説明

マイクロカプセル粉末

本発明は、カプセルコアとしての潜熱蓄熱材料と、その都度モノマーの全質量を基準として、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の1つ又はそれ以上のC1〜C24−アルキルエステル(モノマーI) 10〜100質量%、水に不溶性であるか又は難溶性である二官能性又は多官能性のモノマー(モノマーII) 0〜80質量%及びその他のモノマー(モノマーIII) 0〜90質量%から構成されるカプセル壁とを有し、150〜400μmの範囲内の平均粒度及び直径≧90μmを有する粒子80質量%を有するマイクロカプセル粉末、その製造方法並びに結合建築材料、テキスタイル及び敷き詰め材におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセルコアとしての潜熱蓄熱材料と、その都度モノマーの全質量を基準として、
アクリル酸及び/又はメタクリル酸の1つ又はそれ以上のC1〜C24−アルキルエステル(モノマーI) 10〜100質量%、
水に不溶性であるか又は難溶性である、二官能性又は多官能性のモノマー(モノマーII) 0〜80質量%及び
その他のモノマー(モノマーIII) 0〜90質量%
から構成されているカプセル壁とを有するマイクロカプセル粉末、その製造方法並びに結合建築材料(Bindebaustoffen)、テキスタイル、伝熱流体及び敷き詰め材(Schuettungen)におけるその使用に関する。
【0002】
近年、新規の材料組合せとして、潜熱蓄熱体を有する建築材料が調査されている。それらの機能様式は、周囲とのエネルギー吸収又はエネルギー放出を意味する、固液相転移の際に生じる転移エンタルピーに基づいている。それゆえ、これらは、規定された温度範囲内での温度一定保持のために使用されることができる。潜熱蓄熱材料は温度に応じて液体でも存在するので、これらは直接に建築材料と共に加工されることができない、なぜなら、室内空気への放出並びに建築材料からの分離が懸念されうるからである。
【0003】
欧州特許出願公開(EP-A)第1 029 018号明細書は、結合建築材料、例えばコンクリート又はセッコウにおける、高度に架橋されたメタクリル酸エステルポリマーからなるカプセル壁及び潜熱蓄熱コアを有するマイクロカプセルの使用を教示する。独国特許出願公開(DE-A)第101 39 171号明細書には、せっこうボードにおけるマイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料の使用が記載されている。さらに、先の米国特許出願番号60/573420は、結合剤としてのメラミンホルムアルデヒド樹脂を併用して、チップボードパネルにおけるマイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料の使用を教示する。
【0004】
これらの明細書により使用されるマイクロカプセル粉末は、2〜25μmの範囲内の平均粒度を有する。それゆえ、これらの粉末粒子のサイズは、マイクロカプセル分散液中のカプセルサイズに相当する。しかしながら、そのように微粒状の粉末はしばしば、容易には加工されることができない。その結果が、高い結合剤含量を有する配合物である。さらにまた、これらは、高い微細分に基づいてダスチングする傾向がある。このことはさらに付加的に、作業安全性の分野で不利である。高い微細ダスト分を有する粉末は、特別な作業保護措置(呼吸保護)及び同様にそのような粉末の取り扱いの際に粉体爆発の危険性の分類が高くなることによるさらに付加的な措置を必要とする。
【0005】
先のPCT出願PCT/EP2005/008354は、マイクロカプセル粉末がポリマー結合剤と共に、好ましくは500μmを上回るサイズの粒子へと押し出されることによる粗粒状マイクロカプセル調製物を教示する。しかしながら、粉末の加工が望まれる場合の使用は与えられていない。
【0006】
テキスタイル分野における仕上げ加工としての使用のためには、重要な基準は耐ドライクリーニング薬品性(chemische Reinigungsbestaendigkeit)である。これは塩素化溶剤又は過塩素化溶剤に対する耐性の意味である。従来のマイクロカプセルを用いる試験の際に、欠陥のあるカプセルからのろうの溶出もしくカプセル化されなかったろうに由来する質量減少が観察されうる。しばしば、そのような洗出し損失は5〜15%の範囲内である。
【0007】
故に、本発明の一態様は、より高い耐ドライクリーニング薬品性を有し、カプセルコアとして潜熱蓄熱材料を有するマイクロカプセル粉末を見出すことであった。さらにまた、前記粉末は有利に加工できるべきである。例えば、前記粉末は良好に再分散可能であるべきであり、かつ粉末としての貯蔵の際に粘着する傾向を有するべきではない。
【0008】
それに応じて、カプセルコアとしての潜熱蓄熱材料と、その都度モノマーの全質量を基準として、
アクリル酸及び/又はメタクリル酸の1つ又はそれ以上のC1〜C24−アルキルエステル(モノマーI) 10〜100質量%、
水に不溶性であるか又は難溶性である、二官能性又は多官能性のモノマー(モノマーII) 0〜80質量%及び
その他のモノマー(モノマーIII) 0〜90質量%
から構成されるカプセル壁とを有し、
150〜400μmの範囲内の平均粒度及び直径90μm以上(≧90μm)を有する粒子80質量%を有するマイクロカプセル粉末が見出された。
【0009】
好ましいマイクロカプセル粉末は、フラウンホーファー回折、体積平均値により決定される200μm以上(≧200μm)、特に250μm以上(≧250μm)及び380μm以下(≦380μm)、特に≦350μm以下(≦350μm)の平均粒度を有する。
【0010】
粒子の粒度分布の幅の80%値は、500μm以下(≦500μm)、好ましくは400μm以下(≦400μm)及び特に300μm以下(≦300μm)である。
【0011】
好ましくは、粒子の80質量%が100μm以上(≧100μm)、特に好ましくは120μm以上(≧120μm)の直径を有する。
【0012】
本発明による粉末粒子は、マイクロカプセル、いわゆる一次粒子からなるアグリゲートである。そのような粒子はしばしば、グラニュール又はアグロメレートとも呼ばれる。その際、粉末粒子の表面は、でこぼこであり、かつとげとげしている。一次粒子、すなわち、分散液中のマイクロカプセルは、0.5〜30μm、好ましくは3〜12μmの平均粒度を有する。
【0013】
マイクロカプセル粉末はたいてい、水又は水性物質を用いて加工しながら製造されるので、調製物はなお残量の水を含有しうる。残留水分の量は通常、全質量を基準として0〜約4質量%である。
【0014】
本発明によるマイクロカプセル粉末は本質的には、主に、すなわち95質量%を上回る潜熱蓄熱材料からなるカプセルコアと、カプセル壁としてのポリマーとを有する粒子からなる。その際、カプセルコアは、温度に依存して、固体又は液体である。カプセルの平均粒度(光散乱によるZ平均)は、0.5〜100μm、好ましくは1〜80μm、特に1〜50μmである。カプセルコア対カプセル壁の質量比は一般的に50:50〜95:5である。70:30〜93:7のコア/壁比が好ましい。
【0015】
潜熱蓄熱材料は、定義に従えば、熱伝達が行われるべきである温度範囲内に相転移を有する物質である。好ましくは、潜熱蓄熱材料は、−20〜120℃の温度範囲内の固液相転移を有する。通例、潜熱蓄熱材料は、有機の、好ましくは親油性の、物質である。
【0016】
適した物質として、例示的に次のものを挙げることができる:
・脂肪族炭化水素化合物、例えば、分枝鎖状又は好ましくは線状であり、飽和又は不飽和のC10〜C40−炭化水素、例えばn−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン、n−エイコサン、n−ヘンエイコサン、n−ドコサン、n−トリコサン、n−テトラコサン、n−ペンタコサン、n−ヘキサコサン、n−ヘプタコサン、n−オクタコサン並びに環式炭化水素、例えばシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン;
・芳香族炭化水素化合物、例えばベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、o−又はn−テルフェニル、C1〜C40−アルキル置換された芳香族炭化水素、例えばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ヘキサデシルベンゼン、ヘキシルナフタレン又はデシルナフタレン;
・飽和又は不飽和のC6〜C30−脂肪酸、例えばラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸又はベヘン酸、好ましくは、デカン酸と例えばミリスチン酸、パルミチン酸又はラウリン酸とからなる共融混合物;
・脂肪アルコール、例えばラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、混合物、例えばココヤシ脂肪アルコール並びにα−オレフィンのヒドロホルミル化及び別の反応により得られるいわゆるオキソアルコール;
・C6〜C30−脂肪アミン、例えばデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン又はヘキサデシルアミン;
・エステル、例えば脂肪酸のC1〜C10−アルキルエステル、例えばプロピルパルミタート、メチルステアラート又はメチルパルミタート並びに好ましくはそれらの共融混合物又はメチルシンナマート;
・天然及び合成のろう、例えばモンタン酸ろう、モンタンエステルろう、カルナウバろう、ポリエチレンろう、酸化ろう、ポリビニルエーテルろう、エチレン酢酸ビニルろう又はフィッシャー−トロプシュ法による硬質ろう;
・ハロゲン化炭化水素、例えばクロロパラフィン、ブロモオクタデカン、ブロモペンタデカン、ブロモノナデカン、ブロモエイコサン、ブロモドコサン。
【0017】
さらに、これらの物質の混合物は、所望の範囲の外側で融点降下とならないか又は混合物の融解熱が有意義な使用のために低くなりすぎない限り、適している。
【0018】
例えば、純粋なn−アルカン、80%よりも大きい純度を有するn−アルカン又はテクニカルグレード留出物として発生し、かつそれ自体として市販されているようなアルカン混合物の使用が有利である。
【0019】
さらに、例えば、無極性物質の場合に一部は生じる凝固点降下を防止するために、カプセルコア形成性物質にそれらに可溶性の化合物を添加することは有利でありうる。米国特許(US-A)第5 456 852号明細書に記載されているように、実際のコア物質よりも20〜120Kより高い融点を有する化合物が有利に使用される。適した化合物は、上記で親油性物質として挙げられた脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪アミド並びに脂肪族炭化水素化合物である。これらは、カプセルコアを基準として0.1〜10質量%の量で添加される。
【0020】
蓄熱体が望まれる温度範囲に応じて、潜熱蓄熱材料が選択される。例えば、穏やかな気候における建築材料中の蓄熱体のためには、好ましくは、固液相転移が0〜60℃の温度範囲内である潜熱蓄熱材料が使用される。例えば、通例、室内使用のためには、15〜30℃の転移温度を有する個々の物質又は混合物が選択される。例えば欧州特許出願公開(EP-A)第333 145号明細書に記載されているような、蓄熱媒体としてのソーラー用途の際に又は透明な断熱材の過熱回避のためには、とりわけ、30〜60℃の転移温度が適している。
【0021】
好ましい潜熱蓄熱材料は、脂肪族炭化水素、特に好ましくは上記で例示的に挙げられた脂肪族炭化水素である。特に、炭素原子14〜20個を有する脂肪族炭化水素並びにそれらの混合物が好ましい。
【0022】
マイクロカプセルのカプセル壁は、モノマーIとしてのアクリル酸及び/又はメタクリル酸の1つ又はそれ以上のC1〜C24−アルキルエステル10〜100質量%、好ましくは30〜95質量%から構成されている。さらに、前記ポリマーは、水に不溶性であるか又は難溶性であるモノマーIIとしての二官能性又は多官能性のモノマー80質量%まで、好ましくは5〜60質量%、特に10〜50質量%を重合導入された形で含有していてよい。それに加えて、前記ポリマーは、その他のモノマーIIIを90質量%まで、好ましくは50質量%まで、特に30質量%まで重合導入された形で含有していてよい。
【0023】
モノマーIとして、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のC1〜C24−アルキルエステルが適している。特に好ましいモノマーIは、メチルアクリラート、エチルアクリラート、n−プロピルアクリラート及びn−ブチルアクリラート及び/又は相応するメタクリラートである。イソプロピルアクリラート、イソブチルアクリラート、s−ブチルアクリラート及びt−ブチルアクリラート及び相応するメタクリラートが好ましい。さらにメタクリロニトリルを挙げることができる。一般的にメタクリラートが好ましい。
【0024】
適したモノマーIIは、水に不溶性であるか又は難溶性であるが、しかし親油性物質に良好ないし限定された溶解度を有する二官能性又は多官能性のモノマーである。難溶性は、20℃で60g/l未満の溶解度であると理解されるべきである。二官能性又は多官能性のモノマーは、少なくとも2個の非共役エチレン系二重結合を有する化合物であると理解される。とりわけ、重合中にカプセル壁の架橋を引き起こすジビニルモノマー及びポリビニルモノマーが考慮に値する。
【0025】
好ましい二官能性モノマーは、ジオールとアクリル酸又はメタクリル酸とのジエステル、さらにこれらのジオールのジアリルエーテル及びジビニルエーテルである。
【0026】
好ましいジビニルモノマーは、エタンジオールジアクリラート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリラート、1,3−ブチレングリコールジメタクリラート、メタリルメタクリルアミド及びアリルメタクリラートである。プロパンジオールジアクリラート、ブタンジオールジアクリラート、ペンタンジオールジアクリラート及びヘキサンジオールジアクリラート又は相応するメタクリラートが特に好ましい。
【0027】
好ましいポリビニルモノマーは、トリメチロールプロパントリアクリラート及びトリメチロールプロパンメタクリラート、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル及びペンタエリトリトールテトラアクリラートである。
【0028】
モノマーIIIとして、その他のモノマーが考慮に値し、モノマーIIIa、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びビニルピリジンが好ましい。
【0029】
水溶性モノマーIIIb、例えばアクリロニトリル、メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリラート及び2−ヒドロキシエチルメタクリラート及びアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が特に好ましい。それに加えて、特にN−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリラート及びジエチルアミノエチルメタクリラートを挙げることができる。
【0030】
好ましい別の実施態様によれば、壁形成性ポリマーは、メタクリル酸30〜90質量%、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、好ましくはメタクリル酸メチル、t−ブチルメタクリラート、フェニルメタクリラート及びシクロヘキシルメタクリラート10〜70質量%、及び別のエチレン系不飽和モノマー0〜40質量%から形成される。これらの別のエチレン系不飽和モノマーは、この実施態様のためにはこれまで挙げられていないモノマーI、II及び/又はIIIであってよい。これらは、通例、この実施態様の形成されたマイクロカプセルへの本質的な影響を有しないので、それらの含分は好ましくは20質量%未満(<20質量%)、特に10質量%未満(<10質量%)である。そのようなマイクロカプセル分散液並びにそれらの製造は、欧州特許出願公開(EP-A)第1 251 954号明細書に記載されており、前記明細書に明らかに関連づけられる。
【0031】
マイクロカプセル分散液は、いわゆるインサイチュー(in-situ)重合により製造されることができ、かつこれから本発明による粉末へ変換される。
【0032】
好ましいマイクロカプセル分散液並びにそれらの製造は、欧州特許出願公開(EP-A)第457 154号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第10 139 171号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第102 30 581号明細書及び欧州特許出願公開(EP-A)第1 321 182号明細書から知られており、前記明細書に明らかに参照される。例えば、前記マイクロカプセルは、モノマー、ラジカル開始剤、保護コロイド及びカプセル封入すべき親油性物質から、安定な水中油型乳濁液が製造され、これらのカプセルが分散相として存在するようにして製造される。引き続いて、モノマーの重合は加熱により引き起こされ、かつこの重合はさらに温度上昇させることにより制御され、その際に生じるポリマーは、親油性物質を取り囲むカプセル壁を形成する。
【0033】
ラジカル重合反応のためのラジカル開始剤として、常用のペルオキソ化合物及びアゾ化合物は、モノマーの質量を基準として0.2〜5質量%の量で好都合には使用されることができる。
【0034】
ラジカル開始剤の集合状態及びその溶解挙動に応じて、それ自体として、しかしながら好ましくは溶液、乳濁液(液体中の液体)又は懸濁液(液体中の固体)として供給されることができ、それにより、特に小さな物質量のラジカル開始剤が正確に計量供給されることができる。
【0035】
好ましいラジカル開始剤として、t−ブチルペルオキシネオデカノアート、t−アミルペルオキシピバラート、ジラウロイルペルオキシド、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチル)バレロニトリル、2,2′−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、過酸化ジベンゾイル、t−ブチルペル−2−エチルヘキサノアート、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン及びクメンヒドロペルオキシドを挙げることができる。
【0036】
特に好ましいラジカル開始剤は、ジ−(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)−ペルオキシド、4,4′−アゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルペルピバラート及びジメチル−2,2−アゾビスイソブチラートである。これらは、30〜100℃の温度範囲内で10時間の半減期を有する。
【0037】
通例、重合を、20〜100℃で、好ましくは40〜95℃で実施する。所望の親油性物質に依存して、水中油型乳濁液は、コア材料が液状/油状である温度で形成されるべきである。相応して、崩壊温度がこの温度を上回るラジカル開始剤が選択されなければならず、かつ重合が同様にこの温度を2〜50℃上回り実施されなければならないので、場合により、崩壊温度が親油性物質の融点を上回るラジカル開始剤が選択される。
【0038】
融点ないし約60℃を有する親油性物質のための通常の変法は、60℃で開始する反応温度であり、反応の過程で85℃に高められる。有利なラジカル開始剤は、45〜65℃の範囲内で10時間の半減期を有し、例えばt−ブチルペルピバラートである。
【0039】
60℃を上回る融点を有する親油性物質のための別の変法によれば、相応してより高い反応温度で開始する温度プログラムが選択される。約85℃の初期温度については、70〜90℃の範囲内で10時間の半減期を有するラジカル開始剤、例えばt−ブチルペル−2−エチルヘキサノアートが好ましい。
【0040】
好都合には、重合は常圧で行われるが、しかしながら、例えば100℃を上回る重合温度で減圧又は少し高められた圧力でも、すなわち例えば0.5〜5barの範囲内で、操作されることができる。
【0041】
重合の反応時間は通常、1〜10時間、たいてい2〜5時間である。
【0042】
好ましくは、マイクロカプセルは、水中油型乳濁液を徐々に加熱することにより形成される。その際、徐々にとは、温度上昇により反応がラジカル開始剤の崩壊により引き起こされ、かつ連続的に又は周期的に行われることができるさらなる加熱により重合が制御されることであると理解されるべきである。重合の速度は、その際、温度の選択及びラジカル開始剤の量により制御されることができる。これは、上昇する温度を伴うプログラムを用いて好ましくは行われる。全重合時間は、このためには、2つ又はそれ以上の期間に分割されることができる。第一の重合時間は、重合開始剤のゆっくりとした崩壊により特徴付けられている。第二の重合時間及び場合によりさらなる重合時間内で、反応混合物の温度は、重合開始剤の崩壊を促進するために高められる。温度は、1つの工程で又は複数の工程で又は連続的に線形又は非線形で高められることができる。重合の開始と終了との間の温度差は50℃までであってよい。一般的に、この差は3〜40℃、好ましくは3〜30℃である。
【0043】
最終温度に達した後に、重合は好都合には、残存モノマー含量を低下させるために、なお大凡2時間までの時間にわたり続けられる。90〜99質量%の転化率での実際の重合反応に引き続いて、通例、においキャリヤー、例えば残存モノマー及びその他の有機揮発性成分が大幅に不含である水性マイクロカプセル分散液にすることは有利である。このことは、本来知られた方法で物理的に、蒸留による除去(特に水蒸気蒸留による)によるか又は不活性ガスでのストリッピングにより達成されることができる。さらに、化学的に、例えば国際公開(WO)第9924525号パンプレットに記載されているように、有利にレドックス開始される重合により、例えば独国特許出願公開(DE-A)第4 435 423号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第4419518号明細書及び独国特許出願公開(DE-A)第4435422号明細書に記載されているように、行われることができる。
【0044】
このようにして、0.5〜30μmの範囲内の平均粒度を有するマイクロカプセルを有するマイクロカプセル分散液を製造することができ、その際に粒度は、本来知られた方法でせん断力、撹拌速度、保護コロイド及びその濃度を介して調節されることができる。
【0045】
好ましい保護コロイドは水溶性ポリマーである、なぜなら、これらは、73mN/mから最大45〜70mN/mまでに水の表面張力を低下させ、ひいては密閉されたカプセル壁の形成を保証し、ひいては分散液中で0.5〜30μm、好ましくは2〜12μmの範囲内の平均粒度を有するマイクロカプセルの形成を可能にするからである。
【0046】
通例、マイクロカプセルは、アニオン性並びに中性であってよい少なくとも1つの有機保護コロイドの存在で製造される。また、アニオン性及び非イオン性の保護コロイドが併用されることもできる。好ましくは、無機保護コロイドは、場合により有機保護コロイド又は非イオン性保護コロイドとの混合物で、使用される。
【0047】
別の一実施態様によれば、有機の中性保護コロイドが好ましい。
【0048】
有機の中性保護コロイドは、セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンのコポリマー、ゼラチン、アラビアゴム、キサンタン、アルギン酸ナトリウム、カゼイン、ポリエチレングリコール、好ましくはポリビニルアルコール及び部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル並びにメチルヒドロキシプロピルセルロースである。
【0049】
アニオン性保護コロイドとして、ポリメタクリル酸、スルホエチルアクリラート及びスルホエチルメタクリラート、スルホプロピルアクリラート及びスルホプロピルメタクリラート、N−(スルホエチル)−マレインイミド、2−アクリルアミド−2−アルキルスルホン酸、スチレンスルホン酸並びにビニルスルホン酸のコポリマーが適している。
【0050】
好ましいアニオン性保護コロイドは、ナフタレンスルホン酸及びナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物並びにとりわけポリアクリル酸及びフェノールスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物である。
【0051】
アニオン性及び非イオン性の保護コロイドは乳濁液の水相を基準として、通例、0.1〜10質量%の量で使用される。
【0052】
極めて微細な固体粒子により安定化を可能にし、かつ水に不溶性であるが、しかし分散可能であるか、又は不溶性でありかつ水中へ分散不可能であるが、しかし親油性物質により湿潤可能である、無機保護コロイド、いわゆるPickering系が好ましい。
【0053】
作用様式及びその使用は、欧州特許出願公開(EP-A)第1 029 018号明細書並びに欧州特許出願公開(EP-A)第1 321 182号明細書に記載されており、前記明細書の内容に明らかに関連づけられる。
【0054】
Pickering系は、その際、固体粒子単独からか又はさらに付加的に、水中への粒子の分散性又は親油性相による粒子の湿潤性を改善する助剤からなっていてよい。
【0055】
無機固体粒子は、金属塩、例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、ニッケル、チタン、アルミニウム、ケイ素、バリウム及びマンガンの塩、酸化物及び水酸化物であってよい。水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム及び硫化亜鉛を挙げることができる。ケイ酸塩、ベントナイト、ヒドロキシアパタイト及びハイドロタルサイトを同様に挙げることができる。高分散シリカ、ピロリン酸マグネシウム及びリン酸三カルシウムが特に好ましい。
【0056】
Pickering系は、まず最初に水相中へ添加されることができ、並びに水中油型の撹拌される乳濁液に添加されることができる。幾つかの微細な固体粒子は、欧州特許出願公開(EP-A)第1 029 018号明細書並びに欧州特許出願公開(EP-A)第1 321 182号明細書に記載されているように、沈殿により製造される。
【0057】
高分散シリカは、微細な固体粒子として水中へ分散されることができる。しかし、水中のシリカのいわゆるコロイダル分散液を使用することも可能である。コロイダル分散液は、シリカのアルカリ性の水性混合物である。アルカリ性のpH範囲内で粒子は膨潤されており、かつ水中で安定である。Pickering系としてのこれらの分散液の使用のためには、水中油型乳濁液のpH値が酸でpH 2〜7に調節される場合が有利である。
【0058】
無機保護コロイドは通例、水相を基準として、0.5〜15質量%の量で使用される。
【0059】
一般的に、有機の中性保護コロイドは、水相を基準として、0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%の量で使用される。
【0060】
好ましくは、安定な水中油型乳濁液の製造のための分散条件は、本来知られた方法で、油滴が所望のマイクロカプセルのサイズを有するように選択される。
【0061】
本発明によるマイクロカプセル粉末は、例えば、マイクロカプセル分散液の噴霧乾燥により得られる。好ましくは、水性ポリマー分散液の噴霧は、熱気流中で一流体ノズルを用いて行われる。出口での液滴サイズは、粉末粒子が150〜400μmの範囲内の平均粒度及び粒子の80質量%がサイズ90μm以上(≧90μm)を有するマイクロカプセル粉末が生じるように選択される。マイクロカプセル分散液の粘度に依存して、当業者は、ノズルの直径及び物質流の上流圧(Vordruck)を選択する。上流圧が高ければ高いほど、より小さな液滴が発生される。通常、マイクロカプセル分散液は、2〜200barの範囲内で供給される。有利に、旋回発生器(Drallerzeuger)を有する一流体ノズルが使用される。旋回発生器の選択を通じて、液滴の大きさ及び噴霧角にさらに付加的な影響を与えることができる。例えば、噴霧角に影響を与える旋回室からなる典型的な構成及びスループットに影響を与える多孔板を有するDelavan社の一流体ノズルを使用することができる。
【0062】
一般的に、熱気流の入口温度が100〜200℃、好ましくは120〜180℃の範囲内であり、かつ熱気流の出口温度が30〜110℃、好ましくは50〜90℃の範囲内であるように行われる。入口温度と出口温度との間の温度差は、好ましくは少なくとも50℃、より好ましくは少なくとも60℃及び特に好ましくは少なくとも70℃である。ガス流からの微細部分の分離は通常、サイクロン又はフィルター分離器の使用下に行われる。その際、微細部分は好ましくは再分散され、かつ物質流中へ返送される。噴霧される水性ポリマー分散液及び熱気流は、好ましくは並流で導かれる。
【0063】
一変法によれば、場合により残留水分を搬出するために、乾燥器に後接続して、流動床を接続することが可能である。噴霧乾燥に流動床乾燥が続いている方法が好ましい、それというのも、これらは、より少ない微細分を有するマイクロカプセル粉末をもたらすからである。
【0064】
スプレー塔として、例えば、12〜30mの塔高さ及び3〜8mの幅を有する、Anhydro、Miro又はNubilosa社の乾燥器が使用されることができる。乾燥空気のスループットは、そのようなスプレー塔のためには、典型的には20〜30t/hの範囲内である。マイクロカプセル分散液のスループットはついで、通例1〜1.5t/hである。
【0065】
さらに、粉末がスプレー塔から搬出される後処理の温度によっても、粉末特性に影響を与えることができる。典型的には20〜30℃、まれに40℃より高い温度範囲に調節される。
【0066】
場合により、噴霧乾燥のために、噴霧助剤が、噴霧乾燥を容易にするため、又は特定の粉末特性、例えばダストの少なさ、流動性又は改善される再分散性に調節するために、添加される。当業者には多数の噴霧助剤がよく知られている。これらの例は、独国特許出願公開(DE-A)第19629525号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第19629526号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第2214410号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第2445813号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第407889号明細書又は欧州特許出願公開(EP-A)第784449号明細書に見出される。有利な噴霧助剤は、例えば、ポリビニルアルコール型の水溶性ポリマー又は部分加水分解されたポリ酢酸ビニル、セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース及びメチルヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンのコポリマー、ゼラチン、好ましくはポリビニルアルコール及び部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル並びにメチルヒドロキシプロピルセルロースである。
【0067】
好ましくは、マイクロカプセル分散液の製造の際に、有機の中性保護コロイドを用いて操作される、それというのも、この場合に噴霧乾燥のための噴霧助剤の添加が不必要だからである。有機の中性保護コロイドは、さらに加えて噴霧助剤として作用するので、それらの使用は特に有利である。
【0068】
本発明によるマイクロカプセル粉末は、良好な耐ドライクリーニング薬品性を有する。より良好な耐ドライクリーニング性は、噴霧乾燥中に形成し、カプセル化されなかったろう残留物が閉じ込められる、本発明による粉末中の空間に起因されうると考えられる。
【0069】
さらに、マイクロカプセル粉末は、結合剤分散液中で及び多種多様な充填剤と共に、その多種多様な使用の大きな幅にわたっても良好に再分散可能である。さらにまた、本発明によるマイクロカプセル粉末は、粉末のより長い貯蔵後にも、通常の貯蔵の際の粘着する傾向がない。
【0070】
本発明によるマイクロカプセル粉末の使用は、多岐にわたっている。例えば、有利に、テキスタイル、例えば編織布、テキスタイルコーティング、不織布(例えば芯(Vliesstoffe))等中へ配合されることができる。
【0071】
さらに幅広い使用分野は、鉱物質結合剤、ケイ酸塩結合剤又はポリマー結合剤を含有する結合建築材料である。その際、成形体とコーティング組成物とは区別される。例えば、これらは、水性材料及びしばしばアルカリ性の水性材料に比較して、それらの加水分解安定性の点で優れている。
【0072】
鉱物質成形体は、鉱物質結合剤、水、骨材並びに場合により助剤からなる混合物から、成形後に、鉱物質結合剤−水混合物が、時間の関数として、場合により高められた温度の作用下に、硬化することにより生じる成形体であると理解される。鉱物質結合剤は一般的に知られている。これらは微粒状の無機物質、例えば石灰、セッコウ、粘土、ローム及び/又はセメントであり、これらは水と混ぜ合わせることにより、それらのすぐ使用できる形へ変換され、その際に後者は、空気中で又は水中でも、場合により高められた温度の作用下に、放置された際に、時間の関数として、石状に硬化する。
【0073】
骨材は通例、粒状又は繊維状の天然又は人工の岩石(れき、砂、ガラス繊維又は鉱物繊維)からか、特別な場合にはまた金属又は有機骨材からか又は前記の骨材の混合物からなり、それぞれの使用目的に本来知られた方法で適合されている粒度又は繊維長を有する。しばしば、着色の目的のためには、骨材として有色顔料も併用される。
【0074】
助剤として、特に、硬化を促進するか又は遅延するか、又は硬化した鉱物質成形体の弾性又は多孔度に影響を及ぼすそのような物質が考慮に値する。これらは特に、例えば、米国特許(US-A)第4 340 510号明細書、英国特許(GB-PS)第15 05 558号明細書、米国特許(US-A)第3 196 122号明細書、米国特許(US-A)第3 043 790号明細書、米国特許(US-A)第3 239 479号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第43 17 035号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第43 17 036号明細書、特開平3-131 533号公報(JP-A 91/131 533)及びその他の明細書から公知であるようなポリマーである。
【0075】
特別には、本発明によるマイクロカプセル粉末は、セメント70〜100質量%及びセッコウ0〜30質量%からなる鉱物質結合剤を含有する鉱物質の結合建築材料(モルタル状調製物)の改質に適している。このことは特に、セメントが唯一の鉱物質結合剤である場合に当てはまる。本発明による作用は、その際、セメントの種類から本質的に独立している。目的に応じて、すなわち、高炉セメント、オイルシェールセメント、ポルトランドセメント、疎水化されたポルトランドセメント、急結セメント、膨張セメント又はアルミナセメントが使用されることができ、その際に、ポルトランドセメントの使用が特に好都合であると判明している。さらなる詳細に関しては、独国特許出願公開(DE-A)第19 623 413号明細書を参照することができる。典型的には、鉱物質の結合建築材料の乾燥組成物は、鉱物質結合剤の量を基準として、マイクロカプセル0.1〜20質量%を含有する。
【0076】
好ましくは、本発明によるマイクロカプセル粉末は、鉱物質コーティング組成物、例えばプラスターにおける添加剤として使用される。屋内分野用のそのようなプラスターは、通常、結合剤としてのセッコウから構成されている。通例、セッコウ/マイクロカプセルの質量比は95:5〜70:30である。より高いマイクロカプセル含分ももちろん可能である。
【0077】
屋外分野、例えば外部ファサード又は湿った空間用のコーティングは、結合剤としてセメント(セメント状のプラスター)、石灰又は水ガラス(鉱物質プラスター又はケイ酸塩プラスター)又はプラスチック分散液(合成樹脂プラスター)を、充填剤及び場合により着色のための顔料と共に含有していてよい。全固体のマイクロカプセル含分は、せっこうプラスターのための質量比に相当する。
【0078】
さらに、本発明によるマイクロカプセル粉末は、ポリマー成形体又はポリマーコーティング組成物における添加剤として適している。これらは、加工の際にマイクロカプセルが破壊されない熱可塑性及び熱硬化性のプラスチックであると理解されるべきである。例は、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン及びシリコーン樹脂及びまた、溶剤ベース、ハイソリッドベースの塗料、粉体塗料又は水性塗料及び分散フィルムである。マイクロカプセル粉末は、プラスチックフォーム及び繊維への配合のためにも適している。フォームの例は、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ラテックスフォーム及びメラミン樹脂フォームである。
【0079】
さらに、本発明によるマイクロカプセル粉末は、リグノセルロース含有成形体、例えばチップボードパネルにおける添加剤として適している。
【0080】
さらに、有利な効果は、本発明によるマイクロカプセル粉末が発泡される鉱物質成形体中で加工される場合に、達成されることができる。
【0081】
さらに、本発明によるマイクロカプセル粉末は、せっこうボードの改質のために適している。その際に、せっこうボードの全質量(乾燥物質)を基準として、マイクロカプセル粉末好ましくは5〜40質量%、特に20〜35質量%が配合される。マイクロカプセル化された潜熱蓄熱体を有するせっこうボードの製造は、一般的に知られており、かつ国際公開(WO-A)第1421243号パンフレットに記載されており、前記明細書に明らかに関連づけられる。その際、セルロースベースからなる厚紙の代わりに、"せっこうボード"用の両側カバーとしての代替的な繊維状構造体も使用されることができる。代替材料は、例えばポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリラート、ポリアクリロニトリル等からなるポリマー繊維である。ガラス繊維も適している。代替材料は、織物として及びいわゆる"不織布"として、すなわちフリース状構造体として使用されることができる。そのような建築ボードは、例えば、米国特許(US)第4,810,569号明細書、米国特許(US)第4,195,110号明細書及び米国特許(US)第4,394,411号明細書から知られている。
【0082】
さらに、本発明によるマイクロカプセル粉末は、伝熱流体の製造に適している。伝熱流体という概念は、本明細書の範囲内で、熱輸送用の液体並びに冷時輸送用の液体、すなわち冷却液の意味である。熱エネルギーの伝達の原理は、双方の場合に同じであり、かつ単に伝達方向のみが相違する。
【0083】
そのような伝熱流体は、本発明によれば、熱を吸収する部分及び熱を放出する部分、その間に伝熱流体が循環し、及び場合により伝熱流体の輸送のためのポンプを含む系において使用される。伝熱流体は、その際、できるだけ迅速な熱吸収、ひいては熱除去を達成するために、熱源のすぐそばを通り過ぎる。さらに循環路が熱を放出する部分に進んでいくと、そこで、今度はより冷たい熱吸収体への熱放出が行われる。そのような熱交換器循環路中で、伝熱流体は対流により単独で運動することができる。好ましくは、少なくとも1つのポンプが、迅速なエネルギー除去又は熱源と消費物との間のより迅速な熱交換を保証するためにも、使用される。最大の熱輸送及び伝熱のための制御可能性は、伝熱流体の速度、選択、ひいては熱容量及びそれぞれの潜熱蓄熱材料の量及び伝熱流体のこれらが運動している間のできるだけ低い粘度である。潜熱蓄熱材料の選択の際に、熱源の温度が伝熱流体の融点を上回り、かつ熱吸収体の温度が、それらの凝固点を下回ることが顧慮されるべきである。融点及び凝固点は、その際、必ずしも同じである必要はない、なぜなら、既に前記のように凝固点降下ともなりうるからである。
【0084】
そのような動的な系の種類及び機能様式は、当業者には、例えばUllmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版CD-Rom版、"Heat Exchange"から十分に知られている。これらは、例えば、建築物用の加熱系及び冷却系、自動車用の加熱系及び冷却系において、ソーラー設備において、冷却装置及び冷凍装置において、工業用熱交換器として、"パーソナルコンフォートシステム(personal comfort systems)"として、及びミクロクリマ(Mikroklima)加熱系及び冷却系のために使用される。
【0085】
本発明によるマイクロカプセル粉末は、このためには常用の液体、例えば水中に分散される。さらに、例えばグリコール、グリコールエーテル又はその他の有機溶剤を含有する、常用の水含有の冷却剤又は冷却器保護剤の配合物中で使用されることができる。そのような伝熱流体は、さらに、添加剤、例えば安定剤、腐食防止剤又は増粘剤を含有していてよい。
【0086】
本発明による伝熱流体は、さらに、静的な系において使用されることができる。そのような系は、例えば、米国特許(US)第5,007,478号明細書に記載されており、その説明は本明細書に併せて包含されているものとする。静的な系を用いる冷却は、例えば、電子部品及びコンピュータの場合に、それらの熱を除去するために使用される。伝熱流体は、その際、容器中へ閉じ込められている。エネルギー交換は、ここでも、容器と結合されている熱交換体を介して、又は容器中の熱交換体を介して及び単純に容器表面自体を介して行われる。ここでは、これらは短期間のエネルギーピークを吸収するか、又はより長い期間にわたる温度平衡を保証する。
【0087】
マイクロカプセルは、分散液としても卓越した機械的性質を示す。これらはポンプ条件下でも安定である。カプセルは、機械的負荷に対して安定性を示し、かつ10000rpmの機械的なせん断速度を克服する。さらに、これらは、良好な加水分解安定性を有する。
【0088】
さらにまた、本発明によるマイクロカプセル粉末は、敷き詰め材に適している。
【実施例】
【0089】
次の例は、本発明をより詳細に説明するものである。例における百分率の記載は、質量パーセントである。
マイクロカプセル粉末の粒度は、Malvern Particle Sizer 型式3600Eを用いて、文献に文書化されている標準測定法に従い決定した。
【0090】
軟質カプセルの耐ドライクリーニング薬品性の決定方法
このためには、テトラクロロエチレンへのマイクロカプセル粉末の溶解度を決定する。そのためには、マイクロカプセル粉末5gをテトラクロロエチレン45gと、マグネチックスターラーを用いて室温で2時間撹拌し、引き続いてひだ付き濾紙を通して粉末を分離する。テトラクロロエチレンとの撹拌により、流れ出たろうは溶解するが、しかしカプセル壁は溶解しない。引き続いて、金属小皿中の溶液の秤量分及び溶剤の蒸発後の残留物を決定する。これから、ドライクリーニングの際の粉末からのろうの百分率による損失を算出することができる。
【0091】
マイクロカプセル分散液の製造
例1:
水相:
水 1304kg
ヒドロキシプロピルセルロース(水中5%) 664kg
ポリビニルアルコール(加水分解度:79%) 166kg
亜硝酸ナトリウム 7.3kg
油相
オクタデカン 1507kg
パラフィンろう(融点:68〜70℃) 31.5kg
メタクリル酸 34kg
メタクリル酸メチル 68.5kg
ブタンジオールアクリラート 68.5kg
t−ブチルペルピバラート 2.45kg
フィード1:
t−ブチルヒドロペルオキシド、水中10% 18.79kg
フィード2:
アスコルビン酸 1.05kg、カセイソーダ(水中25%) 15kg、水 100kg。
【0092】
室温で前記の水相を装入し、10%硝酸でpH 4に調節した。油相の添加後に、高速ディソルバー撹拌機を用いて4200rpmで分散させた。分散40分後に、粒度2〜12μm直径の安定な乳濁液が得られた。乳濁液を、アンカー撹拌機を用いて撹拌しながら40分で56℃に加熱し、さらに20分かけて70℃に、さらに60分かけて85℃に加熱した。生じたマイクロカプセル分散液を、撹拌しながら70℃に冷却し、フィード1を添加した。フィード2を、撹拌しながら70℃で80分にわたり計量供給して添加した。引き続いて冷却した。生じたマイクロカプセル分散液は、43%の固体含量及び平均粒度D(4.3)=9.0μm(フラウンホーファー回折を用いて測定、体積平均値)を有していた。
【0093】
例2:
水相:
水 500kg
メチルセルロース(水中1%) 20kg
ポリビニルアルコール(加水分解度:79%) 166kg
亜硝酸ナトリウム溶液(水中2.5%) 2.1kg
油相
ヘプタデカン 440kg
パラフィンろう(融点:68〜70℃) 9kg
メタクリル酸メチル 77kg
ブタンジオールアクリラート 33kg
t−ブチルペルピバラート 1.35kg
フィード1:
t−ブチルヒドロペルオキシド、水中70% 1.09kg
フィード2:
アスコルビン酸 0.35kg、カセイソーダ 24g、水 56kg。
【0094】
室温で前記の水相を装入し、10%硝酸でpH 4に調節した。油相の添加後に、高速ディソルバー撹拌機を用いて4000rpmで分散させた。分散50分後に、粒度2〜12μm直径の安定な乳濁液が得られた。乳濁液を、アンカー撹拌機を用いて撹拌しながら30分で56℃に加熱し、さらに20分かけて70℃に、さらに60分かけて85℃に加熱した。生じたマイクロカプセル分散液を、撹拌しながら70℃に冷却し、フィード1を添加した。フィード2を、撹拌しながら70℃で80分かけて計量供給して添加した。引き続いて冷却した。生じたマイクロカプセル分散液は、47%の固体含量及び平均粒度D(4.3)=6.0μm(フラウンホーファー回折を用いて測定、体積平均値)を有していた。
【0095】
例3:
水相:
水 330kg
ポリビニルアルコール(加水分解度:80%) 180kg
亜硝酸ナトリウム(水中2.5%) 1.8kg
油相
n−テトラデカン 440kg
パラフィンろう(融点:68〜70℃) 9kg
メタクリル酸 15kg
メタクリル酸メチル 77kg
ブタンジオールアクリラート 28kg
t−ブチルペルピバラート 1.35kg
フィード1:
t−ブチルヒドロペルオキシド、水中70% 1.09kg
フィード2:
アスコルビン酸 0.34kg、水 56kg。
【0096】
室温で前記の水相を装入した。油相の添加後に、高速ディソルバー撹拌機を用いて4500rpmで40℃で分散させた。分散40分後に、粒度2〜12μm直径の安定な乳濁液が得られた。乳濁液を、アンカー撹拌機を用いて撹拌しながら60分で40℃から70℃に加熱し、さらに60分かけて70℃から85℃に加熱した。生じたマイクロカプセル分散液を、撹拌しながら70℃に冷却し、フィード1を添加した。フィード2を、撹拌しながら70℃で100分かけて計量供給して添加した。引き続いて冷却した。生じたマイクロカプセル分散液は、49.5%の固体含量及び平均粒度4.9μm(フラウンホーファー回折を用いて測定、体積平均値)を有していた。
【0097】
例4:
水相:
水 1304kg
ヒドロキシエチルセルロース(水中5%) 670kg
ポリビニルアルコール(加水分解度:79%) 180kg
亜硝酸ナトリウム 7.9kg
油相
ステアリン酸エチル 1504kg
メタクリル酸メチル 68.5kg
ブタンジオールアクリラート 68.5kg
t−ブチルペルピバラート 2.45kg
フィード1:
t−ブチルヒドロペルオキシド、水中10% 18.79kg
フィード2:
アスコルビン酸 1.05kg、カセイソーダ(水中25%) 15kg、水 100kg。
【0098】
室温で前記の水相を装入した。油相の添加後に、高速ディソルバー撹拌機を用いて3800rpmで分散させた。分散40分後に、粒度2〜12μm直径の安定な乳濁液が得られた。乳濁液を、アンカー撹拌機を用いて撹拌しながら40分で56℃に加熱し、さらに20分かけて70℃に、さらに60分かけて85℃に加熱した。生じたマイクロカプセル分散液を、撹拌しながら70℃に冷却し、フィード1を添加した。フィード2を、撹拌しながら70℃で80分にわたり計量供給して添加した。引き続いて冷却した。生じたマイクロカプセル分散液は、43%の固体含量及び平均粒度6.0μm(フラウンホーファー回折を用いて測定、体積平均値)を有していた。
【0099】
例5
水相:
水 572g
pH 9.3での水中のSiO2の50%コロイダル分散液(平均粒度108.6nm、光散乱によるZ平均値) 80g
2.5%亜硝酸ナトリウム水溶液 2.1g
メチルセルロース、1%水溶液(水中2%での粘度15000mPas) 20g
油相:
18〜C20−アルカン(テクニカルグレード留出物) 440g
メタクリル酸メチル 77g
ブタンジオールジアクリラート 33g
エチルヘキシルチオグリコラート 0.76g
t−ブチルペルピバラート 1.35g
フィード1:t−ブチルヒドロペルオキシド、水中70% 1.09g
フィード2:アスコルビン酸 0.34g、NaOH 0.024g、H2O 56g。
【0100】
室温で前記の水相を装入し、10%硝酸3gでpH 4に調節した。油相の添加後に、高速ディソルバー撹拌機を用いて4200rpmで分散させた。分散40分後に、粒度2〜12μm直径の安定な乳濁液が得られた。乳濁液を、アンカー撹拌機を用いて撹拌しながら4分で56℃に加熱し、さらに20分かけて58℃に、さらに60分かけて71℃に及びさらに60分かけて71℃から85℃に加熱した。生じたマイクロカプセル分散液を、撹拌しながら70℃に冷却し、フィード1を添加した。フィード2を、撹拌しながら70℃で80分かけて計量供給して添加した。引き続いて冷却した。生じたマイクロカプセル分散液は、46.8%の固体含量及び平均粒度D(4.3)=9.5μm(フラウンホーファー回折を用いて測定、体積平均値)を有していた。
【0101】
噴霧乾燥のための例
3つの一流体ノズルを有するノズル組合せを使用した。Delavan社のノズル組合せの構造部材は、一方では旋回室及び他方では与えられた塔パラメーターでのスループットに影響を与えるための多孔板である。スプレー塔は、24mの高さで5mの直径を有し、かつ塔中央で測定された0.5〜3mbarの減圧で、蒸気を用いて加熱された25t/hまでの乾燥空気と並流法で運転される。乾燥の温度差は70℃であり、その際に生成物搬出温度は"後処理"により約25℃である。生成物搬出は、サイクロンを通じて行われる。サイクロン物(微細分)を再分散させ、再び供給する。
【0102】
4mm(フォードカップ)中の30secの粘度を有するマイクロカプセル分散液を上流圧20〜28barでノズル組合せを通して噴霧した。
【0103】
例6
平均粒度約300μm(直径下限(80%値):110μm、分布幅(80%)100〜400μm=300μm)を有するマイクロカプセル粉末は、1%未満(<1%)(複数の試料の場合に0.5〜0.8%)の洗出し損失となった。
【0104】
例7(本発明によらない)
100μmの平均粒度(直径下限(80%値):50μm、分布幅(80%)40〜110μm=70μm)を有するマイクロカプセル粉末は、7%の洗出し損失となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセルコアとしての潜熱蓄熱材料と、その都度モノマーの全質量を基準として、
アクリル酸及び/又はメタクリル酸の1つ又はそれ以上のC1〜C24−アルキルエステル(モノマーI) 10〜100質量%、
水に不溶性であるか又は難溶性である二官能性又は多官能性のモノマー(モノマーII) 0〜80質量%及び
その他のモノマー(モノマーIII) 0〜90質量%
から構成されるカプセル壁とを有し、
150〜400μmの範囲内の平均粒度及び直径90μm以上(≧90μm)を有する粒子80質量%を有する、マイクロカプセル粉末。
【請求項2】
粒子の粒度分布の幅の80%値が500μm以下(≦500μm)である、請求項1記載のマイクロカプセル粉末。
【請求項3】
潜熱蓄熱材料が、−20〜120℃の温度範囲内の固液相転移を有する親油性物質である、請求項1又は2記載のマイクロカプセル粉末。
【請求項4】
潜熱蓄熱材料が脂肪族炭化水素化合物である、請求項1から3までのいずれか1項記載のマイクロカプセル粉末。
【請求項5】
カプセル壁が、
アクリル酸及び/又はメタクリル酸の1つ又はそれ以上のC1〜C24−アルキルエステル(モノマーI) 30〜95質量%、
水に不溶性であるか又は難溶性である二官能性又は多官能性のモノマー(モノマーII) 5〜60質量%及び
その他のモノマー(モノマーIII) 0〜90質量%
から構成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のマイクロカプセル粉末。
【請求項6】
モノマー、親油性物質及び保護コロイドを含有する水中油型乳濁液をラジカル重合し、引き続き噴霧乾燥することにより得られる、請求項1から5までのいずれか1項記載のマイクロカプセル粉末。
【請求項7】
保護コロイドが有機の中性保護コロイドである、請求項6記載のマイクロカプセル粉末。
【請求項8】
マイクロカプセル分散液を一流体ノズルを通じて噴霧乾燥することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のマイクロカプセル粉末の製造方法。
【請求項9】
噴霧助剤を添加する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
テキスタイルへ配合するための、請求項1から7までのいずれか1項記載のマイクロカプセル粉末の使用。
【請求項11】
結合建築材料における、請求項1から7までのいずれか1項記載のマイクロカプセル粉末の使用。
【請求項12】
敷き詰め材(Schuettungen)における、請求項1から7までのいずれか1項記載のマイクロカプセル粉末の使用。
【請求項13】
伝熱流体を製造するための、請求項1から7までのいずれか1項記載のマイクロカプセル粉末の使用。
【請求項14】
熱を吸収する部分及び熱を放出する部分、その間に伝熱流体が循環し、及び場合により伝熱流体の輸送のためのポンプを含む系のための伝熱流体を製造するための、請求項1から7までのいずれか1項記載のマイクロカプセル粉末の使用。
【請求項15】
静的な系のための伝熱流体を製造するための、請求項1から7までのいずれか1項記載のマイクロカプセル粉末の使用。

【公表番号】特表2008−531808(P2008−531808A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557518(P2007−557518)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060439
【国際公開番号】WO2006/092439
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】