説明

マイクロエジェクター及びその製造方法

【課題】本発明はマイクロエジェクター及びその製造方法に関する。
【解決手段】本発明によるマイクロエジェクターは、チャンバ内の上部空間に配置される隔壁部と前記チャンバ内の下部空間に配置され前記隔壁部と共に流体の吐出方向と同一方向に流路を形成する突出部とを含む流路プレートと、前記流路プレートの上部の前記チャンバに対応するように形成され、前記チャンバからノズルへ流体吐出の駆動力を提供するアクチュエータと、を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロエジェクター及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、チャンバに複数の流路を形成し、チャンバの高さまたは体積を減少させることによって、チャンバからノズルへ流体の吐出を容易にするマイクロエジェクター及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高度に発達した現代の先端技術において、最近、最も注目を集めている技術分野の一つは生命工学技術(bio−technology)である。一般的に、生命工学では人体関連試料が多く使用されるため、必然的に流体あるいは流体媒質に溶解された状態で存在する微細流体試料の運送、制御、分析などの役割をするマイクロ流体システムが生命工学技術において必須な要素技術となっている。
【0003】
このようなマイクロ流体システムは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いたもので、インスリンなどの薬物または生体活性物質の持続的な体内注入、単一チップ試験装置(lab−on−a−chip)、新薬開発のための化学分析、インクジェット印刷、小型冷却システム、小型燃料電池のような分野で応用されている。
【0004】
このようなマイクロ流体システムでは、流体を移送するための必須な要素としてマイクロエジェクターが使用されており、特に、医療生体用物質を移送するためのマイクロエジェクターの場合、生体物質の特性上、粘性が高く、かつ導電性を有する流体を扱うため、主に圧電素子を用いたマイクロエジェクターが利用されている。
【0005】
しかし、このようなマイクロエジェクターの場合、圧電素子の変位が変化するにつれてチャンバに加えられる圧力の変化(駆動エネルギー)がノズルまで送られるが、このとき、チャンバの高さまたは体積がダンピングの役割をし駆動エネルギーの損失が生じ、これにより、流体の吐出特性が低下するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、チャンバの空間を減少させ、チャンバ内の流路を分割することで、所望の速度やボリュームの液滴を吐出することができるマイクロエジェクター及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるマイクロエジェクターは、チャンバ内の上部空間に配置される隔壁部と、上記チャンバ内の下部空間に配置され、上記隔壁部と共に流体の吐出方向と同一方向に流路を形成する突出部とを含む流路プレートと、上記流路プレートの上部の上記チャンバに対応するように形成され、上記チャンバからノズルへ流体吐出の駆動力を提供するアクチュエータと、を含むことができる。
【0008】
また、本発明によるマイクロエジェクターにおいて、上記流路プレートは、上記チャンバから上記ノズルに行くほど幅が狭くなるように形成されることができる。
【0009】
また、本発明によるマイクロエジェクターにおいて、上記チャンバ内で上記隔壁部と上記突出部により形成された流路を通過した流体は、1つの流路に合流されて上記ノズルに供給されるように形成されることができる。
【0010】
また、本発明によるマイクロエジェクターにおいて、上記ノズルは、上記流体の吐出方向に行くほど幅が狭くなるように形成されることができ、特に、幅が段階的に減少するように形成されることができる。
【0011】
また、本発明によるマイクロエジェクターにおいて、上記隔壁部は、長さ方向の端部に、上記チャンバ内へまたは上記チャンバからの流動を案内するガイド部を含むことができる。
【0012】
また、本発明によるマイクロエジェクターにおいて、上記アクチュエータは、上記隔壁部と上記突出部により形成される流路それぞれに対応するように形成されることができる。
【0013】
また、本発明によるマイクロエジェクターにおいて、上記流路プレートは上部基板及び下部基板を含み、上記隔壁部は上記上部基板に形成され、上記突出部は上記下部基板に形成されることができる。
【0014】
また、本発明によるマイクロエジェクターにおいて、上記下部基板は、下部シリコン層、絶縁層、上部シリコン層の順に積層して形成され、上記突出部は、上記上部シリコン層により形成されることができる。
【0015】
一方、本発明によるマイクロエジェクターの製造方法は、内部に流体の流路が形成される流路プレートを用意するステップと、上記流路で流体をノズルに移送するチャンバ内の上部空間に隔壁部を形成し、上記チャンバ内の下部空間に上記隔壁部と共に流体の吐出方向と同一方向に流路を形成する突出部を形成するステップと、上記流路プレートの上部の上記チャンバに対応する位置に、上記チャンバからノズルへ流体吐出の駆動力を提供するアクチュエータを形成するステップと、を含むことができる。
【0016】
また、本発明によるマイクロエジェクターの製造方法において、上記流路プレートを用意するステップは、上記流路プレートを上記チャンバから上記ノズルに行くほど幅が狭くなるように形成することができる。
【0017】
また、本発明によるマイクロエジェクターの製造方法において、上記隔壁部と上記突出部を形成するステップは、上記チャンバ内で上記隔壁部と上記突出部により形成された流路を通過した流体が1つの流路に合流されて上記ノズルに供給されるように形成することができる。
【0018】
また、本発明によるマイクロエジェクターの製造方法において、上記ノズルを上記流体の吐出方向に行くほど幅が狭くなるように形成するステップをさらに含むことができる。
【0019】
また、本発明によるマイクロエジェクターの製造方法において、上記ノズルを上記流体の吐出方向に行くほど幅が段階的に減少するように形成するステップをさらに含むことができる。
【0020】
また、本発明によるマイクロエジェクターの製造方法において、上記隔壁部を形成するステップは、長さ方向の端部に、上記チャンバ内へまたは上記チャンバからの流動を案内するガイド部を形成することができる。
【0021】
また、本発明によるマイクロエジェクターの製造方法において、上記アクチュエータを形成するステップは、上記隔壁部と上記突出部により形成される流路それぞれに対応するように形成することができる。
【0022】
また、本発明によるマイクロエジェクターの製造方法において、上記流路プレートを用意するステップは、上部基板及び下部基板を用意するステップからなり、上記隔壁部を形成するステップは、上記上部基板を加工して行われ、上記突出部を形成するステップは、上記下部基板を加工して行われることができる。
【0023】
また、本発明によるマイクロエジェクターの製造方法において、上記下部基板を用意するステップは、下部シリコン層、絶縁層、上部シリコン層の順に積層して行われ、上記突出部を形成するステップは、上記上部シリコン層において上記突出部が形成される部分以外の部分を除去して行われることができる。
【0024】
また、本発明によるマイクロエジェクターの製造方法において、上記上部基板と上記下部基板とを接合するステップをさらに含み、上記上部基板と上記下部基板とを接合するステップは、シリコン直接接合(Silicon Direct Bonding、SDB)により行われることができる。
【0025】
また、本発明によるマイクロエジェクターの製造方法において、上記上部基板と上記下部基板とを接合するステップをさらに含み、上記上部基板と上記下部基板とを接合するステップは、上記上部基板の底面と上記下部基板の上記絶縁層の上面とを接合して行われることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によるマイクロエジェクター及びその製造方法によると、チャンバの空間を減少させ、チャンバ内に複数の流路を形成することで、マイクロエジェクターの流体吐出速度やボリュームなどの流体吐出特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例によるマイクロエジェクターの分解斜視図である。
【図2】図1のA−A'線に沿って切断したマイクロエジェクターの垂直断面図である。
【図3】図1のB−B'線に沿って切断したマイクロエジェクターの垂直断面図である。
【図4】本発明の一実施例によるマイクロエジェクターの上部基板に流路を形成する方法を示した工程図である。
【図5】本発明の一実施例によるマイクロエジェクターの下部基板にインク流路を形成するステップを示した工程図である。
【図6】本発明の他の実施例によるマイクロエジェクターの上部基板の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、図面を参照し本発明の具体的な実施例を詳細に説明する。但し、本発明の思想は提示される実施例に制限されず、本発明の思想を理解する当業者は同じ思想の範囲内で他の構成要素の追加、変更、削除等により退歩的な他の発明や本発明の思想の範囲内に含まれる他の実施例を容易に提案することができ、これも本願発明の思想の範囲内に含まれる。
【0029】
また、各実施例の図面に示す同一または類似する思想の範囲内の機能が同一の構成要素は、同一または類似する参照符号を用いて説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施例によるマイクロエジェクターの分解斜視図であり、図2は、図1のA−A'線に沿って切断したマイクロエジェクターの垂直断面図であり、図3は、図1のB−B'線に沿って切断したマイクロエジェクターの垂直断面図である。
【0031】
図1から図3を参照すると、本発明の一実施例によるマイクロエジェクター100は、流路が形成される上部基板110及び下部基板120と、上部基板110の上面に形成される圧電アクチュエータ130を含む。上部基板110及び下部基板120はノズル115に行くほど幅が狭くなるように形成されることができる。
【0032】
上部基板110には、流体が流入される流入口111、リストリクタ112の溝、チャンバ113の溝、及びノズル115の溝が形成されることができる。このとき、上部基板110は単結晶シリコン基板や、2つのシリコン層の間に絶縁層が形成されるSOI(Silicon on Insulator)ウェハであることができる。上部基板110がSOIウェハである場合、チャンバ113の高さは、SOIウェハの2つのシリコン層のうち下部のシリコン層の厚さと実質的に同一であるように形成してもよい。
【0033】
ここで、マイクロエジェクターの方向を定義すると、厚さ方向は上部基板110から下部基板120に向かう方向またはその逆方向を意味し、長さ方向はマイクロエジェクターの流路方向、すなわち、チャンバ113からノズル115に向かう方向またはその逆方向を意味し、幅方向は長さ方向と垂直な方向を意味する。また、高さは厚さ方向の寸法を意味する。
【0034】
また、上部基板110のチャンバ113が形成される溝に1つ以上の隔壁114が形成され、この隔壁114によってチャンバ113内に複数の流路が形成される。すなわち、リストリクタ112を介してチャンバ113に流入された流体は、隔壁114により分割されたチャンバ113内の3つの流路に移動し、チャンバ113のノズル115側の部分で1つの流路に合流されてノズル115へ吐出される。本実施例においては、2つの隔壁114が形成され、チャンバ113内で3つの流路が形成される構造を示しているが、本発明はこれに限定されず、要求される条件及び設計仕様に応じて変更可能である。
【0035】
圧電アクチュエータ130はチャンバ113に対応するように上部基板110の上部に形成され、チャンバ113に流入された流体がノズル115へ吐出されるための駆動力を提供する。
【0036】
本実施例において、圧電アクチュエータ130は隔壁114により分割されたチャンバ113内の流路に対応する位置にそれぞれ形成されることができる。すなわち、チャンバ113内の3つの流路それぞれに対応する位置に3つの圧電アクチュエータ130が形成されることができる。
【0037】
圧電アクチュエータ130は共通電極の役割をする下部電極と、電圧の印加により変形される圧電膜と、駆動電極の役割をする上部電極とを含んで構成されることができる。
【0038】
下部電極は上部基板110の表面全体に形成されることができ、1つの導電性金属物質からなることができるが、チタニウム(Ti)と白金(Pt)からなる2つの金属薄膜層で構成されることが好ましい。下部電極は共通電極の役割だけではなく、圧電膜と上部基板110との間の相互拡散を防止する拡散防止層の役割もするようになる。
【0039】
圧電膜は下部電極上に形成され、チャンバ113の上部に位置するように配置される。このような圧電膜は圧電物質、好ましくは、PZT(Lead Zirconate Titanate)セラミック材料からなることができる。上部電極は圧電膜上に形成され、Pt、Au、Ag、Ni、Ti及びCuなどの物質のうちいずれか1つの物質からなることができる。
【0040】
本実施例においては、圧電アクチュエータ130を使用した圧電駆動方式によって流体が吐出される構成を例として説明しているが、流体吐出方式によって本発明が制限または限定されるものではなく、要求される条件によって熱駆動方式といった多様な方式で流体が吐出されるように構成できる。
【0041】
下部基板120には流入口111に流入される流体をチャンバ113に移送するリザーバ122の溝と、チャンバ113の空間内に配置される突出部121とを含むことができる。
【0042】
下部基板120は単結晶シリコン基板やSOIウェハからなることができるが、下部シリコン層、絶縁層、上部シリコン層の順に積層して形成されるSOIウェハであることが好ましい。
【0043】
突出部121は水平断面が長方形状であってもよいが、これは例示であり、それ以外の平行四辺形または長六角形などの多様な形態で形成されてもよい。突出部121の高さは上部シリコン層の厚さと実質的に同一であり、要求されるチャンバ113の高さに応じて10〜100μmであることができる。このとき、他の流体流路の構成との関係でパターニングに問題がなければ突出部の高さを100μm以上とすることも可能である。
【0044】
突出部121は、上面がチャンバ113内に形成された隔壁部114の下面と当接するように配置され、隔壁部114と共にチャンバ113内で流体の吐出方向と同一方向に流路を形成する。また、突出部121はチャンバ113内に突出して配置され、チャンバ113の高さを低くしつつチャンバ113内の流路を複数の部分に分割する。
【0045】
以下では、図4及び図5を参照し、上記した構成を有する本発明の一実施例によるマイクロエジェクターを製造する方法について説明する。
【0046】
図4は、本発明の一実施例によるマイクロエジェクターの上部基板に流路を形成する方法を示した工程図であり、図5は、本発明の一実施例によるマイクロエジェクターの下部基板にインク流路を形成するステップを示した工程図である。
【0047】
まず、本発明の好ましい製造方法を概略的に説明すると、上部基板及び下部基板に流路を形成し、下部基板上に上部基板を積層して接合することで本実施例によるマイクロエジェクターが完成する。一方、上部基板と下部基板に流路を形成する段階は手順に関わらず行われることができる。すなわち、上部基板と下部基板のうちいずれか1つに流路を形成してもよく、上部基板と下部基板に流路が同時に形成されてもよい。但し、以下では、説明の便宜上、上部基板に流路を形成する工程について説明する。
【0048】
図4(a)を参照すると、本実施例では上部基板110として約100〜200μmの厚さを有するシリコンウェハを使用する。用意された上部基板110をウェット及び/またはドライ酸化させ、上部基板110の上面と下面に約5,000〜15,000Åの厚さを有するシリコン酸化膜を形成することができる。
【0049】
上部基板110の下面にはリストリクタ112、チャンバ113の下部、及びノズル115を形成するための溝を形成し、流入口111を形成するための貫通孔を形成する。上部基板110はノズル115に行くほど幅が狭くなるように形成されることが好ましい。上記溝においてノズル115が形成される部分は、流体の吐出方向に行くほど幅が狭くなるように形成されることが好ましい。本実施例では上記幅が段階的に減少するように形成されているが、幅が狭くなる様態については特に限定されない。
【0050】
上部基板110に形成される上記溝及び上記貫通孔は、上部基板110の下面にフォトレジスト(photoresist)を塗布し、塗布されたフォトレジストをパターニングした後、パターニングされたフォトレジストをエッチングマスクとしてエッチングすることによって形成されることができる。このとき、フォトレジストのパターニングは露光と現像を含む周知のフォトリソグラフィ(photolithography)方法によって行われることができるが、後述する他のフォトレジストのパターニングの場合にも同様な方法で適用することができる。
【0051】
また、上記上部基板110に流路を形成するためのエッチングは、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)を用いた反応性イオンエッチング(RIE)のようなドライエッチング方法や、シリコン用のエッチング液(etchant)として、例えばテトラメチル水酸化アンモニウム(TMAH:Tetramethyl AmmoniμmHydroxide)または水酸化カリウム(KOH)を用いたウェットエッチング方法によって行われることができる。このようなシリコンウェハのエッチングは、後述する他のシリコンウェハに対するエッチングの場合にも同様な方法で適用することができる。
【0052】
次に、図4(b)に示したように、チャンバ113の上部を形成するためにシリコンウェハをエッチングする。このとき、上部基板110が、2つのシリコン層の間に絶縁層が形成されたSOIウェハである場合、絶縁層はエッチング停止層としての役割をする。
【0053】
このとき、チャンバ113の内部空間に隔壁114が形成されるよう、隔壁114を形成するための部分を残してエッチングする。
【0054】
以下では、図4を参照し本発明の一実施例によるマイクロエジェクターの下部基板に流路を形成する工程について説明する。
【0055】
図5(a)に示したように、下部基板120として約数百μmの厚さ、好ましくは、約210μmの厚さを有する下部シリコン層と、約1μm〜2μmの厚さを有する絶縁層と、約10μm〜100μm厚さを有する上部シリコン層とからなるSOIウェハを使用する。用意された下部基板120をウェット及び/またはドライ酸化させ、下部基板120の上面と下面に約5,000〜15,000Åの厚さを有するシリコン酸化膜を形成することができる。
【0056】
下部基板120の上面、特に、上部シリコン層の上面にフォトレジストを塗布し、フォトレジストにおいて突出部121を形成するための部分以外の部分を除去した後、その露出された部位の上部シリコン層を、上記フォトレジストをエッチングマスクとしてエッチングする。このとき、突出部121を形成するための上部シリコン層のエッチングは、TMAHまたはKOHを用いるウェットエッチングや、ICPを用いるRIEのようなドライエッチング方法で行われる。
【0057】
突出部121の水平断面は長方形または平行四辺形などの形態からなることができ、長方形の断面を持つ突出部121は上部シリコン層をドライエッチングして得られ、平行四辺形の断面を持つ突出部121は上部シリコン層をウェットエッチングして得られる。それ以外にも、対向する2辺が長い六角形、または楕円形などの多様な形態であってもよい。
【0058】
突出部121は、上部シリコン層をエッチングして形成されるため、上部シリコン層の厚さと実質的に同じ高さを有し、突出部121の高さは上部シリコン層の厚さを調整することによって多様に調整できる。このように調整される突出部121の高さに応じてチャンバ113の高さも調整できる。
【0059】
このように形成された突出部121の上面に存在するフォトレジストはウェットエッチングやドライエッチングにより除去されることができ、化学・機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Planarization)によっても除去されることができる。このとき、突出部121の厚さの一部を共に除去して突出部121の高さを調整することができる。
【0060】
次に、図5(b)に示したように、突出部121が形成された下部基板120にリザーバ122の溝を形成する。これは、下部基板120の上面、すなわち絶縁層の上面と突出部121の上面とを覆うようにフォトレジストを塗布し、これをパターニングしてリザーバ122を形成するための開口部を形成した後、パターニングされたフォトレジストをエッチングマスクとして、絶縁層と下部シリコン層の一部をエッチングしてリザーバ122の溝を形成する。リザーバ122の溝の形成はドライエッチングやウェットエッチング方法で行われることができ、リザーバ122の側面が傾くようにエッチングされることもできる。
【0061】
以上、下部基板120としてSOIウェハを使用した流路の形成について図示し説明したが、下部基板120として単結晶シリコン基板を使用してもよい。すなわち、約100〜200μmの厚さを有する単結晶シリコン基板を設けた後、図5(a)及び図5(b)に示した方法と同様に、下部基板120に突出部121とリザーバ122の溝を形成することができる。
【0062】
このように流路が形成された上部基板110及び下部基板120を接合し、上部基板110の上面のチャンバ113に対応する位置に圧電アクチュエータ130を形成すると、図1に示したように、本実施例によるマイクロエジェクターが完成する。
【0063】
このとき、上部基板110と下部基板120の接合はシリコン直接接合により行われることが好ましい。すなわち、上部基板110の下面と下部基板120の絶縁層の上面を接合面とし、これら接合面を密着した後、熱処理して接合することができる。
【0064】
圧電アクチュエータ130は上部基板110の上面に1つの圧電部からなることができるが、チャンバ113内で隔壁部114と突出部121により形成される複数の流路それぞれに対応する位置に形成された複数の圧電部からなってもよい。すなわち、本実施例では隔壁部114により分割されたチャンバ113の空間に対応するよう、3つの圧電部が形成されてもよい。
【0065】
図6は、本発明の他の実施例によるマイクロエジェクターの上部基板の底面図である。
【0066】
図6に示した本発明の他の実施例によるマイクロエジェクターは、隔壁部の長さ方向端部に、チャンバ内へまたはチャンバからの流動を案内する少なくとも一つのガイド部を含む。それ以外の構成は図1に示した本発明の一実施例によるマイクロエジェクターと同様であるため、これら構成に対する詳細な説明は省略し、以下では相違点を中心に説明する。
【0067】
図6を参照すると、本発明の他の実施例によるマイクロエジェクターはチャンバ113内に形成された隔壁部114において、マイクロエジェクターの長さ方向の端部にガイド部114a、114bが設けられている。
【0068】
隔壁部114は、リストリクタ112からチャンバ113内に移送された流体が隔壁部114により分割された複数の流路それぞれに移送されるように案内する第1のガイド部114bと、隔壁部114により分割された複数の流路それぞれからノズル115へ流体の移送を案内する第2のガイド部114aとを含むことができる。
【0069】
第1の及び第2のガイド部114a、114bはリストリクタ112及びノズル115に向かうよう、端部は鋭い形状で形成されることができる。これは、第1のガイド部114bによるチャンバ113内の分割された空間への流体の移送、及び第2のガイド部114aによるノズル115への流体の移送を容易にするためである。
【0070】
本実施例では隔壁部114の長さ方向の両端部にそれぞれ第1の及び第2のガイド部114a、114bを形成して説明したが、本発明においてガイド部はマイクロエジェクターの長さ方向の一端部のみに形成されてもよい。
【0071】
以下の表1は本発明によるマイクロエジェクターと比較例によるマイクロエジェクターの流体吐出特性を示す。本発明によるマイクロエジェクターはチャンバ内に隔壁部及び突出部を形成してチャンバの高さを減少させる構成、比較例によるマイクロエジェクターは、チャンバ内に隔壁部及び突出部を形成しない従来のチャンバ構成とし、流体の吐出速度及び吐出液滴のボリュームをそれぞれ測定した。なお、圧電アクチュエータの変位は全て120nmにした。
【0072】
【表1】

【0073】
上記表1に示すように、本発明の実施例によるマイクロエジェクターは、チャンバの高さを減少させ、チャンバの空間を複数の部分に分割することで、比較例に比べて液滴ボリュームが約1.56倍、吐出速度が約4倍増加することが分かる。これは圧電アクチュエータの変位の変化によってノズルの出口まで送られる駆動エネルギー(圧力変化)の損失が減少するためである。すなわち、比較例ではチャンバの高さまたは体積の分だけノズルの出口まで送られる駆動エネルギーのダンピングが発生し、駆動エネルギーの損失が大きくなるためである。
【0074】
以上、本発明の望ましい実施形態を詳細に説明したが、これは例示的なものに過ぎず、当業者であればこれから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であることは自明である。例えば、本発明において、マイクロエジェクターの各構成要素を形成する方法は、単に例示されたものであって、多様なエッチング方法が適用可能であり、製造方法の各工程の順序も例示されたものと変わりうる。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲により決まらねばならない。
【符号の説明】
【0075】
100 マイクロエジェクター
110 上部基板
111 流入口
112 リストリクタ
113 チャンバ
114 隔壁部
115 ノズル
120 下部基板
121 突出部
122 リザーバ
130 圧電アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内の上部空間に配置される隔壁部と、前記チャンバ内の下部空間に配置され、前記隔壁部と共に流体の吐出方向と同一方向に流路を形成する突出部とを含む流路プレートと、
前記流路プレートの上部の前記チャンバに対応するように形成され、前記チャンバからノズルへ流体吐出の駆動力を提供するアクチュエータと
を含むマイクロエジェクター。
【請求項2】
前記流路プレートは、前記チャンバから前記ノズルに行くほど幅が狭くなるように形成されることを特徴とする請求項1に記載のマイクロエジェクター。
【請求項3】
前記チャンバ内で前記隔壁部と前記突出部により形成された流路を通過した流体は、1つの流路に合流されて前記ノズルに供給されることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロエジェクター。
【請求項4】
前記ノズルは、前記流体の吐出方向に行くほど幅が狭くなるように形成されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のマイクロエジェクター。
【請求項5】
前記ノズルは、前記流体の吐出方向に行くほど幅が段階的に減少することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のマイクロエジェクター。
【請求項6】
前記隔壁部は、長さ方向の端部に、前記チャンバ内へまたは前記チャンバからの流動を案内するガイド部を含むことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のマイクロエジェクター。
【請求項7】
前記アクチュエータは、前記隔壁部と前記突出部により形成される流路それぞれに対応するように形成されることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載のマイクロエジェクター。
【請求項8】
前記流路プレートは上部基板及び下部基板を含み、
前記隔壁部は前記上部基板に形成され、
前記突出部は前記下部基板に形成されることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載のマイクロエジェクター。
【請求項9】
前記下部基板は、下部シリコン層、絶縁層、上部シリコン層の順に積層して形成され、
前記突出部は、前記上部シリコン層により形成されることを特徴とする請求項8に記載のマイクロエジェクター。
【請求項10】
内部に流体の流路が形成される流路プレートを用意するステップと、
前記流路で流体をノズルに移送するチャンバ内の上部空間に隔壁部を形成し、前記チャンバ内の下部空間に前記隔壁部と共に流体の吐出方向と同一方向に流路を形成する突出部を形成するステップと、
前記流路プレートの上部の前記チャンバに対応する位置に、前記チャンバからノズルへ流体吐出の駆動力を提供するアクチュエータを形成するステップと
を含むマイクロエジェクターの製造方法。
【請求項11】
前記流路プレートを用意するステップは、前記流路プレートを前記チャンバから前記ノズルに行くほど幅が狭くなるように形成することを特徴とする請求項10に記載のマイクロエジェクターの製造方法。
【請求項12】
前記隔壁部と前記突出部を形成するステップは、前記チャンバ内で前記隔壁部と前記突出部により形成された流路を通過した流体が1つの流路に合流されて前記ノズルに供給されるように形成することを特徴とする請求項10または11に記載のマイクロエジェクターの製造方法。
【請求項13】
前記ノズルを前記流体の吐出方向に行くほど幅が狭くなるように形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項10から12の何れか1項に記載のマイクロエジェクターの製造方法。
【請求項14】
前記ノズルを前記流体の吐出方向に行くほど幅が段階的に減少するように形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項10から13の何れか1項に記載のマイクロエジェクターの製造方法。
【請求項15】
前記隔壁部を形成するステップは、長さ方向の端部に、前記チャンバ内へまたは前記チャンバからの流動を案内するガイド部を形成することを特徴とする請求項10から14の何れか1項に記載のマイクロエジェクターの製造方法。
【請求項16】
前記アクチュエータを形成するステップは、前記隔壁部と前記突出部により形成される流路それぞれに対応するように形成することを特徴とする請求項10から15の何れか1項に記載のマイクロエジェクターの製造方法。
【請求項17】
前記流路プレートを用意するステップは、上部基板及び下部基板を用意するステップからなり、
前記隔壁部を形成するステップは、前記上部基板を加工して行われ、
前記突出部を形成するステップは、前記下部基板を加工して行われることを特徴とする請求項10から16の何れか1項に記載のマイクロエジェクターの製造方法。
【請求項18】
前記下部基板を用意するステップは、下部シリコン層、絶縁層、上部シリコン層の順に積層して行われ、
前記突出部を形成するステップは、前記上部シリコン層において前記突出部が形成される部分以外の部分を除去して行われることを特徴とする請求項17に記載のマイクロエジェクターの製造方法。
【請求項19】
前記上部基板と前記下部基板とを接合するステップをさらに含み、
前記上部基板と前記下部基板とを接合するステップはシリコン直接接合により行われることを特徴とする請求項17または18に記載のマイクロエジェクターの製造方法。
【請求項20】
前記上部基板と前記下部基板とを接合するステップをさらに含み、
前記上部基板と前記下部基板とを接合するステップは、前記上部基板の底面と前記下部基板の前記絶縁層の上面とを接合して行われることを特徴とする請求項18に記載のマイクロエジェクターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−245845(P2011−245845A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27775(P2011−27775)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】