは、Δθに応じて、0(L)/1(H)がBPSK信号として、BPSK変調部150に出力される。位相成分Δθから位相成分Δθ1への変換の対応関係、及び、ΔθとBPSK信号との対応関係は、図2の通りである。
【0032】
遅延調整部140では、後段のBPSK変調部150において、位相変換部120から出力されるBPSK信号とPM変調波とが同期するように、BPSK信号が遅延される。
【0033】
BPSK変調部150によって、PM変調波に対し、BPSK信号に応じて、BPSK変調が施され、BPSK変調後の高周波位相変調信号がパワーアンプ160に出力される。
【0034】
パワーアンプ160からは、振幅成分rに応じた電源電圧値と、BPSK変調部150から出力された高周波位相変調信号とが掛け合わせた信号が出力される。
【0035】
このようにすることで、位相変換部120からVCO/PLL回路130には、Δθ1≦90[deg]を満たす位相成分Δθ1が出力されるようになる。
【0036】
具体的には、図2に示すように、0[deg]≦|Δθ|≦90[deg]の場合、位相成分Δθは、そのまま位相成分Δθ1として、VCO/PLL回路130に出力される。このとき、BPSK信号として、0(L)がBPSK変調部150に出力される。したがって、BPSK変調部150では、位相反転されないので、0[deg]≦|Δθ|≦90[deg]の場合、位相成分Δθの変調は、VCO/PLL回路130によって行われることになる。
【0037】
一方、90[deg]<|Δθ|≦180[deg]の場合、位相成分Δθは、(180−Δθ)[deg]に変換され、(Δθ−180)[deg]が位相成分Δθ1として、VCO/PLL回路130に出力される。このとき、BPSK信号として、1(H)がBPSK変調部150に出力される。したがって、90[deg]<|Δθ|≦180[deg]の場合、位相成分Δθの変調は、VCO/PLL回路130によって、(Δθ−180)[deg]だけ位相変調された後、BPSK変調部150によって、位相反転されることにより行われることになる。
【0038】
上述したように、位相変換部120によって、VCO/PLL回路130に入力される位相成分Δθ1が、常に、90[deg]以下となるように変換されるので、VCO/PLL回路130に、線形性及び応答特性が高いVCOを用いることなく、ポーラ変調送信装置100は、広帯域の変調に対し変調精度を保つことができる。
【0039】
図6Aに、従来のポーラ変調送信装置による位相成分Δθの変動の様子を示し、図6Bに、本実施の形態に係るポーラ変調送信装置による位相成分Δθの変動の様子を示す。なお、図6A及び図6Bともに、Δθを2πで正規化し、Δθ=±0.5V(1Vpp)とした場合の例である。図6A,図6Bから分かるように、本実施の形態に係るポーラ変調送信装置では、従来のポーラ変調送信装置に比べ、VCOの所要感度を半分以下に抑えることができる。
【0040】
以上のように、本実施の形態によれば、位相変換部120は、位相成分Δθを所定の位相だけシフトして位相成分Δθ1に変換するとともに、シフトした位相に関する情報を示すBPSK信号を生成し、VCO/PLL回路130は、位相成分Δθ1に基づいて、搬送波を周波数変調することにより位相変調波を取得し、BPSK変調部150は、BPSK信号に応じて、位相変調波にディジタル位相変調(BPSK変調)を施すようにした。
【0041】
BPSK変調の場合、位相変換部120は、2値のBPSKディジタル変調を施し、位相変換部120は、位相成分Δθ1の絶対値が、π/2[rad]以下になるように、位相成分Δθを2π×i/2[rad](i=0,1)シフトする。
【0042】
つまり、位相変換部120は、90<|Δθ|≦180の場合、(Δθ−180)[deg]を位相成分Δθ1とするとともに、180[deg]シフトを示すBPSK信号を生成し、0≦|Δθ|≦90の場合、位相成分Δθを位相成分Δθ1とし、0[deg]シフトを示すBPSK信号を生成し、BPSK変調部150は、BPSK信号に応じてBPSK変調を施す。
【0043】
このようにすることで、90[deg]を超える位相変化に対しては、BPSK変調部150によって位相反転することにより行なわれ、VCO/PLL回路130では、90[deg]以下の位相変化が施されることになるので、VCO/PLL回路130に、線形性及び応答特性が高いVCOを用いることなく、ポーラ変調送信装置100は、広帯域の変調に対し変調精度を保つことができる。
【0044】
なお、以上の説明では、BPSK変調部150の2位相状態の位相が、理想的な180度である場合を想定し、位相変換部120が、図2に示すような変換を行う場合について説明したが、BPSK変調部150の2位相状態の位相が180度からΔpだけずれていて、2位相状態の実際の位相差が(180+Δp)[deg]となるような場合には、図7のような変換を行えばよい。
【0045】
つまり、BPSK変調部150の位相状態の位相差が、(2π/N+Δp)[rad]の場合、位相変換部120は、位相成分Δθを(2π×/N+Δp)[rad]シフトする。
【0046】
図7は、位相変換部120における、位相成分Δθと、変換後の位相成分Δθ1及びBPSK信号との対応関係を示す図である。
【0047】
すなわち、BPSK変調部150の2位相状態の位相差が(180+Δp)[deg]とすると、0[deg]≦|Δθ|≦90[deg]の場合、位相変換部120は、位相成分Δθ1として、ΔθをVCO/PLL回路130に出力し、90[deg]<|Δθ|≦180[deg]の場合、位相成分Δθ1として、(Δθ−180−Δp)[deg]をVCO/PLL回路130に出力する。なお、BPSK信号については、図2と同様である。
【0048】
このようにして、位相変換部120が、位相成分Δθから位相成分Δθ1に位相変換するようにすることで、位相成分Δθが(2π/N+Δp)[rad]シフトされるので、後段のBPSK変調部150における位相のずれΔpを、前段の位相変換部120において補償することができる。
【0049】
(実施の形態2)
本実施の形態では、BPSK変調に代えて、多相PSK変調を行うポーラ変調送信装置について説明する。なお、以下では、多相PSK変調として、QPSK変調を行う場合を例に説明する。また、図1と共通する構成部分には、図1と同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
図8のポーラ変調送信装置200は、図1のポーラ変調送信装置100に対して、位相変換部120及びBPSK変調部150に代えて、位相変換部210及びQPSK変調部220を備えて構成される。
【0051】
位相変換部210は、位相成分Δθに応じて、位相成分Δθを位相成分Δθ1に変換するとともに、変換位相に関する情報を示すディジタル信号(本実施の形態では、QPSK信号)を生成する。位相成分Δθから位相成分Δθ1への変換の対応関係について、図9を用いて説明する。
【0052】
図9は、位相変換部210における、位相成分Δθと、変換後の位相成分Δθ1及びQPSK信号との対応関係を示す図である。
【0053】
同図に示すように、−45[deg]≦Δθ<45[deg]の場合、位相変換部210は、位相成分Δθ1として、ΔθをVCO/PLL回路130に出力する。また、−45[deg]≦Δθ<45[deg]の場合、位相変換部210は、QPSK信号として、0[deg]シフトを示す“00”を遅延調整部140に出力する。
【0054】
45[deg]≦Δθ<135[deg]の場合、位相変換部210は、位相成分Δθ1として、Δθ−90[deg]をVCO/PLL回路130に出力する。また、45[deg]≦Δθ<135[deg]の場合、位相変換部210は、QPSK信号として、90[deg]シフトを示す“01”を遅延調整部140に出力する。
【0055】
135[deg]≦Δθ<225[deg]の場合、位相変換部210は、位相成分Δθ1として、Δθ−180[deg]をVCO/PLL回路130に出力する。また、135[deg]≦Δθ<225[deg]の場合、位相変換部210は、QPSK信号として、180[deg]シフトを示す“10”を遅延調整部140に出力する。
【0056】
225[deg]≦Δθ<315[deg]の場合、位相変換部210は、位相成分Δθ1として、Δθ−270[deg]をVCO/PLL回路130に出力する。また、225[deg]≦Δθ<315[deg]の場合、位相変換部210は、QPSK信号として、270[deg]シフトを示す“11”を遅延調整部140に出力する。
【0057】
このような変換を行うことで、位相変換部120からVCO/PLL回路130に、Δ|θ1|≦45[deg]を満たすΔθ1が出力される。
【0058】
QPSK変調部220は、PM変調波に対し、QPSK信号に応じて、QPSK変調を施し、QPSK変調後の高周波位相変調信号をパワーアンプ160に出力する。図10に、QPSK変調部220の構成例を示す(特許文献3参照)。図10のQPSK変調部220は、分周器221、遅延器222−1〜222−3、セレクタ223、及び、LPF224を備えて構成される。なお、QPSK変調部220の構成は、図10に示す構成に限らず、他の構成であってもよい。
【0059】
以下、上述のように構成されたポーラ変調送信装置200の動作及び特性について説明する。
【0060】
先ず、極座標変換部110によって、同相成分信号及び直交成分信号が、振幅成分r及び位相成分Δθに変換される。
【0061】
位相変換部210によって、位相成分Δθに応じて、位相成分Δθが位相成分Δθ1に変換され、VCO/PLL回路130によって、位相成分Δθ1に対し、周波数変換が施され、PM変調波が生成される。また、位相変換部210からは、Δθに応じて、“00”,“01”,“10”,“11”がQPSK信号として、QPSK変調部220に出力される。位相成分Δθから位相成分Δθ1への変換の対応関係、及び、ΔθとQPSK信号との対応関係は、図9の通りである。
【0062】
遅延調整部140では、後段のQPSK変調部220において、位相変換部210から出力されるディジタル信号(本実施の形態では、QPSK信号)とPM変調波とが同期するように、QPSK信号が遅延される。
【0063】
QPSK変調部220によって、PM変調波に対し、QPSK信号に応じて、QPSK変調が施され、QPSK変調後の高周波位相変調信号がパワーアンプ160に出力される。
【0064】
パワーアンプ160からは、振幅成分rに応じた電源電圧値と、QPSK変調部220から出力された高周波位相変調信号とが掛け合わせた信号が出力される。
【0065】
このようにすることで、位相変換部210からVCO/PLL回路130には、−45≦Δθ1≦45[deg]を満たす位相成分Δθ1が出力されるようになる。
【0066】
具体的には、図9に示すように、−45≦Δθ<45[deg]の場合、位相成分Δθは、そのまま位相成分Δθ1として、VCO/PLL回路130に出力される。このとき、QPSK信号として、0[deg]シフトを示す“00”がQPSK変調部220に出力される。したがって、QPSK変調部220では、位相変化を伴わず、−45≦Δθ≦45[deg]の場合、位相成分Δθの変調は、VCO/PLL回路130によって行われることになる。
【0067】
また、45[deg]≦Δθ<135[deg]の場合、位相成分Δθは、(Δθ−90)[deg]に変換され、(Δθ−90)[deg]が位相成分Δθ1として、VCO/PLL回路130に出力される。このとき、QPSK信号として、90[deg]シフトを示す“01”がQPSK変調部220に出力される。したがって、45[deg]≦Δθ<135[deg]の場合、位相成分Δθの変調は、VCO/PLL回路130によって、(Δθ−90)[deg]だけ位相変調された後、QPSK変調部220によって、位相が90度シフトされることにより行われることになる。
【0068】
また、135[deg]≦Δθ<225[deg]の場合、位相成分Δθは、(Δθ−180)[deg]に変換され、(Δθ−180)[deg]が位相成分Δθ1として、VCO/PLL回路130に出力される。このとき、QPSK信号として、180[deg]シフトを示す“10”がQPSK変調部220に出力される。したがって、135[deg]≦Δθ<225[deg]の場合、位相成分Δθの変調は、VCO/PLL回路130によって、(Δθ−180)[deg]だけ位相変調された後、QPSK変調部220によって、位相が180度シフトされることにより行われることになる。
【0069】
また、225[deg]≦Δθ<315[deg]の場合、位相成分Δθは、(Δθ−270)[deg]に変換され、(Δθ−270)[deg]が位相成分Δθ1として、VCO/PLL回路130に出力される。このとき、QPSK信号として、270[deg]シフトを示す“11”がQPSK変調部220に出力される。したがって、225[deg]≦Δθ<315[deg]の場合、位相成分Δθの変調は、VCO/PLL回路130によって、(Δθ−270)[deg]だけ位相変調された後、QPSK変調部220によって、位相が270度シフトされることにより行われることになる。
【0070】
上述したように、QPSK変調部220によって、VCO/PLL回路130に入力される位相成分Δθ1が、常に、±45[deg]以内となるように変換されるので、VCO/PLL回路130に、線形性及び応答特性が高いVCOを用いることなく、ポーラ変調送信装置100は、広帯域の変調に対し変調精度を保つことができる。
【0071】
以上のように、本実施の形態によれば、位相変換部210は、位相成分Δθ1の絶対値が、π/4[rad]以下になるように、位相成分Δθをπ×i/2[rad](i=0,1,2,3)シフトするとともに、シフトした位相に関する情報を示すQPSK信号を生成し、VCO/PLL回路130は、位相成分Δθ1に基づいて、搬送波を周波数変調することにより位相変調波を取得し、QPSK変調部220は、QPSK信号に応じて、位相変調波にディジタル位相変調(QPSK変調)を施すようにした。
【0072】
このようにすることで、VCO/PLL回路130では、90[deg]以下の位相変化が施されることになるので、VCO/PLL回路130に、線形性及び応答特性が高いVCOを用いることなく、ポーラ変調送信装置200は、広帯域の変調に対し変調精度を保つことができる。
【0073】
以上の説明では、ディジタル変調としてQPSK変調を用いる場合について説明したが、これに限られず、8PSK変調を用いる場合にも、本発明を適用することができる。つまり、N値の多相(N相)ディジタル変調を用いる場合、位相変換部210が、位相成分Δθ1の絶対値が、π/N[rad]以下になるように、位相成分Δθを2π×i/N[rad](i=0,…,(N−1))シフトするようにすればよい。このようにすることで、VCO/PLL回路130では、π/N[rad]以下の位相変化が施されることになるので、VCO/PLL回路130に、線形性及び応答特性が高いVCOを用いることなく、ポーラ変調送信装置200は、広帯域の変調に対し変調精度を保つことができる。
【0074】
図11Aに、本実施の形態の係るポーラ変調送信装置200による位相成分Δθの変動の様子を示す。なお、図11Bには、ポーラ変調送信装置200のQPSK変調部220に代え、8PSK変調部を備えるポーラ変調送信装置による位相成分Δθの変動の様子を示す。図6と同様に、図11A及び図11Bともに、Δθを2πで正規化し、Δθ=±0.5V(1Vpp)とした場合の例である。図11A,図11Bとから分かるように、本実施の形態に係るポーラ変調送信装置では、従来のポーラ変調送信装置に比べ(図6A参照)、VCOの所要感度を半分以下に抑えることができる。
【0075】
また、BPSK変調(図6B参照)、QPSK変調(図11A参照)、8PSK変調(図11B参照)の比較より、変調多値数が大きくほど、VCO/PLL回路130に入力される位相成分Δθ1のピーク電圧が小さくなり、変調多値数が大きいほど、VCOの所要感度を抑えることができるようになる。
【0076】
なお、以上の説明では、QPSK変調部220の4位相状態の位相差が、理想的な場合を想定し、位相変換部210が、図9に示すような変換を行う場合について説明したが、実施の形態1と同様に、QPSK変調部220の4位相状態の位相が0度、90度、180度、又は、270度からΔpi(i=0,…,(N−1))だけずれているような場合には、図12のような変換を行えばよい。
【0077】
このようにして、位相変換部210が、位相成分Δθから位相成分Δθ1に位相変換するようにすることで、位相成分Δθが(2π×i/N+Δpi)[rad](i=0,…,(N−1))シフトされるので、後段のQPSK変調部220における位相のずれΔpiを、前段の位相変換部210において補償することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、例えば携帯電話機等の携帯端末やその基地局等の無線通信装置に適用して好適である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本実施の形態1に係るポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図
【図2】実施の形態1に係る位相変換部の変換例を示す図
【図3】遅延調整部の構成例を示す図
【図4】遅延調整部の動作の説明に供する図
【図5】BPSK変調部の構成例を示す図
【図6】図6Aは、従来のポーラ変調送信装置による位相成分Δθの変動の様子を示す図であり、図6Bは、実施の形態1に係るポーラ変調送信装置による位相成分Δθの変動の様子を示す図
【図7】実施の形態1に係る位相変換部の別の変換例を示す図
【図8】本実施の形態2に係るポーラ変調送信装置の要部構成を示すブロック図
【図9】実施の形態2に係る位相変換部の変換例を示す図
【図10】QPSK変調部の構成例を示す図
【図11】図11Aは、QPSK変調を行う実施の形態2に係るポーラ変調送信装置による位相成分Δθを示す図であり、図11Bは、8PSK変調を行う実施の形態2に係るポーラ変調送信装置による位相成分Δθを示す図
【図12】実施の形態2に係る位相変換部の別の変換例を示す図
【図13】図13Aは、従来のポーラ変調のIQ信号の遷移を示す図であり、図13Bは、従来のポーラ変調のIQ信号の位相変化を示す図
【図14】従来のポーラ変調のIQ信号の位相成分の変化のシミュレーション結果を示す図
【符号の説明】
【0080】
100,200 ポーラ変調送信装置
110 極座標変換部
120,210 位相変換部
130 VCO/PLL回路
140 遅延調整部
150 BPSK変調部
160 パワーアンプ
220 QPSK変調部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号の振幅成分r及び前記入力信号の位相成分Δθを形成する極座標変換手段と、
前記位相成分Δθを所定の位相だけシフトして位相成分Δθ1に変換するとともに、シフトした位相に関する情報を示すディジタル信号を生成する位相変換手段と、
前記位相成分Δθ1に基づいて、搬送波を周波数変調することにより変調波を得る周波数変調手段と、
前記ディジタル信号に応じて、前記変調波にディジタル位相変調を施すディジタル位相変調手段と、
前記振幅成分rによってディジタル位相変調後の前記変調波が振幅変調されたベクトル変調波を形成するパワーアンプと、
を具備するポーラ変調送信装置。
【請求項2】
前記ディジタル位相変調手段は、N値の多相(N相)ディジタル変調を施し、
前記位相変換手段は、前記位相成分Δθ1の絶対値が、π/N[rad]以下になるように、前記位相成分Δθを2π×i/N[rad](i=0,…,(N−1))シフトする、
請求項1に記載のポーラ変調送信装置。
【請求項3】
前記ディジタル位相変調手段の位相状態の位相差が、(2π×i/N+Δp)[rad]の場合、
前記位相変換手段は、前記位相成分Δθを(2π×i/N+Δp)[rad]シフトする、
請求項2に記載のポーラ変調送信装置。
【請求項4】
入力信号の振幅成分r及び前記入力信号の位相成分Δθを形成するステップと、
前記位相成分Δθを所定の位相だけシフトして位相成分Δθ1に変換するとともに、シフトした位相に関する情報を示すディジタル信号を生成するステップと、
前記位相成分Δθ1に基づいて、搬送波を周波数変調することにより変調波を得るステップと、
前記ディジタル信号に応じて、前記変調波にディジタル位相変調を施すステップと、
前記振幅成分rによってディジタル位相変調後の前記変調波が振幅変調されたベクトル変調波を形成するステップと、
を有する変調方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−188757(P2009−188757A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26795(P2008−26795)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】