説明

マイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法

【課題】敷設された中空フィラメントの外径仕様が異なる場合や、該中空フィラメントが交差する場合でも表面凹凸が少なく、また、中空フィラメントが交差部で位置ずれを起こさないマイクロ流体システム用支持ユニット及びその製造方法を提供する。
【解決手段】固定層中に少なくとも1本の中空フィラメントの一部が任意の形状に敷設され、固定されているマイクロ流体システム用支持ユニットに関し、固定層は、基材上、保護層上または中間層上に設けられていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空フィラメントを流路としたマイクロ流体システム用支持ユニット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学や生化学の分野では、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を応用した、反応系や分析装置の小型化に関する研究が進められており、構成要素の一つとなるマイクロポンプ、マイクロバルブといった単一機能を有する機械要素(マイクロマシン)の研究開発が現在行われている(例えば、庄子、「化学工業」、化学工業社、2001年4月、第52巻、第4号、p.45−55及び前田、「エレクトロニクス実装学会誌」、社団法人エレクトロニクス実装学会、2002年1月、第5巻、第1号、p.25−26参照。)。
【0003】
近年、これらの機能を微小流路を介して回路(システム)とし、目的の化学反応や化学分析を行おうとする研究が盛んになってきている。一般にそれらのシステムの完成形は、マイクロリアクター(Micro Reactor System)、マイクロ化学分析システム(Micro Total Analysis System:μTAS)などと呼称されている。現在、この微小流路として、例えば、ガラスなどの表面にエッチング等で形成した溝を微小流路とするチップ型基板が提案されている。このチップ型流路基板は、半導体またはプリント配線基板のフォトリソグラフィー技術を応用したものである。
【0004】
一方、中空フィラメントを流路とするマイクロ流体システム用支持ユニットは、チップ型流路基板では難しかった流路層の多層化(交差)が容易であったり、流路である中空フィラメントの材料を選択することが容易であったりするなどの特長があり、複雑な流路回路を形成するのに有益である。その製法は、フィルム状の材料上に任意形状に敷設された中空フィラメント群を、同様のフィルム状材料でラミネートする方法などが提案されている(例えば、日本国特開2004−174701号公報参照。)。
【0005】
敷設する装置としては、例えば、日本国特公昭50−9346号公報には導線に荷重と超音波振動を印加しながら敷設できる装置、日本国特公平7−95622号公報には荷重の印加とレーザ光を照射しながら敷設できる装置、日本国特開2001−59910号公報には配線体(光ファイバ)に荷重を印加し、接着剤層面へ布線する布線装置が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述したようなラミネートする方法によると、敷設された中空フィラメントの外径仕様が異なる場合や、該中空フィラメントが交差する部分では、マイクロ流体システム用支持ユニットの表面に凹凸ができてしまう。そして上記マイクロ流体システム用支持ユニットの表面に強い外力が加わった場合、凸部分に力が集中し、中空フィラメントが破損したり、変形したりする問題があった。更に中空フィラメントの変形は、フィラメント内の流路形状の変形も引き起こし、流体の詰りや圧力損失を大きくするなどの問題があった。更に、敷設される中空フィラメントの数が多くなると、中空フィラメント同士の交差は増加し凹凸数が増える問題が有った。
【0007】
そして、前述のラミネートする方法によると、中空フィラメントの交差を有する部分においてラミネート圧力により中空フィラメントが破損したり変形したりしやすく、ラミネート時に緩衝材を適宜使用しなければならなかった。
【0008】
また、前述のラミネートする方法によると、外径の異なる複数の中空フィラメントを有する部分においてラミネートの圧力により外径がより大きい中空フィラメントほど破損したり変形したりしやすく、ラミネート時に緩衝材を適宜使用しなければならなかった。
【0009】
また、中空フィラメントの交差部では、基材と中空フィラメントが接する面積が減少することから、中空フィラメントの固定力が弱くなって、中空フィラメントが動き、位置ずれを起こすという問題があった。
【0010】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、表面凹凸の少ない、また、ラミネートする方法に比べてマイクロ流体支持ユニット製造時の中空フィラメント交差部及び外径が異なる複数の中空フィラメントを有する部分での破損・変形を抑制できる、さらに、中空フィラメントの交差部での位置ずれを低減できる、マイクロ流体システム用支持ユニット及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(1)基材と、該基材上に設けられた固定層とを有し、該固定層中に少なくとも1本の中空フィラメントの一部が任意の形状に敷設され、固定されているマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0012】
また、本発明は、(2)基材及び固定層の、少なくとも一部を覆う保護層を有する前記(1)記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0013】
また、本発明は、(3)保護層と、該保護層上に設けられた固定層とを有し、該固定層中に少なくとも1本の中空フィラメントの一部が任意の形状に敷設され、固定されているマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0014】
また、本発明は、(4)中間層と、該中間層上に設けられた固定層とを有し、該固定層中に少なくとも1本の中空フィラメントの一部が任意の形状に敷設され、固定されているマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0015】
また、本発明は、(5)固定層中に少なくとも1本の中空フィラメントの一部が任意の形状に敷設され、固定されているマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0016】
また、本発明は、(6)基材と固定層との間に中間層を設けられている前記(1)または(2)記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0017】
また、本発明は、(7)保護層と固定層との間に中間層を設けられている前記(3)記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0018】
また、本発明は、(8)中間層が、接着能を有する層、または、緩衝能を有する層、または、離型能を有する層である前記(4)、(6)または(7)記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0019】
また、本発明は、(9)少なくとも1本の中空フィラメントの端部が基材端部からはみ出し、余長部を有する前記(1)、(2)または(6)記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0020】
また、本発明は、(10)少なくとも1本の中空フィラメントの端部が保護層端部からはみ出し、余長部を有する前記(2)、(3)、(6)または(7)記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0021】
また、本発明は、(11)少なくとも1本の中空フィラメントの端部が固定層端部からはみ出し、余長部を有する前記(1)〜(10)いずれか一つに記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0022】
また、本発明は、(12)少なくとも1本の中空フィラメントの中間部の外壁の少なくとも一部が、固定層から露出している前記(1)〜(11)いずれか一つに記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0023】
また、本発明は、(13)少なくとも1本の中空フィラメントの中間部の外壁の少なくとも一部が、保護層から露出している前記(12)記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0024】
また、本発明は、(14)少なくとも1本の中空フィラメントの中間部の外壁が固定層から露出していない前記(1)〜(11)いずれか一つに記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0025】
また、本発明は、(15)中空フィラメントが、2本以上である前記(1)〜(14)いずれか一つに記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0026】
また、本発明は、(16)2本以上の中空フィラメントが、2種類以上の異なる外径を有する中空フィラメントからなる前記(15)記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0027】
また、本発明は、(17)少なくとも1本の中空フィラメントが、交差部を有するように敷設されている前記(1)〜(16)いずれか一つに記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0028】
また、本発明は、(18)中空フィラメントが敷設された領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みが、全ての中空フィラメントの外径よりも厚い前記(1)〜(17)いずれか一つに記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0029】
また、本発明は、(19)中空フィラメントが敷設された領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みが、交差部における中空フィラメントの厚みの合計よりも厚い前記(1)〜(18)いずれか一つに記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0030】
また、本発明は、(20)中空フィラメントが敷設された領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みが、平坦である前記(1)〜(19)いずれか一つに記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0031】
また、本発明は、(21)固定層が、固化させたワニスである前記(1)〜(20)いずれか一つに記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0032】
また、本発明は、(22)固化前のワニスが流動性を有する前記(21)記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0033】
また、本発明は、(23)中空フィラメントが敷設された領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みが、中空フィラメントが敷設されていない領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みの100〜120%である前記(1)〜(22)いずれか一つに記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0034】
また、本発明は、(24)中空フィラメントが敷設された領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みが、中空フィラメントが敷設されていない領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みの100〜110%である前記(1)〜(22)いずれか一つに記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0035】
また、本発明は、(25)中空フィラメントが敷設された領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みが、中空フィラメントが敷設されていない領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みの100〜105%である前記(1)〜(22)いずれか一つに記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0036】
また、本発明は、(26)中空フィラメントが敷設された領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みが、中空フィラメントが敷設されていない領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みの100〜103%である前記(1)〜(22)いずれか一つに記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0037】
また、本発明は、(27)少なくとも1本の中空フィラメントが交差部を有するように敷設されており、該交差部の領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みが、交差部以外の中空フィラメントが敷設されている領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みの100〜120%である前記(1)〜(26)いずれか一つに記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0038】
また、本発明は、(28)少なくとも1本の中空フィラメントが交差部を有するように敷設されており、該交差部の領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みが、交差部以外の中空フィラメントが敷設されている領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みの100〜110%である前記(1)〜(26)いずれか一つに記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0039】
また、本発明は、(29)少なくとも1本の中空フィラメントが交差部を有するように敷設されており、該交差部の領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みが、交差部以外の中空フィラメントが敷設されている領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みの100〜105%である前記(1)〜(26)いずれか一つに記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0040】
また、本発明は、(30)少なくとも1本の中空フィラメントが交差部を有するように敷設されており、該交差部の領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みが、交差部以外の中空フィラメントが敷設されている領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みの100〜103%である前記(1)〜(26)いずれか一つに記載のマイクロ流体システム用支持ユニットに関する。
【0041】
また、本発明は、(31)少なくとも以下の(i)、(ii)及び(iii)の工程を備えることマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0042】
(i)基材上に、少なくとも1本の中空フィラメントを任意の形状に敷設する工程
(ii)該中空フィラメントの少なくとも一部を含む所定の部分をワニスで覆う工程
(iii)該ワニスの全部または一部を固化させる工程
また、本発明は、(32)少なくとも以下の(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の工程を備えるマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0043】
(i)基材上に、少なくとも1本の中空フィラメントを任意の形状に敷設する工程
(ii)該中空フィラメントの少なくとも一部を含む所定の部分をワニスで覆う工程
(iii)該ワニスの全部または一部を固化させる工程
(iv)所定の部分に保護層を形成する工程
また、本発明は、(33)少なくとも以下の(v)、(vi)及び(vii)の工程を備えるマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0044】
(v)基材上の所定の部分をワニスで覆う工程
(vi)該ワニスの中に少なくとも1本の中空フィラメントの少なくとも一部を浸漬する工程、または、ワニスに少なくとも1本の中空フィラメントを浮かす工程
(vii)該ワニスの全部または一部を固化させる工程
また、本発明は、(34)少なくとも以下の(v)、(vi)、(vii)及び(viii)の工程を備えるマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0045】
(v)基材上の所定の部分をワニスで覆う工程
(vi)該ワニスの中に少なくとも1本の中空フィラメントの少なくとも一部を浸漬する工程、または、ワニスに少なくとも1本の中空フィラメントを浮かす工程
(vii)該ワニスの全部または一部を固化させる工程
(viii)所定の部分に保護層を形成する工程
また、本発明は、(35)少なくとも以下の(ix)、(vi)、(vii)及び(x)の工程を備えるマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0046】
(ix)容器中にワニスを充填する工程
(vi)該ワニスの中に少なくとも1本の中空フィラメントの少なくとも一部を浸漬する工程、または、ワニスに少なくとも1本の中空フィラメントを浮かす工程
(vii)該ワニスの全部または一部を固化させる工程
(x)容器の少なくとも一部を除去する工程
また、本発明は、(36)少なくとも以下の(ix)、(vi)、(vii)、(x)及び(viii)の工程を備えるマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0047】
(ix)容器中にワニスを充填する工程
(vi)該ワニスの中に少なくとも1本の中空フィラメントの少なくとも一部を浸漬する工程、または、ワニスに少なくとも1本の中空フィラメントを浮かす工程
(vii)該ワニスの全部または一部を固化させる工程
(x)容器の少なくとも一部を除去する工程
(viii)所定の部分に保護層を形成する工程
また、本発明は、(37)少なくとも以下の(ix)、(vi)、(vii)、(viii)及び(x)の工程を備えるマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0048】
(ix)容器中にワニスを充填する工程
(vi)該ワニスの中に少なくとも1本の中空フィラメントの少なくとも一部を浸漬する工程、または、ワニスに少なくとも1本の中空フィラメントを浮かす工程
(vii)該ワニスの全部または一部を固化させる工程
(viii)固化されたワニスの表面に保護層を形成する工程
(x)容器の少なくとも一部を除去する工程
また、本発明は、(38)基材上に少なくとも1本の中空フィラメントを敷設する前に、該基材と該少なくとも1本の中空フィラメントとの間に中間層を設ける工程を更に含む前記(31)または(32)記載のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0049】
また、本発明は、(39)基材上の所定の部分をワニスで覆う前に、該基材上に中間層を設ける工程を更に含む前記(33)または(34)記載のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0050】
また、本発明は、(40)容器中にワニスを充填する前に、容器表面上に中間層を設ける工程を更に含む前記(35)〜(37)いずれか一つに記載のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0051】
また、本発明は、(41)少なくとも1本の中空フィラメントの全部または一部を中間層上に任意の形状に敷設する工程を含む前記(38)〜(40)いずれか一項記載のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0052】
また、本発明は、(42)中間層が、接着能を有する層、または、緩衝能を有する層、または、離型能を有する層である前記(38)〜(41)いずれか一つにマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0053】
また、本発明は、(43)堰堤物を設け、ワニスにより所定の部分を覆う前記(31)〜(34)いずれか一つにマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0054】
また、本発明は、(44)ワニスの全部または一部を固化させた後に、少なくとも中間層の一部を除去する工程を更に含む前記(38)〜(43)いずれか一項記載のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0055】
また、本発明は、(45)ワニスの全部または一部を固化させた後に少なくとも基材の一部を除去する工程を更に含む前記(31)〜(34)、(38)、(39)(42)〜(44)いずれか一つにマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0056】
また、本発明は、(46)ワニスの中にあらかじめ任意の形状に固定された中空フィラメントを浸漬させること、または、ワニスにあらかじめ任意の形状に固定された中空フィラメントを浮かす前記(33)〜(45)いずれか一つにマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0057】
また、本発明は、(47)中空フィラメントが、あらかじめ基材上、または、中間層を有する基材の中間層上に任意形状に敷設され、固定されている前記(46)記載のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0058】
また、本発明は、(48)ワニスの中で中空フィラメントを任意の形状に固定する前記(33)〜(37)いずれか一つにマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0059】
また、本発明は、(49)ワニスが流動性を有する前記(31)〜(48)いずれか一つに記載のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0060】
また、本発明は、(50)ワニスを除去する工程を更に含む前記(31)〜(49)いずれか一つにマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0061】
本願の開示は、2004年12月9日に出願された特願2004−356662号に記載の主題と関連しており、その開示内容は引用によりここに援用される。
【発明の効果】
【0062】
本発明のマイクロ流体システム用支持ユニット及びその製造方法によれば、マイクロ流体システム用支持ユニットの表面凹凸が少なく、また、ラミネートする方法に比べてマイクロ流体支持ユニット製造時の中空フィラメント交差部及び外径が異なる複数の中空フィラメントを有する部分での破損・変形を抑制でき、さらに、中空フィラメントの交差部分での位置ずれを低減できる。これにより、中空フィラメントを任意パターンに敷設できる為、中空フィラメントを交差させることも可能である。このため、中空フィラメントの高密度化が達成され、容易にcm単位の流路を持つマイクロ流体システム用支持ユニットを製造することができる。また、中空フィラメントを交差させた場合や、2種類以上の異なる外径を有する中空フィラメントを使用した場合でも、マイクロ流体システム用支持ユニットの表面の凹凸は少なく平坦性が優れるものを得ることができる。
【0063】
また、複数の中空フィラメント同士を交差させると、複数流路を持つ複雑な流体回路であっても場所を要しない小型のマイクロ流体システム用支持ユニットを得ることができる。
【0064】
また、中空フィラメントの任意部分のみを固定層で覆うことができるため、中空フィラメントの末端部分以外をワニス等の固定層で覆って流路内へのワニス等の進入を防いだり、交差部や外径が大きい中空フィラメントなどの強い外力によって変形が危惧される部分や、複雑パターンや高密度交差部などのパターン形状の維持力が弱いと考えられる部分のみを覆ったりするなど、必要性がある部分のみを固定層で覆うことができる。
【0065】
固定層の一部が取り除かれたような構造をとることにより中空フィラメントの中間部を露出させ、観察窓や他の部材との接続部にすることも可能である。観察窓とする場合には必要に応じて中空フィラメント露出部に透明性の高い樹脂などを充填し、保護することもできる。また、接続部とする場合には必要に応じて接続後の接続部位に樹脂を充填し、保護することもできる。観察窓を設けずに固定層自体を透明性の高い材料にすることにより代替することも可能である。
【0066】
また、固定層となるワニス量は自由に設定できる為、その厚みも任意に設定できる。また、使用される全ての中空フィラメントの外径よりも厚い方が平坦性の優れるマイクロ流体システム用支持ユニットが得られやすい。同様に交差部の中空フィラメントの厚みの合計よりも厚いことが好ましい。
【0067】
中空フィラメントは固定層で固定されることが好ましいが、基材上に敷設された中空フィラメント以外の領域の所定部分に層を設け、外力から保護する形態をとることも可能である。こうすることにより、中空フィラメントの固定層による化学的な変化を防止できたり、他の部材との接続が容易になったり、流路である中空フィラメントの観察がしやすくなったりする。このような場合にも中空フィラメントの一部を固定層で固定することにより、より信頼性の優れるマイクロ流体システム用支持ユニットとすることもできる。
【0068】
また、ワニスで所定の部分を覆う場合には堰堤物を設けることにより、ワニスの流出が防げ、所定の部分のみを覆わせることが可能となる。また、複数種類のワニスで上記基材面を覆う場合に、ワニス類が混ざり合うことを防ぐこともできる。
【0069】
さらに、堰堤物の高さを任意に選択することによって、固定層の厚みを任意の高さに選択することが容易となる。
【0070】
また、固定層を形成した後に所定部分の基材、固定層、ワニス、中間層を除去することで、所定の中空フィラメント部分が露出したマイクロ流体システム用支持ユニットや、中空フィラメント以外の部分が露出したマイクロ流体システム用支持ユニットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1の(a)は本発明の第一の実施態様の工程(i)における第一工程を示す平面模式図であり、(b)は(a)のIb−Ib線矢印方向の断面模式図である。
【図2】図2の(a)は本発明の第一の実施態様の工程(i)における第二工程を示す平面模式図であり、(b)は(a)のIIb−IIb線矢印方向の断面模式図である。
【図3】図3の(a)は本発明の第一の実施態様の工程(ii)を示す断面模式図であり、(b)は本発明の第一の実施態様の工程(iii)を示す断面模式図であり、(c)は(b)の後のワニスを除去する工程を示す断面模式図である。
【図4】図4の(a)は本発明の第二の実施態様の工程(i)における第一工程を示す平面模式図であり、(b)は(a)のIVb−IVb線矢印方向の断面模式図である。
【図5】図5の(a)は本発明の第二の実施態様の工程(i)における第二工程を示す平面模式図であり、(b)は(a)のVb−Vb線矢印方向の断面模式図である。
【図6】図6の(a)は本発明の第二の実施態様の工程(ii)を示す断面模式図であり、(b)は本発明の第二の実施態様の工程(iii)を示す断面模式図であり、(c)は(b)の後のワニスを除去する工程を示す断面模式図である。
【図7】図7の(a)は本発明の第三の実施態様の工程(i)における第一工程を示す平面模式図であり、(b)は(a)のVIIb−VIIb線矢印方向の断面模式図である。
【図8】図8の(a)は本発明の第三の実施態様の工程(i)における第二工程を示す平面模式図であり、(b)は(a)のVIIIb−VIIIb線矢印方向の断面模式図である。
【図9】図9の(a)は本発明の第三の実施態様の工程(ii)を示す断面模式図であり、(b)は本発明の第三の実施態様の工程(iii)を示す断面模式図であり、(c)は(b)の後のワニスを除去する工程を示す断面模式図である。
【図10】図10の(a)は本発明の第四の実施態様の工程(ii)を示す断面模式図であり、(b)は本発明の第四の実施態様の工程(iii)を示す断面模式図であり、(c)は(b)の後のワニスを除去する工程を示す断面模式図である。
【図11】図11の(a)は本発明の第五の実施態様の工程(ii)を示す断面模式図であり、(b)は本発明の第五の実施態様の工程(iii)を示す断面模式図であり、(c)は(b)の後のワニスを除去する工程を示す断面模式図であり、(d)は本発明の第五の実施態様の工程(iv)を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本発明の実施の形態及び工程を、図面を参照して説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号で表している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0073】
中空フィラメントは、市販の各種材質のチューブを使用することができ、目的に応じて任意の材質のものを選択すればよい。例えば、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリスチレン樹脂(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレン樹脂(PE)、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリ4−メチルペンテン樹脂(TPX)、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリイミド樹脂(PI)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、酢酸セルロース、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)、4フッ化・6フッ化プロピレン樹脂(FEP)、4フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、4フッ化エチレン・エチレン共重合体(ETFE)、3フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリアミド樹脂(ナイロン等、PA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリフェニレンオキシド樹脂(PPO)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリウレタン樹脂、ポリエステルエラストマ、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂等の有機材質や、ガラス、石英、カーボン等の無機材質などが挙げられる。
【0074】
本発明における中空フィラメントの内径及び外径は目的に応じて選択すればよい。特に、ミリリットル(mL)〜マイクロリットル(μL)単位の流体を流すことから、内径は、φ0.05mm〜1.5mm程度のものが好ましい。この様な径の中空フィラメントを作製する場合は、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、4フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)などの材質が特に適している。中空フィラメントの内径をφ0.05mm未満にすると、中空フィラメントの内壁面と流体との界面抵抗の影響が無視できなくなる傾向がある。中空フィラメントに流している流体に化学反応を生じさせる場合は、中空フィラメントは耐薬品性を備えるものがよい。
【0075】
また、中空フィラメントに流している流体に光を照射し、光化学反応を生じさせたり、分光分析をしたりする場合は、中空フィラメントに光透過性があるとよい。光透過率は目的に応じた値でよく、目的波長において80%以上であることが好ましく、更に、90%以上あれば最適である。このようにするためには、例えば、所定箇所の中空フィラメントと後述する固定層、基材、または保護層等とを透明にすること、所定箇所の中空フィラメントを露出させ、かつ少なくともこの箇所の中空フィラメントを透明にすること等を行うことによって実施可能である。
【0076】
本発明は、固定層中に少なくとも1本の中空フィラメントの一部が任意の形状に敷設され、固定されていることを特徴とする。固定層の材料としては、固化させたワニスが好ましい。ワニスの材質は、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、またはゲル状物質、天然ゴム、またはシリコーンゴムなどが挙げられる。固化前のワニスは、流動性を有することが好ましく、固定層はワニスの全部または一部を固化させて得られた固定層が好ましい。
【0077】
ワニスは、熱或いは光によって固化するワニスが好ましい。ここでいう固化とは、一般的な液−固転移を指すほかに、光硬化、熱硬化などの硬化反応、ゲル化の他、含溶剤量を減らしたり、ワニス温度を下げたりすることでワニスの流動性を下げることなども指す。例えば、高分子量合成ゴムやシリコーン樹脂系のワニスが適する。
【0078】
高分子量合成ゴムのワニスとしては、例えば、トーネックス株式会社製の商品名ビスタネックスMML−120の様なポリイソブチレンや、日本ゼオン株式会社製の商品名ニポールN1432等のアクリロニトリルブタジエンゴムや、デュポン社製のハイパロン(登録商標)20の様なクロルスルホン化ポリエチレン等を用いることができる。また、必要に応じてこれら材料に架橋剤を配合することもできる。
【0079】
シリコーン樹脂系のワニスとしては、高分子量のポリジメチルシロキサンまたはポリメチルフェニルシロキサンからなり末端にシラノール基を有したシリコーンゴムと、メチルシリコーンレジンまたはメチルフェニルシリコーンといったシリコーンレジンとを主成分としたシリコーン接着材が適している。凝集力を制御するため各種の架橋を行ってもよい。例えば、シランの付加反応、アルコキシ縮合反応、アセトキシ縮合反応、過酸化物などによるラジカル反応などにより架橋を行うことができる。この様なワニスとして市販のものでは、YR3286(GE東芝シリコーン株式会社製、商品名)やTSR1521(GE東芝シリコーン株式会社製、商品名)、DKQ9−9009(ダウコーニング社製、商品名)などがある。
【0080】
感光性ワニスとしては、例えば、プリント基板のエッチングレジストとして使用されているドライフィルムレジスト、ソルダーレジストインク、プリント基板の感光性ビルドアップ材等のワニスが適用できる。具体的には、日立化成工業株式会社製の商品名H−K440やチバガイギー社製のプロビマー等がある。特に、ビルドアップ配線板用途として提供されているフォトビア材料は、プリント配線板の製造工程やはんだによる部品実装工程にも耐えることができる。この様な材料としては、光によって架橋可能な官能基を有した共重合体或いは単量体を含んだ組成物、及び/又は光の他に熱で架橋可能な官能基と熱重合開始剤を混合した組成物であれば何れも使用可能である。
【0081】
その他のワニスとしては、例えば、エポキシ樹脂、ブロム化エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ゴム分散エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂またはビスフェノール−A系エポキシ樹脂及びこれらエポキシ樹脂の酸変性物などが挙げられる。特に光照射を行って光硬化を行う場合にはこれらエポキシ樹脂と不飽和酸との変性物が好ましい。不飽和酸としては、例えば、無水マレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、イタコン酸無水物、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。これらはエポキシ樹脂のエポキシ基に対し等量若しくは等量以下の配合比率で不飽和カルボン酸を反応させることによって得られる。このほかにもメラミン樹脂、シアネートエステル樹脂のような熱硬化性材料、或いはこのものとフェノール樹脂の組み合わせ等も好ましい適用例の一つである。他には可とう性付与材の使用も好適な組み合わせであり、その例としてはアクリロニトリルブタジエンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、SBR、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボン酸変性アクリルゴム、架橋NBR粒子、カルボン酸変性架橋NBR粒子等が挙げられる。この様な種々の樹脂成分を加えることで光硬化性、熱硬化性という基本性能を保持したまま硬化物に色々な性質を付与することが可能になる。例えばエポキシ樹脂やフェノール樹脂との組み合わせによって硬化物に良好な電気絶縁性を付与することが可能になる。ゴム成分を配合した時には硬化物に強靭な性質を与えると共に、酸化性薬液による表面処理によって硬化物表面の粗化を簡単に行うことが可能になる。
【0082】
また、ワニスには通常使用される添加剤(重合安定剤、レベリング剤、顔料、染料等)を添加してもよい。またフィラーを配合することもなんら差し支えない。フィラーとしてはシリカ、溶融シリカ、タルク、アルミナ、水和アルミナ、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、エーロジル、炭酸カルシウム等の無機微粒子、粉末状エポキシ樹脂、粉末状ポリイミド粒子等の有機微粒子、粉末状ポリテトラフロロエチレン粒子等が挙げられる。これらのフィラーには予めカップリング処理を施してあってもよい。これらの分散はニーダー、ボールミル、ビーズミル、3本ロール等既知の混練方法によって達成される。
【0083】
更にワニスとしては、ゲル材料を用いることができる。市販のものとしては超軟質ウレタン樹脂(株式会社エクシールコーポレーション製)やシリコーンエラストマSYLGARD184(ダウコーニングアジア株式会社製商品名)、光固化材料としてTechnovit 2000LC(Heraeus Kulzer社製商品名)などが挙げられる。
【0084】
ワニスの量や粘度などは目的に応じて任意に選択すればよい。例えば、流動性がよい物であれば、中空フィラメントが複数の場合に各中空フィラメント間にワニスが挿入しやすくなる。また、交差部への流入もよくなる。そのため、これらの中空フィラメントを固定する作用が一層増すので好ましい。
【0085】
ワニスで覆う方法は、オートフィルムアプリケーター、カーテンコート、スプレーコート、スピンコート、塗布などを各種選んで用いることができる。また、特に厚く覆う場合は、堰堤物を設け、ワニスの所定範囲以外への流動を防ぐとよい。ワニスの流動性がよい場合、中空フィラメントと基材の間、交差した中空フィラメントの間などの隙間へ入り込み易く、残存気泡などが生じ難くなる。
【0086】
また、所定の部分をワニスで覆う時、系を減圧下に置くなどすることで、中空フィラメントの保持力を増加させることが出来る。例えば、所定の部分をワニスで覆う時に、複雑パターンや高密度交差部などでは中空フィラメント同士の間や、中空フィラメントと基材もしくは接着剤層との間に出来た空隙にワニスが入りやすくなり、中空フィラメントの保持力が増す。また、ワニスを固化させる前に系を減圧下に置くことでも、前記と同様の効果がえられる。さらに、所定の部分をワニスで覆う時、または、ワニスを固化させる前に、系を減圧下に置くことで、ワニス中の残存気泡を低減することが出来る。例えば、二液型エポキシ樹脂などは、固化させる工程でワニス内に気泡が発生しやすい。このようなワニスを用いる場合は、所定の部分をワニスで覆う工程の前に、前記ワニスを減圧下に置くなどしても気泡発生を低減させることが出来る。
【0087】
本発明のマイクロ流体システム用支持ユニットは、さらに基材を有し、該基材上に固定層が設けられていてもよい。基材の材質、形状、サイズなどは目的に応じて選定すればよい。基材の厚みの適正な範囲は目的や求められる機能によって異なる。
【0088】
例えば、基材に電気絶縁性を求める場合は、プリント配線板などに用いられているエポキシ樹脂板やポリイミド樹脂板や、フレキシブル配線板に用いられているデュポン社製のカプトン(登録商標)フィルムに代表されるようなポリイミドフィルムや、東レ株式会社製のルミラー(登録商標)フィルムに代表されるようなPETフィルムを選定することが好ましい。基材の板厚(フィルム厚)は、0.05mm以上であることが望ましい。また、基材に放熱性を求める場合は、例えば、アルミ(Al)板、銅(Cu)板、ステンレス板、チタン(Ti)板などの金属製の板を選定することによって放熱性を満足させることができる。また、基材に光透過性を求める場合は、ガラス、石英板など透明無機材料の板や、ポリカーボネートやアクリルなど透明有機材料の板やフィルムを選定することが好ましい。
【0089】
基材の板厚(フィルム厚)は、0.5mm以下であることが望ましい。更に、基材の表面に銅等の金属パターンをエッチングやめっきで形成したいわゆるフレキシブル回路基板やプリント回路基板を用いてもよい。このことで、マイクロマシン、発熱素子、圧電素子、温度・圧力・歪み・振動・電圧・磁界など各種のセンサや抵抗・コンデンサ・コイル・トランジスタやICなどの電子部品、更に半導体レーザ(LD)、発光ダイオード(LED)、及びフォトダイオード(PD)などの光部品など、様々な部品や素子を実装する端子や回路を形成でき、システム化が容易になる。
【0090】
中空フィラメントを基材または固化したワニス等の固定層で固定することは、フリーの状態にすることと比較して、周囲の温度・電場・磁場など様々な環境を制御し易いという優れたメリットがある。このことは、化学反応や化学分析を行う際に有利であり、特にマイクロ化された反応系及び分析系において有効である。また、他の部品とのアライメントが容易で接続しやすかったり、多数の中空フィラメントをコンパクトに収容できたりといった利点もある。
【0091】
中空フィラメントを基材上に敷設する方法としては、公知の敷設方法が使用できる。例えば、基材に中空フィラメントを融着させる方法(中空フィラメントや基材の少なくとも一部を溶融等し、固定する方法であり、この場合、基材に中空フィラメントの一部が埋め込まれた構造となってもよい。)や、後述する中間層の上に敷設する方法(この場合、中間層に中空フィラメントが埋め込まれた構造となってもよい。)、基材または中間層上に接着剤を用いながら敷設する方法や、基材の中空フィラメントを敷設する箇所にエッチングやめっき等により凹状のパターンを形成し、そこに中空フィラメントを敷設する方法や、基材または中間層の中空フィラメントを敷設する箇所にエッチングやめっきやフォトパターニング等により凹状のパターンを形成し、そこに中空フィラメントを敷設する方法などが挙げられる。この接着剤としては、一般に市販されている接着剤や上記に基材またはワニスとして記載した各種材料が使用できる。
【0092】
具体的な敷設の方法としては、NC布線機等の市販の装置を適用することができる。例えば、導線に荷重と超音波振動を印加しながら敷設できる装置、荷重の印加とレーザ光を照射しながら敷設できる装置、配線体(光ファイバ)に荷重を印加し、接着剤層面へ布線する装置等が挙げられる。
【0093】
NC布線機は、数値制御され超音波振動と荷重の出力制御が可能であり、このNC布線機を用いることにより、中空フィラメントの敷設パターンを精密に制御できる。具体的には、NC布線機を基材に対し、水平に移動させながら、中空フィラメントに荷重及び超音波による振動をかけて敷設する。
【0094】
また、本発明のマイクロ流体システム用支持ユニットは、固定層と保護層とを有し、該保護層上に前記固定層が設けられていてもよい。また、固定層と保護層と基材とを有し、前記固定層と該基材との少なくとも一部を覆う保護層が設けられていてもよい。
【0095】
保護層の形成は、固化ワニスの表面改質や各種材料の塗布、接着、積層などがその方法として挙げられる。具体的な保護層の材料としては、上記に基材またはワニスとして挙げた各種材料を使用できる。
【0096】
また固定層の表面には、基材などの上で中空フィラメントが敷設しやすいように、中間層として、接着能を有する層(以下、接着剤層という。)を有してよい。具体的には、基材と固定層との間に、または保護層と固定層との間に、または固定層の片面に、中間層を設けることができる。なお、「中間層」とは、必ずしも二つの層の間になくともよいこととする。
【0097】
上記のような接着剤層としては、日東電工株式会社製型番No.500やスリーエム社製の商品名VHB A−10、A−20、A−30等のアクリル樹脂系の両面粘着テープ等や、東方産業社製シリコーン系粘着剤シート商品名6A05AWなどのシリコーン系の接着剤が好ましい。
【0098】
また、基材と固定層とを離型させる場合には、中間層は離型能を有する層が好ましい。例えば、フッ素樹脂やシリコーン樹脂の材質が使える。具体的には、フッ素系離型剤であるモールドスパットMR−K681(旭硝子株式会社製商品名)やフリリースシリーズ(株式会社ネオス製)、シリコーン型離型剤KF412SP(信越化学工業株式会社製商品名)などが使える。
【0099】
また、接着剤層としては上記ワニスとして記載した材料が使用できる。更に、感光性樹脂を用いる場合は、液状の樹脂をロールコート、カーテンコート、ディプコート等の方法で塗布し接着剤層を形成する方式や、絶縁樹脂をキャリアフィルム上でフィルム化してラミネートで貼り合わせる方式を用いることができる。
【0100】
具体的には、日立化成工業株式会社製のフォトビアフィルム商品名BF−8000等が挙げられる。
【0101】
また、中間層としては、接着能を有する層、離型能を有する層の他、緩衝能を有する層も挙げられる。緩衝能を有する層は、例えば基材として記載した各種材質が使用できるほか、シリコーン樹脂や軟質ウレタン樹脂のゲル体、ゴム体、発泡体などに代表される低硬度または低弾性なクッション性に優れた材質、PET、PEEK、PPSなどに代表される耐摩擦・摩耗性、耐薬品性、耐油性、ガスバリヤー性等化学物質耐性および物理特性に優れたエンジニアリングプラスチック、金属等の材質が挙げられる。
【0102】
中空フィラメントの断面外形状は、使用目的に応じて任意に選択すればよい。例えば、製造時に該中空フィラメントを回転やX、Y方向動作する布線ヘッドによって任意パターンに布線する布線装置を用いる場合は、装置内の引き回し時に捩れなどによる詰りや引っかかりを防ぐ為、円形もしくは楕円形などの断面外形状に屈曲点が無いものが好ましい。その他、例えば三角形や四角形などの多角形体、連続自由曲線で描かれた形状、もしくはこれらを組み合わせた形状も使える。
【0103】
中空フィラメントの断面流路形状は、使用目的に応じて任意に選択すればよい。例えば、中空フィラメントの断面外形状で示した形状が使える。通常は、一筆書きに描ける形状である。また、血液などの不溶解微粒子を含む混合流体を流す場合は、沈殿や液溜りによる詰りや不整流が起きやすいため、屈曲点の無い形状が好ましい。更には、液溜りができにくい楕円形状がより好ましく、円形形状であるとさらに好ましい。
【0104】
更に中空フィラメントの断面流路中空部の数は、使用目的に応じて任意に選択すればよい。通常は、一つの中空フィラメントに流路は一つであるが、複数の流体を一本の中空フィラメントで扱いたい場合などは、流路を複数有していてもよい。例えば、内視鏡などに用いる複数の流路中空部(多孔)を有した中空フィラメント(ルーメンタイプ)が使える。これらの断面流路形状はそれぞれ異なっていてもよく、目的に応じてサイズや形状を選択すればよい。中空フィラメントの断面外形状で示した形状が使える。
【0105】
少なくとも1本の中空フィラメントの端部が基材端部、保護層端部または固定層端部からはみ出し、余長部を有することが好ましい。これにより外部の装置や外部の部材の流路とマイクロ流体システム用支持ユニットの流路とが簡単に接続できる。
【0106】
少なくとも1本の中空フィラメントの中間部の外壁の少なくとも一部が、固定層から露出しているか、保護層から露出していることが好ましい。これにより中空フィラメントの任意の中間部へ外部から光、熱などの印加が容易になり、温度コントロールや反応制御、流路及び流体の観察が可能になる。中空フィラメントや基材などの構成材料に、透明性の高い材料を用いると、光学的な観測がし易い。また、熱伝導性の高い材料を用いると熱の印加が容易になる。更に、中空フィラメントの外壁に加工を加えることが容易になり、例えば、センサや圧電素子などを実装や、穴やスリットなどの加工がし易くなる。穴加工をすることで、流路内へ熱電対などのセンサの挿入や、流体の注入、採取などが可能になる。また、流路の分岐部とすることも可能である。
【0107】
少なくとも1本の中空フィラメントの中間部の外壁は、固定層から露出していなくてもよい。これにより中空フィラメントの固定層への保持力が増す。また、中空フィラメントへ外力が直接加わることを防げ、該中空フィラメントの変形が抑制できる。また、該中空フィラメントへの光や熱が伝わるのを抑制したり、緩衝したりできる。例えば、固定層や基材に低熱伝導性または高耐熱性または遮光性などの目的に応じた適切な材料を選択すれば、該中空フィラメントの材料によらず、流路へ熱の伝導が抑制されたり、光があたるのを防いだり出来、周辺環境に影響され難くなる。
【0108】
中空フィラメントは、1本であっても良いが、2本以上であることが好ましい。また、材質や形状などは目的に応じてそれぞれ選択できる。
【0109】
さらに、2本以上の中空フィラメントが、2種類以上の異なる外径を有する中空フィラメントからなってもよい。
【0110】
少なくとも1本の中空フィラメントが、交差部を有するように敷設されていてもよく、同じ中空フィラメント内で交差しても、他の中空フィラメントと交差しても良い。これらにより、複数流路を持つ複雑な流体回路であっても場所を要しないため、中空フィラメントの高密度化が達成される。また、中空フィラメントが交差したり、異なる外径を有したりしても、表面の凹凸が少ないマイクロ流体システム用支持ユニットが得られる。
【0111】
中空フィラメントが敷設された領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みは、全ての中空フィラメントの外径よりも厚いこと、交差部における中空フィラメントの厚みの合計よりも厚いことがそれぞれ好ましい。これにより、固定層の表面が、平坦であるマイクロ流体システム用支持ユニットが得られる。なお、ここで平坦とは、表面が中空フィラメントの形状に影響されていない状態を示す。
【0112】
また、中空フィラメントが敷設された領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みが、中空フィラメントが敷設されていない領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みの100〜120%であるのが好ましい。より好ましくは100〜110%であり、さらに好ましくは100〜105%であり、特に好ましくは100〜103%である。
【0113】
さらに、少なくとも1本の中空フィラメントが交差部を有するように敷設されている場合は、該交差部の領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みが、交差部以外の中空フィラメントが敷設されている領域のマイクロ流体システム用支持ユニットの厚みの100〜120%であることが好ましい。より好ましくは100〜110%であり、さらに好ましくは100〜105%であり、特に好ましくは100〜103%である。
【0114】
基材端面、または、固定層が設けられる面とは反対側の基材面の、少なくとも一部を固定層が覆ってもよい。また、固定層上面、固定層端面、基材端面、または、固定層が設けられる面とは反対側の基材面の、少なくとも一部を保護層が覆ってもよい。固定層端面、または、固定層下面、の少なくとも一部を保護層が覆ってもよい。これらにより、基材の各面に固定層を設けることで、より多くの中空フィラメントが固定されたマイクロ流体システム用支持ユニットが得られる。また保護層を設けることで、固定層や基材の変質、変形などを防いだり、固定層や基材自体の持つタック性などの性質を覆い隠したりすることも出来る。
【0115】
次に図面を使用してマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法を説明する。
【0116】
本発明は、少なくとも以下の(i)、(ii)及び(iii)の工程を備えるマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0117】
(i)基材上に、少なくとも1本の中空フィラメントを任意の形状に敷設する工程
(ii)該中空フィラメントの少なくとも一部を含む所定の部分をワニスで覆う工程
(iii)該ワニスの全部または一部を固化させる工程
【0118】
さらに、以下の(iv)の工程を上記(iii)よりも後に含んでもよい。
(iv)所定の部分に保護層を形成する工程
【0119】
図1〜図3に示す本発明の製造方法の第一の実施形態では、接着剤層を設けずに中空フィラメントを基材上へ直接敷設する。
【0120】
図1の(a)は第一の実施態様の(i)基材上に、少なくとも1本の中空フィラメントを任意の形状に敷設する工程における、第一工程を示す平面模式図であり、(b)は(a)のIb−Ib線矢印方向の断面模式図である。図1では基材1上に、第一の中空フィラメント群201〜208を端部が基材端部からはみ出さないようにそれぞれ平行に直接敷設している。
【0121】
また、中空フィラメントの敷設の際には、例えば、図1には図示していないが、前述のようにNC布線機を用いることができる。
【0122】
次に、別の第二の中空フィラメント群211〜218を、既に敷設された第一の中空フィラメント群201〜208と交差するように、かつ端部が基材端部からはみ出さないように敷設する。図2の(a)は工程(i)におけるこの第二工程を示す平面模式図であり、(b)は(a)のIIb−IIb線矢印方向の断面模式図である。
【0123】
この敷設の際にも、例えば、図2の(a)の平面図には図示していないが、NC布線機6を用いることができる。ただし、このNC布線機6は既に敷設された第一の中空フィラメント群201〜208と新しく敷設する第二の中空フィラメント群211〜218が交差する部分では荷重と超音波振動は止まるように設定することが好ましい。第一の中空フィラメント群201〜208と第二の中空フィラメント群211〜218との交差部の近傍で、荷重及び/又は超音波振動を止めることで、各中空フィラメントへの応力を低減し、中空フィラメントの破損を防ぐことができる。
【0124】
図3の(a)は工程(ii)該中空フィラメントの少なくとも一部を含む所定の部分をワニスで覆う工程であり、すでに敷設された第一の中空フィラメント群201〜208と第二の中空フィラメント群211〜218とが交差する部分をワニス3で覆う。
【0125】
その後、ワニス3を固化させる。この固化させたワニス31を固定層とする。図3の(b)は工程(iii)該ワニスの全部または一部、すなわち所定の固化させる部分32を固化させる工程の一例を示す断面模式図であり、この固化方法は、ワニスの種類に合わせ、各種選択すればよく、例を挙げれば、熱、光、含溶剤量の低減などで固化させる。特に光を用いる場合は、所定の固化させる部分32のみに光を当てることで、図3の(b)のようにその部分のみを固化させたワニス31とすることができる。
【0126】
図3の(c)は(b)の後の、(b)からワニスを除去する工程を示す断面模式図である。
【0127】
固化していないワニスを除去する方法としては、一般的に固化していないワニス類を除去する時に用いられる方法が使用できる。ワニスの流動性が高い場合は、マイクロ流体システム用支持ユニットを傾けたり逆さにしたりして、ワニスの流れを利用して除去することが出来る。また、シリンジやスポイト、吸引機などで吸い取る方法、紙やスポンジなどの吸湿体や吸着剤で吸い取る方法もしくは拭き取る方法、溶剤や水で洗い流す方法、気体や液体で吹き飛ばす方法、さじやへらや刃などで掬い取るまたは剥ぎ取る方法が使用できる。
【0128】
また、ワニスの流動性が低い場合も上記の流動性が高い場合のワニスの除去に挙げた方法が使用でき、特に流動性が低い場合は刃物で切り取る方法が使用できる。またワニスを除去する方法としては、上記に挙げた方法を組み合わせて使用することが出来る。
【0129】
さらに、固化させたワニスを除去する方法として、前記の固化していないワニスの除去に挙げた方法が使用できる。特に流動性が低下し、ワニスが硬い場合は、レーザやイオンビームなどで切断する方法やカッターや旋盤やドリルなど刃物を用いて切り取る方法やまたハンマーなどで砕く方法、薬剤で融かす方法が使用できる。また、固化させたワニスを除去する方法としては、上記に挙げた方法を組み合わせて使用することが出来る。
【0130】
また、ワニスを除去する場合、中空フィラメントに損傷を与えないようにする。中空フィラメントへ離型加工を施すことで、ワニスの除去がし易くなる。例えば、離型剤を塗る方法やプラズマ処理などの表面改質方法などが使える。離型剤としては、前記の中間層の材料として示した離型剤などが使用できる。また、中空フィラメントの材料に、前記したシリコーン系材料やフッ素系樹脂、または、これらを添加した材料などの離型性に優れた材料を用いることも出来る。さらに、これらの離型性に優れた材料と前記の離型剤とを組み合わせることが望ましい。
【0131】
図4〜図11に示す第二〜第五の実施形態では基材上に接着剤層を設け、中空フィラメントを接着剤層の上へ敷設する。ここで接着剤層は基材の表面にほぼ同一形状で、ほぼ同一サイズに形成されている。なお、図5の(a)及び図8の(a)にはNC布線機6は図示していない。
【0132】
図4の(a)は本発明の第二の実施態様の工程(i)における第一工程を示す平面模式図であり、(b)は(a)のIVb−IVb線矢印方向の断面模式図である。
【0133】
図5の(a)は工程(i)における第二工程を示す平面模式図であり、(b)は(a)のVb−Vb線矢印方向の断面模式図である。
【0134】
図4では基材1上に接着剤層11を設け、第一の中空フィラメント群201〜208を端部が基材端部からはみ出さないように接着剤層11の上へ敷設する。図5では第二の中空フィラメント211〜218を、敷設された第一の中空フィラメント群201〜208と交差するように、かつ端部が基材端部からはみ出さないようにNC布線機6により敷設している。
【0135】
図6の(a)は工程(ii)を、(b)は工程(iii)を示す断面模式図であり、(c)は(b)の後のワニスを除去する工程を示す断面模式図である。
【0136】
図7の(a)は本発明の第三の実施態様の工程(i)における第一工程を示す平面模式図であり、(b)は(a)のVIIb−VIIb線矢印方向の断面模式図である。
【0137】
図8の(a)は工程(i)における第二工程を示す平面模式図であり、(b)は(a)のVIIIb−VIIIb線矢印方向の断面模式図である。図7及び図8では各中空フィラメント端部が基材端部からはみ出し、余長部を有するように敷設している。
【0138】
図9の(a)は工程(ii)を、(b)は工程(iii)を示す断面模式図であり、(c)は(b)の後のワニスを除去する工程を示す断面模式図である。図9では、固化させたワニス31(固定層)が基材端面の一部(図中左端面)を覆っている。
【0139】
図10に本発明の製造方法の第四の実施態様の一部を断面模式図で示す。図10の(a)は工程(ii)を示す断面模式図であり、(b)は工程(iii)を示す断面模式図であり、(c)は(b)の後のワニスを除去する工程を示す断面模式図である。図10では中空フィラメントの端部が基材端部からはみ出し、余長部を有するように敷設し、堰堤物5を設け、その内側にワニス3を流し入れる(図10(a)参照。)。堰堤物5は中空フィラメントの端部よりも外側、内側どちらに設けても良い。図10(b)のように所定のワニスを固化させる部分32を固化させ、(c)のようにワニスを除去することにより、所定の部分を固定層で覆うことができる。これにより中空フィラメントの必要な部分のみが、固定層で固定されたマイクロ流体システム用支持ユニットが得られる。
【0140】
図11に本発明の製造方法の第五の実施態様の一部を断面模式図で示す。(a)は第五の実施態様の工程(ii)を、(b)は工程(iii)を、(c)は(b)の後のワニスを除去する工程を、(d)は保護層を形成する工程(iv)を、それぞれ示す。工程(iv)では、固化させたワニス31(固定層)の表面に保護層4を形成する。
【0141】
図11(d)のように、固化させたワニス31(固定層)の上面や側面だけではなく、基材1の表面、接着剤層11の表面、基材1及び接着剤層11を剥離して露出した中空フィラメント側の固定層表面の、いずれに保護層4を形成しても良い。
【0142】
本発明は、少なくとも以下の(v)、(vi)及び(vii)の工程を備えるマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0143】
(v)基材上の所定部分をワニスで覆う工程
(vi)該ワニスの中に少なくとも1本の中空フィラメントの少なくとも一部を浸漬する工程、または、ワニスに少なくとも1本の中空フィラメントを浮かす工程
(vii)該ワニスの全部または一部を固化させる工程
【0144】
さらに、以下の(viii)の工程を上記(vii)より後に含んでもよい。
(viii)所定の部分に保護層を形成する工程
【0145】
これにより、基材や中間層や固定層の変質が起こり難い、または基材や中間層や固定層の持つ粘着性などの性質を覆って取り扱い易くしたマイクロ流体システム用支持ユニットが得られる。他にも、耐薬品性、剛直性、低吸湿性を保護層に持たせることで、使用目的に応じたマイクロ流体システム用支持ユニットを得られる。
【0146】
本発明は、少なくとも以下の(ix)、(vi)、(vii)及び(x)の工程を備えるマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【0147】
(ix)容器中にワニスを充填する工程
(vi)該ワニスの中に少なくとも1本の中空フィラメントの少なくとも一部を浸漬する工程、または、ワニスに少なくとも1本の中空フィラメントを浮かす工程
(vii)該ワニスの全部または一部を固化させる工程
(x)容器の少なくとも一部を除去する工程
【0148】
さらに以下の(viii)の工程を、上記(vii)の工程と(x)のと工程の間に、または(x)の工程より後に、含んでもよい。
(viii)所定の部分に保護層を形成する工程
【0149】
これにより固定層の変質や変形が起こり難い、または固定層の持つ粘着性などの性質を覆って取扱い易くしたマイクロ流体システム用支持ユニットが得られる。
【0150】
本発明の製造方法は、前述の第二の実施形態の図4(a)のように、基材上に少なくとも1本の中空フィラメントを敷設する前に、該基材と該少なくとも1本の中空フィラメントとの間に中間層を設ける工程を更に含んでもよい。
【0151】
また、本発明の製造方法は、基材上の所定部分をワニスで覆う前に、該基材上に中間層を設ける工程を更に含んでもよい。
【0152】
さらに、本発明の製造方法は、容器中にワニスを充填する前に、容器表面上に中間層を設ける工程を更に含んでもよい。
【0153】
また、本発明の製造方法は、少なくとも1本の中空フィラメントの全部または一部を中間層上に任意の形状に敷設する工程を更に含んで良い。
【0154】
ここで、中間層が、接着能を有する層、または、緩衝能を有する層、または、離型能を有する層であるのが好ましい。
【0155】
本発明の製造方法は、ワニスの全部または一部を固化させた後に少なくとも基材の一部を、または、少なくとも中間層の一部を除去する工程を更に含んでもよい。これにより使用環境によらず基材や中間層を選定できる。例えば、高温条件での使用を目的とするマイクロ流体システム用支持ユニットを製造する場合も、低耐熱性の安価な基材や中間層を用いて製造できる。固定層の必要な部分のみを露出させることが出来るので、固定層中で中空フィラメントの外壁の一部が基材側に露出している場合、この部分の基材を除去することで、中空フィラメントの外壁を外部に露出できる。また、基材に硬質な金属や厚い樹脂板などを用いても必要部分を除去することで、固定層へ後に直接加工を施すことが可能になる。
【0156】
本発明の製造方法は、ワニスの中にあらかじめ任意の形状に固定された中空フィラメントを浸漬させるか、または、ワニスにあらかじめ任意の形状に固定された中空フィラメントを浮かしてもよい。これにより作製工程時にワニス自体を移動したり、流したりする必要が無い。そのため、ワニスの流動性が非常に高い場合や温度コントロールが難しい場合など、取り扱い性が悪いワニスでも使用できる。また、中空フィラメントの任意の形状に立体的な部分があっても固定層で固定できる。
【0157】
ここで、中空フィラメントはあらかじめ、基材上、または、中間層を有する基材の中間層上に任意形状に敷設され、固定されていてもよい。
【0158】
本発明の製造方法は、ワニスの中で中空フィラメントを任意の形状に固定してもよい。これにより布線装置などを用いて予め中空フィラメントを任意の形状に配線しておく必要がなく、簡便にマイクロ流体システム用支持ユニットが作製できる。
【実施例】
【0159】
以下、実施例により本発明を説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0160】
(実施例1)
縦150mm、横200mm程度に切り出した、厚さ0.05mmのPETフィルム(基材)の片面へ、接着能を有する中間層として厚さ0.25mmの両面接着テープ9415PC(住友スリーエム株式会社製商品名)をロールラミネータによって接着した。ニッタ・ムアー株式会社製の特殊二重管(内層:ETFE、外層:PA11、内径1.00mm、外径1.50mm)を用意し、前記両面テープの接着剤層表面に、前記の中空フィラメントを縦横20mm間隔のマトリクス状になるように配線して固定した。このとき、中空フィラメントの全ての端部は基材端部から100mm程度をフリーな状態で露出させ、余長部とした。前記基材のPETフィルムのもう一方の面の四辺部に両面テープを貼り、プラスチック製のトレー(内寸:200m×150m×30mm)内へ固定した。このとき余長部はトレーの縁から外に出した。
【0161】
次いで、シリコーンエラストマSYLGARD184(ダウコーニングアジア株式会社製商品名)の主剤と触媒を10対1の重量割合となるように量り取り、空気がなるべく入らないようにゆっくりと攪拌してワニスを得た。これを深さ20mm程度となるようトレー内へ静かに流し込んだ。常温で24時間放置したところ、ワニスが固化して固定層となり、表面に凹凸の無いマイクロ流体システム用支持ユニットが得られた。
【0162】
(実施例2)
基材である厚さ0.06mmのポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルム(ルミラー:東レ株式会社登録商標)の片面へ、室温(25℃)で非粘着性接着剤であるS9009(ダウコーニングアジア株式会社製商品名)を0.40mmの厚さに形成し、縦200mm、横200mm程度に切り出した。次に、PFAフッ素樹脂製の中空フィラメント(内径0.79mm、外径1.53mm、株式会社イワセ製)を用意した。前記基材の非粘着性接着剤面に、前記の中空フィラメントを長さ1mの一筆書きの網目状に、荷重と超音波が印加可能なNC制御配線装置により固定し、各端部を余長部として基材の外に出した。
【0163】
ポリウレタン製の隙間ふさぎ用テープ(厚さ10mm、幅15mm、接着剤付き、株式会社ニトムズ製)を基材の外縁部に沿って固定し、堰堤物とした。特に、前記ポリウレタン製テープが中空フィラメントを跨ぐ場所では、前記テープと前記中空フィラメントの間に隙間が無いようによく追従させて、固定した。超軟質ウレタン樹脂(株式会社エクシールコーポレーション製)の主剤300gと硬化剤100g(3対1の割合)で精密に量り取り、攪拌機を用いてこの二つをムラなく均一に混ぜ、計400gのワニスを得た。この時、主剤と硬化剤の重量誤差は1重量パーセント以内とした。前記堰堤物の内側にこのワニスを厚さ5mmとなるように静かに流し入れた。これを、24時間、25℃、湿度80%以下の条件下に置いたところ、該ワニスが固化した。この固化物(ワニス)は、薄黄色で可撓性と粘着性を有し、圧縮強度(30%)7kPa、引張伸び700%であった。
【0164】
次に、基材と接着剤S9009を丁寧に引き剥がしたところ、前記中空フィラメントが上記固化物で保持された、マイクロ流体システム用支持ユニットが得られた。
【0165】
得られたマイクロ流体システム用支持ユニットの表面は粘着性(固化した超軟質ウレタン樹脂の特徴)を有していた。このマイクロ流体システム用支持ユニットをステンレス製のパット内に静置し、表面コート剤(株式会社エクシールコーポレーション製)を底面以外の面に刷毛で塗り、3時間ほど室温下に置いた。表面コート剤がある程度硬化したのを確認した後、裏返して底面にも表面コート剤を同様に塗り、3時間ほど室温下に置いたところ、表面に非粘着性の保護層が形成され、取り扱い性に優れたマイクロ流体システム用支持ユニットが得られた。
【0166】
(実施例3)
住友スリーエム株式会社製の両面接着テープ:商品名9415PCを、縦100mm、横200mm程度に切り出し、縦110mm、横210mm、厚さ5mmのエポキシ樹脂板に、剥離フィルムが前記エポキシ樹脂板面に接するように置き、四辺部を紙テープで固定した。次いで、ポリエーテルイミド製の中空フィラメント(内径0.3mm、外径0.5mm:仁礼工業株式会社製)を用意し、交差部を有した曲率半径20mm程度の半円パターンで第一の中空フィラメント群を前記両面テープの接着剤層の上に、荷重と超音波が印加可能なNC制御配線装置により敷設した。堰堤物として幅10mm、高さ10mmのスポンジを用意し、該中空フィラメント群を囲むように、両面テープ上に貼り付けた。このとき、中空フィラメントの各端部(50mm程度)は、堰堤物で囲う部分の外になるようにスポンジを固定し、余長部とした。中空フィラメントを跨ぐところは、隙間が出来ないようスポンジを中空フィラメントによく追従させた。
【0167】
ダウコーニングアジア株式会社製のシリコーンエラストマSYLGARD184(商品名)の主剤と触媒を10対1の重量割合となるように量り取り、空気がなるべく入らないように慎重に混ぜ合わせてワニスを得た。これを、深さ5mm程度となるよう、前記の囲いの中へ静かに流し込んだ。常温(25℃)で24時間放置し、固化させた。
【0168】
次に前記基材のエポキシ樹脂板と両面テープの剥離フィルムのみを取り除き、固化させたワニスの表面に、前記両面テープの接着剤層を残した。これを基材とし、仁礼工業株式会社製のPEEKチューブ(内径0.10mm、外径0.25mm)を第二の中空フィラメント群として、1.0mmの間隔で並列直線形状に配線し、更に日星電気株式会社製のPFAチューブ(内径:0.70mm、外径:1.00mm)を、第二の中空フィラメント群に交差する方向に、第三の中空フィラメント群として1.5mm間隔で並列直線状に敷設した。
【0169】
基材面上に敷設された前記第二及び第三の中空フィラメント群の交差部分を取り囲むように、ポリウレタン製の隙間ふさぎ用テープ(厚さ10mm、幅15mm、接着剤付き、株式会社ニトムズ製)を固定し堰堤物を設けた。
【0170】
上記第一の中空フィラメント群の固定に用いたのと同じワニスを、前記堰堤物内へ静かに流し込み、厚さ10mm程度に満たした。常温で24時間放置し、固化させ、マイクロ流体システム用支持ユニットを得た。
【0171】
(実施例4)
アルミ製のチューブ仮固定ジグと仁礼工業株式会社製の高密度ポリエチレンチューブ(内径0.50mm×外径1.00mm)を600mm用意した。前述、チューブ仮固定ジグは、縦250mm、横150mm、厚さ5mmのアルミ板の上に、縦横15mm間隔で直径3mm、高さ15mmの円柱が格子状に立っているものである。6−ナイロンチューブの両端を、余長部として各100mmずつチューブ仮固定ジグに垂直に立つように粘着テープを用いて円柱に固定した。残りのチューブをチューブ仮固定ジグ内の円柱間を引き回し、ジグザグ模様にはわせた。これを100℃に予熱した乾燥機に2時間入れた後、室温で冷却した。粘着テープを取り除き、チューブ仮固定ジグからチューブを取り外したところ、チューブはジグザグ形状の面部分とこれに垂直方向に余長部がのびた形状となった。
【0172】
縦300mm、横200mm、深さ40mmのSUS製の容器を用意し、容器の上にSUS製の角棒(一辺20mm)を渡した。先述のチューブを、余長部が容器の開口方向(上)に出るように入れ、チューブ全体が容器の底から数mm浮くように余長部をSUS製の角棒へ粘着テープで固定した。ダウコーニングアジア株式会社製のシリコーンエラストマSYLGARD184(商品名)の主剤と触媒を10対1の重量割合となるように量り取り、空気がなるべく入らないように慎重に混ぜ合わせてワニスを得た。これを、深さ10mm程度となるよう、前記の容器へ静かに流し込んだ。常温(25℃)で24時間放置したところ、ワニスが固化して固定層となった。これを容器から取り出したところ、表面に凹凸の無いマイクロ流体システム用支持ユニットが得られた。
【0173】
(実施例5)
SUS製の直径30mmの円柱棒と仁礼工業株式会社製の6−ナイロンチューブ(内径1.0mm×外径1.59mm)を600mm用意した。チューブの両端100mmのところに印を付け余長とした。一方の余長100mmをSUS製の円柱棒の長さ方向に、粘着テープで固定した後、残りのチューブを円柱棒にコイル状に巻きつけ、もう一方の余長を残して粘着テープで固定した。この固定されていない余長を、先述固定した余長と同じ方向へ、平行に沿わせて粘着テープで固定した。これを100℃に予熱した乾燥機に2時間入れた後、室温で冷却した。粘着テープを取り除き、チューブを円柱棒から取り外したところ、チューブはコイル形状になった。
【0174】
ダウコーニングアジア株式会社製のシリコーンエラストマSYLGARD184(商品名)の主剤と触媒を10対1の重量割合となるように量り取り、空気がなるべく入らないように慎重に混ぜ合わせてワニスを得た。このワニスを、開口部50mm、底部40mm、深さ75mmのポリカップに50mmの深さまで入れた。コイル形状になった先述のチューブの両端部を掴んで、ポリカップ内のワニスの中へコイル形状の部分を気泡が入らないようにゆっくりと沈めた。チューブが、ポリカップに触れないように余長部を固定し、常温(25℃)で36時間放置したところ、ワニスが固化して固定層となった。ポリカップから取り出したところ、表面に凹凸の無いマイクロ流体システム用支持ユニットが得られた。
【0175】
本発明を上記の形態によって記載したが、この開示の一部をなす部分及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0176】
1 基材
11 接着剤層
2、201〜208、211〜218 中空フィラメント
3 ワニス
31 固化させたワニス
32 ワニスを固化させる部分
4 保護層
5 堰堤物
6 NC布線機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の(ix)、(vi)、(vii)及び(x)の工程を備えるマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法。
(ix)容器中にワニスを充填する工程
(vi)該ワニスの中に少なくとも1本の中空フィラメントの少なくとも一部を浸漬する工程、または、ワニスに少なくとも1本の中空フィラメントを浮かす工程
(vii)該ワニスの全部または一部を固化させる工程
(x)容器の少なくとも一部を除去する工程
【請求項2】
少なくとも以下の(ix)、(vi)、(vii)、(x)及び(viii)の工程を備えるマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法。
(ix)容器中にワニスを充填する工程
(vi)該ワニスの中に少なくとも1本の中空フィラメントの少なくとも一部を浸漬する工程、または、ワニスに少なくとも1本の中空フィラメントを浮かす工程
(vii)該ワニスの全部または一部を固化させる工程
(x)容器の少なくとも一部を除去する工程
(viii)所定の部分に保護層を形成する工程
【請求項3】
少なくとも以下の(ix)、(vi)、(vii)、(viii)及び(x)の工程を備えるマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法。
(ix)容器中にワニスを充填する工程
(vi)該ワニスの中に少なくとも1本の中空フィラメントの少なくとも一部を浸漬する工程、または、ワニスに少なくとも1本の中空フィラメントを浮かす工程
(vii)該ワニスの全部または一部を固化させる工程
(viii)固化されたワニスの表面に保護層を形成する工程
(x)容器の少なくとも一部を除去する工程
【請求項4】
容器中にワニスを充填する前に、容器表面上に中間層を設ける工程を更に含む請求項1〜3のいずれか一項記載のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法。
【請求項5】
少なくとも1本の中空フィラメントの全部または一部を中間層上に任意の形状に敷設する工程を含む請求項4記載のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法。
【請求項6】
中間層が、接着能を有する層、または、緩衝能を有する層、または、離型能を有する層である請求項4〜5のいずれか一項記載のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法。
【請求項7】
ワニスの全部または一部を固化させた後に、少なくとも中間層の一部を除去する工程を更に含む請求項4〜6のいずれか一項記載のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法。
【請求項8】
ワニスの中にあらかじめ任意の形状に固定された中空フィラメントを浸漬させること、または、ワニスにあらかじめ任意の形状に固定された中空フィラメントを浮かす請求項1〜7のいずれか一項記載のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法。
【請求項9】
中空フィラメントが、あらかじめ基材上、または、中間層を有する基材の中間層上に任意形状に敷設され、固定されている請求項8記載のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法。
【請求項10】
ワニスの中で中空フィラメントを任意の形状に固定する請求項1〜9のいずれか一項記載のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法。
【請求項11】
ワニスが流動性を有する請求項1〜10のいずれか一項記載のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法。
【請求項12】
ワニスを除去する工程を更に含む請求項1〜11のいずれか一項記載のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−104590(P2011−104590A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293437(P2010−293437)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【分割の表示】特願2010−271950(P2010−271950)の分割
【原出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】