説明

マイクロトランス素子、信号伝達回路、及び半導体装置

【課題】本発明は、マイクロトランス素子、信号伝達回路、及び半導体装置に係り、微細化を妨げることなくコイル断面積を大きく確保することにある。
【解決手段】半導体基板20上に層間絶縁膜30を挟んで下層コイル32及び上層コイル34が積層されたマイクロトランス素子10において、下層コイル32を、層間絶縁膜30を挟んで積層された第1の金属配線40及び第2の金属配線42と、それら第1の金属配線40及び第2の金属配線42を層間絶縁膜30を貫通して相互に連結したビアコンタクト44と、からなるものとすると共に、上層コイル34を、層間絶縁膜30を挟んで積層された第3の金属配線50及び第4の金属配線52と、それら第3の金属配線50及び第4の金属配線52を層間絶縁膜30を貫通して相互に連結したビアコンタクト44と、からなるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロトランス素子、信号伝達回路、及び半導体装置に係り、特に、基板上に層間絶縁膜を挟んで第1及び第2のコイルが積層されたマイクロトランス素子、並びに、該マイクロトランス素子を含む信号伝達回路及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に層間絶縁膜を挟んで上下に配置されたコイルインダクタを構成したマイクロトランス素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。このマイクロトランス素子は、送信回路が接続される送信側コイルと、受信回路が接続される受信側コイルと、を備えている。マイクロトランス素子は、基準電位の異なる送信回路と受信回路との間で両回路の絶縁性を維持しつつ信号を伝達するものである。かかるマイクロトランス素子において、送信回路から送信側コイルへパルス状の信号が供給されると、その送信側コイル回りに磁束が発生し、その磁束により受信側コイルに電圧が生ずる。この場合には、受信回路が受信側コイルに発生した電圧を検知する。従って、上記のマイクロトランス素子によれば、送信回路と受信回路との間の絶縁性を維持しつつ信号を伝達することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−232202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、マイクロトランス素子の重要な性能指標としては、ゲインと容量カップリングノイズとがあり、これらの性能指標の設計パラメータの一つに送信側コイル及び受信側コイルの寄生抵抗成分がある。このコイルの寄生抵抗成分の大部分を占める直列抵抗を軽減するためには、コイル断面積を大きくすること(厚膜化)が望ましい。しかし、上記したコイルには一般的に半導体製造プロセスで製造されたAl−Cuなどの金属配線が用いられるため、厚膜化が行われると、その微細化が妨げられてしまう。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、微細化を妨げることなくコイル断面積を大きく確保することが可能なマイクロトランス素子、信号伝達回路、及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、基板上に層間絶縁膜を挟んで第1及び第2のコイルが積層されたマイクロトランス素子であって、前記第1及び第2のコイルのうち少なくとも一方のコイルは、層間絶縁膜を挟んで積層された第1及び第2の金属配線と、該第1及び第2の金属配線を層間絶縁膜を貫通して相互に連結したビアコンタクトと、からなるマイクロトランス素子により達成される。
【0007】
この態様の発明において、基板上に層間絶縁膜を挟んで積層された第1及び第2のコイルのうち少なくとも一方のコイルは、層間絶縁膜を挟んで積層された第1及び第2の金属配線と、それらの金属配線を層間絶縁膜を貫通して相互に連結したビアコンタクトと、からなる。かかるコイル構造では、第1の金属配線と第2の金属配線とがビアコンタクトを介して連結されるので、コイルの断面積が大きくなる。このため、コイルの直列抵抗を軽減することが可能である。また、コイルを2層構造とすることでその断面積を大きくしたので、素子の微細化が妨げることは無い。従って、本発明によれば、微細化を妨げることなくコイル断面積を大きく確保することができる。
【0008】
ところで、上記したマイクロトランス素子において、前記ビアコンタクトは、穴状又はスリット状に形成されていることとしてもよい。
【0009】
また、上記したマイクロトランス素子において、前記第1のコイルが、前記第2のコイルに比べて前記基板に近い位置に配置され、前記第1及び第2の金属配線と前記ビアコンタクトとからなり、かつ、複数回巻かれた螺旋状の平面構造を有し、該第1のコイルの中心部からの引き出し配線は、前記第1及び第2の金属配線のうち一方の金属配線と同じ配線層に形成されていることとしてもよい。
【0010】
尚、上記のマイクロトランス素子は、前記基板に近い位置に配置される前記第1のコイルに、信号を送信する信号送信回路が電気的に接続され、かつ、前記基板から遠い位置に配置される前記第2のコイルに、信号を受信する信号受信回路が電気的に接続されている信号伝達回路に含まれるものであればよい。
【0011】
更に、2つのチップが互いに上記のマイクロトランス素子を介して電気的に接続される半導体装置であって、該マイクロトランス素子が、信号を生成して該マイクロトランス素子を駆動するドライバが形成された前記チップ側に配置されている半導体装置は、微細化を妨げることなくコイル断面積を大きく確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、微細化を妨げることなくコイル断面積を大きく確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例であるマイクロトランス素子を含む信号伝達回路及び半導体装置の構成図である。
【図2】本実施例の信号伝達回路及び半導体装置の断面構造である。
【図3】本実施例のマイクロトランス素子の等価回路図である。
【図4】本実施例のマイクロトランス素子の有するコイルの上面図である。
【図5】本実施例のマイクロトランス素子を図4に示すIII−IIIで切断した際の断面図である。
【図6】本実施例のマイクロトランス素子の有するコイルを構成するビアコンタクトの平面図である。
【図7】本実施例のマイクロトランス素子の有するコイルの平面図である。
【図8】本実施例のマイクロトランス素子を図7に示すIV−IVで切断した際の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて、本発明に係るマイクロトランス素子、信号伝達回路、及び半導体装置の具体的な実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施例であるマイクロトランス素子10を含む信号伝達回路12及び半導体装置14の構成図を示す。また、図2は、本実施例の信号伝達回路12及び半導体装置14の断面構造を示す。本実施例の半導体装置14は、SiやSiC,GaAsなどの半導体からなる信号伝達回路12を備えている。信号伝達回路12は、信号送信回路16及び信号受信回路18を備えていると共に、マイクロトランス素子10を備えている。信号伝達回路12は、信号送信回路16からマイクロトランス素子10を介して信号受信回路18へ信号伝達を行う回路である。
【0016】
信号送信回路16及び信号受信回路18は、互いに基準電位の異なる回路同士である。信号送信回路16は、半導体基板20上に設けられており、第1のチップ22上に形成されている。信号送信回路16は、例えば比較的高電位の電源電圧VCC1と接地電圧GNDとの間で伝送すべき信号に応じた信号を生成して送信する。また、信号受信回路18は、半導体基板24上に設けられており、第2のチップ26上に形成されている。信号受信回路18は、例えば比較的低電位の電源電圧VCC2と接地電圧GNDとの間で信号送信回路16からの信号を受信する。
【0017】
信号送信回路16が形成された第1のチップ22と信号受信回路18が形成された第2のチップ26とは、互いに上記のマイクロトランス素子10を介して電気的に接続されている。マイクロトランス素子10は、そのマイクロトランス素子10を駆動するドライバ(すなわち信号送信回路16)が形成された第1のチップ22側に配置されている。マイクロトランス素子10は、半導体基板20上に形成されている。
【0018】
マイクロトランス素子10は、半導体基板20上において層間絶縁膜30を挟んでコイル32及びコイル34が積層された構造を有している。コイル32及びコイル34は、半導体基板20上でその順に配置されており、互いに対向配置されている。マイクロトランス素子10は、コイル32,34を支持する機能を有しており、異なる配線層に2つのスパイラルインダクタを形成している。以下、半導体基板20に近い位置に配置されたコイル32を下層コイル32と、半導体基板20から遠い位置に配置されたコイル34を上層コイル34と、それぞれ称す。
【0019】
下層コイル32及び上層コイル34はそれぞれ、複数回(後述の図3や図4では3回)巻かれた螺旋状の平面構造を有している。下層コイル32には、上記の信号送信回路16がチップ内配線36により電気的に接続されている。信号送信回路16は、生成した信号をチップ内配線36を介して下層コイル32へ供給する。下層コイル32は、マイクロトランス素子10の一次側コイルである。また、上層コイル34には、上記の信号受信回路18が外部配線38により電気的に接続されている。上層コイル34は、下層コイル32に信号が供給された際に電磁誘導によりその供給信号に応じた信号を発生し、外部配線38を介して信号受信回路18へ送信する。上層コイル34は、マイクロトランス素子10の二次側コイルである。
【0020】
次に、本実施例の信号伝達回路12及び半導体装置14の動作について説明する。
【0021】
本実施例において、信号送信回路16は、信号伝達回路12が伝送すべき信号に応じた信号を生成し、チップ内配線36を介してマイクロトランス素子10の下層コイル32へ供給する。下層コイル32に信号送信回路16からの信号が供給されると、電磁誘導によりマイクロトランス素子10の上層コイル34に下層コイル32への入力信号に応じた信号が発生する。その発生した信号は、外部配線38を介して信号受信回路18へ送信される。信号受信回路18は、上層コイル34からの信号を受信する。従って、本実施例によれば、信号送信回路16から信号受信回路18へマイクロトランス素子10を介して電磁誘導による非接触で信号伝達を行うことが可能である。
【0022】
図3は、本実施例のマイクロトランス素子10の等価回路を示す。ところで、マイクロトランス素子10の重要な性能指標としは、ゲインと容量カップリングノイズとがある。ゲインGは、入力信号電圧に対して出力信号電圧として変換できる割合を示し、次式(1)の如く表される。また、容量カップリングノイズΔV2は、GND電位が変動した時に発生する受信側信号電圧振幅を示し、次式(2)の如く表される。
【0023】
但し、Mは相互インダクタンスであり、kは0<k<1を満たす結合係数であり、L1は送信側コイル32の自己インダクタンスであり、L2は受信側コイル34の自己インダクタンスであり、R1は送信側コイル32の寄生抵抗であり、R2は受信側コイル34の寄生抵抗であり、Rdは送信側トランジスタの出力抵抗であり、Ccは送信側コイルと受信側コイルとの間の容量であり、また、VGNDhはGND電位である。
【0024】
【数1】

【0025】
【数2】

このように、ゲインGは、送信側コイル32の寄生抵抗の関数であり、その寄生抵抗が大きいほど小さくなってしまう。また、容量カップリングノイズΔV2は、受信側コイル34の寄生抵抗の関数であり、その寄生抵抗が大きいほど大きくなってしまう。これら各コイル32,34の寄生抵抗成分の大部分はそれぞれの直列抵抗である。従って、マイクロトランス素子10のゲインGを大きくするためには、送信側の下層コイル32の直列抵抗を軽減することが有効であり、また、その容量カップリングノイズΔV2を小さくするためには、受信側の上層コイル34の直列抵抗を軽減することが有効である。そして、それらの各抵抗の軽減のためには、コイル32,34の断面積を大きくすること(例えばその厚膜化を図ること)が望ましい。しかし、これらの各コイル32,34には一般的に半導体製造プロセスで製造されたAl−Cuなどの金属配線が用いられるため、厚膜化が行われると、素子の微細化が妨げられてしまう。
【0026】
そこで、本実施例は、微細化を妨げることなくコイル32,34の直列抵抗成分を軽減する点に特徴を有している。以下、図4乃至図6を参照して、本実施例の特徴点について説明する。図4は、本実施例のマイクロトランス素子10の有するコイル32,34の上面図を示す。図5は、本実施例のマイクロトランス素子10を図4に示すIII−IIIで切断した際の断面図を示す。また、図6は、本実施例のマイクロトランス素子10の有する各コイル32,34を構成するビアコンタクトの平面図を示す。尚、図6(A)にはビアコンタクトがスリット状のロングコンタクトである場合を、また、図6(B)にはビアコンタクトが穴状のユニットコンタクトである場合を、それぞれ示す。
【0027】
本実施例のマイクロトランス素子10において、送信側の下層コイル32は、半導体基板20上に層間絶縁膜30を挟んで上下に積層された第1の金属配線40及び第2の金属配線42と、それら金属配線40,42を層間絶縁膜30を貫通して相互に連結するビアコンタクト44と、からなる。金属配線40,42はそれぞれ、半導体基板20上において互いに異なる配線層に形成されている。
【0028】
金属配線40,42は共に、アルミニウムや銅などの金属により構成されており、複数回巻かれた螺旋状の互いに略同じ形状を有している。第1の金属配線40と第2の金属配線42とは、半導体基板20上でその順に配置されており、互いに対向配置されている。第1の金属配線40と第2の金属配線42とは、層間絶縁膜30を貫通するビアコンタクト44を介して互いに連結されている。ビアコンタクト44は、バリアメタル層やメッキ層からなり、半導体基板20上に積層された第1の金属配線40と第2の金属配線42とを電気的に接続させる機能を有している。
【0029】
尚、ビアコンタクト44は、図6(A)に示す如く、金属配線40,42の延びる方向に沿ってスリット状に形成されたロングコンタクトであってもよいし、また、図6(B)に示す如く、金属配線40,42の延びる方向に所定間隔を空けて上下に貫通した穴状に形成されたユニットコンタクトであってもよい。ビアコンタクト44の形状がスリット状のものである場合は、そのビアコンタクト44の横幅は、金属配線40,42の横幅以下であればよい。また、ビアコンタクト44の形状が穴状のものである場合は、その穴は、上方から見て、図6(B)の如く断面四角形状であってもよいし、断面円状や断面楕円状であってもよい。
【0030】
また、受信側の上層コイル34は、半導体基板20上に層間絶縁膜30を挟んで上下に積層された第3の金属配線50及び第4の金属配線52と、それら金属配線50,52を層間絶縁膜30を貫通して相互に連結するビアコンタクト54と、からなる。金属配線50,52はそれぞれ、半導体基板20上において互いに異なる配線層に形成されている。
【0031】
金属配線50,52は共に、アルミニウムや銅などの金属により構成されており、複数回巻かれた螺旋状の互いに略同じ形状を有している。第3の金属配線50と第4の金属配線52とは、半導体基板20上でその順に配置されており、互いに対向配置されている。第3の金属配線50と第4の金属配線52とは、層間絶縁膜30を貫通するビアコンタクト54を介して互いに連結されている。ビアコンタクト54は、バリアメタル層やメッキ層からなり、半導体基板20上に積層された第3の金属配線50と第4の金属配線52とを電気的に接続させる機能を有している。
【0032】
尚、ビアコンタクト54は、上記のビアコンタクト44と同様に、図6(A)に示す如く、金属配線50,52の延びる方向に沿ってスリット状に形成されたロングコンタクトであってもよいし、また、図6(B)に示す如く、金属配線50,52の延びる方向に所定間隔を空けて上下に貫通した穴状に形成されたユニットコンタクトであってもよい。ビアコンタクト54の形状がスリット状のものである場合は、そのビアコンタクト54の横幅は、金属配線50,52の横幅以下であればよい。また、ビアコンタクト54の形状が穴状のものである場合は、その穴は、上方から見て、図6(B)の如く断面四角形状であってもよいし、断面円状や断面楕円状であってもよい。
【0033】
かかるマイクロトランス素子10において、送信側の下層コイル32は、複数の層に形成された金属配線40,42がビアコンタクト44を介して電気的に接続された構造を有している。また、受信側の上層コイル34は、複数の層に形成された金属配線50,52がビアコンタクト54を介して電気的に接続された構造を有している。かかる構造においては、各コイル32,34がそれぞれ二層の金属配線で構成されるため、単層の金属配線で構成される構造と比較して、各コイル32,34の断面積が大きくなる。
【0034】
このため、本実施例によれば、送信側の下層コイル32に電流が流れる際の直列抵抗R1を軽減することができ、その結果として、マイクロトランス素子10のゲインGを大きくすることができる。また、受信側の上層コイル34に電流が流れる際の直列抵抗R2を軽減することができ、その結果として、マイクロトランス素子10の容量カップリングノイズΔV2を小さくすることができる。尚、コイル32,34の直列抵抗の軽減を図るうえでは、ビアコンタクト44,54を図6(B)に示す如く穴状のユニットコンタクトとする構造よりも、スリット状のロングコンタクトとする構造の方が有利である。
【0035】
また、上記したマイクロトランス素子10の構造においては、各コイル32,34がそれぞれ二層の金属配線で構成されるため、それらのコイル32,34がそれぞれ単層の金属配線で構成される構造と異なり、コイル断面積を大きく確保するうえで配線層の厚膜化を図ることは不要であり、その結果として、複数回巻かれた螺旋形状の各コイル32,34それぞれの配線間の隙間を狭くすることが可能である。
【0036】
従って、本実施例によれば、マイクロトランス素子10の微細化を妨げることなく、コイル断面積を大きく確保することが可能となっており、コイル32,34の直列抵抗を軽減することが可能となっている。これにより、マイクロトランス素子10の性能向上を図ることが可能となっている。
【0037】
ところで、本実施例においては、マイクロトランス素子10のコイル32,34が複数回巻かれた螺旋状の平面構造を有するが、特に下層コイル32については、その中心部と信号送信回路16とを電気的に接続するチップ内配線36をコイル32の螺旋外へ引き出す必要がある。ここで、チップ内配線36をコイル32の螺旋外へ引き出す手法としては、コイル32の金属配線40,42が設けられる配線層とは別に新たな配線層を設けて、その新たな配線層にチップ内配線36を形成することが考えられる。しかし、かかる手法では、チップ内配線36のための新たな配線層を設けることが必要となり、チップの厚肉化・肥大化が招来してしまう。
【0038】
図7は、本実施例のマイクロトランス素子10の有する下層コイル32の平面図を示す。尚、図7(A)には第1の金属配線40部分における平面図を、また、図7(B)には第2の金属配線42部分における平面図を、それぞれ示す。また、図8は、本実施例のマイクロトランス素子10を図7に示すIV−IVで切断した際の断面図を示す。
【0039】
そこで、本実施例において、下層コイル32の中心部から信号送信回路16へ向けて引き出される引き出し配線(すなわち、チップ内配線36)は、半導体基板20上において、下層コイル32の上下に積層された金属配線40,42のうちの一方の金属配線(図8においては第2の金属配線42)と同じ配線層に形成されており、チップ内配線36の一部は、金属配線40,42の片方と同じ配線層に形成されている。すなわち、金属配線40,42の一方(図8においては第1の金属配線40)は、半導体基板20上においてその中心部側から外周部にかけて途切れることのない配線からなるが(図7(A)参照)、金属配線40,42の他方(図8においては第2の金属配線42)は、半導体基板20上においてその中心部側から外周部にかけて途切れがある配線からなる(図7(B)参照)。尚、このように金属配線40,42の他方に途切れた部分があっても、それ以外の部分では両配線40,42はビアコンタクト44を介して電気的に接続されているので、コイル32としての機能は満たされる。
【0040】
かかるマイクトランス素子10の構造においては、層間絶縁膜30を挟んで金属配線40,42が積層されることのないコイル32の部位が一部に存在する一方で、チップ内配線36のための新たな配線層を設けることが不要となるので、配線層を増加させることなくコイル32の中心部からの引き出し配線を有効に配策することが可能である。従って、本実施例によれば、チップの肥大化を招くことなくマイクロトランス素子10の機能(信号伝達機能)を適切に確保しつつ、コイル断面積をできるだけ大きくすることが可能となっている。
【0041】
尚、上記の実施例においては、半導体基板20が特許請求の範囲に記載した「基板」に、送信側の下層コイル32及び受信側の上層コイル34が特許請求の範囲に記載した「第1のコイル」及び「第2のコイル」に、第1〜第4の金属配線40,42,50,52が特許請求の範囲に記載した「第1の金属配線」及び「第2の金属配線」に、チップ内配線36が特許請求の範囲に記載した「引き出し配線」に、信号送信回路16が特許請求の範囲に記載した「ドライバ」に、それぞれ相当している。
【0042】
ところで、上記の実施例においては、送信側の下層コイル32及び受信側の上層コイル34の双方を共に、層間絶縁膜30を挟んで積層される2つの金属配線と、両金属配線を相互に連結するビアコンタクトと、からなるものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、何れか一方のコイル32,34のみを、層間絶縁膜30を挟んで積層される2つの金属配線と、両金属配線を相互に連結するビアコンタクトと、からなるものとしてもよい。
【0043】
また、上記の実施例においては、コイル32,34を、層間絶縁膜30を挟んで積層される2つの金属配線と、両金属配線を相互に連結するビアコンタクトと、からなるものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、層間絶縁膜30を挟んで積層される3つ以上の金属配線と、それらの金属配線を相互に連結するビアコンタクトと、からものとしてもよい。尚、この場合は、何れか一の金属配線と同じ配線層に中心部からの引き出し配線を形成することとすればよく、他の配線層では金属配線を形成することとすればよい。
【0044】
また、上記の実施例においては、マイクロトランス素子10を、信号送信回路16が設けられた半導体基板20上に形成・配置することとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、信号受信回路18が設けられた半導体基板24上に形成・配置することとしてもよい。
【0045】
更に、上記の実施例においては、マイクロトランス素子10の半導体基板に近い下層側に送信側のコイル32を配置し、かつ、半導体基板から遠い上層側に受信側のコイル34を配置することとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体基板に近い下層側に受信側のコイル34を配置し、かつ、半導体基板から遠い上層側に送信信側のコイル32を配置することとしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 マイクロトランス素子
12 信号伝達回路
14 半導体装置
16 信号送信回路
18 信号受信回路
20,24 半導体基板
22,26 チップ
30 層間絶縁膜
32,34 コイル
36 チップ内配線
38 外部配線
40,42,50,52 金属配線
44,54 ビアコンタクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に層間絶縁膜を挟んで第1及び第2のコイルが積層されたマイクロトランス素子であって、
前記第1及び第2のコイルのうち少なくとも一方のコイルは、層間絶縁膜を挟んで積層された第1及び第2の金属配線と、該第1及び第2の金属配線を層間絶縁膜を貫通して相互に連結したビアコンタクトと、からなることを特徴とするマイクロトランス素子。
【請求項2】
前記ビアコンタクトは、穴状又はスリット状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロトランス素子。
【請求項3】
前記第1のコイルが、前記第2のコイルに比べて前記基板に近い位置に配置され、前記第1及び第2の金属配線と前記ビアコンタクトとからなり、かつ、複数回巻かれた螺旋状の平面構造を有し、
該第1のコイルの中心部からの引き出し配線は、前記第1及び第2の金属配線のうち一方の金属配線と同じ配線層に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のマイクロトランス素子。
【請求項4】
前記基板に近い位置に配置される前記第1のコイルに、信号を送信する信号送信回路が電気的に接続され、かつ、前記基板から遠い位置に配置される前記第2のコイルに、信号を受信する信号受信回路が電気的に接続されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項記載のマイクロトランス素子を含む信号伝達回路。
【請求項5】
2つのチップが互いに請求項1乃至3の何れか一項記載のマイクロトランス素子を介して電気的に接続される半導体装置であって、
該マイクロトランス素子が、信号を生成して該マイクロトランス素子を駆動するドライバが形成された前記チップ側に配置されていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−82212(P2011−82212A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230744(P2009−230744)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】